ワリー・ハイダー録音Wally Heider

2009年7月26日 (日)

<ジャズ雑感 第30回> リヴァーサイドの不思議

2人のエンジニア~Jack HigginsとRay Fowler

 《Tadd Dameron/The Magic Touch(1962年) 青モノラル》015

リヴーサイドが好きである。ジャズ聴きの初期からモンクやエヴァンスを聴いてきて、だから彼らの一番いい時代の演奏が残されているリヴァーサイドというレーベルを嫌いになるはずがない。このレーベルには、もちろんモンクやエヴァンス以外にも好きなレコードはたくさんあるが、今回はジャズの中身(演奏)についてではなく、「リヴァーサイド録音の質感」について書いてみたい。    

また音の話しか・・・と思われてしまいそうだが、今回は、僕自身が「いい録音」「あまりよくない録音」と思える盤のタイトルを挙げながら、いつものように自分の思い込みを展開したい(笑)
要は・・・まず僕自身の「好き・嫌い」を明らかにすることで、それに対し「いや、それは違う!オレはあっちの方が好きだ」とかの意見も当然あるわけで・・・つまり「音の好みというのは本当に人それぞれなのだ」ということを、充分に認識することで、そうした方が・・・たぶん音の話しの「いい・悪い」も伝わりやすくなると思うのだ。そうしてこれらは録音についての僕の好みの話しなので、「音の良くない」方で挙げた盤があったとしても、それは・・・決してその盤の中身が悪いというわけではありません(笑)

以前からリヴァーサイドには、録音がとてもいいと思えるタイトルと、そうでないものがあって、だから、bluenoteやprestigeのようには「リヴァーサイドは、これこれこういう音だ」と簡単に表現できないもどかしさを覚えていた。僕のリバーサイド認識は・・・基本的には「自然な感じのしっとり感のある音質」だ。そうして、そのソフトな質感をもちろん嫌いではない。しかしそうとは感じない音の盤もけっこうあって・・・どうもリヴァーサイドの音はよく判らない・・・そんな感じもあるのだ。
今回は、その辺のことをできるだけ具体例を挙げながら書いてみたい。

さて、いろんなリヴァーサイド盤を聴いてきたが、この頃になってようやく、同じリヴァーサイドであっても2人のエンジニア~Jack HigginsとRay Fowler~によって、だいぶ音造りが違うようだぞ・・・ということに気づいた。
だいたいの掴(つか)みとして~
Jack Higgins(Reeves Sound Studios) 1956年くらいからのモノラル録音が主。[参考~モンクのBrilliant Corners、ビル・エヴァンスのEverybody Digs~やPortrait In JazzはHiggins録音]
*追記~Portrait In Jazzついて~モノラル録音はHigginsだが、ステレオ録音はひょっとしたらRay Fowlerかも?という話しが、bsさんのHP(BLUE SPRITS 8/20付)にてアップされました。そのCDのデータを巡る興味深い記事です。必見です!
Ray Fowler(Plaza Sound Studio) 1960年くらいからのステレオ録音が主。
[参考~但し、モンクのMonk's Music(1957年),ファイブスポットのライブ(1958年),Monk Orchestra at Town Hall(1959年)などはFowler録音]

Monk_town_hall_blue_21960年代に入ると、ほとんどの作品がRay Fowlerになっているようで、その音の違いは・・・スタジオ自体の響きや年代による録音機器の違いによるものも大きいはずだが、やはり2人の音造り(ミキシング、マスタリングのバランスなど)の違いというものもはっきりとあるように思える。 僕の場合、一聴して「おっ、いい音だな」と感じると・・・Ray Fowler録音の場合が多かった。
まず、Fowlerの方からいこう。006_2
ひと頃、リヴァーサイドの中編成ものが好みになっていくつか入手した。
Thelonious Monk/~Orchestra at Town Hall(1959年) 青モノラル
Jonny Griffin/Big Soul Band(1960年) 青モノラル 014
                     

                     Blue Mitchell/Smooth as the Wind(1960年)黒ステレオ(写真上)
Blue Mitchel l/A Jazz Version of Kean(1961年) 黒ステレオ
Tad Dameron/The Magic Touch(1962年) 青モノラル

Mark Murphy/Rah (1961年) 青モノラル/黒ステレオ(写真下)016_4   017

《特にマーク・マーフィーのファンではないのだが、このRahは、ビル・エヴァンスも何曲かに参加しているという情報もあり入手した。しかし・・・何度聴いてもどのトラックがエヴァンスなのかはっきりとは判らない》

上記6点のFowler録音盤は、モノラル盤、ステレオ盤どちらであ っても、多くの管楽器のエネルギー感もたっぷりで、スポットが当たるソロ場面での音色には鮮度感がある。しかもドラムスやベースのリズム陣の音圧感も充分にあり、さらにそれら全体のエネルギーバランスが強すぎず弱すぎず・・・のいい具合だったのである。
どれも好きな音だが、特にTad Dameron盤でのジョニー・グリフィンのテナー、Mitchell盤でのブルー・ミッチェルの艶やかなトランペットは、素晴らしい音だと思う。これら6タイトルは全てRay Fowler録音である。
こんな確認をしていると・・・まあ要は僕がFowlerの録音を(ミキシング、マスタリング含めて)好きというだけのことかもしれないが、いずれにしても、僕は今やはっきりとそういう認識を持ってしまったわけである(笑)
Photo *モンクの未発表LP~Evidence(milestone 1983年)A面には、At Town Hallからの別テイク~ラウズとのカルテットが3曲、オーケストラの1曲(thelonious)が収録されている。モノラル盤を聴いていて感じた、ブラス陣やベースの厚みある音そのままに、ナチュラルなステレオ音場になっており、なかなか素晴らしい音質だと思う。Ray Fowlerはやっぱりステレオ録音が得意なのだ。たぶんそのステレオ音源を元として、モノラルにミックスしているのだろう。Monks_music_rs
そのRay Fowlerの初期のステレオ録音とされているMonk's Musicは、3rd(黒ステレオ)と4th(茶色abc:モノラル)しか持ってないが、その演奏を僕はとてつもなく好きなので、Monk's Musicについてはまた別の機会に(笑)
*追記~皆さんがコメントで異口同音に触れてくれた、Riversideにおける[同じ作品でのステレオ盤とモノラル盤での音質違い]~これは・・・確かにある(笑) それは、Monkの「ミステリオーソ」です。2年ほど前に、Yoさんとのやりとりの中でも浮上したこの話題。その過去記事がこれです。

さて、好きなリヴァーサイドであっても、何もかもオリジナル盤というわけにもいかないので、当然、OJC盤やビクター国内盤でもいろいろと聴いている。OJC盤は、それまで国内盤で聴けなかった(入手できなかった)タイトルをいくつか聴いたのだが、「いい音」が印象に残っているものをいくつか紹介したい。オリジナル盤で検証しなくては無意味だ~というご意見もあるかと思うが、僕自身の感じとしては・・・国内盤、あるいはOJCであっても、もともとの録音の素性(質感、楽器のバランス)みたいなものは、ちゃんと表われるもので、つまり・・・「良い録音」か「あまり良くない録音」くらいは(何が良いか悪いかは、人それぞれであっても)どんな版でも判るものだと思う。

Victor Feldman/Merry Olde Soul(1960年 Ray Fowler) OJC盤007 
~このレコード・・・やけに音がいい。フェルドマンのヴィブラフォン、ピアノが適度にしっとり感のある音で捉えられており、ベースやドラムのバランスもちょうどいい。それから「サム・ジョーンズのベース」という観点で後述の2枚に比べてみると、低音の響きが豊かに捉えられていて、実にいい具合なのだ。
Milt Jackson/Bags Meets Wes(1961年 Ray Fowler ) OJC盤008
~これもとてもいい録音だ。ウエスのギターの艶々した質感が素晴らしい。サム・ジョーンズのベース音に限って言えば、先の2枚に比べると、ほんのちょっとだけベースの低い方が薄い感じがある。しかし充分に芯のあるいいベース音だと思う。
Blue Mitchell/Blue's Moods(1960年)もいい。これはビクターの紙ジャケCDを聴いただけだが、そのしっとりしたペットの質感と、サム・ジョーンズのベースの豊かな鳴り具合には、間違いなく元録音の良さを感じた。未入手・未確認だがエンジニアはRay Fowlerだと思う。

サム・ジョーンズは・・・おそらく右手のピチカットの時、その引張り力が強すぎて(アタックを掛けすぎて)「グシャッ」という感じに潰(つぶ)れたような音色になることもあるようだ。そしてその強烈さのためか・・・実際、その「引っ張り力の強さ」だけが強調された録音が多くて、ベースの録音としては、ややペンペンしたような音に聞こえてしまう録音のものも少なくないようにも思う。そんなサム・ジョーンズのベース音が良くないと思える録音盤を2枚だけ挙げよう。
*訂正~Things Are Getting Betterのベース奏者はパーシー・ヒースでした。Solarの方はサム・ジョーンズです。

Cannonball Adderley/Things Are Getting Better(RLP 12-286) *モノラル・青・大ラベル 1958年 Jack Higgins
013 ~このモノラル盤・・・一聴、ベース音が遠く霞(かす)んだ感じで音圧感に乏しく、ドラムの音は大きく入ってはいるがシンバルなどが歪っぽく、音そのものに鮮度感がない。サックスやヴィブラフォンも大きめに鳴ってはいるのだが、なにかにガチャガチャと暑苦しくこもったような感じに聞こえる。僕にはとても疲れる音だ。

《追記1~Yoさんからは、Things Are Gettingのステレオ盤(黒・小)の音は素晴らしい~とコメントもあり謎は深まる(笑) だとすると・・・どうやら、Jack Higginsの録音自体が悪いわけではない・・・ということかも》

*《特別追記!》~ついにこの「ステレオ盤Things Are Getting Better」を聴くことができた。昨日(10月10日)ニーノニーノさんの集まりにてYoさん宅で、まず僕のモノラル盤、それからYoさんのステレオ盤(黒・小ラベル)を聴いたその印象を以下。一聴して・・・「これは良い!」でした。Yoさん、NOTさんが仰るとおり、ジャクソンのヴィブラフォン、キャノンボールのアルトには芯に充分なエネルギー感があり、(ジャクソンは左側からキャノンボールは右側から)たっぷりの音量バランスで鳴る。そして僕がモノラル盤で感じた最も「苦手」な部分は・・・ドラムのシンバルや打音の「ガシャガシャ感」(歪む一歩手前くらいか?)であるが、ステレオ盤ではドラムスは全くでしゃばることなく、ちょうどいい按配の音量だ(僕にはそう聞こえた。この辺は、ぜひNOTさんブログでのレポートもご覧ください。ドラムが暴れ気味の方を好むであろうNOTさんの正直な感想にも納得。同じドラムの音量の聞こえ方に対しても、個人の好みでその印象はだいぶん違ってくる・・・という好例だと思う(決して良い悪いの話しではありません、くれぐれも:笑)それからもうひとつ~パーシー・ヒースのベース音にも大きな違いが!直前に同じ装置で聴いたモノラル盤よりも、ステレオ盤では明らかに、ヒースの音が太めに大き目に聞こえました。この点でも、特にベース音バランスが気になる僕にとっては「ステレオ盤」の方がベストなバランスだと感じました。


《追記2~上のモノラル盤とは違うジャケットのモノラル盤(*青・小ラベル)が存在しました。というより、僕の手持ち盤の方がモノラルの2ndジャケだろう。そして「音が悪い」のも、ひょっとしたらこの2ndジャケ盤だけの症状かもしれない(笑) その1stジャケットの写真は右下(ネットからお借りしました)
図柄は同じですが別ジャケットには、左下に[○囲みのSPECTROSONICロゴ]と右上のRIVERSIDE文字のすぐ下に[CONTEMPORARY SERIESと12-286]表記が入ってます》

