ラビット・フット・レコード

2005年12月11日 (日)

<ジャズ回想 第3回>ああ、中古レコード店:   ラビットフットレコードと初期のビル・エヴァンス。

1980年春~ジャズ喫茶/グロッタとラビットフットレコードのこと。

地元のジャズ喫茶「グロッタ」には、学生時代の75年から78年頃、本当によく通った。重い防音ドアがひとつあるきりで、あとは一面コンクリートカベの店だった。店内も灯りが極端に暗めで・・・ソファにたどりつくまでに、つまづきそうなほどで、正に「洞穴」(グロッタというのは、どこかの言葉で「洞穴」というらしい)のような店だったのだ。だんだんと目が慣れてくると、この「暗さ」が心地よくなってくる。よくあんな暗がりの中で、みんなマンガや雑誌を読んでいたなあ。このグロッタは・・・とにかく大きな音でジャズを聴かせてくれたし、何よりいいレコードがいっぱいあった。ラファロが聴きたくて、ビル・エヴァンスのSunday At The Village Vanguard をいつもリクエストしてかけてもらった。JRモントローズやアンドリューヒルも何度もかかった。そのグロッタが改装のため、一時的に閉店していた80年の春・・・グロッタのすぐ斜め向かいに「ラビットフットレコード」がオープンした。これはうれしかった。それまでは、名古屋か浜松に行かなければ手に入らない「輸入盤」が、地元の街で手に入るようになったのだ。ラビットは、やはりロック系・トラッド系が中心ではあったが、うれしいことにジャズの輸入盤・中古盤もけっこうあった。ジャズが少ないのは・・・これはもうジャズファンなら馴れっこの仕方ないことだ。とにかくジャズのコーナーがあれば、それで充分だった。このラビット・・・開店直後には、liberty音符ラベルのブルーノート盤がたくさん出ていたので、それまでほとんど持っていなかったブルーノートの有名盤を、けっこう入手した。ロリンズの「A Night At The Village Vanguard」やら、ブレイキー&クリフォードブラウンの「A Night At The Birdland vol.1&vol.2」も、カットアウト盤だったが、格安(1400円前後だったか)で入手できたのだ。この頃は・・・リバティ音符ラベルがオリジナル盤と比べてどうか?なんてことは全く関係なかった。とにかくキングや東芝(80年だとまだキングの最終の頃か?)の国内盤定価より「安い」ところに価値があったのだ(笑)「ブルーノート」というレーベルは・・・東芝が「直輸入盤」として発売していた頃から「高い」イメージが強く、キング盤になってからも、どうも手が出しにくい感じだった。とにかく、ブルーノート盤には持ってない/聴いたことない、というタイトルが多かったのだ。
しばらくはラビットに通いつめた。そんなある晩・・・ラビットの斜め向かいの辺りが明るいし、何やらざわざわしているような感じだ。おおっ!改装なったグロッタがオープンしたのだ!ずず~っと近寄ると、とにかく「明るい」。あの洞穴のような暗いグロッタが・・・木のドアの両側の天井までの窓からは、店内からの灯りがもれて歩道までピッカピカじゃないか!中も丸見えだ。再オープンの夜ということで、店内はもうお客で一杯になっている。さっそく、木のドアを開けて入っていく。久しぶりに見る顔なじみばかりだ。なにやら照れくさいような感じだ。とにかく明るい。ガラス窓なので外からもスースーに見えちゃうし、座っていてもどうにも落ち着かないのだ(笑) この明るくなって一見、普通の喫茶店に変わったグロッタではあるが、「ジャズ喫茶」を感じさせるものがあった。大量のLPレコードたちだ。やはり彼らがお店の主役なのだ。下の床から天井まで5段はある造り付けの収納タナにぎっしりと収まっている。この風景は全く壮観だ!軽く5000枚はあっただろうか。レコード好きなら、このタナの前で紅茶など飲んでるだけで幸せだろう。僕はずうずうしく時々、気になるレコードを取り出して見せてもらったりしていた。改装オープンしばらくは、もちろんこのレコードをかけていたが・・・新しいグロッタは、「ジャズ喫茶」を前面に打ち出してはいなかったので、残念ながらこれらのレコードを大音量でドンドン聞かせる、というスタイルではなくなったようだ。カセットでかけるジャズのヴォリュームが少し下がった分、常連のお仲間が集まり、気楽にしゃべれる店になったのだ。そんなグロッタにもすぐに慣れてきた。それからしばらくは、ラビットを覗いたあとグロッタに寄る、というパターンが続いた。そうして、この頃からレコードを買うペースが急激に上がっていった。ラビットでいいレコードも見つかったし、社会人になっていたので「聴きたいレコードは自分で買う」というスタイルになっていったようだ。

