トニー・ベネット

2007年12月20日 (木)

<思いレコ 第14回>ペッパーのGoing Home

クラシックの曲をジャズ風に演ったものをいくつか。

002_3《ソニー・ロリンズ・クインテット(everest)  これは日本コロンビア盤。最初(1972年)に出した1100円盤ではなく、1979年に発売した1500円盤。それでも、ラベルがperiod仕様になっているところが、なんとも意地らしいじゃないか(笑)》

いやあ・・・ロリンズのこのレコード、本当に久しぶりに聴いたなあ。なんとなく「原曲がクラシック曲のジャズ演奏」というようなテーマを思い付いて、最初に浮かんできたのがこのレコードだったのだ。このロリンズ・・・なんと、チャイコフスキーの「悲愴」のテーマを使ったバラード風の演奏(Theme from Pathetique Symphony)をしているのである。今、改めてレナード・フェザーの裏解説を読んでみたら・・・ちょっと面白いことが書いてあった。
<この「悲愴のテーマ」は”the story of a starry night”というタイトルで、ちょっと前にラジオでよくかかった曲で、ロリンズは、ヴィレッジ・ヴァンガード出演中に、たびたびこの曲のテーマを吹いていた>(Sonny featured prominetly during his booking at the Village Vanguard)ということなのだ。あのヴィレッジ・ヴァンガードで「悲愴のテーマ」かあ(笑)おそらく・・・ロリンズは、ハードな演奏の合間に、この曲のテーマだけを、独りで吹いていたのだろう・・・と、僕は勝手な想像をしてしまう(笑)
このeverest盤の録音日は、1957年11月4日であり・・・ということは、あのヴィレッジ・ヴァンガードの翌日なのである。さすがのロリンズも、前夜のあの素晴らしい「ノリ」に酔っていたのだろう・・・この3曲だけのセッションでも、イの一番に"Sonny Moon For Two"も演っている(笑)リズム・セクションが手堅すぎて、前夜のドラムス、ベースから成るサックス・トリオの豪快のグルーヴ感には及ばないが、ロリンズのアドリブでは、アイディアに溢れたフレーズが飛び出してきて、やはりこのSonny Moonも素晴らしい。
ああ・・・それより「悲愴のテーマ」のことだった。1拍待ってから始まるあの有名なメロディを、ロリンズはちょっと抑えたような音色~輪郭が拡がり過ぎないような感じ~と音量で、しかし充分にゆったりと吹き始める。繰り返しの2回目では、ジミー・クリーヴランドのボントロにちょっと対位的なメロディを吹かせている。
こうして聴いてみると・・・やっぱりこの曲のメロディがロリンズの好み~ちょっと古風なラプソディックな雰囲気もあり~だったんだろうなと思えてくる。ロリンズはスタンダード曲を吹くとき、たいていはその曲をあまり捻(ひね)らない。「捻らない」というのは、そのスタンダードの持つ「雰囲気」をそのまま唄うだけなのだが・・・しかしそれがロリンズ流の唄いになってしまうのである(笑)
この演奏でも、ロリンズは「テーマの唄い」に気持ちを集中させているようで、テーマ提示が終わった次のコーラス(いわゆるアドリブ部分)からは、ちょっと変化をつけるためだろうか・・・ベースとドラムスが4ビート(1小節に4分音符を4回打つ。テーマの部分では2ビート~1小節に2分音符を2回~だった)になる。それでも、ロリンズはあまり「アドリブ」という感じで吹いてはいないようだ。テーマからの軽い崩しを混ぜて、ロリンズ流のラプソディを演出している・・・という感じかもしれない。だから・・・この「悲愴」が特に素晴らしい・・・とは僕も思わない(笑)ただふとした時に「(ウン)・パー・パー・パー/パー・パー・パー・パー/パーパ・パー~~」と聴こえたりする妙に印象に残っているメロディである。さすがにチャイコフスキーだ(笑)それにしてもこの「悲愴のテーマ」をジャズ・バラード風で演ってしまおう・・・と考えるミュージシャンも、まあロリンズくらいだろうなあ(笑)003

《右写真:Tenor Madness~ラベルは青・イカリなので、2ndか3rd盤であろう》

そういえば、ロリンズにはもうひとつ、同じ趣向の曲があった。あの「テナー・マッドネス」に入っているmy reverieである。こちらはけっこう有名だと思うが、あれ、ドビュッシーの(何だったかな・・・? Reverie「夢」あるいは「夢想」と呼ばれる)曲が原曲なのである。<azuminoさん、Yoさんの情報により判明しました>
my reverieというタイトルとしては、1930年代にラリー・クリントンという人が「作曲」したということになっており、グレン・ミラー楽団でもヒットしたらしい。こちらの方は1956年5月録音で「悲愴」よりも1年半も前の録音なのだが、ロリンズはやはり「バラード風」に吹いており、この素敵なメロディから「優しさ」みたいな雰囲気が漂ってくる。ガーランドやチェンバースが巧いこともあり、バンド全体の演奏としては「悲愴」よりもだいぶんこなれているように思う。ドビュッシーの原曲そのものがジャズっぽいアレンジにも合う曲調だったのかもしれない。002
そのためかどうか、ジャズ・ヴァージョンもたくさんあるようで、ロリンズの他にも、ハンク・モブレイ(curtain call)、バーニー・ケッセル(music to listen to Burney Kessel by)、そしてトニー・ベネット(cloud 7)などがある。もともと僕はこの曲のメロディが好きなので、どれもいい感じに聴ける。特に若い頃のトニー・ベネットのやや高めの声には、なんとも言えない色気を感じる。
《上写真:ベネットのCloud 7~そのmy reverieは、なんとA面1曲である。当時のcolumbiaのこの曲に対する意気込みが窺(うかが)われる》

そしてもうひとり・・・アート・ペッパー絡み(がらみ)のレコードについても少し書いてみたい。
ペッパー絡みといっても、リーダーはショーティー・ロジャーズで、ペッパーはほんの少し(A面5曲目のsnowballで短いクラリネットのソロ?)出てくるだけだ(笑)001 あまり知られてないレコードかもしれない。

