Fantasy

2021年12月31日 (金)

<ジャケレコ  第5回>7インチEP盤には逆らえない

バート・ゴールドブラット装丁のEP盤たち

なんだか知らぬ内に日々が過ぎて、この1年も早くも終わろうとしている。本当に早い。毎年、年末になるとこのような感慨に耽るわけだが、この「夢見るレコード」・・・年に1回だけでも更新せねば、というわりと律儀な気持ちもあり(笑)しかしなかなかいい題材も見つからず、あれこれレコード棚をパラパラと見ながら、埃(ほこり)を払ったりしていたら、棚の前に飾ってあるEP盤がぱたりと落ちてきた。あ、そうだ、これでいこう!・・・という訳で、今回はEP盤である(笑)

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この何年かの内にジャケットを気に入ったものを少しづつ入手してきて、EP盤もけっこう集まってきている。
‌EP盤の魅力はやはり、まずはジャケットにある。そのジャケットから醸し出される雰囲気の魅力である。
さて、EP盤を入手するキッカケにはたぶん誰もがこんな具合かな、と思えるパターンがあって、それはつまり、12インチ盤、10インチ盤でとても好きなレコードがあって(それを持っていても、あるいは持っていなくても)そのレコードと同じデザインのジャケットのEP盤というものが数多く存在している・・・そしてひとたびその姿を目にしてしまうと、その7インチという小振りな姿、形がなんとも「チャーミング」なモノに見えてきて・・・いいなあ、これ!という気分になってしまう(笑)~そんなパターンかと思う。
またデザインは同じで色合いだけ違う場合もあるが(*写真上の方に映っている bethlehem のクリス・コナーなど)それはそれでチャーミングである。このクリス・コナーのEP盤については「夢レコ」過去記事「クリス・コナーの声」で取り上げている)
それから10インチのジャケット写真の、それを撮った時の別カット写真をEP盤の方に使う~というパターンもあるようだ(emarcyのヘレン・メリルなど)それも悪くない。それから、10インチの元盤と関係なくても、そのEP盤のオリジナルなデザインが実に魅力的なものも、当然のことながら、数(あまた)存在する。なんだ・・・これではEP盤というものを好きになってしまうのも無理のないことじゃないか!(笑)

図柄的魅力とは別な話しとして、じゃあ7インチEP盤の音ってのはどうなんだ?という興味もある。
僕の場合、EP盤は45回転だから音もいいはずだ~という素朴的期待感もあり、いろいろ入手してきたわけだが、初期の頃には Clef のゲッツやフリップ・フィリップスの幾つかのタイトルに「かなりいい」と思えるものを見つけたが、それらは例外的なもので、その後は「まあ・・・普通の音だな」と感じる場合がほとんどだった。特定のレーベルなら全て音がいい~なんてことはまったくない。こういうのはやはりタイトルごとの問題だろう。そして「いい場合」の確率はそれほど高くない・・・そんなことから(僕の場合)ある時期からEP盤というものは、あくまでジャケットの魅力に拘るべきだ、と考えるようになった。

さて、さきほどEP盤の棚を少し整理してみたら、なにかしらジャケットが同じ雰囲気のものがけっこう見つかった。それらは主役であるミュージシャンを個性的なイラストで描いているジャケットのもので、たまたまかもしれないが Savoyレーベルのものが多かった・・・そう、バート・ゴールドブラットである。ゴールドブラットはベツレヘムの格調高い写真ジャケットで有名だが、イラストものも凄く個性的で素晴らしいのだ。それらを並べてみたら・・・う~ん、実にいいなあ・・・好きだなあ・・・というわけで(笑)
まずは、バート・ゴールドブラット装丁ジャケットのEP盤をあれこれと紹介してみたい。

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《上写真~黄色と赤色の2枚~Stan Getz/Swedish All Stars(roost) 》赤い方が EP 302(vol.2と右下に表記)と 黄色いのが EP 304(vol.3と表記)である。これこそ同じデザインの色違いパターン。この写真だとジャケットの表面の紙が剥がれているように見えるかもしれないが、これはサックスの部分だけ「白い色」にしてある・・・そういうデザインなのだ(笑)

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《マリアン・マクパートランドの savoy のEP盤~vol.1(xp 8032) と vol.2(xp 8033) と vol.4(xp 8106) 》
これら3枚を集めたが、vol.3 は残念ながら未入手である。そしてこの3枚~表ジャケットは素晴らしいイラストだが、vol.1 と vol.2 の裏ジャケットはまっ白・・・何の表記もない。但し、vol.4 には裏ジャケットに解説と自社レコード広告が載っていたが、エロール・ガーナー、ジョージ・シアリングなどのEP盤紹介のみで、マクパートランドのEP盤 vol.3 情報は得られなかった。
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このイラスト・・・女性がけっこう太めの右腕をアタマの上の方からぐぐ~っと曲げ込んで鍵盤をタッチしている・・・そういう図なのだが、こんな風に肘を90度にしたらピアノなんか弾けないぞ(笑)でもいいのだ・・・写実ではなくイメージ表現なのだから。ゴールドブラットは・・・「線」がいいと思う。線のタッチにすごく強弱感(太い、細い)があって、スピードを感じる。僕はこのイラストレーションをとても好きなので、同じ図柄(色違い)の Marian McPartland MOODS(MG 15022)という10インチ盤~上写真~も手元にある(笑)
  
ゲッツ~他のルーストEP盤にもゴールドブラット装丁のものが在ったので掲げておきたい。ゴールドブラットの描く、どことなくヘナヘナッとしたゲッツの姿が悪くない。しかしながら・・・Roost レーベルの音質はどう弁護的に言っても良いとは言えない。録音の段階から(おそらく)なんというか音が遠いというか、こもったような鮮度感のない音である。これはオリジナルの10インチ盤、12インチ盤でも同じ傾向。残念ではある。

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上写真~Stan Getz/Stan Getz Plays の vol.1(roost EP 301) と vol.4 (roost EP 306)
さて、この2枚・・・同じ図柄で vol.1とvol.4となっているので、当然これらの「色違い」vol.2 と vol.3 が存在しているはず~と考えて、未入手なのを残念に思ったわけだが、その vol.2とvol.3・・・なんとしたことか、先ほど紹介した3つ上の写真~Stan Getz/Swedish All Stars の2枚そのものだったのである! なぜそれが判ったのか? EP 306 の裏ジャケット~そこに答えがあったのである。つまり・・・裏ジャケット右下に EP 301から EP 307までのタイトルがしっかりと表記されていたのだ(笑)こうある。
EP 301 Stan Getz Plays ーvol.1
EP 302 Stan Getz and His Swedish All Stars ーvol.2
EP 304 Stan Getz and His Swedish All Stars ーvol.3
EP 306 Stan Getz Plays ーvol.4
う~ん・・・Plays の方は 1 と 4、Swedish の方は 2 と 3 が手持ちで、なかなか巻(vol.)が揃わないなあ~と少しガッカリ気分もあったのだが、なんのことはない。たまたま持っていたゲッツの roost  EP盤4枚が、ちゃんと vol.1~vol.4 までの揃いになってるじゃないか!これは・・・ちょいと嬉しい(笑)

まあこんな風にバート・ゴールドブラットのカバーアートが大いに魅力的なEP盤ではあるが、たまには音源的な(音質ではない)興味から大いに惹かれてしまう・・・そういうEP盤もある。例えばこいつ。

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ゲッツだけ紹介して他のテナー奏者も出さないのも面白くない(笑)上の2枚のEP盤は、モーリス・レーン(xp 8089) と テッド・ナッシュ(xp 8090) TENOR SAX なるシリーズで文字通りテナー奏者を紹介するための企画のようだ。同じデザインの色違い・・・僕はこういうのにけっこう弱い。おそらくゴールドブラットは2枚を並べた時の効果を考えて、その色彩を決めている。だから・・・こちらも2枚、並べたくなる(笑)
この2枚~例によってジャケット裏に何の印刷も無いので(データが無いので)テッド・ナッシュについては調べた自分のメモが付けてあったことを失念していた(笑)そのメモによると、over the rainbow を含むこの4曲は1946年のSP音源のようだ。dsにマックスローチの名前がある。

さて、この時期のテナーと言えば・・・ブリュー・ムーアを忘れてはいけない~下写真の2枚。

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Brew Moore vol.1 (savoy xp 8066) と vol.2 (xp 8067)  である。これは、vol.1とvol.2の連続番号なので、savoyレーベルには売り出したかった意図があったはずだ。実際、この時代ではすごくモダンなフレージングが素晴らしい。なぜ人気が出なかったのか・・・判らない。
このEP盤2枚~各4曲づつ(計8曲)収録されているのだが、前述のマリアン・マクパートランドEP盤と同様に、裏ジャケットに何も印刷されてない。だからどこにもパーソネルも記されてないわけで・・・同時期(1953年と思しき)の10インチ盤~Brew Moore/Modern Tenor Sax(MG 9028) にはおそらく裏ジャケット情報は載っているだろう。だが僕はその10インチ盤は未入手なので、discogsで savoyレーベルを調べてみると、その10インチ盤には6曲しか収録されていないことが判った。その6曲とは~
EP8066の4曲と8067からの2曲(lestorian mode と mud bug) である。
つまりこの段階で8067から残りの2曲が抜け落ちてしまっているのである。後述するチャック・ウエイン/ブリュー・ムーア音源との関連もあり、なんとなく知ってるつもりだったブリュー・ムーアの savoy音源のことが、ほとんど判ってないことが判った(笑)う~ん・・・なんだかとても気になってきた(笑)そうなると厳しいことに、savoyというレーベルは、コンピレイションものが雑なのである(笑)データ表記もアバウト過ぎて・・・とにかく判りにくい。
だがしかし天は我を見放さなかった(笑)EP 8067に収録されている「レストリアン・モード lestorian mode」という特徴ある曲名が大きなヒントになって、いろいろ判ってきたのだ。

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上写真のEP盤8067に収録の lestorian modeという曲名にははっきりと覚えがあって、それはスタン・ゲッツ絡みで、savoyレーベルにこの名前の12インチLPが在ることを知っていたからだ。そこでゲッツの棚をチェックしたら・・・在った在った。
Lestorian Mode(MG 12105)だ。

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この Lestorian Mode には~ゲッツ、サージ・チャロフ、そしてムーアの3種のセッションから4曲づつが収録されていた。そして、件(くだん)のムーアの8曲の内、8067の4曲がB面3~6曲目に収録されており、そのパーソネルもきちんと表記されていた。よかった(笑)

Brew Moore(ts)
Gerry Mulligan(bs)
Kai Winding(tb)
George Wallington(p)
Jerry Floyd(tp)
Curley Russell(b)
Roy Haines(ds)

lestorian mode
gold rush
kai's kid
mud bug 
録音年は12インチ盤 Lestorian Mode にも表記されていないので、不明です。
*1/4追記~上記4曲の録音年月日が 1949年5月20日と判明しました。Arista/Savoy時代のボブ・ポーター監修の再発盤~
Brothers and Other Mosthers vol.2(SJL 2236)の詳細なデータによって判りました。ちなみにこの2枚組(1979年)には上記4曲が各2テイクづづ収録されています。

