7インチ

2021年12月31日 (金)

<ジャケレコ  第5回>7インチEP盤には逆らえない

バート・ゴールドブラット装丁のEP盤たち

なんだか知らぬ内に日々が過ぎて、この1年も早くも終わろうとしている。本当に早い。毎年、年末になるとこのような感慨に耽るわけだが、この「夢見るレコード」・・・年に1回だけでも更新せねば、というわりと律儀な気持ちもあり(笑)しかしなかなかいい題材も見つからず、あれこれレコード棚をパラパラと見ながら、埃(ほこり)を払ったりしていたら、棚の前に飾ってあるEP盤がぱたりと落ちてきた。あ、そうだ、これでいこう!・・・という訳で、今回はEP盤である(笑)

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この何年かの内にジャケットを気に入ったものを少しづつ入手してきて、EP盤もけっこう集まってきている。
‌EP盤の魅力はやはり、まずはジャケットにある。そのジャケットから醸し出される雰囲気の魅力である。
さて、EP盤を入手するキッカケにはたぶん誰もがこんな具合かな、と思えるパターンがあって、それはつまり、12インチ盤、10インチ盤でとても好きなレコードがあって(それを持っていても、あるいは持っていなくても)そのレコードと同じデザインのジャケットのEP盤というものが数多く存在している・・・そしてひとたびその姿を目にしてしまうと、その7インチという小振りな姿、形がなんとも「チャーミング」なモノに見えてきて・・・いいなあ、これ!という気分になってしまう(笑)~そんなパターンかと思う。
またデザインは同じで色合いだけ違う場合もあるが(*写真上の方に映っている bethlehem のクリス・コナーなど)それはそれでチャーミングである。このクリス・コナーのEP盤については「夢レコ」過去記事「クリス・コナーの声」で取り上げている)
それから10インチのジャケット写真の、それを撮った時の別カット写真をEP盤の方に使う~というパターンもあるようだ(emarcyのヘレン・メリルなど)それも悪くない。それから、10インチの元盤と関係なくても、そのEP盤のオリジナルなデザインが実に魅力的なものも、当然のことながら、数(あまた)存在する。なんだ・・・これではEP盤というものを好きになってしまうのも無理のないことじゃないか!(笑)

図柄的魅力とは別な話しとして、じゃあ7インチEP盤の音ってのはどうなんだ?という興味もある。
僕の場合、EP盤は45回転だから音もいいはずだ~という素朴的期待感もあり、いろいろ入手してきたわけだが、初期の頃には Clef のゲッツやフリップ・フィリップスの幾つかのタイトルに「かなりいい」と思えるものを見つけたが、それらは例外的なもので、その後は「まあ・・・普通の音だな」と感じる場合がほとんどだった。特定のレーベルなら全て音がいい~なんてことはまったくない。こういうのはやはりタイトルごとの問題だろう。そして「いい場合」の確率はそれほど高くない・・・そんなことから(僕の場合)ある時期からEP盤というものは、あくまでジャケットの魅力に拘るべきだ、と考えるようになった。

さて、さきほどEP盤の棚を少し整理してみたら、なにかしらジャケットが同じ雰囲気のものがけっこう見つかった。それらは主役であるミュージシャンを個性的なイラストで描いているジャケットのもので、たまたまかもしれないが Savoyレーベルのものが多かった・・・そう、バート・ゴールドブラットである。ゴールドブラットはベツレヘムの格調高い写真ジャケットで有名だが、イラストものも凄く個性的で素晴らしいのだ。それらを並べてみたら・・・う~ん、実にいいなあ・・・好きだなあ・・・というわけで(笑)
まずは、バート・ゴールドブラット装丁ジャケットのEP盤をあれこれと紹介してみたい。

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《上写真~黄色と赤色の2枚~Stan Getz/Swedish All Stars(roost) 》赤い方が EP 302(vol.2と右下に表記)と 黄色いのが EP 304(vol.3と表記)である。これこそ同じデザインの色違いパターン。この写真だとジャケットの表面の紙が剥がれているように見えるかもしれないが、これはサックスの部分だけ「白い色」にしてある・・・そういうデザインなのだ(笑)

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《マリアン・マクパートランドの savoy のEP盤~vol.1(xp 8032) と vol.2(xp 8033) と vol.4(xp 8106) 》
これら3枚を集めたが、vol.3 は残念ながら未入手である。そしてこの3枚~表ジャケットは素晴らしいイラストだが、vol.1 と vol.2 の裏ジャケットはまっ白・・・何の表記もない。但し、vol.4 には裏ジャケットに解説と自社レコード広告が載っていたが、エロール・ガーナー、ジョージ・シアリングなどのEP盤紹介のみで、マクパートランドのEP盤 vol.3 情報は得られなかった。
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このイラスト・・・女性がけっこう太めの右腕をアタマの上の方からぐぐ~っと曲げ込んで鍵盤をタッチしている・・・そういう図なのだが、こんな風に肘を90度にしたらピアノなんか弾けないぞ(笑)でもいいのだ・・・写実ではなくイメージ表現なのだから。ゴールドブラットは・・・「線」がいいと思う。線のタッチにすごく強弱感(太い、細い)があって、スピードを感じる。僕はこのイラストレーションをとても好きなので、同じ図柄(色違い)の Marian McPartland MOODS(MG 15022)という10インチ盤~上写真~も手元にある(笑)
  
ゲッツ~他のルーストEP盤にもゴールドブラット装丁のものが在ったので掲げておきたい。ゴールドブラットの描く、どことなくヘナヘナッとしたゲッツの姿が悪くない。しかしながら・・・Roost レーベルの音質はどう弁護的に言っても良いとは言えない。録音の段階から(おそらく)なんというか音が遠いというか、こもったような鮮度感のない音である。これはオリジナルの10インチ盤、12インチ盤でも同じ傾向。残念ではある。

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上写真~Stan Getz/Stan Getz Plays の vol.1(roost EP 301) と vol.4 (roost EP 306)
さて、この2枚・・・同じ図柄で vol.1とvol.4となっているので、当然これらの「色違い」vol.2 と vol.3 が存在しているはず~と考えて、未入手なのを残念に思ったわけだが、その vol.2とvol.3・・・なんとしたことか、先ほど紹介した3つ上の写真~Stan Getz/Swedish All Stars の2枚そのものだったのである! なぜそれが判ったのか? EP 306 の裏ジャケット~そこに答えがあったのである。つまり・・・裏ジャケット右下に EP 301から EP 307までのタイトルがしっかりと表記されていたのだ(笑)こうある。
EP 301 Stan Getz Plays ーvol.1
EP 302 Stan Getz and His Swedish All Stars ーvol.2
EP 304 Stan Getz and His Swedish All Stars ーvol.3
EP 306 Stan Getz Plays ーvol.4
う~ん・・・Plays の方は 1 と 4、Swedish の方は 2 と 3 が手持ちで、なかなか巻(vol.)が揃わないなあ~と少しガッカリ気分もあったのだが、なんのことはない。たまたま持っていたゲッツの roost  EP盤4枚が、ちゃんと vol.1~vol.4 までの揃いになってるじゃないか!これは・・・ちょいと嬉しい(笑)

まあこんな風にバート・ゴールドブラットのカバーアートが大いに魅力的なEP盤ではあるが、たまには音源的な(音質ではない)興味から大いに惹かれてしまう・・・そういうEP盤もある。例えばこいつ。

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ゲッツだけ紹介して他のテナー奏者も出さないのも面白くない(笑)上の2枚のEP盤は、モーリス・レーン(xp 8089) と テッド・ナッシュ(xp 8090) TENOR SAX なるシリーズで文字通りテナー奏者を紹介するための企画のようだ。同じデザインの色違い・・・僕はこういうのにけっこう弱い。おそらくゴールドブラットは2枚を並べた時の効果を考えて、その色彩を決めている。だから・・・こちらも2枚、並べたくなる(笑)
この2枚~例によってジャケット裏に何の印刷も無いので(データが無いので)テッド・ナッシュについては調べた自分のメモが付けてあったことを失念していた(笑)そのメモによると、over the rainbow を含むこの4曲は1946年のSP音源のようだ。dsにマックスローチの名前がある。

さて、この時期のテナーと言えば・・・ブリュー・ムーアを忘れてはいけない~下写真の2枚。

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Brew Moore vol.1 (savoy xp 8066) と vol.2 (xp 8067)  である。これは、vol.1とvol.2の連続番号なので、savoyレーベルには売り出したかった意図があったはずだ。実際、この時代ではすごくモダンなフレージングが素晴らしい。なぜ人気が出なかったのか・・・判らない。
このEP盤2枚~各4曲づつ(計8曲)収録されているのだが、前述のマリアン・マクパートランドEP盤と同様に、裏ジャケットに何も印刷されてない。だからどこにもパーソネルも記されてないわけで・・・同時期(1953年と思しき)の10インチ盤~Brew Moore/Modern Tenor Sax(MG 9028) にはおそらく裏ジャケット情報は載っているだろう。だが僕はその10インチ盤は未入手なので、discogsで savoyレーベルを調べてみると、その10インチ盤には6曲しか収録されていないことが判った。その6曲とは~
EP8066の4曲と8067からの2曲(lestorian mode と mud bug) である。
つまりこの段階で8067から残りの2曲が抜け落ちてしまっているのである。後述するチャック・ウエイン/ブリュー・ムーア音源との関連もあり、なんとなく知ってるつもりだったブリュー・ムーアの savoy音源のことが、ほとんど判ってないことが判った(笑)う~ん・・・なんだかとても気になってきた(笑)そうなると厳しいことに、savoyというレーベルは、コンピレイションものが雑なのである(笑)データ表記もアバウト過ぎて・・・とにかく判りにくい。
だがしかし天は我を見放さなかった(笑)EP 8067に収録されている「レストリアン・モード lestorian mode」という特徴ある曲名が大きなヒントになって、いろいろ判ってきたのだ。

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上写真のEP盤8067に収録の lestorian modeという曲名にははっきりと覚えがあって、それはスタン・ゲッツ絡みで、savoyレーベルにこの名前の12インチLPが在ることを知っていたからだ。そこでゲッツの棚をチェックしたら・・・在った在った。
Lestorian Mode(MG 12105)だ。

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この Lestorian Mode には~ゲッツ、サージ・チャロフ、そしてムーアの3種のセッションから4曲づつが収録されていた。そして、件(くだん)のムーアの8曲の内、8067の4曲がB面3~6曲目に収録されており、そのパーソネルもきちんと表記されていた。よかった(笑)

Brew Moore(ts)
Gerry Mulligan(bs)
Kai Winding(tb)
George Wallington(p)
Jerry Floyd(tp)
Curley Russell(b)
Roy Haines(ds)

lestorian mode
gold rush
kai's kid
mud bug 
録音年は12インチ盤 Lestorian Mode にも表記されていないので、不明です。
*1/4追記~上記4曲の録音年月日が 1949年5月20日と判明しました。Arista/Savoy時代のボブ・ポーター監修の再発盤~
Brothers and Other Mosthers vol.2(SJL 2236)の詳細なデータによって判りました。ちなみにこの2枚組(1979年)には上記4曲が各2テイクづづ収録されています。

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 さて、もうひとつのムーアのEP盤(8066)4曲はどこに行ってるのか? 
こちらも案外すんなり見つかった。
In the Beginning BeBop!(savoy MG 12119) という12インチLPに4曲とも収まっていた。こちらも前述の「レストリアン~」と同じように3種のセッションから4曲づつ(全12曲)収録で、ムーア4曲はA面5,6,B面1,2に配置されている。このセッションはカルテット(4人編成)でパーソネルは以下。
録音年月は12インチ盤にも表記されておらず不明。

Brew Moore(ts)
Gene Dinovi(p)
Jimmy Johnson(b)
Stan Levey(ds)

blue brew
more brew
brew blew
no more brew

*1/4追記~録音年月日が 1948年10月22日 と判明しました。こちらも Arista/Savoy時代のボブ・ポーターによる再発盤~
Brothers and Mothers vol.1(sjl 2210)という2枚組(1976年)のデータに明記されていました。

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さて、ブリュー・ムーアのリーダー作品はと言うと・・・あまり思い当たらない。この savoyEP盤の他にはたしか fantasyに在ったかな?
というくらいだ。調べてみたら(discogs)やはり fantasy に以下の2作品を残していた。
Brew Moore Quintet(1956年)紫色の風神様みたいなジャケットのもの。
Brew Moore(1957年)ムーアがテナー持って笑ってるジャケットのもの。
あとは Brew Moore in Europe(1962年)~ラース・ガリンやサヒブ・シハブとの共演盤~という作品があるくらいで、これでムーアのリーダー作はうんと少ないことがはっきりした。だから、ブリュー・ムーアを聴くためには、他のミュージシャン作品への参加作~後述するチャック・ウエインを含めて~をチェックするしかないのだ。

このように貴重な音源をセッション単位で聴きたい時に、あるセッションがそのまま1枚のEP盤にまとめられているとありがたい。SP音源はA面・B面で2曲単位だから、SP2枚分4曲をEP1枚に収めるケースも多いようだ。それから10インチ盤の時代には、ひとつのセッションを3~4曲でまとめる場合が多いようで、つまりセッション2回で6~8曲分を仕上げて、それらで10インチ盤両面を構成しているケースが多いように思う。また12インチ盤に再収録する場合、先ほどの savoy のコンピレイションLPのように、3つのセッションから4曲づつで、1枚の12インチ盤を構成する場合もある。その際、元セッションの3~4曲が、A面・B面にバラバラにされたり、あるいは別のLPに振り分けられたりするケースも多いようなので、特に興味深いセッションの場合には、その3~4曲が1枚のEP盤にまとめられていると、それだけで嬉しいものなのだ。

次にこのEP盤。

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Here's that Mann vol.2 (dee gee EP 4013)

pooch mc gooch
all of me
back in your own backyard
it don't mean a thing

シェリー・マン名義のEP盤である。セプテット(6人)編成だが、なんと言っても魅力なのが、アート・ペッパーが入っていることだ
(it don't~以外の3曲)  
*写真右スミのEP赤盤は~ミルト・ジャクソンのカルテット(dee gee)これ、round midnight の演奏も音質もいい。

pooch~では「おおっ!」と叫びたくなるような切れ味鋭いソロを聴かせてくれる。all~とback~は歌入りではあるが、間奏やオブリガート(歌の合間に入れる短い合いの手)で見事なソロが聴かれる。歌伴・・・という感覚からはすっ飛んでる!(笑)
これら3曲は1951年11月のペッパー入りセッション4曲からの3曲。そうして嬉しいことに、このDee GeeのEP盤4013~1951年シカゴ録音とのことだが、音質もなかなかに良いようだ。
ペッパー入りのもう1曲は、the count on rush street という曲で、その count~は Dee Gee EP4006なるEP盤に収録。4013がvol.2と表記されているから、4006 はたぶん Here's that Mann vol.1 なるタイトルだろう。
count on rush street は急速調のインスト曲で、この曲でのペッパーのソロも他メンバーのソロも、皆ハリのある素晴らしい演奏だ。
ちなみにこれらの音源はSavoyの12インチ盤 Deep People に収録されている。
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Deep People (savoy MG 12405)のA面4,5,6,7に back~以外の3曲とcount~の4曲収録されている。
*back~は女性歌手 shelby Davisの歌伴曲なので、Singin' and Swingin'(savoy MG 12060)という女性歌手を集めたオムニバスLPに収録されている。

もうひとつ、音源・・・いや、演奏が素晴らしいEP盤を。
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Chuck Wayne Quintet(savoy xp 8119)1954年6月録音

while my lady sleeps
tasty pudding
prospecting
sidewalks of Cuba

このEP盤・・・ジャケットの淡いブルーな色合い、構図、イラストの全てが素晴らしい!好きなジャケットだ。オマケにこのEP盤・・・音源的にもとても魅力的でそれは、やはりズート・シムズのテナーが素晴らしいからである。
《このEP盤の裏解説(オジー・カデナ)によると4曲中3曲が Zoot Sims、1曲(sidewalks~)のみ Brew Moore、とされている。カデナは~"sidewalks of Cuba" which were recorded a week after the sides with BREW MOORE~とハッキリ書いている》
*1/2夜・訂正1~上記のオジー・カデナ解説部分~恥ずかしながら意味を完全に取り違えていました。 最初に、この "sidewalks of Cuba"という曲名が目に入って、次に recorded を見て、それを with Brew Moore につなげて意味を解釈してしまって「そうか、この1曲だけはブリュー・ムーアと録音されたのか」と思い込んでしまいました。しかし改めて裏解説をよく見たら・・・この "sidewalks of Cuba" の前に大事な文章が在ったのです。それをつなげると、以下のようになります。
ZOOT SIMS blows with CHUCK on "Butter Fingers", "While My Lady Sleeps", "Tasty Pudding", "Prospecting" and "Sidewalks of Cuba" which were recorded a week after the sides with BREW MOORE   
そうなんです。ズート・シムズは、これらの5曲を("Sidewalks~" を含む)チャック(ウエイン)と演奏(blows)して、それらが録音されたのはブリュー・ムーアとのセッションの1週間後だった~というのが正しい意味かと思います。
早とちりしての先入観を持ったまま、ズート・シムズとブリュー・ムーアの音色のことなど書いてしまい(後述部分)恥ずかしい限りです。
ここに謹んで訂正させていただきます。

これらの音源4曲は、12インチ盤 the Jazz Guitarist(savoy MG 12077)に4曲とも収録されている。そしてここからが問題なのだが、このLP裏解説では上記の sidewalks~はズート・シムズとされているのだ。つまりズート入り5曲(上記4曲+butter fingers)、ムーア入り3曲、あと4曲(ウエイン、ジョン・ミーガン(p)のカルテット)加えての全12曲とされているのだ。う~ん・・・。Dscn3146

さあ困った(笑)・・・どちらが正しいのだろうか? 
さっそくその sidewalks~を何度も聴いてみた。う~ん、判らない。ズート・シムズのようでもあり、ブリュー・ムーアのようでもある(笑)元々、この2人はまずソフトな音色がよく似ているし、ビートに軽やかに乗るスタイルとフレーズ展開も似ていると思う。しかし・・・気になる(笑)それで、ムーアのリーダーセッション(前述の1953年(推定)8曲)など、ムーア絡みをあれこれ聴いてみた。その上での自分なりの認識はこんな風だ。
<高音域フレーズの時~アルトっぽい艶々した音色になるのがズート・シムズ。やや掠(かす)れたような乾いた音色になるのがブリュー・ムーア>
<音色の全般として~ヴェールが掛かったようなソフトなマイルドな感じがズート・シムズ。
全体にサブトーンの度合いが強めで(シムズよりは)時に乾いた硬い感じ(シムズよりは)になるのがブリュー・ムーア>
そんな印象を持ちながら、改めてこの sidewalks~を聴いてみると・・・やっぱり判りません(笑)それでもちょいと無理やりに理屈を付けてみると・・・テナーのソロの時に高音域の繰り返しフレーズで僅かに引っ掛かるような場面があって・・・ズートはほとんどのフレーズに迷いが無いから・・・そうするとこの sidewalks~のテナーは、ブリュー・ムーアであるように僕は判断している。
*1/2夜・訂正2~すみません、完全に間違えました。sidewalks of Cuba のテナーは、12インチ盤解説の通り、ズート・シムズです(パーソネル表記の詳細については写真の上の青字「訂正1」をご覧ください)

いずれにしても、この2人がそれぞれの曲でチャック・ウエインのギターに絡んでテーマをユニゾンで吹く場面が多いのだが、ウエインのギターにフィットしたソフトなテナー音色が素晴らしい。どのトラックも味わい深いが、僕が特に好きなのが while my lady sleeps だ。この曲、なんとも慎み深いような雰囲気のあるメロディの曲で、僕が最初にこの曲を知ったのは、プレスティッジの「コルトレーン」というLPからである。1972年秋にビクターが、prestigeゴールデン50なるシリーズで1100円(当時、LP盤は大体1800円~2100円だったのこの1100円という価格は画期的に安価で、しかし良質なジャズLPだった)で発売した時の目玉がこの「コルトレーン」だった。このレコードは、だいぶ後になって、傑作バラード~<コートにすみれを>収録LPということで有名になったように記憶しているが、もうひとつのバラード曲がこの<while my lady sleeps>だったのである。コルトレーンはスローバラードで仕上げているが、こちらのウエイン/シムズは意外にも速めスイングだ。しかしそれも素晴らしい。

さて、このEP盤(XP 8119)にも vol.1という表記があり、裏解説をよく見ると続き番号の XP 8120 がvol.2 のようで、これは前述のシェリー・マン(dee gee EP 4013)と同じケースである。これは単にsavoy レーベルのやり方というだけかもしれないが、つまりこういうことではないだろうか・・・要はあるセッションが完了して、その音源がまず10インチ盤で発売されて、そのすぐ後に(あるいは同時に)2枚のEP盤に分けて発売された~というパターンだと考えられる。価格面でも10インチ、12インチよりは7インチEPの方が安かったので、好みの曲を収録している方のEP盤だけ購入する~という需要があったから、同じ音源でもいろんなフォーマットを用意したのだろう。
そうだ、考えてみれば日本でも、33回転コンパクト盤なるフォーマットがあったじゃないか。たいてい4曲入りで、要はアルバム(LP)を買うまではいかないけど、ヒットした曲を聴きたいな、という場合に、このコンパクト盤が重宝したのだ。そういえば・・・僕もサイモン&ガーファンクルの<明日に架ける橋>はコンパクト盤で我慢していたな(笑)
アメリカでEP盤というフォーマット(45回転)が盛んに発売された頃は、大体のところ、10インチ盤の同内容がEP盤2枚、12インチ盤同内容がEP盤3枚になるパターンが多いようだ。Clef や Victorレーベルの場合だと10インチ盤や12インチ1枚分をEP2枚組み、3枚組みとしたタイトルがけっこうある。あの「見開き組みセット」にしたEP盤もこれまたチャーミングではある。それらについてはまたの機会に。
う~ん、それにしても・・・レコードというものは、どうしたって楽しいものですね(笑)

