ハンプトン・ホウズ

2008年9月15日 (月)

<ジャズ雑感 第25回>熱いべース奏者たち(C面)レッド・ミッチェル

レッド・ミッチェル~しなやかなビート感。

Presenting_4 先日、sigeさんとyositakaさんという音楽好きの友人と音聴き会(この3人では30年振り)をやったのだが、その折、yositakaさんが、再三「レッド・ミッチェル」という名を口にするのである。そういえば、10年ほど前だったか・・・彼からの年賀状に「~最近はレッド・ミッチェルを~」という一節があったことを僕は思い出した。ジャズ好きが集まっても、なかなかレッド・ミッチェルというベース弾きの話しにはならない。彼はハンプトン・ホーズとのレコードでミッチェルを好きになったというのである
そのことからも、yositakaさんが(クラシック中心かと思っていた)僕の想像以上にジャズに深く入り込んでいることが判った。そんなyosiさんからも大いに刺激を受け、またちょうど前回の《夢レコ》で、Mode盤~Warne Marsh Quartetで、少々、レッド・ミッチェルに触れたこともあり・・・そんな流れから、今回は、レッド・ミッチェルを<夢レコ>~熱いべース奏者たち(C面)として取り上げてみたい。

僕は、レッド・ミッチェルこそ本当の意味でベースの名手であると思う。1950年代後半からのアンドレ・プレヴィンやハンプトン・ホーズとの諸作に始まり、その後の50年以上も現役で活躍したので、彼の参加したレコードの数はとても多いはずだ。つまり彼には常に仕事のオファーがあったわけで、それはなぜかといえば・・・やはり「巧い」からだろう。そしてそれは単に「巧い」のではなく、その「巧さ」にイヤミがないというか・・・どんなタイプのジャズにも巧くフィットできるベースを弾くことができたからだと思う。
そういえば、レッド・ミッチェルを「嫌い」だという人に出会ったことがない。
ミッチェルという人は、ミンガスやラファロのように強く自分を主張するタイプではなく、しかし与えられた持ち場では、きっちりといい仕事をする・・・そんな名脇役的なタイプとも言えそうだ。そうだな・・・映画「7人の侍」での宮口 精二というか(笑)
僕がレッド・ミッチェルというベース弾きを意識するようになったのは、ジャズ聴きのだいぶ後になってからである。ジャズのベースでは、最初にミンガス、次にラファロ、そしてウイルバー・ウエア・・・そんな突出した、ある意味「判りやすい」個性にまず惹かれた。そしてその頃は、まだプレヴィンやホーズのピアノトリオものまでは手を拡げていなかったので、ミッチェルのベースを耳にするチャンスも少なかったはずだ。だから僕の場合は、レッド・ミッチェルというベース弾きの凄さにいきなり開眼したわけではなく、いくつかのレコードを聴いていると「あれ・・・このベース、ちょっといいな」と思う場面があって、クレジットを見ると、それがレッド・ミッチェルで、そんな繰り返しの内に知らぬ間に彼を好きになっていた・・・そんな風に自覚している。そんな「我、レッド・ミッチェルに開眼せり」レコードをいくつか紹介しようと思う。

Buddy Collette/Jazz Loves Paris(specialty) 

001_3 《「僕のレコードリスト」によると、豊橋の隣の街~豊川市のプリオというビルでのレコードフェアで、1993年9月に入手している。この1987年の再発盤、音はかなりいい。もともとミッチェルのベース音は大きいとは認識しているが、それにしてもベース音がだいぶ大きめになっているように聞こえる。そういうマスタリングだったのかもしれない》

ジャズ聴きもある程度長くなると・・・ちょっと渋いレコードにも興味が湧いてくる。このレコードフェアへは、たしか歯医者で親知らずを治療した後に直行したものだから、その麻酔が切れ始めて痛くてしょうがない(笑) フェアにはいくつかの業者が出品していたが、ジャズのコーナーはわずかで、僕は根性でエサ箱を探ったが、ハードバップものに目ぼしいものが見つからなかった。それでも、ひどい歯痛をガマンして来たのだから、という気持ちもあり、ちょっと気になった2枚を買ったのだった。当時、まだ西海岸ものはあまり聴いていなかったので、こんな地味なものを買うということに、自分でも意外な感じもあった。それが、Jazz Roles Royce(fresh sound盤)と、もう1枚がこのJazz Love Parisだ。もちろんオリジナル盤ではなくて、復刻ものである。このレコードを聴いた時・・・僕はレッド・ミッチェルという人の巧さを、初めて意識したような・・・そんな記憶がある。クレジットを見ると、おおっ、その後に好きになったフランク・ロソリーノの名前もあるじゃないか。久しぶりにこのJazz Loves Parisを聴いてみた。

「バラ色の人生」la vie en rose~有名なシャンソンの名曲である。シャンソンというと・・・全くの余談だが、実は僕は「シャンソン」という音楽がちょっと苦手である。シャンソン曲のメロディは好きなのだ。「枯葉」「セシボン」「パリの空の下」・・・どれも素晴らしいメロディで、もちろん嫌いではない。僕が苦手なのは・・・いわゆるシャンソンでのあの唄い口~メロディをそのまま唄うのではなく、途中から「語り」のようになっていく~あの感じが苦手なのである。もちろん全てのシャンソン歌手が決まったように「語り」的な唄い口で唄うわけではないとも思うのだが、シャンソンというと・・・どうにも「ドラマティックに語る」あの演劇的なイメージが振りかぶってきてしまい・・・素直に音楽として楽しめなくなってしまうのだ。
それはそうと、このJazz Loves Parisなるレコード・・・シャンソンの名曲をジャズ風に演奏しているのだが、どうやらこの1曲「バラ色の人生」が、ミッチェルのフューチャー曲らしく、誰もが知っているあのメロディをベースが弾く仕掛けなのだ。ミッチェルは、ゆったりとした間合いであのメロディを、ゆったりと弾く。そして、この「ゆったりさ加減」が・・・実にいい(笑)
なぜ僕がこういう「ゆったりさ加減」に拘るのか・・・ちょっとした説明が必要かもしれない。
ベースという楽器では(弓弾きではなく、指で弾(はじ)くピチカットの場合)同じ音を、管楽器のようには長くは伸ばせない。
いや、正確に言うと・・・その音が伸びていたとしても、弾かれた直後から徐々に減衰していく運命にあるわけだ(笑)
声や管楽器の場合なら、その音を(その音の音圧を)ひと息で(もちろん、息の続く間は)維持しながら、しかもその音量を強くしたり、弱くしたりできる。しかし、ピアノ(打楽器)やベース、ギター(弦楽器のピチカットやピック弾き)では、これができないのである。自転車に乗っていて、ある時点からペダルを漕がなければ、徐々にスピードが落ち最後には止まってしまう。ペダルを漕ぐことなく自転車を少しでも先に進めようとした場合、自転車が止まりそうになったその時、身体を前の方に乗り出して、その勢いで少しでも進もうとするだろう。ジャズのウッドベースでも「伸ばすべき音」が必要な場合、その最後の方では、少しでもそのノート(音程)の音量・音圧を維持しようとして、その音程を押えている左手で、懸命にヴィブラートを掛けたりする。(ジャズの世界では、ヴィブラートの掛け具合、あるいは、掛ける・掛けないは、個々の奏者の好みで、特に法則性はないとは思う。
*以下追補~その観点でミッチェルのベースをよく聴いてみると、ミッチェルは音を伸ばした際に、ヴィブラートはほとんど掛けてないように聞こえた)
そんな事情もあり、ある曲のメロディをベースで弾く場合、なかなか「間」が持てないこともある(特にスローテンポの場合)ある音(音程)を充分に伸ばしてクレシェンド(だんだん強く)したいような気持ちでいたとしても、ひとたび、ベースから出たその音(音程)は、どんどん減衰していくのだ。それは、まるで意図しないデ・クレシェンドじゃないか(笑)
そんな時・・・たいていのベース奏者は気持ちが焦る(笑)だからそこで「倍テン」(テンポを倍にとって)にして、アドリブ風のフレーズを入れてしまうことも多い。それがセカセカしたように聴こえてしまうこともあるかと思う。
ミッチェルというベース弾きの良いところは、まず「音が大きそう」なことだ。強いピチカットから生まれるその豊かなベースの鳴り具合と、しっかりした左手の押さえにより充分に伸びるそのベース音。それでもやはり上記のように、スローテンポのバラードにおいては、メロディのある箇所では、音が消えていく場面もある。しかしミッチェルはその伸ばしたいはずの音が消えかかっても・・・全く焦らないのである。見事に堂々としているのである。 
僕がレッド・ミッチェルを凄い・・・と思うのは、実はここなのである。音が消えかかっても、そんなことは全く気にしてない・・・ように聴こえる。それよりも、その時の「メロディの唄い」だけを意識して「唄の自然な流れ」を持続させようとしている・・・そんな風に聴こえるのだ。だから「間」が充分に感じられるし、時には、倍テン風なフレーズも入れるが、それはごく自然にその前後のフレーズと繋がり、なんというか・・・「唄の呼吸みたいなもの」が乱れない。そういう「唄い口」こそが素晴らしいのだ。これって・・・「楽器で唄う」ということにおいて、簡単そうで実は一番難しいことかもしれない。
ミッチェルのベースがテーマのメロディを弾く場面は、このla vie en rose「バラ色の人生」だけでなく、もうちょっと古い録音~Hampton Hawew vol.1(contemporary)でB面4曲目~these foolish thingsにも出てくる。こちらでも、先ほどの「唄の自然な流れ」というツボを押えたミッチェルの見事なテーマ弾きが聴かれる。
このようにベースがメロディを弾く場合だけでなく、ミッチェルは、もちろん他のスロー・バラードやスタンダードでのベース・ソロも巧い。彼はどんなテンポの曲でも、たっぷりと鳴る音量を生かして強く弾いてゆったりと伸ばすフレーズと、倍テンにして細かく軽やかに唄うフレーズとを、いい具合に織り交ぜてくる。そのバランス感覚が見事なのだ。だからよくあるように「ベースソロだけ別の世界」という感じにはならずに、それまでの演奏のビート感を保ったまま、ソロ場面ではベースもグルーヴする・・・という感じで・・・とにかくその演奏が自然に流れていく。この辺りの「しなやかさ」が、実に独特な味わいで、技巧的な意味でなく「ベースが唄っている」・・・そんな感じがするべーシストだと思う。
そしてyositakaさんがご自身のブログでも強調しているように、バッキングでのミッチェルも、これまた素晴らしい! 要はレッド・ミッチェルという人は、全て素晴らしいということだ(笑) そんな演奏も少しだけ紹介しよう。

