トロンボーン

2014年2月15日 (土)

<ジャズ雑感 第37回>ベツレヘムの east coast jazz シリーズを巡る謎

つい最近、手に入れたレコードがある。それは・・・the compositions of Bobby Scott というベツレヘムの10インチ盤である。年末の「スタン・リーヴィー」記事から始まった皆さんとのやりとりを通して、このところの僕は軽い『ベツレヘム熱』に浮かされていたようでもあり・・・気が付いたら、これが手元にあったのだ(笑) 
もっとも・・・ベツレヘム10インチ盤の持つ魔力に抗(あらが)える者など、この世にいないだろう。以前から、僕も少しづつではあるが集めてきた。今回はそれらの10インチ盤も参考にしながら、もう少しだけ、ベツレヘム・レーベルのこと・・・特に、east coast jazz series のことを探ってみたい。East_coast_jazz_005
≪BCP 1009 Bobby Scott - East Coast Jazz #1~この10インチ盤が、栄えあるeast coast jazz series の #1 である。ベツレヘム社は、当時、新進気鋭の若手:ボビー・スコット(ピアニスト、作曲家~『蜜の味』1960年で有名)を大々的に売り出そうとしたようだ。この1009番より前に、1004番(ピアノトリオ)を発売していて、さらに1024番(1009番の続編~the compositions of Bobby Scott:2)も発売している。10インチ盤40点の内、3点がボビー・スコット作品だ≫

前回の<ミルト・ヒントン>記事のコメントにて、せんりくんとdenpouさんが、この east coast jazz series なるシリーズ名を提示してくれた。その折には軽いやりとりだけで終わったのだが、僕自身も、1020番という表記でありながら、なぜか12インチ盤の『ミルト・ヒントン』を持っていたことから、やはり east coast jazz series という名前がとても気になっていた。(1000番代は10インチ盤)
この『イースト・コースト・ジャズ・シリーズ』なる名前・・・それほど知られてはいないと思う。というのも・・・これ、「シリーズ」と呼ばれてはいるものの、わずかに9タイトルのみの発売で、しかも発売された時のレコード番号も飛び飛び。さらに、「シリーズ」の1~9が、10インチ時代から12インチ時代に跨(またが)って発売されているのである。そんな事情から、この  east coast jazz series  はシリーズ(連続したひとつの流れ)」としては、なかなか周知されにくかったであろう・・・と考えられる。
その辺の発売事情に絡むベツレヘム社のこのシリーズに対する思い入れと、その変化・・・みたいなものが、今回、手持ちのベツレヘム10インチ盤の「裏ジャケットのレコード宣伝番号」をチェックしている内に、浮かび上がってきたので、その辺りの経緯もまとめてみたい。

まずは、east coast jazz の1~9を、発売(されたとされる)タイトルの番号から括(くく)ってみた。

(10インチ盤)
BCP 1009 Bobby Scott - East Coast Jazz/1
BCP 1010 Vinnie Burke - East Coast Jazz/2
BCP 1012 Joe Puma - East Coast Jazz/3
BCP 1018 Herbie Mann - East Coast Jazz/4
(これ以降は12インチ盤)
BCP 1020 Milt Hinton - East Coast Jazz/5
BCP 10 Milt Hinton - East Coast Jazz/5
BCP 13 K&J- K + J.J. East Coast Jazz/7
BCP 14 Urbie Green - East Coast Jazz/6
BCP 16 Hal McKusick - East Coast Jazz/8
BCP 18 Sam Most - East Coast Jazz/9
BCP 6001 K&J- K + J.J. East Coast Jazz/7
(最初はBCP13番として発売されたが、短期間の内に BCP6001番に移行されたらしい)

これらの east coast jazz series ・・・僕は、12インチ盤の 10番(1020)、14番、18番、6001番(13番)の4枚は持っていたが、10インチ盤で持っているのは、この記事の冒頭に掲げた1009番(Bobby Scott)のみである。
だがしかし・・・そこは持つべきものはお仲間である。前回のコメントやりとりの後、denpouさんがお持ちの east coast jazz series 10インチ盤の写真を送ってくれていたのだ。denpouさんは3枚、お持ちだった。
*以下、写真6点~denpouさん提供。

Bcp1009_2 Bcp1009_3
≪BCP 1009 Bobby Scott - East Coast Jazz/1≫

Bcp1010 Bcp1010_2 
≪BCP 1010 Vinnie Burke - East Coast Jazz/2≫

Bcp1012 Bcp1012_2 
BCP 1012 Joe Puma - East Coast Jazz/3

これらの写真で判るように、この east coast jazz series なるシリーズ・・・表ジャケットには「小文字」で、裏ジャケットには上部に「大文字」で、EAST COAST JAZZ SERIES としっかりと表記されている。まずは、「裏ジャケット下部の宣伝レコード番号」にも注目してみよう。

East_coast_jazz_006_4   
1009番( east coast jazz seriesの#1)には~
1010(#2)、1012(#3)、1015、1016、1017、1018(これが#4なのだが、east coast jazz~#4の表記なし)まで。9番の裏ジャケットにわりと番号の離れた18番まで載せている・・・ということは、1ヶ月に4枚づつ発売したとしても、1~2ヶ月先の発売予定のタイトルまで載せていたのかもしれない。

1010番(#2)には~
1009(#1)、1012(#3)と、1015~1018(#4表記なし)まで。

12番には~
1009(#1)、1010(#2)、1018(#4)、1016、1017まで。

上記のことから、EAST COAST JAZZ SERIES シリーズ最初の#1(1009番:THE COMPOSITIONS OF BOBBYSCOTT)の発売時から、すでに1012番の#3(JOE PUMA)までをシリーズとして予定(あるいは同時に発売)していたことが判る。
しかしその反面、同シリーズ1009番・1010番の発売時には、1018(HERBIE MANN QUARTET)を、シリーズの#4としては決定していなかった・・・ことも覗える。そうして、1012番(JOE PUMA)を発売した時には、先発売予定の(あるいは同時に発売)1018番を#4として宣伝に載せているではないか。と、なると・・・この場合、せいぜい1~2ヶ月くらい前に「east coast jazzシリーズの次のタイトル」が決まったことになる。
ベツレヘム社は、このeast coast jazz なるシリーズを企画し、その発売を開始してみたものの、実はそれほど綿密な販売プランなどもなく、案外、「思いつき」のシリーズだったのかも?・・・僕はそんな風にも想像してしまう(笑) まあしかし、よく考えてみたら、ベツレヘムのというレーベルのコンセプト自体が(西海岸事務所を設立する前の)元々、「東海岸の白人ジャズ」みたいなイメージのものだったわけで、どの作品が east coast jazz シリーズであっても、そうでなくても、それほど違和感もないような気もする(笑)

さて・・・冒頭に書いたように、僕はベツレヘムというレーベルに興味を持ってから、10インチ盤も幾つか入手してきた。取り出してきてみると、思ったより枚数はあるじゃないか(笑)・・・まずは、並べてみよう。12title_2

上段 左から~1003、1004、1007、1016
中段 左から~1017、1019、1021、1024
下段 左から~1025、1029、1031、1040
≪僕の手元には、これら12枚のベツレヘム10インチ盤が在った。どのジャケットにも、ゴールドブラット表記がある。この頃のゴールドブラットは、「写真もの」だろうと「イラストもの」だろうと、そのどれをも抜群のセンスを持って、素晴らしいジャケットに仕上げている。この中で僕が特に好きなのは「イラストもの」~Charlie Shavers/Horn o'Plenty である。但しその内容は、DJの声が被(かぶ)るもので・・・ジャケットほど好きになれない(笑)≫

「ジャケット裏の宣伝レコードの番号」に、もう少し拘りたいので、僕の手持ちの中から、比較的、番号の近い10インチ盤の裏ジャケットをチェックしてみた。

1016番(sincerely, Conti)の裏ジャケットには~
1001と1002(ともにクリス・コナー)と、#1(1009)と#2(1010)の4タイトルが載っている。なぜか、1012と発売間近のはずの1018(HERBIE MANN QUARTET)が載っていない。
1017_levy_2 1017_2 ところが、次の1017番(Stan Levey plays the compotisions of ~)の裏ジャケットを見ると・・・ここでは、当(まさ)に、EAST COAST JAZZ SERIES #1~#4(1009、1010、1012、1018) と1016の5タイトルが載っているじゃないか。これは明らかにこのEAST COAST JAZZ SERIESに的を絞った宣伝である。

この調子で宣伝していくのか~と思いきや・・・次の1019番(Oscar Pettiford/Basically Duke)では、1001番~1020番まで18タイトルを載せている(1014番と1019番は不掲載) 
1019_baiscally_2 1019  EAST COAST JAZZ SERIESの扱いについては、1009、1010、1012、1018、1020 のそれぞれに EAST COAST JAZZ SERIES #1~#5を付けて、タイトルと参加ミュージシャンを載せている。この時点ではまだ「シリーズ」として売ろうとしている。
そして、(手持ち盤では)1025(Herbie Harper)の裏ジャケット宣伝では、こうなる・・・。
1025_herper1001~1026までのタイトルのみ載せているが、1010番、1012番、1018番、1020番を見ても、EAST COAST JAZZ SERIES #~なる表記はどこにも見当たらない! そしてこの「宣伝パターン」は、1031番でも同一。10インチ盤最後の1040番(Dick Garcia/Wigville)でも、裏ジャケ宣伝は1001~1028番までのタイトルしか載せていないのだ。
これが少しでも多くのタイトルを宣伝に載せようという、単にスペースの問題なのか・・・あるいはこの時点で、EAST COAST JAZZ SERIES #~というシリーズ概念に見切りを付けたのか・・・その辺りは判らないが、いずれにしても、10インチ盤時代のベツレヘム社は、この「シリーズ」をうまくまとめ切れなかったのでは・・・という印象を僕は拭いきれない。
ベツレヘム社は、自信を持って始めた EAST COAST JAZZ SERIES に相当な拘りを持ちながらも・・・しかし実際の売り方には大いに迷いながら(もちろん売れ行きが芳しくなかったからだろう)・・・それでも#1から#4まで製作販売してきた。しかしその頃、時代は10インチから12インチ時代へと移り始めていた。ベツレヘム社も「時代に乗り遅れてはならない」として、12インチ化に踏み切る。
ベツレヘム社は、12インチ盤の発売に当たって、まずDeluxeシリーズを計画した。このDeluxeシリーズ~ご存知のように、基本的には「2枚の10インチ盤のカップリング」企画である(10インチ盤2枚分そのままを1枚には収録できずに1~2曲をカットすることもあったようだが)
そのDeluxeシリーズの発売番号・・・BCPの1番から始めるのが普通のはずだが、ベツレヘムの場合、どうやら・・・BCP1~9番という番号は、12インチ化を始めた頃には使われなかったようだ・・・ということが判ってきた。
なぜか? なぜ普通に1番から発売しなかったのか? ここで・・・『ミルト・ヒントン』である。
その時、east coast jazz seriesの#5として用意してあったのは、10インチの1020番:Milt Hintonである。そしてひょっとしたら、この1020番がベツレヘム社としても最初の12インチ盤で、発売までの準備不足もあり、10インチとして用意した番号(1020番)はもちろん、カバー写真・レイアウトなど全てをそのまま使用して、12インチ化してしまったのかもしれない。これが1020番(その後、BCP10番に修正)のMilt Hinton(east coast jazz series #5)となる。
*(その後の「シール貼り」「マジック消し」の経緯は、夢レコ<ミルト・ヒントンというベース弾き>を参照のこと)

14_urbie 14_urbie_2 さて、12インチに移行した直後の、east coast jazz seriesの#6(Urbie)の裏ジャケットをチェックしたら、面白いことに気が付いた。
はっきりと「12インチ」レコードとして、1020番の「ミルト・ヒントン」と書いてあるじゃないか! そうして、左側の10インチ盤の宣伝には、1020番は載っていない。
つまり・・・ミルト・ヒントンの1020番は、最初から「12インチ盤」として正式に発売されたのだ!(単純なミスではなく意図的に) 
そして・・・ 『ミルト・ヒントン』の10インチ盤(1020)は、ひょっとしたら、発売されなかったのかもしれない。
だとすれば・・・これまで10インチ盤『ミルト・ヒントン』がネット写真でさえも確認できなかったことの説明も付く。Hinton4

その後、まもなく、ベツレヘム社は、その1020番を、BCP10番に修正した~ことは事実なのだが、そのことで、その後の発売番号割り当てプランに混乱が生じてしまったことはあるかと思う。
この辺りのことと、ベツレヘム社が拘りを持ってきたであろう、EAST COAST JAZZというシリーズへの扱い具合を考え合わせてみると・・・僕なりの答えが見えてきた。

前回の記事から幾度か ≪Deluxeシリーズが発売され始めた時、何らかの理由により、BCP 1~9番辺りが「欠番」として使われなかったのでは?≫ と書いてきたが、その「何らかの理由」として・・・以下のようなことを考えてみた・・・ベツレヘムについては、たぶんこれが最後の妄想である(笑)
その時、ぼんやりと僕のアタマに浮かんだのは・・・「BCP 1~9番辺り」という数(かず)と、east coast jazz seriesの #1~#9 という数(かず)のことだ。どちらも9個じゃないか。う~ん・・・これは何かあるぞ・・・と。 
つまり・・・ここには、east coast jazz series が深く関わっているのではないかな?・・・という想いがあったわけである。