Things_getting_2001_3







《追記3~そして今になって気づいたのだが(笑)・・・ジャケットだけでなく、センターラベルにも違いがあったのだ!Riversideに詳しい方ならすでにお判りだと思うが、センターラベルにも「小ラベル」と「大ラベル」があったのだ。普通の場合、「小ラベル」の方が先らしい(一部に例外あり) そして今回のケースでは~僕の手持ち盤(2ndジャケ:写真左上)の方が「大ラベル」で、1stジャケ(写真右上)が「小ラベル」のようだ。
大と小の簡単な見分け方のポイントは~ラベル左側のタテ書き[LONG PLAYING]文字と溝が交わらずに溝の外側にあるのが「大ラベル」、そして[LONG PLAYING]文字の上を溝が縦断しているのが「小ラベル」だと思う。
ラベル中央上部の「カセットテープみたいな図柄」でも同様に「溝が通る位置」の違いが明らかだ》

《追記4~bsさんコメント(2009年8月 2日 (日) 20:48)により、このThings Are Getting Betterのセンターラベルにもう一種あることが判明。それは[青・大・溝なし]で、bsさんによれば[僕の耳には、この盤の「音」は〇、それも◎に近い]とのこと。この[青・大・溝なし]と僕の手持ち[青・大・溝あり]とが同一の音質とは断定できないが、bsさんコメント内での音質感の描写は、僕の耳に聞こえた質感と近く、おそらく「同じ音」を耳にしているものと思われる。興味深いのはその「同じ音」に対しても受ける印象が異なってくる場合も充分にあり得る・・・ということです。
この辺りのことについて、bsさんがご自身のHP(8/12付け)で取り上げてくれました。コメントと併せてぜひご覧ください。


Red Garland/Solar(jazzland:JLP73)モノラル・オレンジラベル 1961年 Ray Fowler 001_2
~どのトラックでもサム・ジョーンズのベース音色がはっきりと薄い。もう少しは出ているはずのウッドベースの低い方の音がざっくりと抜け落ちてしまって、乾いてペンペンしたような音色になってしまっている。いい方の録音のサム・ジョーンズとはだいぶ肌合いが違う。サム・ジョーンズは、こんなに軽い感じのべーシストではないはずだ。002
ついでに「ベース音が遠い、薄い」録音として、Sonny Rollins/The Sound of Sonny(1957年 Jack Higgins)のことも。
ロリンズのレコードの中では・・・なぜか今ひとつの感がある。僕の好きなソニー・クラークも入っているのに、なぜだか演奏に生気が感じられないのである。ああ・・・今回は「演奏」については触れないでおこう。あくまで「録音」に拘りたいところなのだが、ちょっとだけ思うに、この「サウンド・オブ・ソニー」~ベースはポール・チェンバースなのに、(*訂正~チェンバースのテイクは3曲、パーシー・ヒースが6曲でした)かなり小さめでしか聞こえず(しかも遠めに)ロリンズのテナーも何となくエネルギー感に乏しいように聞こえてしまう。その要因に一部は・・・こうした「録音の拙(まず)さ」にもあるように思えてならない。なお、このSound of Sonnyは、米milestoneの2枚組で聴いてきたが、recooyajiさんが「モノラル白ラベル」をお持ちで、その真性オリジナル盤を何度か聴かせてもらった時の印象もまったく同じである。

*アダレイやサム・ジョーンズ好きな方が以下の3枚~
Cannonball Adderley/~ at the Lighthouse(riverside)
Cannonball Adderley/Poll Winners(riverside)
Cannonball Adderley/JAZZ Workshop Revisited(riverside)
をお持ちなら、ぜひ聴き比べてみてください。たぶん・・・ベース音には相当な違いがあるかと思います。情けないことに、僕は3枚とも未入手です(笑)なお、以上の3枚の録音はWally Heiderとのことです(厚みのあるベース録音に特徴)
*そのWally Heider録音によるjazzland盤を見つけたので紹介したい。
Harold Land/West Coast Blues(1960年)小豆色ラベル:モノラル
011 ~いい具合にベースはサム・ジョーンズだ。低い方まで太めに響くベース音が聞かれる。オン・マイクで録った音だとは思うが、適度な自然響きもあって、僕には好ましいベースの音だ。ただ・・・前回の記事で書いたように<そのミュージシャンの本当の音>という観点から言うと、サム・ジョーンズとしては、ややマイルドすぎる音色になっているかもしれない。しかし・・・さすがにWally Heiderさん、いい録音だ(笑)

さて・・・どうやら僕はRay Fowlerの音が好きなようである。もちろんこの辺のことは好みの問題だがそれだけではなくて、2人の録音盤を見ると判る録音年月の違い(スタジオや録音機器の違い)という要素もあるはずだ。だから機器の性能レベルでは、より有利なはずのFowler録音の方を「良い」と感じるのは、実はごく当たり前のことかもしれない(笑)
今回は僕自身の音の好みとして「Fowlerの音を好きで、Higginsの音が苦手」という流れで話しを進めてきた。そしてそのサンプルを見ると好きなFowler録音にはステレオ盤が多く、苦手なHiggins録音にはモノラル盤が多い・・・ということも事実のようである。
ちょっと白状すると、僕の好みが「ステレオ」なので「モノラル」の方ばかりを「良くない音」に感じてしまうのではないか・・・という怖れが自分自身にもあったので、手持ちでは数少ないJack Higginsのステレオ盤も聴いてみた。

003 Philly Joe Jones/Showcase(RLP1159)黒ラベル:ステレオ 1959年 Jack Higgins
~それほど悪いという訳ではないのだが、3人の管楽器にもうひとつ鮮度感が乏しい。ドラムもシンバルが大きめに鳴ってはいるが・・・004なんだか緞帳(どんちょう)の向こうで叩いているような感じだ。
Johhny Griffin/The Little Giant(ビクター盤:ステレオ)1959年 Jack Higgins
~アダレイのGettin' よりは若干すっきり目にはなったが、やはり暑苦しい感じが聴きづらい。全体に音量はあっても、どの楽器にも自然な音圧感・実在感がいまひとつ感じられないのだ。鳴ってはいるが・・・直(じか)に伝わるエネルギー感に乏しい・・・と言ったらいいのか。推測だが・・・Jack Higginsは、どの楽器もオンマイク気味で録った後、抑える方向でミキシングし直して全体のバランスを取ろうとしているのではないだろうか? それがために自然なエネルギー感が損なわれてしまう・・・ということがあるのかもしれない。

それから、Ray Fowlerのモノラル盤もひとつ~
Harold Land/In New York(jazzland:1960)モノラル・小豆色ラベル010
このレコード、ベースはサム・ジョーンズではないが、太めに入ったベース音と小気味のいいシンバル音も気持ちのいい、そしてランドのテナーも自然な感じで、なかなかいい録音だと思う。ただ、このベース奏者(Clarence Jones)、太い音色は魅力的なのだが、4ビートでのビート感がドタバタした感じになってしまうのがちょっと残念だ。

2人のエンジニアの音盤のことを書いてきて、その音の特質みたいなものを自分の中では整理できたのだが、 ここで僕は正直に言わねばならない。
お気づきかもしれないが、レッド・ガーランドのSolarのエンジニアがJack Higginsではなく、Ray Fowlerとクレジットされているのだ。
Solarは、「良くない録音」の2番手に挙げた盤だ。 そういえば同じガーランドのNearness of You(1960年:Ray Fowler)の音も全体に生気感に乏しくて、拙(まず)い録音だとの思いもある。こうなると・・・判らなくなってくる(笑) Ray Fowler氏はピアノ・トリオの録音が苦手だったのかもしれない。

さらに言えば、Higgins録音でも初期の1956年~Presenting Ernie Henry(12-222 モノラル・青ラベル)には、さっき書いたような違和感(ドラムスやベース音が遠い感じで音圧感に乏しくこもったような)は、ほとんど感じなかった。僕が一番耳にしてきたであろう、モンク作品もチェックしてみると・・・Higgins録音は以下の3タイトルのみ~*4タイトルに訂正~Five By Monk By FiveもHiggins録音でした(Yoさんからご指摘~thanks!)
<Thelonious Himself, with John Coltrane, Mulligan meets Monk, Five By Monk By Five>で、それらについてもCannonball Adderley/Things~に感じたような「録音の違和感」も特にないので、となると・・・Jack Higgins録音がどれも良くないのでは?・・・という僕の推測も頼りなくなってくる(笑)
どんなミュージシャンにもその演奏に好不調があるように、録音エンジニアであるHigginsにもFowlerにも、その音録りに当たり外れがある・・・というのが実際のところかもしれない。
ただリヴァーサイドでは、その当たり外れが録音だけでなく演奏の中身も含めて大きく現れてしまう・・・そんな印象が強い。そんなちょっとばかり毅然(きぜん)としない感じが個性的とも言える。まったく不思議なレーベルである。だから・・・リヴァーサイドは面白い(笑)

*僕の好みでは特に「良くない録音」と感じる2枚を明記しておきます。
Cannonball Adderley/Things Are Getting Better(RLP 12-286)モノラル・青ラベル
Red Garland/Solar(jazzland:JLP73)モノラル・オレンジラベル
言うまでもなくこれは「録音」についての印象で、中身(演奏)についての良い・悪いではありません(笑)
このレコードをお持ちの方の印象・感想もぜひ聞いてみたいと思います。皆さんが思う「良い録音」「良くない録音」レコードもお知らせ頂ければありがたいです。音の好みというのも、まったく不思議なものですね(笑)

《*10月4日(日)追記》~
いつも更新が遅いこの「夢レコ」だが、今回は2ヶ月も空いてしまった。更新しなかったのは、もちろん次の記事が書けなかったからなのだが、苦しい言い訳をするならば・・・実は、心理的に次に進めないような感じもあったのだ。それはもちろん・・・夢レコ:7月28日<Riversideの不思議>関わりである。この記事で僕は「音の好みは人それぞれ」ということについて少々突っ込んで書きたくて、それにはまず自分の好みを明らかにした方が話しが判りやすいと思い、自分が「あまりよくない録音」と思う2~3の具体的なタイトルを挙げたわけだ。それに対して、各氏から濃厚なコメントを頂き、それについての検証や報告(手持ち材料の中での)などのやりとりが、じわじわと続き、またその間に、NOTさん、bsさんのブログ、HPにおいても関連話題の記事も登場してきて・・・どうやら僕はそんなRiverside渦に充分に巻き込まれてしまったようなのだ。「渦」と言っても、これは楽しい渦ですが(笑)
あるレコードについての新しい検証コメントが出てくると、そんな聴いてみたい音盤たちのまだ見ぬイメージに苛(さいな)まれ、いろんなレコード雑学的なことも気になったりで、もう精一杯になってしまい(笑)・・・まあそんなこともあって、なかなか更新できなかったというわけです。

さて、約2ヶ月に渡るRiverside音盤についてのやりとりの中から、このレーベルに関わるいろんな側面が浮き彫りにされてきたようだ。自分のアタマを整理するためにも、ポイントだけ整理してみたい。

《Riversideの初期ステレオ盤(1100番台シリーズ)への再認識》
僕自身、実は「1100番台」という呼び名にほとんど認識がなかった(笑)「リヴァーサイド・ブック」(ジャズ批評社)でも、普通にRLPの201~499番と並べられていて、例えば、モンクのBrilliant Cornersの226番の所にカッコで(1174)番と表記されている状態で、だから・・・「1100番台」を連続したひとつのシリーズとして認識し辛い状況だったのだ。推測だが、よほどのマニアの方でなければ、リヴァーサイドのステレオ盤としての「1100番台」を認識されている方は少ないだろう・・・と思う。しかし今回は、その「マニア」の方が、2人も揃ってしまったようだ(笑)

まずYoさんからその1100番台について詳細なレポートが続き、Yoさんがこのレーベルを如何に愛しているのか・・・が判明しました(笑)
そのYoさんのレポートにNOTさんが鋭く反応。NOTさん手持ちの1100番タイトルを再検証・・・、お2人の手持ち盤を併せると30タイトルほどとなり、それぞれの盤に対する熱の入った報告から、モノラル盤とはまた違った「ステレオ盤の良さ」~定位的なことだけでなく、各楽器の音圧感や存在感など~を伺い知ることができた。特に音が良いと報告されたものをいくつか挙げておこう。(全容については、ぜひ各コメントをお読み下さい)

~Cannonball Aderley/Things Are Getting Better(1128番:
黒小DGあり(モノラルは286番) 録音:Jack Higgins
◎~各楽器がとても自然で音圧感も申し分ない。RiversideのCannonballのアルトの最も良い録音!!(Yoさんコメント)