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2014年1月26日 (日)

<ジャズ雑感 第36回> クリス・コナーの声

ジャズを長いこと聴いてきたが、実は・・・僕はヴォーカルものをあまり聴いてない。限られた何人かの女性歌手~アン・バートン、キャロル・スローン、アイリーン・クラール、アニタ・オディ、ジューン・クリスティ、それから、クリス・コナー、この辺りをたまに聴く・・・そんなヴォーカル初心者である。もちろん、美人歌手のゴージャスなジャケットを目にすると・・・そのオリジナル盤を欲しくなるが、人気の盤はどうしても「いい値段」になるので、僕の場合はその現実を見ると、すぐに諦める(笑) インストものに対しては、もう少しだけだが粘る(笑) そんな僕が、オリジナル盤に若干の拘りを持って、知らぬ間に初期の何枚かを集めさせられていた(笑)・・・それが、クリス・コナーなのである。

クリス・コナーと言えば・・・誰もが、バート・ゴールドブラットの傑作ジャケット~「うな垂れるコナー」と「マイク挟みコナー」・・・あれを思い出してしまうだろう。コナーのベツレヘム10インチ盤は、内容の良さと共にあのジャケットの素晴らしさもあって、やはり人気が高い。そして値段も高い(笑) ベツレヘムのコナー音源を僕は安物CDで聴いていて、「悪くないなあ・・・」」と感じていた。そしてその頃、あの10インチ盤1001番のジャケットと同じ写真のEP盤(7インチ)を見つけたのだ。

101ab_2 ≪BEP 101Aと101B~10インチ盤1001番と同内容。全8曲どれも素晴らしいが、僕は・・・what is there to say が特に好きだ≫

102ab ≪BEP 102Aと102B~10インチ盤1002番と同内容。cottage for sale がいい。アコーディオンの音色が印象的≫

首尾よく入手した、そのEP盤から流れてきた「クリス・コナーの声」・・・・これが僕には、なんとも凄かったのである。
ハスキーがかった太くて低めの声・・・張り上げている感じではないのに、凄い音圧感があって、とにかくよく「鳴って」いる(笑) 人の声を「鳴っている」というのも変な表現だが、実際、コナーのそれは・・・ググッと聴き手の心に迫ってくる・・・そんな存在感のある「声」だったのだ。

101のジャケット写真~コナーがマイクのスタンドを両手で挟み込むようにしながら、体をグッと後方に反らして(つまり、マイクから離れるようにして)、「大きな声」を出している。そういえば、クラシックの歌い手さんがマイクを使って大きな声で唄い込む時に、意図してマイクから後方に離れるような動作をしているじゃないか。あれは、もちろん「巧く見せるため」などではなく(笑)、やはり、歌い手さんがフォルテで発声した場面で、マイクを入力過多にさせないための(音を歪ませないための) 動作なのだろう。
それにしても、本当に口を大きく縦に開いている。そういえば、クリス・コナーの写真はたいてい「大きく口を開けている」場面が多い。後述する12インチ盤 6004番 の「大口」はもちろん、BCP20 も BCP56 も、かなりの「大口」である。やっぱり、大きな音声を発したい場合には、大きく口を開ける方が、より自然だろう。

1002_2  10インチ盤の2枚・・・1001番(マイク挟み)と1002番(うな垂れ)。僕は先にEP盤4枚を揃えたので、まあ音源(全16曲)は聴ける・・・ということで、10インチ盤は後回しとなっていた。それで今回「写真でも」と思ったのだが、両方持っている、と思い込んでいた10インチ盤は・・・実は、1002番しか持っていなかった(笑)
≪右写真~10インチの1002盤。「うな垂れ」もダークな色調に独特な雰囲気がある≫   

Bethlehem でのクリス・コナー作品~まず2枚の10インチ盤が1954年に発売され、その後、3枚の12インチ盤~BCP20、6004が1955年、BCP56が1957年の発売らしい。(オムニバスの6006番 も加えれば4枚だが、コナーの4曲は既発音源)
10インチ盤の1001番は、伴奏がピアノのエリス・ラーキンスのトリオで8曲、1002番の伴奏は、ヴィニー・バークのクインテットで8曲、この全16曲が、12インチ盤化の際に分散されてしまったので、12インチ盤にアルバムとしての統一感があるとは言い難い。

6004番「lullabys」には~1001番から5曲、1002番から6曲、そして別セッション(サイ・オリヴァー楽団)から3曲の全14曲収録。

ChrisBCP56番「Chris」には~1001番から残りの3曲、1002番から残りの2曲、そしてサイ・オリヴァー楽団から3曲、そして後の4曲がラルフ・シャロンのグループ(K&JJを含む)の全12曲収録。



BCP20番~全てラルフ・シャロンのグループで、全10曲収録。
A面1曲目の blame it on my youth が素晴らしい!This_is_2

さて、クリス・コナーを話題としたからには、ここでもう一度、整理しておきたいことがある。もちろん、6004盤~sings lullabys of birdland のジャケットのこと・・・「大口」と「半口」である(笑)前々回の「スタン・リーヴィー」記事のリストやコメントにおいて、すでに「大口」ジャケットが先の発売で、「半口」が後の発売らしい・・・というところまでは述べた。
その根拠は、「大口」ジャケットと「半口」ジャケットにおける表記の違い方にある。以下~下写真6点はdenpouさん提供。

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≪左写真~「大口」の裏、右写真~「半口」の裏≫

1.裏ジャケット「レコード宣伝」番号の表記~
  「大口」では、BCP 6001番~6007番まで
          BCP ~64番まで。
   「半口」では BCP 6001番~6032番まで
          BCP ~79番まで

2.裏ジャケット アドレス表記の違い~
「大口」は*2種存在。
<左NY、右CALIF><左NY、右NY>
「小口」は <左NY、右NY>

上記の状況を常識的に考えれば、あるレコードに宣伝として載せるレコードのタイトルは、すでに発売されているタイトルのはずだから(もちろん、近日中に発売される予定のレコードが載る場合もあるようだが)、裏ジャケットに掲載された宣伝レコードの番号が「若い」方が、やはり発売が「先」と言えるだろう。
この6004番2種の場合は~denpouさんが指摘してくれたように、6032番まで載せている「小口」に対し、6007番までしか載ってない「大口」の方が「先」であることは、まず間違いないであろう。Bcp6004_6 Bcp6004_7
≪「大口」~<左NY、右NY>のジャケットと、「長方形ロゴ」のセンターラベル≫
Bcp6004_8 Bcp6004_9
≪「半口」~<左NY、右NY>のジャケットと、「長方形ロゴ」のセンターラベル。denpouさんが発見した「長方形ロゴ」左端の「十字マーク」。この「十字マーク」が「大口」センターラベルには無い。そして「ロゴ」自体のデザインも両者で微妙に異なる。
「半口」ラベルの方は、BETHLEHEM の下の「HIGH FIDELITY」文字が銀色ラインに囲まれているが、「大口」ラベルの方は「HIGH FIDELITY」の下に銀色ラインがない。
そして、中心穴(チュウシンケツ・・・という呼び名はないかと思うが:笑)の左右の「BCP-6004」と「Side A」文字が、両者で左右逆になっている。

そしてもうひとつ・・・先ほど、*印を付けて「大口」ジャケットにも2種が存在と書いた。実は最近、denpouさんがYoさん宅におじゃました際、Yoさん手持ちの6004番:クリス・コナーが、「大口」であること、そして・・・<左NY、右CALIF><センターラベルがリーフ>であることを「発見」してくれたのだ。それまでは、denpouさん手持ち「大口」「小口」が、ともに<左NY、右NY>だったので、アドレス表記違いによる発売時期の先・後の判断にもうひとつ、疑問が残っていたのである。
P1110448 P1110449 P1110450 Yoさんの「大口」は、アドレス<左NY、右CALIF>に加え、盤のセンターラベルも<リーフ>であった・・・これでもう間違いない!というわけで・・・クリス・コナー『sings lullabys of birdland』には、ジャケットだけでも、「大口」に2種、「小口」に1種~計3種の存在が確認できたわけである。

≪追記≫(2/3) Yoさんコメント(1/27付)で、<左NY、右CALIF>ジャケットで中身の盤が「十字マーク・長方形ロゴ」のものがあったとのこと。denpouさん「大口」のセンターラベル(長方形ロゴ)には無かった「十字マーク」が付いている。チャランさん「大口」の「十字マーク・長方ゴ」とも異なる。

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上写真6点はYoさん提供~special thanks to Mr.Yoさん!

≪追記≫(1/27) チャランさんからの情報によると~
チャランさん手持ちの「大口」センターラベル(下写真2点)は、「十字マーク・長方形ロゴ」「フラットかなあ?」とのこと(denpouさんの「大口」は「長方型ロゴ」) チャランさんの仔細なチェックにより、もう1点の差異が見つかった~それはこのLPの目玉曲(lullaby of birdland)の表記下カッコ内の作曲者名クレジットだ。チャランさん手持ちのセンターラベルのものだけ、(Forster - Shearing)となっているのだ。他3点は全て(Shearing)である。これは・・・?

 Img_0852 Cha
ついでに自分の手持ち「半口」を見たら、なんと、僕:bassclefの「半口」センターラベルは十字マークなしの「長方形ロゴ」だったのだ。(denpouさんの「半口」は、「十字マーク・長方形ロゴ」)
う~ん・・・これはどうしたことか?(笑) これでは、ジャケットは、「大口」2種と「半口」1種~の3種。そして「盤」(センターラベルの仕様)は、「大口」2種、「半口」2種の計4種が存在することになる。いや・・・下記のYoさん<センターラベルがリーフ>も入れれば、5種となる。これは・・・まだまだ追跡調査が必要だぞ(笑)

≪追記≫2/2
このクリス・コナーの6004番『sings lullabys of Birdland』~何種類もの版が見つかったのだが、それでは発売された型としては、いったい幾つの種類があるのか? ちょっと整理してみたい。
≪夢レコ≫前々回の「スタン・リーヴィー」からのジャケット裏の≪アドレス表記の違い≫考察により、発売の順番の大筋としては~
<センターNY>⇒<左NY,右CALIF>⇒<左NY、右NY>で間違いないかと思う。
その「ジャケットありき」を基本に考えてみると、発売順は以下のようになる。

1.「大口」<左NY,右CALIF>リーフ
2.「大口」<左NY,右CALIF>長方形ロゴ・十字マーク
3.「大口」<左NY,右NY>長方形ロゴ・十字マーク/Forster表記
4.「大口」<左NY,右NY>長方形ロゴ
5.「半口」<左NY,右NY>長方形ロゴ・十字マーク
6.「半口」<左NY,右NY>長方形ロゴ

*「長方形ロゴ」の十字マーク有りと無し・・・これについての新旧は、判りません。(また「長方形ロゴ」ラベルだけでの「十字マークの有無」の分布状況を調べる必要がある:笑) ただ・・・アドレス<左NY,右CALIF>ジャケットの盤に「十字マーク」が在ったことから見ると・・・「十字マーク有り」が先なのかな?と考えられます。

チャランさんのコメントに≪YoさんのはCALIFで制作、私とdenpouさんのはNYで制作されたのだと思います≫~とありました。
僕も『スタン・リーヴィー(BCP37)の同一タイトル2種発見の時点では、そのように「アドレス表記」と「製作(プレス)」を直結して考えていたのですが、どうやらそう簡単にはいかないのかな・・・と見方が変化してきました。
その「ジャケットのアドレス」と「センターラベル仕様」について、以下・・・僕の妄想です(笑)

まず、<センターNY>アドレスの時代には、まだ西海岸事務所がなかった~ということから、全て東海岸製作(プレス)ということかなと思います。問題は、西海岸事務所設立以降の「ジャケット製作の状況」と「プレス工場の状況」の関連です。つまり・・・ジャケットは、<センターNY>の次に、<左NY,右CALIF>ジャケットを、次に<左NY、右NY>を、それぞれ、1種類だけを製作していった(仮にそのジャケットが東海岸の製作だろうと西海岸製作だろうと、種類は1種類)ではないかなと・・・考えるのが自然かと思います。つまり・・・ジャケット表記とプレスは連動していない場合もある~という考えです。

「スタン・リーヴィー」記事で示したように、BCP37(Stan Levey)という一つのタイトルにおいて、<センターNY>と<左NY、右CALIF>の異なる2種が存在していたことから、それぞれのレコード(ジャケットと盤)が、東海岸と西海岸の2箇所で「製作されたのでは」と推測したわけですが、このBCP37以外には、その種のサンプルがあまり見つからない。そしてここに絶好のサンプルとして、クリス・コナーの6004番(sings lullbys of Birdland)が出現したわけです(笑) それについては上記のように、「発売された型」として、今のところ6種の版があったわけですが、それでは、どうして、あのクリス・コナー6004番は、6種(6回)も発売されたのか?・・・以下、また妄想です(笑)会社の運営という観点からみても、よほど「いっぱい売れた/まだまだ売れそう」というタイトルしか、追加プレス(発売)はされないはずである。あの頃、一般的なジャズのレコードというものが、全米中でどれくらい売れたものなのか・・・・判りませんが、仮に3000枚(初回)プレスとしたら、追加プレスは、せいぜい500~1000枚くらいではないでしょうか?  そうした「追加プレス」を決定した場合でも、市場での販売状況を見ながら、こまめに少しづつ、少しづつ(笑)という感じだったのでは・・・。逆に言えば・・・ほとんどのタイトルは、「初回プレス」だけだと考えられるわけです。
そうして初回プレスだけの場合で、わざわざ「東海岸プレス」と「西海岸プレス」と分けて製作するのかな・・・?(却ってコストが高く付く) というのが僕の疑問点なのです。
だから・・・西海岸事務所設立直後の一時期、BCP37やBCP6004など、一部のタイトルについては、両海岸で製作(プレス)したが、それ以降は、ほとんどのタイトルは「一箇所のプレス」だったのではないか。(それが東か西かは判らない) だから・・・(一箇所で一括製作してきたであろう)ジャケットのアドレスが<左NY、右CALIF>であっても、それはベツレヘム社としての規模をアピールする意味合いとしてのCALIF表記であって、だからそれがそのまま「西海岸製作(プレス)」とは限らない~と思う。
そして、その西海岸事務所を閉鎖した後の時期になると・・・誠実なるベツレヘム社は(笑)、ジャケット裏右下隅の[Hollywood, CALIF]表記を消して、そうすると・・・空いてしまったスペースがデザイン上、かっこ悪いというので(笑)・・・そこに[New York, NY] なる表記を入れた。それが・・・<左NY,右NY>になった・・・というストーリーです


*ベツレヘム・レーベルの変遷を判りにくくしている大きな要素として、2つのシリーズが複合・並行して発売されたことがあるかと思う。 そこで、自分の手持ちリストの番号並びとアドレス表記、に加えて「センターラベルがリーフ」情報も加えてみた。改めて、その番号並びとリーフの分布を俯瞰してみると、改めて確認できたことがある。

10インチ番時代が全て<センターNY>(1650 BROADWAY, NEW YORK 19表記を含む)そして<リーフラベル>だったことから、アドレスの変遷としては~
<センターNY>⇒<左NY、右CALIF>⇒<左NY、右NY>⇒<左NY、右OHIO>⇒<OHIO>の順。
そして盤センターラベルの変遷は~
<リーフ>⇒<長方形ロゴ>(長方形ロゴにも2種類あり~クリス・コナーの「大口」「小口」のラベル写真を参照のこと)の順で、間違いないと思う。
そして大筋として、以下のことが言えるかと思う。

ジャケット<センターNY>のものは、盤も<リーフラベル>である。
そして、BCP26番辺りから、ジャケットは<左NY、右CALIF>も現われるが、センターラベルは<リーフラベル>のものも多い。同様に6000番代の初期:6010番辺りまでのものにも、ジャケ<左NY、右CALIF>の<リーフラベル>が散見される。
おそらく・・・ジャケットは新規に制作された<左NY、右CALIF>を使っていったのだが、センターラベルは<リーフ>デザインの在庫が残っていてしばらくはそれを使っていた~そんな感じではないだろうか。
難しいのは、カタログの番号順と、<アドレス表記>や<センターラベル>の分布状況に「ズレ」があることだ DeluxeシリーズBCP1番~92番代と6000番代が並行して発売されていった状況で、まずは<センターNY>から<左NY、右CALF>へのアドレス表記移行(あるいは2種ジャケットの並行発売)が、いつ頃だったのか?・・・これがポイントだと思う。
以下、私見だが~
10インチ盤に続いて発売されてきた、Deluxeシリーズ:BCP1~92番の初期タイトルが、ほぼ<センターNY>であること。
BCP37番辺りから<左NY、右CALF>が現われていること。
その<左NY、右CALF>が6001番からは連続していること。
以上の点から、移行期は「BCP37番辺り」と推測している。
(実際に・・・BCP37番の『スタン・リーヴィー』には、<センターNY>と<左NY、CALIF>の2種が存在しているわけだから)

<スタン・リーヴィー>にも載せた「ベツレヘム12インチ盤手持ちリスト」をここに再掲するが、サンプル例を追加するとともに、より「版」の新・旧を探るために、<アドレス情報>の他にも以下の情報も追加した。

≪センターラベルについて~「リーフ」である場合は「リーフ」と表記した。この「リーフ」・・・同じ赤色のセンターラベルをlaurel(月桂樹)と呼ぶ場合もある。なお、表記ない場合のセンターラベルは、全て「長方形ロゴ」となる。
(長方形ロゴには「十字マーク」の有り/無しの2種類が存在するが、このリストではその有・無は表記しない)≫

≪盤が「フラット」である場合は、「フラット」と表記した。表記ない場合は、全てGG(グルーヴ・ガード)となる≫

◎印はYoさん、*印はdenpouさん、チャ印はチャランさん、無印がbassclefの手持ちから確認したもの。(このリストは、情報あれば、随時、追加記入していきます)

Bethlehem Deluxe series (12 inch LP)
 3  <左NY、右CALIF>リーフ フラット
 6  <左NY、右CALIF>
*7 <左NY、右NY>
  8  <左NY、右CALIF>
 9  <左NY、右CALIF>
  13 <左NY、右CALIF> (Ralph Sharon)
*13<センターNY>  リーフ フラット(K+JJ)
 14<センターNY 19> リーフ フラット
 15<センターNY 19> リーフ フラット
 17<センターNY>   リーフ フラット
 18<センターNY>   リーフ フラット
*19<センターNY>   リーフ フラット
20<センターNY>     リーフ フラット
*21<センターNY>  リーフ
  22<センターNY>   リーフ フラット
 24<センターNY>   リーフ フラット
◎25<センターNY>     リーフ  フラット 
 26<左NY、右CALIF>リーフ フラット
 27<センターNY>   リーフ フラット
 29<センターNY>   リーフ フラット
 30<センターNY>     リーフ フラット
 31<左NY、右CALIF>リーフ
 33<左NY、右CALIF>リーフ フラット
 34<センターNY>
*35<左NY、右CALIF> フラット
37<センターNY>リーフ フラット と 
   <左NY、右CALIF>リーフ の2種あり(Stan Levey)
  38<左NY、右CALIF>
 39<左NY、右CALIF>
 40<左NY、右CALIF> リーフ
 41<センターNY>   リーフ フラット
*42<左NY、右CALIF>リーフ フラット
*43<左NY、右CALIF>リーフ フラット
44<左NY、右CALIF>  リーフ フラット
 46<左NY、右CALIF>リーフ フラット
*47<左NY、右CALIF>リーフ フラット
  48<左NY、右CALIF>リーフ フラット
 50<左NY、右CALIF>リーフ
*52<左NY、右CALIF>リーフ
*53<左NY、右CALIF>リーフ フラット
*54<左NY、右CALIF>リーフ フラット
  55<左NY、右CALIF>リーフ フラット
 56<左NY、右CALIF>リーフ フラット
 58<左NY、右CALIF>リーフ フラット
*60<左NY、右CALIF>リーフ フラット
 61<左NY、右CALIF>リーフ フラット
*64<左NY、右CALIF>リーフ フラット
66<左NY、右CALIF>
*68<左NY、右CALIF>
◎69<左NY、右CALIF>
 71<左NY、右CALIF>
◎77<左NY、右NY>
 80<左NY、右NY>
*82<左NY、右NY>
*83<左NY、右NY>リーフ
*84<左NY、右NY>リーフ
*85<左NY、右NY>
*87<左NY、右NY>

