カーティス・フラー

2008年4月10日 (木)

<ジャズ回想 第12回>半年ぶりにYoさん宅に集まった。その1

いいレコードを聴くと幸せな気分になる~

(*Musashi no Papaさんが、あの日のレコード写真を送ってくださったので、いくつかの写真を追加しました。lora albright, anita o'day, pinky winters, zoot sims(煙草), charlie mariano(imperialの2枚)がPapaさん提供分です。4/13)

寒い冬が終わる頃になると、たいてい「そろそろ集まりましょうよ」というやりとりがあって、「じゃあ」ということになる(笑) そんなわけで、久しぶりにYoさん宅での音聴き会である。昨年9月の「秋の杜」以来か・・・今回は、愛知から、リキさん、D35さん、konkenさん、スノッブSさん、僕:bassclef。それから神戸からMusashi No PaPaさんの6人が集まった。
PaPaさんは昨秋から「杜」(ニーノニーノさんのBBS)に書き込みを始めた方で、ちらっと書かれるレコードのタイトルから、相当なコレクター氏であることが充分に窺(うかが)われた。だから・・・Yoさんを通して、PaPaさん所有の10インチ盤もいくつか見せていただくようお願いしてある(笑)

ちょっと急なあの階段を上がり音聴き部屋に入ると、すでにリキさんがソファの後ろの席で落ち着いていた。「何からいきます?」とYoさん。そうは言っても、最初の内は皆さん遠慮気味だったりして、もじもじしているので(笑)Yoさんが自分の選んだレコードをいくつか掛けていくことになった。
こんな時は、軽くヴォーカルからがいい。
Yoさんが手に取ったジャケットは・・・フランス国旗みたいな青・白・赤3色のあれ~モリスがくっと開いた目が印象的なXレーベルの有名な盤だ。Audrey_morris_bistro

《写真Yoさん提供:Audrey Morris(オードリー・モリス)のBistro ballads》 Bistro_2

Yoさんはレコードの音質~録音の具合による各楽器の音圧感やらバランス~によって、使うカートリッジをセレクトする。セレクトといっても、2つともステレオカートリッジ(オルトフォン・ジュビリーとSPUシナジー)なのである。Yoさんはかねてから、「モノラル盤だから必ずしもモノラル・カートリッジにする必要はない」という考えをお持ちで、それは、モノラルレコード溝の深さと針の径に関する理論的な裏づけからなのだが、そのYoさんも、昨夏に若干の変化を見せた。新たに導入した2台目のプレーヤーにも2本のアームを付けたのだが、その際、カートリッジの1つをモノラルとしたのだ。もう1つはステレオで、共にエミネントというメーカーとのこと。エミネント・ソロ(モノラル)というのは・・・ごく単純に言えば、従来のものより、(モノラルカートリッジとしては)高域まで伸びるということらしい。そんなわけで、4本アームのステレオカートリッジが3個、モノラルカートリッジが1個という選択肢になる。僕など、これらのカートリッジ個々の性格まではよく判らないので、何やら混乱してしまいそうだが、これまでも巧いこと2個の使い分けをしてきたYoさんだから、新規導入の2種のエミネントの個性と使い勝手もほぼ把握できてきたのだろう。

最初に左側のプレーヤーで掛けた。選んだカートリッジは、ハイパー・エミネント(ステレオ)だ。ピアノのイントロから始まる曲~nobody's heart belongs to me だ。「ピアノ、誰?」の問いに「弾き語りだよ・・・たぶん」とYoさん。ピアノも声もちょっとおとなしい感じだ。ドラムスもベースもいないので、余計にそう感じるのかもしれない。しかし、それがモリスの落ち着いた優しい声質には合っているかもしれない。「ちょっと換えてみようか」と、Yoさんが(SPUシナジー)の方でかけてみる・・・「おお!」という皆の反応。一聴・・・音全体がスカッと抜けた感じだ。こちらの方がうんとピアノの音が太くて、しっかりと聞こえるのだ。モリスの声もやや大きくなり、ふくゆかさが増したようだ。カートリッジの出力の違いもあるかもしれないが、全体的に音がしっかりしてきたように僕は感じた。ただ、女性の声に対する微妙な味わい・・・そんなところに敏感なリキさんは「僕は・・・さっきの方がいいな」とつぶやく。
確かに、後者のカートリッジだと、モリスの声がちょっとだけ年を取ったようにも聞こえる。逆に言えば、前者の方が「より若い声のモリス」なのだ(笑)ヴォーカルが好きなリキさんの美学としては、その辺りに拘りがあるのだろう。僕など「声」も、器楽的に聞いているので、単に「大きくハッキリ」聞こえる方が、いい音だろうと思ってしまうようだ。Img_1600_2
実は、ちょっと後にも同じようなことがあって、それは、ローラ・オルブライトのあの素敵なジャケット~Lola Wants You(KEM)のEP盤(PaPaさん手持ち)を聴いた時である。そのメリハリある音に驚いた僕が「ううっ、これはいい音ですねえ」と言うと、「いや・・・ローラはもうちょっと柔らかいですよ」というリキさんとYoさん。そうか・・・日ごろからあのオリジナルを聴いている耳には、45回転のローラは、ちょっと張り切りすぎだったのかもしれない。
そういえば、僕などは、どんなヴォーカルが出てきても、ある意味、それをホーン楽器(テーマを吹く)の一種として聴いているようなところがあって、テーマをどのように吹くか(唄うか)、どんな風にメロディを崩すのか、あるいは崩さないのか・・・そんなことには興味が向かうが、その歌い手が醸し出す情緒・・・みたいな部分には、案外、無頓着なのかもしれない。いずれにしても、僕は、まだまだヴォーカルを味わう(その声の質感を味わう)・・・という境地には至ってないようだ。う~ん、ヴォーカルも奥が深いなあ(笑)
それにしても・・・みなさん、あの12インチ盤を持ってるのだな。たしか、パラゴンさんもrecooyajiさんも持っていたはずだ。PaPaさんが見せてくれた「青のローラ」を見ながら、ううむ・・・と悔しがるkonkenさんと僕であった(笑)

