Prestige

2011年6月 4日 (土)

<ジャズ回想 第24回>また、いいレコードをたくさん聴いた。

久々にYoさん宅・・・あっという間の7時間。

毎年、初夏の頃になるとYoさん宅に集まるのだが、今回はホストのYoさん、PaPaさん、denpouさん、recooyajiさん、konkenさん、bassclefの6人が、青い顔したウーレイ(スピーカー)の前に陣取った。皆、声こそ出さないが「ぐへへへ」という顔をしている(笑) さあ・・・お楽しみの始まりだ。

この日、若干の逡巡(しゅんじゅん)の後、Yoさんが選んだのは、ドルフィーのLive In Europe vol.1だった。ドルフィーから・・・というのはこうした音聴き回ではちょっと異例かもしれない。演奏会でもレコード聴きでも、たいてい最初の曲は、ちょい軽めというかリラックスした感じの曲・演奏から始めることが多いように思う。だから・・・初っ端(しょっぱな)からドルフィというのは、なんというか・・・若干、ハードかもしれない(笑) だけどこれには訳がある。
実は少し前に「この頃はドルフィーを聴いている」というYoさんからのメールがあって、じゃあ次回の音聴きで会は、「ぜひドルフィのバスクラ(バスクラリネット)のソロ~God Bless the Childを」とお願いしていたのだ。Pr7304_j_2
E.Dolphy/Live in Europe vol.1(prestige) 2nd紺ラベル
god bless the child 
この演奏・・・ドルフィのまったくの独り吹きである。このバスクラ独奏でのGod Bless the Child・・・僕は高校の時、FM放送から録音したカセットを聴きまくって、そうして大好きになったのだ。
僕はジャズという音楽を中学3年の頃から好きになり、そのうち聴くだけでは飽き足らなくなり、大学のジャズ研でウッドベースを触るようになった。ベースという楽器を選んだのはたぶん偶然だが、僕は「音」に対する感性の根っこがわりと単純らしく、音楽を聴く際、概(おおむ)ね、高い方の音より低い方の音を好むようだ。そんな単純脳の僕が苦手なのは・・・まず、ハードロックのエレキギターの音。あれがダメである。そしてロックのヴォーカルはたいてい甲高い声で叫ぶわけだから・・・これもけっこう辛(つら)い。
ジャズヴォーカルでも高めの声を張り上げるタイプ(例えば~ジュディガーランド)よりも、低めで落ち着いた声質(例えば~アン・バートン)を好む。
ジャズ聴きにおいての「管楽器の音色」についての好みで言えば・・・まずサックスが好きだ。そしてアルトよりテナーだ。
低い方がいいのなら、バリトンサックスが最も好きなはずなのだが、そうでもない(笑) バリサクの音も嫌いではないが、たまに聴くといいなあというくらいで、ハードでゴリゴリなタイプ(例えばペッパー・アダムス)よりも、ライトな音色タイプ(例えばジェリー・マリガン)の方が好みである。
金管のトランペットも、もちろん嫌いではないが、トランペットにおいても、強いアタックで高音域のフレーズを吹きまくるタイプより、ゆったりした音色で中音域のフレーズを吹く方が好みだ。
そうだ・・・トロンボーンも実にいい音色だ。時にはトランペット的なアタックも効くし、何よりもスタンダード曲をゆったりと歌う感じにはピッタリの音色じゃないか。ジャズ聴きも長いがこの15年ほどか・・・ボントロをますます好きになってきている。
クラリネットも・・・いい。実はクラリネットなんて・・・と長いこと思っていたのだが、アート・ペッパーの「家路」を聴いて、あの独特な表現力を醸し出すこの楽器の魅力に目覚めたのだ。あまり音源がないようだが、レスターヤングのクラリネットにも同じような魅力を覚える。ただクラリネットは、奏者によってかなり音色のクセが違い~これはクラリネットに限らないが~わりと甲高い感じの音でパラパラと吹くベニー・グッドマンはほとんど聴かない。好んで聴くのは、ゆったり音色のバディ・デフランコくらいか。ソニー・クラーク入りのバディ・デフランコの音色は、しっとりと暖かく、実にいい。うん、クラリネットまできたな。
そこで・・・・・バス・クラリネットなのである。
これが・・・いい! バスクラというのは、立ち姿が長くてその形だけでも絵になる楽器なのだが、もちろん「音」の方もチャーミングなのだ。くごもったように暗くて、しかし仄(ほの)かに暖かくもあるような、あの不思議な音色。そしてサックスに負けないくらいの音量と音圧感。実は最近、このバスクラという楽器に触る機会があって、ちょっと吹かせてもらったのだが・・・低い方を鳴らした時、体に伝わってくる楽器の胴鳴り振動に僕は痺れた。
そしてバスクラと言えば・・・これはもう、ドルフィーなのだ!Pr7304_l

ドルフィーは、この曲の原曲メロディを、おそらくは、わざと出してこない。始めのうち・・・ドルフィーは、なにやら音をまさぐるように、バスクラの低音域を使ったアルペジオっぽい音階をしつこく続けてくる。そうしてある時~たぶん曲のサビの部分か・・・ここでいよいよ、高い音を吹く。これが・・・とても印象的で、それまでの低い音域でのファットな音圧感豊かな音色とは違う質感の、ちょっと歪んだような、ノドをキュ~ッと絞ったような、そんな悲痛な音色なのだ。でも・・・それが効く。バスクラ独奏においての静と動。抽象と具象という感じがしないでもない。まあそんな解釈はどうでもいい。とにかく・・・このバスクラ独奏は、純粋に「ドルフィーという人間の音の世界」なのだ。僕らはその「音」に、ただ浸(ひた)ればいい。

Yoさんのシステムはバランスがいい。だから7時間、聴いていても音に疲れはしない。音の説明はまったく難しいことだが、あえてシンプルに言えば~
まず低音のエネルギー感が凄い。そのエネルギー感とは・・・量感だけでなくその演奏においての奏者が意図して発したであろう強弱の表現が~ピアニシモ(弱く)とフォルティシモ(強く)の楽器の鳴り具合。とりわけ「ここぞっ!」と強く吹いた・弾いた時に、ぐぐ~っとそこに現れるエネルギー・音圧感・存在感の体現~凄いのだ。これを「音楽的なリアリティ」と表現してもいいかもしれない。
以前から、このウーレイで聴かせてもらうロックのバスドラの音の強弱のニュアンスとそのリアリティ(存在感)に驚いてはいた。ウッドベースも同様である。そして・・・バスクラのような、なんというか低音域に溜めたような音圧感が発生する楽器にも、このウーレイは素晴らしい鳴り方・・・いや、表現をしてくれた。ドルフィー好きが聴いたら・・・これはもう「う~ん・・・」と唸るしかないだろう(笑)
「低音」の話しになったので、ここで、低音全般に拘るYoさんの低音観みたいなものを紹介してみたい。メールやりとりの中で、オーディオに疎い僕のために、Yoさんが判りやすく説明してくれたものだ。
*Yoさんの了承を得てここに転載します。
≪私は「音楽のファンダメンタルは中音だけど、音のファンダメンタルは低音だ」と考えています。私の言う中音とは音楽帯域の意味で楽譜で表される音の範囲のつもりです。SPのようなレンジの狭い(中音だけの音)でも音楽の感動を味わえますから音楽にとって大事なのは中音だという事は当然です。
しかしオーディオで再生音の音作りをするとき最も大事なのは低音と考えています。特に私のように等身大のエネルギー感を出そうとする場合に低音という音のの土台がしっかりしていないと楽器の実在感や本当の臨場感は得られません。
低音が大事な理由のもう一つは最も調整が難しいのが低音で、それが中音以上に影響する事です。
部屋の影響を最も受けやすいのも低音ですし、低音が原因する共振、共鳴の倍音成分が中音以上にかぶったり音全体に悪影響が出てしまったりもします。中、高音のうるさいところなどが結局低音が原因していたという経験は何度かあります≫

さて・・・会の最初のうちは、皆さん、柄にもなく(笑)けっこう遠慮しているので、手持ちのレコードをなかなか出さない。だから、ホストのYoさんがいくつかレコードを選んでいく。

Zoot Sims/Zoot Sims In Paris(UA サックス吹きラベル)
Uaj_14013_j
UAレーベルへの興味からモノラルとステレオの聴き比べもしてみた~Uajs_15013

ステレオではやや左からズート。わずかにエコーがかかったようなふっくらしたテナーの音色か。でもこのエコーは、明らかにこのライブ会場のの自然な響きエコーだから気にならない。 むしろ、いかにも「ライブ」という感じがよく出ていて、そんな音色がリラックスしたズートの芸風ともピタリと合致して、これはもう実にいい雰囲気なのだ。Yoさんも「ズートで一番好きかもしれない」とのこと。Uaj_14013_l_2この「サックス吹きラベル」は、ステレオとモノラルで質感に大きな違いがなく、どちらもいい音だった。「UAはステレオがいい」と思ってはいるがもちろん全てのタイトルにそれが当てはまるわけではないようだ。

Frank Strozier, B.Little, Geroge Coleman~/Down Home Reuion(UA)
Uas_5029_j ステレオ盤(青ラベル)
Uas_5029_l_4   うん、これはいいっ!最初の音が出た瞬間に僕はうれしくなってしまう。ソロの先陣を切るのはストロジャーのアルト。これが実に太っい音色なのだ。ストロジャーというと、vee jayレーベルのfantasticでよく知られているアルト吹きだと思う。
僕はこの人を、ジャズ聴きの初期からマッコイ・タイナーのtoday & tommorrow(impulse というレコードで耳にしていて、その後は、MJT+3というグループや jazzlandの作品を聴いてきたが・・・このUA盤を耳にすると・・・ストロジャーのアルトって、こんなに艶やかでしかも逞(たくま)しい音色だったのか!と驚くほど太い音色と、そしてもちろん気合の入ったいいソロじゃないか。素晴らしい!
それにしても、中央からアルトが押し出してくる、このリアルな音圧感はどうだ。こういう、いい録音の、もちろんいい演奏のレコードを掛けると・・・Yoさんのウーレイ(スピーカー)も、実に気持ちよさそうに鳴っている。
続くソロは、ブッカー・リトル。中央からやや左から鳴る。独特なちょっとクールな響きで、しかし、これも独特な内に秘めたような情熱・情感を感じさせるトランペットだ。リトルはさっきもドルフィのFive Spot vol.2で聴いたが、私見では、フレーズがどうのこうの言う前にあの「深く鳴る音色」を味わうべきタイプのペット吹きだと思う。音色そのものに説得力があるという感じだ。
  Dscn2827_2そして、ベースがジョージ・ジョイナー・・・これもミンガス張りの強いアタックで弦を引っ張り倒したような、ザクザクしたようなベースの音色が魅力的だ。やっぱり・・・United Artistsの青ラベル(ステレオ盤)はいいのだ(笑)
ちなみに僕の手持ち盤は、日本キングから発売された1500円盤(ステレオ盤)だけど、各楽器の音圧感・鮮度感も案外、悪くないので・・・この日本盤でガマンしようではないか(笑)

Prlp_7116_j_2 Four Altos(prestige) NYCラベル
Prjp_7116_l_2 「盤質は悪けど・・・」と前置きして、Yoさんが、PrestigeのNYCラベル盤を出してきた。音はさすがの鮮度感だが、それよりも、Yoさん、こんな風にみんなで聴くときに「楽しめる」レコードも好きなのだ。
このアルト4人・・・誰か、判る?ということで、さあ、皆、聴き始める(笑)
「これ、誰?」「う~ん・・・判らん」「聴いたことないアルトだね」
誰も~だと断言できない(笑) 誰もが、フィル・ウッズだけは判るが、残りの3人がなあ・・・だから・・・ソロが2人目、3人目と進むと、「あっ、これは、フィル・ウッズ?ウッズだね」という具合なのだ。だけどウッズとクイルもよく似ているぞ(笑)
僕の認識では・・・ウッズと似ているけど、もうちょっとだけ荒っぽいかな・・?というのが、たぶんジーン・クイルなのだ。
となると・・・残りの2人が、サヒブ・シハブとハル・スタインということになる。サヒブ・シハブというと、たいていはバリトンサックス吹きとしての認識だろうか。そのシハブのアルト? それにほとんど録音のないハル・スタインのアルトを「おっ、ハルだ!」とすぐに判るようなジャズ好きなんているのだろうか・・・いや、日本に5人くらいは居るんだろうな。スタインに興味ある方は、はとりあえず、あのprogressive盤(もちろん日本盤でも)を聴くしかないだろう。それにしても、この「4アルト」・・・ソロの繋ぎ部分で4人が間髪を入れずに次ぎの奏者が吹き始めるので、うっかりすると「あれ?今、替わった?いや、まだか?」てな具合で、下手したら、ソロ奏者が替わっても気が付かないこともあるかもしれない。こういう時、モノラル録音はちょっと辛い(笑) 
てなわけで・・・アイラ・ギトラー氏の裏解説に頼りましょう!というのが皆の結論だった(笑) ボブ・ワインストック氏も・・・まったく罪作りなレコードをこさえてくれたものだ。

さて、ここで、denpouさんが取り出してきたのは・・・
Original_lp3_002 Rita Rice/Cool Voice of ~ vol.1(オランダphillips) 

Original_lp3_001このレコード・・・CDを持ってはいたが、やはりLPが欲しくなったその頃、ヴォーカル好きのkonkenさんが同じタイトルの米columbia盤を2枚持っていたので、その内の1枚を交換してもらったのである。
そのジャケ違いの米columbia盤もなかなか人気があったようだが、リタ・ライスがオランダ出身でA面6曲がオランダ録音だから、やはりこの蘭Phillipsがオリジナルだろう。
konkenさんからのリクエストで、 I cried for you を聴く。このオランダ盤・・・音が良かった。
欧州盤独特のちょっとツンと澄ましたような感じの音質で、アメリカの黒人ハードバップのバンドがもう少し洗練された巧い白人バンドのようにも聞こえてくる。もちろん歌伴(ヴォーカルの伴奏)だから・・・ブレイキーもいつもより静かめに叩いたんだろうが、ブレイキーのシンバルがいつもより抑え目に聞こえる(笑) 
Dscn2826 同じシステムで聴き比べたわけではないので、あまり意味はないかもしれないが、米columbia盤(僕の手持ちは白プロモラベル)とはだいぶ音の質感が違うようでもある。このレコードA面6曲はブレイキーのジャズ・メッセンジャーズのB面6曲については、Recorded in the Unitied Statesと表記されているので、B面については、米Columbia盤もオリジナル・・・と言えなくもない。この米Columbia盤のThe Cool Voice を聴いてみると・・・Phillips盤に比べ、ベースの音が太めに大きく、そしてドラムスの音がザラついたような感じに聞こえて・・・やっぱりアメリカの黒人ジャズの音がするのである。いや、そういう気がする(笑)
その辺りの音の印象のことをヴォーカル好きのkonkenさんに尋ねてみると、彼はこんなコメントをくれた。
≪先入観があるのかもしれませんが、基本的にはアメリカ人は米盤、ヨーロッパ人は本国盤がいいと思います。リタ・ライスも全部聴いていませんが、バックがメッセンジャーズなんで米盤の方が好みかな?というカンジですが、歌はオランダ盤の方がいいかな? だから反対の地元バックのA面はオランダ盤の方がいいかもしれません。
聴き慣れてるせいかもしれませんがジャズには米盤の方が親近感があります。1980年代前後にECMが一時ブームになったことありましたが、ちょっと醒めたような質感はジャズ自体が醒めたような感じがして自分のジャズを聴こうという気持ちまで醒めさせたような印象をいまだにに引きずってるようです。ジャズは音程がズレていようと録音にクセがあろうと熱いモノが伝わった方に軍配を挙げたいです≫
もともとこのレコードのプロデュース意図は・・・たぶん、ヨーロッパの女性歌手がバリバリのハードバップバンドに挑戦する~みたいなことだったようにも推測できる。そういう気持ちもあって聴くと、ライスは意図的にねっとりとした歌いまわしをしているような感じもする。これまであまり意識して聴いたことのないリタ・ライスが、やはりとても巧い歌い手だということがよく判る1枚であった。もう1曲・・・と聴いたバラードの my one & only love は、ホレス・シルヴァー名義のstyling of Silver収録のmy one & only loveと同じアレンジだった。

denpouさんはEP盤もお好きなようだ。
Dscn0204Dscn0202metronomeのEP盤~S.Getzのストックホルム録音の内、4曲入り(school boy 、I have only eyes for youなど)録音自体がかなり古いけど、さすがに録音したその国のEP盤・・・独特の生々しさのある音だが、素晴らしい録音とは言えない。これらゲッツの音源はroostの10インチ盤、12インチ盤も聴いたが、どれも音質はイマイチなようだ。


