<ジャケレコ 第2回> Deccaの動物ジャケシリーズ(その2)
あのフラミンゴが飛んできてくれた!
<夢見るレコード>のあまり意味のないカテゴリー分けで、だいぶん前に「ジャケレコ」として Decca のアルバムを採り上げたことがある。それらはどれもジャケットに犬やら猫の写真が使われているものだったので、僕は勝手に「Decca の動物シリーズ」と名づけて記事にしたわけである。(2008年2月3日記事~この記事の一番下の方に再掲しておきます)その記事を書いた時点で揃っていたのは・・・
「犬1」「犬2」「猿」「猫」~だった。(青字)
DL 9200 Barry Garbraith/ Guitar And The Wind
DL 9201 Earl Grant/ MIdnight Earl
DL 9202 Fred Katz/Soul Cello
DL 9203 Bernard Peiffer/Piano A La Mode
DL 9204 Toots Thielmans/Time Out For Toots
DL 9205 Ellis Larkins/The Soft Touch
DL 9206 Johnny Pisano, Billy Bean/Maikin' It
DL 9207 Ralph Burns/Very Warm For Jazz
DL 9208 Don Elliot/The Mello Sound
あれから8年ほど経過しているわけだが、その間ものんびりと探していて・・・それでも、9201、9202、9204、9207と集まってきた。どれもジャケットが面白いので、以下にそれらの写真を載せておきます。
《上写真~左側が 9204の Tooth Thielmans 「ボクサー犬」 右側が 9201 Earl Grant 「ふくろう」》
「ボクサー犬」は、動物シリーズ全9点の中では、最も「ジャズっぽい」作品で楽しめる。Harmonica with Orchestraという表記があるが、そのオーケストラが(この場合、伴奏陣も含む)がなかなか魅力的なのだ。Hank Jones(p)、Doug Watkins(b)、Art Taylor(ds) そして管楽器陣には、Al Cohn、Zoot Sims、Urbie Green らが居て、時々、短いソロも入る。
≪9207の「ペンギン」(ラルフ・バーンズ)≫
ラルフ・バーンズのピアノ、エディ・コスタ(vib)、バリー・ガルブレイス、ミルト・ヒントン、ドン・ラモンドらのリズム陣に、アル・コーン、ズート・シムズ、アービー・グリーンらの管部隊が加わり、ズートのテナーやクラリネットのソロもあったりしてけっこう楽しめる。
≪9202「トラ」・フレッド・カッツ:Soul Cello≫
この作品は、チェロが大好き、という方しか楽しめないであろう(笑)
こんな具合に揃ってきたのだが、なかなか見つからなかったのが・・・「フラミンゴ」だ。僕の場合、ジャズのレコードを集めているが、基本、あまり高いものは買わない(笑) その時、欲しいものをなるべく安く、というポリシーである。いや、単にケチなだけであるが(笑) まあそれはそれとして・・・だからネットなどで見つけてもそれが「高ければ」買わない。「高い」または「安い」というのは、もちろん相場価格に対しての意識だが、その作品に対する自分の価値観に基づいた基準価格みたいな意識もあったりして、だから個人差もあるだろうし、なかなか微妙なものなのである。
≪Barry Galbraith/Guitar and the Wind (DL9200)≫
さて・・・「フラミンゴ」である。このレコード・・・ジャケットがとても印象的なので、もちろん知ってはいた。何度か発売されたと思うが、比較的、近年ではビクターが<幻のLP選集>~1993年発売なのだが、ジャズ関わりにおいて僕としてはこの辺りでも近年という感覚(笑)~なるシリーズとして、MCAレーベル系のDeccaやCoral、Dot などから30タイトルほどを復刻したはずだが、その折、この「フラミンゴ」を購入するかどうかけっこう迷った記憶がある。しかし・・・僕は買わなかった、いや、買えなかった(笑) その折には、Coralのハル・マクージックやエディ・コスタ、それからジョー・バートン・・・これらのミュージシャンのLPを聴きたくてそれらを優先したわけである。
バリー・ガルブレイスというギター弾き、この人もなんというか・・・相当に渋い。僕がこの名前を知って、多少なりとも意識したのは、これはうんと古い話しだが、1973年頃にCBSソニーが1100円盤シリーズを出した時、「ザ・リズム・セクション」(epic)という作品があって、それは、バリー・ガルブレイス(g)、ハンク・ジョーンズ(p)、ミルト・ヒントン(b)、オシー・ジョンソン(ds) という、一流のサイドメン4人で造った、ピアノ・ギターのカルテットというような作品で、それはもう・・・渋さの極致のような内容で、当時、高校2年だった僕には、まだまだ、そのジワジワと来る渋みの味わい深さ・・・みたいな感覚は判らなかったのだ。
