ペデルセン

2006年5月24日 (水)

<やったあレコ 第5回> オスカー・ピータースンのClef盤『背中』

オスカー・ピータースンの<軽やか8ビート感覚>

Norman Grantz の得意技に、一人の作曲家の曲ばかりで1枚のアルバムを創る Plays ~というシリーズがある。エラには直線が個性的なビュッフェの絵画をジャケットにしたシリーズ、ピータースンにも「印象派風絵画」ジャケの9枚の作曲家シリーズがあった。

リンクしてある67camperさんという方のブログで、この9枚が紹介されている。どのジャケットもキレイなので全部が欲しくなる:笑) この9枚は大体1957年頃の録音で、Verve2000番台シリーズなのだが、9枚とも6000番台のステレオ盤でも出ているらしい。
そして、この「印象派風絵画」シリーズの「元ネタ」みたいなピータースンのレコードがあったのだ。こちらの録音はだいぶ古くて、1951~1952年らしい。ピータースンとレイ・ブラウン、そしてバーニー・ケッセル(あるいはハーブ・エリス)というドラムなしのトリオ編成のようだ。(1957年録音の方は、ドラム入りのピアノトリオ) Clef の600番台がオリジナルだ。それが・・・あのデヴィッド・ストーン・マーチンの「背中シリーズ」だ。どれも同じデザインなのだが「色合い」を変えている。Peterson_on_clef_etc_002_1

この「色合いの違い」がなかなか曲者のようで、どれでもいいのだが1枚入手すると・・・どうしても他のも欲しくなる(笑) それがNorman Grantz の作戦に違いないと判っていても・・・抗(アラガ)えない(笑)
僕は、この「背中」をEP盤で何枚か集めてきた。EP盤は”extended play” の略で、アメリカのEP盤というのは片面6~7分くらいで、たいていは4曲入っている。だから日本でいう「コンパクト盤」的なのだが、アメリカのEP盤は、基本的に45回転なのである。
このピータースンのEP盤「背中」・・・何人かは揃ったのだが、そうこうしているうちにEP盤(7インチ)と同じ図柄でLP盤(12インチ)も出ていたらしい、ということが判ってきた。当然、12インチがオリジナルだろう。それに・・・好きな作曲家の分は、やはり4曲だけでは物足りない。他の曲も聴いてみたい。12インチも欲しいよなあ・・・と、ごくごく自然な流れで12インチも少しづつだが入手した。それがこの3枚だ。 

Peterson_on_clef_etc_001_2    

《 plays Cole Porter/MGC-603(左)~ジャケ左上には”CLEF RECORDS”のシール。これをはがせば・・・たぶんmercuryという文字が現れるだろう(笑)
plays Irving Berlin/MGC-604(右)
plays Harold Arlen/MGC-649(真ん中)~この649番には”Hi-Fi”のロゴがジャケ左上にある。そしてジャケ裏には、"Oscar Peterson plays composers"なるシリーズ9タイトルが曲名入りで載っている。あと6枚もあるのかあ・・・(笑)》 

《追補》この後、refugeeさん、NOTさんのご指摘(コメント欄参照)により、このPeterson plays composersシリーズは、全10タイトルであることが判った。参考までに以下にリストアップしておく。

MGC-603 Oscar Peterson Plays Cole Porter
MGC-604 Oscar Peterson Plays Irving Berlin
MGC-605 Oscar Peterson Plays George Gershwin
MGC-606 Oscar Peterson Plays Duke Ellington
MGC-623 Oscar Peterson Plays Jerome Kern
MGC-624 Oscar Peterson Plays Richard Rodgers
MGC-625 Oscar Peterson Plays Vincent Youmans
MGC-648 Oscar Peterson Plays Harry Warren
MGC-649 Oscar Peterson Plays Harold Arlen
MGC-650 Oscar Peterson Plays Jimmy McHugh