Hampton Hawes/All Night 002Sessions vol.1(contemporary:1956年)
《1956年としては充分にいい録音だと思うが、僕の手持ち盤、僕の機械では、他のcontemporary盤に比べて、ベース音はややブーミーに膨らませた感じもある。録音はロイ・デュナンだと思うが、クレジットには、sound by Roy Duannという微妙な表現なので、ひょっとしたら録音は別のエンジニアかもしれない。この盤は1970年頃の米再発。盤はペラペラだが、A面にはLKS刻印がある。B面はなぜか手書きLKS》

このレコード、ライブ録音だが、右チャンネルから太っいミッチェルのベース音が聴ける。005
vol.1のB面1曲目~broadwayは、かなりの急速調だが、ミッチェルはベースを充分な音量と余裕のノリで鳴らし切っており、素晴らしいビート感を生み出している。それからベース・ソロの場面でも、8分音符のフレーズを繰り出しつつ、バッキングと同じ4ビート的フィーリングを残そうとしているのか~つまり、4分音符4つ弾きも混ぜながら~その急速調でのビート感を維持しながら、見事なべースソロを演じている。素晴らしい!

さて、レッド・ミッチェルということで、僕が印象に残っているレコードをいくつか挙げてきたが、例によって初期の何枚かに集中してしまったようだ(笑)あと少しだけ簡単にコメントすれば・・・50年代のリーダー作~Presenting Red Mitchell(contemporary)とHere Ye(atlantic)の2枚は、ベースの名手というだけでない「ハードバップ的な覇気」を感じさせてくれる好盤だと思う。60年代のI'm All Smiles、The Seanceというライブ録音も好きだし、それから、うんと後期のリーダーアルバム(「ワン・ロング・ストリング」や「ベースクラブ」など)もいい。それからcontemporaryのアンドレ・プレヴィンとの諸作も、もちろん悪くはない。いずれにしても「音楽の自然な流れ」を造り出すミッチェルの持ち味は、どの時期のレコードにあっても、変わりはないと思う。

それにしても・・・僕がレッド・ミッチェルの良さに開眼したあの地味なレコード~Jazz Loves Parisを買うキッカケにもなったあの「歯痛」には、充分に感謝せねばなるまい(笑)

*2012年6月2日追記~コメント欄にて話題に上った、ミッチェルの日本のライブハウスでのライブ盤~ 《ケニー・ドリュー・ミーツ・レッド・ミッチェル・アット・歪珠亭(ひずみだまてい)タイトルは「とういん」》を紹介しているブログを見つけました。レッド・ミッチェルの熱烈マニアらしいmooreさんなる方のブログ~HOME SUITEのこのページをご覧ください。http://home-suite.blog.ocn.ne.jp/home_suite/2008/03/post_8da4.html

そのLPの写真も拝借して紹介しておきます。Home_suite542

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2006年10月28日 (土)

<ジャズ回想 第8回>ニーノニーノさんのオフ会 大阪・神戸秋の陣。

10月7日、西から東から14人が藤井寺Yoさん宅に集まった。

<当日かけたレコードのジャケット写真を、Yoさんが送ってくれましたので、BOSEさん提供分も含めて、いくつか追加しました。ジャケットのみの写真がYoさん提供分です。マクレエのこと、少し追加しました。10/31>

福岡のオリジナル盤通販専門店ニーノニーノの新納さん主催の「杜の会」~会とは言っても特に主義主張があるわけでもなく、もちろん何かの誓約書を書かされるわけでもない(笑) ただ単に「音楽を好きな人間が集まっていい音楽をいい音で聴こうではないか」という集いなのだが~2006年の信州:白馬で、新納さんがこう言った。「次は・・・ぜひ九州と本州の方が一緒に集まりたい。そうとなれば・・・集結の地は大阪しかない。Yoさん、ぜひお願いします!」・・・一同、どよめく「おおっ・・・」
春から夏へ・・・その間、大阪(藤井寺)の会場となるYoさんがいろいろと考えを巡らせ、初日にYoさん宅、翌日はメリケンさん宅、その後、神戸のジャズ喫茶Just In Timeさん~という段取りである。お盆の頃には、日程が10月7日(土)・8日(日)と決まった。その頃の「杜」の書き込みから、この「杜の会」が自然と「大阪・神戸:秋の陣」と呼ばれるようになっていった。秋の陣~西から東から大阪に集結する落ち武者たち・・・いや、諸国の武将たち、といった趣ではないか(笑)

そうして先日、ついに「杜の会」が催された。九州からは、DUKEさん(新納さん)、音の匠さん、CROWさんご夫妻、BOSEさん、PSYさん、M54さんと7人。(PSYさんとM54さんは、7日の夜(宴会)からの根性の参加!)
本州からは、群馬のRoxanさん、静岡のパラゴンさん、マントケヌーマーさんと彼女。愛知からのD35さん、konkenさん、それにbassclefの計7人。
皆さん、それぞれに苦心惨憺のスケジュール調整をされての決死的参加なのである(笑)

愛知組の3人は、私:bassclefが朝6時に豊橋を出発。岡崎(konkenさん)~東海市(D35さん)と合流。よしっ、3人で一路、藤井寺へ!と
気合こめて出発。運転はkonkenさん。亀山辺りまで少し混んだが、その後は快調。走るクルマなので飛ばす、飛ばす。10:30頃にYoさん宅に到着した。
笑顔で迎えてくれた奥様に「また来てしまいましたあ(笑)」などと訳の判らん挨拶しながら、2Fへ上がっていくと・・・なにやら聴いたことのある歌声が・・・おっ、これは? 部屋に入ると、Yoさんとパラゴンさんが嬉しそうな笑顔で迎えてくれる。
「やあやあ」・・・と6月以来の再会だ。パラゴンさんは、根性の夜行バスで早朝の大阪入り。8時前には着いていたそうで、もうすっかりこの部屋に馴染んでいる(笑)
パラゴンさんといえば・・・ヴォーカルだ。テーブルの上にはヴォーカル盤ばかり並んでおり、すでにいろいろと聴いてきたようだ。Out_of_the_blue
そうして一番上にあったのが、キャロル・スローンのOut Of The Blue(columbia:ステレオ盤。これはYoさんの手持ち盤) だ。 そうかっ!このレコードだったのか、と嬉しくなる。このレコード、僕の手持ちはモノラル盤(カナダ盤)だったので、ステレオ盤を一度、聴いてみたかったのだ。カナダ盤でもけっこういい音だと思っていたが・・・やっぱりこのレコードは録音も相当にいいようで、ステレオ盤もふくゆかないい音で鳴っていた。どうにもステレオ盤も欲しくなってしまうなあ(笑)
<右上の写真が、Yoさん提供のステレオ盤。下の写真は、僕のカナダ盤。maroon/siliverラベルの「6つ目」も悪くない:笑>_006_2

