Verve

2018年12月31日 (月)

<ジャケレコ 第4回>JAZZ AT THE PHILHARMONIC VOL. 17 (3LP BOXセット)

あっ・・・気がつけば、もう2018年も終わりの大晦日(おおみそか)になってるじゃないか。家でボオッ~としていても却って疲れてしまう・・・というわけで、久々にこの「夢見るレコード」に戻ってきました(笑)
相変わらず僕はレコードを聴いている。ジャズを中心に、それからクラシックを少し。とにかく・・・アナログレコードを聴き続けている。うん、厭きないのです、これが(笑) 
Jatp_vol17_006さて、今回の夢レコ・・・特定のミュージシャンやレーベルでまとめるものにはできそうにない。というのも、この数年・・・年末・年始には「夢レコ」を更新するのだ!ということが、最低限の目標になってしまっており、だから今回、まずは短いものでもいいから・・・という感じもあるからです。
考えてみれば・・・がんばって凝ったものを拵(こしら)えよう、とするあまり、なかなか記事を更新できなかったという面もあるので、今回は・・・そうだな、素直に「好きなレコード・面白いレコード」を紹介するだけでいいじゃないか! ということに相成りました(笑)
そんな時・・・ぱっと目についたのが僕のレコード棚の正面真ん中あたりに、レコードのジャケット面を見せている・・・うん、これだ!

 

Jatp_vol17_002 JAZZ AT THE PHILHARMONIC VOL.17 3枚組box(CLEF)
これ、好きだなあ・・・ジャケットのイラストはもちろん、中身の3枚のレコード、センターレーベルの色合い・・・何もかも好きだ(笑) そう・・・素直に好きなのである。
考えてみたら、僕がオリジナル盤というものに急速に嵌(はま)り出した頃、その一番の原動力となったのは・・・デビッド・ストーン・マーチンだった。そのジャケットの魅力だった。そうしてやはりJATP シリーズ(mercury、clef 10インチ盤)ストーン・マーチンのジャケットに、惚れ惚れするほど素晴しいものが多く、VOL.1からVOL.17までのシリーズでもあり・・・だから、それはもう「集めるしかなかった」のだ(笑)

 

Jatp_vol17_003 3枚組だから、1面から6面まである。そして言わずもがな・・・のことだが(笑) この時代の複数枚セットものは、1枚目に1面・2面、2枚目に3面・4面~とはなっていないのである。どういうことかと言うと・・・このセットの場合は、1枚目に1面と6面、2枚目に2面と5面、そして3枚目に3面と4面~という具合に数字の順番どおりには構成されていないのだ。こういうやり方ってのは、オートチェンジャー装置(何枚もの盤を連続して掛けることが可能な仕組み)への対応上、そうなっている・・・と我々は知ってはいるが、当時の米国にしても、家庭のステレオ装置が100%オートチェンジャー仕様だったとも思えないし、なんとなく・・・嫌だなあ(笑)

 

どのミュージシャンのどの演奏も楽しめるが、僕の好みは第2面である。
ノーマングランツ氏お得意のバラード・メドレーだが、メンツが凄い。選曲もいい。
ロイ・エルドリッジ  ~The Man I Love
ベン・ウエブスター ~Tenderly
ビル・ハリス     ~Imagination
フリップ・フィリップス~I’ll Never Be the Same
ディジー・ガレスピー~Stardust
グランツ氏の解説によると(下・写真を拡大すれば文字まで読めます)~それぞれのミュージシャンに、好きな曲とそのキーを選んでもらって・・・そしてそれは、それぞれのプレイヤーが、うまいこと(pretty)演奏して、それぞれの良さを発揮してもらうためだ・・・というようなことが書かれている。
≪On Side 2~中略~Also on this side is the Ballad Medley, which allowed each artist the selection of the tune and the key for the demonstration of his ability to play pretty≫ 
う~ん・・・やっぱり、いい演奏はいうものは、いい企画(意図)から生まれるのだな。

Jatp_vol17_004 皆が絶好調の時期のようで、どの曲でも各人の名人芸が楽しめる。僕は特にフリップ・フィリップスの1曲が好きである。スタジオ録音でも同じ曲を演奏してるので、フィリップス氏・・・この曲を好きなんだろう。
そのフィリップスのClef、Norgranの緒作については、だいぶ前に<夢レコ>にまとめてあるので、そちらもご参照ください。

このセッション・・・録音もなぜだか凄くいい感じで、1954年のある夜のライブ会場のざわめくような雰囲気も最高である。ちなみに箱の内側のライナーノートによれば録音場所は・・・Hartford Bushnell Memorial Auditorium(1954年)とのこと。

 

さて・・・この3枚組ボックス。ジャケットも中身も充分に良いものなのだが、もうひとつ、素晴しいオマケがある。それは・・・
≪PICTORIAL STUDY OF THE ARTISTS IN VOLUME 17≫ と題されている写真群である。このVOL.17録音に参加しているミュージシャンのモノクロ写真が12枚入っている。
Jatp_vol17_005 実は、このJATP VOL17・・・僕が最初に入手したのは「写真集・無し」のものだった。
というか・・・本来は写真集が付いていること自体を知らなかったのだ。後にだんだんと判ってきたのだが、どうやら、CLEFのJATP VOL 15、16、17 という箱ものセットには、販売時に写真集が付いていたようなのだ。
ところが如何(いかん)せん、これらは1950年代の古いものだから、壁に貼られて破損したり、散逸したり、あるいは写真だけ別保管したために紛失したり、などで・・・オークションに出品されているものには「写真集・無し」のものが多かったように思う。 
そして今回、紹介したこのピクトリアル(写真集)は、<封筒も付いた12枚の完品>である。
「無し」を入手した後、だいぶ経ってから ネットで「VOL.17 箱と写真集・完品(レコード3枚は無し)」の出品を見つけて・・・僕はどうしてもこの「写真集」が欲しくなり(笑) ちょっと無理して、それを入手したというものである。
・・・そんな訳で、この VOL.17・・・箱だけが2つ在るのです(笑)

 

 

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2009年5月 5日 (火)

<ジャズ雑感 第28回> ジェリー・マリガンという人 

相手の個性を際立たせ、自らも生かすカウンターの名手。

007その人のレコードを集めよう!と強く意識したわけでもないのに、知らぬ間にレコードが増えてしまう・・・そんなタイプのミュージシャンがいるかと思う。僕の場合だと、バド・シャンクやポール・デスモンド、それから、ジェリー・マリガン・・・マリガンこそ正にそういうタイプのミュージシャンだった。マリガンは、バリトンサックス奏者としては(例えば、ハリー・カーネイやペッパー・アダムスに比べれば)さらっとしたライトな味わいの音色で、さらっとしたフレーズを淡々と吹く。どちらかというと強い個性のジャズメンを好んで聴いてきた僕は、だから、マリガンのそういう淡白な持ち味に対し、なかなか自覚的に「惹かれる」というところまでは至らなかったようだ。しかし・・・集まるレコードの数というのは正直なものだ(笑)pacific,verve,emarcy,limelight もちろん全部ではないが、たいていのタイトルが集まっていたのだ。ある時、それを自覚した・・・オレはマリガンが好きなのかな?
僕のマリガン聴き込み(というほどのことはないのだが)は、もちろんチェット・ベイカーとの初期カルテットから始まり、次にマリガンのビッグバンド~コンサート・ジャズ・バンドが好きになった。そのConcert Jazz BandのVerveの諸作をひと通り聴いてしまい、次にlimelight盤もいくつかを聴いてみると、そこにはそれほどいいと感じるものがなく、その辺りまでくると・・・マリガン本人の個性というもの自体には、実はそれほど惹かれてないことに気が付いた。初期カルテットもよく聴いたが、ほとんどチェットの方を聴いていたのだ。そこで再び自問自答・・・オレはマリガンという人をホントに好きなのかな?(笑)
そう考えてみると・・・これこそがマリガンだあ!てな具合にバリサク奏者としてマリガンの持ち味を感じさせてくれるようなレコードが・・・作品数が多い割には案外に少ない。006
マリガンのバリサク・・・ああ、ひとつ、いいのがあったぞ。それは、強烈さとは無縁の、しかし不思議と何度でも聴きたくなる、穏やかな味わいのレコード・・・Jeru(columbia)だ。
このレコードは、一発で気に入った。一発というのは、本当にA面の最初の出だしから・・・という意味である。
A面1曲目は capriciousというボサノヴァ風の曲なのだが、これがもう・・・気持ちいいのである(笑)何がいいって・・・そのバリトンのライトな音色、ドラムスのデイブ・ベイリーの抑えた叩き方、トミー・フラナガンのピアノもジェントルでありながらピシッとリズムの効いたコンピング(和音の押え方)だ・・・そうしたもの全てが一体となって誠に「趣味のいい」サウンドを造り上げているのだ。考えてみれば、もともと「音」に理屈はないわけで、音楽というのは「音」そのものに快感がある・・・とも言えるわけで・・・だから「いいサウンド」を生み出すミュージシャン、あるいはバンドというものは、それだけでもう素晴らしいわけである。
それにしても、マリガンさん、なんでこういう作品~ワンホーンでじわじわ吹き込むような持ち味~をもう少し造らなかったのかな?
てなこと考えながら、ジャケット裏を見て驚いたのだが・・・produced by Jazztime Productionとなっており、Executive ProducerがなんとDave Baileyとなっているではないか!う~ん・・・ドラマーがプロデュースする~というのも珍しいだろうし、でもやっぱりミュージシャンでもあり、そうして趣味のいい人がプロデュースすると、こういう趣味のいいレコードができるのだろうなあ。008
もう1枚は・・・Gerry Mulligan Quartet(columbia)
このレコード、僕はCBSソニーから出た1300円盤で聴いていたのだが、オリジナル盤というものに惹かれるようになってから、米columbiaの<6ツ目CSステレオ盤>が好きになったので手に入れた。こちらも理屈ぬき・・・バンドのサウンドが心地よいのだ。columbiaレーベルのマリガン作品は少ないが、その数少ない2枚ともに僕が惹かれたのは・・・おそらく偶然ではない。
この2枚とも・・・相方がアート・ファーマーなのである。私見では、マリガンとファーマーの「音色のブレンド具合」がとてもいいのである(というか、それが僕の好みということなのだろう) マリガンのいい意味での軽さとファーマーの潤いのある音色が混じると、バンド全体のサウンドがしっとりした感じになるというか・・・いい感じの温かみが生まれるのだ。ついでに言うと、そのしっとり感と米columbiaレーベルの温かみのある音質~こちらの相性がとてもいいように思う。
この2枚に、もう1枚~night lights(philips)だ。これも素晴らしい。こちらには名手~ジム・ホールが入った分、またちょっと違う味わいがあるが、マリガンが「バンド全体でひとつのムードを造り出している」という点では似た質感の作品だと思う。これらの嬉しい例外の他には・・・僕にとって「マリガンの愛聴盤」と言えるものが、長いこと、なかったように思う。

余談だが、僕が好みでないブレンドがある。マリガンとはうんと古くから共演しているボブ・ブルックマイヤー・・・僕は彼が苦手なのである。それはたぶん・・・ブルックマイヤーが悪いわけではない(笑)あの楽器~ヴァルブ・トロンボーンが悪いのである。あのモゴモゴとした音色が・・・本能的にダメなのである。器楽の味わいとしての話しになるが、トロンボーンの「抜けの良さ」というのは本当に気持ちいい!それに比べ、あのヴァルブ・トロンボーン(トランペットと同じように3本のピストンで音程を造る型のトロンボーン)の音色というのは、宿命的に「抜け」が悪いように感じる。

しかし、このところ・・・マリガンのいくつかのレコード~
Gerry Mulligan Meets Johnny Hodges(Verve MGV-8367)
Gerry Mulligan Meets Ben Webster(Verve MGV-8343)
Getz Meets Mulligan in HI-FI(Verve MGV-8249)
を聴くに及んで、マリガンという人に対する僕の感じ方が、ちょっとづつ変わってきた。
ちょっと前の<夢レコ~クリフォード・ブラウン>で「音色そのものを味わいたい」というフレーズを記したが、マリガンの場合も、少ない編成でじっくりとバリトンサックスを吹くマリガンの音色・・・(僕にとっては)やはりこれが気持ちいいのである。
この3枚・・・言わばVerveのGerry Mulligan Meetsシリーズである。この1~2年で、これら3作を入手して聴いてみると・・・どれもが「愛聴盤」になってしまったのだ(笑)
ホッジス、ウエブスター、ゲッツ・・・それぞれに強烈な個性を持ったサックス奏者とマリガンがmeetsする~邂逅というのも大げさだし、シンプルに共演するという感じだろう~というノーマン・グランツの企画ものである。実は、僕はこの「meetsもの」を案外、低く見ていた。JATPでも後期にはマンネリ傾向があったと思うが、要するに大物同士を対決させてそのブロウ合戦を楽しむ・・・といういかにもお手軽な思いつきという感じで、まあだからこの手のレコードまで手が伸びる順番がこんなに遅くなったのだが(笑)

0022~3年前だったか、ホッジス盤を入手して聴いてみた。これが・・・対決とは程遠い実に和(なご)やかなムード溢れるいいセッションだったのだ。僕はこのレコードで、改めてジョニー・ホッジスという人の「芸」の細やかさを感じ取ることができた。そうしてその芸を引き出したのは・・・間違いなくジェリー・マリガンの絶妙な合わせなのである。さきほど「音色のブレンド」ということを書いたが、そのブレンドの具合の良さといったら・・・これはもう絶品なのである。
マリガンという人はアレンジャー出身ということもあるだろうが、いつも「サウンド全体」を意識しているように見える。というのは・・・例えば、このレコードA面1曲目(bunny)のテーマの部分~マリガンの鳴らすバリサク(バリトン・サックス)の音には、無自覚に思うがまま吹くというような気配はなく、その時の相手のフレーズ、その音量、その盛り上げ具合・・・そんな相手が造ろうとしている「流れ」に応じて、自分が吹くバリサクの「鳴り具合」をコントロールしているような感じを受ける。マリガンという人・・・だいたいがおそらく3~4割ほどの抑え目の音量で吹いているように聞こえる。それは淡々として迫力不足とも取れるのだが、こういうホッジスのような「強烈個性」の持ち主と相対する場合には、それが逆に効果的に映るのだ。それは相手を生かしつつ、自らも生かす~という、不思議だがそういう感じなのだ。
Meets Hodgesには、いいバラードが入っている。what the rushという曲なのだが、これはもちろんホッジスの見せ場として選んだようで、だから、この曲では、マリガンはただの一音も吹かない。そういうセンスも素晴らしいじゃないか。
僕が思うホッジスの名人芸というのは、メロディの音程のごく微妙なピッチを(音程~この場合、半音のまた半分くらいの量)ベンドさせるような技~たぶん絶妙なリップコントロール(唇の締め具合)のことなのだが、全体には静謐(せいひつ)で淡々としたこのバラードの中で、その決め技が見事な隠し味になっているように思う。
この地味なバラードの作者が、なんとジェリー・マリガン、その人なのである!
(クレジットによると、Mulligan-Holidayとなっているので、ひょっとしたら、ビリー・ホリデーも唄っているのかもしれない)*追記~この「ホリデー」については、NOTさんから正確な情報を頂きました。NOTさんの5/6付コメントをご覧ください)

004 そして、ベン・ウエブスター盤~ウエブスターの力感溢れる濃厚なテナーの音色。これは・・・濃い!(笑)
それはまるで太いチューブから練り出されてくる濃厚な色の絵の具のようでもあり、それは正しく「強烈な個性」と言っていいかと思う。そのウエブスターとマリガンの対比が、これまた実にいい按配なのだ!
スタンダード曲ではchelsea bridgeとsunday。マリガンという人は、バラードを大好きなようで、ホッジス盤と同じように、こちらのウエブスター盤にも自作バラードを忍び込ませている。tell me whenという曲だ。これがまたなかなかいいメロディで、ウエブスターがそれを味わい深く吹いている。
マリガンはウエブスターの吹くメロディに、時々、優しく寄り添うように合わせフレーズを入れてくる。それは伴奏としてのフレーズであり、決して自らを主張してくるような感じではない。この1曲全体を仕上げたい・・・というマリガンの気持ちのこもった「合わせ」のように思えるのだ。
chelsea bridgeでは、ウエブスターの吹くテーマのバックで、はっきりと「バリトンサックスで伴奏」している(笑)その伴奏のやり方がとてもユニークな吹き方で~ピアノでいうトリルのように高い音と低い音を素早く交互に繰り返す技~それはユニークなだけでなく、見事に効果的なのだ。こんな技を静かなバラードのバックにさりげなく差し込んでくるマリガンという人も、そうとうな曲者なんだろうな(笑)

003 それからゲッツ盤~実はこの3枚の中では最も面白くない・・・と思っている。ゲッツのテナーとマリガンのバリサク・・・一見、最も相性が良さそうじゃないか。でも・・・「音色のブレンド」(もちろん僕の好みの)という観点から見ると・・・案外に面白くないのだ。私見だが、ゲッツとマリガンは~楽器は違うしフレーズも違うのだが~音色の質感が・・・よく似ているのだ。
一度、口の中に溜めておいた息を小出しにするような吹き方(と推測している)で、音色がちょっとくぐもった感じや、サブトーンの割合・かすれ具合などの質感が近いように思う。2人の質感が似ているためか・・・ホッジス、ウエブスターとの共演盤のような「コントラストの妙」が、やや弱いように思える。

Mg_v8348_j_2《追記1~みなさんもコメントで触れてましたが、この「ゲッツとマリガン」A面の3曲~
let's fall in love
anything goes
too close to comfort

は「ゲッツ=バリトン、マリガン=テナー」と、お互いの本職の楽器を入れ替えて吹いてます。そうしてYoさんがコメントで紹介してくれた Stan Getz And Gerry Mulligan, Stan Getz And The Oscar Peterson TrioGetz_mulligan_2tunes_2(MGV8348) というレコード・・・そちらには本職楽器での2曲~
Scrapple From The Apple
I Didn't Know What Time It Was
が収録されているのに、ジャケット写真は「楽器入れ替え」とのこと。ゲッツの表情も面白いので、ご覧ください。 そして、この8348番に収録の2曲、やはり本職だけあって出来がいい。(この2枚の写真提供~Yoさん)》

《追記2~この8249番:Getz Meets Mulligan~すでにNOTさんがコメント(5/7付け)してくれたように、2種のジャケットがあります。Mulligan_meets_getz_2nd
写真自体は同じですが、「1色」と「2色」の2種です。参考に「2色刷りのジャケット」写真も載せておきます。(以下は「2色ジャケ」の方が再発としての話し)
なぜタイトルを「マリガン主役」のMulligan Meets Getzに変えたのか? 
なぜジャケットのデザインを変えたのか?
この辺りのことについては、マリガン好きであるYoさんも大いに興味を持ったようだ。楽器入れ替えの出来映えへの評価とか、また入れ替えテイクがA面3曲全部ではなく、too close to comfortだけかも?という説もあるらしく・・・この「ゲッツmeetsマリガン」にはなかなか謎が多い(笑)楽器入れ替えの真実については~それぞれがA面を聴き込んでみての連日(笑)のメールやりとりの結果・・・2人とも「やっぱりA面の3曲とも入れ替えてるね」それから、その出来映えについても「やっぱり本職でないとアカンね(笑)」という至極当たり前の結論に落ち着きました。楽器入れ替え~その聴き分けのポイントとして・・・Yoさんはまず「バリトン」に注目したようだ。Yoさんは、おそらくマリガンを聴き込んでいるので、マリガン独特のあの「柔らかさ」とは違う何かを鋭く感じ取ったのだろう。
《バリトンでマリガンならバフッと柔らかく出るところがブッと強めに出たりするのでゲッツかな》
僕の場合は、マリガンをそれほど聴き込んでいないのと、バリトンという楽器の特徴ある音色そのものがどうやら脳髄に強く印象付けられてしまっているようなので、「バリトン」という楽器での音色の違いにはなかなか注目が行かなかった。それでもマリガンの「バフッと柔らかく」という感じはよく判るので、この場合、Yoさんが言うところの「ブッと強め」というのは、たぶんマイナス要素だろう。
その辺りを意識してバリトンのソロを聴いてみると・・・なるほど、Yoさんが言うのはこういうことかな・・・と思える場面がいくつかあった。《Yoさん仰るように「バリトンの一番低い方の音~これが・・・さすがにゲッツでも鳴ってない(笑) ブワッ!と吹く時、ちょっと割れたような、まあどちらかというとガサツな汚い音になってるみたいですね。要は「鳴ってない」のかな》
そんなわけで、僕の方は「テナー」に注目した方が判りやすい。A面3曲のテナーソロを聴くと・・・音色自体もちょっと堅めで詰まったような感じだし、高音域のフレーズではピッチ(音程)がけっこう悪いように聞こえる。そして決定的なのは・・・テナーのソロにイマひとつ冴えがないことだ。こんなフレーズに閃きのないテナーが・・・ゲッツのわけがない(笑)
そんなわけで、ここしばらく、Yoさんはマリガンをいろいろ聴いたようだ。そうしてそれは、僕の方も同様である(笑)
ジャケットのデザイン・タイトル変更については・・・以下、もちろん推測です。この3枚の番号はこうなっている。
Gerry Mulligan Meets Johnny Hodges(Verve MGV-8367)
Gerry Mulligan Meets Ben Webster(Verve MGV-8343)
Getz Meets Mulligan in HI-FI(Verve MGV-8249)
つまり発売は・・・ゲッツ~ウエブスター~ホッジスの順なので・・・そこから考えると、最初のゲッツ盤の時点では、まだ「マリガン主役のmeetsシリーズ」という概念はなくて、その後の2枚がYoさんも仰るように出来もよかったので、(ホッジス盤の後)、ゲッツ盤を再発する折に・・・グランツが「マリガンmeets シリーズ」として考えて、ジャケ・タイトルを変更した~という流れかな、と思います。
グランツがそう考え直したのは・・・・NOTさんも?付きでコメントされたように、マリガンお得意のクレームがあったのかもしれません(笑) いや、それよりもグランツがマリガンに気を使いつつ、「Mulligan meets シリーズ」にした方が、より売れる・・・と判断したのかな》


