アル・コーン

2007年1月 1日 (月)

<やったあレコ 第8回>Bill Potts/The Jazz Soul Of Porgy and Bess(united artists)

いつかは、このアルバムを<夢レコ>に載せたいと思っていた。リーダーはビル・ポッツというあまり聞き慣れない名前ではあるが、もちろんビル・エヴァンス絡みの1枚としてである。

古い「ジャズ誌」を2冊だけ持っている。1975年10月号と1976年1月号なのだが、特集は「ジャズ・べースの深遠にディグする」と「ビル・エヴァンス物語」であった。1975年・・・ちょうどこの年に、僕はウッドベースを始めたのだった。それまで少しはギターには触っていたとはいえ、フレットに目印もないような楽器に、そんなに簡単に入り込めるはずもない。あのバカでかい楽器にしがみつきながら「ジャズ~っ!」と叫んでいるような毎日だった。聴く方でも日本ビクターから出始めていた多くのリヴァーサイド盤を通して、ビル・エヴァンスを、もう充分に好きになっていた。そしてもちろん・・・ラファロのことも。つまり・・・僕はジャズという世界に身も心も捧げていたのだ(笑)
そこへ、この「ジャズ・ベース特集号」・・・これは買わないわけにはいかない(笑)Dscn1571
どの記事もよかったが、特に白石誠という人の<スコット・ラファロ物語>は読み応えがあった。白石氏は相当なラファロ信者のようで、「ラファロの2拍3連」がいかに素晴らしいのか~を説明する場面では「チェンバースの貧弱な2拍3連」という過激な表現もあったりするが、僕はラファロのベースプレイに心酔していたので、そんな白石氏のラファロへの思い入れ溢れる文章には、素直に感動してしまったのだ。Dscn1572 Dscn1573_1

そして白石氏作成のラファロのディスコグラフィーも大いに役立つものだった。3ヶ月後に出た1月号もいい内容だったのですぐに入手した。この号にも白石氏作成の「ビル・エヴァンス・ディスコグラフィ」が載っていた。特にエヴァンスの初期の参加レコードのデータが貴重だった。もっともそういう初期のものは、ほとんどが入手困難だったので、音源を聴けたのは、何年も後のことだったが。どうやら僕はこの頃からdiscography というものに弱かったようだ(笑)

《Victor音源はなんとか国内盤で入手できたが、carlton,seecoなどトニー・スコット絡みの音源は、もっと後になって freshsound からの復刻で、ようやく聴けたのだった。ちなみにこのトニー・スコットのセッション~ベースはヘンリー・グライムズだ。これらの復刻LPの音源をまとめた2CD(freshsound)がとても便利だ。

Dscn1574_1 そのビル・エヴァンスのディスコグラフィで、このレコード~The Jazz Soul Of Porgy & Bessの存在を知ってはいた。それは「スカート女性の足ジャケット」(左写真の36番)だった。だいぶ後になってジャズ批評の「最後の珍盤を求めて」でも、このPorgy~が紹介されたのだが、その盤はジャズ誌に載っていた「スカート」とは違うジャケットだったのだ。対談の中身から、それが1stのオリジナル盤であること、しかもナンバー入りのlimited edition(限定盤)を知って・・・ますます欲しくなってしまったのだ。レコード好きは、limitedにも弱いようである(笑) ちなみに「珍盤コーナー」というと、捉えようによっては「コレクション自慢」にも見えるが・・・コレクションというのは、結果ではなくて「コレクトしていく」過程に価値がある~もちろんその人にとって~のだと思う。そうして、そんな風にコレクトされたレコード達とは・・・よくも悪くもその人の歴史なのだと。
だから・・・そのコレクションを知ることは「その人」を知ることでもあるのだ。人は誰かと知り合う時に・・・多少は見栄を張るものだ。だとしたら、自分の経歴の一部を見せる時に・・・少しくらい自慢気になってもいいじゃないか(笑)
そんな訳で・・・<やったあレコ>である。このレコードは7~8年前に入手した。その頃、バナナレコードという中古レコード店が「アメリカ仕入れ直売~コンバットツアー」とかいう名前で地方都市を3~4日間づつ巡業していくセールをよくやっていたのだ。僕は浜松でのセールで入手したのだ。この時のセールは、仕入れスタッフがよほどいいディーラーに当たったと見えて、他にもアンドレ・プレヴィンのcolumbia盤など状態のいいものがいっぱいあった。Dscn1528_1
最初、この薄めの黄色のジャケットを引き抜いた時・・・大げさではなく身体に電流が走った(笑)
写真では何度も見ていた、あのジャケットが目の前にあるのだ!ついに出会ったのだ!

まずはチェックだ。ゲートフォールドの分厚いジャケット。僕は丁寧に外袋をはずし、丁寧に中を開いた。おおっ・・・開いたページ左側にやはり「限定NO.~」が印字されている。実に誇らしいではないか! そして何より素晴らしいのは、その4pほどのブックレットだった。
録音中と思しき場面のミュージシャンの写真が、それもいい場面の写真が満載されていたのだ。
そして盤の方は・・・これもほぼミント状態である。この貴重盤がこのコンディション、もちろん値段の方もなかなかのものだった。しばし考える僕。「スカート」の国内盤は持っているのだ(当時の僕はダブり盤は買わない主義だった)だがしかし、本当はもう僕の心は決まっていたのだ。だってそうだろう・・・この先、どう考えても、このレコードにそうそう出会えるわけはない。だから・・・買うしかないのだ(笑)だから、この「考える」は、自分の中で「もったいぶる」ポーズだったかもしれない(笑)

Dscn1578 このPorgy & Bess・・・実は音源だけは聴いていたのだ。ジャズ誌のビル・エヴァンス特集のディスコに載っていた方の「スカート」ジャケットの方を、キング国内盤を見つけていた。しかしその盤、とんでもない音だったのだ。というのは・・・音質もまあまあ悪くない普通のステレオ盤だったのだが、B面1曲目it ain't necessary so では、なんとテナーサックス(アル・コーン)の音が左右に動き回るのだ(笑)どういうことだあ、これはっ! 曲が変われば(セッションごとに)楽器の位置が変わることはたまにはある。しかし、同一曲のしかも今、まさにソロをとっている主役が左右にぶれまくる・・・こんなミキシングってあるだろうか? このレコードは大編成で、テナーにもズート、アル・コーンの2名がクレジットされてはいる。そうなると・・・その2人が左右で代わる代わる吹いているのかも・・・という可能性もあるが・・・いや、どう聴いてもそれはない。間違いなく独りのテナーが連続して吹いている語り口、トーンなのだ。それなのに途中でフラフラ~と右に左に這い回ってしまうのである。聴いていてとにかくもう気持ちが悪い。酔いそうだ(笑)だから・・・この国内盤「ポギーとベス」を聴くときは、いつもアンプをモノラルモードにして聴いていた。それでかなり救われたのだが、こういう大編成のジャズを聴くときのステレオ音場の楽しさもなくなってしまうので、それが残念であった。それにしても・・・あの「サックス左右の舞」、あれがマスターテープ不良による国内盤全部での現象だったのか、あるいは、僕の手持ち盤のみの固体的不良だったのか・・・今もって判らない。《補筆》この記事をアップ後、リンクをしていただいているmono-monoさんからコメントをいただいきました。いやあ・・・驚きました。mono-monoさんも、すでにご自身のブログMONOmonologueの中で、アメリカ盤「Porgy & Bess」のことを載せていたのです。このキング国内盤と同じジャケットの盤にも、やはり「サックス左右の舞」があるとのこと。とても興味深い情報です。special thanks to Mr.mono-monoさん!

そしてもう1件、67camperさんからもこの限定盤をお持ちとの情報が入った。さらにもう1枚の「Porgy & Bess]情報も。ともにモノラル盤とのこと。こちらもぜひご覧下さい。special thanks to Mr.67camperさん!