Spring Is Here(ロブスター) they can't take that love away from me
偶然にもキャロル・スローンの現代盤~78年録音のspring is here(ロブスター)を持ってきていたので、1曲(they can't take that away from me)かけてもらう。
ムラーツのベースが絶妙な巧さを見せる1曲だ。録音はやはりいい。しかし・・・ヴォーカルにはうるさい御仁が揃っている。「やっぱりスローンも年をとってるねえ」とkonkenさん。皆、うんうんと同意。唄はもちろん抜群に巧いのだが先ほどの1961年ころのスローンには、なんとも言いがたい「可愛い色気」があった。あの魅力には抗しがたい(笑)

パラゴンさんが「ペギー・リーはブラック・コーヒーだけじゃないよ~」と言いつつ取り出した10インチ盤。
Peggy Lee/Songs from Walt Disney's Lady and the Tramp(decca)から la la ru 
~ペギーリーがかわいらしい感じで唄っている。パラゴンさん、「こういうペギー・リーもいいんだよな~」と目を細める(笑)

After_glow_2  さて、何曲か聴きながらテーブルの上のお宝盤を見ると・・・エラのmellow mood(decca)の2種~[黒ラベル]と[文字が金色の黒ラベル]~の横に気になる盤が・・・。マクレエのafter glow(decca)だ。<写真:Yoさん提供>   ピアノのレイ・ブライアントが入っているので有名だ。オリジナルは、ジャケットがエンボス(ザラザラになっているやつ)だったとは知らなかった。エンボスだとテカテカしなくて、なぜか品良く感じる(笑)僕はマクレエはそれほど愛聴しているわけではないが、このレコードにはちょっと思い出があり、内容も好きなのだ。all my lifeを リクエストして聴かせてもらう。乾いたマクレエの声が気持ちいい。ブライアントのピアノも輝くようなタッチだ。こりゃあ録音も相当にいいぞ・・・。

ここらで男性ヴォーカルも、ということで・・・僕はメル・トーメを1枚持ってきたので、it's a blue world(bethlehem)から isn't it romantic?を。
ストリングス入りがややコーニーではあるが、やはりトーメは巧い。ベツレヘムの沈んだような音も、実にいい感じでしっとりと鳴る。
このごろ僕は、こういう沈み込んだような音も好きになってきたようだ。

次に、D35さんがヘンリー・マンシーニのpink panther(RCA Victor:dynagroove)を取り出した。
すると隣に座っているkonkenさんも自分のバッグから「同じレコード」を見せてニンマリ(笑)7_001_2   
D35さんは、いつもこのレコードを音を聴く時の軸にしているようだ。
それにしても、このdynagroove盤・・・いい録音なのは判っているつもりだったが・・・出だしから本当に凄い音だ!
冒頭、左の方からピアノのかなり高い方の音「コーン」という乾いた音に続いて、あの「泥棒が抜き足、差し足」みたいなチャーミングなテーマが始まる。
徐々にブラス群が押し出してくる~マンシーニの工夫を凝らしたサウンド群~それら全てが左右にいい具合に拡がった音場に満ちている。
フォルテの場面では、実に気持ちのいい音圧感が味わえる。7_002
それから、もちろんテナーのプラスジョンソン。間に入るこのテナーソロが抜群にいいのだ。あのユーモラスなテーマを充分に生かした、いやらしいような表現力!(笑) だけど実にコクのある色気のある味わい深いソロ・・・だということがよく判る、いや判ってしまう・・・そういう深みのあるテナーの音だった。こりゃあテナー好きの人にはたまらんだろうなあ。(そりゃ、オレか:笑) だから・・・実はこのピンク・パンサー、僕も持っているのです(笑)
<写真~Victor盤は、やはりステレオ盤が素晴らしい。だから、LPM~ではなく、LSP~が欲しい>

お昼の後に、いよいよ秋の杜:本編が始まった。
まず、Dukeさんの「レーベル別でのVan Gelder録音もの」から。
ヴァンゲルダーの録音というと、まずbluenote、prestigeをイメージしてしまうのだが、savoy、verveにもたくさんあるし、ちょっと意外だったのは、riversideやatlanticでの仕事もあったことだ。
各レーベルからいろいろな盤がかかったが、その違いっぷりには、実に興味深いものがあった。
ここでは・・・録音うんぬんというより、そのジャズの中身に参ってしまったTony Willimas/Spring のことを少し。
~トニーのブラシが凄い!とてつもなく速いテンポをブラシで紡ぎだしている。その快速ビートにピーコックが鋭いピチカットで絡んでくる。
この2人だけでも充分にスリリングなジャズになっているのだが、そこへ第1のテナーが右チャンネルから現れるフレーズを細かく刻み、それを少しづつ変化させていく。素晴らしく切味鋭いテナーのソロだ。ショーターのようでもあり・・・いや、ショーターにしてはトーンのエッジが鋭すぎる・・・こちらがサム・リヴァースか?とも思う。ベースソロの後、左寄りから第2のテナーが現れる。今度は、先ほどと対象的に「ロングトーン」を多用して、その音色を変化させつつ、徐々に徐々にフリーキーな音色で鋭いソロになっていく。この第2のテナー奏者~出だしのロングトーンで、「あ・・・やっぱりこっちがショーターか?」とも思うのだが・・・僕が思っているショーターの音色よりも、もうちょっと荒々しくて堅い音色のように聞こえる。そんな具合に、このレコードの2人のテナーには、どちらがどちらか?と迷うことしきりなのだが・・・音色自体の「端正さ」(リヴァースの方が、堅くて荒いトーン」という認識をしているので)と、それから、フレーズの展開の仕方、そのアイディアのおもしろさ・・・そんなことから「いつになく本気を出して鋭いプレイをしたショーター」のように思えくるのだが・・・サム・リヴァースという人自体をほとんど聴いていないこともあり・・・あまり自信がない(笑) 
いずれにしても・・・このextras の演奏の凝縮度は怖ろしく高い。トニーのブラシだけ聴いてみてもいい。ピーコックの切味鋭い高速4ビートだけ聴いてみても凄い。しかしその2人に絡むテナー奏者のソロとそのテナーに触発されて変化していくリズム隊2人の応用力というか、その変幻自在な流れに「素晴らしい音楽の一瞬」みたいなものを感じた。エンディングもしゃれている。最後、独りになったトニーがブラシとハイハットだけでしばしの間、リズムを刻む・・・そしてその急速テンポを半分に減速するような素振りを見せつつ・・・いきなり「ッポン!」というショットで終わるのだ。ブラシに始まりブラシに終わる・・・実に潔い(笑)これまでちゃんと聴いたことのないレコードだったが、この1曲は凄い!とようやく判ったようである。
_005_9  <写真の盤は、manhattan capitol ~通称DMM bluenoteだ。ちょっと哀しい(笑)>

この後は、皆さんの持ち寄り盤から1曲づつアトランダムにいこう、ということになった。
それぞれの方のかけたレコードの紹介と、その時の印象を思いつくままにに書こうと思う。

Yoさん~(以下、コーンからホウズまでの5点の写真はYoさん提供)

Cohn_on_the_saxophoneAl Cohn/渦巻きのコーン・・・Cohn On The Saxphone(dawn)~地味だけど実にいいレコードだ。いつもは柔らかい音色のアル・コーンだが、アドリブの中で、高音の方にいくと、時に鋭い音を発する。その時の音のかすれ方が・・・ちょっとレスターヤングに似ているのかもしれない。最後にかかったレスターを聴いた時、そんなことを感じた。

Birth_of_a_band_2Quincy Jones/A Birth Of thd Band(mercury) gypsy~このレコードは、Yoさんの愛聴盤である。

Al & Zoot/You an' Me (mercury)  you 'n me
~このレコード、録音はたしかに素晴らしい。ベースの音も輪郭鮮やかで音像も太い。Youn_meドラムのシンバルなど、最近の高品質録音のような雰囲気だ。隣にいたBOSEさんとそんな感想を言い合う。僕は、しかし・・・このズートやコーンが気持ちよくスイングする60年ころのジャズの「感じ」に、この「近代録音」の音質は、イマイチそぐわない・・・そんな印象を受ける。ドラムやベースがあまりに軽くスムースに流れるようなところもあって、ちょっとレコード全体に「渋み」が欠けているような感じがするのだ。だから、音のよさが却ってこのジャズを「軽く」している・・・そんなようなあまり根拠のないことを思ってしまう僕であった。

