フランク・ロソリーノ

2013年12月31日 (火)

<ジャズ雑感 第34回> あるベツレヘム盤の謎

Bethlehem_nychollywood_002まったく・・・時の流れというものは速いもので、このブログ<夢見るレコード>も手付かずのまま、こうして1年が経ってしまったわけだが、毎年、暮れか明けの正月にはなんとか更新してきたので、ここはたとえ、年に1回であっても、何らかのレコード話題を残しておきたい気持ちは充分にある(笑)
少し前にちょっと面白いものが手に入ったので、そのレコー ドのことについて記してみたくなった。
ベツレヘム(bethlehem)というレーベルにも、もちろん継続的に興味を持っているのだが、なにせあまりモノが入らない。入らない~というのは、もちろん「わりといいものがうまいこと安価で」という意味だが(笑) たまたま Stan Levey/This Time the Drum's on Me(BCP-37)には縁があるようで、3年ほど前に1枚、そしてつい最近、もう1枚、入手できた。
≪このレコードのタイトル~よく見ないと、スタンダード曲の this time the dreams on me と間違える。アメリカ人の好きな単なる駄洒落(だじゃれ)のタイトル付けです(笑) ハロルド・アレン作の有名曲 this time the dreams on me は、このLPのどこにも入ってないので、スタンダード好きの方は要注意(笑)≫
このレコード・・・リーダーはドラムのスタン・リーヴィーだが、管楽器奏者が入っていて、それが、デクスター・ゴードン(ts)、フランク・ロソリーノ(tb)、コンテ・カンドリ(tp)の3人。リーヴィーとベースのルロイ・ヴィネガー、ピアノのルー・レヴィが造り出す快適な4ビートに乗って、この3人が吹きまくる。特にフランク・ロソリーノのソロ場面が多くて、ボントロ好きには楽しめるレコードだと思う。
そうして・・・好きなレコードは2枚あってもいい(笑) 僕はさっそくその2枚を並べてみた・・・どちらもまったく同じ~ドラムのケースが積み上げられた図柄(バート・ゴールドブラットのデザイン)である。やっぱり同じだなあ・・・と思ったけど、よく見ると・・・あれ? 何か違うぞ? そう・・・そのドラムケースのイラストの「背景の白地の色合い」が違うのだ。片方は・・・「はっきりとした白」、そしてもう片方は・・・「わずかにベージュがかった白」なのだ。その「背景白地の色合い」の他は、まったく違いはなかった・・・表ジャケットについては。
Bethlehem_nychollywood_005≪この写真だと判りにくいが、左側~「わずかにベージュがかった白」、右側~「はっきりとした白」という違いがある≫

僕はさっそく、ジャケットをひっくり返してみる・・・と、あっ、やっぱり違うじゃないか! 僕はこの小発見に心ときめいた(笑)
両者の違いは裏ジャケットの下5分の1辺りにあった。ベツレヘムというレーベルに詳しい方なら、もうお判りだと思うが、一番下の「アドレス(住所)」が違ったのだ。
まずは写真をご覧いただきたい。
Bethlehem_nychollywood_006 ≪左側~「表ジャケットがベージュ」、 右側~「表ジャケットが白」≫

「背景ベージュ」の方は~最下段の中央に<BETHLEHEM RECORDS, NEW YORK, N.Y.>だけで左右には何もなし。
⇒後述の≪追記≫では、便宜上、これを<センターNY>と呼びます。

「背景白」の方は~まず、最下段中央に太字ゴシックで
<BETHLEHEM RECORDS>とあり、加えてその左右の端(はし)に、
左端<NEW YORK, N.Y.>、そして右端が<HOLLYWOOD, CALIF.>となっている。⇒後述の≪追記≫では、便宜上、これを<左NY、右CALIF>と呼びます。

さらに・・・「自社レコード宣伝のタイトルとその番号」~これが大きく異なっていた。この違いは、他レーベルの場合でも、その版の新旧を判断する材料として有力なものだ。要は、新しい版の方が、宣伝に載せるタイトル番号も、宣伝であるが故に、より新しいものを載せる場合が多いのだから。
このStan Leveyの場合は以下。
「背景ベージュ」の方には~<OTHER GREAT JAZZ ARTISTS>として、BCP 1020(ミルト・ヒントン)と、BCP12 から BCP35までのタイトル(作品)が載っている。
「背景白地」の方には~<OTHER GREAT JAZZ ARTISTS ON BETHLEHEM>として、BCP 52 から BCP 64まで。そして BCP6001~6007 も併記してある。
これは・・・やはり明らかに「ベージュ」の方が、古いedition(版)のようだ。そして、この宣伝タイトルからだけでなく、会社としてのアドレス表記からも、「NEW YORK」だけのもの(ベージュ)が先で、HOLLYWOOD表記もあるもの(白地)が後・・・とみて間違いないかと思う。

≪追記 2014年1月5日≫~皆さんのコメントから類推すると~裏ジャケット下部の住所表記:2種類存在の意味するところは、
<センターNYのみ>=東海岸プレス と 
<左NY, (センターBETHLEHEM)、右CALIF>=西海岸プレス
であろうことが判ってきました。
ここまできたら調べてみるか・・・ということで、僕の手持ちのbethlehem盤、約50枚
(ちょっとだけ持っている10インチは除いて)をパタパタと捲(めく)ってみました(笑) 僕のレコード並べ順は基本的にミュージシャン別・楽器別なのだが、BETHLEHEMだけはわりと最近の興味対象ということもあり、ほとんどのものを並べてまとめてあったので、すぐに「パタパタ」ができたわけです。
思ったよりも枚数は集まってましたが、人気の高い大物タイトルはありません。ハービーマン、サム・モストやオーストラリアン・ジャズ・カルテットなど不人気タイトルばかりです(笑) それでも、番号順(=ほぼ発売順)に並べながら、ジャケットのアドレス表記違いなど見てみると・・・新たに判ってきたこと、さらに判らなくなってきたこと・・・いろいろ出てきました。
ひとつだけ先に結論めいたことを書くと~僕の手持ちにおいては<センターNY>盤が、少なかったということです。
手持ちの約50枚中、<センターNY>は14枚のみ。残り
はほとんどが<左NY、(センターBETHLEHEM)、右CALIF>盤でした。

