Emarcy

2009年3月22日 (日)

<思いレコ 第16回>クリフォード・ブラウン with ストリングス

クリフォード・ブラウンの音色そのものを味わいたい~

002_3 休みの日に好きなレコードを聴く・・・僕にとっての幸せというのは、ほとんどそんなことだ(笑) そうして「好きなレコード」はいくらでもある。聴きたいな・・・と思うレコードは、その日の気分によって変わってくる。
今日は朝から雨模様で薄暗い。僕の気分もなにやら仄かに暗いようでもある。そんな時・・・僕はなぜかWith Stringsを取り出すのだ。
クリフォード・ブラウンのトランペットのあの「鳴り」が流れてきた瞬間、「ああ・・・いいなあ」
その音色に触れるだけで・・・実際、沈んだ気持ちが癒されていくのである。
あのちょっと軽めにも聞こえるパリッとしたペットの鳴り・・・本当にスカッと抜けたようにキレイに鳴っている。そのトランペットの音色が気持ちいいのである。これは・・・理屈じゃない。それは僕にはほとんど条件反射だ(笑) そうじゃない人もいるかもしれないが・・・レコード盤から出てきた「音」に幸せを感じてしまう人間がいる~ということも真実なのだ(笑)

A面が終わると・・・僕は迷うことなくレコードをひっくり返す。そうしてB面も聴き通す。同じような曲が続くのだが、不思議とあっという間に40分が過ぎてしまう。その間、思っていることは・・・「ああ、いいなあ」だけなのである(笑)いい音楽、いいレコードというのはそうしたものだろう。今日の僕にとってはそれが、With Stringsだったわけである。

007このクリフォード・ブラウンの作品、僕は長いこと日本フォノグラムの廉価版で聴いてきた。もちろん最初から嫌いではなかったし、よく言われるような「アレンジが古臭い」とかもそれほど気にならなかった。だがしかし、折りにふれ聴きたい~と思うほど好きなわけでもなかった。

005_3そんな「ウイズ・ストリングス」に特別な愛着を覚えるようになったのは・・・ちょっと前に入手した米EP盤~その中のブルー・ムーンなど聴いた時だった。クリフォード・ブラウンが吹くトランペットの音色の張り具合、輝き、そして何よりもその音の抜け方みたいなものが、国内盤とはだいぶ違うように感じたのだ。006

《EP盤はたいてい4曲収録なので、この2種で計8曲。12インチ盤には12曲収録だから、あともう1種、EP盤があるはずで・・・やっぱりそれも欲しいな(笑)
7インチ盤~柄は小さくても「ブルー・バック」なのが、ちょっとうれしい(笑)》

たぶん僕は、EP盤で聴いた「音色」にそれまでには感じたことのない「ブラウンという人の存在感」みたいなものを感じ取ったのだろう。ただ・・・そのEP盤はオリジナル盤と聴き比べると、ややハイ上がりでふくゆかさに欠けており、さらに2枚ともカッティングレベルが低いようだった。EP盤好きの僕は少々がっかりしたものだが、「With Strings」への愛着はますます湧いてくるのだった。

004_2そうしてちょっと前に12インチ盤「With Strings」を入手した(一番上の写真参照) 残念ながら、これはemarcyの再発で、センターラベルがドラマーの付いてないemarcyの2ndか3rdラベルだ。もちろん裏ジャケットもブルーバックではない。
追記《センターラベルは、Mercuryです。ジャケ表記はemarcyなのに:笑》003

だがこの再発emarcy盤の音・・・これが意外によかったのだ。
鮮度感はあったがややハイ上がりのEP盤と比べると、このemarcy盤では中音域が厚くなったというか・・・トランペットの音色がふくゆかになり、音全体に艶やかさが増してきたのだ。そうしてクリフォード・ブラウンがその艶やかで瑞々しい音色で、例えばcan't help lovin' that manのメロディをじわじわと吹き込むと・・・比喩ではなく、その音が僕の体に沁み込んでくるのだった。

このWith Strings~ブラウンはいわゆるアドリブをほとんど吹かない。どの曲もスローテンポのバラード調なのだが、ブラウンはそんないい曲のメロディを、慈(いつく)しむように・・・丁寧に吹く。ブラウンは本当にゆったりと吹く。パラパラとフレーズを細かく刻んだりはせず、自分自身が、ゆったり伸ばしたロングトーンの響きを楽しんでいるようにも思えてくる。トランペットという楽器の本当に美しい響きをひっそりと味わうだけでいい・・・そんな音楽なのかもしれない。
そうして、ブラウンが丁寧に吹くメロディを味わい尽くすためには・・・その音色全体のニュアンスがとても大事な要素になるのだと思う。

~追記《僕が気に入っているクリフォードの吹き方がある。この男、キレイにプワ~ッと伸ばしたその音の音圧と音量を保ったまま・・・どんな仕掛けか、その音を「むわわ~ん」と膨らましたような感じにするのだ。「膨らます」と言っても、音が拡散してしまうわけではなく、響きはあくまでクリアなままで、その音の輪郭だけを微妙に変化させる・・・シャボン玉を柔らかく膨らましているような・・・そんな感じかな。そんな風に聞こえる場面が確かにある。そしてそのクリフォードの「決め技」に・・・僕は参ってしまうのだ(笑)》

この頃の僕はなんとなく疲れ気味で、そのためか、このレコードを聴きたい・・・と思うことも多い。そうして、聴くたびに・・・気持ちよくなる(笑)
この「クリフォード・ブラウンのウイズ・ストリングス」は・・・僕にとっては、本当に大事な1枚である。
もちろん、1stのオリジナル盤はもっと凄いだろうな・・・と思わないわけでもないが、今の僕にはこれで充分だ。
当分は・・・1stオリジナルを耳にしない方がいいのかもしれない(笑)

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2009年1月 2日 (金)

<ジャズ回想 第18回>ジャズ好きのささやかな幸せ(笑)~Pacific10インチ盤を巡って

大晦日~recooyajiさんとああだこうだのレコード聴き。

毎年、暮れの31日のお昼過ぎになると、僕は何を置いても出かけていく。すぐ近所のレコードのお仲間~recooyajiさんと「暮れのレコード聴き」をやるのである。何も暮れも押し迫った31日に集まらなくても・・・とも思うのだが、二人とも前日まで仕事のことが多くて、それに大晦日に家の掃除などするのも面倒なので、こうやって集まればその3~4時間は掃除免除となるのもいい(笑) そんな訳で、この2人集まりは恒例行事になってしまったようである。001

「何からいきましょう?」と問われた僕は、いくつか持ってきた10インチ盤の中からintroducing Joe Gordon(emarcy:10インチ)を取り出す。

《上の写真~モノクロ写真に濃い目の緑色が効いている。左後方のベース弾きがソフトフォーカスになってるのもいい。好きなジャケットだ》

これ、長いことCDで我慢していたが、ようやくこのオリジナル盤を入手できたので、最近、よく聴いているのだ。
A面1曲目~toll bridge から始めた。これを聴くといつも「あれ?このテーマ・・・どこかで聴いたことあるぞ」と思うのだが、そういえば、これ・・・モンクの「ハッケンサック」という曲と同じようなテーマじゃないかな。
002このジョー・ゴードン盤~emarcyにはなんとなく似合わないようなゴリゴリのバップ、いや、ハードバップになりかけ・・・かな。そんな黒っぽいジャズになったのは、やはりテナーで登場するチャーリー・ラウズのおかげだろう。ラウズのソロが思いの他、良いのである。どの曲でもゴツゴツした音色(後年よりも)でガッツあるソロを取っている。ちょっと残念なのは、このemarcy盤・・・録音が1955年と古いこともあってか、音質はあまり良くないように思う。
ちなみにEP盤よりも10インチ盤の方が鮮度感があるようだ。
そういえば、ジョー・ゴードンってリーダーアルバムが少ないよね・・・なんていう話しになると、recooyajiさん、すかさず、Joe Gordon/Looking Good(contemporay)を取り出してきた。emarcyとは、明らかに音の質感が違う。さきほどのクリアではないがグンと重みのある東海岸の音と比べると、うんとカラッと、全体にとてもすっきりして、聞こえる。emarcy盤は1955年、こちらは1961年の録音なので、録音機材も良くなってはいるだろうが、そのためだけではなく、やはり東海岸と西海岸の音は~録音された音~その質感・肌合いにおいて、根本的に違うよなあ・・・と思う。おそらくそれは、録音マイク~ダイナミック型とコンデンサー型の違いによるものだろう。
16 そのLooking Goodを掛けると、二人とも、ゴードンよりも、アルトのジミー・ウッズの方が気になってしまった。このウッズという人、独特のちょっと暗い音色をしている。contemporaryには、たしかエルヴィンと共演している、conflictというレコードがあったはずだ。あれも気になるレコードだ。
《recooyajiさんのオリジナル・モノラル盤を聴いたのだが、上の写真は、僕の手持ち~哀しきOJC盤です》

