JAZZ HERO'S DATE BANK

2005年8月 9日 (火)

<やったあレコ 第3回> After Hours Jazz(Epic) ああ、エルヴィン!

ハードバップ・エルヴィン~素晴らしいあのビート感!

何年か前に「ハードバップ・エルヴィン!」と題して、エルヴィンのレコード・リストを作っていたことがある。ハードバップ・エルヴィン!などと勝手にタイトルしたが、要は、コルトレーンとの共演以外ののエルヴィン参加アルバムのリストなのだ。コルトレーンとのエルヴィンは、もちろん凄いのだが、普通の4ビートでのエルヴィンも、これまた凄い(笑) 4ビートの場合、右手に持ったスティックで右側にセットしたトップシンバルを叩く~基本は「チーン・チーキ・チーン・チーキ」だが、それはあくまで基本であって、バリエーションは自由~のだが、この「シンバル・レガート」の鳴り方、いや、鳴らせ方が、エルヴィンだと、もう全然違うのだ。何が違うって・・・なかなかうまくは言えないが・・・手首を柔らかく使ってなめらかに、しかも豪快に鳴らしている。そうして、どんなテンポでも「速度」を感じさせる。といっても、テンポが軽はずみに走ったりするわけではない。「速度」というのは、「速度感」のことであり、テンポが速いとか、遅いとかいう問題ではない。この「速度感」というのは、おそらく・・・一定のテンポに対し、微妙に「突っ込み気味」だったりするシンバルワークや、ちょっと「もたれ気味」だったりするバスドラ、これに、時々繰り出す「爆風のようなロールと、そのロールの響きを巻き込むように、強烈なシンコペでドカーンとくるバスドラとシンバルの強打」・・・そんなもの全体から浮き出てくるfeelingなのかもしれない。一定のテンポを、とにかく律儀にキープするだけのドラマー~例えば、コニー・ケイ。(もちろんMJQの音楽には、あのスタイルが合っているのだろう)彼と比べてみれば、いかに全体のドラミングの表情が違うものか、お判りいただけるかと思う。
とにかく・・・エルヴィンの、あのシンバルレガートからは、凄いビート感が生まれてくるのだ。そうして、「ジャズ」という音楽の中で、どこに一番「ジャズらしさ」を感じるか、というと・・・それが、このこの「ビート感」なのだ。
同じように、凄いビートを感じさせるトニーのシンバルレガート。しかし・・・トニーとエルヴィンでは、ビートの質感が違う。トニーのレガートは、「爽快」だが、エルヴィンのレガートには、もう少し「重さ」がある。トニーのスピード感というのは、例えば・・・50kmの速度を、125ccのバイクでキビキビと走る感じか。
そうして、エルヴィンは・・・速度は同じだとしても、トルクに余裕を感じさせる400ccでゆったりと、しかもキレを保ったまま走る、というような感じか。もっともエルヴィンの場合、バイクというよりも、「野生の馬」で、自由自在に草原を駆け巡るようなイメージの方が似合ってる。何かに「乗る」というのを「ライド:ride」というが、「リズムに乗る」という状態も「ride」表現しているようだ。エルヴィンのシンバルレガートからは、文字通り、この「ライド感」がたっぷりと感じられる。そうだ、それにトップシンバルのことを「ライド・シンバル」ともいうじゃないか。エルヴィンのレガートは・・・聴いていてとにかく、気持ちがいいのだ!ひょっとしたら、ジャズを聴く上での「快感No.1」じゃないだろうか。
そして、そんなエルヴィンの「快感」を味わうには、コルトレーンとの諸作よりも、素直な「ハードバップ・エルヴィン」の方が最適なのだ。思いつくレコードを何枚か挙げてみる。