Dscn1580_1その後に入手した米capitolのCD(CDP-7-95132-2)では、もちろんその「舞」はなかった。そんなちょっとしたことにも一喜一憂するのが、レコード好きなのである(笑) ちなみに、オリジナル盤とCDには全13曲が収録されているのだが、このキングの国内盤には全10曲しか収録されていない。つまり3曲がカットされているのだが、その中の1曲:it takes a long pull to get thereには、短いがビル・エヴァンスのソロスペースもある。だから・・・エヴァンスのマニアの方は、なんとしても米united artists の1stか2nd を手に入れたくなるはずだ。
《補筆》この米CDは商品化する際、音源確保に苦労したらしく、裏パッケージにこんな言い訳がしてある~note:the master tapes to this exquisite session have been lost. to produce this CD, Bill have been lost. to produce this CD, Bill Potts and Jack Towers gathered as many mint copies of this collector's item as they could find and poinstakingly transferred the best pressing of each selection to tape~つまるところ・・・マスターテープがもうなくなってしまったので、いい状態のレコードを探してそれぞれ状態のいい曲から音源をtransferした・・・ということだろう。だからいずれにしても・・・この米CDの「音質」は、それほどいいとは言えない状態です。

まあそんなちょっとした因縁を経ての、このオリジナル盤との遭遇だったわけだ。この盤の限定ナンバーは、326番である。当時のlimitedというのは、何枚くらいプレスしたのだろうか? たぶん・・・2000枚くらいだろうか。Dscn1531 そう思って改めてジャケットを見ると・・・この絵もなかなか味わいがある。暗い雰囲気の漂う「家族の肖像」という感じの絵である。裏ジャケットの一番下に、cover painting~robert andrew parker とちゃんとクレジットされている。
造りのいいゲートフォールドのジャケット、格調高いカヴァー・アートと併せて、この限定盤の価値は、なんといってもブックレットの写真にあると思う。
そのブックレットの雰囲気を味わってもらえるように、いくつかのページを撮ってみた。 それから、参加しているミュージシャンが実に豪華なので、そのクレジットも記しておこう。Dscn1532
trumpet   ~art farmer, harry edison, ernie glow, markie markowitz, charlie shavers
trombones  ~bob brookmeyer, frank rehak, jimmy cleveland, earl swope, rod levitt
tenor sax  ~zoot sims, al cohn
alto sax   ~phil woods, gene quil
bariton sax~sol schlinger
guitar     ~herbie powellDscn1533_2
drums      ~charley persip
piano      ~bill evans
bass      ~george duvivier

Dscn1530conductor ~bill potts 録音:1959年1月







さて・・・このPORGY & BESS、ビル・エヴァンス絡みでついに手にいれた1枚ではあるが、それほどエヴァンスが活躍するわけではない。どちらかというと管楽器奏者たちのソロを楽しむレコードだろう。それでも1曲、エヴァンスのピアノが印象に残る曲があった。I love you, Porgy である。この曲は・・・そう、エヴァンスが1961年6月の village vanguard でのライブでも演った曲だ。たしかこの曲は、オリジナルの2枚(waltz for Debbyとsunday at the viallge vanguard)には収録されずに、うんと後になって発売されたmilestoneの2LPで、未発表曲として世に出てきたはずである。

エヴァンスは、うんとスロウなテンポで、シンプルなメロディをいつくしむように弾いている。しみじみとした情感みたいなものがよく出ていて、とても好きな演奏だった。
あの・・・I love you, Porgy である。しかしこの59年のテイクでは・・・ある意味、全くエヴァンスらしくない弾き方なのだ。ビル・ポッツがきっちりとアレンジした大編成のオーケストレイションものなので、このエヴァンスをフューチャーしたこの曲においても「足かせ」があったようだ。それというのも・・・この曲、エヴァンスが右手でしか弾かないのである。それでもってメロディをポツン・・・ポツン・・・と弾く。左手の和音はおろか、右手も全くのシングルトーンのみ!これではまるでジョンルイスではないか(笑) しかも、導入部と中間部は管部隊の出番なので、エヴァンスは、ただでさえシンプルなメロディのこの曲の出足のメロディと最後の方のメロディだけを弾くのだ。エヴァンスは右手で弾くそのメロディにも全くフェイクを入れずに「ベタ~っ」と弾く。なんというか唄用の楽譜のままの音符で・・・という感じなのだ。伸ばす箇所ではそのままシングルトーンを伸ばしている。ポツン~・・・ポツン~・・・間が空いてしょうがない(笑) 
ハーモニーをあれやこれや研究することでなんとも絶妙な左手と右手のコンビネイションを創りあげる、そしてそれが持ち味のエヴァンスから「左手」を奪い去る・・・なんて過酷な指示(アレンジ)だろう。いや、これはエヴァンスへのイジメだったのかもしれない(笑)

しかしながら・・・その指示がなんとも不思議な効果を生むのだ。エヴァンスの伸ばした単音が、所在なげに響く。録音にエコーがかけられているようでもあるし、エヴァンスがペダルを踏んで伸ばしたようにも聞こえる、その不思議な単音・・・まだ管楽器は入ってこない・・・スカスカの音空間・・・そんな間の空き具合が、Porgyのメロディと伴に、どうにも印象に残ってしまうのだ。ある種「寂しさ」みたいな感じを演出しようとしたポッツのアレンジだったのかもしれない。Dscn1529_1

いずれにしても・・・この時のエヴァンスには相当な音楽的ストレスがあったように思う。だから・・・今度は自分が納得のいく左手のハーモニーを付けて、そうして1961年にもう一度、この I love you, Porgyを演奏したのではないだろうか。そうして、その渾身の I love you,Porgy もなぜか・・・あの2枚のライブ盤には収録されなかったのだ。エヴァンスの気持ちはどんなだったろう。・・・この I love you, Porgy というガーシュインの名曲は、エヴァンスにとっては因縁の1曲だったのかもしれない。

僕はいつもこんな風にいろいろ想像してしまう(笑) ほとんど妄想かもしれないが、ほんの少しでもそんな感じがあったとしたなら・・・エヴァンスがいつもあんな風にニヒルな顔つきをしているのも無理のないことかもしれない(笑)

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2006年10月28日 (土)

<ジャズ回想 第8回>ニーノニーノさんのオフ会 大阪・神戸秋の陣。

10月7日、西から東から14人が藤井寺Yoさん宅に集まった。

<当日かけたレコードのジャケット写真を、Yoさんが送ってくれましたので、BOSEさん提供分も含めて、いくつか追加しました。ジャケットのみの写真がYoさん提供分です。マクレエのこと、少し追加しました。10/31>

福岡のオリジナル盤通販専門店ニーノニーノの新納さん主催の「杜の会」~会とは言っても特に主義主張があるわけでもなく、もちろん何かの誓約書を書かされるわけでもない(笑) ただ単に「音楽を好きな人間が集まっていい音楽をいい音で聴こうではないか」という集いなのだが~2006年の信州:白馬で、新納さんがこう言った。「次は・・・ぜひ九州と本州の方が一緒に集まりたい。そうとなれば・・・集結の地は大阪しかない。Yoさん、ぜひお願いします!」・・・一同、どよめく「おおっ・・・」
春から夏へ・・・その間、大阪(藤井寺)の会場となるYoさんがいろいろと考えを巡らせ、初日にYoさん宅、翌日はメリケンさん宅、その後、神戸のジャズ喫茶Just In Timeさん~という段取りである。お盆の頃には、日程が10月7日(土)・8日(日)と決まった。その頃の「杜」の書き込みから、この「杜の会」が自然と「大阪・神戸:秋の陣」と呼ばれるようになっていった。秋の陣~西から東から大阪に集結する落ち武者たち・・・いや、諸国の武将たち、といった趣ではないか(笑)