フレディ・ハバードが亡くなった、ということもあり「ハバード・・・何か聴きましょう」と、recooyajiさんが出してきたのは、Maiden Voyage(bluenote)。
「実はこれ、午前中にも聴いたんですよ」と僕が言うと、recooyajiさんも「「いやあ・・・僕も聴きましたよ(笑)」
ジャズ好きは、同じようなことをするものである(笑)
Maiden Voyageのを途中まで聴いて、僕はB面2曲目のハンコックの傑作曲~dolphin dance をリクエストする。ハンコックのピアノをあまり好きではない僕だが、この曲は好きなのだ。ハバードのソロも新鮮だ。あともう1曲、ハバードを・・・ということで、Buhaina's Delight(blue note)からmoon river。テーマの途中でテンポを変えるようなショーターらしい捻ったアレンジだが、こういうムーンリヴァーも悪くない。

2_001 Dexter Gordon/Go(blue noet)モノラル~
recooyajiさんとは、ああだこうだとジャズ話しをしながら、いろんなレコードを聴いていくわけだが、話しが「シンバルの鳴り」になった時、recooyajiさんが「あのカーンが好きなんですよ」と取り出した1枚・・・それがDexter GordonのGoだった。
《上写真~オリジナル・モノラル盤:NYラベル》

A面1曲目~cheese cake・・・ベースが短いイントロを弾くと、すぐにドラムスのビリー・ヒギンズがシンバルを「カーン・カーン~」と鳴らす。このオリジナル・モノラル盤で聞くシンバルは、確かに強烈だった。シンバルの音量が入力オーバー気味と言ってもいいほど大きいのだ。recooyajiさんは、この「カーン」がいいのだ!と嬉しそうである。僕の好みでは・・・ちょっとキツイ感じがした。このGoは、ソニー・クラーク絡みで割と聴いたレコードなのだが、どうもその強烈な「カーン」の印象はないのだ。
《追記~1/4(日)に再度、recooyajiさん宅で、Go(オリジナル・モノ)を聴いてみました。結論~ベースのイントロの直後に入るシンバルは・・・「カーン」と表現するほどキツクはなかったです(笑) ステレオ盤(仏・再発)での同じ場面のシンバルは、右チャンネルからわりと大人めに「シャーン」と鳴るので、それに比べると「強め・厚め」であることは間違いないですが、「カーン」という表現では、なにかシンバルを叩き倒しているような・・・そんな雰囲気にもなってしまい・・・そこまで強くは鳴ってないように聞こえました。
ただ、テナーが入ってきた辺りから、ドラムスの音量が上がってきて、その際、シンバルも先ほどの冒頭場面よりもかなり大きめになってくるので、その箇所では、ややキツイという印象はありました。いずれにしても、ちょっと誤解を招く「カーン」でした。当事者のrecooyajiさん始め、皆さんに余分なご心配を掛けました。今後もいろんな音のニュアンスを、できるだけうまく表現できるように努力する所存であります(笑)》

「ステレオ盤だと、また違うんだろうね」と2人で話したのだが、さきほど「仏・再発のステレオ盤」を聴いてみると・・・これが全然「カーン」ではないのだ!やや右よりの方から「シャーン、シャーン」とごく普通のシンバル・レガートに聞こえてくる。僕自身の好みとして、やかましいシンバルは苦手なので、僕にはこのステレオ盤のバランスがちょうどいいようだ。
果たして・・・オリジナルのステレオ盤では、cheese cakeの出だしのシンバルはどんな具合に鳴るのだろうか?011
(右写真~僕の手持ちは、もちろん非オリジナルで、通称、DMM(Direct Metal Mastering)blue noteだ。このDMM・・・1984年頃のフランス再発盤だ。一頃、わりと安価で出回ったので、持ってないタイトルをいくつか入手した。中にオマケの円形ポスターが入っている。表がblue noteのラベル、裏がへたくそなイラストの、まあどうでもいいようなポスターである(笑)

003Gerry Mulligan/~Qurtet(pacific)
pjlp-5
~これ、ようやく手にいれた10インチ盤なのだが、残念ながら、ラベルが黒の「艶なし」だった。残念というのは、「艶ありラベル」の方が1stだという認識があるからだ。この5番・・・裏ジャケット下の住所も7614 Melrose Avenueとなっている。
僕が持っている他のpacific盤をチェックしてみると・・・PJ-10(マリガン/コニッツ)、PJ-13(ローリンド・アルメイダvol.2)、PJ-14(3トロンボーン)など番号の進んだ方の盤はどれも住所はSanta Monica Blvd となっていた。  Pj52_3
《追記》~このpj-5について NOTさんから貴重な追加情報をいただいた。ちょっと下、青い字の《追記》にあるように、Santa Monicaが1st→Melroseが2ndであることが判明したのだが、このpj-5・・・1stと2ndのジャケットにかなりの相違点があったのだ。詳しくはNOTさん下のコメント(1/4 22:52の方)をどうぞ。
《上写真~1stのジャケット》*ネットから借りました(笑)

004 PJ-2番(これもマリガン/コニッツ)とPJ-7番(ローリンド・アルメイダvol.1)の2枚には住所表記がなかった。ちなみに、以上の5枚は全て「艶ありラベル」である。
*追記~PJ-7、PJ-13、PJ-10の3枚の
写真は前記事<バド・シャンクのPacific盤>をご覧ください。

《上の写真ではよく判らないが、右側~7番:ローリンド・アルメイダが「艶あり」、左側~5番が「艶なし」です》

だから、僕の手持ちPacific 10インチ盤の中では、5番のマリガン・カルテットだけがMelrose住所なのだ。そしてちょっと気になるのが、この5番だけ「pjlp-5」という風に「小文字」表記(表ジャケットの右上)なのだ。
普通に考えれば、5番より後の番号は、どれも(僕の手持ちの中では)Santa Monicaなので、「Melroseが先でSanta Monicaが後」とも言えそうなのだが・・・ここで困ってしまうのである。実は、もう1枚の僕の手持ちのPJ-1番「ジェリー・マリガン・カルテット」~これが、Santa Monicaの住所なのである。005

《左の写真~重ねたジャケットの下のやつが問題のPJ-1番。他のSanta Monica表記盤と比べると、この1番だけは、Santa Monica文字のサイズが小さい》

そうしてその「マリガンPJ-1番」のラベルは「艶なしラベル」なのである。推理としては~(艶なしラベルが2ndという前提ならば)まず「PJ-1番の1stはMerlose住所で艶ありラベル」だったが、この1番は良く売れたので、何年か後のSanta Monica住所の時期に、再発した。それが僕の「マリガン(PJ-1番)/艶なしラベル」ということなら・・・一応の理屈は合う。
《追記》~アドレス表記に関する上記の僕の推理は間違っていたようです(笑) 瀬谷さんの貴重な情報からも明らかなように、アドレスについては《Santa Monicaが先で、Melroseが後》が正しいようです。詳しくはこの記事の一番下のコメント~瀬谷さん情報をお読みください。

006 さて、アドレス表記のことよりも強調したいことがあるのだった。この5番~<MerloseアドレスのGerry Mulligan Qurtet>・・・やけに音がいいのである。西海岸録音に特有な「カラッ」とした良さはそのままに、マリガンのバリトン、チェットベイカーのトランペットの音色に、もう少しの生々しさが加わった感じか。実際、これまで聴いたpacificの10インチ盤では、最も生気感・鮮度感のある音に思える。パッと聴いたら、とても1952年の録音とは思えないだろう。艶なしラベル(2ndと思われる)でこれなら・・・1stならどうなるの・・・などと想像してしまう僕である(笑)
《追記~レコードを再生する場合の「音質」に大きく関係してくるであろうRIAAとそれ以前のAESカーブの問題。これについては、以前からNOTさんが具体的に突っ込んだ考察をされており、特にPacific10インチ盤についての詳しい記事がありますので、ぜひこちらをご覧ください

《追記~NOTさんブログにて、コメント欄で話題になった、マリガン/コニッツのPJLP-2番「銀色ジャケット」の詳細が判ります。併せて、PJLP-5番の1stと2nd、裏ジャケットの写真も載ってます。ぜひご覧下さい》

追記~
このPacificの10インチ盤の<アドレス表記、ラベル艶の有無>は、実に興味深い事象なので、コメントを頂いたYoさん、67camperさん、三式さん、NOTさん、bassclefの手持ち盤から、実際に確認できたものをリストにしてみました。(NOTさんは全部揃いだと思いますが、他の方の情報とダブらない盤のみお知らせいただきました)
*今後も、何らかの情報ありましたら、ぜひコメントにてお寄せください。

PJLP 1 - Gerry Mulligan Quartet
        <Santa Monica  艶あり> Yoさん、
                <Santa Monica   艶なし>  bassclef *盤の入替か?