ピータースンの4ビートの「ノリ」は・・・確かに凄い。あれよあれよ、とアイデアに満ちたフレーズが飛び出し、しかもそれが尽きない。そしてたいていは高音部で3連やら16分音符を軽く交えながら、華麗にアドリブを繰り広げていく。こうなれば、もうエンジン全開である。そうして、ピアノという楽器が参ってしまうのではないか、と思うほどそれはもう・・・果てしなくノリ続ける(笑) ただ・・・「ノリ」の質は、やはり・・・やや単調である。
いくら速いフレーズを弾いても、「ノリ方」がややスイング的なのだ。説明しづらいのだが~4ビートは1小節に4つの4分音符で進行していくのだが~その4つの4分音符、全てに「ノってしまう」というか・・・雰囲気で説明すると・・・「ウン・ウン・ウン・ウン」と、4つ全てに均等に体重がかかっている」という感じなのだ。
「ノリ」の話しは・・・難しい。「ノリ」の質というものは・・・もちろんミュージシャンの個性により違ってくるが、やはり演奏スタイル(結果としての)~例えば1930年代と1950年代では、明らかに違うと思う。
「スイング」と「ハードバップ」の違い~楽器編成や取り上げる曲の感じも違うが・・・一番の違いは、実は「ノリの質」かもしれない。
バップやハードバップ(と呼ばれるスタイル)になりつつある頃には、この「ノリ」が「ウー・ウン・ウー・ウン」という風に、1拍目と3拍目を意図的に弱くして、2拍目と4拍目を強調させたのだ。つまりアクセントに「でこぼこ」を付けたのだ。スイングというスタイルにおいては、そういう明確な意識はなかったと思う。
判りやすい例で言うと・・・ドラムスの「バスドラ」、あれを聴けばよく判る。スイング時代までは、1小節を、正に4分音符4回「ドン・ドン・ドン・ドン」とバスドラを鳴らしているのだ。もちろん「ドン」の「ン」を休符にして「ドッ・ドッ・ドッ・ドッ」と鳴らしたり、あるいは「ドッ・(休み)ドっ・(休み)」と1小節に2回鳴らす場合もある。ただしこの2回の場合も・・・やはり、1拍目と3拍目にアクセントを置く場合が多かったはずだ。いずれにしても、スイング時代の「ノリの質」というのは・・・1小節の4分音符4回を「均等に」ノッている、そんな意識だったと思う。
ピータースンの「ノリ」には・・・そんな「ウンウンの感じ」が残っているように思える。もちろん・・・それが悪いというわけじゃあない。スイングのノリは気持ちいいのである。
1947年のライオネル・ハンプトンの「スター・ダスト」~あれだってやはりノリで言えばスイングだろう。だけどとにかくあのアドリブとあのノリは、実際・・・気持ちいいのである。
しかし・・・ピータースンの、そのノリまくる「ノリ」をあまり聴くと・・・やや疲れてくる。ステーキの後は野菜を食べた方が健康にもいい(笑) 

そこで・・・ピータースンの「バラード」なのである。象徴的な意味で「バラード」と書いたが、「ボッサ」あるいは「ラテン」でも一向に構わない。
Clefの古い音源からMPSやパブロなどの新しい録音まで、どのレコードを取っても、たいてい「バラード」や8ビート系「ボッサ風」、あるいは16ビート系(サンバ風)の曲が何曲か入っている。ピータースンはやはり判っているのだ~4ビートばかりでは、聴き手が飽きてしまうということを。

前回の<夢レコ ピータースンとVerveレーベルのこと>で取り上げた「The Trio:Live From Chicago」でも2曲のバラードを演奏している。 
the night we call it a day (マット・デニス作曲です)と 
in the wee small hours of the morning である。
ただでさえ「ノリノリ」になっていたライブでの演奏・・・そんな曲にはさまれて、この2曲が実にいい味わいなのだ。「あれっ?ピータースンってこんな静かにも弾くのか」と。少々驚いたほどだ(僕はピータースン初心者なので、あまり多くのアルバムを聴いてなかった) 
そして、ライブの場でこういうチャーミングなメロディのバラードをあえて演った・・・そのことにピータースンのセンスの良さも見直した。

そういえば・・・wheat land というピータースンの自作曲もあった。この曲、「カナダ組曲」(limelight)が初出自だと思うが、ちょっと後のMPS盤「グレイト・コネクション」でも再演していた。「グレイト・コネクション」は、あまり話題にはならないが、たしかベースのペデルセンが最初に共演した盤だったと思う。こちらの盤に入っている wheat land がなかなかいい。軽いボッサ風の曲だ。ペデルセンが弾くウッドベースのそのたっぷりとした音量に支えられて、ピータースンがソフトなタッチで気持ち良さそうに、シンプルで気持ちのいいメロディを弾く。ラストのテーマで徐々にゆっくりになる辺りもチャーミングだ。

ピータースンは「ラテン風」も嫌いではなかったようだ。さきほど挙げた「背中シリーズ」の Plays Cole Porter ~この3枚の中ではこれが一番好きだ~のような古い録音の盤では、ラテンっぽいノリで何曲か演奏している。以下の曲がそれだ。Peterson_on_clef_etc_003
I've got you under my skin

I love you

so near and yet so far

in the still of the night

night and day

この辺の曲はギターのイントロところから~「ウチャーチャッ・ウチャッ・ウチャッ」という具合に聞こえる~やけに軽やかなのである。
ギターが生み出す「ラテンのノリ」というものには一種独特な「軽やかさ」があって、僕はそれを嫌いではない。このギターはバーニー・ケッセルなのだが、やはり名人芸である。そのスムースな気持ちのいいラテン風のリズムに乗って、ピータースンが、これまた全く力まない軽やかなタッチで、メロディを弾きだす・・・う~ん、気持ちいいっ!