以下、番号だけシリーズ別に並べてみます。

最も多い<左NY、(センターBETHLEHEM)、右CALIF>は、BETHLEHEMを省略して<左NY、右CALIF>と記入としました。
そして<センターNY>は、<センターNY>、あるいは<センターNY 19>(*後述)と記入しました。
そして8枚だけ<左NY、右NY>となっているものもありますが、それは僕のミスではありません(笑) この8枚は、いずれも各シリーズの後期番号に集中しているので・・・素朴に考えて、BCP 80番、BCP 6029番の少し前のタイトルの発売時期の辺りに『ハリウッドの西海岸事務所が閉鎖された』ということだと思う。ハリウッド事務所が存在しなくなったのに、HOLLYWOODと表記するわけにはいかないだろうから。
2点だけ<OHIO>記入ありますが、これはおそらくBETHLEHEM最後期時代の kingレーベル配給時期のものだと思われます。
(*番号の前は全て BCP~です)

Bethlehem Deluxe series (12 inch LP)
3  <左NY、右CALIF>
6  <左NY、右CALIF>
8  <左NY、右CALIF> 
9  <左NY、右CALIF>
13<左NY、右CALIF>
14<センターNY 19>
15<センターNY 19>
17<センターNY>
18<センターNY>
20<センターNY>
22<センターNY>
24<センターNY>
26<左NY、右CALIF>
27<センターNY>
29<センターNY>
30<センターNY>

31<左NY、右CALIF>
33<左NY、右CALIF>
34<センターNY>
37<センターNY> と <左NY、右CALIF>2種あり(Stan Levey)
38<左NY、右CALIF>
39<左NY、右CALIF>
40<左NY、右CALIF>
41<センターNY>
44<左NY、右CALIF>
46<左NY、右CALIF>
48<左NY、右CALIF>
50<左NY、右CALIF>
55<左NY、右CALIF>
56<左NY、右CALIF>
58<左NY、右CALIF>
61<左NY、右CALIF>
66<左NY、右CALIF>
71<左NY、右CALIF>
80<左NY、右NY>

Bethlehem 5000 series (12 inch LP)
5002 <左NY、右NY>
5006 <左NY、右NY>(Russ Garcia/Sounds in the night)

Bethlehem 6000 series (12 inch LP)
6001<左NY、右CALIF>
6004<左NY、右NY>Chris Connor/Sings Lullabys~)「半口」
6006<左NY、右CALIF>
6007<左NY、右CALIF>
6008<左NY、右CALIF>
6011<左NY、右CALIF>
6015<左NY、右CALIF>
6016<左NY、右CALIF>
6020<左NY、右NY>
6025<左NY、右NY>
6029<左NY、右NY>
6030<左NY、右NY>
6049<OHIO>

6069<OHIO>
bcp 1020<センターNY 19>(Milt Hinton) 
*このミルト・ヒントンは、片面5曲づつ収録の12インチ盤である。おそらく、10インチ盤 Milt Hinton(BCP1020)の再発かと思う。 10インチ盤の発売が先なのは間違いないと思いますが、その10インチ盤のジャケットがどんなデザインなのかは現物がないのでよく判りません。 僕の手持ちの12インチ盤(Milt Hinton)はジャケット右上の「長方形ロゴなし」で、その場所辺りに小文字で 「bethlehem bcp 1020」 と表記されている。そして、この12インチ盤(bcp1020)はセピア単色ジャケットですが、実は、12インチ盤がもう1種あって、それがBCP10のようです。同じ内容の12インチ盤がなぜ2種(bcp1020番とBCP10番)存在するのか・・・それも謎です。

僕の手持ちベツレヘム盤(12インチ)においては、こういう具合でした。この番号の並びとアドレス表記違いの状況・・・これらを見て、うんと素朴に考えればこうなる。
BCP 1~81のDeluxシリーズの初めの頃は、東海岸(NY)事務所だけなので<センターNY>表記ジャケのみ。そして・・・37番(スタン・リーヴィーthis time~)の辺り(時期)から、西海岸に事務所を設立~併せて西海岸プレス=<左NY、右CALIF>を始めた。だからその辺りのタイトルからは、従来からの<センターNY>と新規の<左NY、右CALIF>と2種類のジャケットが存在する・・・ということではないだろうか?
だがそこで・・・(少なくとも僕の手持ち盤において)少々、ややこしい問題がある。どのレーベルにおいても同様だが、『2ndプレス・再発もの』なのである。
この僕の手持ちの中であっても、もし、37番より以前のタイトルが全て<センターNY>であれば、ほぼ、『BCP1~(仮に)37番までは<センターNY>しか存在しない~と言えるのだが、現実にここに BCP の3、6、8、9、13 などの<左NY、右CALIF>があるじゃないか。ということは・・・これはやはり『2ndプレス・再発』と考えるしかない。仮にだが、「西海岸プレス」が37番(スタン・リーヴィー)頃からスタートしたとして、その後に、やはり、いくつかのタイトルについては(在庫が切れたもの~つまりよく売れたタイトル)「再発された」と考えていいだろう。
僕のリストの中で言えば、その「再発盤」が、3、6、8、9、13、26、31、33番などになるのかな・・・と考えられる。 その「再発」絡みの観点から、ちょっと面白いことに気付いた・・・それは表ジャケット「BETHLEHEM 長方形ロゴ」のことである。この長方形のBETHLEHEM ロゴは(ほとんどの場合、表ジャケットの右上に位置する)~僕の手持ちリストでは、BCP 50番から現われている。これまでの推察から、
≪より初期と考えられる<センターNY>盤には「BETHLEHEM長方形ロゴ」が無い≫ことから、やはり、初期の番号タイトルの初版には「長方形ロゴはなかった」と考えていいかと思う。