コントラスト・・・という観点で実はもう1枚、興味深いレコードがある。ご存知・・・Mulligan Meets Monk(riverside)である。モンクのこととなると・・黙っちゃおれない僕だけど、今回は「バリトンと他のサックス奏者との音色」がテーマでもあるので・・・そのモンク盤のことはまたいずれ取り上げたいと思います(笑)
ウエブスター盤の場面で「合わせフレーズ」という言葉を使ったわけだが、この3枚のMeetsシリーズを聴いてからは、マリガンというと・・・反射的に「カウンター」という言葉が浮かんでくるようになってしまった。この言葉はボクシングのカウンターと同じ語源のはずだが、ジャズの世界では、他の誰かが吹く主メロディに絡むように別のメロディ(というかフレーズ)を吹く場面のことを「カウンター的に」とか「対位法的に」という意味で使っていると思う。
そうして、「カウンター」といえば「あしたのジョー」だ(笑) 相手がパンチ(例えば左ストレート)を繰り出してきたその瞬間、こちらは右ストレートを相手の左ストレートにかぶせるように打ち込む必殺のパンチである。
ただし・・・マリガンの「カウンター」は、ボクシングのカウンターとは意味(効果)が決定的に違う。ボクシングの「カウンター」は相手を倒すためのものだが、マリガンの繰り出すカウンター(的メロディ)は、相手を生かすためのものなのである!
それは相手を生かしつつ、自らも生かす~という「優しいカウンター」・・・なにかしら東洋の哲学のような雰囲気さえ漂ってくるではないか(笑)
マリガンという人の味わい・・・それは、和紙に沁み込んだ濃い絵の具が、自然にじわ~っと拡がってくるような、そんな優しい表れ方のようでもあり・・・そうしてそれこそが、マリガンという人の真の個性なのかもしれない。

ジャズはまだまだ面白い。

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2008年10月10日 (金)

<ジャズ雑感 第26回>パーカー再び!

音色・・・その音圧感、存在感からくる説得力みたいなもの。

ジャズ聴きも長くなると、こんなことを言ったりする・・・「この人のサックスは重いね」 「う~ん・・・なんか軽いなあ」
楽器から発された音を聴いた時、聴き手はなぜ「重い」あるいは「軽い」と感じるのか? いや、感じられるのか? 
それはおそらく・・・そのミュージシャンの「音色」からだけでなく、その「ビート感」から生じてくるのでは・・・と考えている。ここでいう「ビート感」とは・・・(僕の解釈では)「リズムに対してのノリ方」という意味合いである。

004April In Paris(Verve)MGV-8004 ~I'll Remember Aprilが好きだ。パーカーのなにやら白痴美的な音色に、しみじみした情感を感じる》

話しを判りやすくしよう。同じ楽器~例えば、アルトサックス・・・チャーリー・パーカーとリッチー・コールを比べてみると、どうだろうか?
どう考えても(聴いても)・・・やはり、パーカーの方が「重い」だろう。もちろんそれは純粋に感覚的なものである。だがしかし、そういう感じ方~「パーカーは重くて、コールは軽い」~は、ある程度ジャズを聴き込んだ人には、無理なく共通した感覚だとも思う。
ひょっとしたら、リッチー・コールという人のイメージ(ちょっとしたお笑い的なノリを見せるタイプ)が、「音も軽い」と感じさせてしまう部分も多少はあるかもしれないが、2人の「音」には、やはり相当な違いがあることは確かだろう。コールがパーカーと同じようなフレーズを楽々と吹いたとしても、当たり前の話しだが、受ける肌合い・質感・・・それはだいぶ違う。では、いったい何が違うのだろうか?
どうやら・・・この辺りの話しを突き詰めていけば・・・今回、僕が言わんとする「音色とビート感~それら全体から醸し出されるグルーヴ感」みたいなことの核心に、少しでも近づけるかもしれない。
この辺の話は、もちろん「好み」とは別である。だから「オレは重々しいパーカーより、軽やかなコールの方が好きだ」という方が存在していても何の不思議もない。ただ、ジャズを好きになって、そしてアルトやテナー~いろいろなサックス吹きのレコードを聴いてくると・・・どうしても、チャーリー・パーカーという人の凄さ~そうして、そういうミュージシャンがあの時代に存在していたということの凄さ~みたいなものを感じずにはいられない。ジャズ好きなら、たぶん・・・そうなるしかないのだ(笑)

皆がパーカーは凄い、凄いというが、いったい何が凄いのか? と、そう思ってる方も、案外に多いのでは・・・と推測している。おそらく・・・パーカーって、何やらパラパラ吹いているだけでよう判らん・・・音も悪いし(笑)という感じだと思う(笑) 好きで聴いているジャズ(音楽)なのだから、自分の感性にズバッと入り込んで来ないタイプのジャズを無理して聴くことはない・・・とも思う。しかし、パーカーだけはある意味、理屈抜きで「感じとって」ほしいという、少々、啓蒙的な気持ちもないわけではないので・・・僕は今こうして、とても難しいことにチャレンジしようとしているのである(笑)
「パーカーの凄さ」をヒトコトで言うと・・・「音色の凄さ」なのである!あの「太くて重い音色」。そして~なにやら白日夢を見ているかのような呆(ほう)けたような(これは僕の思い込みでしょう:笑)しかし~「力感のある音色」・・・この辺のことは、<夢レコ>の前の記事「エリック・ドルフィという人」にも少し記したかもしれないが、重ねて言えば・・・ジャズという世界では、こうしたある種の濃厚さは絶対的な勲章なのだ。

当たり前の話しだが、楽器を始めて最初の内は、たぶん音はヘロヘロである(笑)(管楽器の場合)ブレスや唇のコントロールができないから、安定した音量が出ないし、音程も定まらない。つまり楽器の初心者の音は、誰が聴いても「ヘタ」なのである(笑)しかしその初心者も、徐々に「巧く」なってくる。ある程度の音量も出てくるようになって、ピッチ(音程)もそこそこ安定してくる。
そして何よりも運指がスムースになり、ちょっと難しいフレーズもこなせるようになる。こうなると、嬉しい(笑) 管楽器というのは・・・(たぶん)曲のテーマを吹くこと自体が楽しい楽器なのである(もちろんアドリブも含めてだが)だから、どんどんと曲をこなしていく。速いテンポも軽々とこなせるようになる。とても巧い。そしてそういう「巧さ」にまで達したミュージシャンは、器楽の高みを目指す者として素晴らしいと思う。
しかし、そうしたタイプにわりとあるのだが、~テーマやアドリブをいくら「巧く」吹きこなしても、なぜだかこちらの心に訴えるものが薄い。そうして全体から受ける印象が、妙に「軽い」のである。
あえて分析的に言えば・・・おそらく「音色に(自覚的な)個性がない」「フレーズが方法論的」そして「ビートにタメがない」~そんなタイプが多くなっているように思う。50年代のジャズマンのそれぞれに個性のある吹きっぷりを知ってしまった身としては・・・そんなタイプのジャズ(ミュージシャン)には、どうしてもある種の「物足りなさ」を感じてしまうようだ。
そうしてそんなある時、パーカーを聴くと・・・これはもうぶっ飛ぶのである(笑)
パーカーは・・・まず音が大きい。バリバリと大きく響く。ひょっとしたらアルトのあの拡がったホーン全体がビリビリと歪んでいるのでは・・・と思うほど鳴っている・・・ように聞こえる。それから「ノリ」がまた凄い。判りやすく言えば「タメ」がある・・・ということだと思うのだが、その「タメ」とは具体的にはどういうことなのだろうか。それを僕なりに解釈すれば・・・例えば8分音符で長いフレーズを吹く時なども、たっぷりとテヌートの効かせて(一音一音を粘るように伸ばす感じのこと)うねるようにその長いフレーズを吹き倒す。だから「タメ」があり、どんなフレーズにも粘りながらキレがある・・・そんな感じなのだ。そうしてこれこそが・・・「ジャズ(っぽさ)の秘密」なのだと、僕は信じている。そんな吹き方をする(しようとしている)パーカーと、巧いだけのアルト(速いテンポも軽々とこなせる~テーマやアドリブをいくら「巧く」吹きこなしても~全体から受ける印象が、妙に「軽い」)とでは、その根底のところで大きな違いがあるのだ。
パーカーの凄さは「粘る8分音符」だけではない。アドリブが乗ってくると、時にパーカーが見せるあの16分音符! あの「倍テン」こそ、それまではおそらく誰もやらなかった・・・いや、やろうとしなかったパーカー独特のアドリブだと思う。そしてその「閃き」に満ちた16分音符でさえ・・・充分に重い(笑)
ハード・バップ調4ビートにおけるジャズのアドリブは、普通の場合、8分音符中心になるので、16分音符でのアドリブ展開になると、それを「倍テン」と呼んだりする。1小節4拍に乗っかって「パッパ・パッパ・パーラ・パーラ」と吹くのが普通の8分音符フレーズだとすると、パーカーは時にこう吹く~「パラパラ・パラパラ・パラパラ・パララ~」と。しかもそのフレーズの「閃き」ときたら・・・いったいパーカーという人のアタマの中はどうなってるんだ~!(笑)果たしてどんな具合で、彼のアタマにあんな宇宙的とも言えるフレーズが(それまでのジャズ言語には存在しなかった)浮かんできたのか? やはり・・・パーカーは凄いのだ。

そういえば、今回の記事~冒頭に僕はこんなことを書いた。
(音色が重いか軽いか・・・それは)《そのミュージシャンの「音色」からだけでなく、その「ビート感」から生じてくるのでは・・・と考えている。ここでいう「ビート感」とは・・・(僕の解釈では)「リズムに対してのノリ方」という意味合いである》
パーカーを聴いて感じる、その「重さ」の秘密。僕なりの答えは・・・こうだ。
《パーカーはその音色も重いが、それ以上に、「タメ」(テヌート)を効かした粘りのあるフレーズと、それら全体から表出されるビート感そのものが重い》 
ごくごく単純に考えれば~パーカーはおそらく・・・たくさん息を吸い込み、それを強く長く吹き込みつつ・・・鋭いタンギングと柔軟なフィンガリングも交えつつ・・・閃(ひらめ)いたフレーズを自由自在に表出している~そんな風に言えるのかもしれないが・・・それがいかに大変なことか(笑)
パーカーが死んでから50年以上も経っているわけだが、パーカーのあの「太くて重くて速くて、しかもキレがある」感じに、最も迫ったのは・・・僕は、ドルフィだけだったと思う。

そんな風に、太くて重い音色で吹きまくるパーカー・・・それは聴く側にとっても、ある種の快感なのである。一番上の写真~April In Parisの紹介で「白痴美的」という表現をしたが、パーカーのちょっと切羽詰ったような濃厚なアルト音を聴くと、何やらこちらの脳髄が麻痺してくるような・・・そんな種類の快感であるような気もする。そんなことを含めて・・・パーカーの凄さは「器楽的な快感」をも含んだ凄さであり、だから・・・ひょっとしたら、楽器(器楽)そのものに興味を持っている方の方が、なんというか・・・直感的に、いや、肉体的にその凄さを感じ取りやすいかもしれない。
そうしてそんなパーカーの「純・器楽的」とも言える特質のことも考え合わせれば、あなたの「好み」のアンテナに、チャーリー・パーカーという人が引っかかるかとは限らないことも、充分に理解はできる。
でもしかし・・・敢えて啓蒙的に言わせてもらえば、パーカーだけはちょっとガマンしても聴いてほしい(笑)
LPでもCDでもなんでもいいので、ちょっとでも「いいな」と感じたテーマの曲を~それは「スクラップル・フロム・ジ・アップル」や「コンファメイション」、あるいはスタンダードソングの「アイ・リメンバー・エイプリル」や「ゼアリズ・ア・スモールホテル」かもしれない~何回か聴いてほしい。
それからその同じ曲の入った別の音源があれば、それらもぜひ聴いてみてほしいと思うのだ。003
いくつかのパーカーのレコードを紹介しよう。
Night and Day(Verve)MGV-8003~写真左。この黒trumpeterラベルは2ndで、12インチのオリジナルはClef 5003。残念である(笑)

April In Paris(Verve)MGV-8004~写真、一番上の右。

Midnight Jazz at Carnegie Hall(Verve)MGV-8189-2(2LP)~写真左下。この2枚組の音は凄い。

僕はパーカーのストリングスもの・ビッグバンドものを嫌いではないので、自然にこの辺が集まった(笑)どれも12インチ盤のトランペッターのセンターラベルである。日本盤「ウイズ・ストリングス」は、おそらくこの3枚からの編集ものなので、同じ「ストリングスもの」でも、いろんなセッションが混じっているようだ。そんなことよりも僕が驚いたのは、音の違いである。「音の鮮度感」が、国内盤やCDとはだいぶ違ったのである。005
パッと聴いて・・・黒トランペット盤には、パーカーの音色に「輝き」があるのだ。アルトの音色~その張り具合、ギュッと締まった響き具合。ストリングスの音の間を縫うように、倍テンで吹き抜けるパーカー・・・その音色が圧倒的に「重い」のである。
「重い」というのは・・・凡百のアルト奏者に比べて相対的に「重い」のはもちろんなのだが・・・僕が思うに、パーカーの「重さ」というのは、ある種の「絶対」かもしれない。006
これらのレコードの音を聴いて体感できるサックスの音色についての違い・・・それは国内盤とは確かに違うと思う。
ただ、僕は「国内盤ではパーカーは判らない」などとは言いたくはない。実際、僕は国内盤やCDでパーカーを聴いてきて、理解して(そのつもりだが:笑)そうして、もちろんパーカーを好きになってきたのだから。008
ただ僕自身のそうした経験の後でも(いや、後だからこそ・・・かも)これらのVerve12インチ盤を聴いて「改めてパーカーの音色の凄さに驚いた」ということも確かにあるのだ。
ジャズを聴き込んだ方で、パーカーは今ひとつ判らない・・・と感じている方が、これらの音盤を聴いて、そうした「音色の凄さ」を体感することになれば・・・あるいは一気に「パーカー開眼」となるかもしれない。
ただ、何をどう言っても・・・最後には「パーカーはパーカーだ」としか言いようがない・・・そんな感じの「絶対パーカー論」になってしまいそうだ(笑)
こういう話しになると・・・言葉は本当に無力だ(笑)ええい!もうめんどくさい!とにもかくにも、パーカーのあの音を聴いておくれ!パーカーという人については・・・それが僕の本音なのかもしれない(笑)
しかし、ここは《夢見るレコード》である。その無力な言葉であっても、そこにも拘りたい(笑)だから・・・実際に僕がパーカーのどういう部分に惹かれているのか~を少し話したい。
さきほど挙げた3枚のVerve盤は12インチとしてはオリジナルだが、その前に、本当のオリジナル音源として、10インチ盤があり、そしてSP盤があったわけで、パーカーの音そのものの鮮度感の違いを想うと・・・それらに拘りたい気持ちもあるのだが、誰もが10インチ盤(ダイアル10インチ盤については、以前にPapaさんの手持ちを聴かせていただいた。やはりひと味違うアルトの音色、その存在感だった)やSP盤まで入手できるわけではない。
だが、そのSP盤の良さ~音色の太さ・力強さみたいな感じ~を味わえる(想像し得る)国内盤レコードが実はあったのだ。

前回の「レッド・ミッチェル」でも触れたが、8月の終わりに3人会をやった。yositakaさんとsigeさんとは1975年からの付き合いだ。sigeさんとはジャズ研仲間で、彼はアルト、僕はベースで・・・2人とも我の強さでは良い勝負だったが、ここに2年先輩のドラム~yutaka氏が加わって、そうなるとなかなか面白いサックストリオになり・・・あの頃、僕らはジャズ研で本当に燃えていた(笑)
そうして、sigeさんは、高校でのブラスバンドの指導やエモリ氏らとのバンド活動も含めて、今でも管楽器を吹いている。
ここにsigeさんからの手紙がある。彼は何かの折には、メールではなく、筆書きの封書を送ってくるのだ。3人会の時、僕の古い機械で掛けたいくつかの古いレコード、それから自分が持ってきたパーカーの「ダイレクト・フロム・SP」の2枚(savoy編vol.1&2)などを、食い入るように聴いていた・・・それらの印象を書いてきてくれた手紙である。何事に付け思い込みの深いsigeさんならではの「熱さ」もあったりしますが~その点、僕も似たようなところはある(笑)~同時にまた、管楽器全般に造詣の深い、そして今でも楽器に触っているsigeさんならではの、唸ってしまうような表現もあったので・・・その一節をここで紹介したい。
《レコードによっては、奏者の管の鳴り具合、弦と胴の鳴り具合、場合によっては、吐く息、継ぐ息のリアリティさも体感できました。レコード総体に込められたジャズの空気と、大げさな言い方ですが、ジャズマンの体の中の瞬間的な構造や思惑さえ体感できたような思いになりました》

この「SP起こし盤」~パーカーの「ダイレクト・フロム・SP」の2枚(savoy編vol.1&2)・・・確かにひと味違う。011まず、パーカーのアルトの音色が太い!音色そのものが分厚い感じか。だから・・・パーカーという人が元々「大きな音」で吹いていた、その音圧感がリアルに飛び出してくる。この「大きい音」という感じられる~ということは、再生音楽を聴く場合、ある意味、なかなか重要な要素だと僕は思う。録音バランスで調整した「大きい・小さい」ではなく、生の人間が吹いたその時、その空気中に拡がった音・・・そこにはその「ミュージシャンの真実」が響いているわけで、その「大きさ感覚」は・・・やはり、その真実の大事な一端だと思う。この「SP盤起こし」盤・・・アルトだけでなく他の楽器も、なにかこう「音が近い」感じで、強いて言えば、ブルーノートのヴァン・ゲルダー録音のような味わいかな。全体として、とにかく「強烈」・・・そのひと言である。
(この「厚い」「太い」という感覚は、savoy編~「サヴォイ・レコーディングス/マスターテイクス」(Arista/フォノグラム2LP)と、同じテイクを聴き比べした際の、僕の個人的印象です。