050801_001After Hours Jazz (Epic ) LNー3339
この盤は、いろんなセッションからのオムニバスだ。例の「Jazz Data Bank」(拙ブログ~月~日の記事)の「トミー・フラナガン」の項に、このレコードのジャケ写真が載っていた。その記憶を頼りに、トミ・フラ目当てで入手したのだ。だから、この盤を聴いた時、エルヴィンが入っていることを失念していた。そしてB面1曲目~サヒブ・シハブ(bs)のリーダーセッションだろうか~<Hum-Bug>を聴いて、僕は驚いてしまった。おおっ!このシンバル・レガートは!このキレ、このノリは・・・エルヴィンしかあり得ない! とすぐさまジャケ裏をチェックすると・・・やはり、エルヴィンだった。うれしい~(笑)
シハブとのセッションは、2曲のみで、もう1曲は<Southern Exposure>で、トミフラやケニーバレル、エディ・バート(tb)も参加している。 

ベニー・グリーン/ソウル・スターリン(bluenote)東芝盤
 ブルーノートにエルヴィンは珍しい。エルヴィンのライド・シンバルにのって吹きまくる太っい(ぶっとい)音色のトロンボーン。無骨いテナーのジーン・アモンズも負けてはいない。2人ともディープなソウルに溢れている。
そんな重量感のある管奏者たちにキリリと絡むソニー・クラークのピアノがチャーミングに映える。バラードの「That’s All」は、思い切ったスロウなテンポだ。情感あふれるソニー・クラークのソロも絶品。これは、本当に好きな1枚だ。

クリフォード・ジョーダン/ストーリー・テイル(jazzland)Wave盤
ジョーダン(ts)とソニー・レッド(as)の2管にロニー・マシューズ(p)かトミー・フラナガン(p)が入る。61年録音なので、(私的には)
僕の思っているハードバップより少し新しい感じかもしれない。新しい・・・というのは、要するに「モードっぽい曲」が多い、ということだ。
割と急速調の曲が多いが、2管でモード、ということで、なにか後のエルヴィンのコンボのサウンドの原型のような感じも受ける。
ソニーレッドも好きなアルトだ。マクリーンほどではないが、音色が、充分に「濃くてドロドロ」している(笑) うれしくなってしまう。050801_003 

ところで・・・エルヴィンのドラム音というのは、レコードでは、どうも「抑え目」に録音されていることが多いように思えてならない。
JJ ジョンソンと演ってるColumbiaの録音では、特にそう感じる。おそらく、録音ディレクターが、エルヴィンの「音のあまりの大きさ」に驚いて、思わず(録音技術上)入力レベルを下げてしまったのでは? と邪推したくなるほど、ドラム音が「遠い」。遠くて小さい。残念である。このジャズランド盤でも、若干、その傾向を感じる。その点、インパルスは偉い!エルヴィンのヴォリュームを基準として、他のレベルを合わせてる感じで、ドラムスが主役といってもよさそうだ。

最後に、オマケとして・・・僕がリストアップした「ハードバップ・エルヴィン!」の古い方から、1958年くらいまでの分を、ちょっと書き出してみる。もちろん完全じゃあない。録音年月もいい加減なものだ。追加情報も、ぜひコメントにて、お知らせ下さい。

1948年(と解説にあるが、そんな古いはずはないだろう)
?   variousu aritists/Swing,Not Spring (savoy) 4曲

1955年 
 7月  Miles Davis/Blue Moods (debut)  4曲

1956年
 5月  variousu aritists/After Hours (epic)    2曲
 7月  J.J.Johnson/Jis For Jazz (columbia) 4曲
11月  Bobby Jasper/~ Quartet (仏columbia)  8曲
12月  Art Farmer/Farmer’s Market (new jazz) 4曲

