Epic

2008年7月10日 (木)

<ジャズ雑感 第24回>初期のアーマド・ジャマル

<マイルスがジャマルを聴きまくった・・・という話しは本当だった!>

アーマド・ジャマルを猛烈に好きだという人は・・・あまりいないような気がする(笑)そういう僕も彼のピアノを聴き始めたのは・・・せいぜいこの10年くらいのことである。その頃から「ジャズのオリジナル盤」に惹かれ始めたのだが、廃盤店を見回すようになってみると・・・prestigeやbluenoteなどの名盤のオリジナル盤は、どれもこれも「うんと高い」ということも判ってきた。「高い」のには、それなりの理由があるのだろうが、とりあえず国内盤やOJCで聴けるものを、その何十倍も出してまでは買う気持ちにはなれなかった。
Jamallp_0011枚の名盤に2万出すのなら、4000円の地味盤を5枚聴きたいのだ。ただ最近は、本当にいいレコードだけ(もちろん自分が大好きなレコード)を、コンディションのいいオリジナル盤で集めていく~というスタンスもまた魅力的なのでは・・・という気分も現れてきた。あと10年もすれば、そんな集め方になるかもしれないが・・・今はまだ無理なようだ(笑)

そんなわけで、10年ほど前から、ちょっと安めのオリジナル盤で、まだ聴いたことのない(持ってない)ものを中心に狙い始めたのだ。そんな目線で廃盤店のタナを探ってみると・・・自ずとArgoやcadetのこの辺りのレコードが目に付くようになる。ラムゼイ・ルイスやアーマド・ジャマルというピアニストには、当時、相当な人気があったらしく、ArgoやCadetからはかなりの数のタイトルが発売されている。もちろんそれら全部を持っているわけではないが、ひとつ聴いてみると「案外、いいぞ~」と思うので、知らぬ間に、けっこう集まってしまうのである(笑)
今回は、ジャマルに絞って、ちょっと気になる初期のもの中心にをいくつか紹介してみたい。Jamallp_004

ジャマルと言えば、真っ先に思い付くのは、やはり「But Not For Me」ということになるのだろう(笑)僕も含めてジャマルというとこのLPしか聴いてこなかった方も多いと思う。
ジャマルのピアノは、かなり独特なスタイルである。どんな曲でも、たいてい高音域をコロコロと弾く。この「コロコロ」は、軽いタッチだが、スナップを効かせたようなタッチであって、力任せに押し込んだような感じではないので、決してやかましくはない。私見では、この「コロコロ」は、アート・テイタム風、ジョージ・シアリング風でもあり、もう少し言えば・・・後年のガーランドが時に見せる「コロコロ」にも近いものがあるように思う。
そんな「コロコロ・フレーズ」は、アドリブを弾きこむ~というより、その曲の構造上の美点みたいなもの感じを、力まずに軽々と表出している・・・という感じでもある。ベースとドラムス(あるいはギター)に、その曲の「骨格」を造ってもらっておいて、その上に「乗っかる」ように、遊び心溢れる高音域フレーズを繰り出してくる~という感じかな。
そうして流れ出るサウンドは・・・あくまで軽い(笑)しかし、この「軽さ」は・・・クセになる(笑)ジャマルの演奏にはいつも「洒落た工夫」があり、それが音楽の自然な流れにもなっているようで、聴いていてとにかく気持ちがいいのだ。だからジャマルにはライブ盤が多いし、あのリーダー作の多さは、やはりジャマルには相当な人気があったということだと思う。もちろん・・・ジャマル自身が、そういう「音楽の快楽」を表現することに徹していたのだろう。素晴らしい才人だと思う。 

Argoが先でCadetが後のはずだが、Jamallp_003Argoにもいろんなラベルがあるようだ。モノラル~黒・灰色、ステレオ~青というのが基本のようだ。ただ「青」にも、「普通の青」(662:Happy Moods)、「群青色っぽい青」(667:At The Pershing vol.2)、「紫っぽい明るい青」(691:All Of You)という具合に微妙な違いがあるようだ。音質については・・・どうもArgoにはそれほどいい印象がないのだが、同じ場所での1958年の録音音源であるBut Not For Me(黒・モノラル盤)とJamal At The Pershing vol.2(群青・ステレオ盤)を比べてみると、どうも「ステレオ録音」の方がいい音のように感じる(僕には)ピアノの音全体に厚みがあるし、艶がある。Jamallp_002蛇足だが、今回、ジャマルのLPをいろいろ聴いてみて、「音質」が一番よかったのは、1962年のAt The Blackhawk~実は国内盤(テイチク)しか持ってない~だった。やっぱりライブ録音でも、「西海岸もの」は一味違うようだ。ひょっとして、この1962年の西海岸録音Argo盤にも、ワリー・ハイダー氏が関わっていたかもしれないぞ(笑)
Argo時代のジャマルでちょっと珍しい2枚組~Portfolio Of Ahamad Jamal(argo 2638)については、そういえば、この<夢レコ>でも、だいぶ以前に取り上げている。こちらの<珍しレコ:Portfolio Of Ahamad Jamal(argo 2638)>もご覧ください。

ジャマルというと・・・「あのマイルスが、ジャマルに影響された」という話しがよくジャズ本に出てくるし、ジャマルはひょっとしたら「そのこと」だけで有名になっているような気もするが(笑)実際のところ「音楽の具体的な様子」として、マイルスがジャマルのどこにどんな風に影響されたか・・・については、あまり書かれていなかったように思う。それ以前に・・・なによりもジャマルのレコード自体が(日本では)あまり聴かれていなかったのだろう。それはもちろん僕自身も同じ状況で、その辺りのことが、ハッキリとは把握できていなかった。そんな状況だったことを推測しながら、このレコードを聴くと・・・ちょっとした誤解が生じてしまうような気もする。
というのは・・・
このBut Not For Meには、
but not for me
surrey with the fringe on top
no greater love
woody'n you
という「マイルス取り上げ曲」が入ってはいる。しかし・・・このジャマル盤は、1958年録音なのである。つまり・・・この4曲については、どれもマイルスの録音の方が先なのある。(but not for me~1954年、no greater love~1955年、surreyとwoody'n you は1956年)ということは・・・ジャマルという人を初めてこのLPから聴いた場合~
「マイルスが影響された云々(うんぬん)」という観点からは、まるで逆の「音」を耳にしていたことになる。もちろん僕もそうだったし、だから「マイルスにはジャマルからの影響が・・・」と言われても、どうもよく判らないのも無理からぬことだったのかもしれない。

さてそろそろ「マイルスがジャマルに影響された」証拠のLPを出さねばなるまい(笑)ジャマルのLPは、ほとんどがargoに在ると思われがちだが、実はそのちょっと前の時期の音源として、2枚のEpic盤があるのだ。

The Ahamad Jamal Trio(LN3212)~Goldmineによると1956年発売
Jamallp_008_2
The Piano Scene of Ahamad Jamal(LN3631)~Goldmineによると1959年発売

このEpic盤・・・2枚とも、どうやらOkehレーベル音源からの再発らしい。(推定)1951年録音のようだが・・・私見ではそこまでは古くなく、もう少し後の例えば1953年くらいの録音に聞こえる。いずれにしても、録音の音質は・・・よろしくない(笑) Epic盤の高音質というイメージとは程遠い。
このEpic盤2枚に収録してある曲から「後年にマイルスが取り上げた曲」を探ってみると・・・なんと、8曲もあるじゃないか!
love for sale
autumun leaves
squeeze me (以上3曲~The Ahmad Jamal Trio)
ahmad's blues
billy boy
will you still be mine
the surrey with the fringe on top
a gal in Calico(以上5曲~The Piano Scene Of~)

~Trio(3212)の方に「枯葉」が入っている。そのイントロのフレーズが、あのマイルス/キャノンボールの「サムシング・エルス」の枯葉と、ほぼ同じなのだ。ジャマルの方は、マイルス・ヴァージョンよりもやや速いテンポのラテン風で、あのフレーズをギターに弾かせている。「ほぼ」と書いたのは・・ジャマル版ではあのフレーズのアタマを半拍だけ休符にしているからだ。そのためかジャマル版の方が、よりラテン風に聞こえる(裏を返せば、マイルスの方がジャズっぽい・・・とも言える)Jamallp_007
ジャマルという人は・・・ある意味「アレンジャー的ピアニスト」でもあると思う。ほとんどの場合、スタンダード曲を素材にしているのだが、どの曲にも凝った工夫が施してあるのだ。1951年当時では、他のバンドではあまり考えられないような「合わせ」が~ベースやギターにメロディの一部を取らせたりしている~多いのだ。パッと聞いて「洒落た」サウンドをしているのだ。グループとしての「サウンド」を意識している点では、ジョージ・シアリングとも似ているかもしれない。この当時のジャマルのリズムセクションは、べースはイスラエル・クロスビー、ギターはレイ・クロフォードらしい。

Piano Scene(3631)の方には、Ahmad's blues, the surrey with the fringe on top, will you still be mine, a gal in Calicoなど、後にマイルスが吹き込んだ曲が入っている。
そしてこのPiano Sceneからも、ちょっとした驚きの曲がひとつ見つかった。
A面ラストのPavanneという曲~これ途中、ギターソロの部分があるのだが、そこがマイナー調のコードになっていて、途中で4小節だけ「半音、上がるのだ!そしてそのサウンド(の様相)は・・・もう明らかに「モード」なのだ。つまり・・・ドリアンというモードを使った「ソー・ファット」(あるいは「インプレッションズ」)と同じなのである。その時のギターのフレーズも、何やら「インプレッションズ」風なのだ(笑)推定~1951年録音のレコードである。時代性を考えれば・・・驚くほど「モダンなサウンド」だと思う。
そしてこれは僕の妄想だが、マイルスから「ジャマルを聴け!」と言われたコルトレーンは、このPavanneを聴き込んでいたので、あのimpressionsを造ることができた(笑)
*以下参考~「ドリアン」という旋法に興味のある方は、何かのキーボードで試してみてください~(Dドリアンの場合)「D=レ」から始めて「レ」で終わる音階を「白鍵のみ」で弾く~つまり<レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド・レ>という弾くだけです。どうですか?これだけで何となく・・・So What? の感じになるでしょ(笑)
《追記:2010年1月5日》このPiano Scene(3631)収録曲の録音年データを(スコット・ヤーロウ氏による)付けておきます。1951年の2曲はOkay音源のようです。これによれば、僕がドリアンモード的と感じたPavanneは、1951年より4年後の1955年ということになる。
Will You Still Be Mine (Oct. 51)
The Surrey With The Fringe On Top (Oct. 51)
Billy Boy (May 52)
A Gal In Calico (May 52)
Aki And Ukthay (May 52)
Ahmad’s Blues (May 52)
Old Devil Moon (Oct. 55)
Poinciana (Oct. 55)
Pavanne (Oct. 55)
Crazy He Calls Me (Oct. 55)
Slaughter On 10th Avenue (Oct. 55)
It’s Easy To Remember (Oct. 55)

Jamallp マイルスとの繋がりについては・・・2枚のEpic盤の裏解説が興味深い。つまり、発売年度が早かった1956年の3212(Trio)には「マイルス」という言葉は全く登場してこないが、1959年の3631(Scene)のナット・ヘントフ氏による裏解説では、冒頭から「マイルス絡み」の話しばかりなのである。ジャマルのことを「基本的にはカクテル・ピアニスト」と評したことへ、マイルスが憤然と反論してきた~というような件が書いてあるようだ。マイルスが「ジャマルの造り出すスペースの生む効果」についても書いてあるが、どうやら「音楽の具体的な様子」については、ここでも触れられていないようだ。ひょっとしたら、「マイルスがジャマルに影響された云々」は、このヘントフ氏の裏解説から、広まった話しかもしれない。

では、Argo盤からもう1枚。実は「マイルス関わり」の音として僕が最も驚いたのが、これである。Jamallp_006
Ahmad Jamal/Chamber Music Of The New Jazz(argo 602) 1955年
これはargo/cadetに20枚近くもリーダーアルバムのあるジャマルのargo第1作である。このLPを、なぜだかこれまで全く聴いたことがなかった。ジャマルの国内盤発売は、いつもBut Not For MeやPenthouse だけだったし・・・オリジナル盤を探す際にも、この602盤は年代が古い分だけ、他のargo盤に比べるとやや見つかりにくいかもしれない。ちなみに、このレコード・・・creativeというレーベルから出たものが真のオリジナルらしい。
《2009 1/2追記~creativeではないが、このArgo602番のオリジナル1stと思しきジャケットをネットで見かけた。それは・・・石畳の広場を上空から撮ったショット。左下隅に高そうなクルマ(ロールスロイスか?)がちょっとだけ写っている。画面は薄い緑一色。ちょっとベツレヘム・レーベルのバート・ゴールドブラットのデザインとよく似た雰囲気だ》

A面1曲目のnew rumbaのイントロ部分から、いきなり驚いてしまった。なんだ、これはっ!
そう・・・マイルスのLP~Miles Ahead のnew rumba、あれのそのままじゃないか!録音は当然・・・ジャマルの方が先(推定1955年)である。
いろんなジャズ本から「マイルスが、ジャマルからはヒントを得た」という話しは知っていた。知ってはいたが・・・それはあくまで「ヒント」くらいだと思っていた。しかしこのnew rumba・・・これはもう完全に「パクリ」である(笑)
new rumbaイントロでの、あのちょっとモードっぽい、かっこいいフレーズ~あれはギル・エヴァンスのアレンジかなと思っていたのだが・・・あのかっこいいリズムパターンとフレーズが、そっくりそのまま、このジャマルのLPに入ってるじゃないか!
このジャマルのLP収録曲で、マイルス取り上げ曲は~
new rumba
all of you
it ain't neccessarily so
の3曲である。しかし、もうひとつ・・・A面5曲目のMedleyというタイトル。これが曲者で、曲が始まると・・・「ああ・・・これも知ってる」
というメロディが軽やかに流れてくる。これも確かに「マイルス・アヘッド」に入ってる曲だぞ・・・と調べてみると「アヘッド」の
B面ラスト~I don't wanna be kissedじゃあないか(笑)この曲・・・メロディの出だしから3連符のフレーズで始まり、その後も2拍続けて3連符を使ったりするところが、ちょっとユーモラスな感じもして、強く印象に残っている曲だった。その「マイルス・アヘッド」のI don't wanna be kissed のアイディアそのままが、このジャマルの1955年のLPに入ってるじゃないか!ジャマルのピアノが、軽く小粋に弾く3連符は、マイルスが現そうとしたニュアンスそのままなのである。う~ん・・・これは・・・マイルスもギル・エヴァンスも、ジャマルにアレンジ料を払わなくては、まずいだろうな(笑)
蛇足をひとつ~ジャマルは1958年のBut Not For Me(前述)で「マイルス曲」を4つも取り上げた・・・あれは「ジャマルのお返し」だと、僕は踏んでいる(笑)

