ラムゼイ・ルイス

2006年1月 1日 (日)

<旅レコ 第11回>ロス(郊外)&ホノルル編 

やったあ!アラモアナの裏通りにて中古盤店を発見!ついにLP盤を・・・。

99年6月、「アメリカ」に初めて行った。ロス&ハワイでの流通業の研修だ。ロスについてから、すぐにバスであちこちの巨大ショッピングセンターを次々に回っていった。僕は、ロス=ハリウッドと思い込んでいたので・・・遠くに小高い山々も見えたりすると、あの景色が~山に彫られた人物像たち~今にも現れるのではないか、とバスの中できょろきょろしていた。ところがロスと言ってもやけに広いのだ。観光とは無縁の研修の一行は、うんと南の郊外の辺りをグルグル回っていたようだ。宿泊もコスタメサという街で・・・あとでよく地図を見たら・・・結局、ハリウッド周辺には近づいてもいなかったのだ(笑)

オレンジ郡のショッピングセンターで昼食をとった後、記念すべきアメリカ初の個人的買い物をした。Bordersという書店の中のCDコーナーでCDを1枚だけ買ったのだ。こんな郊外の巨大ショッピングセンターには、LPなんかとてもありそうにない。ここはCDで我慢だ(笑)選んだのは・・・スタン・ゲッツ「Plays Burt Bacharach」$12.99~ちなみにアメリカの値付けというのは[$~.99]というのが多いようだ。別に$0.01だけ安くしても同じなのに・・・(笑) パっと見た目の気分で衝動を誘発しようというセコイ値付けではある(笑)
このゲッツのアルバムは持ってなかったし、CDでも紙ジャケのゲイト・フォールドなのが、ちょっとうれしい。次に寄った巨大モールでは、また大きな書店でシナトラのCDを2枚入手。これは、バーゲンのワゴンに混ざっていたので、各$6.99と格安であった。

しかし・・・やはりCDでは、おもしろくもなんともない。研修とはいえ、ここはアメリカである。あわよくば・・・レコード盤を扱う中古盤店が見つかるかも・・・などと夢想していたのだが、最新型の巨大モール内に、渋い廃盤店などあるはずもない(笑) 月・火・水と「ロス郊外」にいたのだが、やはり研修なので、昼間も夜も一人で出歩く時間もなかった。ロスでは「レコード」はあきらめるしかない。ロス3泊目の夕食は、ニューポートビーチ(ジャズの映画で有名なニューポートは、東海岸だったはず)という港の街だった。この街は、ヨットハーバーがいっぱいあり、近くの通りもオシャレな街並みだった。ここなら、探せば中古盤店もありそうな雰囲気があった。(最近、米オークションにてコンタクトしたある業者の住所が、このニューポートビーチだった。やはり・・・あの街には中古盤店があったのだ・・・) 食事は、ヨットハーバーに面した店の外のテーブル席だった。寒くもな暑くもなく、潮風が心地よくて「初夏の西海岸」という、おだやかないい雰囲気を味うことができた。