evans_victor_001さて、この<ラビット>で入手したもので印象深いものを~中古盤がメインのお店なので、やはり国内盤が主になるが~何枚か、関連する盤も併せて紹介したい。

トニー・スコット/ザ・タッチ・オブ・トニー・スコット(ビクターRGP-1056)~ビル・エヴァンス目当てでマークしていた盤なので、これを発見した時は、とてもうれしかった。1972年にビクターがプレスティッジ1100円盤を発売した後の1973年のRCA系1100円盤の中の1枚らしい。ペラペラの折り返しジャケットが、当時はとても安っぽく感じたが・・・今では何故か魅力的である。「Aeolian Drinking Song」では、初期のエヴァンスの硬質なソロがふんだんに聴かれる。何かのTVジャズ番組でほんのちらっとだが、この頃かと思われるエヴァンスの映像を見た記憶がある。なんの曲だったかなあ・・・。この頃のエヴァンスのピアノは・・・わざと表情を隠したような冷徹なタッチと長いフレージングで・・・硬質というより・・・非情な感じさえ受けるハードボイルドなエヴァンスである。「オレは普通のピアノは弾かんぞ」と主張しているかのようなとても尖がった個性的なピアノだ。人によっては、この「冷徹な感じ」をレニー・トリスターノの影響が・・・と思われるかもしれない。僕はこの初期のエヴァンス、大好きである。58年のリヴァーサイド「Everybody Digs~」まではこの路線だったように思う。
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同じくトニー・スコットとの共演盤~「Tony Scott/The  Complete Tony Scott(LPM-1452)を、米ビクターのオリジナル盤を、ちょっと前にネットで入手した。フレッシュサウンドのLPやCDで聴いていたが、イマイチ音質が悪くて、この「犬ラベル」に期待したが~56年か57年のモノラル録音~ビッグバンドのサウンドがやかましくてこもったような音で・・・期待したほどではなかった。米ビクターのLPS(ステレオ)には、音のいいものが多いのだが。エヴァンスのソロは・・・「I Surrender Dear」や「Just One Of Those Things」でほんの少しと、B面最後の「Time To Go」で、ようやくエヴァンスのタッチの強弱を生かした、とてもいいソロが聴かれる。

ついでにジョージ・ラッセル絡みでのエヴァンス参加盤をひとつ。これもラビットで入手した。
ジョージ・ラッセル/ジャズ・ワークショップ(ビクター:RGP-1167)だ。ウラジャケ隅の表記によると1976年の発売らしく、同じビクターのRCAシリーズだが、価格も1300円盤になっており、もうペラペラ・ジャケではなくなっている。「コンチェルト・フォー・ビリー・ザ・キッド」という曲では、エヴァンスが大活躍だ。ちょっとラテンっぽいリズムでのテーマの後、4ビートになり、そこで・・・さきほど書いたような「ハードボイルド」なエヴァンスのソロがたっぷり聴かれる。今、久々に聴いていると・・・すごくいいソロです。それからちょっと新発見だ。エヴァンスのソロの始めころに「む~・・・・う~・・・」と、かすかな「唸り声」が聞こえるのだ。意外な感じだ。エヴァンスも唸るんだろうか・・・?