はうんと前から「マイルス・アヘッド」が大好きだった。あのLP、特にどの曲が・・・という訳ではないのだが、A面1曲目のspringsvilleが流れ始めると、継ぎ目なしに次の曲に移っていき・・・それはまるで川の流れのように全く自然な感じで・・・途中で針を上げることができなくなる。そうしていつも両面を聴き通してしまうのだ。あのLPの「サウンドのイメージ」がいつもアタマの中に渦巻いてしまって困るくらいの時期もあった。だから今回、ジャマルの1955年作品を聴いてみて、マイルスのあのLPの中で印象に残っている「部分」が、そっくりジャマルのアイデアだった・・・と判ってしまったわけで、その事実にちょっと軽いショック(がっかりしたような気持ち)を受けた僕である(笑)
しかし・・・だからと言って、マイルスへの(あのLPへの)見方が変わるわけではない。確かに、細部のアイディアを借用しているが、それらを巧く使い切った上で、あのLP全体を「あるムード」で包み込み、「ひとつの組曲」にまで造り上げてしまったのは・・・やはりギル・エヴァンスであり、何よりも「マイルスのあの音色」なのだから。

ちくしょう・・・オレはやっぱりマイルスが好きらしい。
その証拠に、今また僕は「マイルス・アヘッド」を聴いてみて・・・すっかり感動している(笑)

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2008年2月21日 (木)

<思いレコ 第15回>The Magnificent Trombone of Curtis Fuller(epic)

フラーが見た5分間の夢~優しくてブルージーな”dream”

Dream_005《一見、オリジナル盤に見えるかもしれないが・・・これはCBSソニー発売の国内盤ECPU-6です。CBSソニー・ジャズ1500・シリーズで全20タイトル出た中の1枚。その20タイトルの中には、あのWe Paid Our Dues!も含まれていた!そのECPU-9番は、痛恨の未入手盤である(笑)》

このレコードは、もう長いこと、僕の愛聴盤である。A面1曲目のI'll be aroundは、スインギーなギターのイントロ~見事なコード弾きで始まる。トニー・ベネットも唄ったこの曲、メロディが自然に展開していく感じで、それをフラーがまたウキウキするような気分で吹いているので(そうに違いない:笑)聴いているこちらも、実に気分がよくなってくる。そして次の曲が、dreamだ。
dream・・・この有名なスタンダードを、フラー達はものすごくゆっくりのテンポで演奏する。おそらく1分=60くらいのテンポだろうか。
メトロノームのカウントをベースが刻む4分音符とすると、その4分音符ひとつが、ちょうど1秒(くらい)ということになる。そして「1秒」というタイムは・・・案外に長い。
試みに、1(イチ)、2(ニイ)、3(サン)、4(シイ)と、ゆっくり4秒かけて、声に出してもらえれば、1分=60というテンポが、かなり遅いということを実感していただけるかもしれない。
ちなみに、ベースのウオーキングラインというのは(普通の場合)1小節に4分音符を4回刻むので、このテンポ(1分=60)だとすると、1小節を進めるに4秒かかることになる。そして、フラーはこの曲を2コーラス+カデンツァで終えている。
余談ではあるが、このdreamという曲は32小節なので、この曲を一周(1コーラス)するのに、4X32=128秒。2コーラスでは256秒(4分16秒)かかることになる。カデンツァの部分に、たっぷり30秒以上はかけているので、約5分という計算になる。
このレコードの解説書を見ると・・・dream 5:11秒と書いてあった。
「1分=60くらい」という、大ざっぱなカウント解釈だったが・・・それでもだいたい合っているじゃないか(笑)

さて、バラードを演奏する場合、べーシストは1小節に2分音符を2つ弾くのが普通だ。しかし、このdream は相当に遅いテンポ設定である。このテンポでの2分音符では・・・いかにスロー・バラードでも、さすがに間が空きすぎてしまう。だから・・・このべーシスト~バディ・カトレット(Buddy Cattlett) は、バラードではあっても、あえて「4つ打ち」を選んだのだと思う。テンポ設定と、このベースのウオーキングの感じは、一見すると「スロー・ブルース」と似ているかもしれない。しかし・・・ちょっと違う。これはやはり「バラードでの4つ打ち」なのだ。その証拠に、カトレットは、一音一音を、本当にきっちりした4分音符で(付点をほとんど使わずに~付点を使うとブルース的なフィーリングが出てくる)ウオーキングを進めてくるのだ。
そして、この「バラードでの4つ打ち」が、独特の「溜めたようなビート感」を生み出しているように思う。この「溜めた」ような感じを、どう説明したらいいのだろう。そうだなあ・・・例えて言えば・・・自転車をゆっくり漕いでいる感じに近いかもしれない。
中学校の時だったか・・・校庭にわりと小さめな円を描いて、その円周上を自転車で廻って走る~という遊びをしたことがあった。
ゆっくりと走らないと円周を飛び出してしまう。だから・・・ギアを重くして、ゆっくりとペダルを漕ぐのだが、ゆっくりすぎると自転車が倒れてしまう。その辺りの漕ぎ具合が難しい。
安定的かつ持続的な動力を与え続けないとうまく廻れないのだ。たぶん・・・持続的なトルク力がポイントなのだろう。

僕が思うウッドべースのウオーキングに必要な「トルク感のある粘り具合」みたいな感じ・・・カトレットが、まさにそんな具合にベースを弾くことで生まれた「スロウ・バラードでの持続的なビート感」(トルク的な力感と言ってもいい)」は、なかなか味わい深い。バラードであっても、なんとなくブルージーな味わい~微(かす)かにブルース的な感じ~が漂うのだ。そんな独特の効果を聴いてしまうと・・・ひょっとしたらこの「4つ打ち」は、その辺りまで計算したフラーの指示だったのかもしれないぞ・・・とも思えてくる。

そんな質感を持つべーシストのウオーキングに乗っかって、このdream は、繰り返すが「遅いテンポ」で演奏される。
うっかりすると今にも止まりそうなテンポだ(笑)
そして・・・フラーはこのテンポでも全く動じない。
というより・・・この「遅さ」を選んだのは間違いなくフラーであろうし、だからフラーは、この「遅さ」を充分にコントロールしている。そして・・・充分に「唄って」いる。

最初のコーラスで、フラーはこの曲のゆったりしたメロディを~ほとんど崩さずに~本当にゆったりと吹き、2回目のコーラスの前半をピアノに任せる。そして2コーラス目の後半から再びテーマを吹き~今度はほんの少し崩して~そしてエンディングでは、リット(それまでのリズムを止めてしまう状態)した後、フラーが短いカデンツァ(伴奏陣なしで独りだけで吹く)を入れて、そして、終わる・・・そんな2コーラスだけの演奏だ。
つまり・・・フラーのアドリブは全くないのだ。

フラーは、いろんなニュアンスのトーン(音色)や、フレーズの終わりの箇所でボントロ特有の(音程を下降させるような感じの)ベンドさせるような吹き方でもって、この曲のテーマを吹き進めていく。夢見るような「優しい感じ」が溢れ出る。
スロウなバラードをこんな風に深く吹く(吹こうとする)フラーには、たぶんアドリブなんて必要ないのかもしれない。テーマを吹けば・・・それが彼の「唄い」なのだ!
フラーという人は、本当にバラードが好きなんだなあ・・・と思えてくる。

そういえば、もうひとつ付け加えておきたいことがあった。このレコードで初めて聴いたレス・スパンという人のギターを、すごく好きになったのだ。このギター弾き・・・とにかく音が太いのである。太くて温かい感じのする甘い音色。そして時々繰り出すオクターブ奏法も~だからレス・スパンは、奏法的に言えばおそらくウエスに近い感じだとは思う~いい切れ味だ。
それから最も印象に残ったのは、特にスロー・バラードでのバッキングで、素晴らしく味わいのある弾き方をしていることなのだ。
先に書いたように、この dream は「テンポが遅い」ので、テーマを吹くフラーのメロディの合間合間に、どうしても「隙間」ができる。
そんな隙間に、スパンは見事なオブリガート的フレーズを、すす~っと差し入れてくれるのだ。そのタイミング、そのフレーズの素晴らしさ・・・この辺り、実に巧いギター弾きだと思う。
さらに、やはりバラードのバッキングで時に見せる独特な「アルペジオ的な音」にも、本当に驚かされてしまう(dreamのエンディング部分~リットする辺りで、その「音」が聴ける)
あれは、たぶん・・・ギターのうんと高い方のフレットでコードを押さえておいて、ピッキングしているような音なのだが~あるいは、各弦をかき鳴らすタイミングを微妙にずらしての指弾きかもしれない~なんというか・・・「ペキ・ペキ・キラリン・キラリン!」という感じのする、まさに輝くようなハーモニクス風アルペジオ的な音なのだ。そんな個性派ギタリスト~レス・スパンについては、また別の機会にまとめてみたい。

Dream_006 Curtis Fuller(tb)
Walter Bishop Jr.(p)
Buddy Cattlett(b)5曲
Jimmy Garrison(b)3曲
Les Spann(g)
Stu Martin(ds)

今回は、フラーと、ベースとギターにしか触れなかったが、ピアノのウオルター・ビショップもいいピアノを弾いている。
こんな具合に、なかなかの個性派が揃って造り上げた、このレコード~The Magnificent Trombone of Curtis Fuller(epic)は、フラーというボントロ吹きの「優し気な風情」が、見事に表われた地味ではあるが本当に味わい深いレコードだ。思い切って、フラー独りのワンホーンにしたところと、バラードをメインに持ってきたところが、ポイントだと思う。
ちょっと前にこの夢レコでも取り上げた、チャーリー・ラウズの傑作「Yeah!」にも、同じようなクオリティの高さを感じるのだが、どうやら・・・EPICというレーベルには、凄く趣味のいいプロデューサーと、優秀な録音エンジニアがいたようだ。
そしてさらに、ジャズ魂溢れる解説者も・・・というのも、このepic盤のジャケットの裏解説に、ちょっといい一節を発見したからなのだ。

<dream の最初のコーラスでは~彼がほとんど泣いているかのような~そんな瞬間がある>
(on Dream...there are times in the first chorus, when he almost seems to cry)
”almost seems to cry”とは、フラーの独特の「唄い廻し」・・・あの「感じ」を描こうとしたであろう、実に素晴らしい表現ではないか!
ちなみにこの解説者・・・あまり聞いたことがない名だが、Mike Bernikerという人である。

それにしても・・・世の中には素晴らしいレコードが一杯だあ!(笑)

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2007年5月 7日 (月)

<ジャズ回想 第11回>(その2)ああ・・・この音だ。Yoさん宅、再・再訪期。

Yoさん宅~3人の音聴き会は、まだまだ続く・・・。

ちょっと前に、ニーノニーノの新納さんからTELがあり、ピーターソンのWe Get Requestsの「モノラル溝あり」の音は凄いですよ・・・と教えてくれた。「ええっ!T字MGM-VERVEに溝があるんですか?」「はっきりしないんですが、初期のT字にはあるらしんですよ」
僕など、いわゆるT字ラベルの場合「long playing(Verve Inc.)には溝がある」が「MGM-VERVEになってからは溝がない」と思い込んでいたのだが、そうではなかったのだ。T字MGMになってどの辺りのタイトルまで「溝あり」が存在するかはよく判らないが、ともかくT字VERVEラベルの初期のいくつかには「溝あり」があるらしい。Dscn1687_1
そうして自分の手持ち盤をいくつか調べてみると・・・Night Train(V6-8538:T字MGM)には、はっきりと幅の広い溝があったのだ。そして、Requests(V6-8606:stereo)の方はというと・・・とても溝とは言えないわずかな段差のある「筋」(T字の横棒の左右の1cmほどを通っている直径7cmほどの円周)」があるだけだったのだ。
《上の写真では「筋」だか「溝」だか判りにくいが、下のラベル写真と比べると明らかに「溝」とは違う。残念である(笑)》
ちなみに、この「筋」は、普通の大きさの円周だが、Trio Plays(V6-8591)のセンターラベルの「筋」は、3cm弱の円周とうんと小さい。だから「溝」なしにも「大筋」「子筋」とあることになる(笑)

このRequestsがいわゆる 「優秀な録音のレコード」ということは知ってはいた。しかし、オーディオ的な興味の薄かった僕は、かえってそんな評判への反発もあり(笑)あまりちゃんとその音を聴いてなかったのかもしれない。アンプを真空管に、そしてスピーカーをJensenに換えた頃から、だんだんとピーターソン自体を聴くようになり、そうして改めてこのRequestsを聴きなおしてみると・・・これがチャーミングないい音だったのだ(と、気づいただけなのだが:笑) もちろん「音」の前に、演奏が素晴らしいことは言うまでもない。どの曲でも、レイ・ブラウンやエド・シグペンという名人たちが、その至芸をさらっと見せてくれるのだが、特に、1曲目のボサノヴァ風の quiet night がいい。この曲のエンディング・・・同じ和音パターンの繰り返す辺りで、ピーターソンが高音部で「遊ぶ」のだが、その意図的に軽くしたようなタッチが、実に、小気味いい。このレコードでは、1曲が短いこともあり、いつものピーターソンよりだいぶんあっさりした感じでもあり、それがまた僕には気持ちいい。軽めのタッチではあるが、しかし、しっかりとキーを叩いている」~そんな感じのタッチの質感を凄くよく捉えている録音だと思う。もちろん、レイ・ブラウンのウッドベースの音圧感・存在感も充分に出ている。そして、このレコードの録音engineerは、いつものVal Valentineではなく、Bob Simpsonとなっているのだ。Simpsonは、ハリー・ベラフォンテなどRCAでの仕事が多いようだが、Bill Evans/Trio 64(verve)や、ミンガス/ミンガス、ミンガス、ミンガス(impulse)なども彼の録音らしい。僕は、このRequestsの音が好きだ。

そんな「いいステレオ録音」のRequestsに、「モノラル・溝あり」があったとは・・・。同じ頃、Yoさんとのメールやりとりでも、そのRequestsの話題になり、Yoさんは「ステレオ・溝あり」をすでにお持ちで、なんと「モノラル・溝あり」も、つい最近、入手されたとのこと。Request_st_1
「じゃあ」ってんで、その3種・・・
ステレオ溝なし~bassclef
ステレオ溝あり~Yoさん
モノラル溝あり~Yoさん
を聴き比べしてみよう!ということになっていたのだ。

僕はすぐに3枚のセンターラベルをぐぐっと見つめた。Yoさんの2枚には確かに「幅の太い溝」がくっきりと彫りこまれている。これこそ「MGM-Verveの溝付き」だ!《センターラベルの写真2点は、Yoさん提供》
さっそくこの3枚を聴き比べてみた。Request_mono

先にステレオ盤の2枚をかけた。この2枚・・・右からのレイ・ブラウン、左からのエド・シグペン、そして中央(やや左か)からのピーターソン・・・音場の感じは全く同じだ。音質の方も、大きな差というのはなかったかもしれない。しかし、「全体としての鳴り」が・・・やはり「溝あり」の方がよかったのだ。ピアノがどう、ベースがどう、ということではないのだが・・・それぞれの楽器の音色に、より太さが、より艶が、そしてより瑞々しさが感じられたのだ。

そしてモノラル盤。ベースが中央により、やはり、かなり「太く」なった。ピアノの音自体も幾分、大きくなったようだ。一聴して、迫力はやはり増している。このモノラル盤が鳴ったらすぐに、僕の右隣に座ったkonkenさんが「オレ、この方が好きだな・・・」と一言。
そして・・・このモノラルの太さ、たくましさは充分に判るが・・・やはり「オレはステレオの方が好きだな」とbassclefが対抗する(笑)
Yoさんも、「このピーターソンのレコードに関しては・・・ステレオの方が好みかな・・・」と洩らす。
僕個人の気持ちとしては、先ほど書いたような、このレコードの「軽めのタッチ」「あっさり感」という感覚が、モノラルの方だと「たくましく」なりすぎてしまうような気がして、ステレオ録音のベースが右、ピアノが左、というちょっと薄め(とも言える)の音場の中で、軽々とノッているような感覚・・・説明しづらいのだが、そういう「軽み味」には、ステレオ盤の方が「合っている」というような、ごく感覚的な理由で、ステレオ盤の方がいい、ということなのだ。
それにしても、自分の手持ちRequestsは「溝なし」であることがはっきりしてしまったわけで、少々、落胆した。あのわずかな筋~段差を、無理やりに「溝」かもしれんぞ・・・と思い込もうとしていたのかもしれない(笑)

