ジェリー・マリガン

2009年5月 5日 (火)

<ジャズ雑感 第28回> ジェリー・マリガンという人 

相手の個性を際立たせ、自らも生かすカウンターの名手

 

007その人のレコードを集めよう!と強く意識したわけでもないのに、知らぬ間にレコードが増えてしまう・・・そんなタイプのミュージシャンがいるかと思う。僕の場合だと、バド・シャンクやポール・デスモンド、それから、ジェリー・マリガン・・・マリガンこそ正にそういうタイプのミュージシャンだった。マリガンは、バリトンサックス奏者としては(例えば、ハリー・カーネイやペッパー・アダムスに比べれば)さらっとしたライトな味わいの音色で、さらっとしたフレーズを淡々と吹く。どちらかというと強い個性のジャズメンを好んで聴いてきた僕は、だから、マリガンのそういう淡白な持ち味に対し、なかなか自覚的に「惹かれる」というところまでは至らなかったようだ。しかし・・・集まるレコードの数というのは正直なものだ(笑)pacific,verve,emarcy,limelight もちろん全部ではないが、たいていのタイトルが集まっていたのだ。ある時、それを自覚した・・・オレはマリガンが好きなのかな?
僕のマリガン聴き込み(というほどのことはないのだが)は、もちろんチェット・ベイカーとの初期カルテットから始まり、次にマリガンのビッグバンド~コンサート・ジャズ・バンドが好きになった。そのConcert Jazz BandのVerveの諸作をひと通り聴いてしまい、次にlimelight盤もいくつかを聴いてみると、そこにはそれほどいいと感じるものがなく、その辺りまでくると・・・マリガン本人の個性というもの自体には、実はそれほど惹かれてないことに気が付いた。初期カルテットもよく聴いたが、ほとんどチェットの方を聴いていたのだ。そこで再び自問自答・・・オレはマリガンという人をホントに好きなのかな?(笑)
そう考えてみると・・・これこそがマリガンだあ!てな具合にバリサク奏者としてマリガンの持ち味を感じさせてくれるようなレコードが・・・作品数が多い割には案外に少ない。006
マリガンのバリサク・・・ああ、ひとつ、いいのがあったぞ。それは、強烈さとは無縁の、しかし不思議と何度でも聴きたくなる、穏やかな味わいのレコード・・・Jeru(columbia)だ。
このレコードは、一発で気に入った。一発というのは、本当にA面の最初の出だしから・・・という意味である。
A面1曲目は capriciousというボサノヴァ風の曲なのだが、これがもう・・・気持ちいいのである(笑)何がいいって・・・そのバリトンのライトな音色、ドラムスのデイブ・ベイリーの抑えた叩き方、トミー・フラナガンのピアノもジェントルでありながらピシッとリズムの効いたコンピング(和音の押え方)だ・・・そうしたもの全てが一体となって誠に「趣味のいい」サウンドを造り上げているのだ。考えてみれば、もともと「音」に理屈はないわけで、音楽というのは「音」そのものに快感がある・・・とも言えるわけで・・・だから「いいサウンド」を生み出すミュージシャン、あるいはバンドというものは、それだけでもう素晴らしいわけである。
それにしても、マリガンさん、なんでこういう作品~ワンホーンでじわじわ吹き込むような持ち味~をもう少し造らなかったのかな?
てなこと考えながら、ジャケット裏を見て驚いたのだが・・・produced by Jazztime Productionとなっており、Executive ProducerがなんとDave Baileyとなっているではないか!う~ん・・・ドラマーがプロデュースする~というのも珍しいだろうし、でもやっぱりミュージシャンでもあり、そうして趣味のいい人がプロデュースすると、こういう趣味のいいレコードができるのだろうなあ。008
もう1枚は・・・Gerry Mulligan Quartet(columbia)
このレコード、僕はCBSソニーから出た1300円盤で聴いていたのだが、オリジナル盤というものに惹かれるようになってから、米columbiaの<6ツ目CSステレオ盤>が好きになったので手に入れた。こちらも理屈ぬき・・・バンドのサウンドが心地よいのだ。columbiaレーベルのマリガン作品は少ないが、その数少ない2枚ともに僕が惹かれたのは・・・おそらく偶然ではない。
この2枚とも・・・相方がアート・ファーマーなのである。私見では、マリガンとファーマーの「音色のブレンド具合」がとてもいいのである(というか、それが僕の好みということなのだろう) マリガンのいい意味での軽さとファーマーの潤いのある音色が混じると、バンド全体のサウンドがしっとりした感じになるというか・・・いい感じの温かみが生まれるのだ。ついでに言うと、そのしっとり感と米columbiaレーベルの温かみのある音質~こちらの相性がとてもいいように思う。
この2枚に、もう1枚~night lights(philips)だ。これも素晴らしい。こちらには名手~ジム・ホールが入った分、またちょっと違う味わいがあるが、マリガンが「バンド全体でひとつのムードを造り出している」という点では似た質感の作品だと思う。これらの嬉しい例外の他には・・・僕にとって「マリガンの愛聴盤」と言えるものが、長いこと、なかったように思う。

余談だが、僕が好みでないブレンドがある。マリガンとはうんと古くから共演しているボブ・ブルックマイヤー・・・僕は彼が苦手なのである。それはたぶん・・・ブルックマイヤーが悪いわけではない(笑)あの楽器~ヴァルブ・トロンボーンが悪いのである。あのモゴモゴとした音色が・・・本能的にダメなのである。器楽の味わいとしての話しになるが、トロンボーンの「抜けの良さ」というのは本当に気持ちいい!それに比べ、あのヴァルブ・トロンボーン(トランペットと同じように3本のピストンで音程を造る型のトロンボーン)の音色というのは、宿命的に「抜け」が悪いように感じる。

 

しかし、このところ・・・マリガンのいくつかのレコード~
Gerry Mulligan Meets Johnny Hodges(Verve MGV-8367)
Gerry Mulligan Meets Ben Webster(Verve MGV-8343)
Getz Meets Mulligan in HI-FI(Verve MGV-8249)
を聴くに及んで、マリガンという人に対する僕の感じ方が、ちょっとづつ変わってきた。
ちょっと前の<夢レコ~クリフォード・ブラウン>で「音色そのものを味わいたい」というフレーズを記したが、マリガンの場合も、少ない編成でじっくりとバリトンサックスを吹くマリガンの音色・・・(僕にとっては)やはりこれが気持ちいいのである。
この3枚・・・言わばVerveのGerry Mulligan Meetsシリーズである。この1~2年で、これら3作を入手して聴いてみると・・・どれもが「愛聴盤」になってしまったのだ(笑)
ホッジス、ウエブスター、ゲッツ・・・それぞれに強烈な個性を持ったサックス奏者とマリガンがmeetsする~邂逅というのも大げさだし、シンプルに共演するという感じだろう~というノーマン・グランツの企画ものである。実は、僕はこの「meetsもの」を案外、低く見ていた。JATPでも後期にはマンネリ傾向があったと思うが、要するに大物同士を対決させてそのブロウ合戦を楽しむ・・・といういかにもお手軽な思いつきという感じで、まあだからこの手のレコードまで手が伸びる順番がこんなに遅くなったのだが(笑)

 