PJLP 2 - Gerry Mulligan Quartet With Lee Konitz   
      <表記なし 艶あり> bassclef

PJLP 3 - Chet Baker Quartet 
     <Santa Monica 艶あり> Yoさん、三式さん

PJLP 4 - Sweets at the Haig - Harry Edison Quartet  
      <表記なし   艶あり> 67camperさん

PJLP 5 - Gerry Mulligan Quartet
            <表記なし 艶あり>  NOTさん
            <Melrose   艶なし> bassclef

PJLP 6 - Chet Baker Featuring Russ Freeman
       <表記なし 艶あり> 三式さん
       <Melrose  艶なし> NOTさん

PJLP 7 - Laurindo Almeida Quartet                                                <表記なし 艶あり/艶なし> bassclef,  Yoさん

PJLP 8 - Russ Freeman Trio
          <Santa Monica   艶あり> Yoさん

PJLP 9 - Chet Baker Ensemble
     <Santa Monica  艶なし> NOTさん *盤の入替か?

PJLP 10 - Lee Konitz And The Gerry Mulligan Quintet                               <Santa Monica   艶あり> bassclef

PJLP 11 - Chet Baker Sings
              <Melrose      艶あり> Yoさん *盤の入替か?
     <Melrose          艶なし>mono-monoさん
     <Santa Monica 艶あり> 三式さん、NOTさん

PJLP 12 - Meet Mr. Gordon
             <Santa Monica  艶あり>Yoさん、67camperさん
             <Melrose  艶あり>        NOTさん

PJLP 13 -LaurindAlmeida Quintet vol. 2                                    
      <Santa Monica  艶あり> bassclef

PJLP 14 - Bud Shank And Three Trombones   
             <Santa Monica    艶あり> bassclef

PJLP 15 - Chet Baker Sextet
       <Santa Monica    艶あり> NOTさん

PJLP 16 - Bob Brookmeyer Quartet
       <Santa Monica    艶あり> NOTさん

PJLP 17 - Chico Hamilton Trio
       <Melrose  艶あり> NOTさん  *盤の入替か?

PJLP 18 - Al Haig Trio~発売されず 

PJLP 19 - Clifford Brown Ensemble
       <Melrose   艶あり> 三式さん 

PJLP 20 - Bud Shank And Bob Brookmeyer
               <Melrose     艶あり>  Yoさん

007 Ray Bryant/Live At Basin Street East(Sue) これ、ブライアントのライブ盤だが、録音がとてもいい感じだ。ピアノだけでなくベースやドラムスも音圧感豊かに捉えていて、加えて店内のザワザワした感じも窺(うかが)えるので、僕は好きな録音なのだ。もちろん演奏も最高だ。聴衆を楽しませるマインドたっぷりのブライアントらしくスタンダード曲に適度なアレンジを施し、でもやり過ぎずに、キッチリしたトリオのサウンドで楽しませてくれる。 A面とB面の1曲目~what is this things called loveとblowin' in the windを聴く。ブライアントはこの有名なデュラン曲を、ちょっとカリプソ風のリズムにして、実におおらかで、そしてモダンなサウンドに仕立て上げている。
008すると・・・recooyajiさん、『う~ん・・・この「風に吹かれて」、いいなあ。そうだ、あれも聴いてみよう!』と、Junior ManceのTuba盤を取り出してきた。2_002
《右写真~Junior ManceのTuba盤》
こちらの「風に吹かれて」は、わりとストレートな8ビート風。ラムゼイ・ルイスが得意そうな感じだ。このTuba盤もなかなかいい録音だった。マンスのジャズロックも悪くなかったが、A面のthe good life・・・これがしっとりしたバラードで最高!マンスは、案外、バラードがいい》

ここから俄かにマイナーレーベルのピアノトリオ盤に話しが移った。Tuba、Herald、Salemというあまり聞かないレーベル名が飛び交う。この辺になると、recooyajiさん、異常に詳しい(笑)相当なジャズ好きしか名前も知らない(だろうと推測している)Bill Will Davis(p)、Johnny Pate(ベース弾き)やAaron Bell(こちらもベース弾き)のピアノ・トリオ盤を引っ張り出してきた。

2_003Tubaというレーベルだけは、ヴィブラフォンのJohnny LittleのLPを持っているので、辛(かろ)うじて知ってはいたが、Aaron(b)のレコードは、Three Swinging Bells(Herald)なるタイトルで、見たことも聞いたこともないレコードだった。う~ん・・・参りました(笑)
《上写真~Sue繋がりで出てきたWill Davisの1枚》

 
2_004_62_005_2


《左~Johnny Pate At The Blue Note:この盤はStephanyなるレーベルだがオリジナルはSalemとのこと。右~アーロン・ベルHerald盤》
Johnny Pate(b)という人は、ピアノのロンネル・ブライト絡みで2枚ほど復刻盤を入手したが、recooyajiさんが見せてくれたレコードは知らなかった。
そんな類をいくつか聴いたのだが、どれもなかなかいい音だった。マイナーレーベルの録音を侮ってはいけないのだ(笑)

キャロル・キングのtapestry(ode)~このオリジナル盤は、70odeと呼ばれているとのこと。it's too late~いやあ・・・僕はこの名曲、何度も日本盤シングルで聴いていたので、それに比べるともう・・・10倍くらいは音がいい!
《recooyajiさんのオリジナル米盤》
2_006 乾いた感じのバスドラの抜けがよくて、ギターもカッティングも生々しい。そしてもちろんヴォーカルも瑞々しい。
やっぱりキャロル・キングはいいねえ・・・と2人で言いながら、will you love me tomorrow?,so far away も聴いてしまったのだった(笑)2_007
そういえば、このLPでは、it's too lateで、ちょっとヘナヘナとしたソプラノサックスが聞こえてくる。僕はそのソプラノサックス奏者が誰なのか・・・日本盤シングルの解説により知っていた。「そういえば、どうでもいいような話しですけど、「このサックス、誰か知ってます?」と僕が尋ねると、recooyajiさん、即座に「カーティス・アーミー」と答える。「いやあ・・・さすがですね(笑)」
カーティス・アーミーは、Pacificに2~3枚、リーダーアルバムがあったはずで、東芝が復刻した時にいくつか入手した記憶があるが、サックス奏者としてはあまり印象に残っていない(笑)

recooyajiさん宅をちょっと早めにお暇(いとま)した後、ちょっと時間があったので、地元の中古レコード屋さんを覗くことにする。たしか今日まで20%オフなのだ。あまり期待せずにチェックしていくと・・・「おっ?」という1枚があった。

17Jimmy Forrest/Most Much(prestige)である。フォレストは、エルヴィンと共演しているデルマーク盤(再発)を聴いていてけっこう好きなテナー吹きである。そのフォレストのprestigeものはOJC盤でいくつか持っていたが、このMost Muchはちょうど未入手だったのだ。1180円という値付けだったので、もちろんOJCだと思ったのだが、ジャケットの裏右上にOJCの文字はない。よく見るとジャケットの3辺に白いテープが貼り込んであったりする。う~ん・・・ジャケ不良だから安いのか・・・じゃあ「黄緑ラベルだろうな」と思いながら、中身を取り出してみると・・・鮮やかな銀色が目に飛び込んできた。銀・黒ラベルのステレオ盤(擬似ステレオではないもの)は嫌いではないので、もう嬉しくなってしまった僕である(笑)

午前中はレコード棚の収納再編成~そのためにあれやこれやとCDやレコードをいじり、午後はジャズ好きとたっぷりレコード聴き、その後、ちょっといいジャズのレコードを買ったり・・・これもなかなか優雅な大晦日じゃないですか(笑)
いやあ・・・それにしても、やっぱり音楽はいい! 好みはそれぞれ違えど・・・それだけは間違いない!