ピーターソンをもう1枚~Night Trainから1曲聴く。konkenさんのステレオ盤では、なぜかレイ・ブラウンのベース音がやや小さく聴こえるそうで、その点をYoさん宅で確認したかったとのこと。聴いてみると・・・左チャンネルのレイ・ブラウンのベースが、やや押さえ気味のバランスで、他のVerve盤で聴かれるいつものレイ・ブラウンと比べても音圧感が物足りない。
konkenさん手持ちステレオ盤は、ラベルの色が灰色っぽいもの(小筋)で、やや後期の再発盤かもしれない。
音全体がちょっとこもったような録音のように感じる。いずれにしても、先ほどのRequestsに比べると、だいぶん平凡な音だと思う。そして、レイ・ブラウンに関してはどちらかというと「よくない録音」かもしれない。
ちなみに僕も戻ってから、さっそくこのNight Train(ステレオ溝あり)も聴いてみたが・・・やはり同じようなバランス・音質で、ちょっと残念であった。ただ、このレコード・・・レイ・ブラウンが遠い代わりに、右側からのエド・シグペンのドラムスは、けっこう迫力のある録音だ。ハイハットがしっかり(ちょっとやかましいくらい)入っており、バスドラもちょっとこもり気味だが、音量豊かに鳴る。ドラムス好きには楽しめるレコードかもしれない。録音は1962年、エンジニアは、Val Valentineだ。

そういえば、もう1枚、強く印象に残っているピアノ・トリオの盤がある。
バリー・ハリス/Breakin' It Up(argo) all the things you are である。
この渋いピアノトリオのレコード、僕はCDとビクターの国内盤(ステレオ)を持っていた。
bassclef~「録音があまりよくない印象」に対して、Yoさん~「いや、そんなことはない「録音そのものはいいが、ピアノ自体がちょっとよくないのかもしれない」というようなやりとりがあった。そして、Yoさん宅で聴かせてもらったArgo のオリジナル盤(モノラル)では・・・う~ん、確かにピアノの響き、その余韻に若干の「古ぼけた」ものを感じたのだ。スタジオに置いてあったピアノの調弦が微妙にずれていたのかもしれない(ピアノというのは1つのキーに対して複数のスチールの弦(太い針金みたいなもの)を使っているのだが・・・その複数の弦のたった1本のピッチが微妙にずれている~そんな風に聞こえないこともなかった。よくホンキー・トンク・ピアノという表現で、場末のバーのピアノから聴かれるあの独特の「くたびれサウンド」あれが・・・調弦のずれたピアノの音、といえば雰囲気はお判りいただけると思う。もちろん、このバリー・ハリスの使ったピアノは、そんなにホンキー・トンクはしていないが、部分部分で、時にちょっとそんな響きを感じたのだ。あまり状態のよくないピアノだったのかもしれない。
そんなところまで~つまり「録音の拙さでのイマイチのピアノの音」ではなく「ピアノ自体の状態の拙さ」での、あのちょっとくすんだようなピアノ音~というところまで判ってしまった(少なくとも、そういう風に感じ取れてしまった)のだ。それにしても、このYoさんのシステムは・・・そのレコードのサウンドを聴けば、その時の演奏、そして録音の「真実」までもが、その場に暴き出されてしまうような・・・そんな「怖ろしい」装置だと言えるのかもしれない。

さて、この会・・・「その1」で書いたように、冒頭のラウズ3連発から、ほとんどテナー特集と化していった。

ラウズ(epic)の2枚とtakin'care(jazzland)の3連発
ズート・シムス/ズート!(riverside)白ラベル fools rush in
ベニー・ゴルソン/the other side of~(riverside)  jubilation
ジミー・ヒース/really bag から ?
ジョニー・グリフィン/Big Soul Band(riverside)から
deep river, jubilation 
ロリンズ/at the village vanguard(bluenote) softly as in a morning surrise
<ゲッツの Plays~聴き比べ>
JRモンテローズ/The Message(jaro)
straight ahead と violets for your furs
コルトレーン/coltrane(prestige)NY  violets for your furs
テディ・エドワーズ/It's About Time(pacific) fools rush in
エディ・ロックジョー/Tranckin'(prestige:青・イカリ RVG)
there'll never be another you
フリップ・フィリプス/I'll never be the same(ClefのEP盤)

どれもこれもいい演奏のものばかりで、これらのいくつかを続けてかけたり、もちろん間にヴォーカルなどを入れたりしたのだが、さすがにテナーばっかりではねえ・・・てなわけで「ミニ・アルト特集」となった。
フィル・ウッズである。

Dscn1695_1 Quincy Jones/Quintessence(impulse) A面1曲目のQuintessence~

この曲~ちょっと北欧の雰囲気が漂うような優雅なメロディだ~僕はもう大 好きである。
そして、この曲でフィルウッズのアルトが、もう巧さ爆発!何度聴いてもこの曲は厭きない。
輝くようなバックのブラス群の乗ってフィル・ウッズが唄い上げる。
このimpulseのVan Gelder録音は、特に好きだ。強すぎず、甘すぎず、適度な輝きと張り具合~バンドのメンバーが巧い人ばかりなのでそこのクインシーのアレンジが合わさって、ゴージャスなビッグバンドジャズが楽しめるいい1枚だと思う。

ウッズのもう1枚~Alive & Well 60年代後半の「激情ウッズ」の有名盤だ。この欧州オリジナル盤はジャケットも封筒型(上下が裏側に折り返している。全体に紙質が薄くて、その薄さに品がある)で、人気も高いらしい。
1曲が長いのだが、ウッズは最初から激情している。そして、途中のベースソロが・・・これはまたすさまじい音だった。アルトが鳴っている間は、ドラムのダニエル・ユメールも叩きまくるので、さすがにベースがちょっと隠れがちだが、ベースソロのなったとたん・・・録音技師がグンッとフェーダーを上げたに違いないのだが(ドラムの音も止み、入力オーバーにならないので)突然、ベースが巨大化する。
そして、サポートするリズムがない状態で、ベース特有の幽玄な世界に入っていく。このベース奏者、とにかく「熱いハート」があるなあ・・・ジミー・ギャリソンが時々見せるような「フラメンコ奏法」に近いような弾き方を混ぜて、堂々としたソロを展開する。この場面での音は・・・生のベースかもしれない。3人で聴いたが、この1968年頃は・・・ウッドベースに付けるアタッチメント(駒に貼り付けるタイプの小さいマイク)を付けた音なのかどうか微妙に判りにくい。生音をうんと近づけて録音したような音でもあるし、アタッチメントからの(電気的)音の配分を少なめにしてアンプから鳴らしているような音でもあるし・・・はっきりしない。だがひとつ言えるのは、ヨーロッパのべーシストはとにかく「巧い」ということだ。アタッチメント付きだったとしても、その前にまず、「ベースがよく鳴っている」 「しっかりと弾いている音」 「きちんとした音程」~そんな技術的な基礎がしっかりしているベースの音なのだ。一音一音のタッチに力感・質感がしっかりとあり、だから聴いていて全然、不快ではない。
1975年くらいのペデルセンも「巧い」ベースの代表だ。一時期のライブでは、どうしてもアタッチメント全開の電気的サウンドになったようだが、レコードではやはり「いい音」を出している。
そしてYoさんのウーレイは、こういう巧い奏者の音をひときわ甘く、そして音楽性豊かに鳴らしてくれるようだ。Jwalking ともう1枚のsteeple chase盤(ドラムスがビリー・ハートで、ギターが若いジョン・スコのやつ)を聴いたのだが、この装置で聴くペデルセンは、とにかく気持ちがいい。そういえば、1年半ほど前に初めてYoさん宅を訪れた折にも、たしかこのペデルセンのJwalking(LPとCD)を聴かせてもらったな・・・この日、聴いたのもやはり、カルロス・ジョビン作のFelicidade・・・甘い中にサウダージ(哀愁)を感じさせる見事なメロディ・・・好きな曲だ。そしてこの曲を選んで、ベースでメロディを弾くペデルセンのセンスにも素晴らしいと思う。
ちなみに、もう30年前のことだけど、このJWalkinにはちょっと思い出がある。ジャズ研の先輩ギターのケニー・マー坊氏の好きなレコードで、このLPの中の”J Walkin"にトライしていたので、何度も聴いたはずなのに・・・その頃にはペデルセン=巧いだけでおもしろくないべーシストという、全くレベルの低い思い込みで、深く聴こうというスタンスさえなかった。あの時、すでにボサノヴァ好きだった僕が、このFelicidadeを聴いていたならば・・・僕のジャズの好みというのは、どうなっただろう? そんな意味のないことを考えてしまう僕である。
ペデルセンということで、僕が持ってきていた1枚もかけてもらう。Dscn1696_1
ピーターソン/Great Connection(MPS/テイチク)just squeeze me 1971年録音。
この頃の録音盤をあまり聴かない僕なのだが、このレコードは例外的に好きな1枚だ。ペデルセンのたっぷりとしたベース音が軽くグウ~ンと伸びる様が、実に気持ちいいのだ。ベースという楽器の胴体や、弦の芯が鳴ってからの、アタッチメント増幅音なので(だと思う)軽々しくは聞こえない。
やはり、ペデルセンは本当に巧い!
ルイス・ヘイズの切れのいいシンバル音、そして軽めに弾くピーターソンの艶やかな音色とタッチ感(音圧にまだまだ余裕がたっぷりあるような感じ)も素晴らしい。そんな「好録音」のピアノトリオ盤なのだ。
それにしても、テイチク盤でこの音なら、MPSオリジナルならさぞや・・・(笑)

僕の手持ち盤から、もう1曲、お願いする。
Dscn1694 Blues For Tomorrow(riverside)~a sad thing
この1曲は、ハービー・マンのリーダーアルバム(great idea of Western Manne)からだ。このsad thing でのバスクラの音を聴いた時、「ぞぞ~ッ」とした(笑)もちろんハービーマンが吹いているのだが・・・怖ろしいほど透徹したような音色なのだ。a sad thingというタイトルからも覗(うかが)えるように、マンがそういう風に吹いているのだとも思うが、録音されたこの「音」も凄い!バスクラ自体をそれほど聴き比べる機会もないが・・・この音に、僕は驚いてしまったのだ。そしたら・・・この1曲(1枚)は、riversideにしては珍しい西海岸の録音で、マンの西海岸ツアー時にロスで録音されたとのことだ。どうりでいつものriversideの音とはちょっと肌合いが違ったわけだ。それにしても、ハービー・マンという人、たまに吹くテナーも巧いし、バスクラもこんな音で鳴らす・・・すごい才人だったのだろうな。

さて、この会。インストばかり聴いていたわけではない。ヴォーカルものを大好きなkonkenさんが、いい盤を持ってきたので、随所にそれらを混ぜながら進めていった。(以下4点は1144ross_2konkenさん提供)

Annie Ross/Gypsy(world pacific)から 
Overture 
Everything's C oming Up Ross

Darlene/The Nearness Of You(epic)1314_darlene_2

《このepic盤は、以前にrecooyajiさんに教えていただいたもので、それを気に入ったkonkenさんが速攻で入手した》

Greetje Kauffeld/Clifford : Sings To A Tribute To Clifford Browon(オランダomega)から1336kauffeld

I remember Clifford 《konkenさんのお気に入り盤。しっとりした風情のあるいい歌い手だ。70年代後半のオランダ録音だが、音は瑞々しい感じもあり、とてもいい》

Marlene/Marlene(savoy)から
Some Oter Time
If I Love Again

1322marlene_1 どれもよかったのだが、やはり、savoyのマーレーンは素晴らしかった。優しくて柔らかいマーレーンの声も、丁寧な唄い方も、そしてハンク・ジョーンズのバッキングなど全てが素晴らしい。以前、リキさん宅でこのマーレーン(僕の手持ちは、残念ながらAudiophileのreissue盤)をかけた時も、Yoさん、リキさん「いいねえ」とうなずいたなあ・・・そういえばあの時、リキさんが一言。「このトランペット、なんでこんなにエコーが・・・・」そう思って聴くと・・・たしかに、このレコードでのジョー・ワイルダー、いい感じで唄の合間にフレーズを入れるのだが、いかんせん・・・エコーがかかりすぎだ。やっぱりRVG録音だなあ(笑)
この「エコー」だけはちょっと気にはなるが、savoyのヴァン・ゲルダーは、適度に柔らかく、そしてベースやドラムスの音がtoo muchではなくて、ちょうどいいバランスなのだ。僕は、savoyでのヴァン・ゲルダーの音・・・嫌いではない。

こんな風に3人でいろいろ聴いていると、知らぬ間に・・・もう陽が落ちかけている。なぜそれが判るのかというと・・・二つの巨大なウーレイの1mほど後方の壁の高い位置に小窓があって、そこにはいつもカーテンがかけられているのだが、どうやらその方角が西側らしく、陽が落ちてくると・・・いつもそのカーテンが濃いオレンジ色に染まってくるのだ。そのオレンジ色を見ると「ああ・・・もう夕暮れかあ」という気持ちになってしまう。6時にはおいとまする予定だったので、もうあまり時間がない。こりゃあ、いくら時間があっても足りないや(笑)そんな僕らの気持ちを見てとったか・・・「僕はもうちょっと遅くなってもいいですよ」と、Yoさんが助け船を出してくれた。「いやあ・・・それは・・・」と恐縮するkonkenさんと僕。しかし・・・その恐縮にはあまり迫力がない(笑)ほとんど「そうしてもらっていいですか?」という雰囲気が顔に出ていたのだろうと思う。「ちょっと休憩がてら外で軽く何か食べて、それからまた少し聴きましょう」というYoさんのありがたい申し出に乗っかった格好で、それでは・・・pm9:30をリミットに第2部をやりましょう!ということになった。いやあ・・・これはうれしかった(笑)実際、その方が夕方の渋滞からも逃れられるし・・・いや、それよりなにより、もうちょっとこの音を聴いていたいのだ・・・よかったあ! Yoさん、ありがとう!