≪1020番と印刷された『ミルト・ヒントン』~どうせ修正するのなら、1番に修正することもできたはずなのに、なぜ、そうしなかったのか?≫
~この時点ですでに、10インチ盤音源を使っての12インチ化のプランもあったはずで、そうした時に、すでに発売済みの10インチ盤:EAST COAST JAZZ シリーズ #1~#4 も、どこかで再編したい~とベツレヘム社は考えていた。
そこで12インチ盤の新譜第1弾として用意した『ミルト・ヒントン』は、1020番(EAST COAST JAZZ SERIES #5)という番号が付いてしまっている。さあどうする、ここはシール&マジックで修正するとしても、ここでもし「1番」に修正すると~それもまずいなあ~EAST COAST JAZZ シリーズは、すでに #1~#4まで出ているし~#5が先の番号になってしまうのも按配が悪い~そうだ、#5の『ミルト・ヒントン』を、とりあえず、BCPの10番にしておけば、前に1~9の空き番号が出来る。それを使えば、10インチ発売済みのEAST COAST JAZZ シリーズ #1~#4 も例えばBCPの6番~9番に収められる。本当は『ミルト・ヒントン』1020番を5番に修正するのが一番いいのだけど、5番だとマジック消し作戦が使えないし(笑) まあ、いいや。この先も#6~#9と企画を続ければ、とりあえず、1~9番もうまく収まるだろう・・・というような思惑が在ったのでは・・・と、僕は想像する。
そうして実際、ベツレヘム社は、EAST COAST JAZZ SERIES の続編を #6~#9まで創ったのだが、それらには、せっかく用意したはずの「空き番号 1~9」を使わずに(これまた何らかの事情により:笑) それぞれ、BCPの13番『K+JJ』(すぐ後に6001番に移行)、14番『Urbie Green』、16番『Hal Mckusick』、18番『Sam Most』 として発売されたのである。 18_sam 18_sam_2
結局のところ・・・EAST COAST JAZZ SERIES なるネイミングが、はっきりとジャケットに表記されたのは、10インチ盤・12インチ盤を通して、これら全9タイトルだけだったことになる。
さて、EAST COAST JAZZ SERIES は、12インチに移行してからも、 #5~#9まで発売されたわけだが、それでは、10インチ盤で発売された EAST COAST JAZZ SERIES #1~#4 は、その後、どうなったのか?
先ほど≪Deluxeシリーズは、基本的には「2枚の10インチ盤のカップリング」企画である(10インチ盤2枚分そのままを1枚には収録できずに1~2曲をカットすることもあったようだが≫と書いたのだが・・・実は、EAST COAST JAZZ SERIES #1~#4 (10インチ盤)も、その「中身だけ」は、しっかりと、Deluxeシリーズ:12インチ盤の中に再編されていたのだ。(#3のみ確認できず) 以下、その移行先。

East_coast_jazz_002_2 East_coast_jazz_003_2 East_coast_jazz_004_2 East Coast Jazz #1(1009番 Bobby Scott)~全5曲が、BCP8番(The Compositions Of Bobby Scott)のA面に収録。
East Coast Jazz #2(1010番 Vinny Burk)~全8曲が、BCP6番(Bass By Pettiford/Burke)のB面に収録。
East Coast Jazz #3(1012番 Joe Puma)~12インチ化を確認できず。
East Coast Jazz #4(1018 番 Herbie Mann)~全7曲が、
BCP58番(Herbie Mann Plays)のA面に3曲、B面に4曲、収録。

上記のように、East Coast Jazz シリーズ #1~#4 (10インチ盤)の内、3点(#1と#2と#4)は、12インチ化されていたわけである。残念ながら、East Coast Jazz Series なる表記は、8番、6番、58番のジャケットのどこにも見当たらないが、3点とも「全曲」が再編されている。そして・・・#1と#2には、「空き番号」になっていた、BCP8番と6番が使われているじゃないか! やはり・・・ベツレヘム社は、新たに始めた12インチDeluxeシリーズの初期ナンバー(1~9)を使って、East Coast Jazz シリーズを「再編」しようとしていたのだ。僕はそう思えてならない。

こんな具合に、いろいろと妄想を書き連ねてきたが、もちろん真実は誰にも判らない。60年も前のジャズレコードの話しだ・・・判らなくて当たり前である(笑) それにしても、今回、興味を持った特にベツレヘムに関しては、まとまった「レーベル情報」もほとんど見当たらず、本当に判らないことだらけだった。
この記事の冒頭にも書いたが、僕の最大の疑問は~
≪Deluxeシリーズ1~9は当初は「空き番号」だったのでは? そして、だいぶ後になってから発売されたタイトルに、この1~9番が充てがわれたのでは?≫というものだった。
それについて、少々補足すると~
問題のBCP1~9番の<左NY、右CALIF>ジャケットのタイトルは、以下となる。
BCP 1   Bobby Scott - Terry Pollard
BCP 2   Oscar Pettiford/Red Mitchell - Jazz Mainstream
BCP 3   Eddie Shu/Bob Hardaway - Jazz Practitioners
BCP 4   Pete Brown/Jonah Jones - Jazz Kaleidoscope
BCP 5   A Ruby Braff Omnibus
BCP 6   Oscar Pettiford/Vinnie Burke - Bass By Pettiford/Burke
BCP 7   Hank D'Amico/Aaron Sachs - We Brought Our Axes
BCP 8   The Compositions Of Bobby Scott
BCP 9   Westcoasting With Conte Candoli And Stan Levey

僕が持っているのは 3、6、8、9である。これらの<左NY、右CALIF>ジャケットのものが(それしか存在しないと思われる)、Deluxeシリーズもだいぶ後になってからの発売されたものであることは間違いない。その根拠は、例によって(笑)それぞれのタイトルの裏ジャケットレコード宣伝の番号だ。
BCP3には[40~64まで]
BCP6には[38~64まで]
BCP8には[56~69まで]
BCP9には[40~65まで]
この番号並びを見ると、それぞれの発売時に多少は先の発売予定のタイトルまで載せたとしても、これらの3,6,8,9番がカタログ上ではBCPの若い番号であっても、実際に発売されたのは、BCP60番の前後であったことは明らかである。

さて、今回のベツレヘム・・・本当に判らないことだらけで、だから・・・現物(ジャケット・盤のデータ)のサンプルを集めて、その差異から、あれやこれや類推していったのだが、如何(いかん)せん、サンプルが足りない。ネットからの情報でもそれが信頼に足るものであれば、写真など使用させてもらうことも考えないとダメだな・・・そんなことを思いながら「ベツレヘム迷宮」に苦しんでいた時、ひとつの有力な資料を見つけた。見つけた~と言っても、実は、shaolinさんというレコード愛好家の方のブログ記事に「古い時代のレコードカタログの記事」があったことを思い出しただけなのだが(笑)
それは≪Old Record Catalogues, Pt.1≫という記事で、その中に、果たしてBETHLEHEMのレコードカタログも載っていたのだ!
そして、その1956年頃のBETHLEHEMレコードカタログの写真と共に、以下のようなキャプションが付いていた。
≪12インチLP ($4.95) は BCP-12 (Don Elliott) から BCP-35 (Bobby Troup Vol.II) まで (なぜか BCP-11 およびそれ以前は未掲載)、10インチLP ($3.85) は BCP-1001 (Chris Conner Sings Lullabys Of Birdland) から BCP-1040 (Russ Garcia) まで (BCP-1020 は未掲載)がリストアップされています≫
*bassclef註~1020番は、12インチ盤として、BCP22とBCP23の間に1020の番号のまま掲載されている。おそらく・・・このカタログ発行の後に、この12インチ盤1020(ミルト・ヒントン)を、「空いていた」(あるいは「空けておいた」)BCP10番に移行させたのだろう(「シール貼り&マジック消し」作業により)

~いやあ・・・やっぱりそうだったのか!という気持ちで、僕は嬉しくこの資料を眺めたわけである。
このカタログ資料は、本当に興味深いものですので、オリジナル・レコードに興味ある方・・・ぜひご覧ください。specail thanks to Mr. Shaolinさん!
これがそのshaolinさんのブログ記事のアドレスです~http://microgroove.jp/2007/06/old_record_catalogues_pt1/

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2011年6月 4日 (土)

<ジャズ回想 第24回>また、いいレコードをたくさん聴いた。

久々にYoさん宅・・・あっという間の7時間。

毎年、初夏の頃になるとYoさん宅に集まるのだが、今回はホストのYoさん、PaPaさん、denpouさん、recooyajiさん、konkenさん、bassclefの6人が、青い顔したウーレイ(スピーカー)の前に陣取った。皆、声こそ出さないが「ぐへへへ」という顔をしている(笑) さあ・・・お楽しみの始まりだ。

この日、若干の逡巡(しゅんじゅん)の後、Yoさんが選んだのは、ドルフィーのLive In Europe vol.1だった。ドルフィーから・・・というのはこうした音聴き回ではちょっと異例かもしれない。演奏会でもレコード聴きでも、たいてい最初の曲は、ちょい軽めというかリラックスした感じの曲・演奏から始めることが多いように思う。だから・・・初っ端(しょっぱな)からドルフィというのは、なんというか・・・若干、ハードかもしれない(笑) だけどこれには訳がある。
実は少し前に「この頃はドルフィーを聴いている」というYoさんからのメールがあって、じゃあ次回の音聴きで会は、「ぜひドルフィのバスクラ(バスクラリネット)のソロ~God Bless the Childを」とお願いしていたのだ。Pr7304_j_2
E.Dolphy/Live in Europe vol.1(prestige) 2nd紺ラベル
god bless the child 
この演奏・・・ドルフィのまったくの独り吹きである。このバスクラ独奏でのGod Bless the Child・・・僕は高校の時、FM放送から録音したカセットを聴きまくって、そうして大好きになったのだ。
僕はジャズという音楽を中学3年の頃から好きになり、そのうち聴くだけでは飽き足らなくなり、大学のジャズ研でウッドベースを触るようになった。ベースという楽器を選んだのはたぶん偶然だが、僕は「音」に対する感性の根っこがわりと単純らしく、音楽を聴く際、概(おおむ)ね、高い方の音より低い方の音を好むようだ。そんな単純脳の僕が苦手なのは・・・まず、ハードロックのエレキギターの音。あれがダメである。そしてロックのヴォーカルはたいてい甲高い声で叫ぶわけだから・・・これもけっこう辛(つら)い。
ジャズヴォーカルでも高めの声を張り上げるタイプ(例えば~ジュディガーランド)よりも、低めで落ち着いた声質(例えば~アン・バートン)を好む。
ジャズ聴きにおいての「管楽器の音色」についての好みで言えば・・・まずサックスが好きだ。そしてアルトよりテナーだ。
低い方がいいのなら、バリトンサックスが最も好きなはずなのだが、そうでもない(笑) バリサクの音も嫌いではないが、たまに聴くといいなあというくらいで、ハードでゴリゴリなタイプ(例えばペッパー・アダムス)よりも、ライトな音色タイプ(例えばジェリー・マリガン)の方が好みである。
金管のトランペットも、もちろん嫌いではないが、トランペットにおいても、強いアタックで高音域のフレーズを吹きまくるタイプより、ゆったりした音色で中音域のフレーズを吹く方が好みだ。
そうだ・・・トロンボーンも実にいい音色だ。時にはトランペット的なアタックも効くし、何よりもスタンダード曲をゆったりと歌う感じにはピッタリの音色じゃないか。ジャズ聴きも長いがこの15年ほどか・・・ボントロをますます好きになってきている。
クラリネットも・・・いい。実はクラリネットなんて・・・と長いこと思っていたのだが、アート・ペッパーの「家路」を聴いて、あの独特な表現力を醸し出すこの楽器の魅力に目覚めたのだ。あまり音源がないようだが、レスターヤングのクラリネットにも同じような魅力を覚える。ただクラリネットは、奏者によってかなり音色のクセが違い~これはクラリネットに限らないが~わりと甲高い感じの音でパラパラと吹くベニー・グッドマンはほとんど聴かない。好んで聴くのは、ゆったり音色のバディ・デフランコくらいか。ソニー・クラーク入りのバディ・デフランコの音色は、しっとりと暖かく、実にいい。うん、クラリネットまできたな。
そこで・・・・・バス・クラリネットなのである。
これが・・・いい! バスクラというのは、立ち姿が長くてその形だけでも絵になる楽器なのだが、もちろん「音」の方もチャーミングなのだ。くごもったように暗くて、しかし仄(ほの)かに暖かくもあるような、あの不思議な音色。そしてサックスに負けないくらいの音量と音圧感。実は最近、このバスクラという楽器に触る機会があって、ちょっと吹かせてもらったのだが・・・低い方を鳴らした時、体に伝わってくる楽器の胴鳴り振動に僕は痺れた。
そしてバスクラと言えば・・・これはもう、ドルフィーなのだ!Pr7304_l