0022~3年前だったか、ホッジス盤を入手して聴いてみた。これが・・・対決とは程遠い実に和(なご)やかなムード溢れるいいセッションだったのだ。僕はこのレコードで、改めてジョニー・ホッジスという人の「芸」の細やかさを感じ取ることができた。そうしてその芸を引き出したのは・・・間違いなくジェリー・マリガンの絶妙な合わせなのである。さきほど「音色のブレンド」ということを書いたが、そのブレンドの具合の良さといったら・・・これはもう絶品なのである。
マリガンという人はアレンジャー出身ということもあるだろうが、いつも「サウンド全体」を意識しているように見える。というのは・・・例えば、このレコードA面1曲目(bunny)のテーマの部分~マリガンの鳴らすバリサク(バリトン・サックス)の音には、無自覚に思うがまま吹くというような気配はなく、その時の相手のフレーズ、その音量、その盛り上げ具合・・・そんな相手が造ろうとしている「流れ」に応じて、自分が吹くバリサクの「鳴り具合」をコントロールしているような感じを受ける。マリガンという人・・・だいたいがおそらく3~4割ほどの抑え目の音量で吹いているように聞こえる。それは淡々として迫力不足とも取れるのだが、こういうホッジスのような「強烈個性」の持ち主と相対する場合には、それが逆に効果的に映るのだ。それは相手を生かしつつ、自らも生かす~という、不思議だがそういう感じなのだ。
Meets Hodgesには、いいバラードが入っている。what the rushという曲なのだが、これはもちろんホッジスの見せ場として選んだようで、だから、この曲では、マリガンはただの一音も吹かない。そういうセンスも素晴らしいじゃないか。
僕が思うホッジスの名人芸というのは、メロディの音程のごく微妙なピッチを(音程~この場合、半音のまた半分くらいの量)ベンドさせるような技~たぶん絶妙なリップコントロール(唇の締め具合)のことなのだが、全体には静謐(せいひつ)で淡々としたこのバラードの中で、その決め技が見事な隠し味になっているように思う。
この地味なバラードの作者が、なんとジェリー・マリガン、その人なのである!
(クレジットによると、Mulligan-Holidayとなっているので、ひょっとしたら、ビリー・ホリデーも唄っているのかもしれない)*追記~この「ホリデー」については、NOTさんから正確な情報を頂きました。NOTさんの5/6付コメントをご覧ください)

 

004 そして、ベン・ウエブスター盤~ウエブスターの力感溢れる濃厚なテナーの音色。これは・・・濃い!(笑)
それはまるで太いチューブから練り出されてくる濃厚な色の絵の具のようでもあり、それは正しく「強烈な個性」と言っていいかと思う。そのウエブスターとマリガンの対比が、これまた実にいい按配なのだ!
スタンダード曲ではchelsea bridgeとsunday。マリガンという人は、バラードを大好きなようで、ホッジス盤と同じように、こちらのウエブスター盤にも自作バラードを忍び込ませている。tell me whenという曲だ。これがまたなかなかいいメロディで、ウエブスターがそれを味わい深く吹いている。
マリガンはウエブスターの吹くメロディに、時々、優しく寄り添うように合わせフレーズを入れてくる。それは伴奏としてのフレーズであり、決して自らを主張してくるような感じではない。この1曲全体を仕上げたい・・・というマリガンの気持ちのこもった「合わせ」のように思えるのだ。
chelsea bridgeでは、ウエブスターの吹くテーマのバックで、はっきりと「バリトンサックスで伴奏」している(笑)その伴奏のやり方がとてもユニークな吹き方で~ピアノでいうトリルのように高い音と低い音を素早く交互に繰り返す技~それはユニークなだけでなく、見事に効果的なのだ。こんな技を静かなバラードのバックにさりげなく差し込んでくるマリガンという人も、そうとうな曲者なんだろうな(笑)

 

003 それからゲッツ盤~実はこの3枚の中では最も面白くない・・・と思っている。ゲッツのテナーとマリガンのバリサク・・・一見、最も相性が良さそうじゃないか。でも・・・「音色のブレンド」(もちろん僕の好みの)という観点から見ると・・・案外に面白くないのだ。私見だが、ゲッツとマリガンは~楽器は違うしフレーズも違うのだが~音色の質感が・・・よく似ているのだ。
一度、口の中に溜めておいた息を小出しにするような吹き方(と推測している)で、音色がちょっとくぐもった感じや、サブトーンの割合・かすれ具合などの質感が近いように思う。2人の質感が似ているためか・・・ホッジス、ウエブスターとの共演盤のような「コントラストの妙」が、やや弱いように思える。

Mg_v8348_j_2《追記1~みなさんもコメントで触れてましたが、この「ゲッツとマリガン」A面の3曲~
let's fall in love
anything goes
too close to comfort

は「ゲッツ=バリトン、マリガン=テナー」と、お互いの本職の楽器を入れ替えて吹いてます。そうしてYoさんがコメントで紹介してくれた Stan Getz And Gerry Mulligan, Stan Getz And The Oscar Peterson TrioGetz_mulligan_2tunes_2(MGV8348) というレコード・・・そちらには本職楽器での2曲~
Scrapple From The Apple
I Didn't Know What Time It Was
が収録されているのに、ジャケット写真は「楽器入れ替え」とのこと。ゲッツの表情も面白いので、ご覧ください。 そして、この8348番に収録の2曲、やはり本職だけあって出来がいい。(この2枚の写真提供~Yoさん)》

《追記2~この8249番:Getz Meets Mulligan~すでにNOTさんがコメント(5/7付け)してくれたように、2種のジャケットがあります。Mulligan_meets_getz_2nd
写真自体は同じですが、「1色」と「2色」の2種です。参考に「2色刷りのジャケット」写真も載せておきます。(以下は「2色ジャケ」の方が再発としての話し)
なぜタイトルを「マリガン主役」のMulligan Meets Getzに変えたのか? 
なぜジャケットのデザインを変えたのか?
この辺りのことについては、マリガン好きであるYoさんも大いに興味を持ったようだ。楽器入れ替えの出来映えへの評価とか、また入れ替えテイクがA面3曲全部ではなく、too close to comfortだけかも?という説もあるらしく・・・この「ゲッツmeetsマリガン」にはなかなか謎が多い(笑)楽器入れ替えの真実については~それぞれがA面を聴き込んでみての連日(笑)のメールやりとりの結果・・・2人とも「やっぱりA面の3曲とも入れ替えてるね」それから、その出来映えについても「やっぱり本職でないとアカンね(笑)」という至極当たり前の結論に落ち着きました。楽器入れ替え~その聴き分けのポイントとして・・・Yoさんはまず「バリトン」に注目したようだ。Yoさんは、おそらくマリガンを聴き込んでいるので、マリガン独特のあの「柔らかさ」とは違う何かを鋭く感じ取ったのだろう。
《バリトンでマリガンならバフッと柔らかく出るところがブッと強めに出たりするのでゲッツかな》
僕の場合は、マリガンをそれほど聴き込んでいないのと、バリトンという楽器の特徴ある音色そのものがどうやら脳髄に強く印象付けられてしまっているようなので、「バリトン」という楽器での音色の違いにはなかなか注目が行かなかった。それでもマリガンの「バフッと柔らかく」という感じはよく判るので、この場合、Yoさんが言うところの「ブッと強め」というのは、たぶんマイナス要素だろう。
その辺りを意識してバリトンのソロを聴いてみると・・・なるほど、Yoさんが言うのはこういうことかな・・・と思える場面がいくつかあった。《Yoさん仰るように「バリトンの一番低い方の音~これが・・・さすがにゲッツでも鳴ってない(笑) ブワッ!と吹く時、ちょっと割れたような、まあどちらかというとガサツな汚い音になってるみたいですね。要は「鳴ってない」のかな》
そんなわけで、僕の方は「テナー」に注目した方が判りやすい。A面3曲のテナーソロを聴くと・・・音色自体もちょっと堅めで詰まったような感じだし、高音域のフレーズではピッチ(音程)がけっこう悪いように聞こえる。そして決定的なのは・・・テナーのソロにイマひとつ冴えがないことだ。こんなフレーズに閃きのないテナーが・・・ゲッツのわけがない(笑)
そんなわけで、ここしばらく、Yoさんはマリガンをいろいろ聴いたようだ。そうしてそれは、僕の方も同様である(笑)
ジャケットのデザイン・タイトル変更については・・・以下、もちろん推測です。この3枚の番号はこうなっている。
Gerry Mulligan Meets Johnny Hodges(Verve MGV-8367)
Gerry Mulligan Meets Ben Webster(Verve MGV-8343)
Getz Meets Mulligan in HI-FI(Verve MGV-8249)
つまり発売は・・・ゲッツ~ウエブスター~ホッジスの順なので・・・そこから考えると、最初のゲッツ盤の時点では、まだ「マリガン主役のmeetsシリーズ」という概念はなくて、その後の2枚がYoさんも仰るように出来もよかったので、(ホッジス盤の後)、ゲッツ盤を再発する折に・・・グランツが「マリガンmeets シリーズ」として考えて、ジャケ・タイトルを変更した~という流れかな、と思います。
グランツがそう考え直したのは・・・・NOTさんも?付きでコメントされたように、マリガンお得意のクレームがあったのかもしれません(笑) いや、それよりもグランツがマリガンに気を使いつつ、「Mulligan meets シリーズ」にした方が、より売れる・・・と判断したのかな》