evans_victor_003 [右側がRGP-1167、左側がSHP]

左側のジャケ違い盤は・・・だいぶ後になって入手したのだが、これも日本ビクター盤が、ちょっと古い時代のSHP-5071(¥1800)だ。ジャケの色あいやトリミングの具合など、このSHP盤にも捨てがたい味がある。この盤は、テスト盤なのかセンターラベルは一切の文字なしであった。

さて・・・音の方は?  古い時代の盤の方がマスターテープの鮮度などの理由で音がいいのでは、と期待して聞いてみたのだが・・・この同一タイトルの日本ビクター盤を聞き比べた限りでは、残念ながら「古いSHP盤」の方が明らかに音質が悪かったのである。先ほどの「コンチェルト~」でのエヴァンスのハッとするような鋭いタッチが、1976年のRGP盤に比べると「こもったような感じでメリハリのない」感じに聞こえる。マスターテープの具合が悪かったのか、プレス具合が悪かったのか・・・。同じタイトルの時代(製作時期)よる音質の優劣・・・これは、オリジナル盤の1st、2ndの場合と同じく、そう単純には決められないようである。

ハンク・モブレイ/マイ・コンセプション(キング)~キングがブルーノートの版権期限切れの直前に「世界初登場シリーズ」として発売した頃は、まだ「未・ソニー・クラーク」だった(笑) だから・・・とっくに廃盤になった頃にこの盤の存在を知り、どうしても聴きたくて聴きたくて・・・そんなある日、この盤がラビットにあったのだ。この盤は・・・内容が本当にいい。ソニー・クラーク作のバラード「マイ・コンセプション」がモブレイのしっとりとした音色と相性が最高みたいで、入手以来、ず~っと愛聴盤となっている。
余談ではあるが・・・レコードの中古盤屋さんには、なんというか・・・「ある盤が出回る時期の法則」があるように思う。豊橋は地方都市なので東京のように、発売直後の新譜が(気にいらなくてなのか?)すぐに中古屋さんに出回る、というようなことはあまりなかったと思う。新譜で売れる量が少ないからだ。そういう地方都市ならではの「法則」とは・・・まあ法則なんて大げさなものではないが・・・例えば、あるタイトルの<CDが発売されて1~2ヶ月後>だ。中古盤の世界では、80年台後半に明らかに「レコードからCDへの移行」時期があり、この頃、たくさんの音楽ファンが、LPからCDにのりかえたようだった。だから・・・CDで発売されたタイトルのアナログ盤が、よく出回ったりしたのだ。だから僕は、狙っていたアナログものがCD化されると、それまでより短いスパンでラビットを覗くようにしていた。それから・・・CD化でなくても、例えば東芝がブルーノートのあるシリーズを出すと~新しいものに買い替えた人が手放すのだろうか~同じタイトルのキング盤が出てくる、というようなこともあったようだ。そんな具合だったから、僕は、「どうしても聴きたい復刻盤(あるいは完全未発表の盤~その旧譜はありえないわけだから)」は、新譜レコード店で買っていたが、それほどマークしてない盤の場合は・・・中古で出たら買おう、と待っていたりしたものだ。これはっ、と思うものは入手してきたが・・・今思えば・・・キングの初登場盤は、けっこう多くのタイトルが中古で出ていた。まだそんなに人気が上がる前で割安だったのに・・・