PaPaさん、満を持してこの1枚を~
Charlie Parker/~(clef)MGC-157 10inch盤 「鍵穴のパーカー」だ!Cimg7398
垂涎(すいえん)盤が出た。クレフの10インチ盤・・・このcover artはもちろんストーン・マーチンだ。マーチンのイラストは・・・細部を見ても面白いがそれよりパッと見た全体の構図・色合い~その印象度が圧倒的に凄い。ビビッとくる。わりと多めに赤色系を使うマーチンだが、この10インチ盤のcoverは、全体に黒っぽい色合いの中に、くくっと効く明るい色を持ってくる・・・そんな色使いが絶妙だ。、それにしても、なぜ主役のアルト吹きを狭い鍵穴から覗かなくてはならないのか(笑)Cimg7400_2
comfirmation~1953年録音だから、パーカーとしては後期の録音ではあるが、ドラムにマックス・ローチ、ピアノにアル・ヘイグという当時の新鋭をバックにしたワンホーンで、I remeber you、now's the time など、どの曲も、ぐぐっ と気合の入ったセッションだ。
この10インチ盤・・・アルトの音色がものすごく艶やかで、生々しい音圧感もあり、そしてやっぱり・・・パーカーのアルトは「重さ」を感じられる素晴らしい音質だった。録音そのものがしっかりしているようで、古い録音を聴き込んで出来上がってしまっているかもしれない「パーカーの音」のイメージが覆されるような、パーカーの音だった。これが50年も前のレコード盤の音とは・・・まったくレコードというものは凄いものである(笑)
そういえばいつものPaPaさんは、ちょいマイナーなサックス吹きやヨーロッパの管奏者をセレクトしてくるのだが、今回はあえて「ジャズ大物盤」を選んできてくれたようだ。パーカーの後は~
Cimg7404_2 A.Pepper/Meets the Rhythm Section(contemporary)モノ
M.Davis/kind Of Blue モノラル と Yoさん~Kind Of Blue ステレオ(プロモ白ラベル)
という流れになった。
どれも真に名盤で、音も演奏も素晴らしくて、「いやあ・・・やっぱりジャズはいいなあ」という幸せな気持ちになってしまった(笑)

Cimg7402 kind Of Blueは、同じCS六つ目ラベルでもステレオ盤の人気が異常に高いようだが、このモノラル盤も相当によかった。CBSレーベルは品質が安定していて、モノラルでもステレオでも音の質感がそれほど大きく変ってしまう・・・というようなことも案外少ないと思う。
そしてこのKind Of Blueのモノラル盤は~
Cimg7414 特に3人の管楽器の音量・音圧感が大きく聞こえて迫力がある。だからコルトレーン、キャノンボール、マイルスを強烈にたっぷり味わいたい方はモノラル盤の方が好みになるのかな、という気がする。この後、Yoさん手持ちのステレオ盤(プロモ:白ラベル)も掛けてみると・・・定位としては、コルトレーンとエヴァンスが左側に、キャノンボールがちょ右に、と変ったり、全体的に管楽器がちょっとおとなし目に聞こえたり、ベースが少し薄みになったりもしたが・・・僕はやはり(笑)Kind Of Blue については、ステレオ盤のややライトな(軽い)感じのサウンドの方が好みのようだ。

konkenさんは渋い1枚を出してきた~
Al Grey/The Last Of The Big Plungers(argo) ステレオ盤
Grey_1特にargoレーベルの音がいい、という認識はなかったのだが、このステレオ盤、 やけに音がいい。録音エンジニアはMalcolm Chisholmと記されている。 konkenさんはだいぶ前からトロンボーン好きのようで、こういうボントロの渋い盤までディグしているのだ。Argo_gold_4アル・グレイはベイシー楽団のボントロ吹きで「プランジャー」というのは、ゴムでできたお椀みたいなもので(ちょうどトイレが詰まった時の掃除道具みたいな)それをトロンボーンの音の出る開口部に当てたり外したりして、ボントロの音色を「ぅわわわ~・ムワワワ~」と変化させるのである。1920年代~1940年代のビッグバンド時代には、この「プランジャー奏法」がはやったらしく、だからこのLPのタイトルは、そういうプランジャー使いの最後の名手・・・というような意味合いだと思う。  
bluish greyという曲・・・出だしからCherles Fowlkesのバリサクが効いている。そして太っいベース音の主はエディ・ジョーンズだ。このベース弾きはとにかく音がでかそう。Grey_2ビッグバンドのスイング感を下からどっしりと支える感じのベース弾きだ。こういう地味だが太い音色と大音量でバンド全体を支えるタイプのベース弾きもやっぱりいいもんだなあ・・・という気持ちになる。というのも、Yoさんのシステムでこういう録音のいいレコードを聴くと、ウッドベースの存在感が本当に凄いので、いろんなベース弾きのベースラインはもちろん、音量・音圧感、そして音色の微妙な違い様までしっかりと感じられるので、そういうジャズにおける「低音サウンド」を浴びることは、ベース好きとしては、これはもう極楽なのである。

それにしても・・・いい演奏の詰まったいい録音のレコードをいい音で聴く・・・というのは、なんと気持ちのいいことだろうか。
ジャズはいよいよ・・・止められない(笑)

*ジャケット写真提供~
E.Dolphy/Live in Europe vol.1(prestige) 紺ラベル
Zoot Sims/Zoot Sims In Paris(UA) サックス吹きラベル
Frank Strozier, B.Little, G.Coleman~/Down Home Reuion(UA)青ラベル
P.Woods、G.Quil、S.Shihab~/Foru Altos(prestige)NYCラベル
はYoさん提供。

Rita Rice/Cool Voice of ~ vol.1(オランダphillips)
Stan Getz/metronomeのEP盤
はdenpouさん提供。

Charlie Parker/~(clef)MGC-157 10inch盤
A.Pepper/Meets the Rhythm Section(contemporary)
M.Davis/kind Of Blue モノラル盤
はPaPaさん提供。

Al Grey/The Last Of The Big Plungers(argo) ステレオ盤
はkonkenさん提供。

皆さん、ありがとうございました。bassclef


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2010年3月15日 (月)

<思いレコ 第17回>ミルト・ジャクソンのあの音色

ヴィブラフォンという楽器のこと。

僕がミルト・ジャクソンの魅力に目覚めたのは・・・「Milt Jackson」(prestige)というレコードからである。それまでにモンク絡みでも聴いてはいたが、ミルト・ジャクソンという人を決定的に好きになったのはこのOJC盤を聴いてからだ。
もともと、ヴィブラフォンの音~それ自体には、惹かれるものがあった。ジャズを聴き始めてすぐの高1の頃だったか、当時買ったばかりのFMラジオ(1972年頃~なぜか簡易トランシーバ付き。同じラジオが2台あれば離れていても会話ができる、というやつ:笑)から流れてきたヴィブラフォンの音に僕は反応した(笑)あれはたぶんMJQだったと思うが、その時、兄貴に『この「ヴィブラフォンの音」っていうのは・・・いいね』と言うと、フォーク好きの兄貴は「ふう~ん」とまったく興味なさそうだった(笑)そんな記憶がある。

ヴィブラフォン(vibraphone)というのは、実に独特な楽器である。おそらく誰もが小学校の頃に触れた「木琴」~あの鍵盤部分が金属製なので「鉄琴」と呼ばれるのだろう。そのヴィブラフォン・・・ピアノと同じ音列の鍵盤楽器であることは間違いないのだが、ピアノと違って、ヴィブラートを掛けられるのである。ヴィブラートというのは、簡単に言えば「音が揺れる」という意味合いだと思うが、ピアノ(もちろんアコースティックの)だと、どの鍵盤をどう押えても・・・もちろん音は揺れない。ヴァイオリンやチェロなどの弦楽器なら、左手である音程を押えたままその左手を揺らすことで・・・唄の場合ならノドの独特な使い方により、どの音程でも任意に「ヴィブラート」を掛けられる。
ヴィブラフォンというのは、そのヴィブラートを掛けられるように「細工」した楽器なのである。まあ、だからこそ・・・ヴィブラフォンという名前なんだろうけど(笑)
*注~vibraphone《ビブラートをかける装置つきの鉄琴。(略式)vibes》とある(ジーニアス英和辞典より)

ヴィブラフォン奏者で、僕がわりとよく聴く(聴いた)のは、ジョージ・シアリング、(シアリングはピアニストです。このとんでもない勘違いを、上不さんがコメントにて指摘してくれました) テリー・ギブス、ライオネル・ハンプトン、それからたまに聴くのがゲイリー・バートンくらいなのだが、ミルト・ジャクソンのヴィブラフォンは他のヴィブラフォン奏者とだいぶ違うようなのだ。もちろんどの楽器でも奏者によって音色は違う。特に管楽器ではその違いは判りやすいかと思う。鍵盤楽器の場合、音を直接に鳴らす部分がハンマーなので、音色自体の違いというのは他の楽器よりは出にくいかとも思う。もちろん、鍵盤を押す時のタッチの強弱やフレーズのくせ(アドリブのメロディやアクセントの位置の違い)で、演奏全体には大きな違いが出てくるわけだが。
そんなわけで、ある程度、ジャズを聴き込んだジャズ好きが、パッと流れたヴィブラフォンの音を聴いて、その演奏がすぐに「ミルト・ジャクソン」と判る・・・ということもそれほど珍しいことではないと思う。それはもちろん、ジャケット裏のクレジットを「見ると」判る・・・ということではなく(笑)その演奏のテーマの唄い口、アドリブのフレーズがどうにも独特なので「ミルト・ジャクソン」だと判るはずなのだ。そしてさらに言えば・・・そういう演奏上のクセだけでなく、ミルトの「音色そのもの」が、これまた実に独特だから「判る」こともあるように思う。
あれ・・・たった今、僕は『鍵盤楽器では音色自体の違いは出にくい』と言ったばかりなのに(笑)
それでは・・・その「独特な音色」は、どうやってできあがったのだろうか? 

ミルト・ジャクソンを好きになって、彼のレコードやCDを集めていた頃、あるジャズ記事を読んだ。(スイング・ジャーナルか何かの雑誌だったような記憶があるのだがはっきりしない)それは、ヴィブラフォンという楽器の「モーター」について触れた記事だった。
「モーター?」 当時は、ヴィブラフォンをなんとなく「生楽器」のように認識していたのだが、よく考えたら、エレキ・ギターと同じく「電気楽器」だったわけだ。
鍵盤楽器の運命として、ひと度(たび)、鍵盤を叩いて発生させてしまった「音」は、もう変えることはできないわけで・・・つまり、その音が発せられた後には、左手もノドもその音の発生源に触れてない状態なのだから、どうやったって、ヴィブラートを掛けられる道理はない。当たり前である(笑)
そこで「モーター」なのである。ヴィブラフォンの鍵盤の下には小さい扇風機が付いていて、「モーター」はその小さな扇風機を回して「風」を起こすために付けられている。マレットで鍵盤を叩いた後に鳴っている音に、その「風」を当てると・・・「音が揺れる」仕組みなのだ。つまり・・・ヴィブラフォンのヴィブラートとは、マレットで鍵盤を叩いた後の「人工的効果」だったのだ!
《*注~すみません。この楽器のメカニズムのこと、よく知らないまま書いてしまいました(笑)今、ちょっと気になって、ウィキペディアで調べたら・・・「ヴィブラートが人工的」に間違いはなかったのですが、モーターが回すのは、扇風機というより「小さな羽根」で、それは「音に風を当てる」ためではなく、その羽根を回転させることで鍵盤下の共鳴筒を開けたり閉めたりする~その動きによって、「音が揺れる」ようです》

しかし、好きになって聴いてきたミルト・ジャクソンの「音」(音色自体+演奏技法も含めたサウンド全体)に充分に馴染んでいたはずの僕は・・・一瞬、その「人工的」が信じられなかったのだ(笑)
つまり、それくらい・・・ミルトのプレイは、自然な唄い口だったのだ。歌い手さんがすう~っと軽くヴィブラートを掛けるように、チェロ奏者が思い入れたっぷりに左手を震わすように・・・ミルトの演奏には、充分すぎるほどの「自然なヴィブラート感」があったのだ。
これは実は凄いことで、つまり・・・ミルト・ジャクソンという人は「自分の唄い」を充分に表現するために・・・おそらくそれまでにその楽器にはなかった「音色」を創り上げてしまったのだ!