そうして第2部(pm8~9:30)でかけたのは・・・
エラ~
Songs In A Mellow Mood(decca)~
米decca:ジャケが灰色でなく青っぽい色のやつ。若いエラがちょっと前田ビバリに似ている(笑)
英brunswick(エラの声、輪郭がやや細くなるが気品を感じる。若くてきれいになったような感じ)

アン・バートン~
ballads & burtonとblue burton を Artoneのオリジナル、Artoneの2nd?(2枚組の1976年の)とオランダCBSの盤で聴き比べをしてみた。
Artoneのオリジナル~ballads & burtonは、瑞々しさがいっぱいでやはりいい! ところがblue burtonの方、これはどうやら・・・プレス段階の不具合らしいのだが、ヴォーカルやピアノやらの音圧が上がった箇所で「歪む」のだ。ちなみに、同じArtoneを2枚買ったパラゴンさんによると、やはり2枚とも、同じ箇所で「歪む」そうだ。2ndでは「歪まない」。
Artoneの2nd?(2枚組の1976年の)~悪くない。ただ、やはりベースのキレが、ややなくなったような感じはある。
オランダCBSの盤(blue burtonのみ)~歪まない。けどちょっと鮮度が落ちたかな・・・。

サラ・ヴォーン~
swingin' easy(emarcy) p :ジミー・ジョーンズ、b :リチャード・デイビス、ds:ロイ・へインズ、 
After Hours(roulettte) 伴奏はドラムレスで、b:デュビュビエ、g:マンデル・ロウなどであった。

Swingin_sarahここでは、swingin' easy(emarcy) のことを少しお伝えしよう。
このemarcy盤・・・サラが椅子に座っているジャケットで、あまり知られているレコードではないように思うが、むちゃくちゃいい音だった。サラの声だけでなくドラムのブラシのざわざわ感や、ベースの音圧、ピアノの艶・・・鮮度感もたっぷりの文句なしにいい音だった。サラもこの頃は、まだ可愛げがあるかな(笑)
《上と下の写真2点~Yoさん提供》

Yoさんが、polka dots & moon beamsをセレクトする。
実はこのバラードには、とんでもない場面があった。知っている方は知っているアレだ(笑)
ピアノのイントロから、サラが情感込めて静かに歌いだしてすぐ・・・全く唐突に「ドタっ!」という音が鳴ったのだ!それもかなり大きな音だ。その「ドタッ!」の、あまりの違和感に、3人とも思わずスピーカーの方を振り向いた。「何? 今の音・・・」 もう一回聞いてみる・・・「ドサッ!」はっきりと聞こえる。・・・どうやら何かが落ちたような音か・・・いや・・・バスドラの音だぞ・・・と、僕は言う。だとしたら・・・この「ドサッ!」は、ロイ・へインズの「演奏」なのか? いや、どう聴いても・・・この音は、意図した音には聞こえない。鳴るタイミングもあまりにも中途ハンパの場所だ。
「音楽」になってない。だから・・・演奏での音ではないだろう、と僕らは推測をした。
では、なぜあんな音が鳴ったのか?
konkenさん~ロイへインズの単純ミス説<たまたま右足を降ろしたら・・そこにバスドラ・ペダルがあった>
(笑)
bassclef~ロイ・へインズのミスはミスだが「バスドラ・ペダルのチェック説」
つまり・・・<ペダルの踏み具合を何気なくチェックしようとして(鳴らすつもりではなく、軽く踏むだけのつもりだったのだが、足が勝手に踏み込んでしまった>(笑)Swingin_sarah_l
《補足》このロイ・へインズの「ドサッ!」については、その後、konkenさんから、素晴らしいコメントをいただいた。「あれはミスではなかったかも・・・polka dots~という曲の中の歌詞(bump:ドスンという音/人がぶつかること、というような意味)に合わせて、ロイ・へインズが意図的に出した音だろう」という「新発見」である。コメント欄もぜひお読みください》

それにしてもサラ・ヴォーンは偉い。バラードの出足にあんな音響が鳴ったというのに、動じることもなく、そのまま唄い続けてしまう・・・プロですね。
いや・・・それでもあの「音」の後に、すっと振り返り、ロイ・へインズを睨みつけたかもしれない(笑) そうしてロイ・へインズの右足が凍りついていたのかもしれない。
実際・・・この曲では、もう2度とバスドラの音は鳴らなかったのだから(笑)古いレコードの中に潜んでいた、こんなエピソードと共に、この会もようやく終わろうとしているのだった。

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2007年4月20日 (金)

<ジャズ回想 第10回> ああ・・・この音だ。Yoさん宅、再・再訪記(その1)

いくつかの聴き比べを交えて「音楽」に浸った9時間。

推測だが・・・ジャズ好きという人種は「偏屈」である。もちろん、僕も例外ではなく、どちらかといえば狭い人間関係の下で生きている(笑) ところが、この3年ほどか・・・九州の新納さんの田園の中のレコード店~Ninonyno(ニーノニーノ)さんのBBS「こだわりの杜」に顔を出すようになって、そこでのやりとりを通じて、ジャズのお仲間が増えてきた。その後、このブログ<夢見るレコード>も始めて、さらに多くのジャズ好きの方と知り合うことができた。このごろでは、「杜」のお仲間と「ミニ杜」と称してオフ会的に集まったりもする。持ち寄ったレコードを聴いたり、しゃべったりしていると、本当に楽しい・・・そうして、判ったことがひとつある。「ジャズ好きはジャズ好きと語りたい」のである(笑) そして「オン/オフ」に係わらず、「語り合えるお仲間」がいるということは、素晴らしいことだ。
そんなお仲間のYoさんとは、たびたびジャズ話しのメールやり取りをしている。たいていは、最近入手して気に入ったレコードとか、逆にそうでもなかったもの、あるいは再発ものなどでも、やけに録音がいいと感じたものとか・・・そんなレコード話題である。レコードやミュージシャンに対する好み、あるいは録音に対する好み・評価などは、合ったり合わなかったりなのだが、そんなやり取りをしていると、「聴き比べてみたくなる盤」が、次々に浮上してくる(笑)
例えばこんな具合である。ある時、ラウズ~モンクのことから話しがグリフィン(リヴァーサイドの「ミステリオーソ」(nutty)に及んだ。
Yoさん~「モンクとやっているグリフィンは、緊張しているせいか大人しい」
bassclef~「いや、そんなこともない。いい感じでノッてるのでは」
お互いに「そうかなあ?」そして再聴してみるのだが、やはり意見は変わらない。それも伝える。またまた「う~ん・・・変だなあ」
その「ミステリオーソ」・・・双方の手持ちの盤は何なのかな?
う~ん・・・それじゃあ、ひょっとしたら録音の感じが違うかもしれんぞ(特にリヴァーサイドだから:笑)じゃあ、ぜひ聴き比べてみよう!・・・てな感じなのである。
Yoさん~Misterioso(riverside)黒・ステレオ《下の写真2点はYoさん提供》MisteriosoMisterioso_l

Dscn1691

《左写真:bassclef~Misterioso(riverside)青・小・モノラル》

この「ミステリオーソ」の聴き比べについては、すでにニーノニーノさんのBBS「こだわりの杜」に書き込みレポートをしたので、その書き込みを以下に再掲させていただきます。

モンク/ミステリオーソ(riverside)~
これは「モンクとのグリフィンはおとなしい感じ」というYoさんの印象~[ミステリオーソでは頼りなげに聴こえるんです。録音の所為かもしれません。モンクのピアノが強く明確に録られているので余計に音の小さなグリフィンがそのように聞こえるのかもしれません。ステレオだと左隅で小さくなって吹いているように聴こえます。(モノとステレオの違いも有るのかも?)]というYoさんと「いつものグリフィンだと思う」というbassclefのメールやりとりから、Yoさん手持ちの<黒・小・ステレオ>とbassclefの<青・小・モノラル>を、ぜひ比べてみよう!という経緯があったわけです。
曲はlet's cool one にした。この曲、途中でモンクらがバッキングを止めてしまい、完全にグリフィンのテナーだけになる辺りがスリリングだ。メロディがチャーミングで、モンク曲の中でも特に好きなのだ。
先に[黒・小・ステレオ]から~
聴き馴染んだあのメロディが始まる・・・ところが、グリフィンが左の方、それもかなり遠い。確かにYoさんの印象どおりで・・・・他の楽器とのバランスからいっても、かなり小さめだ。これは・・・「おとなしいグリフィン」になってしまっている(笑)これを聴いたのなら・・・たしかに「モンクに遠慮でもしているのか?」と感じてしまうだろう(笑)Yoさんに「う~ん・・・(なぜグリフィンが大人しい・緊張?と感じたのか)これで判った」と言う僕。Yoさん、ちょっとホッとしたような表情。
続いて[青・小・モノラル]~いきなりのピアノのイントロから音が元気だ。カッティングレベル自体もモノラルが高めにしてあるようだ。
そして・・・グリフィン。中央から太く、そして大きな音量バランスでテナーが鳴り始める。Yoさん「全然、違う!」さきほどホッとしたYoさん、今度は、モノラル盤の「粋のよさ」に、少々、悔しそう(笑)
どちらかというとステレオ派(特にライブ録音では)の僕でも、こうして続けて聴くと・・・この「ミステリオーソ」に関しては、モノラル盤の方が「音楽」が
楽しめる。う~ん・・・モノラルも悪くないなあ(笑)
それにしても解せないのが、この黒・ステレオ盤は、裏ジャケにray fowlerもクレジットされており、例の「変なステレオ3D図面」もある。
そして僕が聴いてきたステレオ盤(昔のポリドールの2枚組monk's world)でも、こんなに「遠いグリフィン」ではなかった。戻ってから聴いたファイブスポット未発表テイクでのグリフフィンも、中央やや左から、もっと大きなバランスで元気に鳴っていたのに・・・。この「黒・小・ステレオ盤」では、フォウラーが、意図的に、テナーを抑えたバランスでのミキシングをしたのかなあ・・・?当時のriversideは、ちょっと変則で、あるセッションなりライブの際、モノラル用の録音とステレオ用の録音を「同時に」やってしまったらしい。ミキシングで各楽器の位置、音量を「変えて」しまったのかもしれないし、録音の際の「マイクの位置取り」において・・・モノラル用の方にアドヴァンテージがあったのかもしれない(笑)
いずれにしても・・・モンクのファイブスポットは、本当にいいライブです。僕はもう大好きなレコードで、これでベースがアブダリマリクでなく(もちろん悪くないのですが)ウイルバー・ウエアだったらなあ(笑)と隣のkonkenさんに洩らした僕でした。



レコードというのは、普通は~普通でない場合ももちろんあるでしょうね(笑)~なかなか同じタイトルのものを何種類も集めない。しかし、そのレコードに「ラベル違い」があることが判っていて、しかもお互いの手持ちの中でそれらが揃ったとなると・・・これはやはりその「ラベル違い」で、どんな具合に音質が違うのか、あるいは違わないのか?  そんなことを知りたい気持ちになるのも、レコード好きとしては無理からぬことだろう(笑)
さきほどの「グリフィン」と同じ経緯で浮上してきたここ最近の「聴き比べ候補盤」あるいは「お勧めの好録音盤」(ほんの一部)を以下に挙げてみる。

Lorindo Almeida/~Quartet(pacific:PJLP-7) 10インチ盤~[ラベルの艶:有り/無し]
Stan Getz/~Plays(clef:10インチ盤)と ~Plays(norgran:12インチ盤)と 同音源のEP盤(EP-755)
Oscar Peterson/We Get Requests(verve)~このレコードは、MGM-VERVEのT字ラベルなのだが・・・「モノラル溝あり」と「ステレオ溝あり」と「ステレオ溝なし」の3種あることが判ったので、それもぜひ聴き比べてみよう!とあいなった(笑)
(以下は、bassclefの思う好録音盤として)
Frank Rosolino/Free For All~[米specialty盤とセンチュリー国内盤]
Thelonious Monk/Blues Five Spot(milestone/ビクター)
Bill Evans/Time Remembered(milestone/ビクター)この2タイトルは共に
1982年頃発売されたriversideの未発表音源だ。

こんな具合に「聴きたい盤」が増えてくると、どうしても集まりたくなる(笑) そんなわけで半年振りにYoさん宅におじゃますることになり、今回はkonkenさんと2人で藤井寺に向かった。早めに出たのだが、関~伊賀辺りが事故渋滞で、そこを抜けるのに1時間以上もかかってしまった。トンネルの途中で止まってる時など~まだこの先、何時間待たされるかも判らないので~せっかちな僕は「チャンスは今日だけじゃない・・・」と、あきらめかけたりしたのだが、konkenさん「ここまできたら絶対に行く!」と力強い一言。じゃあ、ってんで、覚悟決めて、あれこれとジャズ話しなどして渋滞の苦痛を耐え忍ぶ二人。いいかげんイヤになってきた頃・・・天は我々を見捨てなかった(笑) 伊賀の「加太(かぶと)トンネル」を出ると、とたんに渋滞が消えたのだ。二人とも「やったあ!」 後はもう、飛ばすに飛ばす(笑)
そうして 11:30頃にはYoさん宅に到着できたのである。よしっ、これでまた「あの音」が聴けるぞ!

左側に手すりのついた、ちょっと急なこの階段を上り始めると・・・そういえば昨年の秋、この部屋に14人も集まったのだなあ・・・と懐かしいような気持ちになる。あの時は先に到着していたパラゴンさんが「ヴォーカル特集」を展開しており、階段の途中で漏れ聞こえてきたのは・・・キャロル・スローンだった。スローンのOut Of The Blue(columbia)からの・・・deep purple~イントロ部分での、弦を使ったちょっと不協和音のようなアレンジが特徴的なあの曲~が流れていたように記憶している。もっともこういう記憶は、後から自分の中で勝手に脳髄インプットされたりもするので、アテにはなりません(笑)
*10月の「大阪・神戸・秋の陣」会の模様は、拙ブログ記事に長々と書いてあります。こちらからどうぞ。

さて・・・今回の3人会は、ラウズ3連発から始まった。ラウズから始まり、そのまま「テナー特集」と化し、次に「聴き比べ」をやり、インストばかりではちょっと厭きるので、「ヴォーカル」や「ピアノトリオ」を混ぜ、再び「聴き比べ」。その後、ちょっとだけクラシック。それからアルトで、またヴォーカル・・・そんな感じで、実にいい按配に、次々と「音楽」が流れていった。ひとつの曲が終わると、短くその感想を言い合い、そして次にかけるレコードを取り出す・・・時間がどんどん経っているようでもあったが、3人とも休む素振りを見せない。そして・・・全く疲れない。まるで名手の吹く自然なアドリブのようではないか(笑)

YeahYoさんが最初にかけたのは、チャーリー・ラウズの Yeah!(epic) からyou don't know what love is。普通はバラードで演奏されることの多いyou don't know だが、ラウズは、あえて最初からベースがゆったりテンポの4ビートを刻むリズムを選んだようだ。そして、ペック・モリソンの強くギザギザしたような音色が、目の前のスピーカーから弾んだ瞬間・・・「ううっ。これは凄い!」と僕:bassclefは、 唸ってしまった。右隣に座ったkonkenさんも、やはり「うう・・」とスピーカーの方を見つめたままだ。

《上下の写真2点ともYoさん提供》
Yeah_l前回、レコードによっては響きが膨らみすぎる場合のあった、ウッドベースの音が見事に締まっているのだ。いや、充分に存在感を感じさせながら、わずかに引き締まった感じになっているようなのだ。ペック・モリソンという人の参加レコードはそれほど多くないと思うが、そのいくつかのレコードで、音の大きそうなガッツあるタイプのべーシストだとは感じていたが、正直に言うと、ここまでペックモリソンが「凄い」と感じたことはなかった。
「凄い」というのは・・・なんというか、ペック・モリソンというべーシストの「音が大きい」ことが判るだけでなく、その一音一音に込める気合やら、ベースで紡(つむ)ぐライン全体の迫力・・・そんなものまで「判って」しまったという意味なのだ。
いかにも音が大きそうで太くて重くて、ちょっとギザギザしたような独特なモリソンの音色。心持ち、弾むようなビート感が心地よい。彼の刻む4ビートが見事にゆったりと、しかし決して鈍重にはならずに「音楽」を支えている。それに乗っかって、ラウズのテナーが深く沈みこむような音色でもって、自分の唄を吹き進んでいく。それから、デイブ・ベイリーの重心の低いドラムス。
それらがしっくりと溶け合った実に感じのセッションではないか。たぶん「音色」の相性までもがよかったのだろう。Yeah!という作品は・・・本当に傑作と呼んでもいいだろう。