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2008年4月17日 (木)

<ジャズ回想 第13回>半年ぶりにYoさん宅に集まった。その2

う~ん・・・と唸ってしまったパーカーの10インチ盤~

さて「Yoさん宅に集まった」の続きである。まず、前回に書けなかった2つの「聴き比べ」を簡単に紹介したい。その後にパーカーの10インチ盤(Dial)のことを少し書いてみる。

クリフォード・ブラウンのエマーシー盤はどれも人気が高い。その中では、With Stringsは人気が低い~などと僕は勘違いしていた。
というのは、30年ほど前のジャズ好きの間では、strings作品は「ヒモ付き」などと呼ばれて「ジャズっぽくない」軟派な作品という理由で、人気がなかったからだ。でもそれはあくまで1枚のLPとしての人気についてのことであり、オリジナル盤の世界での人気とは関係がなかったらしい。あるいは、日本のジャズ好きも、stringsものを充分に楽しめるようになって、その結果、人気が上がったということかもしれない。いずれにしても、僕もこのクリフォード・ブラウンの「ストリングス」・・・ある時期から大好きになった。もう長い間、安い国内盤で我慢しているのだが、ちょっと前に、このWith StringsのEP盤を2枚入手した。 Ep2_3
このところ、僕はEP盤というフォーム自体にも充分に魅力を感じているのだが、同じタイトルでもEP盤の方が音がいい場合もある~ということを過大に期待している部分もあったりする(笑)それから一 般的には、EP(7インチ)の方が、LP(12インチ)より価格が低いことも、うれしい。もちろんEP盤の方が収録曲数が少ないわけだが、このWith Stringsの場合、2枚のEP盤にそれぞれ4曲収録だから、2枚で8曲は聴けるわけだ。12インチ盤には12曲収録だから、EP盤がもう1枚は出ているはずなのだが、それがなかなか見つからない。  Ep_2
オリジナル12インチ盤を持っていない僕は、このEP盤を聴いてなかなかいい音だと感じていた(そう思いたかっただけかもしれない:笑)
ある時、Yoさんが12インチ盤をお持ちなのを知って、今回の集まりで、聴き比べをさせてもらうことにしていたのだ。

このクリフォード・ブラウン・・・どの曲もとてもいいのだが、特に好きな曲~portrait of Jennieを聴くことにした。使ったカートリッジまでは覚えていないのだが、最初に僕のEP盤。次にスノッブS田さんの紙ジャケCD。最後に12インチ盤と聴いてみた。
結果は・・・EP盤の惨敗であった(笑)
《12インチ盤の写真~Yoさん提供》
With_strings
EP盤で聴いたクリフォードのトランペットには、それなりの鮮度感があって悪くないと思ったのだが、他の楽器、ストリングスなど全体に中低音が薄い。要はスカスカした感じなのだ。
2番目にかけた紙ジャケCD~一聴して先ほどよりストリングス全体の音が柔らかめだ。そこへ適度にマイルドなクリフォードのトランペットが入ってくる。とても聴きやすい見事なバランスであった。こりゃあ(EPより)CDの方がいいね、という声。このCDと比べると、先ほどのEP盤のトランペットは、だいぶ痩せた感じの音だったことが判った。鮮度はいいのだが、バランスが・・・と悔しがる僕(笑)
そして12インチ盤~う~ん・・・やっぱりいいな。全体的に楽器の音に厚みがあって、トランペットの音にもっとも鮮度感があるようだ。そして、柔らかな鳴り具合。う~ん・・・やっぱり違うなあ。いいものはいいのだ! そして・・・ちと高い(笑)


次にゲッツである。ある時期、「ゲッツのat storyville」をCD(東芝:1990年)で聴いて、ゲッツのシルクの手触りのようなあの音色と、それからどんなに急速調の曲でも全く淀みなく溢れ出てくる「本当のアドリブ」に、僕はもうすっかり参ってしまった。
Gets_roost_12inchこの4~5年、少しづつオリジナル盤に興味が湧いてきて、ようやくのこと、ゲッツのroost盤、12インチ2枚~The Sound(LP-2207) と、At Storyville vol.1(LP-2209) を手に入れた。しかし、このroost盤・・・あまり音がよくなかったのである。オリジナル盤というものを入手する場合、多少の盤質の悪さは我慢して、音の(楽器の)鮮度感を期待するわけだが、これらroostのオリジナル12インチ盤は・・・何か楽器の音が遠いような感じで、The Soundの方など、ヘタしたら日本コロムビア盤の方がいいくらいだったのだ(笑)
The Soundを先に聴いてダメ、ならばライブのStoryvilleならどうだ?・・・で、またダメ。さらにいくつかのroost:EP盤でも同じような音だった。共通して感じたのは「カッティングレベルの低さ」全体的にノイズっぽい。これはもう・・・roostというレーベルの性根(しょうね)だろうと推測する僕である(笑)

《下の10インチ盤写真:At StoryvilleはPaPaさん提供》
そこで・・・10インチ盤なのである。10_3 予想どおり、PaPaさんはこの辺りもしっかりと押えてあった(笑)
ゲッツのroost10インチ盤~2枚揃えて持ってきてくださった。同じタイトルの場合、普通、10インチの方が12インチより発売時期が早いと思う。ゲッツStan Getz Plays の場合~clef10インチが1953年、norgran12インチが1955年で、2年ほどの差があった。
今回のroost盤・・・12インチのAt Storyvilleは1956年、10インチのAt Storyville vol.1は、1952年のようである。この3年の差が、ひょっとして大きいのではないだろうか?
どのテイクも傑作なのだが、僕が選んだのはスピード感溢れるバップ曲~parker51である。
12インチからいってみる・・・さすがに「古い音」である。全体に楽器が遠いような感じで、シンバルも古い録音に特有なうんと篭 (こも)った音だ(笑) でもそれは仕方ない。なんと言っても1951年のライブ録音なのだから。

さあ・・・この「遠いような感じ」が、果たして10インチオリジナル盤ではどうだろうか? 同じ曲、parker51をかけてもらう・・・どうだろう?・・・「う~ん・・・同じかな」という皆さんの声。僕も同様の印象だった。ライブ録音ということで元々の録音が、やや荒っぽい感じでもあり、そのためにあまり差が出なかったのかもしれない。だから、あくまでこのAt Storyvilleというタイトルに限っては、1952年の10インチ盤と1956年の12インチ盤にそれほどの差はないと言えるかもしれない。
ゲッツの「ストーリヴィル」~音はあまりよくないが、演奏はもう最上級である。ゲッツが嫌いな方でも、好きになるかもしれない(笑) それくらい気持ちのいいアドリブである。バンド全体も乗りに乗っている。本当に素晴らしいライブ演奏である。まだ聴いたことがない方は、ぜひ!


チャーリー・パーカー・・・パーカーのことをどんな風に書こうか。いや、パーカーについて書きたい何か・・・それが僕の中に本当にあるのだろうか? パーカーというと・・・いつもそんな「迷い」が僕にはある。その「迷い」を、もうちょっと突き詰めると・・・パーカーは「語れない」、パーカーは「聴くしかない」という乱暴な気持ちもあるようだ(笑)
パーカーのことを、もちろん嫌いではない。1980年頃だったか・・・ある時期、パーカーの演奏に嵌(はま)り、その頃、入手できるレコードはほとんど買って聴きまくった。パーカーの演奏は凄い。どの曲でも聴いてみれば、たちまちパーカーのアルトの突き抜けた凄さに気づくだろう。パーカーの「凄さ」とは何か・・・僕にとってはそれは、あのフレーズのスピード感であり、あの音色の重さである。強引に倍テン~普通のアドリブは8分音符中心だが、パーカーは16分音符の割りでノッてしまった~にしたりする時のあのスリル。それもただ「速く」吹くだけではない。それをうんとタメの効いたリズム感と大きくて重い音色で吹き込んでいくのだ。そんなパーカーが捻(ひね)り出すサウンドそのものが・・・僕には快感でもある。だから、強いて言えば・・・情緒の人ではなく、メカニズムの人と言えるかもしれない(笑) しかし、ジャズ聴きには、ある意味、器楽的な快感という要素もあるはずだし、「パーカーの音」をそういう聴き方で捉えれば、これはもう・・・堪らないのだ(笑)

<夢レコ>前々回の「ドルフィ」の時に、僕はドルフィのアルトをこんな風に表現した。
《まるで、砲丸投げのあの重い鉄球をブンブン振り回しているようじゃないか》

実は、僕の中では、パーカーのサウンド(音色・リズム感など全て)に、質的に一番近いのが・・・ドルフィなのである。
だから今、僕がパーカーのあの吹き方を表現しようとすると・・・やはりこの「砲丸投げ」になってしまう。強いて言えば・・・パーカーの砲丸の方が、もう少しだけ重いかもしれない(笑)その「重さ」はこれはもう理屈ではないのだ。聴いて「それ」を感じてもらうしかない。
そんな風に、ある意味「器楽的鳴りの再現」が重要になってくるパーカーのはずなのに、残念ながらどのレコードもあまりいい音ではなかった。実際、「パーカーが判らない」という声をよく聞くが、その理由の90%は「レコードの音が悪かった」ことにあると、僕は思う。
やはり「レコードの音」というものも重要なのだ。