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 さて、もうひとつのムーアのEP盤(8066)4曲はどこに行ってるのか? 
こちらも案外すんなり見つかった。
In the Beginning BeBop!(savoy MG 12119) という12インチLPに4曲とも収まっていた。こちらも前述の「レストリアン~」と同じように3種のセッションから4曲づつ(全12曲)収録で、ムーア4曲はA面5,6,B面1,2に配置されている。このセッションはカルテット(4人編成)でパーソネルは以下。
録音年月は12インチ盤にも表記されておらず不明。

Brew Moore(ts)
Gene Dinovi(p)
Jimmy Johnson(b)
Stan Levey(ds)

blue brew
more brew
brew blew
no more brew

*1/4追記~録音年月日が 1948年10月22日 と判明しました。こちらも Arista/Savoy時代のボブ・ポーターによる再発盤~
Brothers and Mothers vol.1(sjl 2210)という2枚組(1976年)のデータに明記されていました。

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さて、ブリュー・ムーアのリーダー作品はと言うと・・・あまり思い当たらない。この savoyEP盤の他にはたしか fantasyに在ったかな?
というくらいだ。調べてみたら(discogs)やはり fantasy に以下の2作品を残していた。
Brew Moore Quintet(1956年)紫色の風神様みたいなジャケットのもの。
Brew Moore(1957年)ムーアがテナー持って笑ってるジャケットのもの。
あとは Brew Moore in Europe(1962年)~ラース・ガリンやサヒブ・シハブとの共演盤~という作品があるくらいで、これでムーアのリーダー作はうんと少ないことがはっきりした。だから、ブリュー・ムーアを聴くためには、他のミュージシャン作品への参加作~後述するチャック・ウエインを含めて~をチェックするしかないのだ。

このように貴重な音源をセッション単位で聴きたい時に、あるセッションがそのまま1枚のEP盤にまとめられているとありがたい。SP音源はA面・B面で2曲単位だから、SP2枚分4曲をEP1枚に収めるケースも多いようだ。それから10インチ盤の時代には、ひとつのセッションを3~4曲でまとめる場合が多いようで、つまりセッション2回で6~8曲分を仕上げて、それらで10インチ盤両面を構成しているケースが多いように思う。また12インチ盤に再収録する場合、先ほどの savoy のコンピレイションLPのように、3つのセッションから4曲づつで、1枚の12インチ盤を構成する場合もある。その際、元セッションの3~4曲が、A面・B面にバラバラにされたり、あるいは別のLPに振り分けられたりするケースも多いようなので、特に興味深いセッションの場合には、その3~4曲が1枚のEP盤にまとめられていると、それだけで嬉しいものなのだ。

次にこのEP盤。

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Here's that Mann vol.2 (dee gee EP 4013)

pooch mc gooch
all of me
back in your own backyard
it don't mean a thing

シェリー・マン名義のEP盤である。セプテット(6人)編成だが、なんと言っても魅力なのが、アート・ペッパーが入っていることだ
(it don't~以外の3曲)  
*写真右スミのEP赤盤は~ミルト・ジャクソンのカルテット(dee gee)これ、round midnight の演奏も音質もいい。

pooch~では「おおっ!」と叫びたくなるような切れ味鋭いソロを聴かせてくれる。all~とback~は歌入りではあるが、間奏やオブリガート(歌の合間に入れる短い合いの手)で見事なソロが聴かれる。歌伴・・・という感覚からはすっ飛んでる!(笑)
これら3曲は1951年11月のペッパー入りセッション4曲からの3曲。そうして嬉しいことに、このDee GeeのEP盤4013~1951年シカゴ録音とのことだが、音質もなかなかに良いようだ。
ペッパー入りのもう1曲は、the count on rush street という曲で、その count~は Dee Gee EP4006なるEP盤に収録。4013がvol.2と表記されているから、4006 はたぶん Here's that Mann vol.1 なるタイトルだろう。
count on rush street は急速調のインスト曲で、この曲でのペッパーのソロも他メンバーのソロも、皆ハリのある素晴らしい演奏だ。
ちなみにこれらの音源はSavoyの12インチ盤 Deep People に収録されている。
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Deep People (savoy MG 12405)のA面4,5,6,7に back~以外の3曲とcount~の4曲収録されている。
*back~は女性歌手 shelby Davisの歌伴曲なので、Singin' and Swingin'(savoy MG 12060)という女性歌手を集めたオムニバスLPに収録されている。

もうひとつ、音源・・・いや、演奏が素晴らしいEP盤を。
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Chuck Wayne Quintet(savoy xp 8119)1954年6月録音

while my lady sleeps
tasty pudding
prospecting
sidewalks of Cuba

このEP盤・・・ジャケットの淡いブルーな色合い、構図、イラストの全てが素晴らしい!好きなジャケットだ。オマケにこのEP盤・・・音源的にもとても魅力的でそれは、やはりズート・シムズのテナーが素晴らしいからである。
《このEP盤の裏解説(オジー・カデナ)によると4曲中3曲が Zoot Sims、1曲(sidewalks~)のみ Brew Moore、とされている。カデナは~"sidewalks of Cuba" which were recorded a week after the sides with BREW MOORE~とハッキリ書いている》
*1/2夜・訂正1~上記のオジー・カデナ解説部分~恥ずかしながら意味を完全に取り違えていました。 最初に、この "sidewalks of Cuba"という曲名が目に入って、次に recorded を見て、それを with Brew Moore につなげて意味を解釈してしまって「そうか、この1曲だけはブリュー・ムーアと録音されたのか」と思い込んでしまいました。しかし改めて裏解説をよく見たら・・・この "sidewalks of Cuba" の前に大事な文章が在ったのです。それをつなげると、以下のようになります。
ZOOT SIMS blows with CHUCK on "Butter Fingers", "While My Lady Sleeps", "Tasty Pudding", "Prospecting" and "Sidewalks of Cuba" which were recorded a week after the sides with BREW MOORE   
そうなんです。ズート・シムズは、これらの5曲を("Sidewalks~" を含む)チャック(ウエイン)と演奏(blows)して、それらが録音されたのはブリュー・ムーアとのセッションの1週間後だった~というのが正しい意味かと思います。
早とちりしての先入観を持ったまま、ズート・シムズとブリュー・ムーアの音色のことなど書いてしまい(後述部分)恥ずかしい限りです。
ここに謹んで訂正させていただきます。

これらの音源4曲は、12インチ盤 the Jazz Guitarist(savoy MG 12077)に4曲とも収録されている。そしてここからが問題なのだが、このLP裏解説では上記の sidewalks~はズート・シムズとされているのだ。つまりズート入り5曲(上記4曲+butter fingers)、ムーア入り3曲、あと4曲(ウエイン、ジョン・ミーガン(p)のカルテット)加えての全12曲とされているのだ。う~ん・・・。Dscn3146

さあ困った(笑)・・・どちらが正しいのだろうか? 
さっそくその sidewalks~を何度も聴いてみた。う~ん、判らない。ズート・シムズのようでもあり、ブリュー・ムーアのようでもある(笑)元々、この2人はまずソフトな音色がよく似ているし、ビートに軽やかに乗るスタイルとフレーズ展開も似ていると思う。しかし・・・気になる(笑)それで、ムーアのリーダーセッション(前述の1953年(推定)8曲)など、ムーア絡みをあれこれ聴いてみた。その上での自分なりの認識はこんな風だ。
<高音域フレーズの時~アルトっぽい艶々した音色になるのがズート・シムズ。やや掠(かす)れたような乾いた音色になるのがブリュー・ムーア>
<音色の全般として~ヴェールが掛かったようなソフトなマイルドな感じがズート・シムズ。
全体にサブトーンの度合いが強めで(シムズよりは)時に乾いた硬い感じ(シムズよりは)になるのがブリュー・ムーア>
そんな印象を持ちながら、改めてこの sidewalks~を聴いてみると・・・やっぱり判りません(笑)それでもちょいと無理やりに理屈を付けてみると・・・テナーのソロの時に高音域の繰り返しフレーズで僅かに引っ掛かるような場面があって・・・ズートはほとんどのフレーズに迷いが無いから・・・そうするとこの sidewalks~のテナーは、ブリュー・ムーアであるように僕は判断している。
*1/2夜・訂正2~すみません、完全に間違えました。sidewalks of Cuba のテナーは、12インチ盤解説の通り、ズート・シムズです(パーソネル表記の詳細については写真の上の青字「訂正1」をご覧ください)

いずれにしても、この2人がそれぞれの曲でチャック・ウエインのギターに絡んでテーマをユニゾンで吹く場面が多いのだが、ウエインのギターにフィットしたソフトなテナー音色が素晴らしい。どのトラックも味わい深いが、僕が特に好きなのが while my lady sleeps だ。この曲、なんとも慎み深いような雰囲気のあるメロディの曲で、僕が最初にこの曲を知ったのは、プレスティッジの「コルトレーン」というLPからである。1972年秋にビクターが、prestigeゴールデン50なるシリーズで1100円(当時、LP盤は大体1800円~2100円だったのこの1100円という価格は画期的に安価で、しかし良質なジャズLPだった)で発売した時の目玉がこの「コルトレーン」だった。このレコードは、だいぶ後になって、傑作バラード~<コートにすみれを>収録LPということで有名になったように記憶しているが、もうひとつのバラード曲がこの<while my lady sleeps>だったのである。コルトレーンはスローバラードで仕上げているが、こちらのウエイン/シムズは意外にも速めスイングだ。しかしそれも素晴らしい。

さて、このEP盤(XP 8119)にも vol.1という表記があり、裏解説をよく見ると続き番号の XP 8120 がvol.2 のようで、これは前述のシェリー・マン(dee gee EP 4013)と同じケースである。これは単にsavoy レーベルのやり方というだけかもしれないが、つまりこういうことではないだろうか・・・要はあるセッションが完了して、その音源がまず10インチ盤で発売されて、そのすぐ後に(あるいは同時に)2枚のEP盤に分けて発売された~というパターンだと考えられる。価格面でも10インチ、12インチよりは7インチEPの方が安かったので、好みの曲を収録している方のEP盤だけ購入する~という需要があったから、同じ音源でもいろんなフォーマットを用意したのだろう。
そうだ、考えてみれば日本でも、33回転コンパクト盤なるフォーマットがあったじゃないか。たいてい4曲入りで、要はアルバム(LP)を買うまではいかないけど、ヒットした曲を聴きたいな、という場合に、このコンパクト盤が重宝したのだ。そういえば・・・僕もサイモン&ガーファンクルの<明日に架ける橋>はコンパクト盤で我慢していたな(笑)
アメリカでEP盤というフォーマット(45回転)が盛んに発売された頃は、大体のところ、10インチ盤の同内容がEP盤2枚、12インチ盤同内容がEP盤3枚になるパターンが多いようだ。Clef や Victorレーベルの場合だと10インチ盤や12インチ1枚分をEP2枚組み、3枚組みとしたタイトルがけっこうある。あの「見開き組みセット」にしたEP盤もこれまたチャーミングではある。それらについてはまたの機会に。
う~ん、それにしても・・・レコードというものは、どうしたって楽しいものですね(笑)

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2018年1月 1日 (月)