なんだか「あっさりした」ジャズだなあ・・・くらいの感想だった。そんなジャズ経験の経緯もあり、20年ほど経過した1993年頃になっても、僕にとってのバリー・ガルブレイスという人は、最優先で購入すべきミュージシャンではなかった、ということかと思う。
その後、ジャズのオリジナル盤というものを集めるようになって<Deccaの動物シリーズ>という存在を知って、『あのフラミンゴも欲しいな』と意識し始めると・・・さあ、これが見つからない! たまに見つけてもかなり高い(笑) そうして、<動物シリーズ>に執着心が無くなってきた頃になって・・・わりと最近、あの「フラミンゴ」が僕の下(もと)に飛んできてくれたのである。
まあ・・・たまたま適正価格のものが見つかった~というだけのことだけど(笑)
中身の音楽は・・・これが案外に悪くない。 悪くない・・・というのは、エディ・コスタ、ミルト・ヒントン、オシー・ジョンソンという伴奏陣に支えられた渋いギター弾きの渋い選曲を、いささかも力むことなく楽しめた・・・という意味合いである。
もともとこの<動物シリーズ>は、ジャズミュージシャンに大人しく品良くジャズを演ってもらい、つまり・・・一種のムード音楽として売ろう~としたシリーズのようで、その証拠にどのタイトルの表ジャケット(右上とか左上に)にも<MOOD JAZZ IN HIーFI>なる文字が入っている。
≪各タイトルのジャケットを前回の<Decca動物シリーズ>記事と併せてご覧ください≫裏ジャケットの GUITAR AND THE WIND なるタイトルの下に Barry Galbraith Guitar Solos with flute and instrumental accompaniment と表記されているとおり、ギター・カルテットに、フルート(ボビー・ジャスパー)と様々な管楽器群がギターの弾くテーマメロディに絡んでくるのだが、それもあくまで彩(いろど)りを添えた~くらいの使われ方で、管楽器のソロは皆無だが、バリー・ガルブレイスというギター弾きの和音を生かした品のいい枯れたようなサウンドを味わうには、それでいいのである。portrait of Jennie それから love is for the very young、この2曲のバラードが・・・とても良い。特に love is~は、前半がギターのみ、後半からミルト・ヒントンのベースが品良く絡んでくるのだが、曲のメロディ自体に何とも言えない哀愁が感じられて・・・これはもう絶品である。
ここで余談を少し。
詳しい方から、『Decca動物シリーズ、これで揃った!とか言ってるけど、「ふくろう」(アール・グラント・DL9201)が無いじゃないか』~そんな声も聞こえてきそうだ(笑) そう、「ふくろう」・・・僕にとってはこれがちょいと問題なんです。「ふくろう」は動物シリーズを意識する前にも、意識し始めた後にも、何度か見かけたことがあって、特に高くはなかったはずだが・・・購入するには到ってない。それはやはり、アール・グラントという人が男性ヴォーカル~<訂正>アール・グラントはオルガン弾きでした~であるからだ。ヴォーカル全般をそれほど聴いてないが、特に男性ヴォーカルについては、シナトラ以外はほとんど聴かない。これは・・・もうどうしようもない・・・僕自身が自分の音楽への「好み」に忠実でありたい・・・ということに尽きる。
<2023年1月4日追記>このアール・グラント「ふくろう」(9201)は、その後、入手しました(笑)なのでこの記事の上の方~トゥーツ・シールマンズの「ボクサー犬」と並べて写真を掲げました。
僕は長いことレコードを集めてきたが、何(いず)れかのミュージシャンなりレーベルなりをコンプリートに揃えよう、とは思わない。もちろん好きなミュージシャンのものは自然とたくさん集まってはいるが、例えばビル・エヴァンスやチェット・ベイカーの場合でも、それぞれ初期(ほとんどが国内盤です:笑)から中期まではけっこう揃ってはいるが、後期のものはほとんど持ってない。それはもちろん資金的余裕がないからではあるが(笑)・・・それだけでもない。
聴き手というのはまったく勝手なもので、いくら好きなミュージシャンの新作、あるいは未発表作であっても、録音時期・パーソネルなどから「あまり楽しめないだろうな」などと予想してしまったりする。(つまり、その作品を購入しない)
