オーネット・コールマン

2005年10月24日 (月)

<ジャズ雑感 第10回>熱いベース奏者たち(B面) スコット・ラファロのあの音。

ラファロとペデルセン~ジャズ・ベースの最もスリリングな瞬間。

その1:オーネット・コールマン/the art of improvisers(atlantic)

ornette_imp
<The Alchemy of Scott Lafaro>1961年3月録音。~ラファロの錬金術、錬金術士ラファロという感じの意味だろうか。

これは、コールマンのいろんなセッションからの未発表テイクが集められたのオムニバスLPだ。コールマンも嫌いではないが、とにもかくにもスコット・ラファロ参加の~当時、オーネット・コールマンと何回かセッションした~1曲が収録されていたので、78年に入手したのだ。マーティン・ウイリアムスの裏解説によれば、この1曲は「RPDD」というLPの時のセッションらしい。
この<The Alchemy>・・・何度聴いても・・・掛け値なしに凄い。何がどのように凄いのか・・・あたりまえのことだが、まずその演奏そのものが凄い。ムチャクチャに速めのテンポ~1分:180以上220以上のテンポだと思う~をものともせず、一音一音を強烈なピチカットで、弦を引っ張っていく。ややつっこみ気味のノリだが、全くもたれない。8分強の長さだが、最初のテーマと最後のコールマンとチェリーのデュオ状態からテーマの部分を除いて、このムチャクチャに速いテンポを最後までキープしている。ベースが全体を引っ張っていくような凄いビート感だ。速いだけじゃない・・・ベースの「鳴り」がまた凄いのだ。このテンポで、こんな風に一音一音を、きっちりと弦をひっぱり切って鳴らすのは、容易なことではない。コントラバスの右手のピチカットというのは、クラシックの奏者が「上につまみあげる」のに対して、ジャズの場合は「弦を横方向にひっぱり倒す」のだ。コントラバスでは、人差し指、中指、あるいは2本の指を同時に、弦に引っ掛けて、体の内側に引っ張り込むような感じで引き込む。そうすると、その指が手前側の弦に当たって止まるのだ。(例えば・・・D線を引っ張った指は、A線に当たって止まる) ガットギターを弾く方には、「アポヤンド」と言えば判りやすいかもしれない。この時の「指の引き込み具合」で、強い音になったり弱い音になったりする。この<The Alchemy>でのスコット・ラファロののベース音は・・・指を引き込む時のスピード、強さもタップリ加わった「強烈ピチカット」だ。そんな「素晴らしいベース音」が、左チャンネルからギシギシと飛び出してくるのだ。(後述のペデルセンの録音と比べると・・・録音時のベースの音圧がちょっと低いようだ。それがちょっと残念ではある)   それにしても・・・こんな凄みのある演奏、そしてギシギシとしたベースの音色は、そうめったやたらには聞かれないぞ。
このコールマンのオムニバス盤は~ジャケットの抽象絵画は、オーネット自身の絵だ~他にもいいテイクが収録されており、なかなか捨てがたいアルバムである。コールマン・アレルギーのない方なら、ぜひ聞いてみてほしい。
ちなみに、ラファロの高速4ビートが聴かれるテイクはまだまだある。