<ジャケレコ 第3回>エリオット・ローレンスのFantasy盤

≪グレイト・ビッグバンド~エリオット・ローレンス楽団のことを少し≫
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ずいぶん前の日本盤に<Study in Great Big band 20>(東芝)というシリーズがあった。ピンク色のオビが印象的で、そのオビ下の方にはJazz Right Nowという文言が表記されている。東芝はひと頃、ジャズレコードの宣伝にこのJazz Right Nowなる標語を謳(うた)っていて、それは1975~1978年頃だったように思う。Right Now! とは・・・何やらちょっとロックっぽい感じもするが、まあ「今こそジャズを!」みたいな意味合いだろう。
その頃、僕はすでにジャズのレコードを買い始めていたが、当時はモダンジャズの本線・・・マイルス、コルトレーン、ロリンズ、モンク、エヴァンス~彼らの諸作を集めるのに夢中だったので、「ビッグバンドもの」には興味もなく、そしてもちろん資金的余裕もなかったので、リアルタイムではこのシリーズのものを1枚も入手していない。
このピンク色のオビが付いた<Study in Great Big band 20>シリーズで初めて入手したタイトルは、あれは1990年頃だったか・・・中古レコード店で見つけた「フォンテーヌブロー(タッド・ダメロン)LPJ-40007」である。この作品・・・タッド・ダメロンの佳曲をジョニー・グリフィン ケニー・ドーハム、サヒブ・シハブ、ジョー・アレクサンダーらのソロイストを巧く使ってモダンに纏(まと)め上げた感じで、とてもいい内容だと思う。そうして僕はこのレコードをとても気に入った。

最初に買った『ピンクのオビのグレイト・ビッグバンドのシリーズ』が好印象だったので、その後、中古レコード店でこのシリーズ~スタン・ケントン<contemporary concepts>やビル・ホルマン、レス・ブラウンなどを見つけると、たいていは価格も安かったので、嬉しく入手してきた。どのレコードもいくつかの曲には、いいサックス吹き(例えばチャーリー・マリアーノ)の、いいソロが聴けたので(そうでない退屈なトラックもあったが)僕はだんだんと、この手のビッグバンドものを好きになっていったわけである。

≪追記≫2018年1月8日
このシリーズが気になってきた僕は、この20タイトルとはどんなものだろうか? と思い、ある時期(もちろんリアルタイムではない)発売タイトルを調べてみました。ところがこれが・・・なかなか判らない・・・情報がないのです。通常、この手のシリーズものだと、オビの裏とか中解説書に全シリーズのタイトルが載っていたりするのですが、このシリーズ・・・他タイトルの情報がまったく何も載ってないのです(笑) まあそれでも、中古店の在庫検索やネット検索で、だいたいのところが判ってきましたので、そのリストを以下に。

モダン・ベニー(ベニー・グッドマン)ECJ-40001                                 
ワイルド・アバウト(ハリー・ジェイムス)ECJ-40002
コンテンポラリー・コンセプト(スタン・ケントン)ECJ-40003
クラシック・イン・ジャズ(チャーリー・バーネット)ECJ-40004
グレン・グレイ / ビッグ・バンド・テーマ傑作集 ECJ-40005
アンド・テン(ギル・エヴァンス)LPJ-40006
フォンテーヌブロー(タッド・ダメロン)LPJ-40007
プレイズ・ジェリー・マリガン・アレンジメント(エリオット・ローレンス)LFJ-40008
ライヴ・アット・モンタレー(ドン・エリス)LLJ-40009
トゥゲザービリー・エクスタイン)ISJ-40010≫*dukeさん情報により追記 
スタンダード(デューク・エリントン)ECJ-40011
セカンド・ハード(ウディ・ハーマン)ECJ-40012
グレイト・ビッグ・バンド(ビル・ホールマン)ECJ-40013
ワイド・レンジ(ジョニー・リチャーズ)ECJ-40014
コンポーザーズ・ホリデイ (レス・ブラウン)ECJ-40015
ジャム・セッション・アット・ザ・タワー (レイ・アンソニー)ECJ-40016
アフロ・アメリカン・スケッチ (オリヴァー・ネルソン) LPJ-40017
スウィンギング・アット・ザ・スティール・ピア(エリオット・ローレンス)LFJ-40018
ポートレイト(ジェラルド・ウイルソン)LLJ-40019
ニュー・ボトル・オールド・ワイン(ギル・エヴァンス) LLJ-40020
ポートレイト・オン・スタンダーズ(スタン・ケントン) ECJ-40031

タイトル右側の企画番号は ECJ が基本のはずだが、一部のものが JPJ、LLJ LFJだったりしていますが・・・これはあえて検索で拾った情報のまま載せたものです。よって完全に正しい情報とは言えませんので、その辺り、ご容赦ください。
40010タイトルが見つかっていません。ご存知の方、コメントにてお知らせください。
*追記の追加 .~この
40010・・・さっそく duke さんが ≪「ISJ-40010」は、ビリー・エクスタインの「トゥゲザー」です≫との情報を寄せてくれました。さらに企画番号の謎についても以下~
ECJ、JPJ、LLJ、LFJ、ISJ は真ん中の記号が原盤です。CはCapitol、PはPacific、LはLiberty、FはFantasy、SはSpotliteです≫ なるほど!納得です!
special thanks to Mr.dukeさん!
duke さんのジャズブログ~デューク・アドリブ帖 のアドレスはこれです。http://blog.goo.ne.jp/duke-adlib-note/ 


そんな頃、たまたま見つけたソウルの中古レコード店で(true records)、エリオット・ローレンスのfantasyオリジナル盤を入手したのだ。これはもうとにかく、オリジナル盤のコーティングジャケットの・・・その何とも抗し難い魅力にしっかりと参ってしまったわけで、ついでにジャケット内に入っていた、fantasyのレコードカタログも素敵なオマケになって・・・このエリオット・ローレンスの Big Band Sound はあのむちゃくちゃに暑かったソウルでの、素晴らしく好ましい思い出のレコードとなったのである。
http://bassclef.air-nifty.com/monk/cat3840160/index.html

その後、徐々にオリジナル盤というものを入手するようになり、自(おの)ずとエリオット・ローレンスのfantasy盤も集まってきた。
さて「エリオット・ローレンス楽団」というのは、いわゆるダンスバンド的な白人ビッグバンドで、エリントンやベイシーのようにその楽団自体に強烈な個性が有る・・・という感じではない。おそらくは、普段はボールルームなどでダンス伴奏の仕事を主にやっていて、時にFantasy緒作のようなレコード作品を録音する際には、腕利きソロイストのためにソロ場面を組み込んで作品を仕上げる・・・という風なやり方だったと思われる。どんなミュージシャンが参加しているかというと、ズート・シムズ、アル・コーン、ハル・マクージック、ニック・トラヴィス、バーニー・グロウ、アービー・グリーン、エディー・バート・・・作品に拠って多少の違いはあるが、概ねこういったメンバーである。
ローレンス本人はピアノ弾きで、時々、ギル・エヴァンス風にポロロ~ンとピアノを鳴らすくらいでどうということも無いので(笑)、だから、エリオット・ローレンス楽団を聴くということは、ほとんど彼らの優秀なソロを聴く~ということになる。
スタンダード曲を捻り過ぎない素直なアレンジの合間に、アル・コーン(テナー)、ハル・マクージック(アルト)や、エディー・バート(トロンボーン)、アービー・グリーン(トロンボーン)らが、キラリと光るソロを取る・・・どのレコードもそんな具合でけっこう楽しめる内容だと思う。

<2023年1月8日 追記>「ギル・エヴァンス風にポロロ~ンとピアノを鳴らす」と書いた、エリオット・ローレンスのピアノが聴けるレコードが在るのでここで紹介します。Jazz Goes Broadway(Vik)という作品~ズート・シムズ(テナー)、アービー・グリーン(トロンボーン)、アル・コーン(バリトンサックス)、ハル・マクージック(クラリネット)、ニック・トラヴィス(トランペット)の5管に、ローレンス(ピアノ)、チャビー・ジャクソン(ベース)、ドン・ラモンド(ドラム)のトリオの8人編成で6曲。残り4曲は、同じピアノトリオに、ジミー・クリーヴランド(トロンボーン、アート・ファーマー(トランペット)、ジーン・クイル(アルト)、ズート・シムズ(テナー)、アル・コーン(バリトンサックス)の5管。管の奏者が大勢いますが、ローレンスの穏やかで落ち着いたアレンジで、とても品のいいサウンドに仕上がってます。好きなレコードであります。Vikのオリジナル盤も欲しいところですが、このBMGビクターの国内盤も、ジャケット、盤質、音質・・・なかなか素晴らしいと思います。それから、内解説は吉岡祐介さんで、この方の解説が素晴らしいのです。特に「イーストコーストでの白人ジャズ」という観点からの的確な評論には強く共感します。

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そんなエリオット・ローレンス楽団のfantasy盤には、名手のアドリブソロがたっぷり楽しめるジャズ度の高い作品がいくつかある。
まずはこれ。エリオット・ローレンス楽団と言えば、おそらく最も知られているであろう、fantasy第1作目である。
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≪Elliot Lawrence plays Gerry Mulligan Arrangements≫(fantasy 3206)

これ、タイトルだけ見ると、ジェリー・マリガンが参加していると思ってしまうが、マリガンはまったく入っていない(笑) マリガンがアレンジした曲を、エリオット・ローレンス楽団が録音した・・・ということで、plays Mulligan Arrangements というタイトルなのである。
この頃の白人ビッグバンドのレコードって、基本的にはリラックスした聴きやすい路線なので、うっかりすると片面15分くらいを、す~っと聴き流してしまうこともあるのだが、エリオット・ローレンス楽団はさすがに一味違う。聴いてると・・・テーマの後に「おっ、このアルト(テナー、ボントロ)のソロ、いいな!」と思える場面が必ず出てくる・・・そうしてクレジットを見ると・・・うん、ハル・マクージックかあ・・・やっぱりなあ・・・みたいなことを何度も味わえるのだ。これがなかなか楽しい(笑)
この plays Mulligan Arrangements でのソロイストは、アル・コーン、エディー・バート、ハル・マクージック、ニック・トラヴィス、ディック・シャーマン とクレジットされている。僕の好きなハル・マクージックは bye bye blackbird,  but not for me, my silent love などでフューチャーされている。マクージックのアルトの音色は、なんというか・・・丸みのある温かい音色で、まったく気負わずにさらりといいフレーズを吹く。随所にソロ場面のある、テナーのアル・コーンも、実にいいテナーだ。ゆったりと膨らむ、わずかに擦(かす)れたような温かみのある音色がとても魅力的なのだ。ちなみにアル・コーンはどうやら実質的にはどうやらこのエリオット・ローレンス楽団の音楽監督のようで、どのfantasy作品にも参加しており、アレンジ・ソロに大活躍している。

こういうのもある。
Dscn3202
≪Elliot Lawrence plays Tiny Kahn & Johnny Mandel≫(fantasy 3219)
このレコード・・・タイトルにTiny Kahn、Johnny Mandel とものすごく地味な人の名前を謳っているためか、あまり知られてないようだ。ちなみに タイニー・カーンはドラマーで、スタン・ゲッツのストーリーヴィルのライブ盤で素晴しいドラムを叩いていた人だ。ジョニー・マンデルは「いそしぎ」や「マッシュ」の作曲家。
この作品、全体に地味めではあるが、アップテンポのスインギーな曲が多く、ジャズ度はなかなか高い。なんと言ってもテナーのズート・シムズが参加しており、ズートのソロ場面もけっこうあるので、モダンジャズ好きも充分に楽しめるはずだ。ただ・・・ジャケットが例外的にあまりよろしくない(笑)