聴いてみなくちゃ判らんだろう・・・というのも正論だと思うが、僕の場合だと、好きなミュージシャンだからこそ・・・例えばビル・エヴァンスの1970年以降のレコード作品の内容が、僕の中でのビル・エヴァンス音楽への好みとは、微妙にズレてきてるな・・・という実感が確かにあるのだ。
エヴァンスのレコードをあれやこれや聴いてきた自分なりの感覚(好み)からエヴァンス作品を時系列で眺めてみると・・・やはり「レコード音楽」としては、あちらよりはこちらの方がいい(楽しめる)などと、聴き手の都合で(好みで)比較してしまうのだ。これは・・・聴き手の傲慢かもしれないが、実際、商品としてのレコードをセレクトする際にはどうしてもある種の取捨選択が生まれるわけだから・・・やはり仕方ない。(あくまで僕の場合)ビル・エヴァンスで言えば<モントルー>までは楽しめるけど、それ以後は・・・イマヒトツかな?というような認識を持ってしまう(しまった)わけなのだ。
そんな風に傲慢で残酷な取捨選択が、いろんなレコードを目にするたびにアタマの中で行われている。
そうして僕としては「ふくろう」が動物シリーズの中の一枚であることは充分に判ってはいるのだが・・・男性ヴォーカルの(訂正~オルガン弾きでした)アール・グラントにはどうにも触手が動かないのだ。そんなわけで・・・これからも「ふくろう」が僕の家にやってくることは、たぶん・・・ないだろう(笑)
<2023年1月5日追記>(やってくることはないだろう)・・・などと書きましたが、この後、「ふくろう」を入手してしまいました(笑)そうしてヴォーカルと思い込んでいたアール・グラントがオルガン弾きということが判りました。お恥ずかしい次第であります。
≪追記≫2016年1月6日≪動物ジャケット以後のJ9200シリーズ≫について。
さて、J9200~J9208までを「動物ジャケ」と名付けたわけだが、このJ9200シリーズは、この後も続いている。そういえば僕はこの9200番台を「シリーズ」と簡単に書いてきたが、それには明確な理由がある。各ジャケット右上に≪Series J9200≫というロゴ囲みが統一されたデザインで表記されていることから、DeccaがJ9200番台を「シリーズ」として企画していたことは間違いないと考えられるのだ。ただ、「動物ジャケ」を、なぜ9208までで止めたのか・・・がよく判らない。単にジャケットに使ってみたい動物の種類(目を惹く写真)が無くなってきただけかもしれない(笑)
「動物ジャケ」以後の作品にも興味が湧いたので、ちょっと調べてみました(以下、リスト)
9209 Hal McKusick/Cross Section-Saxes
9210 Sal Salvador Quartet /Colors In Sound
9211 Ellis LARKINS/Blue and sentimental
9212 Johnny Pisano And Billy Bean/Take Your Pick
9213 Fred Katz - John Pisano - Hal Gaylor/Trio
9214 Milt Bernhart/SOUND OF BERNHART
9215 Ralph Burns/Porgy and Bess In Modern Jazz
9216 George Russel And His Orchestra/New York, N.Y.
9217 Fred Katz/Katz And His Jammers
9218 Bernard Peiffer/Thd Pied Peiffer Of The Piano
9219 George Russell/Jazz In The Space Age
9220 George Russell Sextet/At" The Five Spot"
・・・と、こんな感じです。(青字 9210、9217、9220 が所有盤)
9221 からは新録音ではなく、≪Decca Jazz Heritage Series≫なるシリーズ名に変ったようで、9221は、アール・ハインズの過去録音のコンピレイションのようです。
(以下~2008年2月3日記事をそのまま再掲しておきます)
<ジャケレコ 第1回> Deccaの動物ジャケ
この「夢見るレコード」・・・タイトル部分に<旅レコ>とか<思いレコ>、あるいは「発掘レコ」など、ごちゃごちゃと説明が多いかと思う(笑)
これらはブログを始めた頃、いろんな切り口からいろんなレコードを取り上げてみたい・・・と構想していた、その名残りである。当初、「旅レコ」では、旅先で買ったレコードの全てを記録しよう・・・また「発掘もの」としては、リサイクル屋での格闘ぶりを書きたい・・・などと思っていたのだが、そうそう「旅」や「発掘」のストーリーがあるわけもない。もしあったとしても、そうすると「旅レコ」は、全く僕個人の「購入レコードリスト」になってしまうし、「発掘レコ」に登場するレコードは、歌謡曲のシングル盤ばかりになってしまう(笑)