1957年
 1月  Sonny Rollins/~ Plays (period)      1曲のみ
 1月  Thad Jones/Mad Thad (period)       3曲
 1月  J.J.Johnson/Dial For J.J.(columbia)10曲
      Jay & Kai/ Jay & Kai (columbia)  1曲のみ(I should care)
 2月  Kenny Burrell/Blue Moods (prestige)   6曲
 2月  Thad Jones/The Magnificent vol.3 (bluenote) 4曲
 2月  Thad Jones/Olio (prestige)   6曲
 5月  Paul Chambers/~ Quintet (bluenote)  6曲
 5月  Bobby Jasper/with George Wallington(riverside)6曲
 8月  Tommy Flanagan/Overseas (   )  9曲+3曲
10月  various artists/Roots (prestige)  2曲
11月  Sonny Rollins/A Night At The Village Vanguard            vol.1~vol.3(bluenote)
11月  Sonny Red,Pepper Adams,Wynton Kelly etc./Two Altos(savoy) 2曲
11月  同じ/Jazz Is Busting Out All Over (savoy)                  1曲
11月  Red Rodney/Fiery (savoy)  3曲
11月  Pepper Adams/The Cool Sound Of ~(regent) 4曲

1958年
 1月  Mal Waldron/Mal 3 (new jazz) 5曲
 3月  Pepper Adams,Jimmy Knepper (metro) 7曲
 4月  Bennie Green/Soul Stiring (bluenote) 6曲
 4月  Jones Brothers/Keeping Up With The Jones          (metro) 7曲
 ?   Hank Jones/Porgy & Bess (capitol) 10曲 
 4月  Pepper Adams/10 to 4 At The Five Spot       (riverside) 5曲
10月  Lambert,Hendriks&Ross/The Swingers (pacific)      1曲のみ(jackie)
10月  Steve Lacy/Reflections (new jazz) 7曲

1959年

 6月  Herb Geller/Gypsy (atco) 8曲
10月  Thad Jones/Motor City Scene (united artists) 
(追加)1959年~
 2月  Gil Evans/Great Jazz Standards (world pacific)
  3月  Tommy Flanagan/Lonely Town (日キング)
 3月  Crutis Fuller/Sliding Easy (united artists)                       
 5月  Randy Weston/Destry Rides Again(united artists)
 5月  Art Farmer/Brass Shout (united artists)

・・・・ああ、キリがない。この辺りでやめとこう(笑)

いつまでも現役でドラムを叩いてくれるのでは、と思ってたエルヴィンが昨年(2004年)亡くなった。エルヴィンの本当の凄さはテクニックなんかじゃない。今、演ってるその演奏を「もっとビートを出すぞ。もっともっと熱くしようぜ!」という気合いを、どの時代にも持ち続けたことなんだと思う。昨年、エルヴィンが亡くなる直前、たまたま、米オークションでエルヴィンのブルーノート盤(Liberty)に友人の代理でビッドしていた。運良く落札できたのだが、その少し後、エルヴィンの永眠を知った。僕はそのfeedback欄(オークションの取引後に短いコメントをアップするコーナー)に、こう書いた・・・<We Love Elvin Jones!We Love Jazz!>

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2005年6月29日 (水)

<やったあレコ 第1回> ドン・エリオット/メロウ・サウンド(Decca)

あるビル・エヴァンス・マニアの告白~「デッカの犬ジャケ」レポート。

~このブログ<夢見るレコード>を始めて、ちょうと一ヶ月だ。<旅レコ>で書いたように、初めていったホンコンでは、あの暑さにうだりながら、レコード探しをしてきました。それ自体は、おもしろかったのですが、いかんせん、何が出てくるかワクワクしながら探すような「中古盤屋」は見つからなかった。ましてや「オリジナル盤」なども皆無。(もちろん、ホンコンほどの都会なら、どこかにそういうお店もあったのだろうが、それらを探し出すのは、3泊4日のツアーでは、とても無理だった) そんなホンコン編ゆえ、やむなくCDの紹介が続いてしまった。不本意である。(笑) 僕は、もうどうしても、ジャズのLP盤が好きなのだ。できればオリジナル盤が欲しいのだ。(あたりまえですね:笑) そんな訳で、vinyl ジャンキーの一歩手前の僕としては、やはり、「LP盤」も紹介していきたい。 ようやく<やったあレコ>の出番だ。