Shorty Rogers/The Swingin' Nutcracker(RCA Victor)
LSP-2110




《アル・シュミットのメリハリあるステレオ録音だ。ひょっとしたら僕がこのレコードを気に入ったのは・・・この素晴らしい録音のためだったかもしれない(笑)》

どうやら、チャイコフスキーの「くるみ割り人形」のメロディ素材を「スイングしている」ようにアレンジしたレコードのようである。僕はクラシックをほとんど聴かない。どの曲も長すぎてなかなか集中できないのだ(笑)
でも・・・名曲と言われるものは、やはり素晴らしい。クラシックの作曲家が、おそらくウンウンと唸りながら造りだしたメロディとハーモニーには、絶対的な魅力が溢れている。そうしてせっかちな僕は、そういう「魅力ある素晴らしいメロディ」の箇所だけ、聴きたいのである。「そこ」に至るまでの段取りが長いとガマンが効かないのだ。
そんなクラシック素人の僕は、どうやらチャイコフスキーが好きなようである。「くるみ割り人形」は、中学の頃、好きになった。当時、日本コロムビアが古い音源のものを「1000円LP」として発売した時、兄と小遣いを分け合い、何枚か入手したのだ。「アルルの女」とか「カルメン」とか・・・まあそんな「判りやすい」クラシック曲を、いくつか聴いていたのだ。そして今でも「判りやすい」クラシック曲だけ好きである(笑)001_3
《右写真は、ガラクタ屋で入手した古い25cm盤(日本コロムビア) 音は・・・よろしくない(笑)》

「くるみ割り人形」~「胡桃割り人形」と書いた方が感じが出る~は、組曲で、1曲1曲がわりと短めなのもよかったし、チャーミングなメロディの曲が多くて、すぐに気に入ってしまった。チェレスタを使った「こんぺいとうの踊り」や、フルートが奏でる「あし笛の踊り」、それから終曲の「花のワルツ」が特に好きだった。
そんな「馴染み」があったせいか、このショーティー・ロジャーズのLPを聴いた時・・・「あれ?このメロディ・・・聴いたことあるぞ」てな感じで、わりと抵抗なく、この「クラシック曲のジャズ化」音楽に入り込めたようだ。
それと、クラシックの曲を忠実に(「目玉のメロディ」の前後までそのまま)ジャズ(風)にしても、おそらく長々として堅苦しくなるだけだが、このロジャーズのアレンジでは、その辺りを思い切りよく「端折っって(はしょって)いるところが、僕は気に入っている。おいしいメロディの箇所だけを生かして、残りはそのアイディアをアレンジして巧いこと繋げているようなのだ。例えば「花のワルツ」をモチーフに使ったB面2曲目(Flowers For The Cats)は、なんと4拍子になっていたりする。タイトルが「スイングする胡桃割り人形」なので、仕方ない(笑)だから厳密に言うと、このレコードは「くるみ割り人形のジャズ化」ではないだろう。そういえばこのLP・・・ジャケットにわざわざ「Like Nutty」とも書いてあるのだが、それは「くるみが好き」というのと「くるみ割り人形的な」という意味合いも持たせたのかもしれない。002_5
《録音だけでなく、メンツもいい!ビル・パーキンス、コンテ・カンドリ、リーチー・カムーカ、フロンク・ロソリーノなどは、この手のセッションの常連だと思うが、ハロルド・ランドの名にちょっと驚く。短いがとてもいいランドのソロが随所に出てくる》

最後に、もう1枚。
僕はペッパーを大好きなのだが、よく聴くのは、ほとんどcontemporary期までのレコードで、彼の70年代以降のレコードを普段はあまり聴かない。ところが後期ものの中で1枚だけ愛聴しているレコードがある。それがGoin' Home(galaxy)である。004_2
《これも日本盤。近年録音のものだと、外盤と日本盤にそれほど音質の差はないように思う》

「家路」・・・ドヴォルザークの『新世界より』のいいところのメロディだけ抽出して「家路」と呼んでいるのだが、この曲のメロディ・・・知らない方はいないだろう。小学校の頃、放課後に校庭で遊んでいて、ふと気づくと辺りが薄暗くなっていて、友達の姿もぼんやりとした影のようになってくる。そんな時・・・この「家路」が鳴ったりする。
「ああ・・・みんな、もう家に帰らなくちゃ・・・」下校時間=「家路」という、実に短絡的な発想ではあるが(笑)僕は、このメロディを素朴な気持ちから「いいなあ」と思うのだった。
そういえば・・・中学の時、音楽の授業で(レコード鑑賞)いつもクールな女性の教師が「この本当に美しいメロディを聴いてください」と、やけに熱心にコメントしてから、この『新世界より』をかけたこともあった。
このレコードを、本当によく聴く。ジョージ・ケイブルスのピアノとのデュオなのだが、この形態によくある「丁々発止のフレーズやりとり」みたいな感じではなく、とても内省的な演奏になっている。ドラムスもベースもいない・・・だから、2人が2人だけの呼吸で、お互いの「間合い」を測りながら、寄り添ったり、あるいはちょっと突っ込んでみたり、しかし・・・全体に流れる空気には絶妙な「信頼」がある・・・そんな感じのデュオなのだ。
ペッパーが吹くクラリネットの音色・・・これがまたなんとも素晴らしい!
なにか「音」をストレートに出さずに、一度、口の中に含んで溜めたようなニュアンスが感じられる。ぺッパーは、その溜めた「息」を小出しに出しながら、実に抑えた感じの音色を~ベニー・グッドマンとは対極の音色だ~生み出しているのだ。そんな「押し殺した」ようなクラリネットの音色がなんとも言えず凄い。そして、その音色でドヴォルザークの「家路」のメロディを淡々と吹く。この曲、ペッパーはテーマを吹くだけである。いわゆるアドリブは全くない。ポピュラー風に言えば、最初のコーラスでは、ペッパーがテーマを吹き、サビの部分をピアノにまかせる。そして、2コーラス目はピアノがソロを弾き、ペッパーはサビから入り、そのまま最後のテーマを淡々と吹き進めて、この曲は終わってしまう。それでも、随所で情念の閃き(ひらめき)を見せるペッパー・・・僕はやはりペッパーが好きだ。それにしても、このデュオは、本当に素晴らしい。聴いているといつも・・・「原曲がクラシック」という外面的なことは全く忘れてしまう。ただただ、この2人が表出する音だけに集中してしまうのだ。ジャズを聴いている・・・という意識すら消えているかもしれない。
なにかしらちょっと滅入っている時などに聴くと・・・どうにも心に染み入ってくる。どこまでもしみじみとした、でも温かい気持ちにさせてくれる大好きなレコードだ。こういうレコードがあるから・・・ジャズはやめられない。