ドルフィーは、この曲の原曲メロディを、おそらくは、わざと出してこない。始めのうち・・・ドルフィーは、なにやら音をまさぐるように、バスクラの低音域を使ったアルペジオっぽい音階をしつこく続けてくる。そうしてある時~たぶん曲のサビの部分か・・・ここでいよいよ、高い音を吹く。これが・・・とても印象的で、それまでの低い音域でのファットな音圧感豊かな音色とは違う質感の、ちょっと歪んだような、ノドをキュ~ッと絞ったような、そんな悲痛な音色なのだ。でも・・・それが効く。バスクラ独奏においての静と動。抽象と具象という感じがしないでもない。まあそんな解釈はどうでもいい。とにかく・・・このバスクラ独奏は、純粋に「ドルフィーという人間の音の世界」なのだ。僕らはその「音」に、ただ浸(ひた)ればいい。

Yoさんのシステムはバランスがいい。だから7時間、聴いていても音に疲れはしない。音の説明はまったく難しいことだが、あえてシンプルに言えば~
まず低音のエネルギー感が凄い。そのエネルギー感とは・・・量感だけでなくその演奏においての奏者が意図して発したであろう強弱の表現が~ピアニシモ(弱く)とフォルティシモ(強く)の楽器の鳴り具合。とりわけ「ここぞっ!」と強く吹いた・弾いた時に、ぐぐ~っとそこに現れるエネルギー・音圧感・存在感の体現~凄いのだ。これを「音楽的なリアリティ」と表現してもいいかもしれない。
以前から、このウーレイで聴かせてもらうロックのバスドラの音の強弱のニュアンスとそのリアリティ(存在感)に驚いてはいた。ウッドベースも同様である。そして・・・バスクラのような、なんというか低音域に溜めたような音圧感が発生する楽器にも、このウーレイは素晴らしい鳴り方・・・いや、表現をしてくれた。ドルフィー好きが聴いたら・・・これはもう「う~ん・・・」と唸るしかないだろう(笑)
「低音」の話しになったので、ここで、低音全般に拘るYoさんの低音観みたいなものを紹介してみたい。メールやりとりの中で、オーディオに疎い僕のために、Yoさんが判りやすく説明してくれたものだ。
*Yoさんの了承を得てここに転載します。
≪私は「音楽のファンダメンタルは中音だけど、音のファンダメンタルは低音だ」と考えています。私の言う中音とは音楽帯域の意味で楽譜で表される音の範囲のつもりです。SPのようなレンジの狭い(中音だけの音)でも音楽の感動を味わえますから音楽にとって大事なのは中音だという事は当然です。
しかしオーディオで再生音の音作りをするとき最も大事なのは低音と考えています。特に私のように等身大のエネルギー感を出そうとする場合に低音という音のの土台がしっかりしていないと楽器の実在感や本当の臨場感は得られません。
低音が大事な理由のもう一つは最も調整が難しいのが低音で、それが中音以上に影響する事です。
部屋の影響を最も受けやすいのも低音ですし、低音が原因する共振、共鳴の倍音成分が中音以上にかぶったり音全体に悪影響が出てしまったりもします。中、高音のうるさいところなどが結局低音が原因していたという経験は何度かあります≫

さて・・・会の最初のうちは、皆さん、柄にもなく(笑)けっこう遠慮しているので、手持ちのレコードをなかなか出さない。だから、ホストのYoさんがいくつかレコードを選んでいく。

Zoot Sims/Zoot Sims In Paris(UA サックス吹きラベル)
Uaj_14013_j
UAレーベルへの興味からモノラルとステレオの聴き比べもしてみた~Uajs_15013

ステレオではやや左からズート。わずかにエコーがかかったようなふっくらしたテナーの音色か。でもこのエコーは、明らかにこのライブ会場のの自然な響きエコーだから気にならない。 むしろ、いかにも「ライブ」という感じがよく出ていて、そんな音色がリラックスしたズートの芸風ともピタリと合致して、これはもう実にいい雰囲気なのだ。Yoさんも「ズートで一番好きかもしれない」とのこと。Uaj_14013_l_2この「サックス吹きラベル」は、ステレオとモノラルで質感に大きな違いがなく、どちらもいい音だった。「UAはステレオがいい」と思ってはいるがもちろん全てのタイトルにそれが当てはまるわけではないようだ。

Frank Strozier, B.Little, Geroge Coleman~/Down Home Reuion(UA)
Uas_5029_j ステレオ盤(青ラベル)
Uas_5029_l_4   うん、これはいいっ!最初の音が出た瞬間に僕はうれしくなってしまう。ソロの先陣を切るのはストロジャーのアルト。これが実に太っい音色なのだ。ストロジャーというと、vee jayレーベルのfantasticでよく知られているアルト吹きだと思う。
僕はこの人を、ジャズ聴きの初期からマッコイ・タイナーのtoday & tommorrow(impulse というレコードで耳にしていて、その後は、MJT+3というグループや jazzlandの作品を聴いてきたが・・・このUA盤を耳にすると・・・ストロジャーのアルトって、こんなに艶やかでしかも逞(たくま)しい音色だったのか!と驚くほど太い音色と、そしてもちろん気合の入ったいいソロじゃないか。素晴らしい!
それにしても、中央からアルトが押し出してくる、このリアルな音圧感はどうだ。こういう、いい録音の、もちろんいい演奏のレコードを掛けると・・・Yoさんのウーレイ(スピーカー)も、実に気持ちよさそうに鳴っている。
続くソロは、ブッカー・リトル。中央からやや左から鳴る。独特なちょっとクールな響きで、しかし、これも独特な内に秘めたような情熱・情感を感じさせるトランペットだ。リトルはさっきもドルフィのFive Spot vol.2で聴いたが、私見では、フレーズがどうのこうの言う前にあの「深く鳴る音色」を味わうべきタイプのペット吹きだと思う。音色そのものに説得力があるという感じだ。
  Dscn2827_2そして、ベースがジョージ・ジョイナー・・・これもミンガス張りの強いアタックで弦を引っ張り倒したような、ザクザクしたようなベースの音色が魅力的だ。やっぱり・・・United Artistsの青ラベル(ステレオ盤)はいいのだ(笑)
ちなみに僕の手持ち盤は、日本キングから発売された1500円盤(ステレオ盤)だけど、各楽器の音圧感・鮮度感も案外、悪くないので・・・この日本盤でガマンしようではないか(笑)

Prlp_7116_j_2 Four Altos(prestige) NYCラベル
Prjp_7116_l_2 「盤質は悪けど・・・」と前置きして、Yoさんが、PrestigeのNYCラベル盤を出してきた。音はさすがの鮮度感だが、それよりも、Yoさん、こんな風にみんなで聴くときに「楽しめる」レコードも好きなのだ。
このアルト4人・・・誰か、判る?ということで、さあ、皆、聴き始める(笑)
「これ、誰?」「う~ん・・・判らん」「聴いたことないアルトだね」
誰も~だと断言できない(笑) 誰もが、フィル・ウッズだけは判るが、残りの3人がなあ・・・だから・・・ソロが2人目、3人目と進むと、「あっ、これは、フィル・ウッズ?ウッズだね」という具合なのだ。だけどウッズとクイルもよく似ているぞ(笑)
僕の認識では・・・ウッズと似ているけど、もうちょっとだけ荒っぽいかな・・?というのが、たぶんジーン・クイルなのだ。
となると・・・残りの2人が、サヒブ・シハブとハル・スタインということになる。サヒブ・シハブというと、たいていはバリトンサックス吹きとしての認識だろうか。そのシハブのアルト? それにほとんど録音のないハル・スタインのアルトを「おっ、ハルだ!」とすぐに判るようなジャズ好きなんているのだろうか・・・いや、日本に5人くらいは居るんだろうな。スタインに興味ある方は、はとりあえず、あのprogressive盤(もちろん日本盤でも)を聴くしかないだろう。それにしても、この「4アルト」・・・ソロの繋ぎ部分で4人が間髪を入れずに次ぎの奏者が吹き始めるので、うっかりすると「あれ?今、替わった?いや、まだか?」てな具合で、下手したら、ソロ奏者が替わっても気が付かないこともあるかもしれない。こういう時、モノラル録音はちょっと辛い(笑) 
てなわけで・・・アイラ・ギトラー氏の裏解説に頼りましょう!というのが皆の結論だった(笑) ボブ・ワインストック氏も・・・まったく罪作りなレコードをこさえてくれたものだ。

さて、ここで、denpouさんが取り出してきたのは・・・
Original_lp3_002 Rita Rice/Cool Voice of ~ vol.1(オランダphillips) 

Original_lp3_001このレコード・・・CDを持ってはいたが、やはりLPが欲しくなったその頃、ヴォーカル好きのkonkenさんが同じタイトルの米columbia盤を2枚持っていたので、その内の1枚を交換してもらったのである。
そのジャケ違いの米columbia盤もなかなか人気があったようだが、リタ・ライスがオランダ出身でA面6曲がオランダ録音だから、やはりこの蘭Phillipsがオリジナルだろう。
konkenさんからのリクエストで、 I cried for you を聴く。このオランダ盤・・・音が良かった。
欧州盤独特のちょっとツンと澄ましたような感じの音質で、アメリカの黒人ハードバップのバンドがもう少し洗練された巧い白人バンドのようにも聞こえてくる。もちろん歌伴(ヴォーカルの伴奏)だから・・・ブレイキーもいつもより静かめに叩いたんだろうが、ブレイキーのシンバルがいつもより抑え目に聞こえる(笑) 
Dscn2826 同じシステムで聴き比べたわけではないので、あまり意味はないかもしれないが、米columbia盤(僕の手持ちは白プロモラベル)とはだいぶ音の質感が違うようでもある。このレコードA面6曲はブレイキーのジャズ・メッセンジャーズのB面6曲については、Recorded in the Unitied Statesと表記されているので、B面については、米Columbia盤もオリジナル・・・と言えなくもない。この米Columbia盤のThe Cool Voice を聴いてみると・・・Phillips盤に比べ、ベースの音が太めに大きく、そしてドラムスの音がザラついたような感じに聞こえて・・・やっぱりアメリカの黒人ジャズの音がするのである。いや、そういう気がする(笑)
その辺りの音の印象のことをヴォーカル好きのkonkenさんに尋ねてみると、彼はこんなコメントをくれた。
≪先入観があるのかもしれませんが、基本的にはアメリカ人は米盤、ヨーロッパ人は本国盤がいいと思います。リタ・ライスも全部聴いていませんが、バックがメッセンジャーズなんで米盤の方が好みかな?というカンジですが、歌はオランダ盤の方がいいかな? だから反対の地元バックのA面はオランダ盤の方がいいかもしれません。
聴き慣れてるせいかもしれませんがジャズには米盤の方が親近感があります。1980年代前後にECMが一時ブームになったことありましたが、ちょっと醒めたような質感はジャズ自体が醒めたような感じがして自分のジャズを聴こうという気持ちまで醒めさせたような印象をいまだにに引きずってるようです。ジャズは音程がズレていようと録音にクセがあろうと熱いモノが伝わった方に軍配を挙げたいです≫
もともとこのレコードのプロデュース意図は・・・たぶん、ヨーロッパの女性歌手がバリバリのハードバップバンドに挑戦する~みたいなことだったようにも推測できる。そういう気持ちもあって聴くと、ライスは意図的にねっとりとした歌いまわしをしているような感じもする。これまであまり意識して聴いたことのないリタ・ライスが、やはりとても巧い歌い手だということがよく判る1枚であった。もう1曲・・・と聴いたバラードの my one & only love は、ホレス・シルヴァー名義のstyling of Silver収録のmy one & only loveと同じアレンジだった。

denpouさんはEP盤もお好きなようだ。
Dscn0204Dscn0202metronomeのEP盤~S.Getzのストックホルム録音の内、4曲入り(school boy 、I have only eyes for youなど)録音自体がかなり古いけど、さすがに録音したその国のEP盤・・・独特の生々しさのある音だが、素晴らしい録音とは言えない。これらゲッツの音源はroostの10インチ盤、12インチ盤も聴いたが、どれも音質はイマイチなようだ。


PaPaさん、満を持してこの1枚を~
Charlie Parker/~(clef)MGC-157 10inch盤 「鍵穴のパーカー」だ!Cimg7398
垂涎(すいえん)盤が出た。クレフの10インチ盤・・・このcover artはもちろんストーン・マーチンだ。マーチンのイラストは・・・細部を見ても面白いがそれよりパッと見た全体の構図・色合い~その印象度が圧倒的に凄い。ビビッとくる。わりと多めに赤色系を使うマーチンだが、この10インチ盤のcoverは、全体に黒っぽい色合いの中に、くくっと効く明るい色を持ってくる・・・そんな色使いが絶妙だ。、それにしても、なぜ主役のアルト吹きを狭い鍵穴から覗かなくてはならないのか(笑)Cimg7400_2
comfirmation~1953年録音だから、パーカーとしては後期の録音ではあるが、ドラムにマックス・ローチ、ピアノにアル・ヘイグという当時の新鋭をバックにしたワンホーンで、I remeber you、now's the time など、どの曲も、ぐぐっ と気合の入ったセッションだ。
この10インチ盤・・・アルトの音色がものすごく艶やかで、生々しい音圧感もあり、そしてやっぱり・・・パーカーのアルトは「重さ」を感じられる素晴らしい音質だった。録音そのものがしっかりしているようで、古い録音を聴き込んで出来上がってしまっているかもしれない「パーカーの音」のイメージが覆されるような、パーカーの音だった。これが50年も前のレコード盤の音とは・・・まったくレコードというものは凄いものである(笑)
そういえばいつものPaPaさんは、ちょいマイナーなサックス吹きやヨーロッパの管奏者をセレクトしてくるのだが、今回はあえて「ジャズ大物盤」を選んできてくれたようだ。パーカーの後は~
Cimg7404_2 A.Pepper/Meets the Rhythm Section(contemporary)モノ
M.Davis/kind Of Blue モノラル と Yoさん~Kind Of Blue ステレオ(プロモ白ラベル)
という流れになった。
どれも真に名盤で、音も演奏も素晴らしくて、「いやあ・・・やっぱりジャズはいいなあ」という幸せな気持ちになってしまった(笑)