僕はいつも「レコード」を軸に話しを進めたい。好きなミュージシャンがたくさんいて、好きなレコードがたくさんある~これが僕の基本図式なのだ。例えば、モンクなら「ソロ・オン・ヴォーグ」、コルトレーンなら「ソウル・トレーン」、ロリンズなら「ニュークス・タイム」というように、それぞれに必ず大好きな作品(レコード)がある。
そこで、よくよく考えてみると・・・(僕の場合)パーカーには、特に「好きなレコード」(12インチ盤)というものがないのだ。もちろん、パーカーの時代のレコードが、SP盤,10インチ盤主流だったことで、日本で発売されたパーカー音源が、それらの古い音源をレーベルごとにまとめたBoxもの中心だったためかもしれない。パーカー音源で、12インチ盤がオリジナルだったのは、どうだろう・・・now's the time とかswedish schunapps など、ようやくVERVEの後期辺りからになるだろう。 
Parker_004_2 そんなわけで、1972年頃までは、パーカーの国内盤LP1枚ものは、VERVE音源以外は、ほとんど出ていなかったように思う。だから・・・その頃からジャズを聴き始めた身にとっては、まず「パーカーの音」に触れるチャンス自体があまりなかった。
特にダイアル音源は、権利関係があいまいだったのか・・・よく判らないようなレーベルから、いろんな音源がバラバラに復刻されていたようだ。だから、主にスイング・ジャーナルの輸入盤の広告ページなどから情報を得ていた僕達には、「パーカー=海賊盤=音がムチャクチャ悪い」というイメージが、徹底的に焼き付いてしまったのだ(笑)そして、値段が高いのに音が悪い海賊盤なんか、とても買えやしない(笑)
ちなみに、当時、ダイアル音源が聴けるという唯一の国内盤が、Charlie Parkerレーベルからの「バード・シンボルズ」(邦題/チャーリー・パーカーの真髄)だったように記憶している。「~の真髄」は、ダイアル音源からセレクションで、確かにいい曲が集められていたが、これも充分に音が悪かった(笑) charlie parkerというレーベルは、おそらくオリジナルの音源や盤質の拙(まず)さのせいもあってか、どれも怖ろしく音が悪かった。
そして、僕が最初に買ったパーカーが、長尺のライブ録音~scrapple from the appleが入ったThe Happy Bird(charlie parker)の輸入盤だったのだ(笑)それでも、あのレコード・・・ライブでのパーカーのソロが凄いので、酷い音質を我慢して、何度も聴いたものだ(笑)Parker_003

そんな時、ひときわ格調高いパーカーの写真~パーカーがアルトを吹く顔のアップ~がスイング・ジャーナルに載った。イギリスのspotliteというレーベルが発売したCharlie Parker on Dial というシリーズの広告だった。全6巻だったか8巻だったか・・・本格的なダイアル音源の復刻は、このspotliteが最初だった。あの頃のイギリスもの輸入盤は、高かった。国内盤の倍くらいしていたかもしれない。後に東芝が発売したいくつかの「オン・ダイアル」もの(LPでもCDでも)は、このspotlite経由だと思う。
《上の写真は東芝盤。発売後、だいぶ経ってから、vol.1~vol.3だけ入手した》
このspotlite音源のLPが、やはりそれほどいい音質とは言えなかった。録音が同時期のはずのsavoyの方は、割としっかりした音で復刻されていたので、ダイアルものは、録音段階からあまりよくなかったこともあるかもしれない。それにしても「オン・ダイアル」・・・いくつかのLPと東芝のCD4枚組を聴いたが、パーカーのアルトに今ひとつの切れ・太さが出てないようだし、全体的に薄っぺらい音質という感は拭えなかった。
1973年頃だったか~CBSソニーが「Parker on Savoy」(鳥のシルエットを基調にしたジャケット)を発売し始めた。だけど、パーカー音源はどれも「オン・ダイアル」「オン・サヴォイ」などレーベル単位/セッション単位にまとめられたもので、それもシリーズ全5枚~8枚とかになると、なかなか買えやしない(笑)
そんな訳で、パーカーを聴く時に「ひとつの作品としての好きな12インチLP」というものがあまりないことに変わりはなかった。Verve後期のLP作品をもうひとつ好きになれない僕には、今でも同じ状況かもしれない。
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《左の写真~Dial-201。PaPaさん提供》
そこで・・・パーカーの10インチ盤なのである。ダイアルの本当のオリジナルはSP盤ということになるのかもしれないが、普通のレコード好きにとっては、録音直後に発売された(であろう)dial 201,202,203,207などの10インチ盤を「オリジナル」と呼んでも構わないだろう。PaPaさんは相当のパーカーマニアらしく、これらのDial10インチ盤をほとんど持っているとのこと。
僕は写真でしか見たことのない、あの「ベレー帽のパーカー」のジャケットをじっくりと見る。あの「ベレー帽」・・・デザイン的には何だか変な具合である。鳥の頭にもベレー帽が乗っかっており、これら2つのベレー帽と木の葉っぱの色が、同じ色に合わせてある。ちなみに、201がピンク色、202だと緑色である。そんなパーカーのダイアル10インチ盤が、目の前にいくつも並ぶ。どれを聴こうか・・・PaPaさんから「やはり201でしょう」の声。僕は「ピンク色のベレー帽」をYoさんに手渡す。

あのlover man からだ。ゆったりめのテンポでピアノのイントロが始まる。そのイントロの4小節が終わり、「さあ、ここから」と誰もが思うその瞬間・・・パーカーは吹かない・・・伴奏は続く・・・まだ吹かない・・・。「レー・ミレ・ソソー」と吹くはずのアタマの1小節目、パーカーは全くの無音なのだ。2小節目からようやくわざとメロディをはずしたような音を吹き始める~あのlover manだ。
初めて聴いたDialのオリジナル10インチ盤は・・・やはり「いい音」だった。これまで耳にしてきたどのダイアル音源よりも鮮度感があり、パーカーのアルトの音も太くくっきりと聞こえたように思う。10インチであろうと12インチであろうと、録音直後にカッティングされたオリジナル盤の持つ「鮮度感」みたいなものは、絶対にあると思う。ただこの10インチ盤に対する僕の感想は、あまり当てにはならないかもしれない。というのも、今回はこの10インチ盤と他のパーカー音源を聴き比べたわけでもなく、自分の記憶の中にある「ダイアル盤のパーカー」の音との相対的な印象レベルの話しなのだから。
それに・・・あれだけ魅力的な「10インチ盤」のジャケットを手に取って聴く音と、例えばCDのプラスティックケースを手に持って聴く音では、心理的な部分からも、「聞こえ方」に差が出てしまうだろう(笑)
ただ、そんなことも含めての10インチ盤の魔力があったとしても・・・そのことに否定的な気持ちなど全くない(笑)
そんな「相対」としてではなく、あの「10インチ盤というひとつの作品」から受けた印象は・・・やはり「ダイアルのパーカー」は凄い!ということになる。
この時のセッションでのパーカーは、麻薬か何かでフラフラだったとの証言もあり、もちろん好調なパーカーではなかったのだが、lover man で、パーカーのアルトが流れてきた瞬間に感じたのは、やはり「何かを表現しよう」とするパーカーの凄みみたいなものだし、続けて聴いたバラード調の gypsyでも、パーカーは、この哀愁漂うメロディを、ちょっとヨタヨタしたようなフレーズで吹き進める。それは決してスマートなバラードではないのだが・・・パーカーのアルトの音色には、怖ろしいほどの「重さ」と「切れ」がある。
だから・・・このlover man セッションは、パーカーという人の「凄み」を感じさせるような演奏になったのだと思う。
一番好きなパーカーの演奏は?と問われたチャーリー・ミンガスが、たしか、このlover man を挙げていたはずだ。