コントラスト・・・という観点で実はもう1枚、興味深いレコードがある。ご存知・・・Mulligan Meets Monk(riverside)である。モンクのこととなると・・黙っちゃおれない僕だけど、今回は「バリトンと他のサックス奏者との音色」がテーマでもあるので・・・そのモンク盤のことはまたいずれ取り上げたいと思います(笑)
ウエブスター盤の場面で「合わせフレーズ」という言葉を使ったわけだが、この3枚のMeetsシリーズを聴いてからは、マリガンというと・・・反射的に「カウンター」という言葉が浮かんでくるようになってしまった。この言葉はボクシングのカウンターと同じ語源のはずだが、ジャズの世界では、他の誰かが吹く主メロディに絡むように別のメロディ(というかフレーズ)を吹く場面のことを「カウンター的に」とか「対位法的に」という意味で使っていると思う。
そうして、「カウンター」といえば「あしたのジョー」だ(笑) 相手がパンチ(例えば左ストレート)を繰り出してきたその瞬間、こちらは右ストレートを相手の左ストレートにかぶせるように打ち込む必殺のパンチである。
ただし・・・マリガンの「カウンター」は、ボクシングのカウンターとは意味(効果)が決定的に違う。ボクシングの「カウンター」は相手を倒すためのものだが、マリガンの繰り出すカウンター(的メロディ)は、相手を生かすためのものなのである!
それは相手を生かしつつ、自らも生かす~という「優しいカウンター」・・・なにかしら東洋の哲学のような雰囲気さえ漂ってくるではないか(笑)
マリガンという人の味わい・・・それは、和紙に沁み込んだ濃い絵の具が、自然にじわ~っと拡がってくるような、そんな優しい表れ方のようでもあり・・・そうしてそれこそが、マリガンという人の真の個性なのかもしれない。

ジャズはまだまだ面白い。

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2009年1月 2日 (金)

<ジャズ回想 第18回>ジャズ好きのささやかな幸せ(笑)~Pacific10インチ盤を巡って

大晦日~recooyajiさんとああだこうだのレコード聴き。

毎年、暮れの31日のお昼過ぎになると、僕は何を置いても出かけていく。すぐ近所のレコードのお仲間~recooyajiさんと「暮れのレコード聴き」をやるのである。何も暮れも押し迫った31日に集まらなくても・・・とも思うのだが、二人とも前日まで仕事のことが多くて、それに大晦日に家の掃除などするのも面倒なので、こうやって集まればその3~4時間は掃除免除となるのもいい(笑) そんな訳で、この2人集まりは恒例行事になってしまったようである。001

「何からいきましょう?」と問われた僕は、いくつか持ってきた10インチ盤の中からintroducing Joe Gordon(emarcy:10インチ)を取り出す。

《上の写真~モノクロ写真に濃い目の緑色が効いている。左後方のベース弾きがソフトフォーカスになってるのもいい。好きなジャケットだ》

これ、長いことCDで我慢していたが、ようやくこのオリジナル盤を入手できたので、最近、よく聴いているのだ。
A面1曲目~toll bridge から始めた。これを聴くといつも「あれ?このテーマ・・・どこかで聴いたことあるぞ」と思うのだが、そういえば、これ・・・モンクの「ハッケンサック」という曲と同じようなテーマじゃないかな。
002このジョー・ゴードン盤~emarcyにはなんとなく似合わないようなゴリゴリのバップ、いや、ハードバップになりかけ・・・かな。そんな黒っぽいジャズになったのは、やはりテナーで登場するチャーリー・ラウズのおかげだろう。ラウズのソロが思いの他、良いのである。どの曲でもゴツゴツした音色(後年よりも)でガッツあるソロを取っている。ちょっと残念なのは、このemarcy盤・・・録音が1955年と古いこともあってか、音質はあまり良くないように思う。
ちなみにEP盤よりも10インチ盤の方が鮮度感があるようだ。
そういえば、ジョー・ゴードンってリーダーアルバムが少ないよね・・・なんていう話しになると、recooyajiさん、すかさず、Joe Gordon/Looking Good(contemporay)を取り出してきた。emarcyとは、明らかに音の質感が違う。さきほどのクリアではないがグンと重みのある東海岸の音と比べると、うんとカラッと、全体にとてもすっきりして、聞こえる。emarcy盤は1955年、こちらは1961年の録音なので、録音機材も良くなってはいるだろうが、そのためだけではなく、やはり東海岸と西海岸の音は~録音された音~その質感・肌合いにおいて、根本的に違うよなあ・・・と思う。おそらくそれは、録音マイク~ダイナミック型とコンデンサー型の違いによるものだろう。
16 そのLooking Goodを掛けると、二人とも、ゴードンよりも、アルトのジミー・ウッズの方が気になってしまった。このウッズという人、独特のちょっと暗い音色をしている。contemporaryには、たしかエルヴィンと共演している、conflictというレコードがあったはずだ。あれも気になるレコードだ。
《recooyajiさんのオリジナル・モノラル盤を聴いたのだが、上の写真は、僕の手持ち~哀しきOJC盤です》

フレディ・ハバードが亡くなった、ということもあり「ハバード・・・何か聴きましょう」と、recooyajiさんが出してきたのは、Maiden Voyage(bluenote)。
「実はこれ、午前中にも聴いたんですよ」と僕が言うと、recooyajiさんも「「いやあ・・・僕も聴きましたよ(笑)」
ジャズ好きは、同じようなことをするものである(笑)
Maiden Voyageのを途中まで聴いて、僕はB面2曲目のハンコックの傑作曲~dolphin dance をリクエストする。ハンコックのピアノをあまり好きではない僕だが、この曲は好きなのだ。ハバードのソロも新鮮だ。あともう1曲、ハバードを・・・ということで、Buhaina's Delight(blue note)からmoon river。テーマの途中でテンポを変えるようなショーターらしい捻ったアレンジだが、こういうムーンリヴァーも悪くない。

2_001 Dexter Gordon/Go(blue noet)モノラル~
recooyajiさんとは、ああだこうだとジャズ話しをしながら、いろんなレコードを聴いていくわけだが、話しが「シンバルの鳴り」になった時、recooyajiさんが「あのカーンが好きなんですよ」と取り出した1枚・・・それがDexter GordonのGoだった。
《上写真~オリジナル・モノラル盤:NYラベル》

A面1曲目~cheese cake・・・ベースが短いイントロを弾くと、すぐにドラムスのビリー・ヒギンズがシンバルを「カーン・カーン~」と鳴らす。このオリジナル・モノラル盤で聞くシンバルは、確かに強烈だった。シンバルの音量が入力オーバー気味と言ってもいいほど大きいのだ。recooyajiさんは、この「カーン」がいいのだ!と嬉しそうである。僕の好みでは・・・ちょっとキツイ感じがした。このGoは、ソニー・クラーク絡みで割と聴いたレコードなのだが、どうもその強烈な「カーン」の印象はないのだ。
《追記~1/4(日)に再度、recooyajiさん宅で、Go(オリジナル・モノ)を聴いてみました。結論~ベースのイントロの直後に入るシンバルは・・・「カーン」と表現するほどキツクはなかったです(笑) ステレオ盤(仏・再発)での同じ場面のシンバルは、右チャンネルからわりと大人めに「シャーン」と鳴るので、それに比べると「強め・厚め」であることは間違いないですが、「カーン」という表現では、なにかシンバルを叩き倒しているような・・・そんな雰囲気にもなってしまい・・・そこまで強くは鳴ってないように聞こえました。
ただ、テナーが入ってきた辺りから、ドラムスの音量が上がってきて、その際、シンバルも先ほどの冒頭場面よりもかなり大きめになってくるので、その箇所では、ややキツイという印象はありました。いずれにしても、ちょっと誤解を招く「カーン」でした。当事者のrecooyajiさん始め、皆さんに余分なご心配を掛けました。今後もいろんな音のニュアンスを、できるだけうまく表現できるように努力する所存であります(笑)》