≪追記 1/6≫~今、メル・トーメの6016番、6020番などを追加記入した時に気付いたことがある。右上「BETHLEHEM 長方形ロゴ」は、(僕の手持ちの6000番台(現状14枚)には全て有ったのだ!  つまり・・・「長方形ロゴ」は、6000番台を開始した時に、外見上に変化を付けるために、新たにデザインされたのだろう・・・こんなことはベツレヘム好きには周知のことなんだろうな(笑) 
さてここで・・・6000番台には「長方形ロゴ」有り~としても、こうして並べてみると・・・
僕の手持ち盤<左NY、右CALIF>の内、BCPの 3、6、8、9、13、31、33番にはその「BETHLEHEM長方形ロゴ」が有るのだ。これは上述の見解とは矛盾するじゃないか・・・ただ、これも『再発』という観点から言えば・・・BCP 1~81番台のもので<左NY、右CALIF>表記で「長方形ロゴ」有りのものは・・・『西海岸事務所設立以降の再発プレス』と考えることはできそうだ。
もちろん、これだけのサンプル数では、どのタイトルが「再発」なのかは判らないし・・・もっと同一タイトルの表記違い・右上ロゴの有無などの実例が必要だと思う。 BETHLEHEM盤(レーベル)に興味ある方~ぜひお手持ちの盤のジャケットのウラ・オモテを凝視してみてください(笑) よろしければコメントにてお知らせを!
*<センターNY 19>~番号の若い方 14、15 と 別シリーズ番号の1020(ミルト・ヒントン) の3枚だけ・・・番地入りのアドレス表記だった。正確に記すと裏ジャケット下部に、こうある。
<BETHLEHEM RECORDS,1650 BROADWAY,NEW YORK 19,N.Y.> となっている。発売が古そうなこの3枚だけ、この<センターNY 19>ということは・・・これも素朴に考えて、初期の番号のものはこの表記だったということだろう。この<センターNY 19>がどの番号タイトルから、番地なしの<センターNY>に変ったのか・・・これも興味あるところである。
言い訳めいたことになるが、僕は「ベツレヘム・ブック」を持ってない。プレスティッジ・ブックとリヴァーサイド・ブックは、発売後、すぐに入手したが、ベツレヘム・ブックは・・・当時、東芝がCD復刻していて、その宣伝を兼ねて「ベツレヘムのホームページ」があったので、それを見たり保存したりしてれば間に合っていたので、買い渋っていたのだ(笑) それで、BCPの各シリーズの基本的な点数もうろ覚えのまま、この『ジャケットのアドレス表記違い』という難問に乗り出してしまって・・・これは厳しい状況だと認識はしている(笑) それで自分自身のためにも、ベツレヘムBCP各シリーズの点数をここに示しておきたい。
special thanks to Jazz Discography Projectさん!

Bethlehem Deluxe series (12 inch LP) BCP 1~92
Bethlehem 6000 series (12 inch LP)  BCP 6001~6073 
Bethlehem 5000 series (12 inch LP)  BCP 5001~5006
Bethlehem 1000 series (10 inch LP)  BCP 1001~1040
Bethlehem Extra series (12 inch LP)  EXLP 1~3

* 5000番台については、どのディスコグラフィも BCP 5001~5005と
なっているが、5006番として Russ Garcia/Sounds in the night が
手元にあるので、5006番として載せました。

≪追記 1/11≫
この記事の発端となった『スタン・リーヴィー』(BCP37)~これは『同一タイトルのジャケット・アドレス表記違い』というものだった。そのアドレス表記2種の内情を探るべく、皆さんから情報をいただいているのだが、denpouさんからのコメントやりとりの中から、またひとつ、興味深い「謎」が現われた。それは~『K+JJ』というベツレヘムレーベルを代表する有名盤についての「謎」であった。なんと・・・『K+JJ』 は
2種類~番号違い(BCP13とBCP6001)~が存在したのだ。
*そしてもうひとつ、このBCP13番について大きな謎がある(笑) この「BCP13番」という同じ番号に、もうひとつ、別のタイトルが存在しているのだ。それが・・・『Sue & Ralph Sharon/Mr.& Mrs.Jazz』である。こちらは僕の手持ちもdenpouさんの手持ちも<左NY、右CALIF>である。
*ちなみに、1/5追記で触れた『ミルト・ヒントン(12インチ盤の方)』の2種存在(bcp 1020 と BCP10。そして源(みなもと)であるはずの10インチ盤(BCP1020)も、同じような状況と言えそうだ。


まずは、『K+JJ』から~
(以下の写真~クリス・コナーまでの12点は、denpouさん提供)
special thanks to Mr.denpouさん!
Dsc_8032_5 Dsc_8033_6 Dsc_8034_3 
BCP13番~
<センターNY>
<長方形ロゴ・無し>
<リーフ・ラベル>
以上の点から、このBCP 13番の方が発売が先(1st)と思われる。

Dsc_8035_3 Dsc_8036_4 Dsc_8037_2   

そしてBCP 6001番~
<左NY、右CALIF>
<長方形ロゴ・有り>
<長方形ロゴ・ラベル>
後述の理由で、6001番の方が発売が後(2nd)と思われる。1st、2nd と言っても発売時期(1955年)にそれほどの差はないようだ。この6001番を発売したことで、「空き」が生じたBCP13番に『Mr.&Mrs.Jazz』を充てがった・・・というのが僕の妄想である(笑)
Bcp13_sue_ralph_sharon_3 Bcp13_sue_ralph_sharon_4  

