ビル・エヴァンス

2008年2月 3日 (日)

<ジャケレコ 第1回> Deccaの動物ジャケ

この「夢見るレコード」・・・タイトル部分に<旅レコ>とか<思いレコ>、あるいは「発掘レコ」など、ごちゃごちゃと説明が多いかと思う(笑)
これらはブログを始めた頃、いろんな切り口からいろんなレコードを取り上げてみたい・・・と構想していた、その名残りである。当初、「旅レコ」では、旅先で買ったレコードの全てを記録しよう・・・また「発掘もの」としては、リサイクル屋での格闘ぶりを書きたい・・・などと思っていたのだが、そうそう「旅」や「発掘」のストーリーがあるわけもない。もしあったとしても、そうすると「旅レコ」は、全く僕個人の「購入レコードリスト」になってしまうし、「発掘レコ」に登場するレコードは、歌謡曲のシングル盤ばかりになってしまう(笑)
もちろん、タイトル部分に「ジャズから昭和歌謡まで」とも書いてあるように、当初は「ジャズ」だけに拘(こだわ)るつもりもなかったのだが、何回か話しを書き進めているうちに・・・やはり「ジャズ」を主軸でやっていきたい気持ちが強くなってきたようで・・・だから最近は、特に切り口を特定しない<ジャズ雑感>での更新回数が多くなっている。実際、僕が何を書いたとしても、それは「ジャズに関する何らかの感想」でもあるわけだし、もともと、どんなレコードやテーマを取り上げたにしても、僕の書く文章の中身(質感)にそれほどの違いがあるわけでもない。であれば、「思いレコ」やら「やったあレコ」などと、ヘタに切り口を分けずに、単に<夢見るレコード 第~回 ~>の方が、よほどすっきりするようにも思うのだが、このブログを始めた直接の動機にもなった<旅レコ>という名前そのものに若干の愛着もあったりするので・・・当分は、やはりこのままでやっていこう。瑣末なことで、いろいろ迷う自分である(笑)

そんなことを思いながら、タイトル部分を眺めていたら・・・これまでに全く登場していない切り口があることに気がついた。
<ジャケレコ>である。自分で書いた説明では『<ジャケレコ>とにかくジャケットがいいレコード』となっている。
う~ん・・・なぜ<ジャケレコ>が一度も登場してこなかったんだろう? たぶん・・・それは僕の妙な拘りのせいだ。つまり・・・何らかのレコードを、わざわざ<ジャケレコ>として取り上げるのも、なんだか大げさな感じだし、それよりも自分の好みのジャケットのレコードを見せることで「なんだ、あいつ、こんなセンスのないジャケットが好みなのか・・・」などとも思われそうでもあるし・・・というような気持ちである。それならそんなテーマを作らなければいいのに(笑)まあそれでもせっかく作った「切り口」だし、実際、音の中身を知らなくても「ジャケット」を気に入って入手したレコードもあるのだ。だから、これからはそんな変な自意識は捨てて(笑)自分が「ちょっと気に入ったジャケット」のレコードを、気楽に取り上げていこうと思うのである。そして・・・この<ジャケレコ>での記事は、あくまで「ジャケット」が主役なので、レコードの中身には、それほど踏み込めないかもしれない。だから・・・わりと短めになるかと思います(笑)

さて、記念すべき<ジャケレコ>の第1回は「デッカの動物ジャケ」でいこう。他のレーベルでも、動物を使ったジャケットは、けっこう見かけるのだが、僕には、この「デッカの動物シリーズ」が、なんとなく気になったのである。そうして、気になるデッカ盤をいくつか連ねてみると・・・どうやら「シリーズ」になっているようなのだ。こうなると・・・もちろん揃えたくなる(笑)本当を言うと・・・シリーズを全部揃えてから記事にしたいところだが、それだといつまで経っても記事にできない(笑)中途ハンパなコレクターの僕としては、不揃いであっても、こうして載せてしまうのである(笑)

最初にこの「動物」を意識したのは・・・「鳥」だった。首が細くて、やけに長いのだが、その割りに頭と胴体は大きめだ。その鳥が、羽を大きく羽ばたかせて空中を飛んでいる映像が、ジャケット一杯に広がっている。その不安定なバランスに見えるフラミンゴのような鳥が、見事にゆったりと宙に浮いているような感じがあって、不思議に印象に残るジャケット・・・あれはたしか、ギターのバリー・ガルブレイスのレコードだった。しかしながら、この「鳥ジャケ」・・・強く印象に残っているのだが、国内盤でさえ未入手なのである(笑)

このシリーズ・・・大体、以下の「動物」がジャケットを飾っていると思う。
「犬」
「猫」
「猿」
「ペンギン」
「ヤマネコ」
「フラミンゴ」

Evans_2 僕が最初に入手したのは・・・「犬」だった。ビル・エヴァンス入りのあの盤~Don ElliotのThe Mello Sound(decca:DL9208)である。このレコードについては、拙ブログ<やったあレコ 第1回> ドン・エリオット/メロウ・サウンド(Decca)を、ご覧下さい。
いずれにしても・・・この盤などは、ビル・エヴァンスのマニア以外には、面白くもなんともないレコードだろう(笑)

次に「猿」。こちらも・・・またある意味、マニアックなレコードかもしれない。ジョン・ピサーノという地味なギタリストと、ビリー・ビーンという、これまたあまり名前を聞かないギタリストの共演アルバム~Maikin' Itである。Photo_5
ピサーノについては・・・ビル・パーキンスの「ジョニー・マンデル集」とでも呼ぶべき Quietly There(abc riverside)
においての「生ギターのしっとりした感じ」をとても気に入っていた。Photo_8

ちなみに、このジョン・ピサーノ氏は、現在も西海岸で活躍中らしい。 

004 ビリー・ビーンの方は、バド・シャンクのパシフィック盤(slippery when wet)での「クールで切れのいい音色」がちょっと気になっていた。割と知られているであろうレコードでは、ピアノのWalter Norris のThe Trio(riverside)にも参加していたギタリストでもある。

私見だが、この2人・・・両者とも、ギターのピッチ(音程)が凄くいいように思う。とても趣味のいいギタリストだ。002
だから、全く未知だったこのレコード:Johnny Pisano, Billy Bean/Maikin' It (Guitar Duets)を発見した時は、そのマニアックさに電流が走った。「あの2人のデュオだって!」 しかもジャケットが・・・変な「猿」である(笑)
ところで、<ジャケレコ>ではあまり内容には触れない・・・とは言ったものの、このマニアックなギター・デュオ盤の中身はというと・・・A面1曲目~ill wind から、いきなり「弦楽」の音が聞こえてきて、少々がっくりする(笑)がっくりはするが、「弦入り」は3曲だけなので我慢して聴くと、他にも「管部隊」入りが2曲あり、全体に「アレンジされたジャズ」の感じがあって、あまりジャズ的に楽しめる内容ではないなあ・・・と思う。
しかし、もちろんいいテイクもある。when I fall in love では、スロウバラードでの2人のギターをじっくりと味わえる。音色が柔らかくて丸みのある方がピサーノだと思う。この人の生ギターは本当に温かい感じがする。
the song is you は2人のギターにベースだけのトリオ編成だ。わりと急速調を軽くスイングしていて、とてもいい感じだ。
このレコード・・・あまりアレンジに凝らずに、もっと小編成を中心にまとめていれば、もの凄くいいレコードになったのに・・・という気持ちになってしまう。でも・・・こんな渋いレコードを造ってしまったDeccaというレーベルもなかなか懐が深いと思う。

そして「動物シリーズ」の中では、最も知られているであろうと思うジャケットが、これだ。
Photo_2 エリス・ラーキンスの「猫」である。真っ赤をバックに気位の高そうな2匹の猫が、何やら上の方を見つめている。
このピアノトリオ盤は・・・なかなか聴かせる。実は、エラのレコードをあまり持ってないので、ラーキンスという人をほとんど聴いていないのだが、この人の力まないタッチは・・・やはり唄伴の名手でもあるジミー・ロウルズに、ちょっと似ているような印象を受けた。
そんなラーキンスの品のいいタッチが、そういえば・・・ジャケットを飾る品のいい猫とよくマッチしている・・・とも言えそうだ(笑)その証拠にタイトルもThe Soft Touchだ(笑)

Photo_4

もう1枚の「犬」~こちらはなかなか躍動的なジャケットである。小柄な犬が思い切りジャンプして、高跳びの棒を跳び越えようとした、その瞬間を捉えたショットのようだ。
タイトルは Piano A La Mode。
バーナード・ペイファー・・・このピアニストもあまり聴いてない。emarcyから出ている Bernie's TunesというLP国内盤を持っているが、あまり印象に残ってないのだ。005_4 高音での切れのいいタッチ、そしてその粘りのない8分音符を聴くと・・・やはりフランスのピアニストだなあと思う。マーシャル ・ソラールと同じように、むちゃくちゃ巧いのだが、何か「引っかかり」がない。ジャズという音楽には、時として灰汁(あく)も欲しいのだ(笑)

このレコードについては、内容よりも、ちょっと興味を惹くことがあった。「内袋」である。Deccapicture_sleeve_3僕の持っている他のデッカ盤のinner sleeve(内袋)は、たいてい紙製のカラー写真入り~いわゆるad sleeve(広告スリーブ:advertisement sleeve)だったのだが、この9203番だけは「ビニール製の内袋」だったのだ。もちろん僕の下(もと)に届いたこのPiano A La Modeに入っていたこの「ビニール内袋」が、純正オリジナルの内袋なのかどうかは判らない。しかし僕の直感では・・・このレコードから中の盤を取り出すときに感じた「盤と内袋の自然な合体感」から~Deccasleeve_2これは、もちろん僕の思い込みだが:笑~この「ビニール製ad 内袋」は、この9203番の純正オリジナルだと思うのだ。 そんな風に見直してみると・・・あまり見かけないこともあってか、このチープなビニール内袋が、なにやらチャーミングなものにも見えてくる(笑) ちなみに、「広告写真」のレコードは・・・デッカの場合、何が何でも「サッチモ」なのである(笑)  

並べてみて気がついたのだが、この4枚・・・どのジャケットにも左上に 《MOOD JAZZ IN HI FI》という表記がある。そしてレコード番号は、どれも9200番台だ。やはり・・・これは「動物シリーズ」だったのだ!
そう思って、裏ジャケットをしっかり見てみれば・・・introducing the J 9200 seriesとして、この9200番台の9200から9208までの全9タイトルのリストが載っているではないか。003_2そしてちょっと不思議なことが・・・というのは、普通、こういうシリーズものは番号順に発売されていくので、例えば9200番など始めの頃ものには、そのシリーズの全タイトルは表記されずに、逆に、例えば終わり頃の9208盤には、それより以前の全てのタイトルが表記されているのだろう~と思ったのだが、僕の持っている4枚、どの盤にも全9タイトルが表記されていたのだ。そしてよりよくチェックしてみると・・・正確には「全9タイトル」ではなくて、どの裏ジャケにも「その盤のナンバーを除く全8タイトル」がリストされているのだった。この辺り、丁寧な仕事だと思う。
ひょっとしたら・・・この全9タイトルは、同時に~あるいは短期間の内に~発売されたのかもしれない。

(青字が持っている盤)
DL 9200 Barry Garbraith/ Guitar And The Wind
DL 9201 Earl Grant/ MIdnight Earl
DL 9202 Fred Katz/Soul Cello
DL 9203 Bernard Peiffer/Piano A La Mode
DL 9204 Toots Thielmans/Time Out For Toots
DL 9205 Ellis Larkins/The Soft Touch
DL 9206 Johnny Pisano, Billy Bean/Maikin' It
DL 9207 Ralph Burns/Very Warm For Jazz
DL 9208 Don Elliot/The Mello Sound

そして・・・この動物シリーズは、どうやらこの9枚で完結しているようなのだ。というのも、この次の番号~DL 9209が、ハル・マクージックの「クロス・セクション」という、割と有名なレコードで、ジャケットはたくさんの「管楽器たち」のやつだ。ちなみにその「クロス・セクション」には、ビル・エヴァンスが参加している。

そういえば・・・この「動物シリーズ」には、痛恨の1枚がある。トゥーツ・シールマンズの一枚、あれは確か・・・「ヤマネコ」みたいなジャケットだったかな? この「ヤマネコ」には、大阪の日本橋(ニッポンバシ)にある中古レコード店で、一度だけ遭遇したことがある。シールマンズ絡みで前から探していた盤だったし、価格も3000円台だったので「やったあ!」と、ほとんど買いかけたのだが・・・「傷あり」の表示が気になり、カウンターでチェックさせてもらうと、片面の半分ほどにスリキズが走っており、しかもそれが割と深そうなスリキズで、どうにもノイズが出そうだったので・・・涙を呑んで見送ったのだ。そういう時、僕は「いい方」に考える。「すぐにまた見つかるだろう」・・・しかしあの「ヤマネコ」、あれ以来、ネットでさえ見かけないのだ。どこへ行ってしまったのだろうか・・・あの「ヤマネコ」君は(笑)
そして、これはうんと後から判ったことなのだが、この「ヤマネコ」に、なんとベースのウイルバー・ウエアが参加していたのである。う~ん・・・あの時、それさえ知っていれば、多少はコンディションが悪くても入手していたのに・・・。痛恨の1枚である。
そうして僕は、さっそく拙ブログの「ウイルバー・ウエアのディスコグラフィ」の項~<思いレコ 第12回> Ernie Henry/Presenting(riverside)に、いつ入手できるかも判らない、このレコードのタイトルを付け加えた(笑)*補筆1.~この後、DL 9204 Toots Thielmans/Time Out For Tootsを入手したところ、ベースはダグ・ワトキンスであることが判明しました。残念ながら、「ウエア参加」は全くの間違いでした。ウエアのディスコグラフィの方も訂正しました。残念である。
*補筆2.~このシールマンズのジャケットを、僕は「ヤマネコ」と書いたが、それは完璧に僕の思い違いでした。ブログ仲間の67camperさんが、コメントで知らせてくれたように、「犬」(ボクサー?)でした。その愛嬌あるジャケットは、67camperさんのブログでどうぞ。   
special thanks to Mr.67camperさん! 

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2007年10月21日 (日)

<ジャズ雑感 第21回> Wally Heiderというエンジニアのこと。

好きなライブ盤をいくつか挙げると・・・ハイダー録音ばかりじゃないか!