Blue Mitchell/Blue Soul(1155番:黒小DGあり)(モノラルは309番)録音:Jack Higgins
音圧が凄く高く迫力満点です。MITCHELLは全ての曲で常に中央に位置し音のクリアさを含め録音の良さでは所有する1100番台中随一(NOTさんブログ~
http://blogs.yahoo.co.jp/not254/50839518.htmlより)

Wynton Kelly/Kelly Blue(1142番:黒小DGあり)(モノラルは298番)
録音:Jack Higgins
◎~どの楽器も自然でエネルギー感十分、バランスも良い
(Yoさん)
音が中央に集中していないため中抜け?と思えるような部分もありますが、KELLYのピアノ、NATのコルネットの生々しさはMONOを上回ります(NOTさんブログ~
http://blogs.yahoo.co.jp/not254/50839518.htmlより)

Jimmy Heath/Really Big!(1188番:黒小DGあり)(モノラルは333番)
録音:Ray Fowler
◎(-)~ビッグバンドの録音として素晴らしい。しいて言うと音全体が若干硬質(Yoさん)

ちなみに、NOTさんは以前からに並々ならぬ興味をお持ちで、ご自身のブログにおいても「モノラル盤VSステレオ盤」なるコーナーで、多くのサンプルを検証されている。その最近記事~http://blogs.yahoo.co.jp/not254/50980289.html
http://blogs.yahoo.co.jp/not254/50922757.html
も必見です。

こうしてみると、今回の拙ブログのコメントやりとりは・・・モノラル録音が専門だと思われている「Jack Higginsの初期ステレオ録音」についての、YoさんとNOTさんによる再検証の記録とも言えそうだ。
音質の評価については、僕も何度も言い訳しているように(笑)「個人の好み」で変わるものかもしれないが、NOTさんもたびたび仰るように「定説に振り回される」ことなく、可能な限り自分の耳で判断することが必要だと思う。
モノラル盤とステレオ盤の好みが分かれることについては・・・どちらが良いとか悪いとか一元的に決められるものでないことはもちろんだが、「良い/悪い」の状況は、あくまで個々のタイトルごとで変わってくるものだと思う。そんな「モノラル/ステレオ」については、次のコメントを紹介しておきたい。
《楽器の音に厚みや力感を求める方であれば(定位的に中央でないとダメというポリシーの方でなければ)ぜひ「良い録音のステレオ盤」を耳にしてみてほしい》(by Yoさん)

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2008年6月 4日 (水)

<ジャズ回想 第14回>4回目の白馬は雨降りだった。

2008年5月~杜の会in白馬

毎年、この時期になると、ひとつ楽しみなことがある。長野県白馬で行われるニーノニーノさん主催の「杜の会in白馬」である。2005年の第1回から数えてもう4回目だ。今年は、関西からのYoさん、Musashi no papaさんに、愛知・静岡組の~recooyajiさん、konkenさん、マント・ケヌーマーさん、そして僕:bassclef~6人が合流してのクルマ旅となった。1369astaire
5月24日(土)集合場所の伊勢湾自動車道「刈谷ハイウエー・オアシス」にて、うまく合流できた我々6名は「やあやあ」と挨拶を交わす。papaさんとは3月の藤井寺以来だが、recooyajiさんとマントさんは、papaさんと初対面となる。「杜」で知り合ったお仲間が初対面する時・・・ちょっとおもしろい現象が起きる。「~です」と事前に聞いていたはずの名字を言いあっても、なかなかピンとこないのだ。それで「recooyajiです」と「杜」でのハンドルネイムを発声すると・・・「ああっ、recooyajiさんですかあ!」と、描いていたその人のイメージが、今、目の前にいる生身の人間と劇的にマッチする~という仕組みなのだ(笑) そういえば、2005年に初めて「洗濯船」1Fのあの食堂に入って行った時~すでにほとんどのメンバーが集合しており談笑していた~僕が「bassclefです」と言うなり、皆さん「ああ~っ」と反応してくれたなあ。そして全員(ほとんどの方が初対面)が名字+ハンドルネイムで自己紹介をすると、不思議なほどに打ち解けてしまうのだった。

さて、なごやかになった6名に気合が入る。「いざ、白馬へ!」
最初の運転はpapaさんだ。昨年、僕が失敗した土岐ジャンクションでの<伊勢湾自動車道~中央自動車道>も巧く乗り継ぎ(あたりまえか:笑)中津川の長いトンネルも抜けていく。こういう長いトンネルは6人でワイワイやってると早いけど、1人だと本当に長く感じる。しかもあの「微妙に暗めのオレンジ色」あれがいけない。あんな風にトロ~ンとした色合いでは・・・どうしたって眠くなるじゃないか(笑) Yoさんのワゴン車も3500ccでパワーに余裕があるのだが、papaさんは運転も相当に巧いようで、緩やかに続く登りカーブでもスムースな走りだ。そういえば、さっきYoさんが「papaさんはA級ライセンスを~」と言ってたな。僕は最後列でkonkenさんと隣合わせだ。ちょっと新しめのテナーの音が流れている。「これ、誰だろう?」「判らん」「わりと最近の録音だろうね」てなジャズ雑談。なにしろ、2人とも新しい録音のジャズをほとんど聴いてないのでよく判らないのだ(笑) スピーカーが後列にもあり、けっこう大きめな音量だったので、ちょっとだけヴォリュームを下げてもらった。その時のpapaさんとYoさんの反応で~音を下げろということは、あいつら、マレイを気に入ってないな・・・というような会話に違いない(笑)~このテナーが「デビッド・マレイ」だと判った(笑)そういえば、マレイについては・・・3月のYoさん宅でも、papaさんお勧めの2~3タイトルを聴いたばかりだ(笑)
お昼前までになるべく行けるところまで行っておきましょう~という作戦にしたので、ほとんど休憩を取らない。その内、マレイのCDが一巡したらしく同じ曲が流れるので「そろそろ替えましょう」などと最前列助手席のYoさんにお願いする。後はバルネなど聴きながら・・・あれ、もう松本近くまで来ているじゃないか。朝の集合が早かったこともあるので、梓川SAでちょっと早めのお昼休憩。
次の運転はマントさん。マントさん、仁科三湖辺りのクネクネ道でもけっこう飛ばす。クルマがよく走るので嬉しいのだろう。 マントさんに後から聞くと、あれでも抑え目に走ったと言うところが、ちょっと怖い(笑) だんだんと曇ってきているようで、なんとかガマンしていたような雨が、ついにパラパラと降り始めた。この辺りまで来ると、左側には槍ヶ岳とかの景色が素晴らしく広がるはずなのだが、そんな山々の姿もほとんど見えなくなってしまう。まあいいか・・・どうせ我々は山歩きをしにきたわけではない。
そんなこんなで、2時過ぎには「洗濯船」に到着。幹事役のSPUさんとパラゴンさんが笑顔で出迎えてくれた。会が始まる前に、皆さんのレコードを見せてもらうのも楽しみのひとつだ。僕はpapaさんに声をかけて、papaさんコレクションから見せていただくことにした。papaさん、今回はパーカー10インチを遠慮して(笑)他の貴重盤をたくさん持ってきてくれた。食堂のテーブルにずら~っと並べる。パラゴンさんがヴォーカル好きということで、ヴォーカルの珍しい盤をいくつか~キティ・ホワイトの見たことのない盤(emarcy盤ではない) ピンキーのvantage盤など・・・挙げていけばキリがない。あの辺りだと・・・ヴォーカル好きが見たらマイってしまうだろうな。僕はやはりインスト中心なので、ペッパーのdiscovery 10インチ盤2点にどうしても目がいってしまう(笑) これは・・・聴いてみたい! 食事の後の地下JBLルームでの第3部の時「ぜひ」とお願いした。
そうこうしてると、ワガママおやじさん、Dukeさん、千葉xyzさんも到着した。千葉xyzさんとpapaさんは今回の白馬が初参加だ。「洗濯船」オーナーのMさんも加えて、さあ・・・これで、今回の参加者12名が揃ったじゃないか。御大Dukeさんが一言~「ちょっと早いですが揃ったので始めましょうか」外の雨もだいぶ強くなってきたようだが・・・今から、ひたすらレコード音楽に耳を傾ける我々には関係ないか(笑)

第1部「トーク・タイム」(14:45~17:15)地下JBLルーム
ワガママおやじさんと不肖bassclefのトーク~各1時間づつたっぷりと語らせていただきました(笑) 昨年の「白馬:杜の会」からこの新企画が始まった。事前に指名された方が、60分ほど時間を頂いて、自分の選曲とコメントを皆さんに聴いていただくのである。テーマは全くの自由。昨年の白馬では、洗濯船MさんとYoさん。秋の杜では、パラゴンさん、recooyajiさん、Gamaさんが、この「トークタイム」を通して、自己の音楽原点的心情を吐露したのだった。その秋の杜の宴会の時、パラゴンさんから「2008年白馬トークタイム」のご指名を受けてしまったのだ。
好きなレコード(演奏)を掛ければいいのだよ~と思ってはみても、いざ「お前が好きなようにやれ」と言われると・・・案外、迷うものなのである。それに、あまりマニアックに過ぎるのもなあ・・・などとあれこれ悩んだのだが、結局はジャズジャイアントの隠れた名演~みたいな線でいこうと決めた。白馬直前のワガママおやじさんの「杜」への書き込みでも、同じような迷いがあるらしいことが判った。自分の好みで選曲できる「トーク」は楽しいけど、けっこう大変なのである(笑)

2008_0116s90000013_3 <ワガママおやじさんのトーク>
S&Gの「サウンド・オブ・サイレンス」を巡っての話し~
ポールサイモンが独りで吹き込んだSimon Before Garfunkelというアルバム。確かアメリカでは発売されずに、日本だけで発売許可されたというレコードである。このSimon Before Garfunkelは、僕にとっても思い出の1枚だ。中3の時だったか・・・このCBSソニーのLPを入手して、それはもう聴きまくったものだ。この「サウンド~」ギターのアルペジオで始まるイントロこそ、おなじみのパターンなのだが、唄の出足~hello darkness, my old friend~ポールは、怒ったようなぶっきらぼうな調子で唄い始める。ちょっとボブ・ディラン的というか・・・感情を抑えたようなポールの静かな気迫を感じる唄い出しだ。このレコードでは全曲、伴奏は自分の弾くギターだけ。しかし、そのシンプルさが、かえってポールの音楽(S&Gではなく)の骨格を見事に浮き彫りにしたのかもしれない。唄いながら、ギターを叩き、足を踏んでリズムを取るポール。この「サウンド・オブ・サイレンス」・・・抑えていた彼の内に秘められたいろんな感情がモロに溢れ出てしまったような、素晴らしい唄とギターであった。この「独りS&G」を初めて聴いた方も多いようだったが、誰もが感銘を受けたようだった。このPaul Simon Song Bookについての、ワガママおやじさんの記事はこちら、http://ameblo.jp/d58es/day-20080116.html それと、mono-monoさんの記事http://mono-mono.jugem.jp/?eid=195
67camperさんの記事http://blog.goo.ne.jp/67camper/e/0dfa2c93fde73f44354648646df7d583もおもしろいです。

おやじさんのトーク後半は「後期の2008_0524s90000013_2リー・モーガン」特集だ。1965年のCornbreadから、1968年のCaramba、1971年のBobby Humphrey(女性フルート奏者)への客演、それから映画「真夜中のカウボーイ」のサントラEPなどをかけてくれた。「真夜中~」これ、ハーモニカのトゥーツ・シールマンがメロディを吹いていて、ちょっとムード歌謡っぽいモーガンのトランペットが軽くアドリブする~という珍品。僕はもちろん初めて耳にした。他の4000番台のLPも正直なところ、全て初めて聴いたものばかりだ。僕はどうしても「ハードバップ」的なサウンドが好きなので、1965年の「コーン・ブレッド」での、ちょっと大人しい・・・というより弱々しい、しかし妙に存在感のあるテナーの音色が気に入った。そのテナー奏者は・・・ハンク・モブレイなのであった!
*このワガママおやじさんのトーク内容については、「こだわりの杜」へのご自身の書き込みがありましたので、ここに再掲させていただきます。
(以下斜体字部分)2008_0606s90000004_2
《トーク自体は再現出来ませんが、お聞き頂いた曲を羅列しますね。実はトーク、下原稿ではS&G中心で考えてました。サウンドオブサイレンスの3パターン、ブックエンドから一曲を挟んで明日に架ける橋で、S&Gバージョンとアレサ・フランクリンバージョンを掛けて、JAZZを一曲二曲で組み立てていたのですが、2008_0606s90000005_4 それでは余りにマズかろう云うことで、当日はアンディーウィリアムス一曲とポールサイモン/ソングブックからサウンドオブサイレンスを!
JAZZからは「コーンブレッドとそれ以降のリーモーガン」に焦点を当ててみました。コーンブレットB面。どん底の時期のリーモーガンの演奏からEPミッドナイトカーボーイ。2008_0606s90000002_2キャランバからヘレンズ・リチュア、 そうあのヘレンへ捧げた曲。ボビィーハンフリーのフルートインからサイドワインダーをお聞きいただいて、締めは恩人でもあろうベニーゴルソン・アンド・フィラデラルフィアンズからカルガリー。 この時点で時間オーバーだったので演奏時間の短いカルガリー選んだけど、アフタヌーンインパリの演奏がお勧めです》
《以上5点の写真・盤~ワガママおやじさん提供》