4ビートにおいても、あまり粘らないピータースンの8分音符のノリは、ボサやラテンの8ビート系の曲には、自然と「合う」のかもしれない。
たいていは、「テーマだけラテン風」あるいは「ラテン風と4ビートが交互に出てくる」というパターンなのだが、全体に流れる「軽やかさ」が~ドラムレスというのも、その「軽やかさ」の秘密かもしれない~どうにも気持ちがいいのだ(笑) ピータースンの味わいどころは、「グイグイのノリ」だけではなかったのだ!

作曲家別ということで言えば、このコール・ポーターの曲想にはラテン風味が合う、ということかもしれない。
(2つ上の写真右側の)レモンイエローのジャケットの Irving Berlin 集では・・・あれっ、ラテン風がひとつもないぞ。ほとんどが4ビート、あとはバラードなのだ。その少しのバラード・・・これもなかなかいい味わいだ。

isn't this a lovely day~シンプルに繰り返すだけのようなメロディだけど・・・捨てがたい味がある。終始ソフトなサウンドで4拍づつ刻むケッセルのギターの伴奏が効いている。レイ・ブラウンが時々、得意なカウンター的フレーズを繰り出したりする。
say it isn't so ~これなどは相当に地味な曲だが・・・瑞々しいタッチと芯のある音色で端正にメロディを弾くピータースンは、(僕には)すごく新鮮だ。
how deep is the ocean~こういうマイナーな曲調は・・・ピータースンにはあまり似合わないようだ(笑)「暗いパッション」という雰囲気にはならないのだ。しかし、その「サラッ」とした感じもまたピータースンなのだろう。

Peterson_on_clef_etc_004_1 《plays Cole Porterの裏ジャケット。 アロハシャツを着た若々しいケッセルが写っている。嬉しそうにベースを弾くレイ・ブラウンも若い。ピータースンのネクタイもオシャレだ》

ところで、このclef盤の音質なのだが・・・残念ながら素晴らしいとは言えないのだ。ピアノの音が、高音がややキツメで線が細い(ように聞こえる)
その分、ピータースンのタッチの小気味よさはよく出ているのだが。それより残念なのは、レイ・ブラウンのベースの音である。たぶん、録音のマイクの性能のためだろうと推測するのだが、1952年くらいの録音だと、どうしても「ウッドベースの音」が弱い。弱いというか、遠いというか、はっきりしないというか・・・ウッドべースの「鳴り」や「音圧」が、あまりうまく録られていないことが多いように思う。同じレイ・ブラウンの演奏であっても、後の「ロンドン・ハウス」でのライブ録音のベース音の質感とはだいぶ違うので、せっかくのレイ・ブラウンの「音圧ベース」が、いまひとつ力強く聞こえてこない。まあ・・・こういう古い録音盤を聴くときには・・・そのミュージシャンの「録音のいい盤での音」をイメージしながら、「あんな感じ、あんな音圧でに弾いているんだろうなあ・・・」と想像しながら聴くしかない。
そういう聴き方~「イマジネイション補正聴き」~僕は案外・・・得意なのだ(笑)

それから古い時代のミュージシャンで「録音のいいレコード」がない場合でも、「補正聴き」は必要だと思う。イマジネイションでもって「実際に出ていたであろう楽器の音~鳴り方・響きの具合」を、想像しながら聴くのも楽しいものである。
たとえば、パーカーのライブ音源などの場合~たいてい(マイクの入力レベルの関係で)ドラムはバシャバシャと歪み気味でやかましいし、ベースは逆に遠くのほうで微かにボンボンと鳴ってるだけ~そんな音質もザラである。でも勘違いしてはいけない。その場の演奏においては、ドラマーが叩くドラムのサウンドが「歪んでいた」わけではないのだ!ベーシストも、いい加減な音を出してただ突っ立っていたわけではないのだ!ついでに言えば・・・「シュ~」というレコード盤のノイズも、ライブの場では絶対に存在していなかったのだ!そして、そんな「よくない音」が録音の状態によるものであることを考えに入れてから、じっくりとパーカーのアルトの「響き」を聴けば・・・それが相当に大きな音で鳴っており、豊かにそしてシャープに響いていたであろうことは充分に想像できる。聞こえにくいベースも丹念にそのベースラインを聴いていけば・・・(ボム・ボムという鳴りを感じていけば)カーリー・ラッセルやトミー・ポッターが、きっちりとひとつづつの音を進めているのが判るはずだ。