これは、どちらかというと珍盤の部類に入ると思うが・・・ evans_victor_004
ジュリアス・ワトキンス楽団/French Horns For MY Lady(フィリップスSFL-7048:日本ビクター発売)~サム・テイラーなどに代表してイメージされる60年代後半のムードミュージックの一種として発売されたようだ。「夜の誘惑ムード」というサブタイトルが可笑しくも哀しい。
ジュリアス・ワトキンスという人は・・・一聴、ヘタなトロンボーンに聞こえるあの楽器~
レンチ・ホルン~を吹くジャズメンだ。モンクのプレevans_victor_005スティッジ盤(ロリンズ入りの「13日の金曜日」セッション)でこの人の名前を覚えていた。この盤はたしか・・・3枚1000円のコーナーに混じっていた。確かに、ただの「古いムードミュージックのLP」なんで(笑) 僕はうれしく確保したのだった。内容はクインシー・ジョーンズのアレンジに、エディ・コスタのピアノやらジョージ・デュヴィヴィエのベースも入り、悪くないアレンジジャズだ。

ラビットフットレコードは、2003年8月31日に閉店した。ラビットのオーナーだった小川真一氏は、現在、レコードコレクターズなどに評論を書かれている。ラビットの閉店セールの模様はこのアドレスでどうぞ。

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2005年10月30日 (日)

<発掘レコ 第3回> ヘンリー・マンシーニ/マンシーニ ’67(日本ビクター)SHP-5594

ジャズのマインドで練り上げられた役どころに、しかるべき役者を配する。マンシーニは、見事な演出家なのだ。
   
マンシーニが好きだ。マンシーニがよく使うあのコーラスが「ほわわ~ん」と流れてくると・・・僕は、そこはとなくシアワセな気分になる。そうして、そのいい気分がしばらく心に残る。映画音楽としてマンシーニが作った曲は、どれもシンプルで覚えやすいメロディを持ち、知らぬ間にハミングしてしまいそうな、素敵な曲ばかりだ。本当にいい曲が多い。

しみじみとした情緒のあるタイプの曲・・・例えば<ムーン・リヴァー>~この曲はオードリー・ヘップバーンでも唄えるように、狭い音域の中で作ったメロディだそうだ~あんな風に・・・本当にシンプルで、唄いやすくて、しかも、しみじみとした情緒がある・・・こんなにいいメロディってめったにない。<ムーン・リヴァー>というと・・・1970年頃だったかに、NHKで放送していた「アンディ・ウイリアムス・ショウ」を想いだしてしまう。あの番組のテーマで、いつもこの曲が流れていたのだ。日曜日だったかなあ・・・毎週、この番組を楽しみにしていた。僕の家のTVはまだ白黒だったが、音楽好きの友人が「アンディウイリアムスの目は青いんだぞ!」とうれしそうに教えてくれたりした。

マンシーニのもうひとつの面、キャッチーなメロディを持つユーモラスなタイプな曲・・・例えば<ピンク・パンサー>~これは、あの「泥棒が抜き足差し足・・・」という感じのメロディが、すぐ印象に残ってしまう曲だ。ちなみにあの中のテナーサックスのソロは・・・プラス・ジョンソンという人だ。マンシーニという人は、「曲の演出」がとても巧い人だと思う。それぞれの曲に合ったアレンジ~どんな風にスポットを当てるか?どの場面でどんな楽器を使おうか?~そんなことを巧みに考えているのだと思う。<ピンクパンサー>のテナーは、やはり・・・あのプラス・ジョンソンの、ちょっとアクの強いちょっとお下品なな感じ(笑)の音色で吹かれるべき曲だったのだ。ピタッとはまった演出、という感じがする。仮に・・・この<ピンク・パンサー>のテナーがコルトレーンだったとしたら・・・ほらっ、どうにも違和感があるでしょう(笑)

僕は長い間、こんな風に映画音楽の作曲家としてのマンシーニしか知らなかった。映画音楽だけでも、もう充分に素晴らしいマンシーニなのだが、実は、彼には深いジャズ・マインドがあるようで、「ジャズのテイストあふれる」レコードをたくさん創っているのだ。有名なところでは、アート・ペッパーも参加している「Combo!」というのもあるが、今回は~もう少しポピュラー風だが「ジャズ」を感じさせる~そんな盤を何枚かを紹介したい。mancini_2cut_001