そうこうしている内に、神戸からにPaPaさんも到着。愛知の5人はPaPaさんとは初対面だったので、やあやあという挨拶。PaPaさんは、白い大きめのレコードバッグにぎっしりと詰め込んできた。「ダイアルのパーカーはいくつか持ってきました」というPaPaさん。チラッと見える10インチ盤たちが気になる僕だが「10インチの方は、また午後にでもたっぷりと」と、やせ我慢をする(笑)
《センターラベルは黄色も鮮やかなN.Y.だ。録音はもちろんvan gelderである。写真はYoさん提供》Photo_2Photo_10
Yoさんがフィル・ ウッズの「Woodlore」を、すうっと取り出した。バラードが流れてくる。知らない曲だが、実にいいメロディだ。いや・・・これはbe my loveか? それをうんとスロウにして崩しているのかもしれない・・・などと思って、ジャケ裏を見たら、falling in love all over again というニール・へフティのオリジナル曲だった。 この「ウッドロア」~僕はCDを持ってたのだが、こんなに素敵なバラード演奏があったとは・・・恥ずかしながら気が付いていなかった。be my loveは、この絶品バラードの次に入っていた。be my loveも溌剌(はつらつ)としたウッズがとてもよかった。バラードでもそうだったが、ごく初期のウッズの音には、なんというか「気合」が入っている。そして気合だけでなく、その音色になんとも言えないような甘い色気みたいなものがある。う~ん・・・ウッズのこのレコード、 こんなによかったのかあ・・・と、改めてジャケットを見せてもらう。 右上のprestige横のLP7478の丸い囲みが一瞬、シールに見えたのでちょっと指でさすってみたりしたが、もちろん印刷だった(笑)
それにしても・・・僕は「いい演奏」なら音源は何であっても「いい」と判るはず~と思っていたのだが、この「ウッドロア」に対しては、全くの不覚を取ったようだ。僕の場合、CDで持っていてもあまり愛着が湧かないので、それが故に「音楽」をしっかり聴いてないのかもしれない。これはまずいな・・・と反省する気持ちになってしまった。そうだ、元の演奏には何の罪もないのだ(笑) どんな音質であっても、中身をしっかり聴いてあげなければ。
そういう反省をする一方、言い訳ではないが、「オリジナル盤」と「いいオーディオ」が合わさった時に発揮されるなんというか「出てくる音が持つ理屈ぬきの威力」~そういったものも確実にあるのだな・・・ということも実感させられた。そんな「いい音」で聴くと・・・驚くほどに「その演奏」が判ってしまう~そんな感じだ。そういえば、Yoさんはフィル・ウッズを凄くお好きなようで、epicのWarm Woodsも、それからちょっと後のヨーロッパ録音のものも、ほとんどをオリジナル盤で持っていたはずだ。やっぱりレコード好きという人種は、好きなミュージシャンの本当にいいレコードをよく知っているということなのだろう。

次はテナーだ。てなわけでPaPaさんもお勧めのバルネ・ヴィランがかかった。劇画風のイラストのジャケットのやつ~IDAのLa Note Bleueだ。バラードのgood bye これは好きな曲だ。次にベサメ・ムーチョ。なぜかベサメを2テイクやっている。録音がうんと新しい時代なのでもちろんいい音だ。しかし、今ひとつ、軽い感じだ。音が軽いのか演奏が軽いのか・・・それは微妙だが。同じバルネでも昔のを聴こう~ということになり、仏RCAの有名なレコード「Barney」~バルネが脱いだ背広を肩にかけてるやつ~から、またまたベサメ・ムーチョを。バルネ氏、ベサメ・ムーチョが大好きなんだろう。 この1959年の演奏・・・ケニー・ドーハムの吹くテーマもいいし、もちろんバルネのテナーもいいソロを吹く。そしてデューク・ジョダンのピアノも、ちょっと不思議な音色のしかしいい味わいだ。僕は・・・どうしても50年代の演奏と音が好きなようだ(笑)Cd_2
《聴いたのは、たしか仏RCAオリジナル盤だったが、左の写真は僕の日本盤CD。近年、発掘された長尺未発表曲4曲が付いているので、「バルネ」の内容が大好きな方には気になるCDかもしれない》