Bethlehem 5000 series (12 inch LP)
5002 <左NY、右NY>
5006 <左NY、右NY>(Russ Garcia/Sounds in the night)

Bethlehem 6000 series (12 inch LP)
 6001<左NY、右CALIF>
◎6004<左NY、右CALIF> 「大口」リーフ(Yoさん) *写真
◎6004<左NY、右CALIF> 「大口」 十字ロゴ   
チャ6004<左NY、右NY> 「大口」(チャランさん) *写真 十字ロゴ 
[lullaby of birdland]作曲者が[Forster-Shearing]表記
*6004<左NY、右NY> 「大口」(denpouさん) *写真
*6004<左NY、右NY>  「半口」(denpouさん) 十字ロゴ*写真
  6004<左NY、右NY>   「半口」
◎6005<左NY、右CALIF>リーフ
 6006<左NY、右CALIF>
 6007<左NY、右CALIF>リーフ フラット 
 6008<左NY、右CALIF>リーフ
◎6010<左NY 、右CALIF>リーフ 
 6011<左NY、右CALIF>
*6014<左NY、右CALIF>
 6015<左NY、右CALIF>
 6016<左NY、右CALIF>
*6017<左NY、右CALIF>
*6018<左NY、右CALIF>
 6020<左NY、右NY>
◎6021<左NY、右NY>
 6025<左NY、右NY>
 6029<左NY、右NY>
 6030<左NY、右NY>
*6038<左NY、右NY>
◎6045<左NY、右NY>
 6049<左NY、右CALIF>
*6051<左NY、右CALIF>
*6055<左NY、右Ohio>
◎6061<左NY、右Ohio>
◎6064<OHIO>
*6063<OHIO>
 6069<OHIO>

EXLP-1(3LP 箱入り:アドレス表記なし)
EXLP-2<左NY、右CALIF>

そして・・・まだ大きな「謎」が残っている。それは、なぜ6000番代より発売の古いはずの、BCP1~92番Deluxeシリーズの中の若い番号~僕の手持ち盤では、3・6・8・9・13番が、なぜ<左NY、右CALIF>なのか? アドレス表記の変遷は、<センターNY>⇒<左NY、右CALIF>⇒<左NY、右NY>⇒<左NY、右OHIO>⇒<OHIO>のはずである。
ここがよく判らない。いや、もちろんこれらが、再発としての<左NY、右CALIF>であれば問題ない。つまり・・・これらの番号タイトルの<センターNY>1stの存在が確認できれば、<左NY、右CALIF>は後年発売された2ndである~と、誠にすっきりとした説明が付くのだから。
ところが、これが見つからない。ネットでいろいろチェックしてみても、今のところは見つかっていないのだ。どなたかお持ちであれば、ぜひ情報提供を(笑)
この謎については・・・例えば、こういうのはどうだろうか?
Deluxeシリーズが発売され始めた時、何らかの理由で、1~9番辺りが「欠番」として使われなかった。そして、Deluxeシリーズの30番辺りから、6000番代が並行して発売され始めた頃に~つまり<左NY、右CALIF>ジャケットに移行し始めた頃~発売されたいくつかのタイトルが、その「空き番号」であるBCP1~9番に充てがわれていった~というのが、今の僕の妄想なのだが(笑) 

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2009年3月22日 (日)

<思いレコ 第16回>クリフォード・ブラウン with ストリングス

クリフォード・ブラウンの音色そのものを味わいたい~

002_3 休みの日に好きなレコードを聴く・・・僕にとっての幸せというのは、ほとんどそんなことだ(笑) そうして「好きなレコード」はいくらでもある。聴きたいな・・・と思うレコードは、その日の気分によって変わってくる。
今日は朝から雨模様で薄暗い。僕の気分もなにやら仄かに暗いようでもある。そんな時・・・僕はなぜかWith Stringsを取り出すのだ。
クリフォード・ブラウンのトランペットのあの「鳴り」が流れてきた瞬間、「ああ・・・いいなあ」
その音色に触れるだけで・・・実際、沈んだ気持ちが癒されていくのである。
あのちょっと軽めにも聞こえるパリッとしたペットの鳴り・・・本当にスカッと抜けたようにキレイに鳴っている。そのトランペットの音色が気持ちいいのである。これは・・・理屈じゃない。それは僕にはほとんど条件反射だ(笑) そうじゃない人もいるかもしれないが・・・レコード盤から出てきた「音」に幸せを感じてしまう人間がいる~ということも真実なのだ(笑)

A面が終わると・・・僕は迷うことなくレコードをひっくり返す。そうしてB面も聴き通す。同じような曲が続くのだが、不思議とあっという間に40分が過ぎてしまう。その間、思っていることは・・・「ああ、いいなあ」だけなのである(笑)いい音楽、いいレコードというのはそうしたものだろう。今日の僕にとってはそれが、With Stringsだったわけである。

007このクリフォード・ブラウンの作品、僕は長いこと日本フォノグラムの廉価版で聴いてきた。もちろん最初から嫌いではなかったし、よく言われるような「アレンジが古臭い」とかもそれほど気にならなかった。だがしかし、折りにふれ聴きたい~と思うほど好きなわけでもなかった。

005_3そんな「ウイズ・ストリングス」に特別な愛着を覚えるようになったのは・・・ちょっと前に入手した米EP盤~その中のブルー・ムーンなど聴いた時だった。クリフォード・ブラウンが吹くトランペットの音色の張り具合、輝き、そして何よりもその音の抜け方みたいなものが、国内盤とはだいぶ違うように感じたのだ。006

《EP盤はたいてい4曲収録なので、この2種で計8曲。12インチ盤には12曲収録だから、あともう1種、EP盤があるはずで・・・やっぱりそれも欲しいな(笑)
7インチ盤~柄は小さくても「ブルー・バック」なのが、ちょっとうれしい(笑)》

たぶん僕は、EP盤で聴いた「音色」にそれまでには感じたことのない「ブラウンという人の存在感」みたいなものを感じ取ったのだろう。ただ・・・そのEP盤はオリジナル盤と聴き比べると、ややハイ上がりでふくゆかさに欠けており、さらに2枚ともカッティングレベルが低いようだった。EP盤好きの僕は少々がっかりしたものだが、「With Strings」への愛着はますます湧いてくるのだった。

004_2そうしてちょっと前に12インチ盤「With Strings」を入手した(一番上の写真参照) 残念ながら、これはemarcyの再発で、センターラベルがドラマーの付いてないemarcyの2ndか3rdラベルだ。もちろん裏ジャケットもブルーバックではない。
追記《センターラベルは、Mercuryです。ジャケ表記はemarcyなのに:笑》003

だがこの再発emarcy盤の音・・・これが意外によかったのだ。
鮮度感はあったがややハイ上がりのEP盤と比べると、このemarcy盤では中音域が厚くなったというか・・・トランペットの音色がふくゆかになり、音全体に艶やかさが増してきたのだ。そうしてクリフォード・ブラウンがその艶やかで瑞々しい音色で、例えばcan't help lovin' that manのメロディをじわじわと吹き込むと・・・比喩ではなく、その音が僕の体に沁み込んでくるのだった。

このWith Strings~ブラウンはいわゆるアドリブをほとんど吹かない。どの曲もスローテンポのバラード調なのだが、ブラウンはそんないい曲のメロディを、慈(いつく)しむように・・・丁寧に吹く。ブラウンは本当にゆったりと吹く。パラパラとフレーズを細かく刻んだりはせず、自分自身が、ゆったり伸ばしたロングトーンの響きを楽しんでいるようにも思えてくる。トランペットという楽器の本当に美しい響きをひっそりと味わうだけでいい・・・そんな音楽なのかもしれない。
そうして、ブラウンが丁寧に吹くメロディを味わい尽くすためには・・・その音色全体のニュアンスがとても大事な要素になるのだと思う。

~追記《僕が気に入っているクリフォードの吹き方がある。この男、キレイにプワ~ッと伸ばしたその音の音圧と音量を保ったまま・・・どんな仕掛けか、その音を「むわわ~ん」と膨らましたような感じにするのだ。「膨らます」と言っても、音が拡散してしまうわけではなく、響きはあくまでクリアなままで、その音の輪郭だけを微妙に変化させる・・・シャボン玉を柔らかく膨らましているような・・・そんな感じかな。そんな風に聞こえる場面が確かにある。そしてそのクリフォードの「決め技」に・・・僕は参ってしまうのだ(笑)》

この頃の僕はなんとなく疲れ気味で、そのためか、このレコードを聴きたい・・・と思うことも多い。そうして、聴くたびに・・・気持ちよくなる(笑)
この「クリフォード・ブラウンのウイズ・ストリングス」は・・・僕にとっては、本当に大事な1枚である。
もちろん、1stのオリジナル盤はもっと凄いだろうな・・・と思わないわけでもないが、今の僕にはこれで充分だ。
当分は・・・1stオリジナルを耳にしない方がいいのかもしれない(笑)

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2007年11月25日 (日)

<ジャズ雑感 第22回>フリップ・フィリップスのこと(その2)

フィリップスのいろんなセッションを聴いてみた。

さて、フリップ・フィリップスの2回目だが・・・これが困った(笑)フィリップスのテナーの独特な味わいについては<ジャズ雑感 第20回>フリップ・フィリップスのこと(その1)で、あらかた書いてしまった。そうそう同じようなことばかりは書けない(笑)
それでも彼の古い音源をいろいろ聴いていると、やはりキラリと光る演奏がいくつか見つかるし、まだまだ紹介したいレコードも出てきてしまう。
そんなわけで、今回はフリップ・フィリップスの10インチ盤とEP盤をを中心に話しをすすめてみたい。

僕はフィリップス好きではあるが、もちろん彼のレコード全てを持っているわけではない。まずClef期の12インチ盤~Swinging With Flip Phillips And His Orchestra(ダンスしている女性のスカートがフワ~ッとなったイラストのジャケット)を持ってない。それから、”Flip”と ”The Flip Phillips-Buddy Rich Trio”(オムニバス盤Tenor Saxesに2曲が収録されていたセッションの元LP)も未入手だ。10インチ盤の残り1枚~Collates #1(ストーン・マーチンとしては、珍しく「写真」のクルマにフィリップスが乗っているジャケット)・・・これもなかなか手に入らない。
なんだ・・・これじゃあ、ほとんど持ってないじゃないか(笑) 

僕が持っているのは・・・いくつかの10インチ盤とEP盤、それから<フリップ・フィリップスのこと(その1)>で紹介した12インチ盤~Flip Phillips Quintet(MGC-637)と、もう1枚、「大仏ジャケ」のFlip Wails(MGC-691)。
あとは、JATPの諸作くらいである。
まあでも、いろいろと調べてみると・・・Flip Phillips Quintet以外の12インチ盤は、いろんなセッションからのテイクからのコンピレイションのようでもあり、僕の手持ちの10インチ盤・EP盤の収録曲ともけっこう重なっているのだ。だから、全部ではないにしても、だいたいのセッションの音源を耳にはしていることになる。
こんな風に、あるセッションの曲が複数の12インチ盤に散らばってしまった場合、「元セッションの4曲」を1枚にまとめたEP盤というのは、なかなか重宝なもので、そんなEP盤音源(この記事の最後の方で紹介)のことも含めていくと、今回は、かなりディスコグラフィ的な内容になってしまうかもしれない。もともと僕は、データ・資料の整理は苦手なので、ゴチャゴチャと判りにくい展開になりそうではある(笑)
<なお、データについてはshaolinさんも関わっておられるJazz Discography Projectを参考にさせていただきました。
special thanks to "shaolin"さん&"Jazz Discography Project"さん>

さて、彼の初期のレコードを聴いてみると・・・(時代的には当然のことなのだが)けっこう「スイングっぽい」演奏が多いように思う。
例えば、「大仏ジャケ」(67camperさん命名)12インチ盤:Flip WailsのA面1~4曲目。
cheek to cheek
Funky Blues 
I've Got My Love To Keep Me Warm 
Indiana
Dscn1747_4 この4曲は、Bill Harris (tb) Flip Phillips (ts) Dick Hyman (p) Gene Ramey (b) Jo Jones (d) による1951年3月の演奏なのだが、サイドメンの演奏も、ややセカセカした感じのノリに聴こえる。これらの曲でもフィリップスはアドリブの端々(はしばし)に、いいアイディアのフレーズを出してくるが、それは(僕にとっては)わりと普通のスイング~バップの演奏なのだ。こんな風に「スイング調」の曲が多いのは・・・「JATPで大人気のフリップ・フィリップス」というイメージからくる販売戦略上の要請があったのかもしれないし、やはり、レコード創りの上でも「スローもの」ばかりでは、うんと地味になってしまうためだろう。それからフィリップスが大活躍するJATPでの諸作~イリノイ・ジャケーとのブロウ合戦:perdid 1947年~なども悪いわけではないが、聴衆ウケを狙ったような(ブロウ合戦自体がそういうものなんだろうが)感じもあり、長丁場の演奏だとちょっと厭きる。それにフィリップスという人はブロウ合戦の相手にペースに合わせてしまうのか、音色まで「グロウル」するような、いつもと違った感じになったりすることもあるようだ。
(グロウル:growlというのはテナーやアルトなどの管楽器で「歪んだような濁ったような音色」(テキサス派のテナーがよくやりますね:笑)で吹くこと。元々は(動物が)うなったりする声」とか「(雷などが)ゴロゴロと鳴る」というような意味らしい)004
《写真はJATP-vol.8(EP2枚組)4面の内、3面をperdid part1~part3が占める。残りの1面は、bell boy blues》

そんな具合に、わりとお人よしの感じがするフィリップスではあるが、「スローもの」においては、これが一変・・・全く独自の個性を発揮するのだ。そうして僕がフィリップスを聴いていて「いいなあ・・・」と思うのは、やはり「スローもの」なのだ。スローテンポの曲というと、スタンダード曲のバラードが主になるのだが、これが・・・案外に少ない。そして、曲数は少くても、彼のレコードには必ず1曲か2曲はそんな「スローバラード」が入っていて、だから、それらが余計に「いい味わい」になってしまうのだ(笑)
スロー・バラードでのフィリップスは、ゆったりとした太い音色を長く伸ばし・・・あるいは音程を大きく上下するような独特のフレーズを駆使して~「パ・パ~、パ・パ~」という風に高い音から低い音へ飛ぶ。「パ」が高い方の音(半拍)で、「パパ~」が低い方の音(1拍半)にするフレーズである~その曲のメロディを悠々と、そして魅力的に歌い上げていくのだ。
そうしてたぶん・・・フィリップス自身も、そんな自分の持ち味を、うんと早くから自覚していたのだと思う。002 彼のごく初期の10インチ盤には、すでに持ち味を発揮したと思われる曲がある。

《写真は、Tenor Stylings of Joe Flip Phillips(brunswick) 全8曲収録。1944年10月、12月、1945年の録音》

a melody from the sky・・・これなど実にメロディックないい曲だと思う。ゆったりしたテンポで彼が淡々と吹くメロディからは・・・なんとはなしにアンニュイな雰囲気~けだるいような感じ~が漂ってくる。あの「屋上の日陰」のイメージにつながる感覚と言ってもいいだろう。
10インチ盤:Tenor Sax Stylings(brunswick:BL-58032)の裏解説はボブ・シールだが、この1曲については以下のように絶賛している。「A Melody From The Sky という曲は、広く賞賛に値するメロディだ。ここには素晴らしい解釈があり、忘れられなくなるような演奏だ」
そして、sweet and lovely がまさにスロー・バラードである。メロディを少しづつ崩しながら吹くのだが、その崩し方に、もうフィリップスの個性が溢れている。そしてこのバラード解釈も1944年としては、なにかしら新しい感じを受ける。いや・・・「新しい」というより、フィリップスという人の独特の唄い口がそれだけ個性的・・・ということだろう。
このbrunswickの10インチ盤・・・音源的には、たぶんフリップ・フィリップスの初リーダー・アルバムだと思うが、聴くたびに彼の「個性」を改めて感じさせてくれる、なかなか素晴らしいレコードだと思う。

《これも好きな1枚だ。Collates#2(MGC-133)》Dscn1745_5

この10インチ盤に収録のB面の3曲は1949年のセッションだが、どれも素晴らしい。そして、このジャケットもなかなかユニークだ。ヒラメキのストーン・マーチンとしては、この「お化け」(NOTさん命名)・・・楽器を吹く”精”のようなイメージだったかもしれない。
Flip Phillips (ts) Mickey Crane (p) Ray Brown (b) Jo Jones (d) というカルテット。
Drowsy 
Vortex 
But Beautiful
(このセッションでは、もう1曲~Milanoという曲も吹き込んでいるが、なぜかこのMilanoは、Collates#2には入っておらず、12インチ盤:Flipに収録されている。う~ん・・・それじゃあ、やっぱりそのFlip(MGV 8077)も入手するしかないようだ(笑))Dscn1746
but beatiful~フィリップスという人は、メロディをす~っと吹くだけで、なんとも言えない「情感」を感じさせてくれる。たぶん彼は、こんな風にメロディがキレイで「儚さ」(はかなさ)みたいなものを感じさせる曲を、心底、好きなんだろう。このバラードなどは、とても1949年ものとは思えないほど、モダンな感覚の演奏だと思う。
drowsy~これはバラードというよりブルージーな雰囲気の曲なのだが、テンポはうんとスローでもって、テナーの音色がゆったりと溢れ出て・・・実に素晴らしい出来だ。バラードもいいが、こういう風に「もたれる感じ」の曲調は、フィリップスにぴったりだと思う。この「音色」を聴いているだけで気分がいい(笑)

さて、もう1枚。前回のフリップ・フィリップス(その1)では、「気持ちのいい屋上の日陰」としてEP盤のジャケットを紹介したが、その後、やっとのことで、10インチ盤を入手した。

《Jumping Moods by Flip Phillips(MGC-158)》003

どちらかというと、A面の4曲が気に入っている。
If I Had You 
Cottontail 
Blues For The Midgets 
What Is This Thing Called Love?
<Charlie Shavers (tp) Flip Phillips (ts) Oscar Peterson (p) Barney Kessel (g) Ray Brown (b) Alvin Stoller(d)

この4曲は、録音が1952年3月:ロス録音とのことなので、それまでの音源よりだいぶいい音になっているようだ。
if I had you~これは・・・すごくモダンな感覚である。まずギターのソロ演奏・・・このケッセルが巧い。柔らかくていい感じのギターだ。あれ?・・・フィリップスがなかなか吹き始めないぞ。テーマに入ってもギターのみだ・・・ようやくサビから、フィリップスが吹き始める。それもマイナー調のサビのメロディを崩しながら・・・この崩し方は、まるでゲッツのようである。そういえば、この if I had you は、ゲッツとジミー・レイニーのサンドと(特にStan Getz Plays:1952年12月録音)よく似ているようにも感じる。

実を言うと・・・だいぶ前から「フィリップスという人は、レスター・ヤングとスタン・ゲッツの中間くらいの存在(個性の持ち主)」と考えていた。だからこのif I had youを聴いた時も「やはり、ゲッツはフィリップスに影響されているぞ」と思ったものだ。このフィリップスの4曲は1952年3月録音なので、12月までに「レコード」になって発売されている可能性は充分にある。
このif I had you・・・何が「新しい」のか?まず、ギターだけのイントロからメロディ、それがサビまで続く。サビからようやくサックスが入ってくるのだが、そんな構成自体も新鮮で、しかもわざとメロディをはっきりと出さずに、崩しながら吹いていく・・・この感じ・・・僕は、どうもゲッツが「この感じ」を、レイニー入りのバンドのサウンドの参考にしたような・・・そんなことを夢想してしまうのだ(笑)
ただ、ゲッツも早くから独自の個性を発揮し始めており、例えば、同じレイニー入りのAt Storyville(roost)は、1951年10月に録音されており、このフィリップスのセッション(1952年)より早いのだ。ただ、あのStoryvilleには、急速調の曲が多く、バラードはほとんどなかったように記憶している(少なくともレコード収録上は)だから・・・テナー奏者のキャリアとしては、おそらく先輩のフィリップスのセンスのいい軽やかなフレーズ廻しに、ゲッツが影響されたとしても、不思議ではないだろう。あるいは・・・もともと似通った資質のある2人が(僕にはそう思える)この時期においては、相互に影響しあっていたのかもしれない。なお、singing in the rainなどB面の4曲は、9重奏団(5管編成+p,g,b,ds)で、僕の思うフィリップスの良さは、あまり出てないように思う。《その4曲は、上写真の右側のEP盤:EP-210にも収録》

もう1枚の10インチ盤にも触れておこう。Dscn1748_3
Flip Phillips(MGC-105)だ。ジャケットにはどこにもQuartetと表記されてないが、後の12インチ盤:Flip Phillips Quintet(MGC-637)との比較上、Flip Phillips Quartetと呼ばれているようだ。Dscn1751

Flip Phillips (ts) Hank Jones (p) Ray Brown (b) Buddy Rich (d) 1950年の録音。
Lover 
Don't Take Your Love From Me 
Flip's Boogie 
Feelin' The Blues 
Lover Come Back To Me 
Blue Room 