Cimg7402 kind Of Blueは、同じCS六つ目ラベルでもステレオ盤の人気が異常に高いようだが、このモノラル盤も相当によかった。CBSレーベルは品質が安定していて、モノラルでもステレオでも音の質感がそれほど大きく変ってしまう・・・というようなことも案外少ないと思う。
そしてこのKind Of Blueのモノラル盤は~
Cimg7414 特に3人の管楽器の音量・音圧感が大きく聞こえて迫力がある。だからコルトレーン、キャノンボール、マイルスを強烈にたっぷり味わいたい方はモノラル盤の方が好みになるのかな、という気がする。この後、Yoさん手持ちのステレオ盤(プロモ:白ラベル)も掛けてみると・・・定位としては、コルトレーンとエヴァンスが左側に、キャノンボールがちょ右に、と変ったり、全体的に管楽器がちょっとおとなし目に聞こえたり、ベースが少し薄みになったりもしたが・・・僕はやはり(笑)Kind Of Blue については、ステレオ盤のややライトな(軽い)感じのサウンドの方が好みのようだ。

konkenさんは渋い1枚を出してきた~
Al Grey/The Last Of The Big Plungers(argo) ステレオ盤
Grey_1特にargoレーベルの音がいい、という認識はなかったのだが、このステレオ盤、 やけに音がいい。録音エンジニアはMalcolm Chisholmと記されている。 konkenさんはだいぶ前からトロンボーン好きのようで、こういうボントロの渋い盤までディグしているのだ。Argo_gold_4アル・グレイはベイシー楽団のボントロ吹きで「プランジャー」というのは、ゴムでできたお椀みたいなもので(ちょうどトイレが詰まった時の掃除道具みたいな)それをトロンボーンの音の出る開口部に当てたり外したりして、ボントロの音色を「ぅわわわ~・ムワワワ~」と変化させるのである。1920年代~1940年代のビッグバンド時代には、この「プランジャー奏法」がはやったらしく、だからこのLPのタイトルは、そういうプランジャー使いの最後の名手・・・というような意味合いだと思う。  
bluish greyという曲・・・出だしからCherles Fowlkesのバリサクが効いている。そして太っいベース音の主はエディ・ジョーンズだ。このベース弾きはとにかく音がでかそう。Grey_2ビッグバンドのスイング感を下からどっしりと支える感じのベース弾きだ。こういう地味だが太い音色と大音量でバンド全体を支えるタイプのベース弾きもやっぱりいいもんだなあ・・・という気持ちになる。というのも、Yoさんのシステムでこういう録音のいいレコードを聴くと、ウッドベースの存在感が本当に凄いので、いろんなベース弾きのベースラインはもちろん、音量・音圧感、そして音色の微妙な違い様までしっかりと感じられるので、そういうジャズにおける「低音サウンド」を浴びることは、ベース好きとしては、これはもう極楽なのである。

それにしても・・・いい演奏の詰まったいい録音のレコードをいい音で聴く・・・というのは、なんと気持ちのいいことだろうか。
ジャズはいよいよ・・・止められない(笑)

*ジャケット写真提供~
E.Dolphy/Live in Europe vol.1(prestige) 紺ラベル
Zoot Sims/Zoot Sims In Paris(UA) サックス吹きラベル
Frank Strozier, B.Little, G.Coleman~/Down Home Reuion(UA)青ラベル
P.Woods、G.Quil、S.Shihab~/Foru Altos(prestige)NYCラベル
はYoさん提供。

Rita Rice/Cool Voice of ~ vol.1(オランダphillips)
Stan Getz/metronomeのEP盤
はdenpouさん提供。

Charlie Parker/~(clef)MGC-157 10inch盤
A.Pepper/Meets the Rhythm Section(contemporary)
M.Davis/kind Of Blue モノラル盤
はPaPaさん提供。

Al Grey/The Last Of The Big Plungers(argo) ステレオ盤
はkonkenさん提供。

皆さん、ありがとうございました。bassclef


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2009年5月 5日 (火)

<ジャズ雑感 第28回> ジェリー・マリガンという人 

相手の個性を際立たせ、自らも生かすカウンターの名手。

007その人のレコードを集めよう!と強く意識したわけでもないのに、知らぬ間にレコードが増えてしまう・・・そんなタイプのミュージシャンがいるかと思う。僕の場合だと、バド・シャンクやポール・デスモンド、それから、ジェリー・マリガン・・・マリガンこそ正にそういうタイプのミュージシャンだった。マリガンは、バリトンサックス奏者としては(例えば、ハリー・カーネイやペッパー・アダムスに比べれば)さらっとしたライトな味わいの音色で、さらっとしたフレーズを淡々と吹く。どちらかというと強い個性のジャズメンを好んで聴いてきた僕は、だから、マリガンのそういう淡白な持ち味に対し、なかなか自覚的に「惹かれる」というところまでは至らなかったようだ。しかし・・・集まるレコードの数というのは正直なものだ(笑)pacific,verve,emarcy,limelight もちろん全部ではないが、たいていのタイトルが集まっていたのだ。ある時、それを自覚した・・・オレはマリガンが好きなのかな?
僕のマリガン聴き込み(というほどのことはないのだが)は、もちろんチェット・ベイカーとの初期カルテットから始まり、次にマリガンのビッグバンド~コンサート・ジャズ・バンドが好きになった。そのConcert Jazz BandのVerveの諸作をひと通り聴いてしまい、次にlimelight盤もいくつかを聴いてみると、そこにはそれほどいいと感じるものがなく、その辺りまでくると・・・マリガン本人の個性というもの自体には、実はそれほど惹かれてないことに気が付いた。初期カルテットもよく聴いたが、ほとんどチェットの方を聴いていたのだ。そこで再び自問自答・・・オレはマリガンという人をホントに好きなのかな?(笑)
そう考えてみると・・・これこそがマリガンだあ!てな具合にバリサク奏者としてマリガンの持ち味を感じさせてくれるようなレコードが・・・作品数が多い割には案外に少ない。006
マリガンのバリサク・・・ああ、ひとつ、いいのがあったぞ。それは、強烈さとは無縁の、しかし不思議と何度でも聴きたくなる、穏やかな味わいのレコード・・・Jeru(columbia)だ。
このレコードは、一発で気に入った。一発というのは、本当にA面の最初の出だしから・・・という意味である。
A面1曲目は capriciousというボサノヴァ風の曲なのだが、これがもう・・・気持ちいいのである(笑)何がいいって・・・そのバリトンのライトな音色、ドラムスのデイブ・ベイリーの抑えた叩き方、トミー・フラナガンのピアノもジェントルでありながらピシッとリズムの効いたコンピング(和音の押え方)だ・・・そうしたもの全てが一体となって誠に「趣味のいい」サウンドを造り上げているのだ。考えてみれば、もともと「音」に理屈はないわけで、音楽というのは「音」そのものに快感がある・・・とも言えるわけで・・・だから「いいサウンド」を生み出すミュージシャン、あるいはバンドというものは、それだけでもう素晴らしいわけである。
それにしても、マリガンさん、なんでこういう作品~ワンホーンでじわじわ吹き込むような持ち味~をもう少し造らなかったのかな?
てなこと考えながら、ジャケット裏を見て驚いたのだが・・・produced by Jazztime Productionとなっており、Executive ProducerがなんとDave Baileyとなっているではないか!う~ん・・・ドラマーがプロデュースする~というのも珍しいだろうし、でもやっぱりミュージシャンでもあり、そうして趣味のいい人がプロデュースすると、こういう趣味のいいレコードができるのだろうなあ。008
もう1枚は・・・Gerry Mulligan Quartet(columbia)
このレコード、僕はCBSソニーから出た1300円盤で聴いていたのだが、オリジナル盤というものに惹かれるようになってから、米columbiaの<6ツ目CSステレオ盤>が好きになったので手に入れた。こちらも理屈ぬき・・・バンドのサウンドが心地よいのだ。columbiaレーベルのマリガン作品は少ないが、その数少ない2枚ともに僕が惹かれたのは・・・おそらく偶然ではない。
この2枚とも・・・相方がアート・ファーマーなのである。私見では、マリガンとファーマーの「音色のブレンド具合」がとてもいいのである(というか、それが僕の好みということなのだろう) マリガンのいい意味での軽さとファーマーの潤いのある音色が混じると、バンド全体のサウンドがしっとりした感じになるというか・・・いい感じの温かみが生まれるのだ。ついでに言うと、そのしっとり感と米columbiaレーベルの温かみのある音質~こちらの相性がとてもいいように思う。
この2枚に、もう1枚~night lights(philips)だ。これも素晴らしい。こちらには名手~ジム・ホールが入った分、またちょっと違う味わいがあるが、マリガンが「バンド全体でひとつのムードを造り出している」という点では似た質感の作品だと思う。これらの嬉しい例外の他には・・・僕にとって「マリガンの愛聴盤」と言えるものが、長いこと、なかったように思う。

余談だが、僕が好みでないブレンドがある。マリガンとはうんと古くから共演しているボブ・ブルックマイヤー・・・僕は彼が苦手なのである。それはたぶん・・・ブルックマイヤーが悪いわけではない(笑)あの楽器~ヴァルブ・トロンボーンが悪いのである。あのモゴモゴとした音色が・・・本能的にダメなのである。器楽の味わいとしての話しになるが、トロンボーンの「抜けの良さ」というのは本当に気持ちいい!それに比べ、あのヴァルブ・トロンボーン(トランペットと同じように3本のピストンで音程を造る型のトロンボーン)の音色というのは、宿命的に「抜け」が悪いように感じる。

しかし、このところ・・・マリガンのいくつかのレコード~
Gerry Mulligan Meets Johnny Hodges(Verve MGV-8367)
Gerry Mulligan Meets Ben Webster(Verve MGV-8343)
Getz Meets Mulligan in HI-FI(Verve MGV-8249)
を聴くに及んで、マリガンという人に対する僕の感じ方が、ちょっとづつ変わってきた。
ちょっと前の<夢レコ~クリフォード・ブラウン>で「音色そのものを味わいたい」というフレーズを記したが、マリガンの場合も、少ない編成でじっくりとバリトンサックスを吹くマリガンの音色・・・(僕にとっては)やはりこれが気持ちいいのである。
この3枚・・・言わばVerveのGerry Mulligan Meetsシリーズである。この1~2年で、これら3作を入手して聴いてみると・・・どれもが「愛聴盤」になってしまったのだ(笑)
ホッジス、ウエブスター、ゲッツ・・・それぞれに強烈な個性を持ったサックス奏者とマリガンがmeetsする~邂逅というのも大げさだし、シンプルに共演するという感じだろう~というノーマン・グランツの企画ものである。実は、僕はこの「meetsもの」を案外、低く見ていた。JATPでも後期にはマンネリ傾向があったと思うが、要するに大物同士を対決させてそのブロウ合戦を楽しむ・・・といういかにもお手軽な思いつきという感じで、まあだからこの手のレコードまで手が伸びる順番がこんなに遅くなったのだが(笑)

0022~3年前だったか、ホッジス盤を入手して聴いてみた。これが・・・対決とは程遠い実に和(なご)やかなムード溢れるいいセッションだったのだ。僕はこのレコードで、改めてジョニー・ホッジスという人の「芸」の細やかさを感じ取ることができた。そうしてその芸を引き出したのは・・・間違いなくジェリー・マリガンの絶妙な合わせなのである。さきほど「音色のブレンド」ということを書いたが、そのブレンドの具合の良さといったら・・・これはもう絶品なのである。
マリガンという人はアレンジャー出身ということもあるだろうが、いつも「サウンド全体」を意識しているように見える。というのは・・・例えば、このレコードA面1曲目(bunny)のテーマの部分~マリガンの鳴らすバリサク(バリトン・サックス)の音には、無自覚に思うがまま吹くというような気配はなく、その時の相手のフレーズ、その音量、その盛り上げ具合・・・そんな相手が造ろうとしている「流れ」に応じて、自分が吹くバリサクの「鳴り具合」をコントロールしているような感じを受ける。マリガンという人・・・だいたいがおそらく3~4割ほどの抑え目の音量で吹いているように聞こえる。それは淡々として迫力不足とも取れるのだが、こういうホッジスのような「強烈個性」の持ち主と相対する場合には、それが逆に効果的に映るのだ。それは相手を生かしつつ、自らも生かす~という、不思議だがそういう感じなのだ。
Meets Hodgesには、いいバラードが入っている。what the rushという曲なのだが、これはもちろんホッジスの見せ場として選んだようで、だから、この曲では、マリガンはただの一音も吹かない。そういうセンスも素晴らしいじゃないか。
僕が思うホッジスの名人芸というのは、メロディの音程のごく微妙なピッチを(音程~この場合、半音のまた半分くらいの量)ベンドさせるような技~たぶん絶妙なリップコントロール(唇の締め具合)のことなのだが、全体には静謐(せいひつ)で淡々としたこのバラードの中で、その決め技が見事な隠し味になっているように思う。
この地味なバラードの作者が、なんとジェリー・マリガン、その人なのである!
(クレジットによると、Mulligan-Holidayとなっているので、ひょっとしたら、ビリー・ホリデーも唄っているのかもしれない)*追記~この「ホリデー」については、NOTさんから正確な情報を頂きました。NOTさんの5/6付コメントをご覧ください)