Jazz_sahib_1Sahib Shihab/Jazz Sahib(savoy) blu-a-round(写真:左)
~このレコードもそういえばヴァン・ゲルダー録音であった。僕はこのレコードは・・・ピアノがビル・エヴァンス(B面のみ)ということもあり
CBSソニー盤を入手してよく聴いたものだ。久しぶりに聴く初期エヴァンスのピアノは実にクールな装いで、やはりいいのである。
フィル・ウッズはこの盤でも大活躍だ。先ほどのクインシー・ジョーンズでのgypsyもそうだったが、ウッズという人は、与えられたスポットでいつも覇気のあるソロを取り、きちんとまとめてくる。本当に巧いアルトである。いい音で聴くいいアルトは快感でもある。それにしても後でよく考えてみると、宴会の後のアフターアワーズでもかかったWarm Woodsも含めて・・・この日は「フィル・ウッズ特集」でもあったようだ(笑)For_real

Hampton Hawes/For Real(contemporary) hip ~このコンテンポラリー盤は、何度聴いても本当に最高だ。ラファロのぐッと引き締まったベースが右チャンネルから「ビートの権化」となって押し寄せてくる。バトラーのドラムの乾いたスネア音やらホウズのピアノの、あの全く粘らない跳ねるように小気味のいい独特なタッチ。それからもちろんハロルド・ランドのテナー。この人のテナー・・・テーマの合わせとかが抜群に巧いので、その演奏自体もソフトだと思われているかもしれないが・・・意外に硬質な鋭い音色である。そんな具合に、全ての楽器の音が~ミュージシャンが気迫を持って発したであろう楽器の音が~等身大の実在感を持って押し出してくる。そんな感じだ。もちろんYoさん自身が意識的に調整してきたのであろうが・・・「コンテンポラリー」というレーベルについては、全く見事に(いい・悪い/好き・嫌いのレベルではなく)「あるべき音・出してほしい音~そういうバランス」で、鳴らしきっているのだ。そう思えてくる。素晴らしい!

Sonny Rollins/Sound of Sonny(riverside)     ~the last time I saw Paris もかかったな。これはピアノがソニー・クラークだ。

Zoot Sims/Tonit's Music Today(storyville)   ~I hear a rhapsody Tonite_music_today_1

この1曲だけは、シムズのワンホーンだ。バラードをじっくりと吹き進むシムズの唄心には参ってしまう。I hear a rhapsody・・・好きな曲だ。BOSEさんご自身も「よくできたCDだと思っていた」という徳間CDとの聴き比べでは・・・CDでは全体的にドラムスやベースが強調されていたような感じを受けた。そして、オリジナル盤で聴いたシムズのテナーは、やはり・・・響きが自然で、より陰影に富んでいたように思う。                    <上の写真:tonite's~はYoさんの手持ち盤。BOSEさん宅でこのレコードを聴いて気に入ったYoさんが、その後に入手されたとのこと>      

BOSEさん~
Go_manSonny Criss/Go Man!(imperial)blue prerlude ~ジャケットを見て「おおっ」と軽いどよめき。ソニー・クリスもいいのだが、このレコード、ピアノがソニー・クラークなのだ。このジャケットを見て、僕は、スクーターのスタンドが立っている絵とスタンドがない絵と2種類のジャケットが存在する、という何かで知った情報を話した。この盤は「スタンド付き」だ。レコードをかけ終えると、BOSEさんが一言。「このレコードのタイトルが、なぜ「ゴーマン」かというと・・・ジャケットを見れば判ります。スクーターの後ろに乗った女が「ほら、次はあっち」と指示を出しているので、男が嫌そうな顔をしてるでしょう」と真顔で言うのだった(笑) <Go Manの写真は、BOSEさん提供です。やっぱりスタンドが立ってる>

Good_gravyTeddy Edwards/Good Gravy(contemporary) から1曲。このレコード・・・contemporaryの中では案外に見かけない盤で、BOSEさんによれば「多分・・・OJCでもWAVEでも出てない」とのこと。Yoさんはこのエドワーズ、すぐに気に入ってしまったようで「これ、欲しい・・・」と一言。

<左の写真は、この会の後、Yoさんが速攻で入手した盤だ。やることが速い(笑)>

そして・・・Serge Charoff/Blue Serge(capitol) Blue_serge  

ジャケットの「サージ服」の青色が品のあるいい色合いだ。センターラベルは、capitolを象徴するあのターコイズ。この盤はベースのルロイ・ヴィネガーのはずむような音が大きく入っている。そしてピアノは・・・こちらもソニー・クラークだ。

<写真:Blue Sergeは、BOSEさん提供。こうして見ると実にいいジャケットですね>

それにしても、BOSEさんの持ち込んだ盤は、どれもこれも・・・(笑) ジャズの本当に渋くていいところの盤ばかりじゃないか・・・参りました(笑)  

パラゴンさん~
Sylvia Syms/Songs By Sylvia Syms から imagination(atlantic)
~ジャケットのイラスト~笑っているようなシムズのイラスト~がいいなあ・・・と思っていたら、すかさず、BOSEさんが「これはバート・ゴールドブラットだ」
すぐジャケットのイラストをよく見ると、やはりBurt Goldblatt とクレジットされていた。BOSEさん、よく知ってるなあ・・・(笑)

D35さん~
金子由香里(ビクター盤) 1970年代の日本盤だが、録音はキレイだった。
シャンソンは・・・わからない(笑) 曲は「詩人の魂」だったか。
エミルー・      Angel Band~カントリーっぽいノリの歌い手だ。
Ann Richards/Many Moods of Ann Richards ?

Roxanさん~
Pink Floyd(英EMI) の初期盤から1曲。
Mary Hopkin/water,paper and clay (EP盤)
~はじめは静かに始まるホプキンスの唄だったが、途中から壮大なオーケストレーションが現れ・・・
とにかくいろんな楽器群が次々に、充分な音圧を持って飛び出てくる・・・そういうダイナミック・レンジが驚異のUK・EP盤だった。

konkenさん~
Chicago(CBSソニー) introduction ~Yoさんのシステムはどのジャンルもいい具合に鳴る。ロックのレコード特有の「厚めの低音(エレクトリックベース)と
巨大音像のバスドラ」しかしこれらが、大きくても柔らかめな肌触りのいい音なのだ。ロックならこれくらい音圧が出た方が気持ちいい~という感じで鳴っていた。
konkenさんは「シカゴが、あのソニー盤であれだけ鳴るとは・・・」と帰りのクルマで何度も繰り返すのでした(笑)

マントさん~
ギターとパーカッションによる現代曲(ジーグフリード・フィンクと読めたかな(by CROWさん)
バリトン歌手によるフォーレの歌曲~この男性歌手・・・このレコードの録音当時、結婚したばかりということで、マントさんいわく・・・「唄に喜びが溢れ出ている」

bassclef~
Swingin' Like Sixty(world pacific)からJohnny Mandel(pacific) georgia on my mind_001_9
~このレコードは、world pacificのオムニバス盤で、A面1曲目に、アート・ペッパー入りの「ジョージア~」が入っているのだ。
ホーギー・カーマイケルのhoagy sings carmichael(pacific) のリハーサルテイクのようだ。おそらく曲の進行を確認するためのバンドだけのリハーサルだから唄はなし。イントロ~間奏~エンディングだけの短いテイクなのだが、この「ステレオ録音」が、なかなかに素晴らしいのだ。
録音直前の様子~「hi,everybody!」「take~!」「OK!」とかの、やりとりからして生々しい。左の方では、ペッパーが軽くアルトを鳴らしたりしている。中編成の管楽器がジョージアのイントロを始めると・・・そこに「すうっ」とペッパーが入り込んでくる。管楽器群がテーマを流しているバックで、オブリガート風にソロを入れているのだ。そのままバックなしの短いアルトソロになり、サビからいきなり倍テンだ。トランペットがソロを吹くのだが、マイクがかなりオフ気味だが、どうやらハリー・エディソンのようだ。
そしてサビ後の部分をエンディングテーマとし、あっさりとこの演奏は終わってしまう。ちなみにこのリハーサルテイクの本番~つまりホーギー・カーマイケルが唄う~レコード、僕の手持ちは、1982年頃の米Pausaの再発でモノラルなのだが、裏解説によると、[this is a Monaural Recording recording] とあり[engineering:Richard Bock and Philip Turetsky] と明記してある。だからhoagy sings carmichael(pacific) のオリジナル発売時は、
モノラル盤だったのかもしれない。カーマイケルの脱力した唄い方も悪くない(笑) そんな唄の合間合間ににチラと入るペッパーがまた味わい深い。

Soul Trane(prestige) NJ bergenfield ラベル~このソウル・トレーンあたりの番号からNJラベルらしい。だから(たぶん)オリジナルなのでちょっとうれしい。このNJラベルも、少し前にrecooyajiさん宅(地元:豊橋のジャズ好きのお仲間)で、ビクター盤と聴き比べたが、やはり、ドラムの鮮度・キレ、ベースの鮮明さ、などに明らかな違いがあった。プレスティッジというレーベルは、おそらくマスターテープの管理があまりよくなかったのだろう。だから・・・67~68年以降くらいからの、fantasyの再発盤(黄緑ラベル)から、極端に音質が落ちているようだ。そうして、その頃のマスターを使った日本盤の音質も・・・良くなるはずもない、ということかもしれない。(私見では、「紺」「黒」のイカリ・ラベルのRVGまでは、かなりいいように思う)