その「ヴィブラフォンのモーター」記事の詳細までは記憶にないのだが、ポイントは・・・ミルト・ジャクソンの場合、そのモーターの回転数が他の奏者とは違う~というようなことだったと思う。
「回転数」という言葉にちょっと説明が要るかと思うが、つまり・・・弦楽器でいうところの「左手の揺らし方の速さ・遅さ」に当たる。「揺らし」の波形の上下(山と谷)の間隔を短め(速め)にするか長め(遅め)にするか~という意味合いになるかと思う。
ミルトよりちょっと古い世代のヴィブラフォン奏者~例えばライオネル・ハンプトンの音は、もう少し細かく速く揺れてるように聞こえるので、比べた場合、ミルトのヴィブラートは、だいぶ「遅め」に聞こえる。
音を言葉に置き換えることなどできないが、その感じを強いて表わそうとすれば・・・速い揺らしを《ゥワン・ゥワン・ゥワン・ゥワン」とすれば、遅い揺らしだと「ゥワァァワァ~ン・ゥワァァワ~ン」という風に聞こえる。
そうして、ミルトという人は、その「揺れ方」まで自在にコントロールしているようなのだ。彼のスローバラード(例えばthe nearness of you)を聴くと・・・テーマのメロディの語尾の所を「ゥワァァワァ~ン・ゥワァァワ~ン」と遅くたっぷりと揺らす場合と、あまり揺らさない(ヴィブラートが速め・軽め)場合もあるのだ。たぶん、モーターのスピードを小まめに調整しているのだろう。
人工的な機能を人間的な表現力にまで高めてしまう・・・これこそ、僕がミルトに感じた「自然な唄い口」「自然なヴィブラート感」の秘密なのかもしれない。
そして、ミルト・ジャクソンの秘密は・・・たぶん「モーター」だけではない。
ミルトのあの独特の深い音色・・・僕は、鉄琴を叩く、あの2本の鉢(ばち)~マレットにも秘密がある・・・と推測している。
ハンプトンやテリー・ギブスの音は、もう少し堅くて打鍵がキツイいと言うか、ちょっと「キンキン」した音に聞こえる。ミルトの打鍵ももちろん強いのだけど・・・(私見では)たぶんマレットの布が分厚いので、だから強く叩いたそのタッチに若干のクッションが入って、ソフトに聞こえるのではないだろうか。ソフトと言っても打ち付けられた瞬間の音の感触として、ヒステリックな感じがしない・・・ということで、もちろん「やわ」という意味ではない。ミルトの打鍵にはしっかり「芯」があり、あの粘りながら脈々と続く長いフレーズの打鍵音ひとつひとつに充分な音圧感もある。しっかりとテヌートが掛かっているというか・・・前に叩いた音が残っている内に次の音が被(かぶ)さってくる・・・というか。ずっしりとした音圧感が、どうにも凄いのである。
つまり・・・ミルトは、重いマレット(布が分厚いので)でもって、適度に強く、適度に弱く、叩きつける時の「返し」を微妙に調整しながら、しかしもちろんマレットから鍵盤に充分な打鍵力を与えている・・・という感じかな。その絶妙な「タッチ感」に、さきほどの「遅めのモーター回転」を、巧いこと組み合わせて、そうして出来上がったのが、あの「ミルト・ジャクソンの音色」ということかもしれない。
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《4~5年前に入手したprestige のN.Y.C.ラベル~僕の数少ないNYCの一枚だ(笑)》

そんな「ミルト・ジャクソンの音」を、分厚く・太く・温かみのあるサウンドで録ったのが・・・ヴァン・ゲルダーなのだ。このレコードを聴いていると・・・ミルト・ジャクソンが自分の楽器から出したであろうその音・その鳴り・その音圧感を、ヴァン・ゲルダーがそのままレコード盤に閉じ込めたな・・・という気がしてくる。

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《裏ジャケ写真~OJC盤では黒色が潰れていたが、オリジナル盤ではさすがに鮮明である。当たり前か(笑)》

さて、Milt Jackson(prestige)である。
ある時、僕はこの「Milt Jackson」・・・うんと安いOJC盤で買って、それほど期待せずに聴いてみた。当時、ミルト・ジャクソンといえばMJQのことばかりで、この地味な盤が紹介されることはあまり多くはなかったように思う。だからこの作品が「バラード集」なんてことは全く知らなかったのだが、スローバラードでのじっくりとじわじわと唄い込むミルト・ジャクソンのヴィブラフォンは、本当に素晴らしいものだったのだ。
収録曲も、the nearness of you, I should care,my funny valentine など、いい曲ばかり。片面が10分ほどと短くてすぐ終ってしまうので、僕はその度にレコードをひっくり返し・・・だから、どちらの面も本当によく聴いた。そうして、このレコードを心底、好きになってしまったのだ。
Photo
《このOJC盤を買ったのはいつ頃だったのか・・・今、僕のレコードリストで調べてみたら・・・1991年8月だった。それより以前に meets Wes や前回記事のOpus De Jazzなども入手していたから、この真の名盤に出会うのは、けっこう遅かったようだ》

たまたま買った「安いOJC盤」~僕には大当たりだった(笑)
余談だが、このMilt JacksonのOJC盤・・・ナンバーが001番で、どうやらあの膨大なOJCシリーズの第1号だったようだ。やっぱりオリン・キープニューズ氏にも「内容が良い」という自信があったのだろう。
バラード集だけど、ほんのりとブルースもあり、全6曲・・・まったく厭きない。どの曲でも脈々と湧き出るミルトのフレーズに、それはもう、deepなソウル感が全編に溢れ出ており(ソウルと言ってもR&Bのソウルではなく、深い情感・・・というような意味合い)本当に素晴らしい。特に the nearness of you は絶品!
これこそが、バラード好きでもあるミルト・ジャクソンの本領発揮・・・そして本音でやりたいジャズだったと思えてならない。
主役がミルトなので、おそらくいつもよりうんと抑えた感じのホレス・シルヴァーのピアノにも適度にブルースぽい感じがあって、ミルトの叙情といいブレンドを醸(かも)し出しているように思う。この作品・・・ピアノがホレス・シルヴァーで本当によかった・・・(笑)

そして、この「Milt Jackson」には、もうひとつ・・・素敵な偶然があった!
1980年頃だったか・・・ワイダやポランスキー、ベルイマンの映画を見るために、毎週、名古屋まで通ったことがある。「灰とダイヤモンド」「地下水道」や「水の中のナイフ」それから「ペルソナ:仮面」などを、実に面白く・・・というより、映画マニアを気取って、しかめっ面をしながら観ていたわけである(笑)そして、内容とは別のところで妙に印象に残った映画がひとつあった。
「夜行列車」である。この映画・・・列車の同部屋に乗り合わせた人々の物語で、「灰とダイヤモンド」や「地下水道」に比べれば、僕にはたいして面白くなかった。しかし印象に残っている・・・そのテーマ音楽がとてもいい曲だったのだ。
寂しい映画にピタリと合う、寂しいメロディ・・・独特に上下するような独特なメロディが、映画の間、何遍も流れてくる。映画が終わり・・・僕はその独特なメロディを忘れたくないがために、地下鉄までの帰り道でもハミングしたり口笛を吹いたりしていた(笑) その効果もあってか・・・何年か経っても、時にそのメロディが、アタマにちらついたりするのだった。
ただ、僕はその曲は映画のオリジナルだろうと思ったので、その曲の正体など知るべくもなく、そのメロディの記憶も徐々に薄れていった。
そうして・・・前述の「ミルト・ジャクソン」なのである。このレコード・・・A面最後の曲が流れてきた時、僕は思わず「おおっ!」と声を出した(笑)
これは・・・あの曲だ!あのメロディじゃないか!
クレジットを見ると・・・《moonray》とある。11年ぶりの再会である。こういう時・・・音(音楽)の持つ力ってなかなか凄いものがあって、いろんな感情・感覚がぐわ~っと甦ったりする。ジャケット裏の解説には~MOONRAY:an old Artie Shaw opus(アーティーショウの古い作品)との記述があった。ようやく僕は、あの「夜行列車」のテーマ曲が、moonrayという古いスタンダード曲であることを知ったのである。
その後、もう一枚、ジャズのレコードに入っている moonray を知った。それは、ローランド・カークの、いや、ロイ・へインズの「Out Of The Afternoon」(impulse)である。
お持ちの方、ぜひ聴いてみてください。うねるようなメロディが不思議な寂しさを湧き起こすような(僕には:笑)名曲だと思う。
このmoonray事件には後日談があって~2年ほど前だったか・・・ニーノニーノさんBBSのお仲間:M54さんが、やはり映画「夜行列車」を見て、何やら印象に残った曲がある。気になって仕方ない・・・というような書き込みをされたことがあるのだ。その書き込みを見た僕は、その気分が全く100%まで実感できたので・・・もったいぶりながら(笑)そのテーマ曲の正体をお教えしたわけである。
当時のヨーロッパ映画では、盛んにジャズの曲(演奏)を映画に使ったそうで、ということは・・・1960年頃のヨーロッパの映画人もジャズに何かを感じとって映画にジャズ音楽を使い、何十年も後にその映画を観た人間もその音楽から何かを感じ取って、ある感興(かんきょう)を抱く・・・まったくジャズというのは素晴らしい何かですね(笑)

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2009年12月19日 (土)

<ジャズ回想 第21回>コルトレーンのことも少し・・・take the Coltrane!

さて・・・コルトレーンである。「さて」というのは・・・前回の<サウンド・オブ・ミュージック>記事の最後のところに、つい、コルトレーンの名を出してしまったからで、あれは、my fevorite things 繋(つな)がりからのコルトレーン記事を確信的に意図していたわけではないのだが、その方向を全く意識していなかったのかというと、やはりそうでもなく(笑)・・・まあ、そんなわけで「コルトレーン」のことを書いておこうと思うのだ。
このブログ<夢見るレコード>を始めたのが2005年6月だったから、もう4年半ほどになるが、そういえば、コルトレーンのことをあまり取り上げていない。だいぶ前に、prestigeの『コルトレーン』、riversideの『モンクス・ミュージック』、それからロリンズとの対比でちょっと触れたことくらいだと思う。
http://bassclef.air-nifty.com/monk/2005/06/post_8ec3.html
http://bassclef.air-nifty.com/monk/2005/06/post_51a7.html

コルトレーンという人の音を最初に耳にしたのは・・・マイルスの<ラウンド・アバウト・ミッドナイト>だったはずだ。FMラジオのジャズ番組でその演奏を聴いて(録音もして)何度も聴いた。中3の時だったと思う。だけど、それはマイルス・デイヴィス、あるいはセロニアス・モンクという人を意識しての<ラウンド・アバウト・ミッドナイト>聴きだったので、正確に言えば「コルトレーンの音を耳にしていた」というだけで、その時点では、僕はまだコルトレーンという人を強くは意識していなかった。
その名演からジャズという音楽に惹かれ始めた僕は、そのうちジャズ雑誌やジャズ本を読むようになった。今、思えばあの頃のジャズ活字の世界は「コルトレーンは素晴らしい!」というものばかりだったわけだが(例えば、コルトレーンに比べれば凡庸なハンク・モブレイとか・・・)ジャズに入れ込み始めた高校生としては、そんな「コルトレーン賛美」に影響されないわけにはいかなかった(笑)1
当時、圧倒的に影響されたのは、立花実という人の「ジャズへの愛着」(ジャズ批評社)という本である。この本・・・街の図書館にあって高1の時(1972年)に読んだのだが、それはもう感動的なまでに著者の心情溢れるもので、<コルトレーンのバンドには真の音楽的交流があって、それこそが「共同体」と呼べるものだ>・・・みたいな内容だったと思う。まあ正直に言えばその辺のことはよく判らなかったが、ジャズに入れ込み始めた高校生には「共同体」というフレーズは・・・よく効いた(笑)
その立花実氏の本には、モンクス・ミュージックのことも書いてあって、「モンクの不思議な和音と格闘するコルトレーン」というような記述だったはずだ。そうして、立花氏はその音楽的格闘を激賞していた。2
その本を読んでから・・・素直な僕は「これは、コルトレーンを聴かねばならない!」と決意し(笑)コルトレーンという名前を意識するようになった。そんな頃、ネムジャズインを見に行った翌日(徹夜明け:笑)、名古屋で見つけたのが『モンクス・ミュージック』(ABC riverside盤)である。立花氏が描写した「モンクの和音に、一瞬、飲み込まれそうになったコルトレーン・・・しかしそこから決然とモンクに戦いを挑むコルトレーン」という、正にその場面を実感できるwell,you needn'tを何度も聴きまくった(笑)そうして、コルトレーンを好きになった。次に買ったのが、マイルスの傑作~Kind Of Blue(CBSソニー盤)である。

この高1の夏にこの2枚を聴き込んだことで、たぶん・・・僕はコルトレーンのテナーの「音色」を覚えたはずだ。「覚えた」というのは・・・他の知らないレコードを聴いても「ああ、このテナー(の音色)はコルトレーンだ)!」と「判る」という意味合いで、まあコルトレーンという人の音色はとても特徴的なので、そういう意味ではとても「判りやすい」ミュージシャンなのかもしれない。
「判る」といってもそのレコードを特に分析的に聴いたということではなく・・・好きなレコード(音楽)を集中して聴き込む時、その音楽というものは、たぶん、耳で聴いて感知しているだけではない。その音楽の振動が体のあちこちの細胞に沁み込んでしまうものだ。比喩的ではなく、体が覚えているというか・・・(笑)
ちなみに、コルトレーンの音色というのは~音というものはいつでも言葉では表現しにくいものだが~肌合いで言えば、その音色はとても硬質な感じで、そうだな・・・コールマン・ホーキンスやソニー・ロリンズの音色を<木の質感>とすれば、コルトレーンのそれは遥かに金属的で、しかしそれほど冷たい質感ではなく<質のいいきめ細かい肌触りのメタリック>という感じか。
私見では、同時代のどのテナー奏者にも似ていない、ちょっと「新しい音」だと思う。余談だが、1960年頃のジミー・ヒースが、ちょっとコルトレーンに似た音色をしているように思う。同時期のベニー・ゴルソンは、音色は似てないがフレーズがちょっと似ているような気がする。
そして、ちょうどその秋にビクターが1100円盤シリーズを発売することになったのだ。街のレコード屋に出入りしていた僕は、そのチラシを入手して発売前からどれを買おううかと・・・あれやこれや思案していた。そうしてようやく決めたのが、『コルトレーン』『モンクとロリンズ』の2枚である。

005《1972年秋にビクターから発売された1100円盤シリーズ~まさかこのシリーズのコレクターはいないと思うが(笑)ちょっとした特徴としては・・・解説書は一切なし。外見的には、ジャケ裏右下の<1100円という定価とPJ~12>というシリーズ番号が入っていること。そして、センターラベル外周部分に何のアドレス(住所)表記もないことくらいか。余談だが、当時、このシリーズを入手した方が、この<1100円~>箇所をナイフで削った・・・という涙ぐましいエピソードを読んだことがある(笑) その頃、僕は「オリジナル盤」というものの価値を知らなかったので、そのエピソードを不思議に感じたものだ》