さて、僕:bassclefの方は「ジャズジャイアントの隠れた名演」みたいな流れに決めたのだが、セレクトにあたっては、ちょっとだけ捻って<中編成・ビッグバンドをバックに気持ちよく吹くサックス奏者たち>というのを、一応のテーマとした。トークは1時間という枠があるので、曲順くらいは決めておかないと・・・ということで、ズボラな僕としては珍しく原稿らしきものを用意した。原稿と言っても・・・曲名、時間、ステレオ/モノラルの区別。録音年、録音エンジニアのデータ・・・あとは一言コメントくらいのものなのだが。
まあ・・・実際に話しを始めたら、やはり原稿を棒読みするというのも、とても不自然なものなので(笑)結局はいつものように、思いついたことを話しているうちに、つい長くなってしまったようだ。だから何曲かはカットせざるを得ませんでした(笑)
それでは以下~僕の悪戦苦闘の記録として(笑)ちょっとDJ風にアレンジした<白馬でのbassclefのトーク>を載せておきます。
もちろんこの通りに話したわけではありませんが、話しのニュアンスは、だいたいこんな感じだったはずです。なお時間が不足したので、8番のグリフィンと9番のゲッツは、かけられませんでした。

<bassclefのトーク>
今日は、まあ・・・テナー&アルトの特集です。サックス奏者の名演はあまたあるんですが、今回はちょっと捻りました(笑)
というのは、コンボではなく「ビッグバンドや中編成コンボをバックに気持ちよく吹く名プレーヤーたち」というのを一応のテーマとして、その辺りでまず好きなもの・・・そして、できるだけ録音が優秀かな・・・と感じているレコードからセレクトしてみました。あまりにもマイナーなミュージシャンは避けて、有名どころのちょっと渋いレコード・・・という趣ですかね。サックスばっかりではおもしろくないので、一部、トランペット奏者のフューチャリング曲も混ぜました。それから、ステレオ盤・モノラル盤・レーベルなども、できるだけ混ぜ混ぜにしてみました。Fox

1. I wished on the moon 1961年ステレオ
    エディ・ロック・ジョー・デイヴィス/The Fox & The Hounds(RCA victor)バックのリズム陣までくっきりと録られた録音もなかなかいいです。 (engineerは、mickey croffordという人) 曲は・・・思わずワクワクするようなアレンジにのって、ロック・ジョーが楽しそうに吹く I wished on the moonにしましょう。ロックジョーというテナー吹きは、飄々とした感じが堪りませんね。なお、アレンジャーはBobby Platerという人です(ライオネル・ハンプトン楽団~ベイシー楽団でロックジョーと仲間) ビッグバンドはNYのトップジャズメン17人としかクレジットされてませんが、多分、ベイシー楽団でしょう。だとすれば、ベースはエディ・ジョーンズだと思います。

Les_brown_jazz_song_book 2. let's get away from it all 1959年 ステレオ
     レス・ブラウン楽団/Jazz Song Book(coral)
次は、ズートといきましょう! レス・ブラウンというのは、わりとポピュラーっぽい楽団だと思いますが、このアルバムでは、巧いソロイスト(フランク・ロソリーノ、ドン・ファーガキストら)を、Song_bookうまい具合に配分していて(各3曲づつくらい)、充分にジャズっぽいアルバムだと思います。ズートの誠にスムースなフレージングと、あっさりと乗る軽い感じが気持ちいいですね。
《ここでPapaさんから、「このアルバムはいいですよ」とうれしい一言。Papaさんはモノラル盤をお持ちとのこと。僕の手持ちはピンクラベルのプロモだ》

3.   round about midnight 1959年 モノラル
     アート・ペッパー/プラス・イレブン(contemporary)
このレコード、オリジナルを持ってないので、今回はYoさんに借りました(笑)このレコードは最高! まず演奏がいい。アレンジもいい。そして・・・録音もいい!(roy dunan) ジョー・モンドラゴンのベースも重い音で録られています。僕はキングの国内盤ステレオで聴いているのですが、それを聴いていても「ステレオ盤オリジナル」も相当にいい音だろうな~と推測できます。ステレオ盤だと・・・ペッパーのアルトが中央に定位したまま(その音圧感が全く落ちずに) ベースとドラムスが左右に分かれてオーケストラは後ろから・・・というような定位になると思います。このレコードでは、ペッパーのテナーが3~4曲聴けるのですが、ここはやっぱりアルトということで(笑)
bernie's tune のペッパーのソロも素晴らしいのですが、同じようなテンポの曲が続いてしまうので、ここはスロウもの~ A面4曲めのround about midnightにしました。アレンジャーは、マーティ・ペイチです。

4.   day in day out 1961年 モノラル/ステレオVerve_2
Terry Gibbs Dreamband (contemporary)
モノラルのオリジナル盤はこちら~verve V-2151:The Exciting~ですが・・・このcontemporary盤は、1990年発売の新発見ステレオ・マスターなので、少々こじつければMain_stem、このLPを「ステレオ盤オリジナル」と呼ぶこともできます。このレコード・・・とにかく録音が抜群! エンジニアは、あのwally heiderです!ではA面1曲目の day in day outを。
短いソロは・・・コンテ・カンドリ(tp)とビル・パーキンス(ts)です。ベースはバディ・クラークという人。音がでかそうですね(笑) ぺッパーの・・・いや、マーティー・ペイチのtampa盤に入ってた人です。

  Photo_45.  quintessence(4'14") 1961年 ステレオ

クインシーPhoto_6・ジョーンズ/クイセッテンス(impulse)
フィル・ウッズの輝くようなアルトの鳴りを。(van geldr) 曲の終わりの短いカデンツァも、ウッズの 巧さ爆発です。文句なし! 何度聴いても、このimpulse盤は気持ちがいい。

6.   isn't this a lovely day?(4'14") 1953年 モノラル 《写真・盤~konkenさん提供。この盤、実は両面ともB面のラベルが貼られていた。これが、この個体だけのミスなのか、あるいは・・・》
    
フレッド・アステア/~ストーリー(clef) 1369astaire_2
大編成ばっかりではちょっと疲れますので、ここで中休みとして・・・テーマから離れて「唄」をひとつ。フレッド・アステアのIsn't this a lovely day? を。実は・・・このレコードもkonkenさんからの借り物です(笑)
ほのぼのしたような、しみじみしたような情感が漂う名唱・名演だと思います。 優しげなテナーソロは・・・フリップ・フィリップスです。

7.  from now on 1957年 モノラル
   マーティー・ペイチ/Picasso of jazz(cadence)
もうひとつ、モノラル録音のいいやつを。cadenceというレーベルは、たぶんcolumbiaの子会社です。その cadenceの子会社があのcandidです。だからこの「Picasso」は、candidからも出たこともあると思います。渋いトランペットは、ジャック・シェルダンです。独特の沈んだような音色・・・いいソロですね。実は、アルトのクレジットがないのです。この辺りの白人系のアルトをいろいろ聴いてみました。でも・・・判りませんでした。ジーン・クイルかジョー・メイニか、あるいはチャーリー・マリアーノかな?と推理してます。ペッパーやバド・シャンクではないですね。ハーブ・ゲラー、ロニー・ラングではないような感じがします。Photo
《そういえば、cadenceレーベルの小話題として~このcadence~Dukeさんの好きなピアニスト:ドン・シャーリーの初期の作品がたくさんあるレーベルで、実はこれ、ある有名なシンガーがオーナーなんですよ・・・などと話そうかなと思っていたら、cadenceと言った瞬間に、すぐ「アンディ・ウイリアムスの・・・」と声がかかりました(笑)さすがに皆さん、よくご存知です(笑)
アルト奏者のクレジットがない話しも、それを切り出す前に、recooyajiさんから「アルトは誰ですか?」との声。やっぱりちょっと気になる、いいソロだったようだ(笑) 
《その後、PapaさんがこのレコードPicasso of jazzのパーソネルを調べてくれたようで、「こだわりの杜」へ書き込みにて知らせてくれた。
録音年月日 1957 June 7&8   Los Angels
”The Picasso of Big Band "
Pete Candoli, Buddy Childer, Jack Sheldon (tp) Herbie Haper (tb) Bob Envoldsen (vt-b, cl) Vince Derosa (fhr)
Herb Geller ( as ) Bob Cooper, Billy Perkins (ts) Marty Berman (bar) Marty Paichi (p) Joe Mondragon (b) Mel Lewis (d)
う~ん・・・あのアルト奏者は、ハーブ・ゲラーだったのか! まずいなあ、「違う」候補の3番手にゲラーを挙げていたなあ(笑)》Big_soul_band

8.  jubilation(3'53") 1960年 モノラル
  グリフィン~The Big Soul-Band(riverside) 
ちょっと「くどい」音色のグリフィンです。ベースのヴィクター・スプロウルズの音がでかそうなこと! 録音はレイ・フォウラー。

9.   bim bom(4'32") 1961年  ステレオGetz_bigband_bossa_2
     スタン・ゲッツ/Big Band Bossa Nova(verve)
これ、ジョアン・ジルベルトの曲。ゲッツのテナーもマイルドでいい。スネアのリム・ショットとかシンバルのドラムスの音とブラスのバランスが絶妙。 けっこう好きな録音です。verveですがval valentineではなくて、george kneurr&frank laicoという人です。ガットギター・ソロは・・・ジム・ホール!

10.far out east(4'30") 1958年  モノラル/ステレオ
      ロリンズ/ブラス&トリオ(metro) Photo_2
このメトロ盤がオリジナルです。これ、ようやく入手しました(笑) 長いこと、こちらのverve盤(緑色のやつ)で聴いてました。一応、VerveとしてはオリジナルのはずのT字のVerve Inc.(long playing 溝あり)盤なんですが、このverve盤は・・・音があまりよろしくない(笑) モノラルだステレオだという前に、ロリンズのテナーの音に厚みがない。鮮度感に乏しい。それに全体にやけにエコーが強いし、ドラムスやベースの音が遠い感じです。
一方、Metroのステレオ盤では~ロリンズだけが左側で、ビッグバンドとリズムセクションは右側~という、ちょっとおかしなステレオの定位ですが、何よりもテナーの音の鮮度が段違いです。生き生きしたロリンズの音が気持ちいい!1958年の好調なロリンズ! ベースのヘンリー・グライムズも重い音で録られてると思います。B面のコンボの方で比べると、ドラムスやベースの鮮度感の差がよく判ります。では・・・オリジナルのMGM盤(ステレオ盤)ではどうなのか・・・続けて聴いてみましょう。もっともロリンズらしい~と思える1曲を。Brasstrioverve
      verve盤~A面4曲目のfar out east~30"ほど
   metro盤~A面2曲目 far out east
え~と、このタイトル・・・有名なway out westのもじりだそうです(笑)
実は、このロリンズのメトロ盤・・・テナー1本のソロが入ってるんです。body & soulなんですが、1958年でのテナーソロというのも珍しいでしょう。ところが・・・すでに1948年にテナー1本のソロが存在しております。ロリンズの方(body & soul) も掛けたいところなんですが・・・最後に、この「史上初のテナーサックス1本のソロ演奏」と言われているやつを聴いていただきたいと思います。