Stan Getz/4曲入りのEP盤(clef)から time on my handsDscn0720_1

この1952年のゲッツが、すごく好きなのだ。45回転で聴くゲッツのテナーは・・・どうにも素晴らしい。「ふわ~あっ」と漂うような軽み」が快感である。このEP-155は、ゲッツの他のEP盤に比べても、音がいいようである。

                                                                                          

Norman Grantz #4(clef) EP3枚組_002_5

このEP盤と、Yoさん手持ちの12インチClef(水色ラベル)の聴き比べをしてみた。EP盤の音は総じてカッティングレベルが低い。低いのだが・・・テナーの音色が、「すうっ」と浮き出てくるようなニュアンスがある。そういうある種の「軽み」に・・・却って、ゲッツの良さを感じる。
続けてかけたclef 12インチは、カッティングレベルも高くて、ピアノ、ドラムも骨太なClefサウンドで、やはり魅力のある音だ。僕はClefの音なら、どれもこれも嫌いではないようだ(笑)_003_8

_004_13 

                                                                                                

宴会の後・・・まだYoさん宅の音を聴いていないM54さんとPSYさんは、とにもかくにもYoさんの音を聴かねば!という決意がみなぎる。そうして、その流れに便乗する者が続出。まっさきに便乗したのは・・・このbassclefだったが(笑)
そんなわけでまたまた全員で、再度Yoさん宅へ。

アフターアワーズとして・・・pm8:45~pm10:15
PSYさん~
Bill Evans/Exprolationsから israel~このレコード・・・ラファロのベース音が他のリヴァーサイド盤とちょっと違う感じの音で、グウ~ッと沈み込んだ低いべース音なので、僕の機械ではなかなかその沈んだ低音がうまく抜けない。PSYさんも同じようなことを言っておられた。そしてその「沈み込むベース音」が、このYoさんのウーレイでは余裕で鳴っているではないか!

M54さん~
Grant Green /Idle Moments(bluenote) これはちょっと歌謡曲っぽい曲調のあれだ(笑) それを熟知しているPSYさんが演歌曲の紹介MCみたいなセリフを軽くはさむので、皆さん少し笑う。後半に出てくるジョー・ヘンダーソンのテナーがやはりいい。ジョーへンにしては、やけにサブ・トーンを多用して、ちょっとベン・ウエブスター風なものを意識したのかもしれない。

Yoさん~Phil Woods/Warm Woods(epic) からeasy living

ここでYoさんが、「ああっ、そうだ・・・「あれ」をみなさんにお聴かせしないと!」と言いつつ、Lou Donaldson/Blues Walk(bluenote;lexington) Blues_walk 《訂正》~このドナルドソン:1593番にLexingtonはあり得ない、とのコメントをrecooyajiさんより頂きました。さっそく、Yoさんに確認していただいたところ・・・この1593番は<47West 63rd NYCで、溝あり、Rマークなし>とのことでした。貴重なブルーノート盤というイメージでLexingtonと思い込んでしまいました。実は・・・僕は、オリジナル盤のラベル変遷にはあまり詳しくないのです(笑)
を取り出す。みなさんから軽いどよめき・・・(笑) これは、メリケンさんからのYoさんへのプレゼント盤だ。ちょっと前に「杜」にメリケンさんが「ジャズレコード下取り価格ピッタリ賞」のプレゼント盤として提供したのだが、これはYoさんが見事な読みで勝ち取ったのだった。盤質も演奏も素晴らしい。甘くて太いドナルドソンのアルトが鳴れば・・・「チャカポコ」のコンガも思いのほか気にならない(笑)

Yoさん・・・ではもう1曲あのマーキュリー盤からということで、
Al & Zoot/You an' Me (mercury)  you'd be so nice to come home to

パラゴンさんから渋いヴォーカル盤が、またひとつ。
ミリー・ヴァーノン/Introducing Milli Vernon (storyville) ジャケットの1箇所だけ色が付いている。とてもしゃれたジャケットである。

もうあまり時間がない。午後に聴いたハロルド・ランドの話しが出たので・・・僕はcontemporary盤から1曲、Yoさんにリクエストをした。Curtis_vol1_mono_1
Curtis Counce/Land Slide(contemporay) time after time ランドのバラードは実にいい。Curtis_vol1_stereo_1

                                                            

<あれれ?見慣れたはずのこの盤・・・何か変だぞ?右側のモノラル盤は左右が逆になっているのだ。2点ともYoさん手持ち盤>

コンテンポラリー盤がしなやかに鳴る。この場で鳴るこのレコードは幸せであろう(笑) そしてそのサウンドを聴く僕らも、また幸せなのだ

もう夜も遅い。まだ明日の神戸があるのだ。そこで、前夜に大阪入りしていたRoxanさんが、この日、仕入れてきたというレスターヤングを聴かせてもらうことにな った。Verve-Clefシリーズ(黒トランペット)の Lester Young/Lester Swings Again(verve) だ。曲は・・・stardust。
これが実によかった・・・。レスターとしては晩年の、何かこう全てを悟ったような・・・というかガツガツしない諦観の漂う、気品のあるスターダストであった。この盤を見て、Yoさんが取り出してきたのは、同じレスターのNorgran盤。ジャケットは違うが・・・曲名を見ると同じ内容の盤である。
こちらもかけてみる。レスターのサックスを少し聴くやいなや「う~ん」・・・と唸るRoxanさん。「黒トランペット」は、盤質も良く充分に生き生きとしたいいテナーの音だった。一方、Norgran盤は、ややカッティングレベルが低く、盤質も「黒トランペット」に比べれば良くはない。
しかしながら・・・このNorgran盤では・・・レスターテナーの音によりいっそうの生々しさ、レスターの気配がより濃厚に漂っているように聞こえた。
いずれにしても・・・本当にいい「スター・ダスト」でした。
僕は、この1952年のレスターヤングを全くの初めて耳にしたのだが、レスターヤングの淡々としながらも、時に「はっ!」とするような鋭いトーンに、
新鮮な驚きを覚えた。レスター・ヤングも、これから聴きたいテナーだな・・・と思うのであった。The_president_1

この「しみじみ盤」を聴いて・・・いよいよこの会を終わろう、そんな雰囲気が漂い・・・午前中から始まったYoさん宅での「ジャズ聴き会」は、こうして、ついに終わったのだった。
それにしても・・・ジャズは厭きない。

<左:レスターの垂涎的norgran盤。う~ん・・(笑)>

special thanks to Yoさん&BOSEさん!

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2006年7月22日 (土)

<ジャズ回想 第6回> またまたオフ回~藤井寺Yoさん宅:再訪記。

青い顔したウーレイ~3人で7時間の聴きまくり。

6月24日(土)ニーノニーノさんの「杜」のお仲間~藤井寺市のYoさん宅におじゃました。今回はリキさんと私bassclefが2人で乗り込んだ。2人はそれぞれ~僕は昨年9月、リキさんは今年の1月に~Yoさん宅の音を聴いており、その「音」を知っている。そして多分・・・その「音」を好きになっている。
Yoさんは、その後もいろいろな調整をしたようで、音がさらによくなっているらしい。そうなると・・・こちら2人は「また聴いてみたい」、
Yoさんは「また聴いてもらいたい」てな具合で・・・この3人の思惑が一致したようであった(笑)

11時前くらいに到着し、すぐ2階のあの「音聴き部屋」へ。部屋に入るなり「ここ、ここ・・・。この雰囲気がいいんだよなあ・・・」とリキさん。
白熱灯の温かみのある、ちょっと落とし気味の照明。これが・・・本当に落ち着く。お酒の好きな方が、ちょっと飲んで「いい音楽」を聴いたら・・・すぐに眠ってしまうだろうな(笑)