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2006年7月22日 (土)

<ジャズ回想 第6回> またまたオフ回~藤井寺Yoさん宅:再訪記。

青い顔したウーレイ~3人で7時間の聴きまくり。

6月24日(土)ニーノニーノさんの「杜」のお仲間~藤井寺市のYoさん宅におじゃました。今回はリキさんと私bassclefが2人で乗り込んだ。2人はそれぞれ~僕は昨年9月、リキさんは今年の1月に~Yoさん宅の音を聴いており、その「音」を知っている。そして多分・・・その「音」を好きになっている。
Yoさんは、その後もいろいろな調整をしたようで、音がさらによくなっているらしい。そうなると・・・こちら2人は「また聴いてみたい」、
Yoさんは「また聴いてもらいたい」てな具合で・・・この3人の思惑が一致したようであった(笑)

11時前くらいに到着し、すぐ2階のあの「音聴き部屋」へ。部屋に入るなり「ここ、ここ・・・。この雰囲気がいいんだよなあ・・・」とリキさん。
白熱灯の温かみのある、ちょっと落とし気味の照明。これが・・・本当に落ち着く。お酒の好きな方が、ちょっと飲んで「いい音楽」を聴いたら・・・すぐに眠ってしまうだろうな(笑)

まずはこれから・・・とYoさんが、「東京銘曲堂ライブCD」を取り出す。
リキさんもこのCDがお気に入りで、自宅のsonusと「鳴り」の具合がどんな風に違うのか興味があるようだ。
my romance
but beatiful
昨年9月にこの同じ場所で同じCDを聴いた時は・・・元々たっぷりと豊かな音量で録音された(ように聞こえる)このCDのウッドベースの音が~このベースの音像というか音量がかなり大きく聞こえて、だから僕のベースの好みのバランスでいうと~ややふくらみすぎかな?という感じだった。
ところが今回は・・・だいぶん違ったのだ。そのベースの音像がグッと締まり、ベースの弦がビシビシと鳴るような感じがよく出るようになっていたのだ。こんなバランスであれば、「CD」全般に対する僕の不信感も~たいていのCDがベース中心に低音を強調しすぎか?~かなり和らいでくる。
端正にきれいに弾くギターの音色も、よりくっきりと聞こえる。テナーの音ももちろん素晴らしい。3人の音楽、その全体がより一層ツヤヤカになったように感じた。
何をどうしたのか・・・僕にはオーディオ的な細かいことはわからないのだが・・・スーパー・ツイーターの(クロスオーバーの)調整やら、スピーカーの角度やらを、いろいろ綿密にジリジリと微調整を繰り返したようだ。リキさんと僕に見せてくれた「調整メモ」(スピーカーを動かした位置を記録したのか、まるで何かの設計図のような・・・)には驚くやらあきれるやら・・・(笑)
いずれにしても、あの青い顔した幽霊・・・いやウーレイから飛び出てきた音は・・・「きめ細やかな上質な低音(ウッドベース、バスドラ)」「ふくゆかにしかもよく前にでてくる中音(テナーやチェロ、ヴォーカルなど)」という感じか。
だから・・・低音・中音・高音のバランスが、誠にいい具合になっている・・・ように感じた。このCDは3人~テナー、ギター、ベースというドラムレスの変則トリオである。ジャズの強烈にプッシュしてくるドラムのシンバル~例えばエルヴィン~がどんな風に鳴るのか・・・?
興味が湧いてきた僕は「あとはエルヴィンのドラムだね」と言ったような気がする。

そんな風にして始まった今回の藤井寺ミニ杜。お昼とかの間も、軽いものでも聴きながら・・・ということで、Yoさんがソニー・クリスの72年頃の盤からちょっとロック調のものなどを流す。僕はロック調がいまいち苦手なのですぐに厭きてしまう(笑)「もうちょっと前のソニー・クリスを」という僕のリクエストで、67年録音のThe Portrait of Sonny Criss(prestige) からsmileをかけてもらう。このバラード、出だしの部分をクリス一人だけで吹く・・・ソニークリスって、こんなによかったかなあ(笑)と思えるくらに、これはよかった。
録音もいい、と思ったらRVGだった。ラベルは黄緑色だったが、67年頃の盤なので、その黄緑ラベルがオリジナルかもしれない。
「いいねえ・・・」とか言ってるうちに、なんのことはない・・・ちっとも「音」が止むことはない(笑) 結局・・・11時から6時までほぼ7時間ぶっとおし、という怖ろしくも楽しい会となったのだ(笑) 

以下、かけたレコード・曲と、僕の勝手な感想を少し。
*デジカメはやはり持っていかなかったので、Yoさん、リキさんのオリジナル垂涎盤の写真はありません。この日、かかったレコードで僕が持っているものは、ジャケット写真を載せました。国内盤がほとんどです(笑)Yo_008_2

《写真は、fantasy custom盤》

Johnny Griffin/Kelly Dancers(riverside)
オリジナル盤(モノラル) と WAVE盤(ステレオ) から black is the color of my true love's hair
オリジナル・モノラル盤~グリフィンのテナーの中・高音域がややきつすぎというか、堅く感じる。リキさんも「ちょっときついかな・・・」と一言。しかし、テナーやベースがぎゅ~っとつまった、そして入力レベルが高そうなモノラルならではの密度感は凄い。                   「迫力ある音」が好きな方なら、やはりモノラルを選ぶだろう。
続けてかけたWAVEステレオ盤~モノラル盤だと、ロン・カーターのベース音が大きすぎて僕には「迫力がありすぎ」て、なにか違うベーシストのように感じたが、このWAVEステレオ盤でのロン・カーターは、右チャンネルからのちょうどいいくらいの音像で、テナーもぐっとまろやかになった。音場全体がすっきりとして、とても聴きやすかった。僕はもともとリヴァーサイドのステレオ録音が好きなので、余計にそう感じたのかもしれない。
WAVE盤は・・・クセのないマスタリング(だと思う)が、ある種、うまく録音されたcontemporaryでの楽器バランスに近い味わいがあるようにも思う。そうしてこの「バランスのいい誇張のない楽器の音色」を、Yoさんのシステムで実際に鳴らされると・・・Yoさんが以前から、「WAVE盤の素晴らしさ」を力説していたことにも、充分に納得がいくのだった。