ともあれ『K+JJ』については、実際に2種類が存在したのだ。録音は1955年1月。その発売もおそらく1955年だったはずだが、僕の手持ちリストでの<左NY、右CALIF>ジャケット存在の状況から類推すると・・・DeluxシリーズBCP1番~91番が先に発売されて、しばらくは<センターNY>のみ。そして30番辺りの時期に西海岸事務所が設立されて、それに合わせて<左NY、右CALIF>ジャケットに移行していった・・・その間、番号順とは多少、前後して、2種のジャケットが混在しているのではないか・・・と推測している。
「長方形ロゴ」の無し・有りについては~前提として、10インチ盤のセンターラベルが「リーフ」(木の葉の図案)であることから、リーフが先、長方形ロゴが後~で間違いないと思う。ただ、ジャケット右上の「長方形ロゴ」と、中身の盤のセンターラベル「長方形ロゴ」が完全に連動しているかどうか・・・はっきりしない。

≪追記 1/12≫~ここでもうひとつの2種ジャケット・・・クリス・コナーにも触れておこう。BCP6004番のクリス・コナー「Sings Lullabys~」には「大口開け」と「半口」という2種の異なるジャケットが存在していることは、わりと知られていて、僕も自分の手持ちが「半口」だったので、できれば「大口」も欲しいなあ・・・と思っていた。そうしたところへ、今回の記事のコメントやりとりにおいて、denpouさんが2種ともお持ちでその2種とも<左NY、右NY>であることが判った。さっそくその写真もここに載せておきたい。ジャケットの歌い手さんの口の開け方を見比べること(笑)以外の注目点は、裏ジャケットのレコード宣伝の番号分布である。denpouさんのメールから抜粋~≪「大口」ではBCP-64 BCP-6006までですが、「半口」ではBCP-79 BCP-6032の記載になっていますので、多分「大口」が先の発売で、後に「半口」に変更され様に思います≫とある。うん、なるほど!僕もまったく同感である。但し、なぜそのジャケット変更が断行されたか・・・それもまた謎である。
Bcp6004_6 Bcp6004_7 Bcp6004_8 Bcp6004_9   


(ここで話しは「スタン・リーヴィーに戻る:笑) そんな風なことを思って、改めて両者のジャケットカバーを見てみると・・・う~ん・・・やっぱり「ベージュ」の方が、より、しっくりくる、というか・・・美しさ・品格みたいなものが、より、滲み出ているように思えてくる。もっとも・・・後から入手した「ベージュ」の方が、ジャケットのコンディション自体もうんと良好なのだけど(笑)
いずれにしても、このジャケットの僅かな違いについては・・・両者を並べてみなければ、まったく気が付かなかったことだろう。
先に入手していたStan Leveyのジャケットのコンディションが良くなかった~という局面で、次に、盤はVG-だがジャケはVG+という Stan Levey を入手した~つまりジャケと盤の入れ替えを考えた・・・というせこい作戦だったわけだが(笑) ベツレヘムのジャケットに違いがある~なんてことは予期していなかったことだけに、今回のこの発見は自分でもちょっとした幸運のように思えるのだ(笑) 
ちなみに中身はどうなのか?というと・・・まず、センターラベル、及びディープグルーヴについての差異はまったくなかった。じゃあ「盤」も同じなのか?というと・・・これが違うようなのだ。
Bethlehem_nychollywood_008 この写真では判りにくいが~
「ベージュNew  York」の方が「フラットディスク」(外周のところが盛り上がっていない) のようで、
「白地Hollywood」の方は、これが微妙なのだがほんのわずかな「グルーヴガード」に見えるのだ。少なくともまったくのフラットではない・・・ように見える。
そしてもうひとつ・・・肝心の音質の違い~いや、別段このことを「肝心」と言わなくてもいいのだが(笑)~についてはどうなのか?
僕は何度も聴き比べてはみたのだが・・・ほとんど同じ音質のようで、両者の間に決定的な違いは僕には聴き取れなかった。でもしかし・・・まず「ベージュNew  York」のB面2曲目(stanley steamer)を聴いた後に、「白地Hollywood」で同じ曲を聴くと~全体の音量がわずかに上がり(たぶん、カッティングレベルの違い) そして・・・ベースの音量が若干だが大きくなっているように聴こえた。だから、一聴(イッチョウ)、「白地Hollywood」の方が迫力があっていい音質に聴こえるのだが、もう一度、「ベージュNew  York」を聴いてみると・・・同じ場面のテナーのバックに鳴るドラマー:スタン・リーヴィのシンバル音の鳴り方が、よりクリアに切れのあるようにも聴こえるのだ。もちろん決定的な差ではない・・・だがしかし、テナー・ベース・ドラムなどの鳴り方の切れ・鮮度感において、「ベージュNew  York」の方がやや優勢かな・・・そんな風に僕には聴こえた。
もっともこの辺についてはあまり信憑性はない。というのは、つまり・・・1st(初版)である~と推測した「ベージュNew  York」の方が、音質面でもより鮮度が高いはずだ、そうであってほしい・・・という僕の無意識的な、いや、充分に意識的な想いが僕の脳内に渦巻いており、冷静な判断などできなくなっているはずだから(笑) 
この分では、僕は<夢見るレコード>を<妄想するレコード>とでも改題せねばなるまい(笑)

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2011年12月31日 (土)

<ジャズ回想 第25回>ベン・ウエブスターの絶妙ライブ盤

  ヴィンテージではないけどオリジナル盤とも言えるじゃないか(笑)