004 そして、ベン・ウエブスター盤~ウエブスターの力感溢れる濃厚なテナーの音色。これは・・・濃い!(笑)
それはまるで太いチューブから練り出されてくる濃厚な色の絵の具のようでもあり、それは正しく「強烈な個性」と言っていいかと思う。そのウエブスターとマリガンの対比が、これまた実にいい按配なのだ!
スタンダード曲ではchelsea bridgeとsunday。マリガンという人は、バラードを大好きなようで、ホッジス盤と同じように、こちらのウエブスター盤にも自作バラードを忍び込ませている。tell me whenという曲だ。これがまたなかなかいいメロディで、ウエブスターがそれを味わい深く吹いている。
マリガンはウエブスターの吹くメロディに、時々、優しく寄り添うように合わせフレーズを入れてくる。それは伴奏としてのフレーズであり、決して自らを主張してくるような感じではない。この1曲全体を仕上げたい・・・というマリガンの気持ちのこもった「合わせ」のように思えるのだ。
chelsea bridgeでは、ウエブスターの吹くテーマのバックで、はっきりと「バリトンサックスで伴奏」している(笑)その伴奏のやり方がとてもユニークな吹き方で~ピアノでいうトリルのように高い音と低い音を素早く交互に繰り返す技~それはユニークなだけでなく、見事に効果的なのだ。こんな技を静かなバラードのバックにさりげなく差し込んでくるマリガンという人も、そうとうな曲者なんだろうな(笑)

003 それからゲッツ盤~実はこの3枚の中では最も面白くない・・・と思っている。ゲッツのテナーとマリガンのバリサク・・・一見、最も相性が良さそうじゃないか。でも・・・「音色のブレンド」(もちろん僕の好みの)という観点から見ると・・・案外に面白くないのだ。私見だが、ゲッツとマリガンは~楽器は違うしフレーズも違うのだが~音色の質感が・・・よく似ているのだ。
一度、口の中に溜めておいた息を小出しにするような吹き方(と推測している)で、音色がちょっとくぐもった感じや、サブトーンの割合・かすれ具合などの質感が近いように思う。2人の質感が似ているためか・・・ホッジス、ウエブスターとの共演盤のような「コントラストの妙」が、やや弱いように思える。

Mg_v8348_j_2《追記1~みなさんもコメントで触れてましたが、この「ゲッツとマリガン」A面の3曲~
let's fall in love
anything goes
too close to comfort

は「ゲッツ=バリトン、マリガン=テナー」と、お互いの本職の楽器を入れ替えて吹いてます。そうしてYoさんがコメントで紹介してくれた Stan Getz And Gerry Mulligan, Stan Getz And The Oscar Peterson TrioGetz_mulligan_2tunes_2(MGV8348) というレコード・・・そちらには本職楽器での2曲~
Scrapple From The Apple
I Didn't Know What Time It Was
が収録されているのに、ジャケット写真は「楽器入れ替え」とのこと。ゲッツの表情も面白いので、ご覧ください。 そして、この8348番に収録の2曲、やはり本職だけあって出来がいい。(この2枚の写真提供~Yoさん)》

《追記2~この8249番:Getz Meets Mulligan~すでにNOTさんがコメント(5/7付け)してくれたように、2種のジャケットがあります。Mulligan_meets_getz_2nd
写真自体は同じですが、「1色」と「2色」の2種です。参考に「2色刷りのジャケット」写真も載せておきます。(以下は「2色ジャケ」の方が再発としての話し)
なぜタイトルを「マリガン主役」のMulligan Meets Getzに変えたのか? 
なぜジャケットのデザインを変えたのか?
この辺りのことについては、マリガン好きであるYoさんも大いに興味を持ったようだ。楽器入れ替えの出来映えへの評価とか、また入れ替えテイクがA面3曲全部ではなく、too close to comfortだけかも?という説もあるらしく・・・この「ゲッツmeetsマリガン」にはなかなか謎が多い(笑)楽器入れ替えの真実については~それぞれがA面を聴き込んでみての連日(笑)のメールやりとりの結果・・・2人とも「やっぱりA面の3曲とも入れ替えてるね」それから、その出来映えについても「やっぱり本職でないとアカンね(笑)」という至極当たり前の結論に落ち着きました。楽器入れ替え~その聴き分けのポイントとして・・・Yoさんはまず「バリトン」に注目したようだ。Yoさんは、おそらくマリガンを聴き込んでいるので、マリガン独特のあの「柔らかさ」とは違う何かを鋭く感じ取ったのだろう。
《バリトンでマリガンならバフッと柔らかく出るところがブッと強めに出たりするのでゲッツかな》
僕の場合は、マリガンをそれほど聴き込んでいないのと、バリトンという楽器の特徴ある音色そのものがどうやら脳髄に強く印象付けられてしまっているようなので、「バリトン」という楽器での音色の違いにはなかなか注目が行かなかった。それでもマリガンの「バフッと柔らかく」という感じはよく判るので、この場合、Yoさんが言うところの「ブッと強め」というのは、たぶんマイナス要素だろう。
その辺りを意識してバリトンのソロを聴いてみると・・・なるほど、Yoさんが言うのはこういうことかな・・・と思える場面がいくつかあった。《Yoさん仰るように「バリトンの一番低い方の音~これが・・・さすがにゲッツでも鳴ってない(笑) ブワッ!と吹く時、ちょっと割れたような、まあどちらかというとガサツな汚い音になってるみたいですね。要は「鳴ってない」のかな》
そんなわけで、僕の方は「テナー」に注目した方が判りやすい。A面3曲のテナーソロを聴くと・・・音色自体もちょっと堅めで詰まったような感じだし、高音域のフレーズではピッチ(音程)がけっこう悪いように聞こえる。そして決定的なのは・・・テナーのソロにイマひとつ冴えがないことだ。こんなフレーズに閃きのないテナーが・・・ゲッツのわけがない(笑)
そんなわけで、ここしばらく、Yoさんはマリガンをいろいろ聴いたようだ。そうしてそれは、僕の方も同様である(笑)
ジャケットのデザイン・タイトル変更については・・・以下、もちろん推測です。この3枚の番号はこうなっている。
Gerry Mulligan Meets Johnny Hodges(Verve MGV-8367)
Gerry Mulligan Meets Ben Webster(Verve MGV-8343)
Getz Meets Mulligan in HI-FI(Verve MGV-8249)
つまり発売は・・・ゲッツ~ウエブスター~ホッジスの順なので・・・そこから考えると、最初のゲッツ盤の時点では、まだ「マリガン主役のmeetsシリーズ」という概念はなくて、その後の2枚がYoさんも仰るように出来もよかったので、(ホッジス盤の後)、ゲッツ盤を再発する折に・・・グランツが「マリガンmeets シリーズ」として考えて、ジャケ・タイトルを変更した~という流れかな、と思います。
グランツがそう考え直したのは・・・・NOTさんも?付きでコメントされたように、マリガンお得意のクレームがあったのかもしれません(笑) いや、それよりもグランツがマリガンに気を使いつつ、「Mulligan meets シリーズ」にした方が、より売れる・・・と判断したのかな》


コントラスト・・・という観点で実はもう1枚、興味深いレコードがある。ご存知・・・Mulligan Meets Monk(riverside)である。モンクのこととなると・・黙っちゃおれない僕だけど、今回は「バリトンと他のサックス奏者との音色」がテーマでもあるので・・・そのモンク盤のことはまたいずれ取り上げたいと思います(笑)
ウエブスター盤の場面で「合わせフレーズ」という言葉を使ったわけだが、この3枚のMeetsシリーズを聴いてからは、マリガンというと・・・反射的に「カウンター」という言葉が浮かんでくるようになってしまった。この言葉はボクシングのカウンターと同じ語源のはずだが、ジャズの世界では、他の誰かが吹く主メロディに絡むように別のメロディ(というかフレーズ)を吹く場面のことを「カウンター的に」とか「対位法的に」という意味で使っていると思う。
そうして、「カウンター」といえば「あしたのジョー」だ(笑) 相手がパンチ(例えば左ストレート)を繰り出してきたその瞬間、こちらは右ストレートを相手の左ストレートにかぶせるように打ち込む必殺のパンチである。
ただし・・・マリガンの「カウンター」は、ボクシングのカウンターとは意味(効果)が決定的に違う。ボクシングの「カウンター」は相手を倒すためのものだが、マリガンの繰り出すカウンター(的メロディ)は、相手を生かすためのものなのである!
それは相手を生かしつつ、自らも生かす~という「優しいカウンター」・・・なにかしら東洋の哲学のような雰囲気さえ漂ってくるではないか(笑)
マリガンという人の味わい・・・それは、和紙に沁み込んだ濃い絵の具が、自然にじわ~っと拡がってくるような、そんな優しい表れ方のようでもあり・・・そうしてそれこそが、マリガンという人の真の個性なのかもしれない。

ジャズはまだまだ面白い。

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2008年2月21日 (木)

<思いレコ 第15回>The Magnificent Trombone of Curtis Fuller(epic)

フラーが見た5分間の夢~優しくてブルージーな”dream”

Dream_005《一見、オリジナル盤に見えるかもしれないが・・・これはCBSソニー発売の国内盤ECPU-6です。CBSソニー・ジャズ1500・シリーズで全20タイトル出た中の1枚。その20タイトルの中には、あのWe Paid Our Dues!も含まれていた!そのECPU-9番は、痛恨の未入手盤である(笑)》

このレコードは、もう長いこと、僕の愛聴盤である。A面1曲目のI'll be aroundは、スインギーなギターのイントロ~見事なコード弾きで始まる。トニー・ベネットも唄ったこの曲、メロディが自然に展開していく感じで、それをフラーがまたウキウキするような気分で吹いているので(そうに違いない:笑)聴いているこちらも、実に気分がよくなってくる。そして次の曲が、dreamだ。
dream・・・この有名なスタンダードを、フラー達はものすごくゆっくりのテンポで演奏する。おそらく1分=60くらいのテンポだろうか。
メトロノームのカウントをベースが刻む4分音符とすると、その4分音符ひとつが、ちょうど1秒(くらい)ということになる。そして「1秒」というタイムは・・・案外に長い。
試みに、1(イチ)、2(ニイ)、3(サン)、4(シイ)と、ゆっくり4秒かけて、声に出してもらえれば、1分=60というテンポが、かなり遅いということを実感していただけるかもしれない。
ちなみに、ベースのウオーキングラインというのは(普通の場合)1小節に4分音符を4回刻むので、このテンポ(1分=60)だとすると、1小節を進めるに4秒かかることになる。そして、フラーはこの曲を2コーラス+カデンツァで終えている。
余談ではあるが、このdreamという曲は32小節なので、この曲を一周(1コーラス)するのに、4X32=128秒。2コーラスでは256秒(4分16秒)かかることになる。カデンツァの部分に、たっぷり30秒以上はかけているので、約5分という計算になる。
このレコードの解説書を見ると・・・dream 5:11秒と書いてあった。
「1分=60くらい」という、大ざっぱなカウント解釈だったが・・・それでもだいたい合っているじゃないか(笑)

さて、バラードを演奏する場合、べーシストは1小節に2分音符を2つ弾くのが普通だ。しかし、このdream は相当に遅いテンポ設定である。このテンポでの2分音符では・・・いかにスロー・バラードでも、さすがに間が空きすぎてしまう。だから・・・このべーシスト~バディ・カトレット(Buddy Cattlett) は、バラードではあっても、あえて「4つ打ち」を選んだのだと思う。テンポ設定と、このベースのウオーキングの感じは、一見すると「スロー・ブルース」と似ているかもしれない。しかし・・・ちょっと違う。これはやはり「バラードでの4つ打ち」なのだ。その証拠に、カトレットは、一音一音を、本当にきっちりした4分音符で(付点をほとんど使わずに~付点を使うとブルース的なフィーリングが出てくる)ウオーキングを進めてくるのだ。
そして、この「バラードでの4つ打ち」が、独特の「溜めたようなビート感」を生み出しているように思う。この「溜めた」ような感じを、どう説明したらいいのだろう。そうだなあ・・・例えて言えば・・・自転車をゆっくり漕いでいる感じに近いかもしれない。
中学校の時だったか・・・校庭にわりと小さめな円を描いて、その円周上を自転車で廻って走る~という遊びをしたことがあった。
ゆっくりと走らないと円周を飛び出してしまう。だから・・・ギアを重くして、ゆっくりとペダルを漕ぐのだが、ゆっくりすぎると自転車が倒れてしまう。その辺りの漕ぎ具合が難しい。
安定的かつ持続的な動力を与え続けないとうまく廻れないのだ。たぶん・・・持続的なトルク力がポイントなのだろう。