その2:
Victor Feldman/The Arrival of Victor Feldman(contemporary) 
<BeBop>1958年録音。
今度は右チャンネルから、ラファロ特有の「重くて・・・しなりながら・・・うねる」ようなベース音が噴き出してくる。コンテンポラリーの素晴らしい録音で、「音圧」も充分だ。
3分弱の演奏なのだが・・・これもテンポはバカっ速い。ただ、この「速さ」は、61年のコールマンとの<Alchemy>に比べると・・・若干だが、突っ込みすぎというか、やや余裕のなさが窺える。でも・・・ラファロ好きの僕など、その強引さ・不安定さも含めて、こういう類の「ベースの躍動感」を目の当たりにするだけで、もううれしくなってしまうのだ。その「爽快感」に思わず笑ってしまうほどだ。
そうして、ラファロのベースの音色は、もうこの初期の頃から、全く個性的な「音色」なのである。あの「しなり・うねり~ビート感」の秘密は・・・ピチカット(弦をはじく時)の「人指し指と中指の振り方のスピード」にあると思う。ラファロの「振り」は相当に速いような気がする。4ビートでのベースの演奏は、普通の場合、1小節に4分音符を4つ弾く。つまり4回、弦を弾(はじ)くのだが、「振りスピード」が速いということは・・・前の4分音符を充分に伸ばしきってから次の4分音符を弾ける、ということになる。音符の一つ一つを、普通よりも「長く伸ばせる~テヌートがたっぷり効く」から、ああいう独特のビート感が生まれてくるのだろう・・・と睨んでいる。野球でも、いいバッターほど、球を手元まで引きつけられるのだ。それは「スイング」が速いからだ。そうして、スイングが速いほど・・・「キレ」が出る。そんな風に「弾き方」が速いだけでなく、ラファロの場合、多分・・・ピチカットする際に、指を弦に深く指を当てているように思う。深く当てた方が、その弦を引っ張る時のパワーも余分に必要なはずなのだが、それらをものともせず、腕の力・腹筋の力・さらには体の芯から湧き上がる「気」みたいなものを、指先に伝え、弦を巻き込むように引っ張る。そんな一連の動作の全てが作用して、あの、「しなるような、うねるような音色とビート感」を作り上げているのだと思う。
スコット・ラファロ・・・聴けば聴くほど、本当に怖ろしいほど凄いベーシストだ。

さて・・・ペデルセン。ペデルセンのことは・・・完成された「巧すぎる」ベーシストだと思っていた。75年頃からのペデルセンは、とにかく完璧なピッチ(音程)、完璧なフィンガリング、そして甘い音色、何を聴いても、もうただただ「巧い」と感じるだけで・・・ジャズのガッツみたいな味わいには乏しいタイプ、という意味で、それほど好んでは聴いてこなかった。しかし・・・このペデルセンの最初期の録音を聴いてみて・・・もう本当に「凄い」ベーシストだということを実感したのだ。
その3:
サヒブ・シハブ/サヒブズ・ジャズパーティー(black lion:徳間) 
<Forty Seventy Blues>1963年10月、カフェ・モンマルトルでのライブ録音。DSCN0750

少し前から、この盤は「ベース音がすごい」ということで、いろんなHPで何度か話題になっていたように記憶している。よく「~が凄い」と言われるものを、期待して聞いてみると・・・案外に、たいしたことないなあ、ということもある。しかし・・・この盤のペデルセンのベースは・・・本当に凄い。ペデルセンが17才の時の録音ということで、後年のペデルセンのややソフトな音色とは別物の、荒くて強いピチカットの「豪音」といってもいいくらいの凄まじいベースの音色だと思う。前述のスコット・ラファロを好きな方なら・・・このペデルセンの「引き締まった、しかしグウンと伸びる音」にも、ラファロと同質の「凄さ」を感じるはずだ。ペデルセンの右手ピチカットの「引き込み具合」も、ラファロと同じく、充分にスピードと強さを載せたピチカットだと感じる。テンポに余裕がある分だけ、ラファロの<The Alchemy>より、さらに音色に「重さ」があるとも言える。この音圧たっぷりのベース音が、これまた左チャンネルから飛び出してくる。文字通り「飛び出してくる」ようなこの「ベース音」~強くて硬質な重い音が出るような、そういう弾き方をしたベーシストが、正に楽器から出したであろう「音色」と、それが生々しく録音された「音」の両方を含めての「ベース音」です~この音に、のけぞらない方は・・・ジャズにおけるウッドベースの「おいしさ」に気付いてない不幸な方かもしれない。僕の手持ち音源は、残念ながらCD(徳間)だが、解説によると原盤は、デンマーク・デビューとのことだ。再発のCDで、これほどの音なら・・・オリジナルのデビュー盤なら、いったいどれくらいのベース音が聴かれるのだろうか・・・身震いがしてくる。

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