テナー特集に移ってわりとすぐだったか、茶目っ気を起こしたYoさんが、ジャケットを見せずに何かをかけた。しっとりしたバラード。テナーである。わりあい中高音を中心に吹く感じの吹き方だ。あまり聞いたことのないメロディを抑え気味に吹いている・・・「誰か判る?」とYoさん。たしかに聞いたことのあるはずのテナーの音色だが・・・よく判らない。konkenさんが「ジョニー・グリフィンかな?」とつぶやく。そういえば・・・この高音域の音色が、グリフィンがうんと抑えて吹いた時の音色にも似ているような気もする・・・違うかなあ。ややあって、このテナーから軽くコブシを廻すようなフレーズが出た時「う~ん・・・グリフィンかな?」と僕も言う。Yoさん、黙っている・・・どうやら違うらしい(笑) もうしばらく聴き進めると、これはどうにもよく知ってるテナー吹きだぞ・・・と思う。ああっ!あれだっ。「ハロルド・ランド!」 「当たり!」というわけで、ジャケットを見せてもらうと・・・Carl's Blues(contemporary)だった。

001_2《聴いたのはもちろんオリジナル盤だったが、左写真は僕の手持ち~1970年頃の米再発盤です。そういえば・・・ニーノニーノさんのBBS「こだわりの杜」での、Yoさんとのやりとりのキッカケになったのが、このCarl's Bluesだった。A面のバラード~「言い出しかねて」も絶品だ》
曲はB面2曲目のLarue。う~ん・・・再発盤だけど持っているレコードだったのに。そういえば、僕はいつもA面ばかり聴いていたのだ。Larueというのは、たしかクリフォード・ブラウンの曲で、ラルーという奥さんの名前にちなんだ曲だったはずだ。しかし、僕はこの曲自体をよく覚えていなかった。だから・・・なかなかハロルド・ランドだとは判らなかったのだ。ということは・・・僕はブラインドがわりと得意な方だと思っていたが・・・その人の音だけで判断しているわけではなく、半分は(いや、それ以上か)演奏している曲名~特にスタンダード曲~と結びつけて、そういうディスコグラフィー的な知識を交えて、そのレコードなりミュージシャンを「覚えて」いるようだ。そういえば「音」の感じもブラインドの大きなヒントになる。ドラムやベースの音(録音の感じ)で50年代、60年代、70年代以降~と大まかな録音年代は判るのだ。もっとも(僕の場合は)例えばその音源が70年代以降の音だと判っても、その辺りのレコードをあまり聴いてないので、それが誰なのかほとんど判らない(笑)
Carl's Bluesといえば、このLPの録音の良さについて書かれた記事があるのだ。それは「ジャズ批評別冊~ジャズ喫茶80年代」というやつで、だいぶ前にワガママおやじさんのブログでも取り上げられたことがある。
http://ameblo.jp/d58es/entry-10035477644.html#cbox
たしか・・・嶋 護という録音技師が、prestigeやcontemporaryなど、ジャズレーベルの録音の質感の違いみたいなことを判りやすく記事にしている。読んでいて、うんうんと頷(うなづ)ける内容で、嶋 護氏は最終的にはcontemporaryの録音を好きなようで、特にフランク・バトラーのドラムソロの録音をそれはもう褒め上げていたのものだ。そのワガママおやじさんのブログ記事のコメント欄で、Yoさんがこの本(の内容)に興味を持ったことが判った。たまたま僕もこの本を持っていたので、この日、ぜひYoさんに読んでもらおうということで持ってきていたのだ。もちろんそんなことは知らないYoさんが、ハロルド・ランド絡みとはいえ、ちょうどこのレコード(B面のlalue)を掛けてくれるとは・・・ちょっと素敵な偶然じゃないか(笑)

《以下のランド、ズート、エドワーズの写真5点はYoさん提供》

Land_grooveyard同じくランドのcontemporary盤~Grooveyardからeverything happens to me。You Don't Know What Love Is。このレコード、なぜだかあまり見かけないぞ。しかし・・・欲しい(笑)Zoot_riverside 

ちなみにこのGrooveyard~モノラル盤の方は、ジャケットは同じなのに、なぜだかHarold In The Land of Jazzというタイトルになっている。