さて・・・前回の<ジャズ雑感 第2回>で書いたように、例えば、ビル・エヴァンスの参加盤で、長い間、国内発売されなかった盤~Guys and Dolls Like Vibes(coral)やら Jazz In the Space Age(decca)も、近年、ビクターから「MCA幻のLP選集」として復刻されたりした。まさに「マテバ・カイロノ・ヒヨリアリ」だ。長年のエヴァンスのファンなら、もう買うしかなかっただろう。推定、全国で2000人くらいは、即、購入したのではないだろうか? ファンとしては、やはり、とにかく、「聴いてみたい」のだ。

そんな中でも、どうしても出なかった盤がある。そんな一枚がこれだ。 
Deccaの≪Don Elliott/The Mellosound≫ 1958年2月録音。

  CIMG0008















<Jazz Hero’s Data Bank>とういう本。前回は、「曲名」の威力をコメントしましたが、「写真」の威力も、 相当に大きい。写真の記憶というのは、理屈じゃない。絵柄とか全体の感じ・・・そんなようなイメージが、何かの拍子に「ぱっ!」と思い出されるものだ。たぶん、意識してなくても、記憶の底に残っているのだろう。                                   めったにあることではないが、廃盤店のエサ箱でも、床置きのバーゲン箱でも、あるいはネットでも、「おっ、これは・・・」と自然に手が止まったりする。(笑) とにかく、ある特定のジャケットを発見すると・・・もちろんそのジャケットを見ただけで、全てのデータが浮かんでくるわけではない(笑)が・・・脳髄のどこかに残っている「レコ買いフィルター」に引っかかるようです。(笑)
それも、この本でいろんな探求盤の、そのジャケット写真を何度も見ているからこそだろう。

この盤は、ネットで見つけたのだが、この犬の顔を見た時、ドキッとした。  ただの気持ち悪い犬の顔なのに(笑)・・・しかし、これが「レコ買いフィルター」に引っかかったのだ。Don Elliott なる名前からピンとくるのは・・・もう Bill Evans くらいのものだ。さっそく、<Jazz Hero’s Data Bank>でチェックする・・・うん、やっぱり evnas 参加アルバムだ、間違いない!

・・・そうして、ようやく、この盤~Deccaのオリジナル盤を手にいれた。初めて聴ける、この一枚!データによれば、録音は1958年2月。58年なら、 悪いはずがない。・・・さあ聴くぞ!気合入りまくりの僕・・・。        

残念ながら・・・エヴァンスのソロは、それほど多くはない。ほんの数箇所、それも短いソロスペースしか与えられてない。
・・・いやしかし、僕は誇り高き、エヴァンスの enthusiastsである(笑) いいのだ。 その何十秒があれば、いいのだ!わずか8小節でも16小節でも、エヴァンスのソロさえあれば・・・あの、揺るぎのないタッチから生み出される硬質なフレーズさえ聴ければ・・・。やや苦しい僕ではある(笑)
そんなわけですが・・・せっかくなので、熱狂的なビル・エヴァンスのファンの方に、少しこの「メロウ・サウンド」の中身をお知らせしたい。DSCN0763
とりあえず、A面の6曲を・・・。

A面1曲目:A Million Dreams Ago
~いきなりハープの音がシロロン~シロロンと・・・女性コーラスも朗々と・・・(笑)  よく見れば表ジャケッとのDon Elliottの 下に小さく ~and Choir(聖歌隊とか合唱団の意味だろうなあ)と書いてあるじゃないか・・・。
しかし、たる~い女性コーラスが、ふわ~っと流れた後、「ドンッ」とブレイク。ここからいきなり、エヴァンスの鋭く切れ込む 1小節のフレーズが! おおっ。これぞまさしくエヴァンスだ!  素晴らしい!このままミディアム・スロウのテンポでエヴァンスのソロが9小節続く。

2曲目:It’s Only A Paper Moon
~16小節のソロ。この間、バックはベースのみ。ただこのベース奏者は、もちろん、フツウに淡々と4ビートを刻むのみ。それでもエヴァンスのソロは、 ノッているようだ。最後の4小節では、エヴァンスお得意のブロックコード風ユニゾンフレーズが出てきて、思わずうれしくなる。