この<夢見るレコード>・・・このところちっとも夢を見てない(笑) もちろんジャズへの愛着が薄れたわけでもなく、相も変らずレコードを買い、レコードを聴いている。休みの午前中はそのレコード音楽に浸れる貴重な時間で、たいていは入手仕立てのものから聴き始め、その内容が「ワオ~ッ」だと両面を聴き、また「がっくり」の時は片面だけにして、今度は愛着盤に手を延ばしたり・・・そんな風に次に何を聴こうかと考えたりするのもなかなか楽しい。そうこうしてると・・・もう昼だ。
お昼を食べてからも2~3枚は聴く。だけどお昼過ぎのこの時間は・・・眠くなるのである(笑)これがもう実に眠い。3枚目を聴く辺りになると、もう充分に眠気を意識している。だからこれは寝てしまうな・・・と自覚すると、タイマーを20分後くらいにセットして、例えばジョージ・シアリングを掛ける。そうして、目論見どおりに僕は眠ってしまう(笑)
休みの日に好きなレコードを聴いてのんびりと眠りに落ちる・・・これもなかなか幸せなことじゃないか。そうして目が覚めるともう夕方だ。それでも晩飯までには充分な時間がある。そこで、またレコード聴きである。僕の場合はこの時間帯・・・けっこう乗る。眠気の増したお昼過ぎのあの気だるい感じがさっぱりと抜けて「さあ、また聴くぞ」という気分になるのだ。そこで、大編成のものをわりと大きめな音量で聴いたりする。そうだな・・・マリガンのconcert jazz band(Verve)なんかは実にいい。
そんな具合に、僕はとにかくレコードを聴きたい。だから・・・なかなかブログにまで手が廻らないのだ(笑)
しかしながら、2011年もあっという間に終わろうとしているこの大晦日。毎年、大晦日にはrecooyajiさんとレコード聴きをしてきたのだが、今年は昨日・今日とは朝からレコード棚の再編成をしていてこれは予想どおり難航した(笑)苦闘の末、床置きになっていたレコード達をある程度までは収めるところまではメドがついたので、recooyajiさんとの例会ができなかった代わりに、久々にこの<夢レコ>をアップしようと思い立った。ちゃんとした構想もないので、短めのものになりそうです。

さて・・・僕はもちろん古いオリジナル盤が好きなわけだが、その一方で「オリジナル盤、何するものぞ」という反発気分も無いわけではない(笑) それはつまり・・・録音時にリアルタイムでは発売されなくて、しかし後年に発見・発掘されて発売された音源(別セッション・別テイクなど)というものがあり、それらについては、いわゆる「当時のオリジナル盤」は存在しないわけで、強いて言えば後年になって発売された初出自のものを「新発見オリジナル」とでも呼ぶしかない。そしてそういう「新発見もの」にも、侮れないものがたくさんあるぞ、という気分なのである。

だいぶ前の拙ブログ(ワリー・ハイダー録音)で、ビル・エヴァンスのTime Remembered(milestone)を紹介したことがある。それは、エヴァンスのライブ盤~At Shellyman's の未発表音源の世界初発売というもので、僕としては、要はその「演奏はもちろん、録音の音質が素晴らしい」ということを言いたかったのだ。年季の入ったジャズ好きほど、別テイクや別セッションなど未発表音源というだけで、その価値を認めないという頑固さもあるかと思う。つまり発表しなかったのにはそれなりの理由があるだろうし 実際、同じ曲の別テイクをいくつも並べられても、よほどの興味ミュージシャンのものでない限り、それほど素晴らしいものとは言えないことも多いのだ。でもそんな頑固さのために、後年発売の未発表音源盤を聴き逃すようなことがあるとすれば・・・それは悲しいことだよ、とも思うようになってきたのだ。そうした例外的に素晴らしいと思えるレコードをちょっと紹介したい。

≪写真下~1989年発売のOJC盤:6曲収録)

Dscn2829_2 Ben Webster ~At The Renaissance(contemporary)というものだ。
11月の中旬頃だったか・・・久々に旧友のsige君、yosi君とレコード3人聴きの会をすることになった。
こういう集まりでは、わりと不思議な偶然・・・それも嬉しい偶然が起こったりするのだが、今回はちょいと驚いた。集まりの2~3日前になると、僕は幾つかのレコードを思い描いておくのだが、その中に古い盤ではなく、わりと近年発売(1989年)のベン・ウエブスターのレコードもあった。これは1960年のライブ録音音源だが当時に発売された形跡は無い。だからあまり紹介されたこともないし、いわゆる「定評のある名盤」とは違うまったく地味なレコードである。僕はこのレコードを1年ほど前だったか、うんと安価で入手したのだが、聴いてみてすぐ気に入ってしまったのだ。
さて、朝からの大雨の土曜日、3人が揃って・・・yosi君がバッグから5~6枚のレコードを取り出してみると・・・ちゃんとこのレコード~Ben Webster/At The Renaissance(contemporary) がそこにあるじゃないか!

