ジミー・クリーヴランド

2006年2月26日 (日)

<ジャズ雑感 第15回> トロンボーンのバラード、ちょっといいやつ(B面)

ジミー・クリーヴランドのこと。2_001

トロンボーンを好んで聴き始めたのが、この10年くらいなのだから、クリーヴランドなんてところまでは、なかなかたどり着かなかった。
きっかけは、「クリーヴランド・スタイル」という日本盤を入手したことだ。僕の入手盤は、日本フォノグラムが1979年に発売した1500円盤シリーズ(15PJ~)だ。

この盤には、アート・ファーマー、ベニー・ゴルスン、それからウイントン・ケリーも参加しており、クリーヴランドといえば、たいていはこの盤が挙げられることが多いように思う。僕はそれほど期待せずに聴いてみたのだが、1曲目の out of this worldを聴いて~ラテン風というかアフロ風のアレンジで、それがこの曲の持つスケールの大きな雰囲気にピタリと合っている~この盤を気にいってしまった。それと、やはりメンツがいいのか、どの演奏にも気合がこもっており、ファーマーやクリーヴランドののソロもいいのだ。アレンジはアーニー・ウイルキンスだ。B面1曲目の long ago and far away も好きな曲だ。こちらにはケリーの短いが気の効いたソロが入っている。録音も全体にスッキリしており、1957年のステレオ録音としては案外いいように感じる。
「クリーヴランド・スタイル」・・・なかなかいいアルバムだと思う。

ジミークリーヴランドのリーダーアルバムはそれほど多くないようだが、emarcyには、他にいくつか残している。

Introducing Jimmy Cleveland(emarcy)1955年録音2_003

この Introducing~は3つのセッションで組まれていて、どのセッションでもクインシー・ジョーンズがアレンジャー&音楽監督(music director)になっているようだ。アーニー・ロイヤル、ラッキートムソン、セシル・ペインらの管部隊も悪くないし、オシー・ジョンソンやローチ、ペティフォードやチェンバース(早くもこの1955年夏の録音に参加しているのもちょっと驚きだ)らにも張り切った感じがあり、どのテイクもいい出来になっていると思う。
2作目の「クリーヴランド・スタイル」も好きだが、この第1作の方が~やはりアレンジがクインシーだけに~もう少しだけ味わい深いような気がする。

そういえば・・・「トロンボーンのバラード」のことを書きたいのだった(笑)

この盤を取り上げたのは・・・もう一重に my one & only love  という曲が入っているからである。ハンク・ジョーンズの格調あるイントロ。クインシーの絶妙なアレンジ~アンサンブルは~あのmy one&only love の出足のメロディの1小節(休符を入れて7音だけ)、サビ前とサビ終わりだけ~ほんとに限られた箇所に、しかも控えめな音量で入るだけなのだ。クリーヴランドはアンサンブルの出だし7音の3音だけ待ってからメロディを吹き始める。このアンサンブルに乗っかっていく感じ~音が被さって(かぶさって)厚くなっていく感じ~が実にいい感じなのだ。おそらくこれはクインシーのアイデアだろう。クリーブランドのリーダーアルバムには、たぶんワンホーンものはない。いつもトランペットにサックス、それからチューバ(Don Buterfield)まで加えて、ある意味、アレンジ過度の曲が多いようなのだ。

僕は、どんな楽器でも「そのミュージシャン」ならではの個性を味わいたい。だから、この my one&only love は、ほとんどクリーヴランド一人でメロディを吹いているということだけでも、僕には特別なバラードでもあるのだ。そうして、このクリーヴランドが・・・やはり素晴らしい。メロディをそれほど崩さずにキッチリと1コーラス吹き、それからピアノがサビのパートを弾き、最後のメロディをクリーヴランドが吹く、という1コーラス半のアドリブもない短い演奏だが、随所にちらっと入れるフェイク(軽い崩しみたいな意味)なんかにすごくセンスの良さを感じる。クリーヴランドの演奏には、全体になんというか・・・「品格」みたいなものを感じる。その品格が、趣味のいいアレンジと素晴らしいメロディと相まって、素晴らしいバラードに仕上がったのだ。それにしても my one & only love は本当にいい曲だなあ・・・。