そういえば・・・むかしジャズ喫茶に通っていた頃~僕はモンクやエヴァンス、ロリンズなど強い個性・自我を主張するタイプに没頭していたので~「ピータースンなんか・・・」という僕に、そのジャズ喫茶のマスターは「ピータースン・・・バラードなんかは案外いいんだよなあ・・・」と独り言のようにつぶやいたものだ・・・。だけどあの頃の僕には、そんなことは全く判らなかった。あれから30年も経って・・・ようやくオスカー・ピータースンを聴き始めている(笑)

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2005年10月24日 (月)

<ジャズ雑感 第10回>熱いベース奏者たち(B面) スコット・ラファロのあの音。

ラファロとペデルセン~ジャズ・ベースの最もスリリングな瞬間。

その1:オーネット・コールマン/the art of improvisers(atlantic)

ornette_imp
<The Alchemy of Scott Lafaro>1961年3月録音。~ラファロの錬金術、錬金術士ラファロという感じの意味だろうか。

これは、コールマンのいろんなセッションからの未発表テイクが集められたのオムニバスLPだ。コールマンも嫌いではないが、とにもかくにもスコット・ラファロ参加の~当時、オーネット・コールマンと何回かセッションした~1曲が収録されていたので、78年に入手したのだ。マーティン・ウイリアムスの裏解説によれば、この1曲は「RPDD」というLPの時のセッションらしい。
この<The Alchemy>・・・何度聴いても・・・掛け値なしに凄い。何がどのように凄いのか・・・あたりまえのことだが、まずその演奏そのものが凄い。ムチャクチャに速めのテンポ~1分:180以上220以上のテンポだと思う~をものともせず、一音一音を強烈なピチカットで、弦を引っ張っていく。ややつっこみ気味のノリだが、全くもたれない。8分強の長さだが、最初のテーマと最後のコールマンとチェリーのデュオ状態からテーマの部分を除いて、このムチャクチャに速いテンポを最後までキープしている。ベースが全体を引っ張っていくような凄いビート感だ。速いだけじゃない・・・ベースの「鳴り」がまた凄いのだ。このテンポで、こんな風に一音一音を、きっちりと弦をひっぱり切って鳴らすのは、容易なことではない。コントラバスの右手のピチカットというのは、クラシックの奏者が「上につまみあげる」のに対して、ジャズの場合は「弦を横方向にひっぱり倒す」のだ。コントラバスでは、人差し指、中指、あるいは2本の指を同時に、弦に引っ掛けて、体の内側に引っ張り込むような感じで引き込む。そうすると、その指が手前側の弦に当たって止まるのだ。(例えば・・・D線を引っ張った指は、A線に当たって止まる) ガットギターを弾く方には、「アポヤンド」と言えば判りやすいかもしれない。この時の「指の引き込み具合」で、強い音になったり弱い音になったりする。この<The Alchemy>でのスコット・ラファロののベース音は・・・指を引き込む時のスピード、強さもタップリ加わった「強烈ピチカット」だ。そんな「素晴らしいベース音」が、左チャンネルからギシギシと飛び出してくるのだ。(後述のペデルセンの録音と比べると・・・録音時のベースの音圧がちょっと低いようだ。それがちょっと残念ではある)   それにしても・・・こんな凄みのある演奏、そしてギシギシとしたベースの音色は、そうめったやたらには聞かれないぞ。
このコールマンのオムニバス盤は~ジャケットの抽象絵画は、オーネット自身の絵だ~他にもいいテイクが収録されており、なかなか捨てがたいアルバムである。コールマン・アレルギーのない方なら、ぜひ聞いてみてほしい。
ちなみに、ラファロの高速4ビートが聴かれるテイクはまだまだある。