今、思えば、立花実氏の絶賛した精神共同体のコルトレーンとは・・・もちろんimpulse期(それも後期)だったのだが、当時はそんなレーベル変遷の知識もなく、単純に「コルトレーンはコルトレーン」だと思っていた。そして、この1100円盤シリーズはprestige原盤~1950年代のバリバリのハードバップ~だったのだ。
『コルトレーン』は、初めて聴く<1957年のコルトレーンのリーダー作>だったわけだが・・・先にKind Of Blueの新しいサウンドを聴いていた僕としては、いきなりバリトンサックス(サヒブ・シハブ)の急速調のリフの繰り返しから始まる何やら忙(せわ)しない感じのA面1曲目(bakai)に、「あれ?ちょっと・・・暑苦しいなという印象を受けた。kind of blueのあの静謐(せいひつ)なサウンドと比べればそれも無理からぬことだったと思う。しかし、それも何回も聴いている内にすぐ慣れた。そうして、2曲目が・・・「コートにすみれを」なのである。
これが・・・本当にすう~っと清冽な気持ちになってしまう素晴らしい演奏だった。この曲のことは、だいぶ前の夢レコ(マット・デニス作の曲)の中で少し書いたことがある。とにかくいいメロディといいハーモニーの素晴らしい曲なので、実際、あの1957年時点で、この曲を、バラードとして自分のリーダー作にセレクトした・・・というそのことにこそ、コルトレーンの素晴らしいセンスがあったのだ・・・と僕には思えてくる。
そういえば、マイルスの述懐として「なぜあんな下手な新人を使うんだ?」とか仲間から言われた~とかいう記事を何かで読んだことがある。「マイルスバンドの新人」という位置づけなので、たぶん1956年以前のことかと思われるが、それはコルトレーン賛辞ばかりの中で、当時は唯一の、マイナスイメージの話しだったように思う。

004もちろんジャズを聴き始めの高校生には、そんな技術的なことは判らない。
「そうかあ・・・あれでも(あんなに巧くても)下手というのかな?」いうくらいの感想だった。たぶん、その「下手~」というのは、コルトレーンのうんと初期の頃のことだったのだと思う。そういう意識でもって初期のコルトレーンをいろいろ聴いてみると・・・もちろん下手なはずはないのだが、ただ、わりと頻繁に「キィ~ッ」というリードミスの音が出たり、それからソロの途中でフレージング(アドリブのメロディ造り)が、ちょっとモタモタした感じになったり・・・という部分もあり、その辺が、ホウキンスやベン・ウエブスター流れのソフトでスムースな流れのアドリブから比べれば「ゴツゴツとして不器用」な感じは確かにある。しかし、その硬質な音色やフレーズの根本的な新しさ・・・これはもう圧倒的にそれまでと違うテナーである。マイルスにしてみたら、「みんな判っちゃいないぜ・・・あいつの凄さが・・・」てなもんだったんだろう。そんな風なマイルスの述懐もあったかと思う。
しかしそのマイルスも、prestige作品のいくつかのバラードではコルトレーンを登場させていない。この辺・・・マイルスはそのバラード全体の構成と、この時期(1955年~1956年)のコルトレーンの実力までもちゃんと考え併せて・・・スローバラードでは、曲のバランスを崩してしまいそうなコルトレーンを、あえて外したのだろう。
(実際~it never entered my mindでは、コルトレーンのテナーは、演奏の最後の最後にプア~ッと鳴るだけだ:笑)
僕の勝手な推測では・・・この時、コルトレーンは「なぜだ!なぜオレを使わないのだ!」と怒りに打ち震えた(笑)コルトレーンは早い時期からもう絶対にバラード好きのはずなのだ。「バラードも吹きたい・・・」とコルトレーンは悶えていたはずなのだ(笑)
そうしてコルトレーンは、その直後の自分のprestige期リーダーアルバムで、敢然とスローなバラードに挑戦しているのだ。1957年の最初のリーダー作『Coltrane』には2曲のバラードが収録されている。今ではとても有名になった<コートにすみれを>と、もうひとつ、とても地味な<while my lady sleeps>である。(私見では、実はこちらの<while~>もなかなか素晴らしい。バックに同じパターンを弾かせながらテナーだけがメロディを変化させていく~その感じがちょっとモード的でもあり、コルトレーン的な「唄い」にフィットした、何やら新しい感じがある演奏だと思う。
さて、<コート~>を聴くと、コルトレーンはたぶんシナトラを聴き込んでいたのだろうな・・・と思えてくる。シナトラはすでに1940年代にこのマット・デニス作の名曲を吹き込んでいる。ジャズのインスト版としては、1956年7月録音:ユタ・ヒップ(p)とズート・シムス(ts)のbluenote作品(Yuta Hipp with Zoot Sims)が最初だろうか。当時、録音から発売までは案外に早かったらしいので、ひょっとしたらコルトレーンは、発売仕立てのその『Yuta Hipp with Zoot』を聴いて、この曲を気に入ってしまったのかもしれない。そうして1957年3月録音の『コルトレーン』に、この<コートにすみれを>を吹き込んだ・・・。シナトラかシムスか、
あるいはその両方か・・・。いずれにしても、この曲はコルトレーンに合う。それまでのスローバラードというのは、テンポはスローでも、たいていベースは4拍を刻んで、ゆったりと弾むような(バウンス)全体に「ゆったりと」という雰囲気だったように思う。コルトレーンは(もちろん、そのやり方をマイルスの方が先にやっていたわけだが)テーマ部分ではベースには2拍を打たせ、つまり、リズムにうんと間を持たせて・・・その分、テナーがメロディをあまりフェイク(変えること)せずに、ゆったりと音を伸ばしたのだ。時には、伸ばした音の後に、弱めの音量でパラパラっと短めに入れるグリッサンド風なフレーズ・・・これも実に粋なのだ。音のことはなかなか表現しづらいが、ひと言で言えば「瑞々しい」という感じか。とにかく・・・コルトレーンのバラードはいい。何がいいのか・・・というのは、もう感覚の問題ではあるが、強いて言えば・・・それは、その音色の新しさが生んだ<ちょっとビターな情緒感>みたいな感じだと思う。柔らかい音色でラプソディックに吹かれるバラードも(例えばコールマン・ホーキンス)もちろんいいものだが、コルトレーン流のバラードから匂い立ってくる<凛(りん)とした佇(たたず)まい>・・・これにも強烈に「新しいジャズ」を感じる。
そうなのだ・・・コルトレーンは、ついに自分の硬質な音色に合う新しいバラード奏法を見つけたのだ。コルトレーンの<コートにすみれを>は、本当に素晴らしい!
この傑作バラード演奏で、僕が特に好きな場面がある。それは・・・ガーランドのピアノソロが終って、コルトレーンが入ってくる瞬間だ。
それはサビの(曲の途中でメロディの展開がちょっと変わる箇所のこと)出だし・・・1拍だけ待って・・・それはググッと堪えていた情緒をここで一気に吐き出すかのような、一点の迷いもなくキリッとした決意を持って吹き込まれる、低い方から高い方へ一気に上がる切れのある16分音符の(4つ目の音はタイで繋げて伸ばす)フレーズだ。
こんな瞬間があるから・・・僕はジャズを止められない(笑)

ああ・・・すっかり『コートにすみれを』の話しになってしまった。まあいいじゃないか・・・ジャズにアドリブは付きものだ(笑)コルトレーンのmy fevorite thingsについてはまた別の機会に。

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2008年8月 8日 (金)

<ジャズ回想 第16回>暑い日にYoさん宅に集まった(その2)

やっぱりロリンズはいい!

今回のYoさん集まりではいろんなジャズ、クラシックを聴いた。ペッパー、ゴードン、マリアーノ、フィル・ウッズの50年代ジャズの後、ちょっと「現代ジャズ」(チコ・フリーマンとアーサー・ブライス)。クラシック(プレヴィンとカラヤンの「惑星」、展覧会の絵、デュプレのチェロ、ラフマニノフの3番、チョン・キョンファのバッハ曲など)も聴いた。マイルスやフランクロソリーノ、MODEレーベルのミニ特集、「my one & only love」の聴き比べ、それから、ロック(ツェッペリンの何か)も少し。もちろん女性ヴォーカルもいくつか聴いた。エセル・エニスのChange of Scenery(capitol)、リタ・オビンク(オランダの歌手)、エリス・レジーナ。さらに、サラ・ヴォーンとクリフォード・ブラウンのemarcy盤~ブルーバック、ブラックバック、カナダ盤、日本盤BOXセット(デジタル・リマスター)~の聴き比べ。これはなかなか面白かった。
いつものことだが、こうした音聴き会を終えると、いろんな音楽の様相~そのイメージみたいなもの~がアタマの中を渦巻いて、たいていその日の夜はうまく寝付けない。翌日もなにやらぼお~ッとした感じなのだが、それは「心地よい疲れ」でもあり、なかなか悪くない。そうして、ちょっと落ち着いてから、会で聴いた曲を改めて自分の手持ち盤で聴いてみると、その曲を聴いた時の感触がリアルに甦ってくるのだ。そんな具合で、混沌としていた音たちのイメージが整理されてくると・・・その日の音盤たちを記録しておきたくなるのが僕の病気だ(笑) どのレコードもいいものばかりなので「全て」を書き残しておきたい気持ちもあるのだが、今回の(その2では)ジャズ盤で印象に残っているものをいくつか書いてみたい。

《以下の写真~「橋」以外は全てYoさん提供》
Prst_7677_j Yoさんが「じゃあ、エルヴィンを」と言って針を落とす。張りのあるテナーとバリトンの野太い音。この両者とエルヴィンのドラムスが絡みあうようなテーマの曲だ。たしかに聴いたことのあるサウンドだが、うう・・・これはエルヴィンのbluenote盤かな? いや、ちょっとbluenoteとは感じが違うようだ。それとこのバリトンは・・・bluenoteのエルヴィンにバリトン入りなんてあったかな? そうか、このバリトン・・・ペッパー・アダムスか。となると・・・あっ、そうだ・・・アダムスのプレスティッジ盤、ズート入りのあれだ!「これ、エンカウンター?」と聴くと、Yoさんが「うん」と、ジャケットを見せてくれた。このレコード・・・僕は何かの再発盤で持っているのだが、ズート目当てに聴いたわりには、そのズートがいつもの柔らかい感じとは違っているような印象を持っていた。たしかにこのズート・・・いつもよりバリバリと吹いているみたいで、ちょっと新しい世代のテナーみたいに聞こえなくもない。エルヴィンと演っているためか、1968年の演奏なので、ズートのスタイルもちょっと変わってきているのか。聴いた曲は in and out。ブルースっぽい曲だが、バリトン、テナー、それからピアノ(トミー・フラナガン)が1コーラス(12小節)づつソロを取るのだが、どのコーラスでもエルヴィンがブレイクを取る。その4小節の間、ソロ奏者は「バッキングのリズムなし」でアドリブしなくてはならない。このブレイクがあまりにも頻繁なので、最初は新鮮に感じたその「ストップ感」がちょっとくどい感じもしないではない(笑)Prst_7677
それにしても、エルヴィンのシンバルの・・・いや、スネアやらバスドラ、それら全体から湧き上がってくるような「鳴り」は・・・凄い。ただ、もともと「ドカ~ン!」と鳴るエルヴィンの「響きの全体」に、ちょっと「エコー」が掛かり過ぎていて、量感は凄いがややタイトさに欠けるようにも感じる。1968年12月の録音。そんな「エコー感」からも、engineerは・・・ヴァン・ゲルダーだと思い込んでいたのだが・・・今、手元にある米fantasy再発盤(日本ビクタートレーディング)の裏ジャケットには、Tommy Nolaと表記されていた。

もう1枚、エルヴィン絡みで聴いたのは~As9160_j
Heavy Sounds(impulse) このimpulse盤は1967年発売なので、センターラベルは「赤・黒」がオリジナルとのことだ。これは好きなレコードだ。テナーがフランク・フォスター・・・特にフォスターという人を聴き込んではいないのだが、このレコードを聴くたびに「いいテナ ーだなあ」と思ってしまう。そしてこのimpulse盤、何がいいかって・・・ベースのリチャード・デイビスがいいのである。まずギュッと締まったベースの音色が心地いい。それから、デイビスのグイグイッと引っ張るようなビート感も、そして、ソロを取るときのガッツ溢れる「唄おうとするマインド」も素晴らしい。
そういえば、リチャード・デイビスを一度だけ見た。新宿ピットインで森山威夫のライブが終わった後に、翌日行われる<リチャード・デイビスmeets 森山威夫、板橋文夫>の公開リハーサルなるものを1時間ほど見ることができたのだ。あれは・・・たしか翌日にソニー・ロリンズを渋谷公会堂で見た時なので・・・1981年だったように記憶している。As9160_2
椅子とかは片付けられてしまい、それでも残った熱心なファンが注目する中、そのリハーサルが始まる。ところが、リチャード・デイビスのベースの音は・・・細くてペンペンだった(笑) レコードで聴くあの強靭さがほとんど感じられないその貧弱な音色に、僕はもう本当にがっかりしてしまった。ところが、デイビスが10分、20分と弾き込むにつれ・・・ベースの音が徐々に「深く」なってきたようなのだ。弾き込むことでベース自体が鳴るようになってきたのか、あるいはアンプの調整をうまく合わせてきたのか、とにかく「いい音」になってきた。リハーサルなので、テーマとエンディングの合わせくらいで、ベースもソロなどほとんど取らないのだが・・・なんというか、マグマの地熱のように吹き出てきて、演奏が「徐々に熱くなってくる」ような感じだった。あの独特なグルーブ感は・・・デイビス自身の持つ底の知れないジャズマインド~そのマインドの深さが生み出す凄さだったのかもしれない。リハーサルであの具合なら・・・これは本番では、さぞや・・・と思わせてくれるリチャード・デイビスであった。
ちなみに、私見では、この日、いくつか聴いたチコ・フリーマンとの名コンビのべーシスト~セシル・マクビーとよく似たタイプだと思う。音色の質、ビート感、マインド・・・好きなタイプのべーシストである。
さて、このHeavy SoundsからYoさんが選んだのは~shiny stockings。これは文句なく、いい曲だあ!(笑)この有名曲・・・実はフランク・フォスター自身の作曲である。
Heavy Sounds(impulse)は、先ほどのEncounter(presitge)とほぼ同時代の録音なのだが、「録音」という観点で比べると、僕はこのHeavy Soundsの方が、うんと好きだ。フォスターの(たぶん)しっとりした音色も自然な味わいだし、デイビスのベースのタイト感もよく録れている。そして何よりもエルヴィンのドラムス・・・その全体の鳴りが~もちろん「でっかい鳴り」ではあるが、過剰な強調感がない(ように感じる) こちらもimpulseなので、録音はVan Gelderかと思いきや・・・今、僕の手持ち盤(再発のグリーンラベル)でチェックすると、Bob Simpsonだった。この人、オスカー・ピーターソンの「リクエスト」の名エンジニアである。

