25センチ盤

2024年12月31日 (火)

〈思いレコ 第20回〉 モンク ランズ ディープ

retrospective 回想する/懐古的な~という言葉がある。毎年、年末になると僕はまさにこの言葉通りの気分になってしまう。そうして必ずモンクのあのピアノの音を想起する。1971年、中3の時からジャズを聴き出してもう50年以上経ったが、やっぱり僕の〈ジャズマインド〉の原点は…モンクなのである。

モンクのレコードで最初に(1972年7月) 入手したレコードは「モンクスミュージック」で、コルトレーンやホウキンス、ベースのウイルバーウェアらがモンク音楽と有機的に絡むエネルギーある音楽に痺れまくったわけだが、その少し前にFMラジオから録音したカセットで、モンクのソロピアノ《ラウンドアバウトミッドナイト》を本当に何度も何度も聴いて、もう心底、感動してセロニアスモンクという人を好きになっていた。その事について書いた過去記事があるので横着して抜粋します。

以下《 太字 》

《その少し後・・・今度は「あの曲」の作曲者、セロニアス・モンク自身のソロピアノでの「ラウンド・アバウト・ミッドナイト」(vogue/1954年)を再びFMから録音した。マイルスのミュートが演出したあの曲の持つ「独特なムード」に慣れていたせいか、このモンクのソロピアノにも違和感など全く感じることもなく、いやそれどころか・・・モンクのピアノは、不思議なくらいに、本当に真っ直ぐに僕の心に入り込んできてしまったのだ。マイルスのラウンドミッドナイトは、もちろん素晴らしい。でもモンクのこの演奏には・・・もうムードなんてものを通り越して、モンクという一人の人間が、自分のあらゆる感情を吐露しているような厳しさがあった。モンクの、いや、あらゆる人が、人生を生きていく上で味わう感情・・・<挫折><孤独><哀愁>そして<優しさ><希望>・・・みたいなものが、この演奏の中に封じこめられているかのようだった。(そういう風に聴こえた)このモンクのソロピアノのレコードは、なかなか見つからなかった。高1の夏に、東芝ブルーノートの国内プレス(ジニアス・モンク vol.1)を間違えて、買ったりしました。「ラウンド・アバウト・ミッドナイト」という曲が入っている、という理由だけで買ったのだが、このLPに入っているバージョンは、モンクによる初演(1947年の3管入りのもの)だった。「なんか違うなあ・・・」とがっかりしたのだ。(笑)その年の秋だったか・・・ようやく vogue録音のソロピアノのLPが東宝から発売されたのだ。タイトルは・・・セロニアス・モンク/モンク・ランズ・ディープ(東宝) ようやく、あの「ラウンドアバウトミッドナイト」に出会えたのだ。すぐに手に入れて・・・・・このレコードは、本当に何度も何度も聴きました・・・・。          このLPには、ラウンド・アバウト・ミッドナイト以外にも、リフレクションズ(ポートレイト・オブ・アーマイト)、オフマイナー、ウエル・ユー・ニードントなどモンクの傑作曲が入っており、全てが気迫のこもった素晴らしい演奏ばかりです。。その中で、唯一のスタンダードの「煙が目にしみる」・・・これがまた素晴らしい!よく「モンクは変。判りにくい」とか言われるが・・・この「煙が目にしみる」みたいなスタンダードを弾くときのモンクは、一味違います。誰もがよく知っているあのメロディ、あの魅力的なメロディーをそれほど大きく崩したりはせず、謳い上げています。強いタッチなので、演奏全体にゴツゴツした「堅い岩」みたいな雰囲気を感じるかもしれませんが、それがモンクの「唄い口」です。そうしてこのモンク独特の無骨な唄い口が、却ってこの曲の持つ<哀感>みたいなものを、よく表わしているように思います。ちょっと気持ちが弱った時なんかに聴くと・・・「おい君・・・人生ってそんなに悪いもんじゃないよ」とモンクに優しく諭されているような気分になります》

う~ん…まあ、モンクのことをどうにも好きになって、そんな僕の非常に個人的な気持ちを少しでも判ってほしいな…という、暑苦しい文章でしたね(笑)   そんなわけで僕の生涯の愛聴盤になった〈モンク ランズ ディープ〉~不思議なタイトルだが〈モンクは自己の内面に深く潜航する〉という感じかな、と僕は理解している。