 

 

 

《追補》~コメントからの転載を追加しました。それから、この記事の最後に「ハイダー録音盤のリスト」を追加しました。今後も書き足します(10/28)


前々回のミッシェル・ルグラン記事の時だったか・・・「アット・シェリーズ・マンホール」での録音が素晴らしい、と書いた。特にレイ・ブラウンのベース音がよかったのだ。ブラウンという名手が弾くウッドベースの自然で豊かな音量が、膨らみすぎないギリギリのバランスで捉えられていたのだ。もう1枚~カル・ジェイダーの「アット・ブラック・ホーク」でも、やはりウッドベースがいい按配で録られているのを思い出し、そのクレジットを見ると・・・どちらのレコードもエンジニアはWally Heider(ワリー・ハイダー)という人だった。その記事へ頂いたSugarさんからのコメントによると、「ハイダー氏は、録音機材を積んだトレーラー(クルマ)を持っていて、当時の西海岸でのライブ録音の多くをてがけていた」ということだ。 (SugarさんのHPはこちら)(Sugarさんが以前にハイダー氏について書かれた記事はこちら)
その後、西海岸でのライブ盤を聴いていて「これは音がいいなあ・・・」と感じたら、必ずクレジットをチェックするようになった。そうして・・・いくつかの「ハイダー録音」を発見した。001

 

ところで「シェリーズ・マンホール」というと・・・皆さんもすぐに思い出すレコードがあると思う。僕もすぐにビル・エヴァンスのAt Shelly's Mannne-Holeを連想した。このレコード、僕は国内盤しか持っていない。ビクターが1977年に発売したSMJ-6197である。エヴァンスのレコードはたくさん聴いたが、正直に言うと、僕はチャック・イスラエルのベースがあまり好きではなかったので、特にこのライブ盤を愛聴してきたわけではなかった。ところが、このレコードの別テイク集「Time Remembered」~ビクターが1983年に発売した「ジャズの巨人 未発表録音集」というシリーズ。この盤はリアルタイムで入手していた~を、1年ほど前に再聴した時に・・・そのピアノの音とベースの音に「何か」を感じた。エヴァンスのやや線の細い音色と(もちろんシェリーズ・マンホールに備え付けのピアノは、特に良い楽器ではないと思う)、ピンと張り詰めたようなタッチ感~エヴァンスというピアニストの表現したい何か・・・そんなものを、感じ取れたように思ったのだ。ライブ録音にも関わらずだ。それから、チャック・イスラエルのウッドベース・・・これにはちょっと驚いた。彼のウッドベースは・・・ぐぐっと重心の低い深い音色だったのだ。重厚で品がある音色だった。僕があまり好みでなかったのは・・・たぶん、彼のタイム感みたいなもの~絶対に突っ込んでこないビート感・・・よく言えば落ち着いているし、逆に言うとどっしりとしすぎていて、ちょっともったりしてしまう~についてだったのかもしれない。イスラエルの良さというのは、この「深い音色」にあったのか・・・。僕のベースへの好みが変わってきたためか、あるいは、1977年当時の国内盤よりも1983年の未発表音源盤の音質の方が、うんと良かったためなのか(鮮度感にかなりの差がある!ピアノの音色は瑞々しいし、ベースの音色にもより切れが感じられる))・・・いずれにしても「At Shelly's Manne-Hole」では感じ取れなかった「イスラエルの美点」を、僕はようやく理解できたのだ。002
そして同時に、この「1963年のライブ録音(の元テープの状態)は相当にいいぞ・・・」とも直感したのだ。考えてみれば、1983年に発表した1963年の未発表音源というのは、いわばその1983年発売がオリジナルなわけで~もちろんこの日本盤の少し前に(あるいは同時発売かもしれない)アメリカでも2LP(シェリーズ・マンホールとの)として発売されたものが「USオリジナル」になるとは思うが~要は、その「元テープ」の管理状態が良好であったならば、こんな風に20年後の発売であっても、瑞々しさが失われることはないのだろう。しかしこうなると・・・1963年の米オリジナル「Shelly's Manne-Hole」の音は、こりゃあ凄いんだろうな・・・と思わざるを得ない。う~ん・・・欲しい(笑)4
そんな事を想いながら、僕は何気なくこの未発表音源盤の裏ジャケットを見た・・・recording engineer~Wally Heider
という文字が飛び込んできた! お おっ・・・これもハイダー録音だったのか! この小発見は、僕には実にうれしいことだった。
ビクター日本盤「At Shelly's Manne-Hole」に限れば、の裏ジャケのどこにもHeider氏のクレジットはない。
<米オリジナル盤をお持ちの方~ぜひその音質、裏ジャケのことなどお教え下さい>
《追補》この後、NOTさんから米オリジナル盤情報を頂きましたので、コメント欄から転載します(以下、斜体字)
SHELLY'S MANNE=HOLEのライブはグリーンのORPHEUMレーベルがオリジナルです。国内盤も持っていますので聴き比べたところオリジナルの方が鮮度が高く鮮やかに聴こえるのは当然として一番違うのはbassclefさんも指摘されているようにベースの音です。国内盤のベースはエコーがかかったようなブーン・ブーンという音なのに対しオリジナルのベースの音自体は国内盤よりやや小さいものの締りのあるブン・ブンといった音です~

 

 

 

さて、もう1枚。今朝のことだ。ウエスでも聴こうか・・・と取り出したのは「フル・ハウス」(riverside)だ。

このレコードは前から大好きだった。ウエスもグリフィンもケリーも、その演奏が素晴らしいのはもちろんだが、僕の中では「ウエスのギターの音が一番いい」レコードでもあったのだ。ウエスのギターの、太さ・甘さ・タッチの切れなどが実に聴きやすい温かい音色で録られているのだ。僕には、このウエスの音が一番、自然に聞こえる。
そんなことを想いながら・・・ライブ?~ツボハウス?~西海岸? ああ・・・これはひょっとすると・・・と裏ジャケットを見ると・・・そこには誇らしげに、RECORDING ENGINEER:WALLY HEIDER とクレジットされていたのだ!
嘘のようなホントの話しである(笑)003_2

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<MW-2032~1970年頃に日本グラモフォンが発売していたリヴァーサイド「Jazz anthology」シリーズ~ラベルは茶色の環っか>

これまで「フル・ハウス」は何度も聴いてきたが、録音エンジニアまで意識したことはなかった。それに、この国内盤の裏ジャケットは写真コピーみたいで、だから活字のピントもやや甘くかなり読みにくい。相当に意識して読まなければ、気がつかなかっただろう。
それにしても、自分が「いい録音」と感じていたこの「フル・ハウス」も、ハイダー録音だったとは・・・これはもう偶然ではないだろう。まあ大げさに言ってますが、つまるところ・・・僕が「ハイダー録音」(その音質やバランス)を好きだ、というだけのことなのだろう(笑)
では、ハイダー録音の特徴とは何なのか? 音の説明は、いつでも難しいが、僕の感じる「ハイダー録音」の良さは・・・「どの楽器も自然で温かみのある音色で捉えられていること」それからやはり「ベース音の厚さ」だろうか。ライブ録音の場合、一般的には低域の薄いバランスになることも多いようで、だからドラムスばかり目立つちょっとやかましい感じになっていることもあるのだが、「ハイダー録音」だとそうではないのだ。ウッドベースの音がどっしりと入って、シンバルも強すぎない自然な音量に聞こえるので、(僕には)とても聴きやすいバランスになるのだ。「重心が低い」と言えるかもしれない。

「聴きやすいバランスのライブ録音」ということで・・・もう1枚、好きなレコードを思い出した。5_2
アート・ブレイキーの「スリー・ブラインド・マイス」(UA)だ。これまた日本盤です。キング発売の1500円盤シリーズのこの盤は、4~5年前に入手した。ちなみに、このキングのUAシリーズは、どれも音がいいように思う。

ウエイン・ショーター、フレディ・ハバード、カーティス・フラーの3管時代・・・1962年の録音なのだが、僕はこの3管になってからのブレイキーのブルーノート盤はほとんど持っていなかったので、このユナイト盤を新鮮な気持ちで聴くことができた。
A面1曲目の three blined mice はベースのイントロから始まる。
左チャンネルから、ジミー・メリットのベースが太くてしっかりとした音で流れてくる。ややあってシダー・ウオルトンのピアノが入り、次に右チャンネルからブレイキーのシンバルが聞こえてくる。曲の導入部分でもあり、ブレイキーは抑え目の音量でシンバルを叩いているようだ。そういえば、ブレイキーという人は意外に繊細なドラマーで、1曲の中でも場面によって音量を抑えたり強めたりしていることが多いのだ。「叩く」場面では、ちょっとくどいこともあるけど(笑)
そして、最初にこのレコードを聴いた時・・・ライブ盤だとは思わなかった。1曲目が終わって拍手が入り、ようやく「あれ?ライブだったのか」と判ったのだ。それくらい、しっかりとしたいい録音だと感じていたのだ。
このレコードで特に好きなのは、A面2曲目~blue moonである。全編、フレディ・ハバードをフューチャーした1曲である。裏ジャケのクレジットによると、アレンジはショーターだ。そういえばimpulse盤のBody & Soulのサウンドに似ている。ここでのハバードは素晴らしい。。ブルー・ムーンというシンプルな曲のメロディを、ちょっと崩しながら吹くだけなのだが、艶やかに鳴るトランペットの音色を、ゆったりと伸ばす音でじっくりと楽しませてくれる。僕はハバードをそれほど聴き込んではいないが、ハバードのこの「音色」は快感である。
そして、ハリウッドの「ルネサンス」というクラブで録音されたこのレコード・・・キング盤の裏ジャケにはしっかりとしたクレジットがあり、そこにはこう書かれていた。
LOCATION-THE RENAISSANCE,HOLLYWOOD
ENGINNEER-WALLY HEIDER

 

《追補》~みなさんから「ハイダー録音盤」のコメント情報を頂きました。貴重な情報ですので、それらのタイトルを以下にリストしました。今後も追加情報あれば、書き足していきます。

 

Michel Legrand/At Shelly's Manne-Hole(verve)
Cal Tjader/Saturday Night/Sunday Night At The Blackhawk(verve)
Bill Evans/Time Remembered(milestone)
Bill Evans/"Live" (verve)
Wes Montgomery/Full House(riverside)
Art Blakey/3 Blind Mice(united artists)
Milt Jackson Quintet featuring Ray Brown / That's The Way It Is (impulse)
MJQ / Live at The Lighthouse (atlantic)
Barry Harris/~ at the Jazz workshop(riverside)
Cannonball Adderley/~ at the Lighthouse(riverside)
Cannonball Adderley/Poll Winners(riverside)
Cannonball Adderley/JAZZ Workshop Revisited(riverside)
George Shearing/~ & the Montgomery Brothers(jazzland)
Oliver Nelson/Live from Los Angeles(impulse)
Archie Shepp/Live in San Francisco(impulse)
Don Randy/Last Night(verve)
Charles LLoyd/Forest Flower(atlantic) 
Charles LLoyd/Love-In(atlantic)
Charles LLoyd/Journey Within(atlantic)
Budyy Rich/Big Swing Face(pacific)
Terry Gibbs/Dream Band vol.4:Main Stem(contemporary)
Johnny Griffin/Do Nothing 'til You Hear From Me(riverside)
Carmen Mcrae/Live at Sugar Hill(time)
Dexter Gordon/Resurgence of Dexter Gordon(riverside)
Harold Land/West Coast Blues! (jazzland)
Ray Charles/ Live in Concert(ABC)
Sergio Mendes & Brasil '65 /「In Person At El MATADOR!」(Atlantic)
*Lenny Mcbrown/Eastern Lights(riverside) 1960 10月

 

<以下はCD>
Dizzy Gillespie/Live In Stereo At Chester,PA.(jazz hour)
Frank Sinatra /Live! Seattle,Washington Concert(jazz hour)
Miles Davis/Live At the 1963 Monterey Jazz Festival(MJF)

以下は、ハイダー関わり盤?~
Carmen McRae/The Great American Songbook(Atlantic)
Larry Banker Quartette/Live At Shelly's Manne-Hole(vault)~このvault盤については、クレジット確認なしです。

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2007年1月 1日 (月)

<やったあレコ 第8回>Bill Potts/The Jazz Soul Of Porgy and Bess(united artists)

いつかは、このアルバムを<夢レコ>に載せたいと思っていた。リーダーはビル・ポッツというあまり聞き慣れない名前ではあるが、もちろんビル・エヴァンス絡みの1枚としてである。

古い「ジャズ誌」を2冊だけ持っている。1975年10月号と1976年1月号なのだが、特集は「ジャズ・べースの深遠にディグする」と「ビル・エヴァンス物語」であった。1975年・・・ちょうどこの年に、僕はウッドベースを始めたのだった。それまで少しはギターには触っていたとはいえ、フレットに目印もないような楽器に、そんなに簡単に入り込めるはずもない。あのバカでかい楽器にしがみつきながら「ジャズ~っ!」と叫んでいるような毎日だった。聴く方でも日本ビクターから出始めていた多くのリヴァーサイド盤を通して、ビル・エヴァンスを、もう充分に好きになっていた。そしてもちろん・・・ラファロのことも。つまり・・・僕はジャズという世界に身も心も捧げていたのだ(笑)
そこへ、この「ジャズ・ベース特集号」・・・これは買わないわけにはいかない(笑)Dscn1571
どの記事もよかったが、特に白石誠という人の<スコット・ラファロ物語>は読み応えがあった。白石氏は相当なラファロ信者のようで、「ラファロの2拍3連」がいかに素晴らしいのか~を説明する場面では「チェンバースの貧弱な2拍3連」という過激な表現もあったりするが、僕はラファロのベースプレイに心酔していたので、そんな白石氏のラファロへの思い入れ溢れる文章には、素直に感動してしまったのだ。Dscn1572 Dscn1573_1

そして白石氏作成のラファロのディスコグラフィーも大いに役立つものだった。3ヶ月後に出た1月号もいい内容だったのですぐに入手した。この号にも白石氏作成の「ビル・エヴァンス・ディスコグラフィ」が載っていた。特にエヴァンスの初期の参加レコードのデータが貴重だった。もっともそういう初期のものは、ほとんどが入手困難だったので、音源を聴けたのは、何年も後のことだったが。どうやら僕はこの頃からdiscography というものに弱かったようだ(笑)

《Victor音源はなんとか国内盤で入手できたが、carlton,seecoなどトニー・スコット絡みの音源は、もっと後になって freshsound からの復刻で、ようやく聴けたのだった。ちなみにこのトニー・スコットのセッション~ベースはヘンリー・グライムズだ。これらの復刻LPの音源をまとめた2CD(freshsound)がとても便利だ。

Dscn1574_1 そのビル・エヴァンスのディスコグラフィで、このレコード~The Jazz Soul Of Porgy & Bessの存在を知ってはいた。それは「スカート女性の足ジャケット」(左写真の36番)だった。だいぶ後になってジャズ批評の「最後の珍盤を求めて」でも、このPorgy~が紹介されたのだが、その盤はジャズ誌に載っていた「スカート」とは違うジャケットだったのだ。対談の中身から、それが1stのオリジナル盤であること、しかもナンバー入りのlimited edition(限定盤)を知って・・・ますます欲しくなってしまったのだ。レコード好きは、limitedにも弱いようである(笑) ちなみに「珍盤コーナー」というと、捉えようによっては「コレクション自慢」にも見えるが・・・コレクションというのは、結果ではなくて「コレクトしていく」過程に価値がある~もちろんその人にとって~のだと思う。そうして、そんな風にコレクトされたレコード達とは・・・よくも悪くもその人の歴史なのだと。
だから・・・そのコレクションを知ることは「その人」を知ることでもあるのだ。人は誰かと知り合う時に・・・多少は見栄を張るものだ。だとしたら、自分の経歴の一部を見せる時に・・・少しくらい自慢気になってもいいじゃないか(笑)
そんな訳で・・・<やったあレコ>である。このレコードは7~8年前に入手した。その頃、バナナレコードという中古レコード店が「アメリカ仕入れ直売~コンバットツアー」とかいう名前で地方都市を3~4日間づつ巡業していくセールをよくやっていたのだ。僕は浜松でのセールで入手したのだ。この時のセールは、仕入れスタッフがよほどいいディーラーに当たったと見えて、他にもアンドレ・プレヴィンのcolumbia盤など状態のいいものがいっぱいあった。Dscn1528_1
最初、この薄めの黄色のジャケットを引き抜いた時・・・大げさではなく身体に電流が走った(笑)
写真では何度も見ていた、あのジャケットが目の前にあるのだ!ついに出会ったのだ!