まずはこれから・・・とYoさんが、「東京銘曲堂ライブCD」を取り出す。
リキさんもこのCDがお気に入りで、自宅のsonusと「鳴り」の具合がどんな風に違うのか興味があるようだ。
my romance
but beatiful
昨年9月にこの同じ場所で同じCDを聴いた時は・・・元々たっぷりと豊かな音量で録音された(ように聞こえる)このCDのウッドベースの音が~このベースの音像というか音量がかなり大きく聞こえて、だから僕のベースの好みのバランスでいうと~ややふくらみすぎかな?という感じだった。
ところが今回は・・・だいぶん違ったのだ。そのベースの音像がグッと締まり、ベースの弦がビシビシと鳴るような感じがよく出るようになっていたのだ。こんなバランスであれば、「CD」全般に対する僕の不信感も~たいていのCDがベース中心に低音を強調しすぎか?~かなり和らいでくる。
端正にきれいに弾くギターの音色も、よりくっきりと聞こえる。テナーの音ももちろん素晴らしい。3人の音楽、その全体がより一層ツヤヤカになったように感じた。
何をどうしたのか・・・僕にはオーディオ的な細かいことはわからないのだが・・・スーパー・ツイーターの(クロスオーバーの)調整やら、スピーカーの角度やらを、いろいろ綿密にジリジリと微調整を繰り返したようだ。リキさんと僕に見せてくれた「調整メモ」(スピーカーを動かした位置を記録したのか、まるで何かの設計図のような・・・)には驚くやらあきれるやら・・・(笑)
いずれにしても、あの青い顔した幽霊・・・いやウーレイから飛び出てきた音は・・・「きめ細やかな上質な低音(ウッドベース、バスドラ)」「ふくゆかにしかもよく前にでてくる中音(テナーやチェロ、ヴォーカルなど)」という感じか。
だから・・・低音・中音・高音のバランスが、誠にいい具合になっている・・・ように感じた。このCDは3人~テナー、ギター、ベースというドラムレスの変則トリオである。ジャズの強烈にプッシュしてくるドラムのシンバル~例えばエルヴィン~がどんな風に鳴るのか・・・?
興味が湧いてきた僕は「あとはエルヴィンのドラムだね」と言ったような気がする。

そんな風にして始まった今回の藤井寺ミニ杜。お昼とかの間も、軽いものでも聴きながら・・・ということで、Yoさんがソニー・クリスの72年頃の盤からちょっとロック調のものなどを流す。僕はロック調がいまいち苦手なのですぐに厭きてしまう(笑)「もうちょっと前のソニー・クリスを」という僕のリクエストで、67年録音のThe Portrait of Sonny Criss(prestige) からsmileをかけてもらう。このバラード、出だしの部分をクリス一人だけで吹く・・・ソニークリスって、こんなによかったかなあ(笑)と思えるくらに、これはよかった。
録音もいい、と思ったらRVGだった。ラベルは黄緑色だったが、67年頃の盤なので、その黄緑ラベルがオリジナルかもしれない。
「いいねえ・・・」とか言ってるうちに、なんのことはない・・・ちっとも「音」が止むことはない(笑) 結局・・・11時から6時までほぼ7時間ぶっとおし、という怖ろしくも楽しい会となったのだ(笑) 

以下、かけたレコード・曲と、僕の勝手な感想を少し。
*デジカメはやはり持っていかなかったので、Yoさん、リキさんのオリジナル垂涎盤の写真はありません。この日、かかったレコードで僕が持っているものは、ジャケット写真を載せました。国内盤がほとんどです(笑)Yo_008_2

《写真は、fantasy custom盤》

Johnny Griffin/Kelly Dancers(riverside)
オリジナル盤(モノラル) と WAVE盤(ステレオ) から black is the color of my true love's hair
オリジナル・モノラル盤~グリフィンのテナーの中・高音域がややきつすぎというか、堅く感じる。リキさんも「ちょっときついかな・・・」と一言。しかし、テナーやベースがぎゅ~っとつまった、そして入力レベルが高そうなモノラルならではの密度感は凄い。                   「迫力ある音」が好きな方なら、やはりモノラルを選ぶだろう。
続けてかけたWAVEステレオ盤~モノラル盤だと、ロン・カーターのベース音が大きすぎて僕には「迫力がありすぎ」て、なにか違うベーシストのように感じたが、このWAVEステレオ盤でのロン・カーターは、右チャンネルからのちょうどいいくらいの音像で、テナーもぐっとまろやかになった。音場全体がすっきりとして、とても聴きやすかった。僕はもともとリヴァーサイドのステレオ録音が好きなので、余計にそう感じたのかもしれない。
WAVE盤は・・・クセのないマスタリング(だと思う)が、ある種、うまく録音されたcontemporaryでの楽器バランスに近い味わいがあるようにも思う。そうしてこの「バランスのいい誇張のない楽器の音色」を、Yoさんのシステムで実際に鳴らされると・・・Yoさんが以前から、「WAVE盤の素晴らしさ」を力説していたことにも、充分に納得がいくのだった。

Heren Merrill/Merill at Midnight(emarcy)から black is the color of my true love's hair(グリフィン盤と同じ曲です)と lazy afternoon
裏ジャケットに、若くてかわいい感じのメリルが写っている。たまに聴くメリルは実にいい。
続けて、ティナ・ルイス(concert hall)から1曲(曲名失念)
あの色っぽいジャケットから想像されるとおりの色っぽい唄い方・・・そして案外、どの唄もしっかりと唄っている。
モンローの唄~あのコケティッシュなキャラクターを演出している唄い方(嫌いじゃないのですが:笑)の色気の部分を半分くらいにして、あとの部分を
しっかりと唄いこんでいる感じ・・・女優さんとのことだが、唄は巧いのである。ちなみに、ティナ・ルイスは、例えば普通のポピュラー風オーケストラLPのジャケットに、モデルとしてその姿が登場しているだけでもかなりの価値があるらしい。ティナ・ルイスかあ・・・。

お昼前くらいに、少し軽いものを・・・ということでベニー・ゴルソンとフレディ・ハバードの「スター・ダスト」(82年だったかの録音)をかけた時、トランペットのピッチやら音程の話しになった。その流れでベーシストとしてはあまりピッチのよくない(であろう)ジミー・ギャリソンのベース音がが大きく捉えられているあのピアノトリオ盤~
Yo_004 ウオルター・ビショップJr/~トリオ(キングが出した時の国内盤)からsometimes I'm happy を聴く。このレコード、録音自体はあまりよくない。
ベースの音も大きいことは大きいが、「響き」の成分が少ない、右手で弦を引っ張った「近くで録られた」感じの音だ。ピアノの音も同様でもあまりいい音とは言えない。Yoさんに指摘されるまでは、この盤・・・それほど ピッチの事を気にしたことがなかった(笑)   《上の写真~左はキング盤。右は西独の1989年の再発盤》

だいたいがギャリソンを好きなので、多少ピッチが悪かろうが、ただ「ギャリソンが弾いている」という認識でしか聴いてこなかったようだ(笑) それからベースの音程もたしかによくないのだが、この盤では、ピアノ自体の調律がだいぶんおかしいようにも聞こえる。高音域の方がちょっとフラットして、なにか全体に「ホンキートンクっぽい」ピアノサウンドではある。
ピッチのズレうんぬんはともかく、人間が何かを聞く時、「あばたもえくぼ」的なことや「意識してない部分は、鳴っていても聞こえない」的なことと、それから、その「気になる部分」はこれまた各人で様々な局面があるのだなあ・・・というようなことを、再確認したことではある。

Tenor Saxes(norgran)
The Consummate  of  Ben Webster(norgran) から同じ曲:Tenderly
これは前回のミニ杜(マントさん)でも味わったが、全く素晴らしい音質の盤。同じNogranの貴重盤なのだが、なぜかオリジナルのはずの
Consummate よりもTenor Saxes の方が、はっきりといい音なのだ。テナーはもちろんピアノやらべースも明らかに鮮度が高い。不思議な盤である。

この後、Yoさんセレクトによる「ロリンズ特集」
Sonny Rollins/Saxophone Collosus(オランダ盤)から you don't know what love is
Way Out West (in stereo 盤)(緑ラベルステレオ盤)からway out west
Contemporary Leaders から how high the moon と the song is you
The Standard(RCA Victor) から my one & only love
Sonny Meets Hawk(RCA Victor)  から summer time
milestone all stars から in a sentimental mood

そして Harold Land/in the land of jazz(contemporary) から you don't know what love is
これはハロルド・ランドというテナー吹きの快演!あまり知られてないレコードだが(僕も未聴だった) このバラードは、品格がある端正ないいバラードだった。Yoさんいわく・・・「ロリンズのyou don't know よりいい」 この意見に僕も異論はなかった。ハロルドランドというテナー吹きも実にいい。Harold_land_fox

<補足>そういえば・・・Yoさんと最初にジャズの話題で盛り上がったのも、このハロルド・ランド話題であった。同じcontemporaryにはランドのいい盤がいくつもある。Carl's Blues~ランドが「言い出しかねて」をじっくりと吹き上げる~というのもいい盤だ。それから The Fox もいい。これは僕が、ランドの良さに開眼したレコードだ。   《写真上がFox。録音もいい》

Yoさんのシステムではもともと「よく鳴る」contemporary盤が続く。Yo_005_1
《右の盤は残念ながら国内盤・・・キングGXC3159。それでも充分に音がいい・・・と強がりを:笑》