そうして先日、ついに「杜の会」が催された。九州からは、DUKEさん(新納さん)、音の匠さん、CROWさんご夫妻、BOSEさん、PSYさん、M54さんと7人。(PSYさんとM54さんは、7日の夜(宴会)からの根性の参加!)
本州からは、群馬のRoxanさん、静岡のパラゴンさん、マントケヌーマーさんと彼女。愛知からのD35さん、konkenさん、それにbassclefの計7人。
皆さん、それぞれに苦心惨憺のスケジュール調整をされての決死的参加なのである(笑)

愛知組の3人は、私:bassclefが朝6時に豊橋を出発。岡崎(konkenさん)~東海市(D35さん)と合流。よしっ、3人で一路、藤井寺へ!と
気合こめて出発。運転はkonkenさん。亀山辺りまで少し混んだが、その後は快調。走るクルマなので飛ばす、飛ばす。10:30頃にYoさん宅に到着した。
笑顔で迎えてくれた奥様に「また来てしまいましたあ(笑)」などと訳の判らん挨拶しながら、2Fへ上がっていくと・・・なにやら聴いたことのある歌声が・・・おっ、これは? 部屋に入ると、Yoさんとパラゴンさんが嬉しそうな笑顔で迎えてくれる。
「やあやあ」・・・と6月以来の再会だ。パラゴンさんは、根性の夜行バスで早朝の大阪入り。8時前には着いていたそうで、もうすっかりこの部屋に馴染んでいる(笑)
パラゴンさんといえば・・・ヴォーカルだ。テーブルの上にはヴォーカル盤ばかり並んでおり、すでにいろいろと聴いてきたようだ。Out_of_the_blue
そうして一番上にあったのが、キャロル・スローンのOut Of The Blue(columbia:ステレオ盤。これはYoさんの手持ち盤) だ。 そうかっ!このレコードだったのか、と嬉しくなる。このレコード、僕の手持ちはモノラル盤(カナダ盤)だったので、ステレオ盤を一度、聴いてみたかったのだ。カナダ盤でもけっこういい音だと思っていたが・・・やっぱりこのレコードは録音も相当にいいようで、ステレオ盤もふくゆかないい音で鳴っていた。どうにもステレオ盤も欲しくなってしまうなあ(笑)
<右上の写真が、Yoさん提供のステレオ盤。下の写真は、僕のカナダ盤。maroon/siliverラベルの「6つ目」も悪くない:笑>_006_2

Spring Is Here(ロブスター) they can't take that love away from me
偶然にもキャロル・スローンの現代盤~78年録音のspring is here(ロブスター)を持ってきていたので、1曲(they can't take that away from me)かけてもらう。
ムラーツのベースが絶妙な巧さを見せる1曲だ。録音はやはりいい。しかし・・・ヴォーカルにはうるさい御仁が揃っている。「やっぱりスローンも年をとってるねえ」とkonkenさん。皆、うんうんと同意。唄はもちろん抜群に巧いのだが先ほどの1961年ころのスローンには、なんとも言いがたい「可愛い色気」があった。あの魅力には抗しがたい(笑)

パラゴンさんが「ペギー・リーはブラック・コーヒーだけじゃないよ~」と言いつつ取り出した10インチ盤。
Peggy Lee/Songs from Walt Disney's Lady and the Tramp(decca)から la la ru 
~ペギーリーがかわいらしい感じで唄っている。パラゴンさん、「こういうペギー・リーもいいんだよな~」と目を細める(笑)

After_glow_2  さて、何曲か聴きながらテーブルの上のお宝盤を見ると・・・エラのmellow mood(decca)の2種~[黒ラベル]と[文字が金色の黒ラベル]~の横に気になる盤が・・・。マクレエのafter glow(decca)だ。<写真:Yoさん提供>   ピアノのレイ・ブライアントが入っているので有名だ。オリジナルは、ジャケットがエンボス(ザラザラになっているやつ)だったとは知らなかった。エンボスだとテカテカしなくて、なぜか品良く感じる(笑)僕はマクレエはそれほど愛聴しているわけではないが、このレコードにはちょっと思い出があり、内容も好きなのだ。all my lifeを リクエストして聴かせてもらう。乾いたマクレエの声が気持ちいい。ブライアントのピアノも輝くようなタッチだ。こりゃあ録音も相当にいいぞ・・・。

ここらで男性ヴォーカルも、ということで・・・僕はメル・トーメを1枚持ってきたので、it's a blue world(bethlehem)から isn't it romantic?を。
ストリングス入りがややコーニーではあるが、やはりトーメは巧い。ベツレヘムの沈んだような音も、実にいい感じでしっとりと鳴る。
このごろ僕は、こういう沈み込んだような音も好きになってきたようだ。

次に、D35さんがヘンリー・マンシーニのpink panther(RCA Victor:dynagroove)を取り出した。
すると隣に座っているkonkenさんも自分のバッグから「同じレコード」を見せてニンマリ(笑)7_001_2   
D35さんは、いつもこのレコードを音を聴く時の軸にしているようだ。
それにしても、このdynagroove盤・・・いい録音なのは判っているつもりだったが・・・出だしから本当に凄い音だ!
冒頭、左の方からピアノのかなり高い方の音「コーン」という乾いた音に続いて、あの「泥棒が抜き足、差し足」みたいなチャーミングなテーマが始まる。
徐々にブラス群が押し出してくる~マンシーニの工夫を凝らしたサウンド群~それら全てが左右にいい具合に拡がった音場に満ちている。
フォルテの場面では、実に気持ちのいい音圧感が味わえる。7_002
それから、もちろんテナーのプラスジョンソン。間に入るこのテナーソロが抜群にいいのだ。あのユーモラスなテーマを充分に生かした、いやらしいような表現力!(笑) だけど実にコクのある色気のある味わい深いソロ・・・だということがよく判る、いや判ってしまう・・・そういう深みのあるテナーの音だった。こりゃあテナー好きの人にはたまらんだろうなあ。(そりゃ、オレか:笑) だから・・・実はこのピンク・パンサー、僕も持っているのです(笑)
<写真~Victor盤は、やはりステレオ盤が素晴らしい。だから、LPM~ではなく、LSP~が欲しい>

お昼の後に、いよいよ秋の杜:本編が始まった。
まず、Dukeさんの「レーベル別でのVan Gelder録音もの」から。
ヴァンゲルダーの録音というと、まずbluenote、prestigeをイメージしてしまうのだが、savoy、verveにもたくさんあるし、ちょっと意外だったのは、riversideやatlanticでの仕事もあったことだ。
各レーベルからいろいろな盤がかかったが、その違いっぷりには、実に興味深いものがあった。
ここでは・・・録音うんぬんというより、そのジャズの中身に参ってしまったTony Willimas/Spring のことを少し。
~トニーのブラシが凄い!とてつもなく速いテンポをブラシで紡ぎだしている。その快速ビートにピーコックが鋭いピチカットで絡んでくる。
この2人だけでも充分にスリリングなジャズになっているのだが、そこへ第1のテナーが右チャンネルから現れるフレーズを細かく刻み、それを少しづつ変化させていく。素晴らしく切味鋭いテナーのソロだ。ショーターのようでもあり・・・いや、ショーターにしてはトーンのエッジが鋭すぎる・・・こちらがサム・リヴァースか?とも思う。ベースソロの後、左寄りから第2のテナーが現れる。今度は、先ほどと対象的に「ロングトーン」を多用して、その音色を変化させつつ、徐々に徐々にフリーキーな音色で鋭いソロになっていく。この第2のテナー奏者~出だしのロングトーンで、「あ・・・やっぱりこっちがショーターか?」とも思うのだが・・・僕が思っているショーターの音色よりも、もうちょっと荒々しくて堅い音色のように聞こえる。そんな具合に、このレコードの2人のテナーには、どちらがどちらか?と迷うことしきりなのだが・・・音色自体の「端正さ」(リヴァースの方が、堅くて荒いトーン」という認識をしているので)と、それから、フレーズの展開の仕方、そのアイディアのおもしろさ・・・そんなことから「いつになく本気を出して鋭いプレイをしたショーター」のように思えくるのだが・・・サム・リヴァースという人自体をほとんど聴いていないこともあり・・・あまり自信がない(笑) 
いずれにしても・・・このextras の演奏の凝縮度は怖ろしく高い。トニーのブラシだけ聴いてみてもいい。ピーコックの切味鋭い高速4ビートだけ聴いてみても凄い。しかしその2人に絡むテナー奏者のソロとそのテナーに触発されて変化していくリズム隊2人の応用力というか、その変幻自在な流れに「素晴らしい音楽の一瞬」みたいなものを感じた。エンディングもしゃれている。最後、独りになったトニーがブラシとハイハットだけでしばしの間、リズムを刻む・・・そしてその急速テンポを半分に減速するような素振りを見せつつ・・・いきなり「ッポン!」というショットで終わるのだ。ブラシに始まりブラシに終わる・・・実に潔い(笑)これまでちゃんと聴いたことのないレコードだったが、この1曲は凄い!とようやく判ったようである。
_005_9  <写真の盤は、manhattan capitol ~通称DMM bluenoteだ。ちょっと哀しい(笑)>