ダイアル音源については、以前の夢レコでも少し触れたが、パーカーのダイアル音源を耳にすることができる唯一のレコードが「バード・シンボルズ」だった時代が長かったと認識している。そしてその「バード・シンボルズ」の音ときたら・・・(笑)
「最悪」とはあの音のことかもしれない(笑) 僕は「パーカーは判らない」という方のほとんどは、あの「シンボルズ」の最悪音にやられたのでは・・・と邪推している。あれは、それくらいショボイ音だった。だから・・・英spotlightの「オン・ダイアル」と、その後に出た国内盤でも充分に「いい音」だったのです(笑)
この「ダイアル音源」関わりで、ひとつ面白い日本盤を紹介しよう。2008年3月にパーカーのオリジナル盤(Dialの10インチ盤)を聴く機会があった。その独特の鮮度感・生々しさに圧倒された僕は、そうした音色からパーカーの本当の凄さをより感じ取れたような気がした。アタマの中がしばらく「パーカー」で一杯になっていたその頃、たまたま地元の中古レコード店で「おや?」と思うレコードを発見した。それが「チャーリー・パーカー・オールスター・セクステット(ビクターRET-5021)である。 010
これ、ペラジャケの具合からみて、たぶん1964~1965年頃の日本盤だと思うのだが、マイルス、JJ.ジョンソンを含む6重奏団と収録曲目から「ダイアル音源」であることはすぐに判ったのだが、ジャケット右上のROOST SERIESが腑に落ちない。ROOST(ROULETTE)から、パーカーのダイアル音源のLPが出ていたのだろうか? どうも記憶にない。しかしこの日本ビクター盤のラベルは、ちゃんとした米Roost仕様じゃないか。そんな興味から、また日本盤ペラジャケにも惹かれるものがあり、とりあえず購入したのだが・・・いやあ、音を聴いて驚いた!パーカーの音が太いのである。鮮度感も「バードシンボルズ」とは比べ物にならない。spotlight盤よりも明らかにいい。日本盤でも時代が若い分だけ、鮮度の高いマスターやスタンパーに当たっていたのかもしれない。もう一度、じっくりとセンターラベル廻りを見てみると・・・ランオフ部分の刻印が目に飛び込んできた。
《Roost 2210A,2210B》となっているじゃないか!これは、Roostのスタンパーを使っていたことになる。いろいろ調べてみると・・・ありました!Roostのチャーリー・パーカー盤が。それはCharlie Parker/All Star Sextet(roost 2210)というやつで、そういえば・・・ガハッと笑っているパーカーのジャケット写真に見覚えがあった。あれが・・・ダイアル音源集だったのか。そしてその米Roost盤を受けての日本盤が、このビクター盤だったのだ。おそらく「ダイアル音源」が英spotlightから復刻されるまでは、「バード・シンボルズ」と、この「オールスター・セクステット」だけが市販されていたパーカーのダイアル音源だったのだろう。僕はこの日本盤の「パーカーの太い音圧感を感じる音色」で聴いた、パーカーのバラードの良さを改めて見直したのだ。特にDon't Blame Me、それからOut Of Nowhereである。(もちろんEmbraceable Youもいいのですが)特にOut Of Nowhereは素晴らしい!この曲がスロー(バラード)で演奏されるのは、ちょっとばかり意外な感もあり、しかしその意外性だけではなく、この曲の全体に流れるなんとも言えないような「寂しさ感」そんなものに僕は感動してしまった。正直に言えば、それまで聴いていたダイアル音源では、スピード感溢れるパーカーのスリルは感じ取っていたものの、スローものではそこまでのパーカーの「唄い」は感じることができなかった。パーカーの音色も含めて全体のショボイ音質に「負けて」いたのかもしれない(笑)
この日本ビクター盤の鮮度の良さに驚いた僕は、米Roost盤も入手することになった。日本盤でこれなら、米盤なら・・・というスケベ根性である(笑)009スタンパーが同じなら、音も同じだろうって? それがですね・・・やっぱり(この12インチ盤としては)オリジナルの米Roost盤の方が、そうだなあ・・・もう少し、もう1枚、ヴェールを剥(はが)したようなヌケの良さがある・・・ように聴きました。この辺りはチャンスがあれば、またちゃんとした機器で聴き比べをしてみたいものです。
ただRoost盤というのは、(たぶん)もともとがそれほどいわゆる音のいいレーベルではないだろうし、この「鮮度感の高さ」は、あくまで、パーカーの他のダイアル音源LPよりも・・・という意味合いです。

さて、キングの意欲盤「ダイレクト・フロム・SP」そのsavoy編vol.1~なんと言ってもKokoが凄い!この曲のコード進行は「チェロキー」と同じで「チェロキー」がそうであるように、やはり急速調で演奏されているのだが、聴くたびに僕が「むむむ~っ」と思う場面がある。それはパーカーのソロの終盤に現れるのだが、そこでパーカーは実に不思議なフレーズを吹く。フレーズというより不思議なリズム(ノリ)なのだ。それは・・・チェロキーで言うと「サビ」に当たる曲調がちょっと変わる場面の最初の4小節の箇所だ。
(補記~このKokoは、サヴォイに残した1945年11月の最初のテイクです。CD(コンプリート8枚組)で聴くと2分20秒辺りからの4秒ほどの場面。ただし、この2分20秒は、冒頭約40秒の失敗テイクも含む)
この箇所を聴くたびに僕のアタマはクラクラしてしまう。
そのフレーズをなんとか音で表すと・・・「(ウン)・パラ・パラ・パラ/パラ・パラ・パラ・パラ/パラ・パラ・パラ・パラ/パラ・ラ~~~」という感じの8分音符の連続フレーズなのだが、なにせかなりの急速調での8分音符だ。そして、その連続する8分音符が、どうにも普通の「ノリ」には聞こえないのだ。普通に2拍・4拍の切れ目ではなくて、どうやら3拍のフィーリングで刻みながら吹いているように聞こえるのだ。しかしそれは単に変則ノリということではなく、そのノリが見事にコントロールされているので、パーカーのこのフレーズは・・・まるで川の急流を浮いたり跳ねたりしながらも乗り切っていくラダーボートのようじゃないか!
これは・・・凄い! これこそパーカーだっ!と僕は叫びたくなる(笑) 
僕はほとんどの場合、音楽を分析的に聞こうとは思ってないが、パーカーのこの一節には猛烈に興味が湧いてしまった。その「3拍フィーリング」の正体を暴いてみたくもなった。だから何度もレコードのその場面に針を落とした。20回以上は聴いてみた・・・どうしてもうまく聴き取れない(笑)それでも僕なりの解釈を書いてみよう。
パーカーはどうやら、この時、4小節の16拍を<(1拍休符)+3拍/3拍+1拍/3拍+1拍/1拍+3拍>という具合に分割して捉えたのではないだろうか。少々、強引だが、計算はこれで合う(笑)そういうリズム譜を図に書いてから聴くと、こんな風に聞こえないこともない。《(ウン)パラ・パラ・パラ/パラ・パラ・パラ+パラ/パラ・パラ・パラ+パラ/パラ+ラ~・~~・~~》という感じかと思う。
他の刻み方パターンも考えていろいろと試し聞きしてみたのだが、タイムをこんな風に刻んでみた時が(自分としては)最もパーカーのフレーズのノレたのだ。思うに、パーカーという人は、普通に8分音符中心に2拍・4拍で割ってリズムだけには飽き足らず、こういうちょっと変則な拍数の分割を、いつも考えていたのだと思う。例えば2小節8拍を「3・3・2」で乗る、わりとよくあるパターンだけでなく、もう少し長い単位での変則パターンを。そうしてそんな意識があった、そこへいつものパーカーの閃(ひらめ)きが加わり・・・アッと驚くこの「連続8分音符による3拍フレーズ乱れ打ち」が生まれたのだ・・・というような妄想を僕は描いてしまうのだ(笑)
(ちゃんとした「パーカーのアドリブ採譜」をお持ちの方は、ぜひチェックしてみてくださいね)

ただ・・・実はそんな後付の分析など、本当はどうでもいいことで・・・僕らはパーカーのその時のフレーズ~それを吹いている時のパーカーの意識みたいなもの~を、ただ聴けば(味わえば)いいのだ!その音色の全てを浴びればいいのだ!その圧倒的なうねり具合こそが「パーカーの快感」であると思う。
いろいろ理屈をこねてしまったが・・・つまるところ、パーカーはアルトのサウンドそのものに快楽がある!と言ってしまってもいいだろう。だからこそ・・・パーカーはパーカーなのだ! ううう・・・ジャズっ!(笑)

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2007年5月 7日 (月)

<ジャズ回想 第11回>(その2)ああ・・・この音だ。Yoさん宅、再・再訪期。

Yoさん宅~3人の音聴き会は、まだまだ続く・・・。

ちょっと前に、ニーノニーノの新納さんからTELがあり、ピーターソンのWe Get Requestsの「モノラル溝あり」の音は凄いですよ・・・と教えてくれた。「ええっ!T字MGM-VERVEに溝があるんですか?」「はっきりしないんですが、初期のT字にはあるらしんですよ」
僕など、いわゆるT字ラベルの場合「long playing(Verve Inc.)には溝がある」が「MGM-VERVEになってからは溝がない」と思い込んでいたのだが、そうではなかったのだ。T字MGMになってどの辺りのタイトルまで「溝あり」が存在するかはよく判らないが、ともかくT字VERVEラベルの初期のいくつかには「溝あり」があるらしい。Dscn1687_1
そうして自分の手持ち盤をいくつか調べてみると・・・Night Train(V6-8538:T字MGM)には、はっきりと幅の広い溝があったのだ。そして、Requests(V6-8606:stereo)の方はというと・・・とても溝とは言えないわずかな段差のある「筋」(T字の横棒の左右の1cmほどを通っている直径7cmほどの円周)」があるだけだったのだ。
《上の写真では「筋」だか「溝」だか判りにくいが、下のラベル写真と比べると明らかに「溝」とは違う。残念である(笑)》
ちなみに、この「筋」は、普通の大きさの円周だが、Trio Plays(V6-8591)のセンターラベルの「筋」は、3cm弱の円周とうんと小さい。だから「溝」なしにも「大筋」「子筋」とあることになる(笑)

このRequestsがいわゆる 「優秀な録音のレコード」ということは知ってはいた。しかし、オーディオ的な興味の薄かった僕は、かえってそんな評判への反発もあり(笑)あまりちゃんとその音を聴いてなかったのかもしれない。アンプを真空管に、そしてスピーカーをJensenに換えた頃から、だんだんとピーターソン自体を聴くようになり、そうして改めてこのRequestsを聴きなおしてみると・・・これがチャーミングないい音だったのだ(と、気づいただけなのだが:笑) もちろん「音」の前に、演奏が素晴らしいことは言うまでもない。どの曲でも、レイ・ブラウンやエド・シグペンという名人たちが、その至芸をさらっと見せてくれるのだが、特に、1曲目のボサノヴァ風の quiet night がいい。この曲のエンディング・・・同じ和音パターンの繰り返す辺りで、ピーターソンが高音部で「遊ぶ」のだが、その意図的に軽くしたようなタッチが、実に、小気味いい。このレコードでは、1曲が短いこともあり、いつものピーターソンよりだいぶんあっさりした感じでもあり、それがまた僕には気持ちいい。軽めのタッチではあるが、しかし、しっかりとキーを叩いている」~そんな感じのタッチの質感を凄くよく捉えている録音だと思う。もちろん、レイ・ブラウンのウッドベースの音圧感・存在感も充分に出ている。そして、このレコードの録音engineerは、いつものVal Valentineではなく、Bob Simpsonとなっているのだ。Simpsonは、ハリー・ベラフォンテなどRCAでの仕事が多いようだが、Bill Evans/Trio 64(verve)や、ミンガス/ミンガス、ミンガス、ミンガス(impulse)なども彼の録音らしい。僕は、このRequestsの音が好きだ。

そんな「いいステレオ録音」のRequestsに、「モノラル・溝あり」があったとは・・・。同じ頃、Yoさんとのメールやりとりでも、そのRequestsの話題になり、Yoさんは「ステレオ・溝あり」をすでにお持ちで、なんと「モノラル・溝あり」も、つい最近、入手されたとのこと。Request_st_1
「じゃあ」ってんで、その3種・・・
ステレオ溝なし~bassclef
ステレオ溝あり~Yoさん
モノラル溝あり~Yoさん
を聴き比べしてみよう!ということになっていたのだ。

僕はすぐに3枚のセンターラベルをぐぐっと見つめた。Yoさんの2枚には確かに「幅の太い溝」がくっきりと彫りこまれている。これこそ「MGM-Verveの溝付き」だ!《センターラベルの写真2点は、Yoさん提供》
さっそくこの3枚を聴き比べてみた。Request_mono

先にステレオ盤の2枚をかけた。この2枚・・・右からのレイ・ブラウン、左からのエド・シグペン、そして中央(やや左か)からのピーターソン・・・音場の感じは全く同じだ。音質の方も、大きな差というのはなかったかもしれない。しかし、「全体としての鳴り」が・・・やはり「溝あり」の方がよかったのだ。ピアノがどう、ベースがどう、ということではないのだが・・・それぞれの楽器の音色に、より太さが、より艶が、そしてより瑞々しさが感じられたのだ。

そしてモノラル盤。ベースが中央により、やはり、かなり「太く」なった。ピアノの音自体も幾分、大きくなったようだ。一聴して、迫力はやはり増している。このモノラル盤が鳴ったらすぐに、僕の右隣に座ったkonkenさんが「オレ、この方が好きだな・・・」と一言。
そして・・・このモノラルの太さ、たくましさは充分に判るが・・・やはり「オレはステレオの方が好きだな」とbassclefが対抗する(笑)
Yoさんも、「このピーターソンのレコードに関しては・・・ステレオの方が好みかな・・・」と洩らす。
僕個人の気持ちとしては、先ほど書いたような、このレコードの「軽めのタッチ」「あっさり感」という感覚が、モノラルの方だと「たくましく」なりすぎてしまうような気がして、ステレオ録音のベースが右、ピアノが左、というちょっと薄め(とも言える)の音場の中で、軽々とノッているような感覚・・・説明しづらいのだが、そういう「軽み味」には、ステレオ盤の方が「合っている」というような、ごく感覚的な理由で、ステレオ盤の方がいい、ということなのだ。
それにしても、自分の手持ちRequestsは「溝なし」であることがはっきりしてしまったわけで、少々、落胆した。あのわずかな筋~段差を、無理やりに「溝」かもしれんぞ・・・と思い込もうとしていたのかもしれない(笑)

ピーターソンをもう1枚~Night Trainから1曲聴く。konkenさんのステレオ盤では、なぜかレイ・ブラウンのベース音がやや小さく聴こえるそうで、その点をYoさん宅で確認したかったとのこと。聴いてみると・・・左チャンネルのレイ・ブラウンのベースが、やや押さえ気味のバランスで、他のVerve盤で聴かれるいつものレイ・ブラウンと比べても音圧感が物足りない。
konkenさん手持ちステレオ盤は、ラベルの色が灰色っぽいもの(小筋)で、やや後期の再発盤かもしれない。
音全体がちょっとこもったような録音のように感じる。いずれにしても、先ほどのRequestsに比べると、だいぶん平凡な音だと思う。そして、レイ・ブラウンに関してはどちらかというと「よくない録音」かもしれない。
ちなみに僕も戻ってから、さっそくこのNight Train(ステレオ溝あり)も聴いてみたが・・・やはり同じようなバランス・音質で、ちょっと残念であった。ただ、このレコード・・・レイ・ブラウンが遠い代わりに、右側からのエド・シグペンのドラムスは、けっこう迫力のある録音だ。ハイハットがしっかり(ちょっとやかましいくらい)入っており、バスドラもちょっとこもり気味だが、音量豊かに鳴る。ドラムス好きには楽しめるレコードかもしれない。録音は1962年、エンジニアは、Val Valentineだ。

そういえば、もう1枚、強く印象に残っているピアノ・トリオの盤がある。
バリー・ハリス/Breakin' It Up(argo) all the things you are である。
この渋いピアノトリオのレコード、僕はCDとビクターの国内盤(ステレオ)を持っていた。
bassclef~「録音があまりよくない印象」に対して、Yoさん~「いや、そんなことはない「録音そのものはいいが、ピアノ自体がちょっとよくないのかもしれない」というようなやりとりがあった。そして、Yoさん宅で聴かせてもらったArgo のオリジナル盤(モノラル)では・・・う~ん、確かにピアノの響き、その余韻に若干の「古ぼけた」ものを感じたのだ。スタジオに置いてあったピアノの調弦が微妙にずれていたのかもしれない(ピアノというのは1つのキーに対して複数のスチールの弦(太い針金みたいなもの)を使っているのだが・・・その複数の弦のたった1本のピッチが微妙にずれている~そんな風に聞こえないこともなかった。よくホンキー・トンク・ピアノという表現で、場末のバーのピアノから聴かれるあの独特の「くたびれサウンド」あれが・・・調弦のずれたピアノの音、といえば雰囲気はお判りいただけると思う。もちろん、このバリー・ハリスの使ったピアノは、そんなにホンキー・トンクはしていないが、部分部分で、時にちょっとそんな響きを感じたのだ。あまり状態のよくないピアノだったのかもしれない。
そんなところまで~つまり「録音の拙さでのイマイチのピアノの音」ではなく「ピアノ自体の状態の拙さ」での、あのちょっとくすんだようなピアノ音~というところまで判ってしまった(少なくとも、そういう風に感じ取れてしまった)のだ。それにしても、このYoさんのシステムは・・・そのレコードのサウンドを聴けば、その時の演奏、そして録音の「真実」までもが、その場に暴き出されてしまうような・・・そんな「怖ろしい」装置だと言えるのかもしれない。

さて、この会・・・「その1」で書いたように、冒頭のラウズ3連発から、ほとんどテナー特集と化していった。

ラウズ(epic)の2枚とtakin'care(jazzland)の3連発
ズート・シムス/ズート!(riverside)白ラベル fools rush in
ベニー・ゴルソン/the other side of~(riverside)  jubilation
ジミー・ヒース/really bag から ?
ジョニー・グリフィン/Big Soul Band(riverside)から
deep river, jubilation 
ロリンズ/at the village vanguard(bluenote) softly as in a morning surrise
<ゲッツの Plays~聴き比べ>
JRモンテローズ/The Message(jaro)
straight ahead と violets for your furs
コルトレーン/coltrane(prestige)NY  violets for your furs
テディ・エドワーズ/It's About Time(pacific) fools rush in
エディ・ロックジョー/Tranckin'(prestige:青・イカリ RVG)
there'll never be another you
フリップ・フィリプス/I'll never be the same(ClefのEP盤)

どれもこれもいい演奏のものばかりで、これらのいくつかを続けてかけたり、もちろん間にヴォーカルなどを入れたりしたのだが、さすがにテナーばっかりではねえ・・・てなわけで「ミニ・アルト特集」となった。
フィル・ウッズである。

Dscn1695_1 Quincy Jones/Quintessence(impulse) A面1曲目のQuintessence~

この曲~ちょっと北欧の雰囲気が漂うような優雅なメロディだ~僕はもう大 好きである。
そして、この曲でフィルウッズのアルトが、もう巧さ爆発!何度聴いてもこの曲は厭きない。
輝くようなバックのブラス群の乗ってフィル・ウッズが唄い上げる。
このimpulseのVan Gelder録音は、特に好きだ。強すぎず、甘すぎず、適度な輝きと張り具合~バンドのメンバーが巧い人ばかりなのでそこのクインシーのアレンジが合わさって、ゴージャスなビッグバンドジャズが楽しめるいい1枚だと思う。