11.  piccaso モノラル 1948年
コールマン・ホウキンスの「ピカソ」です!Photo_7
これ~THE JAZZ SCENE~mercuryからSP6枚組がオリジナル~10インチ2枚組~EP5枚組~12インチLP~という順で発売されたのだと思います。音は12インチよりEPの方が圧倒的にいいようです。このEP盤5枚セット・・・盤質も最高だし、私的にはけっこうお宝盤です(笑)
なお、ジャケットの図柄はゲッツの「plays Bacharach」に使われてましたね。では・・・1948年の「ピカソ」を。
《あらゆる希少盤をお持ちだとも思えるPapaさんが、珍しくも「う~ん・・・このEP Boxは・・・欲しい」と言ってくれたので、僕はちょっと嬉しかった(笑)まあ半分は、compliment(お世辞)だろうけど(笑)》

第2部(19:15~22:00)
毎年、食事の後に「この1曲」をやるのですが、今年は皆さんの「燃える自己紹介」の後、おいしい泡盛もだいぶん入りながらの「この1曲」で、その後、オークションへ突入。1F食堂タイムが終了したのは例年より1時間ほど遅めの時刻だった。以下、皆さんの「この1曲」をリストしておきます。

Ethel_ennis パラゴンさん~エセル・エニス(jubilee盤:Lullbies For Losers紫ラベル)金色ラベル から
You'd Better Go Now~この名曲を、エセルは、あっさり加減の唄い口で、しかし、しっとりと唄う。それとこのjubilee盤・・・普通、モノラル盤は青か黒だと思うのだが、なぜか・・・パープル!これは・・・珍しい。さっそくpapaさんの熱い視線が(笑)
《上の写真・盤はパラゴンさん提供》
2008_0606s90000003

ワガママおやじさん~Eddie Lockjaw Davis with Shirley Scottから serenade in blue
《右の写真・盤はワガママおやじさん提供》

マントさん~E・パイネマン女史(V)のドボルジャークバイオリン協奏曲

《下の写真・盤はkonkenさん提供》
1186marlenekonkenさん~Marlene De Plankの唄~Fools Lushi In
マーレーンの唄い口は・・・いつも優しい。聴いていて、理屈抜きに安らぐのだ(笑)konkenさんは、あのsavoy盤:Marleneも持っており、この歌い手のレコードをほとんど揃えているようだ。

Yoさん~Jazzville'56(dawn)からlover man(ジーン・クイル)Jazzville56
《右と下の写真・盤~Yoさん提供》
クイルもまたアルトの名手だ。パーカー、マクリーンも演奏したこのバラードを、クイルは、凄く情熱的に吹いている。フレーズ展開に破綻(はたん)をきたしそうな場面もあるのだが、その危うさがスリリングでもある。Jazzvilleこのドーン盤・・・たしかトランペットのディック・シャーマンのいいバラードも入っていて、いいオムニバス盤だと思う。


洗濯Mさん~高木麻早「ひとりぼっちの部屋」~「い~まあ~ッア」と声を思い切り伸ばした後に、短く「アッ」と声を切るところが素晴らしい(笑) 

Dukeさん~ダイナ・ワシントンの初期の10インチ盤からI want to cry 
~生々しい声が印象的。この10インチ盤は30分後にオークションにて、Musashi no papaさんがゲットした。そのpapaさんのコメントを以下。
《白馬の杜でDUKEさんからオークションで譲って戴いたダイナ ワシントンは素晴らしいレコードでした。8曲のうち特に気に入ったのが杜で流された I want to cry でした。チェックしたみると1948年10月16日ロイヤルルーストNYでの録音でバックのペットはガレスピーのようです。この1曲は素晴らしい。私のお気に入りになりました》

PaPaさん~ドイツのアルト奏者~ミハエル・ナウラ
(フィル・ウッズにも似た感じの名手だった。vibraphoneはWolfgangという名だけ覚えてますが、あれは・・・チェット・ベイカーともsandra盤で共演しているWolfgang Lackerschmidなのかな?)
《以下、訂正》
Papaさんからのデータを以下。リーダーのミハエル氏をアルトだと勘違いしてました。ミハエル氏はピアノ、アルトはペーター・レインケという人でした。
ヴィブラフォン奏者も、ウオルフガング違いでした(笑)
Michael Naura Quintet(German Brunswick 87912)
Michael Naura(p)      
Peter Reinke(as)      
Wolfgang Schluter(vib)   
Wolfgang  Luschert(b)   
Joe Nay(ds) 

千葉ZYXさん~テクノっぽいやつ(曲名失念。ごめん!)

SPUさん~Clifford Brown&Max Roach (emarcy) Img_0011_5
10inch盤から delilah。Img_0016_4






ローチ/ブラウンのemarcy盤では、たしか・・・これだけが10インチ盤とのことだ。《写真・盤~SPUさん提供》

recooyajiさん~スリーキャッツ「黄色いさくらんぼ」(日本コロンビア)25cm盤

bassclef~クリフォード・ブラウン「ブルー・ムーン」(emarcy EP盤)

<第3部~地下JBLルーム 夜10時30分~1時30分頃まで>白馬第3部
ある意味、この第3部が最も楽しい時間である。というのも、ここでは皆さんが、いわば「本音盤」を掛けるので、毎年、印象に残るレコードが飛び出るのだ。今回は・・・タイトル・順番など、どうにも記憶があやふやである。皆さんの飲まれたアルコールがJBLルームに気化して、それと音の洪水で・・・僕の脳髄も麻痺してしまったのかもしれない(笑)それでも印象に残っているレコード達をいくつか。

Yoさん~「聴き比べ2題」
<ハロルド・ランド~The Fox>(contemporary盤とHi-Fi盤)からthe fox one down
<アート・ペッパー~Surf Ride>(savoy12インチ盤とdiscovery10インチ盤)からsurf ride

ワガママおやじさん~「ソニー・クラーク~Leapin' & Lopin'からケベック入りのdeep in a dream

SPUさん~「ウディ・ハーマン」Woodchoppers(dial)10インチ盤からit's the talk of town(ラベルにはon the townと表記)

konkenさん~アーサー・ブライスIn The Traditionからin a sentimental mood

洗濯船Mさん~サラ・ヴォーンのlullby of Birdland(emarcy)

Okpapaさん~ペップ・ボネPep Bonet(スペインのサックス奏者)この人、ちょっとロリンズ風。そんなバリバリと吹くテナーに、ちょっとヘタウマ風なピアノとベースが絡む。Papaさん、こういうヨーロッパ系の「武骨ジャズ」も好みらしい。そういえば、イギリスのディック・モリシー(ts)にも、同じような雰囲気を感じた。《写真・盤はPapaさん提供》

Jazz_vane_2bassclef~ジミー・ロウルズweather in jazz vane(andex)からsome other spring。このレコード・・・CDで愛聴してきたのだが、ちょっと前にようやくオリジナル盤を入手できた。ロウルズという人のしみじみとした持ち味がよく出ていて、好きなレコードだ。それに、Andexというレーベル・・・なかなか音がいい(笑) この頃は、こういう、日向ぼっこをしながら居眠りしているような・・・そんなまったりした感じが好きになってきた。《このandex盤はプロモ盤なのでラベルが白だ》

マントさん~DECCAでホルストの惑星(カラヤン・VPO)からジュピター。何度聴いても・・・やっぱりいい曲だ(笑)
チャイコフスキーのロミオとジュリエット(同)からロミオとジュリエット(2000番台)。DUKAS:LA PERI poeme dance'(ラージラベル)~このデュカスの曲・・・最初の金管楽器が一斉に鳴り響くあたりは、サウンドとして気持ちがよかった(笑)

千葉ZYXさん~「ToTo」のLPから(タイトル失念・・・ごめん!)
この1曲は・・・ZYXさんが茶目っ気を出して「ある大物ジャズメンが参加している」とのクイズ曲となった。昔、ローリング・ストーンズにロリンズが参加したLPのことは知っている。誰かが「楽器は?」と尋ねると・・・「いや、まあ・・・聴いてみましょう」と口ごもりながらも、小さい声で「トランペットです」とヒントをくれる優しいZYXさんだった(笑) ToToという名前は知っているが、ちゃんと聴いたことがない(笑)冒頭からギターがしばらく続いた後・・・なにやら聴いたことのあるぞ~と思える音色のトランペットが鳴りはじめる。この、ちょっとくぐもったような音色と、ためらいがちなフレージングは・・・おおっ、あれだ。「わかったあ! マイルス!」と僕は言う。「当たりです!」とZYXさん。「さすがですね」などと誉めてくれるZYXさん。でもね、ZYXさん・・・マイルスのトランペットなら、ジャズ好きなら誰でもすぐに判っちゃうんですよ(笑) それにしてもこのToToへのマイルスの客演~おそらくオーヴァーダビングなのだろうが、ソフトなロック調にかぶして吹くマイルスのフレーズには、全く違和感がない。それになんと言っても、一人の人間がそこでしゃべっているような・・・そんな説得力があるじゃないか。Img_0006_4

SPUさん~Woody Herman/Woodchoppers(dial:10inch)
毎年、夜が更けてくると異常に元気になってくるSPUさんである(笑)
SPUさん、いつもいいところを入手しているようで、いろいろと見せてくれる。ソニー・クラーク・トリオ(bluenote)にも惹かれたが、ここはやはり昼間にチラと見せていただいたダイアルの10インチ盤である。  Img_0018_3 《写真・盤~SPUさん提供》
それはWoody Hermanの10インチ盤。聞かせてくれたのが、バラードの it's the talk of town(ラベルのクレジットでは"on the town"と表記されている) これ、ウッディ・ハーマンと言っても、フリップ・フィリップスのフューチャー曲で、彼の見事なソロがたっぷりと入っている・・・これはいいっ! 
まったくフィリップスという人は、こういうゆったりしたバラードを吹かせると、もう独壇場である。僕の好きな「フィリップ風」がゆったりと謳いあげる。ううう・・・これは、垂涎盤だあ!(笑) フィリップス好きの僕にとっては、この夜のMIV盤(most impressive vinylという勝手な造語です)は、このダイアル10インチ盤である。

《下の写真・盤~ワガママおやじさん提供》
2008_0323s90000014_5ワガママおやじさん~Sonny Clark/Leapin' & Roapin'(bluenote)NYラベル
お勧めはやはり・・・deep in a dream。さすがワガママおやじさん、ジャズのコアなところをご存知だ。この「リーピング~」チャーリー・ラウズとトミー・タレンティンの2管入りセッションが主なのだが、この1曲:deep in a dreamだけは、アイク・ケベックのテナー1本。そしてこれが実にいい。ソニー・クラークのバラードを弾くときの独特なロマンティックな感じ・・・そのイントロからしばらくはピアノのソロが続く。「あれ、これ、テナーは?」と皆が思ったころ・・・ケベックが「ずず~っ」と忍び込むような気配で吹き始める(笑)、ソニー・クラーク/アイク・ケベック~2人の音が醸し出す雰囲気と、この曲の、ちょっとセンチメンタルな雰囲気が見事にマッチしている。このバラードは、やはり絶品と言わねばなるまい。

Yoさん~<ハロルド・ランド:Foxの聴き比べ>
《以下6点、ランドとペッパーの写真・盤~Yoさん提供》The_foxhifi_6

ランドのThe Foxは、もともとHi-Fiレーベルへの吹き込み(1960年)だが、一般的に知られているのは、contemporaryの緑ラベル(1968~1970頃)として再発されたものだと思う。僕もその緑ラベルを愛聴していた。そういえば・・・第1回白馬の時に、Yoさんとランド話題になり「Foxはいいよね」みたいな話しになったな。そのYoさん、最近、FoxのHi-Fi盤を入手されたとのことで、じゃあ、あのcontemporary盤とどんな具合に違うのか・・・
という流れになっていた。Yoさんによると、contemporary盤は「いつものcontemporaryらしい、自然な質感のいい音」なのだが、Hi-Fi盤(モノラル)は、全く音造りが違うとのこと。簡単に言えば、あまり西海岸っぽくないそうである。Fox_hifi
最初にHi-Fi盤から~まずジャケットがいい。暗めの赤色、灰色、黒色などが太い筆でググッと塗りたくってあるだけの抽象絵画っぽいジャケットなのだが、中身の音の力感みたいなものが感じられるのだ。A面1曲目のThe Fox B面のOne Down を聴く。各楽器の音がメリハリのハッキリした太い輪郭で、全体的に音が強い感じだ。パーソネルを知らずにパッと聴いたら・・・イーストの黒人ハードバップだと思ってしまうだろう。もっとも・・・このThe Fox~ランドもエルモ・ホープもリズムセクションもみんな黒人だし、実際、こういうハードバップ的な4ビートジャズをやっているバンドのサウンドに、東海岸と西海岸で、それほどの違うがあるはずもないのだが。ただ「録音の感じ」の違いは・・・明らかにあると思う。その「音の感じ」で言うと・・・Hi-Fi盤では「ジャズが強く聴こえる」ように感じたのだ。ピアノのエルモ・ホープの叩きつけるようなタッチも、相当に迫力あるガッツあるタッチとして鳴った。いずれにしても、Hi-Fi盤の音は、モノラル盤と言うことも含めて・・・魅力的なジャズのサウンドではあった。なおHi-Fi盤の録音は1959年。録音エンジニアは・・・Art Becker & David Wiechmanとなっている(contemporary盤の裏ジャケに表記あり)