Lps_2 ロリンズの「橋」をかけてもらった。このレコード・・・僕は長い間、日本盤で聴いていたのだが、ようやくRCA VictorのLSP盤(ステレオ)を入手した。自分の荒っぽい装置で聴いても「かなりの鮮度感」と思ったので、ぜひYoさん宅のいい装置で聴いてみたかったのだ。
where are you?を聴く。ロリンズのテナーの音が、その音の輪郭がググ~ッと余韻を持って拡がる。「エコー」で拡がるのではなく、ロリンズ自身がおそらくテナーを揺らして音色の音場を拡げている・・・そんなソノリティ(「音の響き具合」というような意味合いか)を感じる。時に、ロリンズが音をベンド(音程を微妙に上げ下げするような感じ)させる辺りの表現力・・・これには参ってしまう。あの上げ下げは・・・おそらく、マウスピースに通す息をわざと詰まるようにしてベンドさせているのだろう。そんな「小技」だけでなく、とにかく全編がロリンズ独特の音色によるロリンズの「唄」になっている。う~ん・・・これは気持ちいい!このwhere are you? は、ロリンズのバラードでは最高かもしれない。(笑)ジム・ホールの控えめな音量だが、キュッと芯のあるギターもいい音で鳴っている。以前からRCAのステレオ録音は好きだったが、この「橋」は、自然な質感の、しかし充分に音圧感を持った本当にいい録音だと思う。
次に、Yoさん手持ちのモノラル盤も聴いてみる。モノラル盤もやはりいい音だ。つまったような感じもなく、テナーの音も伸びやかに拡がるし、ウッドベースの厚み・音圧感は、やはりモノラル盤の方に分がありそうだ。
私見では、RCA Victorは、モノラル盤でもステレオ盤でも、音質の感じに大きな違いはないように思う。音質の傾向としては、過剰な色づけが少なくて、どの楽器の音もしっかり録られている感じがして、実に聴きやすい音だと思う。録音エンジニアは、Ray Hallだ。RCA Victorステレオ盤のいいところは・・・モノラル盤に比べても各楽器の音圧感がほとんど落ちないまま、ピシッと各楽器が定位されることで、僕はロリンズのテナーが右寄りから振りかぶってくるようなステレオ盤が好みである。

もうひとつ、Yoさん手持ちのロリンズのVictor盤を聴いた。Lsp_3355_j
The Standard(LSP:ステレオ盤~こちらもengineerはRay Hall) である。my one & only loveをかける。実はこの前に、ちょっとした「my one & only love」特集があり、チコ・フリーマン(Beyond The Rain)、リッチー・カムーカ(mode盤)のmy one & only loveを聴いていたのだ。そしてロリンズのこの曲~意外な感じがするが、ピアノがハンコックなのである。
僕は「このmy one、いいんだけれど、ハンコックのピアノがなあ・・・」と隣にいたkonkenさんに言うと・・・「合わないだけじゃないですか?」とクールな反応であった。ロリンズとハンコック・・・確かに「合わない」(笑)たぶん、他ではない取り合わせである。久しぶりに聴いたこのmy one & only love~ ゆったりと音をいつくしむように吹くロリンズはやっぱり素晴らしいじゃないか。良くない印象だったハンコックのピアノも、左手のハーモニーがちょっと「新しい感じ」で僕の好みとはちょっと違うが・・・切れのいいタッチがいい音で録られており、案外に悪くなかった(笑)Lsp_3355
このStandard~これも実にいい音だった! これではRCAのロリンズは全てステレオ盤で揃えたくなってしまう。そういえば、ブログ仲間のbsさん<Blue Spirits>で、うんと以前から「RCA期のロリンズは凄い。ぜひステレオ盤で聴いてほしい」という内容の記事を書かれていた。今回、「橋」と「スタンダーズ」のステレオ盤を続けて聴いてみて、bsさんの得たであろう感触を実感できた。
そして、もっと実感したのは・・・僕はやっぱり、ソニー・ロリンズを大好きなんだ!ということかもしれない(笑) 

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2008年5月19日 (月)

<思いレコ 第16回> レッド・ガーランドの唄心。

「ソニー・ボーイ」という曲のこと~

ジャズを好きになってしばらくの間、ピアノではモンクとエヴァンスばかり聴いていた。タイプは全く違うが、この2人は本当の意味での「スタイリスト」だったし、僕はある意味「判りやすい」この2人の個性をどうしようもなく好きだったのだ。その後、ランディ・ウエストンやダラー・ブランド、それからソニー・クラークを知り、今ではピーターソンやラムゼイ・ルイスまで楽しく聴いている(笑)

そこで・・・レッド・ガーランドである。こんな風にブログに取り上げる割りには、僕はガーランドのマニアというわけではない。ガーランドのピアノ自体は、マイルスの諸作でけっこう耳にはしていたはずだが、そのソロに特に惹かれるということもなく・・・だから、ガーランドのリーダーアルバムまではなかなか手が廻らなかった。
その頃、行きつけのジャズ喫茶「グロッタ」で、マスターがガーランドのレコードを何度か掛けてくれたことがある。Garland_of_red そしてその中の1曲が妙に印象に残ったのだ。

A Garland of Red(ビクター1978年)~A面2曲目がmy romanceだ。
その1曲とは・・・「マイ・ロマンス」だ。この名曲を、ガーランドは思いもかけないほど「ゆっくり」演奏した。

「マイ・ロマンス」は何と言っても、エヴァンスのレコードを聴き込んでいたので、僕のアタマの中には~エヴァンスの川の水が流れるようなピアノ・・・それからもちろんラファロの美しいベースソロ~そんなイメージがこびりついていた。「これしかない」と思えるくらいに、エヴァンスのあの曲に対しての解釈は素晴らしいものだったが、あれだけが「マイ・ロマンス」ではなかったのだ。
ガーランドの方が1956年と録音年がうんと古いわけで(エヴァンスが1961年)だからエヴァンス版とはだいぶん肌合いが違うのだが、この「ゆっくりマイ・ロマンス」にも、僕は徐々に惹かれていった。
実際、ガーランドは、本当にスローなテンポでこの曲を演奏している。もうちょっと何か仕掛ければいいのに・・・と思ってしまうほど、徹底して音数を少なくしたまま、最初から最後まで実に淡々と弾き進めるのだ。決して華麗な演奏ではない。しかしその・・・それが僕にはとても新鮮だった。こんな風に「淡々とした語り口」のガーランドのピアノの音が、じわ~っと体の中まで沁みてくるような感じなのだ。
演奏全体を通して「優しげな情感」みたいなものが漂ってくる「マイ・ロマンス」だと思う。

ジャズ本などをいろいろ読んでいると、ガーランドのリーダーアルバムでは、このGarland of Redとやはり At The Preludeが取り上げられることが多かった。そして・・・わりと見かけたのが、When There Are Grey Skies(prestige)というタイトルのレコードについての記事だった。やはり「ガーランド大好き」の方もかなりおられるようで、それらはみな例外なく、St.James Infirmary(セント・ジェームズ病院)を褒め上げていた。どれも「ガーランドの情念が溢れている」というような内容だったように思う。
僕は「どんな音だろう?」という興味は持ったが、どの記事も「セント・ジェームズ病院」への思い入れが、あまりに強かったためか・・・必要以上に「文学的」に聴かれてしまっているように見えないこともなく・・・僕など、逆にちょっと引いてしまう気持ちもあったかもしれない。
そんな訳で、長いこと、このレコード~When There Are Grey Skies(prestige)を耳にするチャンスがなかった。(というのは・・・全く僕の勘違いだったのだが、そのことは後述します) When_they_are

4月の初め頃だったか、僕は地元の中古レコード屋でこのレコードを見つけた。「おっ」と思ったが、ラベルは「fantasy黄緑」でジャケットも盤もペラペラである(笑)だから、あまり積極的に欲しいとは思わなかった。だけど「セントジェームズ病院」というのが、どんな音なのか、一度は聴いてはみたい・・・それになぜかこのレコードはあまり見かけないし、OJCでも出ていなかったのかもしれない・・・という訳で、ようやく僕はこの When There Are Grey Skies(ステレオ盤)を入手したのだった。
さっそく聴いてみると・・・録音自体は擬似ステレオではなく、ベースやドラムスも案外いい音である。だけど・・・ピアノの音が「コ~ン・キーン」とかなりと強めに鳴る音で、時には「強すぎる」タッチのピアノの音色だ。かなりの「オン・マイク録音」かもしれない。いずれにしても独特のピアノの音である。ジャケ裏を見ると・・・やはり、ヴァン・ゲルダーの録音だった(1962年)
そんなピアノの音色ではあったが・・・これがそれほど不快には感じなかったのだ。いや・・・普通ならこんなに「硬めで強め」のピアノ音は好みじゃないはずなんだが、なぜだか、何度も聴いてしまう・・・聴きたくなってしまう音だったのだ。When_they_are_4
何度も聴いたのには理由がある。それは、もちろんこのレコードでのガーランドの演奏を好きになったのだが、それはお目当ての「セント・ジェームズ病院」ではなかった。
A面1曲目の「Sonny Boy」に、やられたのである。
ガーランドは、この曲も、うんとスロウなテンポでじわりじわりと弾いている。「マイ・ロマンス」よりも遅いくらいだ。そしてパラパラとフレーズを弾くこともなく、うんと音数を減らして、その分、この曲に深い情感を込めようとしている・・・ように聴こえる。
ガーランドという人・・・改めて認識したのだが「タッチが強い」のである。手の全体で押し込むような強さではなくて、指先のばねを効かしたような強さ~のように感じる。
「マイ・ロマンス」と同じように・・・いや、あれ以上に淡々とした弾き方が続くのだが、ガーランドの「唄いあげ」として「ここぞ!」という場面に、そういう強いタッチが「ッカ~ン!」とくる。そのシングルトーンが、まさに「鐘」のように荘厳に響くのである。そして・・・これが効くのだ(笑)
この曲・・・Sonny Boyでガーランドが表現しようとした・・・なにか「祈り」のような「慈しみ」のような・・・そんな雰囲気と、このヴァン・ゲルダー録音のちょっと独特なピアノの音色とが、うまい具合にマッチしているように、僕には感じられるのだ。
「ソニー・ボーイ」・・・こんなに素晴らしいガーランドの演奏があったのか・・・僕はすっかり感動してしまった。そしてそのことを誰かに伝えたかった。

《When They Are Grey Skies(prestige:NJ黄色ラベル)~recooyajiさん提供》Grey_skies_mono
《モノラル・オリジナル盤では、ガーランドのピアノの重心が下がり、ちょっと太めの音になった。ステレオ盤の「強いタッチのキンキン音」より、うんと聴きやすい。その分、ドラムやベースがちょっとおとなしくなっているかもしれない》

さて、ここからが実に情けない僕の笑い話しである。
つい先日、recooyajiさん宅で音聴き会をした折に、その「ソニー・ボーイ」のことを話したのだが、recooyajiさん「いやあ・・・いいでしょう、あれ!」と、すぐにそのガーランド盤を取り出してきた。 recooyajiさん、しっかりオリジナルのモノラル盤(NJ黄色ラベル)を持っている(笑) モノクロにピンクが効いたジャケットが素敵だ。そのジャケットのピンク色を見た瞬間、僕は「あれ、これは前に聴かせてもらったような・・・」という気持ちになり、そういえば・・・昨年末だったか、やはりこのrecooyajiさん宅で、ガーランドのこのレコードのことが話題になっていたことを、ハタと思い出したのだ(笑)
recooyajiさんもこの「ソニー・ボーイ」をとても気に入ってるとのことで、あの時もたしか・・・「bassclefさん、このガーランド盤~どうしてこんなタイトルになったのか・・・判りますか?」という話しになり、そして教えてくれたのが・・・ペテュラ・クラークなのである。
クラークの英国EP盤(4曲入り)に、このsonny boyが入っていた。Ep《EP盤:You Are My Lucky Star~recooyajiさん提供》
recooyajiさん、意味ありげに、ニヤッと笑いながら、そのsonny boyの歌詞を見せてくれる。その歌詞・・・始まりの部分がこうなっていた。
when there are grey skies...
なるほどっ! この歌詞をそのままタイトルにもってきたのか! これは・・・ガーランドのWhen There Are Grey Skies という素晴らしいレコードについての、recooyajiさんならでは~ジャズだけでなく、ロックからガールポップまで幅広く音楽を楽しんでおられる~の素晴らしい発見だと思う。
そんなことを昨年12月に話したわけで・・・つまり、ガーランドの「ソニー・ボーイ」を、僕は昨年12月にすでに聴いていたのだ。そして、おそらくそれが無意識的にではあっても、音の記憶として僕の脳髄に残っており、そして4月にそのレコードを見つけ、そうして「感動」した。
ああ・・・なんてことだ・・・僕は「ソニー・ボーイ」を教えてくれた当のご本人に向かって「あれはいいよ」とのたまっていたのだ(笑)
だから「ソニー・ボーイ」の素晴らしさは、もちろん僕が「発見」したのではなく、すでにrecooyajiさんから僕に伝えられていたわけで、つまり・・・僕は「時限的催眠術」に掛けられていたのだ(笑)
《12インチ盤:You Are My Lucky Star~recooyajiさん提供》Nixa

そして、そのペテュラ・クラークのsonny boy・・・これまたしっとりしたいい味わいなのだ。
recooyajiさんはこのEP盤をとても気に入って、その後、オリジナルの12インチ盤(Nixa)も入手していた。EP盤のジャケットも素晴らしいと思うが、12インチの方もなかなか魅力的じゃないか。

《英Nixa盤~ディスコグラフィによると、1957年の発売らしい。下の写真はPYEの内袋。とても魅力的だ》

Pyeこの「ソニー・ボーイ」という曲、どうやらうんと古い曲で、もともとはアル・ジョルソンという「スワニー」を唄った人のヒット曲のようだ。残念ながら僕はそのヴァージョンを聴いたことがないのだが、おそらくは、明るく軽快な感じで唄っている・・・と推測している。というのは・・・歌詞の内容が「どんなに落ち込んでいても、いつもみんなを明るくしてくれるソニー・ボーイ」みたいな内容なので、普通に解釈すれば「明るく元気に」唄う歌だと思うからだ。そしていくつか聴いたインストでのsonny boyが、どれも「速いテンポ」だったことからも、そんな推測ができる。002
実際、ソニー・ロリンズのsonny boy(1956年:prestige)は、かなりの急速調で、全く明るい雰囲気なのである。あまりにあっけらかんとしているので、ちょっとがっかりしたくらいだ(笑) もっとも、ロリンズのこの1956年12月のセッション(sonny boy, Ee-Ah, B quick, B swift)では、マックス・ローチがドラムで、なぜか4曲とも、挑戦的にバカッ速いテンポの曲ばかり演っているので、一応はスタンダードソングのsonny boyであっても・・・その日のセッションの「ノリ」に飲み込まれてしまったとしても、仕方がないだろう(笑)001
もうひとつ・・・sonny boyを見つけた。ギターのオスカー・ムーアだ。Swing Guitars(norgran:1955年)に入っていた。こちらもやはり軽快なテンポで、からっとした演奏だった。

そんな「ソニー・ボーイ」ではあるが・・・ペテュラ・クラークは「しっとりしたソニー・ボーイ」を選んだ。ストリングスを控えめに絡ませるアレンジも趣味がいいし、間奏のトロンボーンも効いている。クラークはもともと声質が低めで落ち着いた唄い方の歌手で、初期の盤は、ジャズっぽい感じでどれも悪くない。もともと急速調であろうこの曲を、クラークはスロウーなバラード仕立てで唄うことで、明るいだけだったはずの曲の中に、なんとも言えない哀愁感を漂わせている。とてもいい味わいだ。