「あれ、なんで?」とつぶやく僕。そこでこちらが用意していたその同じレコードを見せる・・・「おおっ」とyosi君が応える。
こんな地味盤が2枚、打ち揃って並ぶとは(笑) これは嬉しいじゃないか! yosi君はベースのレッド・ミッチェル目当てにこの盤が目に留まったとのことだが、この安っぽいカバーデザインに負けずに入手したことは素晴らしい選球眼だ。
≪写真下~1989年発売のフランス盤らしい。左下のロゴに注目≫

4benwebsterattherenaissanc404776このレコード・・・ジャケットが冴えない。これではベン・ウエブスターがまるでミイラ男じゃないか(笑)
しかし、演奏は味わいのあるもので、そして録音もいいのである。ライブ録音だが、各楽器の芯のある音色と響き具合が自然で、素晴らしい臨場感を味わえる録音なのである。録音エンジニアは、howard holzerなる人物。
一般的に言って「西海岸の録音はいい音」ということはあるかと思う。まあその「いい音」を言葉で定義はしづらいものだが、この場合の「いい音」は・・・私見では「すっきりした誇張の少ない自然な楽器の音色」という感じだと思っている。それは録音マイクの違いもあるような気がする。雰囲気としては、東海岸のダイナミックマイクと西海岸のコンデンサーマイクという違い方があるような気がする。

そして並んだこの2枚・・・contemporaryレーベルからの近年発売という点ではもちろん同じだったが、僕の手持ちは1989年発売のOJCステレオ盤(phil de lancieのリマスター)
yosi君のは19861985年モノラル盤だったのである(リマスターは別人=Gary Hobishなる人物と判明)
だから、このレコードの初回発売は19861985年モノラル盤ということになるわけだが、19861985年版のステレオ盤も存在するのだろうか?Dscn2832
実は、そんな違いも後から判ったことであって、最初、yosi君手持ちの盤を掛けた時・・・僕は「あれ?レッドミッチェルのベース音がいつもと違うぞ」という感じがして、それは、レッド・ミッチェルのベース音がやけに太く大きく聴こえたからである。「大きく~」というのは、このレコードを何度も聴いて僕が感じていたレッドミッチェルのベース音の鳴り方が他楽器とのバランスにおいて「いつもより大きく聴こえた」という意味である。
もちろんミッチェルはベースの真の名手で常にズズ~ンといい鳴りを出しているはずで、大きく太く鳴ることはいいことなのだが、僕はステレオ盤でのバランスに慣れてしまっていて、そこに若干の違和感を覚えた。ジミー・ロウルズのピアノ音色も、モノラル盤だと明らかに強め・厚めのタッチに聴こえて、それは何となく、僕が感じているジミー・ロウルズとは微妙に違うような感じを受けた。
その辺りで「あれ?これ、ステレオ盤じゃないね。僕のは確かステレオ盤だったと思うけど・・・」ということになり、お互いのジャケット裏を精査したところ、ようやくその違いに気づいた・・・というわけなのである。
まあこの辺のことは、いつも言うように「好みの問題」で、僕の場合、ステレオ録音の軽やかさを嫌いではないので、演奏の場でリアルなステレオ録音をされた音源であれば、なるべくステレオ盤で聴きたいと思うわけである。
そして、ベース音や各楽器の音をとにかく大きく太い音で聴きたいという方は、やはりモノラル盤を好むことになるのであろう。

ウエブスターはスローバラードが好きなようで、スローなテンポでいいメロディを実にゆったりと延ばしながらその音色に濃淡を付けていくような吹き方をする。基本的にはアルトのジョニーホッジスをそのままテナーに移したような感じなのだが、その「ねちっこさ」がこの1960年頃になると以前より薄めになってきたようで、そしてその辺りの「でもねちっこい感じ」が僕にはちょうどいい按配なのだ。
そのバラード~georgia on my mind と stardustが実にいい。ウエブスターの「ゆったり」に、バックの伴奏陣が適度に変化を付けて演奏全体がダレることなく進んでいく。ピアノのジミー・ロウルズ、ギターのジム・ホール、ドラムにフランク・バトラー、そしてベースにレッド・ミッチェル! 灰汁の強い個性派を主役に据え、真の名手たちで脇を固めたという感じで、ベースとドラムが造る流れの中でポツポツと入るロウルズのピアノも実に味わい深い。
そして、stardustでは、レッドミッチェルの「アルコ弾きソロ」をたっぷりと聴ける。ミッチェルはもちろんピチカット(指で弾く)も巧いが、アルコ(弓で弾く)もこんなに巧かったのか! 左手のガシッとした押さえが効いているから音程がぶれない。チェンバースのけっこう乱暴なアルコ奏法とは、だいぶ違うぞ(笑) そんな名手がアルコで弾く、弦と胴鳴りの気持ちいい音が素直な録音で捉えられており、何度聴いても飽きない。このstardustは、実に味わい深い演奏だと思う。

001_2そうだ・・・もうひとつ、印象深い stardust があったぞ。フランク・ロソリーノの Free for All(specialty)だ。 ロソリーノがトロンボーン一丁で小気味よく歌い上げる名演だ。そういえば・・・こちらも未発表音源の後年発売盤である(録音は1958年12月)
米specialtyが1986年に発売したモノラル盤裏解説にこうある(当時のプロデューサー:Dave Axelrod 談として)~
≪フランクと私は何週間も掛けてメンバーや曲目を考えて素晴らしい出来上がりになったのに、どういう訳だか発売されなかったので、2人とも、そりゃがっくりきたよ≫
そのメンバーは ロソリーノ(tb)、ハロルド・ランド(ts)、ヴィクター・フェルドマン(p)、リロイ・ヴィネガー(b)、スタン・レヴィ(ds)・・・これは本当にいい人選じゃないか。002
実はこのレコードは以前の<夢レコ:トロンボーンのいいバラード>で紹介したことがあるが、「後年発売の未発表音源盤」の逸品としても推薦したい。機会あればぜひ聴いてみてください。
ちなみにこのレコード~僕の手持ちでは、米specialtyがモノラル盤、日本センチュリーはなぜかステレオ盤(1991年発売)である。この日本盤は、自然に聴けるのでリアルなステレオ録音だと思う。コーティングされた日本盤ジャケットの出来映えはなかなか素晴らしいものだ。