まずはチェックだ。ゲートフォールドの分厚いジャケット。僕は丁寧に外袋をはずし、丁寧に中を開いた。おおっ・・・開いたページ左側にやはり「限定NO.~」が印字されている。実に誇らしいではないか! そして何より素晴らしいのは、その4pほどのブックレットだった。
録音中と思しき場面のミュージシャンの写真が、それもいい場面の写真が満載されていたのだ。
そして盤の方は・・・これもほぼミント状態である。この貴重盤がこのコンディション、もちろん値段の方もなかなかのものだった。しばし考える僕。「スカート」の国内盤は持っているのだ(当時の僕はダブり盤は買わない主義だった)だがしかし、本当はもう僕の心は決まっていたのだ。だってそうだろう・・・この先、どう考えても、このレコードにそうそう出会えるわけはない。だから・・・買うしかないのだ(笑)だから、この「考える」は、自分の中で「もったいぶる」ポーズだったかもしれない(笑)

Dscn1578 このPorgy & Bess・・・実は音源だけは聴いていたのだ。ジャズ誌のビル・エヴァンス特集のディスコに載っていた方の「スカート」ジャケットの方を、キング国内盤を見つけていた。しかしその盤、とんでもない音だったのだ。というのは・・・音質もまあまあ悪くない普通のステレオ盤だったのだが、B面1曲目it ain't necessary so では、なんとテナーサックス(アル・コーン)の音が左右に動き回るのだ(笑)どういうことだあ、これはっ! 曲が変われば(セッションごとに)楽器の位置が変わることはたまにはある。しかし、同一曲のしかも今、まさにソロをとっている主役が左右にぶれまくる・・・こんなミキシングってあるだろうか? このレコードは大編成で、テナーにもズート、アル・コーンの2名がクレジットされてはいる。そうなると・・・その2人が左右で代わる代わる吹いているのかも・・・という可能性もあるが・・・いや、どう聴いてもそれはない。間違いなく独りのテナーが連続して吹いている語り口、トーンなのだ。それなのに途中でフラフラ~と右に左に這い回ってしまうのである。聴いていてとにかくもう気持ちが悪い。酔いそうだ(笑)だから・・・この国内盤「ポギーとベス」を聴くときは、いつもアンプをモノラルモードにして聴いていた。それでかなり救われたのだが、こういう大編成のジャズを聴くときのステレオ音場の楽しさもなくなってしまうので、それが残念であった。それにしても・・・あの「サックス左右の舞」、あれがマスターテープ不良による国内盤全部での現象だったのか、あるいは、僕の手持ち盤のみの固体的不良だったのか・・・今もって判らない。《補筆》この記事をアップ後、リンクをしていただいているmono-monoさんからコメントをいただいきました。いやあ・・・驚きました。mono-monoさんも、すでにご自身のブログMONOmonologueの中で、アメリカ盤「Porgy & Bess」のことを載せていたのです。このキング国内盤と同じジャケットの盤にも、やはり「サックス左右の舞」があるとのこと。とても興味深い情報です。special thanks to Mr.mono-monoさん!

そしてもう1件、67camperさんからもこの限定盤をお持ちとの情報が入った。さらにもう1枚の「Porgy & Bess]情報も。ともにモノラル盤とのこと。こちらもぜひご覧下さい。special thanks to Mr.67camperさん!

Dscn1580_1その後に入手した米capitolのCD(CDP-7-95132-2)では、もちろんその「舞」はなかった。そんなちょっとしたことにも一喜一憂するのが、レコード好きなのである(笑) ちなみに、オリジナル盤とCDには全13曲が収録されているのだが、このキングの国内盤には全10曲しか収録されていない。つまり3曲がカットされているのだが、その中の1曲:it takes a long pull to get thereには、短いがビル・エヴァンスのソロスペースもある。だから・・・エヴァンスのマニアの方は、なんとしても米united artists の1stか2nd を手に入れたくなるはずだ。
《補筆》この米CDは商品化する際、音源確保に苦労したらしく、裏パッケージにこんな言い訳がしてある~note:the master tapes to this exquisite session have been lost. to produce this CD, Bill have been lost. to produce this CD, Bill Potts and Jack Towers gathered as many mint copies of this collector's item as they could find and poinstakingly transferred the best pressing of each selection to tape~つまるところ・・・マスターテープがもうなくなってしまったので、いい状態のレコードを探してそれぞれ状態のいい曲から音源をtransferした・・・ということだろう。だからいずれにしても・・・この米CDの「音質」は、それほどいいとは言えない状態です。

まあそんなちょっとした因縁を経ての、このオリジナル盤との遭遇だったわけだ。この盤の限定ナンバーは、326番である。当時のlimitedというのは、何枚くらいプレスしたのだろうか? たぶん・・・2000枚くらいだろうか。Dscn1531 そう思って改めてジャケットを見ると・・・この絵もなかなか味わいがある。暗い雰囲気の漂う「家族の肖像」という感じの絵である。裏ジャケットの一番下に、cover painting~robert andrew parker とちゃんとクレジットされている。
造りのいいゲートフォールドのジャケット、格調高いカヴァー・アートと併せて、この限定盤の価値は、なんといってもブックレットの写真にあると思う。
そのブックレットの雰囲気を味わってもらえるように、いくつかのページを撮ってみた。 それから、参加しているミュージシャンが実に豪華なので、そのクレジットも記しておこう。Dscn1532
trumpet   ~art farmer, harry edison, ernie glow, markie markowitz, charlie shavers
trombones  ~bob brookmeyer, frank rehak, jimmy cleveland, earl swope, rod levitt
tenor sax  ~zoot sims, al cohn
alto sax   ~phil woods, gene quil
bariton sax~sol schlinger
guitar     ~herbie powellDscn1533_2
drums      ~charley persip
piano      ~bill evans
bass      ~george duvivier

Dscn1530conductor ~bill potts 録音:1959年1月







さて・・・このPORGY & BESS、ビル・エヴァンス絡みでついに手にいれた1枚ではあるが、それほどエヴァンスが活躍するわけではない。どちらかというと管楽器奏者たちのソロを楽しむレコードだろう。それでも1曲、エヴァンスのピアノが印象に残る曲があった。I love you, Porgy である。この曲は・・・そう、エヴァンスが1961年6月の village vanguard でのライブでも演った曲だ。たしかこの曲は、オリジナルの2枚(waltz for Debbyとsunday at the viallge vanguard)には収録されずに、うんと後になって発売されたmilestoneの2LPで、未発表曲として世に出てきたはずである。

エヴァンスは、うんとスロウなテンポで、シンプルなメロディをいつくしむように弾いている。しみじみとした情感みたいなものがよく出ていて、とても好きな演奏だった。
あの・・・I love you, Porgy である。しかしこの59年のテイクでは・・・ある意味、全くエヴァンスらしくない弾き方なのだ。ビル・ポッツがきっちりとアレンジした大編成のオーケストレイションものなので、このエヴァンスをフューチャーしたこの曲においても「足かせ」があったようだ。それというのも・・・この曲、エヴァンスが右手でしか弾かないのである。それでもってメロディをポツン・・・ポツン・・・と弾く。左手の和音はおろか、右手も全くのシングルトーンのみ!これではまるでジョンルイスではないか(笑) しかも、導入部と中間部は管部隊の出番なので、エヴァンスは、ただでさえシンプルなメロディのこの曲の出足のメロディと最後の方のメロディだけを弾くのだ。エヴァンスは右手で弾くそのメロディにも全くフェイクを入れずに「ベタ~っ」と弾く。なんというか唄用の楽譜のままの音符で・・・という感じなのだ。伸ばす箇所ではそのままシングルトーンを伸ばしている。ポツン~・・・ポツン~・・・間が空いてしょうがない(笑) 
ハーモニーをあれやこれや研究することでなんとも絶妙な左手と右手のコンビネイションを創りあげる、そしてそれが持ち味のエヴァンスから「左手」を奪い去る・・・なんて過酷な指示(アレンジ)だろう。いや、これはエヴァンスへのイジメだったのかもしれない(笑)

しかしながら・・・その指示がなんとも不思議な効果を生むのだ。エヴァンスの伸ばした単音が、所在なげに響く。録音にエコーがかけられているようでもあるし、エヴァンスがペダルを踏んで伸ばしたようにも聞こえる、その不思議な単音・・・まだ管楽器は入ってこない・・・スカスカの音空間・・・そんな間の空き具合が、Porgyのメロディと伴に、どうにも印象に残ってしまうのだ。ある種「寂しさ」みたいな感じを演出しようとしたポッツのアレンジだったのかもしれない。Dscn1529_1

いずれにしても・・・この時のエヴァンスには相当な音楽的ストレスがあったように思う。だから・・・今度は自分が納得のいく左手のハーモニーを付けて、そうして1961年にもう一度、この I love you, Porgyを演奏したのではないだろうか。そうして、その渾身の I love you,Porgy もなぜか・・・あの2枚のライブ盤には収録されなかったのだ。エヴァンスの気持ちはどんなだったろう。・・・この I love you, Porgy というガーシュインの名曲は、エヴァンスにとっては因縁の1曲だったのかもしれない。

僕はいつもこんな風にいろいろ想像してしまう(笑) ほとんど妄想かもしれないが、ほんの少しでもそんな感じがあったとしたなら・・・エヴァンスがいつもあんな風にニヒルな顔つきをしているのも無理のないことかもしれない(笑)

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2006年5月 4日 (木)

<思いレコ 第10回> ビル・エヴァンス/ポートレイト・イン・ジャズ

when I fall in love ~エヴァンスのあの水晶のようなA♭・・・。

このレコードをとても好きだ。ビル・エヴァンスという人がスコット・ラファロというベーシストと出合って、その喜びの中で両者が生き生きと飛び跳ねている・・・そしてお互いがお互いのサウンドを聴きながら、嬉々として音楽を創っている・・・そんなジャズの理想郷のようなレコードだと思う。そしてよく言われる「インタープレイ」などという言葉に囚われなくても、ピアニストとしてのエヴァンスの本領~「尖がったピアノ表現」とでも言うべきか~が最もよく出ているレコードだと思う。だから内容には・・・全く文句ない。
そんな文句ない名演であるがゆえに・・・わずかなキズに気付いてしまうのかもしれない(笑)

ビクター国内盤(SMJ-6144:1976年)を何度も聴いてきたのだが、以前から「気になるポイント」が何箇所かあった。

1.ベースやピアノの音が急に揺れるようにクリップする(音揺れ箇所)
  A面1曲目:come rain or come shine:
  最初のテーマの途中~この曲のメロディは前半と後半が同じパターンなのだが、後半のテーマに入って5~6小節目のところで、一瞬だが、ピアノ・ベース共にはっきりと揺れる。
  B面1曲目:what is this things called love:
  エヴァンスのソロが終わり、ベースがソロをとっているバックでピアノが「合わせ」を入れてくる辺り~ここでは明らかにベースの音が「揺れて音圧も減衰」してしまう箇所が何度もある。ピアノよりも特にベース音が揺れているようだ。
  B面2曲目:spring is here:テーマの終わりに近い部分~上昇するメロディにピアノとベースが4分音符で合わせる箇所~ここで、ラファロのベースの音がかなり「揺らぐ」。この「合わせる箇所」は、この曲の最もいいところなので、聴くたびに、この「揺れ」にはがっくりしていたのだ。
  
2.バラードの静かな場面で、わずかだが「キ~ン」というような高周波っぽい音が、継続的に聞こえる。
  B面2曲目 spring is here:この曲にも気になるポイントがあった。まず全体にわずかにだが聞こえる「キ~ン(あるいはシ~ン)」というようなノイズ。バラード(一般的に静かにスロウに演奏される)なので余計に目立つのかもしれないが、このノイズは、最初に日本盤を聴いた時から感じていた。同じバラードのA面 when I fall in love でもわずかに同様の「キ~ン」があるようだ。
*他のレコードでも、例えば静かなバラードの時、プチ・パチというノイズは聞こえたとしても・・・この類のノイズはあまり記憶にない。
  
3.この when I fall in love~僕はこの曲を大好きなのだ。エヴァンスはこの曲で素晴らしいインスピレイションを見せてくれる。(後述)
  しかし・・・以前から「気になる箇所」がある。レコードを聴いてると、わりとよくある現象~演奏中のフレーズが、実際に弾かれたタイミングよりちょっと先に、小さな音でエコーのように聞こえてくる現象~「前ゴースト」(テレビの電波が2重になって映ることをゴーストというらしいので、その呼び名をマネしてみた)が目立つのだ。この曲もテーマが前半・後半と同パターンなのだが、後半テーマに入って3~4小節目の辺りで、エヴァンスが「今、弾いてるタイミング」とは関係なく、高音のトリル風フレーズが「エコー」のように聞こえるのだ。そお後半テーマの最後の辺り(13~14小節)でも同じような「エコー」が聞こえる。高い方の音域で細く小さく、しかしはっきりと聞こえるのだが、それが「どの箇所」で弾いたフレーズなのかはよく判らない。

僕は、1.の「ベース音が揺れる感じ」は、もうすでに「録音された段階」での不具合だと思っている。多分・・・リヴァサイドのスタジオのテープレコーダーの調子が悪かったのか・・・あるいは録音スタジオの電源供給が不安定だったりしたんじゃないか? それくらい何か根本的な要因があったのでは・・・と思えるほど、いくつもの箇所で「クリップ」する。例えば、キャピトルやマーキュリーでこんな場面は耳にした記憶がない。もちろん「録音段階での不具合」などではなく、保存したマスターテープの管理が悪かったために、「クリップ」したのかもしれない。だとしたら・・・早い段階でのマスターテープを使った初期プレス盤なら、あるいは「揺れない」かもしれないぞ・・・というのが僕の希望的観測だった(笑)

そんなわけで~つまりそんないろんな「疑問点」が日本盤だけの不具合なのかどうかを確かめたくて~<欧州リヴァーサイド盤>(モノラル・青ラベル) を入手したのだ。もちろん米オリジナルの「ステレオ」や「モノラル」が欲しいのだが、それらは・・・とても高い(笑) だからちょっと、いや・・・かなりの妥協をしてのプレス時期が古そうな<欧州リヴァーサイド盤>なのだ。 

 

_005_3                       

《上の写真:左側が<米オリジナル・モノ盤> 右側が<欧州リヴァーサイド盤>~表ジャケットの写真・デザインは全く同じだが、このINTERDISC盤は、米オリジナルモノラル盤(左側)よりもコントラストをやや弱めにしたようで、全体の色合いが、明るくてやや薄めになっている。だからエヴァンスのメガネの奥の右目が、米オリジナル盤よりよく見えるようだ》

 

3_001《裏ジャケも米オリジナルとほとんど同じだが、左下に秘密があった(笑) distributed in Europe by INTERDISCと表記してある。もしセンターラベルを見られない場合は、この裏ジャケットの左下に注目すればいいかもしれない(笑)》 (写真左)

3_003_1写真右:《欧州盤のセンターラベル。外周に文字が入ったり、タテ字のMICROGROOVEやLONG PLAYINGの文字がない。ラベル下部にあるはずのBILL GRAUER PRODUCTIONS NEW YORK CITYという表記もない》 

 

 

 

この「欧州リヴァーサイド盤」~期待を込めて聴いたのだが・・・上記の「気になるポイント」の1・2・3、そのいずれもが「同じ箇所」で「同じようなレベル」で聞えてきたのだ。特に1.の「ベース音の揺れ」は、全体のベース音が迫力あるだけに、その「揺れ」は却ってひどく聞えるようでもあった。「古そうなプレスの盤」だったので、あるいは・・・と期待したのだが・・・非常に残念だ(笑)

さて・・・「欧州リヴァーサイド」のラベルのことで「こだわりの杜」(ニーノニーノさんHPのBBS)のお仲間:Yoさんとメールやりとりした際(さきほどの「前ゴースト」という言葉は、Yo氏のネイミング)、そんな僕の「個人的興味」を知ったYoさんが、お手持ちの2枚の「ポートレイト・イン・ジャズ」を、「それじゃあ、いろいろと聞き比べてみてよ」と電光石火の早業で(笑)送ってくださったのだ。
  その2枚とは・・・
  <米オリジナル・モノラル盤(青・小ラベル)> と
  <オルフェイム・ステレオ盤(緑ラベル)>だ。
  この2種と、僕の手持ち・・・
  <欧州リヴァーサイド・モノラル盤(INTERDISC・青ラベル)> と
  <ビクター国内盤(SMJ-6144)1976年>の2種を加えて、
  計4種の「ポートレイト・イン・ジャズ」の「音質」と・・・それから問題の「クリップ箇所」の有無などを聴き比べてみた。