この後は、皆さんの持ち寄り盤から1曲づつアトランダムにいこう、ということになった。
それぞれの方のかけたレコードの紹介と、その時の印象を思いつくままにに書こうと思う。

Yoさん~(以下、コーンからホウズまでの5点の写真はYoさん提供)

Cohn_on_the_saxophoneAl Cohn/渦巻きのコーン・・・Cohn On The Saxphone(dawn)~地味だけど実にいいレコードだ。いつもは柔らかい音色のアル・コーンだが、アドリブの中で、高音の方にいくと、時に鋭い音を発する。その時の音のかすれ方が・・・ちょっとレスターヤングに似ているのかもしれない。最後にかかったレスターを聴いた時、そんなことを感じた。

Birth_of_a_band_2Quincy Jones/A Birth Of thd Band(mercury) gypsy~このレコードは、Yoさんの愛聴盤である。

Al & Zoot/You an' Me (mercury)  you 'n me
~このレコード、録音はたしかに素晴らしい。ベースの音も輪郭鮮やかで音像も太い。Youn_meドラムのシンバルなど、最近の高品質録音のような雰囲気だ。隣にいたBOSEさんとそんな感想を言い合う。僕は、しかし・・・このズートやコーンが気持ちよくスイングする60年ころのジャズの「感じ」に、この「近代録音」の音質は、イマイチそぐわない・・・そんな印象を受ける。ドラムやベースがあまりに軽くスムースに流れるようなところもあって、ちょっとレコード全体に「渋み」が欠けているような感じがするのだ。だから、音のよさが却ってこのジャズを「軽く」している・・・そんなようなあまり根拠のないことを思ってしまう僕であった。

Jazz_sahib_1Sahib Shihab/Jazz Sahib(savoy) blu-a-round(写真:左)
~このレコードもそういえばヴァン・ゲルダー録音であった。僕はこのレコードは・・・ピアノがビル・エヴァンス(B面のみ)ということもあり
CBSソニー盤を入手してよく聴いたものだ。久しぶりに聴く初期エヴァンスのピアノは実にクールな装いで、やはりいいのである。
フィル・ウッズはこの盤でも大活躍だ。先ほどのクインシー・ジョーンズでのgypsyもそうだったが、ウッズという人は、与えられたスポットでいつも覇気のあるソロを取り、きちんとまとめてくる。本当に巧いアルトである。いい音で聴くいいアルトは快感でもある。それにしても後でよく考えてみると、宴会の後のアフターアワーズでもかかったWarm Woodsも含めて・・・この日は「フィル・ウッズ特集」でもあったようだ(笑)For_real

Hampton Hawes/For Real(contemporary) hip ~このコンテンポラリー盤は、何度聴いても本当に最高だ。ラファロのぐッと引き締まったベースが右チャンネルから「ビートの権化」となって押し寄せてくる。バトラーのドラムの乾いたスネア音やらホウズのピアノの、あの全く粘らない跳ねるように小気味のいい独特なタッチ。それからもちろんハロルド・ランドのテナー。この人のテナー・・・テーマの合わせとかが抜群に巧いので、その演奏自体もソフトだと思われているかもしれないが・・・意外に硬質な鋭い音色である。そんな具合に、全ての楽器の音が~ミュージシャンが気迫を持って発したであろう楽器の音が~等身大の実在感を持って押し出してくる。そんな感じだ。もちろんYoさん自身が意識的に調整してきたのであろうが・・・「コンテンポラリー」というレーベルについては、全く見事に(いい・悪い/好き・嫌いのレベルではなく)「あるべき音・出してほしい音~そういうバランス」で、鳴らしきっているのだ。そう思えてくる。素晴らしい!

Sonny Rollins/Sound of Sonny(riverside)     ~the last time I saw Paris もかかったな。これはピアノがソニー・クラークだ。

Zoot Sims/Tonit's Music Today(storyville)   ~I hear a rhapsody Tonite_music_today_1

この1曲だけは、シムズのワンホーンだ。バラードをじっくりと吹き進むシムズの唄心には参ってしまう。I hear a rhapsody・・・好きな曲だ。BOSEさんご自身も「よくできたCDだと思っていた」という徳間CDとの聴き比べでは・・・CDでは全体的にドラムスやベースが強調されていたような感じを受けた。そして、オリジナル盤で聴いたシムズのテナーは、やはり・・・響きが自然で、より陰影に富んでいたように思う。                    <上の写真:tonite's~はYoさんの手持ち盤。BOSEさん宅でこのレコードを聴いて気に入ったYoさんが、その後に入手されたとのこと>      

BOSEさん~
Go_manSonny Criss/Go Man!(imperial)blue prerlude ~ジャケットを見て「おおっ」と軽いどよめき。ソニー・クリスもいいのだが、このレコード、ピアノがソニー・クラークなのだ。このジャケットを見て、僕は、スクーターのスタンドが立っている絵とスタンドがない絵と2種類のジャケットが存在する、という何かで知った情報を話した。この盤は「スタンド付き」だ。レコードをかけ終えると、BOSEさんが一言。「このレコードのタイトルが、なぜ「ゴーマン」かというと・・・ジャケットを見れば判ります。スクーターの後ろに乗った女が「ほら、次はあっち」と指示を出しているので、男が嫌そうな顔をしてるでしょう」と真顔で言うのだった(笑) <Go Manの写真は、BOSEさん提供です。やっぱりスタンドが立ってる>

Good_gravyTeddy Edwards/Good Gravy(contemporary) から1曲。このレコード・・・contemporaryの中では案外に見かけない盤で、BOSEさんによれば「多分・・・OJCでもWAVEでも出てない」とのこと。Yoさんはこのエドワーズ、すぐに気に入ってしまったようで「これ、欲しい・・・」と一言。

<左の写真は、この会の後、Yoさんが速攻で入手した盤だ。やることが速い(笑)>

そして・・・Serge Charoff/Blue Serge(capitol) Blue_serge  

ジャケットの「サージ服」の青色が品のあるいい色合いだ。センターラベルは、capitolを象徴するあのターコイズ。この盤はベースのルロイ・ヴィネガーのはずむような音が大きく入っている。そしてピアノは・・・こちらもソニー・クラークだ。

<写真:Blue Sergeは、BOSEさん提供。こうして見ると実にいいジャケットですね>

それにしても、BOSEさんの持ち込んだ盤は、どれもこれも・・・(笑) ジャズの本当に渋くていいところの盤ばかりじゃないか・・・参りました(笑)  

パラゴンさん~
Sylvia Syms/Songs By Sylvia Syms から imagination(atlantic)
~ジャケットのイラスト~笑っているようなシムズのイラスト~がいいなあ・・・と思っていたら、すかさず、BOSEさんが「これはバート・ゴールドブラットだ」
すぐジャケットのイラストをよく見ると、やはりBurt Goldblatt とクレジットされていた。BOSEさん、よく知ってるなあ・・・(笑)

D35さん~
金子由香里(ビクター盤) 1970年代の日本盤だが、録音はキレイだった。
シャンソンは・・・わからない(笑) 曲は「詩人の魂」だったか。
エミルー・      Angel Band~カントリーっぽいノリの歌い手だ。
Ann Richards/Many Moods of Ann Richards ?