その2:
Victor Feldman/The Arrival of Victor Feldman(contemporary) 
<BeBop>1958年録音。
今度は右チャンネルから、ラファロ特有の「重くて・・・しなりながら・・・うねる」ようなベース音が噴き出してくる。コンテンポラリーの素晴らしい録音で、「音圧」も充分だ。
3分弱の演奏なのだが・・・これもテンポはバカっ速い。ただ、この「速さ」は、61年のコールマンとの<Alchemy>に比べると・・・若干だが、突っ込みすぎというか、やや余裕のなさが窺える。でも・・・ラファロ好きの僕など、その強引さ・不安定さも含めて、こういう類の「ベースの躍動感」を目の当たりにするだけで、もううれしくなってしまうのだ。その「爽快感」に思わず笑ってしまうほどだ。
そうして、ラファロのベースの音色は、もうこの初期の頃から、全く個性的な「音色」なのである。あの「しなり・うねり~ビート感」の秘密は・・・ピチカット(弦をはじく時)の「人指し指と中指の振り方のスピード」にあると思う。ラファロの「振り」は相当に速いような気がする。4ビートでのベースの演奏は、普通の場合、1小節に4分音符を4つ弾く。つまり4回、弦を弾(はじ)くのだが、「振りスピード」が速いということは・・・前の4分音符を充分に伸ばしきってから次の4分音符を弾ける、ということになる。音符の一つ一つを、普通よりも「長く伸ばせる~テヌートがたっぷり効く」から、ああいう独特のビート感が生まれてくるのだろう・・・と睨んでいる。野球でも、いいバッターほど、球を手元まで引きつけられるのだ。それは「スイング」が速いからだ。そうして、スイングが速いほど・・・「キレ」が出る。そんな風に「弾き方」が速いだけでなく、ラファロの場合、多分・・・ピチカットする際に、指を弦に深く指を当てているように思う。深く当てた方が、その弦を引っ張る時のパワーも余分に必要なはずなのだが、それらをものともせず、腕の力・腹筋の力・さらには体の芯から湧き上がる「気」みたいなものを、指先に伝え、弦を巻き込むように引っ張る。そんな一連の動作の全てが作用して、あの、「しなるような、うねるような音色とビート感」を作り上げているのだと思う。
スコット・ラファロ・・・聴けば聴くほど、本当に怖ろしいほど凄いベーシストだ。

さて・・・ペデルセン。ペデルセンのことは・・・完成された「巧すぎる」ベーシストだと思っていた。75年頃からのペデルセンは、とにかく完璧なピッチ(音程)、完璧なフィンガリング、そして甘い音色、何を聴いても、もうただただ「巧い」と感じるだけで・・・ジャズのガッツみたいな味わいには乏しいタイプ、という意味で、それほど好んでは聴いてこなかった。しかし・・・このペデルセンの最初期の録音を聴いてみて・・・もう本当に「凄い」ベーシストだということを実感したのだ。
その3:
サヒブ・シハブ/サヒブズ・ジャズパーティー(black lion:徳間) 
<Forty Seventy Blues>1963年10月、カフェ・モンマルトルでのライブ録音。DSCN0750

少し前から、この盤は「ベース音がすごい」ということで、いろんなHPで何度か話題になっていたように記憶している。よく「~が凄い」と言われるものを、期待して聞いてみると・・・案外に、たいしたことないなあ、ということもある。しかし・・・この盤のペデルセンのベースは・・・本当に凄い。ペデルセンが17才の時の録音ということで、後年のペデルセンのややソフトな音色とは別物の、荒くて強いピチカットの「豪音」といってもいいくらいの凄まじいベースの音色だと思う。前述のスコット・ラファロを好きな方なら・・・このペデルセンの「引き締まった、しかしグウンと伸びる音」にも、ラファロと同質の「凄さ」を感じるはずだ。ペデルセンの右手ピチカットの「引き込み具合」も、ラファロと同じく、充分にスピードと強さを載せたピチカットだと感じる。テンポに余裕がある分だけ、ラファロの<The Alchemy>より、さらに音色に「重さ」があるとも言える。この音圧たっぷりのベース音が、これまた左チャンネルから飛び出してくる。文字通り「飛び出してくる」ようなこの「ベース音」~強くて硬質な重い音が出るような、そういう弾き方をしたベーシストが、正に楽器から出したであろう「音色」と、それが生々しく録音された「音」の両方を含めての「ベース音」です~この音に、のけぞらない方は・・・ジャズにおけるウッドベースの「おいしさ」に気付いてない不幸な方かもしれない。僕の手持ち音源は、残念ながらCD(徳間)だが、解説によると原盤は、デンマーク・デビューとのことだ。再発のCDで、これほどの音なら・・・オリジナルのデビュー盤なら、いったいどれくらいのベース音が聴かれるのだろうか・・・身震いがしてくる。

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