それでは「音質」の印象を少し。
<ビクター国内盤(SMJ-6144)1976年>~
一聴して全体の歪み感が少なく・・・スッキリしている。案外に悪くない。
ピアノの音自体にも安定感があるので、とても聴きやすいように思う。ラファロのベースは、この「ポートレイト」では「右側」から聞こえる。ヴァンガードのライブでは「左側」だったはずだ。ベースの音は・・・ややレベルが低めで、音自体もやや薄いようだ。僕はもう少し強めにベースを聞きたい。「鳴り」「音圧」「気高さ」「艶」など、ヴァンガードでのラファロの音と比べると、少しづつだが劣っているように感じる。ちなみに「音圧」については、この日本盤には絶好の「比べポイント」がある。「枯葉」の「ステレオテイク」と「モノラルテイク」が、A面2曲目と3曲目に続けて入っているのだ。3曲目になると・・・右側から聞こえていたラファロのベースが中央に寄ってくる。そして「分厚いベース音」に豹変するのだ。モノラルに圧縮された分、全ての楽器の密度が濃くなったようだ。ベースの「音圧」に限れば、この「モノラルテイク」の方がはるかにいい。これくらいの音圧で、ベースが全体を押し出していく感じが、本来のラファロの持ち味だと思う。但し・・・今度は「艶」が薄くなった。「艶」というより「響きの具合」という感じのことだが、ラファロのあの「後鳴りするような響き」が、うまく録られていないのだ。僕はステレオ録音が嫌いではない。ギュッとしまったモノラルもいいが、ベースの響きの余韻をうまく取り込んだ「ステレオ録音」には「鳴りかた」に「色気」があるように思う。
その好例が あの Waltz For Debby と Sunday At The Village Vanguard の2枚なのだ。(このライブ盤については・・・いずれまた)

<オルフェイム・ステレオ盤(緑ラベル)>写真右側~_001_7
                 

プレスや盤質自体の問題だと思うが、ちょっとヴォリュームを大きめにした時の「シュ~」というノイズが、やや大きいようだ。
一聴して、ピアノの音の芯が弱く、ドラムシンバルなど全体的に、(ビクター国内盤と比べても)やや鮮度感がやや薄いように感じた。
但し、右チャンネルから聞こえるラファロのベースに関しては・・・ビクター盤よりも入力レベルが高く、より前に出てくるような感じ。
ラファロのベース音のあの生気ある感じは、オルフェイム盤の方がよく出ている。

<欧州リヴァーサイド・モノラル盤(INTERDISC・青ラベル)>~
モノラルの「詰まった」感じの音に一瞬たじろぐが・・・ちょっと聴き進めばすぐに慣れる。モノラルになった分、ベースやピアノは明らかに厚い音になった。ラファロのベース音も「厚くなって大きめな音」に聞えるので、より迫力が出てきた。荒々しくなったとも言えそうだ。

<米オリジナル・モノラル盤(青・小ラベル)>上写真の左側~
B面からかけてみる。1曲目 what is this things called love の出だしの「ダッダ~ン・ダ~アダッ!」から力強さが段違いだった。
ピアノの音に強さと粘りがあるし、ベースの音色にも1本芯が通ったような力強さがある。それにベースの音像の輪郭が、欧州リヴァーサイド盤よりもぐっとクッキリしてきたようだ。全ての楽器に音圧がしっかり感じられるのだ。強く弾いたピアノの音が、よく伸びその力感が落ちない。音に「馬力」があると言ってもいい。この米オリジナル盤をこうして聴くまでは、実は、欧州盤もなかなかのものかもなあ・・・と密かに期待していたのだが、やはり米オリジナル盤はモノが違うようだ。

A面:when I fall in love~音圧、ピアノのタッチの力感が充分に感じられる。エヴァンスのタッチは弱い、と思われているようだがそんなことはない。エヴァンスは、このバラード曲の出だしのメロディ3音目(A♭の音)を、ぐっとためて「ッポ~ン」と投げ出すようなタッチで、このA♭のシングルトーンをたっぷりと伸ばすように弾いている。この辺りに、エヴァンスの「美学」がよく表れているように感じる。そしてこのA♭は・・・相当に強いタッチだと思う。和音でゴンゴン押してくるようなタイプの強さではないが、パッと見では線は細いが実は「鋼のような硬質さ」という質のタッチの強さを、ビル・エヴァンスは持っているのだ。
米オリジナルモノラル盤をこうして聴いていると・・・そのピアノの音が生き生きしているので、エヴァンスのピアノ表現に~特徴的な長いフレーズ、その中のタッチの強弱、張り詰めた感じ~とても素直に入りこめる。トータルとしての「鮮度感」が一番高いことは間違いないようだ。
どう聴いても・・・やはり4種の中ではダントツに素晴らしい!さすがは米オリジナルモノラル盤だ。今、再び「米・オリジナル・モノラル盤」を聴いている。そして・・・この「A♭音」だ・・・。「ッポ~ン」と思い切り伸ばしたそのピアノの音が・・・水晶のような音に感じられる。「タッチの芯」がしっかりと感じられる。素晴らしい!
それからさきほど「エヴァンスはこの曲で素晴らしいインスピレイションを見せてくれる」と書いたが、その素晴らしい「インスピレイション」(と僕が感じる箇所)は・・・2コーラス目の前半(いわゆるアドリブでのソロはこの16小節のみ。この曲は2コーラスのみで終わるのだ))前半・後半のテーマが終わって、次の前半部分の8小節目辺りから突如、現れる。長いフレーズを~そのフレーズは細かい「譜割り」のもので、どう考えても、この場でいきなり浮かんできたようにしか思えない~実に不思議なタイミングで弾くエヴァンスなのだ。あるフレーズを弾き始めたかと思うと「グッと」停めてしまう。そうしてすぐ後には、長いフレーズを「溢れる」ように弾き込んだかと思うと、また停め。そしてまた次のフレーズへ・・・という感じなのだ。この辺りの展開はまるで・・・通常の1・2・3・4という「タイム感」を超越してしまったかのようだ。エヴァンスが「ぐぐ~うっ」と堪えてフレーズを停めている2~3秒の凄まじい緊張感。このわずかな「間(ま)」が永遠にも感じられる。そうしてその「スピード感」は凄まじい。スロウなテンポで展開しているだけに、「間」と「流れ」での落差を、よけいに感じるのだ。そんなようなことを、エヴァンスは、この4小節の中で展開してしまったのだ!「エヴァンスの音楽」が、文字通り、溢れ出てきたようなすさまじい展開に・・・おそらくラファロとモチアンも目を見張ったはずだ。そうして・・・あの「間」を、2人もまた強靭な集中力で「耐えた」のだろう。この when I fall in love・・・ビル・エヴァンス・トリオのこのバラードを、僕は本当に素晴らしいと思う。

さて、こんな風に素晴らしい音質の<米オリジナル・モノラル盤(青・小ラベル)>なのだが、このオリジナル盤での「気になるポイント」1.については・・・
A面1曲目~come rain or come shine ~
日本盤ではあれほどハッキリと揺れた、あの5~6小節目での「音揺れ」が、この米・オリジナルモノ盤ではほとんどないようだ。よく聴いてみても・・・ほんのわずかにピアノが揺れるようにも聞えるかな?という程度だった。日本盤でも同様だったが、ベースに関してはA面はだいたい安定していい音のように思う。
ところが残念ながら、前述したB面1曲目の what is this things called love でのベースの「揺れ感」は・・・やはり感じられたのだ。
特に後半のテーマに入る前あたり、ラファロがビートをぐいぐいと押し出してくるのだが、その「音圧」のもの凄さに、ひょっとしてマイク入力段階で「歪んだ」のだろうか?
A面では、どの曲でもあれほど安定して力強いベースサウンドだったのだが・・・。B面の他の曲では、これほどベースの音色に「揺れ」はないようだ。
この曲に限り・・・なぜかピアノよりもベースに集中してクリップするようだ。
それから、B面2曲目の spring is here の「上昇メロディ」の箇所での「音揺れ」も、やはり全く同じ箇所で、同じぐらいのレベルで「揺れて」聞えた。

「気になるポイント」の2.~あの「キ~ン」についてはどうだったのか?
こちらも残念ながら・・・日本盤、オルフェイム盤、欧州盤、米オリジナル・モノラル盤・・・どの盤でも聞こえるように思う。そのレベルもほとんど同じだった。ただ、この「キ~ン」はごくごく小レベルで鳴っているだけなので、演奏がピアニシモになった場面以外では、それほど気にならない。

「気になるポイント」3.のA面のwhen I fall in loveでの「前ゴースト現象」についてはどうだったのか・・・?
結論から言うと・・・この米オリジナル盤にもゴースト音は認められた。4種ともに多少のレベル差はあるのだが、全ての盤の同じ箇所に「ゴースト音」はあったのだ。ただ、この4種の中では、「米オリジナルモノ盤」と意外にも「日本ビクター盤」が、このエコーのレベルは、わずかに低いように聞こえた。

こうやって、4種の「ポートレイト・イン・ジャズ」を聞き比べてみた。その結果、僕の気になる「ベース音の揺れ」や「ゴースト現象」は~「米オリジナル・モノ」「米オルフェイム・ステレオ」「欧州・モノ」「日本ビクター・ステレオ」~全ての盤で、聞えたのである。ということは・・・「ラファロの音圧で歪んだ」は冗談にしても・・・やはり「録音段階」での何らかの歪みなのだろうか? それとも最初期の「マスター・テープ自体の不良」あるいは「ラッカー盤」製作段階での何らかの不具合があったのかもしれない。判らない・・・とにかく演奏が本当に素晴らしいだけに、やや残念なことではある。先に書いたように、これらの「音揺れ」が録音段階、「ゴースト」が最初のマスター段階からあったとすれば、全てのプレス盤でも同じ結果になるはずだ。
だが・・・ひょっとしてこれらの盤へのマスターテープの保存状態が悪かったために~テープ転写や劣化で、「音揺れ」「クリップ」「ゴースト」が発生した可能性もなくはない。だから残るは・・・まだ見ぬ「米オリジナル・ステレオ盤」だ。ひょっとして「黒・ステレオ」のみは、ごくごく初期のマスターを使っていて~つまりベース音の揺れやゴースト音の一切ない状態~というようなことはないだろうか。そうしてその盤から飛び出てくるのが・・・まったくベース音の揺れない spring is here だったら・・・そんなことを無想する僕である。

 

<補足 1>~先日、たまたま昔の音楽仲間4人<konken氏(b)emori氏(b)Yシゲ氏(as)Sマサ氏(ds)>と僕:bassclefが、konken氏宅へ集まる機会があった。その場で、この「ポートレイト・イン・ジャズ」の「音揺れ」についてチラッと話したところ・・・即座にemori氏が「ああ、あれねっ!そうそう、揺れる揺れる」と反応してきた。他の3氏は特に思い当たるフシはないようだったので、(できるだけ先入観を与えないように)「ラファロのベースの音でまずいところがある」とだけ伝えてから、上記3曲を、まずCD-R(konken氏が spring leaves(milestone:1976年くらいの米・2枚組)から焼いたもの)で聴いてみた。
やはりA面1曲目~come rain or come shine ~日本ビクター盤と同じ箇所で「ピアノとベースの音の揺れ」~オープンリールのテープがほんの一瞬だが、回転ムラを起こしたような感じの揺れ~を5人が確認した。下記の「気になるポイント2の「キ~ン音」も、emori氏は「気になる」とのコメント。
次に「ポートレイトインジャズ欧州盤」のA面1曲目、B面1、2曲目をかけたところ・・・特に[B面2曲目の spring is here の「上昇メロディ」の箇所]では・・・4人が揃って「ああ、揺れてる」という声を上げた。
そんなわけで・・・「ポートレイト・イン・ジャズ」には、やはり「ある種の歪み音」があることを確認した。もっとも、emori氏も相当なラファロ愛好家で、僕と同じようにラファロのベースラインを集中して聴き込んだ経験があるわけで、そんな風に「ベースの音色」に注目して、それを連続して聴いていくと・・・こういうちょっとした「音の揺れ・音像の乱れ」は、いやでも目(いや、耳に:笑)につくだけのことかもしれない。

<補足 2>上記集まりの10日後、emori氏から「ポートレイト~」再検証の情報(ビクターのCD3種)をいただいた。使用したマスターの情報もあり、なによりも僕が比較したのはLPのみだったので、以下にemori氏のメール(部分)を転載したい。

[以下、青い文字の部分]

~私も注意深く聴いてみました。そしたら、なんと、まだあるんですねぇ~。まぁ、(bassclef) さんも確認している部分かもしれませんが。私は、CDからですが…。書いておきます。音はヘッドフォンで聴いています。
■検証に使った音源
1:1985年に発売された(と思われる)ビクター音楽産業(株)発売元の「Portrait In Jazz」のCD。“VGJ-1506”

※このCDに使用した音源:
下記の事がCDに記されています。
『本CDマスターには、ファンタジー本社(米、バークレー)の保有するオリジナル・アナログ・マスター・テープをロスアンジェルスにある、JVCカッティング・センターに空輸し、ジョー・ガストワートによりJVC/DAS-900デジタル・オーディオ・マスタリング・システムでデジタル・トランスファーされたものを使用しております。』と。

2:2005年に発売された(と思われる)ビクター(日本)発売元の「The Complete Riverside Recordings」のCD。“VICJ-61292”と“VICJ-61292”の二枚。このCDは、「20bit K2/Super Coding」だそうです。

※このCDに使用した音源:
下記の事がCDに記されています。
From A Master Recordings owned by Fantasy INC. USA

=== 私が見つけた“あら”===

A : 「When I Fall In Love」
この曲の出だしのテーマ(サビ部)にノイズが入ります。左チャンネルに。
で、何気なく、1)のCDのライナーノーツをめくったら、下記の事が書いてありました。
『●お断り
本CDは、1950年代のオリジナル・アナログ音源からタイレクトにデジタル・トランスファーされたマスターを使用しております。その為、テープ・ヒス・ノイズ、歪み、アナログ・ドロップアウト(音の欠落)といったオリジナル・アナログ・マスター・テープの瑕を含んでおります。これらは、録音レベルの低い部分、及び音が消えかかる部分に顕著ですが、本シリーズは現在入手しうる最も質の高いオリジナル・マスター・テープからのCD化であり、又その歴史的音楽性の高さを鑑みてリリースされたものであることを御了承下さい。尚、本CD「When I Fall In Love」の左チャンネル(ヒス音とさわめき)中にガサ・ノイズがあります。』
と日本語で書いてあり、英文もありましたので書いておきます。

NOISE INFORMATION
This recording is taken from the original analog 1950"s source material, and therefore contains inherent tape flaws, such as hiss, distortion, and analog dropouts.  These tape flaws become more evident on low level passages and on most fades.  There are clicks in left channel (hiss and buzz) on 「When I Fall In Love」

B : 「What Is This Thing Called Love?」
1 : この曲の出だし:音が詰まっての出だし。特に、左チャンネル。
2 : 2分35秒から36秒の間の一瞬、ベース音が揺れる。(これは、私にはそう聴こえます)
この曲のベース音は、最初から最後まで、微妙に揺れているように聴こえます。特に後半部分。

C : 「Come Rain Or Come Shine」
出だしのテーマ後、ピアノソロに突入時に、ノイズ。これも左チャンネルのはず。

D : 「Peri's Scope」
1分37秒から38秒の間の一瞬、ベース音が揺れる。

E : 「ピー」という継続ノイズ音
これは、いろいろな曲の至る所で聴こえます。特に静かな曲「Spring Is Here」そして、静かになる部分。とくにベースソロ部、例えば「Witchcraft」

特に、2)のコンプリ盤は、「20bit K2/Super Coding」仕様のせいか、1)のCDより、上記の“あら”は一層はっきりと聴く事ができます。「Spring Is Here」のピー音は、でかいこと!そして、合わせの揺れも、1)が小波なら、2)は大波って感じです

[以上、青字の部分がemori氏の情報]

・・・最後に強調しておきたいことがひとつ。
「いい演奏ならば、どんな盤(モノラル、ステレオ、オリジナル、日本盤・・・)で聴いても~演奏された音楽に集中さえすれば~絶対に楽しめる」ということだ。この盤が大好きだったので、だからその中のいくつかの気になる点について、こんな「比較検証」みたいな話しになりはした。だけど・・・もちろんのことだが、あるレコードを聴くのに「~盤でなくてはダメだ」とは思わない。今回は、この「ポートレイト」の同一曲を、いろんな盤で何度も聞き比べてみた。その際、どの盤で聞いていても(冷静に検証的に)・・・知らず知らずの内に、 その「演奏」に聴き入ってしまい、例えば2曲目だけを検証しようと聞いていたつもりでも・・・つい最後まで聴いてしまうのだった(笑)
そんなだから、「盤」による違いを検証しつつも・・・その一方では「演奏」を聴いていけば(その音楽の中に入り込んでしまえば)どんな盤でも構わないじゃないか!
・・・そんな気持ちにもなった。そのことを再確認できたことも、だから・・・うれしかったのだ。
その音楽を好きで、聴いていれば、その音楽からは絶対に「何か」は伝わってくるはずなのだ。
ただし、もっと突っ込んだ拘りを持ってその音楽に接したい時に、その拘りの強さに応じた「いい音の盤」というものは・・・やはりあると思う。
例えばあなたが・・・エヴァンスの「水晶のタッチ」をどうしても味わいたい・・・というような場合には(笑)

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2006年3月 5日 (日)

<思いレコ 第8回> Bill Perkins/Quietly There

気になる作曲家、その名は・・・ジョニー・マンデル!