僕が思うウッドべースのウオーキングに必要な「トルク感のある粘り具合」みたいな感じ・・・カトレットが、まさにそんな具合にベースを弾くことで生まれた「スロウ・バラードでの持続的なビート感」(トルク的な力感と言ってもいい)」は、なかなか味わい深い。バラードであっても、なんとなくブルージーな味わい~微(かす)かにブルース的な感じ~が漂うのだ。そんな独特の効果を聴いてしまうと・・・ひょっとしたらこの「4つ打ち」は、その辺りまで計算したフラーの指示だったのかもしれないぞ・・・とも思えてくる。

そんな質感を持つべーシストのウオーキングに乗っかって、このdream は、繰り返すが「遅いテンポ」で演奏される。
うっかりすると今にも止まりそうなテンポだ(笑)
そして・・・フラーはこのテンポでも全く動じない。
というより・・・この「遅さ」を選んだのは間違いなくフラーであろうし、だからフラーは、この「遅さ」を充分にコントロールしている。そして・・・充分に「唄って」いる。

最初のコーラスで、フラーはこの曲のゆったりしたメロディを~ほとんど崩さずに~本当にゆったりと吹き、2回目のコーラスの前半をピアノに任せる。そして2コーラス目の後半から再びテーマを吹き~今度はほんの少し崩して~そしてエンディングでは、リット(それまでのリズムを止めてしまう状態)した後、フラーが短いカデンツァ(伴奏陣なしで独りだけで吹く)を入れて、そして、終わる・・・そんな2コーラスだけの演奏だ。
つまり・・・フラーのアドリブは全くないのだ。

フラーは、いろんなニュアンスのトーン(音色)や、フレーズの終わりの箇所でボントロ特有の(音程を下降させるような感じの)ベンドさせるような吹き方でもって、この曲のテーマを吹き進めていく。夢見るような「優しい感じ」が溢れ出る。
スロウなバラードをこんな風に深く吹く(吹こうとする)フラーには、たぶんアドリブなんて必要ないのかもしれない。テーマを吹けば・・・それが彼の「唄い」なのだ!
フラーという人は、本当にバラードが好きなんだなあ・・・と思えてくる。

そういえば、もうひとつ付け加えておきたいことがあった。このレコードで初めて聴いたレス・スパンという人のギターを、すごく好きになったのだ。このギター弾き・・・とにかく音が太いのである。太くて温かい感じのする甘い音色。そして時々繰り出すオクターブ奏法も~だからレス・スパンは、奏法的に言えばおそらくウエスに近い感じだとは思う~いい切れ味だ。
それから最も印象に残ったのは、特にスロー・バラードでのバッキングで、素晴らしく味わいのある弾き方をしていることなのだ。
先に書いたように、この dream は「テンポが遅い」ので、テーマを吹くフラーのメロディの合間合間に、どうしても「隙間」ができる。
そんな隙間に、スパンは見事なオブリガート的フレーズを、すす~っと差し入れてくれるのだ。そのタイミング、そのフレーズの素晴らしさ・・・この辺り、実に巧いギター弾きだと思う。
さらに、やはりバラードのバッキングで時に見せる独特な「アルペジオ的な音」にも、本当に驚かされてしまう(dreamのエンディング部分~リットする辺りで、その「音」が聴ける)
あれは、たぶん・・・ギターのうんと高い方のフレットでコードを押さえておいて、ピッキングしているような音なのだが~あるいは、各弦をかき鳴らすタイミングを微妙にずらしての指弾きかもしれない~なんというか・・・「ペキ・ペキ・キラリン・キラリン!」という感じのする、まさに輝くようなハーモニクス風アルペジオ的な音なのだ。そんな個性派ギタリスト~レス・スパンについては、また別の機会にまとめてみたい。

Dream_006 Curtis Fuller(tb)
Walter Bishop Jr.(p)
Buddy Cattlett(b)5曲
Jimmy Garrison(b)3曲
Les Spann(g)
Stu Martin(ds)

今回は、フラーと、ベースとギターにしか触れなかったが、ピアノのウオルター・ビショップもいいピアノを弾いている。
こんな具合に、なかなかの個性派が揃って造り上げた、このレコード~The Magnificent Trombone of Curtis Fuller(epic)は、フラーというボントロ吹きの「優し気な風情」が、見事に表われた地味ではあるが本当に味わい深いレコードだ。思い切って、フラー独りのワンホーンにしたところと、バラードをメインに持ってきたところが、ポイントだと思う。
ちょっと前にこの夢レコでも取り上げた、チャーリー・ラウズの傑作「Yeah!」にも、同じようなクオリティの高さを感じるのだが、どうやら・・・EPICというレーベルには、凄く趣味のいいプロデューサーと、優秀な録音エンジニアがいたようだ。
そしてさらに、ジャズ魂溢れる解説者も・・・というのも、このepic盤のジャケットの裏解説に、ちょっといい一節を発見したからなのだ。

<dream の最初のコーラスでは~彼がほとんど泣いているかのような~そんな瞬間がある>
(on Dream...there are times in the first chorus, when he almost seems to cry)
”almost seems to cry”とは、フラーの独特の「唄い廻し」・・・あの「感じ」を描こうとしたであろう、実に素晴らしい表現ではないか!
ちなみにこの解説者・・・あまり聞いたことがない名だが、Mike Bernikerという人である。

それにしても・・・世の中には素晴らしいレコードが一杯だあ!(笑)

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2006年6月29日 (木)

<やったあレコ 第6回> Urbie Green /All About Urbie Green and his big band(ABC-137)

Bcw_001_4

ABC Paramount 盤が好きだ~

みなさんは、30cmLPというものを、どんな風に手に持つだろうか?たぶん・・・レコードの外周の部分を両の掌(てのひら)で軽く圧迫して、
あのけっこうな大きさの円盤を支えているのだと思う。あまり一般的とは言えないかもしれないが、その30cm円盤の外周の部分が細かい
ギザギザ仕様になっている盤がある。こういう盤を持つと・・・そのギザギザが両の掌に小気味よくグリップして、なかなかいい感じなのだ。Bc12
ビリーテイラーを集めていた時に、いくつかのABC Paramount 盤を入手した。そしてその内の何枚かが「ギザギザ」していたのだ。
2年ほど前だったか、モアさんの掲示板にてABC盤が話題になった時、「ABC盤のギザギザの外周部分が好きだ」~その時は、notched edge という名前を勝手につけたのだが~
というようなことを書いたら、何人かの方が反応してくれて・・・あの「ギザギザ」がどんな工程で造られたのか? なぜもっと一般化しなかったのか?
というようなおもしろいやりとりになった。その時、当時の常連だったSKさんが(だったか?)あのギザギザ仕様のことを「ギザ・エッジ」と呼んだのだった。
それ以来、僕もあの「外周ギザギザ盤」のことを「ギザ・エッジ」と呼ぶことにしている。もっとも・・・自分がたまにコメントなどで使う以外には、
なかなか目にすることもないのだが(笑)

Bc_007 ABC盤の内袋~運がいいと、たまにはオリジナルのinner sleeve に盤が収まっていることがある。僕などは大体にして、古い盤のジャケットデザインやら
センターラベルそのものが嫌いではないので、「オリジナル内袋」がついてくると・・・すごく嬉しいのだ。そしてその内袋がカラーだったりすると・・・かなり喜ぶ(笑)
なにしろ当時のカラー内袋はキレイなのだ。Fantasy, Capitol, そして・・・ABC Paramount などでに「カラー内袋」が多いようだ。
こういうのを見てると、どの盤も欲しくなってしまう。そんな具合に内袋のジャケットに惹かれて入手した盤がいくつかある。Bc_003
Creed Taylor の Lonely Town は、そのタイトルとおりにいかにも寂しそうな雰囲気のジャケットがなかなかいい味わいである。
クリード・テイラーの演奏は・・・あまり印象に残ってない(笑)

コンガのキャンディードの盤もいくつか出ているようだ。僕は2枚入手した。キャンディドのファンというわけではないのだが・・・どちらの盤にも、アル・コーンがフューチャーされているのでけっこう気に入っている。ただし、ジャケットデザインはABCにしては・・・あまり品のいい感じとは言えないかもしれない(笑) <写真は一番下です>

ちょっと話しが脱線したが・・・本来は、ABC盤には~かなり地味ではあるけれど聴くほどに味わいが出てくる・・・そんな感じの、内容のいい盤が多い。
モノラルのちょっとこもったような感じだが落ち着いた感じの乾いた音質・・・それでいて仄かに温かみを感じられるような音質も悪くない。
アート・ファーマーやアービー・グリーンなどいいのがいっぱいあるが・・・とりあえずこの1枚を選 。

Urbie Green /All About Urbie Green(ABC 137)だ。
この人のボントロの音色の・・・柔らかさ・木目細やかさには・・・まったく独特な味わいがある。その音色に浸るだけで、それは快感でもある。
マイルスのMiles Ahead でも演奏されていた Springsville がすごく好きだ。作曲者は、John Carisi という人だ。マイルスのトラックでもそうだったが、
このCarisiという人の曲には、なんとも言えない「寂しさ」のような感覚がある。ちょっとメランコリックな雰囲気でもあり・・・何度か聴いていると・・・ますますあのメロディが心に残ってくるようなのだ。
グリーンの録音は1956年の8月23日となっている。マイルスのMilese Ahead 収録の Springsville は、1957年の5月である。
ひょっとしたら・・・マイルスは(おそらく発売されたばかりの)この Urbie GreenのABC盤を聴いたのではないだろうか?そうして・・・この曲を気に入り、ギル・エヴァンスに相談して、じっくりと・・・練りに練って・・・あの 素晴らしい Springsville を創り上げたのではないのだろうか? そんな風な
推測もしてしまうほど・・・このUrbie Green の Springsville も素晴らしい。Bc_002
なおJohn Carisi は、このLPのチーフ・アレンジャーとしてクレジットされていて、あと2曲、Carisiの自作曲も入っている。裏ジャケには
Carisiの写真も載っているくらいだから・・・この当時、注目されていた作曲家には違いないだろう。
このレコード、モノラルだが、トロンボーンが太めの大きな音量で~それでいてソフトな味わい~入っていてすごくいい録音だと思う。
演奏曲も、stella by starlight, cherokee, round midnight などいいスタンダードも演っている。曲によって、「はっ!とするような」見事なアルトが聞こえてくると・・・それは、ハル・マクージックなのである。演奏もいい、録音もいい、そしてこの「緑のグリーン!」もいいジャケットに見えてくる・・・全く素晴らしいレコードなのだ。

もう少し、ABC Paramount 盤についてのおもしろ話しを・・・。
ABC盤のABCSナンバー(ステレオ盤)の一部のタイトルに 「test tone入り」という盤があることが判ってきた。
67camperさんのブログに、ビリー・テイラーのABC盤が載った時に、
この「ピ~ッ音」のことがコメントされた。その同じ「ピ~ッ音」を僕は聞いたことがあった。ああ・・・あの盤だ!
この test toneとは一体何?・・・と思った方は、それを聞いたことがないことを・・・「ささやかな幸運」と知るべきである。
それほどに・・・酷いのだ(笑)
B面最後の曲が終わると・・・突如「ピ~~~~ッ!」という甲高い音が、かなりの音量で鳴る。
それまで「いいジャズ」を聴いてきていい気分になってるところに・・・この「ピ~ッ!」なのだ。
しかもこれがけっこう長く5秒くらいは鳴っているのだ。もう・・・シラけることおびただしい(笑)
その「音」が入っている僕の手持ち盤は・・・
Bc_006  Scott ”South Pacific Jazz"(ABCS-235) である。
このステレオ盤のジャケット裏の曲名表記すぐ下に、こんな解説があった。
<The final band on side two of this recording contains a test tone.This has been included as a convenience
for balancing your speakers. When the tone appears to be comeing from the center area,
rather than from either speaker, then your set is in proper balance.>
わざわざ「スピーカーのバランスを取るのに便利なように、(これまでも)付けてきた」とある。
has been・・・ということは、過去、何枚かに渡って続けてきた・・・というニュアンスだろう。
余計なお世話というかなんというか・・・。ステレオ盤初期の時代、ということなんだろう。

こんな「test tone」が、どの番号まで付いたのか?本当にステレオ盤のみに付いたのか?などの疑問が、当然のことながら湧いてくる。
67camperさんと僕は、それぞれの手持ちのABC盤をチェックにかかった(笑)

僕の方~ビリー・テイラー、オスカー・ペティフォード、クインシー・ジョーンズ、アービー・グリーン、ジョー・プーマ、ズート・シムスなど手持ちのABC盤は、
ほとんどがモノラルばかりなのだった。録音の古いものをメインに聴いているので、自ずとモノラル盤が増えてくるようだが・・・それにしても、
ABC盤にはステレオ・プレスが少ないのかもしれない。
67camperさんの手持ちの方も、やはり前期の番号のものにはステレオ盤はあまりないようだった。
そして、後期番号(イーディー・ゴーメなど)ならステレオ盤はけっこうあるが、それら後期の盤にはどれも「ピ~音はなし」
とのことであった。

ABCの場合、ステレオ盤のプレス枚数が極端に少ない、とかの事情で、共通ジャケットに「ステレオ・シール」だけ貼っていたのかもしれない。
そういえば、67camperさんのステレオ盤(ビリー・テイラー)も僕のステレオ盤(トニー・スコット)も共に「ジャケにステレオシール仕様」だ。
Tony Scott の方は・・・ジャケット右上の辺りに「ステレオ盤のシール」が貼ってある(写真参照)
この扇のような半円型というシールの形状も、67camperさんのステレオ盤のもの(楕円型)とは違うデザインだった。