そういえば、ラウズのテナーも、このEpic盤:Yeah!では、実に魅力的な音で録られているように思う。前々回の<夢レコ>では、ラウズの音色を「深い」と表現したが、Yeah!でもやはり・・・深い。その深さにさらに落ち着きが増して、どっしりした重さも加わっているような感じなのだ。
そのラウズのテナーの音色が、面白いことに、同じ時期の2枚のEpic盤~[Yeah]と[We Paid Our Dues]とでは、微妙に違っていたのだ。レーベルが同じでも「同じ音」と決め付けてはいけないようだ(笑)
以下、その比較の印象を少しだけ。(jazzlandのTakin' Care~も参考として聴いてみた)

Yeahの方~深みと重み、それに渋みがブレンドされたような音色。豊かに響く。ラウズは元々、わりとサブトーンを使うので、音色の輪郭自体も丸みのある方だが、やや膨らみ気味かもしれない。だがしかし、僕はラウズに関しても、Yeahでの音色の方が好みのような気がする。

We Paidの方~(Yeahに比べると)音色自体もちょっと締まり気味で、サブトーンなどの響きの余韻を程よく抑えたような感じ。だから・・・ラウズが少しだけ知性的になったような感じがする(笑)

Takin' Care(jazzland) からpretty strange ~この盤では、再び「膨らみ気配」のテナーになった。サブトーンの余韻もやや強調気味か。もちろん悪い録音ではないのだが・・・2枚のEpic盤の~両者共にどうにも魅力的なテナーの音色だった~直後に聴いたこともあり、「あれ?」という感じがするくらい「普通」のテナーの音に聞こえてしまったことも事実だが、まあそれくらいYeah!の録音が素晴らしいということだろう(笑)

・・・・・ラウズ3連発を聴き終えると・・・このYeah!を初めて耳にしたらしいkonkenさんも「ラウズも、いいねえ」と嬉しそうだ。
ハロルド・ランドやテディ・エドワーズ、それからこのラウズ・・・独りでじっくりと吹かせると実にいい味を出すタイプだと思う。その手のテナーのちょっといいレコードも、この後でかかることになる。

さて・・・今回は、いきなりの「驚愕のベースサウンド」で始まったので、その後かけたいろんなレコードのそれぞれのべーシスト達の「音の印象」を少しまとめてみたい。

《We Paid Our Dues(epic)黄・モノラル。写真2点ともYoさん提供》
We_paid_lWe_paid









ラウズ2枚目のレコード~We Paid Our Dues(epic) からは、バラード:when sunny gets blueを聴いた。 

~ラウズとセルダン・パウエルが3曲づつ分け合っての1枚。交互に1曲づつ配置されているとのこと。ラウズの3曲は以下。
When Sunny Gets Blues
Quarter Moon
I Should Care
2曲のスタンダードなど、とても趣味のいい選曲だと思う。気になるペック・モリソンの名が、なぜかパウエルの方のセッションに載っている(笑)

この曲でのべーシストはレジー・ワークマンであった。(このレコードでの)ワークマンは・・・ベースの音色がもうちょっと下の方に伸びたような感じ。音色の説明はとても難しい(笑)そうだな・・・ビル・エヴァンスのExplorations(riverside)でのラファロのベース音に近い感じかな。ワークマンもラファロと同じく一音一音をグウ~ンと伸ばすビート感を持つ弾き手だ。このレコードでも「巧いべーシスト」の音色だったが・・・その音量はたぶんペックモリソンよりも小さい。そして、ラウズのテナーのもっさり感には・・・ペック・モリソンの方が「相性」がいいように感じた。
いずれにしても、さきほどのペック・モリソンとはおもしろいように「音」が違う。いや・・・「音が違うことが判る」のだ。そしてそれは、それぞれの奏者にそれぞれの「個性」がある~そんな当たり前のことを、もう理屈ではなく目の前の音から確認できるということなのだ。
2人のベース奏者を比べただけでも、こんな風に「個性の違い」が見えてくる・・・これは面白いですよ(笑)
もちろん演奏の良し悪しや録音の具合によって、その「表われ方」に微妙な差はあるかもしれないが、音量・音圧、そして音色、そんなその奏者の「真実」を、そこにあるスピーカー(の間の空間)から感じとることができるのだ。聴く方には面白いが、演奏者には「怖い」ことだろうなあ(笑)
ちなみに、サックスやピアノは違いが判るが、ベースやドラムだと判りにくい・・・とよく言われるかと思う。管楽器やピアノの場合だと、その主役の吹くテーマやアドリブを聴き込めば(そして身体で覚えてしまえば)音色やら(特徴的な)フレーズなどから、各奏者の違いを聴き分けやすいのかもしれない。その点、たしかにベースが主役のソロイストとして、メロディーを弾いたり、アドリブを弾きまくることは少ない。しかし・・・僕は、ベースやドラムスの場合でも全く同じだと思う。ベースならその(好きになった)べーシストの演奏(ライン)を意識して、ある程度まで聴き続ければ、終いには「その奏者」のクセを身体が覚えてしまいます。そうなれば何かのレコードをメンバーを知らずに聴いたとしても「あれ?この弾き方は・・・」てな感じで「その奏者」だと、判るようになったりします。(もちろん判りやすい奏者と、そうでない奏者がいますが)
そうして、そんな「耳」(意識)になってくると・・・オーディオの「素晴らしさ」そして「怖さ」は、よりいっそう増すのかもしれない。

ベースの音がいいねえ・・・という感想をkonkenさんと言い合っていると、Yoさんが次なるレコードを繰り出してきた。
ソニー・ロリンズ/A Night At The Village Vanguard(bluenote)~UAラベルだったかな?~から softly as in a morning sunrise をかける。
*訂正~このbluenote盤は<RVG刻印ありのリバティー・モノ盤>でした(Yoさんコメント参照)

強烈な引っ張り力でウッドベースという楽器を雄大に鳴らしているであろうウイルバー・ウエア。
そのベース音は、ガット弦の特徴でもある、音色のエッジが丸く膨らみながら低い方に伸びるような音色だと思う。そのウエアの大きな音像が、充分な膨らみを持ちつつ、切れ味ある鳴りっぷりだ。
この曲でのエルヴィンはブラシで通すが、時にアタックを効かせたエルヴィンのバスドラが、コンパクトにドシッ!ドシッ! とすっとんでくる。乾いたいいドラムスの音だ。この頃のエルヴィンは、まだまだ端正な感じだ(笑)
僕は、もちろんこの「ヴィレッジ・ヴァンガード」は大好きなレコードで、以前にも記事にしたのだが、実は、このライブ盤の音については、ちょっとひずみっぽい雑な録音だと思っていた。しかし、このリバティ・ラベル盤は、ドラムもべースも、そしてもちろんロリンズのテナーも、いい具合にすっきりした、そして実にいい音だった。
以前からYoさんの装置では、ベースがよく鳴る。充分すぎるほどの音量・音圧がベース好きの僕にはうれしくなるようなサウンドだった。ただそれがゆえにレコード(その録音バランス)によっては、どうしてもベースが出すぎ・膨らみすぎの感じもあって、Yoさんももちろんそれを自覚されており、今回は、その辺りも調整をしてきたらしい。どこをどうしたとかは、例によって尋ねもしなかったが・・・出てくる音~その低い方から中音・高音のバランスは~さらに「いい方」へ(少なくとも僕の耳には)変わっていたのだ。
「ベースの音色」で言うと・・・低い方での響きの輪郭の広がり具合が2割くらい締まってきて、そのことで、ベースのライン(弾いている音程)が、より鮮明になってきた。「ベースの抜け」がぐんとよくなったのだ。特にウイルバー・ウエアとかジョージ・デュビュビエらの「大きく太く鳴らす」タイプのベースラインが、見事に「抜けた」ように感じる。今、思うに・・・どうやらYoさんは、「ベース音像膨らみの絞り気味調整」~その仕上がり具合を、ベースにうるさい僕に聴いて(聴きとって)もらいたかったのかもしれない(笑)

そして、ベースの音色の輪郭がややスリムになったことで、さらによくなった(と僕が感じた)のは・・・ドラムスなのである。実はベースの低い方とドラムスのバスドラ(右足で踏む大きい太鼓。直径が一番大きいので「ドン!」と低く鳴る)は、実際の演奏においても、わりと「かぶり」やすいらしく、バスドラがドン、ドンと大きめな音量で鳴ると、その瞬間(バスドラの響きの余韻が残っている間)自分で弾いているベースの低音が聞き取りにくくなることがあるのだ。そのバスドラが、以前よりすっきりしてきたようだ。バスドラ、ベースの中低音~その辺りの景色が、霞(かすみ)が晴れたように、クリアに浮かび上がってきたのだ。
そしてなぜか、ハイハット(左足で踏む~シンバル横向きに上下2枚に合わさったやつ。「ッシャ!ッシャ!」と鳴る)の音も、前よりくっきりと感知できたのだ。いや、以前ももちろん聞こえてはいたが、今回聞いたハイハット・・・シンバルの厚みというか・・・重みのある「ッシャ!」になっているのだ。特に冒頭でかけた、Yeah!(ドラマー:デイブ・ベイリー)とこの辺りは僕の錯覚かもしれないが・・・低音域のややかぶり的な要素が取り払われたことで、もともと鳴っていた中高音辺りのハイハットも、より実在感のある「鳴り」として浮かび上がってきたのかもしれない。あるいは、この「ハイハット」については「弦の艶が出てきた」ことと~ちょっと前の「杜」に、そんなコメントがあった~関係があるのかもしれない。
いずれにしても・・・ベースが豊かな響きはそのままに、よりタイトに少しスリムに(このことで、僕などはベースの音色により色気みたいなものを感じた)、しかもドラムスの方もぐっと見晴らしがよくなり、バスドラ、ハイハットもくっきりと浮かび上がる! これは・・・リズムセクションの動き・具合までじっくりと聴きたいジャズ好きには・・・もうたまらなく魅力のある音だったのだ。

~「じゃあ次はちょっと新しいエルヴィンだあ!」とkonkenさんが取り出したのは・・・
Elvin Jones/ Polly Currents (bluenote)liberty から Mr. Jones。
《写真2点はkonkenさん提供

Polly_currents_2 これは1968年だったかの録音で、だいぶエルヴィンの音が荒々しくなっている。テナーが凄い。このレコードには2人のテナー奏者がクレジットされていた。ジョー・ファレルとジョージ・コールマンだ。僕はジョー・ファレルはけっこう好きなので、初期のメイナード・ファーガソン時代のルーレット盤なども聴いていているが、なかなかワイルドな凄いテナー吹きだと感じている。長いソロを取るテナーがジョー・ファレルだろう。どうやらこの曲ではファレルだけがソロをとっているようだ。Polly_currents_label

エルヴィンのドラムス・・・この頃の録音になると、先ほどの1957年録音のコンパクトに締まった音とは、だいぶん違う。まず全体にドラムス(正に複数形のドラムスでないと感じが出ない)の響き全体がバカでかい!(笑)
スネアやらバスドラが、いちいち「ドカン!」「ドカン!」と鳴り響いている。いいんだもう・・・何でも。エルヴィンなら・・・許す(笑)
3人で豪快な鳴りのエルヴィンを堪能しました。しかしこの時代のエルヴィン・バンドのべーシスト~ウイルバー・リトル~は大変だったろうな・・・。さすがにエルヴィンが大きく鳴らしている時には、その響きに隠れがちだったが、それでもあのうねり・あの響きの中で、きっちりと芯のある強い音色が強力にビートを刻んでいるウイルバー・リトルもいいべーシストだ。
ああ・・・今日はベースばかりに耳がいく(笑)いや、耳がいかなくても・・・勝手に身体にベースの音が入り込んでくるのだ(笑)もともとベース好きの僕には、このYoさんの装置は、もう実に極楽なのであった(笑)


さて・・・そろそろ「聴き比べ」をやらねばならんね(笑)とYoさんと僕はゲッツの盤を取り出した。
同じ音源で4種の盤が揃った。
Yoさん~ Stan Getz/Plays(clef:MGC-137) 10inch
Yoさん~ Stan Getz/The Artistry(clef:MGC-143) 10inch
bassclef~Stan Getz/Plays(norgran:MGN-1042) 12inch
bassclef~Stan Getz/~Quintet(clef:EP-155) 7inch

ちなみに「子供キス」のジャケットで有名なStan Getz Playsだが、もちろん10インチ盤の方が古い。
Plays(137)とartistry(143)~こちらの方が元々の「子供キス」ジャケなのだ~の2枚の10インチ盤が発売された何年か後になって、12インチ盤のStan Getz Plays(1042)が出たのだろう。10インチ盤には各8曲。12インチ盤には12曲(137の8曲+143のA面4曲) 収録してある。

このスタン・ゲッツの聴き比べは、少し前に、ニーノニーノさんのBBS「こだわりの杜」の書き込みから浮上してきた話題だった。以下にちょっとその模様を転載します。

No.15098
ハンドルネーム:Yo   (2007.3.8,14:58:03)     
皆さん、ご無沙汰です。
ひょいと見たら10インチと12インチの話ですね。大概は10インチが先かなと思うのですが、Dukeさん、ひとつ下記の3枚の順序を教えて欲しいのです。(乱入すみません。)
Stan Getz Plays (Clef MGC137):Dec.12'52
Artistry of Stan Getz (ClefMGC143):Dec.29'52&Apr.16'53
Stan Getz Plays (Norgran MGN1042):Dec12&29 '52
Norgran12インチ盤が10インチのClef盤2枚をカップリングしてある感じですが、52年12月のセッションだけでまとめてあるので、オリジナルがどうなのか知りたいのです。特にあの有名なジャケがNorgran盤とClef143と同じなのでどちらが先か知りたいです。よろしくお願いします。 

No.15099
ハンドルネーム:Duke   (2007.3.8,16:06:44)     
Yoさん、お久しぶりです。Goldmine Jazz Album Price Guideとw. Bruynicckx著Modern Jazzz Discographyの両方で調べた結果、Clef MGC 137とMGC 143は1953年、Norgran MGN 1042は1955年となっています。NorgranのほうにはApr.16'53のセッションは入っていないようです。Yoさんのおっしゃるように「Norgran12インチ盤が10インチのClef盤2枚をカップリングしてある」ということになります。ご参考になれば。

No.15100
ハンドルネーム:Yo   (2007.3.8,16:49:02)     
Dukeさん、ありがとうございます。
あのゲッツがサックスを抱いて子供のキスを受けているジャケがどちらが先か気になったんです。そうですか Norgran1042は2年も後ですか?12月の早い2つのセッションをまとめてあるので、ひょっとしたらClef143が最後かなと思っていました。・・・良かった。Clef盤大事にします。(笑)・・・でもClef盤のゲッツの音が特別すごいとは思わないので、Norgran1042も聴いてみたいですね。