Roxanさん~
Pink Floyd(英EMI) の初期盤から1曲。
Mary Hopkin/water,paper and clay (EP盤)
~はじめは静かに始まるホプキンスの唄だったが、途中から壮大なオーケストレーションが現れ・・・
とにかくいろんな楽器群が次々に、充分な音圧を持って飛び出てくる・・・そういうダイナミック・レンジが驚異のUK・EP盤だった。

konkenさん~
Chicago(CBSソニー) introduction ~Yoさんのシステムはどのジャンルもいい具合に鳴る。ロックのレコード特有の「厚めの低音(エレクトリックベース)と
巨大音像のバスドラ」しかしこれらが、大きくても柔らかめな肌触りのいい音なのだ。ロックならこれくらい音圧が出た方が気持ちいい~という感じで鳴っていた。
konkenさんは「シカゴが、あのソニー盤であれだけ鳴るとは・・・」と帰りのクルマで何度も繰り返すのでした(笑)

マントさん~
ギターとパーカッションによる現代曲(ジーグフリード・フィンクと読めたかな(by CROWさん)
バリトン歌手によるフォーレの歌曲~この男性歌手・・・このレコードの録音当時、結婚したばかりということで、マントさんいわく・・・「唄に喜びが溢れ出ている」

bassclef~
Swingin' Like Sixty(world pacific)からJohnny Mandel(pacific) georgia on my mind_001_9
~このレコードは、world pacificのオムニバス盤で、A面1曲目に、アート・ペッパー入りの「ジョージア~」が入っているのだ。
ホーギー・カーマイケルのhoagy sings carmichael(pacific) のリハーサルテイクのようだ。おそらく曲の進行を確認するためのバンドだけのリハーサルだから唄はなし。イントロ~間奏~エンディングだけの短いテイクなのだが、この「ステレオ録音」が、なかなかに素晴らしいのだ。
録音直前の様子~「hi,everybody!」「take~!」「OK!」とかの、やりとりからして生々しい。左の方では、ペッパーが軽くアルトを鳴らしたりしている。中編成の管楽器がジョージアのイントロを始めると・・・そこに「すうっ」とペッパーが入り込んでくる。管楽器群がテーマを流しているバックで、オブリガート風にソロを入れているのだ。そのままバックなしの短いアルトソロになり、サビからいきなり倍テンだ。トランペットがソロを吹くのだが、マイクがかなりオフ気味だが、どうやらハリー・エディソンのようだ。
そしてサビ後の部分をエンディングテーマとし、あっさりとこの演奏は終わってしまう。ちなみにこのリハーサルテイクの本番~つまりホーギー・カーマイケルが唄う~レコード、僕の手持ちは、1982年頃の米Pausaの再発でモノラルなのだが、裏解説によると、[this is a Monaural Recording recording] とあり[engineering:Richard Bock and Philip Turetsky] と明記してある。だからhoagy sings carmichael(pacific) のオリジナル発売時は、
モノラル盤だったのかもしれない。カーマイケルの脱力した唄い方も悪くない(笑) そんな唄の合間合間ににチラと入るペッパーがまた味わい深い。

Soul Trane(prestige) NJ bergenfield ラベル~このソウル・トレーンあたりの番号からNJラベルらしい。だから(たぶん)オリジナルなのでちょっとうれしい。このNJラベルも、少し前にrecooyajiさん宅(地元:豊橋のジャズ好きのお仲間)で、ビクター盤と聴き比べたが、やはり、ドラムの鮮度・キレ、ベースの鮮明さ、などに明らかな違いがあった。プレスティッジというレーベルは、おそらくマスターテープの管理があまりよくなかったのだろう。だから・・・67~68年以降くらいからの、fantasyの再発盤(黄緑ラベル)から、極端に音質が落ちているようだ。そうして、その頃のマスターを使った日本盤の音質も・・・良くなるはずもない、ということかもしれない。(私見では、「紺」「黒」のイカリ・ラベルのRVGまでは、かなりいいように思う)

Stan Getz/4曲入りのEP盤(clef)から time on my handsDscn0720_1

この1952年のゲッツが、すごく好きなのだ。45回転で聴くゲッツのテナーは・・・どうにも素晴らしい。「ふわ~あっ」と漂うような軽み」が快感である。このEP-155は、ゲッツの他のEP盤に比べても、音がいいようである。

                                                                                          

Norman Grantz #4(clef) EP3枚組_002_5

このEP盤と、Yoさん手持ちの12インチClef(水色ラベル)の聴き比べをしてみた。EP盤の音は総じてカッティングレベルが低い。低いのだが・・・テナーの音色が、「すうっ」と浮き出てくるようなニュアンスがある。そういうある種の「軽み」に・・・却って、ゲッツの良さを感じる。
続けてかけたclef 12インチは、カッティングレベルも高くて、ピアノ、ドラムも骨太なClefサウンドで、やはり魅力のある音だ。僕はClefの音なら、どれもこれも嫌いではないようだ(笑)_003_8

_004_13 

                                                                                                

宴会の後・・・まだYoさん宅の音を聴いていないM54さんとPSYさんは、とにもかくにもYoさんの音を聴かねば!という決意がみなぎる。そうして、その流れに便乗する者が続出。まっさきに便乗したのは・・・このbassclefだったが(笑)
そんなわけでまたまた全員で、再度Yoさん宅へ。

アフターアワーズとして・・・pm8:45~pm10:15
PSYさん~
Bill Evans/Exprolationsから israel~このレコード・・・ラファロのベース音が他のリヴァーサイド盤とちょっと違う感じの音で、グウ~ッと沈み込んだ低いべース音なので、僕の機械ではなかなかその沈んだ低音がうまく抜けない。PSYさんも同じようなことを言っておられた。そしてその「沈み込むベース音」が、このYoさんのウーレイでは余裕で鳴っているではないか!

M54さん~
Grant Green /Idle Moments(bluenote) これはちょっと歌謡曲っぽい曲調のあれだ(笑) それを熟知しているPSYさんが演歌曲の紹介MCみたいなセリフを軽くはさむので、皆さん少し笑う。後半に出てくるジョー・ヘンダーソンのテナーがやはりいい。ジョーへンにしては、やけにサブ・トーンを多用して、ちょっとベン・ウエブスター風なものを意識したのかもしれない。

Yoさん~Phil Woods/Warm Woods(epic) からeasy living

ここでYoさんが、「ああっ、そうだ・・・「あれ」をみなさんにお聴かせしないと!」と言いつつ、Lou Donaldson/Blues Walk(bluenote;lexington) Blues_walk 《訂正》~このドナルドソン:1593番にLexingtonはあり得ない、とのコメントをrecooyajiさんより頂きました。さっそく、Yoさんに確認していただいたところ・・・この1593番は<47West 63rd NYCで、溝あり、Rマークなし>とのことでした。貴重なブルーノート盤というイメージでLexingtonと思い込んでしまいました。実は・・・僕は、オリジナル盤のラベル変遷にはあまり詳しくないのです(笑)
を取り出す。みなさんから軽いどよめき・・・(笑) これは、メリケンさんからのYoさんへのプレゼント盤だ。ちょっと前に「杜」にメリケンさんが「ジャズレコード下取り価格ピッタリ賞」のプレゼント盤として提供したのだが、これはYoさんが見事な読みで勝ち取ったのだった。盤質も演奏も素晴らしい。甘くて太いドナルドソンのアルトが鳴れば・・・「チャカポコ」のコンガも思いのほか気にならない(笑)

Yoさん・・・ではもう1曲あのマーキュリー盤からということで、
Al & Zoot/You an' Me (mercury)  you'd be so nice to come home to