このレコード、ジャケットは素晴らしい(笑)カーネギー・ホールみたいな会場でテナーを吹く男・・・なぜだか裸足だ(笑)左側に緞帳とランプ。左側に反った上半身と傾いだ(かしいだ)テナーが平行になって・・・実際の寸法よりうんと長く見える。
この10インチ、僕の手持ちは珍しくも mercury盤である。ジャケットは素晴らしい。メンバーもいい。しかし内容については・・・いまひとつ好印象がなかった。手持ちのmercury10インチ盤の盤質があまりよくなかったことに加えて、肝心の音質の方があまりよくなかったからかもしれない。このタイトルの場合だけかもしれないが、mercury盤のカッティングレベルは、(僕が感じているclef盤のレベルより)かなり低めで、ちょっと痩せた感じのする音だったのだ。
001_2 《同じ図柄の10インチと7インチを並べるのも、なかなか楽しいじゃないか(笑)》

ここでちょっと告白すると・・・僕は、常々「それがいい演奏なら、録音の良し悪しなどと関係なく、ちゃんと聴ける(味わえる)」という信条を持ってきたのが、どうやら・・・それも怪しくなってきたようだ(笑) その証拠に・・・同じジャケットの4曲入りEP盤から、Don't Take Your Love From Meとblue roomを聴いてみると~EP盤の方が10インチ盤よりはるかにいい音質だったこともあり~今度は、うんと「良く」感じたのだ。フィリップスの「ゆったり感」や「唄い廻し」に、より説得力を感じてしまったわけである。
レコードの音というものは・・・やっぱり、ある程度は「いい音質」であるに越したことはない(笑) なお、このスタンダード:Don't Take Your Love From Meは、あまりよく聞くタイトルではないが、バラードの名人:フィリップスの唄を充分に味わえる。Norman Granz氏も裏解説で [showing his love of the ballad~このバラードへの愛着を示している] とコメントしている。Dscn1744_2

《左の写真~一番左側がEP-173 Jumping Moods by Flip Phillips(MGC-158)のA面4曲を収録。この7インチ盤は盤質もよく、僕の手持ち10インチ盤Jumping~(盤質が悪いので)よりも音がいい。
一番右側:EP-171~この7インチ盤には、be be,  dream a little dream of me, bright blues, but beatiful の4曲を収録》

フィリップスのイメージとは、ちょっと合わないようなセッションもある。
ハワード・マギーとのバンド~Flip Phillips-Howard McGhee Boptetでの4曲である。《上写真の中央、薄い水色の7インチ盤:EP-112》
この4曲は1947年だから、フィリップスのmercury~clef期としては、最初期のセッションだ。
cake
cool
znarg blues
my old flame
この4曲は、未入手のCollates#1に入っているのだが、たまたま僕の持っているEP盤の内のひとつがこの4曲入りだった。
ハワード・マギーというと・・・ブルーノートのNavaro=Magheeとかでのイメージもあり、僕などは「バップの代名詞」みたいに思っている。スイングよりちょっと新しい感覚でギザギザしたフレーズを吹く感じだ。いかにもバップという感じの「抽象的」なテーマが3曲続くが、唯一のスタンダードは、my old flameである。バラードという感じのスロウものではなく、ミディアム・スロウのテンポをレイ・ブラウンが4つ打ちしているので、ブルージーな雰囲気に仕上がっている。

こんな具合に、僕はフリップ・フィリップスという人をいろいろ聴いてはきたが・・・実を言うとベテランになってからの彼のレコード(1960年以降のもの)をほとんど聴いていない。フィリプスは2001年8月に86歳で亡くなったようだが、かなりの年齢まで現役で吹いていたとのことなので、「新しい」録音のレコードが choice, concord, progressive,そしてchiaroscuro などからたくさん出ている。今はまだそこまで手が廻らないが、もう少し「古い」フィリップスを味わい尽くしたら・・・徐々に、近年のフィリップスの音色も耳にしてみようか・・・と思ってはいる。

《追記》10インチ盤と12インチ盤の収録曲を整理してみた。

記事中に触れたように、フィリップスのレコードは、SP音源からの編集ものが多いようです。特に12インチ盤では、複数のセッションからのテイクが入り乱れており、その結果、10インチ盤やEP盤の収録曲との重複具合が、まことに判りにくくなっている。この点、67camperさんからもご指摘がありました。僕自身もよく判ってなかったので、ここで「LP単位」と「セッション単位」のデータを少し挙げて整理してみようと思う。

発売の順からいけば・・・おそらく、SP盤(片面1曲づつ)~EP盤(4曲入り)と10インチ盤(collatesの#1と#2)~12インチ盤という流れでしょうか。2枚の10インチ盤:Collatesも、その時点での「拾遺集」(しゅういしゅう)みたいな性格のだったようです。そして1949年頃のセッション単位のデータを見ると、「ひとつのセッションが4曲」のことが多く、その4曲が10インチ盤では2曲か3曲収録、そしてEP盤にはその4曲がちょうど収まっている~ということが判ります。
そして押さえとしては・・・ひとつのセッション(録音日の近いものも含み)だけで一枚のLP単位でまとまったものは、案外少なくて、どうやら以下の3枚だけが「まとまったセッションのLP」のようです。
10インチ盤~
Flip Phillips Quartet(MGC-105) 1950年3月 6曲
Jumping Moods With Flip Phillips(MGC158) 1952年3月 8曲(2つのセッションで4曲づつ)
12インチ盤~
Flip Phillips Quintet(MGC-637) 1954年9月 8曲

それでは以下に、フィリップスのClef期の10インチ盤(4枚)の収録曲(青色で表示)と、それらの<行き先>を書いておきます。
<なお、データについてはshaolinさんも関わっておられるJazz Discography Projectを参考にさせていただきました。
special thanks to "shaolin"さん&"Jazz Discography Project"さん>

MGC 109  Flip Phillips - Collates

Howard McGhee (tp) Flip Phillips (ts) Hank Jones (p) Ray Brown (b) J.C. Heard (d)
NYC, circa September-October, 1947
Cake 
Znarg Blues 
My Old Flame 
Cool

<以上4曲~12インチ盤[Flip]に収録>  <EP盤[EP-112]に収録>

John D'Agostino, Buddy Morrow, Tommy Turk, Kai Winding (tb) Sonny Criss (as) Flip Phillips (ts) Mickey Crane(p) Ray Brown (b) Shelly Manne (d)
NYC or Los Angeles, CA, February 11 or September 26, 1949
By The Lazy River
<以上1曲と(同セッションのもう1曲)Swingin' For Julie And Brownie~12インチ盤[Flip]に収録>

Billy Butterfield (tp) Bennie Green (tb) Pete Mondello (as) Flip Phillips (ts) Mickey Crane (p) Sam Bruno (b)

Max Roach (d)
NYC, August 29, 1949
This Can't Be Love 
Cookie
 
<以上2曲~12インチ盤[Flip]に収録>

Bill Harris (tb) Flip Phillips (ts) Dick Hyman (p) Gene Ramey (b) Jo Jones (d)
NYC, March 8, 1951
Cheek To Cheek
<12インチ盤[Flip Wails]に収録> 

MGC 133  Flip Phillips - Collates, #2

Flip Phillips (ts) Mickey Crane (p) Ray Brown (b) Jo Jones (d)
NYC, December 5, 1949
Drowsy 
Vortex 
But Beautiful

<以上3曲+Milano~12インチ盤[Flip]に収録>

Harry "Sweets" Edison (tp) Bill Harris (tb) Flip Phillips (ts) Hank Jones (p) Billy Bauer (g) Ray Brown (b)

Buddy Rich (d)
NYC, July 1, 1950
Be Be 
Dream A Little Dream Of Me

<以上2曲+Bright Blues~12インチ盤[Flip Wails]に収録>
<上記3曲+but beautiful~EP盤[EP-171]に収録> 

Bill Harris (tb) Flip Phillips (ts) Dick Hyman (p) Gene Ramey (b) Jo Jones (d)
NYC, March 8, 1951
I've Got My Love To Keep Me Warm
<12インチ盤[Flip Wails]に収録>

Bill Harris (tb) Flip Phillips (ts) Lou Levy (p) Jimmy Woode (b, vo) Joe McDonald (d)
Los Angeles, CA, August 9, 1951
Broadway 
Apple Honey

<以上2曲+Sojoro, Wrap Your Troubles In Dreams, Long Island Boogie, Stardust~
12インチ盤[Flip Wails]に収録>

MGC 158  Jumping Moods With Flip Phillips

Al Porcino (tp) Bill Harris (tb) Charlie Kennedy (as) Flip Phillips (ts) Cecil Payne (bars) Mickey Crane (p)

Freddie Green (g) Clyde Lombardi (b) Max Roach (d)
NYC, March 21, 1952
Someone To Watch Over Me 
I'm Puttin' All My Eggs In One Basket 
Singin' In The Rain 
Gina

<以上4曲~12インチ盤[Swinging With Flip Phillips And His Orchestra]に収録> <以上4曲~EP盤[EP-210]に収録>

Charlie Shavers (tp) Flip Phillips (ts) Oscar Peterson (p) Barney Kessel (g) Ray Brown (b) Alvin Stoller (d)
Los Angeles, CA, March, 1952
If I Had You 
Cottontail 
Blues For The Midgets 
What Is This Thing Called Love?
 
<以上4曲~12インチ盤[Swinging With Flip Phillips And His Orchestra]に収録>
<以上4曲~EP盤[EP-173]に収録>

MGC 105  The Flip Phillips Quartet

Flip Phillips (ts) Hank Jones (p) Ray Brown (b) Buddy Rich (d)
NYC, March, 1950
Lover 
Don't Take Your Love From Me 
Flip's Boogie 
Feelin' The Blues 
Lover Come Back To Me 
Blue Room
 
<以上6曲~12インチには未収録> 
<Lover, Don't Take Your Love From Me,  Lover Come Back To Me, Blue Roomの4曲~EP盤[EP-120]に収録>

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2007年9月16日 (日)

<ジャズ雑感 第20回>フリップ・フィリップスのこと(その1)

この男がテナーを吹くと・・・さわやかな風が吹き抜ける。

このところジャズのお仲間に会うたびに、僕はフリップ・フィリップスの素晴らしさを吹聴してきた。だけどもフィリップスのテナーは、相当に地味なこともあってか・・・特にフィリップス好きが増えてきたということもないようだ。

僕が最初にフリップ・フィリップスに興味を持ったのは・・・実は音の方からではなく、ジャケット写真からだった。
Clef盤のモノクロジャケットの写真になんともいえない「いい雰囲気」を感じ取ったのだ。Dscn1743_4

夏の暑い午後・・・それでもビルの屋上の日陰に入ると風がなんとも心地よい・・・そんなリラックスした雰囲気である。ネットでこのジャケットを見た瞬間・・・この写真をもの凄く好きになった。そうし て「その写真の付いたレコード」が欲しくなった。しかしClefのオリジナルLP盤は・・・やはり高い(笑)だから・・・同じ写真のEP盤を入手した。それがこれだ。
《上の写真はClefのEP盤EP-210~singing in the rain, someone to watch over meなど4曲収録》

もちろんこれだけでなく、norgran,clef,verveのジャケットのモノクロ写真は、どれも素晴らしい。フォトグラファーはAlex de Paola という方らしいのだが、これらのレーベルはジャケ裏にクレジットが載ってないことが多いので、詳しいことはよく判らない。
なぜそんなに「素晴らしい」と感じるのか・・・自分でも判らない。ただひとつだけ言えるのは・・・もし、この写真がカラーだったとしたら、ここまで惹かれることはなかった、ということだ。じゃあ、モノクロならなんでもいいのか?というとそんなこともないだろう。だから・・・このPaola氏の写真には「何か」があるのだろう。(このAlex氏のこと、どなたかご存知の方、教えてください)

さて「音」の方で、フィリップスに参ってしまったのは・・・彼の吹くバラード曲からである。
I'll never be the same と I've got the world on a string
この2曲とall of me の3曲を収録したEP盤を、たまたま入手した。この時点では、フリップ・フィリップスという人を、よくJATPに出てくるブロウ派かな・・・くらいにしか認識していなかったので、さほどの期待もせずに、このEP盤をかけてみた。
Dscn1739《そのEP盤は左の写真、右下の水色のやつ~EP-262》

I'll never be the same~僕はこの曲をジミーロウルズの唄(ちょっとひしゃげたような声で歌うのだ)とピアノで聴いていて、いい曲だなあ・・・と感じていた。(The Peacocksというレコード) この曲のタイトルは、たぶん・・・昔の恋人と出合った男が「昔と一緒というわけにはいかないんだよ」というようなニュアンスかと思う。
そしてこの曲の出足は、タイトルそのままにI'll never be the same という歌詞なのだが、僕はフィリップスが最初の6音~I'll/ne/ver/be/the/same~をゆったりと吹き始めた場面で・・・もう痺れてしまった(笑)
フィリップスの「唄い」には・・・実に独特な味わいがある。全く力まない感じの自然な息の吹き込み、ストレスのない自然な音の出方、そして柔らかなフレージング。フィリップスが吹くと・・・まるで、さわやかな風がすう~っと吹いてきたような・・・そんな感じなのだ。この感じは・・・そうだ、あの「屋上写真の心地よさ」と、同じような雰囲気じゃないか(笑)
ロウルズの唄からも感じていた、この曲の持つ「ちょっと寂しげで、儚(はかな)いような・・・そして、ふっと自分を嘲笑するような」感じ・・・そんな情感みたいなものが、フィリップスのテナーから、ぼろぼろとこぼれ落ちてくるようだった。

I've got the world on a string も同じように素晴らしかった。ゆったりとしたこの曲のメロディを、フィリップスはやはりゆったりと吹く。そうして彼が吹くバラードには、なぜかしら優しげな感じがあって、僕はそんな独特な風情にどうにも惹かれてしまったようだ。

こんな風にフリップ・フィリップスにはまり込んでしまった僕は、彼のLPをいくつか入手した。
まずはこのEP盤の元ネタLPを紹介したい。

Flip Phillips Quintet(clef MGC637)米Clef盤
Flip Phillips Quintet(33cx 10074)UKcolumbia盤Dscn1740_3

Flip Phillips(ts)
Oscar Peterson(p)
Herb Ellis(g)
Ray Brown(b)
Buddy Rich(ds)
1954年秋

このレコード・・・実は2枚持っている。全くの同内容なのだが、先に入手したのはUK盤の方からだ。UK盤でもいいから聴いてみたかったのだ。一部の欧州盤には
異常とも思える高値が付いているが、一般に古いUKcolumbia盤にはそれほどの人気はないようで、米Clef,Norgranに比べれば、うんと割安で入手できるようだ。
最初、このUK盤の「白・トランペッター」ラベルを見たときは、かなりの違和感を覚えた。トランペッターのイラストはオリジナルデザインのようだが、ラベルの中央に大きな赤い字でCOLUMBIAとある。Clefなのにcolumbiaとは・・・なんか変な感じだ(笑)いろいろ調べてみると、どうやらイギリスでは、かなり早い時期から、Norgran,ClefなどをUKcolumbiaとして発売したようだ。Dscn1755イギリス人もこのトランペッターのデザインを気に入ったようで、同じ頃のEP盤にも共通デザインとして使っている。それにしても・・・このトランペッターの足元はどうなっているんだろう?(笑)

EP盤'(EP-262)での音質からも感じていたが、この1954年のセッションは、Clef,Norgranの中でもかなりの好録音だと思っている。もともと僕は、Clef、Norgranの音を大好きで、それは、たいていの盤で管楽器の生々しい音色を味わえるからだ。ただベースの音については、いまひとつ量感・音圧に欠けるかな・・・という場合が多い。これはどのレーベルにも共通していることかもしれないが、1955年くらいまでの古い録音の場合、たいていドラムスが歪みっぽくて、ベースは逆に遠い小さい音の場合が多いように思う。しかしこの盤では、レイ・ブラウンのベースは、張りのある充分に音圧感のある音色で、うれしくなってしまう。birth of the bluesでのフィリップスとのソロ交換は素晴らしい!

Dscn1757_2このUK盤、レコード番号は10074だが、ランオフ部分を見ると・・・MGC637の刻印がある。つまり・・・米Clefのスタンパーを使っているのだ。これは、ちょっとうれしかった(笑)

《左写真~UKcolumbia盤のセンター・ラベルとラン・オフ部分。MGC-637という数字が見えるだろうか》

8月におじゃましたYoさん宅では、この2枚の聴き比べをやってみた。5月の白馬「杜の会」で、僕はこのUK盤~Flip Phillips QuintetからI'll never be the same をかけてもらった。その時、Yoさんはフィリップスを気に入ったらしいのだが、同時にこの盤の音の良さにも注目したとのことで、その後、さっそく米Clef盤~Flip Phillips Quintetを入手していたのだ。そしてそのUS盤と白馬で聴いたUK盤とでは、音の感じがと違う・・・との感触を持ったらしい。そんなことをメールでやりとりするうちに、せっかくだから、ClefのUS盤とUK盤もぜひ聴き比べてみようじゃないか・・・ということになったのだ。実は同じ頃、僕の方も運良くこの米Clef盤を入手していたので、自分の装置でこの2枚を聴いてみると・・・たしかにちょっと音の感じが違うようだ。ただその辺りの違いを、微妙な音の違いがくっきりと現れるYoさんの装置でたしかめてみたかった。

まずUK盤~I'll never be the sameを聴いてみる。フィリップスのテナーが「ふわぁ~」と拡がった瞬間・・・「ハッ」とするような鮮度感があった。その鮮度感の秘密は・・・どうやらUK盤は、中高音をちょっとだけ強めにしてあるようで、その分、メリハリの効いた音になっているようだ。ただ全体にちょっと堅めの音になっているかもしれない。
US盤~UK盤に比べると鮮度感は落ちるが、もう少し湿り気のある丸みのある音のように感じる。僕の好みだと・・・やはり米Clef盤のやや丸みのある骨太の感じの音の方が好きかもしれない。
いずれにしても、US:Clef盤とUK:Clef盤では、たとえスタンパーが同じであっても、その音の質感にはかなり違うがあるようだ。
そんな違いも楽しめるこの2枚・・・それぞれに愛着があるので、両方とも手離せそうにない。
そういえば・・・Yoさんがこの米Clef盤をかける時、「この盤、やけに重いんだよ。どうも普通のClef盤より厚いぞ」とうれしそうに言った。手に持ってみると・・・たしかに重い。黒のセンターラベルにも艶がある。僕は、若干動揺した(笑)自分の同じ米Clef盤、こんなに重たかったかな・・・? だから、この日の深夜、自宅に戻った僕は、まっさきに自分の米Clef盤~Flip Phillips Quintetを手に取ってみた。ああ、同じ重さだ。センター・ラベルの艶もある・・・よかったあ(笑)

さて、このレコード・・・前述のバラード2曲が素晴らしいのはもちろんだが、もうひとつ気に入っていることがある。管の奏者がフィリップス独りだけであることだ。僕は特に「ワン・ホーン信者」ではないつもりだが、特に好きになったミュージシャンについては・・・やはりワン・ホーンで聴きたい。というのは・・・その奏者が独りで吹くとなった時・・・どんなスタンダード曲を選ぶのか? テンポは? リズムは? 僕はそんなことにすごく興味があるからなのだ。
さらに言えば・・・やはりバラードをひとつかふたつは入れてほしい。そしてそのバラードをどんな風に吹くのか?
そんな興味を持って、その人なりの「唄い口」みたいなものをじっくり味わうためには、やはりワン・ホーンがいいように思う。ちょっと前にチャーリー・ラウズという人を見直したのは、YEAH!(epic)というワン・ホーンのLPからだった。ミュージシャンのタイプによっては、独りでじっくり吹く方が、味わい深い個性を発揮できる場合も多いように思う。

それではフリップ・フィリップスの個性とはなんだろう・・・「優しげな風情」も大きな個性だが、いろいろと彼のレコードを聴いていると、やはり奏法にも独自の特徴があるようだ。フィリップスという人は、あまりフレーズを細かく刻まない。特にスロウなテンポの曲では、基本は「ロング・トーン」が多い。伸ばす音と伸ばす音の間に、短いフレーズをすっと差し込という感じだ。その短いフレーズと長い音のバランスや、ちょっとづつ変化させる組み合わせ方の具合が絶妙なのだ。そうして時に、その「ふぅ~ぅ」と長く伸ばした音の最後のところを「くぅっ」と音程をちょっとだけ下げながらその音を切るような・・・そんな結び方をする。これが効くのだ(笑) こういうベンド(音程を滑らかに上下させること)は、たぶんマウスピースを咥(くわ)えた唇の締め方を微妙に操作しているかと思うが、フィリップスのあっさりと切るくどくないベンドには「粋」を感じる。
そういえば、マイルス・デイビスもよく「ふわぁ~っ」と吹いている音程を下げるような音を吹くが、あれも唇を緩めてベンドさせているのだろう。ギターのジム・ホールも、チョーキング気味に上げた音程から(同じフレットの)正しい音程へ下げるベンドをよく使う。名人たちの決め技と言ってもいいかもしれない。