Hampton Hawes/For Real から hip
どの楽器も素晴らしい音を発しているのだが・・・それでもやはり・・・ラファロのベース音!音圧・強さ・しなやかさ、そしてテーマ部分で、「ぐう~ん」とベースの音程を高い方にスライドさせる驚異の技!(右手で弾いた直後に左手で2つの弦を押さえている(ダブルストップという)その力を、ある程度残したままスライドさせているのだと思う) それからホウズのピアノタッチの躍動感、さらにハロルド・ランドの端正で案外にハードボイルドなテナーの音色、そうしてフランク・バトラーの切れの良さ・・・全てが素晴らしい。
最高の演奏と最高の録音を、まさに眼前で実感できたような気持ちのいい瞬間だった。
「演奏」の快感と「音」の快感が同時に味わえる~そんな感じだった。
それにしても・・・この盤はcontemporaryの中でも最高峰の録音だと思う。

JR.monterose/The Massage(jaro) ~この希少レーベルの青白のラベル、初めて現物を見ました。
Violets for your Furs~モンテローズは、やはり素晴らしい。好きなテナー奏者だ。なんというか「唄いっぷり」の
スケールがとてつもなく雄大なのだ。
じゃあ同じ曲を別のテナーで聴こうか・・・てな訳で、

Yo_006_1 Jutta Hipp/緑色のジャケのやつ(bluenote:liberty ラベル)から Violets for your Furs 
~liberty ラベルでも充分にいい音だった。このモノラル録音でのベース音(アブダリマリク)も、とても大きく弾むような豊かな音で入っていた。
《写真上は東芝国内盤》   こちらの「音像のでかさ」は、先ほどのロン・カーターの場合とは違って、僕にはそれほど気にならない。なぜかというと・・・
(もちろん推測だが)ウイルバー・ウエアやマリク、それからミルト・ヒントン、トミー・ポッターというタイプの場合は、もともと彼らがウッドベースから引き出す音が、「輪郭の大きな響きの音」のように思うからだ。使っているウッドベース自体が大きめのサイズだったり、弦の種類が羊弦(現在ではスチール弦が多い)だったり、右手の弾き方(はじきかた)などで、たぶん出てくる音像は違ってくるものだと考えられる。
これらのタイプと対照的なのは、もちろんスコット・ラファロ、リチャード・デイヴィス、ゲイリー・ピーコックやペデルセン(初期の)などである。
ウイルバー・ウエアの「音像の拡がった大きく響く音」と、ラファロやピーコックの「シャープにしまった音」とは・・・どうです?あきらかにタイプが違うでしょう。もちろん、どちらがいいとか悪いとかの問題ではないのだが・・・困ったことに僕は、どちらのタイプのベーシストも・・・大好きなんです(笑)

Zoot Sims with Bucky Pizzarelli(classic jazz)1976から what is this things called love
~ピザレリのように、ギター一丁で、バッキングの和音から、しっかりしたしかもノリのいいリズムまで出してくる名手がいたのです!
ギターソロでもコード(和音)中心のソロで、そのコードのパターンを、微妙に変えながら厭きさせない。そして、それまでのビート感を決して崩さない。
インテンポ死守!である。というより、さらにビートをなめらかな流れにしているようでもある。サックスとギターだけのデュオなので・・・ギターソロといってもギター独りだけになるわけで、その「ギター1台キリ」でのこの名人芸・・・ため息が出てしまう。

ここで、僕が持ってきたヴォーカル盤を2枚。Yo_001

Irene kral /better than anything(ava) から it's a blue world と this is always
この盤は大好きなのだ。アイリーン・クラールは、アン・バートンの次に好きになった「声」なのだ。フレイジングがちょっと個性的だがリズム感がすごく伸びやかで何を聴いても心地よい。好きだ。

tony bennette/cloud 7(columbia) からI fall in love too easily Yo_003

この盤には初期のベネットのジャズ魂が溢れている。チャック・ウエインのコージーなアレンジ、小粋なビート感、そしてベネットの若々しいあの「声」~僕がベネットを好きなのは、ベネットがあの「声」だからかもしれない(笑)この「クラウド7」は、ジャケットもなかなかいい雰囲気ではある。リキさんもジャケットは気に入ったようだ。

次に僕のリクエストでモンクのソロピアノを。thelonious monk/Alone in San Francisco から remember と everything happens to me        続けて brilliant corners。ここで・・・リキさんはやや苦しそう(笑)

そこで、次にリキさんセレクトのクラシックをしばらく続けた。
グルダ/バッハ:Goldberg Variations(columbia)
キャサリーン・バトル 歌曲
ミュウシャ・マイスキー(グラモフォン3LP)からバッハ/無伴奏チェロ1番
ベルリオーズ:幻想交響曲
モーツアルト:39番
モーツアルト:ハイドンのために創ったという弦楽四重奏~こういう四重奏は、(僕は)ステレオ録音が楽しい。右からちょっと内よりにチェロが聞こえるなあ・・・と思ってたら、リキさんがジャケットを見せてくれた。
そのジャケットに4人の奏者の演奏風景が写っており、チェロ奏者が右から2番目だ。その立ち位置・・・いや、座って弾いてるから「座り位置」か)とおりの定位で聞こえる。リキさんとしては、左右への広がり具合がありすぎるらsく、「もうちょっと4人が内側に近づいてほしい」とのこと。そういえばジャケットの4人はかなり近づいて、こちらを向いて座っている。その4人の中央辺りに、やけに長い「マイクの塔」みたいなのが鎮座している。
僕はまだクラシック自体にほとんど馴染みがないので、「弦楽四重奏」というものもそれほど聞いた経験はないのだが、「チェロ」が入っているとすごく聞きやすい。自分でも気がつくと「チェロを主体」に聞いているのだ。ジャズでも「ウッドベース」から聞いていく。ベースという楽器に相当に馴染んでしまっているので、どんな音楽を聴いても・・・底辺の組み立て、みたいな部分にどうしても興味がいってしまうのかもしれない。

Marty Paich/The Broadway Bit (warner brothers:ステレオ金色ラベル) から I've grown accustomed to your face と I've never in love before
ラファロのベース音は~このワーナー盤では録音自体がややエコー強めのためか~For Realと比べると、やや輪郭が甘く聞こえるが、
ビート感、音圧、ソロ、全てが素晴らしい。

Al Cohn/Cohn On The Saxphone(dawn)
dawnのオリジナル盤は、乾いた感じのやや固めのテナーの音。 バラード曲が多く、コーンがじわじわと吹きこむ地味だけどこれはいい盤だ。

Bill Evans/you must believe in spring からthe peacocks。続けて同じ曲、
Yo_007

Jimmy Rawles/The Peacocks(columbia) から the peacocks
最後に聴いたこのジミーロウルズの盤は、1971年の録音で僕はCD(ソニーのマスターコレクション)で聴いていて、中でもこのthe peacocksが、凄く好きになってしまった。ロウルズとスタン・ゲッツのデュオ演奏だ。全編にしみじみした情緒が流れているのだが、最高に「詩的」な場面が最後にやってくる。ゲッツが最後のテーマを終えるところで・・・(もう吹く息は、切れているのに)サックスのキーを「パタパタパタ・・・」としばらく鳴らしているのだ。どう聴いても・・・孔雀が飛び立つイメージにつながる。僕は、この粋なアイディアが事前に準備されていたとは思わない、いや思いたくない。ゲッツが息をきらす、まさにその瞬間に、「パッ!」と閃いたのではないだろうか? ジャズは素晴らしい・・・だからまだ止められない。

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2006年3月 5日 (日)

<思いレコ 第8回> Bill Perkins/Quietly There

気になる作曲家、その名は・・・ジョニー・マンデル!