No.15101
ハンドルネーム:bassclef   (2007.3.8,19:24:31)     
Dukeさん、みなさん、こんばんわ。
10インチと12インチ・・・なにやら面白そうな気配が(笑)Yoさんが挙げられたゲッツの3種、やはり10インチ2枚が先ですか。「子供にキス」のジャケットは、10インチだと[plays]ではなくて、artistryの方なんですね。
>Norgran1042も聴いてみたいですね~
Yoさん、偶然にもそのNogran1042(12インチ)なら持ってました(笑)
以前「関西・杜の会」(Yoさん宅)でもちらっとかけてもらったゲッツのclef・EP盤(time on my handsやらbody & soulなど4曲入り)の音もかなりいいぞ、と思ってるのですが、Norgranの12インチ盤の方も、ゲッツのテナーの音は・・・かなりいいように感じました。もっとも僕の好みのゲッツが、52年頃なので、何を聴いても「よく」感じてしまうのかもしれませんが(笑)
またぜひ10インチと12インチとそれと7インチでbody & soulなど聞き比べてみたいですね。

~こんな具合で、この「ゲッツ・聴き比べ」は、僕自身もものすごく楽しみにしていたのである。1952年のゲッツ・・・僕はこの頃のゲッツがどうにも好きなのだ。どの曲においても、ゲッツがあのマイルドなテナーの音色で吹き始めると、フレーズがどうだとかなど考える間もなく・・・その曲は「ゲッツの唄」になってしまう。もう何をどう吹いても・・・ゲッツなのだ(笑)言わば・・・too marvelous for words(笑)  とにかく素晴らしい。

さあ、その1952年のStan Getz Plays・・・かける順番をちょっと相談した。
やはり時代の新しい方からということで、僕の12インチ盤Playsからにした。どの曲も素晴らしいのだが、どうせならEP盤(4曲収録)にも入っている曲にしよう、ということで、time on my hands を選んだ。 

Dscn1688_11  Norgran盤~ミディアムテンポにノッたピアノのイントロが流れてくる・・・すぐにテーマを吹き始めるテナー。盤質がそれほどいいとは言えないので、多少チリパチが入るが、ゲッツのテナーの音色は・・・くっきりとして充分に鮮度感のある悪くない音だ。ただ、中高音をわずかに強めにしたような感じもあり・・・だから、この12インチ盤でのゲッツのテナーは、ちょっとだけ硬質な感じに聞こえなくもない。というのも、僕はこのtime on my handsを、12インチ盤よりも先にEP盤で聴き込んでいたので、そのEP盤に比べての話しである。

Getz_plays10inch Clef盤~これが「Plays」だよ、と言われると、一瞬、たじろぐが(笑)・・・このイラストのジャケットも、さすがにデビッド・ストーン・・・実にいい味わいだ。なかなかお目にかかれない一枚でもある。裏を見て嬉しくなる。というのは・・・この10インチの裏ジャケットの写真(黄色のゲッツ)が、僕のEP盤と同じ写真だったのだ!

Getz_plays_bGetz_plays_l_2









《10インチ盤3点の写真はYoさん提供》

さあ・・・と同じ曲、time on my handsをかけてもらう。イントロでは、それほど大きな差は感じなかったが、 ゲッツのテナーが入ってくると・・・う~ん、やはりだいぶ違うぞ・・・先ほどの12インチの方がすっきり感のあるちょっと新しめの音とすると、10インチの方は落ち着いた感じで、ややこもった感じもあるが・・・その「こもり感」が心地いいのだ。 ゲッツのテナーが、よりソフトにマイルドに聞こえるのだ。  「ソフト」と言っても、音色がふやけたわけではない。テナーの音色の肌触りが「より木目細やか」になったと言えばいいのか。 そうしてその「マイルド」さは、僕が以前から知っているEP盤でのゲッツの音と同質なものだったのだ。音全体のイメージとしては「温かみと品がある」ということかもしれない。

7inch Clef盤~このEP-15 5は以前にも<夢レコ>に登場させたことがある。ここ、Yoさん宅の10月の集まりの時、第1部の最後にかけてもらった。その時、たしかDukeさんがこう言った・・・「いつものゲッツと違う!」僕の推測では、その「違う」は、よりソフトにキメ細やかに聞こえる、という意味だったのだと、今は思う。7インチ盤は一般に盤質が良くないことが多い。扱い方の問題なのか盤の材質の問題なのかは判らないが、僕のいくつかのEP盤にも盤質のいいものはほとんどない(笑)そして・・・ゲッツのこのEP-155は、うれしいことに、盤質が最高なのである。
Dscn1689このEP盤からの time on my hands は・・・音色の質感はやはり10インチ盤と同じ感じである。そして、もう少しだけテナーの音色に潤(うるお)いが増したようで、そのテナーの音色が、軽く「フワ~ッ」と浮かび上がってくるような感じでもある。う~ん・・・Dscn1690やっぱりこの45回転はいいなあ(笑)

《EP盤~EP-149とEP-155。10インチ盤:Playsの8曲が、この2枚のEPに、4曲づつ収録されている。同じセッションからの音源で型番も近いのに・・・なぜか155の方が音がいい。ゲッツのテナーが、滑らかでクリアなのだ。コンディションの差だけではないように思うのだが・・・不思議である》

もう1枚の10インチ盤~artistryの方からも何か聴こう、ということになり、かけた曲は、A面のthese foolish things。さきほどのPlaysの8曲は、52年12月12日の録音で、こちらのartistyのA面4曲は、12月29日である。録音日はとても近い・・・なのに録音の感じはちょっと違うようだ。Yoさんも僕も、この点については同じような印象を持ったようだ。つまり・・・artistryも、もちろん悪くないのだが、ゲッツのテナーの生々しさ~そんな「気配」のレベルでは、どうも12日の8曲の方が「いい録音」のようだね・・・というような話しをした。 Artistry_1《写真3点:Yoさん提供~この10インチ盤のartistryが、「子供キス」の初出自ジャケットである》 Artistry_b

・・・と、まあ、こんな 具合で会は進んでいくのだった。まだほんの少ししかお伝えしていないが、このままではあまりに長くなりすぎるArtistry_l(笑) だから、とりあえずここまでを「その1」として、ひときりつけよう。いったい「その~いくつ」までいくのだろう(笑)
まだまだお伝えしたいレコードのことや、聴き比べの話しもある。 
次回をお待ちください・・・。

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2007年3月 1日 (木)

<ジャズ雑感 第17回>チャーリー・ラウズのこと。

心に染み込む深い音色・・・それがラウズの唄だ。

妙に好きなレコードというものがある。「妙に」というのは・・・特にそのアルバムなりミュージシャンを大好きだと自覚しているわけではないのだけれども、なぜかレコード棚から取り出すことが多くて何度も聴いているうちに「好きなレコード」になってしまった・・・そんな意味あいである。

ジャズ聴きの初期の頃からモンクをいろいろと聴いてきた。そうしてモンク好きによくあるように、僕もチャーリー・ラウズというテナー吹きをあまりいいとは思わなかった。モンクとそしてモンクの曲と正に対決するように吹いたコルトレーンや、あるいは圧倒的に自分の個性を発揮しながらモンクと対峙したロリンズと比べると・・・モンクとただ共演しているラウズは平坦に感じた。ちょっと「のんびりしたような音色」で、同じようなフレーズを繰り返すものだから、凡庸なテナー吹きという印象を持ってしまったのだ。
<補足>このことについては、みなさんから多くのラウズ擁護コメントをいただき、僕:bassclef もタジタジです(笑) 「CBS時代のモンク」に興味のある方(肯定・否定どちらでも)ぜひ、コメント欄もお読み下さい。長いです(笑)

そういう風に聴こえたのには理由がある。
モンク好きとしては、モンク曲の演奏には、なにかしらスリル感みたいなものがほしいのである。
よくジャズはアドリブだ!と言われている。しかし・・・どの曲でも同じだとは思うのだが、あるテーマが終わって「はい、ここからアドリブだよ」というように、アドリブ部分を普通のバップ感覚でコード通りにスムースに吹き進めていっても、あまりおもしろくないことも多い。 特にモンクの曲においては、テーマとアドリブを切り分けてしまっては、あのユニークなモンクのテーマが生きてこないように思う。
モンク好きとしては・・・テーマ部分でのあのモンク独自のメロディや、あの不思議なタイミング(そのアイディア)のエッセンスみたいなものを、巧くアドリブの中に生かしてほしいのである。
もっともこれは、僕が勝手に思う理想郷(モンク曲解釈としての)であって、それは相当に難しいことなんだろう。
実際、モンクの曲をそんな風に吹いたのは・・・ロリンズとスティーブ・レイシーくらいかもしれない。Dscn1669_1

そんなラウズのことを見直したのは、Takin' Care of Business(jazzland)を聴いた時からである。僕はこのレコードをうんと安いOJC盤で買ったのでそれほど期待もせずに聴いたのだが・・・まずB面1曲目の wierdo という曲がよかった! このKenny Drew作の曲は魅力的なテーマの曲で、かなりの急速調で演奏されるのだが、この曲でのラウズはやけに気合が入っているのだ。ノリのいいテーマの後も、アイディアに溢れるアドリブ展開を見せるラウズは凄い! たいていゆったりとしたテンポで、もっさりとしか吹けないようなイメージをラウズに対して持っていたのだが、この曲でのラウズは違った。それはもう覇気のある見事なテナー吹きだったのである。
そんなラウズに驚いた後・・・思い切りスロウなテンポでやけにメランコリックな曲が流れてくる。それがランディ・ウエストン作のPretty Strange という曲だった。
ランディ・ウエストンが生み出した、正にちょっとstrangeなメロディを、独りラウズが吹いていくと・・・ずし~んと重く沈鬱な感じが漂ってくるのだ。うんとスロウなテンポなので、普通なら、間が持てなくなってパラパラと流すようなフレーズを出してしまいそうなものなのに・・・ラウズは全く動じない。ベースとドラムが淡々とリズムをキープしつつピアノが合間に時々バックをつける中、ラウズは岩のような重さを保ったまま、「メロディを唄う」ことのみに集中しているようだ。ここまで音楽に没入してくると・・・もはやフレーズがどうとかリズム感どうとかいうようなことは問題ではない。
「音色」こそが全てなのだ。
さきほど「のんびりしたような」と書いたラウズの音色が、このウエストンの曲では、これほど深々とした落ち着きのあるどうしようもなく魅力的な音色に聴こえてくる。これはもう・・・全くラウズの世界、そしてランディ・ウエストンの世界だ。それにしても、こんな深い味わいのバラードというのはめったにないぞ・・・。
ラウズがウエストンの曲を好きだったのだろうか・・・このレコードでは、もう1曲、ウエストンの曲を演っている。「204」という曲だ。この曲は、ウエストンのhi fly にちょっと似ている曲調だが、こちらもやはり素晴らしい。チャーリー・ラウズとランディ・ウエストンの相性は、最高にマッチしているように思う。
ちなみにランディ・ウエストンについては・・・次回にでも何か書こうと考えている。

そんな具合に、チャーリー・ラウズという名前が気になってきた頃に、ラウズの「ワン・ホーン」のレコードを手に入れた。
Yeah!(Epic/CBSソニー)である。Dscn1668
このレコードは1973年頃にCBSソニーから1100円の廉価盤として発売されたはずだが、ラウズ=凡庸と思い込んでいた僕が、この盤をその頃に買うはずもなかった。後年、この「Yeah!」にはけっこうな人気が集まったらしく、CBSソニー盤にさえけっこういい値が付いたりしていた。そんな日本盤高騰ブームが去ったある時、このCBSソニー盤を、普通の値段で見つけたのでうれしく入手した。
このレコードではラウズのワン・ホーンで、you don't know what love is や stella by starlightなどのスタンダードを、じっくりと自分のペースで吹いている。モンク曲とは全く別の地平でじっくりとスタンダードをゆったりと吹き進めるチャーリー・ラウズ・・・これも実にいいのである。
この人には本当は「ワン・ホーン」が合っているのかもしれない。
想うに・・・ラウズのテナーには、なんというか実にソウルフルな感じを受ける。ソウルと言っても、いわゆるテキサステナー的な意味合いのソウルではなくて、なんというか・・・深い情感を伴ったある種の敬虔さみたいなものさえ感じ取れる「ソウル」なのだ。
今回、レコードを何度も聴き直しているうちに・・・ますますラウズの音色の深さに引き込まれてしまった。ラウズという人の音色は・・・聴き終わった後にでもじわじわと効いてくるような、そんな地熱のような温かさを持った音色なのかもしれない。
まったく・・・ジャズの世界にはいろんなテナー吹きがいるものだ。まだまだジャズはやめられない。

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2006年2月26日 (日)

<ジャズ雑感 第15回> トロンボーンのバラード、ちょっといいやつ(B面)

ジミー・クリーヴランドのこと。2_001

トロンボーンを好んで聴き始めたのが、この10年くらいなのだから、クリーヴランドなんてところまでは、なかなかたどり着かなかった。
きっかけは、「クリーヴランド・スタイル」という日本盤を入手したことだ。僕の入手盤は、日本フォノグラムが1979年に発売した1500円盤シリーズ(15PJ~)だ。

この盤には、アート・ファーマー、ベニー・ゴルスン、それからウイントン・ケリーも参加しており、クリーヴランドといえば、たいていはこの盤が挙げられることが多いように思う。僕はそれほど期待せずに聴いてみたのだが、1曲目の out of this worldを聴いて~ラテン風というかアフロ風のアレンジで、それがこの曲の持つスケールの大きな雰囲気にピタリと合っている~この盤を気にいってしまった。それと、やはりメンツがいいのか、どの演奏にも気合がこもっており、ファーマーやクリーヴランドののソロもいいのだ。アレンジはアーニー・ウイルキンスだ。B面1曲目の long ago and far away も好きな曲だ。こちらにはケリーの短いが気の効いたソロが入っている。録音も全体にスッキリしており、1957年のステレオ録音としては案外いいように感じる。
「クリーヴランド・スタイル」・・・なかなかいいアルバムだと思う。

ジミークリーヴランドのリーダーアルバムはそれほど多くないようだが、emarcyには、他にいくつか残している。

Introducing Jimmy Cleveland(emarcy)1955年録音2_003

この Introducing~は3つのセッションで組まれていて、どのセッションでもクインシー・ジョーンズがアレンジャー&音楽監督(music director)になっているようだ。アーニー・ロイヤル、ラッキートムソン、セシル・ペインらの管部隊も悪くないし、オシー・ジョンソンやローチ、ペティフォードやチェンバース(早くもこの1955年夏の録音に参加しているのもちょっと驚きだ)らにも張り切った感じがあり、どのテイクもいい出来になっていると思う。
2作目の「クリーヴランド・スタイル」も好きだが、この第1作の方が~やはりアレンジがクインシーだけに~もう少しだけ味わい深いような気がする。

そういえば・・・「トロンボーンのバラード」のことを書きたいのだった(笑)

この盤を取り上げたのは・・・もう一重に my one & only love  という曲が入っているからである。ハンク・ジョーンズの格調あるイントロ。クインシーの絶妙なアレンジ~アンサンブルは~あのmy one&only love の出足のメロディの1小節(休符を入れて7音だけ)、サビ前とサビ終わりだけ~ほんとに限られた箇所に、しかも控えめな音量で入るだけなのだ。クリーヴランドはアンサンブルの出だし7音の3音だけ待ってからメロディを吹き始める。このアンサンブルに乗っかっていく感じ~音が被さって(かぶさって)厚くなっていく感じ~が実にいい感じなのだ。おそらくこれはクインシーのアイデアだろう。クリーブランドのリーダーアルバムには、たぶんワンホーンものはない。いつもトランペットにサックス、それからチューバ(Don Buterfield)まで加えて、ある意味、アレンジ過度の曲が多いようなのだ。