余談だが「flip」という単語の意味はいくつかあって・・・「(擬音語として)指先でピンと弾く」や「ひょいと(素早く)投げる」という意味らしいが、4番目か5番目に、「米俗として)人々を熱狂させる」という説明もある。JATPのライブ盤でのフリップに対する拍手の大きさを聞くと・・・やはり「熱狂させるフィリップス」という意味合いが本線だとは思うが、僕などフィリップスのあの「軽やかな音色と風のようなフレーズ」に参ってしまっているので・・・ひょいっと投げる(テナーの音色を吹きかける)というニュアンスも捨てがたいぞ・・・と思ったりもする(笑)
冒頭でフィリップス好きが増えてこない・・・などと書いたが、そういえば、2年ほど前だったか・・・「こだわりの杜」の僕の「フリップ・フィリップス書き込み」にすぐさま反応してくれたBOSEさん・・・BOSEさんは、たしかJumping Moodsの10インチ盤を持っていたはずだ。すでにFlip Phillips Quintetを入手したYoさん。それからフレッドアステアのThe Astaire Story(mercury)をいくつか入手したkonkenさん。それに、拙ブログの前回記事~Tenor Saxesのコメント欄に「印象に残ったのはフリップ・フィリップスの2曲」と書いてくれたNOTさん。ああ、やっぱりフリップ好き・・・けっこういるじゃないか。実際・・・フィリップスがひょいっと投げかけてくる、あの優しげなテナーの音色を、何度か耳にすれば・・・誰でも知らぬ間に「フリップ病」になるに違いない(笑)

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2007年6月10日 (日)

<やったあレコ 第9回> Virgil Gonsalves(nocturne) と Jazz On The Bounce(bel canto)

カラー盤の磁力には、どうにも逆らえない。

ここに1枚のレコードがある。Dscn1701

Nocturne盤:Virgil Gonsalves Sextet・・・10インチ盤である。
この25cm四方のジャケット。
爽やかな青色のヴィニール。
銀色のセンターラベル。
このレコードを見て「いいなあ・・・」と思わない方がこの世に存在するとは思えない(笑)
もちろんこれは単に僕の思い込みからくる妄想なのだが、まあ「1枚のレコード」が手元に置いてあるだけで、
これくらいうれしくなってしまう人間もいる、ということを言いたいのだ。

レコードは・・・もちろん「音楽」を楽しむためのツールだ。だからそこから音さえ出るのであれば、それがCDだろうとカセットテープだろうと、それからFM放送であっても構わないはずだ・・・とアタマでは思う。「音楽を楽しむ」という観点だけに立てば、その方が正論だろうと思う。だがしかし・・・趣味の世界では、事が正論どおりに動くわけではない(笑)
「レコード好き」にとっては、音源だけが重要なのではなく・・・その盤がそこにあり、それを眺めたり触ったりできることも、これまた重要なのである。
ここで、大きく頷(うなず)くような方にとっては、やはり・・・「レコードは単なるツールではない」ということなのだ。「レコード盤」というものは、ヴィニール~その厚さや重さの按配、センターラベルやジャケット~その図柄や紙の質感、そして二オイ・・・そんなもの全てが合わさって完成するひとつのプロダクツなのである。どちらが欠けてもダメなのだ。レコード好きは、絵(ジャケット)も音(盤)も欲しいのだ。
「レコード好き」は、間違いなくあの「モノの感じ」そのものが好きなのである。そうして、そのモノからは「音も出る!」・・・凄いじゃないですか(笑)

もちろん、レコードにはcopyという表現も使われるくらいで、たくさんの同じものが世に出回るわけで、オリジナルが1枚だけの絵画や彫刻とは、とても比べられない。しかし、そんな数あるcopyであっても・・・年月が経てば、やはり痛んだり壊れたりして・・・その数が減っていく。だから・・・ある種のレコードというものは、大げさでなく文化遺産と呼べるのかもしれない。

この10インチ盤の裏ジャケットを見ると・・・左上の余白に”May 1st,1954”と書き込みがある。たぶん、このレコードを買った人が残した購入日のメモだろう。 Dscn1700_1
1954年の5月1日。
1954年かあ・・・と思うと、いろんな想像が湧いてくる。50年以上も前に・・・ジャズ好き青年が・・・たぶん土曜の午後あたりに・・・西海岸のレコード店で・・・このレコード「ヴァージル・ゴンザルヴェス」を手にとり・・・この青いヴィニール盤にココロ奪われて・・・衝動的に買ってしまった・・・そうしてこのレコードを仲間達と聴きまくったのだろう・・・。
僕は、つい、そんなことを考えてしまう(笑) そうして・・・「その時のレコード盤」が、今、ここに・・・僕の手元にあるということが、うれしいというよりもなにかしら不思議な感じがする。
どうやら僕は、他の10インチ盤には感じない「何か」をこの盤には感じているようだ。それが・・・この青色ヴィニールと銀色ラベルとの絶妙なマッチングからなのか・・・あるいは、ノクターン(Nocturne:夜想曲)という名前から湧き出る魔力のせいなのか・・・よく判らない。

Dscn1702_2 さて、演奏の方はというと・・・このヴァージル・ゴンザルヴェスという人、わりと淡々と吹き進むバリトン奏者のようで、だから・・・片面3曲、全6曲聴いても、「う~む・・・」と強く印象に残るということもなく、淡々と片面が終わってしまう・・・そんなレコードである。名前から想像するに、なにやらサージ・チャロフのような激情的なもの~急に大きな音で吹いたり高音をきしませたり・・・嫌いではないのです(笑)~を期待していたので、意外な淡白さにちょっと肩透かしを食ったような感じもある。そしてこのレコードでは、どの曲もわりと軽快なミディアムファースト(ちょっと速めのテンポ)なので、ちょっと単調な感じも受けるのだが・・・yesterdaysだけは、ややテンポ遅めのバラード調で演奏されているので、ゴンザルヴェスの「唄い」がじっくりと味わえる。
テナーのバディ・ワイズは、どの曲でも悪くない。タイプとしては、ソフトな音色で、無理なくスムースに吹く感じで、そうだな・・・ズート・シムズのようなタイプだと思う。bounce,too marvelous for wordsでのソロはとてもいい。
<このnocturneの10インチ盤~ブログ仲間のNOTさんも紹介している。NOTさん手持ち盤も「青盤」とのこと。そうは出てこないノクターンの10インチ盤、その2枚の個体が共に「青盤」となると・・・ひょっとして、このNLP-8番~Virgil Gonsalvezには青盤しか存在しないのでは?という乱暴な推測も成り立つ。どなたか「黒盤(あるいは他の色の盤)をお持ちの方・・・ぜひコメントにて情報をお寄せください>

10インチの次は7インチでいこうか。
Barney Kessel/Barney Kessel(contemporaryの7inch2枚組)である。
Dscn1708_3 カラー盤というのは、もちろんfantasyには一番多いはずで、contemporaryにはそれほどカラー盤はない、と思っていたので、この7inch赤盤を見つけた時は、ちょっと新鮮だった。
バド・シャンクがフルートやアルトで参加している1953年(11月と12月に4曲づつ録音:全8曲~tenderly,just squeeze me,lullaby of birdland,what is there to say などを演っている)の作品である。
以前からこのブログ<夢見るレコード>では、いくつかの7インチ盤を取り上げてきたが、もちろん全ての7インチ盤の音がいいというわけもなく、たいていはカッティングレベルが低かったり、それよりもまず盤質自体が良くないことが多いのである。だから・・・7インチ収集にも辛いものがあるのだ(笑)
Dscn1710_1  幸いにして、このcontemporaryの赤盤2枚組は、盤質もまずまずで、そして音の方も(もちろん演奏の方も)よかったのだ。ケッセルのいかにも張りのあるやや堅めの強い音がクリアに響く。ベース音やシンバルの鮮度感も充分だ。ギターが主役のセッションなので、ピアノ(アーノルド・ロス)はやや引っ込み気味に録られているようだが、音色もタッチ感も悪くない。そして、シャンクのアルトも骨太に鳴る(I let a song go out of my heart) Dscn1709
・・・と、まあいろいろと言ってますが・・・7インチのカラー盤というのは、パッと見た瞬間に、なにかしらキュートな感じがして・・・要するに・・・それが悪くないわけでして(笑)

追記~この記事をアップ後、下記コメント内のやりとりの中で、SP-EP-10inch-12inchという規格の話しに及んだ。それらがどんな変遷をしたのか、またその価格はどんな具合だったのか・・・早速、この疑問にお答えいただいたshaolinさんが、お持ちの貴重な資料を氏のブログにて公開してくれました。ぜひご覧ください。実に興味深い!

もう1枚だけ、僕が大事にしている「カラー盤」を紹介しよう。
Jazz On The Bounce(bel canto) というレコードだ。これも「青盤」である。

    <Bel Cantoというレーベルについては・・・少し前にブログ仲間:67camperさんが、ヴォーカルのフラン・ウオーレンを紹介した時、一部でちょっと盛り上がった(笑)
bel cantoというレーベル~ジャズというよりポピュラー寄りのレーベルだったらしいが、どうやらカラー盤を特色としていたようで、青色だけでなく緑色やら黄色など、いろんな色ののカラー盤があったらしい。
このSR1004は、僕の持っている唯一のbel canto盤である>

Dscn1705_4このジャケットは・・・少々、濃いかな(笑)
アクの強い美女がとろ~んとした目をしてこちらを見ている。胸元もセクシーである。アメリカのレコード好きは、こういうセクシーな感じのジャケットのことをcheesecakeと呼んでいるようで、人気もけっこうあるらしい。
ソフトな方では、例えばcapitolのジョージ・シアリング辺りの美女カヴァー辺りでも、cheesecakeと呼ばれたりすることもあるようだ。だとしたら・・・僕も、cheesecakeジャケットは、もちろん嫌いではない(笑)
しかしながら、このbel canto盤、ジャケットだけに見とれていてはいけない。
内容の方も相当にいいのである。
A面~Curtis Counce Quintet 3曲
B面~Buddy Collette Quintet 3曲
という構成なのだが、このbel canto盤には、メンバーのクレジットがない。
A面のカーティス・カウンスの方・・・テナーがハロルド・ランドであることは間違いないと思うのだが、
トランペットがよく判らない。ジャック・シェルダンか、あるいはステュ・ウイリアムソンなのか?
レコード・コレクターズ1985年7月号の「エルモ・ホープ」記事(佐藤秀樹氏)によれば、このA面3曲は、どうやらExploring The Future(doote)の別テイクらしい。だとすれば、これらは、1958年4月録音で、テナーはハロルド・ランド、ドラムスはフランク・バトラー、そしてピアノはもちろんエルモ・ホープ。そしてトランペットは・・・ロルフ・エリクソンなのである。Dscn1706_1

このレコードを聴いてみて、ちょっと驚いたのは・・・録音が1958年ではあるが、ステレオ録音だったことだ。
そして、楽器の定位こそ~ピアノとテナーは左側、ベースとドラムスとペットは右側(テーマの時だけはなぜか左側)で、中央には誰もいない感じ(笑)~という初期ステレオにありがちな、ちょっと片寄ったバランスではあるが、全体の音質や各楽器の音色が実にいいものだったことだ。
ドラムスのシンバルやらスネアもクリアに抜けているし、サックスもソフトで艶やか、そしてピアノのタッチにも充分な力感があるので、エルモ・ホープが気合を込めて強く叩いたような高音のタッチも気持ちがいい。
ベースも、右チャンネルから豊かなサウンドでたっぷりと鳴っている。ただ、このベース音はちょっと低音を強調したような感じもあり、やや膨らみすぎかもしれない。いずれにしても、この頃のカーティス・カウンスは・・・というより、ハロルド・ランドは実にいいのだ(笑)この人、イメージはソフトだが、テナーの音色自体は案外にシャープだと思う。そのシャープな音色でもって、どんな曲においても、決してゴツゴツしないスムースなノリで吹き進めてくる。8分音符のフレーズが滑らかで柔らかというか・・・聴いていてアドリブがとても自然なのだ。
やはり・・・凄く巧いテナー吹きなのだと思う。そうして、この人がじっくりと吹くバラードは、本当に素晴らしいのだ。time after time(Land Slide)や I can't get started(Carl's Blues)は、バラードの好演だと思う。
<このCarl's Blues については、ワガママおやじさんのブログ<ヴィニール・ジャンキー>でも話題になったばかりである。渋いけど本当にいいレコードだと思う>

まったく・・・世の中には、素晴らしいジャズレコードが、まだまだいっぱいだあ!(笑)

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2006年10月28日 (土)

<ジャズ回想 第8回>ニーノニーノさんのオフ会 大阪・神戸秋の陣。

10月7日、西から東から14人が藤井寺Yoさん宅に集まった。

<当日かけたレコードのジャケット写真を、Yoさんが送ってくれましたので、BOSEさん提供分も含めて、いくつか追加しました。ジャケットのみの写真がYoさん提供分です。マクレエのこと、少し追加しました。10/31>

福岡のオリジナル盤通販専門店ニーノニーノの新納さん主催の「杜の会」~会とは言っても特に主義主張があるわけでもなく、もちろん何かの誓約書を書かされるわけでもない(笑) ただ単に「音楽を好きな人間が集まっていい音楽をいい音で聴こうではないか」という集いなのだが~2006年の信州:白馬で、新納さんがこう言った。「次は・・・ぜひ九州と本州の方が一緒に集まりたい。そうとなれば・・・集結の地は大阪しかない。Yoさん、ぜひお願いします!」・・・一同、どよめく「おおっ・・・」
春から夏へ・・・その間、大阪(藤井寺)の会場となるYoさんがいろいろと考えを巡らせ、初日にYoさん宅、翌日はメリケンさん宅、その後、神戸のジャズ喫茶Just In Timeさん~という段取りである。お盆の頃には、日程が10月7日(土)・8日(日)と決まった。その頃の「杜」の書き込みから、この「杜の会」が自然と「大阪・神戸:秋の陣」と呼ばれるようになっていった。秋の陣~西から東から大阪に集結する落ち武者たち・・・いや、諸国の武将たち、といった趣ではないか(笑)

そうして先日、ついに「杜の会」が催された。九州からは、DUKEさん(新納さん)、音の匠さん、CROWさんご夫妻、BOSEさん、PSYさん、M54さんと7人。(PSYさんとM54さんは、7日の夜(宴会)からの根性の参加!)
本州からは、群馬のRoxanさん、静岡のパラゴンさん、マントケヌーマーさんと彼女。愛知からのD35さん、konkenさん、それにbassclefの計7人。
皆さん、それぞれに苦心惨憺のスケジュール調整をされての決死的参加なのである(笑)

愛知組の3人は、私:bassclefが朝6時に豊橋を出発。岡崎(konkenさん)~東海市(D35さん)と合流。よしっ、3人で一路、藤井寺へ!と
気合こめて出発。運転はkonkenさん。亀山辺りまで少し混んだが、その後は快調。走るクルマなので飛ばす、飛ばす。10:30頃にYoさん宅に到着した。
笑顔で迎えてくれた奥様に「また来てしまいましたあ(笑)」などと訳の判らん挨拶しながら、2Fへ上がっていくと・・・なにやら聴いたことのある歌声が・・・おっ、これは? 部屋に入ると、Yoさんとパラゴンさんが嬉しそうな笑顔で迎えてくれる。
「やあやあ」・・・と6月以来の再会だ。パラゴンさんは、根性の夜行バスで早朝の大阪入り。8時前には着いていたそうで、もうすっかりこの部屋に馴染んでいる(笑)
パラゴンさんといえば・・・ヴォーカルだ。テーブルの上にはヴォーカル盤ばかり並んでおり、すでにいろいろと聴いてきたようだ。Out_of_the_blue
そうして一番上にあったのが、キャロル・スローンのOut Of The Blue(columbia:ステレオ盤。これはYoさんの手持ち盤) だ。 そうかっ!このレコードだったのか、と嬉しくなる。このレコード、僕の手持ちはモノラル盤(カナダ盤)だったので、ステレオ盤を一度、聴いてみたかったのだ。カナダ盤でもけっこういい音だと思っていたが・・・やっぱりこのレコードは録音も相当にいいようで、ステレオ盤もふくゆかないい音で鳴っていた。どうにもステレオ盤も欲しくなってしまうなあ(笑)
<右上の写真が、Yoさん提供のステレオ盤。下の写真は、僕のカナダ盤。maroon/siliverラベルの「6つ目」も悪くない:笑>_006_2

Spring Is Here(ロブスター) they can't take that love away from me
偶然にもキャロル・スローンの現代盤~78年録音のspring is here(ロブスター)を持ってきていたので、1曲(they can't take that away from me)かけてもらう。
ムラーツのベースが絶妙な巧さを見せる1曲だ。録音はやはりいい。しかし・・・ヴォーカルにはうるさい御仁が揃っている。「やっぱりスローンも年をとってるねえ」とkonkenさん。皆、うんうんと同意。唄はもちろん抜群に巧いのだが先ほどの1961年ころのスローンには、なんとも言いがたい「可愛い色気」があった。あの魅力には抗しがたい(笑)

パラゴンさんが「ペギー・リーはブラック・コーヒーだけじゃないよ~」と言いつつ取り出した10インチ盤。
Peggy Lee/Songs from Walt Disney's Lady and the Tramp(decca)から la la ru 
~ペギーリーがかわいらしい感じで唄っている。パラゴンさん、「こういうペギー・リーもいいんだよな~」と目を細める(笑)

After_glow_2  さて、何曲か聴きながらテーブルの上のお宝盤を見ると・・・エラのmellow mood(decca)の2種~[黒ラベル]と[文字が金色の黒ラベル]~の横に気になる盤が・・・。マクレエのafter glow(decca)だ。<写真:Yoさん提供>   ピアノのレイ・ブライアントが入っているので有名だ。オリジナルは、ジャケットがエンボス(ザラザラになっているやつ)だったとは知らなかった。エンボスだとテカテカしなくて、なぜか品良く感じる(笑)僕はマクレエはそれほど愛聴しているわけではないが、このレコードにはちょっと思い出があり、内容も好きなのだ。all my lifeを リクエストして聴かせてもらう。乾いたマクレエの声が気持ちいい。ブライアントのピアノも輝くようなタッチだ。こりゃあ録音も相当にいいぞ・・・。

ここらで男性ヴォーカルも、ということで・・・僕はメル・トーメを1枚持ってきたので、it's a blue world(bethlehem)から isn't it romantic?を。
ストリングス入りがややコーニーではあるが、やはりトーメは巧い。ベツレヘムの沈んだような音も、実にいい感じでしっとりと鳴る。
このごろ僕は、こういう沈み込んだような音も好きになってきたようだ。

次に、D35さんがヘンリー・マンシーニのpink panther(RCA Victor:dynagroove)を取り出した。
すると隣に座っているkonkenさんも自分のバッグから「同じレコード」を見せてニンマリ(笑)7_001_2   
D35さんは、いつもこのレコードを音を聴く時の軸にしているようだ。
それにしても、このdynagroove盤・・・いい録音なのは判っているつもりだったが・・・出だしから本当に凄い音だ!
冒頭、左の方からピアノのかなり高い方の音「コーン」という乾いた音に続いて、あの「泥棒が抜き足、差し足」みたいなチャーミングなテーマが始まる。
徐々にブラス群が押し出してくる~マンシーニの工夫を凝らしたサウンド群~それら全てが左右にいい具合に拡がった音場に満ちている。
フォルテの場面では、実に気持ちのいい音圧感が味わえる。7_002
それから、もちろんテナーのプラスジョンソン。間に入るこのテナーソロが抜群にいいのだ。あのユーモラスなテーマを充分に生かした、いやらしいような表現力!(笑) だけど実にコクのある色気のある味わい深いソロ・・・だということがよく判る、いや判ってしまう・・・そういう深みのあるテナーの音だった。こりゃあテナー好きの人にはたまらんだろうなあ。(そりゃ、オレか:笑) だから・・・実はこのピンク・パンサー、僕も持っているのです(笑)
<写真~Victor盤は、やはりステレオ盤が素晴らしい。だから、LPM~ではなく、LSP~が欲しい>

お昼の後に、いよいよ秋の杜:本編が始まった。
まず、Dukeさんの「レーベル別でのVan Gelder録音もの」から。
ヴァンゲルダーの録音というと、まずbluenote、prestigeをイメージしてしまうのだが、savoy、verveにもたくさんあるし、ちょっと意外だったのは、riversideやatlanticでの仕事もあったことだ。
各レーベルからいろいろな盤がかかったが、その違いっぷりには、実に興味深いものがあった。
ここでは・・・録音うんぬんというより、そのジャズの中身に参ってしまったTony Willimas/Spring のことを少し。
~トニーのブラシが凄い!とてつもなく速いテンポをブラシで紡ぎだしている。その快速ビートにピーコックが鋭いピチカットで絡んでくる。
この2人だけでも充分にスリリングなジャズになっているのだが、そこへ第1のテナーが右チャンネルから現れるフレーズを細かく刻み、それを少しづつ変化させていく。素晴らしく切味鋭いテナーのソロだ。ショーターのようでもあり・・・いや、ショーターにしてはトーンのエッジが鋭すぎる・・・こちらがサム・リヴァースか?とも思う。ベースソロの後、左寄りから第2のテナーが現れる。今度は、先ほどと対象的に「ロングトーン」を多用して、その音色を変化させつつ、徐々に徐々にフリーキーな音色で鋭いソロになっていく。この第2のテナー奏者~出だしのロングトーンで、「あ・・・やっぱりこっちがショーターか?」とも思うのだが・・・僕が思っているショーターの音色よりも、もうちょっと荒々しくて堅い音色のように聞こえる。そんな具合に、このレコードの2人のテナーには、どちらがどちらか?と迷うことしきりなのだが・・・音色自体の「端正さ」(リヴァースの方が、堅くて荒いトーン」という認識をしているので)と、それから、フレーズの展開の仕方、そのアイディアのおもしろさ・・・そんなことから「いつになく本気を出して鋭いプレイをしたショーター」のように思えくるのだが・・・サム・リヴァースという人自体をほとんど聴いていないこともあり・・・あまり自信がない(笑) 
いずれにしても・・・このextras の演奏の凝縮度は怖ろしく高い。トニーのブラシだけ聴いてみてもいい。ピーコックの切味鋭い高速4ビートだけ聴いてみても凄い。しかしその2人に絡むテナー奏者のソロとそのテナーに触発されて変化していくリズム隊2人の応用力というか、その変幻自在な流れに「素晴らしい音楽の一瞬」みたいなものを感じた。エンディングもしゃれている。最後、独りになったトニーがブラシとハイハットだけでしばしの間、リズムを刻む・・・そしてその急速テンポを半分に減速するような素振りを見せつつ・・・いきなり「ッポン!」というショットで終わるのだ。ブラシに始まりブラシに終わる・・・実に潔い(笑)これまでちゃんと聴いたことのないレコードだったが、この1曲は凄い!とようやく判ったようである。
_005_9  <写真の盤は、manhattan capitol ~通称DMM bluenoteだ。ちょっと哀しい(笑)>