Heren Merrill/Merill at Midnight(emarcy)から black is the color of my true love's hair(グリフィン盤と同じ曲です)と lazy afternoon
裏ジャケットに、若くてかわいい感じのメリルが写っている。たまに聴くメリルは実にいい。
続けて、ティナ・ルイス(concert hall)から1曲(曲名失念)
あの色っぽいジャケットから想像されるとおりの色っぽい唄い方・・・そして案外、どの唄もしっかりと唄っている。
モンローの唄~あのコケティッシュなキャラクターを演出している唄い方(嫌いじゃないのですが:笑)の色気の部分を半分くらいにして、あとの部分を
しっかりと唄いこんでいる感じ・・・女優さんとのことだが、唄は巧いのである。ちなみに、ティナ・ルイスは、例えば普通のポピュラー風オーケストラLPのジャケットに、モデルとしてその姿が登場しているだけでもかなりの価値があるらしい。ティナ・ルイスかあ・・・。

お昼前くらいに、少し軽いものを・・・ということでベニー・ゴルソンとフレディ・ハバードの「スター・ダスト」(82年だったかの録音)をかけた時、トランペットのピッチやら音程の話しになった。その流れでベーシストとしてはあまりピッチのよくない(であろう)ジミー・ギャリソンのベース音がが大きく捉えられているあのピアノトリオ盤~
Yo_004 ウオルター・ビショップJr/~トリオ(キングが出した時の国内盤)からsometimes I'm happy を聴く。このレコード、録音自体はあまりよくない。
ベースの音も大きいことは大きいが、「響き」の成分が少ない、右手で弦を引っ張った「近くで録られた」感じの音だ。ピアノの音も同様でもあまりいい音とは言えない。Yoさんに指摘されるまでは、この盤・・・それほど ピッチの事を気にしたことがなかった(笑)   《上の写真~左はキング盤。右は西独の1989年の再発盤》

だいたいがギャリソンを好きなので、多少ピッチが悪かろうが、ただ「ギャリソンが弾いている」という認識でしか聴いてこなかったようだ(笑) それからベースの音程もたしかによくないのだが、この盤では、ピアノ自体の調律がだいぶんおかしいようにも聞こえる。高音域の方がちょっとフラットして、なにか全体に「ホンキートンクっぽい」ピアノサウンドではある。
ピッチのズレうんぬんはともかく、人間が何かを聞く時、「あばたもえくぼ」的なことや「意識してない部分は、鳴っていても聞こえない」的なことと、それから、その「気になる部分」はこれまた各人で様々な局面があるのだなあ・・・というようなことを、再確認したことではある。

Tenor Saxes(norgran)
The Consummate  of  Ben Webster(norgran) から同じ曲:Tenderly
これは前回のミニ杜(マントさん)でも味わったが、全く素晴らしい音質の盤。同じNogranの貴重盤なのだが、なぜかオリジナルのはずの
Consummate よりもTenor Saxes の方が、はっきりといい音なのだ。テナーはもちろんピアノやらべースも明らかに鮮度が高い。不思議な盤である。

この後、Yoさんセレクトによる「ロリンズ特集」
Sonny Rollins/Saxophone Collosus(オランダ盤)から you don't know what love is
Way Out West (in stereo 盤)(緑ラベルステレオ盤)からway out west
Contemporary Leaders から how high the moon と the song is you
The Standard(RCA Victor) から my one & only love
Sonny Meets Hawk(RCA Victor)  から summer time
milestone all stars から in a sentimental mood

そして Harold Land/in the land of jazz(contemporary) から you don't know what love is
これはハロルド・ランドというテナー吹きの快演!あまり知られてないレコードだが(僕も未聴だった) このバラードは、品格がある端正ないいバラードだった。Yoさんいわく・・・「ロリンズのyou don't know よりいい」 この意見に僕も異論はなかった。ハロルドランドというテナー吹きも実にいい。Harold_land_fox

<補足>そういえば・・・Yoさんと最初にジャズの話題で盛り上がったのも、このハロルド・ランド話題であった。同じcontemporaryにはランドのいい盤がいくつもある。Carl's Blues~ランドが「言い出しかねて」をじっくりと吹き上げる~というのもいい盤だ。それから The Fox もいい。これは僕が、ランドの良さに開眼したレコードだ。   《写真上がFox。録音もいい》

Yoさんのシステムではもともと「よく鳴る」contemporary盤が続く。Yo_005_1
《右の盤は残念ながら国内盤・・・キングGXC3159。それでも充分に音がいい・・・と強がりを:笑》

Hampton Hawes/For Real から hip
どの楽器も素晴らしい音を発しているのだが・・・それでもやはり・・・ラファロのベース音!音圧・強さ・しなやかさ、そしてテーマ部分で、「ぐう~ん」とベースの音程を高い方にスライドさせる驚異の技!(右手で弾いた直後に左手で2つの弦を押さえている(ダブルストップという)その力を、ある程度残したままスライドさせているのだと思う) それからホウズのピアノタッチの躍動感、さらにハロルド・ランドの端正で案外にハードボイルドなテナーの音色、そうしてフランク・バトラーの切れの良さ・・・全てが素晴らしい。
最高の演奏と最高の録音を、まさに眼前で実感できたような気持ちのいい瞬間だった。
「演奏」の快感と「音」の快感が同時に味わえる~そんな感じだった。
それにしても・・・この盤はcontemporaryの中でも最高峰の録音だと思う。

JR.monterose/The Massage(jaro) ~この希少レーベルの青白のラベル、初めて現物を見ました。
Violets for your Furs~モンテローズは、やはり素晴らしい。好きなテナー奏者だ。なんというか「唄いっぷり」の
スケールがとてつもなく雄大なのだ。
じゃあ同じ曲を別のテナーで聴こうか・・・てな訳で、