マンシーニ’67(日本ビクター) この盤は、95年3月、普通の中古盤屋さんで入手しているので、特に「発掘レコ」とも言えないのだが、価格が1100円という微妙な?値付けだったので、いわゆる「ラウンジ系のレア盤」みたいな扱いではなかったはずだ。ペラペラのジャケットと細身のオビに惹かれるものがあったし、「サテン・ドール」「いそしぎ」「ラウンド・ミッドナイト」などジャズの曲も多めに入っているので、ちょっと迷ったが入手したのだ。裏解説には・・・「ジェリー・マリガンを思わせるバリトンサックス」とか「有名なスタジミュージシャンが起用されている」とか書いてあるが、はっきりとしたミュージシャンのクレジットは一切なかった。さて、聴いてみると・・・どうにもジャズっぽい。「サテン・ドール」のエンディングの部分では、どう聴いても・・・レイ・ブラウンじゃあないか!というウッドベースも飛び出てくる。それから「いそしぎ」でテーマを吹くトロンボーンはディック・ナッシュだろう。後に、マンシーニのRCA盤がまとめて復刻された際、この「マンシーニ’67」も出たはずだが、その詳しいクレジットによると・・・ベースはやはりレイ・ブラウン。「ジェリー・マリガンを思わせるバリトンサックス」の正体は・・・バド・シャンクであったように記憶している。

もちろん、他にもいい盤がある。
Uniquely Mancini(RCA Victor:LSP-2692)1963年。この盤は、地元「ラビットフットレコード」のラウンジ系コーナーで入手した。Victor犬ラベルのステレオ盤で、キッチリしてとてもいい音質だ。サブタイトルが、The Big Band Sound of Henry Manciniとなっており、<Lullaby of  Birdland><C jam blues><Stairway to The Stars>などジャズっぽい曲も多い。ソロイストには、プラス・ジョンソン(ts)、テッド・ナッシュ(as)、ロニー・ラング(fl)、コンテ・カンドリ(tp)、ディック・ナッシュ(tb)、ヴィンセント・デ・ローズ(french horn)などが、うまいこと配置されている。 好きな1枚だ。mancini_2cut_002

The Mancini Touch(RCA Victor:LSP-2101)1959年録音。   この盤もなぜか地元の「こんぱく堂」で入手。こんな地味なオリジナル盤が、どうして地元トヨハシにあったのだろうか? 余談だが、あるレコードがたどる軌跡というものには・・・ほんとに興味深いものがある。

この盤は、ストリングス入りではあるが、ナッシュ兄弟、ロニー・ラング、ヴィクター・フェルドマン(vib)、ジョニー・ウイリアムス(p)、それからシェリーマンなどがクレジットされている。おもしろいのは、そのクレジットが「ソロイスト」ではなく、「Featured Performers」とされていることだ。純粋なジャズではありませんよ、という意味合いだろうか。まあ、呼び名はなんであっても、少しでも「その人」の演奏が聴ければいいのだ。バラードで演奏される<my one&only love>がいい。イントロや間奏にボブ・ベインのギターが少し入るが、主メロディは・・・これまたディック・ナッシュではないか(笑) 
思うに・・・マンシーニは、トロンボーンという楽器を、すごく好きなんだろう。スロウなしみじみ曲では、たいてい、トロンボーンがメロディを吹く。

Our Man In HollyWood(RCA Victor:LSP-2604)にも、いい曲が入っている。<two little time>だ。センチメンタルな感じに溢れたメロディを吹くのは、やはり・・・ディック・ナッシュ。とろけるようなボントロの音色が素晴らしい。しみじみとしたこの曲の味わいが、この音色でより一層、映えるようだ。