僕は、どんな楽器でも「そのミュージシャン」ならではの個性を味わいたい。だから、この my one&only love は、ほとんどクリーヴランド一人でメロディを吹いているということだけでも、僕には特別なバラードでもあるのだ。そうして、このクリーヴランドが・・・やはり素晴らしい。メロディをそれほど崩さずにキッチリと1コーラス吹き、それからピアノがサビのパートを弾き、最後のメロディをクリーヴランドが吹く、という1コーラス半のアドリブもない短い演奏だが、随所にちらっと入れるフェイク(軽い崩しみたいな意味)なんかにすごくセンスの良さを感じる。クリーヴランドの演奏には、全体になんというか・・・「品格」みたいなものを感じる。その品格が、趣味のいいアレンジと素晴らしいメロディと相まって、素晴らしいバラードに仕上がったのだ。それにしても my one & only love は本当にいい曲だなあ・・・。

A Map of Jimmy Cleveland(meucury)1958年録音2

これもまたアーニー・ウイルキンスのアレンジとなっている。久しぶりに取り出してきたら、この盤には Stardust が入っていたので、大いに期待して聴いてみたのだが、ちょっと・・・違った(笑) アーニーウイルキンスのアレンジが・・・僕の好みとは違っていたのだ。クリーヴランドが吹いたかと思うと今度はチューバがメロディを吹き始める。Stardust のあの素晴らしいメロディを・・・いろんな楽器に分担させすぎてしまったのだ。ワンホーン的なものを期待する立場からすると、曲本来の良さを台無しにしてしまっているように思う。だから「バラードのちょっといいやつ」としては、あまりお勧めできない。クリーヴランドならトロンボーン一丁だけで、どんなスロウな曲でも充分にメロディを唄いあげることができたのだろうに・・・残念である。アーニー・ウイルキンスはバラードのアレンジは得意ではないのかもしれない。

さて、クリーヴランド・・・こうしてemarcy時代の何枚かを聴いてみると・・・彼の音色は、「こもったようなぼわ~」としたのんびりした雰囲気の音色だと思う。楽器から飛び出た音の輪郭がまろやかで大きく拡がり、その分「切味するどい」というタイプの音色ではないようだ。切味の鋭さではやはり・・・JJジョンソンかフランク・ロソリーノだろうか?
そうは言っても、クリーヴランドは決して「古きよき時代のボントロ」というわけではない。アドリブのフレーズは細かく8分音符で刻み、そして速いテンポの曲でも随所に倍テン(ベースが1小節に4分音符を4つ弾くいわゆる4ビート曲の場合、ソロイストは普通の場合、8分音符を中心としたフレーズでソロをとる。「倍テン」というのは、その8分を16分音符中心にしてソロをとることなのだ。クリーヴランドの場合、その倍テンのソロで16分音符を同じ音程で続けたりする。凄い技だと思う。)を入れたりと、かなりモダンな感じがする。この時代(1957年)では、新しいコンセプトのトロンボーン吹きだったように思う。emarcyには、たしかあと1枚、リーダーアルバムがあるはずなのだが、残念ながら未入手である。

ちょっと探したら、他にもクリーヴランド参加のいいレコードがあった。2_002

リズムプラスワン(epic)1956年録音
この写真の盤は、残念ながら・・・CBSソニーの1300円盤です(笑)

リーダーアルバムはアレンジ要素が多くてワンホーンがない、と書いたが、この Rhthm +1 (epic) には3曲、ジミー・クリーヴランドが入っているのです。この盤での「リズム」とは、ハンク・ジョーンズ(p) ミルト・ヒントン(b) オシー・ジョンソン(ds) バリー・ガルブレイス(g) の4人のことだ。このカルテットに4人のソロイスト~コンテ・カンドリ(tp),セルダン・パウエル(ts),ジーン・クイル(as),そしてジミー・クリーヴランド(tb)に各3曲づつ、計12曲収録という、なかなかいいアルバムなのである。 
sahara   
wolf talk
blues
の3曲で、クリーヴランドのボントロがワンホーンでたっぷりと聴けるのだ。どれも悪くないが、特にbluesがいい。スロウなテンポでじっくりとクリーヴランドの唄(ブルースにも唄心というものはあるはずだ)が味わえる。バラードではないが、クリーヴランドの「ちょっといいやつ」としてお勧めしたい演奏だ。そして、この時のセッションからもう1曲~Jimmy's Tune~は、After Hours(epic) に収録されている。After Hours はオムニバスだ。この盤については、エルヴィンをテーマにしたの記事でも取り上げた。http://bassclef.air-nifty.com/monk/2005/08/3_c246.html エピックというレーベルも、なかなか侮れないぞ。
ああ、それにしても・・・やっぱりレコード探しはやめられない!(笑)

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2006年1月 1日 (日)

<旅レコ 第11回>ロス(郊外)&ホノルル編 

やったあ!アラモアナの裏通りにて中古盤店を発見!ついにLP盤を・・・。

99年6月、「アメリカ」に初めて行った。ロス&ハワイでの流通業の研修だ。ロスについてから、すぐにバスであちこちの巨大ショッピングセンターを次々に回っていった。僕は、ロス=ハリウッドと思い込んでいたので・・・遠くに小高い山々も見えたりすると、あの景色が~山に彫られた人物像たち~今にも現れるのではないか、とバスの中できょろきょろしていた。ところがロスと言ってもやけに広いのだ。観光とは無縁の研修の一行は、うんと南の郊外の辺りをグルグル回っていたようだ。宿泊もコスタメサという街で・・・あとでよく地図を見たら・・・結局、ハリウッド周辺には近づいてもいなかったのだ(笑)

オレンジ郡のショッピングセンターで昼食をとった後、記念すべきアメリカ初の個人的買い物をした。Bordersという書店の中のCDコーナーでCDを1枚だけ買ったのだ。こんな郊外の巨大ショッピングセンターには、LPなんかとてもありそうにない。ここはCDで我慢だ(笑)選んだのは・・・スタン・ゲッツ「Plays Burt Bacharach」$12.99~ちなみにアメリカの値付けというのは[$~.99]というのが多いようだ。別に$0.01だけ安くしても同じなのに・・・(笑) パっと見た目の気分で衝動を誘発しようというセコイ値付けではある(笑)
このゲッツのアルバムは持ってなかったし、CDでも紙ジャケのゲイト・フォールドなのが、ちょっとうれしい。次に寄った巨大モールでは、また大きな書店でシナトラのCDを2枚入手。これは、バーゲンのワゴンに混ざっていたので、各$6.99と格安であった。

しかし・・・やはりCDでは、おもしろくもなんともない。研修とはいえ、ここはアメリカである。あわよくば・・・レコード盤を扱う中古盤店が見つかるかも・・・などと夢想していたのだが、最新型の巨大モール内に、渋い廃盤店などあるはずもない(笑) 月・火・水と「ロス郊外」にいたのだが、やはり研修なので、昼間も夜も一人で出歩く時間もなかった。ロスでは「レコード」はあきらめるしかない。ロス3泊目の夕食は、ニューポートビーチ(ジャズの映画で有名なニューポートは、東海岸だったはず)という港の街だった。この街は、ヨットハーバーがいっぱいあり、近くの通りもオシャレな街並みだった。ここなら、探せば中古盤店もありそうな雰囲気があった。(最近、米オークションにてコンタクトしたある業者の住所が、このニューポートビーチだった。やはり・・・あの街には中古盤店があったのだ・・・) 食事は、ヨットハーバーに面した店の外のテーブル席だった。寒くもな暑くもなく、潮風が心地よくて「初夏の西海岸」という、おだやかないい雰囲気を味うことができた。

ロスからハワイへ移動。このホノルルには木・金・土だ。また空港からすぐに郊外のショッピングセンターをいくつか回った。合間に、いくつかの店で、シナトラ、チェットベイカーなどのCDを何枚か買った。この時点では、もう LP盤入手をあきらめていたのだ。中古レコード屋さんはどこかにあっても見つける時間も行く時間もない、と思っていた。研修第2ラウンドのハワイでは、24hオープンの食品スーパーの夜間営業の実態調査などもあり、寝不足に苦しんだが、金曜日の夜までに研修の発表など、やっつけるべきことをなんとか終えた。その金曜の夜遅くに、研修の仲間達とホテル近くのタワーレコードまで出かけた。アラモアナショッピングセンターのすぐ北側の通りに「タワーレコード」があることは、地図で調べておいたのだ。宿泊したホテルが、このアラモアナ地区だったので、歩いても5分くらいのところだった。そして実は・・・前日の昼間、バスで移動中に、この「タワーレコード」のちょっと裏通り辺りに「中古盤店」らしき店を見つけていたのだ。ちらっと通っただけなので確かではなかったが、あれは確かに「レコード屋さん」だった。
タワーでは、これまたバーゲンのワゴンからブルーベックやらシナトラなどを選んだが、僕はすぐにそこをを抜け出て、辺りを探りに行った。そして・・・あの店は・・・ちょっと裏の通りのほぼ予想していた位置に、すぐ見つかった。ちょっとパンクっぽいような派手なイラストがペンキで塗りたくられたような店で、「Hungry Ear」という名前だった。やったあ!ついに見つけたぞ!レコード屋を。こうなりゃあ・・・もうCDじゃあ我慢ならん!さあっいくぞ!しかし・・・店の前がなんだか暗い。ドアの看板を見ると・・・21時だか22時ですでに閉店している。そういえば、もうとっくに夜の10時過ぎだったのだ・・・。
だが・・・いいのだ。僕は余裕だった。幸運にも、次の土曜日の午後が「完全自由時間」となったのだ。待望の自由時間だ。明日の午後、もう1回、ここにくればいいのだ!どんなレコードがあるか・・・楽しみだ。

土曜日の午前中、ホノルル東部郊外のショッピングセンターの視察が終わったので、仲間と別れて一人でバスに乗り、市街地まで戻った。さあ、今からは自由時間だぞ! アラモアナショッピングセンターを通り抜け、タワーレコードには見向きもせず通り過ぎ、昨夜の裏通りに向かう。「Hungry Ear」に到着だ。「飢えた耳」とは、またしゃれた名前じゃないか。よしっ、今日は開いている。ワクワクしてくる気分を抑えつつ店に入る。入ると左にカウンター。右側にエサ箱がコの字の壁面と中シマに2列だったか。それほど広い店じゃあない。さあ・・・少しでもジャズがあるのか? ジャズのコーナーはすぐ見つかった。エサ箱で7~8列はあった。中古盤店なので、問題は、価格だ。どんな値付けなんだろう? ジャズを見るその前にチェックしたプレスリーとかは、やはり$40~50$以上はしていたが、ジャズの方は・・・あるある・・・ そうして、たいていのものが$10~$15ほどだ。$7~$8のものもけっこうあるようだ。お店の主力がロック系らしくジャズは・・・かなり安めのようだ。こんな具合だと、あれもこれも欲しくなる(笑) わくわくしながら、とりあえず「これは!」という盤を抜いていく。盤質はあとでチェックすればいいだろう。
この店でちょっとおもしろいのは、ジャケットを包むビニール袋が、透明ではなくやや白みがかったものを使っていることだ。最初は、この「白い濁り」のせいで、レコード全体がなんだかほこりっぽいものに感じたのだが、それは錯覚だった。ビニールから出したジャケットを見てみると、案外どれもコンディションがいいのである。だから・・・この「白濁りビニール」には、たぶんジャケの色落ちを防ぐような効果もあるのだろう。

1時間ほどチェックしただろうか。ざあっと抜いた盤が、軽く30枚くらいになっている。$10平均としても$300ほどだ。VG+くらいの盤質とジャケのコンディションであれば、価格的にはもちろん充分に安いのだから・・・まとめて全部!でもいいのだが・・・それよりトランクにどれだけ入るかが問題だ。持ってきたのは小さめのトランクだったし、6泊分の着替えやらで出発時からからそれほど余裕がない状態になっている。座席に持ち込める手荷物もショルダーバッグと紙袋くらいなので、そちらにLP盤をつめこむ余裕はとてもない。トランクは成田から自宅まで宅急便で送ればいいが、手荷物は自分で持ち運ばなくてならないのだ。レコード盤で重くなった手提げ袋を持って帰る、というのは、いくらレコード好きの僕でも耐えられそうにない。してみると・・・とにかく「LP盤はトランク」だ。それを優先にして、どうしてもはみ出るCDやらおみやげなど軽めのものを、大きめの手提げ袋で手荷物にすればいいだろう。ただ、トランクに非常にうまく詰めたとしても、10枚くらいが限界だろうな・・・。そんな段取りを考え、目標を10枚に設定した。ここから・・・いよいよ盤質をチェックした上での絞込みが始まるのだ。

中身の検盤をする際・・・無断じゃまずいかな、と思い、カウンターの若い男に I want to check the surface.OK? と聞いたら、No Problem! とすぐにOKしてくれたので、僕は一枚一枚の盤質チェックを始めた。さて、ここからがなかなか大変なのだ。何かとセコイ僕は・・・あれこれと悩むのだ(笑)振り落とす優先順位は・・・まず、「盤質がイマイチ」なもの。それに「日本盤を持ってる」「案外よく見かける」「OJCでも出てるはず」「買っても聴きそうにない」・・・いろいろな屁理屈をつけて、絞っていくのだ。まあ・・・この絞込みが苦しくも楽しかったりする(笑)

そんな風で、また30分くらいはかかったかもしれない。最終的には・・・やはりまず「持ってないので聴きたい盤」と「今後も含めてその盤の手に入りにくさ」(ほとんど思い込みだが)をポイントにして絞り込んだ。
当時、集めだしていたCadet盤のラムゼイ・ルイスを以下の4枚。herb_ellis__rumsey_lewis4_007

Wade In The Water
Never On Sunday
Hang On Rumsey
The Piano Player

「Hang On Rumsey」~これはライブ盤で、ビートルズのA Hard Days Night や And I Love her を演ったりしているのだが、
これが案外、悪くない。ラムゼイルイスという人は・・・もう体質として8ビートフィーリングが自然に湧き出てくるタイプのようで、しかし・・・とにかく聴き手を楽しませてくれるピアニストだ。だから、このライブ盤では、聴衆がもうノリノリになっていく様子がよく判る。特に売ろうとしてビートルズの曲を取り上げたのではなく、単にこの場の聴衆を喜ばせよう、という芸人の精神の塊りのような人なのだと思う。ジャズロック風の曲の合間に混ぜるバラードも、ソウル節・泣き節がいっぱいのちょっと「クサイ」バラードではあるが(笑)・・それも僕は嫌いではないのだ。

<やったあ度>が高いのは・・・これだ。
Herb Ellis/Three Guitars in Bossa Nova(epic) 
herb_ellis__rumsey_lewis4_006

3ギターというタイトルにあるとおり、ハーブ・エリスとローリンド・アルメイダ、もう一人、ジョニー・レイというギター奏者。
これに、管が1本だけ~ボブ・エネヴォルセンがテナーのみ(この人、普通はどちらかというとヴァルブ・トロンボーン奏者として知られているように思う)で参加しており、このテナーが・・・これが実にいい味わいなのである。ギターやドラム以外の打楽器も加わり、ボサノヴァ好きの僕としては、これはもう予想外に素晴らしくリラックスしたいい演奏の盤である。この盤は、存在さえ知らなかったので、とてもうれいし1枚となった。エピックというレーベルは、案外、復刻がなされてないので、まだまだ未知の盤があまたありそうである。ちなみに写真の下の方に見える「黄色い内袋」は、エピックのオリジナルなのだろうか?広告・活字が一切ないので、全く別のものかもしれないが・・・見た目や紙質に「古み」があるし、センターラベルの色と合わせたオリジナルのinner sleeve のような気もする。(どなたかご存知の方・・・ぜひ、お教え下さい)

