<旅レコ 第3回>アン・バートン/アムアイブルー 香港でレコードを探す(A面)
<1992年7月> 初めての海外旅行が、香港だった。<旅レコ第1回>の神戸と同様に、これも社員旅行だ。根が出不精なので、仕事がらみでもないと、旅行にもなかなか行けない。そうして、どうせ行かせていただくのなら・・・空いた時間をうまく使って、レコード漁りです(笑)
香港の旅行ガイド本はいっぱい出ていたので、香港島、九龍にあるレコードショップの大体の場所をいくつか調べておいた。
普通のガイド本には、中古盤屋さんなんか載ってないので、残念ながら新譜ショップのようだ。
3泊4日の2日目、仲間とスターフェリーという船で香港島側に渡る。
最初にセントラル地区の大きなショッピングセンター「ランドマーク」に行く。化粧品やらブランド服のショップが多いが、このビルにレコード店があるはずなのだ。調べておいた 「united records」は、地下フロアの隅にあった。小さな店でCDが中心だったが、奥の方に少しだけLPのエサ箱もあった。さっそくチェック開始・・・。
香港のジャズレコード事情はよく判らないが、どうやらイギリスの影響が強いのか、サッチモやエリントン、ビリーホリデイなどが目立ち、在庫もヨーロッパのレーベルのものが多い。残念ながら、僕の好みのハードバップ系は、ほとんど見当たらない。価格は・・・ほとんどが100香港ドル以上だが、バーゲン品なら60香港ドル(当時、1香港ドル=15円ほど)あたりのものもある。20分ばかりチェック・・・ようやく、ちょっといいな、というものを見つけた。
Ann Burton / Am I Blue (keytone) オランダ盤らしい・・・録音も新しめで、ジャケもイマイチだった。この時は、keytoneなんてレーベルも知らなくて、「なんだ・・・オランダ盤か」てな感じだった。だけど、55香港ドルだったし、アン・バートンは嫌いじゃないので、買うことにしたのだ。その後、何年かしてアン・バートンのこのオランダ盤は、日本で、けっこう人気があることが判った。多分・・・国内盤が出てない、というのが人気高の理由なんだろう。
内容は、悪くない。選曲がやや地味だが、アン・バートンは、いつものようにシットリと唄っている。録音も優秀で、特にベースの音は量感もあり、自然な音質だと思う。
ただ、この盤は・・・残念ながら、今は僕の手元にない。
95年くらいに、ボーカル好きの友人~konken氏の手持ち盤とトレードしてしまったのだ。konken氏に聴かせたところ、とても気に入ってくれたし、僕の方は、やはりインスト盤が本線だったし、大体において、新しい録音(1968年以降くらいかな)の盤に、あまり愛着が湧かない性質(タチ)なので、トレードが成立したのだ。
その時のトレード盤は・・・ゲッツの「ザ・サウンド」(日本コロムビア)だ。その頃は、ベンクト・ハルベルグ(p)入りのストックホルム録音の6曲は、この盤でしか聴けなかったのだ。
・・・そんな訳なので、このアン・バートンのジャケ写真は、最近、konken氏から送ってもらったのです(笑)
正直に言うと、ちょっと惜しいような気もしているが・・・いいんです!(笑)どのみち、僕は、新しい録音ものはあんまり聴かないんだから・・・などと自分に言いきかせて(笑) 今、久しぶりに聴いています。(konken氏がCD-Rにしてくれたので)・・・やっぱり、いいですね(笑)
さて・・・ランドマークを出て、今度は地下鉄に乗り、九龍側の油麻地(ヤウマアテイ)まで戻る。あたりを仲間と散策し「桃季園」という食堂で昼飯を済ませた後、「それじゃあ僕はちょっと・・・」と仲間とは別れ、一人でレコードショップ探索を開始した。この辺りのどこかで、毎夜、屋台が出てにぎわうとのことだったが、まだ昼間なので、どの店も閉まっているし、屋台は見当たらない。たまに見かける屋台には、幌がしっかりかぶせられており、通り全体に人影が少ない。仕方がないので、やけに広い九龍公園を縦断しながら、尖沙咀(チムシャチョイ)のホテルへ戻る。冷房は効きすぎだったが、夕方までゆっくり休息した。