ウッズのもう1枚~Alive & Well 60年代後半の「激情ウッズ」の有名盤だ。この欧州オリジナル盤はジャケットも封筒型(上下が裏側に折り返している。全体に紙質が薄くて、その薄さに品がある)で、人気も高いらしい。
1曲が長いのだが、ウッズは最初から激情している。そして、途中のベースソロが・・・これはまたすさまじい音だった。アルトが鳴っている間は、ドラムのダニエル・ユメールも叩きまくるので、さすがにベースがちょっと隠れがちだが、ベースソロのなったとたん・・・録音技師がグンッとフェーダーを上げたに違いないのだが(ドラムの音も止み、入力オーバーにならないので)突然、ベースが巨大化する。
そして、サポートするリズムがない状態で、ベース特有の幽玄な世界に入っていく。このベース奏者、とにかく「熱いハート」があるなあ・・・ジミー・ギャリソンが時々見せるような「フラメンコ奏法」に近いような弾き方を混ぜて、堂々としたソロを展開する。この場面での音は・・・生のベースかもしれない。3人で聴いたが、この1968年頃は・・・ウッドベースに付けるアタッチメント(駒に貼り付けるタイプの小さいマイク)を付けた音なのかどうか微妙に判りにくい。生音をうんと近づけて録音したような音でもあるし、アタッチメントからの(電気的)音の配分を少なめにしてアンプから鳴らしているような音でもあるし・・・はっきりしない。だがひとつ言えるのは、ヨーロッパのべーシストはとにかく「巧い」ということだ。アタッチメント付きだったとしても、その前にまず、「ベースがよく鳴っている」 「しっかりと弾いている音」 「きちんとした音程」~そんな技術的な基礎がしっかりしているベースの音なのだ。一音一音のタッチに力感・質感がしっかりとあり、だから聴いていて全然、不快ではない。
1975年くらいのペデルセンも「巧い」ベースの代表だ。一時期のライブでは、どうしてもアタッチメント全開の電気的サウンドになったようだが、レコードではやはり「いい音」を出している。
そしてYoさんのウーレイは、こういう巧い奏者の音をひときわ甘く、そして音楽性豊かに鳴らしてくれるようだ。Jwalking ともう1枚のsteeple chase盤(ドラムスがビリー・ハートで、ギターが若いジョン・スコのやつ)を聴いたのだが、この装置で聴くペデルセンは、とにかく気持ちがいい。そういえば、1年半ほど前に初めてYoさん宅を訪れた折にも、たしかこのペデルセンのJwalking(LPとCD)を聴かせてもらったな・・・この日、聴いたのもやはり、カルロス・ジョビン作のFelicidade・・・甘い中にサウダージ(哀愁)を感じさせる見事なメロディ・・・好きな曲だ。そしてこの曲を選んで、ベースでメロディを弾くペデルセンのセンスにも素晴らしいと思う。
ちなみに、もう30年前のことだけど、このJWalkinにはちょっと思い出がある。ジャズ研の先輩ギターのケニー・マー坊氏の好きなレコードで、このLPの中の”J Walkin"にトライしていたので、何度も聴いたはずなのに・・・その頃にはペデルセン=巧いだけでおもしろくないべーシストという、全くレベルの低い思い込みで、深く聴こうというスタンスさえなかった。あの時、すでにボサノヴァ好きだった僕が、このFelicidadeを聴いていたならば・・・僕のジャズの好みというのは、どうなっただろう? そんな意味のないことを考えてしまう僕である。
ペデルセンということで、僕が持ってきていた1枚もかけてもらう。Dscn1696_1
ピーターソン/Great Connection(MPS/テイチク)just squeeze me 1971年録音。
この頃の録音盤をあまり聴かない僕なのだが、このレコードは例外的に好きな1枚だ。ペデルセンのたっぷりとしたベース音が軽くグウ~ンと伸びる様が、実に気持ちいいのだ。ベースという楽器の胴体や、弦の芯が鳴ってからの、アタッチメント増幅音なので(だと思う)軽々しくは聞こえない。
やはり、ペデルセンは本当に巧い!
ルイス・ヘイズの切れのいいシンバル音、そして軽めに弾くピーターソンの艶やかな音色とタッチ感(音圧にまだまだ余裕がたっぷりあるような感じ)も素晴らしい。そんな「好録音」のピアノトリオ盤なのだ。
それにしても、テイチク盤でこの音なら、MPSオリジナルならさぞや・・・(笑)

僕の手持ち盤から、もう1曲、お願いする。
Dscn1694 Blues For Tomorrow(riverside)~a sad thing
この1曲は、ハービー・マンのリーダーアルバム(great idea of Western Manne)からだ。このsad thing でのバスクラの音を聴いた時、「ぞぞ~ッ」とした(笑)もちろんハービーマンが吹いているのだが・・・怖ろしいほど透徹したような音色なのだ。a sad thingというタイトルからも覗(うかが)えるように、マンがそういう風に吹いているのだとも思うが、録音されたこの「音」も凄い!バスクラ自体をそれほど聴き比べる機会もないが・・・この音に、僕は驚いてしまったのだ。そしたら・・・この1曲(1枚)は、riversideにしては珍しい西海岸の録音で、マンの西海岸ツアー時にロスで録音されたとのことだ。どうりでいつものriversideの音とはちょっと肌合いが違ったわけだ。それにしても、ハービー・マンという人、たまに吹くテナーも巧いし、バスクラもこんな音で鳴らす・・・すごい才人だったのだろうな。

さて、この会。インストばかり聴いていたわけではない。ヴォーカルものを大好きなkonkenさんが、いい盤を持ってきたので、随所にそれらを混ぜながら進めていった。(以下4点は1144ross_2konkenさん提供)

Annie Ross/Gypsy(world pacific)から 
Overture 
Everything's C oming Up Ross

Darlene/The Nearness Of You(epic)1314_darlene_2

《このepic盤は、以前にrecooyajiさんに教えていただいたもので、それを気に入ったkonkenさんが速攻で入手した》

Greetje Kauffeld/Clifford : Sings To A Tribute To Clifford Browon(オランダomega)から1336kauffeld

I remember Clifford 《konkenさんのお気に入り盤。しっとりした風情のあるいい歌い手だ。70年代後半のオランダ録音だが、音は瑞々しい感じもあり、とてもいい》

Marlene/Marlene(savoy)から
Some Oter Time
If I Love Again

1322marlene_1 どれもよかったのだが、やはり、savoyのマーレーンは素晴らしかった。優しくて柔らかいマーレーンの声も、丁寧な唄い方も、そしてハンク・ジョーンズのバッキングなど全てが素晴らしい。以前、リキさん宅でこのマーレーン(僕の手持ちは、残念ながらAudiophileのreissue盤)をかけた時も、Yoさん、リキさん「いいねえ」とうなずいたなあ・・・そういえばあの時、リキさんが一言。「このトランペット、なんでこんなにエコーが・・・・」そう思って聴くと・・・たしかに、このレコードでのジョー・ワイルダー、いい感じで唄の合間にフレーズを入れるのだが、いかんせん・・・エコーがかかりすぎだ。やっぱりRVG録音だなあ(笑)
この「エコー」だけはちょっと気にはなるが、savoyのヴァン・ゲルダーは、適度に柔らかく、そしてベースやドラムスの音がtoo muchではなくて、ちょうどいいバランスなのだ。僕は、savoyでのヴァン・ゲルダーの音・・・嫌いではない。

こんな風に3人でいろいろ聴いていると、知らぬ間に・・・もう陽が落ちかけている。なぜそれが判るのかというと・・・二つの巨大なウーレイの1mほど後方の壁の高い位置に小窓があって、そこにはいつもカーテンがかけられているのだが、どうやらその方角が西側らしく、陽が落ちてくると・・・いつもそのカーテンが濃いオレンジ色に染まってくるのだ。そのオレンジ色を見ると「ああ・・・もう夕暮れかあ」という気持ちになってしまう。6時にはおいとまする予定だったので、もうあまり時間がない。こりゃあ、いくら時間があっても足りないや(笑)そんな僕らの気持ちを見てとったか・・・「僕はもうちょっと遅くなってもいいですよ」と、Yoさんが助け船を出してくれた。「いやあ・・・それは・・・」と恐縮するkonkenさんと僕。しかし・・・その恐縮にはあまり迫力がない(笑)ほとんど「そうしてもらっていいですか?」という雰囲気が顔に出ていたのだろうと思う。「ちょっと休憩がてら外で軽く何か食べて、それからまた少し聴きましょう」というYoさんのありがたい申し出に乗っかった格好で、それでは・・・pm9:30をリミットに第2部をやりましょう!ということになった。いやあ・・・これはうれしかった(笑)実際、その方が夕方の渋滞からも逃れられるし・・・いや、それよりなにより、もうちょっとこの音を聴いていたいのだ・・・よかったあ! Yoさん、ありがとう!

そうして第2部(pm8~9:30)でかけたのは・・・
エラ~
Songs In A Mellow Mood(decca)~
米decca:ジャケが灰色でなく青っぽい色のやつ。若いエラがちょっと前田ビバリに似ている(笑)
英brunswick(エラの声、輪郭がやや細くなるが気品を感じる。若くてきれいになったような感じ)

アン・バートン~
ballads & burtonとblue burton を Artoneのオリジナル、Artoneの2nd?(2枚組の1976年の)とオランダCBSの盤で聴き比べをしてみた。
Artoneのオリジナル~ballads & burtonは、瑞々しさがいっぱいでやはりいい! ところがblue burtonの方、これはどうやら・・・プレス段階の不具合らしいのだが、ヴォーカルやピアノやらの音圧が上がった箇所で「歪む」のだ。ちなみに、同じArtoneを2枚買ったパラゴンさんによると、やはり2枚とも、同じ箇所で「歪む」そうだ。2ndでは「歪まない」。
Artoneの2nd?(2枚組の1976年の)~悪くない。ただ、やはりベースのキレが、ややなくなったような感じはある。
オランダCBSの盤(blue burtonのみ)~歪まない。けどちょっと鮮度が落ちたかな・・・。

サラ・ヴォーン~
swingin' easy(emarcy) p :ジミー・ジョーンズ、b :リチャード・デイビス、ds:ロイ・へインズ、 
After Hours(roulettte) 伴奏はドラムレスで、b:デュビュビエ、g:マンデル・ロウなどであった。

Swingin_sarahここでは、swingin' easy(emarcy) のことを少しお伝えしよう。
このemarcy盤・・・サラが椅子に座っているジャケットで、あまり知られているレコードではないように思うが、むちゃくちゃいい音だった。サラの声だけでなくドラムのブラシのざわざわ感や、ベースの音圧、ピアノの艶・・・鮮度感もたっぷりの文句なしにいい音だった。サラもこの頃は、まだ可愛げがあるかな(笑)
《上と下の写真2点~Yoさん提供》

Yoさんが、polka dots & moon beamsをセレクトする。
実はこのバラードには、とんでもない場面があった。知っている方は知っているアレだ(笑)
ピアノのイントロから、サラが情感込めて静かに歌いだしてすぐ・・・全く唐突に「ドタっ!」という音が鳴ったのだ!それもかなり大きな音だ。その「ドタッ!」の、あまりの違和感に、3人とも思わずスピーカーの方を振り向いた。「何? 今の音・・・」 もう一回聞いてみる・・・「ドサッ!」はっきりと聞こえる。・・・どうやら何かが落ちたような音か・・・いや・・・バスドラの音だぞ・・・と、僕は言う。だとしたら・・・この「ドサッ!」は、ロイ・へインズの「演奏」なのか? いや、どう聴いても・・・この音は、意図した音には聞こえない。鳴るタイミングもあまりにも中途ハンパの場所だ。
「音楽」になってない。だから・・・演奏での音ではないだろう、と僕らは推測をした。
では、なぜあんな音が鳴ったのか?
konkenさん~ロイへインズの単純ミス説<たまたま右足を降ろしたら・・そこにバスドラ・ペダルがあった>
(笑)
bassclef~ロイ・へインズのミスはミスだが「バスドラ・ペダルのチェック説」
つまり・・・<ペダルの踏み具合を何気なくチェックしようとして(鳴らすつもりではなく、軽く踏むだけのつもりだったのだが、足が勝手に踏み込んでしまった>(笑)Swingin_sarah_l
《補足》このロイ・へインズの「ドサッ!」については、その後、konkenさんから、素晴らしいコメントをいただいた。「あれはミスではなかったかも・・・polka dots~という曲の中の歌詞(bump:ドスンという音/人がぶつかること、というような意味)に合わせて、ロイ・へインズが意図的に出した音だろう」という「新発見」である。コメント欄もぜひお読みください》

それにしてもサラ・ヴォーンは偉い。バラードの出足にあんな音響が鳴ったというのに、動じることもなく、そのまま唄い続けてしまう・・・プロですね。
いや・・・それでもあの「音」の後に、すっと振り返り、ロイ・へインズを睨みつけたかもしれない(笑) そうしてロイ・へインズの右足が凍りついていたのかもしれない。
実際・・・この曲では、もう2度とバスドラの音は鳴らなかったのだから(笑)古いレコードの中に潜んでいた、こんなエピソードと共に、この会もようやく終わろうとしているのだった。

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2006年5月24日 (水)

<やったあレコ 第5回> オスカー・ピータースンのClef盤『背中』

オスカー・ピータースンの<軽やか8ビート感覚>

Norman Grantz の得意技に、一人の作曲家の曲ばかりで1枚のアルバムを創る Plays ~というシリーズがある。エラには直線が個性的なビュッフェの絵画をジャケットにしたシリーズ、ピータースンにも「印象派風絵画」ジャケの9枚の作曲家シリーズがあった。

リンクしてある67camperさんという方のブログで、この9枚が紹介されている。どのジャケットもキレイなので全部が欲しくなる:笑) この9枚は大体1957年頃の録音で、Verve2000番台シリーズなのだが、9枚とも6000番台のステレオ盤でも出ているらしい。
そして、この「印象派風絵画」シリーズの「元ネタ」みたいなピータースンのレコードがあったのだ。こちらの録音はだいぶ古くて、1951~1952年らしい。ピータースンとレイ・ブラウン、そしてバーニー・ケッセル(あるいはハーブ・エリス)というドラムなしのトリオ編成のようだ。(1957年録音の方は、ドラム入りのピアノトリオ) Clef の600番台がオリジナルだ。それが・・・あのデヴィッド・ストーン・マーチンの「背中シリーズ」だ。どれも同じデザインなのだが「色合い」を変えている。Peterson_on_clef_etc_002_1

この「色合いの違い」がなかなか曲者のようで、どれでもいいのだが1枚入手すると・・・どうしても他のも欲しくなる(笑) それがNorman Grantz の作戦に違いないと判っていても・・・抗(アラガ)えない(笑)
僕は、この「背中」をEP盤で何枚か集めてきた。EP盤は”extended play” の略で、アメリカのEP盤というのは片面6~7分くらいで、たいていは4曲入っている。だから日本でいう「コンパクト盤」的なのだが、アメリカのEP盤は、基本的に45回転なのである。
このピータースンのEP盤「背中」・・・何人かは揃ったのだが、そうこうしているうちにEP盤(7インチ)と同じ図柄でLP盤(12インチ)も出ていたらしい、ということが判ってきた。当然、12インチがオリジナルだろう。それに・・・好きな作曲家の分は、やはり4曲だけでは物足りない。他の曲も聴いてみたい。12インチも欲しいよなあ・・・と、ごくごく自然な流れで12インチも少しづつだが入手した。それがこの3枚だ。 

Peterson_on_clef_etc_001_2    

《 plays Cole Porter/MGC-603(左)~ジャケ左上には”CLEF RECORDS”のシール。これをはがせば・・・たぶんmercuryという文字が現れるだろう(笑)
plays Irving Berlin/MGC-604(右)
plays Harold Arlen/MGC-649(真ん中)~この649番には”Hi-Fi”のロゴがジャケ左上にある。そしてジャケ裏には、"Oscar Peterson plays composers"なるシリーズ9タイトルが曲名入りで載っている。あと6枚もあるのかあ・・・(笑)》 

《追補》この後、refugeeさん、NOTさんのご指摘(コメント欄参照)により、このPeterson plays composersシリーズは、全10タイトルであることが判った。参考までに以下にリストアップしておく。

MGC-603 Oscar Peterson Plays Cole Porter
MGC-604 Oscar Peterson Plays Irving Berlin
MGC-605 Oscar Peterson Plays George Gershwin
MGC-606 Oscar Peterson Plays Duke Ellington
MGC-623 Oscar Peterson Plays Jerome Kern
MGC-624 Oscar Peterson Plays Richard Rodgers
MGC-625 Oscar Peterson Plays Vincent Youmans
MGC-648 Oscar Peterson Plays Harry Warren
MGC-649 Oscar Peterson Plays Harold Arlen
MGC-650 Oscar Peterson Plays Jimmy McHugh


ピータースンの4ビートの「ノリ」は・・・確かに凄い。あれよあれよ、とアイデアに満ちたフレーズが飛び出し、しかもそれが尽きない。そしてたいていは高音部で3連やら16分音符を軽く交えながら、華麗にアドリブを繰り広げていく。こうなれば、もうエンジン全開である。そうして、ピアノという楽器が参ってしまうのではないか、と思うほどそれはもう・・・果てしなくノリ続ける(笑) ただ・・・「ノリ」の質は、やはり・・・やや単調である。
いくら速いフレーズを弾いても、「ノリ方」がややスイング的なのだ。説明しづらいのだが~4ビートは1小節に4つの4分音符で進行していくのだが~その4つの4分音符、全てに「ノってしまう」というか・・・雰囲気で説明すると・・・「ウン・ウン・ウン・ウン」と、4つ全てに均等に体重がかかっている」という感じなのだ。
「ノリ」の話しは・・・難しい。「ノリ」の質というものは・・・もちろんミュージシャンの個性により違ってくるが、やはり演奏スタイル(結果としての)~例えば1930年代と1950年代では、明らかに違うと思う。
「スイング」と「ハードバップ」の違い~楽器編成や取り上げる曲の感じも違うが・・・一番の違いは、実は「ノリの質」かもしれない。
バップやハードバップ(と呼ばれるスタイル)になりつつある頃には、この「ノリ」が「ウー・ウン・ウー・ウン」という風に、1拍目と3拍目を意図的に弱くして、2拍目と4拍目を強調させたのだ。つまりアクセントに「でこぼこ」を付けたのだ。スイングというスタイルにおいては、そういう明確な意識はなかったと思う。
判りやすい例で言うと・・・ドラムスの「バスドラ」、あれを聴けばよく判る。スイング時代までは、1小節を、正に4分音符4回「ドン・ドン・ドン・ドン」とバスドラを鳴らしているのだ。もちろん「ドン」の「ン」を休符にして「ドッ・ドッ・ドッ・ドッ」と鳴らしたり、あるいは「ドッ・(休み)ドっ・(休み)」と1小節に2回鳴らす場合もある。ただしこの2回の場合も・・・やはり、1拍目と3拍目にアクセントを置く場合が多かったはずだ。いずれにしても、スイング時代の「ノリの質」というのは・・・1小節の4分音符4回を「均等に」ノッている、そんな意識だったと思う。
ピータースンの「ノリ」には・・・そんな「ウンウンの感じ」が残っているように思える。もちろん・・・それが悪いというわけじゃあない。スイングのノリは気持ちいいのである。
1947年のライオネル・ハンプトンの「スター・ダスト」~あれだってやはりノリで言えばスイングだろう。だけどとにかくあのアドリブとあのノリは、実際・・・気持ちいいのである。
しかし・・・ピータースンの、そのノリまくる「ノリ」をあまり聴くと・・・やや疲れてくる。ステーキの後は野菜を食べた方が健康にもいい(笑) 

そこで・・・ピータースンの「バラード」なのである。象徴的な意味で「バラード」と書いたが、「ボッサ」あるいは「ラテン」でも一向に構わない。
Clefの古い音源からMPSやパブロなどの新しい録音まで、どのレコードを取っても、たいてい「バラード」や8ビート系「ボッサ風」、あるいは16ビート系(サンバ風)の曲が何曲か入っている。ピータースンはやはり判っているのだ~4ビートばかりでは、聴き手が飽きてしまうということを。

前回の<夢レコ ピータースンとVerveレーベルのこと>で取り上げた「The Trio:Live From Chicago」でも2曲のバラードを演奏している。 
the night we call it a day (マット・デニス作曲です)と 
in the wee small hours of the morning である。
ただでさえ「ノリノリ」になっていたライブでの演奏・・・そんな曲にはさまれて、この2曲が実にいい味わいなのだ。「あれっ?ピータースンってこんな静かにも弾くのか」と。少々驚いたほどだ(僕はピータースン初心者なので、あまり多くのアルバムを聴いてなかった) 
そして、ライブの場でこういうチャーミングなメロディのバラードをあえて演った・・・そのことにピータースンのセンスの良さも見直した。

そういえば・・・wheat land というピータースンの自作曲もあった。この曲、「カナダ組曲」(limelight)が初出自だと思うが、ちょっと後のMPS盤「グレイト・コネクション」でも再演していた。「グレイト・コネクション」は、あまり話題にはならないが、たしかベースのペデルセンが最初に共演した盤だったと思う。こちらの盤に入っている wheat land がなかなかいい。軽いボッサ風の曲だ。ペデルセンが弾くウッドベースのそのたっぷりとした音量に支えられて、ピータースンがソフトなタッチで気持ち良さそうに、シンプルで気持ちのいいメロディを弾く。ラストのテーマで徐々にゆっくりになる辺りもチャーミングだ。

ピータースンは「ラテン風」も嫌いではなかったようだ。さきほど挙げた「背中シリーズ」の Plays Cole Porter ~この3枚の中ではこれが一番好きだ~のような古い録音の盤では、ラテンっぽいノリで何曲か演奏している。以下の曲がそれだ。Peterson_on_clef_etc_003
I've got you under my skin

I love you

so near and yet so far

in the still of the night

night and day

この辺の曲はギターのイントロところから~「ウチャーチャッ・ウチャッ・ウチャッ」という具合に聞こえる~やけに軽やかなのである。
ギターが生み出す「ラテンのノリ」というものには一種独特な「軽やかさ」があって、僕はそれを嫌いではない。このギターはバーニー・ケッセルなのだが、やはり名人芸である。そのスムースな気持ちのいいラテン風のリズムに乗って、ピータースンが、これまた全く力まない軽やかなタッチで、メロディを弾きだす・・・う~ん、気持ちいいっ!