そしてこれは僕の勝手な思い込みかもしれないが・・・ガーランドはおそらくこのペテュラ・クラークの「ソニー・ボーイ」を愛聴していたに違いない。この「しっとり感」が、ガーランドの趣味にピタリときたはずなのだ(笑) 
そうしてガーランドは1962年に、もっとゆっくりなテンポで「ソニー・ボーイ」を演奏した。その演奏があまりに見事だったので・・・監修したオジー・カデナは、タイトルを when there are grey skies とした。というのが・・・僕の夢想したストーリーである(笑)

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2008年3月23日 (日)

<ジャズ雑感 第23回>エリック・ドルフィーという人。

僕の好きなドルフィー~

「カッ・カッ・ッカ・ッカ・カッ・カカ・ッカ・ッカ」
いきなりロイ・へインズの甲高いスネアのリム・ショット打音で始まるこの曲。
そう・・・ドルフィーのG.W.である。ドルフィーとハバードのテーマが終わると、すぐにドルフィーのアルトが飛び出してくる。
う~ん・・・気持ちいい!(笑)

いやあ・・・今日は久しぶりにドルフィーをたっぷりと聴いた。そういえば、しばらくドルフィーを聴いてなかったのだ。
ちょっと前に、4438milesさんのブログ「Fのブルース」でオリバー・ネルソンの「ブルースの真実」が記事になり、そこでドルフィーの話題になった。  その記事を読んでいるうちに・・・俄かに、ドルフィーが聴きたくなってきたのだ(笑)
朝からどんなのを聴いたかというと・・・
「惑星」(outward bound)~A面(G.W.,on green dolphin street,les) 
B面(245,glad to be unhappy,miss toni)
「アウト・ゼアー」~B面(eclipse, 17west, sketch of Melba, feathers)
「ファイブ・スポットvol.1」~A面(fire waltz, bee vamp) 
B面(the prophet)
「ヒア&ゼアー」~A面(status seeking, god bless the child)
「メモリアル・アルバム」~A面(number eight)
「ダッシュ・ワン」~A面(G.W., 245) B面(bee vamp, serene)

こんなにもたくさんのドルフィーの音を浴び続けると・・・さすがにちょっと疲れる(笑) でもまあ心地よい疲れというか・・・やっぱりジャズの一番、濃いところを、しっかりと身体に沁み込ませたような気分でもある。

エリック・ドルフィー・・・もちろん、僕もドルフィーが嫌いではない。中3の時からジャズを聴き始め、モンクやミンガスの次に好きになったのが、ドルフィーだったように記憶している。
最初にドルフィーを聴いたのは・・・高1の時に買ったミンガスの「ミンガス・プレゼンツ・ミンガス」だったはずだ。このレコードは素晴らしかった。ミンガス、ドルフィー、テッド・カーソン、ダニー・リッチモンドという4人のバンド全体に凄い気合が入っていて、ミンガスによって自在にコントロールされたバンドのサウンドには、強力でありながら柔軟~というジャズの素晴らしいダイナミズムが溢れていた。このレコードは本当に何度も聴いた。そしてドルフィーという人を好きになった。
《写真は、CBSソニー盤:SOPC-57001》Mingus_presents

この「プレゼンツ」~今、聴くと・・・やはりこの「プレゼンツ」はミンガスのアルバムであり、演出家(兼役者)としてのミンガスが「こんな風に演出したい」という場面に、ドルフィーという巧い役者が「演出家の要求以上に素晴らしい演技をした」~そんな印象も受ける。(このレコードについては、ミンガス絡みでいつかまた記事にしたい)


《写真は「惑星」(outward bound)と「アウト・ゼアー」をカップリングした2LP(PR-24008)milestoneのtwofersシリーズ》
Twofer

記事の冒頭に書いたように、ロイ・へインズの「カッ・カッ・ッカ・ッカ・カッ・カカ・ッカ・ッカ」で始まる、この「惑星」というLP~ドルフィーのプレイはもちろんのこと、他にもいろいろと聴きどころがある。
一つは、フレディ・ハバードである。この頃の迷いのないハバードのフレーズ、そして何よりあの鋭いトーン・・・これを聴くだけで、実に気持ちいい(笑)
思うに・・・ハバードには、こういう曲というかフォーム~適度にモード的とでも言おうか・・・サウンドとしては、ちょっと前衛的で、しかし熱いスピリットも充分にある(出したい)感じ~そんなフォームが、最も似合っているような気がする。
ハバードのフレーズは、古いスタンダードをオーソドクスなコード(和音)で演るハードバップというスタイルでは、ちょっと浮いてしまうかもしれないし、逆に得意のモード手法を洗練しすぎてしまうと、吹き方がパターン化してつまらなくなってしまうような部分があるかと思う。
そしてもう一つ、ジョージ・タッカー・・・このベース弾きがまた尋常ではない。
この強靭な音色! 以前に記事にしたヘンリー・グライムスと似ているタイプだと思うが、とにかく一音一音が凄くアタックの強い音だ。これは・・・指をしっかりと弦に引っ掛けて相当に強い力で引っ張った音色だと思う。
その「ブチッ・バチッ!」という音色が、これまた快感である。但し・・・好みに合う・合わない、ということもあるかと思う。
なにしろ、タッカーのベースときたら、最初から最後まで怒ったような音をしているのだから(笑)

Van_gelderこのtwofersなるシリーズ・・・初期のものには、センターラベルに<van gelder>刻印があるようだ。
これもちょっと意外だったのだが、ジャケットのクレジットを見ると・・・ちゃんとremastering:Rudy Van Gelderと書いてあるじゃないか。そんな事情を知ってから聴くと・・・音質の方も案外にしっかりとしているように聞こえてくる(笑)
このtwofersシリーズの2枚組みは当時から安い価格で出回っていたし、たぶん今でも人気薄だろうと思う。見かけたら、センター・ラベルのvan gelder刻印の有無をチェックするのも楽しいかもしれない。音質は、twofers以前の「黄緑ラベル盤」よりは、いいだろう。

「ダッシュ・ワン」A面(G.W., 245)とB面(bee vamp, serene)~
「ダッシュ・ワン」は、1982年に発売された未発表テイク集だ。これ以上できない、と思えるほど最悪なジャケットだが(笑)《一番下の写真:右側》
内容は悪くない。なんと言っても、1961年7月「ファイブ・スポット」での別テイク(bee vamp)が素晴らしい。
そして「惑星」(ourward bound)からの別テイク(G.W.と245)もうれしい。マスターテープの管理状態がよかったのか、音質もかなりいいように思う。
G.W.でのロイ・へインズのドラムのイントロ~このパターンが、本テイクとは微妙に違うところがおもしろい。やはり、別テイクの方が、やや切れが悪く、ちょっと判りにくいリズムパターンになっているような気がする。

「アウト・ゼアー」~B面(eclipse, 17west, sketch of Melba, feathers)
この「アウト・ゼアー」・・・昔から、僕にはあまりおもしろくない。というのも、ジョージ・デュブビエのベースにロン・カーターのチェロが加わっており、端(はな)からクラシックの現代音楽風なサウンドを意図したようで、バンド全体のサウンドがこじんまりとしてしまっているからだ。「惑星」に溢れているようなジャズ的なビート感の盛り上がり・・・そんなものが僕にはあまり感じられない。そして、意図したであろう、この現代音楽風なサウンドとしては・・・チェロの音程があまりよくないのも、ちょっと白ける。
B面3曲目のsketch of Melba~このsketch of Melbaは、ランディ・ウエストン絡みで好きな曲だったので、このメロディが流れてきた時に「あれっ?この曲・・・」てな驚きもあり、ドルフィーがこの曲を演っていたということがちょっとうれしかった。5spot_3

さて、ミンガスの「プレゼンツ」の圧倒的な影響もあり、しばらくの間、僕はミンガス絡みでのドルフィーだけ聴いていたのだが、高2の時だったか、FMのジャズ番組「アスペクト・イン・ジャズ」のドルフィ特集で聴いたfire waltz~これには、本当にぶっ飛んでしまった。
ドルフィー、ブッカー・リトル、マル・ウオルドロン、リチャード・デイビス、エド・ブラックエル。この5人が生み出す全ての音に気迫が満ち満ちている。
fire waltzとはよく名付けたもので・・・この5人、本当に燃えているのだ!
5spotしばらくは、テープに録ったその演奏を聴くたびに「これこそがジャズだあ!」と興奮していた。調べてみると、そのfire waltzは「ファイブ・スポット第1集」に収録されており、この日の演奏は、どうやらいろんなLPに分かれて収録されていることも判ってきた。そんな訳で、その後「第2集」「メモリアル・アルバム」「here & there」と、順番に集めたりもした。

ただ、僕の「ドルフィー好き」は、ちょっとばかり片寄っていて、僕はもうひたすら彼のアルトサックスが好きなのである。とにもかくにも、ドルフィーがアルトを吹く時の圧倒的な音圧感やドライブ感に惹かれるのだ。
吹いている楽器がぶっ壊れてしまうんじゃないかと思わせるほどにビリビリと鳴りまくる、あのアルトサックスの音色。そのいかにも大きな音でもって、うねるように、巻き込むように繰り出してくるドライブ感に溢れるフレーズ。

そういえば、ドルフィーがノッてくると、必ず繰り出してくるパターンがある。それは・・・「パッ・パラ・パーラ・パーラ」というデコボコした起伏を持つフレーズで、ドルフィーは、この1小節4拍のフレーズを、それはもう重い音色でもって、何かが弾け飛ぶような感じで、吹き倒すのである(笑)
そしてこのフレーズが出ると・・・その瞬間、ビートが一気に「解き放たれる」ような感じがするのだ。バンド全体の感じているビート感も一気に爆発するとでも言うのか。そうだ・・・まるで、砲丸投げのあの重い鉄球をブンブン振り回しているみたいじゃないか。それも、砲丸の軌道や速度を自在に変化させながら。そうしてそれが、ムチャクチャ気持ちいいのである(笑)

だから、ファイブ・スポットのライブでは、fire waltz, the prophet, number eight, status seeking をよく聴く。同じファイブ・スポットでの演奏であっても、like someone in love, booker's waltzなどのフルートにはそれほど惹かれなかった。Heartheredash_one
もうひとつのドルフィーの楽器~彼の吹くバス・クラは、アルトほど好きではないが、あのバスクラの音色には独特の暗さがあって、もちろん悪くない。
here & there に収録されているgod bless the child は、ドルフィー独りだけのバス・クラによるソロ演奏だが、なんというか・・・地底の底から緩い地熱がじわじわと伝わってくるような・・・そんな独特の気配を感じさせてくれる。5分ほどの小品(他のライブがほとんど10分以上なので:笑)だが、なんとも愛着の湧く1曲である。

それにしても、ドルフィーという人。聴けば聴くほど、ただ一言・・・「凄い」
まったく・・・とんでもないアルト吹きがいるものだ。

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2007年3月 1日 (木)

<ジャズ雑感 第17回>チャーリー・ラウズのこと。

心に染み込む深い音色・・・それがラウズの唄だ。

妙に好きなレコードというものがある。「妙に」というのは・・・特にそのアルバムなりミュージシャンを大好きだと自覚しているわけではないのだけれども、なぜかレコード棚から取り出すことが多くて何度も聴いているうちに「好きなレコード」になってしまった・・・そんな意味あいである。

ジャズ聴きの初期の頃からモンクをいろいろと聴いてきた。そうしてモンク好きによくあるように、僕もチャーリー・ラウズというテナー吹きをあまりいいとは思わなかった。モンクとそしてモンクの曲と正に対決するように吹いたコルトレーンや、あるいは圧倒的に自分の個性を発揮しながらモンクと対峙したロリンズと比べると・・・モンクとただ共演しているラウズは平坦に感じた。ちょっと「のんびりしたような音色」で、同じようなフレーズを繰り返すものだから、凡庸なテナー吹きという印象を持ってしまったのだ。
<補足>このことについては、みなさんから多くのラウズ擁護コメントをいただき、僕:bassclef もタジタジです(笑) 「CBS時代のモンク」に興味のある方(肯定・否定どちらでも)ぜひ、コメント欄もお読み下さい。長いです(笑)

そういう風に聴こえたのには理由がある。
モンク好きとしては、モンク曲の演奏には、なにかしらスリル感みたいなものがほしいのである。
よくジャズはアドリブだ!と言われている。しかし・・・どの曲でも同じだとは思うのだが、あるテーマが終わって「はい、ここからアドリブだよ」というように、アドリブ部分を普通のバップ感覚でコード通りにスムースに吹き進めていっても、あまりおもしろくないことも多い。 特にモンクの曲においては、テーマとアドリブを切り分けてしまっては、あのユニークなモンクのテーマが生きてこないように思う。
モンク好きとしては・・・テーマ部分でのあのモンク独自のメロディや、あの不思議なタイミング(そのアイディア)のエッセンスみたいなものを、巧くアドリブの中に生かしてほしいのである。
もっともこれは、僕が勝手に思う理想郷(モンク曲解釈としての)であって、それは相当に難しいことなんだろう。
実際、モンクの曲をそんな風に吹いたのは・・・ロリンズとスティーブ・レイシーくらいかもしれない。Dscn1669_1

そんなラウズのことを見直したのは、Takin' Care of Business(jazzland)を聴いた時からである。僕はこのレコードをうんと安いOJC盤で買ったのでそれほど期待もせずに聴いたのだが・・・まずB面1曲目の wierdo という曲がよかった! このKenny Drew作の曲は魅力的なテーマの曲で、かなりの急速調で演奏されるのだが、この曲でのラウズはやけに気合が入っているのだ。ノリのいいテーマの後も、アイディアに溢れるアドリブ展開を見せるラウズは凄い! たいていゆったりとしたテンポで、もっさりとしか吹けないようなイメージをラウズに対して持っていたのだが、この曲でのラウズは違った。それはもう覇気のある見事なテナー吹きだったのである。
そんなラウズに驚いた後・・・思い切りスロウなテンポでやけにメランコリックな曲が流れてくる。それがランディ・ウエストン作のPretty Strange という曲だった。
ランディ・ウエストンが生み出した、正にちょっとstrangeなメロディを、独りラウズが吹いていくと・・・ずし~んと重く沈鬱な感じが漂ってくるのだ。うんとスロウなテンポなので、普通なら、間が持てなくなってパラパラと流すようなフレーズを出してしまいそうなものなのに・・・ラウズは全く動じない。ベースとドラムが淡々とリズムをキープしつつピアノが合間に時々バックをつける中、ラウズは岩のような重さを保ったまま、「メロディを唄う」ことのみに集中しているようだ。ここまで音楽に没入してくると・・・もはやフレーズがどうとかリズム感どうとかいうようなことは問題ではない。
「音色」こそが全てなのだ。
さきほど「のんびりしたような」と書いたラウズの音色が、このウエストンの曲では、これほど深々とした落ち着きのあるどうしようもなく魅力的な音色に聴こえてくる。これはもう・・・全くラウズの世界、そしてランディ・ウエストンの世界だ。それにしても、こんな深い味わいのバラードというのはめったにないぞ・・・。
ラウズがウエストンの曲を好きだったのだろうか・・・このレコードでは、もう1曲、ウエストンの曲を演っている。「204」という曲だ。この曲は、ウエストンのhi fly にちょっと似ている曲調だが、こちらもやはり素晴らしい。チャーリー・ラウズとランディ・ウエストンの相性は、最高にマッチしているように思う。
ちなみにランディ・ウエストンについては・・・次回にでも何か書こうと考えている。