そんな風なコメントをやりとりするうちに・・・
やはり<ステレオ盤の、ある番号までは「ピ~音付き」、ある番号からは「ピ~音なし」>というごく常識的な結論に至った・・・はずであったが、
 camperさんの New Billy Taylor Trio 226番と、僕のTony Scott 235番の 間の番号のステレオ盤:Don Elliot(ABCS228)
「ピ~音なし」という症例も見つかってしまったのだ。仮説が正しければ「ぴ~音付き」のはずだ・・・。こうなると・・・もう判らない。
意気込んで始めたtest tone...その後も続かなかったところを考えると・・・やはり相当に評判が悪かったのだろう。
そんなだから、途中の段階で、付けたり付けなかったり・・・と迷走していたのかもしれない(笑)
(詳しくは・・・67camperさんのブログとそのコメントをぜひお読み下さい)

「ピ~音」のことも「ステレオ・シール形状」のことも・・・いろんなサンプルを探っていけば・・・「~番あたりから「ピ~音あり/なし」、~番あたりからは「半円形型・ステレオシール」など、やはり、「レコード番号順」での
ある種の整合性みたいな事実が浮き上がってくることだろう。

ABC Paramount 盤の情報を~どんなものでもanything OKですよ(笑)~ぜひ「コメント欄」にてお寄せ下さい。
もっともこんな瑣末なことに興味を持つ人間がどれくらいいるのか?・・・はなはだ疑問ではある(笑)

Bc_004Bc_005

《このcandido、ABCにはもう1枚あるようだ。volcanoというタイトルで、そのジャケットは・・・見ない方がいいかもしれない。溶岩が流れ出るおどろおどろしい光景を背景にして、やはりコンガを叩いている~というジャケットだったはずだ。まるで火山噴火アクション映画の宣伝写真のようなノリなのだ。でも・・・もし入手できたら、またお見せします(笑)》

それにしても・・・ジャズレコードの世界は・・・まったく・・・底なしだあ!

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2006年2月26日 (日)

<ジャズ雑感 第15回> トロンボーンのバラード、ちょっといいやつ(B面)

ジミー・クリーヴランドのこと。2_001

トロンボーンを好んで聴き始めたのが、この10年くらいなのだから、クリーヴランドなんてところまでは、なかなかたどり着かなかった。
きっかけは、「クリーヴランド・スタイル」という日本盤を入手したことだ。僕の入手盤は、日本フォノグラムが1979年に発売した1500円盤シリーズ(15PJ~)だ。

この盤には、アート・ファーマー、ベニー・ゴルスン、それからウイントン・ケリーも参加しており、クリーヴランドといえば、たいていはこの盤が挙げられることが多いように思う。僕はそれほど期待せずに聴いてみたのだが、1曲目の out of this worldを聴いて~ラテン風というかアフロ風のアレンジで、それがこの曲の持つスケールの大きな雰囲気にピタリと合っている~この盤を気にいってしまった。それと、やはりメンツがいいのか、どの演奏にも気合がこもっており、ファーマーやクリーヴランドののソロもいいのだ。アレンジはアーニー・ウイルキンスだ。B面1曲目の long ago and far away も好きな曲だ。こちらにはケリーの短いが気の効いたソロが入っている。録音も全体にスッキリしており、1957年のステレオ録音としては案外いいように感じる。
「クリーヴランド・スタイル」・・・なかなかいいアルバムだと思う。

ジミークリーヴランドのリーダーアルバムはそれほど多くないようだが、emarcyには、他にいくつか残している。

Introducing Jimmy Cleveland(emarcy)1955年録音2_003

この Introducing~は3つのセッションで組まれていて、どのセッションでもクインシー・ジョーンズがアレンジャー&音楽監督(music director)になっているようだ。アーニー・ロイヤル、ラッキートムソン、セシル・ペインらの管部隊も悪くないし、オシー・ジョンソンやローチ、ペティフォードやチェンバース(早くもこの1955年夏の録音に参加しているのもちょっと驚きだ)らにも張り切った感じがあり、どのテイクもいい出来になっていると思う。
2作目の「クリーヴランド・スタイル」も好きだが、この第1作の方が~やはりアレンジがクインシーだけに~もう少しだけ味わい深いような気がする。

そういえば・・・「トロンボーンのバラード」のことを書きたいのだった(笑)

この盤を取り上げたのは・・・もう一重に my one & only love  という曲が入っているからである。ハンク・ジョーンズの格調あるイントロ。クインシーの絶妙なアレンジ~アンサンブルは~あのmy one&only love の出足のメロディの1小節(休符を入れて7音だけ)、サビ前とサビ終わりだけ~ほんとに限られた箇所に、しかも控えめな音量で入るだけなのだ。クリーヴランドはアンサンブルの出だし7音の3音だけ待ってからメロディを吹き始める。このアンサンブルに乗っかっていく感じ~音が被さって(かぶさって)厚くなっていく感じ~が実にいい感じなのだ。おそらくこれはクインシーのアイデアだろう。クリーブランドのリーダーアルバムには、たぶんワンホーンものはない。いつもトランペットにサックス、それからチューバ(Don Buterfield)まで加えて、ある意味、アレンジ過度の曲が多いようなのだ。

僕は、どんな楽器でも「そのミュージシャン」ならではの個性を味わいたい。だから、この my one&only love は、ほとんどクリーヴランド一人でメロディを吹いているということだけでも、僕には特別なバラードでもあるのだ。そうして、このクリーヴランドが・・・やはり素晴らしい。メロディをそれほど崩さずにキッチリと1コーラス吹き、それからピアノがサビのパートを弾き、最後のメロディをクリーヴランドが吹く、という1コーラス半のアドリブもない短い演奏だが、随所にちらっと入れるフェイク(軽い崩しみたいな意味)なんかにすごくセンスの良さを感じる。クリーヴランドの演奏には、全体になんというか・・・「品格」みたいなものを感じる。その品格が、趣味のいいアレンジと素晴らしいメロディと相まって、素晴らしいバラードに仕上がったのだ。それにしても my one & only love は本当にいい曲だなあ・・・。

A Map of Jimmy Cleveland(meucury)1958年録音2

これもまたアーニー・ウイルキンスのアレンジとなっている。久しぶりに取り出してきたら、この盤には Stardust が入っていたので、大いに期待して聴いてみたのだが、ちょっと・・・違った(笑) アーニーウイルキンスのアレンジが・・・僕の好みとは違っていたのだ。クリーヴランドが吹いたかと思うと今度はチューバがメロディを吹き始める。Stardust のあの素晴らしいメロディを・・・いろんな楽器に分担させすぎてしまったのだ。ワンホーン的なものを期待する立場からすると、曲本来の良さを台無しにしてしまっているように思う。だから「バラードのちょっといいやつ」としては、あまりお勧めできない。クリーヴランドならトロンボーン一丁だけで、どんなスロウな曲でも充分にメロディを唄いあげることができたのだろうに・・・残念である。アーニー・ウイルキンスはバラードのアレンジは得意ではないのかもしれない。

さて、クリーヴランド・・・こうしてemarcy時代の何枚かを聴いてみると・・・彼の音色は、「こもったようなぼわ~」としたのんびりした雰囲気の音色だと思う。楽器から飛び出た音の輪郭がまろやかで大きく拡がり、その分「切味するどい」というタイプの音色ではないようだ。切味の鋭さではやはり・・・JJジョンソンかフランク・ロソリーノだろうか?
そうは言っても、クリーヴランドは決して「古きよき時代のボントロ」というわけではない。アドリブのフレーズは細かく8分音符で刻み、そして速いテンポの曲でも随所に倍テン(ベースが1小節に4分音符を4つ弾くいわゆる4ビート曲の場合、ソロイストは普通の場合、8分音符を中心としたフレーズでソロをとる。「倍テン」というのは、その8分を16分音符中心にしてソロをとることなのだ。クリーヴランドの場合、その倍テンのソロで16分音符を同じ音程で続けたりする。凄い技だと思う。)を入れたりと、かなりモダンな感じがする。この時代(1957年)では、新しいコンセプトのトロンボーン吹きだったように思う。emarcyには、たしかあと1枚、リーダーアルバムがあるはずなのだが、残念ながら未入手である。

ちょっと探したら、他にもクリーヴランド参加のいいレコードがあった。2_002

リズムプラスワン(epic)1956年録音
この写真の盤は、残念ながら・・・CBSソニーの1300円盤です(笑)

リーダーアルバムはアレンジ要素が多くてワンホーンがない、と書いたが、この Rhthm +1 (epic) には3曲、ジミー・クリーヴランドが入っているのです。この盤での「リズム」とは、ハンク・ジョーンズ(p) ミルト・ヒントン(b) オシー・ジョンソン(ds) バリー・ガルブレイス(g) の4人のことだ。このカルテットに4人のソロイスト~コンテ・カンドリ(tp),セルダン・パウエル(ts),ジーン・クイル(as),そしてジミー・クリーヴランド(tb)に各3曲づつ、計12曲収録という、なかなかいいアルバムなのである。 
sahara   
wolf talk
blues
の3曲で、クリーヴランドのボントロがワンホーンでたっぷりと聴けるのだ。どれも悪くないが、特にbluesがいい。スロウなテンポでじっくりとクリーヴランドの唄(ブルースにも唄心というものはあるはずだ)が味わえる。バラードではないが、クリーヴランドの「ちょっといいやつ」としてお勧めしたい演奏だ。そして、この時のセッションからもう1曲~Jimmy's Tune~は、After Hours(epic) に収録されている。After Hours はオムニバスだ。この盤については、エルヴィンをテーマにしたの記事でも取り上げた。http://bassclef.air-nifty.com/monk/2005/08/3_c246.html エピックというレーベルも、なかなか侮れないぞ。
ああ、それにしても・・・やっぱりレコード探しはやめられない!(笑)

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2006年2月16日 (木)

<ジャズ雑感 第14回> トロンボーンのバラード、ちょっといいやつ(A面)

カーティス・フラーとフランク・ロソリーノのことを少々・・・。

トロンボーンの音色には「厳しさ」よりも、どちらかというと「ほのぼの感」というようなものを感じる。僕は、ジャズを聴き始めて長い間、テナーやアルトの咆哮!みたいなジャズの激しい部分に目線を向けていたので、そんな風にのんびり感のあるトロンボーンという楽器を熱心には聴いてこなかった。トロンボーンの音色自体をあまり好きではなかったとも言える。それでもたくさんのジャズを聴き、スタンダード曲をいろいろ覚えていくうちに・・・スロウなテンポで演奏される「バラード」というスタイルを、徐々に好きになってきたようだ。そしてそんな頃、耳にした「トロンボーンのバラード」というものに・・・何かこう特別な「いい雰囲気」を感じるようになったのだ。
そんな「いい雰囲気」を最初に意識したのは・・・あの盤だ。初期のソニー・クラーク聴きたさゆえに入手した Cal Tjader/Tjader Plays Tjazz(fantasy) である。この中のクラーク入りでないカルテットの方に、Bob Collinsというトロンボーン奏者をフューチャーしたバラードが2曲含まれていた。050907_002
I've never been in love before と my one&only love の2曲。これが、なんというか・・・まさにほのぼのしていて聴いてて「いいなあ・・・」と感じたのだ。そうして、ようやく「トロンボーン」という楽器も悪くないぞ、と思い至ったのだ(笑) このチェイダー盤の記事はここ。 http://bassclef.air-nifty.com/monk/2005/09/post_d5c1.html 

それからは、少しづつボントロのLPも集まってきた。そんな中から特に好きなアルバムを何枚か挙げてみよう。

カーティス・フラーの the magnificient trombone of Curtis Fuller (epic) というアルバムが好きだ。_002

dream
two different worldsなど、いい
バラードが詰まっている。
もともと「ぼ~っ」としたトロンボーンの音色だが、フラーの「ぼ~っ」は特に柔らかい肌触りだ。そしてそこに甘さだけでなく、ちょっと「ビターな何か」を感じる。その何かとは・・・侘しさ(わびしさ)みたいな感覚である。

フラーは、スムースなフレイズでアドリヴを切り盛りするというタイプではないと思う。特にバラードでのフラーは、メロディをあまり崩さずに、しかしフレイズのキリを意図的にぶち切ってその音をベンドさせる~クォォオオという風に音を下げて止める感じ~というようなわりとゴツゴツした表現で「ジワジワと」唄い込んでいく・・・。本当に「ジワジワ」効いてきます(笑)
そんな風にフラーという人は、バラードでの「泣き」表現が本当に個性的だと思う。そんなフラーの独特な「唄い回し」については・・・
Mike Berniker という人が裏解説で~dream の1stコーラスでは、フラーはほとんど泣いているかのようにみえる箇所がある(he almost seems to cry)~
実にうまいこと表現している。
それから・・・このレコードでは控えめに入るレス・スパンのギタ-も実にいい。こんな名手がいたのか!と感じ入った。ウエスに似た感じのオクターブ弾きも出てくるが、スパンのギターの音色は、一音一音がとにかく厚い。弦が太いのだろうか・・・厚くて温かい。レス・スパンは、60年前後のクインシー・ジョーンズのビッグバンドでも聴ける。
CBSソニーの1500円盤を何度も聴いているが、いまだに大好きなアルバムである。録音もとてもいい音で入っているように思う。