4ビートにおいても、あまり粘らないピータースンの8分音符のノリは、ボサやラテンの8ビート系の曲には、自然と「合う」のかもしれない。
たいていは、「テーマだけラテン風」あるいは「ラテン風と4ビートが交互に出てくる」というパターンなのだが、全体に流れる「軽やかさ」が~ドラムレスというのも、その「軽やかさ」の秘密かもしれない~どうにも気持ちがいいのだ(笑) ピータースンの味わいどころは、「グイグイのノリ」だけではなかったのだ!

作曲家別ということで言えば、このコール・ポーターの曲想にはラテン風味が合う、ということかもしれない。
(2つ上の写真右側の)レモンイエローのジャケットの Irving Berlin 集では・・・あれっ、ラテン風がひとつもないぞ。ほとんどが4ビート、あとはバラードなのだ。その少しのバラード・・・これもなかなかいい味わいだ。

isn't this a lovely day~シンプルに繰り返すだけのようなメロディだけど・・・捨てがたい味がある。終始ソフトなサウンドで4拍づつ刻むケッセルのギターの伴奏が効いている。レイ・ブラウンが時々、得意なカウンター的フレーズを繰り出したりする。
say it isn't so ~これなどは相当に地味な曲だが・・・瑞々しいタッチと芯のある音色で端正にメロディを弾くピータースンは、(僕には)すごく新鮮だ。
how deep is the ocean~こういうマイナーな曲調は・・・ピータースンにはあまり似合わないようだ(笑)「暗いパッション」という雰囲気にはならないのだ。しかし、その「サラッ」とした感じもまたピータースンなのだろう。

Peterson_on_clef_etc_004_1 《plays Cole Porterの裏ジャケット。 アロハシャツを着た若々しいケッセルが写っている。嬉しそうにベースを弾くレイ・ブラウンも若い。ピータースンのネクタイもオシャレだ》

ところで、このclef盤の音質なのだが・・・残念ながら素晴らしいとは言えないのだ。ピアノの音が、高音がややキツメで線が細い(ように聞こえる)
その分、ピータースンのタッチの小気味よさはよく出ているのだが。それより残念なのは、レイ・ブラウンのベースの音である。たぶん、録音のマイクの性能のためだろうと推測するのだが、1952年くらいの録音だと、どうしても「ウッドベースの音」が弱い。弱いというか、遠いというか、はっきりしないというか・・・ウッドべースの「鳴り」や「音圧」が、あまりうまく録られていないことが多いように思う。同じレイ・ブラウンの演奏であっても、後の「ロンドン・ハウス」でのライブ録音のベース音の質感とはだいぶ違うので、せっかくのレイ・ブラウンの「音圧ベース」が、いまひとつ力強く聞こえてこない。まあ・・・こういう古い録音盤を聴くときには・・・そのミュージシャンの「録音のいい盤での音」をイメージしながら、「あんな感じ、あんな音圧でに弾いているんだろうなあ・・・」と想像しながら聴くしかない。
そういう聴き方~「イマジネイション補正聴き」~僕は案外・・・得意なのだ(笑)

それから古い時代のミュージシャンで「録音のいいレコード」がない場合でも、「補正聴き」は必要だと思う。イマジネイションでもって「実際に出ていたであろう楽器の音~鳴り方・響きの具合」を、想像しながら聴くのも楽しいものである。
たとえば、パーカーのライブ音源などの場合~たいてい(マイクの入力レベルの関係で)ドラムはバシャバシャと歪み気味でやかましいし、ベースは逆に遠くのほうで微かにボンボンと鳴ってるだけ~そんな音質もザラである。でも勘違いしてはいけない。その場の演奏においては、ドラマーが叩くドラムのサウンドが「歪んでいた」わけではないのだ!ベーシストも、いい加減な音を出してただ突っ立っていたわけではないのだ!ついでに言えば・・・「シュ~」というレコード盤のノイズも、ライブの場では絶対に存在していなかったのだ!そして、そんな「よくない音」が録音の状態によるものであることを考えに入れてから、じっくりとパーカーのアルトの「響き」を聴けば・・・それが相当に大きな音で鳴っており、豊かにそしてシャープに響いていたであろうことは充分に想像できる。聞こえにくいベースも丹念にそのベースラインを聴いていけば・・・(ボム・ボムという鳴りを感じていけば)カーリー・ラッセルやトミー・ポッターが、きっちりとひとつづつの音を進めているのが判るはずだ。

そういえば・・・むかしジャズ喫茶に通っていた頃~僕はモンクやエヴァンス、ロリンズなど強い個性・自我を主張するタイプに没頭していたので~「ピータースンなんか・・・」という僕に、そのジャズ喫茶のマスターは「ピータースン・・・バラードなんかは案外いいんだよなあ・・・」と独り言のようにつぶやいたものだ・・・。だけどあの頃の僕には、そんなことは全く判らなかった。あれから30年も経って・・・ようやくオスカー・ピータースンを聴き始めている(笑)

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2006年4月27日 (木)

<ジャズ回想 第4回> ニーノニーノさんのオフ会のこと。

こんな具合に・・・白馬の夜は更けていった~

第2回 白馬/杜の会が、今年もつい先日、行われた。場所は昨年と同じ、信州・白馬のオーディオ・ペンション「洗濯船」である。
「杜の会」とは・・・オリジナル盤通販専門店ニーノニーノさんのBBS「こだわりの杜」のオフ会のことだ。
詳しくは・・・そのHPのBBSとコラムをお読み下さい。こだわりのオヤジたちがいつも集っております(笑)http://www.ninonyno.ne.jp/ninonyno/topmenu.htm

今年の「杜の会」は、だいたい以下のような流れで行われた。
第1部~「Duke氏のレコード語り」(地下JBLルーム)
第2部~「みなさんの一押しレコードpart1 」(1Fマッキンルーム)
第3部~「家庭的かつ良心的なオークション」 そして・・・
第4部~「みなさんの一押しレコードpart2 」(地下JBLルーム) だ。

食堂(1Fマッキン)での第2部「みなさんの一押しレコードpart1 」は、ちょっとお酒の入った夕食の後、誰かれとなく「じゃあそろそろ・・・」「そうですねえ・・・ゲヘヘヘッ(笑い声)」てな感じで・・・もちろん和気アイアイと、しかし若干の緊張を伴って始まる。みなさんが持ち寄った「一押し盤」の中から1枚を選び、簡単なコメントをつけて1曲づつ披露するわけだ。みなさん、もちろん「自分が好きな盤」をかけることとは思うが、そこはやはり相当な音楽好き達を前にしてのお披露目である。若干のミエもないわけではない(笑) 
「あんまり音が良くないレコードだなあ」とか「これのどこがいいんだ?」「よく見る盤だな」などと思われないだろうか?・・・などと余分なことも考えてしまう。(いや、そんなのは僕だけか?)
だから・・・ちょっと「かっこつけた盤」になってしまうこともあるかもしれない。「絶対に大丈夫な盤」。つまり・・・明らかに演奏のいい名盤、明らかに音のいい盤、明らかに希少盤・・・そんな感じか。

とにもかくにも、今年が初参加のお2人から、1Fマッキンルームでの音だし(第2部)は始まった。僕は JATP new volume 5 (clef)12インチ(古い録音だけどサックスの音色などが素晴らしい)と Lee Morgan/Here's Lee Morgan (vee jay) (僕の中ではちょっと新らしめの「いい録音」1960年のステレオ録音。)Duke Plays Ellington (capitol)(12インチ:ターコイズ)などを用意していた。
_003_1僕の順番は3人目。1人目が女性ヴォーカル(ポリー・バーゲン)、2人目がオペラ(マリア・カラス)ときたので・・・「ここはカラッとしたハードバップだな」というわけで・・・Here's Lee Morgan (veejay) を選んだのだ。VeeJayのステレオ盤は、音もまあまあだと思ったので選んだのだが・・・ちょっと中途半端ではあったようだ(笑) それほどの希少盤ではないし、リー・モーガンには他にも名盤があまたある。選んだ曲も、地味なジャズメン・オリジナルだ(milt jackson作のoff spring という曲) 昨年もそうだったが、クレフやノーグランのゲッツやらホッジスの超希少盤が次々に登場してくるので、普通のハードバップ盤じゃあ、とても対抗できないようだ(笑) しかし・・・食堂のマッキンルームの「壮大な鳴り」で聴く「ハードバップ」も悪くはなかった。ブレイキーの、かなりでかそうなライドシンバルのグワ~ングワ~ンという鳴り具合や、ベースのチェンバースの大きな音(ちょっと出すぎくらいにベースが大きな音像で鳴っていた) ケリーの転がるピアノタッチなど、どれもマイルドないい音で鳴っていた。まあでも・・・ノッて聴いたのは、僕だけかもしれない(笑)

第1部でかかった曲を列挙しておこう。(だいぶ記憶が飛んでますので・・・不完全です:笑)

D35さん~ポリー・バーゲンTHE PARTY'S OVER(columbia) から smoke gets in your eyes
マントさん~MARIA CALLAS sings ROSSINI and DONZETTI・arias(UKコロンビア) から LA CENERENTOLA(F・Rossini) Nacqui all'affanno(Act2)
bassclef~リー・モーガン here's Lee Morgan(vee jay:stereo) から off spring *前述
ワガママおやじさん~ドロシー・ドネガン(レーベル名を失念。珍しいレーベルの盤)から on green dolphin street 
*<補足>~下記コメントにあるようにワガママおやじさんからデータを頂ました。この珍しい盤は・・・Dorthy Donegan/Swingin Jazz In Hi-Fi (Regina 285) なる盤でした。
パラゴンさん~Eve Boswell(女性シンガー)の 「you go to my head」
SPUさん~ジーン・アモンズ、the Boss Tenor(presige:銀・黒ラベル) から my romance
YOさん~リッチー・カミューカ~ Richie Kamuca Quartet (mode) から what's new? ともう1曲、ペッパー・アダムス(mode)から my one & only love
リキさん~プレヴィンの指揮したアルビノーニのアダージョとモーツァルトの宗教曲
Dukeさん~ジュリーロンドン the end of the world
       カーペンターズ   the end of the world

さて・・・そんな第2部「みなさんの一押しレコードpart1 」が終わって、オークションで盛り上がった後・・・いよいよ第4部~「みなさんの一押しレコードpart2 」(地下JBLルーム)が始まった。ここでは、もうちょっと個人的好みの強いマニアックな盤が登場することが多い。いわばみなさんの「本音盤」である。そんなみなさんの「本音盤」と、かかった曲を以下に記しておこう。

YOさん(YoさんとBoseさんのネタ)~ジョニー・グリフィン2題!
     Johnny Griffin /Way Out [riversideオリジナル・ステレオ盤/日本ビクター盤/WAVE盤]と the Kelly Dancers  [オリジナル・モノラル盤/WAVE盤/fantasy custom盤] での聞き比べ。

ワガママおやじさん~Modern Music From SanFrancisco(fantasy) なる3つのセッションを集めた盤:Jerry Dodgion のセッションからmiss jackie's delight ピアノがソニー・クラークです。*後述_001_2

bassclef~フリップ・フィリプス/EP盤(Clef)から I'll never be the same

・・・このEP盤には愛着がある。とにかくジャケットが好きなのである。EP盤の左側~Flip Phillips Quintet というタイトル。ワンホーンでしみじみとしたフィリプスのテナーが味わえる。10インチオリジナルが欲しい・・・(笑)

パラゴンさん~ヘレン・メリル/mercuryのオリジナル盤(大ドラム)から you'd be so nice to come home to

SPUさん~ルイ・アームストロング/Satchmo At Symphony Hall/Decca より (What Did I Do to Be So)Black And Blue・・・哀感が漂う名曲でした。(トランペットつながりで~題して「魂の叫び」by オーナーMさんとSPUさん)
マイルス・デイヴィス/Live Around The World (ライブ盤)より
Time After Time・・・つぶやくような、しかし時に押し殺した声で泣いているような、そんなマイルスの表現力には圧倒された。後半、マイルスとギターやベースとの絡みは、ギター奏者が必死に音量を抑えたような弾き方で、マイルスと対峙し、とてもスリリングな一瞬だった。そしてぐぐ~っと音量を上げるシンセ・・・「ドラマティックな演出」というのはすごく判るのだが・・・シンセの音自体に・・・どうしても馴染めない自分でした。

マントさん~マリア・カラス/L'ELISIR D'AMORE(R・Donizetti) Prendi;per me sei libero(Act2) 

YOさん~Ben Webster /meets Oscar Peterson (Verve)
     [Verve Inc.(Celf sereis)]モノラルと [Stereophonic]~同タイトルの2種。曲は「bye bye blackbird」での聴き比べ。*後述

_002_1bassclef~パーカーのEP盤(clef:写真左)から just friend 
   ・・・最初33回転でかかり「あれ?このテナー誰?」という感じ(笑)、すぐさま45回転でかけ直すと・・・めでたくパーカーが出現しました(笑)

このパーカーのEP盤もわりあいと音がいい(ように思う) 状態のいい10インチ盤もぜひ聴いてみたいものだ・・・。
(パーカーつながりで)
SPUさん~ Bird And Diz/clef 10inch より Bloomdido(clef:10インチ)・・・オリジナル10インチはやはり凄い。モンクのピアノがタッチが強力だということが、改めてよく判った。

リキさん~ (?)演奏者失念/モーツアルトの最晩年の「?」・・・静かに淡々と流れる曲でした。これもそこはことなく哀しみが滲むような・・・。

巨匠Y氏~beatles (UKだったかのシングル盤から come together と something リンゴのドラムがよかった! *後述

YOさん~ギターもの2題~マイケル・ヘッジス/「?」(ミュージシャン名、違ったかも?)(曲名 失念)
・・・開放弦がキラキラと鳴り、弦の響きがキレイに録音されているレコードだった。個人的には「ソロ・ギター」があまりに大きい音像だと、ちょっと違和感を覚える。
カルロス・モンターヤ/「?」 ・・・フラメンコの名手とのこと。右手のアポヤンドが、凄い強いタッチだ。フラメンコは濃くて凄すぎる。

Dukeさん~Miles Davis:Cookin' から「my funny valentine 」~純正オリジナル 446W盤は・・・やはり凄かった。*後述

オーナーM氏~ジョニー・ホッジス MGN 1059 Johnny Hodges - In a Tender Mood (norgran)から tenderly
・・・ホッジスにしてはあっさり風味に聞えた。やはりエリントン絡みの曲では、特別に濃厚になるのだろうか。

D35さん~ダイナ・ショア: Somebody Loves Me(capitol) IT'S EASY TO REMEMBER
・・・しっとりとしていい唄い手だと思う。ダイナ・ショア、好きな声です。

マントさん~コルトレーン:Live At The Village Vanguardから spiritual (第1部Dukeさん「レコード語り」の時、時間の都合で10分ほどでカットしたので全曲通して)

bassclef~デューク・エリントン Duke Plays Elligton (capitol) (12インチ:ターコイズ)から (この時、Dukeさんが再登場! 「ちょっといいですか?」と言いつつ・・・2人の女性にまつわる話しから、エリントンとこの曲へのオマージュを語る(笑) _004_8

   

                                             

in a sentimental mood と passion flower~しんとした響き。ラテン風エキゾチックな曲調だが、バックでほんの小さく鳴るドラムスの「手叩き」(だと思う)が絶妙だった。
オーナーM氏~アート・ブレイキー:バードランドの夜 vol.3(bluenote)~10インチオリジナルから confirmation *後述

こんな流れだったのだが・・・盤の音質も含めて、特に印象に残った場面をもう少し紹介しようと思う。

Modern Music From SanFrancisco(fantasy)
ピカピカの赤盤だった。こういうcoloured vinyl はよく見ると・・・半透明なので向こう側がうっすらと向こう側が見えたりする。それはもう・・・唸るほどの垂涎盤だった(ちなみにヨダレは出てません:笑)
この盤には3つのセッションが入っている。ワガママおやじさんがセレクトした1曲は・・・アルトのJerry Dodgionのリーダーセッションから miss jackie's delight なぜこの曲か?もちろん・・・ピアノのソニー・クラークが入っているからなのだ。
1955年の録音なので、ソニー・クラークとしては、バディ・デフランコとのVerve録音と同時期ということになる。
miss jackie's delight は速めのテンポのブルースで、ドジオンのやや軽めの音色のアルトが快調なロングソロを取った後に、いよいよクラークのピアノソロが始まった。初期のクラークらしいやや「軽め」(後期に比べれば)だが、キレのいいタッチがたっぷりと聴けた。デフランコとのVerver諸作では、クラークのロングソロというのはほとんどなかったので、この1曲での16コーラス(とベースソロの前の+4小節。長いので数え違えたかも:笑)にも及ぶロングソロだが、アイデアのあるフレーズが次々に飛び出してきて、まだまだいくらでも弾き続けられそうだ(笑)初期のクラーク好きは、これはもう必聴だと思う。
ちなみに・・・この盤、僕の手持ちは・・・トホホのOJC盤(笑)それでも「赤盤仕様」になっているところが意地らしい(笑)