A Map of Jimmy Cleveland(meucury)1958年録音2

これもまたアーニー・ウイルキンスのアレンジとなっている。久しぶりに取り出してきたら、この盤には Stardust が入っていたので、大いに期待して聴いてみたのだが、ちょっと・・・違った(笑) アーニーウイルキンスのアレンジが・・・僕の好みとは違っていたのだ。クリーヴランドが吹いたかと思うと今度はチューバがメロディを吹き始める。Stardust のあの素晴らしいメロディを・・・いろんな楽器に分担させすぎてしまったのだ。ワンホーン的なものを期待する立場からすると、曲本来の良さを台無しにしてしまっているように思う。だから「バラードのちょっといいやつ」としては、あまりお勧めできない。クリーヴランドならトロンボーン一丁だけで、どんなスロウな曲でも充分にメロディを唄いあげることができたのだろうに・・・残念である。アーニー・ウイルキンスはバラードのアレンジは得意ではないのかもしれない。

さて、クリーヴランド・・・こうしてemarcy時代の何枚かを聴いてみると・・・彼の音色は、「こもったようなぼわ~」としたのんびりした雰囲気の音色だと思う。楽器から飛び出た音の輪郭がまろやかで大きく拡がり、その分「切味するどい」というタイプの音色ではないようだ。切味の鋭さではやはり・・・JJジョンソンかフランク・ロソリーノだろうか?
そうは言っても、クリーヴランドは決して「古きよき時代のボントロ」というわけではない。アドリブのフレーズは細かく8分音符で刻み、そして速いテンポの曲でも随所に倍テン(ベースが1小節に4分音符を4つ弾くいわゆる4ビート曲の場合、ソロイストは普通の場合、8分音符を中心としたフレーズでソロをとる。「倍テン」というのは、その8分を16分音符中心にしてソロをとることなのだ。クリーヴランドの場合、その倍テンのソロで16分音符を同じ音程で続けたりする。凄い技だと思う。)を入れたりと、かなりモダンな感じがする。この時代(1957年)では、新しいコンセプトのトロンボーン吹きだったように思う。emarcyには、たしかあと1枚、リーダーアルバムがあるはずなのだが、残念ながら未入手である。

ちょっと探したら、他にもクリーヴランド参加のいいレコードがあった。2_002

リズムプラスワン(epic)1956年録音
この写真の盤は、残念ながら・・・CBSソニーの1300円盤です(笑)

リーダーアルバムはアレンジ要素が多くてワンホーンがない、と書いたが、この Rhthm +1 (epic) には3曲、ジミー・クリーヴランドが入っているのです。この盤での「リズム」とは、ハンク・ジョーンズ(p) ミルト・ヒントン(b) オシー・ジョンソン(ds) バリー・ガルブレイス(g) の4人のことだ。このカルテットに4人のソロイスト~コンテ・カンドリ(tp),セルダン・パウエル(ts),ジーン・クイル(as),そしてジミー・クリーヴランド(tb)に各3曲づつ、計12曲収録という、なかなかいいアルバムなのである。 
sahara   
wolf talk
blues
の3曲で、クリーヴランドのボントロがワンホーンでたっぷりと聴けるのだ。どれも悪くないが、特にbluesがいい。スロウなテンポでじっくりとクリーヴランドの唄(ブルースにも唄心というものはあるはずだ)が味わえる。バラードではないが、クリーヴランドの「ちょっといいやつ」としてお勧めしたい演奏だ。そして、この時のセッションからもう1曲~Jimmy's Tune~は、After Hours(epic) に収録されている。After Hours はオムニバスだ。この盤については、エルヴィンをテーマにしたの記事でも取り上げた。http://bassclef.air-nifty.com/monk/2005/08/3_c246.html エピックというレーベルも、なかなか侮れないぞ。
ああ、それにしても・・・やっぱりレコード探しはやめられない!(笑)

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