パラゴンさんから渋いヴォーカル盤が、またひとつ。
ミリー・ヴァーノン/Introducing Milli Vernon (storyville) ジャケットの1箇所だけ色が付いている。とてもしゃれたジャケットである。

もうあまり時間がない。午後に聴いたハロルド・ランドの話しが出たので・・・僕はcontemporary盤から1曲、Yoさんにリクエストをした。Curtis_vol1_mono_1
Curtis Counce/Land Slide(contemporay) time after time ランドのバラードは実にいい。Curtis_vol1_stereo_1

                                                            

<あれれ?見慣れたはずのこの盤・・・何か変だぞ?右側のモノラル盤は左右が逆になっているのだ。2点ともYoさん手持ち盤>

コンテンポラリー盤がしなやかに鳴る。この場で鳴るこのレコードは幸せであろう(笑) そしてそのサウンドを聴く僕らも、また幸せなのだ

もう夜も遅い。まだ明日の神戸があるのだ。そこで、前夜に大阪入りしていたRoxanさんが、この日、仕入れてきたというレスターヤングを聴かせてもらうことにな った。Verve-Clefシリーズ(黒トランペット)の Lester Young/Lester Swings Again(verve) だ。曲は・・・stardust。
これが実によかった・・・。レスターとしては晩年の、何かこう全てを悟ったような・・・というかガツガツしない諦観の漂う、気品のあるスターダストであった。この盤を見て、Yoさんが取り出してきたのは、同じレスターのNorgran盤。ジャケットは違うが・・・曲名を見ると同じ内容の盤である。
こちらもかけてみる。レスターのサックスを少し聴くやいなや「う~ん」・・・と唸るRoxanさん。「黒トランペット」は、盤質も良く充分に生き生きとしたいいテナーの音だった。一方、Norgran盤は、ややカッティングレベルが低く、盤質も「黒トランペット」に比べれば良くはない。
しかしながら・・・このNorgran盤では・・・レスターテナーの音によりいっそうの生々しさ、レスターの気配がより濃厚に漂っているように聞こえた。
いずれにしても・・・本当にいい「スター・ダスト」でした。
僕は、この1952年のレスターヤングを全くの初めて耳にしたのだが、レスターヤングの淡々としながらも、時に「はっ!」とするような鋭いトーンに、
新鮮な驚きを覚えた。レスター・ヤングも、これから聴きたいテナーだな・・・と思うのであった。The_president_1

この「しみじみ盤」を聴いて・・・いよいよこの会を終わろう、そんな雰囲気が漂い・・・午前中から始まったYoさん宅での「ジャズ聴き会」は、こうして、ついに終わったのだった。
それにしても・・・ジャズは厭きない。

<左:レスターの垂涎的norgran盤。う~ん・・(笑)>

special thanks to Yoさん&BOSEさん!

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2006年6月29日 (木)

<やったあレコ 第6回> Urbie Green /All About Urbie Green and his big band(ABC-137)

Bcw_001_4

ABC Paramount 盤が好きだ~

みなさんは、30cmLPというものを、どんな風に手に持つだろうか?たぶん・・・レコードの外周の部分を両の掌(てのひら)で軽く圧迫して、
あのけっこうな大きさの円盤を支えているのだと思う。あまり一般的とは言えないかもしれないが、その30cm円盤の外周の部分が細かい
ギザギザ仕様になっている盤がある。こういう盤を持つと・・・そのギザギザが両の掌に小気味よくグリップして、なかなかいい感じなのだ。Bc12
ビリーテイラーを集めていた時に、いくつかのABC Paramount 盤を入手した。そしてその内の何枚かが「ギザギザ」していたのだ。
2年ほど前だったか、モアさんの掲示板にてABC盤が話題になった時、「ABC盤のギザギザの外周部分が好きだ」~その時は、notched edge という名前を勝手につけたのだが~
というようなことを書いたら、何人かの方が反応してくれて・・・あの「ギザギザ」がどんな工程で造られたのか? なぜもっと一般化しなかったのか?
というようなおもしろいやりとりになった。その時、当時の常連だったSKさんが(だったか?)あのギザギザ仕様のことを「ギザ・エッジ」と呼んだのだった。
それ以来、僕もあの「外周ギザギザ盤」のことを「ギザ・エッジ」と呼ぶことにしている。もっとも・・・自分がたまにコメントなどで使う以外には、
なかなか目にすることもないのだが(笑)

Bc_007 ABC盤の内袋~運がいいと、たまにはオリジナルのinner sleeve に盤が収まっていることがある。僕などは大体にして、古い盤のジャケットデザインやら
センターラベルそのものが嫌いではないので、「オリジナル内袋」がついてくると・・・すごく嬉しいのだ。そしてその内袋がカラーだったりすると・・・かなり喜ぶ(笑)
なにしろ当時のカラー内袋はキレイなのだ。Fantasy, Capitol, そして・・・ABC Paramount などでに「カラー内袋」が多いようだ。
こういうのを見てると、どの盤も欲しくなってしまう。そんな具合に内袋のジャケットに惹かれて入手した盤がいくつかある。Bc_003
Creed Taylor の Lonely Town は、そのタイトルとおりにいかにも寂しそうな雰囲気のジャケットがなかなかいい味わいである。
クリード・テイラーの演奏は・・・あまり印象に残ってない(笑)

コンガのキャンディードの盤もいくつか出ているようだ。僕は2枚入手した。キャンディドのファンというわけではないのだが・・・どちらの盤にも、アル・コーンがフューチャーされているのでけっこう気に入っている。ただし、ジャケットデザインはABCにしては・・・あまり品のいい感じとは言えないかもしれない(笑) <写真は一番下です>

ちょっと話しが脱線したが・・・本来は、ABC盤には~かなり地味ではあるけれど聴くほどに味わいが出てくる・・・そんな感じの、内容のいい盤が多い。
モノラルのちょっとこもったような感じだが落ち着いた感じの乾いた音質・・・それでいて仄かに温かみを感じられるような音質も悪くない。
アート・ファーマーやアービー・グリーンなどいいのがいっぱいあるが・・・とりあえずこの1枚を選 。

Urbie Green /All About Urbie Green(ABC 137)だ。
この人のボントロの音色の・・・柔らかさ・木目細やかさには・・・まったく独特な味わいがある。その音色に浸るだけで、それは快感でもある。
マイルスのMiles Ahead でも演奏されていた Springsville がすごく好きだ。作曲者は、John Carisi という人だ。マイルスのトラックでもそうだったが、
このCarisiという人の曲には、なんとも言えない「寂しさ」のような感覚がある。ちょっとメランコリックな雰囲気でもあり・・・何度か聴いていると・・・ますますあのメロディが心に残ってくるようなのだ。
グリーンの録音は1956年の8月23日となっている。マイルスのMilese Ahead 収録の Springsville は、1957年の5月である。
ひょっとしたら・・・マイルスは(おそらく発売されたばかりの)この Urbie GreenのABC盤を聴いたのではないだろうか?そうして・・・この曲を気に入り、ギル・エヴァンスに相談して、じっくりと・・・練りに練って・・・あの 素晴らしい Springsville を創り上げたのではないのだろうか? そんな風な
推測もしてしまうほど・・・このUrbie Green の Springsville も素晴らしい。Bc_002
なおJohn Carisi は、このLPのチーフ・アレンジャーとしてクレジットされていて、あと2曲、Carisiの自作曲も入っている。裏ジャケには
Carisiの写真も載っているくらいだから・・・この当時、注目されていた作曲家には違いないだろう。
このレコード、モノラルだが、トロンボーンが太めの大きな音量で~それでいてソフトな味わい~入っていてすごくいい録音だと思う。
演奏曲も、stella by starlight, cherokee, round midnight などいいスタンダードも演っている。曲によって、「はっ!とするような」見事なアルトが聞こえてくると・・・それは、ハル・マクージックなのである。演奏もいい、録音もいい、そしてこの「緑のグリーン!」もいいジャケットに見えてくる・・・全く素晴らしいレコードなのだ。