「ステレオ盤だと、また違うんだろうね」と2人で話したのだが、さきほど「仏・再発のステレオ盤」を聴いてみると・・・これが全然「カーン」ではないのだ!やや右よりの方から「シャーン、シャーン」とごく普通のシンバル・レガートに聞こえてくる。僕自身の好みとして、やかましいシンバルは苦手なので、僕にはこのステレオ盤のバランスがちょうどいいようだ。
果たして・・・オリジナルのステレオ盤では、cheese cakeの出だしのシンバルはどんな具合に鳴るのだろうか?011
(右写真~僕の手持ちは、もちろん非オリジナルで、通称、DMM(Direct Metal Mastering)blue noteだ。このDMM・・・1984年頃のフランス再発盤だ。一頃、わりと安価で出回ったので、持ってないタイトルをいくつか入手した。中にオマケの円形ポスターが入っている。表がblue noteのラベル、裏がへたくそなイラストの、まあどうでもいいようなポスターである(笑)

003Gerry Mulligan/~Qurtet(pacific)
pjlp-5
~これ、ようやく手にいれた10インチ盤なのだが、残念ながら、ラベルが黒の「艶なし」だった。残念というのは、「艶ありラベル」の方が1stだという認識があるからだ。この5番・・・裏ジャケット下の住所も7614 Melrose Avenueとなっている。
僕が持っている他のpacific盤をチェックしてみると・・・PJ-10(マリガン/コニッツ)、PJ-13(ローリンド・アルメイダvol.2)、PJ-14(3トロンボーン)など番号の進んだ方の盤はどれも住所はSanta Monica Blvd となっていた。  Pj52_3
《追記》~このpj-5について NOTさんから貴重な追加情報をいただいた。ちょっと下、青い字の《追記》にあるように、Santa Monicaが1st→Melroseが2ndであることが判明したのだが、このpj-5・・・1stと2ndのジャケットにかなりの相違点があったのだ。詳しくはNOTさん下のコメント(1/4 22:52の方)をどうぞ。
《上写真~1stのジャケット》*ネットから借りました(笑)

004 PJ-2番(これもマリガン/コニッツ)とPJ-7番(ローリンド・アルメイダvol.1)の2枚には住所表記がなかった。ちなみに、以上の5枚は全て「艶ありラベル」である。
*追記~PJ-7、PJ-13、PJ-10の3枚の
写真は前記事<バド・シャンクのPacific盤>をご覧ください。

《上の写真ではよく判らないが、右側~7番:ローリンド・アルメイダが「艶あり」、左側~5番が「艶なし」です》

だから、僕の手持ちPacific 10インチ盤の中では、5番のマリガン・カルテットだけがMelrose住所なのだ。そしてちょっと気になるのが、この5番だけ「pjlp-5」という風に「小文字」表記(表ジャケットの右上)なのだ。
普通に考えれば、5番より後の番号は、どれも(僕の手持ちの中では)Santa Monicaなので、「Melroseが先でSanta Monicaが後」とも言えそうなのだが・・・ここで困ってしまうのである。実は、もう1枚の僕の手持ちのPJ-1番「ジェリー・マリガン・カルテット」~これが、Santa Monicaの住所なのである。005

《左の写真~重ねたジャケットの下のやつが問題のPJ-1番。他のSanta Monica表記盤と比べると、この1番だけは、Santa Monica文字のサイズが小さい》

そうしてその「マリガンPJ-1番」のラベルは「艶なしラベル」なのである。推理としては~(艶なしラベルが2ndという前提ならば)まず「PJ-1番の1stはMerlose住所で艶ありラベル」だったが、この1番は良く売れたので、何年か後のSanta Monica住所の時期に、再発した。それが僕の「マリガン(PJ-1番)/艶なしラベル」ということなら・・・一応の理屈は合う。
《追記》~アドレス表記に関する上記の僕の推理は間違っていたようです(笑) 瀬谷さんの貴重な情報からも明らかなように、アドレスについては《Santa Monicaが先で、Melroseが後》が正しいようです。詳しくはこの記事の一番下のコメント~瀬谷さん情報をお読みください。

006 さて、アドレス表記のことよりも強調したいことがあるのだった。この5番~<MerloseアドレスのGerry Mulligan Qurtet>・・・やけに音がいいのである。西海岸録音に特有な「カラッ」とした良さはそのままに、マリガンのバリトン、チェットベイカーのトランペットの音色に、もう少しの生々しさが加わった感じか。実際、これまで聴いたpacificの10インチ盤では、最も生気感・鮮度感のある音に思える。パッと聴いたら、とても1952年の録音とは思えないだろう。艶なしラベル(2ndと思われる)でこれなら・・・1stならどうなるの・・・などと想像してしまう僕である(笑)
《追記~レコードを再生する場合の「音質」に大きく関係してくるであろうRIAAとそれ以前のAESカーブの問題。これについては、以前からNOTさんが具体的に突っ込んだ考察をされており、特にPacific10インチ盤についての詳しい記事がありますので、ぜひこちらをご覧ください

《追記~NOTさんブログにて、コメント欄で話題になった、マリガン/コニッツのPJLP-2番「銀色ジャケット」の詳細が判ります。併せて、PJLP-5番の1stと2nd、裏ジャケットの写真も載ってます。ぜひご覧下さい》

追記~
このPacificの10インチ盤の<アドレス表記、ラベル艶の有無>は、実に興味深い事象なので、コメントを頂いたYoさん、67camperさん、三式さん、NOTさん、bassclefの手持ち盤から、実際に確認できたものをリストにしてみました。(NOTさんは全部揃いだと思いますが、他の方の情報とダブらない盤のみお知らせいただきました)
*今後も、何らかの情報ありましたら、ぜひコメントにてお寄せください。

PJLP 1 - Gerry Mulligan Quartet
        <Santa Monica  艶あり> Yoさん、
                <Santa Monica   艶なし>  bassclef *盤の入替か?

PJLP 2 - Gerry Mulligan Quartet With Lee Konitz   
      <表記なし 艶あり> bassclef

PJLP 3 - Chet Baker Quartet 
     <Santa Monica 艶あり> Yoさん、三式さん

PJLP 4 - Sweets at the Haig - Harry Edison Quartet  
      <表記なし   艶あり> 67camperさん

PJLP 5 - Gerry Mulligan Quartet
            <表記なし 艶あり>  NOTさん
            <Melrose   艶なし> bassclef

PJLP 6 - Chet Baker Featuring Russ Freeman
       <表記なし 艶あり> 三式さん
       <Melrose  艶なし> NOTさん

PJLP 7 - Laurindo Almeida Quartet                                                <表記なし 艶あり/艶なし> bassclef,  Yoさん

PJLP 8 - Russ Freeman Trio
          <Santa Monica   艶あり> Yoさん

PJLP 9 - Chet Baker Ensemble
     <Santa Monica  艶なし> NOTさん *盤の入替か?

PJLP 10 - Lee Konitz And The Gerry Mulligan Quintet                               <Santa Monica   艶あり> bassclef

PJLP 11 - Chet Baker Sings
              <Melrose      艶あり> Yoさん *盤の入替か?
     <Melrose          艶なし>mono-monoさん
     <Santa Monica 艶あり> 三式さん、NOTさん

PJLP 12 - Meet Mr. Gordon
             <Santa Monica  艶あり>Yoさん、67camperさん
             <Melrose  艶あり>        NOTさん

PJLP 13 -LaurindAlmeida Quintet vol. 2                                    
      <Santa Monica  艶あり> bassclef

PJLP 14 - Bud Shank And Three Trombones   
             <Santa Monica    艶あり> bassclef

PJLP 15 - Chet Baker Sextet
       <Santa Monica    艶あり> NOTさん

PJLP 16 - Bob Brookmeyer Quartet
       <Santa Monica    艶あり> NOTさん

PJLP 17 - Chico Hamilton Trio
       <Melrose  艶あり> NOTさん  *盤の入替か?