次に紹介するのは、ジャケットが印象的なこれ。

Dscn3199
≪Swinging at the Steel Pier≫(fanatsy 3236)
この作品~<東芝のグレイト・ビッグバンド20>として発売されたわけだが、どうやら、エリオット・ローレンス楽団の国内発売盤としては、この<スティール・ピアー>が初めてだったようだ。この作品・・・スティール・ピアー内に在る Marine Ballroomでのライブ録音のようだが、案外、音質も悪くない(国内盤解説によると、1956年6月録音)
スタンダード曲としては~tenderly, alone together, between the devil and the deep blue sea など。トランペットのニック・トラヴィスをフューチャーしたtenderly と alone together でのアル・コーンのソロがなかなか素晴しい。

さて・・・Fantasy盤には中身のジャズ的なサウンド以外にも大事なことがある。それは・・・ジャケットがとても魅力的なことだ。写真が良いのはもちろんだが、艶のあるコーティング仕様も実に効いているかと思う。
Big Band Soul は、<海辺に立った笑顔のエリオット・ローレンス氏が指揮をしているポーズを取っている>だけの写真なのだが、これが実に悪くない(笑)
The Steel Pier(すぐ上の写真) ・・・これもいい。海辺に突き出たスティール・ピアー(ダンスホール、レストランやゲームセンターなどが合体した巨大な娯楽施設のようだ)の単なる風景写真なのだが、微妙に赤っぽいソフトな色調と相俟(あいま)って、なにやら豊かなアメリカの50年代・・・という感じが漂ってきて、とてもいい感じのジャケットになっている。

そして、Fantasy緒作の中でも、ひときわ素晴らしいジャケットだと思えるのが、記事の冒頭にも写真を載せたこのレコードだ。
Dscn3198
≪Dream with Elliot Lawrence orchestra≫(fantasy 3226)
心地よい暖かさを感じさせるベージュの色合い、床に置かれた観葉植物の緑色、ソファいっぱいに横たわる女性のポーズ、そしてその女性の知的な佇(たたず)まい・・・うん、これは実に素晴らしい!
このレコード・・・ジャケットだけでなく、中身の音も僕としてはとても気に入っている。全編、スローテンポな曲で統一されており、音楽はあくまでも、ゆったりと、ふんわりと、そしてなんというか・・・密(ひそ)やかに流れていく。僕などは、例えば more than you know のテーマメロディを聴くと、トロンボーンの蕩(とろ)けるような甘い音色にうっとりしてしまう。ジャケット裏のクレジットを見れば、うん、アービー・グリーンか・・・と判るが、そんなことはどうでもいいのかもしれない。
このレコードのタイトルはDream・・・甘美でソフトな質感の心地よい音楽が部屋中にすうっ~と流れてくる・・・どうにも眠くなってくる・・・そうしてあなたは、すうっ~と眠りに落ちてしまう。
何かとセチガライこの世の中・・・こんなレコードが在ってもいいじゃないか(笑)

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2006年4月27日 (木)

<ジャズ回想 第4回> ニーノニーノさんのオフ会のこと。

こんな具合に・・・白馬の夜は更けていった~

第2回 白馬/杜の会が、今年もつい先日、行われた。場所は昨年と同じ、信州・白馬のオーディオ・ペンション「洗濯船」である。
「杜の会」とは・・・オリジナル盤通販専門店ニーノニーノさんのBBS「こだわりの杜」のオフ会のことだ。
詳しくは・・・そのHPのBBSとコラムをお読み下さい。こだわりのオヤジたちがいつも集っております(笑)http://www.ninonyno.ne.jp/ninonyno/topmenu.htm

今年の「杜の会」は、だいたい以下のような流れで行われた。
第1部~「Duke氏のレコード語り」(地下JBLルーム)
第2部~「みなさんの一押しレコードpart1 」(1Fマッキンルーム)
第3部~「家庭的かつ良心的なオークション」 そして・・・
第4部~「みなさんの一押しレコードpart2 」(地下JBLルーム) だ。

食堂(1Fマッキン)での第2部「みなさんの一押しレコードpart1 」は、ちょっとお酒の入った夕食の後、誰かれとなく「じゃあそろそろ・・・」「そうですねえ・・・ゲヘヘヘッ(笑い声)」てな感じで・・・もちろん和気アイアイと、しかし若干の緊張を伴って始まる。みなさんが持ち寄った「一押し盤」の中から1枚を選び、簡単なコメントをつけて1曲づつ披露するわけだ。みなさん、もちろん「自分が好きな盤」をかけることとは思うが、そこはやはり相当な音楽好き達を前にしてのお披露目である。若干のミエもないわけではない(笑) 
「あんまり音が良くないレコードだなあ」とか「これのどこがいいんだ?」「よく見る盤だな」などと思われないだろうか?・・・などと余分なことも考えてしまう。(いや、そんなのは僕だけか?)
だから・・・ちょっと「かっこつけた盤」になってしまうこともあるかもしれない。「絶対に大丈夫な盤」。つまり・・・明らかに演奏のいい名盤、明らかに音のいい盤、明らかに希少盤・・・そんな感じか。

とにもかくにも、今年が初参加のお2人から、1Fマッキンルームでの音だし(第2部)は始まった。僕は JATP new volume 5 (clef)12インチ(古い録音だけどサックスの音色などが素晴らしい)と Lee Morgan/Here's Lee Morgan (vee jay) (僕の中ではちょっと新らしめの「いい録音」1960年のステレオ録音。)Duke Plays Ellington (capitol)(12インチ:ターコイズ)などを用意していた。
_003_1僕の順番は3人目。1人目が女性ヴォーカル(ポリー・バーゲン)、2人目がオペラ(マリア・カラス)ときたので・・・「ここはカラッとしたハードバップだな」というわけで・・・Here's Lee Morgan (veejay) を選んだのだ。VeeJayのステレオ盤は、音もまあまあだと思ったので選んだのだが・・・ちょっと中途半端ではあったようだ(笑) それほどの希少盤ではないし、リー・モーガンには他にも名盤があまたある。選んだ曲も、地味なジャズメン・オリジナルだ(milt jackson作のoff spring という曲) 昨年もそうだったが、クレフやノーグランのゲッツやらホッジスの超希少盤が次々に登場してくるので、普通のハードバップ盤じゃあ、とても対抗できないようだ(笑) しかし・・・食堂のマッキンルームの「壮大な鳴り」で聴く「ハードバップ」も悪くはなかった。ブレイキーの、かなりでかそうなライドシンバルのグワ~ングワ~ンという鳴り具合や、ベースのチェンバースの大きな音(ちょっと出すぎくらいにベースが大きな音像で鳴っていた) ケリーの転がるピアノタッチなど、どれもマイルドないい音で鳴っていた。まあでも・・・ノッて聴いたのは、僕だけかもしれない(笑)

第1部でかかった曲を列挙しておこう。(だいぶ記憶が飛んでますので・・・不完全です:笑)

D35さん~ポリー・バーゲンTHE PARTY'S OVER(columbia) から smoke gets in your eyes
マントさん~MARIA CALLAS sings ROSSINI and DONZETTI・arias(UKコロンビア) から LA CENERENTOLA(F・Rossini) Nacqui all'affanno(Act2)
bassclef~リー・モーガン here's Lee Morgan(vee jay:stereo) から off spring *前述
ワガママおやじさん~ドロシー・ドネガン(レーベル名を失念。珍しいレーベルの盤)から on green dolphin street 
*<補足>~下記コメントにあるようにワガママおやじさんからデータを頂ました。この珍しい盤は・・・Dorthy Donegan/Swingin Jazz In Hi-Fi (Regina 285) なる盤でした。
パラゴンさん~Eve Boswell(女性シンガー)の 「you go to my head」
SPUさん~ジーン・アモンズ、the Boss Tenor(presige:銀・黒ラベル) から my romance
YOさん~リッチー・カミューカ~ Richie Kamuca Quartet (mode) から what's new? ともう1曲、ペッパー・アダムス(mode)から my one & only love
リキさん~プレヴィンの指揮したアルビノーニのアダージョとモーツァルトの宗教曲
Dukeさん~ジュリーロンドン the end of the world
       カーペンターズ   the end of the world

さて・・・そんな第2部「みなさんの一押しレコードpart1 」が終わって、オークションで盛り上がった後・・・いよいよ第4部~「みなさんの一押しレコードpart2 」(地下JBLルーム)が始まった。ここでは、もうちょっと個人的好みの強いマニアックな盤が登場することが多い。いわばみなさんの「本音盤」である。そんなみなさんの「本音盤」と、かかった曲を以下に記しておこう。

YOさん(YoさんとBoseさんのネタ)~ジョニー・グリフィン2題!
     Johnny Griffin /Way Out [riversideオリジナル・ステレオ盤/日本ビクター盤/WAVE盤]と the Kelly Dancers  [オリジナル・モノラル盤/WAVE盤/fantasy custom盤] での聞き比べ。

ワガママおやじさん~Modern Music From SanFrancisco(fantasy) なる3つのセッションを集めた盤:Jerry Dodgion のセッションからmiss jackie's delight ピアノがソニー・クラークです。*後述_001_2

bassclef~フリップ・フィリプス/EP盤(Clef)から I'll never be the same

・・・このEP盤には愛着がある。とにかくジャケットが好きなのである。EP盤の左側~Flip Phillips Quintet というタイトル。ワンホーンでしみじみとしたフィリプスのテナーが味わえる。10インチオリジナルが欲しい・・・(笑)

パラゴンさん~ヘレン・メリル/mercuryのオリジナル盤(大ドラム)から you'd be so nice to come home to

SPUさん~ルイ・アームストロング/Satchmo At Symphony Hall/Decca より (What Did I Do to Be So)Black And Blue・・・哀感が漂う名曲でした。(トランペットつながりで~題して「魂の叫び」by オーナーMさんとSPUさん)
マイルス・デイヴィス/Live Around The World (ライブ盤)より
Time After Time・・・つぶやくような、しかし時に押し殺した声で泣いているような、そんなマイルスの表現力には圧倒された。後半、マイルスとギターやベースとの絡みは、ギター奏者が必死に音量を抑えたような弾き方で、マイルスと対峙し、とてもスリリングな一瞬だった。そしてぐぐ~っと音量を上げるシンセ・・・「ドラマティックな演出」というのはすごく判るのだが・・・シンセの音自体に・・・どうしても馴染めない自分でした。

マントさん~マリア・カラス/L'ELISIR D'AMORE(R・Donizetti) Prendi;per me sei libero(Act2) 

YOさん~Ben Webster /meets Oscar Peterson (Verve)
     [Verve Inc.(Celf sereis)]モノラルと [Stereophonic]~同タイトルの2種。曲は「bye bye blackbird」での聴き比べ。*後述

_002_1bassclef~パーカーのEP盤(clef:写真左)から just friend 
   ・・・最初33回転でかかり「あれ?このテナー誰?」という感じ(笑)、すぐさま45回転でかけ直すと・・・めでたくパーカーが出現しました(笑)