Gerry Mulligan/Concert Jazz Band on Tour(verve)T字/銀・黒~残念ながらMGM-Verveです~mulligan_on_tour

マリガンの「コンサートジャズバンドもの」は、いろいろなタイトルがある。At The Village Vanguard(こげ茶色のジャケのやつ)も悪くないが、僕はズート・シムスが好きなので、シムスが加わっている「白のマリガン」~[Concert Jazz Band](<夢レコ> 9月27日の記事「ジャズ10時間聴きまくり」で紹介しております)や、この[Concert Jazz Band on Tour] の方が、より気に入っている。そして、この「~on Tour」は、ゲストソロイストとしてズート・シムスの名をジャケットにわざわざ載せているだけあって、シムスの出番は、この盤が一番多い。シムスのソロも、全体の内容もすごくいいのに・・・なぜだか、この「~on Tour」は、意外と見かけないように思う。

他には・・・エロール・ガーナー(columbia)、ジャキー・パリス(wing)、ジョニー・ホリデイ(kapp)など13枚に落ち着いた。
この時、候補に残していたはずのブルーベックのcolumbia盤2枚は・・・なぜか忘れてしまったのだ。デスモンドも好きなので、最終選考にも残してもよかったのだが・・・はっきりした記憶がないのだが、盤質が悪かったのかもしれない。

アメリカ(ロス&ハワイ)での入手盤は・・・僕の手書きリスト(6月13日の記事<ジャズ雑感 第1回>レコード買いの記録~究極の時系列・・・いや、単に横着な僕のレコードリスト)の欄外に、こう書いてある。
CD  17枚($211)
LP  13枚($126)
今、この数字だけ見れば・・・LPを13枚しか、と思うのである。CDなどには目もくれずにおけば、その「厚み」のスペースであと10枚くらいはLPがトランクに収納できたかもしれないと(笑) もっとも・・・中古レコード盤を入手できたのは、帰る前日の午後である。それも予定にない半日の自由時間ができたことで可能になったことだった。アメリカについてからの月~金までは、「LPは無理かあ・・・じゃあせめてCDでも・・・」という止むに止まれぬ心情だったのだ。やれる範囲でやったのだ(笑) いずれにしても・・・僕はこの8日間を・・・研修よりもレコードゲット作戦に心を砕いていたようだ(笑)

ちなみに、トランクへの「詰め込み作戦」は、本当にピッタリ!13枚のLPを中心に考え、そこから全てを始め、タオル・シャツ・トレーナーなどをうまくパッキングに使い、ギュウギュウに押し込み、なんとかトランクのフタが閉めた、という状態であった。当然、もの凄い重さになった。空港では、仲間に「ちょっと提げてみて」とやり、みんながびっくりするのを楽しんだりした。傑作なのは・・・成田からの宅急便の扱いの時、「あまりにも重いので規定外です。破損があっても保証できませんがよろしいですか?」と書類にサインさせられたことだ。それくらい重かった(笑) 
そうして、成田でもトランクは開けなかった。冗談ではなく、一度フタを開けたら、もう締まらなくなるだろう・・・と思ったのだ。だから中身のチェックもしないまま、宅急便に預けてしまったのだ。
そうして月曜日の夜、自宅に帰り着いたが、「トランク」は翌日、自宅に戻ってきた。外見は大丈夫だ。さあ・・・果たして中身は無事なのか?
~飛行機の荷物室と空港での乱暴(であろう)取り扱い。それから成田からの長距離トラック~これらの難関をうまく乗り越えられたのか? 僕は・・・緊張してトランクの鍵を開け、フタを開けた。グルグルに囲ってあるタオルや衣類の詰まった袋などをとりのぞき・・・いよいよ、レコード13枚の袋を開けてみる・・・・・おおっ!大丈夫だ! どのレコード盤も無事だ。ジャケットのカドも全く曲がってない。盤も大丈夫だ。全て問題なしだあ~!

この時は、本当にうれしかったし・・・何よりほっとした。無理して詰めた「レコード達」に何かがあったら・・・重い荷物を嫌がったこのオレが・・・ちょっと横着をしたために、レコードが痛んだことになってしまう。たぶん、そんな気分もあったのだろう。そういえば、ひとつだけ軽い被害があった。1枚だけ、CDのプラケースがひび割れていた。トランク内で寄りかかった重量に押しつぶされたようだ。やっぱり「プラスティック」はだめだな。「紙」ならどんなに押されても、割れたりしないぞ(笑)  かなりの屁理屈ではあるが・・・やはり・・・アナログは素晴らしい!

それにしても・・・この出不精な僕が、またいつかホノルルに行くことなどあるのだろうか? 飛行機の10時間さえなければ・・・すぐにでも行きたい(笑)

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2005年8月 9日 (火)

<やったあレコ 第3回> After Hours Jazz(Epic) ああ、エルヴィン!

ハードバップ・エルヴィン~素晴らしいあのビート感!

何年か前に「ハードバップ・エルヴィン!」と題して、エルヴィンのレコード・リストを作っていたことがある。ハードバップ・エルヴィン!などと勝手にタイトルしたが、要は、コルトレーンとの共演以外ののエルヴィン参加アルバムのリストなのだ。コルトレーンとのエルヴィンは、もちろん凄いのだが、普通の4ビートでのエルヴィンも、これまた凄い(笑) 4ビートの場合、右手に持ったスティックで右側にセットしたトップシンバルを叩く~基本は「チーン・チーキ・チーン・チーキ」だが、それはあくまで基本であって、バリエーションは自由~のだが、この「シンバル・レガート」の鳴り方、いや、鳴らせ方が、エルヴィンだと、もう全然違うのだ。何が違うって・・・なかなかうまくは言えないが・・・手首を柔らかく使ってなめらかに、しかも豪快に鳴らしている。そうして、どんなテンポでも「速度」を感じさせる。といっても、テンポが軽はずみに走ったりするわけではない。「速度」というのは、「速度感」のことであり、テンポが速いとか、遅いとかいう問題ではない。この「速度感」というのは、おそらく・・・一定のテンポに対し、微妙に「突っ込み気味」だったりするシンバルワークや、ちょっと「もたれ気味」だったりするバスドラ、これに、時々繰り出す「爆風のようなロールと、そのロールの響きを巻き込むように、強烈なシンコペでドカーンとくるバスドラとシンバルの強打」・・・そんなもの全体から浮き出てくるfeelingなのかもしれない。一定のテンポを、とにかく律儀にキープするだけのドラマー~例えば、コニー・ケイ。(もちろんMJQの音楽には、あのスタイルが合っているのだろう)彼と比べてみれば、いかに全体のドラミングの表情が違うものか、お判りいただけるかと思う。
とにかく・・・エルヴィンの、あのシンバルレガートからは、凄いビート感が生まれてくるのだ。そうして、「ジャズ」という音楽の中で、どこに一番「ジャズらしさ」を感じるか、というと・・・それが、このこの「ビート感」なのだ。
同じように、凄いビートを感じさせるトニーのシンバルレガート。しかし・・・トニーとエルヴィンでは、ビートの質感が違う。トニーのレガートは、「爽快」だが、エルヴィンのレガートには、もう少し「重さ」がある。トニーのスピード感というのは、例えば・・・50kmの速度を、125ccのバイクでキビキビと走る感じか。
そうして、エルヴィンは・・・速度は同じだとしても、トルクに余裕を感じさせる400ccでゆったりと、しかもキレを保ったまま走る、というような感じか。もっともエルヴィンの場合、バイクというよりも、「野生の馬」で、自由自在に草原を駆け巡るようなイメージの方が似合ってる。何かに「乗る」というのを「ライド:ride」というが、「リズムに乗る」という状態も「ride」表現しているようだ。エルヴィンのシンバルレガートからは、文字通り、この「ライド感」がたっぷりと感じられる。そうだ、それにトップシンバルのことを「ライド・シンバル」ともいうじゃないか。エルヴィンのレガートは・・・聴いていてとにかく、気持ちがいいのだ!ひょっとしたら、ジャズを聴く上での「快感No.1」じゃないだろうか。
そして、そんなエルヴィンの「快感」を味わうには、コルトレーンとの諸作よりも、素直な「ハードバップ・エルヴィン」の方が最適なのだ。思いつくレコードを何枚か挙げてみる。

050801_001After Hours Jazz (Epic ) LNー3339
この盤は、いろんなセッションからのオムニバスだ。例の「Jazz Data Bank」(拙ブログ~月~日の記事)の「トミー・フラナガン」の項に、このレコードのジャケ写真が載っていた。その記憶を頼りに、トミ・フラ目当てで入手したのだ。だから、この盤を聴いた時、エルヴィンが入っていることを失念していた。そしてB面1曲目~サヒブ・シハブ(bs)のリーダーセッションだろうか~<Hum-Bug>を聴いて、僕は驚いてしまった。おおっ!このシンバル・レガートは!このキレ、このノリは・・・エルヴィンしかあり得ない! とすぐさまジャケ裏をチェックすると・・・やはり、エルヴィンだった。うれしい~(笑)
シハブとのセッションは、2曲のみで、もう1曲は<Southern Exposure>で、トミフラやケニーバレル、エディ・バート(tb)も参加している。 

ベニー・グリーン/ソウル・スターリン(bluenote)東芝盤
 ブルーノートにエルヴィンは珍しい。エルヴィンのライド・シンバルにのって吹きまくる太っい(ぶっとい)音色のトロンボーン。無骨いテナーのジーン・アモンズも負けてはいない。2人ともディープなソウルに溢れている。
そんな重量感のある管奏者たちにキリリと絡むソニー・クラークのピアノがチャーミングに映える。バラードの「That’s All」は、思い切ったスロウなテンポだ。情感あふれるソニー・クラークのソロも絶品。これは、本当に好きな1枚だ。

クリフォード・ジョーダン/ストーリー・テイル(jazzland)Wave盤
ジョーダン(ts)とソニー・レッド(as)の2管にロニー・マシューズ(p)かトミー・フラナガン(p)が入る。61年録音なので、(私的には)
僕の思っているハードバップより少し新しい感じかもしれない。新しい・・・というのは、要するに「モードっぽい曲」が多い、ということだ。
割と急速調の曲が多いが、2管でモード、ということで、なにか後のエルヴィンのコンボのサウンドの原型のような感じも受ける。
ソニーレッドも好きなアルトだ。マクリーンほどではないが、音色が、充分に「濃くてドロドロ」している(笑) うれしくなってしまう。050801_003 

ところで・・・エルヴィンのドラム音というのは、レコードでは、どうも「抑え目」に録音されていることが多いように思えてならない。
JJ ジョンソンと演ってるColumbiaの録音では、特にそう感じる。おそらく、録音ディレクターが、エルヴィンの「音のあまりの大きさ」に驚いて、思わず(録音技術上)入力レベルを下げてしまったのでは? と邪推したくなるほど、ドラム音が「遠い」。遠くて小さい。残念である。このジャズランド盤でも、若干、その傾向を感じる。その点、インパルスは偉い!エルヴィンのヴォリュームを基準として、他のレベルを合わせてる感じで、ドラムスが主役といってもよさそうだ。

最後に、オマケとして・・・僕がリストアップした「ハードバップ・エルヴィン!」の古い方から、1958年くらいまでの分を、ちょっと書き出してみる。もちろん完全じゃあない。録音年月もいい加減なものだ。追加情報も、ぜひコメントにて、お知らせ下さい。

1948年(と解説にあるが、そんな古いはずはないだろう)
?   variousu aritists/Swing,Not Spring (savoy) 4曲

1955年 
 7月  Miles Davis/Blue Moods (debut)  4曲

1956年
 5月  variousu aritists/After Hours (epic)    2曲
 7月  J.J.Johnson/Jis For Jazz (columbia) 4曲
11月  Bobby Jasper/~ Quartet (仏columbia)  8曲
12月  Art Farmer/Farmer’s Market (new jazz) 4曲

1957年
 1月  Sonny Rollins/~ Plays (period)      1曲のみ
 1月  Thad Jones/Mad Thad (period)       3曲
 1月  J.J.Johnson/Dial For J.J.(columbia)10曲
      Jay & Kai/ Jay & Kai (columbia)  1曲のみ(I should care)
 2月  Kenny Burrell/Blue Moods (prestige)   6曲
 2月  Thad Jones/The Magnificent vol.3 (bluenote) 4曲
 2月  Thad Jones/Olio (prestige)   6曲
 5月  Paul Chambers/~ Quintet (bluenote)  6曲
 5月  Bobby Jasper/with George Wallington(riverside)6曲
 8月  Tommy Flanagan/Overseas (   )  9曲+3曲
10月  various artists/Roots (prestige)  2曲
11月  Sonny Rollins/A Night At The Village Vanguard            vol.1~vol.3(bluenote)
11月  Sonny Red,Pepper Adams,Wynton Kelly etc./Two Altos(savoy) 2曲
11月  同じ/Jazz Is Busting Out All Over (savoy)                  1曲
11月  Red Rodney/Fiery (savoy)  3曲
11月  Pepper Adams/The Cool Sound Of ~(regent) 4曲

1958年
 1月  Mal Waldron/Mal 3 (new jazz) 5曲
 3月  Pepper Adams,Jimmy Knepper (metro) 7曲
 4月  Bennie Green/Soul Stiring (bluenote) 6曲
 4月  Jones Brothers/Keeping Up With The Jones          (metro) 7曲
 ?   Hank Jones/Porgy & Bess (capitol) 10曲 
 4月  Pepper Adams/10 to 4 At The Five Spot       (riverside) 5曲
10月  Lambert,Hendriks&Ross/The Swingers (pacific)      1曲のみ(jackie)
10月  Steve Lacy/Reflections (new jazz) 7曲

1959年

 6月  Herb Geller/Gypsy (atco) 8曲
10月  Thad Jones/Motor City Scene (united artists) 
(追加)1959年~
 2月  Gil Evans/Great Jazz Standards (world pacific)
  3月  Tommy Flanagan/Lonely Town (日キング)
 3月  Crutis Fuller/Sliding Easy (united artists)                       
 5月  Randy Weston/Destry Rides Again(united artists)
 5月  Art Farmer/Brass Shout (united artists)

・・・・ああ、キリがない。この辺りでやめとこう(笑)

いつまでも現役でドラムを叩いてくれるのでは、と思ってたエルヴィンが昨年(2004年)亡くなった。エルヴィンの本当の凄さはテクニックなんかじゃない。今、演ってるその演奏を「もっとビートを出すぞ。もっともっと熱くしようぜ!」という気合いを、どの時代にも持ち続けたことなんだと思う。昨年、エルヴィンが亡くなる直前、たまたま、米オークションでエルヴィンのブルーノート盤(Liberty)に友人の代理でビッドしていた。運良く落札できたのだが、その少し後、エルヴィンの永眠を知った。僕はそのfeedback欄(オークションの取引後に短いコメントをアップするコーナー)に、こう書いた・・・<We Love Elvin Jones!We Love Jazz!>

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