Ben Webster /meets Oscar Peterson (Verve)
[Verve Inc.(Celf sereis)]モノラルと [Stereophonic]~同タイトルの2種。曲は「bye bye blackbird」での聴き比べ。
これがおもしろかった。
モノラルカートリッジで聴いた「モノラル盤]~テナー、ピアノ、ドラム、ベースなど個々の楽器は、大きな音で、はっきりくっきり出てくるので、大迫力だ。
ただ逆に(好みによっては)ベースの音像が大きすぎだったり、ドラムのシンバルやピアノの音がちょっときつすぎたかもしれない。
ステレオカートリッジで聴いた[stereophonic盤]~テナーとベースがやや左側、ピアノが中央、ドラムがやや右側へと音場が拡がった。しかしそんなことよりベースの音像も締まり、ピアノの高音もさきほどのモノラルの「全てがフォルティシモ」的なサウンドから比べてうんと、聞きやすくなった。タッチの質感が出てきた。そしてテナーも適度なフクラミ具合の優しい音色になった。もちろんこれも好みによっては、モノラルの力強さがなくなって「ヤワ」になったと感じるかもしれないが、僕はやはりこの[stereophonic盤]はいい録音で、聞きやすい音質だと思う。
そして・・・(このBen Webster盤の場合)さきほどの[モノラル盤]があまりにも「強い」音だったので「このモノラルカートリッジの性質が音成分を拾いすぎ(強調しすぎる)かも?」という仮説の下に「ステレオカートリッジでモノラル盤をかけてみて」というリクエストが巨匠Y氏から飛び出した。
もともと「厚く」楽器の音が入っているであろうモノラル盤にモノラルカートリッジでは「強くなりすぎ」であれば・・・(モノカートに比べれば)「薄めの」ステレオカートリッジで「厚い音のモノラル盤」をかければ、あるいは・・・?という期待が、皆に広がる。オーナーのM氏が針を落とす。しばしの沈黙・・・微かなチリチリ音・・・。そして出てきた音は・・・・・。
「おおっ!」予想した通り、いやそれ以上の「効果」だった。まさに「ちょうどいいバランス」でテナー、ピアノ、ベース、ドラムスの音色が、「うれしそうに」スピーカーから飛び出てきたのだ!本当に「ちょうど!」のバランスになってしまったのだ。モノラルの厚みある楽器の音色、ステレオの場合の各楽器の分離のよさ・スッキリ感、その両方が「気持ちのいいモノラル」として目の前で鳴っていた。「してやったり」と納得のうなずきを見せる巨匠Y氏。
そして・・・この時のDukeさん、そしてYOさんのうれしそうな顔(笑) というのは・・・両氏は「モノラル盤を聴くからといって、必ずしもモノラルカートリッジに拘る必要はない」という主義であるからして。
カートリッジの「音の拾い方」というのは、こんな風に、その特性をうまく生かしてやれば、アンプやスピーカーを換える以上に、入り口のところで基本的な「バランス」を決定してしまうのだなあ・・・という実感を持った。もちろん、「盤」によって元々バランスのクセに差があるわけだから。だから・・・今回のこのケースは、あくまでこの Ben Webster meets Oscar Peterson というレコード<もともと各楽器の音をぎゅっと詰め込んであった音造りをしてあった「モノラル盤」>だったから、ステレオカートリッジによる中和がうまい具合に作用した、ということかもしれない。

the beatles /come together  と something (多分、UKのシングル盤)
全くの私見では(この<夢レコは全てが私見ですが:笑)・・・地下JBLの音は・・・ド単純に言って「ロック」に最も合うように思う。特にベースとドラムがテーマを演じるこの come together で、そう感じたのだ。
エレベ(電気ベース)の音が強力だったのだが、ロックの場合だと、かなり大きめの音量・音像でも違和感がない(ように思う)
それから、come together のテーマの部分をベースが弾いた後の部分・・・リンゴがちょっと「緩めのチューニング」(だと思う)で、スネアやらタムタムを3連で叩く場面の見事な「音圧感」・・・これは凄かった。その「音圧」が「ン・ド・ド/ド・ド・ド/ド・ド・ド/ド・ド・ド」てな感じで、右チャンネルから何度も飛び出てくる。この「音圧感」は、ロック苦手な僕にも、ある種の快感ではあった。(自宅に帰って聴いたベストCDでの come together のショボイこと(笑))

Miles Davis/Cookin'  から「my  funny valentine 」
prestige, NY.W.446のオリジナル盤だ。ジャケットのコーティングもぐう~んと分厚い。これは凄かった。チェンバースのベースの音がやけにリアルなのだ。もともと prestige のベースの録音は、columbiaと比べると、ベースの音が「ペンペン」なのだ。低音の響きの部分がprestigeでは極端に薄い。しかしその分、左手が弦をこする音とか右手で強く弦を引っ張ったような、そんな気配をよりリアルに感じ取れる録音なのだ(と思う) だから、ベースの音程を聴き取るのには、prestigeが最適なのだ。そうして、チェンバースのあまりよくないピッチ(音程)も、やけにリアルに聴き取れてしまうのである(笑)
この446Wアドレスの純正オリジナル盤においては・・・その「リアルなベース音」が、より一層、鮮明に聴かれたのである。もちろんcontemporaryやcolumbiaのベースの音が好きな方(一般的にはこの方が多いかな?)には、このベース音は「硬すぎる」かもしれない。でも・・・これがprestigeの録るウッドベースの音なのだから、仕方がないだろう(笑) 

最後に「1枚、お聴かせします」とオーナーM氏。残っていたのは・・・D35さん、マントさんと私、bassclefの3人だけ。そして・・・あの盤が登場したのだ! 
オーナーM氏~アート・ブレイキー:バードランドの夜 vol.3(bluenote)~10インチオリジナルから「Confirmation」
青い色調がやけにキレイな10インチ盤(vol.3)だ。このクリフォード・ブラウンが凄かった。夕方のM氏の挨拶代わりの「モーニン」(bluenote)でのリー・モーガンも「いい響き」をしていたが、この10インチ盤のクリフォードブラウンは・・・これはもう・・・とにかく素晴らしかった。余分なエコーなど全くない「素」の録音という感じで、ブラウンの「乾いたような、しかし音色のエッジを若干ふわッとさせたような」独特な響きが、むちゃくちゃに生々しく感じられたのだ。続くルー・ドナルドソンもアルトも、より分厚い音色で図太い感じだ。もう少し後期のドナルドソンには、ある種の軽さ・甘さが出てくるように思うが、この1954年のドナルドソンのアルトの音色にはもう少し「重さ」があった・・・ということを実感できた。そしてブレイキーの右手のライドシンル・・・このシンバルの高音は、モノラルの古い録音でさすがにちょっと「詰まった」ような音ではあったが、その臨場感から、ブレイキーが終始かなりのヴォルームで叩いていたのであろう・・・ことがよく判った。実際、ライブハウスでのドラムスのシンバル音というのは、相当にでかい(笑)ハウスの形状(そしてもちろん奏者の叩き方具合)によっては、響きすぎてやかましいこともよくあるのだ。この10インチオリジナル盤においても、ブレイキーのシンバルが相当に大きく響いてはいたが・・・それはその場の「音楽を必死に生かそうとしている響き」に聞えたので、僕には全く気にならなかった。
このライブ盤は、本当に凄いと思う。クリフォード・ブラウンの漲る(ミナぎる)ような生気感が、バンド全てを「ノセて」しまったのだろう。「1954年2月のバードランドの夜」は、大げさではなく奇跡の夜だったのだ。
そして「その夜の空気感」を再現した「2006年4月の白馬の夜」も・・・これまた素晴らしかった・・・。

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2006年4月 6日 (木)

<ジャズ雑感 第16回> オスカー・ピータースンとVerveレーベルのこと。

僕にとっての少々の不幸、あるいは幸福。

ジャズが好きだ。ジャズのいい演奏が好きだ。だからレコードを聴く。そうして好きな演奏の入ったレコードは何回でも聴くことになる。しかし、そんな風に好きであるがゆえに「気になること」もある。レコードの音質である。好きなレコードはいい音質で(もちろん盤質も含めて)聴きたい。これは・・・特にアナログ盤に踏み込んでジャズを聴いている方には全く共通な気持ちだと思う。_003
                     《オスカー・ピータースンのclef盤。Nostalgic Memories(1951年)         
     とても好きなジャケットだ。見ているだけでちょっと幸せな気分になってくる》

ちょっと前まで・・・・ 「同じレコードを何種類も持つ」なんてことは全くばかげてる・・・と考えていた。~日本盤でも外盤でもいいじゃないか、とにかくその盤の中身を(その演奏)聴こうよ。その方が大事だよ~という気持ちだった。今も根本的には考えは変わってないのであるが・・・このところ、そんな信条とは大いに自己矛盾した行動をとっているようだ(笑)
内容が気に入ったタイトルについては、日本盤だけではあきたらず、そのオリジナル盤(2nd,3rdも含めて)を、隙さえあれば集めようとしているのだ。
「隙」というのは、つまり・・・「お買い得であれば」という意味である(笑) そうして、本当に「オリジナル盤」は、国内盤より「いい音」なのか・・・あるいはそれほどでもないのか・・・そんなことを意識し始めたのである。だから・・・このところ急激にオリジナル盤の数が増えつつある。「いい音質で聴きたい」という気持ちにウソはないのだが、一方では「比較検証自体」に楽しみも覚えている。国内盤とオリジナル盤の音質の違いは、どうやらレーベルによっても相当に違うようなのだ。全てのケースにはもちろんあてはまらないが・・・1965年くらいまでの録音音源の場合は、やはり、その時代のオリジナル盤の方が日本盤より「いい音」の場合が多いようである。
ここでいう「いい音」というのは、楽器の音色や鮮度や空気感みたいな部分に絞っての「いい音」ということだ。古い盤はどうしても盤質が悪いことも多い。(高いものだけ入手していればそうではないだろうけど) サーファスノイズに神経質な方だと、盤質がよくない段階~シャー、チリパチなど~でもうオリジナル盤にはそれほど魅力を感じないだろうとは思う。僕も、もちろんノイズを好きなわけではない。特にダメなのは「連続パチパチ」である(笑) これはscuff あるいはhair lineという表現されていることが多いのだが、要は「スリキズ」のことだろう。そのキズが短くてlight(浅い)なものなら大きなノイズにはならないが、deep(深い)な long scuffだと、もう致命的だ。一定のリズムで連続的に「パチッ!パチッ!」とくる。これはもう・・・拷問に等しい。僕がわりあい許容できるのは「単発のチリパチ」である。これならその一瞬さえガマンすれば、あとは大丈夫だ(笑) ネットのオークションなどでdescription(説明)を読むと、マメな業者だと~盤質VG+(但し B-2に3回ノイズが入る)~などと書いてくれている。その曲が大好きな曲でさえなければ、こういうごく部分的なノイズを、僕はわりとガマンできる(もちろん価格との折り合いをつけて、という意味だが) だからちょっと強がり的に言えば・・・「盤質は悪いが、音自体はいい」という表現も、充分にありうるのだ(笑) なぜガマンできるのか・・・楽器の音色が生々しいからである。管楽器やヴォーカルの音色が(元々の録音のいい悪いが一番重要だが)うんと良く感じられることが多いように思う。それにベースやドラムの鳴りが、よりクリアに聞こえることもあるかもしれない。まあそんな各論より~パッと聞いたときの「全体の鮮度・雰囲気」がより生々しくなったような印象を受ける~ということだと思う。そういう盤に当たった時はやはりうれしい。僕の場合は、かなり適当だが、日本盤の音質~ドラムやベースの具合、全体の楽器のバランスなど~から、元々の録音の良し悪しまで推測する。素性の良さそうな録音だと感じれば、そのオリジナル盤を狙うのだ。

_001さて僕が経験した中で、国内盤とオリジナル盤の音質の違いを最も大きく感じたレーベルは・・・Verveである。
Verveの国内盤は、ここ何十年ほとんど「日本ポリドール」だったはずだ。Verveというと・・・僕はオスカー・ピータースンという人を、ほとんで聴いてこなかった。いや、どちらかというと・・・無視していた(笑) 何枚かの有名盤は聴くには聴いたが、それほど愛着が湧いてこなかった。彼のピアノ・スタイル自体があまり好みでなかったとも言えるが、加えて・・・日本ポリドール盤のピーターソンやエヴァンス・・・何を聴いてもあまりいい音に感じなかった。ピータースンはともかく、大好きなビル・エヴァンスの場合でも、Verveのピアノ音には魅力を感じなかった。音圧が低いというか、線が細いというか、vividでないというか・・・もちろん僕の使っているステレオ装置も悪かったのだろうが、他レーベルで聞かれるピアノ音よりも「良くないなあ・・・」と感じることが、特にポリドールのVerve盤に多かったように思う。
ところが・・・たまたま入手した THE TRIO:Live From Chicago(Verve Stereophonic)を聴いた時、どうにも日本盤と比べると 「鮮度」「その場の生気感」みたいなものの違いに驚いてしまったのだ。さて Live From Chicago を一聴して一番に驚いたのは・・・ピアノよりもベースのレイ・ブラウンの音が、それまで耳にしていた音とは、もう全然違ったことである。ベースの音色が一枚ヴェールを脱いだように生々しく響いたのだ。そしてレイ・ブラウンが意識して弾いていたであろう、一音一音の「音圧」が、よりvividに伝わってきたのだ。同じ日のロンドンハウスでのライブ録音「サムシング・ウオーム」の日本ポリドール盤と比べても明らかに、音場全体の「鮮度」「音圧感」が違う。そんなわけで、このLive From Chicago はすぐに僕の愛聴盤になった。オレがあのピータースンを聴いている!不思議だが本当にしょっちゅう聴くようになったのだ。これには~オリジナル盤自体の凄さを発見したことだけでなく~もうひとつの理由があったのかもしれない。ちょうどその頃、アンプを真空管のものに、そしてスピーカーをちょっといいやつ(共にアメリカの60年代のもの)に換えたのだ。そしたら・・・楽器の音色に、より厚み・深みが出てきたようだし、特にベースの音圧感がよく出るようになったのだ。そのこともあって、だから余計に、レコードに入っている(録音された)楽器の音色の鮮度や厚み、音圧みたいな部分にに拘るようになったのかもしれない。いずれにしても・・・その頃からピータースンをかけることが多くなってきてしまったのだ。ピアノ弾きとしてのスタイル(「精神性の部分」といってもいいかもしれない)が好みでない、という理由で聴くことを拒否していたはずのピータースン。しかしこのLive From Chicagoから飛び出てくる、なんというか・・・ピアノのダイナミズム(すごく小さな音で弾いている部分とグワ~ンと弾きこんでくる部分の落差!それから、レイ・ブラウンのベースの音圧・・・要は「出てくるサウンド自体の快感」みたいなものに、初めて気が付いたのかもしれない。オーディオ好きの方ならそんなことはあたりまえの感覚なのだろう、と推測する僕である。
ただ、正直に言うと・・・このことは僕にはちょっとした不幸の始まりかもしれない。そんないわゆるオーディオ的な部分とは関係なく、ひたすらにジャズを聴いてきたはずの僕が、「サウンドの快感」を知ってしまったのだ!ちょっと大げさだが、そんな気持ちになった。今でも少しそう思っている。不幸というのは自分への皮肉も込めてそう言うのだが、自分の興味を~いわゆるオーディオへ向かわせたくない~という妙に意固地な部分もあるし、何より限られた時間と可処分所得を、ただひたすら「レコード盤」に使いたいのだ(笑) 今のところ、自分としては・・・この真空管アンプと古い米スピーカーに換えたことで「もう充分」という区切りをつけているので(ちょっと無理やりかも:笑))現実に「不幸」になっているわけではないのですが(笑) _002

他にもピータースンの米Verve盤をいくつか持っている。有名なNight Train(1962年) West Side Story (1962年) ~Trio Plays(1964年)
それから We Get Requests(1964年) (共にT字MGMーVerve)などである。 これらを今、聴いてみると・・・もちろん日本盤よりは相当にいいのだろうが、Live From~に比べると、どうしても「鮮度感」「生気のある感じ」という点でやや落ちるようだ。あれほどの「凄い音」ではないように感じる。
僕は「ライブ録音好き」だ。だから、あるいは・・・これらのスタジオ録音からはライブでの臨場感を得られないために、それほど「いい録音」と感じないだけかもしれない。但し・・・We Get ~と West Side ~の2枚は、レイ・ブラウンのベースに関しては、かなりいいように思う。右チャンネルから、レイ・ブラウン特有のあの重いビートのベース音が聞こえてくる。同じVerveというレーベルの中のピータースンに限っても、こんな具合に違いがあるのだ。そんなわけで・・・ピータースンのVerve盤で、僕が本当に「凄い音」(ピアノだけでなくベースやドラムスも含めた録音として)と感じたオリジナル盤は、まだこの「Live From Chicago」1枚きりなのである(笑)こうなると・・・ピータースンもVerve盤は、全てStereophonic ラベルで揃えたくなってくるのだ(笑) ただどのタイトルにStereophonic ラベルが存在するのかもはっきりとは判らない。Stereophonic ならどれもこれも素晴らしいのか?それもはっきりしない。僕はそう確信しているが・・・いろいろなお仲間からの情報では・・・どうやらことはそう単純ではないらしい(笑) Stereophonicでも、古いモノラル録音を加工したものはダメなんだろうし、また逆にT字Verveでも、エラの「クラップ~」のように凄い録音(という定評あり)の盤もあるのだ。一般的には・・・いわゆるVerveのT字ラベルでも、MGM-Verveと、それ以前のVerve Inc.と比べると、どうやらMGMが付かない方(古い)が、音はいいらしい、ということも判ってきた。それから、録音年代が1963年くらいからのタイトルは、おそらく「MGM-Verveラベルがオリジナル」のはずなのだが、 1962年くらいまでの録音のもののオリジナルプレスがどのラベルなのかも、よく判らない。
いずれにしても・・・タイトルごとでの「音質の出来・不出来」は、レーベルと年代で全て決定されるわけではなく、その時々の「録音のいい悪い」によって・・・全然違うものになってしまう、ということかもしれない。そのタイトル毎での違いと、プレス時期の違いと、さらに個体差(盤質コンディションなど)も大いに出てくるわけで・・・こりゃあ全くキリのない世界ではある。

今は、少なくともピータースンのVerve盤に関しては・・・間違いなく国内盤より米盤の古いプレスの方がいい、と確信している。そしてVerve以前のClef,Norgranは、録音年代が古いものでも、アート・テイタムやピータースンのピアノの音色も~独特の鋭さ・温かさのあるいい音なのだ~それから特に、サックスなどの管楽器の音色が別格の音~これはもう音色の鮮やかさ、音圧、厚みなど素晴らしいのだ・・・管楽器から出てきた空気の塊りが、実体の「気配」を持ってそこに飛び出てきたかのような音~であることも~数少ない手持ち盤を聴きながら~だんだんと判ってきた。音だけでなくジャケットも含めての「時代の雰囲気」・・・これには抗しがたい魅力を感じる。

 《ピータースンのclef盤3タイトル~「背中シリーズ」1枚だけ、[Harold Arlen]を入手。左の盤は[Plays Count Basie]、下にちょっと見えるのは[Recital by Oscar Peterson]  盤はどれも重く、それがうれしい》
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この辺りの「気配」や「雰囲気」にマイッた方は皆、数少ないオリジナル盤を狙う。だから・・・Clef,Norgranは、世界中、どこでも値段も別格のようだ(笑) 仕方ない。それだけの魅力があるのだから・・・。
いずれにしても・・・僕はこれからも大いなる自己矛盾を抱えながら、それでもレコードを集めていくのだろうなあ・・・(笑)

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2006年3月 5日 (日)

<思いレコ 第8回> Bill Perkins/Quietly There

気になる作曲家、その名は・・・ジョニー・マンデル!