ズート・シムス   Zoot(riverside) 
fools rush in
同じ曲の聴き比べということで
テディ・エドワーズ It's about time(pacific)
から fools rush in Photo_3
このエドワーズのテイクを聴き終わると、PaPaさんが「・・・やっぱりズートには敵わないね」と、静かにではあるが言い切る。
「いや・・・」と、Yoさんも一言。エドワーズやランドなど、 曲のテーマをじっくりと吹き進めるタイプの、強いて言えば「訥弁(とつべん)型」のミュージシャンも好きなYoさんとしては、ズートだけが凄いのではないよ、と言いたいのだろう。しばしの間、静かなる論戦を繰り広げる。若干の緊張感がお2人の間に漂う(笑)Teddy
おせっかいの僕は「まあ、タイプも違うしね」と、割りこんだ(笑) 確かにノッてきた時のズートの鮮やかな語り口~テーマを見事に崩していくあの絶妙なバランス感~には、どんなテナーの名手も敵わないだろう。僕もあのfools rush inには、充分に参ってます(笑) 
Teddy_edwardspacific_2一方・・・エドワーズの方は、もうちょっと不器用だ。テーマをあまり崩さずに、丁寧に吹いていく。そうしてその端正なテナーの音色でもって、じっくりとこの曲のメロディを唄い上げる。後からじわじわと効いてくるような感じだ。
この曲の味わいとしては・・・僕もやはりズートの方が好みかもしれない。テナーの違いだけではなく、バックのミュージシャンの違いも大きいようだ。ズート側には、ベースのwilbur wareが入っている~僕など、それだけでriverside盤に軍杯を上げたい (笑) もちろんそんなことも、全ては「好み」によるものであることは言うまでもない。それぞれの音楽好きが、それぞれの感性で、フェイヴァリット~ミュージシャン、曲、レーベル、エンジニア~を持つ・・・そんなことが一番、楽しいことなんだろう。

インストが続いたところで、またヴォーカルでもいこうよ~ということになり、D35さんが何やら取り出している。Felicia
・・・いきなり、落ち着いてはいるが、説得力ある歌声が流れてきた。ちょっと「語り」のようなドラマティックな唄い方だが、あまり声を張り上げないところに、逆に凄みを感じる・・・そんな個性のある歌い手だと思う。デッカ盤のジャケットの方が有名かもしれない。
フェリシア・サンダースのTime盤/Felicia Sanders(time)だ。I wish you loveを掛ける。この曲・・・僕はシナトラ とベイシーのreprise盤で聴いているが、なかなかいい曲である。僕も同じレコードを持っていたのでちょっとうれしい。ちなみにこのtime盤~おそらく、2ndジャケットだろう。サンダースのアップ写真のジャケットの方が1stだと思う。1stの方が2曲余分に入っている。
《マクレエのbethlehem盤。写真Yoさん提供》

Photo_4次に、カーメン・マクレエ(sugar hill)~マクレエ・・・むちゃくちゃ巧い歌い手なのだが、そういえば「マクレエ命」みたいな人は、あまりいないよね・・・なんて話しをしながら、まずYoさんが「唇のマクレエ」(bethlehem 10inch)を取り出す。聴いた曲・・・失念(笑)
独特の乾いた感じの声は、やはり「マクレエ」だが、意外にも曲のメロディはほとんど崩さない。こういう端正なマクレエは悪くない。
もうひとつマクレエを・・・と、D35さんの手持ち盤から「シュガーヒルのライブ盤」を出した。A面1曲目sunday(だったかな?)を聴く。このライブ盤でのマクレエは、もうメロディをストレートに唄わない「マクレエ節」になっている(笑)
そしてこのレコード・・・ライブ録音なのだが、ベースの音が凄い!と思ったら、隣に座ったD35さんが、にやっと笑ってクレジットのエンジニア~の所を示してくれた。Wally Heider!そういえば、このシュガーヒルも西海岸でのライブ録音だったのだ! このブログの<Wally Heiderというエンジニア>のワイダー・リストにもさっそく追加させてもらいました(笑)Img_1598

PaPaさんは、ヴォーカル盤にも造詣が深い。
anita oday(advanceというレーベルの10インチ盤)~これは初めて見たレコードだった。ace in the hall という曲名に聞き覚えがある。たぶん・・・ボブ・シールのflying duthmanというレーベルから「若き日のアニタ」というようなタイトルで復刻されたLPのオリジナルだろう。
what is this things called loveを聴いてみる。アニタのことだから、この曲・・・多分、急速調だよ・・・と予想した通りの速いテンポになったが、途中からラテン風アレンジになったのにはちょっ驚いた。
そしてPaPaさんのバッグから出てきたのは・・・「沼地のピンキー」である。
マニアには有名なPinky Wintersのargo盤だ。この盤の登場に、喜んだのが、今回、初参加したスノッブS田さん。そうなのだ。S田さんも相当なヴォーカル好きなのである。このargo盤・・・相当に希少らしい。実際、ネットでさえほとんど見かけない。Img_1591
ピンキーの唄は、あまり聴いてない僕だが・・・案外にクセのない声質で、とても聴きやすい唄い方だった。実に巧い歌い手である。
それにしても、このargo盤のジャケット・・・どうにも独特な雰囲気だ。なぜ沼地なのか? なぜトレンチコートを着ているのか? S田さんによると、なんでも「コート3部作」というのがあるそうな(笑) アン・フィリップス・・・ジェリー・サザン・・・あと誰かな? どれも、なにかしら寂しげな感じがするね。ひょっとしたら、「女性が着るトレンチコート」には何か特別な意味があるのかもしれないね・・・などと訳の判らん話しをする僕らであった(笑)