3曲目:Dinah ~ソロなし。

4曲目:Blue Waltz
~ 3拍子の曲で、ほとんど女性コーラスだが、中間部で、再びエヴァンス登場!16小節を、これまた全てブロックコードで。おそらく、Deccaレコードのプロデューサーからは「ムード・ミュージック路線で」という指示があったに違いない。しかし、我らがエヴァンスは、一見、コードだけで「甘~く」弾いているが、その内実は・・・相当に、新しいサウンド(ハーモニー)を鳴らしてます。

5曲目:Poinciana ~ソロなし。

6曲目:Play Fiddle Play
この曲は、わりと有名だ。マイナーの曲調が、ちょっとモードっぽくもあり、そのため、~8小節のイントロがエヴァンスのリードで聴かれる。かっこいい! 中間部・・・ここで、エヴァンスのソロだ。出だしからちょっと強めのタッチで、気合の入った16小節のソロ。う~ん、ノッてきたなあ・・・と思ってると、次のギターソロに移ってしまう・・・。ちょっとがっくりする僕・・・しかし、最後のテーマの間のつなぎ部分で、4小節だけ、エヴァンスのソロが出る。これも、さっきのソロの続きのような感じだぞ・・・多分、さっき、もう少し弾きたかったはずのフレーズをここにぶち込んだに違いない(笑) と熱狂的エヴァンス・ファンの僕は、そう思い込むのであった(笑)

そんなわけで、こんな「変な犬のジャケット」盤を入手できたのも・・・前回に紹介したJazz Hero’s Date Bankのおかげなのです。まだまだお世話になりそうな僕の強い味方のようです。

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2005年6月26日 (日)

<ジャズ雑感 第2回>JAZZ HERO'S DATA BANK~僕の強い味方

ジャズ・ヒーローズ・データ・バンク(JICC出版局) 使えるデータがいっぱいだ!

DSCN0741 この本は・・・すごい。ハードバップ期の主要なミュージシャンの参加したレコードが可能な限り集められて、年代順にリストされている。あとがきによれば、40名/5000タイトルとのことだ。これらの録音年月日はもちろん、演奏曲目、パーソネルまでもが、しっかりと表記されている。それから、白黒だが、とにかく全点にジャケット写真が付いているのだ。(ほんの一部タイトルだけ写真なし) マイルスやコルトレーン、ロリンズやモンクなどのディスコグラフィーなら、わりと見かける。しかし、ケニー・ドーハムやドナルド・バード、ハンク・モブレイやジョニー・グリフィン、またトミーフラナガン、ケニー・ドリュー、ホレス・シルヴァー、レイ・ブライアントなど、ちょっと渋めのミュージシャンに、これだけのページを割いた(さいた) ディスコグラフィーなんて、これまでにあっただろうか。さらに、この1991年の時点で、チェット・ベイカーやアート・ペッパーまでも載っている、というような本は、日本では間違いなくそれまで存在しなかった。                                   この頃、もう本格的にジャズの、特にハードバップ時代のLP盤を集め始めていた僕には、彼らの~あの時代の本当に、それぞれの個性が溢れる魅力的なミュージシャン達~のリーダーアルバムだけでなく、全ての参加レコード(判っている限りの))が、年代順に並べられ、しかも写真付きで見られるのは、とてもうれしかった。「これはすごい!」は大げさな感想ではないのだ。 1991年7月の発売、定価は3200円。当時としては、3200円というのは、けっこう高かった。(いや、今でもか)しかし、ジャズが好きで特にハードバップ大好きで、レコードを集めている人間にとっては、この本の価値は絶大であった・・・3200円はむしろ、安かったはずだ。僕も、即、購入した。DSCN0739