《これがadlib盤の黒猫マクリーンだ。写真はPaPaさん提供》Photo

PaPaさんのこの日の手持ち盤は、10インチだけではなかった。 「黒猫のマクリーン」Jackie Mclean Quintet(jubileeではなくて、adlibの方)も登場した!このマクリーンのレコード・・・もちろん聴いたことはある。もちろんオリジナルではなく、日本コロムビアから出たラベルがjubilee仕様の盤と、テイチクから出た盤だ。どちらもジャケットは「フクロウ猫」だ(笑)今、ちょっと確かめてみたら、テイチク盤はうんとこもった音で鮮度にも乏しい。それに比べれば、日本コロムビア盤の方はかなりいい感じだが、やはりどちらも詰まったような音だった。
僕は特にマクリーン信者ではないのだが、このadlib盤の持つ佇(たたず)まいには、もちろん圧倒された。そして驚いたのは、このadlib盤の音の良さだ。音がいいとい言っても、西海岸的な切れのいいすっきりした音ではなく、アルトやベースにぐんと力のこもった、いかにも50年代のジャズという感じの音だったのだ。録音engineerは・・・van gelder! 
adlibオリジナル盤の音は・・・日本盤で感じていた「詰まり」が、すこっと抜けて各楽器の鮮度感がうんと増したような感じなのだ。さすがは・・・黒猫のマクリーン! 
こんなレコードには滅多にお目にかかれないだろう・・・ということでもう1曲聴かせていただく。B面ラストのlover manだ。「ああ・・・今日はラバーマン特集だね」とスノッブS田さん。そういえば、lover manは、さっきパーカーのdial201でも聴いたのだった。マクリーンのlover man・・・マル・ウオルドロンのピアノのイントロが流れると、皆さん「あれれ?」という顔。そうなのだ・・・このイントロ、あの有名な「レフト・アローン」とよく似ているのだ。いや、ほとんど同じかもしれない。ベースがボウイング(弓弾き)しているのが違うと言えば違うくらいか。ピアニストって、けっこう同じパターンのイントロを使うんだな(笑)
この曲でのマクリーンは、いつも以上に気合が入っている。力みかえってバランスを崩しそうになっているようなところもあるのだが、ジャズにはこういう「熱さ」も欲しいじゃないか。ラストの短いカデンツァなんか、もう最高である。思うにこの時、マクリーンは・・・パーカーのlover manを相当に意識していたに違いない。彼もやはり、あのパーカーの「凄み」に魅入られた一人なのであろう。

やっぱり・・・ジャズはおもしろい。

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2007年5月 7日 (月)

<ジャズ回想 第11回>(その2)ああ・・・この音だ。Yoさん宅、再・再訪期。

Yoさん宅~3人の音聴き会は、まだまだ続く・・・。

ちょっと前に、ニーノニーノの新納さんからTELがあり、ピーターソンのWe Get Requestsの「モノラル溝あり」の音は凄いですよ・・・と教えてくれた。「ええっ!T字MGM-VERVEに溝があるんですか?」「はっきりしないんですが、初期のT字にはあるらしんですよ」
僕など、いわゆるT字ラベルの場合「long playing(Verve Inc.)には溝がある」が「MGM-VERVEになってからは溝がない」と思い込んでいたのだが、そうではなかったのだ。T字MGMになってどの辺りのタイトルまで「溝あり」が存在するかはよく判らないが、ともかくT字VERVEラベルの初期のいくつかには「溝あり」があるらしい。Dscn1687_1
そうして自分の手持ち盤をいくつか調べてみると・・・Night Train(V6-8538:T字MGM)には、はっきりと幅の広い溝があったのだ。そして、Requests(V6-8606:stereo)の方はというと・・・とても溝とは言えないわずかな段差のある「筋」(T字の横棒の左右の1cmほどを通っている直径7cmほどの円周)」があるだけだったのだ。
《上の写真では「筋」だか「溝」だか判りにくいが、下のラベル写真と比べると明らかに「溝」とは違う。残念である(笑)》
ちなみに、この「筋」は、普通の大きさの円周だが、Trio Plays(V6-8591)のセンターラベルの「筋」は、3cm弱の円周とうんと小さい。だから「溝」なしにも「大筋」「子筋」とあることになる(笑)

このRequestsがいわゆる 「優秀な録音のレコード」ということは知ってはいた。しかし、オーディオ的な興味の薄かった僕は、かえってそんな評判への反発もあり(笑)あまりちゃんとその音を聴いてなかったのかもしれない。アンプを真空管に、そしてスピーカーをJensenに換えた頃から、だんだんとピーターソン自体を聴くようになり、そうして改めてこのRequestsを聴きなおしてみると・・・これがチャーミングないい音だったのだ(と、気づいただけなのだが:笑) もちろん「音」の前に、演奏が素晴らしいことは言うまでもない。どの曲でも、レイ・ブラウンやエド・シグペンという名人たちが、その至芸をさらっと見せてくれるのだが、特に、1曲目のボサノヴァ風の quiet night がいい。この曲のエンディング・・・同じ和音パターンの繰り返す辺りで、ピーターソンが高音部で「遊ぶ」のだが、その意図的に軽くしたようなタッチが、実に、小気味いい。このレコードでは、1曲が短いこともあり、いつものピーターソンよりだいぶんあっさりした感じでもあり、それがまた僕には気持ちいい。軽めのタッチではあるが、しかし、しっかりとキーを叩いている」~そんな感じのタッチの質感を凄くよく捉えている録音だと思う。もちろん、レイ・ブラウンのウッドベースの音圧感・存在感も充分に出ている。そして、このレコードの録音engineerは、いつものVal Valentineではなく、Bob Simpsonとなっているのだ。Simpsonは、ハリー・ベラフォンテなどRCAでの仕事が多いようだが、Bill Evans/Trio 64(verve)や、ミンガス/ミンガス、ミンガス、ミンガス(impulse)なども彼の録音らしい。僕は、このRequestsの音が好きだ。

そんな「いいステレオ録音」のRequestsに、「モノラル・溝あり」があったとは・・・。同じ頃、Yoさんとのメールやりとりでも、そのRequestsの話題になり、Yoさんは「ステレオ・溝あり」をすでにお持ちで、なんと「モノラル・溝あり」も、つい最近、入手されたとのこと。Request_st_1
「じゃあ」ってんで、その3種・・・
ステレオ溝なし~bassclef
ステレオ溝あり~Yoさん
モノラル溝あり~Yoさん
を聴き比べしてみよう!ということになっていたのだ。

僕はすぐに3枚のセンターラベルをぐぐっと見つめた。Yoさんの2枚には確かに「幅の太い溝」がくっきりと彫りこまれている。これこそ「MGM-Verveの溝付き」だ!《センターラベルの写真2点は、Yoさん提供》
さっそくこの3枚を聴き比べてみた。Request_mono

先にステレオ盤の2枚をかけた。この2枚・・・右からのレイ・ブラウン、左からのエド・シグペン、そして中央(やや左か)からのピーターソン・・・音場の感じは全く同じだ。音質の方も、大きな差というのはなかったかもしれない。しかし、「全体としての鳴り」が・・・やはり「溝あり」の方がよかったのだ。ピアノがどう、ベースがどう、ということではないのだが・・・それぞれの楽器の音色に、より太さが、より艶が、そしてより瑞々しさが感じられたのだ。

そしてモノラル盤。ベースが中央により、やはり、かなり「太く」なった。ピアノの音自体も幾分、大きくなったようだ。一聴して、迫力はやはり増している。このモノラル盤が鳴ったらすぐに、僕の右隣に座ったkonkenさんが「オレ、この方が好きだな・・・」と一言。
そして・・・このモノラルの太さ、たくましさは充分に判るが・・・やはり「オレはステレオの方が好きだな」とbassclefが対抗する(笑)
Yoさんも、「このピーターソンのレコードに関しては・・・ステレオの方が好みかな・・・」と洩らす。
僕個人の気持ちとしては、先ほど書いたような、このレコードの「軽めのタッチ」「あっさり感」という感覚が、モノラルの方だと「たくましく」なりすぎてしまうような気がして、ステレオ録音のベースが右、ピアノが左、というちょっと薄め(とも言える)の音場の中で、軽々とノッているような感覚・・・説明しづらいのだが、そういう「軽み味」には、ステレオ盤の方が「合っている」というような、ごく感覚的な理由で、ステレオ盤の方がいい、ということなのだ。
それにしても、自分の手持ちRequestsは「溝なし」であることがはっきりしてしまったわけで、少々、落胆した。あのわずかな筋~段差を、無理やりに「溝」かもしれんぞ・・・と思い込もうとしていたのかもしれない(笑)

ピーターソンをもう1枚~Night Trainから1曲聴く。konkenさんのステレオ盤では、なぜかレイ・ブラウンのベース音がやや小さく聴こえるそうで、その点をYoさん宅で確認したかったとのこと。聴いてみると・・・左チャンネルのレイ・ブラウンのベースが、やや押さえ気味のバランスで、他のVerve盤で聴かれるいつものレイ・ブラウンと比べても音圧感が物足りない。
konkenさん手持ちステレオ盤は、ラベルの色が灰色っぽいもの(小筋)で、やや後期の再発盤かもしれない。
音全体がちょっとこもったような録音のように感じる。いずれにしても、先ほどのRequestsに比べると、だいぶん平凡な音だと思う。そして、レイ・ブラウンに関してはどちらかというと「よくない録音」かもしれない。
ちなみに僕も戻ってから、さっそくこのNight Train(ステレオ溝あり)も聴いてみたが・・・やはり同じようなバランス・音質で、ちょっと残念であった。ただ、このレコード・・・レイ・ブラウンが遠い代わりに、右側からのエド・シグペンのドラムスは、けっこう迫力のある録音だ。ハイハットがしっかり(ちょっとやかましいくらい)入っており、バスドラもちょっとこもり気味だが、音量豊かに鳴る。ドラムス好きには楽しめるレコードかもしれない。録音は1962年、エンジニアは、Val Valentineだ。