もちろん、タイトル部分に「ジャズから昭和歌謡まで」とも書いてあるように、当初は「ジャズ」だけに拘(こだわ)るつもりもなかったのだが、何回か話しを書き進めているうちに・・・やはり「ジャズ」を主軸でやっていきたい気持ちが強くなってきたようで・・・だから最近は、特に切り口を特定しない<ジャズ雑感>での更新回数が多くなっている。実際、僕が何を書いたとしても、それは「ジャズに関する何らかの感想」でもあるわけだし、もともと、どんなレコードやテーマを取り上げたにしても、僕の書く文章の中身(質感)にそれほどの違いがあるわけでもない。であれば、「思いレコ」やら「やったあレコ」などと、ヘタに切り口を分けずに、単に<夢見るレコード 第~回 ~>の方が、よほどすっきりするようにも思うのだが、このブログを始めた直接の動機にもなった<旅レコ>という名前そのものに若干の愛着もあったりするので・・・当分は、やはりこのままでやっていこう。瑣末なことで、いろいろ迷う自分である(笑)
そんなことを思いながら、タイトル部分を眺めていたら・・・これまでに全く登場していない切り口があることに気がついた。
<ジャケレコ>である。自分で書いた説明では『<ジャケレコ>とにかくジャケットがいいレコード』となっている。
う~ん・・・なぜ<ジャケレコ>が一度も登場してこなかったんだろう? たぶん・・・それは僕の妙な拘りのせいだ。つまり・・・何らかのレコードを、わざわざ<ジャケレコ>として取り上げるのも、なんだか大げさな感じだし、それよりも自分の好みのジャケットのレコードを見せることで「なんだ、あいつ、こんなセンスのないジャケットが好みなのか・・・」などとも思われそうでもあるし・・・というような気持ちである。それならそんなテーマを作らなければいいのに(笑)まあそれでもせっかく作った「切り口」だし、実際、音の中身を知らなくても「ジャケット」を気に入って入手したレコードもあるのだ。だから、これからはそんな変な自意識は捨てて(笑)自分が「ちょっと気に入ったジャケット」のレコードを、気楽に取り上げていこうと思うのである。そして・・・この<ジャケレコ>での記事は、あくまで「ジャケット」が主役なので、レコードの中身には、それほど踏み込めないかもしれない。だから・・・わりと短めになるかと思います(笑)
さて、記念すべき<ジャケレコ>の第1回は「デッカの動物ジャケ」でいこう。他のレーベルでも、動物を使ったジャケットは、けっこう見かけるのだが、僕には、この「デッカの動物シリーズ」が、なんとなく気になったのである。そうして、気になるデッカ盤をいくつか連ねてみると・・・どうやら「シリーズ」になっているようなのだ。こうなると・・・もちろん揃えたくなる(笑)本当を言うと・・・シリーズを全部揃えてから記事にしたいところだが、それだといつまで経っても記事にできない(笑)中途ハンパなコレクターの僕としては、不揃いであっても、こうして載せてしまうのである(笑)
最初にこの「動物」を意識したのは・・・「鳥」だった。首が細くて、やけに長いのだが、その割りに頭と胴体は大きめだ。その鳥が、羽を大きく羽ばたかせて空中を飛んでいる映像が、ジャケット一杯に広がっている。その不安定なバランスに見えるフラミンゴのような鳥が、見事にゆったりと宙に浮いているような感じがあって、不思議に印象に残るジャケット・・・あれはたしか、ギターのバリー・ガルブレイスのレコードだった。しかしながら、この「鳥ジャケ」・・・強く印象に残っているのだが、国内盤でさえ未入手なのである(笑)
このシリーズ・・・大体、以下の「動物」がジャケットを飾っていると思う。
「犬」
「猫」
「猿」
「ペンギン」
「ヤマネコ」
「フラミンゴ」
僕が最初に入手したのは・・・「犬」だった。ビル・エヴァンス入りのあの盤~Don ElliotのThe Mello Sound(decca:DL9208)である。このレコードについては、拙ブログ<やったあレコ 第1回> ドン・エリオット/メロウ・サウンド(Decca)を、ご覧下さい。
いずれにしても・・・この盤などは、ビル・エヴァンスのマニア以外には、面白くもなんともないレコードだろう(笑)
次に「猿」。こちらも・・・またある意味、マニアックなレコードかもしれない。ジョン・ピサーノという地味なギタリストと、ビリー・ビーンという、これまたあまり名前を聞かないギタリストの共演アルバム~Maikin' Itである。
ピサーノについては・・・ビル・パーキンスの「ジョニー・マンデル集」とでも呼ぶべき Quietly There(abc riverside)
においての「生ギターのしっとりした感じ」をとても気に入っていた。
ちなみに、このジョン・ピサーノ氏は、現在も西海岸で活躍中らしい。