そんな具合に、チャーリー・ラウズという名前が気になってきた頃に、ラウズの「ワン・ホーン」のレコードを手に入れた。
Yeah!(Epic/CBSソニー)である。Dscn1668
このレコードは1973年頃にCBSソニーから1100円の廉価盤として発売されたはずだが、ラウズ=凡庸と思い込んでいた僕が、この盤をその頃に買うはずもなかった。後年、この「Yeah!」にはけっこうな人気が集まったらしく、CBSソニー盤にさえけっこういい値が付いたりしていた。そんな日本盤高騰ブームが去ったある時、このCBSソニー盤を、普通の値段で見つけたのでうれしく入手した。
このレコードではラウズのワン・ホーンで、you don't know what love is や stella by starlightなどのスタンダードを、じっくりと自分のペースで吹いている。モンク曲とは全く別の地平でじっくりとスタンダードをゆったりと吹き進めるチャーリー・ラウズ・・・これも実にいいのである。
この人には本当は「ワン・ホーン」が合っているのかもしれない。
想うに・・・ラウズのテナーには、なんというか実にソウルフルな感じを受ける。ソウルと言っても、いわゆるテキサステナー的な意味合いのソウルではなくて、なんというか・・・深い情感を伴ったある種の敬虔さみたいなものさえ感じ取れる「ソウル」なのだ。
今回、レコードを何度も聴き直しているうちに・・・ますますラウズの音色の深さに引き込まれてしまった。ラウズという人の音色は・・・聴き終わった後にでもじわじわと効いてくるような、そんな地熱のような温かさを持った音色なのかもしれない。
まったく・・・ジャズの世界にはいろんなテナー吹きがいるものだ。まだまだジャズはやめられない。

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2006年4月27日 (木)

<ジャズ回想 第4回> ニーノニーノさんのオフ会のこと。

こんな具合に・・・白馬の夜は更けていった~

第2回 白馬/杜の会が、今年もつい先日、行われた。場所は昨年と同じ、信州・白馬のオーディオ・ペンション「洗濯船」である。
「杜の会」とは・・・オリジナル盤通販専門店ニーノニーノさんのBBS「こだわりの杜」のオフ会のことだ。
詳しくは・・・そのHPのBBSとコラムをお読み下さい。こだわりのオヤジたちがいつも集っております(笑)http://www.ninonyno.ne.jp/ninonyno/topmenu.htm

今年の「杜の会」は、だいたい以下のような流れで行われた。
第1部~「Duke氏のレコード語り」(地下JBLルーム)
第2部~「みなさんの一押しレコードpart1 」(1Fマッキンルーム)
第3部~「家庭的かつ良心的なオークション」 そして・・・
第4部~「みなさんの一押しレコードpart2 」(地下JBLルーム) だ。

食堂(1Fマッキン)での第2部「みなさんの一押しレコードpart1 」は、ちょっとお酒の入った夕食の後、誰かれとなく「じゃあそろそろ・・・」「そうですねえ・・・ゲヘヘヘッ(笑い声)」てな感じで・・・もちろん和気アイアイと、しかし若干の緊張を伴って始まる。みなさんが持ち寄った「一押し盤」の中から1枚を選び、簡単なコメントをつけて1曲づつ披露するわけだ。みなさん、もちろん「自分が好きな盤」をかけることとは思うが、そこはやはり相当な音楽好き達を前にしてのお披露目である。若干のミエもないわけではない(笑) 
「あんまり音が良くないレコードだなあ」とか「これのどこがいいんだ?」「よく見る盤だな」などと思われないだろうか?・・・などと余分なことも考えてしまう。(いや、そんなのは僕だけか?)
だから・・・ちょっと「かっこつけた盤」になってしまうこともあるかもしれない。「絶対に大丈夫な盤」。つまり・・・明らかに演奏のいい名盤、明らかに音のいい盤、明らかに希少盤・・・そんな感じか。

とにもかくにも、今年が初参加のお2人から、1Fマッキンルームでの音だし(第2部)は始まった。僕は JATP new volume 5 (clef)12インチ(古い録音だけどサックスの音色などが素晴らしい)と Lee Morgan/Here's Lee Morgan (vee jay) (僕の中ではちょっと新らしめの「いい録音」1960年のステレオ録音。)Duke Plays Ellington (capitol)(12インチ:ターコイズ)などを用意していた。
_003_1僕の順番は3人目。1人目が女性ヴォーカル(ポリー・バーゲン)、2人目がオペラ(マリア・カラス)ときたので・・・「ここはカラッとしたハードバップだな」というわけで・・・Here's Lee Morgan (veejay) を選んだのだ。VeeJayのステレオ盤は、音もまあまあだと思ったので選んだのだが・・・ちょっと中途半端ではあったようだ(笑) それほどの希少盤ではないし、リー・モーガンには他にも名盤があまたある。選んだ曲も、地味なジャズメン・オリジナルだ(milt jackson作のoff spring という曲) 昨年もそうだったが、クレフやノーグランのゲッツやらホッジスの超希少盤が次々に登場してくるので、普通のハードバップ盤じゃあ、とても対抗できないようだ(笑) しかし・・・食堂のマッキンルームの「壮大な鳴り」で聴く「ハードバップ」も悪くはなかった。ブレイキーの、かなりでかそうなライドシンバルのグワ~ングワ~ンという鳴り具合や、ベースのチェンバースの大きな音(ちょっと出すぎくらいにベースが大きな音像で鳴っていた) ケリーの転がるピアノタッチなど、どれもマイルドないい音で鳴っていた。まあでも・・・ノッて聴いたのは、僕だけかもしれない(笑)

第1部でかかった曲を列挙しておこう。(だいぶ記憶が飛んでますので・・・不完全です:笑)

D35さん~ポリー・バーゲンTHE PARTY'S OVER(columbia) から smoke gets in your eyes
マントさん~MARIA CALLAS sings ROSSINI and DONZETTI・arias(UKコロンビア) から LA CENERENTOLA(F・Rossini) Nacqui all'affanno(Act2)
bassclef~リー・モーガン here's Lee Morgan(vee jay:stereo) から off spring *前述
ワガママおやじさん~ドロシー・ドネガン(レーベル名を失念。珍しいレーベルの盤)から on green dolphin street 
*<補足>~下記コメントにあるようにワガママおやじさんからデータを頂ました。この珍しい盤は・・・Dorthy Donegan/Swingin Jazz In Hi-Fi (Regina 285) なる盤でした。
パラゴンさん~Eve Boswell(女性シンガー)の 「you go to my head」
SPUさん~ジーン・アモンズ、the Boss Tenor(presige:銀・黒ラベル) から my romance
YOさん~リッチー・カミューカ~ Richie Kamuca Quartet (mode) から what's new? ともう1曲、ペッパー・アダムス(mode)から my one & only love
リキさん~プレヴィンの指揮したアルビノーニのアダージョとモーツァルトの宗教曲
Dukeさん~ジュリーロンドン the end of the world
       カーペンターズ   the end of the world

さて・・・そんな第2部「みなさんの一押しレコードpart1 」が終わって、オークションで盛り上がった後・・・いよいよ第4部~「みなさんの一押しレコードpart2 」(地下JBLルーム)が始まった。ここでは、もうちょっと個人的好みの強いマニアックな盤が登場することが多い。いわばみなさんの「本音盤」である。そんなみなさんの「本音盤」と、かかった曲を以下に記しておこう。

YOさん(YoさんとBoseさんのネタ)~ジョニー・グリフィン2題!
     Johnny Griffin /Way Out [riversideオリジナル・ステレオ盤/日本ビクター盤/WAVE盤]と the Kelly Dancers  [オリジナル・モノラル盤/WAVE盤/fantasy custom盤] での聞き比べ。

ワガママおやじさん~Modern Music From SanFrancisco(fantasy) なる3つのセッションを集めた盤:Jerry Dodgion のセッションからmiss jackie's delight ピアノがソニー・クラークです。*後述_001_2

bassclef~フリップ・フィリプス/EP盤(Clef)から I'll never be the same

・・・このEP盤には愛着がある。とにかくジャケットが好きなのである。EP盤の左側~Flip Phillips Quintet というタイトル。ワンホーンでしみじみとしたフィリプスのテナーが味わえる。10インチオリジナルが欲しい・・・(笑)

パラゴンさん~ヘレン・メリル/mercuryのオリジナル盤(大ドラム)から you'd be so nice to come home to

SPUさん~ルイ・アームストロング/Satchmo At Symphony Hall/Decca より (What Did I Do to Be So)Black And Blue・・・哀感が漂う名曲でした。(トランペットつながりで~題して「魂の叫び」by オーナーMさんとSPUさん)
マイルス・デイヴィス/Live Around The World (ライブ盤)より
Time After Time・・・つぶやくような、しかし時に押し殺した声で泣いているような、そんなマイルスの表現力には圧倒された。後半、マイルスとギターやベースとの絡みは、ギター奏者が必死に音量を抑えたような弾き方で、マイルスと対峙し、とてもスリリングな一瞬だった。そしてぐぐ~っと音量を上げるシンセ・・・「ドラマティックな演出」というのはすごく判るのだが・・・シンセの音自体に・・・どうしても馴染めない自分でした。

マントさん~マリア・カラス/L'ELISIR D'AMORE(R・Donizetti) Prendi;per me sei libero(Act2) 

YOさん~Ben Webster /meets Oscar Peterson (Verve)
     [Verve Inc.(Celf sereis)]モノラルと [Stereophonic]~同タイトルの2種。曲は「bye bye blackbird」での聴き比べ。*後述

_002_1bassclef~パーカーのEP盤(clef:写真左)から just friend 
   ・・・最初33回転でかかり「あれ?このテナー誰?」という感じ(笑)、すぐさま45回転でかけ直すと・・・めでたくパーカーが出現しました(笑)

このパーカーのEP盤もわりあいと音がいい(ように思う) 状態のいい10インチ盤もぜひ聴いてみたいものだ・・・。
(パーカーつながりで)
SPUさん~ Bird And Diz/clef 10inch より Bloomdido(clef:10インチ)・・・オリジナル10インチはやはり凄い。モンクのピアノがタッチが強力だということが、改めてよく判った。

リキさん~ (?)演奏者失念/モーツアルトの最晩年の「?」・・・静かに淡々と流れる曲でした。これもそこはことなく哀しみが滲むような・・・。

巨匠Y氏~beatles (UKだったかのシングル盤から come together と something リンゴのドラムがよかった! *後述

YOさん~ギターもの2題~マイケル・ヘッジス/「?」(ミュージシャン名、違ったかも?)(曲名 失念)
・・・開放弦がキラキラと鳴り、弦の響きがキレイに録音されているレコードだった。個人的には「ソロ・ギター」があまりに大きい音像だと、ちょっと違和感を覚える。
カルロス・モンターヤ/「?」 ・・・フラメンコの名手とのこと。右手のアポヤンドが、凄い強いタッチだ。フラメンコは濃くて凄すぎる。

Dukeさん~Miles Davis:Cookin' から「my funny valentine 」~純正オリジナル 446W盤は・・・やはり凄かった。*後述

オーナーM氏~ジョニー・ホッジス MGN 1059 Johnny Hodges - In a Tender Mood (norgran)から tenderly
・・・ホッジスにしてはあっさり風味に聞えた。やはりエリントン絡みの曲では、特別に濃厚になるのだろうか。

D35さん~ダイナ・ショア: Somebody Loves Me(capitol) IT'S EASY TO REMEMBER
・・・しっとりとしていい唄い手だと思う。ダイナ・ショア、好きな声です。

マントさん~コルトレーン:Live At The Village Vanguardから spiritual (第1部Dukeさん「レコード語り」の時、時間の都合で10分ほどでカットしたので全曲通して)

bassclef~デューク・エリントン Duke Plays Elligton (capitol) (12インチ:ターコイズ)から (この時、Dukeさんが再登場! 「ちょっといいですか?」と言いつつ・・・2人の女性にまつわる話しから、エリントンとこの曲へのオマージュを語る(笑) _004_8

   

                                             

in a sentimental mood と passion flower~しんとした響き。ラテン風エキゾチックな曲調だが、バックでほんの小さく鳴るドラムスの「手叩き」(だと思う)が絶妙だった。
オーナーM氏~アート・ブレイキー:バードランドの夜 vol.3(bluenote)~10インチオリジナルから confirmation *後述

こんな流れだったのだが・・・盤の音質も含めて、特に印象に残った場面をもう少し紹介しようと思う。

Modern Music From SanFrancisco(fantasy)
ピカピカの赤盤だった。こういうcoloured vinyl はよく見ると・・・半透明なので向こう側がうっすらと向こう側が見えたりする。それはもう・・・唸るほどの垂涎盤だった(ちなみにヨダレは出てません:笑)
この盤には3つのセッションが入っている。ワガママおやじさんがセレクトした1曲は・・・アルトのJerry Dodgionのリーダーセッションから miss jackie's delight なぜこの曲か?もちろん・・・ピアノのソニー・クラークが入っているからなのだ。
1955年の録音なので、ソニー・クラークとしては、バディ・デフランコとのVerve録音と同時期ということになる。
miss jackie's delight は速めのテンポのブルースで、ドジオンのやや軽めの音色のアルトが快調なロングソロを取った後に、いよいよクラークのピアノソロが始まった。初期のクラークらしいやや「軽め」(後期に比べれば)だが、キレのいいタッチがたっぷりと聴けた。デフランコとのVerver諸作では、クラークのロングソロというのはほとんどなかったので、この1曲での16コーラス(とベースソロの前の+4小節。長いので数え違えたかも:笑)にも及ぶロングソロだが、アイデアのあるフレーズが次々に飛び出してきて、まだまだいくらでも弾き続けられそうだ(笑)初期のクラーク好きは、これはもう必聴だと思う。
ちなみに・・・この盤、僕の手持ちは・・・トホホのOJC盤(笑)それでも「赤盤仕様」になっているところが意地らしい(笑)