「いそしぎ」という曲がある。この曲の原タイトルは もちろん the shadow of your smile という。映画に使われた曲なので、その映画のタイトルthe sand piper を邦訳してこのタイトルになったのだろう。海にいるシギという鳥のことを意味してると思うが、僕らは単に「イソシギ」というサウンドで・・・ああ、あのいい曲ね、と理解している(笑) 僕はとにかく、この「イソシギ」が好きだった。自然に展開していくメロディ。淡々としながらも品よく盛り上げる後半のメロディ。あまりに有名なので、ちょっとポピュラー的なイメージで捉えられているかもしれないが、文句のない名曲だと思う。

ハンプトン・ホウズの I’m Old Fashioned(contemporary) _004

B面1曲目が、その<the shadow of your smile>だ。1966年4月のライブ録音なので、この曲の録音としてはわりと初期のものだろう。ベースはレッド・ミッチェル。なかなかいいピアノトリオ盤だと思う。

A Time For Love という曲も実にいい。この曲を・・・僕はアイリーン・クラールの唄で何度も聴いた。この曲の入ったクラールのLPを 寝る前に、ポータブルのプレーヤーで聴いた時期がある。LPの途中で眠ってしまうこともあり、だから正確には「眠りにつきながら聴いていた」というわけだ。そんな風に繰り返し聴いているうちに・・・この曲のメロディが、体の中に染みわたってしまったようだ。A Time For Love は、しみじみとした感情で人生を振り返りながら・・・しかしこれからも生きていくのだ・・・みたいな厳しさをも感じさせるような素晴らしいメロディをもつ曲だ。ちなみにこのクラールのピアノとデュオのアルバムは、本当に素晴らしい。いつかまたアイリーン・クラールのことも書いてみたい。そういえば僕の好きなトニー・ベネットも、この曲をいい感じで唄っているはずだ。

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Emily~これもいい!3拍子の曲なんだが、もう一言・・・チャーミングなメロディなのだ! 好きだなあ・・・この曲。最初にこの曲を聴いたのは・・・ビル・エヴァンスのソロピアノのアルバムだ。左の写真がそれ。

further conversation with myself(verve)

レコードを集めるようになってわりと初期の頃だったので、VerveにMGM-があるとかも何も知らなかった(笑) ちょっとこもったような音質のMGM-Verve盤ではあったが、エヴァンスは、この曲、Emilyを一人で多重録音して・・・夢見るようなスイートさを生み出していた。それでこの曲を好きになった。チェット・ベイカーも、よくマンデルの曲を取り上げた。初期のパシフィック盤にはたしか何曲か~Keester Parade やTommy Hawk~入っていたと思う。

これらのどれもが、ちょっとしゃれたメロディの曲であり、いつも「はっ」としてクレジットを見ると・・・ジョニー・マンデル・・・ということが何度かあった。
そんな風に気になる作曲家であるジョニー・マンデルだった。
そうしてそんなジョニー・マンデルの曲を集めた素晴らしいレコードがあったのだ。先日、そのレコードを入手した。

Bill Perkins/Quietly There(riverside)である。録音が1966年なので、この写真の盤、「abc Riverside茶色の環ラベル」がオリジナルなのかもしれない。_002





         






ジャケットがまた地味というか・・・小さめな写真に  Bill Perkins Quintet featuring Victor Feldman と Quietly There というタイトルが載ってるだけだ。表ジャケのどこにも Johnny Mandel の名前などない。 裏ジャケの曲名を見て・・・初めて全9曲ともに 作曲が Johnny Mandel だと判るのである。せめてジャケ表に一言、 Mandelの名前を謳ってくれれば、もう少し早くにこのレコードを買っていたかもしれないのに(笑) もっとも・・・Jhonny Mandel という作曲者だけでなく、ミュージシャンからジャケットまで、このレコードは・・・もう徹底的に地味なのである(笑)

このレコードに前述の Emily と A Time For Love が入っている。そうして、これらが・・・絶品なのである。

Emily~パーキンスが、バス・クラリネットで静かに吹き始める。かなり遅めの3拍子に乗って、ゆったりとあの素晴らしいメロディを吹き進めていく・・・パーキンスの音色を聴いているうちに・・・一枚の風景画を眺めているような気分になってしまう。そして・・・気がつくと音楽が終わっている・・・そんな感じなのだ。たとえようもなく「優しい」世界だと思う。

最初に左チャンネルから、この Emily のメロディが流れてきた時、「えっ、この音色は何なんだ?」と思った。低くて軽くこもったような・・・でもバリトンのように大きく鳴った感じではない。なんだろう? とクレジットを見ると・・・bass  clarinet と書いてある。ああ、あのバスクラかあ・・・と、すぐにエリック・ドルフィの バスクラのソロ God Bless The Child を想い出した。ドルフィのバスクラ、あれは・・・自己というものを、もう徹底的に表出したような凄い世界だった・・・。このパーキンス盤でのバスクラは、全くそういう自己表現の世界ではない。しかしこの楽器をセレクトし、アドリブパートでも、フレーズがどうとかではなく、このバス・クラリネットの「ひっそりしたような音色」のソノリティを楽しむような・・・そんな唄わせ方をしているようだ。「ひとつの素晴らしい曲がある。その曲のスピリットを自分の感性で描き切りたい」というような切実さというか静かな気迫のようなもの~僕はパーキンスという人にそんな凄みさえ覚える。

そんなパーキンスでも、一人でこんなに緻密な工芸品のような世界を創り上げることは難しかっただろう。そこで、それなりの職人たちが必要だった。その職人たちとは~
まず、ヴィクター・フェルドマンの「しっとりした」ピアノが、優しい雰囲気をかもし出す。このパーキンス盤では、随所で vibraphone も叩いているが、全くやかましくならず、とてもいい感じに響いている。ヴィクター・フェルドマンという人の「しっとり感」は素晴らしい。マイルスの Seven Steps to Heaven のLAセッションの方を聴いて以来、大好きになった人だ。
ガットギターも聞こえてくる。ガットならではの本当に優しい音色。このギター弾きはJohn Pisano という人である。ガットでとるソロもも実にいい。
それから、ベースがレッド・ミッチェル。この人は、ベースの1音1音がしっかりと鳴っている。リズム感、ウオーキングライン、音程、アドリブ。どれをとっても本当に巧いのだ。ドラムはラリー・バンカーだ。
全員が揃いも揃って・・・本当に「趣味のいい」ミュージシャンだと思う。

もうひとつの名曲~A Time For Love。
パーキンスは今度はフルートを用いた。普段、僕はフルートのジャズはほとんど聴かない。savoy盤などを聴いていて、フランク・ウエスが(テナーは嫌いではないが)フルートを吹き出すと・・・どちらかというとノー・サンキューである(笑) しかし、このマンデルの名曲~A Time For Love でのパーキンスのフルートは・・・これも絶品である。録音もいいせいか、フルートの「鳴り」が豊かなので、サブトーンばっかり強調したようなヒュー、ヒューというような(笑)という感じではない。この曲でも「自分の感性で描き切りたい」という意思を強く感じる。外見的なアレンジ、というより、曲を解釈するその気持ちをもアレンジしているかのようだ。そしてその意思が全員に伝わったのだろう。各人が、実にキッチリと丁寧なバッキングをしており、味のあるいいソロをしている。

僕はもともと、一人で多くの楽器を奏するマルチ・ミュージシャン的なタイプはあまり好みではなかった。アレンジもできるスタジオミュージシャン的なタイプだと、仕事柄、仕方ないとはいえ・・・さあアルトだ、さあ今度はテナーだ、いや、バリトンだ、てな感じで、なかなかその人の本当の個性みたいなものが伝わってこないような気がする。いろいろなレコードを聴いてるうちに、それでもアル・コーンにはテナー、バド・シャンクにはアルト、とやはり「本領」を発揮できる楽器があるのだ、という風にわかってきた。その「本領」楽器で何枚かいい盤は必ずあった。ところが、パーキンンスの場合は違った。西海岸ものを聴くようになって、ビル・パーキンスという名も覚え、リーダーアルバムのパシフィックの2~3枚を聴いたのだけど、共演のペッパーの方に耳を奪われるばかりで、このミュージシャン自体には、特別な印象は持っていなかったのだ。だから・・・この盤を何度か見かけたはずだが(ジャケットだけは、だいぶ以前から知っていた)、録音が1966年とわりと新らしめということもあり、入手するには至らなかったのだろう。
そのパーキンスは、このレコード~Quietly There でも、やはりマルチであった(笑)しかし・・・今の僕は、そのマルチぶりが全くイヤではないのだ。逆に、こんな風に曲によって、 使う楽器を替えることで、それぞれの曲の味わいみたいなものを表出させた・・・いや、それ以上に、ジョニー・マンデルの曲だけで一枚のアルバムを創ろう、としたビル・パーキンスに甚く(いたく)感心している。推測だが、スタジオの仕事が多かったパーキンスが、ついに「自分の趣味」でアルバムを創ることになり、だから、選曲をしていくうちにマンデルだけの作品に絞ることにして、それからパーソネルを練り上げて、リハーサルをして、どの曲をどんな具合にクックするか・・・そんなことに相当に時間をかけてきただろうなあ・・・と思わせてくれる、本当に丁寧で質の高い、そして素晴らしいアルバムだと思う。

ビル・パーキンス/Quietly There(riverside)このアルバムは、とても地味だが・・・この先も間違いなく僕の愛聴盤であり続けるだろう。出会えてよかった・・・こんなレコードに。僕はうれしいのだ。
こんな未知の盤にも、まだこんな風に素直に「いいなあ・・・」と感じられるものがあった、ということが。
ジャズにはいいアルバムがいっぱいだあ!・・・ますますやめられない(笑)

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2005年12月11日 (日)

<ジャズ回想 第3回>ああ、中古レコード店:   ラビットフットレコードと初期のビル・エヴァンス。

1980年春~ジャズ喫茶/グロッタとラビットフットレコードのこと。

地元のジャズ喫茶「グロッタ」には、学生時代の75年から78年頃、本当によく通った。重い防音ドアがひとつあるきりで、あとは一面コンクリートカベの店だった。店内も灯りが極端に暗めで・・・ソファにたどりつくまでに、つまづきそうなほどで、正に「洞穴」(グロッタというのは、どこかの言葉で「洞穴」というらしい)のような店だったのだ。だんだんと目が慣れてくると、この「暗さ」が心地よくなってくる。よくあんな暗がりの中で、みんなマンガや雑誌を読んでいたなあ。このグロッタは・・・とにかく大きな音でジャズを聴かせてくれたし、何よりいいレコードがいっぱいあった。ラファロが聴きたくて、ビル・エヴァンスのSunday At The Village Vanguard をいつもリクエストしてかけてもらった。JRモントローズやアンドリューヒルも何度もかかった。そのグロッタが改装のため、一時的に閉店していた80年の春・・・グロッタのすぐ斜め向かいに「ラビットフットレコード」がオープンした。これはうれしかった。それまでは、名古屋か浜松に行かなければ手に入らない「輸入盤」が、地元の街で手に入るようになったのだ。ラビットは、やはりロック系・トラッド系が中心ではあったが、うれしいことにジャズの輸入盤・中古盤もけっこうあった。ジャズが少ないのは・・・これはもうジャズファンなら馴れっこの仕方ないことだ。とにかくジャズのコーナーがあれば、それで充分だった。このラビット・・・開店直後には、liberty音符ラベルのブルーノート盤がたくさん出ていたので、それまでほとんど持っていなかったブルーノートの有名盤を、けっこう入手した。ロリンズの「A Night At The Village Vanguard」やら、ブレイキー&クリフォードブラウンの「A Night At The Birdland vol.1&vol.2」も、カットアウト盤だったが、格安(1400円前後だったか)で入手できたのだ。この頃は・・・リバティ音符ラベルがオリジナル盤と比べてどうか?なんてことは全く関係なかった。とにかくキングや東芝(80年だとまだキングの最終の頃か?)の国内盤定価より「安い」ところに価値があったのだ(笑)「ブルーノート」というレーベルは・・・東芝が「直輸入盤」として発売していた頃から「高い」イメージが強く、キング盤になってからも、どうも手が出しにくい感じだった。とにかく、ブルーノート盤には持ってない/聴いたことない、というタイトルが多かったのだ。
しばらくはラビットに通いつめた。そんなある晩・・・ラビットの斜め向かいの辺りが明るいし、何やらざわざわしているような感じだ。おおっ!改装なったグロッタがオープンしたのだ!ずず~っと近寄ると、とにかく「明るい」。あの洞穴のような暗いグロッタが・・・木のドアの両側の天井までの窓からは、店内からの灯りがもれて歩道までピッカピカじゃないか!中も丸見えだ。再オープンの夜ということで、店内はもうお客で一杯になっている。さっそく、木のドアを開けて入っていく。久しぶりに見る顔なじみばかりだ。なにやら照れくさいような感じだ。とにかく明るい。ガラス窓なので外からもスースーに見えちゃうし、座っていてもどうにも落ち着かないのだ(笑) この明るくなって一見、普通の喫茶店に変わったグロッタではあるが、「ジャズ喫茶」を感じさせるものがあった。大量のLPレコードたちだ。やはり彼らがお店の主役なのだ。下の床から天井まで5段はある造り付けの収納タナにぎっしりと収まっている。この風景は全く壮観だ!軽く5000枚はあっただろうか。レコード好きなら、このタナの前で紅茶など飲んでるだけで幸せだろう。僕はずうずうしく時々、気になるレコードを取り出して見せてもらったりしていた。改装オープンしばらくは、もちろんこのレコードをかけていたが・・・新しいグロッタは、「ジャズ喫茶」を前面に打ち出してはいなかったので、残念ながらこれらのレコードを大音量でドンドン聞かせる、というスタイルではなくなったようだ。カセットでかけるジャズのヴォリュームが少し下がった分、常連のお仲間が集まり、気楽にしゃべれる店になったのだ。そんなグロッタにもすぐに慣れてきた。それからしばらくは、ラビットを覗いたあとグロッタに寄る、というパターンが続いた。そうして、この頃からレコードを買うペースが急激に上がっていった。ラビットでいいレコードも見つかったし、社会人になっていたので「聴きたいレコードは自分で買う」というスタイルになっていったようだ。

evans_victor_001さて、この<ラビット>で入手したもので印象深いものを~中古盤がメインのお店なので、やはり国内盤が主になるが~何枚か、関連する盤も併せて紹介したい。