ビリー・ビーンの方は、バド・シャンクのパシフィック盤(slippery when wet)での「クールで切れのいい音色」がちょっと気になっていた。割と知られているであろうレコードでは、ピアノのWalter Norris のThe Trio(riverside)にも参加していたギタリストでもある。
私見だが、この2人・・・両者とも、ギターのピッチ(音程)が凄くいいように思う。とても趣味のいいギタリストだ。
だから、全く未知だったこのレコード:Johnny Pisano, Billy Bean/Maikin' It (Guitar Duets)を発見した時は、そのマニアックさに電流が走った。「あの2人のデュオだって!」 しかもジャケットが・・・変な「猿」である(笑)
ところで、<ジャケレコ>ではあまり内容には触れない・・・とは言ったものの、このマニアックなギター・デュオ盤の中身はというと・・・A面1曲目~ill wind から、いきなり「弦楽」の音が聞こえてきて、少々がっくりする(笑)がっくりはするが、「弦入り」は3曲だけなので我慢して聴くと、他にも「管部隊」入りが2曲あり、全体に「アレンジされたジャズ」の感じがあって、あまりジャズ的に楽しめる内容ではないなあ・・・と思う。
しかし、もちろんいいテイクもある。when I fall in love では、スロウバラードでの2人のギターをじっくりと味わえる。音色が柔らかくて丸みのある方がピサーノだと思う。この人の生ギターは本当に温かい感じがする。
the song is you は2人のギターにベースだけのトリオ編成だ。わりと急速調を軽くスイングしていて、とてもいい感じだ。
このレコード・・・あまりアレンジに凝らずに、もっと小編成を中心にまとめていれば、もの凄くいいレコードになったのに・・・という気持ちになってしまう。でも・・・こんな渋いレコードを造ってしまったDeccaというレーベルもなかなか懐が深いと思う。
そして「動物シリーズ」の中では、最も知られているであろうと思うジャケットが、これだ。
エリス・ラーキンスの「猫」である。真っ赤をバックに気位の高そうな2匹の猫が、何やら上の方を見つめている。
このピアノトリオ盤は・・・なかなか聴かせる。実は、エラのレコードをあまり持ってないので、ラーキンスという人をほとんど聴いていないのだが、この人の力まないタッチは・・・やはり唄伴の名手でもあるジミー・ロウルズに、ちょっと似ているような印象を受けた。
そんなラーキンスの品のいいタッチが、そういえば・・・ジャケットを飾る品のいい猫とよくマッチしている・・・とも言えそうだ(笑)その証拠にタイトルもThe Soft Touchだ(笑)
もう1枚の「犬」~こちらはなかなか躍動的なジャケットである。小柄な犬が思い切りジャンプして、高跳びの棒を跳び越えようとした、その瞬間を捉えたショットのようだ。
タイトルは Piano A La Mode。
バーナード・ペイファー・・・このピアニストもあまり聴いてない。emarcyから出ている Bernie's TunesというLP国内盤を持っているが、あまり印象に残ってないのだ。 高音での切れのいいタッチ、そしてその粘りのない8分音符を聴くと・・・やはりフランスのピアニストだなあと思う。マーシャル ・ソラールと同じように、むちゃくちゃ巧いのだが、何か「引っかかり」がない。ジャズという音楽には、時として灰汁(あく)も欲しいのだ(笑)
このレコードについては、内容よりも、ちょっと興味を惹くことがあった。「内袋」である。僕の持っている他のデッカ盤のinner sleeve(内袋)は、たいてい紙製のカラー写真入り~いわゆるad sleeve(広告スリーブ:advertisement sleeve)だったのだが、この9203番だけは「ビニール製の内袋」だったのだ。もちろん僕の下(もと)に届いたこのPiano A La Modeに入っていたこの「ビニール内袋」が、純正オリジナルの内袋なのかどうかは判らない。しかし僕の直感では・・・このレコードから中の盤を取り出すときに感じた「盤と内袋の自然な合体感」から~これは、もちろん僕の思い込みだが:笑~この「ビニール製ad 内袋」は、この9203番の純正オリジナルだと思うのだ。 そんな風に見直してみると・・・あまり見かけないこともあってか、このチープなビニール内袋が、なにやらチャーミングなものにも見えてくる(笑) ちなみに、「広告写真」のレコードは・・・デッカの場合、何が何でも「サッチモ」なのである(笑)
並べてみて気がついたのだが、この4枚・・・どのジャケットにも左上に 《MOOD JAZZ IN HI FI》という表記がある。そしてレコード番号は、どれも9200番台だ。やはり・・・これは「動物シリーズ」だったのだ!