Foxcontemporay 次にcontemporary盤~この緑ラベル・・・何度も聴いているので僕には親しみがある。裏ジャケの解説はLeonard Featherで、1969年10月としてあるので、発売は1969年か1970年だろう。
さて「緑ラベルのステレオ盤」だ。一聴・・・ランドのテナーが少し細くなり(と言ってもそれは悪い意味ではない)音色もややソフトな感じになった。ドラムスの「鳴り」が全体的に「すっきり」してきた。音楽全体の鳴り」として・・・たしかにやや軽くなったような感じはする。しかし・・・本来、ランドやフランク・バトラーが楽器から出している「サウンド」としては・・・僕はこのcontemporary盤の方が「自然」だと思う。いい意味での「軽やかさ」~僕はこの感じを「軽み」(かろみ)という言葉で表したい(笑)~が感じられるサウンドだと思うのだ。Foxcontemporay_2 う~ん・・・Hi-Fi盤もいいが、やはりこちらのcontemporary盤もいい・・・聴いている方々もそれぞれの音にに感じるところがあったようで、判断に迷っているような気配ではある。これは、Hi-Fi盤とcontemporary盤との「音造り」の違いでもあり、また「モノラル盤」と「ステレオ盤」のそれぞれの特徴(良さ)が現れた好サンプルかもしれない。ジャズ好きの「音」や「音楽スタイル」に対する好みの傾向は様々だし、そういう好みの違い方というようなことへの興味を、Yoさんも僕も持っている。そんなこともあって、どちらの音が好みか・・・というアンケートをすることになった。この場にはちょうど9名いた。僕の予想は「半々」だった。
まず「Hi-Fi盤」~4名が手を上げる。そして「contemporary盤」~これも4名。1名が手を上げてない(笑) Yoさんは決着を付けたいようだ(笑)「konkenさんは?どっちが好き?」と追求する。konkenさん「うう・・・」唸りながら「やっぱり・・・contemporaryかな・・・」 これで5対4だ。やはりほぼ半々か・・・。まあいずれにしても、実に興味深い「音の好み」の違いじゃないか(笑)

Pepper_surfride_savoy_2  Yoさん~<ペッパーのサーフライド>
さて、savoy12インチ盤(MG-12089)とdiscovery10インチ盤2点(Art Pepper Quartet 3019)と(Art Pepper Quintet 3023)
発売は、10インチ盤の3019が1952年、3023が1954年。12インチ盤が1956年と、当然のことだが、10インチ盤の方が早い発売である。Surfride
最初に掛けたのは、savoy盤12インチ~曲は急速調のsurf ride。
サックスの音にメリハリがあり、全体的に明るい感じ。とても1952年の録音とは思えないほどパリッとしたジャズの音だ。さすがにVan Gelderのマスタリングした12インチ盤だ。張りのあるジャズっぽさも充分に感じられる。
Yoさんは「うん、このsavoy盤も悪くないなあ」とちょっと嬉しそう(笑)

次に、discovery10インチ盤~これは僕の私見だが、10インチ盤というのは、時代も古い分だけ(たぶん)12インチ盤に比べると、盤質の材料やカッティングの精度において、若干のデメリットがあると思う。ただし「モノ」としての魅力~あの10インチという大きさからくる圧倒的な存在感、古み感など・・・それがそこにあるだけで、素晴らしい(笑)そう思わせてくれるほど、ある種の10インチ盤には、エモイワレヌ魅力を感じる。ペッパーのこの2枚のdiscovery盤もそんなレコードである。
《下の10インチ盤2枚~写真・盤はPapaさん提供》Discovery10inch_2_2

さて、その音は・・・? Mさんが慎重に針を下ろす。
材質・盤質からくるノイズはほとんどない。いいコンディションのようだ。
一聴・・・全体の音がおとなしい感じか。ちょっと楽器全般がくすんだような色合いになったかもしれない。ぱっと聴いて受ける印象は・・・古い写真がセピア色に染まりつつあるような・・・そんな感じに近いかもしれない。そして僕には、その「セピア色」が心地よい。ちょっと高音の方が詰まったような音なのだが、こうして2枚続けて聴いてみると、この「ちょっとおとなしい鳴り方」の方が、より自然なものに聞こえないこともない。
ドラムスのシンバルのクリアさや、それからペッパーのアルトの輝き具合においては、確かに12インチ盤の方に分があった。それでも10インチ盤の「自然な鳴り」に僕は惹かれるものを感じた。
目をつぶって「音」だけを聴けば、12インチ盤の方を選ぶ方が多いかもしれない。しかし~パーカーのダイアル盤の時にもちらっと書いたのだけど~こちらのアタマに「貴重な10インチ盤。時代的にはオリジナルの10インチ盤」という思いも入り込んでの聴き比べなので(そうならざるを得ない)そういう意味で「10インチ盤有利」になってしまうことがないとは言えない(笑)
いずれにしても、こういうのは「好み」の問題だと思う。例えば、僕自身は・・・一般的には強い音が好きなのだが、Van Gelder特有のかけるエコーが(強すぎる場合)あまり好きではない。Cimg0268
ひとつだけ確かなのは「ペッパーは凄い」ということだ(笑) レコード化の段階で、後から何をどういじったとしても、1952年にペッパー達が演奏した素晴らしい演奏(音楽)は・・・・厳然として、そこにあったわけなのだから。
《上の写真~savoy12インチ盤には収録されなかった4曲(These Foolish Things, Everything Happens to Me, Deep Purple, What's new)と、レッドの2曲を収めたArt Pepper/Sonny Redd~通称Two Altos(regent)。なるほど・・・ラベルは緑でしたか!写真・盤~Musashi no papaさん提供》

好きになったミュージシャンの音を集中して聴くのならば・・・どんな版のレコードを聴いたとしても、感じるところは絶対にあるはずだ・・・と思いたい。まあもちろん、音がいいレコードで聴くに越したことはないのだが(笑)

《写真・盤はkonkenさん提供》Photo
最後の方に聴いたのは、konkenさんの「アーサー・ブライス」in the traditionからJitterbug Waltz と in a sentimental mood。
どちらかというと古い年代のジャズが中心の会なので、こういう1970年代後半の、ガッツあるハードっぽいジャズがかかると、新鮮な感じもあり、楽しく聴けた。斜め前に座って、なにやらブライスのアルトに集中している様子のPapaさんに「こういうの好きでしょう・・・」と言うと「これは気に入りました!」と一言。Papaさんは、もちろんパーカー命のような方だが、デビッド・マレイなどちょっと新しい世代のサックス奏者も愛聴しているようだ。

そして大ラス~洗濯船Mさんが「では最後に1曲」と静かに言う。
「バ~バ・バ~ラ・バッバッ・バッバ・パ~」ああ・・・これは皆がよく知っているレコード・・・サラ・ヴォーンのemarcy盤だ!Mさんが、bluebackのジャケットがイーゼルに掲げられる。ねっとりした唄い回しのサラの声が、力感豊かに流れてくる。あのサラのアドリブ・フレーズを諳(そら)んじているらしいkonkenさんが、サラと一緒にスキャットしている(笑)酔っているので音程は覚束(おぼつか)ないが、気持ちは充分に判る(笑)
見事なまでにコントロールされたサラの声が厳(おごそ)かに流れつつ・・・2008年の白馬:杜の会は、ようやく終わろうとしているのだった。

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2007年10月21日 (日)

<ジャズ雑感 第21回> Wally Heiderというエンジニアのこと。

好きなライブ盤をいくつか挙げると・・・ハイダー録音ばかりじゃないか!

《追補》~コメントからの転載を追加しました。それから、この記事の最後に「ハイダー録音盤のリスト」を追加しました。今後も書き足します(10/28)


前々回のミッシェル・ルグラン記事の時だったか・・・「アット・シェリーズ・マンホール」での録音が素晴らしい、と書いた。特にレイ・ブラウンのベース音がよかったのだ。ブラウンという名手が弾くウッドベースの自然で豊かな音量が、膨らみすぎないギリギリのバランスで捉えられていたのだ。もう1枚~カル・ジェイダーの「アット・ブラック・ホーク」でも、やはりウッドベースがいい按配で録られているのを思い出し、そのクレジットを見ると・・・どちらのレコードもエンジニアはWally Heider(ワリー・ハイダー)という人だった。その記事へ頂いたSugarさんからのコメントによると、「ハイダー氏は、録音機材を積んだトレーラー(クルマ)を持っていて、当時の西海岸でのライブ録音の多くをてがけていた」ということだ。 (SugarさんのHPはこちら)(Sugarさんが以前にハイダー氏について書かれた記事はこちら)
その後、西海岸でのライブ盤を聴いていて「これは音がいいなあ・・・」と感じたら、必ずクレジットをチェックするようになった。そうして・・・いくつかの「ハイダー録音」を発見した。001

ところで「シェリーズ・マンホール」というと・・・皆さんもすぐに思い出すレコードがあると思う。僕もすぐにビル・エヴァンスのAt Shelly's Mannne-Holeを連想した。このレコード、僕は国内盤しか持っていない。ビクターが1977年に発売したSMJ-6197である。エヴァンスのレコードはたくさん聴いたが、正直に言うと、僕はチャック・イスラエルのベースがあまり好きではなかったので、特にこのライブ盤を愛聴してきたわけではなかった。ところが、このレコードの別テイク集「Time Remembered」~ビクターが1983年に発売した「ジャズの巨人 未発表録音集」というシリーズ。この盤はリアルタイムで入手していた~を、1年ほど前に再聴した時に・・・そのピアノの音とベースの音に「何か」を感じた。エヴァンスのやや線の細い音色と(もちろんシェリーズ・マンホールに備え付けのピアノは、特に良い楽器ではないと思う)、ピンと張り詰めたようなタッチ感~エヴァンスというピアニストの表現したい何か・・・そんなものを、感じ取れたように思ったのだ。ライブ録音にも関わらずだ。それから、チャック・イスラエルのウッドベース・・・これにはちょっと驚いた。彼のウッドベースは・・・ぐぐっと重心の低い深い音色だったのだ。重厚で品がある音色だった。僕があまり好みでなかったのは・・・たぶん、彼のタイム感みたいなもの~絶対に突っ込んでこないビート感・・・よく言えば落ち着いているし、逆に言うとどっしりとしすぎていて、ちょっともったりしてしまう~についてだったのかもしれない。イスラエルの良さというのは、この「深い音色」にあったのか・・・。僕のベースへの好みが変わってきたためか、あるいは、1977年当時の国内盤よりも1983年の未発表音源盤の音質の方が、うんと良かったためなのか(鮮度感にかなりの差がある!ピアノの音色は瑞々しいし、ベースの音色にもより切れが感じられる))・・・いずれにしても「At Shelly's Manne-Hole」では感じ取れなかった「イスラエルの美点」を、僕はようやく理解できたのだ。002
そして同時に、この「1963年のライブ録音(の元テープの状態)は相当にいいぞ・・・」とも直感したのだ。考えてみれば、1983年に発表した1963年の未発表音源というのは、いわばその1983年発売がオリジナルなわけで~もちろんこの日本盤の少し前に(あるいは同時発売かもしれない)アメリカでも2LP(シェリーズ・マンホールとの)として発売されたものが「USオリジナル」になるとは思うが~要は、その「元テープ」の管理状態が良好であったならば、こんな風に20年後の発売であっても、瑞々しさが失われることはないのだろう。しかしこうなると・・・1963年の米オリジナル「Shelly's Manne-Hole」の音は、こりゃあ凄いんだろうな・・・と思わざるを得ない。う~ん・・・欲しい(笑)4
そんな事を想いながら、僕は何気なくこの未発表音源盤の裏ジャケットを見た・・・recording engineer~Wally Heider
という文字が飛び込んできた! お おっ・・・これもハイダー録音だったのか! この小発見は、僕には実にうれしいことだった。
ビクター日本盤「At Shelly's Manne-Hole」に限れば、の裏ジャケのどこにもHeider氏のクレジットはない。
<米オリジナル盤をお持ちの方~ぜひその音質、裏ジャケのことなどお教え下さい>
《追補》この後、NOTさんから米オリジナル盤情報を頂きましたので、コメント欄から転載します(以下、斜体字)
SHELLY'S MANNE=HOLEのライブはグリーンのORPHEUMレーベルがオリジナルです。国内盤も持っていますので聴き比べたところオリジナルの方が鮮度が高く鮮やかに聴こえるのは当然として一番違うのはbassclefさんも指摘されているようにベースの音です。国内盤のベースはエコーがかかったようなブーン・ブーンという音なのに対しオリジナルのベースの音自体は国内盤よりやや小さいものの締りのあるブン・ブンといった音です~