「いそしぎ」という曲がある。この曲の原タイトルは もちろん the shadow of your smile という。映画に使われた曲なので、その映画のタイトルthe sand piper を邦訳してこのタイトルになったのだろう。海にいるシギという鳥のことを意味してると思うが、僕らは単に「イソシギ」というサウンドで・・・ああ、あのいい曲ね、と理解している(笑) 僕はとにかく、この「イソシギ」が好きだった。自然に展開していくメロディ。淡々としながらも品よく盛り上げる後半のメロディ。あまりに有名なので、ちょっとポピュラー的なイメージで捉えられているかもしれないが、文句のない名曲だと思う。

ハンプトン・ホウズの I’m Old Fashioned(contemporary) _004

B面1曲目が、その<the shadow of your smile>だ。1966年4月のライブ録音なので、この曲の録音としてはわりと初期のものだろう。ベースはレッド・ミッチェル。なかなかいいピアノトリオ盤だと思う。

A Time For Love という曲も実にいい。この曲を・・・僕はアイリーン・クラールの唄で何度も聴いた。この曲の入ったクラールのLPを 寝る前に、ポータブルのプレーヤーで聴いた時期がある。LPの途中で眠ってしまうこともあり、だから正確には「眠りにつきながら聴いていた」というわけだ。そんな風に繰り返し聴いているうちに・・・この曲のメロディが、体の中に染みわたってしまったようだ。A Time For Love は、しみじみとした感情で人生を振り返りながら・・・しかしこれからも生きていくのだ・・・みたいな厳しさをも感じさせるような素晴らしいメロディをもつ曲だ。ちなみにこのクラールのピアノとデュオのアルバムは、本当に素晴らしい。いつかまたアイリーン・クラールのことも書いてみたい。そういえば僕の好きなトニー・ベネットも、この曲をいい感じで唄っているはずだ。

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Emily~これもいい!3拍子の曲なんだが、もう一言・・・チャーミングなメロディなのだ! 好きだなあ・・・この曲。最初にこの曲を聴いたのは・・・ビル・エヴァンスのソロピアノのアルバムだ。左の写真がそれ。

further conversation with myself(verve)

レコードを集めるようになってわりと初期の頃だったので、VerveにMGM-があるとかも何も知らなかった(笑) ちょっとこもったような音質のMGM-Verve盤ではあったが、エヴァンスは、この曲、Emilyを一人で多重録音して・・・夢見るようなスイートさを生み出していた。それでこの曲を好きになった。チェット・ベイカーも、よくマンデルの曲を取り上げた。初期のパシフィック盤にはたしか何曲か~Keester Parade やTommy Hawk~入っていたと思う。

これらのどれもが、ちょっとしゃれたメロディの曲であり、いつも「はっ」としてクレジットを見ると・・・ジョニー・マンデル・・・ということが何度かあった。
そんな風に気になる作曲家であるジョニー・マンデルだった。
そうしてそんなジョニー・マンデルの曲を集めた素晴らしいレコードがあったのだ。先日、そのレコードを入手した。

Bill Perkins/Quietly There(riverside)である。録音が1966年なので、この写真の盤、「abc Riverside茶色の環ラベル」がオリジナルなのかもしれない。_002





         






ジャケットがまた地味というか・・・小さめな写真に  Bill Perkins Quintet featuring Victor Feldman と Quietly There というタイトルが載ってるだけだ。表ジャケのどこにも Johnny Mandel の名前などない。 裏ジャケの曲名を見て・・・初めて全9曲ともに 作曲が Johnny Mandel だと判るのである。せめてジャケ表に一言、 Mandelの名前を謳ってくれれば、もう少し早くにこのレコードを買っていたかもしれないのに(笑) もっとも・・・Jhonny Mandel という作曲者だけでなく、ミュージシャンからジャケットまで、このレコードは・・・もう徹底的に地味なのである(笑)

このレコードに前述の Emily と A Time For Love が入っている。そうして、これらが・・・絶品なのである。

Emily~パーキンスが、バス・クラリネットで静かに吹き始める。かなり遅めの3拍子に乗って、ゆったりとあの素晴らしいメロディを吹き進めていく・・・パーキンスの音色を聴いているうちに・・・一枚の風景画を眺めているような気分になってしまう。そして・・・気がつくと音楽が終わっている・・・そんな感じなのだ。たとえようもなく「優しい」世界だと思う。

最初に左チャンネルから、この Emily のメロディが流れてきた時、「えっ、この音色は何なんだ?」と思った。低くて軽くこもったような・・・でもバリトンのように大きく鳴った感じではない。なんだろう? とクレジットを見ると・・・bass  clarinet と書いてある。ああ、あのバスクラかあ・・・と、すぐにエリック・ドルフィの バスクラのソロ God Bless The Child を想い出した。ドルフィのバスクラ、あれは・・・自己というものを、もう徹底的に表出したような凄い世界だった・・・。このパーキンス盤でのバスクラは、全くそういう自己表現の世界ではない。しかしこの楽器をセレクトし、アドリブパートでも、フレーズがどうとかではなく、このバス・クラリネットの「ひっそりしたような音色」のソノリティを楽しむような・・・そんな唄わせ方をしているようだ。「ひとつの素晴らしい曲がある。その曲のスピリットを自分の感性で描き切りたい」というような切実さというか静かな気迫のようなもの~僕はパーキンスという人にそんな凄みさえ覚える。

そんなパーキンスでも、一人でこんなに緻密な工芸品のような世界を創り上げることは難しかっただろう。そこで、それなりの職人たちが必要だった。その職人たちとは~
まず、ヴィクター・フェルドマンの「しっとりした」ピアノが、優しい雰囲気をかもし出す。このパーキンス盤では、随所で vibraphone も叩いているが、全くやかましくならず、とてもいい感じに響いている。ヴィクター・フェルドマンという人の「しっとり感」は素晴らしい。マイルスの Seven Steps to Heaven のLAセッションの方を聴いて以来、大好きになった人だ。
ガットギターも聞こえてくる。ガットならではの本当に優しい音色。このギター弾きはJohn Pisano という人である。ガットでとるソロもも実にいい。
それから、ベースがレッド・ミッチェル。この人は、ベースの1音1音がしっかりと鳴っている。リズム感、ウオーキングライン、音程、アドリブ。どれをとっても本当に巧いのだ。ドラムはラリー・バンカーだ。
全員が揃いも揃って・・・本当に「趣味のいい」ミュージシャンだと思う。

もうひとつの名曲~A Time For Love。
パーキンスは今度はフルートを用いた。普段、僕はフルートのジャズはほとんど聴かない。savoy盤などを聴いていて、フランク・ウエスが(テナーは嫌いではないが)フルートを吹き出すと・・・どちらかというとノー・サンキューである(笑) しかし、このマンデルの名曲~A Time For Love でのパーキンスのフルートは・・・これも絶品である。録音もいいせいか、フルートの「鳴り」が豊かなので、サブトーンばっかり強調したようなヒュー、ヒューというような(笑)という感じではない。この曲でも「自分の感性で描き切りたい」という意思を強く感じる。外見的なアレンジ、というより、曲を解釈するその気持ちをもアレンジしているかのようだ。そしてその意思が全員に伝わったのだろう。各人が、実にキッチリと丁寧なバッキングをしており、味のあるいいソロをしている。

僕はもともと、一人で多くの楽器を奏するマルチ・ミュージシャン的なタイプはあまり好みではなかった。アレンジもできるスタジオミュージシャン的なタイプだと、仕事柄、仕方ないとはいえ・・・さあアルトだ、さあ今度はテナーだ、いや、バリトンだ、てな感じで、なかなかその人の本当の個性みたいなものが伝わってこないような気がする。いろいろなレコードを聴いてるうちに、それでもアル・コーンにはテナー、バド・シャンクにはアルト、とやはり「本領」を発揮できる楽器があるのだ、という風にわかってきた。その「本領」楽器で何枚かいい盤は必ずあった。ところが、パーキンンスの場合は違った。西海岸ものを聴くようになって、ビル・パーキンスという名も覚え、リーダーアルバムのパシフィックの2~3枚を聴いたのだけど、共演のペッパーの方に耳を奪われるばかりで、このミュージシャン自体には、特別な印象は持っていなかったのだ。だから・・・この盤を何度か見かけたはずだが(ジャケットだけは、だいぶ以前から知っていた)、録音が1966年とわりと新らしめということもあり、入手するには至らなかったのだろう。
そのパーキンスは、このレコード~Quietly There でも、やはりマルチであった(笑)しかし・・・今の僕は、そのマルチぶりが全くイヤではないのだ。逆に、こんな風に曲によって、 使う楽器を替えることで、それぞれの曲の味わいみたいなものを表出させた・・・いや、それ以上に、ジョニー・マンデルの曲だけで一枚のアルバムを創ろう、としたビル・パーキンスに甚く(いたく)感心している。推測だが、スタジオの仕事が多かったパーキンスが、ついに「自分の趣味」でアルバムを創ることになり、だから、選曲をしていくうちにマンデルだけの作品に絞ることにして、それからパーソネルを練り上げて、リハーサルをして、どの曲をどんな具合にクックするか・・・そんなことに相当に時間をかけてきただろうなあ・・・と思わせてくれる、本当に丁寧で質の高い、そして素晴らしいアルバムだと思う。

ビル・パーキンス/Quietly There(riverside)このアルバムは、とても地味だが・・・この先も間違いなく僕の愛聴盤であり続けるだろう。出会えてよかった・・・こんなレコードに。僕はうれしいのだ。
こんな未知の盤にも、まだこんな風に素直に「いいなあ・・・」と感じられるものがあった、ということが。
ジャズにはいいアルバムがいっぱいだあ!・・・ますますやめられない(笑)

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2006年1月 1日 (日)

<旅レコ 第11回>ロス(郊外)&ホノルル編 

やったあ!アラモアナの裏通りにて中古盤店を発見!ついにLP盤を・・・。

99年6月、「アメリカ」に初めて行った。ロス&ハワイでの流通業の研修だ。ロスについてから、すぐにバスであちこちの巨大ショッピングセンターを次々に回っていった。僕は、ロス=ハリウッドと思い込んでいたので・・・遠くに小高い山々も見えたりすると、あの景色が~山に彫られた人物像たち~今にも現れるのではないか、とバスの中できょろきょろしていた。ところがロスと言ってもやけに広いのだ。観光とは無縁の研修の一行は、うんと南の郊外の辺りをグルグル回っていたようだ。宿泊もコスタメサという街で・・・あとでよく地図を見たら・・・結局、ハリウッド周辺には近づいてもいなかったのだ(笑)

オレンジ郡のショッピングセンターで昼食をとった後、記念すべきアメリカ初の個人的買い物をした。Bordersという書店の中のCDコーナーでCDを1枚だけ買ったのだ。こんな郊外の巨大ショッピングセンターには、LPなんかとてもありそうにない。ここはCDで我慢だ(笑)選んだのは・・・スタン・ゲッツ「Plays Burt Bacharach」$12.99~ちなみにアメリカの値付けというのは[$~.99]というのが多いようだ。別に$0.01だけ安くしても同じなのに・・・(笑) パっと見た目の気分で衝動を誘発しようというセコイ値付けではある(笑)
このゲッツのアルバムは持ってなかったし、CDでも紙ジャケのゲイト・フォールドなのが、ちょっとうれしい。次に寄った巨大モールでは、また大きな書店でシナトラのCDを2枚入手。これは、バーゲンのワゴンに混ざっていたので、各$6.99と格安であった。

しかし・・・やはりCDでは、おもしろくもなんともない。研修とはいえ、ここはアメリカである。あわよくば・・・レコード盤を扱う中古盤店が見つかるかも・・・などと夢想していたのだが、最新型の巨大モール内に、渋い廃盤店などあるはずもない(笑) 月・火・水と「ロス郊外」にいたのだが、やはり研修なので、昼間も夜も一人で出歩く時間もなかった。ロスでは「レコード」はあきらめるしかない。ロス3泊目の夕食は、ニューポートビーチ(ジャズの映画で有名なニューポートは、東海岸だったはず)という港の街だった。この街は、ヨットハーバーがいっぱいあり、近くの通りもオシャレな街並みだった。ここなら、探せば中古盤店もありそうな雰囲気があった。(最近、米オークションにてコンタクトしたある業者の住所が、このニューポートビーチだった。やはり・・・あの街には中古盤店があったのだ・・・) 食事は、ヨットハーバーに面した店の外のテーブル席だった。寒くもな暑くもなく、潮風が心地よくて「初夏の西海岸」という、おだやかないい雰囲気を味うことができた。

ロスからハワイへ移動。このホノルルには木・金・土だ。また空港からすぐに郊外のショッピングセンターをいくつか回った。合間に、いくつかの店で、シナトラ、チェットベイカーなどのCDを何枚か買った。この時点では、もう LP盤入手をあきらめていたのだ。中古レコード屋さんはどこかにあっても見つける時間も行く時間もない、と思っていた。研修第2ラウンドのハワイでは、24hオープンの食品スーパーの夜間営業の実態調査などもあり、寝不足に苦しんだが、金曜日の夜までに研修の発表など、やっつけるべきことをなんとか終えた。その金曜の夜遅くに、研修の仲間達とホテル近くのタワーレコードまで出かけた。アラモアナショッピングセンターのすぐ北側の通りに「タワーレコード」があることは、地図で調べておいたのだ。宿泊したホテルが、このアラモアナ地区だったので、歩いても5分くらいのところだった。そして実は・・・前日の昼間、バスで移動中に、この「タワーレコード」のちょっと裏通り辺りに「中古盤店」らしき店を見つけていたのだ。ちらっと通っただけなので確かではなかったが、あれは確かに「レコード屋さん」だった。
タワーでは、これまたバーゲンのワゴンからブルーベックやらシナトラなどを選んだが、僕はすぐにそこをを抜け出て、辺りを探りに行った。そして・・・あの店は・・・ちょっと裏の通りのほぼ予想していた位置に、すぐ見つかった。ちょっとパンクっぽいような派手なイラストがペンキで塗りたくられたような店で、「Hungry Ear」という名前だった。やったあ!ついに見つけたぞ!レコード屋を。こうなりゃあ・・・もうCDじゃあ我慢ならん!さあっいくぞ!しかし・・・店の前がなんだか暗い。ドアの看板を見ると・・・21時だか22時ですでに閉店している。そういえば、もうとっくに夜の10時過ぎだったのだ・・・。
だが・・・いいのだ。僕は余裕だった。幸運にも、次の土曜日の午後が「完全自由時間」となったのだ。待望の自由時間だ。明日の午後、もう1回、ここにくればいいのだ!どんなレコードがあるか・・・楽しみだ。

土曜日の午前中、ホノルル東部郊外のショッピングセンターの視察が終わったので、仲間と別れて一人でバスに乗り、市街地まで戻った。さあ、今からは自由時間だぞ! アラモアナショッピングセンターを通り抜け、タワーレコードには見向きもせず通り過ぎ、昨夜の裏通りに向かう。「Hungry Ear」に到着だ。「飢えた耳」とは、またしゃれた名前じゃないか。よしっ、今日は開いている。ワクワクしてくる気分を抑えつつ店に入る。入ると左にカウンター。右側にエサ箱がコの字の壁面と中シマに2列だったか。それほど広い店じゃあない。さあ・・・少しでもジャズがあるのか? ジャズのコーナーはすぐ見つかった。エサ箱で7~8列はあった。中古盤店なので、問題は、価格だ。どんな値付けなんだろう? ジャズを見るその前にチェックしたプレスリーとかは、やはり$40~50$以上はしていたが、ジャズの方は・・・あるある・・・ そうして、たいていのものが$10~$15ほどだ。$7~$8のものもけっこうあるようだ。お店の主力がロック系らしくジャズは・・・かなり安めのようだ。こんな具合だと、あれもこれも欲しくなる(笑) わくわくしながら、とりあえず「これは!」という盤を抜いていく。盤質はあとでチェックすればいいだろう。
この店でちょっとおもしろいのは、ジャケットを包むビニール袋が、透明ではなくやや白みがかったものを使っていることだ。最初は、この「白い濁り」のせいで、レコード全体がなんだかほこりっぽいものに感じたのだが、それは錯覚だった。ビニールから出したジャケットを見てみると、案外どれもコンディションがいいのである。だから・・・この「白濁りビニール」には、たぶんジャケの色落ちを防ぐような効果もあるのだろう。

1時間ほどチェックしただろうか。ざあっと抜いた盤が、軽く30枚くらいになっている。$10平均としても$300ほどだ。VG+くらいの盤質とジャケのコンディションであれば、価格的にはもちろん充分に安いのだから・・・まとめて全部!でもいいのだが・・・それよりトランクにどれだけ入るかが問題だ。持ってきたのは小さめのトランクだったし、6泊分の着替えやらで出発時からからそれほど余裕がない状態になっている。座席に持ち込める手荷物もショルダーバッグと紙袋くらいなので、そちらにLP盤をつめこむ余裕はとてもない。トランクは成田から自宅まで宅急便で送ればいいが、手荷物は自分で持ち運ばなくてならないのだ。レコード盤で重くなった手提げ袋を持って帰る、というのは、いくらレコード好きの僕でも耐えられそうにない。してみると・・・とにかく「LP盤はトランク」だ。それを優先にして、どうしてもはみ出るCDやらおみやげなど軽めのものを、大きめの手提げ袋で手荷物にすればいいだろう。ただ、トランクに非常にうまく詰めたとしても、10枚くらいが限界だろうな・・・。そんな段取りを考え、目標を10枚に設定した。ここから・・・いよいよ盤質をチェックした上での絞込みが始まるのだ。

中身の検盤をする際・・・無断じゃまずいかな、と思い、カウンターの若い男に I want to check the surface.OK? と聞いたら、No Problem! とすぐにOKしてくれたので、僕は一枚一枚の盤質チェックを始めた。さて、ここからがなかなか大変なのだ。何かとセコイ僕は・・・あれこれと悩むのだ(笑)振り落とす優先順位は・・・まず、「盤質がイマイチ」なもの。それに「日本盤を持ってる」「案外よく見かける」「OJCでも出てるはず」「買っても聴きそうにない」・・・いろいろな屁理屈をつけて、絞っていくのだ。まあ・・・この絞込みが苦しくも楽しかったりする(笑)

そんな風で、また30分くらいはかかったかもしれない。最終的には・・・やはりまず「持ってないので聴きたい盤」と「今後も含めてその盤の手に入りにくさ」(ほとんど思い込みだが)をポイントにして絞り込んだ。
当時、集めだしていたCadet盤のラムゼイ・ルイスを以下の4枚。herb_ellis__rumsey_lewis4_007

Wade In The Water
Never On Sunday
Hang On Rumsey
The Piano Player

「Hang On Rumsey」~これはライブ盤で、ビートルズのA Hard Days Night や And I Love her を演ったりしているのだが、
これが案外、悪くない。ラムゼイルイスという人は・・・もう体質として8ビートフィーリングが自然に湧き出てくるタイプのようで、しかし・・・とにかく聴き手を楽しませてくれるピアニストだ。だから、このライブ盤では、聴衆がもうノリノリになっていく様子がよく判る。特に売ろうとしてビートルズの曲を取り上げたのではなく、単にこの場の聴衆を喜ばせよう、という芸人の精神の塊りのような人なのだと思う。ジャズロック風の曲の合間に混ぜるバラードも、ソウル節・泣き節がいっぱいのちょっと「クサイ」バラードではあるが(笑)・・それも僕は嫌いではないのだ。

<やったあ度>が高いのは・・・これだ。
Herb Ellis/Three Guitars in Bossa Nova(epic) 
herb_ellis__rumsey_lewis4_006

3ギターというタイトルにあるとおり、ハーブ・エリスとローリンド・アルメイダ、もう一人、ジョニー・レイというギター奏者。
これに、管が1本だけ~ボブ・エネヴォルセンがテナーのみ(この人、普通はどちらかというとヴァルブ・トロンボーン奏者として知られているように思う)で参加しており、このテナーが・・・これが実にいい味わいなのである。ギターやドラム以外の打楽器も加わり、ボサノヴァ好きの僕としては、これはもう予想外に素晴らしくリラックスしたいい演奏の盤である。この盤は、存在さえ知らなかったので、とてもうれいし1枚となった。エピックというレーベルは、案外、復刻がなされてないので、まだまだ未知の盤があまたありそうである。ちなみに写真の下の方に見える「黄色い内袋」は、エピックのオリジナルなのだろうか?広告・活字が一切ないので、全く別のものかもしれないが・・・見た目や紙質に「古み」があるし、センターラベルの色と合わせたオリジナルのinner sleeve のような気もする。(どなたかご存知の方・・・ぜひ、お教え下さい)

Gerry Mulligan/Concert Jazz Band on Tour(verve)T字/銀・黒~残念ながらMGM-Verveです~mulligan_on_tour

マリガンの「コンサートジャズバンドもの」は、いろいろなタイトルがある。At The Village Vanguard(こげ茶色のジャケのやつ)も悪くないが、僕はズート・シムスが好きなので、シムスが加わっている「白のマリガン」~[Concert Jazz Band](<夢レコ> 9月27日の記事「ジャズ10時間聴きまくり」で紹介しております)や、この[Concert Jazz Band on Tour] の方が、より気に入っている。そして、この「~on Tour」は、ゲストソロイストとしてズート・シムスの名をジャケットにわざわざ載せているだけあって、シムスの出番は、この盤が一番多い。シムスのソロも、全体の内容もすごくいいのに・・・なぜだか、この「~on Tour」は、意外と見かけないように思う。

他には・・・エロール・ガーナー(columbia)、ジャキー・パリス(wing)、ジョニー・ホリデイ(kapp)など13枚に落ち着いた。
この時、候補に残していたはずのブルーベックのcolumbia盤2枚は・・・なぜか忘れてしまったのだ。デスモンドも好きなので、最終選考にも残してもよかったのだが・・・はっきりした記憶がないのだが、盤質が悪かったのかもしれない。

アメリカ(ロス&ハワイ)での入手盤は・・・僕の手書きリスト(6月13日の記事<ジャズ雑感 第1回>レコード買いの記録~究極の時系列・・・いや、単に横着な僕のレコードリスト)の欄外に、こう書いてある。
CD  17枚($211)
LP  13枚($126)
今、この数字だけ見れば・・・LPを13枚しか、と思うのである。CDなどには目もくれずにおけば、その「厚み」のスペースであと10枚くらいはLPがトランクに収納できたかもしれないと(笑) もっとも・・・中古レコード盤を入手できたのは、帰る前日の午後である。それも予定にない半日の自由時間ができたことで可能になったことだった。アメリカについてからの月~金までは、「LPは無理かあ・・・じゃあせめてCDでも・・・」という止むに止まれぬ心情だったのだ。やれる範囲でやったのだ(笑) いずれにしても・・・僕はこの8日間を・・・研修よりもレコードゲット作戦に心を砕いていたようだ(笑)

ちなみに、トランクへの「詰め込み作戦」は、本当にピッタリ!13枚のLPを中心に考え、そこから全てを始め、タオル・シャツ・トレーナーなどをうまくパッキングに使い、ギュウギュウに押し込み、なんとかトランクのフタが閉めた、という状態であった。当然、もの凄い重さになった。空港では、仲間に「ちょっと提げてみて」とやり、みんながびっくりするのを楽しんだりした。傑作なのは・・・成田からの宅急便の扱いの時、「あまりにも重いので規定外です。破損があっても保証できませんがよろしいですか?」と書類にサインさせられたことだ。それくらい重かった(笑) 
そうして、成田でもトランクは開けなかった。冗談ではなく、一度フタを開けたら、もう締まらなくなるだろう・・・と思ったのだ。だから中身のチェックもしないまま、宅急便に預けてしまったのだ。
そうして月曜日の夜、自宅に帰り着いたが、「トランク」は翌日、自宅に戻ってきた。外見は大丈夫だ。さあ・・・果たして中身は無事なのか?
~飛行機の荷物室と空港での乱暴(であろう)取り扱い。それから成田からの長距離トラック~これらの難関をうまく乗り越えられたのか? 僕は・・・緊張してトランクの鍵を開け、フタを開けた。グルグルに囲ってあるタオルや衣類の詰まった袋などをとりのぞき・・・いよいよ、レコード13枚の袋を開けてみる・・・・・おおっ!大丈夫だ! どのレコード盤も無事だ。ジャケットのカドも全く曲がってない。盤も大丈夫だ。全て問題なしだあ~!