「いそしぎ」という曲がある。この曲の原タイトルは もちろん the shadow of your smile という。映画に使われた曲なので、その映画のタイトルthe sand piper を邦訳してこのタイトルになったのだろう。海にいるシギという鳥のことを意味してると思うが、僕らは単に「イソシギ」というサウンドで・・・ああ、あのいい曲ね、と理解している(笑) 僕はとにかく、この「イソシギ」が好きだった。自然に展開していくメロディ。淡々としながらも品よく盛り上げる後半のメロディ。あまりに有名なので、ちょっとポピュラー的なイメージで捉えられているかもしれないが、文句のない名曲だと思う。

ハンプトン・ホウズの I’m Old Fashioned(contemporary) _004

B面1曲目が、その<the shadow of your smile>だ。1966年4月のライブ録音なので、この曲の録音としてはわりと初期のものだろう。ベースはレッド・ミッチェル。なかなかいいピアノトリオ盤だと思う。

A Time For Love という曲も実にいい。この曲を・・・僕はアイリーン・クラールの唄で何度も聴いた。この曲の入ったクラールのLPを 寝る前に、ポータブルのプレーヤーで聴いた時期がある。LPの途中で眠ってしまうこともあり、だから正確には「眠りにつきながら聴いていた」というわけだ。そんな風に繰り返し聴いているうちに・・・この曲のメロディが、体の中に染みわたってしまったようだ。A Time For Love は、しみじみとした感情で人生を振り返りながら・・・しかしこれからも生きていくのだ・・・みたいな厳しさをも感じさせるような素晴らしいメロディをもつ曲だ。ちなみにこのクラールのピアノとデュオのアルバムは、本当に素晴らしい。いつかまたアイリーン・クラールのことも書いてみたい。そういえば僕の好きなトニー・ベネットも、この曲をいい感じで唄っているはずだ。

_005

Emily~これもいい!3拍子の曲なんだが、もう一言・・・チャーミングなメロディなのだ! 好きだなあ・・・この曲。最初にこの曲を聴いたのは・・・ビル・エヴァンスのソロピアノのアルバムだ。左の写真がそれ。

further conversation with myself(verve)

レコードを集めるようになってわりと初期の頃だったので、VerveにMGM-があるとかも何も知らなかった(笑) ちょっとこもったような音質のMGM-Verve盤ではあったが、エヴァンスは、この曲、Emilyを一人で多重録音して・・・夢見るようなスイートさを生み出していた。それでこの曲を好きになった。チェット・ベイカーも、よくマンデルの曲を取り上げた。初期のパシフィック盤にはたしか何曲か~Keester Parade やTommy Hawk~入っていたと思う。

これらのどれもが、ちょっとしゃれたメロディの曲であり、いつも「はっ」としてクレジットを見ると・・・ジョニー・マンデル・・・ということが何度かあった。
そんな風に気になる作曲家であるジョニー・マンデルだった。
そうしてそんなジョニー・マンデルの曲を集めた素晴らしいレコードがあったのだ。先日、そのレコードを入手した。

Bill Perkins/Quietly There(riverside)である。録音が1966年なので、この写真の盤、「abc Riverside茶色の環ラベル」がオリジナルなのかもしれない。_002





         






ジャケットがまた地味というか・・・小さめな写真に  Bill Perkins Quintet featuring Victor Feldman と Quietly There というタイトルが載ってるだけだ。表ジャケのどこにも Johnny Mandel の名前などない。 裏ジャケの曲名を見て・・・初めて全9曲ともに 作曲が Johnny Mandel だと判るのである。せめてジャケ表に一言、 Mandelの名前を謳ってくれれば、もう少し早くにこのレコードを買っていたかもしれないのに(笑) もっとも・・・Jhonny Mandel という作曲者だけでなく、ミュージシャンからジャケットまで、このレコードは・・・もう徹底的に地味なのである(笑)

このレコードに前述の Emily と A Time For Love が入っている。そうして、これらが・・・絶品なのである。

Emily~パーキンスが、バス・クラリネットで静かに吹き始める。かなり遅めの3拍子に乗って、ゆったりとあの素晴らしいメロディを吹き進めていく・・・パーキンスの音色を聴いているうちに・・・一枚の風景画を眺めているような気分になってしまう。そして・・・気がつくと音楽が終わっている・・・そんな感じなのだ。たとえようもなく「優しい」世界だと思う。

最初に左チャンネルから、この Emily のメロディが流れてきた時、「えっ、この音色は何なんだ?」と思った。低くて軽くこもったような・・・でもバリトンのように大きく鳴った感じではない。なんだろう? とクレジットを見ると・・・bass  clarinet と書いてある。ああ、あのバスクラかあ・・・と、すぐにエリック・ドルフィの バスクラのソロ God Bless The Child を想い出した。ドルフィのバスクラ、あれは・・・自己というものを、もう徹底的に表出したような凄い世界だった・・・。このパーキンス盤でのバスクラは、全くそういう自己表現の世界ではない。しかしこの楽器をセレクトし、アドリブパートでも、フレーズがどうとかではなく、このバス・クラリネットの「ひっそりしたような音色」のソノリティを楽しむような・・・そんな唄わせ方をしているようだ。「ひとつの素晴らしい曲がある。その曲のスピリットを自分の感性で描き切りたい」というような切実さというか静かな気迫のようなもの~僕はパーキンスという人にそんな凄みさえ覚える。

そんなパーキンスでも、一人でこんなに緻密な工芸品のような世界を創り上げることは難しかっただろう。そこで、それなりの職人たちが必要だった。その職人たちとは~
まず、ヴィクター・フェルドマンの「しっとりした」ピアノが、優しい雰囲気をかもし出す。このパーキンス盤では、随所で vibraphone も叩いているが、全くやかましくならず、とてもいい感じに響いている。ヴィクター・フェルドマンという人の「しっとり感」は素晴らしい。マイルスの Seven Steps to Heaven のLAセッションの方を聴いて以来、大好きになった人だ。
ガットギターも聞こえてくる。ガットならではの本当に優しい音色。このギター弾きはJohn Pisano という人である。ガットでとるソロもも実にいい。
それから、ベースがレッド・ミッチェル。この人は、ベースの1音1音がしっかりと鳴っている。リズム感、ウオーキングライン、音程、アドリブ。どれをとっても本当に巧いのだ。ドラムはラリー・バンカーだ。
全員が揃いも揃って・・・本当に「趣味のいい」ミュージシャンだと思う。

もうひとつの名曲~A Time For Love。
パーキンスは今度はフルートを用いた。普段、僕はフルートのジャズはほとんど聴かない。savoy盤などを聴いていて、フランク・ウエスが(テナーは嫌いではないが)フルートを吹き出すと・・・どちらかというとノー・サンキューである(笑) しかし、このマンデルの名曲~A Time For Love でのパーキンスのフルートは・・・これも絶品である。録音もいいせいか、フルートの「鳴り」が豊かなので、サブトーンばっかり強調したようなヒュー、ヒューというような(笑)という感じではない。この曲でも「自分の感性で描き切りたい」という意思を強く感じる。外見的なアレンジ、というより、曲を解釈するその気持ちをもアレンジしているかのようだ。そしてその意思が全員に伝わったのだろう。各人が、実にキッチリと丁寧なバッキングをしており、味のあるいいソロをしている。

僕はもともと、一人で多くの楽器を奏するマルチ・ミュージシャン的なタイプはあまり好みではなかった。アレンジもできるスタジオミュージシャン的なタイプだと、仕事柄、仕方ないとはいえ・・・さあアルトだ、さあ今度はテナーだ、いや、バリトンだ、てな感じで、なかなかその人の本当の個性みたいなものが伝わってこないような気がする。いろいろなレコードを聴いてるうちに、それでもアル・コーンにはテナー、バド・シャンクにはアルト、とやはり「本領」を発揮できる楽器があるのだ、という風にわかってきた。その「本領」楽器で何枚かいい盤は必ずあった。ところが、パーキンンスの場合は違った。西海岸ものを聴くようになって、ビル・パーキンスという名も覚え、リーダーアルバムのパシフィックの2~3枚を聴いたのだけど、共演のペッパーの方に耳を奪われるばかりで、このミュージシャン自体には、特別な印象は持っていなかったのだ。だから・・・この盤を何度か見かけたはずだが(ジャケットだけは、だいぶ以前から知っていた)、録音が1966年とわりと新らしめということもあり、入手するには至らなかったのだろう。
そのパーキンスは、このレコード~Quietly There でも、やはりマルチであった(笑)しかし・・・今の僕は、そのマルチぶりが全くイヤではないのだ。逆に、こんな風に曲によって、 使う楽器を替えることで、それぞれの曲の味わいみたいなものを表出させた・・・いや、それ以上に、ジョニー・マンデルの曲だけで一枚のアルバムを創ろう、としたビル・パーキンスに甚く(いたく)感心している。推測だが、スタジオの仕事が多かったパーキンスが、ついに「自分の趣味」でアルバムを創ることになり、だから、選曲をしていくうちにマンデルだけの作品に絞ることにして、それからパーソネルを練り上げて、リハーサルをして、どの曲をどんな具合にクックするか・・・そんなことに相当に時間をかけてきただろうなあ・・・と思わせてくれる、本当に丁寧で質の高い、そして素晴らしいアルバムだと思う。

ビル・パーキンス/Quietly There(riverside)このアルバムは、とても地味だが・・・この先も間違いなく僕の愛聴盤であり続けるだろう。出会えてよかった・・・こんなレコードに。僕はうれしいのだ。
こんな未知の盤にも、まだこんな風に素直に「いいなあ・・・」と感じられるものがあった、ということが。
ジャズにはいいアルバムがいっぱいだあ!・・・ますますやめられない(笑)

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