次に聴いたのは、カーティス・フラーのThe Magnificent。これは、個人的に「かなりいい音」だと思っているCBSソニー盤の実力はどんなもんかな? という気持ちが以前からあり、今回、Yoさんお持ちのEPICのオリジナル・ステレオ盤と聴き比べてみることにしたのだ。たまたまkonkenさんもそのCDも持ってきていたので、それも併せて、CD、Epicステレオ・オリジナル、CBSソニー盤という3種の two different worlds を比べてみることになった。  
           
Dream《Magnificentの2点~Yoさん提供》
<CBSソニー盤>~全体にしっとりした感じがあり、ベースの音圧感もしっかりとある。Dream_3
<CD>~CBSソニーのLPと比べると・・・ちょっとこもった感じがあり、トロンボーンだけでなく、各楽器の鮮度感が足りない。マスターテープ鮮度という点では、1973年くらいに復刻したソニー盤の方が、だいぶ有利であっても不思議ではない。
<Epicオリジナル盤>~ラウズのYeah!で、Epic盤の音の良さというものは充分に判っていたが、「EPICのステレオ盤」の音にも実は相当な興味があった。united artisitsのレコードによくあるように、モノラル盤よりステレオ盤の方がさらにいいのではないだろうか・・・という期待もある。
さて、そのEpicステレオ盤~各楽器の定位感はソニー盤とほぼ同じ。一聴してソニー盤とあまり変わらないようにも聞こえたが・・・いや、やはり違うぞ。ソニー盤の持つ「甘さ」が、もう少しキリリッと締まり、各楽器の音にオリジナル盤ならではの鮮度感がある。特にトロンボーンの音に、より厚み・輝き・深みがあるようだ。
そんなオリジナル盤を聴いた後でのソニー盤の印象としては~「悪くない」の一言。ちょっとだけ低音を強調気味かもしれないが、各楽器を聴きやすいバランスで巧くまとめてある・・・そんな感じか。まあ僕は、これで我慢しよう(笑)

さて、PaPaさんは相当なコレクター氏で、事前にリクエストした10インチ盤~ダイヤルのパーカー、prestigeのマイルス、ロリンズ、モンク、roostのゲッツなどを含めて30枚ほどを持ってきてくださった。
この日、10インチ盤で聴かせてもらったのは、以下。

ゲッツ(roost 407) Jazz At Storyville から parker51
パーカー(dial 201)Charlie Parker Quintet から
lover manとgypsy 
マイルス(prestige 124) Miles davis The New Sounds から
my old flame 
ズート・シムス(prestige new jazz 1102)Zoot Sims In Hollywood  から what's new
チャーリー・マリアーノ(imperial 3006と3007) から
sweet & lovely
これら10インチ盤については、ゲッツのroostの10インチ盤と12インチ盤の音質の具合とか、パーカーのダイアル10インチ盤の音はどんな感じなのか・・・というような観点から、またの機会にまとめてみたいと思う。
ここでは、ズート・シムスとチャーリー・マリアーノについて、僕の手持ち再発盤との絡みを少しだけ書いておきたい。

10インチ盤のマイルスを聴いた後、ちょっとトランペット談義になり、なんとPaPaさんは、マイルスのペット自体はあまり好みではないとのこと。
トランペットは、リー・モーガンやハバードのようにバリバリと鳴ってほしい・・・というPaPaさん。僕はどちらかというと、トランペットは、マイルス、ベーカー、ファーマーといった中音派が好みかもしれない。しかしトランペット特有のあの「ッパ~パ~ッ!」という突進力も、もちろん嫌いではない(笑)僕は後期のハバードは、あまり好まないが、初期のハバードは、どんなフレーズを吹いても、凄い切れがあって、やっぱり気持ちがいい。
そんなやりとりを聴いていたYoさんが、しっとり派のアート・ファーマーをセレクトした。Early_art 《アートの写真2点~Yoさん提供》

Art Farmer/Early Art(new jazz)
B面から I've never been in love before だ。Early_art_3飛び跳ねるように小気味のいいピアノソロ・・・これを聴いてすぐにkonkenさんが「ケリーだね」と言う。konkenさん、たしかこのレコードは持ってないだろうに・・・さすがはケリー好きだ。その通り、ピアノはウイントン・ケリーだ。
そしてベースが・・・アディソン・ファーマーだ。アディソンは「ボン・ボン・ボン・ボン」と4分音符をわりと伸ばさない弾き方をする。安定はしているが、ビートが突き進んでこない。そんな特徴のアディソンファーマーを、僕があまり好んでないことを知っているkonkenさんは、こちらを向いて「アディソン・ファーマーだよ」とも言うのだった(笑)僕は思わず苦笑いをした。ところが・・・今、聴いているベース音がそれほど嫌ではないのだ。これまで、アディソン・ファーマーを「いい」と思ったことはなかったはずだった・・・しかし、このYoさんの装置で聴くウッドベースの一音一音には・・・有無を言わさない説得力があったようだ。ビートは確かに進んでこない。しかし、この人の「ボン・ボン」という一音一音に、これまで感じたことのなかった、柔らかな膨らみ具合を感じたのだ。もうちょっと硬直した感じの音だと思っていたその「ボン・ボン」には思ったよりも豊かな音圧があり、それらがソフトなクッションのように弾(はじ)けるような様を感じ取れたのだ。それはそれで気持ちがよく「ああ、こういう良さのあるべーシストだったのか・・・」と、納得がいってしまう僕だった。 これも「いい音」の威力なんだろうな・・・(笑)
そして、I'll walk alone。やはりファーマーは・・・バラードが巧い。しっとりした音色でじっくりといいメロディを吹き込む。このEarly Artは(A面だけだが)ロリンズも参加しているので、僕も黄緑ラベルを持っているが、とても好きなレコードだ。