きりきりとしたジャズではないが、しゃれた演出(アレンジ)で、腕利きのジャズメンが気の効いた短いソロをとる~こんなゆったりとした味わいのヘンリー・マンシーニの音楽を、僕は大好きだ。 
それにしても・・・世の中には「いい音楽」がいっぱいだ。これだから、レコードは止められん。

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2005年7月24日 (日)

<思いレコ 第2回>ジョアン・ジルベルト/JOAO GILBERTO(ブラジル盤)

ボサノヴァが好きだ~夢見る音楽との出会い。

ジャズを好きなことにもちろん変わりはないが・・・ボサノヴァも本当に好きだ。中3の時からガットギターを触っていたこともあり、もともとアコースティックなギターの音色が好きだった。エレキ(死語か?)の音はあまり好きじゃない。だからジャズを聴くようになるまでは、ポール・サイモンのギターに痺れていたのだ。その頃、兄が東京で下宿生活を始め、帰省するたびに、大学の生協でLP盤を買ってきた。生協で買うと10%だか20%引きだったのだ。ああ、そうだ・・・レコードだけじゃなかった。050502今、ここにあるギターShinanoGuitar25というガットギターも、兄が最初に帰省した時、ハードケース付きで持ち帰ってきたものだ。G線のチューニングがちょっとだけまずいが、まあ悪くないギターだ。その生協レコードは、在庫してないものでも注文取り寄せできる、ということだったので、兄が帰省する頃になると、欲しいジャズのレコードをハガキで知らせておいて、買ってきてもらったりしていた。高1になってジャズのレコードを買い始めていた僕は、モンクのポリドール盤(2LP:モンクス・ワールド)~を真っ先に頼んだ。まだビクターがリバーサイドを復刻する前で、この2枚組は「himself」と「ミステリオーソ」のカップリングだったのだ。この盤は、名古屋の名曲堂(<夢レコ~旅レコ第2回:モンクス・ミュージック>に登場)で見かけた時に、ポリドールという会社名とレコード番号まで控えておいたものを、兄の大学の生協で注文取り寄せしたもらったわけだ。当時、ジャズ雑誌の質問コーナーなどで~モンクの名盤/himself の国内盤は出てません~などの記事を読んだ記憶もあるので、そのモンクのソロピアノ「himself」が、普通の国内盤2LPで聴ける、ということは、あまり知られていなかったようだ。1973年頃になると、米マイルストーンからtwofer という2LPシリーズが出回ってきて、prestige や riverside の音源が2LP(初期の一部はコンピレーションだが、ほとんどは、オリジナルLP音源をそのまま2枚、カップリングしたもの) その中には、モンクの「Pure Monk」(サンフランシスコ+ヒムセルフ+他LPからのピアノソロ2~3曲)というのがあった。この盤も「サンフランシスコ」聴きたさに、すぐに買ったなあ・・・。
ああ・・・話しが逸れた。ボサノヴァの話しだったんだ。モンク関わりの話しは、また別の機会にじっくりと・・・。

さて・・・兄が東京で下宿生活を始めた1971年~僕は中3で、ジャズはFMからエアチェックするのみで、まだレコード盤を買うまでにはなっていなかった。買うのはポール・サイモンやらエルトン・ジョンだった~その年末に兄が帰省する際、初めて買ってきた生協扱いのLPの中に、なぜか「セルジオ・メンデス&ブラジル66」があったのだ。これは・・・キングレコードがA&M音源から製作した「生協用?特別配布レコード」とかなんとかいう非売品で、3LPで2LP分の価格!てな企画品みたいなレコードだった。あとの2LPは・・・トム・ジョーンズだかフンパーディンクだったか(笑)・・・忘れてしまった。
この「セルメン」が、意外にも・・・気に入ったのだ。ベスト集だったのだが、とにかくどの曲も「かっこいい」。ボーカルのラニー・ホールという女性ボーカルも、なにやら「女性」を感じさせる柔らかな唄いかたで、とてもキュートな「声」だった。そんな風で、何度も聴いている内に中に Wave やら For me(タイトル違うかも?) という曲をすごく好きになった。まあでも この頃に「ボサノヴァ」なんていう音楽を意識していたわけでもなく、ただ「セルメン」として、「ああ、かっこいいなあ」と思っていたのだ。