このパーカーのEP盤もわりあいと音がいい(ように思う) 状態のいい10インチ盤もぜひ聴いてみたいものだ・・・。
(パーカーつながりで)
SPUさん~ Bird And Diz/clef 10inch より Bloomdido(clef:10インチ)・・・オリジナル10インチはやはり凄い。モンクのピアノがタッチが強力だということが、改めてよく判った。

リキさん~ (?)演奏者失念/モーツアルトの最晩年の「?」・・・静かに淡々と流れる曲でした。これもそこはことなく哀しみが滲むような・・・。

巨匠Y氏~beatles (UKだったかのシングル盤から come together と something リンゴのドラムがよかった! *後述

YOさん~ギターもの2題~マイケル・ヘッジス/「?」(ミュージシャン名、違ったかも?)(曲名 失念)
・・・開放弦がキラキラと鳴り、弦の響きがキレイに録音されているレコードだった。個人的には「ソロ・ギター」があまりに大きい音像だと、ちょっと違和感を覚える。
カルロス・モンターヤ/「?」 ・・・フラメンコの名手とのこと。右手のアポヤンドが、凄い強いタッチだ。フラメンコは濃くて凄すぎる。

Dukeさん~Miles Davis:Cookin' から「my funny valentine 」~純正オリジナル 446W盤は・・・やはり凄かった。*後述

オーナーM氏~ジョニー・ホッジス MGN 1059 Johnny Hodges - In a Tender Mood (norgran)から tenderly
・・・ホッジスにしてはあっさり風味に聞えた。やはりエリントン絡みの曲では、特別に濃厚になるのだろうか。

D35さん~ダイナ・ショア: Somebody Loves Me(capitol) IT'S EASY TO REMEMBER
・・・しっとりとしていい唄い手だと思う。ダイナ・ショア、好きな声です。

マントさん~コルトレーン:Live At The Village Vanguardから spiritual (第1部Dukeさん「レコード語り」の時、時間の都合で10分ほどでカットしたので全曲通して)

bassclef~デューク・エリントン Duke Plays Elligton (capitol) (12インチ:ターコイズ)から (この時、Dukeさんが再登場! 「ちょっといいですか?」と言いつつ・・・2人の女性にまつわる話しから、エリントンとこの曲へのオマージュを語る(笑) _004_8

   

                                             

in a sentimental mood と passion flower~しんとした響き。ラテン風エキゾチックな曲調だが、バックでほんの小さく鳴るドラムスの「手叩き」(だと思う)が絶妙だった。
オーナーM氏~アート・ブレイキー:バードランドの夜 vol.3(bluenote)~10インチオリジナルから confirmation *後述

こんな流れだったのだが・・・盤の音質も含めて、特に印象に残った場面をもう少し紹介しようと思う。

Modern Music From SanFrancisco(fantasy)
ピカピカの赤盤だった。こういうcoloured vinyl はよく見ると・・・半透明なので向こう側がうっすらと向こう側が見えたりする。それはもう・・・唸るほどの垂涎盤だった(ちなみにヨダレは出てません:笑)
この盤には3つのセッションが入っている。ワガママおやじさんがセレクトした1曲は・・・アルトのJerry Dodgionのリーダーセッションから miss jackie's delight なぜこの曲か?もちろん・・・ピアノのソニー・クラークが入っているからなのだ。
1955年の録音なので、ソニー・クラークとしては、バディ・デフランコとのVerve録音と同時期ということになる。
miss jackie's delight は速めのテンポのブルースで、ドジオンのやや軽めの音色のアルトが快調なロングソロを取った後に、いよいよクラークのピアノソロが始まった。初期のクラークらしいやや「軽め」(後期に比べれば)だが、キレのいいタッチがたっぷりと聴けた。デフランコとのVerver諸作では、クラークのロングソロというのはほとんどなかったので、この1曲での16コーラス(とベースソロの前の+4小節。長いので数え違えたかも:笑)にも及ぶロングソロだが、アイデアのあるフレーズが次々に飛び出してきて、まだまだいくらでも弾き続けられそうだ(笑)初期のクラーク好きは、これはもう必聴だと思う。
ちなみに・・・この盤、僕の手持ちは・・・トホホのOJC盤(笑)それでも「赤盤仕様」になっているところが意地らしい(笑)

Ben Webster /meets Oscar Peterson (Verve)
[Verve Inc.(Celf sereis)]モノラルと [Stereophonic]~同タイトルの2種。曲は「bye bye blackbird」での聴き比べ。
これがおもしろかった。
モノラルカートリッジで聴いた「モノラル盤]~テナー、ピアノ、ドラム、ベースなど個々の楽器は、大きな音で、はっきりくっきり出てくるので、大迫力だ。
ただ逆に(好みによっては)ベースの音像が大きすぎだったり、ドラムのシンバルやピアノの音がちょっときつすぎたかもしれない。
ステレオカートリッジで聴いた[stereophonic盤]~テナーとベースがやや左側、ピアノが中央、ドラムがやや右側へと音場が拡がった。しかしそんなことよりベースの音像も締まり、ピアノの高音もさきほどのモノラルの「全てがフォルティシモ」的なサウンドから比べてうんと、聞きやすくなった。タッチの質感が出てきた。そしてテナーも適度なフクラミ具合の優しい音色になった。もちろんこれも好みによっては、モノラルの力強さがなくなって「ヤワ」になったと感じるかもしれないが、僕はやはりこの[stereophonic盤]はいい録音で、聞きやすい音質だと思う。
そして・・・(このBen Webster盤の場合)さきほどの[モノラル盤]があまりにも「強い」音だったので「このモノラルカートリッジの性質が音成分を拾いすぎ(強調しすぎる)かも?」という仮説の下に「ステレオカートリッジでモノラル盤をかけてみて」というリクエストが巨匠Y氏から飛び出した。
もともと「厚く」楽器の音が入っているであろうモノラル盤にモノラルカートリッジでは「強くなりすぎ」であれば・・・(モノカートに比べれば)「薄めの」ステレオカートリッジで「厚い音のモノラル盤」をかければ、あるいは・・・?という期待が、皆に広がる。オーナーのM氏が針を落とす。しばしの沈黙・・・微かなチリチリ音・・・。そして出てきた音は・・・・・。
「おおっ!」予想した通り、いやそれ以上の「効果」だった。まさに「ちょうどいいバランス」でテナー、ピアノ、ベース、ドラムスの音色が、「うれしそうに」スピーカーから飛び出てきたのだ!本当に「ちょうど!」のバランスになってしまったのだ。モノラルの厚みある楽器の音色、ステレオの場合の各楽器の分離のよさ・スッキリ感、その両方が「気持ちのいいモノラル」として目の前で鳴っていた。「してやったり」と納得のうなずきを見せる巨匠Y氏。
そして・・・この時のDukeさん、そしてYOさんのうれしそうな顔(笑) というのは・・・両氏は「モノラル盤を聴くからといって、必ずしもモノラルカートリッジに拘る必要はない」という主義であるからして。
カートリッジの「音の拾い方」というのは、こんな風に、その特性をうまく生かしてやれば、アンプやスピーカーを換える以上に、入り口のところで基本的な「バランス」を決定してしまうのだなあ・・・という実感を持った。もちろん、「盤」によって元々バランスのクセに差があるわけだから。だから・・・今回のこのケースは、あくまでこの Ben Webster meets Oscar Peterson というレコード<もともと各楽器の音をぎゅっと詰め込んであった音造りをしてあった「モノラル盤」>だったから、ステレオカートリッジによる中和がうまい具合に作用した、ということかもしれない。

the beatles /come together  と something (多分、UKのシングル盤)
全くの私見では(この<夢レコは全てが私見ですが:笑)・・・地下JBLの音は・・・ド単純に言って「ロック」に最も合うように思う。特にベースとドラムがテーマを演じるこの come together で、そう感じたのだ。
エレベ(電気ベース)の音が強力だったのだが、ロックの場合だと、かなり大きめの音量・音像でも違和感がない(ように思う)
それから、come together のテーマの部分をベースが弾いた後の部分・・・リンゴがちょっと「緩めのチューニング」(だと思う)で、スネアやらタムタムを3連で叩く場面の見事な「音圧感」・・・これは凄かった。その「音圧」が「ン・ド・ド/ド・ド・ド/ド・ド・ド/ド・ド・ド」てな感じで、右チャンネルから何度も飛び出てくる。この「音圧感」は、ロック苦手な僕にも、ある種の快感ではあった。(自宅に帰って聴いたベストCDでの come together のショボイこと(笑))

Miles Davis/Cookin'  から「my  funny valentine 」
prestige, NY.W.446のオリジナル盤だ。ジャケットのコーティングもぐう~んと分厚い。これは凄かった。チェンバースのベースの音がやけにリアルなのだ。もともと prestige のベースの録音は、columbiaと比べると、ベースの音が「ペンペン」なのだ。低音の響きの部分がprestigeでは極端に薄い。しかしその分、左手が弦をこする音とか右手で強く弦を引っ張ったような、そんな気配をよりリアルに感じ取れる録音なのだ(と思う) だから、ベースの音程を聴き取るのには、prestigeが最適なのだ。そうして、チェンバースのあまりよくないピッチ(音程)も、やけにリアルに聴き取れてしまうのである(笑)
この446Wアドレスの純正オリジナル盤においては・・・その「リアルなベース音」が、より一層、鮮明に聴かれたのである。もちろんcontemporaryやcolumbiaのベースの音が好きな方(一般的にはこの方が多いかな?)には、このベース音は「硬すぎる」かもしれない。でも・・・これがprestigeの録るウッドベースの音なのだから、仕方がないだろう(笑) 

最後に「1枚、お聴かせします」とオーナーM氏。残っていたのは・・・D35さん、マントさんと私、bassclefの3人だけ。そして・・・あの盤が登場したのだ! 
オーナーM氏~アート・ブレイキー:バードランドの夜 vol.3(bluenote)~10インチオリジナルから「Confirmation」
青い色調がやけにキレイな10インチ盤(vol.3)だ。このクリフォード・ブラウンが凄かった。夕方のM氏の挨拶代わりの「モーニン」(bluenote)でのリー・モーガンも「いい響き」をしていたが、この10インチ盤のクリフォードブラウンは・・・これはもう・・・とにかく素晴らしかった。余分なエコーなど全くない「素」の録音という感じで、ブラウンの「乾いたような、しかし音色のエッジを若干ふわッとさせたような」独特な響きが、むちゃくちゃに生々しく感じられたのだ。続くルー・ドナルドソンもアルトも、より分厚い音色で図太い感じだ。もう少し後期のドナルドソンには、ある種の軽さ・甘さが出てくるように思うが、この1954年のドナルドソンのアルトの音色にはもう少し「重さ」があった・・・ということを実感できた。そしてブレイキーの右手のライドシンル・・・このシンバルの高音は、モノラルの古い録音でさすがにちょっと「詰まった」ような音ではあったが、その臨場感から、ブレイキーが終始かなりのヴォルームで叩いていたのであろう・・・ことがよく判った。実際、ライブハウスでのドラムスのシンバル音というのは、相当にでかい(笑)ハウスの形状(そしてもちろん奏者の叩き方具合)によっては、響きすぎてやかましいこともよくあるのだ。この10インチオリジナル盤においても、ブレイキーのシンバルが相当に大きく響いてはいたが・・・それはその場の「音楽を必死に生かそうとしている響き」に聞えたので、僕には全く気にならなかった。
このライブ盤は、本当に凄いと思う。クリフォード・ブラウンの漲る(ミナぎる)ような生気感が、バンド全てを「ノセて」しまったのだろう。「1954年2月のバードランドの夜」は、大げさではなく奇跡の夜だったのだ。
そして「その夜の空気感」を再現した「2006年4月の白馬の夜」も・・・これまた素晴らしかった・・・。