In_hollywood_10 さて、ズートも聴かねばなるまい。 ZOOT SIMS In Hollywood (prestige new jazz 1102)から what's new
《写真~PaPaさん提供》
ズートの10インチ盤~これなどもうジャケットを見ているだけで、幸せになる。モノクロでTシャツを着た若いズートが煙草に火を点けているやつである。掛けたのは、たしかwhat's new。このトランペットは誰?という話しになったが、その時は、これもジョン・オードレイかな?と言ったような気もするが、正直、判らなかった。というのも・・・この10インチ盤の裏側は、何にも書いてない真っ白だったのだ(笑)  Zoot_3
さっき調べてみたら、この10インチ盤4曲は、1954年のセッションで~p:ドリュー、b:ラルフ・ぺナ、そして、トランペットはstu williamsonであった。なるほど・・・納得のチェット・ベイカー、ジョン・オードレイ路線の音色だったな。そして、その10インチ盤は、 意外なほど新しい感じのいい音だった。Good_old_zootすっきりさっぱりしており、シンバルもクリアなのだ。みんなも「いい音だねえ」という反応だったのだが、実際、録音も1954年と10インチ盤としては、比較的、新しいほうで、そしてなんと言っても、西海岸での録音というのが「音がいい!」と感じた理由だろう。
《10インチ盤:In Hollywood の4曲は、12インチ盤~good old Zootに収録されている。上の写真2点は、米fantasy再発です》

さて・・・チャーリー・マリアーノ(imperial 3006と3007) だ。
マリアーノのあのimperialの10インチが2枚ともが、今、僕の目の前にある!う~ん・・・と唸るのみだ(笑)
「マリアーノはやっぱりバラードを聴きたいな」という僕のリクエストで、vol.2の方から when your lover has gone をかけてもらう・・・すると意外なことに、このwhen your lover has gone は普通のスインガー(4ビート)で演奏されていた。「あれれ?」という僕の反応を見て、PaPaさんが気をきかせてくれる。「じゃあ他の曲にしましょうか」そこでvol.1の方の裏ジャケを見ると、sweet & lovelyというタイトルが目に入る。Pomeroyroostよし、これにしよう、ということで掛けてもらう・・・うん、今度こそバラードだ。しかしテーマを吹くのはトランペットだった。これは誰だろう? ちょっとチェット・ベイカーに似ている。裏ジャケ解説をしっかり見てみると・・・Herb Pomeroyだった。                                 《上の写真~ポメロイのroulette盤》
ポメロイは、当時のボストンで音楽の先生的な存在だったミュージシャンだったと思う。あまりレコードが出てない人だと思うが、PaPaさんと「そういえば何かリーダーアルバムがあったね」・・・などとPaPaさんと話す。僕もあの「緑っぽい色のジャケット」の様子を思い出すが、さすがにタイトルまでは出てこない(笑) 今、調べてみたらThe Herb Pomeroy Orchestra(roulette)というレコードだった。このレコードは持っているのだが、あまり印象に残っていない(笑) 10_5

  バラードでのマリアーノはやっぱりいい。このsweet & lovely~主旋律を吹くポメロイに、マリアーノは、抑えたような音で、すす~っと忍び寄るようなオブリガートを入れてくる。サビの部分はマリアーノだ。2コーラス目はマリアーノがソロ。そして今度はサビ部分をポメロイ。スロウのテンポに倍で乗るようなマリアーノ。長いフレーズでも息を切らさずに粘りながら吹き込んでくる。マリアーノのアルトの音色の底には・・・強靭な何かがある。バラードに拘る僕としては、vol.2収録のit's magicにも注目したい。これも素晴らしい!