Yo_006_1 Jutta Hipp/緑色のジャケのやつ(bluenote:liberty ラベル)から Violets for your Furs 
~liberty ラベルでも充分にいい音だった。このモノラル録音でのベース音(アブダリマリク)も、とても大きく弾むような豊かな音で入っていた。
《写真上は東芝国内盤》   こちらの「音像のでかさ」は、先ほどのロン・カーターの場合とは違って、僕にはそれほど気にならない。なぜかというと・・・
(もちろん推測だが)ウイルバー・ウエアやマリク、それからミルト・ヒントン、トミー・ポッターというタイプの場合は、もともと彼らがウッドベースから引き出す音が、「輪郭の大きな響きの音」のように思うからだ。使っているウッドベース自体が大きめのサイズだったり、弦の種類が羊弦(現在ではスチール弦が多い)だったり、右手の弾き方(はじきかた)などで、たぶん出てくる音像は違ってくるものだと考えられる。
これらのタイプと対照的なのは、もちろんスコット・ラファロ、リチャード・デイヴィス、ゲイリー・ピーコックやペデルセン(初期の)などである。
ウイルバー・ウエアの「音像の拡がった大きく響く音」と、ラファロやピーコックの「シャープにしまった音」とは・・・どうです?あきらかにタイプが違うでしょう。もちろん、どちらがいいとか悪いとかの問題ではないのだが・・・困ったことに僕は、どちらのタイプのベーシストも・・・大好きなんです(笑)

Zoot Sims with Bucky Pizzarelli(classic jazz)1976から what is this things called love
~ピザレリのように、ギター一丁で、バッキングの和音から、しっかりしたしかもノリのいいリズムまで出してくる名手がいたのです!
ギターソロでもコード(和音)中心のソロで、そのコードのパターンを、微妙に変えながら厭きさせない。そして、それまでのビート感を決して崩さない。
インテンポ死守!である。というより、さらにビートをなめらかな流れにしているようでもある。サックスとギターだけのデュオなので・・・ギターソロといってもギター独りだけになるわけで、その「ギター1台キリ」でのこの名人芸・・・ため息が出てしまう。

ここで、僕が持ってきたヴォーカル盤を2枚。Yo_001

Irene kral /better than anything(ava) から it's a blue world と this is always
この盤は大好きなのだ。アイリーン・クラールは、アン・バートンの次に好きになった「声」なのだ。フレイジングがちょっと個性的だがリズム感がすごく伸びやかで何を聴いても心地よい。好きだ。

tony bennette/cloud 7(columbia) からI fall in love too easily Yo_003

この盤には初期のベネットのジャズ魂が溢れている。チャック・ウエインのコージーなアレンジ、小粋なビート感、そしてベネットの若々しいあの「声」~僕がベネットを好きなのは、ベネットがあの「声」だからかもしれない(笑)この「クラウド7」は、ジャケットもなかなかいい雰囲気ではある。リキさんもジャケットは気に入ったようだ。

次に僕のリクエストでモンクのソロピアノを。thelonious monk/Alone in San Francisco から remember と everything happens to me        続けて brilliant corners。ここで・・・リキさんはやや苦しそう(笑)

そこで、次にリキさんセレクトのクラシックをしばらく続けた。
グルダ/バッハ:Goldberg Variations(columbia)
キャサリーン・バトル 歌曲
ミュウシャ・マイスキー(グラモフォン3LP)からバッハ/無伴奏チェロ1番
ベルリオーズ:幻想交響曲
モーツアルト:39番
モーツアルト:ハイドンのために創ったという弦楽四重奏~こういう四重奏は、(僕は)ステレオ録音が楽しい。右からちょっと内よりにチェロが聞こえるなあ・・・と思ってたら、リキさんがジャケットを見せてくれた。
そのジャケットに4人の奏者の演奏風景が写っており、チェロ奏者が右から2番目だ。その立ち位置・・・いや、座って弾いてるから「座り位置」か)とおりの定位で聞こえる。リキさんとしては、左右への広がり具合がありすぎるらsく、「もうちょっと4人が内側に近づいてほしい」とのこと。そういえばジャケットの4人はかなり近づいて、こちらを向いて座っている。その4人の中央辺りに、やけに長い「マイクの塔」みたいなのが鎮座している。
僕はまだクラシック自体にほとんど馴染みがないので、「弦楽四重奏」というものもそれほど聞いた経験はないのだが、「チェロ」が入っているとすごく聞きやすい。自分でも気がつくと「チェロを主体」に聞いているのだ。ジャズでも「ウッドベース」から聞いていく。ベースという楽器に相当に馴染んでしまっているので、どんな音楽を聴いても・・・底辺の組み立て、みたいな部分にどうしても興味がいってしまうのかもしれない。

Marty Paich/The Broadway Bit (warner brothers:ステレオ金色ラベル) から I've grown accustomed to your face と I've never in love before
ラファロのベース音は~このワーナー盤では録音自体がややエコー強めのためか~For Realと比べると、やや輪郭が甘く聞こえるが、
ビート感、音圧、ソロ、全てが素晴らしい。

Al Cohn/Cohn On The Saxphone(dawn)
dawnのオリジナル盤は、乾いた感じのやや固めのテナーの音。 バラード曲が多く、コーンがじわじわと吹きこむ地味だけどこれはいい盤だ。

Bill Evans/you must believe in spring からthe peacocks。続けて同じ曲、
Yo_007

Jimmy Rawles/The Peacocks(columbia) から the peacocks
最後に聴いたこのジミーロウルズの盤は、1971年の録音で僕はCD(ソニーのマスターコレクション)で聴いていて、中でもこのthe peacocksが、凄く好きになってしまった。ロウルズとスタン・ゲッツのデュオ演奏だ。全編にしみじみした情緒が流れているのだが、最高に「詩的」な場面が最後にやってくる。ゲッツが最後のテーマを終えるところで・・・(もう吹く息は、切れているのに)サックスのキーを「パタパタパタ・・・」としばらく鳴らしているのだ。どう聴いても・・・孔雀が飛び立つイメージにつながる。僕は、この粋なアイディアが事前に準備されていたとは思わない、いや思いたくない。ゲッツが息をきらす、まさにその瞬間に、「パッ!」と閃いたのではないだろうか? ジャズは素晴らしい・・・だからまだ止められない。

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2006年3月 5日 (日)

<思いレコ 第8回> Bill Perkins/Quietly There

気になる作曲家、その名は・・・ジョニー・マンデル!