さて、もう1枚。今朝のことだ。ウエスでも聴こうか・・・と取り出したのは「フル・ハウス」(riverside)だ。

このレコードは前から大好きだった。ウエスもグリフィンもケリーも、その演奏が素晴らしいのはもちろんだが、僕の中では「ウエスのギターの音が一番いい」レコードでもあったのだ。ウエスのギターの、太さ・甘さ・タッチの切れなどが実に聴きやすい温かい音色で録られているのだ。僕には、このウエスの音が一番、自然に聞こえる。
そんなことを想いながら・・・ライブ?~ツボハウス?~西海岸? ああ・・・これはひょっとすると・・・と裏ジャケットを見ると・・・そこには誇らしげに、RECORDING ENGINEER:WALLY HEIDER とクレジットされていたのだ!
嘘のようなホントの話しである(笑)003_2

<MW-2032~1970年頃に日本グラモフォンが発売していたリヴァーサイド「Jazz anthology」シリーズ~ラベルは茶色の環っか>

これまで「フル・ハウス」は何度も聴いてきたが、録音エンジニアまで意識したことはなかった。それに、この国内盤の裏ジャケットは写真コピーみたいで、だから活字のピントもやや甘くかなり読みにくい。相当に意識して読まなければ、気がつかなかっただろう。
それにしても、自分が「いい録音」と感じていたこの「フル・ハウス」も、ハイダー録音だったとは・・・これはもう偶然ではないだろう。まあ大げさに言ってますが、つまるところ・・・僕が「ハイダー録音」(その音質やバランス)を好きだ、というだけのことなのだろう(笑)
では、ハイダー録音の特徴とは何なのか? 音の説明は、いつでも難しいが、僕の感じる「ハイダー録音」の良さは・・・「どの楽器も自然で温かみのある音色で捉えられていること」それからやはり「ベース音の厚さ」だろうか。ライブ録音の場合、一般的には低域の薄いバランスになることも多いようで、だからドラムスばかり目立つちょっとやかましい感じになっていることもあるのだが、「ハイダー録音」だとそうではないのだ。ウッドベースの音がどっしりと入って、シンバルも強すぎない自然な音量に聞こえるので、(僕には)とても聴きやすいバランスになるのだ。「重心が低い」と言えるかもしれない。

「聴きやすいバランスのライブ録音」ということで・・・もう1枚、好きなレコードを思い出した。5_2
アート・ブレイキーの「スリー・ブラインド・マイス」(UA)だ。これまた日本盤です。キング発売の1500円盤シリーズのこの盤は、4~5年前に入手した。ちなみに、このキングのUAシリーズは、どれも音がいいように思う。

ウエイン・ショーター、フレディ・ハバード、カーティス・フラーの3管時代・・・1962年の録音なのだが、僕はこの3管になってからのブレイキーのブルーノート盤はほとんど持っていなかったので、このユナイト盤を新鮮な気持ちで聴くことができた。
A面1曲目の three blined mice はベースのイントロから始まる。
左チャンネルから、ジミー・メリットのベースが太くてしっかりとした音で流れてくる。ややあってシダー・ウオルトンのピアノが入り、次に右チャンネルからブレイキーのシンバルが聞こえてくる。曲の導入部分でもあり、ブレイキーは抑え目の音量でシンバルを叩いているようだ。そういえば、ブレイキーという人は意外に繊細なドラマーで、1曲の中でも場面によって音量を抑えたり強めたりしていることが多いのだ。「叩く」場面では、ちょっとくどいこともあるけど(笑)
そして、最初にこのレコードを聴いた時・・・ライブ盤だとは思わなかった。1曲目が終わって拍手が入り、ようやく「あれ?ライブだったのか」と判ったのだ。それくらい、しっかりとしたいい録音だと感じていたのだ。
このレコードで特に好きなのは、A面2曲目~blue moonである。全編、フレディ・ハバードをフューチャーした1曲である。裏ジャケのクレジットによると、アレンジはショーターだ。そういえばimpulse盤のBody & Soulのサウンドに似ている。ここでのハバードは素晴らしい。。ブルー・ムーンというシンプルな曲のメロディを、ちょっと崩しながら吹くだけなのだが、艶やかに鳴るトランペットの音色を、ゆったりと伸ばす音でじっくりと楽しませてくれる。僕はハバードをそれほど聴き込んではいないが、ハバードのこの「音色」は快感である。
そして、ハリウッドの「ルネサンス」というクラブで録音されたこのレコード・・・キング盤の裏ジャケにはしっかりとしたクレジットがあり、そこにはこう書かれていた。
LOCATION-THE RENAISSANCE,HOLLYWOOD
ENGINNEER-WALLY HEIDER

《追補》~みなさんから「ハイダー録音盤」のコメント情報を頂きました。貴重な情報ですので、それらのタイトルを以下にリストしました。今後も追加情報あれば、書き足していきます。

Michel Legrand/At Shelly's Manne-Hole(verve)
Cal Tjader/Saturday Night/Sunday Night At The Blackhawk(verve)
Bill Evans/Time Remembered(milestone)
Bill Evans/"Live" (verve)
Wes Montgomery/Full House(riverside)
Art Blakey/3 Blind Mice(united artists)
Milt Jackson Quintet featuring Ray Brown / That's The Way It Is (impulse)
MJQ / Live at The Lighthouse (atlantic)
Barry Harris/~ at the Jazz workshop(riverside)
Cannonball Adderley/~ at the Lighthouse(riverside)
Cannonball Adderley/Poll Winners(riverside)
Cannonball Adderley/JAZZ Workshop Revisited(riverside)
George Shearing/~ & the Montgomery Brothers(jazzland)
Oliver Nelson/Live from Los Angeles(impulse)
Archie Shepp/Live in San Francisco(impulse)
Don Randy/Last Night(verve)
Charles LLoyd/Forest Flower(atlantic) 
Charles LLoyd/Love-In(atlantic)
Charles LLoyd/Journey Within(atlantic)
Budyy Rich/Big Swing Face(pacific)
Terry Gibbs/Dream Band vol.4:Main Stem(contemporary)
Johnny Griffin/Do Nothing 'til You Hear From Me(riverside)
Carmen Mcrae/Live at Sugar Hill(time)
Dexter Gordon/Resurgence of Dexter Gordon(riverside)
Harold Land/West Coast Blues! (jazzland)
Ray Charles/ Live in Concert(ABC)
Sergio Mendes & Brasil '65 /「In Person At El MATADOR!」(Atlantic)

<以下はCD>
Dizzy Gillespie/Live In Stereo At Chester,PA.(jazz hour)
Frank Sinatra /Live! Seattle,Washington Concert(jazz hour)
Miles Davis/Live At the 1963 Monterey Jazz Festival(MJF)

以下は、ハイダー関わり盤?~
Carmen McRae/The Great American Songbook(Atlantic)
Larry Banker Quartette/Live At Shelly's Manne-Hole(vault)~このvault盤については、クレジット確認なしです。

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2007年7月20日 (金)

<ジャズ雑感 第19回>ミッシェル・ルグランのこと。

聴くたびに「ああ・・・いい曲だなあ」と、思わずつぶやいてしまう・・・そんな曲が誰の心にもあるものと思う。僕にも好きな曲がいっぱいある。そうして、そんな風に「好きだ」と感じたいくつかの曲が同じ作者によるものだった・・・と判った時のワクワク感。それはまるでいい鉱脈を発見したような気分で、そこら辺りを探っていけば、まだまだお宝がいっぱい潜んでいるぞ・・・という期待感が渦巻いて、なにやらうれしくなってしまうのだ。
2年ほど前だったか、この<夢レコ>でも取り上げた、マット・デニス(ロリンズのオン・インパルス記事)やジョニー・マンデル(ビル・パーキンス記事)という作曲者の存在に気付いた時は、正にそんな気分だった。

ジャズを長いこと聴いてきて・・・どうやら僕の好きな曲には、2つの流れがあるようだ。僕はモンクやランディ・ウエストン、それからフレディ・レッドの創る曲が好きである。それらは例えば・・・reflections や pretty strange、それからtime to smile であったりするのだが、あのちょっとゴツゴツしたような感じのメロディ・・・しかしメランコリックな雰囲気のある曲調・・・そんな感じの曲が、僕の好みになっているようだ。
そしてもうひとつの流れ・・・「ゴツゴツ曲」とは、だいぶん肌合いが違うのだが、例えばマット・デニスの創る everything happens to me というような曲にも大いに惹かれてしまうのだ。大げさな感じではなく、ふと自然に流れてきたかのような素敵なメロディとモダンなハーモニーを持つ洒落(しゃれ)た曲・・・そんな曲も好みのようだ。
僕はクラシックをほとんど聴かないが、いわゆるクラシックの名曲というものは、どれも素晴らしいと思う。チャイコフスキーの「花のワルツ」やドヴォルザークの「家路」などは大好きである。4~5年ほど前に「惑星」の中のメロディ(木星だったかな)をそのまま使ったポップ曲が流行ったが、あれはやはり・・・本当にいいメロディは、いつ誰が聴いても「いい!」と感じる~ということなのだろう。

そして今回は、そんな「いいメロディ」を創る作曲家・・・ミシェル・ルグランのことを書きたい。Dscn1729
そう・・・「シェルブールの雨傘」のルグランである。それから「風のささやき」のルグランである。こんな風に映画音楽のヒットメイカーというイメージが強いフランスの作曲家ではあるが、ジャズ好きは知っている。
ルグランが「ジャズ者」であるということを(笑)

ルグランが大ヒットメイカーになる前(1958年6月)に、アレンジャーとして「ジャズ」のレコードを吹き込んでいる。マイルスやコルトレーン、それからビル・エヴァンスらが参加しいる、あの有名なレコードだ。Dscn1731
Michel Legrand meets Milese Davis(mercury) このレコードは何度も日本でも再発されたはずで、このMeets Miles Davisは、「ルグラン・ジャズ」というタイトルでも出ていたと思う。この写真の盤は、1973年~1974年頃だったか・・・日本フォノグラムが発売した「直輸入盤」だ。右上に貼ってあるシールのセリフがおもしろい。<世界でも売っていない貴重な名盤です。第4期 米マーキュリー社 特別製作盤> このシリーズは、オリジナルの仕様と関係なく、全て「赤ラベル」だったと思う。たしか、クインシー・ジョーンズ記事の時に、この「赤ラベル盤」を載せたように記憶している。僕はルグランにはそれほどの興味もなかったが、「1958年のコルトレーンやビル・エヴァンスが聴ける」という理由で、この盤を入手した。
3つのセッションに分かれていて、どれもオーソドクスなアレンジの下、豪華なメンツのソロが楽しめる、とてもいい内容だと思う。但し、このレコード・・・ルグランはアレンジャー専任なので、ルグランの曲はひとつも聴けない。