10_2_3 それにしても、この2枚の10インチ盤・・・見れば見るほど素晴らしい。imperialからのジャズレコードということで、余計に希少に見えてくるかもしれないが、実際、この2枚の持つ佇(たたず)まいはどうだ。アルトを吹くマリアーノの精悍な横顔(vol.1)からは、若い頃のマリアーノの血気が感じられるし、ちょっとヘタウマ風のイラストのvol.2も悪くない。ジャケットから醸し出されるその素晴らしい雰囲気(atmosphere)を、なんとか心に留めておきたくて・・・僕は、しばらくの間、ジャケットをさすったり、裏返してみたり・・・センターラベルの青色を眺めたりしていた。

Photo《右の写真は1997年に東芝が発売した2枚。大きさは12インチなのだが「コレクターズLPシリーズ from オリジナル10インチALBUMS」という涙ぐましいタイトルのシリーズである。このシリーズでは、roost、pacific、nocturnからの復刻タイトルもあったので、たくさん入手した。だから、オビに付いていた特典応募券を切り取って、僕はドロシー・ドネガンの非売品LPも入手した(笑)》

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2008年2月21日 (木)

<思いレコ 第15回>The Magnificent Trombone of Curtis Fuller(epic)

フラーが見た5分間の夢~優しくてブルージーな”dream”

Dream_005《一見、オリジナル盤に見えるかもしれないが・・・これはCBSソニー発売の国内盤ECPU-6です。CBSソニー・ジャズ1500・シリーズで全20タイトル出た中の1枚。その20タイトルの中には、あのWe Paid Our Dues!も含まれていた!そのECPU-9番は、痛恨の未入手盤である(笑)》

このレコードは、もう長いこと、僕の愛聴盤である。A面1曲目のI'll be aroundは、スインギーなギターのイントロ~見事なコード弾きで始まる。トニー・ベネットも唄ったこの曲、メロディが自然に展開していく感じで、それをフラーがまたウキウキするような気分で吹いているので(そうに違いない:笑)聴いているこちらも、実に気分がよくなってくる。そして次の曲が、dreamだ。
dream・・・この有名なスタンダードを、フラー達はものすごくゆっくりのテンポで演奏する。おそらく1分=60くらいのテンポだろうか。
メトロノームのカウントをベースが刻む4分音符とすると、その4分音符ひとつが、ちょうど1秒(くらい)ということになる。そして「1秒」というタイムは・・・案外に長い。
試みに、1(イチ)、2(ニイ)、3(サン)、4(シイ)と、ゆっくり4秒かけて、声に出してもらえれば、1分=60というテンポが、かなり遅いということを実感していただけるかもしれない。
ちなみに、ベースのウオーキングラインというのは(普通の場合)1小節に4分音符を4回刻むので、このテンポ(1分=60)だとすると、1小節を進めるに4秒かかることになる。そして、フラーはこの曲を2コーラス+カデンツァで終えている。
余談ではあるが、このdreamという曲は32小節なので、この曲を一周(1コーラス)するのに、4X32=128秒。2コーラスでは256秒(4分16秒)かかることになる。カデンツァの部分に、たっぷり30秒以上はかけているので、約5分という計算になる。
このレコードの解説書を見ると・・・dream 5:11秒と書いてあった。
「1分=60くらい」という、大ざっぱなカウント解釈だったが・・・それでもだいたい合っているじゃないか(笑)

さて、バラードを演奏する場合、べーシストは1小節に2分音符を2つ弾くのが普通だ。しかし、このdream は相当に遅いテンポ設定である。このテンポでの2分音符では・・・いかにスロー・バラードでも、さすがに間が空きすぎてしまう。だから・・・このべーシスト~バディ・カトレット(Buddy Cattlett) は、バラードではあっても、あえて「4つ打ち」を選んだのだと思う。テンポ設定と、このベースのウオーキングの感じは、一見すると「スロー・ブルース」と似ているかもしれない。しかし・・・ちょっと違う。これはやはり「バラードでの4つ打ち」なのだ。その証拠に、カトレットは、一音一音を、本当にきっちりした4分音符で(付点をほとんど使わずに~付点を使うとブルース的なフィーリングが出てくる)ウオーキングを進めてくるのだ。
そして、この「バラードでの4つ打ち」が、独特の「溜めたようなビート感」を生み出しているように思う。この「溜めた」ような感じを、どう説明したらいいのだろう。そうだなあ・・・例えて言えば・・・自転車をゆっくり漕いでいる感じに近いかもしれない。
中学校の時だったか・・・校庭にわりと小さめな円を描いて、その円周上を自転車で廻って走る~という遊びをしたことがあった。
ゆっくりと走らないと円周を飛び出してしまう。だから・・・ギアを重くして、ゆっくりとペダルを漕ぐのだが、ゆっくりすぎると自転車が倒れてしまう。その辺りの漕ぎ具合が難しい。
安定的かつ持続的な動力を与え続けないとうまく廻れないのだ。たぶん・・・持続的なトルク力がポイントなのだろう。

僕が思うウッドべースのウオーキングに必要な「トルク感のある粘り具合」みたいな感じ・・・カトレットが、まさにそんな具合にベースを弾くことで生まれた「スロウ・バラードでの持続的なビート感」(トルク的な力感と言ってもいい)」は、なかなか味わい深い。バラードであっても、なんとなくブルージーな味わい~微(かす)かにブルース的な感じ~が漂うのだ。そんな独特の効果を聴いてしまうと・・・ひょっとしたらこの「4つ打ち」は、その辺りまで計算したフラーの指示だったのかもしれないぞ・・・とも思えてくる。