「いそしぎ」という曲がある。この曲の原タイトルは もちろん the shadow of your smile という。映画に使われた曲なので、その映画のタイトルthe sand piper を邦訳してこのタイトルになったのだろう。海にいるシギという鳥のことを意味してると思うが、僕らは単に「イソシギ」というサウンドで・・・ああ、あのいい曲ね、と理解している(笑) 僕はとにかく、この「イソシギ」が好きだった。自然に展開していくメロディ。淡々としながらも品よく盛り上げる後半のメロディ。あまりに有名なので、ちょっとポピュラー的なイメージで捉えられているかもしれないが、文句のない名曲だと思う。

ハンプトン・ホウズの I’m Old Fashioned(contemporary) _004

B面1曲目が、その<the shadow of your smile>だ。1966年4月のライブ録音なので、この曲の録音としてはわりと初期のものだろう。ベースはレッド・ミッチェル。なかなかいいピアノトリオ盤だと思う。

A Time For Love という曲も実にいい。この曲を・・・僕はアイリーン・クラールの唄で何度も聴いた。この曲の入ったクラールのLPを 寝る前に、ポータブルのプレーヤーで聴いた時期がある。LPの途中で眠ってしまうこともあり、だから正確には「眠りにつきながら聴いていた」というわけだ。そんな風に繰り返し聴いているうちに・・・この曲のメロディが、体の中に染みわたってしまったようだ。A Time For Love は、しみじみとした感情で人生を振り返りながら・・・しかしこれからも生きていくのだ・・・みたいな厳しさをも感じさせるような素晴らしいメロディをもつ曲だ。ちなみにこのクラールのピアノとデュオのアルバムは、本当に素晴らしい。いつかまたアイリーン・クラールのことも書いてみたい。そういえば僕の好きなトニー・ベネットも、この曲をいい感じで唄っているはずだ。

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Emily~これもいい!3拍子の曲なんだが、もう一言・・・チャーミングなメロディなのだ! 好きだなあ・・・この曲。最初にこの曲を聴いたのは・・・ビル・エヴァンスのソロピアノのアルバムだ。左の写真がそれ。

further conversation with myself(verve)

レコードを集めるようになってわりと初期の頃だったので、VerveにMGM-があるとかも何も知らなかった(笑) ちょっとこもったような音質のMGM-Verve盤ではあったが、エヴァンスは、この曲、Emilyを一人で多重録音して・・・夢見るようなスイートさを生み出していた。それでこの曲を好きになった。チェット・ベイカーも、よくマンデルの曲を取り上げた。初期のパシフィック盤にはたしか何曲か~Keester Parade やTommy Hawk~入っていたと思う。

これらのどれもが、ちょっとしゃれたメロディの曲であり、いつも「はっ」としてクレジットを見ると・・・ジョニー・マンデル・・・ということが何度かあった。
そんな風に気になる作曲家であるジョニー・マンデルだった。
そうしてそんなジョニー・マンデルの曲を集めた素晴らしいレコードがあったのだ。先日、そのレコードを入手した。

Bill Perkins/Quietly There(riverside)である。録音が1966年なので、この写真の盤、「abc Riverside茶色の環ラベル」がオリジナルなのかもしれない。_002





         






ジャケットがまた地味というか・・・小さめな写真に  Bill Perkins Quintet featuring Victor Feldman と Quietly There というタイトルが載ってるだけだ。表ジャケのどこにも Johnny Mandel の名前などない。 裏ジャケの曲名を見て・・・初めて全9曲ともに 作曲が Johnny Mandel だと判るのである。せめてジャケ表に一言、 Mandelの名前を謳ってくれれば、もう少し早くにこのレコードを買っていたかもしれないのに(笑) もっとも・・・Jhonny Mandel という作曲者だけでなく、ミュージシャンからジャケットまで、このレコードは・・・もう徹底的に地味なのである(笑)

このレコードに前述の Emily と A Time For Love が入っている。そうして、これらが・・・絶品なのである。

Emily~パーキンスが、バス・クラリネットで静かに吹き始める。かなり遅めの3拍子に乗って、ゆったりとあの素晴らしいメロディを吹き進めていく・・・パーキンスの音色を聴いているうちに・・・一枚の風景画を眺めているような気分になってしまう。そして・・・気がつくと音楽が終わっている・・・そんな感じなのだ。たとえようもなく「優しい」世界だと思う。

最初に左チャンネルから、この Emily のメロディが流れてきた時、「えっ、この音色は何なんだ?」と思った。低くて軽くこもったような・・・でもバリトンのように大きく鳴った感じではない。なんだろう? とクレジットを見ると・・・bass  clarinet と書いてある。ああ、あのバスクラかあ・・・と、すぐにエリック・ドルフィの バスクラのソロ God Bless The Child を想い出した。ドルフィのバスクラ、あれは・・・自己というものを、もう徹底的に表出したような凄い世界だった・・・。このパーキンス盤でのバスクラは、全くそういう自己表現の世界ではない。しかしこの楽器をセレクトし、アドリブパートでも、フレーズがどうとかではなく、このバス・クラリネットの「ひっそりしたような音色」のソノリティを楽しむような・・・そんな唄わせ方をしているようだ。「ひとつの素晴らしい曲がある。その曲のスピリットを自分の感性で描き切りたい」というような切実さというか静かな気迫のようなもの~僕はパーキンスという人にそんな凄みさえ覚える。