わりと早い時期にジャズメンに取り上げられた、ルグランの曲をひとつ挙げよう。
Dscn1730 <once upon a summer time>~1962年のマイルスのCBS盤~Quiet Nights のA面2曲目に収録されている。あのチャーミングなメロディをギル・エヴァンスとマイルスが哀愁たっぷりに描き上げているが・・・このonce upon a summer time には・・・いまひとつ馴染めない。重く立ち込めたような雰囲気を醸し出すのはギル・エヴァンス得意のやり方だが、曲の中ほどで壮大に鳴るブラス群も唐突な感じだし、全体に重々しくなりすぎてしまい・・・私見では、このルグラン曲の持つ「可憐さ」みたいな雰囲気に欠けるように思う。
余談だが、この曲・・・有名なわりには、案外にインスト・ヴァージョンが少ないようなので、(マイルスが吹き込んだからかもしれない:笑) ヴォーカル・ヴァージョンを3つ、紹介しよう。Dscn1732
トニー・ベネットの I'll Be Around(columbia 1963年) 
ビル・エヴァンスが伴奏したモニカ・ゼッタランドのレコード~Waltz For Debby(phillips 1964年)にも入っていたはずだ。
それからもちろん、ブロッサム・ディアリーの once upon a summer time(verve 1958年) だ。
どれも、しっとりとした可憐な雰囲気がよく出ていて、いい出来だと思う。


ここで、ルグラン自身がピアノを弾くインスト盤をいくつか紹介したい。
Michel Legrand/At Shelly's Manne-Hole(verve) シェリーズ・マン・ホール1968年シェリーズ・マンホールでのライブ録音。

Dscn1725 このレコードは、ルグランのピアノ、レイ・ブラウンのベース、シェリーマンのドラムスというトリオでライブでのピアノトリオが楽しめるのだが・・・実は、ルグランのピアノはあまり印象に残らない(笑)
ルグランのピアノ・・・もちろん充分に巧い。巧いのだが、速いパッセージをわりとパラパラと弾くだけで、ぐぐ~っと突き詰めていくようなsomething に欠けているように思う。「軽い」と言ってもいいかもしれない。でもしかし、僕はこのレコードを好きなのである。
というのは、このレコードではなんといってもレイ・ブラウンが素晴らしいからなのである。レイ・ブラウンの演奏はいつでも凄いと思うが、このレコードでは、特に録音が素晴らしいのだ!engineerは Wally Heiderなる人である。
私見だが、このWally氏・・・ベース録音の名手に違いない。おそらくかなりのオンマイク・セッティングだろうが、弦を引っ張る・弾く時のタッチ感と、響いた後の音色の拡がり~このバランスが実に巧い具合なので、豊かな鳴りでありながらべーシストのタッチ感もよく出ている・・・そんな印象のベース音である。
verveの録音ディレクターは、一般には Val Valentine の場合が多いが ライブ録音では別の人が担当することあるようだ。そういえば「西海岸のライブ録音」で、僕が素晴らしいと思ったレコードをもう1枚、知っている。
Cal Tjader の Saturday Night/Sunday Night At The Blackhawk(verve)というレコードである。
このレコードにも、やはりベースが凄い音で入っている。べーシストは、Freddy Schreiberという他では聞いたことがない名だが、プレイ自体も巧いし、とにかくそのぶっといベース音に痺れたレコードである。
そしてこのAt The Blackhawk のengineerが、これまたWally Heiderとクレジットされているのだ! これは、もう偶然ではないだろう。ベース録音の名手(と、勝手に決め付けた:笑)であるこのWally氏の録音レコード・・・他にもご存知の方、ぜひ教えて下さい。
さて、演奏の方~B面1曲目の my funny valentine に僕はぶっ飛んだ。
ルグランのピアノとスキャットが中央やや左、そしてレイ・ブラウンの・・・本当に芯のある太っとい(ここは「ブットイ」と読んでください:笑)ベース音が、中央やや右寄りから弾き飛んでくる!
この有名な曲・・・ルグランはテーマから全てスキャットである。ルグランのスキャットは・・・う~ん・・・あまり聴かないようにしながら(笑) 右側のレイ・ブラウンのベースに集中する・・・凄い音圧である。一音一音を強くきっちりと弾き込みながら、なおかつルグラウンの繰り出すバロック風アドリブ・スキャットに、余裕の唄いっぷりで対抗してくる。この晩のブラウンはノリノリだったようで、どの曲でも安定感と適度なワイルドさを兼ね備えたバッキングとソロの連発で、どうにも素晴らしいウッドベースを聴かせてくれる。この写真でお判りのように、この「シェリーズマンホール」はバリバリの国内盤である。国内盤で、この音なら、オリジナルならさぞや・・・と想像せざるを得ない僕である(笑)
1968年盤ならラベルはMGM-Verveだろうし、それほどの貴重盤とは思えないのだが、なぜかあまり見かけないような気がする。
ああ・・・ルグランの曲について書いているうちに、レイ・ブラウンの話しになってしまった(笑)

ミシェル・ルグランは、やはりジャズ好きなのだろう。前述の「meets Miles Davis」だけでなく、その後にも、自分の曲をアレンジしてジャズの名手に吹かせたジャズのレコードがいくつかある。

Dscn1721 Bud Shank/Windmills Of Your Mind(world pacific ST20157) arranged by Michel Legrand

録音は・・・ジャケットにスティーブ・マックイーンの顔が入っていることから、たぶん1968~1969年くらいだと思う。ちなみにこのレコードのタイトル:Windmillos Of~は、邦題「風のささやき」で、映画「華麗なる賭け」に使われた曲だったはずだ。

さて・・・このレコードは好きな1枚なのだ。Dscn1722
バド・シャンクの艶やかなアルトの音色が、実にいい録音で入っている。曲によって入るストリングスには少々シラけるが、ブラス陣にもアーニー・ワッツやコンテ・カンドリなど名手を揃えており、そしてベースがレイ・ブラウン、ドラムスはシェリー・マンだ。アレンジは全てルグランだが、どの曲でもブラス群はわりと控えめに鳴っており、それを背景にしたシャンクのアルトにスポットが当たるので、気持ちのいいアルトの音色を堪能できる。 Dscn1723
<The Windmills Of Your Mind>や<Watch What Happens>
<I'll Wait For You>(シェルブールの雨傘)
それから・・・さきほどインスト・ヴァージョンが少ないと言ったばかりだが
<Once Upon A Summrtime>を、この盤でも演っていた。さすがに作曲者自身のアレンジはいい感じだ。バックの音を控えめにして、この曲のチャーミングなメロディを美しく映えるように工夫している。
それにしてもバド・シャンクは・・・音は豊かで太いしピッチも正確だし・・・何を吹いても、むちゃくちゃ巧いぞ。

もう1枚、アルトの名手~フィル・ウッズをフューチャーしたレコードがある。
ルグランはアルトが好きなのかな。Dscn1724
Michel Legrand/Live At Jimmy's(RCAビクター) 1973年録音~
このアルバムもやはりライブ録音である。ベースはロン・カーター、ギターにジョージ・デイヴィス、ドラムスはグラディ・テイト。サックスなしのカルテットでbrian's songやI'll wait for youを演っているが、やはりウッズの入った watch what happens や you must believe in spring の方が楽しめるようだ。you must~でルグランがエレピを弾いているのがちょっと残念だ。

もう1枚、CDを紹介しよう。Dscn1726こちらはだいぶ新しい1993年録音のCDである。
バド・シャンク、バディ・コレット、ビル・ワトラスらをフューチャーした中編成コンボで、ベースはブライアン・ブロンバーグ、ドラムスはピーター・アースキン。自作曲ばかりをコンパクトにアレンジしたすっきりした演奏ばかりで、しかしどの曲もメロディがいいので、楽しめる1枚だと思う。僕はCDを全編通して聴くことはめったにないのだが、このCDはたまにかけると・・・たいてい1枚通して聴いてしまう。

さて、ここでもう一度、ビル・エヴァンスを登場させないわけにはいかない。
思うに・・・エヴァンスは、ルグランの曲を相当に好きだったようだ。モニカ盤でも once upon a summer time をしっとりと実にいい感じで伴奏していたし、自分のリーダーアルバム~Montrex Ⅲ(fantasy 1975年)でも前述の<The Summer Knows>をベースのエディ・ゴメスとのデュオで演奏している。
この<The Summer Knows>は「おもいでの夏」という邦訳にもなっている。
この曲は・・・本当にルグランの傑作だ!
囁くように始まるメロディ・・・どことなく寂しいような雰囲気が漂う。海辺の空が暗い雲で覆われているような感じだ。そしてその同じメロディがしばし続くと・・・空気感が微妙に変化する。曇り空の切れ目から光りが差してきたような・・・まさにそんな感じなのだ。(実はこの時、全く巧妙にハーモニーが「短調から長調」へと、すり変わっているのだが、ルグランの凄いところは、そういう手法が技巧だけに終わっていないことだと思う)
そしてメロディは徐々に盛り上がる・・・とはいっても大げさに盛り上がるわけでもなく、抑制感をもって徐々に高まってくる・・・しかしその静けさの内側には、溢れんばかりの情熱が感じられる・・・そんな気配を感じる素晴らしいメロディの展開なのだ! 

そんなエヴァンスが、大好きだったであろうルグラン曲がある。
<You Must Believe In Spring>である。
これも寂しげな気配の曲で、なにか人生の黄昏(たそがれ)みたいな・・・しかしそこにはしみじみとした情感が溢れている・・・そんな雰囲気を感じてしまうのは僕だけだろうか。
エヴァンスは、リーダーアルバム~You Must Believe In Spring(warner 1977年)を残しているが、実はこの曲・・・1年ほど前にトニー・ベネットとの共演で吹き込んでいるのだ。たぶん・・・エヴァンスはこのルグラン曲を、ベネットとの吹き込みで、気に入ったのだろう。
Dscn1720

Tony Bennette & Bill Evans/Together Again(improv)1976年録音


このTogether Again・・・どの曲も素晴らしいが、特にこのYou Must Believe Springは絶品だと思う。このデュオは・・・心に沁みる。どちらかというと声を張り上げ歌いこむ・・・というイメージのベネットだが、このルグランの名曲では、意外なほど声量を抑えている。ぐぐ~っと力を込めて声を抑え込んだような~ただ力を抜くのではなく、全身全霊を持って声量をコントロールしているようなピアニシモ~そんな囁(ささや)くような歌い方で、この曲の繊細なメロディを浮き彫りにしている。そのベネットの気迫に、エヴァンスも一歩も引かない。短いがこれまた気迫のこもったソロでベネットに応える。だいぶ前の<夢レコ>にもチラッと書いたが、このエヴァンスとベネットのデュオは、本当に素晴らしい。一流の腕を持った2人の武士が、間合いを計りながら静かに対峙しているような・・・そんな風情を感じさせる格調の高いヴォーカル盤である。僕はこのレコードで「ヴォーカル」というものに開眼したとも言える。そのくらい「唄心」というものを感じるレコードだ。

ルグランのメロディには、いつもちょっと寂しげな感じと、しかしそこはかとなく流れる温かみ・・・そんな感じがあり、どの曲も情感に溢れている。ヨーロッパの香りというか・・・クラシック的ロマンティシズムというか・・・とにかく、メロディがキレイなのである。そしてそのメロディを支えるハーモニー(和音)の進行が、これまた見事なのである。
他にもルグラン曲にはいいものがあるので、以下に記事中の曲も含めて、曲名だけ挙げておく。
<what are you doing the rest of your life?>
<how do you keep the music playing?>
<Brian's song>
<once upon a summer time>
<the windmilles of your mind>(風のささやき)
<the summer knows>(おもいでの夏)
<you must believe in spring>
<I'll wait for you>(シェルブールの雨傘)

・・・今回、僕はたまたまミシェル・ルグランを挙げたが、「好きだ」と感じるメロディやハーモニーは、もちろん人それぞれだろうし、全くそれでいいのだと思う。
だから・・・世評だけに囚(とら)われるのではなく、自分自身が聴いてみて「好きだな」と感じとることのできた作曲家やミュージシャンが少しづつ増えていくこと・・・それは、音楽を聴いていく上でとても大きな楽しみなのだと、強く思うのだ。
そういえば・・・「シェリーズ・マンホール」で触れた、Wally Heiderという 録音engineer氏のことも、僕なりの「新発見」かもしれない。だから・・・ちょっとうれしい(笑)

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