PJLP 18 - Al Haig Trio~発売されず 

PJLP 19 - Clifford Brown Ensemble
       <Melrose   艶あり> 三式さん 

PJLP 20 - Bud Shank And Bob Brookmeyer
               <Melrose     艶あり>  Yoさん

007 Ray Bryant/Live At Basin Street East(Sue) これ、ブライアントのライブ盤だが、録音がとてもいい感じだ。ピアノだけでなくベースやドラムスも音圧感豊かに捉えていて、加えて店内のザワザワした感じも窺(うかが)えるので、僕は好きな録音なのだ。もちろん演奏も最高だ。聴衆を楽しませるマインドたっぷりのブライアントらしくスタンダード曲に適度なアレンジを施し、でもやり過ぎずに、キッチリしたトリオのサウンドで楽しませてくれる。 A面とB面の1曲目~what is this things called loveとblowin' in the windを聴く。ブライアントはこの有名なデュラン曲を、ちょっとカリプソ風のリズムにして、実におおらかで、そしてモダンなサウンドに仕立て上げている。
008すると・・・recooyajiさん、『う~ん・・・この「風に吹かれて」、いいなあ。そうだ、あれも聴いてみよう!』と、Junior ManceのTuba盤を取り出してきた。2_002
《右写真~Junior ManceのTuba盤》
こちらの「風に吹かれて」は、わりとストレートな8ビート風。ラムゼイ・ルイスが得意そうな感じだ。このTuba盤もなかなかいい録音だった。マンスのジャズロックも悪くなかったが、A面のthe good life・・・これがしっとりしたバラードで最高!マンスは、案外、バラードがいい》

ここから俄かにマイナーレーベルのピアノトリオ盤に話しが移った。Tuba、Herald、Salemというあまり聞かないレーベル名が飛び交う。この辺になると、recooyajiさん、異常に詳しい(笑)相当なジャズ好きしか名前も知らない(だろうと推測している)Bill Will Davis(p)、Johnny Pate(ベース弾き)やAaron Bell(こちらもベース弾き)のピアノ・トリオ盤を引っ張り出してきた。

2_003Tubaというレーベルだけは、ヴィブラフォンのJohnny LittleのLPを持っているので、辛(かろ)うじて知ってはいたが、Aaron(b)のレコードは、Three Swinging Bells(Herald)なるタイトルで、見たことも聞いたこともないレコードだった。う~ん・・・参りました(笑)
《上写真~Sue繋がりで出てきたWill Davisの1枚》

 
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《左~Johnny Pate At The Blue Note:この盤はStephanyなるレーベルだがオリジナルはSalemとのこと。右~アーロン・ベルHerald盤》
Johnny Pate(b)という人は、ピアノのロンネル・ブライト絡みで2枚ほど復刻盤を入手したが、recooyajiさんが見せてくれたレコードは知らなかった。
そんな類をいくつか聴いたのだが、どれもなかなかいい音だった。マイナーレーベルの録音を侮ってはいけないのだ(笑)

キャロル・キングのtapestry(ode)~このオリジナル盤は、70odeと呼ばれているとのこと。it's too late~いやあ・・・僕はこの名曲、何度も日本盤シングルで聴いていたので、それに比べるともう・・・10倍くらいは音がいい!
《recooyajiさんのオリジナル米盤》
2_006 乾いた感じのバスドラの抜けがよくて、ギターもカッティングも生々しい。そしてもちろんヴォーカルも瑞々しい。
やっぱりキャロル・キングはいいねえ・・・と2人で言いながら、will you love me tomorrow?,so far away も聴いてしまったのだった(笑)2_007
そういえば、このLPでは、it's too lateで、ちょっとヘナヘナとしたソプラノサックスが聞こえてくる。僕はそのソプラノサックス奏者が誰なのか・・・日本盤シングルの解説により知っていた。「そういえば、どうでもいいような話しですけど、「このサックス、誰か知ってます?」と僕が尋ねると、recooyajiさん、即座に「カーティス・アーミー」と答える。「いやあ・・・さすがですね(笑)」
カーティス・アーミーは、Pacificに2~3枚、リーダーアルバムがあったはずで、東芝が復刻した時にいくつか入手した記憶があるが、サックス奏者としてはあまり印象に残っていない(笑)

recooyajiさん宅をちょっと早めにお暇(いとま)した後、ちょっと時間があったので、地元の中古レコード屋さんを覗くことにする。たしか今日まで20%オフなのだ。あまり期待せずにチェックしていくと・・・「おっ?」という1枚があった。

17Jimmy Forrest/Most Much(prestige)である。フォレストは、エルヴィンと共演しているデルマーク盤(再発)を聴いていてけっこう好きなテナー吹きである。そのフォレストのprestigeものはOJC盤でいくつか持っていたが、このMost Muchはちょうど未入手だったのだ。1180円という値付けだったので、もちろんOJCだと思ったのだが、ジャケットの裏右上にOJCの文字はない。よく見るとジャケットの3辺に白いテープが貼り込んであったりする。う~ん・・・ジャケ不良だから安いのか・・・じゃあ「黄緑ラベルだろうな」と思いながら、中身を取り出してみると・・・鮮やかな銀色が目に飛び込んできた。銀・黒ラベルのステレオ盤(擬似ステレオではないもの)は嫌いではないので、もう嬉しくなってしまった僕である(笑)

午前中はレコード棚の収納再編成~そのためにあれやこれやとCDやレコードをいじり、午後はジャズ好きとたっぷりレコード聴き、その後、ちょっといいジャズのレコードを買ったり・・・これもなかなか優雅な大晦日じゃないですか(笑)
いやあ・・・それにしても、やっぱり音楽はいい! 好みはそれぞれ違えど・・・それだけは間違いない!

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2006年1月 1日 (日)

<旅レコ 第11回>ロス(郊外)&ホノルル編 

やったあ!アラモアナの裏通りにて中古盤店を発見!ついにLP盤を・・・。

99年6月、「アメリカ」に初めて行った。ロス&ハワイでの流通業の研修だ。ロスについてから、すぐにバスであちこちの巨大ショッピングセンターを次々に回っていった。僕は、ロス=ハリウッドと思い込んでいたので・・・遠くに小高い山々も見えたりすると、あの景色が~山に彫られた人物像たち~今にも現れるのではないか、とバスの中できょろきょろしていた。ところがロスと言ってもやけに広いのだ。観光とは無縁の研修の一行は、うんと南の郊外の辺りをグルグル回っていたようだ。宿泊もコスタメサという街で・・・あとでよく地図を見たら・・・結局、ハリウッド周辺には近づいてもいなかったのだ(笑)

オレンジ郡のショッピングセンターで昼食をとった後、記念すべきアメリカ初の個人的買い物をした。Bordersという書店の中のCDコーナーでCDを1枚だけ買ったのだ。こんな郊外の巨大ショッピングセンターには、LPなんかとてもありそうにない。ここはCDで我慢だ(笑)選んだのは・・・スタン・ゲッツ「Plays Burt Bacharach」$12.99~ちなみにアメリカの値付けというのは[$~.99]というのが多いようだ。別に$0.01だけ安くしても同じなのに・・・(笑) パっと見た目の気分で衝動を誘発しようというセコイ値付けではある(笑)
このゲッツのアルバムは持ってなかったし、CDでも紙ジャケのゲイト・フォールドなのが、ちょっとうれしい。次に寄った巨大モールでは、また大きな書店でシナトラのCDを2枚入手。これは、バーゲンのワゴンに混ざっていたので、各$6.99と格安であった。

しかし・・・やはりCDでは、おもしろくもなんともない。研修とはいえ、ここはアメリカである。あわよくば・・・レコード盤を扱う中古盤店が見つかるかも・・・などと夢想していたのだが、最新型の巨大モール内に、渋い廃盤店などあるはずもない(笑) 月・火・水と「ロス郊外」にいたのだが、やはり研修なので、昼間も夜も一人で出歩く時間もなかった。ロスでは「レコード」はあきらめるしかない。ロス3泊目の夕食は、ニューポートビーチ(ジャズの映画で有名なニューポートは、東海岸だったはず)という港の街だった。この街は、ヨットハーバーがいっぱいあり、近くの通りもオシャレな街並みだった。ここなら、探せば中古盤店もありそうな雰囲気があった。(最近、米オークションにてコンタクトしたある業者の住所が、このニューポートビーチだった。やはり・・・あの街には中古盤店があったのだ・・・) 食事は、ヨットハーバーに面した店の外のテーブル席だった。寒くもな暑くもなく、潮風が心地よくて「初夏の西海岸」という、おだやかないい雰囲気を味うことができた。