使い始めてすぐに、ある欠点に気づいた。僕の場合、アルファベットのG(stan getz)やらC(sonny clark)やらを頻繁に見る。それ以外にも、あるミュージシャンが気になったりすると、すぐにそのミュージシャンのレコードを確認するわけだ。そんな場合に、うまく目的のアルファベットの開始ページを探り当てられないのだ!人名というのは面白いもので、BとかGとかMなどは、
数が多いのだが、AとかHの人名は、うんと少ないのだ。だから、「H(hampton hawes)は大体、この辺りだろう・・・」と探っても、なかなかそのページを開けなかったりする。(笑) これにはイライラさせられました。そうして「これはイカン!」とも思いました。普段はずぼらな僕ですが、好きなジャズ研究(笑)のことで、たびたび発生する不便は我慢できません。僕は、すぐに手製インデックスを作り始めました。タテ1.5cmくらい、ヨコ4cmほどの紙片を切り抜いて、ヨコ長の紙片を二つに折り、ページをまたぐようにして、 A~F、G~Yまでの紙片を、それぞれの該当ページに貼り付けました。この貼り付け方にもひと工夫。まず「A」を一番上の方から貼り始め、1.5cmづつずらしていくと 「K」で、本の下4分の3あたりまできてしまう。あまり下の方だと、ページが括りにくい。そこで次の「M」からは、また本の上から始めることにした。さっき貼った「A」と、高さは同じ位置なのだが、本の厚さが6cm以上はあるので、全く重ならないのだ。これなら見やすい!折り返しの「M」から「Y」まで、また順番に貼り付けて、ようやく完了だ。不器用な僕は、この作業に苦労したが、その甲斐あって、ものすごく使いやすくなった!しばらくの間は、用もないのに、M!(mobleyやらmcleanなど)とかD!(donaldson、drewなど)とか、指定のページに素早く到達できる状態を、楽しんだりしてました(笑) そんな風だから・・・この本、もうボロボロである(笑)
DSCN0740本の中央辺りが、Gなんだが、Stan Getz、を頻繁にチェックしたせいか、p241からp272の部分が、背のボンド着けから脱落して外れてしまっている。これだけ使い込まれれば、こやつも本望だろう(笑)
  
僕の場合は・・・あるミュージシャンを気に入ると、しばらくは、そのミュージシャンのレコードを集めていくことになる。(もちろん、ほとんどは国内盤での話しです)そうすると、prestige とか riverside、bluenote など有名レーベル原盤のものなら、年月をかければ、ある程度はなんとかなる。その時、廃盤でも、過去20年くらいまでには、たいてい一度は、国内盤として発売されていることが多いのだ。(もちろん、その国内盤中古でも、一時はどれもこれもがレア扱いで、平気で4000円とかにもなったタイトルもあったようだが今は、それなりに落ち着いてきたようだ。)また、復刻で再発されることもあるからだ。 しかし、それはジャズの専門レーベルについてである。   例えば、Decca,Coral,ABC,Warner などのレーベルだと、契約の関係からか、過去にも数点しか発売されず、これからもなかなか国内発売されないようなタイトルが多い。もっとマイナーレーベルだと、さらに入手困難だ。例えば、Bill Evansの場合~Secco [The Modern Art of Jazz] や Carlton 「Free Blown Jazz] などだ。これらは、59年頃とされるトニー・スコット(cl)とのセッションで、なぜか他にも Perfect 「My Kind of Jazz] などに分散されて発売されたらしい。この辺りのレーベルになると、日本復刻はまず望めない。
この<トニー・スコットもの>については、何枚かフレッシュサウンドでLP復刻されていたが、完全ではなかった。そうこうしている内に、そのフレッシュサウンドから、決定的なCDが出たのだ。前述の3枚分の音源に加えて、これら3枚以外にも分散していた残り3~4曲も網羅した Tony Scott & Bill Evans~A Day In New York(freshsound)2CDだ。DSCN0746