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上写真~1972年秋に発売された東宝盤。

下写真~ジャケット裏面、全8曲収録の記載。このフランス1954年録音の盤だけ、なぜか曲名クレジットがいろいろ混乱していて大変判りにくい。例えばB-1に〈ポートレイト オブ アーマナイト〉とタイトルされテイクがあるのだが~このバラードには独特な哀愁みたいな感じが漂っていて大好きなのだが~この曲、一般的には〈リフレクションズ〉と認識されている曲である。

下の写真…左側にあるモンクのピンアップは、豊橋のジャズ喫茶「グロッタ」に長年、貼ってあったものだ。経年劣化で真っ黒に煤(スス)けている(笑) 実は、そのグロッタが1980年頃だったか…閉店する際、ジャズ研仲間と片付け手伝いに行って、テーブルやらソファを搬出したり、あれこれ廃棄したりした時に、僕はこのモンク写真をそのまま剥がし捨ててしまうのが何やら忍びなくて、丁寧に剥がして頂いてきた…というわけである。高校~大学時代に通いつめたジャズ喫茶「グロッタ」と、同じ時期に聴きまくったモンクへの想いがリンクした…僕の retrospective である。

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上写真2点~1984年キング発売の〈ソロ オン ヴォーグ〉全9曲収録。

このレコード、もちろん〈モンク ランズ ディープ〉と同じ1954年音源なのだが、1曲だけ未発表テイクが入っている。それは〈ハッケンサック〉で、フランス録音時にはどうやら〈ウエルユーニードントtake2〉という理解で未発表とされていたようだ。その辺り、曲名クレジットの混乱のことが、このキング盤の、油井正一氏の解説で知ることができた。

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上写真3点~《フランスVogue盤~12インチ盤と7インチ盤。The Prophet なるサブタイトルが付けられている。Discogs によると1961年発売》~これ、ピアノの音に鮮烈感があって素晴らしいのです!

だいぶ後年になって、僕はようやく、フランスVOGUE盤を入手しました。但しこれらは…いわゆるオリジナル盤でなく、12インチ盤と7インチ盤です。オリジナルはもちろん、フランスVOGUE10インチ盤のはずです。そしてそのフランス盤を受けて、日本盤(25㎝/12インチ)も発売されていたようです。たしか1972年東宝盤と似たようなジャケットだったように、思います。日本のレコード会社もなかなか素晴らしい選球眼を持っていたのですね。

《追記~下写真2点(Discogs から転用)~日本グラモフォン(ポリドール)の25cm(10インチ)盤。解説は油井正一氏。Discogs によれば、1960年発売》

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2005年7月11日 (月)

<発掘レコ 第1回> 小林旭/大いに歌う(コロムビア)25センチ盤

リサイクルショップの楽しみ~恐怖の相対性レコード。ごく稀に「発掘」。

DSCN0796 リサイクルショップには、時々寄るようにしている。ジャズの在庫は、ほとんど期待できないが、ジャンク品のLPやシングル盤の中に、けっこう捨てがたいものがあったりするのだ。価格は、40円とか50円から、せいぜい200円くらいまでが一般的だ。
(ところが最近は、ちょっと古い70年台のロックLPなんかに、やけに強気の値付けをしてくる。ビートルズなら、もう何でも3000円とか。変な知恵がついてきたようだ(笑)) 
そんなリサイクルショップでは・・・しばしば、「魔の相対性理論」を身を持って味わうことになる。

僕の経験では、リサイクルショップのLP盤在庫で、最も多くみかけるのは、ニューミュージック系(アルフィー、オメガトライブ、甲斐バンドなど)とアイドル系(松田聖子、西条秀樹、シブガキ隊、近藤真彦など)です。
この辺りになると、50円でも誰も買いません。何が「カイ」バンドでしょうか(笑) さて、こんなレコード達の群れを一枚一枚チェックしていくと・・・そうですね。およそ10分ほどで、脳髄が「真性ジャンクLPウイルス」に侵されてきます。このウイルスは強力です。よほどの強い意志力がないと・・・やられます(笑) まず、オメガの群れの間にチラッと見えるエポや竹内まりやが気になりだします。エポ、けっこういいし、まりやも悪くないよな・・・100円なら買っとこうかな?てな具合に。それから、僕のような人間には、とにかく「古い」ものが、新しいものより良く見えるんです。近藤真彦や西条秀樹なんかの間に「フォーリーブス」や「にしきのあきら」を発見すると、ちょっと手が止まりかけたりします(笑)
こんな具合だから、「森山良子」「やまがたすみこ」「尾崎紀世彦」などが出てくると、かなりの「価値」を感じ、一度は手が止まります(笑) 本来、自分が全然好みでないタイプでも、100円なら持っててもいいかなあ・・・という感じになるのです。あまりにたくさんの<マイナス100>を見続けると、<マイナス30>でも「いいもの」に感じたりするようです。
実に怖ろしい、相対的「錯覚」です(笑)。