ロスからハワイへ移動。このホノルルには木・金・土だ。また空港からすぐに郊外のショッピングセンターをいくつか回った。合間に、いくつかの店で、シナトラ、チェットベイカーなどのCDを何枚か買った。この時点では、もう LP盤入手をあきらめていたのだ。中古レコード屋さんはどこかにあっても見つける時間も行く時間もない、と思っていた。研修第2ラウンドのハワイでは、24hオープンの食品スーパーの夜間営業の実態調査などもあり、寝不足に苦しんだが、金曜日の夜までに研修の発表など、やっつけるべきことをなんとか終えた。その金曜の夜遅くに、研修の仲間達とホテル近くのタワーレコードまで出かけた。アラモアナショッピングセンターのすぐ北側の通りに「タワーレコード」があることは、地図で調べておいたのだ。宿泊したホテルが、このアラモアナ地区だったので、歩いても5分くらいのところだった。そして実は・・・前日の昼間、バスで移動中に、この「タワーレコード」のちょっと裏通り辺りに「中古盤店」らしき店を見つけていたのだ。ちらっと通っただけなので確かではなかったが、あれは確かに「レコード屋さん」だった。
タワーでは、これまたバーゲンのワゴンからブルーベックやらシナトラなどを選んだが、僕はすぐにそこをを抜け出て、辺りを探りに行った。そして・・・あの店は・・・ちょっと裏の通りのほぼ予想していた位置に、すぐ見つかった。ちょっとパンクっぽいような派手なイラストがペンキで塗りたくられたような店で、「Hungry Ear」という名前だった。やったあ!ついに見つけたぞ!レコード屋を。こうなりゃあ・・・もうCDじゃあ我慢ならん!さあっいくぞ!しかし・・・店の前がなんだか暗い。ドアの看板を見ると・・・21時だか22時ですでに閉店している。そういえば、もうとっくに夜の10時過ぎだったのだ・・・。
だが・・・いいのだ。僕は余裕だった。幸運にも、次の土曜日の午後が「完全自由時間」となったのだ。待望の自由時間だ。明日の午後、もう1回、ここにくればいいのだ!どんなレコードがあるか・・・楽しみだ。

土曜日の午前中、ホノルル東部郊外のショッピングセンターの視察が終わったので、仲間と別れて一人でバスに乗り、市街地まで戻った。さあ、今からは自由時間だぞ! アラモアナショッピングセンターを通り抜け、タワーレコードには見向きもせず通り過ぎ、昨夜の裏通りに向かう。「Hungry Ear」に到着だ。「飢えた耳」とは、またしゃれた名前じゃないか。よしっ、今日は開いている。ワクワクしてくる気分を抑えつつ店に入る。入ると左にカウンター。右側にエサ箱がコの字の壁面と中シマに2列だったか。それほど広い店じゃあない。さあ・・・少しでもジャズがあるのか? ジャズのコーナーはすぐ見つかった。エサ箱で7~8列はあった。中古盤店なので、問題は、価格だ。どんな値付けなんだろう? ジャズを見るその前にチェックしたプレスリーとかは、やはり$40~50$以上はしていたが、ジャズの方は・・・あるある・・・ そうして、たいていのものが$10~$15ほどだ。$7~$8のものもけっこうあるようだ。お店の主力がロック系らしくジャズは・・・かなり安めのようだ。こんな具合だと、あれもこれも欲しくなる(笑) わくわくしながら、とりあえず「これは!」という盤を抜いていく。盤質はあとでチェックすればいいだろう。
この店でちょっとおもしろいのは、ジャケットを包むビニール袋が、透明ではなくやや白みがかったものを使っていることだ。最初は、この「白い濁り」のせいで、レコード全体がなんだかほこりっぽいものに感じたのだが、それは錯覚だった。ビニールから出したジャケットを見てみると、案外どれもコンディションがいいのである。だから・・・この「白濁りビニール」には、たぶんジャケの色落ちを防ぐような効果もあるのだろう。

1時間ほどチェックしただろうか。ざあっと抜いた盤が、軽く30枚くらいになっている。$10平均としても$300ほどだ。VG+くらいの盤質とジャケのコンディションであれば、価格的にはもちろん充分に安いのだから・・・まとめて全部!でもいいのだが・・・それよりトランクにどれだけ入るかが問題だ。持ってきたのは小さめのトランクだったし、6泊分の着替えやらで出発時からからそれほど余裕がない状態になっている。座席に持ち込める手荷物もショルダーバッグと紙袋くらいなので、そちらにLP盤をつめこむ余裕はとてもない。トランクは成田から自宅まで宅急便で送ればいいが、手荷物は自分で持ち運ばなくてならないのだ。レコード盤で重くなった手提げ袋を持って帰る、というのは、いくらレコード好きの僕でも耐えられそうにない。してみると・・・とにかく「LP盤はトランク」だ。それを優先にして、どうしてもはみ出るCDやらおみやげなど軽めのものを、大きめの手提げ袋で手荷物にすればいいだろう。ただ、トランクに非常にうまく詰めたとしても、10枚くらいが限界だろうな・・・。そんな段取りを考え、目標を10枚に設定した。ここから・・・いよいよ盤質をチェックした上での絞込みが始まるのだ。

中身の検盤をする際・・・無断じゃまずいかな、と思い、カウンターの若い男に I want to check the surface.OK? と聞いたら、No Problem! とすぐにOKしてくれたので、僕は一枚一枚の盤質チェックを始めた。さて、ここからがなかなか大変なのだ。何かとセコイ僕は・・・あれこれと悩むのだ(笑)振り落とす優先順位は・・・まず、「盤質がイマイチ」なもの。それに「日本盤を持ってる」「案外よく見かける」「OJCでも出てるはず」「買っても聴きそうにない」・・・いろいろな屁理屈をつけて、絞っていくのだ。まあ・・・この絞込みが苦しくも楽しかったりする(笑)

そんな風で、また30分くらいはかかったかもしれない。最終的には・・・やはりまず「持ってないので聴きたい盤」と「今後も含めてその盤の手に入りにくさ」(ほとんど思い込みだが)をポイントにして絞り込んだ。
当時、集めだしていたCadet盤のラムゼイ・ルイスを以下の4枚。herb_ellis__rumsey_lewis4_007

Wade In The Water
Never On Sunday
Hang On Rumsey
The Piano Player

「Hang On Rumsey」~これはライブ盤で、ビートルズのA Hard Days Night や And I Love her を演ったりしているのだが、
これが案外、悪くない。ラムゼイルイスという人は・・・もう体質として8ビートフィーリングが自然に湧き出てくるタイプのようで、しかし・・・とにかく聴き手を楽しませてくれるピアニストだ。だから、このライブ盤では、聴衆がもうノリノリになっていく様子がよく判る。特に売ろうとしてビートルズの曲を取り上げたのではなく、単にこの場の聴衆を喜ばせよう、という芸人の精神の塊りのような人なのだと思う。ジャズロック風の曲の合間に混ぜるバラードも、ソウル節・泣き節がいっぱいのちょっと「クサイ」バラードではあるが(笑)・・それも僕は嫌いではないのだ。

<やったあ度>が高いのは・・・これだ。
Herb Ellis/Three Guitars in Bossa Nova(epic) 
herb_ellis__rumsey_lewis4_006