そう思って、裏ジャケットをしっかり見てみれば・・・introducing the J 9200 seriesとして、この9200番台の9200から9208までの全9タイトルのリストが載っているではないか。そしてちょっと不思議なことが・・・というのは、普通、こういうシリーズものは番号順に発売されていくので、例えば9200番など始めの頃ものには、そのシリーズの全タイトルは表記されずに、逆に、例えば終わり頃の9208盤には、それより以前の全てのタイトルが表記されているのだろう~と思ったのだが、僕の持っている4枚、どの盤にも全9タイトルが表記されていたのだ。そしてよりよくチェックしてみると・・・正確には「全9タイトル」ではなくて、どの裏ジャケにも「その盤のナンバーを除く全8タイトル」がリストされているのだった。この辺り、丁寧な仕事だと思う。
ひょっとしたら・・・この全9タイトルは、同時に~あるいは短期間の内に~発売されたのかもしれない。
(青字が持っている盤)
DL 9200 Barry Garbraith/ Guitar And The Wind
DL 9201 Earl Grant/ MIdnight Earl
DL 9202 Fred Katz/Soul Cello
DL 9203 Bernard Peiffer/Piano A La Mode
DL 9204 Toots Thielmans/Time Out For Toots
DL 9205 Ellis Larkins/The Soft Touch
DL 9206 Johnny Pisano, Billy Bean/Maikin' It
DL 9207 Ralph Burns/Very Warm For Jazz
DL 9208 Don Elliot/The Mello Sound
そして・・・この動物シリーズは、どうやらこの9枚で完結しているようなのだ。というのも、この次の番号~DL 9209が、ハル・マクージックの「クロス・セクション」という、割と有名なレコードで、ジャケットはたくさんの「管楽器たち」のやつだ。ちなみにその「クロス・セクション」には、ビル・エヴァンスが参加している。
そういえば・・・この「動物シリーズ」には、痛恨の1枚がある。トゥーツ・シールマンズの一枚、あれは確か・・・「ヤマネコ」みたいなジャケットだったかな? この「ヤマネコ」には、大阪の日本橋(ニッポンバシ)にある中古レコード店で、一度だけ遭遇したことがある。シールマンズ絡みで前から探していた盤だったし、価格も3000円台だったので「やったあ!」と、ほとんど買いかけたのだが・・・「傷あり」の表示が気になり、カウンターでチェックさせてもらうと、片面の半分ほどにスリキズが走っており、しかもそれが割と深そうなスリキズで、どうにもノイズが出そうだったので・・・涙を呑んで見送ったのだ。そういう時、僕は「いい方」に考える。「すぐにまた見つかるだろう」・・・しかしあの「ヤマネコ」、あれ以来、ネットでさえ見かけないのだ。どこへ行ってしまったのだろうか・・・あの「ヤマネコ」君は(笑)
そして、これはうんと後から判ったことなのだが、この「ヤマネコ」に、なんとベースのウイルバー・ウエアが参加していたのである。う~ん・・・あの時、それさえ知っていれば、多少はコンディションが悪くても入手していたのに・・・。痛恨の1枚である。
そうして僕は、さっそく拙ブログの「ウイルバー・ウエアのディスコグラフィ」の項~<思いレコ 第12回> Ernie Henry/Presenting(riverside)に、いつ入手できるかも判らない、このレコードのタイトルを付け加えた(笑)*補筆1.~この後、DL 9204 Toots Thielmans/Time Out For Tootsを入手したところ、ベースはダグ・ワトキンスであることが判明しました。残念ながら、「ウエア参加」は全くの間違いでした。ウエアのディスコグラフィの方も訂正しました。残念である。
*補筆2.~このシールマンズのジャケットを、僕は「ヤマネコ」と書いたが、それは完璧に僕の思い違いでした。ブログ仲間の67camperさんが、コメントで知らせてくれたように、「犬」(ボクサー?)でした。その愛嬌あるジャケットは、67camperさんのブログでどうぞ。
special thanks to Mr.67camperさん!
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