この後は、皆さんの持ち寄り盤から1曲づつアトランダムにいこう、ということになった。
それぞれの方のかけたレコードの紹介と、その時の印象を思いつくままにに書こうと思う。

Yoさん~(以下、コーンからホウズまでの5点の写真はYoさん提供)

Cohn_on_the_saxophoneAl Cohn/渦巻きのコーン・・・Cohn On The Saxphone(dawn)~地味だけど実にいいレコードだ。いつもは柔らかい音色のアル・コーンだが、アドリブの中で、高音の方にいくと、時に鋭い音を発する。その時の音のかすれ方が・・・ちょっとレスターヤングに似ているのかもしれない。最後にかかったレスターを聴いた時、そんなことを感じた。

Birth_of_a_band_2Quincy Jones/A Birth Of thd Band(mercury) gypsy~このレコードは、Yoさんの愛聴盤である。

Al & Zoot/You an' Me (mercury)  you 'n me
~このレコード、録音はたしかに素晴らしい。ベースの音も輪郭鮮やかで音像も太い。Youn_meドラムのシンバルなど、最近の高品質録音のような雰囲気だ。隣にいたBOSEさんとそんな感想を言い合う。僕は、しかし・・・このズートやコーンが気持ちよくスイングする60年ころのジャズの「感じ」に、この「近代録音」の音質は、イマイチそぐわない・・・そんな印象を受ける。ドラムやベースがあまりに軽くスムースに流れるようなところもあって、ちょっとレコード全体に「渋み」が欠けているような感じがするのだ。だから、音のよさが却ってこのジャズを「軽く」している・・・そんなようなあまり根拠のないことを思ってしまう僕であった。

Jazz_sahib_1Sahib Shihab/Jazz Sahib(savoy) blu-a-round(写真:左)
~このレコードもそういえばヴァン・ゲルダー録音であった。僕はこのレコードは・・・ピアノがビル・エヴァンス(B面のみ)ということもあり
CBSソニー盤を入手してよく聴いたものだ。久しぶりに聴く初期エヴァンスのピアノは実にクールな装いで、やはりいいのである。
フィル・ウッズはこの盤でも大活躍だ。先ほどのクインシー・ジョーンズでのgypsyもそうだったが、ウッズという人は、与えられたスポットでいつも覇気のあるソロを取り、きちんとまとめてくる。本当に巧いアルトである。いい音で聴くいいアルトは快感でもある。それにしても後でよく考えてみると、宴会の後のアフターアワーズでもかかったWarm Woodsも含めて・・・この日は「フィル・ウッズ特集」でもあったようだ(笑)For_real

Hampton Hawes/For Real(contemporary) hip ~このコンテンポラリー盤は、何度聴いても本当に最高だ。ラファロのぐッと引き締まったベースが右チャンネルから「ビートの権化」となって押し寄せてくる。バトラーのドラムの乾いたスネア音やらホウズのピアノの、あの全く粘らない跳ねるように小気味のいい独特なタッチ。それからもちろんハロルド・ランドのテナー。この人のテナー・・・テーマの合わせとかが抜群に巧いので、その演奏自体もソフトだと思われているかもしれないが・・・意外に硬質な鋭い音色である。そんな具合に、全ての楽器の音が~ミュージシャンが気迫を持って発したであろう楽器の音が~等身大の実在感を持って押し出してくる。そんな感じだ。もちろんYoさん自身が意識的に調整してきたのであろうが・・・「コンテンポラリー」というレーベルについては、全く見事に(いい・悪い/好き・嫌いのレベルではなく)「あるべき音・出してほしい音~そういうバランス」で、鳴らしきっているのだ。そう思えてくる。素晴らしい!

Sonny Rollins/Sound of Sonny(riverside)     ~the last time I saw Paris もかかったな。これはピアノがソニー・クラークだ。

Zoot Sims/Tonit's Music Today(storyville)   ~I hear a rhapsody Tonite_music_today_1

この1曲だけは、シムズのワンホーンだ。バラードをじっくりと吹き進むシムズの唄心には参ってしまう。I hear a rhapsody・・・好きな曲だ。BOSEさんご自身も「よくできたCDだと思っていた」という徳間CDとの聴き比べでは・・・CDでは全体的にドラムスやベースが強調されていたような感じを受けた。そして、オリジナル盤で聴いたシムズのテナーは、やはり・・・響きが自然で、より陰影に富んでいたように思う。                    <上の写真:tonite's~はYoさんの手持ち盤。BOSEさん宅でこのレコードを聴いて気に入ったYoさんが、その後に入手されたとのこと>      

BOSEさん~
Go_manSonny Criss/Go Man!(imperial)blue prerlude ~ジャケットを見て「おおっ」と軽いどよめき。ソニー・クリスもいいのだが、このレコード、ピアノがソニー・クラークなのだ。このジャケットを見て、僕は、スクーターのスタンドが立っている絵とスタンドがない絵と2種類のジャケットが存在する、という何かで知った情報を話した。この盤は「スタンド付き」だ。レコードをかけ終えると、BOSEさんが一言。「このレコードのタイトルが、なぜ「ゴーマン」かというと・・・ジャケットを見れば判ります。スクーターの後ろに乗った女が「ほら、次はあっち」と指示を出しているので、男が嫌そうな顔をしてるでしょう」と真顔で言うのだった(笑) <Go Manの写真は、BOSEさん提供です。やっぱりスタンドが立ってる>

Good_gravyTeddy Edwards/Good Gravy(contemporary) から1曲。このレコード・・・contemporaryの中では案外に見かけない盤で、BOSEさんによれば「多分・・・OJCでもWAVEでも出てない」とのこと。Yoさんはこのエドワーズ、すぐに気に入ってしまったようで「これ、欲しい・・・」と一言。

<左の写真は、この会の後、Yoさんが速攻で入手した盤だ。やることが速い(笑)>

そして・・・Serge Charoff/Blue Serge(capitol) Blue_serge  

ジャケットの「サージ服」の青色が品のあるいい色合いだ。センターラベルは、capitolを象徴するあのターコイズ。この盤はベースのルロイ・ヴィネガーのはずむような音が大きく入っている。そしてピアノは・・・こちらもソニー・クラークだ。

<写真:Blue Sergeは、BOSEさん提供。こうして見ると実にいいジャケットですね>

それにしても、BOSEさんの持ち込んだ盤は、どれもこれも・・・(笑) ジャズの本当に渋くていいところの盤ばかりじゃないか・・・参りました(笑)  

パラゴンさん~
Sylvia Syms/Songs By Sylvia Syms から imagination(atlantic)
~ジャケットのイラスト~笑っているようなシムズのイラスト~がいいなあ・・・と思っていたら、すかさず、BOSEさんが「これはバート・ゴールドブラットだ」
すぐジャケットのイラストをよく見ると、やはりBurt Goldblatt とクレジットされていた。BOSEさん、よく知ってるなあ・・・(笑)

D35さん~
金子由香里(ビクター盤) 1970年代の日本盤だが、録音はキレイだった。
シャンソンは・・・わからない(笑) 曲は「詩人の魂」だったか。
エミルー・      Angel Band~カントリーっぽいノリの歌い手だ。
Ann Richards/Many Moods of Ann Richards ?

Roxanさん~
Pink Floyd(英EMI) の初期盤から1曲。
Mary Hopkin/water,paper and clay (EP盤)
~はじめは静かに始まるホプキンスの唄だったが、途中から壮大なオーケストレーションが現れ・・・
とにかくいろんな楽器群が次々に、充分な音圧を持って飛び出てくる・・・そういうダイナミック・レンジが驚異のUK・EP盤だった。

konkenさん~
Chicago(CBSソニー) introduction ~Yoさんのシステムはどのジャンルもいい具合に鳴る。ロックのレコード特有の「厚めの低音(エレクトリックベース)と
巨大音像のバスドラ」しかしこれらが、大きくても柔らかめな肌触りのいい音なのだ。ロックならこれくらい音圧が出た方が気持ちいい~という感じで鳴っていた。
konkenさんは「シカゴが、あのソニー盤であれだけ鳴るとは・・・」と帰りのクルマで何度も繰り返すのでした(笑)

マントさん~
ギターとパーカッションによる現代曲(ジーグフリード・フィンクと読めたかな(by CROWさん)
バリトン歌手によるフォーレの歌曲~この男性歌手・・・このレコードの録音当時、結婚したばかりということで、マントさんいわく・・・「唄に喜びが溢れ出ている」

bassclef~
Swingin' Like Sixty(world pacific)からJohnny Mandel(pacific) georgia on my mind_001_9
~このレコードは、world pacificのオムニバス盤で、A面1曲目に、アート・ペッパー入りの「ジョージア~」が入っているのだ。
ホーギー・カーマイケルのhoagy sings carmichael(pacific) のリハーサルテイクのようだ。おそらく曲の進行を確認するためのバンドだけのリハーサルだから唄はなし。イントロ~間奏~エンディングだけの短いテイクなのだが、この「ステレオ録音」が、なかなかに素晴らしいのだ。
録音直前の様子~「hi,everybody!」「take~!」「OK!」とかの、やりとりからして生々しい。左の方では、ペッパーが軽くアルトを鳴らしたりしている。中編成の管楽器がジョージアのイントロを始めると・・・そこに「すうっ」とペッパーが入り込んでくる。管楽器群がテーマを流しているバックで、オブリガート風にソロを入れているのだ。そのままバックなしの短いアルトソロになり、サビからいきなり倍テンだ。トランペットがソロを吹くのだが、マイクがかなりオフ気味だが、どうやらハリー・エディソンのようだ。
そしてサビ後の部分をエンディングテーマとし、あっさりとこの演奏は終わってしまう。ちなみにこのリハーサルテイクの本番~つまりホーギー・カーマイケルが唄う~レコード、僕の手持ちは、1982年頃の米Pausaの再発でモノラルなのだが、裏解説によると、[this is a Monaural Recording recording] とあり[engineering:Richard Bock and Philip Turetsky] と明記してある。だからhoagy sings carmichael(pacific) のオリジナル発売時は、
モノラル盤だったのかもしれない。カーマイケルの脱力した唄い方も悪くない(笑) そんな唄の合間合間ににチラと入るペッパーがまた味わい深い。

Soul Trane(prestige) NJ bergenfield ラベル~このソウル・トレーンあたりの番号からNJラベルらしい。だから(たぶん)オリジナルなのでちょっとうれしい。このNJラベルも、少し前にrecooyajiさん宅(地元:豊橋のジャズ好きのお仲間)で、ビクター盤と聴き比べたが、やはり、ドラムの鮮度・キレ、ベースの鮮明さ、などに明らかな違いがあった。プレスティッジというレーベルは、おそらくマスターテープの管理があまりよくなかったのだろう。だから・・・67~68年以降くらいからの、fantasyの再発盤(黄緑ラベル)から、極端に音質が落ちているようだ。そうして、その頃のマスターを使った日本盤の音質も・・・良くなるはずもない、ということかもしれない。(私見では、「紺」「黒」のイカリ・ラベルのRVGまでは、かなりいいように思う)

Stan Getz/4曲入りのEP盤(clef)から time on my handsDscn0720_1

この1952年のゲッツが、すごく好きなのだ。45回転で聴くゲッツのテナーは・・・どうにも素晴らしい。「ふわ~あっ」と漂うような軽み」が快感である。このEP-155は、ゲッツの他のEP盤に比べても、音がいいようである。

                                                                                          

Norman Grantz #4(clef) EP3枚組_002_5

このEP盤と、Yoさん手持ちの12インチClef(水色ラベル)の聴き比べをしてみた。EP盤の音は総じてカッティングレベルが低い。低いのだが・・・テナーの音色が、「すうっ」と浮き出てくるようなニュアンスがある。そういうある種の「軽み」に・・・却って、ゲッツの良さを感じる。
続けてかけたclef 12インチは、カッティングレベルも高くて、ピアノ、ドラムも骨太なClefサウンドで、やはり魅力のある音だ。僕はClefの音なら、どれもこれも嫌いではないようだ(笑)_003_8

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宴会の後・・・まだYoさん宅の音を聴いていないM54さんとPSYさんは、とにもかくにもYoさんの音を聴かねば!という決意がみなぎる。そうして、その流れに便乗する者が続出。まっさきに便乗したのは・・・このbassclefだったが(笑)
そんなわけでまたまた全員で、再度Yoさん宅へ。

アフターアワーズとして・・・pm8:45~pm10:15
PSYさん~
Bill Evans/Exprolationsから israel~このレコード・・・ラファロのベース音が他のリヴァーサイド盤とちょっと違う感じの音で、グウ~ッと沈み込んだ低いべース音なので、僕の機械ではなかなかその沈んだ低音がうまく抜けない。PSYさんも同じようなことを言っておられた。そしてその「沈み込むベース音」が、このYoさんのウーレイでは余裕で鳴っているではないか!

M54さん~
Grant Green /Idle Moments(bluenote) これはちょっと歌謡曲っぽい曲調のあれだ(笑) それを熟知しているPSYさんが演歌曲の紹介MCみたいなセリフを軽くはさむので、皆さん少し笑う。後半に出てくるジョー・ヘンダーソンのテナーがやはりいい。ジョーへンにしては、やけにサブ・トーンを多用して、ちょっとベン・ウエブスター風なものを意識したのかもしれない。

Yoさん~Phil Woods/Warm Woods(epic) からeasy living

ここでYoさんが、「ああっ、そうだ・・・「あれ」をみなさんにお聴かせしないと!」と言いつつ、Lou Donaldson/Blues Walk(bluenote;lexington) Blues_walk 《訂正》~このドナルドソン:1593番にLexingtonはあり得ない、とのコメントをrecooyajiさんより頂きました。さっそく、Yoさんに確認していただいたところ・・・この1593番は<47West 63rd NYCで、溝あり、Rマークなし>とのことでした。貴重なブルーノート盤というイメージでLexingtonと思い込んでしまいました。実は・・・僕は、オリジナル盤のラベル変遷にはあまり詳しくないのです(笑)
を取り出す。みなさんから軽いどよめき・・・(笑) これは、メリケンさんからのYoさんへのプレゼント盤だ。ちょっと前に「杜」にメリケンさんが「ジャズレコード下取り価格ピッタリ賞」のプレゼント盤として提供したのだが、これはYoさんが見事な読みで勝ち取ったのだった。盤質も演奏も素晴らしい。甘くて太いドナルドソンのアルトが鳴れば・・・「チャカポコ」のコンガも思いのほか気にならない(笑)

Yoさん・・・ではもう1曲あのマーキュリー盤からということで、
Al & Zoot/You an' Me (mercury)  you'd be so nice to come home to

パラゴンさんから渋いヴォーカル盤が、またひとつ。
ミリー・ヴァーノン/Introducing Milli Vernon (storyville) ジャケットの1箇所だけ色が付いている。とてもしゃれたジャケットである。

もうあまり時間がない。午後に聴いたハロルド・ランドの話しが出たので・・・僕はcontemporary盤から1曲、Yoさんにリクエストをした。Curtis_vol1_mono_1
Curtis Counce/Land Slide(contemporay) time after time ランドのバラードは実にいい。Curtis_vol1_stereo_1

                                                            

<あれれ?見慣れたはずのこの盤・・・何か変だぞ?右側のモノラル盤は左右が逆になっているのだ。2点ともYoさん手持ち盤>

コンテンポラリー盤がしなやかに鳴る。この場で鳴るこのレコードは幸せであろう(笑) そしてそのサウンドを聴く僕らも、また幸せなのだ

もう夜も遅い。まだ明日の神戸があるのだ。そこで、前夜に大阪入りしていたRoxanさんが、この日、仕入れてきたというレスターヤングを聴かせてもらうことにな った。Verve-Clefシリーズ(黒トランペット)の Lester Young/Lester Swings Again(verve) だ。曲は・・・stardust。
これが実によかった・・・。レスターとしては晩年の、何かこう全てを悟ったような・・・というかガツガツしない諦観の漂う、気品のあるスターダストであった。この盤を見て、Yoさんが取り出してきたのは、同じレスターのNorgran盤。ジャケットは違うが・・・曲名を見ると同じ内容の盤である。
こちらもかけてみる。レスターのサックスを少し聴くやいなや「う~ん」・・・と唸るRoxanさん。「黒トランペット」は、盤質も良く充分に生き生きとしたいいテナーの音だった。一方、Norgran盤は、ややカッティングレベルが低く、盤質も「黒トランペット」に比べれば良くはない。
しかしながら・・・このNorgran盤では・・・レスターテナーの音によりいっそうの生々しさ、レスターの気配がより濃厚に漂っているように聞こえた。
いずれにしても・・・本当にいい「スター・ダスト」でした。
僕は、この1952年のレスターヤングを全くの初めて耳にしたのだが、レスターヤングの淡々としながらも、時に「はっ!」とするような鋭いトーンに、
新鮮な驚きを覚えた。レスター・ヤングも、これから聴きたいテナーだな・・・と思うのであった。The_president_1

この「しみじみ盤」を聴いて・・・いよいよこの会を終わろう、そんな雰囲気が漂い・・・午前中から始まったYoさん宅での「ジャズ聴き会」は、こうして、ついに終わったのだった。
それにしても・・・ジャズは厭きない。

<左:レスターの垂涎的norgran盤。う~ん・・(笑)>

special thanks to Yoさん&BOSEさん!