「洋楽」においてはさらに顕著です。一般に・・・リサイクルショップの値付けにおける価値観は、明らかに、洋楽>邦楽です(笑) 
その証拠に、中古LP~邦楽100円、洋楽300円などと値付けに差をつけているショップも多いのです。正直に告白すると、僕は、この値付けに必ずしも反対ではない。50円と300円でもいいかもしれない。(もちろん全てに、ということではないです) 世代的にも、洋楽から音楽にはまってきたので、単純に「かっこいい」という先入観はぬぐえないものがあるのかもしれない。    

洋楽の在庫で多いのは・・・これはもうノーランズでしょう(笑) ABBAも多い。ビリージョエルもあなどれない(笑)  でも・・・オメガ攻めにあった後に見るABBAなんかは、ポップでいいメロディで悪くないじゃん、くらいに思う。ビリージョエルのなんと本格音楽志向の格調の高いことよ!(ビッグヒットを連発させたので、リサイクルショップでは在庫過多だが、ジョエルにはいい曲が多い。”Just The Way You Are”なんて最高!(あのかっこいいサックスのソロは誰なんでしょう?) 
さらに・・・ちょっと古いインストもの(というより軽音楽)が出てくると、さらにココロ惹かれる。ポールモーリアやレーモンルフェーブルまでは、「まあ、やめとこう」とがまんできるのだが、「サム・テイラー」や「シル・オースチン」を
発見すると・・・かなり、危ない(笑) ジャズ好きもある程度までくると、僕はギター好き、オレはアルトだな、と各々の好みが、特定な楽器に分かれてくる。僕の好み~これはもう・・・テナーだ。テナーの音自体が嫌いじゃないので、ジャズメンが演奏する<テナーによるムード歌謡もの>みたいなのも、一応押さえておきたくなる。(笑) さすがに全曲が演歌、というのはちょっと厳しいのだが、この手のLPって、たいてい半分くらいはスタンダード曲が入っているので、好きな曲が何曲か入っていて、ミュージシャンが、松本英彦、宮沢昭なら、うれしく抜き取ることになる。
DSCN0788  右のレコードは、「エース7」というグループ名義による「夜のヒットスタジオ」(RCA)というイージーなタイトルのムード歌謡盤だが、松本英彦や、鈴木勲が入っている。その右側にチラっと見えるジャケは東芝の歌謡ムード盤だが、テナーは宮沢昭だ。

こんな風にして、リサイクルショップで「相対価値盤」を、いろいろ集めてきたが・・・そんな中、真に<発掘レコ>と呼べるのは、これしかないだろう。

DSCN0797≪小林旭/  大いに唄う ≫   (コロムビア AL-182) 
25センチ盤だ。(この場合、10インチと呼ぶのは似合わない:笑)      3~4年前には、コロムビア時代~クラウン時代の全音源が、CD化されたようだ。この時代の25センチ盤には、ジャズとはまた別の「オーラ」を感じる。ちょっと、歪んだオーラではある。(笑) この盤は、残念ながら、退色が進みつつある。僕の「購入リスト」によると・・・95年の9月24日(日)に入手している。

大量のクズ盤の中から、この25センチ盤がチラッと見えた時、もうダレきっていた僕の脳髄のどこかに、「ぱっ」と閃光がきらめいた! これはもう・・・「超」相対性だ(笑)  ただの25センチじゃあないぞ。あの小林旭だ。まだ、小林旭が本格的に再評価される前だったが、何枚かのシングル盤を聴いていたので、「全てを突き抜けたような何か」を感じさせる、どうも気になる存在だった。この盤で、ほとんどの曲を初めて聴いたのだが、中でも<オレに逆らうな>には、本当に驚いた。「~どいつもこいつも・・・オレに逆らう奴は・・・(とタメておいて)ぶっとばすっ!」てな歌詞の唄が、信じがたいほど、堂々と唄われるのだ(笑) オソロシイ歌手である。小林旭は・・・。今でも、時々聴くのだが、そのたびに・・・理屈ぬきに・・・笑い出してしまう。素晴らしい!

一番上の写真は、与田輝雄とシックスレモンズ(コロムビアAL-215)と松本英彦のポリドール盤だ。この頃のデザイン、嫌いじゃあないのです。

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