Ben Webster /meets Oscar Peterson (Verve)
[Verve Inc.(Celf sereis)]モノラルと [Stereophonic]~同タイトルの2種。曲は「bye bye blackbird」での聴き比べ。
これがおもしろかった。
モノラルカートリッジで聴いた「モノラル盤]~テナー、ピアノ、ドラム、ベースなど個々の楽器は、大きな音で、はっきりくっきり出てくるので、大迫力だ。
ただ逆に(好みによっては)ベースの音像が大きすぎだったり、ドラムのシンバルやピアノの音がちょっときつすぎたかもしれない。
ステレオカートリッジで聴いた[stereophonic盤]~テナーとベースがやや左側、ピアノが中央、ドラムがやや右側へと音場が拡がった。しかしそんなことよりベースの音像も締まり、ピアノの高音もさきほどのモノラルの「全てがフォルティシモ」的なサウンドから比べてうんと、聞きやすくなった。タッチの質感が出てきた。そしてテナーも適度なフクラミ具合の優しい音色になった。もちろんこれも好みによっては、モノラルの力強さがなくなって「ヤワ」になったと感じるかもしれないが、僕はやはりこの[stereophonic盤]はいい録音で、聞きやすい音質だと思う。
そして・・・(このBen Webster盤の場合)さきほどの[モノラル盤]があまりにも「強い」音だったので「このモノラルカートリッジの性質が音成分を拾いすぎ(強調しすぎる)かも?」という仮説の下に「ステレオカートリッジでモノラル盤をかけてみて」というリクエストが巨匠Y氏から飛び出した。
もともと「厚く」楽器の音が入っているであろうモノラル盤にモノラルカートリッジでは「強くなりすぎ」であれば・・・(モノカートに比べれば)「薄めの」ステレオカートリッジで「厚い音のモノラル盤」をかければ、あるいは・・・?という期待が、皆に広がる。オーナーのM氏が針を落とす。しばしの沈黙・・・微かなチリチリ音・・・。そして出てきた音は・・・・・。
「おおっ!」予想した通り、いやそれ以上の「効果」だった。まさに「ちょうどいいバランス」でテナー、ピアノ、ベース、ドラムスの音色が、「うれしそうに」スピーカーから飛び出てきたのだ!本当に「ちょうど!」のバランスになってしまったのだ。モノラルの厚みある楽器の音色、ステレオの場合の各楽器の分離のよさ・スッキリ感、その両方が「気持ちのいいモノラル」として目の前で鳴っていた。「してやったり」と納得のうなずきを見せる巨匠Y氏。
そして・・・この時のDukeさん、そしてYOさんのうれしそうな顔(笑) というのは・・・両氏は「モノラル盤を聴くからといって、必ずしもモノラルカートリッジに拘る必要はない」という主義であるからして。
カートリッジの「音の拾い方」というのは、こんな風に、その特性をうまく生かしてやれば、アンプやスピーカーを換える以上に、入り口のところで基本的な「バランス」を決定してしまうのだなあ・・・という実感を持った。もちろん、「盤」によって元々バランスのクセに差があるわけだから。だから・・・今回のこのケースは、あくまでこの Ben Webster meets Oscar Peterson というレコード<もともと各楽器の音をぎゅっと詰め込んであった音造りをしてあった「モノラル盤」>だったから、ステレオカートリッジによる中和がうまい具合に作用した、ということかもしれない。

the beatles /come together  と something (多分、UKのシングル盤)
全くの私見では(この<夢レコは全てが私見ですが:笑)・・・地下JBLの音は・・・ド単純に言って「ロック」に最も合うように思う。特にベースとドラムがテーマを演じるこの come together で、そう感じたのだ。
エレベ(電気ベース)の音が強力だったのだが、ロックの場合だと、かなり大きめの音量・音像でも違和感がない(ように思う)
それから、come together のテーマの部分をベースが弾いた後の部分・・・リンゴがちょっと「緩めのチューニング」(だと思う)で、スネアやらタムタムを3連で叩く場面の見事な「音圧感」・・・これは凄かった。その「音圧」が「ン・ド・ド/ド・ド・ド/ド・ド・ド/ド・ド・ド」てな感じで、右チャンネルから何度も飛び出てくる。この「音圧感」は、ロック苦手な僕にも、ある種の快感ではあった。(自宅に帰って聴いたベストCDでの come together のショボイこと(笑))

Miles Davis/Cookin'  から「my  funny valentine 」
prestige, NY.W.446のオリジナル盤だ。ジャケットのコーティングもぐう~んと分厚い。これは凄かった。チェンバースのベースの音がやけにリアルなのだ。もともと prestige のベースの録音は、columbiaと比べると、ベースの音が「ペンペン」なのだ。低音の響きの部分がprestigeでは極端に薄い。しかしその分、左手が弦をこする音とか右手で強く弦を引っ張ったような、そんな気配をよりリアルに感じ取れる録音なのだ(と思う) だから、ベースの音程を聴き取るのには、prestigeが最適なのだ。そうして、チェンバースのあまりよくないピッチ(音程)も、やけにリアルに聴き取れてしまうのである(笑)
この446Wアドレスの純正オリジナル盤においては・・・その「リアルなベース音」が、より一層、鮮明に聴かれたのである。もちろんcontemporaryやcolumbiaのベースの音が好きな方(一般的にはこの方が多いかな?)には、このベース音は「硬すぎる」かもしれない。でも・・・これがprestigeの録るウッドベースの音なのだから、仕方がないだろう(笑) 

最後に「1枚、お聴かせします」とオーナーM氏。残っていたのは・・・D35さん、マントさんと私、bassclefの3人だけ。そして・・・あの盤が登場したのだ! 
オーナーM氏~アート・ブレイキー:バードランドの夜 vol.3(bluenote)~10インチオリジナルから「Confirmation」
青い色調がやけにキレイな10インチ盤(vol.3)だ。このクリフォード・ブラウンが凄かった。夕方のM氏の挨拶代わりの「モーニン」(bluenote)でのリー・モーガンも「いい響き」をしていたが、この10インチ盤のクリフォードブラウンは・・・これはもう・・・とにかく素晴らしかった。余分なエコーなど全くない「素」の録音という感じで、ブラウンの「乾いたような、しかし音色のエッジを若干ふわッとさせたような」独特な響きが、むちゃくちゃに生々しく感じられたのだ。続くルー・ドナルドソンもアルトも、より分厚い音色で図太い感じだ。もう少し後期のドナルドソンには、ある種の軽さ・甘さが出てくるように思うが、この1954年のドナルドソンのアルトの音色にはもう少し「重さ」があった・・・ということを実感できた。そしてブレイキーの右手のライドシンル・・・このシンバルの高音は、モノラルの古い録音でさすがにちょっと「詰まった」ような音ではあったが、その臨場感から、ブレイキーが終始かなりのヴォルームで叩いていたのであろう・・・ことがよく判った。実際、ライブハウスでのドラムスのシンバル音というのは、相当にでかい(笑)ハウスの形状(そしてもちろん奏者の叩き方具合)によっては、響きすぎてやかましいこともよくあるのだ。この10インチオリジナル盤においても、ブレイキーのシンバルが相当に大きく響いてはいたが・・・それはその場の「音楽を必死に生かそうとしている響き」に聞えたので、僕には全く気にならなかった。
このライブ盤は、本当に凄いと思う。クリフォード・ブラウンの漲る(ミナぎる)ような生気感が、バンド全てを「ノセて」しまったのだろう。「1954年2月のバードランドの夜」は、大げさではなく奇跡の夜だったのだ。
そして「その夜の空気感」を再現した「2006年4月の白馬の夜」も・・・これまた素晴らしかった・・・。

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2005年11月13日 (日)

<ジャズ雑感 第11回> ジャズの廉価盤シリーズとその発売小史:A面

1972年秋、ジャズの廉価盤~宣伝用の小冊子・チラシの楽しみ。

1971年、中3の時からジャズを聴き始めた。LPレコードの当時の2000円というのは、今なら5000~6000円くらいの感覚だろう。だから、そうそうLPレコードなんて買えやしない。だから、最初の頃は、とにかくFMラジオのジャズ番組がたよりだ。カセットテープにどんどん録音して、何度も聴き返した。それでも72年春頃から、テープで聴いてすごく気に入ったモンクやマイルスのLPを、少しづつ買い始めたのだ。そんな72年の秋に、「ジャズ廉価盤」が発売された。僕はこの「廉価」を「レンカ」と読めずに、長い間、間違って「ケンカ」と呼んでいた(笑) そうして・・・1972年は・・ジャズの「ケンカ盤」ブームの年だった。このビクターがキッカケとなって、各社から続々とジャズの名盤が発売され始めたのだ。たいていは、1回の発売で10~20タイトルで、それを何回か続けていったように記憶している。2~3年の間に、1200円、1300円、1500円と、じわじわと値上げしつつ、それでも各社から相当なタイトルが発売されたように記憶している。
9月からの年内に発売されたシリーズは以下。たぶん、全てが限定盤だったはずだ。(  )内がシリーズ名で~以下が宣伝文句だ。

1.日本ビクター 1100円盤シリーズ(prestige jazz golden 50)
~50年代ハードバップの”幻の名盤”20枚~
72年9月5日発売。コルトレーン/コルトレーンなど20タイトル。コルトレーンやロリンズ、モンクの主要盤以外にも、ジジ・グライス/セイング・サムシング や ベニー・ゴルソン/グルーヴィング・ウイズ・ゴルソン など渋いタイトルも出ている。

僕は、自転車で「街」(豊橋の駅周辺のことを「街」と呼んでいた:笑)まで出かけ、レコード店から、こういう「廉価盤シリーズ」の小冊子やパンフをもらってきて、解説を読んでは、「次は何を買おうかな」とかの作戦を巡らしていた。ビクターのプレスティッジ/1100円廉価シリーズは、「オリジナル通りの復刻」というのが「売り」だったので、裏解説もオリジナルの写しで英語のままだった。それまでの国内盤はジャケ裏が「日本語の解説」という仕様が多かったのだが、そうじゃない場合には、中に「解説書」がつくのが普通だったのだが、この「ビクター1100円シリーズ」では、中の解説書も一切付いていなかった。「オリジナル通り」というより、コストを抑えるためだったかもしれない。その替わりに、発売タイトルを特集したような「小冊子」をサービス品として、レコード店に配布していたようなのだ。1枚買えば、この「小冊子」を付けてくれた。同じ小冊子がスイング・ジャーナルにも付録として付いていたはずだ。その小冊子がこれだ。

jazz_catalogue_001(左の写真の右下:コルトレーンの表紙のもの)

この小冊子には、20枚の発売タイトルの紹介だけでなく、プレスティッジレーベルに関する、ちょっとしたこぼれ話しや、幻の名盤的な情報などおもしろい記事も多くて、それから7000番台、8000番台のリストも付いていた。 jazz_catalogue_003

この prestige jazz golden 50シリーズは、50と銘打ってあるので2~3回に分けて発売する予定だったのだろうが、初回20タイトルが思ったより売れなかったためか、あるいは、途中で版権が東芝に移ってしまったためか、いずれにしても、この20タイトルで終わってしまった。しかしビクターはなかなか良心的だった。というのは・・・76年か77年頃に、版権が再びビクターに戻った際に、普通の価格ではあったが、相当数のタイトルの復刻を再開したのだ。その際の「小冊子」がこれだ。jazz_catalogue_002

(写真右:右下の横長のもの)65ページも
ある、なかなかの豪華版カタログである。
スティーブ・レイシーの「エヴィデンス」やら
ウオルト・ディッカーソンの「トゥー・マイ・クイーン」など、気になるタイトルが復刻された
ようだ。

2.日本コロムビア 1100円盤シリーズ(jazz historical recordings)~輝かしいジャズの歴史の1頁がここにある。クリスチャンが! ロリンズが!~ 
72年11月発売。ロリンズ/ソニー・ロリンズ・プレイズ など。これは、periodやeverest という当時は全く珍しいレーベル原盤の復刻シリーズだった。コロムビアも小冊子を作った。廉価シリーズだけでなく、ルーレットやルースト、MPSなどの所有レーベルの発売タイトルを紹介した総合カタログ(72ページ)のようなものだった。(一番上の写真:左のもの)
僕はロリンズやモンク入り?のチャーリー・クリスチャン、ジャンゴ・ラインハルトなどを入手したが、サド・ジョーンズ/マッド・サド ジョン・ラポータ/モスト・マイナーなど渋い盤も発売されている。この2枚は、一時期、国内盤の廃盤人気が高かった頃に、かなりの値段まで上がったように記憶している。
「ロリンズ・プレイズ」は、ヴィレッジヴァンガードのライブの翌日の録音ということで、A面3曲のみだが、どれも素晴らしい。<sonny moon for two>では、アイディアに満ちたアドリブで、余裕のロリンズが聴ける。 ちなみに、サド・ジョーンズ/マッド・サド~この中にエルヴィン参加セッション、3曲が入っている。

3.日本フォノグラム 72年12月5日発売。
1100円盤シリーズ(フォノグラム1100コレクション)~ジャズレコードのイメージを変えた全く良心的企画!~
 キャノンボール・アダレイ/イン・シカゴ や ジェリー・マリガン/ナイト・ライツ など10タイトル。

”全く良心的”という表現がおかしいが、要するに、中の解説書も付いてますよ、ということだったらしい(笑)

73年になると、CBSソニー/1100円盤、テイチク/メトロノーム1200円シリーズなども出たと思う。キングのコンテンポラリー復刻は、もう少し後だったように記憶している。

少し経った75年にビクターが「リバーサイド・オリジナル・シリーズ」を開始した。これは廉価の限定発売ではなく、2200円の通常シリーズだった。この2~3年前からモンクやエヴァンスを好きになっていた僕は、その頃、出回っていた abc Riversideの茶色の環っかラベル盤や日本ポリドールからの数少ないリヴァーサイド盤を何枚か入手していたので、リヴァーサイドというレーベルには、もう興味深々だったのだ。
ビクターは、このリヴァーサイド発売時にも、お得意の小冊子を配布した。これも入手している。(右上の写真:右上のもの)
この「リヴァーサイド小冊子」が、「Riverside best selection 100」 と題した32ページもある素晴らしいものだった。
jazz_catalogue_004モンクやエヴァンスの主要盤だけでなく、他にも地味だが内容のいい(あとになって、それがわかってきた)それまで日本盤未発売タイトルの写真と、詳しい解説が載っており、リヴァーサイドの資料としての実用性もあり、とてもありがたかった。オリン・キープニューズという名前を知ったのもこの小冊子からだ。

CBSソニーも、発売タイトルのカタログを兼ねたような小冊子を1年ごとに作っていたようだ。(一番上の写真:真ん中)

これらの小冊子は、コストがかかるので、どのシリーズでも作られた訳ではない。フォノグラムとかテイチクとかは「チラシ」だった(笑) スイングジャーナルとかをチェックすると、たいてい翌月に発売される「~シリーズ」とかの宣伝が載ってる。それそ覚えておいて、発売ちょっと前にレコード店に行くと、たいていは、こういうチラシがタナの上とかカウンターの下とかに置いてあるのだ。ジャズファンなんて、日本中集めても、ほんとに少ないのだろう。どのチラシも、なかなか減らないようで、発売後にもダラダラと残っていた(笑) 

こんなチラシの類も集めた。もちろんレーベルの資料としても欲しかったのだが、どちらかというと・・・とても全部のタイトルは買えないので、せめて「チラシ」のジャケット写真でも眺めていたかったのだ。(笑)

これら「チラシ」にも、眺めているだけで、なかなかおもしろいものが多い。チラシについては・・・ビクターやコロムビア、それから、CBSソニー/1100円盤、テイチク/メトロノーム1200円シリーズ、フォノグラム/マーキュリージャズ1300円シリーズなどを、この「ジャズ廉価盤シリーズとその発売小史:B面」として、いずれ紹介するつもりだ。
ジャズレコード・・・まだまだ未知の盤がいっぱいだ! 

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