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2005年11月17日 (木)

<思いレコ 第7回 トニー・ベネットとビル・エヴァンスとのデュオアルバム>

少し前に<思いレコ 第6回 ビル・エヴァンス>のところで~歌詞なんてただの言葉じゃないか~と書いた。「インスト」においては、楽器で表現する「音」というものが全てであり、だから、あるスタンダード曲のテーマを吹く(弾く)時、その曲の歌詞を思い浮かべながら・・・というようなことは不自然なことだ、ということを言いたかった。唄には歌詞が必要だが・・・インストには歌詞は必要ない。いかに、楽器を唄わせるか・・・それだけだ。
こんな僕だが、たまには、ヴォーカルのレコードも聴く。あの記事の最後の方にも書いたが、僕が「ヴォーカル」というものに目覚めたのは、エヴァンスとトニー・ベネットのデュオアルバムからだった。聴いていて「ああ・・・ヴォーカルというのもいいもんだなあ」と素直に思えたのだ。

エヴァンスとベネットのデュエットアルバムは、2枚ある。bennett__evans_001

The Tony Bennett Bill Evans Album(fantasy) ビクター 1975年


伴奏はエヴァンスのピアノだけ。全曲が、ベネットとエヴァンスのデュオだ。
この盤は・・・82年10月に入手している。当時、エヴァンスの音は何でも聴いておきたかったので、この「ヴォーカル」のファンタジー盤も入手したのだろう。たぶん、この時まで「ヴォーカル」のレコードを、ほとんど買ったことがなかった。ジャズをどんどん好きになってきていて、まだまだ聴きたい、いや、聴かねばならぬインスト盤が山ほどあったので、ヴォーカルものにまで手を拡げることは、とても無理だったのだ。

ここでひとつ告白すると・・・僕はエヴァンスを大好きではあるが・・・ソロピアノでのエヴァンスを、実はそれほど好きではない。ソロピアノの世界では、モンクやダラー・ブランド、ランディ・ウエストンの方が好みなのだ。モンクは、ソロピアノの場合は、最初から「タイム」を自由にしているかのようで、全編ルバート、というか自由自在にタイムを伸縮させているようだ。むちゃくちゃにタメて弾いたり・・・わりとキッチリとインタイムで弾いてみたり・・・だけども聴いていて、何の不自然さも感じないだ。 むしろ、コンボでのソロパートでの方が、モンク独特の「タイムの歪ませ方」が、自ずと限定されてしまう場面もあるようだ。
エヴァンスのソロピアノは・・・ルバート風なところとイン・タイムなところが・・・何かこう「構成」として成り立っているようで、聴いていて、ちょっとだけ窮屈なイメージがあるのだ。モンクのソロピアノからは、そんな窮屈な感じを受けない。エヴァンスは・・・だから、ソロピアノの場合でも、常に「タイム」を強く意識しているタイプのピアニストなのだと思う。
しかし・・・そのエヴァンスの「タイム意識」が、こういうヴォーカルアルバム(ピアノだけの伴奏)では、すごく「生きた」のだと思う。このデュオでのエヴァンスの伴奏の素晴らしいこと! どの曲も、エヴァンスの短いイントロ~テーマにベネットの唄~エヴァンスのソロピアノ~ベネットの唄~というパターンなのだが、後半、ベネットが「どこ」から入るか~くらいは、もちろん決めてあったとは思う。そして、エヴァンスという人は、そういう「適度な枠」がある方が、自分ひとりだけのソロ演奏よりも~展開がやや冗長になり「構成的」になりすぎる感じがある~かえって素晴らしく職人的な技を見せてくれるようだ。ルバート的に弾く場面とキッチリとタイム・キープをする場面。その辺りの調節は、ソロピアノゆえに柔軟にやりくりできるのだ。エヴァンス独特のタイム感(つっこむような)と独特なフレーズで・・・もう完全に自分のの世界を創ってしまう、エヴァンスのソロ。普通の唄伴での「つなぎ」という感じのソロではない。ここまで自己主張のあるジャズのアドリブを「唄伴」でやってしまうエヴァンスという人・・・素晴らしい!   
そうしてさらに唸るのは・・・これほど突出したソロピアノの地平から、今度は「唄伴」のピアノ弾きとして、そこから見事に、自然に、無理なく、「唄がスタートした時のテンポ」に戻してくることだ。ベネットの出だしのちょっと前には、見事にテンポを安定させる。運転の巧い人が、シフトダウンとアクセルワークを巧みに操って、とてもスムースに減速したような感じだ。だから・・・「ああ、ここで唄が入ってくるぞ」と思わせてくれるのだ。そして、やはりそこから、ベネットの唄が入ってくる。トニー・ベネットの声は、ややくすんだようなしわがれた声だ。ベネットというと、声を張り上げるようなイメージがあると思うが、このアルバムでは、そのような場面はほとんどない。ゆっくりとしたバラード風が多いのだが、この声で、歌詞の一言一言を、ていねいにかみしめるように、唄いこんでいく。唄の最後に、声が消え入る瞬間まで気持ちがこもっているような唄い方だ。
<young and foolish>
<some other time>
<we’ll be together again>

どの曲にも・・・深い味わいがある。何度も聴いてきたこのデュオアルバムを、このところ、再び2度3度と、聴いている。その度に
感じることは・・・2人の作り出す世界~その雰囲気、色彩みたいなものが、見事に調和していることだ。そしてその調和は・・・
2人がただ無難に合わせようとしたのではでなく、ひとつの曲の中で、それぞれの個性をぶつけ合いながら、それでいてお互いが見事な
バランス感覚を発揮し、そうしてその曲を仕上げていく~そんな中から生まれた調和なのだと思う。そんな厳しくも美しい表情が、このアルバムにはある。2人の「唄」を聴くことで、なぜかしら・・・人生の、厳しさ、寂しさ、そして温かさ、を感じさせてくれる。
本当に素晴らしいヴォーカルのレコードだと思う。

この「トニーベネット/ビル・エヴァンス・アルバム」を聴いて、ベネットを好きになった僕は、いくつかベネットを入手した。

bennett__evans_002 Tony Bennett & Bill Evans/Together again(improv)テイチク 1976年

デュエット続編の improv盤もすごくいい。
fantasy盤に比べると、ちょっと地味な曲が多いが、逆に、それがいいとも言える。
バーンステイン作の<lucky to be me>やミシェル・ルグラン作の<you must believe in spring>は、素晴らしい。

それから、けっこう愛聴している2枚組LPがある。
Columbiaレーベルからの「ジャズの曲」を集めた2LPの「ジャズ!」だ。たしか80年頃に発売された盤だ。この2LPには、スタン・ゲッツやエルヴィンとの未発表セッション3曲ほどが収録されていた。
この中の1曲、<Danny Boy>は、なかなか素晴らしい。ゲッツとエルヴィンをバックに唄うベネット・・・かっこいいです。

ベネットの古い時代のもの。これは、どれも悪くない。そりゃあそうだ、トニー・ベネットは、もともとジャズマインドの強い唄い手で、
すでに1955年くらいから、ジャズっぽい内容の盤をあまた出しているのだから。初期の2~3枚だけ挙げておく。

Cloud 7(1955 columbia) チャック・ウエイン(g)など。(未入手。konken氏が所有。ときどき聴かせていただいている)
the beat of my heart(1957 columbia) ブレイキーやチコ・ハミルトンなど。(近年のCBS再発盤を入手)
strike up the band(1959 roulette ) ベイシーとの共演。(CDです・・・)

bennett__evans_003ああ、そうだ。初期のもので、もう1枚、とてもいい盤がある。
Tony Bennett Sings a String of Harold Arlen(columbia 1960年)だ。僕の手持ち盤は、残念ながらCDだ。(CBSソニー)

ハロルド・アレンは、昔から好きな作曲家だ。地味だが、いい曲がいっぱいある。作曲家と唄い手の相性、というものもあるようだ。そして、トニー・ベネットとハロルド・アレンの相性。これが・・・抜群にいいのだ。
ベネットの「ちょっぴり幸せな気持ち」にさせてくれるような唄い方・・・これがハロルド・アレンのメロディとよく合うのだ。
<I’ve got the world on a strings>
<over the rainbow>
<when the sun comes out>
が、特に好きだ。
ああ、それにしても・・・世の中には、「いい曲」がいっぱいある。ジャズは・・・まだまだ止められない。

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2005年9月15日 (木)

<思いレコ 第5回> Cal Tjader/Tjader Plays Tjazz(fantasy) そして、ソニークラークのこと。

ソニー・クラーク~いさぎよくて、キレのいいタッチ。

ソニー・クラークのピアノには、「思いつめたような何か」を感じるのだ。そうして、それこそが、ソニー・クラークの魅力なのだと思う。もちろん僕にとって。
最初にソニークラークを聞いたのは、というよりパーソネルにソニー・クラークという名前を発見したのは、ロリンズの「サウンド・オブ・ソニー/riverside」だった。(僕の手持ち盤は、米マイルストーン発売のtwofer という2LPシリーズで、freedom suite と sound of Sonny のカップリング) その時は、「ああ、ソニー・クラーク・・・よく聞く名前だなあ」と思ったのだが、そのレコードからは、彼のピアノに特に強い印象は受けなかった。ロリンズの方ばかり聴いていたせいかもしれない。なにしろその頃の僕は、ピアノといえばモンクとエヴァンス、テナーでロリンズ・・・ほとんどこれだけだったのだ(笑) この極端に個性の異なるジャズピアニストを両方好き、というのも、おかしいといえばおかしいかもしれないが、「自分だけのスタイルを持っている」という点では、圧倒的に共通している、とも言える。ロリンズ好きだがゲッツも好きだ。エルヴィンを大好きだが、トニーだって好きだ。ドルフィーを聴いた後に、ハル・マクージックを聴いたっていいじゃないか。
スタイルの異なるミュージシャン、あるいは「ジャズ」「ロック」「クラシック」など異なるジャンルを同時に好きになること。このへんのことは・・・好きな食べ物にたとえると~これはだいぶ前に、何かの記事で読んだような記憶があるのだが~けっこう納得できるかもしれない。例えば~ロックを「肉料理」、クラシックを「野菜料理」、ジャズを「めん類」としよう。「めん類」が好きなあなたは、主に「うどん」を好むが、「ソバ」も好きかもしれない。たまには「きし麺」だって食べるだろう。「フォー」や「ビーフン」だってめん類に入れてもいいのだ。こんな具合に、「めん料理の種類」を「ジャズのスタイル」に当てはめれば、次は、「個々のミュージシャン」だろう。「てんぷらうどん」「鳥南蛮」「玉子とじ」・・・いくらでもある。いや、俺は絶対に「素うどんだ!」とか(笑) 