そんな質感を持つべーシストのウオーキングに乗っかって、このdream は、繰り返すが「遅いテンポ」で演奏される。
うっかりすると今にも止まりそうなテンポだ(笑)
そして・・・フラーはこのテンポでも全く動じない。
というより・・・この「遅さ」を選んだのは間違いなくフラーであろうし、だからフラーは、この「遅さ」を充分にコントロールしている。そして・・・充分に「唄って」いる。

最初のコーラスで、フラーはこの曲のゆったりしたメロディを~ほとんど崩さずに~本当にゆったりと吹き、2回目のコーラスの前半をピアノに任せる。そして2コーラス目の後半から再びテーマを吹き~今度はほんの少し崩して~そしてエンディングでは、リット(それまでのリズムを止めてしまう状態)した後、フラーが短いカデンツァ(伴奏陣なしで独りだけで吹く)を入れて、そして、終わる・・・そんな2コーラスだけの演奏だ。
つまり・・・フラーのアドリブは全くないのだ。

フラーは、いろんなニュアンスのトーン(音色)や、フレーズの終わりの箇所でボントロ特有の(音程を下降させるような感じの)ベンドさせるような吹き方でもって、この曲のテーマを吹き進めていく。夢見るような「優しい感じ」が溢れ出る。
スロウなバラードをこんな風に深く吹く(吹こうとする)フラーには、たぶんアドリブなんて必要ないのかもしれない。テーマを吹けば・・・それが彼の「唄い」なのだ!
フラーという人は、本当にバラードが好きなんだなあ・・・と思えてくる。

そういえば、もうひとつ付け加えておきたいことがあった。このレコードで初めて聴いたレス・スパンという人のギターを、すごく好きになったのだ。このギター弾き・・・とにかく音が太いのである。太くて温かい感じのする甘い音色。そして時々繰り出すオクターブ奏法も~だからレス・スパンは、奏法的に言えばおそらくウエスに近い感じだとは思う~いい切れ味だ。
それから最も印象に残ったのは、特にスロー・バラードでのバッキングで、素晴らしく味わいのある弾き方をしていることなのだ。
先に書いたように、この dream は「テンポが遅い」ので、テーマを吹くフラーのメロディの合間合間に、どうしても「隙間」ができる。
そんな隙間に、スパンは見事なオブリガート的フレーズを、すす~っと差し入れてくれるのだ。そのタイミング、そのフレーズの素晴らしさ・・・この辺り、実に巧いギター弾きだと思う。
さらに、やはりバラードのバッキングで時に見せる独特な「アルペジオ的な音」にも、本当に驚かされてしまう(dreamのエンディング部分~リットする辺りで、その「音」が聴ける)
あれは、たぶん・・・ギターのうんと高い方のフレットでコードを押さえておいて、ピッキングしているような音なのだが~あるいは、各弦をかき鳴らすタイミングを微妙にずらしての指弾きかもしれない~なんというか・・・「ペキ・ペキ・キラリン・キラリン!」という感じのする、まさに輝くようなハーモニクス風アルペジオ的な音なのだ。そんな個性派ギタリスト~レス・スパンについては、また別の機会にまとめてみたい。

Dream_006 Curtis Fuller(tb)
Walter Bishop Jr.(p)
Buddy Cattlett(b)5曲
Jimmy Garrison(b)3曲
Les Spann(g)
Stu Martin(ds)

今回は、フラーと、ベースとギターにしか触れなかったが、ピアノのウオルター・ビショップもいいピアノを弾いている。
こんな具合に、なかなかの個性派が揃って造り上げた、このレコード~The Magnificent Trombone of Curtis Fuller(epic)は、フラーというボントロ吹きの「優し気な風情」が、見事に表われた地味ではあるが本当に味わい深いレコードだ。思い切って、フラー独りのワンホーンにしたところと、バラードをメインに持ってきたところが、ポイントだと思う。
ちょっと前にこの夢レコでも取り上げた、チャーリー・ラウズの傑作「Yeah!」にも、同じようなクオリティの高さを感じるのだが、どうやら・・・EPICというレーベルには、凄く趣味のいいプロデューサーと、優秀な録音エンジニアがいたようだ。
そしてさらに、ジャズ魂溢れる解説者も・・・というのも、このepic盤のジャケットの裏解説に、ちょっといい一節を発見したからなのだ。

<dream の最初のコーラスでは~彼がほとんど泣いているかのような~そんな瞬間がある>
(on Dream...there are times in the first chorus, when he almost seems to cry)
”almost seems to cry”とは、フラーの独特の「唄い廻し」・・・あの「感じ」を描こうとしたであろう、実に素晴らしい表現ではないか!
ちなみにこの解説者・・・あまり聞いたことがない名だが、Mike Bernikerという人である。

それにしても・・・世の中には素晴らしいレコードが一杯だあ!(笑)

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