ボサノヴァ。それをはっきりと意識したのは1975年~僕は地元の大学のジャズ研に入りウッドベースを始めたのだが~そこで4ビート以外の曲として「ボサノヴァ」というリズムがある、ということを習ったのだ。2小節に8分音符が16個並ぶ中、その独特な位置にスネアで (カツツカツツカツ、ツツカツツカツツ)てな具合にアクセントをつけるあの定型パターンもなんとか覚えた。ベースのパターン( ドゥーン・トゥ・トゥーン・トゥ、ドゥーン・トゥ・トゥーン・トゥ )もとりあえず覚えた。でも「ああ、これがボサなんだ」と実感したのは・・・置いてあった古いガットギターで、Waveというボサノヴァ曲のコードを、なんとなく弾いていた時だ。コード弾きをしていると、なぜか、すごく自然にボサノヴァのリズムに「ノレた」のだ。 その時、そばにいたベースの先輩が「お前・・・ボサノヴァ巧いなあ」と言ってくれたので、ああ・・・これがボサノヴァかあ・・・と後から納得したりした。こんな風に、ごく自然にボサの「感じ」をギターで掴めたのは・・・ずっと前から、ピックを使わず、コードをピチカット風に弾くというガットギターの奏法自体になじんでいたこと、それと・・・やっぱり、「セルメン」のおかげだろう。ボサと意識せずとも、とにかく何度も聴いていたので、ボサの「感じ」というものが知らぬ間に、僕の体にしみこんでいたのかもしれない。 とにかく・・・ありがとう、セルジオメンデスとブラジル66!~今、思えば「セルメン」は、本当にアメリカ風に洗練された、とても「インスト的」なボサノヴァのサウンド志向で、ヴォーカルは入っているが、本質的にはインストグループだと思う~ボサというものの典型を聴き覚えるのには、最適なグループだったのかもしれない。050502

そのうちにやはり・・・ジョアン・ジルベルト、僕も好きになりました。 ゲッツ/ジルベルトだけは、けっこう早くに聴いていたのだが、その時はまだゲッツばかり聴いてて、ただジョアンの唄声が「ほんわり」してるなあ・・・くらいにしか思ってなかった。80年頃に地元にラビットフットレコードという輸入盤・中古盤の店がオープンした。(2003年8月31日、惜しまれつつ閉店。)すぐそばのジャズ喫茶「グロッタ」に行く前に、この「ラビット」に寄るのがパターンになった。そのラビットで、ジョアンの「アモロッソ」など入手し、徐々に「黄昏(たそがれ)たようなジョアンの声」にもはまっていった。その頃・・・ジョアンのブラジル盤が2枚、ラビットに出た。ブラジル盤といっても、1972年頃の「再発ブラジルEMI-odeon盤」なのだが~2枚とも、ジャケが渋い。050502_001これの1960年頃のオリジナル・・・欲しいです(笑)
  
「もの思いに耽る横顔のジョアン」と
「正面を向いてる若々しいジョアン」 

ブラジルには「緑色」がよく似合う。共にいい感じのグリーンを生かした悪くないデザインだ。今、気付いたのだが、なぜか両方とも、右手を右頬につけている。ジョアンの好きなポーズだったのだろうか?まあ多分、照れ隠しに、思わずこんな風な頬杖ポーズになってしまったんだろう(笑)