トニー・スコット/ザ・タッチ・オブ・トニー・スコット(ビクターRGP-1056)~ビル・エヴァンス目当てでマークしていた盤なので、これを発見した時は、とてもうれしかった。1972年にビクターがプレスティッジ1100円盤を発売した後の1973年のRCA系1100円盤の中の1枚らしい。ペラペラの折り返しジャケットが、当時はとても安っぽく感じたが・・・今では何故か魅力的である。「Aeolian Drinking Song」では、初期のエヴァンスの硬質なソロがふんだんに聴かれる。何かのTVジャズ番組でほんのちらっとだが、この頃かと思われるエヴァンスの映像を見た記憶がある。なんの曲だったかなあ・・・。この頃のエヴァンスのピアノは・・・わざと表情を隠したような冷徹なタッチと長いフレージングで・・・硬質というより・・・非情な感じさえ受けるハードボイルドなエヴァンスである。「オレは普通のピアノは弾かんぞ」と主張しているかのようなとても尖がった個性的なピアノだ。人によっては、この「冷徹な感じ」をレニー・トリスターノの影響が・・・と思われるかもしれない。僕はこの初期のエヴァンス、大好きである。58年のリヴァーサイド「Everybody Digs~」まではこの路線だったように思う。
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同じくトニー・スコットとの共演盤~「Tony Scott/The  Complete Tony Scott(LPM-1452)を、米ビクターのオリジナル盤を、ちょっと前にネットで入手した。フレッシュサウンドのLPやCDで聴いていたが、イマイチ音質が悪くて、この「犬ラベル」に期待したが~56年か57年のモノラル録音~ビッグバンドのサウンドがやかましくてこもったような音で・・・期待したほどではなかった。米ビクターのLPS(ステレオ)には、音のいいものが多いのだが。エヴァンスのソロは・・・「I Surrender Dear」や「Just One Of Those Things」でほんの少しと、B面最後の「Time To Go」で、ようやくエヴァンスのタッチの強弱を生かした、とてもいいソロが聴かれる。

ついでにジョージ・ラッセル絡みでのエヴァンス参加盤をひとつ。これもラビットで入手した。
ジョージ・ラッセル/ジャズ・ワークショップ(ビクター:RGP-1167)だ。ウラジャケ隅の表記によると1976年の発売らしく、同じビクターのRCAシリーズだが、価格も1300円盤になっており、もうペラペラ・ジャケではなくなっている。「コンチェルト・フォー・ビリー・ザ・キッド」という曲では、エヴァンスが大活躍だ。ちょっとラテンっぽいリズムでのテーマの後、4ビートになり、そこで・・・さきほど書いたような「ハードボイルド」なエヴァンスのソロがたっぷり聴かれる。今、久々に聴いていると・・・すごくいいソロです。それからちょっと新発見だ。エヴァンスのソロの始めころに「む~・・・・う~・・・」と、かすかな「唸り声」が聞こえるのだ。意外な感じだ。エヴァンスも唸るんだろうか・・・?

evans_victor_003 [右側がRGP-1167、左側がSHP]

左側のジャケ違い盤は・・・だいぶ後になって入手したのだが、これも日本ビクター盤が、ちょっと古い時代のSHP-5071(¥1800)だ。ジャケの色あいやトリミングの具合など、このSHP盤にも捨てがたい味がある。この盤は、テスト盤なのかセンターラベルは一切の文字なしであった。

さて・・・音の方は?  古い時代の盤の方がマスターテープの鮮度などの理由で音がいいのでは、と期待して聞いてみたのだが・・・この同一タイトルの日本ビクター盤を聞き比べた限りでは、残念ながら「古いSHP盤」の方が明らかに音質が悪かったのである。先ほどの「コンチェルト~」でのエヴァンスのハッとするような鋭いタッチが、1976年のRGP盤に比べると「こもったような感じでメリハリのない」感じに聞こえる。マスターテープの具合が悪かったのか、プレス具合が悪かったのか・・・。同じタイトルの時代(製作時期)よる音質の優劣・・・これは、オリジナル盤の1st、2ndの場合と同じく、そう単純には決められないようである。

ハンク・モブレイ/マイ・コンセプション(キング)~キングがブルーノートの版権期限切れの直前に「世界初登場シリーズ」として発売した頃は、まだ「未・ソニー・クラーク」だった(笑) だから・・・とっくに廃盤になった頃にこの盤の存在を知り、どうしても聴きたくて聴きたくて・・・そんなある日、この盤がラビットにあったのだ。この盤は・・・内容が本当にいい。ソニー・クラーク作のバラード「マイ・コンセプション」がモブレイのしっとりとした音色と相性が最高みたいで、入手以来、ず~っと愛聴盤となっている。
余談ではあるが・・・レコードの中古盤屋さんには、なんというか・・・「ある盤が出回る時期の法則」があるように思う。豊橋は地方都市なので東京のように、発売直後の新譜が(気にいらなくてなのか?)すぐに中古屋さんに出回る、というようなことはあまりなかったと思う。新譜で売れる量が少ないからだ。そういう地方都市ならではの「法則」とは・・・まあ法則なんて大げさなものではないが・・・例えば、あるタイトルの<CDが発売されて1~2ヶ月後>だ。中古盤の世界では、80年台後半に明らかに「レコードからCDへの移行」時期があり、この頃、たくさんの音楽ファンが、LPからCDにのりかえたようだった。だから・・・CDで発売されたタイトルのアナログ盤が、よく出回ったりしたのだ。だから僕は、狙っていたアナログものがCD化されると、それまでより短いスパンでラビットを覗くようにしていた。それから・・・CD化でなくても、例えば東芝がブルーノートのあるシリーズを出すと~新しいものに買い替えた人が手放すのだろうか~同じタイトルのキング盤が出てくる、というようなこともあったようだ。そんな具合だったから、僕は、「どうしても聴きたい復刻盤(あるいは完全未発表の盤~その旧譜はありえないわけだから)」は、新譜レコード店で買っていたが、それほどマークしてない盤の場合は・・・中古で出たら買おう、と待っていたりしたものだ。これはっ、と思うものは入手してきたが・・・今思えば・・・キングの初登場盤は、けっこう多くのタイトルが中古で出ていた。まだそんなに人気が上がる前で割安だったのに・・・

これは、どちらかというと珍盤の部類に入ると思うが・・・ evans_victor_004
ジュリアス・ワトキンス楽団/French Horns For MY Lady(フィリップスSFL-7048:日本ビクター発売)~サム・テイラーなどに代表してイメージされる60年代後半のムードミュージックの一種として発売されたようだ。「夜の誘惑ムード」というサブタイトルが可笑しくも哀しい。
ジュリアス・ワトキンスという人は・・・一聴、ヘタなトロンボーンに聞こえるあの楽器~
レンチ・ホルン~を吹くジャズメンだ。モンクのプレevans_victor_005スティッジ盤(ロリンズ入りの「13日の金曜日」セッション)でこの人の名前を覚えていた。この盤はたしか・・・3枚1000円のコーナーに混じっていた。確かに、ただの「古いムードミュージックのLP」なんで(笑) 僕はうれしく確保したのだった。内容はクインシー・ジョーンズのアレンジに、エディ・コスタのピアノやらジョージ・デュヴィヴィエのベースも入り、悪くないアレンジジャズだ。

ラビットフットレコードは、2003年8月31日に閉店した。ラビットのオーナーだった小川真一氏は、現在、レコードコレクターズなどに評論を書かれている。ラビットの閉店セールの模様はこのアドレスでどうぞ。

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2005年11月17日 (木)

<思いレコ 第7回 トニー・ベネットとビル・エヴァンスとのデュオアルバム>

少し前に<思いレコ 第6回 ビル・エヴァンス>のところで~歌詞なんてただの言葉じゃないか~と書いた。「インスト」においては、楽器で表現する「音」というものが全てであり、だから、あるスタンダード曲のテーマを吹く(弾く)時、その曲の歌詞を思い浮かべながら・・・というようなことは不自然なことだ、ということを言いたかった。唄には歌詞が必要だが・・・インストには歌詞は必要ない。いかに、楽器を唄わせるか・・・それだけだ。
こんな僕だが、たまには、ヴォーカルのレコードも聴く。あの記事の最後の方にも書いたが、僕が「ヴォーカル」というものに目覚めたのは、エヴァンスとトニー・ベネットのデュオアルバムからだった。聴いていて「ああ・・・ヴォーカルというのもいいもんだなあ」と素直に思えたのだ。

エヴァンスとベネットのデュエットアルバムは、2枚ある。bennett__evans_001

The Tony Bennett Bill Evans Album(fantasy) ビクター 1975年


伴奏はエヴァンスのピアノだけ。全曲が、ベネットとエヴァンスのデュオだ。
この盤は・・・82年10月に入手している。当時、エヴァンスの音は何でも聴いておきたかったので、この「ヴォーカル」のファンタジー盤も入手したのだろう。たぶん、この時まで「ヴォーカル」のレコードを、ほとんど買ったことがなかった。ジャズをどんどん好きになってきていて、まだまだ聴きたい、いや、聴かねばならぬインスト盤が山ほどあったので、ヴォーカルものにまで手を拡げることは、とても無理だったのだ。

ここでひとつ告白すると・・・僕はエヴァンスを大好きではあるが・・・ソロピアノでのエヴァンスを、実はそれほど好きではない。ソロピアノの世界では、モンクやダラー・ブランド、ランディ・ウエストンの方が好みなのだ。モンクは、ソロピアノの場合は、最初から「タイム」を自由にしているかのようで、全編ルバート、というか自由自在にタイムを伸縮させているようだ。むちゃくちゃにタメて弾いたり・・・わりとキッチリとインタイムで弾いてみたり・・・だけども聴いていて、何の不自然さも感じないだ。 むしろ、コンボでのソロパートでの方が、モンク独特の「タイムの歪ませ方」が、自ずと限定されてしまう場面もあるようだ。
エヴァンスのソロピアノは・・・ルバート風なところとイン・タイムなところが・・・何かこう「構成」として成り立っているようで、聴いていて、ちょっとだけ窮屈なイメージがあるのだ。モンクのソロピアノからは、そんな窮屈な感じを受けない。エヴァンスは・・・だから、ソロピアノの場合でも、常に「タイム」を強く意識しているタイプのピアニストなのだと思う。
しかし・・・そのエヴァンスの「タイム意識」が、こういうヴォーカルアルバム(ピアノだけの伴奏)では、すごく「生きた」のだと思う。このデュオでのエヴァンスの伴奏の素晴らしいこと! どの曲も、エヴァンスの短いイントロ~テーマにベネットの唄~エヴァンスのソロピアノ~ベネットの唄~というパターンなのだが、後半、ベネットが「どこ」から入るか~くらいは、もちろん決めてあったとは思う。そして、エヴァンスという人は、そういう「適度な枠」がある方が、自分ひとりだけのソロ演奏よりも~展開がやや冗長になり「構成的」になりすぎる感じがある~かえって素晴らしく職人的な技を見せてくれるようだ。ルバート的に弾く場面とキッチリとタイム・キープをする場面。その辺りの調節は、ソロピアノゆえに柔軟にやりくりできるのだ。エヴァンス独特のタイム感(つっこむような)と独特なフレーズで・・・もう完全に自分のの世界を創ってしまう、エヴァンスのソロ。普通の唄伴での「つなぎ」という感じのソロではない。ここまで自己主張のあるジャズのアドリブを「唄伴」でやってしまうエヴァンスという人・・・素晴らしい!   
そうしてさらに唸るのは・・・これほど突出したソロピアノの地平から、今度は「唄伴」のピアノ弾きとして、そこから見事に、自然に、無理なく、「唄がスタートした時のテンポ」に戻してくることだ。ベネットの出だしのちょっと前には、見事にテンポを安定させる。運転の巧い人が、シフトダウンとアクセルワークを巧みに操って、とてもスムースに減速したような感じだ。だから・・・「ああ、ここで唄が入ってくるぞ」と思わせてくれるのだ。そして、やはりそこから、ベネットの唄が入ってくる。トニー・ベネットの声は、ややくすんだようなしわがれた声だ。ベネットというと、声を張り上げるようなイメージがあると思うが、このアルバムでは、そのような場面はほとんどない。ゆっくりとしたバラード風が多いのだが、この声で、歌詞の一言一言を、ていねいにかみしめるように、唄いこんでいく。唄の最後に、声が消え入る瞬間まで気持ちがこもっているような唄い方だ。
<young and foolish>
<some other time>
<we’ll be together again>

どの曲にも・・・深い味わいがある。何度も聴いてきたこのデュオアルバムを、このところ、再び2度3度と、聴いている。その度に
感じることは・・・2人の作り出す世界~その雰囲気、色彩みたいなものが、見事に調和していることだ。そしてその調和は・・・
2人がただ無難に合わせようとしたのではでなく、ひとつの曲の中で、それぞれの個性をぶつけ合いながら、それでいてお互いが見事な
バランス感覚を発揮し、そうしてその曲を仕上げていく~そんな中から生まれた調和なのだと思う。そんな厳しくも美しい表情が、このアルバムにはある。2人の「唄」を聴くことで、なぜかしら・・・人生の、厳しさ、寂しさ、そして温かさ、を感じさせてくれる。
本当に素晴らしいヴォーカルのレコードだと思う。

この「トニーベネット/ビル・エヴァンス・アルバム」を聴いて、ベネットを好きになった僕は、いくつかベネットを入手した。

bennett__evans_002 Tony Bennett & Bill Evans/Together again(improv)テイチク 1976年

デュエット続編の improv盤もすごくいい。
fantasy盤に比べると、ちょっと地味な曲が多いが、逆に、それがいいとも言える。
バーンステイン作の<lucky to be me>やミシェル・ルグラン作の<you must believe in spring>は、素晴らしい。

それから、けっこう愛聴している2枚組LPがある。
Columbiaレーベルからの「ジャズの曲」を集めた2LPの「ジャズ!」だ。たしか80年頃に発売された盤だ。この2LPには、スタン・ゲッツやエルヴィンとの未発表セッション3曲ほどが収録されていた。
この中の1曲、<Danny Boy>は、なかなか素晴らしい。ゲッツとエルヴィンをバックに唄うベネット・・・かっこいいです。

ベネットの古い時代のもの。これは、どれも悪くない。そりゃあそうだ、トニー・ベネットは、もともとジャズマインドの強い唄い手で、
すでに1955年くらいから、ジャズっぽい内容の盤をあまた出しているのだから。初期の2~3枚だけ挙げておく。

Cloud 7(1955 columbia) チャック・ウエイン(g)など。(未入手。konken氏が所有。ときどき聴かせていただいている)
the beat of my heart(1957 columbia) ブレイキーやチコ・ハミルトンなど。(近年のCBS再発盤を入手)
strike up the band(1959 roulette ) ベイシーとの共演。(CDです・・・)

bennett__evans_003ああ、そうだ。初期のもので、もう1枚、とてもいい盤がある。
Tony Bennett Sings a String of Harold Arlen(columbia 1960年)だ。僕の手持ち盤は、残念ながらCDだ。(CBSソニー)

ハロルド・アレンは、昔から好きな作曲家だ。地味だが、いい曲がいっぱいある。作曲家と唄い手の相性、というものもあるようだ。そして、トニー・ベネットとハロルド・アレンの相性。これが・・・抜群にいいのだ。
ベネットの「ちょっぴり幸せな気持ち」にさせてくれるような唄い方・・・これがハロルド・アレンのメロディとよく合うのだ。
<I’ve got the world on a strings>
<over the rainbow>
<when the sun comes out>
が、特に好きだ。
ああ、それにしても・・・世の中には、「いい曲」がいっぱいある。ジャズは・・・まだまだ止められない。

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2005年11月13日 (日)

<ジャズ雑感 第11回> ジャズの廉価盤シリーズとその発売小史:A面

1972年秋、ジャズの廉価盤~宣伝用の小冊子・チラシの楽しみ。

1971年、中3の時からジャズを聴き始めた。LPレコードの当時の2000円というのは、今なら5000~6000円くらいの感覚だろう。だから、そうそうLPレコードなんて買えやしない。だから、最初の頃は、とにかくFMラジオのジャズ番組がたよりだ。カセットテープにどんどん録音して、何度も聴き返した。それでも72年春頃から、テープで聴いてすごく気に入ったモンクやマイルスのLPを、少しづつ買い始めたのだ。そんな72年の秋に、「ジャズ廉価盤」が発売された。僕はこの「廉価」を「レンカ」と読めずに、長い間、間違って「ケンカ」と呼んでいた(笑) そうして・・・1972年は・・ジャズの「ケンカ盤」ブームの年だった。このビクターがキッカケとなって、各社から続々とジャズの名盤が発売され始めたのだ。たいていは、1回の発売で10~20タイトルで、それを何回か続けていったように記憶している。2~3年の間に、1200円、1300円、1500円と、じわじわと値上げしつつ、それでも各社から相当なタイトルが発売されたように記憶している。
9月からの年内に発売されたシリーズは以下。たぶん、全てが限定盤だったはずだ。(  )内がシリーズ名で~以下が宣伝文句だ。