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2006年5月24日 (水)

<やったあレコ 第5回> オスカー・ピータースンのClef盤『背中』

オスカー・ピータースンの<軽やか8ビート感覚>

Norman Grantz の得意技に、一人の作曲家の曲ばかりで1枚のアルバムを創る Plays ~というシリーズがある。エラには直線が個性的なビュッフェの絵画をジャケットにしたシリーズ、ピータースンにも「印象派風絵画」ジャケの9枚の作曲家シリーズがあった。

リンクしてある67camperさんという方のブログで、この9枚が紹介されている。どのジャケットもキレイなので全部が欲しくなる:笑) この9枚は大体1957年頃の録音で、Verve2000番台シリーズなのだが、9枚とも6000番台のステレオ盤でも出ているらしい。
そして、この「印象派風絵画」シリーズの「元ネタ」みたいなピータースンのレコードがあったのだ。こちらの録音はだいぶ古くて、1951~1952年らしい。ピータースンとレイ・ブラウン、そしてバーニー・ケッセル(あるいはハーブ・エリス)というドラムなしのトリオ編成のようだ。(1957年録音の方は、ドラム入りのピアノトリオ) Clef の600番台がオリジナルだ。それが・・・あのデヴィッド・ストーン・マーチンの「背中シリーズ」だ。どれも同じデザインなのだが「色合い」を変えている。Peterson_on_clef_etc_002_1

この「色合いの違い」がなかなか曲者のようで、どれでもいいのだが1枚入手すると・・・どうしても他のも欲しくなる(笑) それがNorman Grantz の作戦に違いないと判っていても・・・抗(アラガ)えない(笑)
僕は、この「背中」をEP盤で何枚か集めてきた。EP盤は”extended play” の略で、アメリカのEP盤というのは片面6~7分くらいで、たいていは4曲入っている。だから日本でいう「コンパクト盤」的なのだが、アメリカのEP盤は、基本的に45回転なのである。
このピータースンのEP盤「背中」・・・何人かは揃ったのだが、そうこうしているうちにEP盤(7インチ)と同じ図柄でLP盤(12インチ)も出ていたらしい、ということが判ってきた。当然、12インチがオリジナルだろう。それに・・・好きな作曲家の分は、やはり4曲だけでは物足りない。他の曲も聴いてみたい。12インチも欲しいよなあ・・・と、ごくごく自然な流れで12インチも少しづつだが入手した。それがこの3枚だ。 

Peterson_on_clef_etc_001_2    

《 plays Cole Porter/MGC-603(左)~ジャケ左上には”CLEF RECORDS”のシール。これをはがせば・・・たぶんmercuryという文字が現れるだろう(笑)
plays Irving Berlin/MGC-604(右)
plays Harold Arlen/MGC-649(真ん中)~この649番には”Hi-Fi”のロゴがジャケ左上にある。そしてジャケ裏には、"Oscar Peterson plays composers"なるシリーズ9タイトルが曲名入りで載っている。あと6枚もあるのかあ・・・(笑)》 

《追補》この後、refugeeさん、NOTさんのご指摘(コメント欄参照)により、このPeterson plays composersシリーズは、全10タイトルであることが判った。参考までに以下にリストアップしておく。

MGC-603 Oscar Peterson Plays Cole Porter
MGC-604 Oscar Peterson Plays Irving Berlin
MGC-605 Oscar Peterson Plays George Gershwin
MGC-606 Oscar Peterson Plays Duke Ellington
MGC-623 Oscar Peterson Plays Jerome Kern
MGC-624 Oscar Peterson Plays Richard Rodgers
MGC-625 Oscar Peterson Plays Vincent Youmans
MGC-648 Oscar Peterson Plays Harry Warren
MGC-649 Oscar Peterson Plays Harold Arlen
MGC-650 Oscar Peterson Plays Jimmy McHugh


ピータースンの4ビートの「ノリ」は・・・確かに凄い。あれよあれよ、とアイデアに満ちたフレーズが飛び出し、しかもそれが尽きない。そしてたいていは高音部で3連やら16分音符を軽く交えながら、華麗にアドリブを繰り広げていく。こうなれば、もうエンジン全開である。そうして、ピアノという楽器が参ってしまうのではないか、と思うほどそれはもう・・・果てしなくノリ続ける(笑) ただ・・・「ノリ」の質は、やはり・・・やや単調である。
いくら速いフレーズを弾いても、「ノリ方」がややスイング的なのだ。説明しづらいのだが~4ビートは1小節に4つの4分音符で進行していくのだが~その4つの4分音符、全てに「ノってしまう」というか・・・雰囲気で説明すると・・・「ウン・ウン・ウン・ウン」と、4つ全てに均等に体重がかかっている」という感じなのだ。
「ノリ」の話しは・・・難しい。「ノリ」の質というものは・・・もちろんミュージシャンの個性により違ってくるが、やはり演奏スタイル(結果としての)~例えば1930年代と1950年代では、明らかに違うと思う。
「スイング」と「ハードバップ」の違い~楽器編成や取り上げる曲の感じも違うが・・・一番の違いは、実は「ノリの質」かもしれない。
バップやハードバップ(と呼ばれるスタイル)になりつつある頃には、この「ノリ」が「ウー・ウン・ウー・ウン」という風に、1拍目と3拍目を意図的に弱くして、2拍目と4拍目を強調させたのだ。つまりアクセントに「でこぼこ」を付けたのだ。スイングというスタイルにおいては、そういう明確な意識はなかったと思う。
判りやすい例で言うと・・・ドラムスの「バスドラ」、あれを聴けばよく判る。スイング時代までは、1小節を、正に4分音符4回「ドン・ドン・ドン・ドン」とバスドラを鳴らしているのだ。もちろん「ドン」の「ン」を休符にして「ドッ・ドッ・ドッ・ドッ」と鳴らしたり、あるいは「ドッ・(休み)ドっ・(休み)」と1小節に2回鳴らす場合もある。ただしこの2回の場合も・・・やはり、1拍目と3拍目にアクセントを置く場合が多かったはずだ。いずれにしても、スイング時代の「ノリの質」というのは・・・1小節の4分音符4回を「均等に」ノッている、そんな意識だったと思う。
ピータースンの「ノリ」には・・・そんな「ウンウンの感じ」が残っているように思える。もちろん・・・それが悪いというわけじゃあない。スイングのノリは気持ちいいのである。
1947年のライオネル・ハンプトンの「スター・ダスト」~あれだってやはりノリで言えばスイングだろう。だけどとにかくあのアドリブとあのノリは、実際・・・気持ちいいのである。
しかし・・・ピータースンの、そのノリまくる「ノリ」をあまり聴くと・・・やや疲れてくる。ステーキの後は野菜を食べた方が健康にもいい(笑) 

そこで・・・ピータースンの「バラード」なのである。象徴的な意味で「バラード」と書いたが、「ボッサ」あるいは「ラテン」でも一向に構わない。
Clefの古い音源からMPSやパブロなどの新しい録音まで、どのレコードを取っても、たいてい「バラード」や8ビート系「ボッサ風」、あるいは16ビート系(サンバ風)の曲が何曲か入っている。ピータースンはやはり判っているのだ~4ビートばかりでは、聴き手が飽きてしまうということを。

前回の<夢レコ ピータースンとVerveレーベルのこと>で取り上げた「The Trio:Live From Chicago」でも2曲のバラードを演奏している。 
the night we call it a day (マット・デニス作曲です)と 
in the wee small hours of the morning である。
ただでさえ「ノリノリ」になっていたライブでの演奏・・・そんな曲にはさまれて、この2曲が実にいい味わいなのだ。「あれっ?ピータースンってこんな静かにも弾くのか」と。少々驚いたほどだ(僕はピータースン初心者なので、あまり多くのアルバムを聴いてなかった) 
そして、ライブの場でこういうチャーミングなメロディのバラードをあえて演った・・・そのことにピータースンのセンスの良さも見直した。

そういえば・・・wheat land というピータースンの自作曲もあった。この曲、「カナダ組曲」(limelight)が初出自だと思うが、ちょっと後のMPS盤「グレイト・コネクション」でも再演していた。「グレイト・コネクション」は、あまり話題にはならないが、たしかベースのペデルセンが最初に共演した盤だったと思う。こちらの盤に入っている wheat land がなかなかいい。軽いボッサ風の曲だ。ペデルセンが弾くウッドベースのそのたっぷりとした音量に支えられて、ピータースンがソフトなタッチで気持ち良さそうに、シンプルで気持ちのいいメロディを弾く。ラストのテーマで徐々にゆっくりになる辺りもチャーミングだ。

ピータースンは「ラテン風」も嫌いではなかったようだ。さきほど挙げた「背中シリーズ」の Plays Cole Porter ~この3枚の中ではこれが一番好きだ~のような古い録音の盤では、ラテンっぽいノリで何曲か演奏している。以下の曲がそれだ。Peterson_on_clef_etc_003
I've got you under my skin

I love you

so near and yet so far

in the still of the night

night and day

この辺の曲はギターのイントロところから~「ウチャーチャッ・ウチャッ・ウチャッ」という具合に聞こえる~やけに軽やかなのである。
ギターが生み出す「ラテンのノリ」というものには一種独特な「軽やかさ」があって、僕はそれを嫌いではない。このギターはバーニー・ケッセルなのだが、やはり名人芸である。そのスムースな気持ちのいいラテン風のリズムに乗って、ピータースンが、これまた全く力まない軽やかなタッチで、メロディを弾きだす・・・う~ん、気持ちいいっ!

4ビートにおいても、あまり粘らないピータースンの8分音符のノリは、ボサやラテンの8ビート系の曲には、自然と「合う」のかもしれない。
たいていは、「テーマだけラテン風」あるいは「ラテン風と4ビートが交互に出てくる」というパターンなのだが、全体に流れる「軽やかさ」が~ドラムレスというのも、その「軽やかさ」の秘密かもしれない~どうにも気持ちがいいのだ(笑) ピータースンの味わいどころは、「グイグイのノリ」だけではなかったのだ!

作曲家別ということで言えば、このコール・ポーターの曲想にはラテン風味が合う、ということかもしれない。
(2つ上の写真右側の)レモンイエローのジャケットの Irving Berlin 集では・・・あれっ、ラテン風がひとつもないぞ。ほとんどが4ビート、あとはバラードなのだ。その少しのバラード・・・これもなかなかいい味わいだ。

isn't this a lovely day~シンプルに繰り返すだけのようなメロディだけど・・・捨てがたい味がある。終始ソフトなサウンドで4拍づつ刻むケッセルのギターの伴奏が効いている。レイ・ブラウンが時々、得意なカウンター的フレーズを繰り出したりする。
say it isn't so ~これなどは相当に地味な曲だが・・・瑞々しいタッチと芯のある音色で端正にメロディを弾くピータースンは、(僕には)すごく新鮮だ。
how deep is the ocean~こういうマイナーな曲調は・・・ピータースンにはあまり似合わないようだ(笑)「暗いパッション」という雰囲気にはならないのだ。しかし、その「サラッ」とした感じもまたピータースンなのだろう。

Peterson_on_clef_etc_004_1 《plays Cole Porterの裏ジャケット。 アロハシャツを着た若々しいケッセルが写っている。嬉しそうにベースを弾くレイ・ブラウンも若い。ピータースンのネクタイもオシャレだ》

ところで、このclef盤の音質なのだが・・・残念ながら素晴らしいとは言えないのだ。ピアノの音が、高音がややキツメで線が細い(ように聞こえる)
その分、ピータースンのタッチの小気味よさはよく出ているのだが。それより残念なのは、レイ・ブラウンのベースの音である。たぶん、録音のマイクの性能のためだろうと推測するのだが、1952年くらいの録音だと、どうしても「ウッドベースの音」が弱い。弱いというか、遠いというか、はっきりしないというか・・・ウッドべースの「鳴り」や「音圧」が、あまりうまく録られていないことが多いように思う。同じレイ・ブラウンの演奏であっても、後の「ロンドン・ハウス」でのライブ録音のベース音の質感とはだいぶ違うので、せっかくのレイ・ブラウンの「音圧ベース」が、いまひとつ力強く聞こえてこない。まあ・・・こういう古い録音盤を聴くときには・・・そのミュージシャンの「録音のいい盤での音」をイメージしながら、「あんな感じ、あんな音圧でに弾いているんだろうなあ・・・」と想像しながら聴くしかない。
そういう聴き方~「イマジネイション補正聴き」~僕は案外・・・得意なのだ(笑)

それから古い時代のミュージシャンで「録音のいいレコード」がない場合でも、「補正聴き」は必要だと思う。イマジネイションでもって「実際に出ていたであろう楽器の音~鳴り方・響きの具合」を、想像しながら聴くのも楽しいものである。
たとえば、パーカーのライブ音源などの場合~たいてい(マイクの入力レベルの関係で)ドラムはバシャバシャと歪み気味でやかましいし、ベースは逆に遠くのほうで微かにボンボンと鳴ってるだけ~そんな音質もザラである。でも勘違いしてはいけない。その場の演奏においては、ドラマーが叩くドラムのサウンドが「歪んでいた」わけではないのだ!ベーシストも、いい加減な音を出してただ突っ立っていたわけではないのだ!ついでに言えば・・・「シュ~」というレコード盤のノイズも、ライブの場では絶対に存在していなかったのだ!そして、そんな「よくない音」が録音の状態によるものであることを考えに入れてから、じっくりとパーカーのアルトの「響き」を聴けば・・・それが相当に大きな音で鳴っており、豊かにそしてシャープに響いていたであろうことは充分に想像できる。聞こえにくいベースも丹念にそのベースラインを聴いていけば・・・(ボム・ボムという鳴りを感じていけば)カーリー・ラッセルやトミー・ポッターが、きっちりとひとつづつの音を進めているのが判るはずだ。

そういえば・・・むかしジャズ喫茶に通っていた頃~僕はモンクやエヴァンス、ロリンズなど強い個性・自我を主張するタイプに没頭していたので~「ピータースンなんか・・・」という僕に、そのジャズ喫茶のマスターは「ピータースン・・・バラードなんかは案外いいんだよなあ・・・」と独り言のようにつぶやいたものだ・・・。だけどあの頃の僕には、そんなことは全く判らなかった。あれから30年も経って・・・ようやくオスカー・ピータースンを聴き始めている(笑)

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2006年4月27日 (木)

<ジャズ回想 第4回> ニーノニーノさんのオフ会のこと。

こんな具合に・・・白馬の夜は更けていった~

第2回 白馬/杜の会が、今年もつい先日、行われた。場所は昨年と同じ、信州・白馬のオーディオ・ペンション「洗濯船」である。
「杜の会」とは・・・オリジナル盤通販専門店ニーノニーノさんのBBS「こだわりの杜」のオフ会のことだ。
詳しくは・・・そのHPのBBSとコラムをお読み下さい。こだわりのオヤジたちがいつも集っております(笑)http://www.ninonyno.ne.jp/ninonyno/topmenu.htm

今年の「杜の会」は、だいたい以下のような流れで行われた。
第1部~「Duke氏のレコード語り」(地下JBLルーム)
第2部~「みなさんの一押しレコードpart1 」(1Fマッキンルーム)
第3部~「家庭的かつ良心的なオークション」 そして・・・
第4部~「みなさんの一押しレコードpart2 」(地下JBLルーム) だ。

食堂(1Fマッキン)での第2部「みなさんの一押しレコードpart1 」は、ちょっとお酒の入った夕食の後、誰かれとなく「じゃあそろそろ・・・」「そうですねえ・・・ゲヘヘヘッ(笑い声)」てな感じで・・・もちろん和気アイアイと、しかし若干の緊張を伴って始まる。みなさんが持ち寄った「一押し盤」の中から1枚を選び、簡単なコメントをつけて1曲づつ披露するわけだ。みなさん、もちろん「自分が好きな盤」をかけることとは思うが、そこはやはり相当な音楽好き達を前にしてのお披露目である。若干のミエもないわけではない(笑) 
「あんまり音が良くないレコードだなあ」とか「これのどこがいいんだ?」「よく見る盤だな」などと思われないだろうか?・・・などと余分なことも考えてしまう。(いや、そんなのは僕だけか?)
だから・・・ちょっと「かっこつけた盤」になってしまうこともあるかもしれない。「絶対に大丈夫な盤」。つまり・・・明らかに演奏のいい名盤、明らかに音のいい盤、明らかに希少盤・・・そんな感じか。

とにもかくにも、今年が初参加のお2人から、1Fマッキンルームでの音だし(第2部)は始まった。僕は JATP new volume 5 (clef)12インチ(古い録音だけどサックスの音色などが素晴らしい)と Lee Morgan/Here's Lee Morgan (vee jay) (僕の中ではちょっと新らしめの「いい録音」1960年のステレオ録音。)Duke Plays Ellington (capitol)(12インチ:ターコイズ)などを用意していた。
_003_1僕の順番は3人目。1人目が女性ヴォーカル(ポリー・バーゲン)、2人目がオペラ(マリア・カラス)ときたので・・・「ここはカラッとしたハードバップだな」というわけで・・・Here's Lee Morgan (veejay) を選んだのだ。VeeJayのステレオ盤は、音もまあまあだと思ったので選んだのだが・・・ちょっと中途半端ではあったようだ(笑) それほどの希少盤ではないし、リー・モーガンには他にも名盤があまたある。選んだ曲も、地味なジャズメン・オリジナルだ(milt jackson作のoff spring という曲) 昨年もそうだったが、クレフやノーグランのゲッツやらホッジスの超希少盤が次々に登場してくるので、普通のハードバップ盤じゃあ、とても対抗できないようだ(笑) しかし・・・食堂のマッキンルームの「壮大な鳴り」で聴く「ハードバップ」も悪くはなかった。ブレイキーの、かなりでかそうなライドシンバルのグワ~ングワ~ンという鳴り具合や、ベースのチェンバースの大きな音(ちょっと出すぎくらいにベースが大きな音像で鳴っていた) ケリーの転がるピアノタッチなど、どれもマイルドないい音で鳴っていた。まあでも・・・ノッて聴いたのは、僕だけかもしれない(笑)

第1部でかかった曲を列挙しておこう。(だいぶ記憶が飛んでますので・・・不完全です:笑)

D35さん~ポリー・バーゲンTHE PARTY'S OVER(columbia) から smoke gets in your eyes
マントさん~MARIA CALLAS sings ROSSINI and DONZETTI・arias(UKコロンビア) から LA CENERENTOLA(F・Rossini) Nacqui all'affanno(Act2)
bassclef~リー・モーガン here's Lee Morgan(vee jay:stereo) から off spring *前述
ワガママおやじさん~ドロシー・ドネガン(レーベル名を失念。珍しいレーベルの盤)から on green dolphin street 
*<補足>~下記コメントにあるようにワガママおやじさんからデータを頂ました。この珍しい盤は・・・Dorthy Donegan/Swingin Jazz In Hi-Fi (Regina 285) なる盤でした。
パラゴンさん~Eve Boswell(女性シンガー)の 「you go to my head」
SPUさん~ジーン・アモンズ、the Boss Tenor(presige:銀・黒ラベル) から my romance
YOさん~リッチー・カミューカ~ Richie Kamuca Quartet (mode) から what's new? ともう1曲、ペッパー・アダムス(mode)から my one & only love
リキさん~プレヴィンの指揮したアルビノーニのアダージョとモーツァルトの宗教曲
Dukeさん~ジュリーロンドン the end of the world
       カーペンターズ   the end of the world

さて・・・そんな第2部「みなさんの一押しレコードpart1 」が終わって、オークションで盛り上がった後・・・いよいよ第4部~「みなさんの一押しレコードpart2 」(地下JBLルーム)が始まった。ここでは、もうちょっと個人的好みの強いマニアックな盤が登場することが多い。いわばみなさんの「本音盤」である。そんなみなさんの「本音盤」と、かかった曲を以下に記しておこう。

YOさん(YoさんとBoseさんのネタ)~ジョニー・グリフィン2題!
     Johnny Griffin /Way Out [riversideオリジナル・ステレオ盤/日本ビクター盤/WAVE盤]と the Kelly Dancers  [オリジナル・モノラル盤/WAVE盤/fantasy custom盤] での聞き比べ。

ワガママおやじさん~Modern Music From SanFrancisco(fantasy) なる3つのセッションを集めた盤:Jerry Dodgion のセッションからmiss jackie's delight ピアノがソニー・クラークです。*後述_001_2

bassclef~フリップ・フィリプス/EP盤(Clef)から I'll never be the same

・・・このEP盤には愛着がある。とにかくジャケットが好きなのである。EP盤の左側~Flip Phillips Quintet というタイトル。ワンホーンでしみじみとしたフィリプスのテナーが味わえる。10インチオリジナルが欲しい・・・(笑)

パラゴンさん~ヘレン・メリル/mercuryのオリジナル盤(大ドラム)から you'd be so nice to come home to

SPUさん~ルイ・アームストロング/Satchmo At Symphony Hall/Decca より (What Did I Do to Be So)Black And Blue・・・哀感が漂う名曲でした。(トランペットつながりで~題して「魂の叫び」by オーナーMさんとSPUさん)
マイルス・デイヴィス/Live Around The World (ライブ盤)より
Time After Time・・・つぶやくような、しかし時に押し殺した声で泣いているような、そんなマイルスの表現力には圧倒された。後半、マイルスとギターやベースとの絡みは、ギター奏者が必死に音量を抑えたような弾き方で、マイルスと対峙し、とてもスリリングな一瞬だった。そしてぐぐ~っと音量を上げるシンセ・・・「ドラマティックな演出」というのはすごく判るのだが・・・シンセの音自体に・・・どうしても馴染めない自分でした。

マントさん~マリア・カラス/L'ELISIR D'AMORE(R・Donizetti) Prendi;per me sei libero(Act2) 

YOさん~Ben Webster /meets Oscar Peterson (Verve)
     [Verve Inc.(Celf sereis)]モノラルと [Stereophonic]~同タイトルの2種。曲は「bye bye blackbird」での聴き比べ。*後述

_002_1bassclef~パーカーのEP盤(clef:写真左)から just friend 
   ・・・最初33回転でかかり「あれ?このテナー誰?」という感じ(笑)、すぐさま45回転でかけ直すと・・・めでたくパーカーが出現しました(笑)

このパーカーのEP盤もわりあいと音がいい(ように思う) 状態のいい10インチ盤もぜひ聴いてみたいものだ・・・。
(パーカーつながりで)
SPUさん~ Bird And Diz/clef 10inch より Bloomdido(clef:10インチ)・・・オリジナル10インチはやはり凄い。モンクのピアノがタッチが強力だということが、改めてよく判った。

リキさん~ (?)演奏者失念/モーツアルトの最晩年の「?」・・・静かに淡々と流れる曲でした。これもそこはことなく哀しみが滲むような・・・。

巨匠Y氏~beatles (UKだったかのシングル盤から come together と something リンゴのドラムがよかった! *後述

YOさん~ギターもの2題~マイケル・ヘッジス/「?」(ミュージシャン名、違ったかも?)(曲名 失念)
・・・開放弦がキラキラと鳴り、弦の響きがキレイに録音されているレコードだった。個人的には「ソロ・ギター」があまりに大きい音像だと、ちょっと違和感を覚える。
カルロス・モンターヤ/「?」 ・・・フラメンコの名手とのこと。右手のアポヤンドが、凄い強いタッチだ。フラメンコは濃くて凄すぎる。

Dukeさん~Miles Davis:Cookin' から「my funny valentine 」~純正オリジナル 446W盤は・・・やはり凄かった。*後述

オーナーM氏~ジョニー・ホッジス MGN 1059 Johnny Hodges - In a Tender Mood (norgran)から tenderly
・・・ホッジスにしてはあっさり風味に聞えた。やはりエリントン絡みの曲では、特別に濃厚になるのだろうか。