この15年ほど前から、いわゆるウエストコーストものも、好んで聴くようになっている。長い間、黒人ハードバップ系だけを聴いてきて、ウエストものに目覚めるまでにちょっと時間がかかったのだが、チェット・ベイカーやバド・シャンクの「個性」に出会い、それを好きになったことがキッカケだ。ジャズは「個性」を聴く音楽だと思う。そして、その「個性」があなたに合うか合わないかは・・・ジャズ雑誌の評からではなくて、自分自身が聴いて決めればいいことだ。要は・・・「いろんな人間を知ること」だと思うのだ。 

さて、ソニー・クラーク。ブルーノート時代のクラーク・・・もちろん悪くない。特に57年~58年の録音は、どれもいい。僕が特に好きなのは、モブレイとのレコードである。クラークのイントロで始まるバラードは、甘くせつない。それにしてもハンク・モブレイとの相性は抜群によく・・・この頃の、モブレイの柔らかい色気のある音色と、クラークのちょっと重く沈んだ音色との絡み合いは、絶品だ。個人的な好みでは・・・モブレイとの共演盤は、だいぶ後にキングから出た「マイ・コンセプション」も含めて、どれもみな好きだ。
ブルーノート録音でも60年、61年頃になると(デクスター・ゴードンやマクりーン、それにグラント・グリーンとの共演盤など)なぜか・・・クラーク本来の「タッチの味わい~強弱やアクセントの付け方のずらし」が、あまり感じられなくなる。フレーズにもヒラメキがなくなったようにも思う。これは、単に管奏者との相性だけの問題ではないように思う。

マクリーンとアート・ファーマーの2管入りクインテットで吹き込まれた、おそるべき傑作~「クール・ストラッティン」「クール・ストラッティン」以降に、この頃のよくクラークのピアノプレイを説明するのに「後ろ髪をひかれるような」という表現がある。たしかに「クール・ストラッティン」でのクラークは・・・テンポへの重いノリで、しかも重いタッチで粘るフレーズを弾いている。私見では・・・「クール・ストラッティン」こそが特異なアルバムなのだ。あの「重いノリ」は、クラークだけが創りだしたのではない。マクリーンが粘るフレーズ廻し全開でタメまくり・・・アート・ファーマーもじっくり構えて・・・チェンバースは、ますます重く・・・そんなメンバー全員が、誰かれ言うことなく「ためるノリ」の精神共同体になってしまったのだ(笑) 強いて言えば・・・やはりマクリーンのあのアルト~ソロの先発のマクリーンが、絶好調だったようで、あの重いサウンドで、タメにタメたノリで、充分に唄い上げてしまった~そのために、「そのノリ」が全員にノリ写ったのではないか?と推測している。もちろん、クラークのタッチは、この後も充分に「重く」「暗い」が、このアルバムでは、特別に重いような気がする。この辺りを捉えて「ファンキー路線」とか言われたこともあったようだが・・・「クール・ストラッティン」は、キャノンボールらの「ファンキー」とは全く違う。もっとシリアスでコクのある、素晴らしいジャズだと思う。

ただ・・・クラークの「マニア」は、あの「後ノリのクラーク」だけを好きになったのではないはずだ。ソニー・クラークという人間を本当に好きになってしまった人は~もうちょっと後のタイム盤「ソニー・クラーク・トリオ」や「アート・オブ・ザ・トリオ」「マイ・コンセプション」なで聴かれる~「思いつめたようなロマンティックな気持ち」みたいなものをクラークのピアノから感じ取ってしまったのだ、と思う。だから・・・クラークを好きになったはずなのだ。
そんなクラークにもウエストコースト時代(1952年~1955年くらい)があるのだ。Verveのバディ・デフランコとの録音がよく知られているようだ。クラークのマニアの方は、相当に多いようで、その証拠に、ポリドールが何度もクラーク入りデフランコを再発しているし、つい2年ほど前にも「紙ジャケCD」で、デフランコが何枚も出ている。Verveでのデフランコとの共演以外にも、いくつかの録音がある。僕が好きなのは・・・
Cal Tjader/Tjader Plays Tjazz(Fantasy 3278)050907_002

                                                                                                                                                                    

       

《ファンタジーというレーベルの「赤盤」の魅力というものには・・・やはり抗しがたいものがある。このFantasy赤盤は、90年ころ新宿DUにて入手。当時としては、かなり無理したように記憶している:笑》

10曲中6曲が、クラークとブリュー・ムーア入りのクインテットだ。Jeepers Creepers、A Minor Goof、それに Brew’s Bluesなどでは、とても「切れのいい」クラークのソロが聞かれる。バラードの Imagination では、わずか4小節だが、短くも美しいクラークのイントロが聞かれる。クラークのバラードのイントロってのは・・・これがまたいいのです。ぴしっとした中に、かすかに「ロマンティックな響き」が感じられる(ように思うのだ)

これらの録音には・・・さきほど説明したような「後ろ髪を~」なる特徴は、それほど強くは表れてはいないのだ。案外にあっさりしたノリだ。ただし・・・タッチは相当に強い。はっきりして迷わないタッチだ。そうして、クラークは、長いフレーズでは、その強めタッチの強弱を意識して弾いているようだ。この辺りを、さらに推し進めていくと・・・後の「後ろ髪~の後のり」になっていきそうな感じもある。当たり前のことではある。本人なのだから(笑) 
いずれにしても・・・これらウエストコース時代の録音は、どれもが「キラリと光る」プレイなのだ。どう光っているのか?ここで・・・僕は・・・ぴたっと筆が止まる(笑) うまく表現できないのだ。たしかにソニー・クラークは、モンクやエヴァンスほどの「スタイリスト」ではないだろう。「クール・ストラッティン」以降のクラークなら・・・あるいは、あの「超・後ノリのピアノ」を「クラークの個性」と言えるのかもしれない。しかし、ウエストコースト時代のプレイには、「ああ、あれね」と、誰にでもすぐ判るような特長がないのだ。でも、しかし・・・このウエストコースト時代のソニークラークのワンフレーズを聴くと・・・スカッとするのだ。なんとか説明してみると・・・こんな感じか。「タッチに覇気がある」「フレーズに迷いがない」「長いフレーズも一気に弾き切る」~そうして全体から、すごく「さわやか」な感じを受けるのだ。「品の良さ」と言ってもいい。それと、この時期の気迫あふれるプレイの中にも、さきほど書いたような「思いつめたようなロマンティックな気持ち」みたいなものが、やはり感じられるのだ。

そして、「ソニー・クラーク・メモリアル・アルバム」と「ジミー・レイニー・&ソニー・クラーク/トゥゲザー」の2枚(共にXanadu/クラウン)も、とてもいい。 050907_001
《僕の手持ちは、残念ながらCDです。この2枚は、CDがまだ3200円もした時に、クラーク聴きたさに、CD嫌いな僕としては、かなり無理して購入した(笑) 2枚とも、Xanaduのあの金色のジャケのシリーズでLPも出ていたはずだ。ちょっと丹念に探せば、安価で見つかると思う》

1954年1月のオスロ録音とされている。同じ時の録音で、クラーク入り1曲が、「ビリー・ホリデイ/ビリーズ・ブルース」(United Aritsits)から出ている。放送録音だかプライベート録音らしく、音質はかなり悪いのだが、これらの録音で聴かれる、ソニークラーク(22才)・・・これはもう・・・素晴らしい! もうピアノが弾きたくて弾きたくて~スタイルこそ、バド・パウエル風ではあるが~という気持ちがいっぱで、次々にフレーズが湧き出てきてしまって、それを押さえるのが大変・・・というくらいの強いタッチと、よどみのないアドリブなのだ。全て素晴らしいが、特に印象深いのは・・・「メモリアル」の方に入っている<Over The Rainbow>だ。ソロピアノの演奏である。ソニー・クラークという人に少しでも興味をお持ちの方には・・・なんとしても、この「メモリアル」を聴いてみてほしい。ミュージシャンが「自分の唄」を唄う、というのは、こういうことを言うのか・・・と感じていただけるかと思う。
あるいは・・・まず正規盤で音のいいブルーノートの「ソニー・クラーク・トリオ」の<I’ll Remember April>のピアノソロからの方がいいかもしれない。
というのは僕自身が、クラークの「もうひとつの個性」に気づいたのが~ウエストコースト時代のクラークまで、追いかけるキッカケとなった盤~Bluenoteの「ソニークラークトリオ」のB面に入っていた<I’ll Remember April>からなのだ。バップ~ハードバップ期の解釈としては、たいてい、この曲は急速長で演奏される。ところが、クラークは、この曲を「スロウなバラード」のピアノソロで演ったのだ。この演奏には、ちょっと「はっ!」とした。「あれ?ソニー・クラークって人は、もっと普通のハードバッパーじゃあなかったかな?」という気持ちだ。クラークは、この曲を~よくあるように途中でテンポアップすることもなく~淡々と丁寧に、そして切実に、 スロウテンポのまま唄い上げている。これを聴いて・・・端正ないい演奏だ、と感じた。そうして、僕はソニークラーク、という人を、それまでとは違う視線で捉えるようになったのだ。
そう・・・ソニークラークは、「真摯なピアノ弾き」なのだ。そして「スタンダードソング」を、おそらく、本当に自分が好きなスタンダードを、しっかりと、自分のものにして演奏するタイプなのだ。そうして得た「自分の唄」を丁寧に「唄う」ピアノだと思う。そんな視線で捉えなおすと・・・クラークの弾くスタンダードソングが、ぐうんと心に入り込んでくる。「クール・ストラッティン」のB面2曲目~<Deep Night>このスタンダードがいい。出足が<Blue Sky>とそっくりだ(笑) ちょっと渋さのある暗い曲調だが、じわじわと知らぬ間に、覚えてしまうような、シンプルなメロディが素晴らしい。これはピアノトリオで演奏されるのだが、クラークが多少の「アレンジ」を施したようだ。そのアレンジが、テーマの途中で何度も出てくる。そしてこれこそが、まさに「キラリと光る」フレ ーズなのだ。A面もいいが、B面も本当にいい「クール・ストラッティン」である。ちなみに・・・この<Deep Night>も・・・シナトラのヒット曲なのだ。クラークもまた、シナトラ信者だったのだろうか。それにしても、ジャズは、本当に素晴らしい。そして奥深い・・・。

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2005年7月 7日 (木)

<旅レコ 第10回>ソウル編(B面) エリオット・ローレンス/ビッグ・バンド・サウンド(fantasy)

1999年7月  ソウル東大門トケビ市場~ようやく見つけたオリジナル盤!