3ギターというタイトルにあるとおり、ハーブ・エリスとローリンド・アルメイダ、もう一人、ジョニー・レイというギター奏者。
これに、管が1本だけ~ボブ・エネヴォルセンがテナーのみ(この人、普通はどちらかというとヴァルブ・トロンボーン奏者として知られているように思う)で参加しており、このテナーが・・・これが実にいい味わいなのである。ギターやドラム以外の打楽器も加わり、ボサノヴァ好きの僕としては、これはもう予想外に素晴らしくリラックスしたいい演奏の盤である。この盤は、存在さえ知らなかったので、とてもうれいし1枚となった。エピックというレーベルは、案外、復刻がなされてないので、まだまだ未知の盤があまたありそうである。ちなみに写真の下の方に見える「黄色い内袋」は、エピックのオリジナルなのだろうか?広告・活字が一切ないので、全く別のものかもしれないが・・・見た目や紙質に「古み」があるし、センターラベルの色と合わせたオリジナルのinner sleeve のような気もする。(どなたかご存知の方・・・ぜひ、お教え下さい)

Gerry Mulligan/Concert Jazz Band on Tour(verve)T字/銀・黒~残念ながらMGM-Verveです~mulligan_on_tour

マリガンの「コンサートジャズバンドもの」は、いろいろなタイトルがある。At The Village Vanguard(こげ茶色のジャケのやつ)も悪くないが、僕はズート・シムスが好きなので、シムスが加わっている「白のマリガン」~[Concert Jazz Band](<夢レコ> 9月27日の記事「ジャズ10時間聴きまくり」で紹介しております)や、この[Concert Jazz Band on Tour] の方が、より気に入っている。そして、この「~on Tour」は、ゲストソロイストとしてズート・シムスの名をジャケットにわざわざ載せているだけあって、シムスの出番は、この盤が一番多い。シムスのソロも、全体の内容もすごくいいのに・・・なぜだか、この「~on Tour」は、意外と見かけないように思う。

他には・・・エロール・ガーナー(columbia)、ジャキー・パリス(wing)、ジョニー・ホリデイ(kapp)など13枚に落ち着いた。
この時、候補に残していたはずのブルーベックのcolumbia盤2枚は・・・なぜか忘れてしまったのだ。デスモンドも好きなので、最終選考にも残してもよかったのだが・・・はっきりした記憶がないのだが、盤質が悪かったのかもしれない。

アメリカ(ロス&ハワイ)での入手盤は・・・僕の手書きリスト(6月13日の記事<ジャズ雑感 第1回>レコード買いの記録~究極の時系列・・・いや、単に横着な僕のレコードリスト)の欄外に、こう書いてある。
CD  17枚($211)
LP  13枚($126)
今、この数字だけ見れば・・・LPを13枚しか、と思うのである。CDなどには目もくれずにおけば、その「厚み」のスペースであと10枚くらいはLPがトランクに収納できたかもしれないと(笑) もっとも・・・中古レコード盤を入手できたのは、帰る前日の午後である。それも予定にない半日の自由時間ができたことで可能になったことだった。アメリカについてからの月~金までは、「LPは無理かあ・・・じゃあせめてCDでも・・・」という止むに止まれぬ心情だったのだ。やれる範囲でやったのだ(笑) いずれにしても・・・僕はこの8日間を・・・研修よりもレコードゲット作戦に心を砕いていたようだ(笑)

ちなみに、トランクへの「詰め込み作戦」は、本当にピッタリ!13枚のLPを中心に考え、そこから全てを始め、タオル・シャツ・トレーナーなどをうまくパッキングに使い、ギュウギュウに押し込み、なんとかトランクのフタが閉めた、という状態であった。当然、もの凄い重さになった。空港では、仲間に「ちょっと提げてみて」とやり、みんながびっくりするのを楽しんだりした。傑作なのは・・・成田からの宅急便の扱いの時、「あまりにも重いので規定外です。破損があっても保証できませんがよろしいですか?」と書類にサインさせられたことだ。それくらい重かった(笑) 
そうして、成田でもトランクは開けなかった。冗談ではなく、一度フタを開けたら、もう締まらなくなるだろう・・・と思ったのだ。だから中身のチェックもしないまま、宅急便に預けてしまったのだ。
そうして月曜日の夜、自宅に帰り着いたが、「トランク」は翌日、自宅に戻ってきた。外見は大丈夫だ。さあ・・・果たして中身は無事なのか?
~飛行機の荷物室と空港での乱暴(であろう)取り扱い。それから成田からの長距離トラック~これらの難関をうまく乗り越えられたのか? 僕は・・・緊張してトランクの鍵を開け、フタを開けた。グルグルに囲ってあるタオルや衣類の詰まった袋などをとりのぞき・・・いよいよ、レコード13枚の袋を開けてみる・・・・・おおっ!大丈夫だ! どのレコード盤も無事だ。ジャケットのカドも全く曲がってない。盤も大丈夫だ。全て問題なしだあ~!

この時は、本当にうれしかったし・・・何よりほっとした。無理して詰めた「レコード達」に何かがあったら・・・重い荷物を嫌がったこのオレが・・・ちょっと横着をしたために、レコードが痛んだことになってしまう。たぶん、そんな気分もあったのだろう。そういえば、ひとつだけ軽い被害があった。1枚だけ、CDのプラケースがひび割れていた。トランク内で寄りかかった重量に押しつぶされたようだ。やっぱり「プラスティック」はだめだな。「紙」ならどんなに押されても、割れたりしないぞ(笑)  かなりの屁理屈ではあるが・・・やはり・・・アナログは素晴らしい!

それにしても・・・この出不精な僕が、またいつかホノルルに行くことなどあるのだろうか? 飛行機の10時間さえなければ・・・すぐにでも行きたい(笑)

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2005年7月 7日 (木)

<旅レコ 第10回>ソウル編(B面) エリオット・ローレンス/ビッグ・バンド・サウンド(fantasy)

1999年7月  ソウル東大門トケビ市場~ようやく見つけたオリジナル盤!

DSCN0776 ~さて、親切なオジさん達のおかげで・・・中古レコードがありそうな大体のエリアは判った。旺山路(ワンサンノ)を東へ進み、大きな交差点を右折して、南に進む。5分ほどで高架道路まで来た。高架道路の下にも店がある。神戸みたいだな・・・おっ、ビデオやらラジカセの店が何軒かあるぞ。何やら「近い」感じがする(笑) その高架下の店を順にチェックしてみたい気もしたが、ここはオジサンに言われたとおり、もう少し南下しよう。高架を越えてから、「サムウオン・ホテル」の所を左(東)に曲がれ、との指示だった。ちょっと名古屋の100m道路みたいな感じの広い道路を渡る。おっ、ホテルがある。よし、ここを左折だ。すぐ左側に高架道路を見ながら、しばらく進むと・・・なにやら歩道にお店が!屋台というか露天というか、簡単な台にビデオテープとかカセットテープを並べたようなお店が、だんだん増えてくる。いいぞいいぞ・・・。しかし、LP盤は見当たらない。歩道の右側には、普通のお店もあり、CD屋さんらしき店もあった。入ってみると、やはりほとんどCDばかりだったが、タナの下側にLP盤が、わりあい並んでいた。エサ箱のように「面向け」ではなく、下のタナに「背差し」なので、見にくい。期待をこめて、背のタイトルを見ては、ちょっと引き抜いては、でチェックしたが・・・これが、見事に全てフュージョン(笑) 値段はたいてい、7000ウオン~8000ウオンくらいだった。(およそ700円~800円) もう一店、同様なお店があったが、これもフュージョン大会だ・・・。いくらLP盤でも、フュージョンじゃあ100円でも要らない。はああ・・・力が抜ける僕である。それでも、その屋台通りをずーっと進んだり、戻ったりしながら、チェックしたが、LP盤在庫のお店は見当たらない。あとは、路地を見るしかないぞ・・・と、そのカドにちょっと大きな屋台がある。古雑誌やらカセットやらがある。ここで、しばし、古雑誌など眺めながら路地の様子を見る。右側にいろんな店が続いており、けっこう市場が広がっている様子だ。それにしても、この辺りを歩いていると大きなビルがほとんどないし、古い平屋の建物や屋台やらが並んでいるので、なんとなく(写真でしか知らないが)戦後の闇市のような風景に見えてくる。(この辺りだろうなあ・・・と思える記事を見つけたので付けておきます。興味ある方はどうぞ。「ソウル・ナビ」というサイトです)                  思い切って、この路地を入っていく。少し進むと、すぐに左に曲がる三叉路になっていた。とりあえず左折すると・・・・・・すぐ右側に間口の狭い店がある。その間口には、ドアなどもなくパアパアに開いているので、店の中がボンヤリと見える。外がムチャクチャ明るくて中が暗いので、そのギャップで、はっきりとは見えない。それでも、薄暗い中から仄かに・・・何かが見えてくるのだ・・・30センチくらいに仕切ってあるタナが並んでいるようだ・・・そうして、そのタナには、何かがぎっしりと詰まっているように見える。ん?・・・あれは・・・あの景色は・・・おおっ、あれは・・・レコードだっ!
ついに見つけのだ・・・すぐそこに、レコードがあるのだ! そのお店の左側の壁面に取り付けられたレコードのタナ・・・全てLP盤だ。全て「背差し」。  すごい在庫量だ! やったあっ!間違いなく中古レコード屋さんだ。それもかなり在庫の多いレコード屋さんだ! 