夜になったので、ネイザンロードを、尖沙咀(チムシャチョイ)から左敦(ジョルダン)方面に歩き始めた。通りの左手にはイスラム風の寺院が見える。このネイザンロードは、大通りで、オシャレそうなファッションやら、バッグ、時計などのブランドショップが、多い。アイスクリームのジェラートなんかもある。5分ほど歩くと、よく香港の写真で見る「国家裕華」という、でっかいネオンが見えてくる。そのデパートの大きな交差点を左に曲がって、すぐの小さい通りを右に曲がると・・・そこからが夜店(多分、ここが男人街だ)の始まりだった。昼間はガランとしていた通りは・・・もうすごい人だかりだ。「ああ・・・これがホンコンの夜店か・・・」
その通りは、もちろん歩行者オンリーになっており、道路の中央にはぎっしりと屋台が並んでいる。通りの両側のお店からも照明があふれ出し、どの店もなんというか・・・「扉」を開け放っており、道路の屋台と両脇のお店がつながっているようにも見えてしまう。ここでは、「路上」もお店なのだ!その間の空間をたくさんの人々が押し合いへし合い、歩いている、という感じなのだ。とにかく、すごい熱気だ。(この時は、まだ沢木耕太郎の「深夜特急」は読んでなかった。何年か後に文庫化されてから読んだのだが、ホンコンのネイサン通りを、熱に浮かされたように歩き回る様子や、夜店のにぎやかな様子などが、リアルな臨場感をもって想像することができた。素晴らしい本だ。)
「さあ、レコードだ!」てなもんで、その通りを進んでいくと、通りの右側にCDショップを発見!「精美唱片」という名前で、けっこう大きめの店だ。その「精美唱片」でも、やはり100~120香港ドルあたりが標準価格らしく、そう安いとは思えなかった。ただ、人気の落ちタイトルは、どんどん値を下げる売り方らしく、バーゲン品みたいな感じで50~60香港ドル前後のタイトルもチラホラ見つかる。当時、ジャズのCD新譜は2000円~2300円くらい、中古CDなら1400円前後だったので、安い外盤CDが見つかれば、買ってもいいかな・・・というくらいの気持ちで探してみた。
コルトレーン/Like Sonny(roulette/capitol EMI)、ベイシー&ベネット(roulette/capitol EMI)などを選んだ。2枚で110香港ドル。
もう1枚、ディーン・マーティンのクリスマスCDは、アウトシーズンものなんで、なんと30香港ドル(450円)だ。
次に、通りの左側斜め向かいに「時代唱片」を発見。どこもかしこも「唱片」だ。どうやら「唱片」はレコード、という意味らしい。
ここでは、1枚だけ。 Donald Byrd/Free Form(bluenote/capitol EMI) 68香港ドル。安くなってるのは、たいていEMI系だ。
こんな風にして、香港レコード探索初日は終了した。ちなみに、このあたりの「唱片」屋さんには、LPは皆無だった。
午前中に行ったランドマークの 「united records」 のLP盤、在庫状況からみても、どうやらホンコンには、いわゆる
「中古盤屋さん」みたいなのは少ないのだろうな・・・と推測するのだった。
それにしても・・・やっぱりビニールジャンキーとしては、CDよりLP盤が欲しい! 当然ですね!(笑) 明日は、会社の仲間は、ほとんどが「マカオ1日ツアー」に出かける。僕は申し込んでない。1日、完全にフリーなのだ。
よしっ! もう一度、香港島側を探索だ・・・1日あれば、どこにでも行けるぞ!アン・バートンを買った「united records」で「トンロンワン支店」というのがある、との情報を得ている。簡単な地図がついているカードももらってきた。その「トンロンワン」に行ってみようじゃないか!
~まだまだ元気のある僕でした。(香港編B面に続く:近日中予定)
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