ロスからハワイへ移動。このホノルルには木・金・土だ。また空港からすぐに郊外のショッピングセンターをいくつか回った。合間に、いくつかの店で、シナトラ、チェットベイカーなどのCDを何枚か買った。この時点では、もう LP盤入手をあきらめていたのだ。中古レコード屋さんはどこかにあっても見つける時間も行く時間もない、と思っていた。研修第2ラウンドのハワイでは、24hオープンの食品スーパーの夜間営業の実態調査などもあり、寝不足に苦しんだが、金曜日の夜までに研修の発表など、やっつけるべきことをなんとか終えた。その金曜の夜遅くに、研修の仲間達とホテル近くのタワーレコードまで出かけた。アラモアナショッピングセンターのすぐ北側の通りに「タワーレコード」があることは、地図で調べておいたのだ。宿泊したホテルが、このアラモアナ地区だったので、歩いても5分くらいのところだった。そして実は・・・前日の昼間、バスで移動中に、この「タワーレコード」のちょっと裏通り辺りに「中古盤店」らしき店を見つけていたのだ。ちらっと通っただけなので確かではなかったが、あれは確かに「レコード屋さん」だった。
タワーでは、これまたバーゲンのワゴンからブルーベックやらシナトラなどを選んだが、僕はすぐにそこをを抜け出て、辺りを探りに行った。そして・・・あの店は・・・ちょっと裏の通りのほぼ予想していた位置に、すぐ見つかった。ちょっとパンクっぽいような派手なイラストがペンキで塗りたくられたような店で、「Hungry Ear」という名前だった。やったあ!ついに見つけたぞ!レコード屋を。こうなりゃあ・・・もうCDじゃあ我慢ならん!さあっいくぞ!しかし・・・店の前がなんだか暗い。ドアの看板を見ると・・・21時だか22時ですでに閉店している。そういえば、もうとっくに夜の10時過ぎだったのだ・・・。
だが・・・いいのだ。僕は余裕だった。幸運にも、次の土曜日の午後が「完全自由時間」となったのだ。待望の自由時間だ。明日の午後、もう1回、ここにくればいいのだ!どんなレコードがあるか・・・楽しみだ。

土曜日の午前中、ホノルル東部郊外のショッピングセンターの視察が終わったので、仲間と別れて一人でバスに乗り、市街地まで戻った。さあ、今からは自由時間だぞ! アラモアナショッピングセンターを通り抜け、タワーレコードには見向きもせず通り過ぎ、昨夜の裏通りに向かう。「Hungry Ear」に到着だ。「飢えた耳」とは、またしゃれた名前じゃないか。よしっ、今日は開いている。ワクワクしてくる気分を抑えつつ店に入る。入ると左にカウンター。右側にエサ箱がコの字の壁面と中シマに2列だったか。それほど広い店じゃあない。さあ・・・少しでもジャズがあるのか? ジャズのコーナーはすぐ見つかった。エサ箱で7~8列はあった。中古盤店なので、問題は、価格だ。どんな値付けなんだろう? ジャズを見るその前にチェックしたプレスリーとかは、やはり$40~50$以上はしていたが、ジャズの方は・・・あるある・・・ そうして、たいていのものが$10~$15ほどだ。$7~$8のものもけっこうあるようだ。お店の主力がロック系らしくジャズは・・・かなり安めのようだ。こんな具合だと、あれもこれも欲しくなる(笑) わくわくしながら、とりあえず「これは!」という盤を抜いていく。盤質はあとでチェックすればいいだろう。
この店でちょっとおもしろいのは、ジャケットを包むビニール袋が、透明ではなくやや白みがかったものを使っていることだ。最初は、この「白い濁り」のせいで、レコード全体がなんだかほこりっぽいものに感じたのだが、それは錯覚だった。ビニールから出したジャケットを見てみると、案外どれもコンディションがいいのである。だから・・・この「白濁りビニール」には、たぶんジャケの色落ちを防ぐような効果もあるのだろう。

1時間ほどチェックしただろうか。ざあっと抜いた盤が、軽く30枚くらいになっている。$10平均としても$300ほどだ。VG+くらいの盤質とジャケのコンディションであれば、価格的にはもちろん充分に安いのだから・・・まとめて全部!でもいいのだが・・・それよりトランクにどれだけ入るかが問題だ。持ってきたのは小さめのトランクだったし、6泊分の着替えやらで出発時からからそれほど余裕がない状態になっている。座席に持ち込める手荷物もショルダーバッグと紙袋くらいなので、そちらにLP盤をつめこむ余裕はとてもない。トランクは成田から自宅まで宅急便で送ればいいが、手荷物は自分で持ち運ばなくてならないのだ。レコード盤で重くなった手提げ袋を持って帰る、というのは、いくらレコード好きの僕でも耐えられそうにない。してみると・・・とにかく「LP盤はトランク」だ。それを優先にして、どうしてもはみ出るCDやらおみやげなど軽めのものを、大きめの手提げ袋で手荷物にすればいいだろう。ただ、トランクに非常にうまく詰めたとしても、10枚くらいが限界だろうな・・・。そんな段取りを考え、目標を10枚に設定した。ここから・・・いよいよ盤質をチェックした上での絞込みが始まるのだ。