この時は、本当にうれしかったし・・・何よりほっとした。無理して詰めた「レコード達」に何かがあったら・・・重い荷物を嫌がったこのオレが・・・ちょっと横着をしたために、レコードが痛んだことになってしまう。たぶん、そんな気分もあったのだろう。そういえば、ひとつだけ軽い被害があった。1枚だけ、CDのプラケースがひび割れていた。トランク内で寄りかかった重量に押しつぶされたようだ。やっぱり「プラスティック」はだめだな。「紙」ならどんなに押されても、割れたりしないぞ(笑)  かなりの屁理屈ではあるが・・・やはり・・・アナログは素晴らしい!

それにしても・・・この出不精な僕が、またいつかホノルルに行くことなどあるのだろうか? 飛行機の10時間さえなければ・・・すぐにでも行きたい(笑)

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2005年9月27日 (火)

<ジャズ雑感 第8回> ミニ杜の会~大阪:Yoさん宅でジャズ10時間聴きまくり!

Verveというレーベル・・・Contemporaryというレーベル・・・。

先日、大阪のYoさん宅におじゃまし、いろんなレコード、CDを聴きまくりました。翌日のお昼すぎまで、計10時間強!ランダムに選びながら、多くのレコードを聴いたのだが、事前に決めていたことがある。Yoさん手持ち盤と僕(bassclef)の手持ち盤の中に<同一タイトル/センターラベル違いの盤>のものがいくつかあったので、それらを聴き比べてみることだった。その辺りに絞って話しを進めてみます。なお、デジカメ持ってくのを忘れたので、Yoさん手持ちのレコードの写真はありません。いや、持っていても・・・聴くのと話すのに夢中で、多分、写真撮れなかったでしょう(笑)

050907_001 マリガンの「The Concert Jazz Band」~
<Stereophonic>(写真なしです。残念!)
<T字MGM Verve>
<黒トランペット(モノラル)>

YoさんのStereophonic、こちらが残りの2枚、計3種の Concert Jazz Band がソファの上に並んでいる。Stereophonic盤は、どうも普通のT字Verveより、音がいいらしいぞ・・・とは思っていた。オスカー・ピータースンのライブ・フロム・シカゴ(verve:stereophonic)を愛聴しているのだが、ピータースンの他のVerve盤諸作より、格段に「音が生き生き」しているのだ。ピアノの音色につやがあり、レイ・ブラウンの音色も「よく締まったそれでいてブウンと伸びるいい音」で入っているように感じていた。これは、たまたま「ライブ・イン・シカゴ」の録音(ロンドンハウスというライブハウスでの実況録音)が素晴らしかったのかもしれないが、もう1枚持っていたエラの「シングス・ガーシュイン」これも、盤質は悪かったが、同質の良さを感じていたことから類推して・・・やはりStereophonicというラベルの盤は、「一味違うぞ」とほぼ確信していたのだ。そんな時、Yoさんがサンディエゴの廃盤店で入手したマリガンの「白」(Concert Jazz Band)が、そのStereophonicラベルだったことを知った。僕は・・・う~んと唸りました。この「白」のStereophonicラベルの存在は知っていても・・・なかなか手に入らなかったのです。そんな訳で・・・この3種の聞き比べをしよう、ということになり・・・よく考えたらこのことが、Yoさん宅へオジャマするキッカケになったような気もする(笑)

さて・・・3枚の同じジャケットを並べて2人でニンマリ。こういう風景は、見るだけでも楽しい。B面2曲の<My Funny Valentine>という同じ曲を連続して聴き比べてみた。T字Verve、Stereophonic、黒トランペット(これだけがモノラル)の順で聴くことにする。
まずT字~マリガンの吹くテーマのバックに拡がる中編成のハーモニーが、軽くふわ~っと拡がり、いい感じだ。Yoさん、「悪くないよ、これも」。ちょっとうれしい僕。 そして、Stereophonic・・・出だしではそれほど差を感じない。しかし・・・マリガンのソロが始まると・・・やはりバリトンの音色に、より一層のつやが出ているようだ。より生き生きした感じがする。Stereophonicラベルの盤は、全体に「明るく華やいだ雰囲気」が出てくるようだ。
最後にモノラルの黒トランペット~モノラルなので、ステレオの2枚に比べると、やや重く詰まった感じのサウンドだ。これも案外に悪くない。個人的には・・・マリガンのライトなサウンドにはステレオの方が似合うような気はした。しかし、「黒トランペット」ラベルも、やはり侮れない。ちなみにこの「黒トランペット」は、3年ほどまえに、大阪・梅田のLPコーナー本店で手に入れたものだった。

「ノーマングランツジャムセッション#8」~050907_003
<Clef>
<verve 黒トランペット>(Verve clef-sereis)
8月の「ニーノニーノ杜の会」で、Yoさんが持ちこんだこの盤を聴いてBoseさんが「煩悩に火達磨」になってしまった、という話し~
僕もたまたまこの盤の Verve Clef-Sereies(ジャケは同じデザイン)を愛聴していたものだから~大いに納得してしまいました(笑) それじゃあそのClef盤もぜひ聴いてみたい、ついでにVerve clef-sereies 盤との聞き比べもしようじゃないか、ということになりました。普通に考えると、Clefとして#8が出ていたものを何年か後に、Verve clef-sereies として再発したのだと思う。Clef盤の音の良さは(特にサックス)2~3枚だけ持ってるClef盤(10インチ音源を12インチ化したシリーズ)で、もう充分に知っているので、これは、相当に差があるだろう・・・との予測はついてはいた。最初にかけたのは「Verve 黒トランペット」。普段から案外にいい音と思ってたが、Yoさんのシステムでも、きゅっと締まった聴きやすくいいモノラルの音質だった。ちょっとうれいしい僕。しかし次にかけたClef盤のサックスの音が鳴った瞬間・・・やはり「違う」。何が違うか、というと・・・サックスの音色に、もっと「こく」が出てきて、より「生き生きと」した音色になった。(ように感じた) さきのマリガンのバリトンの音色と同様、違いというのはそれほど大げさには出ないが、楽器の音色に、より「つや」が出てくるようだ。そうして、その「音色を味わう」という次元での差というのは・・・そのレコードの演奏を好きになればなるほど、ものすごく大きな差に感じてしまうのだ。Boseさんの「火達磨」・・・よく判ります(笑) その後、その「火達磨」は、見事に治まった由。この盤が見つかってよかったですね、Boseさん。こちらもいつかあのClef盤、欲しいものです。

ロリンズの「Brass & Trio」(Stereophonic)~ 
これは、僕の手持ちがT字Verve。今回持参しなかったので、僕の記憶との比較。僕は、ポリドールの国内盤と T字Verve MGMを聴いているが・・・どちらの盤でも、あんまりいい録音とは言えないように思う。ロリンズのサックスにエコーがかかりすぎ、ブラス陣が入った関係からか、全体のサウンドが、どうもすっきりしないような印象がある。そこで、このStereophonic盤の登場だ。聴いてみると・・・全体のサウンドの様相に変わりはないが、やはり・・・ロリンズのテナー、グライムスのベース、そして全体のサウンドが、T字Verveよりは、鮮度が高いように聞こえた。もっとも・・・このBrass & Trioは、元々「メトロ」原盤とのこと。だから本当のオリジナルは「メトロ盤」(スタジオらしきところで吹いているロリンズとブラス陣のジャケのやつ)ということになる。一度、それも聴いてみたいものだ。どなたかお持ちでしょうか? できれば、その盤の音の「雰囲気」だけでもお知らせください。

さて、T字Verve と Stereophonic~もちろん個々のタイトルによって、状況は違うだろうが、たいていの場合なら、Stereophonic盤の方が、T字Verve よりも「いい音」だと言えそうな気がする。少なくとも僕はそう感じている。さらに・・・T字Verveでも、MGMと入るものと、それ以前のVerve Inc.というのもある。ニーノニーノのDuke氏によると、Verve Inc.は MGM Verveよりも上質とのこと。これは、同一盤でのサンプルが揃わなかったので、比較はしていない。とにかくVerveというレーベルは、難しい。mercury,Norgran,Clef,そしてVerve。Verve の中でも 黒・黄のトランペット、黒・青・赤・黄(プロモ)のT字Verve、Stereophonic、その後、ようやく MGM T字Verve・・・。これらの各タイトルが、オリジナルと再発も微妙にクロスして発売されてるようでもある。僕がマークしている<Stereophonic>ラベルにしても、どのタイトルで何枚くらい出ているのかも、全く判らないのだ。肝心の「音」にしても、「古いほど音がいい」のであれば、話しは簡単なんだが、そんなこともないようだ。そういえば、Yoさん宅で音質優秀で有名な?エラの「クラップ・ハンズ」(MGM-Verve)をちょっとだけ聞かせていただいた。何の曲かは失念したが・・・イントロのピアノの後から入ってくるウッドベースの音の生々しいこと!輝くようなベースの音色だ。びっくりしてジャケ裏を読むが・・・普通のビッグバンドの普通のベーシストらしく、バックミュージシャンのクレジットなど全くない(笑) ベースというのは(いや、どの楽器でもだろうが)あれだけ「いい音」でレコードに入ることが珍しいので、もうその音だけで、凄いベーシストに聞こえてしまうようだ(笑) だからこそ・・・ラファロやレイ・ブラウンみたいに、どのレコードでも、だいたい同じように「素晴らしい音」で聞けるベーシストというのは・・・逆説的に言えば、それこそが超一流のベーシストである証し、とも言えるのかもしれない。

今回、Yoさんとはいろんなレコードを聴きながら、いろんな話し(レーベル、録音、マイク、コンデンサーマイク、ダイナミックマイク・・・)をしたのだが、両者共に大きく納得したことは・・・<レコードやCDに入っている「音質」というのは、個々のタイトル~そのレコード・CDの録音状態によって、大きく異なっている>ということである。もちろんレーベル(録音技師)で、ある程度は、そのレーベルの傾向みたいなものはあるが、絶対ではない。よく考えてみれば・・・録音スタジオ、録音技師が同じであっても、「ミュージシャン」が違うのだ。楽器も違う。いや、同じミュージシャンでさえ、録音日が違えば、その日の気分(ノリ)、体調、技術の進歩(低下)という要素だってあるはずだ。
レコードはもともとが、一枚一枚、全く違う音なのだ。それを再生する時、だから・・・全てのタイトルが、そのまま同じように鳴るわけがない。こんなようなある種の割り切り、これには僕も全く同感だ。この後、つまり「違う」ということを認識した上での「対処」は、人それぞれだと思う。「レコードにもともと入っているバランスでいい」と思う方なら、そのまま聞くのがベストだろう。この点で、Yoさんの考え方は明快であった。まず「自分が出したい音」をしっかりと自覚している。それから<タイトルごとで音が違う。レーベルごとで音が違うのだ>ということをしっかりと認識し、そうしてそれらのタイトルを、自分の好みバランスに近づけるために「プリ前段階」で調整する、という考え方のようである。「プリ前で」と表現したということは・・・トーン・コントロールは最後の手段ということだったかもしれない。(この辺り、全く僕が勘違いしているかもしれません・・・遠慮なしに、「訂正」「追加」のコメントもお願いします・・・。
具体的には・・・その調整を<LPなら2種のステレオ・カートリッジ/「CDなら2台のプレーヤー>で実践しているのだ。タイトルごとに音が違うとは言っても、やはりレーベルには、基本的なサウンドカラー、サウンドバランスというものもある。Yoさんの中では、レーベルとカートリッジの相性で、ある程度の「棲み分け」が確立しているようだった。

以下Yoさんメール談~
~《カートリッジ2種は どちらもオルトフォンの Jubillie とSPU-SilverMisterです。CDはトランスポート2種で上にあったのがオラクルCD2000で、下にあったのがWadia3200で、DACは共通でWadia-Proです~
~私の常用のSPUは最近の機種でオリジナルに近い元のタイプではないです。ですが、やはり最新の「ジュビリー」と比べると、レンジが狭く重心が低いです。ジャズで言うと、BN,プレスティッジは完全にSPUがいいです。ジュビリーだと妙にやかましくなったり、中域が薄く聴こえたりします。コンポラ、CBS,RCAはジュビリーです。SPUだと低音が重く感じます。それ以外はレコードによってと言う感じです。同じバンゲルダーでもインパルスはジュビリーの方が良い場合が多いです》~

こんな説明も聞きながら、いくつかの同じレコードを、2種のカートリッジで聞き比べてみた。たしかにかなり違う。これはYoさんからも指摘されたが、僕の好みでは、SPUの方がいい、と思えることが多かった。いずれにしても、2種のステレオカートリッジでの変化、レーベルとの相性みたいなものを体感できたことは、とても興味深いことだった。そして、2機種のCDプレイヤーについては・・・(カートリッジでの使い分けと同じ意味合いで) ワディア=SPU、オラクル=ジュビリーとして機能させている、ということで、これには充分に納得がいく。Yoさんは、物事(オーディオ)を非常にシンプルに、しかしロジカルに考えているのだろう。そして背景として「自分の出したいサウンド(バランス)を出したい」という目的がはっきりしてるから、いろんな機器選択・調整が「ぶれてない」ように思えた。というのは・・・いい音(録音)のLPと、いいリマスタリングのCDとを「パッと聴き」した時、そのサウンドカラーにほとんど差がなかったのだ。これこそ、その機器調整が「うまくできている」(Yoさんにとって)ということなのだと思う。余談だが、CDプレイヤーにおいても、僕には、ワディアの方が魅力的な音に聞こえた。「芯のある丸みのある音」に聞こえた。あれなら、古い音源の復刻CDでも(そのCDがある程度のバランスとれていれば)すごく「アナログライクないい感じ」で聞けるだろう。

ちなみに僕は、アンプのトーン・コントロールをけっこういじる(笑) 全く使わないという「原音主義」の方が多いようだが、僕にはそのカタクナさが判らない。端的に言えば・・・レコードに入った状態が、すでにして「原音」じゃあないのだ。そうして、レコードに入っている楽器の音量バランスが、常に適正とは言えないのだ。ベース音が「大きすぎたり」「小さすぎたり」、またはドラムスのシンバル音が「うるさすぎたり」「小さすぎたり」、ピアノの高音が強すぎたり・・・そんなレコードがけっこう多いのだ。僕は、その状態を「原音」としては許容できない(笑) だから・・・そんな時、「トーン・コントロール」を積極的に使って、少しでも聞きやすい楽器バランスに(もちろん自分にとっての)調整する。そうして(僕の装置で聞く場合の)理想のベース音量バランスのレコードが、前述したオスカーピータースン/ライブインシカゴ(Verve:stereophonicラベル)なのである。このレコードでのレイ・ブラウンのウッド・ベースは・・・A・B面とも、「ややオフ気味」に聞こえるかもしれない。ややベースが小さめなバランスに聞こえる。もう少しふくらんだ響きがほしいかな?と思うくらいタイトな音色だ。しかし・・・演奏が進むにつれ、徐々にレイ・ブラウンのウッドベースの音圧・音量が上がってくる。そういう風に聞こえる。このレコードで聞こえるベース・ドラムス・ピアノの音量バランスが、自分にとっての座標と言えるのかもしれない。

Yoさん宅では、この他に Contemporaryの<Stereo>レーベル(ジャケに楕円マーク)と普通のContemporary stereo盤~
これの1st黒ラベルと2nd緑ラベル~の聴き比べもした。まずは、ロリンズの「ウエイ・アウト・ウエスト」~この盤では・・・「Stereoレーベル盤」(ジャケに楕円ステレオマークではなく「Way Out West」の下に大きく「In Stereo」と表記されているやつ)/「ステレオ黒ラベル盤」、/「アナログ・プロダクション盤」・・・以上の3種(全てYoさん)を聞き比べた。曲は<Solitude> どの盤でもレイ・ブラウンの「いいベース音」をたっぷり味わいました。
これについては・・・ニーノニーノさんのHP「こだわりの杜」(9月23日)にも書き込んだので、そこからちょっと抜粋します~
~《それでは、例えば・・・レイ・ブラウンのベース音はどうだったのか。
ソニー・ロリンズ/ウエイ・アウト・ウエスト~ステレオレーベル盤。<ソリチュード>を聴く。この盤でのレイ・ブラウンのベース音。これはもう素晴らしいの一言!全く、タイトにきりりっと締まった、しかしグウン~」とよく伸びるウッドベースの音なのだ。生のウッドベース(アンプ通さずに)聞くとこんな感じだろう、というリアルなベース音であった。真っ直ぐ聴き手の脳髄に食い込むベース音だった。続けて、同じ「ウエイ~」の「普通のステレオ盤」と「アナログプロダクション?」を聞いたところ・・・レイ・ブラウンのベースは、もう少し「ふくらみ気配」(いや、それでも抜群のレイ・ブラウンのベース音なのだが)にしてあるようだ。普通に言えば、こちらのベース音の方が聞きやすいんだろうとは思う。しかし・・・あの「ステレオ・レーベル」のレイ・ブラウンには驚いた。パブロの「エリントン&レイ・ブラウン/ブラントンに捧ぐ」も、「やや硬質でアンプで増幅していない感じの、本当のウッドベース生音」が飛び出てきました。ほんとうに凄いベーシストですね・・・レイ・ブラウンは。》~

ロリンズ/コンテンポラリー・リーダーズ(Contemporary)これは2種のみ。

黒ラベル:ステレオ(Yoさん)
緑ラベル:ステレオ(bassclef)
<How High The Moon>を続けて聴いたが・・・この黒と緑、ベースの響き、、サックスの鳴り、ケッセルのギター、バランスも音質も、ほとんど差が感じられなかった。1stの「黒」の方が圧倒的に良いのでは?と想像していた僕は、2ndの「緑」もまずまずだったので、ちょっとうれしい。Contemporaryの盤をいろいろ幅広く集め、聴きこんでいるYoさんが言うには、「Contemporaryというレーベルは、(おそらく)録音されたオリジナルテープの管理やらが優秀なので、1st,2nd,3rd どれも安定した質で、案外、大きな差がないよ」とのこと。
それにしてもよく判らないのが・・・<Stereo>レーベルである。なんだか、このレーベルにはまっていきそうな感じである(笑)
ああ・・・ジャズは底なしだあ・・・。

追伸:「聴き比べ」以外にも、素晴らしいレコードを聴きました。例えば・・・Bill Evans/Everybody Digs Bill Evans(riverside)ステレオ・黒ラベル  Wes Montgomery/Wes Montgomery Trio(riverside)モノラル・青ラベル  Erney Henry/Presenting Erney Henry(riverside)モノラル・青ラベル   Verve や Contemporary だけでなく、これらの Riverside盤も、「しっとりした」実にいい音でした。この辺りは、また別の機会に・・・。

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