もう少し、ABC Paramount 盤についてのおもしろ話しを・・・。
ABC盤のABCSナンバー(ステレオ盤)の一部のタイトルに 「test tone入り」という盤があることが判ってきた。
67camperさんのブログに、ビリー・テイラーのABC盤が載った時に、
この「ピ~ッ音」のことがコメントされた。その同じ「ピ~ッ音」を僕は聞いたことがあった。ああ・・・あの盤だ!
この test toneとは一体何?・・・と思った方は、それを聞いたことがないことを・・・「ささやかな幸運」と知るべきである。
それほどに・・・酷いのだ(笑)
B面最後の曲が終わると・・・突如「ピ~~~~ッ!」という甲高い音が、かなりの音量で鳴る。
それまで「いいジャズ」を聴いてきていい気分になってるところに・・・この「ピ~ッ!」なのだ。
しかもこれがけっこう長く5秒くらいは鳴っているのだ。もう・・・シラけることおびただしい(笑)
その「音」が入っている僕の手持ち盤は・・・
Bc_006  Scott ”South Pacific Jazz"(ABCS-235) である。
このステレオ盤のジャケット裏の曲名表記すぐ下に、こんな解説があった。
<The final band on side two of this recording contains a test tone.This has been included as a convenience
for balancing your speakers. When the tone appears to be comeing from the center area,
rather than from either speaker, then your set is in proper balance.>
わざわざ「スピーカーのバランスを取るのに便利なように、(これまでも)付けてきた」とある。
has been・・・ということは、過去、何枚かに渡って続けてきた・・・というニュアンスだろう。
余計なお世話というかなんというか・・・。ステレオ盤初期の時代、ということなんだろう。

こんな「test tone」が、どの番号まで付いたのか?本当にステレオ盤のみに付いたのか?などの疑問が、当然のことながら湧いてくる。
67camperさんと僕は、それぞれの手持ちのABC盤をチェックにかかった(笑)

僕の方~ビリー・テイラー、オスカー・ペティフォード、クインシー・ジョーンズ、アービー・グリーン、ジョー・プーマ、ズート・シムスなど手持ちのABC盤は、
ほとんどがモノラルばかりなのだった。録音の古いものをメインに聴いているので、自ずとモノラル盤が増えてくるようだが・・・それにしても、
ABC盤にはステレオ・プレスが少ないのかもしれない。
67camperさんの手持ちの方も、やはり前期の番号のものにはステレオ盤はあまりないようだった。
そして、後期番号(イーディー・ゴーメなど)ならステレオ盤はけっこうあるが、それら後期の盤にはどれも「ピ~音はなし」
とのことであった。

ABCの場合、ステレオ盤のプレス枚数が極端に少ない、とかの事情で、共通ジャケットに「ステレオ・シール」だけ貼っていたのかもしれない。
そういえば、67camperさんのステレオ盤(ビリー・テイラー)も僕のステレオ盤(トニー・スコット)も共に「ジャケにステレオシール仕様」だ。
Tony Scott の方は・・・ジャケット右上の辺りに「ステレオ盤のシール」が貼ってある(写真参照)
この扇のような半円型というシールの形状も、67camperさんのステレオ盤のもの(楕円型)とは違うデザインだった。

そんな風なコメントをやりとりするうちに・・・
やはり<ステレオ盤の、ある番号までは「ピ~音付き」、ある番号からは「ピ~音なし」>というごく常識的な結論に至った・・・はずであったが、
 camperさんの New Billy Taylor Trio 226番と、僕のTony Scott 235番の 間の番号のステレオ盤:Don Elliot(ABCS228)
「ピ~音なし」という症例も見つかってしまったのだ。仮説が正しければ「ぴ~音付き」のはずだ・・・。こうなると・・・もう判らない。
意気込んで始めたtest tone...その後も続かなかったところを考えると・・・やはり相当に評判が悪かったのだろう。
そんなだから、途中の段階で、付けたり付けなかったり・・・と迷走していたのかもしれない(笑)
(詳しくは・・・67camperさんのブログとそのコメントをぜひお読み下さい)

「ピ~音」のことも「ステレオ・シール形状」のことも・・・いろんなサンプルを探っていけば・・・「~番あたりから「ピ~音あり/なし」、~番あたりからは「半円形型・ステレオシール」など、やはり、「レコード番号順」での
ある種の整合性みたいな事実が浮き上がってくることだろう。

ABC Paramount 盤の情報を~どんなものでもanything OKですよ(笑)~ぜひ「コメント欄」にてお寄せ下さい。
もっともこんな瑣末なことに興味を持つ人間がどれくらいいるのか?・・・はなはだ疑問ではある(笑)

Bc_004Bc_005

《このcandido、ABCにはもう1枚あるようだ。volcanoというタイトルで、そのジャケットは・・・見ない方がいいかもしれない。溶岩が流れ出るおどろおどろしい光景を背景にして、やはりコンガを叩いている~というジャケットだったはずだ。まるで火山噴火アクション映画の宣伝写真のようなノリなのだ。でも・・・もし入手できたら、またお見せします(笑)》

それにしても・・・ジャズレコードの世界は・・・まったく・・・底なしだあ!

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2005年8月21日 (日)

<ジャズ雑感 第4回> The Birdland Stars On Tour (RCA victor)

つい揃えたくなるvol.1とvol.2~アル・コーンというテナー奏者。

50年代のジャズレコードには、vol.1、vol.2 というシリーズものが、けっこうあるようだ。たいていジャケが同じで色違い、あるいは似たデザインのジャケで一対になっていることが多い。僕は・・・このシリーズものに弱い(笑) オスカー・ピータースンのEP盤(Clef)など、色違いで5タイトルは、あるらしい。運よく(いや、悪くか)1枚でも入手したら・・・絶対に残りが欲しくなるようにできている。ずるいレコード会社め。(笑) そんなシリーズ物~揃いのものも不揃いのものも~気に入っているやつを、何枚か紹介したい。

Manny Albam/The Jazz Greats Of Our Time vol.1(coral)  これは、けっこう音がいい。8月1日の「ジョー・バートン」で書いたMCA幻のLP選集からも洩れていたはずだ。(後に紙ジャケCD化はされた)
Many Albamは、TV・映画でも有名なアレンジャーだ。この手のビッグ・スモールコンボ(あるいは・・・スモール・ビッグバンドというべきか:笑)は、いいソロイストが入っているかどうかがポイントだ。そして、この「~Our Time」は、パーソネルがいい。以下、7人の管奏者とピアノ・ベース・ドラムスのテンテットだ。050801
Gerry Mulligan
Al Cohn
Zoot Sims
Phil Woods
Bob Brookmeyer
Nick Travis
Art Farmer
なかなか粒揃いのミュージシャンばかりではないか。Coralは相当の予算をかけたのだろう。その証拠に・・・ジャケには12コマの写真~個々のミュージシャンの演奏中アップ写真(tpのニック・トラヴィス以外)~を配し、「ご覧のとおりの豪華なミュージシャンですよ」とアピールをしているのだ。実際・・・どの人のソロもいい。シムスはもちろんのこと、アル・コーンも全然負けてないし、またこういう場面でのフィル・ウッズというのは、これまたいいソロをとるのだ。張り切り具合がいい加減(ちょうどいい、という意味です:笑)に出るようだ。マニーアルバムという人を知らなかったとしても、このての盤は、パーソネルで中り(あた)をつければ、大丈夫です。好みのミュージシャンが、何人かでも入っていればいいのです(笑) 僕自身、アル・コーンを好きになってきたのは、まだこの7~8年くらいで、きっかけは・・・スタン・ゲッツも何かの盤で取り上げている<オー・ムーア>という素晴らしい曲の作者が、このアル・コーンと知って、それで、もうぐ~んと興味が湧いたのだ。枯れたような味わいの音色を持つ、いいテナーです。こういう職人的な味わいのミュージシャンを好きになると、もうこれは、ある意味、大変です(笑) こういうタイプの人は、サブで参加しているような渋い盤が、あまた存在するので、欲しい盤が一挙に拡がってしまうようです。