中身の検盤をする際・・・無断じゃまずいかな、と思い、カウンターの若い男に I want to check the surface.OK? と聞いたら、No Problem! とすぐにOKしてくれたので、僕は一枚一枚の盤質チェックを始めた。さて、ここからがなかなか大変なのだ。何かとセコイ僕は・・・あれこれと悩むのだ(笑)振り落とす優先順位は・・・まず、「盤質がイマイチ」なもの。それに「日本盤を持ってる」「案外よく見かける」「OJCでも出てるはず」「買っても聴きそうにない」・・・いろいろな屁理屈をつけて、絞っていくのだ。まあ・・・この絞込みが苦しくも楽しかったりする(笑)

そんな風で、また30分くらいはかかったかもしれない。最終的には・・・やはりまず「持ってないので聴きたい盤」と「今後も含めてその盤の手に入りにくさ」(ほとんど思い込みだが)をポイントにして絞り込んだ。
当時、集めだしていたCadet盤のラムゼイ・ルイスを以下の4枚。herb_ellis__rumsey_lewis4_007

Wade In The Water
Never On Sunday
Hang On Rumsey
The Piano Player

「Hang On Rumsey」~これはライブ盤で、ビートルズのA Hard Days Night や And I Love her を演ったりしているのだが、
これが案外、悪くない。ラムゼイルイスという人は・・・もう体質として8ビートフィーリングが自然に湧き出てくるタイプのようで、しかし・・・とにかく聴き手を楽しませてくれるピアニストだ。だから、このライブ盤では、聴衆がもうノリノリになっていく様子がよく判る。特に売ろうとしてビートルズの曲を取り上げたのではなく、単にこの場の聴衆を喜ばせよう、という芸人の精神の塊りのような人なのだと思う。ジャズロック風の曲の合間に混ぜるバラードも、ソウル節・泣き節がいっぱいのちょっと「クサイ」バラードではあるが(笑)・・それも僕は嫌いではないのだ。

<やったあ度>が高いのは・・・これだ。
Herb Ellis/Three Guitars in Bossa Nova(epic) 
herb_ellis__rumsey_lewis4_006

3ギターというタイトルにあるとおり、ハーブ・エリスとローリンド・アルメイダ、もう一人、ジョニー・レイというギター奏者。
これに、管が1本だけ~ボブ・エネヴォルセンがテナーのみ(この人、普通はどちらかというとヴァルブ・トロンボーン奏者として知られているように思う)で参加しており、このテナーが・・・これが実にいい味わいなのである。ギターやドラム以外の打楽器も加わり、ボサノヴァ好きの僕としては、これはもう予想外に素晴らしくリラックスしたいい演奏の盤である。この盤は、存在さえ知らなかったので、とてもうれいし1枚となった。エピックというレーベルは、案外、復刻がなされてないので、まだまだ未知の盤があまたありそうである。ちなみに写真の下の方に見える「黄色い内袋」は、エピックのオリジナルなのだろうか?広告・活字が一切ないので、全く別のものかもしれないが・・・見た目や紙質に「古み」があるし、センターラベルの色と合わせたオリジナルのinner sleeve のような気もする。(どなたかご存知の方・・・ぜひ、お教え下さい)

Gerry Mulligan/Concert Jazz Band on Tour(verve)T字/銀・黒~残念ながらMGM-Verveです~mulligan_on_tour

マリガンの「コンサートジャズバンドもの」は、いろいろなタイトルがある。At The Village Vanguard(こげ茶色のジャケのやつ)も悪くないが、僕はズート・シムスが好きなので、シムスが加わっている「白のマリガン」~[Concert Jazz Band](<夢レコ> 9月27日の記事「ジャズ10時間聴きまくり」で紹介しております)や、この[Concert Jazz Band on Tour] の方が、より気に入っている。そして、この「~on Tour」は、ゲストソロイストとしてズート・シムスの名をジャケットにわざわざ載せているだけあって、シムスの出番は、この盤が一番多い。シムスのソロも、全体の内容もすごくいいのに・・・なぜだか、この「~on Tour」は、意外と見かけないように思う。