1.日本ビクター 1100円盤シリーズ(prestige jazz golden 50)
~50年代ハードバップの”幻の名盤”20枚~
72年9月5日発売。コルトレーン/コルトレーンなど20タイトル。コルトレーンやロリンズ、モンクの主要盤以外にも、ジジ・グライス/セイング・サムシング や ベニー・ゴルソン/グルーヴィング・ウイズ・ゴルソン など渋いタイトルも出ている。

僕は、自転車で「街」(豊橋の駅周辺のことを「街」と呼んでいた:笑)まで出かけ、レコード店から、こういう「廉価盤シリーズ」の小冊子やパンフをもらってきて、解説を読んでは、「次は何を買おうかな」とかの作戦を巡らしていた。ビクターのプレスティッジ/1100円廉価シリーズは、「オリジナル通りの復刻」というのが「売り」だったので、裏解説もオリジナルの写しで英語のままだった。それまでの国内盤はジャケ裏が「日本語の解説」という仕様が多かったのだが、そうじゃない場合には、中に「解説書」がつくのが普通だったのだが、この「ビクター1100円シリーズ」では、中の解説書も一切付いていなかった。「オリジナル通り」というより、コストを抑えるためだったかもしれない。その替わりに、発売タイトルを特集したような「小冊子」をサービス品として、レコード店に配布していたようなのだ。1枚買えば、この「小冊子」を付けてくれた。同じ小冊子がスイング・ジャーナルにも付録として付いていたはずだ。その小冊子がこれだ。

jazz_catalogue_001(左の写真の右下:コルトレーンの表紙のもの)

この小冊子には、20枚の発売タイトルの紹介だけでなく、プレスティッジレーベルに関する、ちょっとしたこぼれ話しや、幻の名盤的な情報などおもしろい記事も多くて、それから7000番台、8000番台のリストも付いていた。 jazz_catalogue_003

この prestige jazz golden 50シリーズは、50と銘打ってあるので2~3回に分けて発売する予定だったのだろうが、初回20タイトルが思ったより売れなかったためか、あるいは、途中で版権が東芝に移ってしまったためか、いずれにしても、この20タイトルで終わってしまった。しかしビクターはなかなか良心的だった。というのは・・・76年か77年頃に、版権が再びビクターに戻った際に、普通の価格ではあったが、相当数のタイトルの復刻を再開したのだ。その際の「小冊子」がこれだ。jazz_catalogue_002

(写真右:右下の横長のもの)65ページも
ある、なかなかの豪華版カタログである。
スティーブ・レイシーの「エヴィデンス」やら
ウオルト・ディッカーソンの「トゥー・マイ・クイーン」など、気になるタイトルが復刻された
ようだ。

2.日本コロムビア 1100円盤シリーズ(jazz historical recordings)~輝かしいジャズの歴史の1頁がここにある。クリスチャンが! ロリンズが!~ 
72年11月発売。ロリンズ/ソニー・ロリンズ・プレイズ など。これは、periodやeverest という当時は全く珍しいレーベル原盤の復刻シリーズだった。コロムビアも小冊子を作った。廉価シリーズだけでなく、ルーレットやルースト、MPSなどの所有レーベルの発売タイトルを紹介した総合カタログ(72ページ)のようなものだった。(一番上の写真:左のもの)
僕はロリンズやモンク入り?のチャーリー・クリスチャン、ジャンゴ・ラインハルトなどを入手したが、サド・ジョーンズ/マッド・サド ジョン・ラポータ/モスト・マイナーなど渋い盤も発売されている。この2枚は、一時期、国内盤の廃盤人気が高かった頃に、かなりの値段まで上がったように記憶している。
「ロリンズ・プレイズ」は、ヴィレッジヴァンガードのライブの翌日の録音ということで、A面3曲のみだが、どれも素晴らしい。<sonny moon for two>では、アイディアに満ちたアドリブで、余裕のロリンズが聴ける。 ちなみに、サド・ジョーンズ/マッド・サド~この中にエルヴィン参加セッション、3曲が入っている。

3.日本フォノグラム 72年12月5日発売。
1100円盤シリーズ(フォノグラム1100コレクション)~ジャズレコードのイメージを変えた全く良心的企画!~
 キャノンボール・アダレイ/イン・シカゴ や ジェリー・マリガン/ナイト・ライツ など10タイトル。

”全く良心的”という表現がおかしいが、要するに、中の解説書も付いてますよ、ということだったらしい(笑)

73年になると、CBSソニー/1100円盤、テイチク/メトロノーム1200円シリーズなども出たと思う。キングのコンテンポラリー復刻は、もう少し後だったように記憶している。

少し経った75年にビクターが「リバーサイド・オリジナル・シリーズ」を開始した。これは廉価の限定発売ではなく、2200円の通常シリーズだった。この2~3年前からモンクやエヴァンスを好きになっていた僕は、その頃、出回っていた abc Riversideの茶色の環っかラベル盤や日本ポリドールからの数少ないリヴァーサイド盤を何枚か入手していたので、リヴァーサイドというレーベルには、もう興味深々だったのだ。
ビクターは、このリヴァーサイド発売時にも、お得意の小冊子を配布した。これも入手している。(右上の写真:右上のもの)
この「リヴァーサイド小冊子」が、「Riverside best selection 100」 と題した32ページもある素晴らしいものだった。
jazz_catalogue_004モンクやエヴァンスの主要盤だけでなく、他にも地味だが内容のいい(あとになって、それがわかってきた)それまで日本盤未発売タイトルの写真と、詳しい解説が載っており、リヴァーサイドの資料としての実用性もあり、とてもありがたかった。オリン・キープニューズという名前を知ったのもこの小冊子からだ。

CBSソニーも、発売タイトルのカタログを兼ねたような小冊子を1年ごとに作っていたようだ。(一番上の写真:真ん中)

これらの小冊子は、コストがかかるので、どのシリーズでも作られた訳ではない。フォノグラムとかテイチクとかは「チラシ」だった(笑) スイングジャーナルとかをチェックすると、たいてい翌月に発売される「~シリーズ」とかの宣伝が載ってる。それそ覚えておいて、発売ちょっと前にレコード店に行くと、たいていは、こういうチラシがタナの上とかカウンターの下とかに置いてあるのだ。ジャズファンなんて、日本中集めても、ほんとに少ないのだろう。どのチラシも、なかなか減らないようで、発売後にもダラダラと残っていた(笑) 

こんなチラシの類も集めた。もちろんレーベルの資料としても欲しかったのだが、どちらかというと・・・とても全部のタイトルは買えないので、せめて「チラシ」のジャケット写真でも眺めていたかったのだ。(笑)

これら「チラシ」にも、眺めているだけで、なかなかおもしろいものが多い。チラシについては・・・ビクターやコロムビア、それから、CBSソニー/1100円盤、テイチク/メトロノーム1200円シリーズ、フォノグラム/マーキュリージャズ1300円シリーズなどを、この「ジャズ廉価盤シリーズとその発売小史:B面」として、いずれ紹介するつもりだ。
ジャズレコード・・・まだまだ未知の盤がいっぱいだ! 

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2005年10月 3日 (月)

<思いレコ 第6回> ビル・エヴァンス/Peace Pieace & Other Pieaces(milestone)

マイルストーンの2枚組~ビル・エヴァンスのこと。

マイルストーンの twofer シリーズというものがあった。1972年頃から、主にRiverside、Prestigeの音源を2枚組として、再発したものだ。2枚組の廉価盤・センターレーベルも「濃い朱色のマイルストーン」・安っぽいジャケ写真・盤もペラペラ、という体裁なので、コレクト的価値は・・・ほとんどないだろう。今でも中古店で時々は見かけるが、かわいそうなくらい安かったりする。しかし、このtwoferが初出自だったセッションもけっこうあり、OJC以前には、とても重宝したのだ。当時は、ジャズ雑誌などにも輸入盤の情報などほとんどなかった。だから名古屋まで出かけて、輸入盤を扱うレコード店で「初めて」目にするのだ。そうして、その場で中身(の価値)を判断するしかない。最初の頃のtwoferは、ビッグネイムのミュージシャンのベスト集みたいな編集だったが、すぐに、2種のオリジナルLPをそのまま2枚組とすることが多くなったようだ。そして・・・その再、「未発表テイク」がいくつか付け加えられていることがたびたびあったのだ。マイルストーンは、オリン・キープニューズが監修していたので、特に「リバーサイド音源」のLPにその追加テイクが多かったのだ。僕の記憶では、「新品」の twoferはシュリンクされていたので、見開きジャケは開けられなかった。しかし、ジャケ裏の表記で、たいていの情報は判った。その2枚が、どのLPとどのLPのカップリングなのか?そのカップリングがそのままなのか、あるいは何らかの追加テイク、未発表テイクが入っているのか? 大体の場合、ジャケットにpreviously unrelased とかnewly discovered とか書いてある。今で言えば、「ボーナス・テイク」や「新発見のセッション」がCDで発売されるのと同じ感覚だ。DSCN0913

そんな twofer もので、ひときわ印象深いものがある。Bill Evans/peace piece &  other pieces (milestone)~Everybody Digs Bill Evans と「未発表セッション」のカップリングだ。これを見つけた時は、うれしかった。
「Everybody」も持っていなかったし、それにその「未発表」が、全く未知のトリオセッションだったからだ。ジャケ表紙に including 6 previously unissued selections と書かれており、ベースがチェンバース、ドラムスがフィリー・ジョーだった。この6曲は、「オン・グリーン・ドルフィンストリート」としてビクターから発売されたはずだ。この2LPには、さらにもう1曲・・・Loose Blues という曲も入っていた。ズート・シムスやジム・ホールとの共演で、不思議な雰囲気のブルースである。こちらの「ズート入りセッション」も、80年代に「アンノウン・セッションズ」というタイトルで、ビクターから発売された。さて、キープニューズは、この2枚組を「peace pieace and other pieces」と呼んだわけだが、このタイトルは、実はとてもおもしろい。というのは・・・Everybodyに入っているピアノソロに<peace pieace>なる曲があること。さらに・・・この曲は、バーンステイン作の<Some Other Time>と深い関係にあるのだ。もちろんこのことは、エヴァンス自身がキープニューズにも語ったようで、この2LPの解説の中で、キープニューズは、こんな風に書いている~『この日の成果は、エヴァンスが<Peace Pieace>と名づけた、注目すべきソロ・インプロヴィゼイションだ。この演奏は、全く偶然に生まれたのだ!エヴァンスは<Some Other Time>(40年代のミュージカル/On The Town)を演ろうとしていて、なにやら独自のイントロを工夫しているうちに・・・バーンステインの元メロディよりも、エヴァンス自身が気にいるような世界に入り込んでいったのだ』~こんなストーリーもあったらしい。その<Some Other Time>のタイトルともかけて other piecesと名づけたのだろう。なかなかシャレが効いてるじゃないか。

さて・・・この「Everybody Digs」。ビル・エヴァンスのあまたあるLPの中でも、エヴァンスのピアノプレイに限定した場合、私的エヴァンスNO.1である。まず<Minority><Oleo>などのちょっと早めの4ビート曲が素晴らしい。右手のシングルトーンで独特の長いラインを弾くのだが、とにかくタッチが強く(エヴァンスとしては)いつもに増して硬質な音を聞かせてくれるのだ。コリコリしたタッチで紡がれる個性的なアドリブが、すごく魅力的だ。それから、うんとスロウなバラードとして<Young and Foolish><Lucky To Be Me:ピアノソロ><What Is There To Say>それから<Peace Piece:ピアノソロ>。これらのバラードが・・・凄い。モンクとはまた別の感覚として・・・本当に「孤高」のサウンドというような世界を現出させている。エヴァンスは、これらの曲の録音時、相当に何か「深いfeeling」に浸っていたはずだ。<Young~>は、エヴァンスのピアノだけで、ルバート風に始まる。もうすぐに曲の芯にある「ググッと沈み込んだ感じ」に入り込んだような音世界になってしまう。しばらくソロピアノが続き、ようやく、ベースとドラムスが入り、イン・タイムになるが、あくまでもかなりスロウなバラードのままである。

このtwofer2LPの「Everybody~」は、モノラルだ。75年remasteredby David Turner となっている。音質は・・・特に悪いわけではないが、まあOJCと似たりよったりというくらいだろう。先日、たまたまこのEverybody~の「黒ラベルのステレオ盤」を、初めて聴く機会があった。58年12月録音だから「ステレオ」がオリジナル録音なのだろう。その音質は・・・この頃のエヴァンス独自の硬質なタッチ、これがクッキリと右チャンネルから聞こえてきた。バラードでの、ピアノの「鳴り」にも、素晴らしいものがあった。フィリージョーのやけに鳴りのでかい「響き」もよく出ている。サム・ジョーンズのベース音も相当にでかそうだ。ウイルバー・ウエアほどの「大きさ」ではないが、やはり同じスタジオでの録音なのか、同質の「響き方」をしているようにも聞こえる。このサム・ジョーンズとフィリージョー。一見、エヴァンスのピアノとは合わないような感じを受けるが、そんなこともない。ギリギリと繊細に研ぎ澄まされたようなエヴァンスのピアノに、豪放になるフィリージョー。これが意外に合うのだ。ここで「繊細」なドラムスが寄り添うように撫でる~モチアンのように~のも悪くないが、この58年ハードバップ&沈潜バラードのエヴァンスには、僕はフィリージョーで最高だと思う。(そういえば78年に来日したエヴァンストリオ~名古屋で見ました。ドラムスが・・・フィリー・ジョーだったなあ・・・)ピアノトリオの力感がいいバランスで入っている「いいステレオ録音」だと思う。あの「ステレオ黒ラベル」のEverybody Digs・・・いつか入手したいものだ。

「バラード」といえば・・・マイルスが言ったとか、マイルスの自伝本に出ていたとかだったか・・・よく言われることがある。「バラードを演奏する時には~その唄の歌詞を思い浮かべながら演奏するのだ。そうすると、その唄のフィーリングがより表現できるのだ」という話しだ。僕は、この話しを信じない。歌詞?そんなもん、ただの言葉じゃないか。(ヴォーカルをやっている方、すみません(笑) インストに限った話しです) 「love」と言いたいときに「love」という言葉を思い浮かべるのなら・・・詩でも小説でもやればいいことだ。音楽(インスト)ってのは、もっと単純に「音」の世界のはずだ。言葉じゃない「純粋に抽象的な世界」、それだけのはずだ。発する「音」が全てなのだ。後はもう・・・その「音」から、これまた全く抽象的な feeling を感じればいいのだ。その feeling も「怒り」とか「優しさ」なんていう具体的なものじゃなく・・・「何らかの雰囲気~atmosphere」みたいなもの、そういうものでいいのだと思う。マイルスが、トランペットを吹くときに、本当に彼の脳内で「歌詞」を思い浮かべている、とは思えない。あるいは、「ちょっとした話し」として、そう語ったのかもしれない。それより、この「歌詞思い浮かべ説」について、僕がひとつうれしかったのは・・・かなり後期のエヴァンスのインタヴュー記事(80年9月に亡くなったので、その1~2年前だったか)の中で、こんなことが書かれていたことだ。

《僕はバラードを弾く時・・・歌詞なんて思いださないなあ。それよりその曲の持っているfeelingみたいなものを、出そうとするだけだよ》

みたいな内容だったはずだ。これを読んだ時・・・ああ、やっぱりそういうものだよなあ、と強力に納得したのだ。その記事を読んで後は、それまで以上に・・・エヴァンスを好きになったような気がした(笑)