そういえば、もう1枚、強く印象に残っているピアノ・トリオの盤がある。
バリー・ハリス/Breakin' It Up(argo) all the things you are である。
この渋いピアノトリオのレコード、僕はCDとビクターの国内盤(ステレオ)を持っていた。
bassclef~「録音があまりよくない印象」に対して、Yoさん~「いや、そんなことはない「録音そのものはいいが、ピアノ自体がちょっとよくないのかもしれない」というようなやりとりがあった。そして、Yoさん宅で聴かせてもらったArgo のオリジナル盤(モノラル)では・・・う~ん、確かにピアノの響き、その余韻に若干の「古ぼけた」ものを感じたのだ。スタジオに置いてあったピアノの調弦が微妙にずれていたのかもしれない(ピアノというのは1つのキーに対して複数のスチールの弦(太い針金みたいなもの)を使っているのだが・・・その複数の弦のたった1本のピッチが微妙にずれている~そんな風に聞こえないこともなかった。よくホンキー・トンク・ピアノという表現で、場末のバーのピアノから聴かれるあの独特の「くたびれサウンド」あれが・・・調弦のずれたピアノの音、といえば雰囲気はお判りいただけると思う。もちろん、このバリー・ハリスの使ったピアノは、そんなにホンキー・トンクはしていないが、部分部分で、時にちょっとそんな響きを感じたのだ。あまり状態のよくないピアノだったのかもしれない。
そんなところまで~つまり「録音の拙さでのイマイチのピアノの音」ではなく「ピアノ自体の状態の拙さ」での、あのちょっとくすんだようなピアノ音~というところまで判ってしまった(少なくとも、そういう風に感じ取れてしまった)のだ。それにしても、このYoさんのシステムは・・・そのレコードのサウンドを聴けば、その時の演奏、そして録音の「真実」までもが、その場に暴き出されてしまうような・・・そんな「怖ろしい」装置だと言えるのかもしれない。

さて、この会・・・「その1」で書いたように、冒頭のラウズ3連発から、ほとんどテナー特集と化していった。

ラウズ(epic)の2枚とtakin'care(jazzland)の3連発
ズート・シムス/ズート!(riverside)白ラベル fools rush in
ベニー・ゴルソン/the other side of~(riverside)  jubilation
ジミー・ヒース/really bag から ?
ジョニー・グリフィン/Big Soul Band(riverside)から
deep river, jubilation 
ロリンズ/at the village vanguard(bluenote) softly as in a morning surrise
<ゲッツの Plays~聴き比べ>
JRモンテローズ/The Message(jaro)
straight ahead と violets for your furs
コルトレーン/coltrane(prestige)NY  violets for your furs
テディ・エドワーズ/It's About Time(pacific) fools rush in
エディ・ロックジョー/Tranckin'(prestige:青・イカリ RVG)
there'll never be another you
フリップ・フィリプス/I'll never be the same(ClefのEP盤)

どれもこれもいい演奏のものばかりで、これらのいくつかを続けてかけたり、もちろん間にヴォーカルなどを入れたりしたのだが、さすがにテナーばっかりではねえ・・・てなわけで「ミニ・アルト特集」となった。
フィル・ウッズである。

Dscn1695_1 Quincy Jones/Quintessence(impulse) A面1曲目のQuintessence~

この曲~ちょっと北欧の雰囲気が漂うような優雅なメロディだ~僕はもう大 好きである。
そして、この曲でフィルウッズのアルトが、もう巧さ爆発!何度聴いてもこの曲は厭きない。
輝くようなバックのブラス群の乗ってフィル・ウッズが唄い上げる。
このimpulseのVan Gelder録音は、特に好きだ。強すぎず、甘すぎず、適度な輝きと張り具合~バンドのメンバーが巧い人ばかりなのでそこのクインシーのアレンジが合わさって、ゴージャスなビッグバンドジャズが楽しめるいい1枚だと思う。

ウッズのもう1枚~Alive & Well 60年代後半の「激情ウッズ」の有名盤だ。この欧州オリジナル盤はジャケットも封筒型(上下が裏側に折り返している。全体に紙質が薄くて、その薄さに品がある)で、人気も高いらしい。
1曲が長いのだが、ウッズは最初から激情している。そして、途中のベースソロが・・・これはまたすさまじい音だった。アルトが鳴っている間は、ドラムのダニエル・ユメールも叩きまくるので、さすがにベースがちょっと隠れがちだが、ベースソロのなったとたん・・・録音技師がグンッとフェーダーを上げたに違いないのだが(ドラムの音も止み、入力オーバーにならないので)突然、ベースが巨大化する。
そして、サポートするリズムがない状態で、ベース特有の幽玄な世界に入っていく。このベース奏者、とにかく「熱いハート」があるなあ・・・ジミー・ギャリソンが時々見せるような「フラメンコ奏法」に近いような弾き方を混ぜて、堂々としたソロを展開する。この場面での音は・・・生のベースかもしれない。3人で聴いたが、この1968年頃は・・・ウッドベースに付けるアタッチメント(駒に貼り付けるタイプの小さいマイク)を付けた音なのかどうか微妙に判りにくい。生音をうんと近づけて録音したような音でもあるし、アタッチメントからの(電気的)音の配分を少なめにしてアンプから鳴らしているような音でもあるし・・・はっきりしない。だがひとつ言えるのは、ヨーロッパのべーシストはとにかく「巧い」ということだ。アタッチメント付きだったとしても、その前にまず、「ベースがよく鳴っている」 「しっかりと弾いている音」 「きちんとした音程」~そんな技術的な基礎がしっかりしているベースの音なのだ。一音一音のタッチに力感・質感がしっかりとあり、だから聴いていて全然、不快ではない。
1975年くらいのペデルセンも「巧い」ベースの代表だ。一時期のライブでは、どうしてもアタッチメント全開の電気的サウンドになったようだが、レコードではやはり「いい音」を出している。
そしてYoさんのウーレイは、こういう巧い奏者の音をひときわ甘く、そして音楽性豊かに鳴らしてくれるようだ。Jwalking ともう1枚のsteeple chase盤(ドラムスがビリー・ハートで、ギターが若いジョン・スコのやつ)を聴いたのだが、この装置で聴くペデルセンは、とにかく気持ちがいい。そういえば、1年半ほど前に初めてYoさん宅を訪れた折にも、たしかこのペデルセンのJwalking(LPとCD)を聴かせてもらったな・・・この日、聴いたのもやはり、カルロス・ジョビン作のFelicidade・・・甘い中にサウダージ(哀愁)を感じさせる見事なメロディ・・・好きな曲だ。そしてこの曲を選んで、ベースでメロディを弾くペデルセンのセンスにも素晴らしいと思う。
ちなみに、もう30年前のことだけど、このJWalkinにはちょっと思い出がある。ジャズ研の先輩ギターのケニー・マー坊氏の好きなレコードで、このLPの中の”J Walkin"にトライしていたので、何度も聴いたはずなのに・・・その頃にはペデルセン=巧いだけでおもしろくないべーシストという、全くレベルの低い思い込みで、深く聴こうというスタンスさえなかった。あの時、すでにボサノヴァ好きだった僕が、このFelicidadeを聴いていたならば・・・僕のジャズの好みというのは、どうなっただろう? そんな意味のないことを考えてしまう僕である。
ペデルセンということで、僕が持ってきていた1枚もかけてもらう。Dscn1696_1
ピーターソン/Great Connection(MPS/テイチク)just squeeze me 1971年録音。
この頃の録音盤をあまり聴かない僕なのだが、このレコードは例外的に好きな1枚だ。ペデルセンのたっぷりとしたベース音が軽くグウ~ンと伸びる様が、実に気持ちいいのだ。ベースという楽器の胴体や、弦の芯が鳴ってからの、アタッチメント増幅音なので(だと思う)軽々しくは聞こえない。
やはり、ペデルセンは本当に巧い!
ルイス・ヘイズの切れのいいシンバル音、そして軽めに弾くピーターソンの艶やかな音色とタッチ感(音圧にまだまだ余裕がたっぷりあるような感じ)も素晴らしい。そんな「好録音」のピアノトリオ盤なのだ。
それにしても、テイチク盤でこの音なら、MPSオリジナルならさぞや・・・(笑)