侮れない内容の未発表盤・・・まだまだ見つかりそうな気配である。
ちなみに、Ben Webster/At The Renaissance(contemporary) のことについては、yosi君がこの3人聴き会の後、すぐにブログ記事にしてくれました。http://blogs.yahoo.co.jp/izumibun/35643651.html
そちらもぜひご覧下さい。

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2008年8月21日 (木)

<ジャズ回想 第17回>暑い日にYoさん宅に集まった(その3)

リッチー・カムカとMode盤のこと。

Mod_lp102_j さて・・・Yoさん宅での音聴き会はまだまだ続く。この日、特に意図したわけではないのだが、ミニ特集みたいになった場面がいくつかある。クラシックのレコードをいくつか聴いた後、さて次は何を・・・となった時、Yoさんが「my one & only loveでは誰の演奏が好き?」と尋ねてきた。これは唐突な質問に聞こえたが、そういえばお昼過ぎだったかに、チコ・フリーマンのmy one & only love(Beyond The Rain/1977年)を聴いていたので、その真摯な好演奏の印象が残っていたのかもしれない。
Yoさんのその問いかけに「やっぱりコルトレーンかな・・・」とkonkenさん。あれはもちろん最高だが唄入りである。「インストもの」という条件であれば・・・と、僕がリッチー・カムカを挙げると、Yoさん、すっくとそのレコードを取り出してきた。このMode盤はYoさんの愛聴盤だ。僕もこのレコードで、リッチー・カムカという人を知り、そして好きになった。何が好いって・・・まずワンホーンでゆったりと吹くカムカのテナーの音色が心地よい。どのトラックもいいのだが、このmy one & only love~素晴らしいメロディのこの曲を、カムカはあまり崩すことなくキッチリと吹き進む。そのキッチリさ加減が端正で誠実そうなあの音色とあいまって、なんとも品格のあるmy one & only loveに仕上がってしまった。 Mod_lp102_2
《Richie Kamuca Quartet~ジャケットとラベルの写真はYoさん提供》

このモード盤/Richie Kamuca Quartetは、真の名盤だと思う。演奏が終わると、それまで、じい~っと聴いていたリキさんがこう言った。「おととしの白馬以来かな・・・久しぶりにこのレコードを聴いたけど、いいですねえ。好きだな・・・これ」 そういえば、このモード盤・・・2006年白馬にて、Yoさんがセレクトしていたな。あの時は、このカムカのwhat's newをもうひとつのMode盤~ペッパー・アダムスのmy one & only loveと聴き比べをしたのだった。
じゃあ次のmy one & only loveを・・・ということで、Yoさんは、ロリンズのRCA Victor盤のmy one & only loveへ続けたわけである。(拙ブログ~前回の「その2」参照)
さきほどの端正なカムカに比べると、ロリンズときたら・・・メロディは崩すわ、リズム(メロディの入るタイミング)は崩すわ・・・カムカに比べるといささか品格には欠けるかもしれない(笑)でも・・・それがロリンズの個性なのだから!

ここから俄かにMode特集気配が漂う。
「じゃあ・・・」とrecooyajiさんが取り出した1枚~おおっ、ドン・ファーガキストのMode盤/Eight By Eight(Don Fagerquist Octet)だ!これも好きな1枚だ。編成は多いのだが、マーティ・ペイチのアレンジに嫌みがなくて、厭きない仕上がりになっている。特に「イージー・リヴィング」と「煙が目に沁みる」というスローバラードでは、ファーガキストの艶やかな音色と、しなやかな歌心がじっくりと楽しめる。僕はだいぶ前に、VSOP復刻盤を聴いて、このトランペッターの良さを知ったのだが、それにしても・・・recooyajiさん、こういう渋いところも、ちゃんとオリジナル盤で抑えているところが憎い。
Photo《左写真は、残念ながら、僕のVSOP盤》

A面1曲目~aren't you glad you're you を聴く。
Yoさんの装置はいつも安定感があるが、この日は、特にMode盤、Contemporary盤が、実にいい音で鳴ったようだ。
さきほどのカムカもそうだったが、管楽器の明るくて張りのある音色が、なにかこう、パリッと抜けた感じで、理屈抜きに気持ちいいのである。いい状態のオリジナルMode盤は・・・やはり素晴らしい音だな・・・と改めて思い知らされた僕である。
ところで、僕はModeレーベルの作品のほとんどをVSOP復刻で聴いているのだが、復刻の音質の方は、タイトルによってだいぶ違うようだ。例えばこのファーガキストのEight By EightのVSOP盤(ステレオ)は、なかなか鮮度感の高いメリハリある音質だと思えるのだが、リッチー・カムカの「カルテット」の復刻盤の方は、だいぶ鮮度感に乏しくちょっとこもったような感じもある。前述のmy one & only loveでは、メロディの最初のところでなにやら「針音ノイズ」らしき音も聞こえるので、ディスク・ダビングかもしれない。
ちなみに、Mode盤はピカピカのオリジナル盤であっても、盤の材質からか始終「サ~ッ」という小さいノイズが入るものも多いらしいが・・・番号の早いタイトルの方なら、その危険率が低いらしい。

Mod_lp125_j_2もうひとつMode盤を・・・ということで、Yoさんが、ウォーン・マーシュを見せる。う~ん・・・これも好きな1枚なのだ(笑)
一聴、「ヘタウマ」なマーシュを大好きだという方はあまり多くないかもしれない。「個性」という点では、あのロリンズも真っ青・・・かもしれない。それくらい独特なテナー吹きである。なにが独特か・・・唄い口が普通ではないのである。まず、フレーズが普通のバップ語法ではない。フレーズをやけに伸ばしたり、変なところで切ったり・・・それはもう面白い唄い方なのだ。さらに、たびたび、テナーの音がひっくり返ったりするが、マーシュは一向に気にしない様子でもある(笑)Mod_lp125