このような復刻CD、復刻LPが出た時にも、この本は威力を発揮する。復刻の場合、タイトルそのものやジャケ写真が変わったりするケースが多い。そんな時は~収録曲名、録音年月、それからパーソネルなんかを、この本でチェックするのだ。国内復刻の場合なら、たいていジャズ雑誌の広告やら小パンフに載っているあるので、それを本のデータと照合する。最近の復刻は、ほとんど、セッション単位で完璧なので、ほとんど安心だ。(CDなら未発表テイクもつくこと多い)  難しいのは、大手のCDショップや廃盤店で、全く予備知識のない「復刻盤」を見つけた時だ。特定ミュージシャンの場合で、未入手音源の場合なら、(多少のダブリや、セッションでの欠損の曲があったとしても)ほとんど買ってしまえばいいが、好きさ加減が微妙なミュージシャンの場合は、ちと困る。入れ込み度が薄い分だけ、記憶があいまいなので、「持ってるかもしれないなあ・・・いや、やっぱりこのセッションの2曲は持ってないぞ・・・」とか迷うのである。ほんとは、<レコ買い>の時は、常にこの<ジャズ・ヒーロー>を持ち歩いていけばいいのだが。さすがにそこまでの根性は・・・僕には、ない(笑)
ただ、こんな時、最後に、ダブリかどうかを判断するのは、僕の場合は、「曲名」なのだ。最近のCD(特にヨーロッパ復刻もの)だと、単なるベスト選集の場合と、ベストの合間に、貴重なセッションや全くの別テイク、未発表曲が、ひっそりと収録されていたりする。LP単位では、もはや復刻されないであろうセッション~例えば、マイルスみたいなメジャーなミュージシャンでも、僕はなかなか入手できなかった音源がある。
1951年録音の Capitol音源~<Early Spring>と<Local 802 Blues>の2曲だ。この本によれば・・・この2曲を収録のLPは、
≪Enter The Cool~The History Of Jazz vol.4 (CR-8024)≫として日本発売されたことになっている。
capitolだから、やはり東芝発売だったのだろうか? こんな風にvol~というタイトルがつけられたアンソロジーみたいなレコードが、最も再発されにくいのだ。事実、僕は、この「Enter~」を一度も見かけた記憶がない。

つい先日、珍しくもタワーレコードへ寄ってみた。LP盤メインの僕としては、タワーやHMVというのは、年に2~3回寄るかどうかである。バーゲン品とか輸入盤低価格のもので、なおかつ興味ある音源を見つけた時だけ買う。そのタワーで、2CDで1040円というマイルスのコンピレーションを見つけた。 
DSCN0745 ≪Miles Davis/The Formative Years≫(Castle Pulse) というタイトルだ。

もちろんいくら安くても、単なるベストセレクションなら不要だ。こういう「安CD」は、ジャケットも冴えないし、たいていデータが明記されてない。CDの裏面を凝視するが、字が小さくて読みきれない(笑) 2004年製で ”Castle Pulse” というレーベルのようだ。全く初めての名だ。バーコードのところに、小さくMADE IN THE EU と表記してあるので、これも「欧州製」なんだろう。一応、曲名を見ていくと・・・まずは、Birth Of The Cool のスタジオとライブからのセレクトや、 ブルーノートからのセレクトらしい曲名が入っている。これならいらないなあ、と思ったその時、あの曲名~<Early Spring>と<~802~>という文字が、まさにパッと目に入ったのだ。クレジットには、「Metronome All Stars」としか表記されてない。
ううう・・・これは・・・確か・・・あの・・・ほれ、あれだ、あれだよ、と自分のアタマの中で、うっすらとした記憶をたどる・・・。こんな時、僕はよく、独り言を言ってしまうらしい。純正の怪しいオヤジである(笑) ええい!どう思われようと構うものか(笑) 今は・・・アタマの中を整理する方が大事なんだ!
Early とか Local とか 802 とかいう「文字」が、かろうじて、僕の記憶フィルターが引っかかったようだ。これは・・・この2曲は・・・マイルスが何かに客演した、あれだぞ・・・そうだ、あれだ!という感じで、ほぼ、そのアルバムが特定できた。もちろんジャケットまでは浮かんでこないのだが。 そうして・・・どうにもその2曲を聴いた記憶がないのだ。じゃあ・・・持ってないはずだ。~という訳で、久しぶりにCDというものを買ってしまいました(笑)
そんなわけで、この本/Jazz Hero’s Data Bankには、まだまだお世話になりそうです。

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