どのスタンダードにもタイトルがある。そうしてそのタイトルから、その唄がだいたいどんなことを唄った(唄おうとした)のか、わかるのだ。そうして、どのスタンダードにも、その「メロディ・ハーモニー・リズム」から浮き上がってくる独自の「雰囲気~atmosphere」というものがあるのだ。<Young and Foolish>・・・若くて愚かだった・・・このタイトルだけあれば充分じゃないか。 さっき、「ビル・エヴァンスはこれらの曲の録音時、相当に何か「深いfeeling」に浸っていたはずだ」と書いた。何度聴いても・・・本当に深みのある内省的なエヴァンスのバラード演奏である。僕の勝手な推測では・・・エヴァンスは、このタイトルだけを「イメージ」したのだと思う。イメージだけ。あとは、「曲」と「音」しかない。もちろん、エヴァンスは、もうこの曲を大好きで好きで、だからこそ、吹き込んだのだと思う。だがしかし・・・演奏時に「歌詞」を思い浮かべる、などというレベルで、こんなにも深く沈潜したような feeling が生まれるだろうか?僕の耳には・・・この演奏は・・・エヴァンスのインタヴュー記事の真意を100%裏付けている、ように思う。
ちなみにエヴァンスは、この曲をやはり本当に好きなんだろう・・・うんと後のトニー・ベネットとのデュオアルバム(fantasy:1975年)でも、吹き込んでいる(A面1曲目) おまけに・・・あの<Some Other Time>も取り上げているのだ(笑) このレコードは、それまでほとんどインストものしか聴かなかった(聴けなかった)僕を、「ヴォーカルというのもいいものだ」と思わせてくれた恩盤なのである。エヴァンス興味だけで買ったのだが、ベネットのちょっとしゃがれた声や、バラードでの深み・表現力みたいなものに、惹かれるようになった。伴奏がエヴァンスのピアノだけ、ということもあってか「唄」がやたらと格調高いのだ。 トニー・ベネットについては・・・また別の機会に。

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2005年9月 4日 (日)

<思いレコ 第4回> セロニアス・モンク/ザ・モンク・ランズ・ディープ(vogue/東宝)

ニーノニーノの「こだわりの杜」~趣味でつながる楽しみ。

ニーノニーノというオリジナル盤通販のお店がある。そのニーノの新納さんは、HPも運営しているのだが~オーディオやレコードのセンターラベルの話しが満載の中身の濃いHPである~そこにはBBS「こだわりの杜」もあって、「拘りのオヤジたち」が、連日、親密なやり取りをしているのだ。最初に書き込む時には、ちょっと思い切りが要るかもしれないが、一度入ってしまえば、思いのほか気さくな方たちばかりである。僕も1年ほど前から、ちらちらと書き込みをするようになった。4月には、長野の白馬で「杜の会」なるオフ会が開かれたので、普段、出不精の僕もそのオフ会に参加したのだ。そこで、Dukeさんを始め、普段、ハンドルネイムでやりとりしている皆さんと~この「白馬」では、栃木・群馬・静岡・愛知・長野・大阪などから集まった「杜の住人」の方々~実際にお会いしたわけだが・・・いやあ、これが驚くほど自然な打ち解け具合だったのだ。我ながら偏屈な人間だよなあ、と思ってる僕なんかでも、初顔合わせの方々とすぐに打ち解けて、好きなジャズや音楽についてのいろんな話しができてしまうのだ。皆さんの持ち寄ったレコードもいろいろ聴けて、本当に楽しかった。「趣味」だけでつながる集まりというのは、実にいいものです。そんなこともあり、その後の「杜」というBBSでのやり取も、いっそうリアリティが増した、というか「立体感」が出てきたような手ごたえもある。
白馬でのオフ会から一週間後、Dukeさんから電話があった。HPの次の「コラム」を書いてくれ、「テーマは自由。なんでも好きに書いてください」とのこと。 この「コラム」というのは、「杜」の常連さんが、ほぼ月替わりの交代で、「ジャズやオーディオへの思いのたけをぶちまける」みたいなコーナーだ。あのコーナーに、自分の「文章」が載るのか! もちろんたいへんに光栄なことで、うれしくもあったのだが・・・さて何を書こうか。僕の場合、とにかくもうジャズが好きで好きでという状態なんで・・・そういう「ジャズへの拘り」具合なら、なんとかなりそうに思った。だから、中3の頃から自分が「どんな風にジャズという音楽へ没入していったか」みたいなことを書き始めたのだが・・・それからの2週間ほどは大変だった(笑) なかなか書けないのである。いや、書くには書くのだが・・・言い回しが判りにくいし、文章もガチガチ(笑) 普段の「杜」への書き込みは、誰かの話しへの反応やら、ちょっと自分から話しを振ったりで、ずいぶんと気楽に書けたんですが・・・いざ、「コラム」という場所を与えられて、そのスペースが、自分だけにまかされてしまうと・・・これが、妙に構えてしまうのです。そんなに大げさに考えるな、いつもの書き込みと同じだ、気楽にいけよ。もっと長く書いてもいいんだぞ、と自分に言い聞かせるのですが・・・そうは、なかなかできないもんなんです(笑)
例えば・・・ただ「モンクが好きだ」と書けばいいのに「僕はどうしてモンクが好きになったのだろうか?」とか変な言い回しになったり(笑) まあそれでも、結局は・・・自分の好きなジャズ、そのジャズ遍歴を回想風に書くしかない、という気持ち的な開き直りも経て、どうにかそのコラムを書いたのだ。けっこう何度も書き直したりしてましたが(笑)
そのコラムは、6月いっぱい、「ニーノニーノのコラム」欄に on air (笑:言葉の使い方が違ってますが)されていた。杜のみなさんから暖かい反応をいただくたびに、つい読み返してみたりしましたが、ガチガチな文章は、もはや変わるはずもないのでした(笑)
そのコラムの中で挙げたミュージシャンたちは・・・もちろん僕の個人的な好みの歴史なので、どの方にも共通する感覚というわけもないのですが、読まれた方には、bassclef という人間の「ジャズの趣味」がどんな具合なのかということは、判ってもらえたように思います。
「白馬・杜の会」があり、その白馬でのことを「杜」へ詳しく(いや、しつこく:笑)書き込みしたりしているうちに、さらに「コラム」も書くことになり~そうこうしてるうちに、どうやら「ジャズへの自分の想い」を、もっともっと綴りたくなってきてしまったようです。もともと、レコードへの思い込みは強い方だったので、自分のレコード購入記録みたいなものを<レコード日記>として書いていたんですが、4月初めにパソコンが壊れてしまい、(バックアップも取らないタイプなので)それらも全部、消えてしまったのです。そのことへの若干の「拘り」もあったのかもしれません。そんなわけで・・・5月末からこのブログ<夢見るレコード>を始めたのです。いずれにしても、僕がブログを始めたきっかけは、間違いなくあの「コラム」だったのです。ジャズへの想いを「コラム」という型でまとめる機会を与えてくれた、新納さん・・・いやDukeさんには、とても感謝しています。
そのコラムをここに再録します。この転載を快諾していただいたDukeさん、改めて・・・ありがとうございます!ジャズへの想いを正直に書いたつもりです。このガチガチ具合を笑って許してください(笑) 
Blame It On My Youth...

<全てはモンクから始まった>

~自分でもあきれるほどジャズが好きだ。休みの日には、たいていLP10枚くらいは聴く。なんでこんなにジャズが好きなんだろう?・・・よく判らない。でも<ジャズが好き>ということは、僕という人間の正真正銘の真実だ。この先、ジャズを聴かなくなるなんてことは・・・絶対にない。
これほど僕を惹きつけるジャズ。このどうしようもなく魅力的な音楽に、僕はどんな具合に、はまり込んできたのか。ちょっと思い出してみる。

・・・中3の時、マイルスデイビスをカセットに録音したのがきっかけだ。たしか週1回のNHK-FMのジャズ番組で、この日の放送はマイルス特集、DJは児山紀芳。今、思えばなぜ録音したのかわからない。その頃は、サイモンとガーファンクル、エルトン・ジョンなどを好んで聴いていたのだ。LPレコードはとても高くて、2ヶ月に1枚買えるかどうかだった。だからFMからいろんな曲を録音しては、気に入らなければそれを消去してまた使う、という感じだった。あの頃は、カセットテープも(まだTDKという名に変わる前の東京芝浦電気と漢字で書いてある真っ赤な箱のやつ)けっこう高かったし、決してムダ使いはできなかったのだ。 だから・・・名前だけ知っている「マイルス・デイビス」なる人を一度は聴いてみよう、くらいに思ったのかもしれない。いまだ鮮明に覚えているのは・・・その放送の中で、児山紀芳がマイルスの人物評として「タマゴの殻の上を歩くような」というフレーズを紹介していたことだ。そうしてその紹介のあとに流れた曲が・・・<ラウンドミッドナイト>(columbia/1956年)だ。「タマゴの殻?」そんな人物評にも興味を持ち、思わずカセットの録音ボタンを押したのだった。そんな風に気まぐれに録音した<ラウンドミッドナイト>。最初は、演奏なんかよくわからない。ただ・・・あの曲のもつムードに「何か」を感じた。そうして何度か聴くうちに、あのなんともいえない神秘的なテーマとそれを奏でるマイルスのミュートの音色が、もうグングンと僕の心に染み入ってきたのだ。さらに繰り返し聴いているうちに、マイルスのテーマが魅力的なのはもちろんだが、コルトレーンが出てくる場面にもゾクゾクしてくるようになった。そうしてラストのテーマでは、再びマイルスのミュートに戻る。このテーマに戻る場面でも、いつも気分がよくなるのだった。
「静寂」から「躍動」、再び「静寂」に戻る、という自然な流れ。何度でもまた繰り返して聴きたくなる。・・・それまでには味わったことのない感覚だった。

その少し後・・・今度は「あの曲」の作曲者、セロニアス・モンク自身のソロピアノでの「ラウンド・アバウト・ミッドナイト」(vogue/1954年)を再びFMから録音した。マイルスのミュートが演出したあの曲の持つ「独特なムード」に慣れていたせいか、このモンクのソロピアノにも違和感など全く感じることもなく、いやそれどころか・・・モンクのピアノは、不思議なくらいに、本当に真っ直ぐに僕の心に入り込んできてしまったのだ。マイルスのラウンドミッドナイトは、もちろん素晴らしい。でもモンクのこの演奏には・・・もうムードなんてものを通り越して、モンクという一人の人間が、自分のあらゆる感情を吐露しているような厳しさがあった。モンクの、いや、あらゆる人が、人生を生きていく上で味わう感情・・・<挫折><孤独><哀愁>そして<優しさ><希望>・・・みたいなものが、この演奏の中に封じこめられているかのようだった。(そういう風に聴こえた)

このモンクのソロピアノのレコードは、なかなか見つからなかった。高1の夏に、東芝ブルーノートの国内プレス(ジニアス・モンク vol.1)を間違えて、買ったりしました。「ラウンド・アバウト・ミッドナイト」という曲が入っている、という理由だけで買ったのだが、このLPに入っているバージョンは、モンクによる初演(1947年の3管入りのもの)だった。「なんか違うなあ・・・」とがっかりしたのだ。(笑)その年の秋だったか・・・ようやく vogue録音のソロピアノのLPが東宝から発売されたのだ。タイトルは・・・セロニアス・モンク/モンク・ランズ・ディープ(東宝) ようやく、あの「ラウンドアバウトミッドナイト」に出会えたのだ。すぐに手に入れて・・・・・このレコードは、本当に何度も何度も聴きました・・・・。runs_deep    

このLPには、ラウンド・アバウト・ミッドナイト以外にも、リフレクションズ(ポートレイト・オブ・アーマイト)、オフマイナー、ウエル・ユー・ニードントなどモンクの傑作曲が入っており、全てが気迫のこもった素晴らしい演奏ばかりです。。その中で、唯一のスタンダードの「煙が目にしみる」・・・これがまた素晴らしい!よく「モンクは変。判りにくい」とか言われるが・・・この「煙が目にしみる」みたいなスタンダードを弾くときのモンクは、一味違います。誰もがよく知っているあのメロディ、あの魅力的なメロディーをそれほど大きく崩したりはせず、謳い上げています。強いタッチなので、演奏全体にゴツゴツした「堅い岩」みたいな雰囲気を感じるかもしれませんが、それがモンクの「唄い口」です。そうしてこのモンク独特の無骨な唄い口が、却ってこの曲の持つ<哀感>みたいなものを、よく表わしているように思います。
ちょっと気持ちが弱った時なんかに聴くと・・・「おい君・・・人生ってそんなに悪いもんじゃないよ」とモンクに優しく諭されているような気分になります。

モンクの魂に触れてしまった(ように思えた)・・・ジャズにここまで深く入り込んでしまった・・・これでもう、僕のジャズ人生も決まったようなものです。この後、モンク~コルトレーン~マイルス~ミンガス~ドルフィー、ロリンズという具合に次々にジャズの巨人たちの<個性>を味わっていきました。それから、いかにモンク好きの僕としても、ずーっとモンクだけ! というわけにもいかず(笑)、ピアノでは、自然と、バド・パウエル、少ししてからビル・エヴァンス、ソニークラーク、ランディ・ウエストンなど好みになりました。特にウッドベースでは、モンク絡み(モンクス・ミュージック)とロリンズ絡み(ナイト・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード)で、ウイルバー・ウエアがもう大好きになったりしました。ちょうどその頃、大学でモダン・ジャズ研究会なるサークルに入りました。聴くだけではガマンできなくなったようです。ピアノかベースか迷いましたが、たまたまベースがいない、ということもあり、ウッドベースを始めたのです。先輩に「好きなベーシストは?」と尋ねられ「ウイルバー・ウエア」と答えたら、その先輩、「うう・・・まあそういのもいいけど・・・まずはチェンバーだよね。チェンバースを聴きなさい」とかなり動揺しておりました(笑)。

楽器を始めると、それまで遠いものに感じていたテナー~アルト~トランペット~トロンボーンなどが、うんと身近なものになり、管楽器への興味が深まっていきました。(それまではどちらかというとピアノ中心に聴いていた) そう思っていろんなレコードを聴いていくと・・・いろんなミュージシャンの音色・フレーズなどの違いにも興味が湧いてきました。ジャズはロリンズ、コルトレーン、マクリーン、ブラウンだけじゃあなかったんです!
「おっ。この人、好きだな。もっと聴きたい!」~「おお、この人もおもしろい。他のも聴いてみたい!」~「ああ、こんな人もいたのか」~ 
・・・キリがありません。そりゃあそうです。ミュージシャンの数だけ、異なる個性が在るわけですから。「個性」に黒人も白人もありません。
だから・・・どちらかというと黒人ハードバップ重量級ばかりを10年くらい聴いてきた後に、ふと手に入れたペッパーの「モダンアート」、この盤で聴いたペッパーは・・・ものすごく新鮮でした。特にバラードでの唄い口には、しびれました。チェット・ベイカーの<あまり強く吹かない乾いたような音色>にも強烈に惹かれました。シナトラの「唱」に急に感じるようになったのもこの頃です。

こうして自分がどんな具合でジャズを聴いてきたかを振り返ってみると・・・だから・・・僕のジャズの聴き方は、こんな具合に、全くの「人聴き」でした。
だから、決してジャズをスタイルで分けて聴いてきたつもりはないのですが、興味を覚えたミュージシャンを聴いてきた34年の間には、自然と、ハードバップ~バップ~ウエストコースト~ボーカルと聴く範囲が拡がってきたようです。この先は・・・バップからもう少し遡って<中間派/エリントン派>あたりに、少しづつ踏み込んでいきそうな気配も感じております。(気配って・・・自分の意思なのに、なんと無責任な(笑)) ただ、僕の場合は、ジャズへの興味が、どうしても過去へ過去へと向ってしまう傾向にあるようです。正直に言うと・・・これまでのところ、結果的には「新しいジャズ」はほとんど聴いておりません。もちろん、あるカテゴリーを偏見をもって意識的に避けたりはしてませんが、あまり好みではないミュージシャンを羅列すると・・・たまたま<新主流派>だった、とかいうことはあります(笑) 「人聴き」するタイプの僕には、「おもしろい」と感じるミュージシャンがあまり見つからないようです。

こんな風に長い間、ジャズを聴いてきても、まだ飽きない。いや、それどころか、ますます好きになってきている。聴きたいジャズはまだいっぱいある。欲しいレコードもまだいっぱいある。わおー!!!

・・・ジャズとはなんと魅力的な、しかも懐の深い音楽なんでしょうか。全てはモンクから始まったのだ・・・・・。

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