そのアル・コーンが大活躍する盤がある。 050801

The Birdland Stars On Tour (RCA victor)vol.1 LPM-1327 と vol.2 1328 である。パーソネルは・・・Al Cohn、 Conte Candoli、 Phil Woods、Kenny Durham(ジャケには、DorhamではなくDurhamと表記されている) John Simmons、 Kenny Clark、 Hank Jones。 この盤もいいメンツである。ず~っと欲しかったのだが、なかなか日本盤が出なかったはずだ。1年ほど前だったか、ようやく揃いで入手した。2枚とも、ジャケの左上には、「変な鳥がサックスを吹いているイラストとBirdland Series」というロゴが入っている。ジャケ右下のRCA Printed in USAのRCAの前にはCマーク(〇印で囲まれた)が付いている。レコード番号も連番になっているので、端(はな)から2枚分を発売する意図だったのかもしれない。1956年のライブの録音~モノラルということで、音質はそれほどいいとは感じないが、そんなことより演奏がいいのだ。アレンジの仕事が多そうなアル・コーンも、ここではソロをふんだんにとっており、ふくゆかなコーンの音色をたっぷりと味わえる。コンテ・カンドリやフィル・ウッズの張りのあるソロも聞かれる。この2枚は・・・機会があったら、ぜひ聴いてみて下さい。

さて、もう一対。こちらもRCA系だが、Vikレーベルから出た2枚だ。
Birdland Dream Band vol.1 (Vik) LX-1070
Birdland Dream Band vol.2 (Vik) LX-1077

DSCN0814 何年か前に、BMGから復刻LPで出たはずだ。これは、メイナード・ファーガスンのリーダーアルバムと言えるのかもしれない。というのは・・・正確に言うと、僕の手持ち盤の LX-1070の方には、「vol.1」と表記されてないのだが、1077の方には、Maynard Fergusonという名前と volume2 が表記されているのだ。よくあるケースだが、1070を発売したら、案外に好評だったんで、残りテープを集めて「vol.2」として発売したのかもしれない。その際、ファーガスン名義とした方がより売れるだろう、ということだったのでは、と思う。この2枚は、もちろん同じVikレーベルだが、微妙にジャケやセンターラベルの形式が違うのだ。共に、ジャケ右下に小さくRCA printed in USA とあるのだが、1070の方には、RCAのすぐ前に、「Cマーク」が付いている。そうして、1077(vol.2)の方には、RCAの前に何もない。センターラベルについても・・・Vikという字体、ラベル色などは、全く同一だが、LX-1070の方は、ラベルに印刷された同じレコード番号のすぐ下にA面(G4JP-7605)、B面(G4JP-7606)と表記されており、vol.2には、LX-1077という番号の下には何もない。 一般的に言って、CマークとかRマーク(なんらかの商標)が付くほど、時代が「新しい」はずだ。だから、僕の手持ち2枚は、1077(vol.2)のCマークなしが、オリジナルVikで、1070が、後年の再発Vikかもしれない。
この2枚は、完全にビッグバンドの編成で、vol.1の方は以下~
トランペット~4人(ファーガスン、ニック・トラヴィス、他2人)
トロンボーン~2人(ジミー・クリーブランド、エディ・バートかソニー・ルッソ)
サックス~4人(アル・コーン、バド・ジョンソン、ハーブ・ゲラー、アーニー・ウイルキンス)
これに、ハンク・ジョーンズ(p),ミルト・ヒントン(b)、ジミー・キャンベル(ds) というリズムだ。さすがに、ドリームバンドというだけのことはある。アレンジャーにもビル・ホルマン、マーティー・ペイチ、マニー・アルバムなど起用したようだ。バンドのサウンド・・・これはもう「張り切ったビッグ・バンド」だ。ファーガスンの「キンキン」の高音トランペットには、本能的にバンドメンを煽る(あお)機能があるみたい(笑)で、全体にすごくハイ・テンションな感じだ。だから・・・ところどころに出てくるトロンボーンの、ちょっと「緩い音色」~多分、ジミー・クリーブランド~や、テナーのアル・コーンのソロに、「ほ~っ」とするのは、僕だけだろうか(笑) でも、ファーガスン・・・たまに聴くとスカッとしますね。56年のこの頃からかなり有名だったわけで、ちょっと後の60年代初期のルーレット時代にも、とてもいいバンドを組んでいる。ファーガスンて、けっこうバンドのバランスを考えてるようで、サックスセクションにいいソロイストを配置してるようだ。ルーレット盤では、ジョー・ファレルが大活躍している。ああ、話しが脱線してきたぞ・・・このルーレット盤については、また別の機会に書きます。

さて、この「バードランド・ドリームバンド」。このバンド名からも、つい「バードランド」でのライブ録音かと勘違いしていたのだが、今、よくジャケ裏を見ると・・・「メイナード・ファーガスン指揮で、1956年9月7日、11日に、ウエブスターホール&スタジオ2で録音」と書かれているのだ! そういえば、拍手などどこにも聞かれない。それにしても、ジャケットの写真がバードランドでの演奏中のものなので、(あの「ステージ後ろのカーテン飾り」で、それと判る)ライブ盤だと錯覚してしまうのも無理はないなあ。ここでも・・・「ずるいレコード会社め」だ(笑) なお、vol.2は、56年9月24日、25日録音となっており、パーソネルも若干だが、変更している。

ちょっと余談だが・・・この頃のジャズのひとつのカテゴリーとして「東海岸の白人ジャズ」がある。この言葉は、僕の知る限り・・・ジャズ批評などにもたびたび登場する「吉岡祐介」という評論家が、言い始めた言葉(概念)のはずだ。イースト=黒人、ウエスト=白人 という単純な図式で語られることの多いジャズのスタイル(便宜上、分けるとき)に~いや、それだけじゃ無理だ。
実際には、「東海岸の白人ジャズ」みたいなカテゴリーが存在しているぞ~というような主張だったはずだ。(記憶が定かではないが、多分・・・ジャズ批評の「ウエストコースト・ジャズ」の特集号に掲載されていると思う)*[その後、吉岡氏ご本人からコメントを頂き、この記事はジャズ批評「ジャズ・50年代」に収録されているとのことです。興味の湧いた方はぜひ!]     どういうわけか・・・この「吉岡説」は、あまり広まらないようだが、僕はこの主張を全面的に支持したい。というのは・・・僕自身、昔はあまり興味のなかったハル・マクージックやアル・コーンらの演奏を、主にCoral系のレコードで、愛聴するようになってから、いわゆるウエストコーストとはちょっと肌合いの違うクールさ~ウエストものほど「カラッ」としてない~そんなものを意識し、またその雰囲気を嫌いじゃないぞ、ということを自覚してきた頃に、ちょうどこの「吉岡説」を読んだので、ピタリと合点がいったからなのだ。

先に「あるカテゴリー」のスタイルやら特徴を意識して聴くのではなく、偶然に聴いたレコードで、あるミュージシャンを意識し始め、その周辺を聴き込んでいったら・・・どうやらそれが「~と呼ばれるカテゴリー」だった、という流れでジャズを聴けること。僕はそれをとてもシアワセなことだと思う。カテゴリーというのは、便宜上、説明するのに、後付で考えた言葉(概念)であり、それ自体にとらわれて、「これは、~というカテゴリーだからいいんだ」なんてことはやはり・・・むなしい。やっぱり・・・まずは、「人」だと思う。ある「人」に興味を覚え、だからいろいろ聴いてみて、そうして「その人の個性」を好きになる(あるいは・・・嫌いになる)というようなことが、それを聴く本人にとって、意味があるのだ、と思う。(もちろん、どんなミュージシャンを好きになるかは、全く自由なわけだし) それにしても・・・ジャズの世界には、いろんな個性がある。ありすぎる(笑)  そして・・・やっぱりジャズは、やめられない。

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