DSCN0776 ~さて、親切なオジさん達のおかげで・・・中古レコードがありそうな大体のエリアは判った。旺山路(ワンサンノ)を東へ進み、大きな交差点を右折して、南に進む。5分ほどで高架道路まで来た。高架道路の下にも店がある。神戸みたいだな・・・おっ、ビデオやらラジカセの店が何軒かあるぞ。何やら「近い」感じがする(笑) その高架下の店を順にチェックしてみたい気もしたが、ここはオジサンに言われたとおり、もう少し南下しよう。高架を越えてから、「サムウオン・ホテル」の所を左(東)に曲がれ、との指示だった。ちょっと名古屋の100m道路みたいな感じの広い道路を渡る。おっ、ホテルがある。よし、ここを左折だ。すぐ左側に高架道路を見ながら、しばらく進むと・・・なにやら歩道にお店が!屋台というか露天というか、簡単な台にビデオテープとかカセットテープを並べたようなお店が、だんだん増えてくる。いいぞいいぞ・・・。しかし、LP盤は見当たらない。歩道の右側には、普通のお店もあり、CD屋さんらしき店もあった。入ってみると、やはりほとんどCDばかりだったが、タナの下側にLP盤が、わりあい並んでいた。エサ箱のように「面向け」ではなく、下のタナに「背差し」なので、見にくい。期待をこめて、背のタイトルを見ては、ちょっと引き抜いては、でチェックしたが・・・これが、見事に全てフュージョン(笑) 値段はたいてい、7000ウオン~8000ウオンくらいだった。(およそ700円~800円) もう一店、同様なお店があったが、これもフュージョン大会だ・・・。いくらLP盤でも、フュージョンじゃあ100円でも要らない。はああ・・・力が抜ける僕である。それでも、その屋台通りをずーっと進んだり、戻ったりしながら、チェックしたが、LP盤在庫のお店は見当たらない。あとは、路地を見るしかないぞ・・・と、そのカドにちょっと大きな屋台がある。古雑誌やらカセットやらがある。ここで、しばし、古雑誌など眺めながら路地の様子を見る。右側にいろんな店が続いており、けっこう市場が広がっている様子だ。それにしても、この辺りを歩いていると大きなビルがほとんどないし、古い平屋の建物や屋台やらが並んでいるので、なんとなく(写真でしか知らないが)戦後の闇市のような風景に見えてくる。(この辺りだろうなあ・・・と思える記事を見つけたので付けておきます。興味ある方はどうぞ。「ソウル・ナビ」というサイトです)                  思い切って、この路地を入っていく。少し進むと、すぐに左に曲がる三叉路になっていた。とりあえず左折すると・・・・・・すぐ右側に間口の狭い店がある。その間口には、ドアなどもなくパアパアに開いているので、店の中がボンヤリと見える。外がムチャクチャ明るくて中が暗いので、そのギャップで、はっきりとは見えない。それでも、薄暗い中から仄かに・・・何かが見えてくるのだ・・・30センチくらいに仕切ってあるタナが並んでいるようだ・・・そうして、そのタナには、何かがぎっしりと詰まっているように見える。ん?・・・あれは・・・あの景色は・・・おおっ、あれは・・・レコードだっ!
ついに見つけのだ・・・すぐそこに、レコードがあるのだ! そのお店の左側の壁面に取り付けられたレコードのタナ・・・全てLP盤だ。全て「背差し」。  すごい在庫量だ! やったあっ!間違いなく中古レコード屋さんだ。それもかなり在庫の多いレコード屋さんだ! 

急に元気になった僕は、もう、ぐぐっ~と入っていきました。中は薄暗い。全体に、なんというか・・・汚い店だ(笑) 間口は狭いが、奥には広い。外から見えたタナは、そのままず~っと奥へ10mは続いている。床は、土間の部分があったり、古いコンクリートがむき出しだったり、とにかく、古い建物だ。入り口も開けっ放しで、もちろんエアコンなどない。設備投資が少ない分、安いかもしれない(笑)
客は僕だけ。太ったオバちゃんが、土間の中央あたりでイスに座って、ウチワをパタパタ。もう一人、30才くらいの男がいる。
使える数少ないハングル~「ある」はイッソヨ、「ない」はオプソヨ、これだけは知っている(笑)~
男の方に「ジャズ イッソヨ?」 すると男は「ジェズ?イッソヨ・・・」と応えて、店の一番奥の方~だんだん細くなって2m四方くらいの小部屋のような部分~タナが右に曲がる~そのカドの辺りまで案内してくれた。こんなに在庫があるのに、タナには何の分類プレートもなかった。とても自分では、探し出せないようなポイントだ。最初にジャズの場所を聞いて正解だった・・・。
「オルマエヨ(いくら)?」 と聞くとその男、オバちゃんに何事か聞いたりしている。そのオバちゃんの威張った態度で、母と息子だと判る。        オバちゃんは・・・「マン・ウオヌ」とのたまう。マンは「万」だ。1万とかの場合、1(イル)は省略するんだったよな・・・ああそうだ。じゃあ、1万ウオン~約1000円らしい。さっきのフュージョンが7000ウオンだったから、若干は高い。やはり、これだけの在庫量からみても、ここは本格的中古LP盤専門店のようだ。あとは、どんなのがあるか・・・だ。さあ、いくぞっ!

男が「ここから」と示してくれた、他ジャンルとの境界ラインから、順に右側の方へチェックしていく。奥行きの深い店で、照明も暗いので、洞穴にでも探検にきているような気分だ。それにしても・・・暑い。風が全く入らない。5分ほど見てると、もう汗がどっ~と吹き出てくる。水(歩き回るつもりでボトルを持ち歩いていた)を飲み、腰を伸ばしたりしながら、タオルを首に巻く。そんな様子に同情したのかオバちゃん、何やら近くまできてガチャガチャ・・・おっ涼しい! 扇風機を僕の近くまで持ってきてくれたのだ。おお「カムサハムニダ」・・・顔つきはムッとしているが、案外に優しいじゃあないか。

~ジャズのコーナーといっても、やはりフュージョン風も多かったり、ムードミュージックみたいなのや、サントラみたいなのも混ざっている。そう甘くはないよなあ・・・と思い始めたが、まもなく・・・Dave Brubeck を2枚発見。   At Storyville(columbia)とDave Brubeck Trio(fantasy)だ。こりゃあ、まだあるな・・・とチェックにもますます気合が入る。そのまま、1時間ほどはチェックしていただろうか・・・途中、20歳くらいの男の客がきて、店の30男と親しげに話している。「・・・エルトン・ジョン・・・」だけ聞き取れた(笑) 僕が今チェックしているジャズの一角は・・・そうだな、全体のせいぜい10%もないだろう。どうやらここは、ロック中心の「マニアな奴ら」御用達の店のようだ。それで、オバちゃんは、何が何だか判らないまま、まあ息子がやってるし、そこそこ客もきてるし~という感じだな。それにしても、店の真ん中にドカッと座ってたら、息子もやりにくいだろうな(笑)

~さて懸命のチェックの結果・・・期待通りに、ジャズの米オリジナル盤が何枚か見つかった!ただし・・・ジャケの程度は・・・全体にかなりひどい。どこかのお店(飲み屋か?)で使ったレコードなのか、ジャケも煤けたようなものも多い。なかには、幅1cmもの黒いビニールテープで、ご丁寧にも3辺を貼りこんでしまったものまである。ジャケは完全にVG-だな。でもまあ・・・とにもかくにも、米オリジナル盤だ。1万ウオンならいいではないか。そう思って10数枚を選びとった。あまりにもジャケがヒドイもの(一部が欠け落ちたようなものなど)何枚かはあきらめた。それでも、もう少し絞る必要がある。

~レコードをちょっとまとめて買う時の、僕の絞り込み方は・・・最初、とりあえず、ちょっとでも「引っかかる盤」は、抜いておく。で、そうすると知らぬ間に30枚くらいになっちゃうので、途中で一度、「弱いもの」から落としていく。それで、全チェックが終わった段階で、自分の予算より多すぎる場合は(ほとんど、そのケースですが:笑)、ここから涙の選考会が始まる(笑)何を落とすか?これが・・・なかなか辛いものがある。すでに一度は「選ばれしもの」なのだ。全部、当選させてやりたい!しかし・・・それでは予算が(笑)。トランクにも入らなくなる。そんな時、僕は「消去法」でいく。つまり、「何を落とすか」ではなく、「絶対に落とせない、というのはどれだ?」と考えるのだ。
まあ、どっちでも一緒のようなもんだが、微妙に違う(笑) 絶対に落とせない、という方が、よりはっきりとその時の自分の意思を確認できる・・・ような気がする。こんな具合に、無理やりにでも序列をつけていかないと、落とすものを決められない、というのが正直なところだ(笑)

さて・・・見つけた時、大げさじゃなく後光がさして見えた盤がある。・・・そして「消去法」でも、真っ先に「残す」に決定したのが・・・これだ!

DSCN0776≪Elliott Lawrence/Big Band Sound (fantasy

3290)≫ 

ファンタジーによくある「カラー盤」で、この盤は「赤」だった。
ファンタジーの赤盤、というのにもココロ惹かれるものがあるが、海をバックにしたローレンスのポーズがおしゃれなジャケットのデザインと くすんだような色調が、なかなかに素晴らしい。幸い、この盤にはジャケにテープ貼りなどもなく、見た目の盤質も悪くない。イナースリーブも「広告付き」のオリジナルで、おまけに、fantasyのカタログ小冊子まで入っていたのだ。この1枚は・・・うれしかった。DSCN0777エリオット・ローレンスは、マリガンの絡みで何枚かは聴いていた。けっこういいソロイストが入っていることも多いので、侮れないのだ。この盤には、Al Cohn、Gene Quil などがクレジットされている。A面4曲目~Lover Take Allでのアル・コーン、B面2曲目~Alto Lament でのジーン・クイル、短いソロが光っている。時々出てくる、トロンボーンのソロは・・・Eddie Bertのようだ。

~その他には・・・Brubeckの2枚はもちろん当確。他にはマリガンの Concert Jazz Band ’63(verve)。それから、オムニバスのThe Composition Of Horace Silver(riverside RLP-3509))など。マリガンのverve盤は、62年録音で、ライブではない。  リバーサイドのモノ・青ラベルは初めてだったので、うれしい発見だった。そうして、9枚が残ったのだ。  これら9枚を、お店の30男に差し出しながら、「オルマエヨ(いくら?)」・・・と、またもオバちゃんと何やらボソボソ・・・。値段をどうするか協議しているようだ。オバちゃんの方が「パル・マン!」とぶっきらぼうに答える。ウー・ユク・チル・パルが5、6、7、8だ・・・80000ウォンか。8万というとビックリしてしまうが、1万ウォンが約1000円だから、8000円ほどだ。ジャケ・盤質の程度(VG-からせいぜいVG)を差し引いても、充分に安いだろう。

さあ、これにて探索終了! この洞窟から抜け出そう(笑) 屈めた姿勢でマヒしたようになった腰を伸ばしつつ、店を出る。路地を曲がる時、もう一度、店の姿を見る。こんなに遠くの見知らぬ市場までやってきて、よく、こんな中古レコードの店を見つけたなあ・・・と大げさに感慨にふける僕・・・。 遠くっていったって、東大門駅から15分くらいなんだが、あちこち歩き回った果てにたどり着いたものだから、ものすごい辺境にいるような気分になっていたのだ(笑) あっ、もう3時過ぎだ。考えてみたら、昼めしもまだだった。もう他を見て回る時間も気力もない。とにかく何か食わねば・・・。
近くの屋台でお好み焼きみたいなのを食べて、水もたくさん飲んで、そうしてようやく一息つく。それから、東大門駅の方に、とぼとぼと歩き始める。体は疲れていたが、心地よい気分で。・・・また来るぞ、ここに・・・。
僕のソウル/レコード探索は、こんな具合に終了していくのだった。

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