僕の手持ち盤から、もう1曲、お願いする。
Dscn1694 Blues For Tomorrow(riverside)~a sad thing
この1曲は、ハービー・マンのリーダーアルバム(great idea of Western Manne)からだ。このsad thing でのバスクラの音を聴いた時、「ぞぞ~ッ」とした(笑)もちろんハービーマンが吹いているのだが・・・怖ろしいほど透徹したような音色なのだ。a sad thingというタイトルからも覗(うかが)えるように、マンがそういう風に吹いているのだとも思うが、録音されたこの「音」も凄い!バスクラ自体をそれほど聴き比べる機会もないが・・・この音に、僕は驚いてしまったのだ。そしたら・・・この1曲(1枚)は、riversideにしては珍しい西海岸の録音で、マンの西海岸ツアー時にロスで録音されたとのことだ。どうりでいつものriversideの音とはちょっと肌合いが違ったわけだ。それにしても、ハービー・マンという人、たまに吹くテナーも巧いし、バスクラもこんな音で鳴らす・・・すごい才人だったのだろうな。

さて、この会。インストばかり聴いていたわけではない。ヴォーカルものを大好きなkonkenさんが、いい盤を持ってきたので、随所にそれらを混ぜながら進めていった。(以下4点は1144ross_2konkenさん提供)

Annie Ross/Gypsy(world pacific)から 
Overture 
Everything's C oming Up Ross

Darlene/The Nearness Of You(epic)1314_darlene_2

《このepic盤は、以前にrecooyajiさんに教えていただいたもので、それを気に入ったkonkenさんが速攻で入手した》

Greetje Kauffeld/Clifford : Sings To A Tribute To Clifford Browon(オランダomega)から1336kauffeld

I remember Clifford 《konkenさんのお気に入り盤。しっとりした風情のあるいい歌い手だ。70年代後半のオランダ録音だが、音は瑞々しい感じもあり、とてもいい》

Marlene/Marlene(savoy)から
Some Oter Time
If I Love Again

1322marlene_1 どれもよかったのだが、やはり、savoyのマーレーンは素晴らしかった。優しくて柔らかいマーレーンの声も、丁寧な唄い方も、そしてハンク・ジョーンズのバッキングなど全てが素晴らしい。以前、リキさん宅でこのマーレーン(僕の手持ちは、残念ながらAudiophileのreissue盤)をかけた時も、Yoさん、リキさん「いいねえ」とうなずいたなあ・・・そういえばあの時、リキさんが一言。「このトランペット、なんでこんなにエコーが・・・・」そう思って聴くと・・・たしかに、このレコードでのジョー・ワイルダー、いい感じで唄の合間にフレーズを入れるのだが、いかんせん・・・エコーがかかりすぎだ。やっぱりRVG録音だなあ(笑)
この「エコー」だけはちょっと気にはなるが、savoyのヴァン・ゲルダーは、適度に柔らかく、そしてベースやドラムスの音がtoo muchではなくて、ちょうどいいバランスなのだ。僕は、savoyでのヴァン・ゲルダーの音・・・嫌いではない。

こんな風に3人でいろいろ聴いていると、知らぬ間に・・・もう陽が落ちかけている。なぜそれが判るのかというと・・・二つの巨大なウーレイの1mほど後方の壁の高い位置に小窓があって、そこにはいつもカーテンがかけられているのだが、どうやらその方角が西側らしく、陽が落ちてくると・・・いつもそのカーテンが濃いオレンジ色に染まってくるのだ。そのオレンジ色を見ると「ああ・・・もう夕暮れかあ」という気持ちになってしまう。6時にはおいとまする予定だったので、もうあまり時間がない。こりゃあ、いくら時間があっても足りないや(笑)そんな僕らの気持ちを見てとったか・・・「僕はもうちょっと遅くなってもいいですよ」と、Yoさんが助け船を出してくれた。「いやあ・・・それは・・・」と恐縮するkonkenさんと僕。しかし・・・その恐縮にはあまり迫力がない(笑)ほとんど「そうしてもらっていいですか?」という雰囲気が顔に出ていたのだろうと思う。「ちょっと休憩がてら外で軽く何か食べて、それからまた少し聴きましょう」というYoさんのありがたい申し出に乗っかった格好で、それでは・・・pm9:30をリミットに第2部をやりましょう!ということになった。いやあ・・・これはうれしかった(笑)実際、その方が夕方の渋滞からも逃れられるし・・・いや、それよりなにより、もうちょっとこの音を聴いていたいのだ・・・よかったあ! Yoさん、ありがとう!

そうして第2部(pm8~9:30)でかけたのは・・・
エラ~
Songs In A Mellow Mood(decca)~
米decca:ジャケが灰色でなく青っぽい色のやつ。若いエラがちょっと前田ビバリに似ている(笑)
英brunswick(エラの声、輪郭がやや細くなるが気品を感じる。若くてきれいになったような感じ)

アン・バートン~
ballads & burtonとblue burton を Artoneのオリジナル、Artoneの2nd?(2枚組の1976年の)とオランダCBSの盤で聴き比べをしてみた。
Artoneのオリジナル~ballads & burtonは、瑞々しさがいっぱいでやはりいい! ところがblue burtonの方、これはどうやら・・・プレス段階の不具合らしいのだが、ヴォーカルやピアノやらの音圧が上がった箇所で「歪む」のだ。ちなみに、同じArtoneを2枚買ったパラゴンさんによると、やはり2枚とも、同じ箇所で「歪む」そうだ。2ndでは「歪まない」。
Artoneの2nd?(2枚組の1976年の)~悪くない。ただ、やはりベースのキレが、ややなくなったような感じはある。
オランダCBSの盤(blue burtonのみ)~歪まない。けどちょっと鮮度が落ちたかな・・・。

サラ・ヴォーン~
swingin' easy(emarcy) p :ジミー・ジョーンズ、b :リチャード・デイビス、ds:ロイ・へインズ、 
After Hours(roulettte) 伴奏はドラムレスで、b:デュビュビエ、g:マンデル・ロウなどであった。

Swingin_sarahここでは、swingin' easy(emarcy) のことを少しお伝えしよう。
このemarcy盤・・・サラが椅子に座っているジャケットで、あまり知られているレコードではないように思うが、むちゃくちゃいい音だった。サラの声だけでなくドラムのブラシのざわざわ感や、ベースの音圧、ピアノの艶・・・鮮度感もたっぷりの文句なしにいい音だった。サラもこの頃は、まだ可愛げがあるかな(笑)
《上と下の写真2点~Yoさん提供》

Yoさんが、polka dots & moon beamsをセレクトする。
実はこのバラードには、とんでもない場面があった。知っている方は知っているアレだ(笑)
ピアノのイントロから、サラが情感込めて静かに歌いだしてすぐ・・・全く唐突に「ドタっ!」という音が鳴ったのだ!それもかなり大きな音だ。その「ドタッ!」の、あまりの違和感に、3人とも思わずスピーカーの方を振り向いた。「何? 今の音・・・」 もう一回聞いてみる・・・「ドサッ!」はっきりと聞こえる。・・・どうやら何かが落ちたような音か・・・いや・・・バスドラの音だぞ・・・と、僕は言う。だとしたら・・・この「ドサッ!」は、ロイ・へインズの「演奏」なのか? いや、どう聴いても・・・この音は、意図した音には聞こえない。鳴るタイミングもあまりにも中途ハンパの場所だ。
「音楽」になってない。だから・・・演奏での音ではないだろう、と僕らは推測をした。
では、なぜあんな音が鳴ったのか?
konkenさん~ロイへインズの単純ミス説<たまたま右足を降ろしたら・・そこにバスドラ・ペダルがあった>
(笑)
bassclef~ロイ・へインズのミスはミスだが「バスドラ・ペダルのチェック説」
つまり・・・<ペダルの踏み具合を何気なくチェックしようとして(鳴らすつもりではなく、軽く踏むだけのつもりだったのだが、足が勝手に踏み込んでしまった>(笑)Swingin_sarah_l
《補足》このロイ・へインズの「ドサッ!」については、その後、konkenさんから、素晴らしいコメントをいただいた。「あれはミスではなかったかも・・・polka dots~という曲の中の歌詞(bump:ドスンという音/人がぶつかること、というような意味)に合わせて、ロイ・へインズが意図的に出した音だろう」という「新発見」である。コメント欄もぜひお読みください》

それにしてもサラ・ヴォーンは偉い。バラードの出足にあんな音響が鳴ったというのに、動じることもなく、そのまま唄い続けてしまう・・・プロですね。
いや・・・それでもあの「音」の後に、すっと振り返り、ロイ・へインズを睨みつけたかもしれない(笑) そうしてロイ・へインズの右足が凍りついていたのかもしれない。
実際・・・この曲では、もう2度とバスドラの音は鳴らなかったのだから(笑)古いレコードの中に潜んでいた、こんなエピソードと共に、この会もようやく終わろうとしているのだった。

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