《上のジャケットと右ラベルの写真~Yoさん提供。この漫画風イラスト・・・Modeでは一般に「肖像画」の方が人気が高いようだが、僕はこの「イラスト」も嫌いではない》

僕は・・・実はこのウォーン・マーシュという人こそ「ウエイン・ショーターの先生」だと考えている。この2人の関連を書いた記述を読んだことはないが、「音色の変化を巧く使ってのヘタウマ風唄い口」という類似性から見て・・・ショーターは、マーシュを相当に聴き込んだ時期があるのでは・・・と睨んでいる。 
そのマーシュのモード盤からは、you are too beatifulを聴く。これも好きな曲だ。マーシュもいいがレッド・ミッチェルのベースソロがこれまた素晴らしい。ミッチェルのベースソロというのは・・・派手さはないが、これもその「唄い口」が、実に自然というか・・・メカニックではない(コード分解した音だけ選んで弾いているのではない)感じが、素晴らしいのだ。何かで読んだ話しでは、ミッチェルは、うんと早い時期から「管楽器の(唄い口の)ようなソロ」を弾きたい・・・と意識していたそうだ。実際、1955年のハンプトン・ホウズのcontemporary盤でも、ソロの場面では、そういう弾き方(管楽器の唄い口のような)をしている。
これはある意味、凄いことだと思う。ベースという楽器で、管楽器のように、「しなやかにメロディを唄う」というのは、本当に難しいことなのだ。この頃は、レッド・ミチェルこそ、真のベースの名手なんだろう・・・と思うようになってきている。

Hifi_sr604_j_2  そういえば、カムカがあまりにも良かったので、その流れで聴いたレコードがもう1枚あった。Hi-FiレーベルのJazz Eroticaである。ちょっと色っぽいイラストのヌードのジャケットである。Yoさん手持ちの盤は、「ステレオ」を強調した銀色のシールが貼ってあるステレオ盤だった。
《写真~Yoさん提供。なぜ、座布団が3つなのか?》

このレコードと中身は同じで別ジャケットのもの~West Caost Jazz in Hi FIというタイトル~をHi-Fi盤(モノラル)で持っているのだが、そちらは「海岸の波打ち際にトロンボーンやらサックスが刺さっているやつ」で、こりゃあジャケットの魅力ではどうにも「ヌードのイラスト」の方が上である(笑)Hifi_sr604_l_2
しかしながら、このJazz Erotica・・・音質の方は今ひとつだった。ベースの音にエコーがかかったような感じで焦点が定まらないような感じもあり、そして・・・サックスが右側、トランペットが左側に大きく振り分けられており、他のブラス群も全体に左側に片寄ったようなちょっと不自然な感じの定位感だった。「ステレオ録音」を強調せんがための無理やり定位のマスタリングだったのかもしれない。
今回、手持ちのステレオ盤~Phil De Lancieという人がリマスターしたで再発されたWest Coast Jazz(OJC:limited;1990年)~も聴いてみたが、やはり録音自体があまりよくなかったようで、カムカのしっとり感みたいなものが今ひとつ味わえなかった。

《モノラル盤~West Coast Jazz。センスが良いのか悪いのかよく判らないジャケットだ。それにしても、塩水に浸かった楽器はダメになってしまったのだろうな・・・》 West_coast_002
実はこの日の翌日、recooyajiさん宅で僕の手持ちのHi-Fi盤/West Coast Jazzを聴いてみた。モノラル盤なので当然のことながら、カムカのテナー、コンテ・カンドリのトランペットも中央にきて、どの楽器の音色も厚めに聞こえる。エコー感の強かったベースの音色もぐんと落ち着き、全体に音楽がしっとりと聴きやすくなったようでもあった。 
たいていの場合、ステレオ盤が好きな僕も、このJazz Eroticaについては・・・モノラル盤(West Caost Jazz in Hi Fi)を好ましく感じるのであった。West_coast_003ところで・・・「ヌードのイラスト」のJazz Eroticaの方に、モノラル盤はあるのだろうか? あのジャケットでモノラル盤というのが、どうにも魅力のある組み合わせになるのだが。ああ、ジャズレコードへの探求は・・・まったくキリがない(笑)

《写真~Hi-Fi盤の内袋は、どうやらこのビニール製がオリジナルらしい》

Kelly_at_midnight_6    <オマケの追加記事>~この夢レコ・・・いつもみなさんからたくさんのコメントを頂いております。そのコメント欄では、ジャズを愛している方たちといろんなやりとりができまして、それは僕にとっても嬉しいことです。じゃんじゃんいきましょう!(笑) 
今回、ウイントン・ケリーの「ケリー・アット・ミッドナイト」(Vee Jay)のドラムスの音量バランス(録音、演奏含めての)やピアノの音質のことが小話題になりましたので、とりあえず僕の手持ち盤「ミッドナイト」の写真を載せておきます。
みなさんのご意見、やりとり内容については・・・ぜひ「コメント欄」を追ってみて下さい。いつもうんと長いコメントですみません(笑)。 Veejay_4
なお「ミッドナイト」については、まだまだ謎も多く、興味は尽きません。みなさんの感想・情報をぜひお寄せください。
《この米再発Vee Jay盤~30年ほど前だったか、地元のレコード店の移転オープン時のバーゲンコーナーで入手しました。価格は・・・驚異の200円でした(笑)ランオフの刻印は拡大して見ると・・・どうやらAudio Matrixとなっているようだ》

《コメント欄で小話題になったBell Sound刻印》
グーグルで検索したところ、このブログ~swingin' godzillaの該当記事http://sgodzi.exblog.jp/6959208/ に素晴らしく明快な写真があったので、引用させて頂きます。special thanks to Mr. god-zi-lla さん!
Photo_3

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