~この2枚、「いいなあ・・・」と思ってるうちに、(どうしても本線のジャズばかり買ってたので)やはり、2枚とも売れてしまった。ちょっと残念に思ったはずだ。その証拠に・・・半年だか1年くらいたった頃に・・・また出たのだ、その2枚が! ジャケのスレ具合なんかから見ても、そっくり同じ盤だと思う。この前の購入者が、何らかの事情で、またラビットに売ったのだろう。運よくこの2枚と再会した僕は、今度は迷いなく、その2枚を購入した。そうして・・・この盤を・・・聴いた、聴いた、また聴いた(笑)
  
・・・全てが気に入った。録音はかなり古そうだし、ジャケからもかなりの古さが伝わってくるが、ジョアンの音楽は・・・古さなどみじんも感じさせない。まったく素晴らしいのだ。どの曲も短いのだが、あのジョアンの唄声とギターによる完璧な世界~小宇宙のようだ。あれ以上、いじりようがない。いや、いじってはいけないのだ(笑)
この頃、中村とうようがボサノヴァの本を出したり、フィリップスから(もっと他からも)ボサノヴァを盛り上げよう!みたいな動きもあり、けっこういろんな盤が復刻されたのだが、僕は2~3枚しか買わなかった。ジャズのレコードが本線だったので、なかなかボサまではフォローできなかった。それに、ジョアンジルベルトが出ない!どこからも出ないのだ!「とうよう本」によると、ジョアンの初期傑作が3枚あるらしい。2枚は入手している。あと1枚か・・・聴きたい。そんな状態の時、仕事で東京へ行った。出張から帰る日に、何をおいても時間を作って「レコード買い」をするのが、コレクターの悲しいサガだ。(笑) そんなわけで、新宿のユニオンに寄った。
そしたら・・・ここで、見つけたのだ。ふふふふ。ジョアンの「あと1枚」を。     Joao Gilberto/O Amor,O Sorriso E A Flor (東芝 EOS-40114) なんと・・・東芝から国内盤が出てたじゃないか!こんな盤があるとは、全然知らなかった。その存在を知っていて、狙っていてそれを見つけるのも、うれしいもんだが・・・全くその存在を知らずに、いきなり発見してしまった時の驚き・・そのうれしさよ・・・ああ、今日、ここに来るのがオレの運命だったんだ・・・神様ありがとう!と突然にクリスチャンになったりします(笑)
「MOR1500」というシリーズ名なので、多分、1500円盤として出たのだろう。裏解説は、伊藤勝男なる人物だ。初期の3枚の中では、この盤が2枚目にあたる、ということが判った。1枚目の有名曲<Chega De Saudade>1曲だけは、この盤にも収録されていたが、あとの曲に重複はなかった。どの曲も素晴らしいのだが、<O Pato>(ガチョウのサンバ)の「粋さ」といったら・・・。

そうだ!ジョアンは「粋」だ。ボサノヴァとは「粋」ということなんだ。こんなにも軽やかで~涼しげで~でも仄かに暖かくて・・・そうして、何より聴く人の気持ちをほっとさせる~ボサはそういう音楽だ。こんな音楽、めったにないぞ。
そうして・・・ボサはやはり、ギターでなくてはならない(笑) エレキではないガットギターでなくてはならない(笑) でもって、本当は・・・さっき説明した「定型パターン」など、あってないがごとくで、スネアのアクセントだって変えられるし、ギターのコードだって、どんな風にも「刻める」リズムなのだ。アイディアに満ち溢れた(閃きのあるミュージシャンには)素晴らしく自由な音楽なんです。

~Bossa Nova! 僕はジョアンジルベルトに、カルロス・ジョビンに、カルロス・リラに・・・感謝したい。こんなにも素晴らしい音楽を生み出したブラジルにも感謝したい。(すみません・・・ピエール・バルーのパクリです(笑)  映画好きの方ならご存知~「男と女」の中でピエール・バルーがギター弾きながらボサへの愛着を唄う場面~あれは・・・よかったですね) ああ、音楽ってホントにいいですね。

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