そんなパーキンスでも、一人でこんなに緻密な工芸品のような世界を創り上げることは難しかっただろう。そこで、それなりの職人たちが必要だった。その職人たちとは~
まず、ヴィクター・フェルドマンの「しっとりした」ピアノが、優しい雰囲気をかもし出す。このパーキンス盤では、随所で vibraphone も叩いているが、全くやかましくならず、とてもいい感じに響いている。ヴィクター・フェルドマンという人の「しっとり感」は素晴らしい。マイルスの Seven Steps to Heaven のLAセッションの方を聴いて以来、大好きになった人だ。
ガットギターも聞こえてくる。ガットならではの本当に優しい音色。このギター弾きはJohn Pisano という人である。ガットでとるソロもも実にいい。
それから、ベースがレッド・ミッチェル。この人は、ベースの1音1音がしっかりと鳴っている。リズム感、ウオーキングライン、音程、アドリブ。どれをとっても本当に巧いのだ。ドラムはラリー・バンカーだ。
全員が揃いも揃って・・・本当に「趣味のいい」ミュージシャンだと思う。

もうひとつの名曲~A Time For Love。
パーキンスは今度はフルートを用いた。普段、僕はフルートのジャズはほとんど聴かない。savoy盤などを聴いていて、フランク・ウエスが(テナーは嫌いではないが)フルートを吹き出すと・・・どちらかというとノー・サンキューである(笑) しかし、このマンデルの名曲~A Time For Love でのパーキンスのフルートは・・・これも絶品である。録音もいいせいか、フルートの「鳴り」が豊かなので、サブトーンばっかり強調したようなヒュー、ヒューというような(笑)という感じではない。この曲でも「自分の感性で描き切りたい」という意思を強く感じる。外見的なアレンジ、というより、曲を解釈するその気持ちをもアレンジしているかのようだ。そしてその意思が全員に伝わったのだろう。各人が、実にキッチリと丁寧なバッキングをしており、味のあるいいソロをしている。

僕はもともと、一人で多くの楽器を奏するマルチ・ミュージシャン的なタイプはあまり好みではなかった。アレンジもできるスタジオミュージシャン的なタイプだと、仕事柄、仕方ないとはいえ・・・さあアルトだ、さあ今度はテナーだ、いや、バリトンだ、てな感じで、なかなかその人の本当の個性みたいなものが伝わってこないような気がする。いろいろなレコードを聴いてるうちに、それでもアル・コーンにはテナー、バド・シャンクにはアルト、とやはり「本領」を発揮できる楽器があるのだ、という風にわかってきた。その「本領」楽器で何枚かいい盤は必ずあった。ところが、パーキンンスの場合は違った。西海岸ものを聴くようになって、ビル・パーキンスという名も覚え、リーダーアルバムのパシフィックの2~3枚を聴いたのだけど、共演のペッパーの方に耳を奪われるばかりで、このミュージシャン自体には、特別な印象は持っていなかったのだ。だから・・・この盤を何度か見かけたはずだが(ジャケットだけは、だいぶ以前から知っていた)、録音が1966年とわりと新らしめということもあり、入手するには至らなかったのだろう。
そのパーキンスは、このレコード~Quietly There でも、やはりマルチであった(笑)しかし・・・今の僕は、そのマルチぶりが全くイヤではないのだ。逆に、こんな風に曲によって、 使う楽器を替えることで、それぞれの曲の味わいみたいなものを表出させた・・・いや、それ以上に、ジョニー・マンデルの曲だけで一枚のアルバムを創ろう、としたビル・パーキンスに甚く(いたく)感心している。推測だが、スタジオの仕事が多かったパーキンスが、ついに「自分の趣味」でアルバムを創ることになり、だから、選曲をしていくうちにマンデルだけの作品に絞ることにして、それからパーソネルを練り上げて、リハーサルをして、どの曲をどんな具合にクックするか・・・そんなことに相当に時間をかけてきただろうなあ・・・と思わせてくれる、本当に丁寧で質の高い、そして素晴らしいアルバムだと思う。

ビル・パーキンス/Quietly There(riverside)このアルバムは、とても地味だが・・・この先も間違いなく僕の愛聴盤であり続けるだろう。出会えてよかった・・・こんなレコードに。僕はうれしいのだ。
こんな未知の盤にも、まだこんな風に素直に「いいなあ・・・」と感じられるものがあった、ということが。
ジャズにはいいアルバムがいっぱいだあ!・・・ますますやめられない(笑)

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2005年11月17日 (木)

<思いレコ 第7回 トニー・ベネットとビル・エヴァンスとのデュオアルバム>

少し前に<思いレコ 第6回 ビル・エヴァンス>のところで~歌詞なんてただの言葉じゃないか~と書いた。「インスト」においては、楽器で表現する「音」というものが全てであり、だから、あるスタンダード曲のテーマを吹く(弾く)時、その曲の歌詞を思い浮かべながら・・・というようなことは不自然なことだ、ということを言いたかった。唄には歌詞が必要だが・・・インストには歌詞は必要ない。いかに、楽器を唄わせるか・・・それだけだ。
こんな僕だが、たまには、ヴォーカルのレコードも聴く。あの記事の最後の方にも書いたが、僕が「ヴォーカル」というものに目覚めたのは、エヴァンスとトニー・ベネットのデュオアルバムからだった。聴いていて「ああ・・・ヴォーカルというのもいいもんだなあ」と素直に思えたのだ。

エヴァンスとベネットのデュエットアルバムは、2枚ある。bennett__evans_001

The Tony Bennett Bill Evans Album(fantasy) ビクター 1975年


伴奏はエヴァンスのピアノだけ。全曲が、ベネットとエヴァンスのデュオだ。
この盤は・・・82年10月に入手している。当時、エヴァンスの音は何でも聴いておきたかったので、この「ヴォーカル」のファンタジー盤も入手したのだろう。たぶん、この時まで「ヴォーカル」のレコードを、ほとんど買ったことがなかった。ジャズをどんどん好きになってきていて、まだまだ聴きたい、いや、聴かねばならぬインスト盤が山ほどあったので、ヴォーカルものにまで手を拡げることは、とても無理だったのだ。

