<その後の夢レコ 1>ロリンズ/Newk's Time
なんとなく始めたこのブログ「夢見るレコード」ではあるが、けっこう続いている。更新ペースが月に1回ほどなので、記事数はまだ80ちょっとしかないが、それぞれの記事でそれぞれのレコードに対する思い入れを語ってきたつもりだ。始めてから2年半ほど経っているので、その後、各記事の内容に関連したレコードなどもいくつか入手している。そんなレコード達・・・期待通りだったものもあるし、そうでなかったものもあるが、記事との繋がり具合の濃いものから、思いつくまま書き足したい気分になってきた。そういえば、僕はいつも「思いつき」だけだ(笑)
(これらは<その後の夢レコ>としてトップ画面にアップした後、いずれは「追記」として各記事に組み込む予定です)
まずは・・・<旅レコ第1回>のソニー・ロリンズ/Newk's Time の「その後」からいこう!
この記事で紹介した盤は、1975年頃以降だったか、よく出回っていたUA「音符ラベル盤」で、それは、まったくコレクター的な盤ではなかった(笑)ロリンズのレコードはどれも好きだが、僕はこのNewk's Timeを特に気に入っているので、1年ほど前に、その「音符ラベル盤」より少し前の盤を入手した。これもあまりコレクター的とは言えないLibertyラベル盤である(笑)・・・というのは、共にRVG刻印のないa division of Liberty時代の盤なので、いわゆるbluenoteのレベルとしては、音の鮮度がだいぶ落ちているとのことなのだ。だから、そのラベル違いなどにそれほどの意味もないだろうが・・・「a division of Libertyラベル」と「UA音符ラベル」の音質は、はたしてどれくらい違うのか? という個人的な興味はあった。
《左側がLiberty盤。右側がUA音符ラベル盤。ところで、このNewk's Timeの録音日についてだが、これまでは、どのディスコグラフィ本にも1958年9月22日とされていた。ところがそれは間違ったデータだったらしく、どうやら1957年9月22日説が有力のようだ。だから近年の新しいソフト(CDなど)のデータでは、「1957年録音」と表記されていることが多いようだ。「録音の感じ」としての、この辺りの1年の差までは僕は判らない。しかし・・・演奏の感じ~ロリンズのテナーの弾み上がるような感じ、音色の丸みのある太さ~その辺りからみると・・・僕は「1957年秋の絶好調のロリンズ」の雰囲気を感じる。なにしろ、この年の11月には、あの恐るべき傑作「ヴィレッジ・ヴァンガードの夜」も録音されるわけなのだから》
まずはジャケット~オモテもウラも全く同じ・・・左上のSTEREO文字も同じ・・・と思ったら一箇所だけだが、わずかな違いがあった。右上の文字~BLP4001のところだ。2枚とも「ステレオ盤」なのだが、「Libertyラベル」右上には、<BST84001とBLP4001の2種>が表記されているが、「音符ラベル」の方は<BLP4001のみ>の表記なのだ。ということは・・・<「Libertyラベル盤」プレス時には、たぶんステレオ盤とモノラル盤の2種が発売されていて、だから共用ジャケットにしていた~と考えられる。そして「音符ラベル」発売時には「ステレオ盤」のみプレスしたので、BLPナンバーを消した~ということではないだろうか>~などと推理していたら・・・それは、とんでもない勘違いだった(笑)
というのは・・・「音符ラベル」の方の右上表記がBLP4001となっていることがおかしいではないか。もし「ステレオ盤のみ発売」との理由で1つだけの表記にするのなら、当然、BST84001の方にするはずだ。そう思ってよくよく見てみると・・・表ジャケット全体のトリミングもちょっと違うのだ。「音符」の方がロリンズの顔がちょっと上の位置にあるように見える。そういえば、左上表記のSTEREO文字もジャケットの上辺ギリギリだ。「Libertyラベル盤」ではSTEREO文字の上に1cm弱の余白があるじゃないか・・・そして右上のBST84001文字は、そのSTEREO文字のやや上の位置に当たるのだ。ということは・・・「音符ラベル盤」で切れたSTEREO文字の上の部分・・・つまり、上辺の淵~継ぎ目(seam)を見ると・・・その狭い継ぎ目に、やはりBST84001という文字が見える。
これらを考え合わせると・・・要するにどちらも同じ写真の同じ紙を使っていたのである。そして、これは、あのマイルスの「いつか王子様が」方式である(笑)つまり・・・ジャケットサイズより少々大きめサイズの紙を使っていて、その貼りあわせが上下にずれていただけなのである。(この辺り~詳しくはmono-monoさんのブログ「いつか王子様が」ページを参照してください)
もちろん、このNewks Timeの「音符ラベル盤」全てにおいて、意図的に上方にずらしたかどうかは判らない。というより、この個体だけが「ただ、ずれただけ」の可能性も非常に高い(笑)
さて、この2枚の「ステレオ盤」・・・a division of LibertyもUA音符も、楽器の位置関係はやや不自然~ドラムスとピアノが左寄り、ロリンズも中央やや左か。ベースだけが右寄り~ではあるが、いわゆる擬似ステレオではないように聞こえる。その定位感については2枚ともほとんど同じだが、それぞれの楽器の鳴り方(聞こえ方)には、やはり違いがあるようだ。一聴して、ドラムスがだいぶ違う。「UA音符盤」では、フィリーのドラムスがシンバルやスネアが大きめに聞こえ、ドカン!と叩いた時の響き具合も拡がっている。だからドラムス全体にちょっとやかましい感じがある。
ところが「Liberty盤」になると・・・このフィリーのドラムが、うんと落ち着く。Liberty盤に替えると・・・一瞬、ちょっと迫力不足か?とも感じるが、よく聴くとドラムス全体の響きが端正で、サックス、ベース、ピアノと絡んだ時の「ドラムの響き方」としては、確実にこちらのLiberty盤の方がいいのだ。他の楽器の鳴りをじゃましてない・・・という感じとも言える。
ワトキンスのベースの鳴りについても同じような感じがあり、ベースがフューチャーされる同じ場面を聴き比べると、やはり、Liberty盤の方が「グンと音が締まっている」ので、ヴォリュームを上げてもベースの音色が崩れない。「音符ラベル」では、やはり時代が後になった分、ドラムスやベースの音を強調したのだろう。そうしてみると・・・「UA音符ラベル」の音質はあまり良くない~という説は、やはり当たっているようだ。少なくとも、このNewk's Timeというタイトルの「音符」対「Liberty」については、どうやら間違いないようだ。
「音符ラベル盤」をたくさん持っている僕としては、やや残念ではある(笑)個人的な印象としても、UA音符ラベルよりは、日本盤(キングでも東芝でも)の方が、はるかに良いような気がしている。そりゃあオリジナルが一番いいのは判っているが・・・bluenoteは高すぎる。なんでもかんでもbluenoteというだけで上がってしまう。僕などは、そんな傾向へのやっかみ気分もあるので、bluenoteの諸作は、Liberty,UAなどの2nd、3rd、あるいは、それほど悪くない日本盤で楽しむ~というのが現実的だと思う。いろんなジャズの名演奏を味わいたいのであれば・・・「高いから聴かない」より「どんな盤でも、とりあえずその演奏を聴く」方が、よりジャズを楽しめると思いたい。むろんこれは・・・ヤセガマンではある(笑)
最近のコメント