D35さん~ダイナ・ショア: Somebody Loves Me(capitol) IT'S EASY TO REMEMBER
・・・しっとりとしていい唄い手だと思う。ダイナ・ショア、好きな声です。

マントさん~コルトレーン:Live At The Village Vanguardから spiritual (第1部Dukeさん「レコード語り」の時、時間の都合で10分ほどでカットしたので全曲通して)

bassclef~デューク・エリントン Duke Plays Elligton (capitol) (12インチ:ターコイズ)から (この時、Dukeさんが再登場! 「ちょっといいですか?」と言いつつ・・・2人の女性にまつわる話しから、エリントンとこの曲へのオマージュを語る(笑) _004_8

   

                                             

in a sentimental mood と passion flower~しんとした響き。ラテン風エキゾチックな曲調だが、バックでほんの小さく鳴るドラムスの「手叩き」(だと思う)が絶妙だった。
オーナーM氏~アート・ブレイキー:バードランドの夜 vol.3(bluenote)~10インチオリジナルから confirmation *後述

こんな流れだったのだが・・・盤の音質も含めて、特に印象に残った場面をもう少し紹介しようと思う。

Modern Music From SanFrancisco(fantasy)
ピカピカの赤盤だった。こういうcoloured vinyl はよく見ると・・・半透明なので向こう側がうっすらと向こう側が見えたりする。それはもう・・・唸るほどの垂涎盤だった(ちなみにヨダレは出てません:笑)
この盤には3つのセッションが入っている。ワガママおやじさんがセレクトした1曲は・・・アルトのJerry Dodgionのリーダーセッションから miss jackie's delight なぜこの曲か?もちろん・・・ピアノのソニー・クラークが入っているからなのだ。
1955年の録音なので、ソニー・クラークとしては、バディ・デフランコとのVerve録音と同時期ということになる。
miss jackie's delight は速めのテンポのブルースで、ドジオンのやや軽めの音色のアルトが快調なロングソロを取った後に、いよいよクラークのピアノソロが始まった。初期のクラークらしいやや「軽め」(後期に比べれば)だが、キレのいいタッチがたっぷりと聴けた。デフランコとのVerver諸作では、クラークのロングソロというのはほとんどなかったので、この1曲での16コーラス(とベースソロの前の+4小節。長いので数え違えたかも:笑)にも及ぶロングソロだが、アイデアのあるフレーズが次々に飛び出してきて、まだまだいくらでも弾き続けられそうだ(笑)初期のクラーク好きは、これはもう必聴だと思う。
ちなみに・・・この盤、僕の手持ちは・・・トホホのOJC盤(笑)それでも「赤盤仕様」になっているところが意地らしい(笑)

Ben Webster /meets Oscar Peterson (Verve)
[Verve Inc.(Celf sereis)]モノラルと [Stereophonic]~同タイトルの2種。曲は「bye bye blackbird」での聴き比べ。
これがおもしろかった。
モノラルカートリッジで聴いた「モノラル盤]~テナー、ピアノ、ドラム、ベースなど個々の楽器は、大きな音で、はっきりくっきり出てくるので、大迫力だ。
ただ逆に(好みによっては)ベースの音像が大きすぎだったり、ドラムのシンバルやピアノの音がちょっときつすぎたかもしれない。
ステレオカートリッジで聴いた[stereophonic盤]~テナーとベースがやや左側、ピアノが中央、ドラムがやや右側へと音場が拡がった。しかしそんなことよりベースの音像も締まり、ピアノの高音もさきほどのモノラルの「全てがフォルティシモ」的なサウンドから比べてうんと、聞きやすくなった。タッチの質感が出てきた。そしてテナーも適度なフクラミ具合の優しい音色になった。もちろんこれも好みによっては、モノラルの力強さがなくなって「ヤワ」になったと感じるかもしれないが、僕はやはりこの[stereophonic盤]はいい録音で、聞きやすい音質だと思う。
そして・・・(このBen Webster盤の場合)さきほどの[モノラル盤]があまりにも「強い」音だったので「このモノラルカートリッジの性質が音成分を拾いすぎ(強調しすぎる)かも?」という仮説の下に「ステレオカートリッジでモノラル盤をかけてみて」というリクエストが巨匠Y氏から飛び出した。
もともと「厚く」楽器の音が入っているであろうモノラル盤にモノラルカートリッジでは「強くなりすぎ」であれば・・・(モノカートに比べれば)「薄めの」ステレオカートリッジで「厚い音のモノラル盤」をかければ、あるいは・・・?という期待が、皆に広がる。オーナーのM氏が針を落とす。しばしの沈黙・・・微かなチリチリ音・・・。そして出てきた音は・・・・・。
「おおっ!」予想した通り、いやそれ以上の「効果」だった。まさに「ちょうどいいバランス」でテナー、ピアノ、ベース、ドラムスの音色が、「うれしそうに」スピーカーから飛び出てきたのだ!本当に「ちょうど!」のバランスになってしまったのだ。モノラルの厚みある楽器の音色、ステレオの場合の各楽器の分離のよさ・スッキリ感、その両方が「気持ちのいいモノラル」として目の前で鳴っていた。「してやったり」と納得のうなずきを見せる巨匠Y氏。
そして・・・この時のDukeさん、そしてYOさんのうれしそうな顔(笑) というのは・・・両氏は「モノラル盤を聴くからといって、必ずしもモノラルカートリッジに拘る必要はない」という主義であるからして。
カートリッジの「音の拾い方」というのは、こんな風に、その特性をうまく生かしてやれば、アンプやスピーカーを換える以上に、入り口のところで基本的な「バランス」を決定してしまうのだなあ・・・という実感を持った。もちろん、「盤」によって元々バランスのクセに差があるわけだから。だから・・・今回のこのケースは、あくまでこの Ben Webster meets Oscar Peterson というレコード<もともと各楽器の音をぎゅっと詰め込んであった音造りをしてあった「モノラル盤」>だったから、ステレオカートリッジによる中和がうまい具合に作用した、ということかもしれない。

the beatles /come together  と something (多分、UKのシングル盤)
全くの私見では(この<夢レコは全てが私見ですが:笑)・・・地下JBLの音は・・・ド単純に言って「ロック」に最も合うように思う。特にベースとドラムがテーマを演じるこの come together で、そう感じたのだ。
エレベ(電気ベース)の音が強力だったのだが、ロックの場合だと、かなり大きめの音量・音像でも違和感がない(ように思う)
それから、come together のテーマの部分をベースが弾いた後の部分・・・リンゴがちょっと「緩めのチューニング」(だと思う)で、スネアやらタムタムを3連で叩く場面の見事な「音圧感」・・・これは凄かった。その「音圧」が「ン・ド・ド/ド・ド・ド/ド・ド・ド/ド・ド・ド」てな感じで、右チャンネルから何度も飛び出てくる。この「音圧感」は、ロック苦手な僕にも、ある種の快感ではあった。(自宅に帰って聴いたベストCDでの come together のショボイこと(笑))

Miles Davis/Cookin'  から「my  funny valentine 」
prestige, NY.W.446のオリジナル盤だ。ジャケットのコーティングもぐう~んと分厚い。これは凄かった。チェンバースのベースの音がやけにリアルなのだ。もともと prestige のベースの録音は、columbiaと比べると、ベースの音が「ペンペン」なのだ。低音の響きの部分がprestigeでは極端に薄い。しかしその分、左手が弦をこする音とか右手で強く弦を引っ張ったような、そんな気配をよりリアルに感じ取れる録音なのだ(と思う) だから、ベースの音程を聴き取るのには、prestigeが最適なのだ。そうして、チェンバースのあまりよくないピッチ(音程)も、やけにリアルに聴き取れてしまうのである(笑)
この446Wアドレスの純正オリジナル盤においては・・・その「リアルなベース音」が、より一層、鮮明に聴かれたのである。もちろんcontemporaryやcolumbiaのベースの音が好きな方(一般的にはこの方が多いかな?)には、このベース音は「硬すぎる」かもしれない。でも・・・これがprestigeの録るウッドベースの音なのだから、仕方がないだろう(笑) 

最後に「1枚、お聴かせします」とオーナーM氏。残っていたのは・・・D35さん、マントさんと私、bassclefの3人だけ。そして・・・あの盤が登場したのだ! 
オーナーM氏~アート・ブレイキー:バードランドの夜 vol.3(bluenote)~10インチオリジナルから「Confirmation」
青い色調がやけにキレイな10インチ盤(vol.3)だ。このクリフォード・ブラウンが凄かった。夕方のM氏の挨拶代わりの「モーニン」(bluenote)でのリー・モーガンも「いい響き」をしていたが、この10インチ盤のクリフォードブラウンは・・・これはもう・・・とにかく素晴らしかった。余分なエコーなど全くない「素」の録音という感じで、ブラウンの「乾いたような、しかし音色のエッジを若干ふわッとさせたような」独特な響きが、むちゃくちゃに生々しく感じられたのだ。続くルー・ドナルドソンもアルトも、より分厚い音色で図太い感じだ。もう少し後期のドナルドソンには、ある種の軽さ・甘さが出てくるように思うが、この1954年のドナルドソンのアルトの音色にはもう少し「重さ」があった・・・ということを実感できた。そしてブレイキーの右手のライドシンル・・・このシンバルの高音は、モノラルの古い録音でさすがにちょっと「詰まった」ような音ではあったが、その臨場感から、ブレイキーが終始かなりのヴォルームで叩いていたのであろう・・・ことがよく判った。実際、ライブハウスでのドラムスのシンバル音というのは、相当にでかい(笑)ハウスの形状(そしてもちろん奏者の叩き方具合)によっては、響きすぎてやかましいこともよくあるのだ。この10インチオリジナル盤においても、ブレイキーのシンバルが相当に大きく響いてはいたが・・・それはその場の「音楽を必死に生かそうとしている響き」に聞えたので、僕には全く気にならなかった。
このライブ盤は、本当に凄いと思う。クリフォード・ブラウンの漲る(ミナぎる)ような生気感が、バンド全てを「ノセて」しまったのだろう。「1954年2月のバードランドの夜」は、大げさではなく奇跡の夜だったのだ。
そして「その夜の空気感」を再現した「2006年4月の白馬の夜」も・・・これまた素晴らしかった・・・。

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2005年12月 4日 (日)

<やったあレコ 第4回> スターダスト(Decca)

「1947年のスターダスト」~奇跡のような15分を聴き比べてみた。

hampton_4ep_010ニーノニーノさんのオフ会(4月白馬にて))では、ラファロ入りのワーナー盤やClefの10インチ盤、リバーサイド盤やマーキュリー盤など本当に素晴らしい盤を聴くことができた。そして・・・45回転の凄さを垣間見ることができたのもこの時だった。ゲストの方が持ち寄ったライオネル・ハンプトンの「スターダスト」~EP4枚組(Decca)に度肝を抜かれたのだ。EP4枚組というフォーマット自体もすごくチャーミングだったが、やはりその「音」に、どうしようもなく魅かれてしまったのだ。
1971年頃・・・ジャズの聴き始めの頃に知ったこの「スターダスト」は、以前から好きな演奏だった~他の時代の演奏と区別するためにか、1947年のこの演奏を「オリジナル・スターダスト」と表記していることが多い~この15分ほどの演奏が全く長く感じない。次々と現れるソロがどれもいいし、とにかくハンプトンのソロが・・・もうどうしようもなく素晴らしいのだ。いわゆるモダンジャズが好きな僕だが、この47年の「スターダスト」には~スイング時代(の終わり)の演奏だからつまらない~などというようなことは、これっぽちも思わない。中3の時、AMラジオ(日立ミュージックインファイフォニックという番組)で聴いてなんとなく「いいなあ・・・」と感じて、その後、FMラジオからカセットに録音してまた何度も聴いて・・・とにかく大好きな演奏なのである。そんな風に好きな演奏だったので、10インチの盤というものを初めて買ったのも、このDeccaのJust Jazz All Stars/Star Dustだった。ただその10インチ盤を入手した頃は、聞き比べなどという意識もなかったし、機器が悪かったのか耳が悪かったのか、とにかく・・・10インチの盤質の悪さ(チリパチノイズ)ばかり気になってしまい、10インチ盤もたいしたことないなあ、で終わっていたのだ。
ところが・・・白馬で聴いたあの音は、全くの別物だった。ジャズ好きが集まり、若干のお酒も入ってみんなの気分がなごやかになっており、そしてこの1947年の演奏があまりに素晴らしくて・・・だから、あんな素晴らしい「まろやかな音」に聞こえたのかもしれない。
ウイリー・スミスが吹くテーマ:あのベンドさせる(せせりあがる)箇所、チャーリーシェイバースが観客を湧かす箇所(唇を緩めて出す「ぶお~っ」というような音)、スラム・スチュアートの弓弾きとハミングでのユニゾン、それからハンプトンの出足でのあの強烈な叩き具合と切れのいい倍テンポのソロ。全てが素晴らしかった・・・。hampton_4ep_009

そのEP4枚組のボックスセットを、ちょっと前に運良く入手できたのだ。ジャケットは10インチ盤と全く同じ。オートチェンジャー用のためか、4枚の各片面にStar Dust が、もう片面に The Man I Love が収録されている。15分の全曲を聴くには、4回もEP 盤をはめ換えなくてはならないので、ちょっと面倒ではある。でも・・・うれしい(笑)
それと、10インチ盤のウラジャケット右上に、also available in 45RPM ALBUM 9-154 とも表記されている。この9-154番は、正に、今回入手した4EPの型番である。ということは・・・10インチも4EP盤も発売時期は不明だが、この2タイトルが同時期のものであることは、間違いないだろう。

少し前にUK盤EP(これは1枚のウラオモテに「スターダスト」のみ収録)も入手していたので、以前にいい印象のなかった10インチ盤の再評価も含めて、これら4種類の盤で、しっかりと聞き比べをしてみることにした。

hampton_001Lionel Hampton/The Original Star Dust(ビクター)VIM-5505(M) 1978年 国内盤

Lionel Hampton/Just Jazz:Star Dust (Decca) DL 7013  10インチ盤

Lionel Hampton/Just Jazz:Star Dust( Decca) Album 9-154  EP4枚組

Lionel Hampton/Star Dust(part 1 & part 2)(Brunswick) OE 9007  UKのEP盤

このビクター国内盤は、一聴すると~10インチやEPよりもカッティングレベルが高いので~いい音に聞こえる。実際、ヴォリューム位置が同じだと、音量の大きい分だけ「迫力」を感じたりする。しかし、次々に登場してくるソロイストたちの楽器の音色に~この音色を味わうというのがジャズ聴きの大きな楽しみなのだ~どうも魅力が感じられない。「こもったような感じ」だ。この「スターダスト」は、相当に古い録音なので(1947年)そのためかな?とも思い、次に10インチとEPで聞いてみると・・・これが全然違うのだ。「鮮度」が違う。(その「鮮度感」は、10インチと4EP間に差はないようだ)

どんな風に違うのか(僕が感じたのか)・・・出足のハンプトンのイントロでは、ハンプトンも「弱め・小さめ」に叩いているようで、それほど差を感じないのだが、アルトのウイリー・スミスが、あの「せせりあがる」吹き方で登場してくる時の音色、それから観客の唸るような歓声・・・これらの「質」が全然違う。ものすごく、はっきり・クッキリしている。テナーのコーキー・コーコランの音色も、国内盤では、「ふやけ気味」で、柔らかい音色というより、やはりこもった感じの音に聞こえる。同じ箇所を聞き比べると・・・10インチとEPでは、テナーの音色がもう少し「高い音域までくっきり鳴り、堅い」感じだ。そうして、ソロの最後の方でアタックをかけて吹く場面など、この「堅い」音色の方が、明らかに「リアル」だ。「歓声」の質でもそうだったが、10インチやEPでは、何かこう「ピントがギュッとあって締まった感じの質感」を感じられるのだ。たぶん・・・この国内盤では、ヒスノイズを目立たないようにするためか、イコライズして中高域をかなり絞ったのだろう。10インチやEPでは、確かに盤質の程度不良ということもあり、けっこうチリパチが鳴ったりするが、それでも「中高域まですっきり抜けた感じ」がする。「鮮度感」が違う。一言で言うと・・・とにかく「楽器の音色の生々しい」のだ。「中高域」と簡単に書いたが、これは単に周波数の高い音域というだけでなく、おそらく、様々な倍音まで含む「響きの成分」が、この「中高域」にたっぷり含まれているのだと思う。一般的に高域の「シュ~シュ~・ノイズ」を嫌う国内盤では、過度のイコライジングにより、この大切な「響きの成分」まで減衰させてしまっているようにも思う。
オリジナル盤には「(奏者の)存在感」がある、と表現されるが、ひょっとしたらこの「響き」の中に・・・その時代の「空気の質感みたいなもの」が入り込んでいるのかもしれない。
それから強い音で吹いた時(弾いた時)の「音圧」に、より一層のダイナミズムを感じる。この国内盤だと~リミッター的な何かのためか~全体に大きな音量で入ってはいるが、その代わりに、ダイナミックスが失われているような気がしてならない。ピアニシモからフォルテ(ここぞっ!という場面で演奏者も気合を込めて強く吹いてような時)で鳴った時の、「音量・音圧の強さ」は・・・これはもう、EP盤・10インチ盤の圧勝だ。この「圧勝」は・・・ハンプトンのソロの最初の4つの音。これを聞くと判る。ソロの出番を待ちに待ったハンプトンが、思い切りアタックを効かせて叩き始めるのだが・・・この4音の「強さ」~気合の入った「さあ、いくぞ!」という音だ。素晴らしい!このフォルテの質感が、最も無理なく、しかも強力に出てきたのは・・・やはり45回転EPだった。何かの機械で測定すれば・・・このEPから飛び出てくるあの4音の「音量・音圧」の数値は、実際、国内盤や10インチより高いだろう、と思う。

hampton_002さて、残る1枚~UKのEP盤は英Bruncwickからの発売だが、発売時期はよく判らない。ウラジャケの右下に小さく~
W.B.M. 2/55 と表記してある。ひょっとしたら1955年2月発売ということなのかな?(英国EP盤に詳しい方・・・ぜひお教え下さい)
音質は・・・Decca4EPと同じ頃のマスターを使っているのか、Decca盤と大きな音質の差は感じなかった。UKシングルもスムースないい音だ。1枚のウラオモテなので、実際、このUK盤をターンテーブルに載せることが一番多いのだ。

今回、はっきり判ったのは、この「国内盤」と「EP/10インチ」には、はっきりとした質感の差があったということだ。そして10インチとEPについては・・・明らかな差というものは感じなかった。これは・・・10インチ盤(確かにチリパチは多かったのだが)も、かなりのものだということでもある。楽器の音色の質感などは、10インチもEPも、ほとんど同じだったように思う。ただ、音量・音圧のダイナミクスについては・・・どうやら45回転の方に分がありそうな気がする。強い音がスムースに前に出てくるような感じと言ったらいいのか。

そんなわけで・・・このところ徐々に徐々に7インチEP盤(=45回転)を集めだしている。7インチEP盤にはもうひとつの魅力がある。
picture sleeve(ジャケット)である。このジャケットに素晴らしいものが多い。あの小さい7インチだと・・・どうにもキュートなのである。
日本のように33回転のコンパクト盤という仕様は、アメリカにはないようで、EP盤=7インチ=ほぼ45回転のようだ。
(EP盤については、また別の機会に少しづつ・・・)

さて、今回の聞き比べは・・・1947年という古い音源についての~あくまでこの4種のサンプル(盤質などの個体差も相当あるだろうし)に関しての~全く個人的な感想というレベルの話しです。だからもちろん、全ての国内盤の音質が悪い、ということではないのです。
ひとことで国内盤と言っても、元の録音の良し悪し/製作時期/使用したマスターテープ/レコード会社などによっても、いろいろな質の違いもあるだろうし。個人的には、1973年からCBSソニーが出したColumbiaの再発は、案外に悪くないと感じている。ひとつ言えるのは、どこの国の再発であっても「擬似ステレオ」だけは絶対によくない、ということだ。ステレオ機器が普及したため、単純にモノラルよりステレオの方が価値があるということで、古いモノラル音源を強引に「ステレオ」として再発した時期があるのだ。高音と低音を、左右のチャンネルに電気的に振り分けたような類(たぐい)の擬似ステが多かった。1965年くらいから1975年くらいの再発ものの外盤ジャケットには、たいてい electronically rechanneled for stereo とか表記してあるのでそれと判った。しかし、日本盤には無表記(というより「ステレオ」だけ表記)のものが多く、聴いてみてがっかりということもあった。現在の再発ものには、あんな質の悪い擬似ステレオなんて皆無だろう。しかし再発されるたびに、マスターテープの鮮度落ちをカバーするためであったとしても、巧妙にデジタル処理(昔のイコライジングなどというレベルより、はるかに聞きやすくなっていることは認めるが)など、「いじられる」可能性は高いだろう。そうした比較的高価な「巧妙再現音盤」に、僕はそれほど魅力を感じない。
古いジャズを好きになった者としては・・・とにかく「生々しい音」が閉じ込められていて(全てがいい音質とは限らないが:笑)、しかも、その時代の空気を感じ取ることができるジャケットの魅力も含めて「オリジナル盤」というものに魅かれることの方が、うんと自然なことだよ、と自己弁護のように考える僕である。

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