フランク・ロソリーノ という人もいる。この人は本当に巧い!JJジョンソンも速いパッセイジを軽々と吹くが、音色自体はわりあい軽いように思う。ロソリーノの速いパッセイジの一音一音には、JJよりさらに「キレと重さ」があるように思う。トロンボーンという楽器自体に興味がある方なら、ロソリーノの「巧さ」は凄すぎる世界じゃあないだろうか、と推測する。
ロソリーノ・・・それほど聴き込んだわけじゃあない。チャーリーマリアーノと共演しているベツレヘム盤とキャピトル盤くらいかもしれない。若くて亡くなったとのことなのでレコード自体もそれほど多くないはずだ。そんなフランク・ロソリーノ・・・全く素晴らしいとしか言いようのないアルバムがあるのだ。それがこれだ。

Free For All (specialty)_003

このspecialty というレーベル、西海岸のマイナーレーベルだったとのことだ。よく知られているのは、リー・モーガンの「Dizzy Atmospher」だ。
このレーベルで他に思いだすのは、バディ・コレットの I Love Paris(だったかな?) くらいだ。復刻専門レーベルのVSOPから出てたように思う。

僕の手持ち盤は、センチュリーのGコレクションというシリーズで発売された国内盤である。91年頃出ていたセンチュリーのLPには、なかなか貴重な
ものが多い。たしかラファロ入りのパット・モランやべヴ・ケリーのAudio Fidelity盤もあったはずだ。他にも、むちゃくちゃ地味なピアノトリオものなども、カタログに載っていた。それとセンチュリーの場合、同じタイトルをCD/LPで出していたのだが・・・なぜかLPの方がCDより安い、というタイトルもけっこうあったように記憶している。あれって・・・LP盤を買ったほうがすごくお得感があったのになあ(笑)
それなのに~ベニー・グリーンとソニー・クラークの共演盤(エンリカ原盤)だけは買ったのだが~リアルタイムでは、ほとんど入手してないのだ。今になってみれば・・・全く残念なことだと思う。が・・・これはレコード好きの毎度毎度の出来事である。仕方ない(笑)

さて、フランク・ロソリーノの Free For All (specialty) 
レナードフェザーの裏解説裏解説によると・・・この Free For All というアルバムは、1958年に録音されてはいたが、長い間未発表だったとのことで、ロソリーノはこの盤の発掘前の78年に亡くなったらしい。
フェザーの記事の最後に1986年と表記されているので、86年頃に始めて復刻されたのだろうか。

当時のプロデューサーだったDavid Axelrod の回想がおもしろい。裏解説には~
「ロソリーノも僕もこのアルバムの出来には大喜びだったよ。だって西海岸からの[ハードバップ]アルバムになるはずだったのだから。よくある[西海岸」というイメージからは抜け出したかったんだよ。何週間もかけてパーソネルと曲目を選んだんだ。結果は凄いものだったよ。だから・・・どうしてか判らないが、あれがリリースされなかったことには、もうすごくがっかりしたものだよ」
~みたいなことが書いてある。じっくりと人選したというだけあって、確かにメンツはいい。ロソリーノを支えたのはこの4人だ。
ハロルド・ランド(ts)
ルロイ・ヴィネガー(b)
ヴィクター・フェルドマン(p)
スタン・レヴィ(ds)
なんというか・・・ミュージシャンの相性みたいなものまで、しっかりと考え抜かれているようで、出てくるサウンドが実に「こなれて」いる。
ただ巧い、というだけでなく、品のあるまとまりの良さが感じられる。David Axelrod という名前は全く知らないが、この1958年当時に、
本当にいいアルバムを創ったものよ、と感心してしまう。

まず・・・B面1曲目の stardust これがもう実に素晴らしいのだ!
ピアノがきっかけの和音だけ出すと・・・いきなりヴァース(前奏)のメロディから吹き始める。ヴァースはピアノとのデュエットでルバート風。僕はもうこのヴァースからぶっ飛んだ。端正な輪郭のはっきりしたトロンボーンの音色で
名曲「スターダスト」のあのメロディを~「こうしかない!」」という風に吹き進む。ちょっとしたフェイク(メロディを軽く崩すこと)も抜群のセンスで、あくまでもこの曲の「格調高さ」を守りきっている。そして・・・ロソリーノのトロンボーンは「ぼお~っ」とは聞こえない。スピードの速いクルマのデザインが、箱型から流線型になって(結果として)きたような音色だ。丸みを保ちながら「キレ」がある。メカニックな美しさ、と言ってもいいかもしれない。僕は元来、どちらかというと・・・フラーやベニー・グリーンなど音の「太っい」(ぶっとい)朴訥型のボントロの方が好みだったはずなんだが、このstardust でのロソリーノには・・・何というか・・・彼の「ダンディさ」にすっかり参ってしまったのだ。

ヴァースが終わると・・・案外速いテンポできっちりとベース(ヴィネガー)がキッチリと2分音符をキープし始める。
1コーラス目はベースとドラムだけのバッキング。2コーラス目に入ると、ようやくピアノがバッキングに入ってくる。すると・・・ベースが2分音符を維持しながらも、ピアノのコンピング(和音をいろんなタイミングで弾きこむこと、というような意味合い)の具合からか、すぐにロソリーノが倍テンのノリに持ち込んでいく。ここからのロソリーノのフレイズの見事なこと。よく倍テンになると、勢い余ってフレイズやノリなんかもけっこういい加減になったりするのだが、ロソリーノは崩れない。全く崩れない!これこそ名手だ。本当に巧い。僕の好みでは・・・JJの巧さより、さらに温かみのある巧さ、と感じる。

58年録音だが、音質は相当いい(と思う) specialty は、たしかOJCレーベルの中にも含まれていたはずだ。 OJCはriverside,prestige,contemporary 以外にもこのspecialty や nocturn というマイナーなレーベルの音源も復刻しており、まだまだ他にも聴いてみたい音源がいっぱいあります。OJCを侮るべからず(笑)

このロソリーノの1枚~「トロンボーンのいいバラード」というテーマは、実はこのロソリーノ盤から思い立ったのです。それくらい好きなアルバムである。トロンボーンにはまだまだ名手、個性派がいっぱいだ。とても1回では終われないようだ(笑)
ジミー・クリーブランド、ベニー・グリーン、マシュー・ジー、
それからもちろん JJジョンソンも(笑)
大好きなのです。いずれまた何枚かを取り上げてみたい。

それにしても・・・ジャズには名演がいっぱいだあ!

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2005年10月30日 (日)

<発掘レコ 第3回> ヘンリー・マンシーニ/マンシーニ ’67(日本ビクター)SHP-5594

ジャズのマインドで練り上げられた役どころに、しかるべき役者を配する。マンシーニは、見事な演出家なのだ。
   
マンシーニが好きだ。マンシーニがよく使うあのコーラスが「ほわわ~ん」と流れてくると・・・僕は、そこはとなくシアワセな気分になる。そうして、そのいい気分がしばらく心に残る。映画音楽としてマンシーニが作った曲は、どれもシンプルで覚えやすいメロディを持ち、知らぬ間にハミングしてしまいそうな、素敵な曲ばかりだ。本当にいい曲が多い。

しみじみとした情緒のあるタイプの曲・・・例えば<ムーン・リヴァー>~この曲はオードリー・ヘップバーンでも唄えるように、狭い音域の中で作ったメロディだそうだ~あんな風に・・・本当にシンプルで、唄いやすくて、しかも、しみじみとした情緒がある・・・こんなにいいメロディってめったにない。<ムーン・リヴァー>というと・・・1970年頃だったかに、NHKで放送していた「アンディ・ウイリアムス・ショウ」を想いだしてしまう。あの番組のテーマで、いつもこの曲が流れていたのだ。日曜日だったかなあ・・・毎週、この番組を楽しみにしていた。僕の家のTVはまだ白黒だったが、音楽好きの友人が「アンディウイリアムスの目は青いんだぞ!」とうれしそうに教えてくれたりした。

マンシーニのもうひとつの面、キャッチーなメロディを持つユーモラスなタイプな曲・・・例えば<ピンク・パンサー>~これは、あの「泥棒が抜き足差し足・・・」という感じのメロディが、すぐ印象に残ってしまう曲だ。ちなみにあの中のテナーサックスのソロは・・・プラス・ジョンソンという人だ。マンシーニという人は、「曲の演出」がとても巧い人だと思う。それぞれの曲に合ったアレンジ~どんな風にスポットを当てるか?どの場面でどんな楽器を使おうか?~そんなことを巧みに考えているのだと思う。<ピンクパンサー>のテナーは、やはり・・・あのプラス・ジョンソンの、ちょっとアクの強いちょっとお下品なな感じ(笑)の音色で吹かれるべき曲だったのだ。ピタッとはまった演出、という感じがする。仮に・・・この<ピンク・パンサー>のテナーがコルトレーンだったとしたら・・・ほらっ、どうにも違和感があるでしょう(笑)

僕は長い間、こんな風に映画音楽の作曲家としてのマンシーニしか知らなかった。映画音楽だけでも、もう充分に素晴らしいマンシーニなのだが、実は、彼には深いジャズ・マインドがあるようで、「ジャズのテイストあふれる」レコードをたくさん創っているのだ。有名なところでは、アート・ペッパーも参加している「Combo!」というのもあるが、今回は~もう少しポピュラー風だが「ジャズ」を感じさせる~そんな盤を何枚かを紹介したい。mancini_2cut_001

マンシーニ’67(日本ビクター) この盤は、95年3月、普通の中古盤屋さんで入手しているので、特に「発掘レコ」とも言えないのだが、価格が1100円という微妙な?値付けだったので、いわゆる「ラウンジ系のレア盤」みたいな扱いではなかったはずだ。ペラペラのジャケットと細身のオビに惹かれるものがあったし、「サテン・ドール」「いそしぎ」「ラウンド・ミッドナイト」などジャズの曲も多めに入っているので、ちょっと迷ったが入手したのだ。裏解説には・・・「ジェリー・マリガンを思わせるバリトンサックス」とか「有名なスタジミュージシャンが起用されている」とか書いてあるが、はっきりとしたミュージシャンのクレジットは一切なかった。さて、聴いてみると・・・どうにもジャズっぽい。「サテン・ドール」のエンディングの部分では、どう聴いても・・・レイ・ブラウンじゃあないか!というウッドベースも飛び出てくる。それから「いそしぎ」でテーマを吹くトロンボーンはディック・ナッシュだろう。後に、マンシーニのRCA盤がまとめて復刻された際、この「マンシーニ’67」も出たはずだが、その詳しいクレジットによると・・・ベースはやはりレイ・ブラウン。「ジェリー・マリガンを思わせるバリトンサックス」の正体は・・・バド・シャンクであったように記憶している。

もちろん、他にもいい盤がある。
Uniquely Mancini(RCA Victor:LSP-2692)1963年。この盤は、地元「ラビットフットレコード」のラウンジ系コーナーで入手した。Victor犬ラベルのステレオ盤で、キッチリしてとてもいい音質だ。サブタイトルが、The Big Band Sound of Henry Manciniとなっており、<Lullaby of  Birdland><C jam blues><Stairway to The Stars>などジャズっぽい曲も多い。ソロイストには、プラス・ジョンソン(ts)、テッド・ナッシュ(as)、ロニー・ラング(fl)、コンテ・カンドリ(tp)、ディック・ナッシュ(tb)、ヴィンセント・デ・ローズ(french horn)などが、うまいこと配置されている。 好きな1枚だ。mancini_2cut_002

The Mancini Touch(RCA Victor:LSP-2101)1959年録音。   この盤もなぜか地元の「こんぱく堂」で入手。こんな地味なオリジナル盤が、どうして地元トヨハシにあったのだろうか? 余談だが、あるレコードがたどる軌跡というものには・・・ほんとに興味深いものがある。

この盤は、ストリングス入りではあるが、ナッシュ兄弟、ロニー・ラング、ヴィクター・フェルドマン(vib)、ジョニー・ウイリアムス(p)、それからシェリーマンなどがクレジットされている。おもしろいのは、そのクレジットが「ソロイスト」ではなく、「Featured Performers」とされていることだ。純粋なジャズではありませんよ、という意味合いだろうか。まあ、呼び名はなんであっても、少しでも「その人」の演奏が聴ければいいのだ。バラードで演奏される<my one&only love>がいい。イントロや間奏にボブ・ベインのギターが少し入るが、主メロディは・・・これまたディック・ナッシュではないか(笑) 
思うに・・・マンシーニは、トロンボーンという楽器を、すごく好きなんだろう。スロウなしみじみ曲では、たいてい、トロンボーンがメロディを吹く。

Our Man In HollyWood(RCA Victor:LSP-2604)にも、いい曲が入っている。<two little time>だ。センチメンタルな感じに溢れたメロディを吹くのは、やはり・・・ディック・ナッシュ。とろけるようなボントロの音色が素晴らしい。しみじみとしたこの曲の味わいが、この音色でより一層、映えるようだ。

きりきりとしたジャズではないが、しゃれた演出(アレンジ)で、腕利きのジャズメンが気の効いた短いソロをとる~こんなゆったりとした味わいのヘンリー・マンシーニの音楽を、僕は大好きだ。 
それにしても・・・世の中には「いい音楽」がいっぱいだ。これだから、レコードは止められん。

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