ここでひとつ告白すると・・・僕はエヴァンスを大好きではあるが・・・ソロピアノでのエヴァンスを、実はそれほど好きではない。ソロピアノの世界では、モンクやダラー・ブランド、ランディ・ウエストンの方が好みなのだ。モンクは、ソロピアノの場合は、最初から「タイム」を自由にしているかのようで、全編ルバート、というか自由自在にタイムを伸縮させているようだ。むちゃくちゃにタメて弾いたり・・・わりとキッチリとインタイムで弾いてみたり・・・だけども聴いていて、何の不自然さも感じないだ。 むしろ、コンボでのソロパートでの方が、モンク独特の「タイムの歪ませ方」が、自ずと限定されてしまう場面もあるようだ。
エヴァンスのソロピアノは・・・ルバート風なところとイン・タイムなところが・・・何かこう「構成」として成り立っているようで、聴いていて、ちょっとだけ窮屈なイメージがあるのだ。モンクのソロピアノからは、そんな窮屈な感じを受けない。エヴァンスは・・・だから、ソロピアノの場合でも、常に「タイム」を強く意識しているタイプのピアニストなのだと思う。
しかし・・・そのエヴァンスの「タイム意識」が、こういうヴォーカルアルバム(ピアノだけの伴奏)では、すごく「生きた」のだと思う。このデュオでのエヴァンスの伴奏の素晴らしいこと! どの曲も、エヴァンスの短いイントロ~テーマにベネットの唄~エヴァンスのソロピアノ~ベネットの唄~というパターンなのだが、後半、ベネットが「どこ」から入るか~くらいは、もちろん決めてあったとは思う。そして、エヴァンスという人は、そういう「適度な枠」がある方が、自分ひとりだけのソロ演奏よりも~展開がやや冗長になり「構成的」になりすぎる感じがある~かえって素晴らしく職人的な技を見せてくれるようだ。ルバート的に弾く場面とキッチリとタイム・キープをする場面。その辺りの調節は、ソロピアノゆえに柔軟にやりくりできるのだ。エヴァンス独特のタイム感(つっこむような)と独特なフレーズで・・・もう完全に自分のの世界を創ってしまう、エヴァンスのソロ。普通の唄伴での「つなぎ」という感じのソロではない。ここまで自己主張のあるジャズのアドリブを「唄伴」でやってしまうエヴァンスという人・・・素晴らしい!   
そうしてさらに唸るのは・・・これほど突出したソロピアノの地平から、今度は「唄伴」のピアノ弾きとして、そこから見事に、自然に、無理なく、「唄がスタートした時のテンポ」に戻してくることだ。ベネットの出だしのちょっと前には、見事にテンポを安定させる。運転の巧い人が、シフトダウンとアクセルワークを巧みに操って、とてもスムースに減速したような感じだ。だから・・・「ああ、ここで唄が入ってくるぞ」と思わせてくれるのだ。そして、やはりそこから、ベネットの唄が入ってくる。トニー・ベネットの声は、ややくすんだようなしわがれた声だ。ベネットというと、声を張り上げるようなイメージがあると思うが、このアルバムでは、そのような場面はほとんどない。ゆっくりとしたバラード風が多いのだが、この声で、歌詞の一言一言を、ていねいにかみしめるように、唄いこんでいく。唄の最後に、声が消え入る瞬間まで気持ちがこもっているような唄い方だ。
<young and foolish>
<some other time>
<we’ll be together again>

どの曲にも・・・深い味わいがある。何度も聴いてきたこのデュオアルバムを、このところ、再び2度3度と、聴いている。その度に
感じることは・・・2人の作り出す世界~その雰囲気、色彩みたいなものが、見事に調和していることだ。そしてその調和は・・・
2人がただ無難に合わせようとしたのではでなく、ひとつの曲の中で、それぞれの個性をぶつけ合いながら、それでいてお互いが見事な
バランス感覚を発揮し、そうしてその曲を仕上げていく~そんな中から生まれた調和なのだと思う。そんな厳しくも美しい表情が、このアルバムにはある。2人の「唄」を聴くことで、なぜかしら・・・人生の、厳しさ、寂しさ、そして温かさ、を感じさせてくれる。
本当に素晴らしいヴォーカルのレコードだと思う。

この「トニーベネット/ビル・エヴァンス・アルバム」を聴いて、ベネットを好きになった僕は、いくつかベネットを入手した。

bennett__evans_002 Tony Bennett & Bill Evans/Together again(improv)テイチク 1976年

デュエット続編の improv盤もすごくいい。
fantasy盤に比べると、ちょっと地味な曲が多いが、逆に、それがいいとも言える。
バーンステイン作の<lucky to be me>やミシェル・ルグラン作の<you must believe in spring>は、素晴らしい。

それから、けっこう愛聴している2枚組LPがある。
Columbiaレーベルからの「ジャズの曲」を集めた2LPの「ジャズ!」だ。たしか80年頃に発売された盤だ。この2LPには、スタン・ゲッツやエルヴィンとの未発表セッション3曲ほどが収録されていた。
この中の1曲、<Danny Boy>は、なかなか素晴らしい。ゲッツとエルヴィンをバックに唄うベネット・・・かっこいいです。

ベネットの古い時代のもの。これは、どれも悪くない。そりゃあそうだ、トニー・ベネットは、もともとジャズマインドの強い唄い手で、
すでに1955年くらいから、ジャズっぽい内容の盤をあまた出しているのだから。初期の2~3枚だけ挙げておく。

Cloud 7(1955 columbia) チャック・ウエイン(g)など。(未入手。konken氏が所有。ときどき聴かせていただいている)
the beat of my heart(1957 columbia) ブレイキーやチコ・ハミルトンなど。(近年のCBS再発盤を入手)
strike up the band(1959 roulette ) ベイシーとの共演。(CDです・・・)

bennett__evans_003ああ、そうだ。初期のもので、もう1枚、とてもいい盤がある。
Tony Bennett Sings a String of Harold Arlen(columbia 1960年)だ。僕の手持ち盤は、残念ながらCDだ。(CBSソニー)

ハロルド・アレンは、昔から好きな作曲家だ。地味だが、いい曲がいっぱいある。作曲家と唄い手の相性、というものもあるようだ。そして、トニー・ベネットとハロルド・アレンの相性。これが・・・抜群にいいのだ。
ベネットの「ちょっぴり幸せな気持ち」にさせてくれるような唄い方・・・これがハロルド・アレンのメロディとよく合うのだ。
<I’ve got the world on a strings>
<over the rainbow>
<when the sun comes out>
が、特に好きだ。
ああ、それにしても・・・世の中には、「いい曲」がいっぱいある。ジャズは・・・まだまだ止められない。

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