他には・・・エロール・ガーナー(columbia)、ジャキー・パリス(wing)、ジョニー・ホリデイ(kapp)など13枚に落ち着いた。
この時、候補に残していたはずのブルーベックのcolumbia盤2枚は・・・なぜか忘れてしまったのだ。デスモンドも好きなので、最終選考にも残してもよかったのだが・・・はっきりした記憶がないのだが、盤質が悪かったのかもしれない。

アメリカ(ロス&ハワイ)での入手盤は・・・僕の手書きリスト(6月13日の記事<ジャズ雑感 第1回>レコード買いの記録~究極の時系列・・・いや、単に横着な僕のレコードリスト)の欄外に、こう書いてある。
CD  17枚($211)
LP  13枚($126)
今、この数字だけ見れば・・・LPを13枚しか、と思うのである。CDなどには目もくれずにおけば、その「厚み」のスペースであと10枚くらいはLPがトランクに収納できたかもしれないと(笑) もっとも・・・中古レコード盤を入手できたのは、帰る前日の午後である。それも予定にない半日の自由時間ができたことで可能になったことだった。アメリカについてからの月~金までは、「LPは無理かあ・・・じゃあせめてCDでも・・・」という止むに止まれぬ心情だったのだ。やれる範囲でやったのだ(笑) いずれにしても・・・僕はこの8日間を・・・研修よりもレコードゲット作戦に心を砕いていたようだ(笑)

ちなみに、トランクへの「詰め込み作戦」は、本当にピッタリ!13枚のLPを中心に考え、そこから全てを始め、タオル・シャツ・トレーナーなどをうまくパッキングに使い、ギュウギュウに押し込み、なんとかトランクのフタが閉めた、という状態であった。当然、もの凄い重さになった。空港では、仲間に「ちょっと提げてみて」とやり、みんながびっくりするのを楽しんだりした。傑作なのは・・・成田からの宅急便の扱いの時、「あまりにも重いので規定外です。破損があっても保証できませんがよろしいですか?」と書類にサインさせられたことだ。それくらい重かった(笑) 
そうして、成田でもトランクは開けなかった。冗談ではなく、一度フタを開けたら、もう締まらなくなるだろう・・・と思ったのだ。だから中身のチェックもしないまま、宅急便に預けてしまったのだ。
そうして月曜日の夜、自宅に帰り着いたが、「トランク」は翌日、自宅に戻ってきた。外見は大丈夫だ。さあ・・・果たして中身は無事なのか?
~飛行機の荷物室と空港での乱暴(であろう)取り扱い。それから成田からの長距離トラック~これらの難関をうまく乗り越えられたのか? 僕は・・・緊張してトランクの鍵を開け、フタを開けた。グルグルに囲ってあるタオルや衣類の詰まった袋などをとりのぞき・・・いよいよ、レコード13枚の袋を開けてみる・・・・・おおっ!大丈夫だ! どのレコード盤も無事だ。ジャケットのカドも全く曲がってない。盤も大丈夫だ。全て問題なしだあ~!

この時は、本当にうれしかったし・・・何よりほっとした。無理して詰めた「レコード達」に何かがあったら・・・重い荷物を嫌がったこのオレが・・・ちょっと横着をしたために、レコードが痛んだことになってしまう。たぶん、そんな気分もあったのだろう。そういえば、ひとつだけ軽い被害があった。1枚だけ、CDのプラケースがひび割れていた。トランク内で寄りかかった重量に押しつぶされたようだ。やっぱり「プラスティック」はだめだな。「紙」ならどんなに押されても、割れたりしないぞ(笑)  かなりの屁理屈ではあるが・・・やはり・・・アナログは素晴らしい!

それにしても・・・この出不精な僕が、またいつかホノルルに行くことなどあるのだろうか? 飛行機の10時間さえなければ・・・すぐにでも行きたい(笑)

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