急に元気になった僕は、もう、ぐぐっ~と入っていきました。中は薄暗い。全体に、なんというか・・・汚い店だ(笑) 間口は狭いが、奥には広い。外から見えたタナは、そのままず~っと奥へ10mは続いている。床は、土間の部分があったり、古いコンクリートがむき出しだったり、とにかく、古い建物だ。入り口も開けっ放しで、もちろんエアコンなどない。設備投資が少ない分、安いかもしれない(笑)
客は僕だけ。太ったオバちゃんが、土間の中央あたりでイスに座って、ウチワをパタパタ。もう一人、30才くらいの男がいる。
使える数少ないハングル~「ある」はイッソヨ、「ない」はオプソヨ、これだけは知っている(笑)~
男の方に「ジャズ イッソヨ?」 すると男は「ジェズ?イッソヨ・・・」と応えて、店の一番奥の方~だんだん細くなって2m四方くらいの小部屋のような部分~タナが右に曲がる~そのカドの辺りまで案内してくれた。こんなに在庫があるのに、タナには何の分類プレートもなかった。とても自分では、探し出せないようなポイントだ。最初にジャズの場所を聞いて正解だった・・・。
「オルマエヨ(いくら)?」 と聞くとその男、オバちゃんに何事か聞いたりしている。そのオバちゃんの威張った態度で、母と息子だと判る。        オバちゃんは・・・「マン・ウオヌ」とのたまう。マンは「万」だ。1万とかの場合、1(イル)は省略するんだったよな・・・ああそうだ。じゃあ、1万ウオン~約1000円らしい。さっきのフュージョンが7000ウオンだったから、若干は高い。やはり、これだけの在庫量からみても、ここは本格的中古LP盤専門店のようだ。あとは、どんなのがあるか・・・だ。さあ、いくぞっ!

男が「ここから」と示してくれた、他ジャンルとの境界ラインから、順に右側の方へチェックしていく。奥行きの深い店で、照明も暗いので、洞穴にでも探検にきているような気分だ。それにしても・・・暑い。風が全く入らない。5分ほど見てると、もう汗がどっ~と吹き出てくる。水(歩き回るつもりでボトルを持ち歩いていた)を飲み、腰を伸ばしたりしながら、タオルを首に巻く。そんな様子に同情したのかオバちゃん、何やら近くまできてガチャガチャ・・・おっ涼しい! 扇風機を僕の近くまで持ってきてくれたのだ。おお「カムサハムニダ」・・・顔つきはムッとしているが、案外に優しいじゃあないか。

~ジャズのコーナーといっても、やはりフュージョン風も多かったり、ムードミュージックみたいなのや、サントラみたいなのも混ざっている。そう甘くはないよなあ・・・と思い始めたが、まもなく・・・Dave Brubeck を2枚発見。   At Storyville(columbia)とDave Brubeck Trio(fantasy)だ。こりゃあ、まだあるな・・・とチェックにもますます気合が入る。そのまま、1時間ほどはチェックしていただろうか・・・途中、20歳くらいの男の客がきて、店の30男と親しげに話している。「・・・エルトン・ジョン・・・」だけ聞き取れた(笑) 僕が今チェックしているジャズの一角は・・・そうだな、全体のせいぜい10%もないだろう。どうやらここは、ロック中心の「マニアな奴ら」御用達の店のようだ。それで、オバちゃんは、何が何だか判らないまま、まあ息子がやってるし、そこそこ客もきてるし~という感じだな。それにしても、店の真ん中にドカッと座ってたら、息子もやりにくいだろうな(笑)

~さて懸命のチェックの結果・・・期待通りに、ジャズの米オリジナル盤が何枚か見つかった!ただし・・・ジャケの程度は・・・全体にかなりひどい。どこかのお店(飲み屋か?)で使ったレコードなのか、ジャケも煤けたようなものも多い。なかには、幅1cmもの黒いビニールテープで、ご丁寧にも3辺を貼りこんでしまったものまである。ジャケは完全にVG-だな。でもまあ・・・とにもかくにも、米オリジナル盤だ。1万ウオンならいいではないか。そう思って10数枚を選びとった。あまりにもジャケがヒドイもの(一部が欠け落ちたようなものなど)何枚かはあきらめた。それでも、もう少し絞る必要がある。

~レコードをちょっとまとめて買う時の、僕の絞り込み方は・・・最初、とりあえず、ちょっとでも「引っかかる盤」は、抜いておく。で、そうすると知らぬ間に30枚くらいになっちゃうので、途中で一度、「弱いもの」から落としていく。それで、全チェックが終わった段階で、自分の予算より多すぎる場合は(ほとんど、そのケースですが:笑)、ここから涙の選考会が始まる(笑)何を落とすか?これが・・・なかなか辛いものがある。すでに一度は「選ばれしもの」なのだ。全部、当選させてやりたい!しかし・・・それでは予算が(笑)。トランクにも入らなくなる。そんな時、僕は「消去法」でいく。つまり、「何を落とすか」ではなく、「絶対に落とせない、というのはどれだ?」と考えるのだ。
まあ、どっちでも一緒のようなもんだが、微妙に違う(笑) 絶対に落とせない、という方が、よりはっきりとその時の自分の意思を確認できる・・・ような気がする。こんな具合に、無理やりにでも序列をつけていかないと、落とすものを決められない、というのが正直なところだ(笑)

さて・・・見つけた時、大げさじゃなく後光がさして見えた盤がある。・・・そして「消去法」でも、真っ先に「残す」に決定したのが・・・これだ!

DSCN0776≪Elliott Lawrence/Big Band Sound (fantasy

3290)≫ 

ファンタジーによくある「カラー盤」で、この盤は「赤」だった。
ファンタジーの赤盤、というのにもココロ惹かれるものがあるが、海をバックにしたローレンスのポーズがおしゃれなジャケットのデザインと くすんだような色調が、なかなかに素晴らしい。幸い、この盤にはジャケにテープ貼りなどもなく、見た目の盤質も悪くない。イナースリーブも「広告付き」のオリジナルで、おまけに、fantasyのカタログ小冊子まで入っていたのだ。この1枚は・・・うれしかった。DSCN0777エリオット・ローレンスは、マリガンの絡みで何枚かは聴いていた。けっこういいソロイストが入っていることも多いので、侮れないのだ。この盤には、Al Cohn、Gene Quil などがクレジットされている。A面4曲目~Lover Take Allでのアル・コーン、B面2曲目~Alto Lament でのジーン・クイル、短いソロが光っている。時々出てくる、トロンボーンのソロは・・・Eddie Bertのようだ。

~その他には・・・Brubeckの2枚はもちろん当確。他にはマリガンの Concert Jazz Band ’63(verve)。それから、オムニバスのThe Composition Of Horace Silver(riverside RLP-3509))など。マリガンのverve盤は、62年録音で、ライブではない。  リバーサイドのモノ・青ラベルは初めてだったので、うれしい発見だった。そうして、9枚が残ったのだ。  これら9枚を、お店の30男に差し出しながら、「オルマエヨ(いくら?)」・・・と、またもオバちゃんと何やらボソボソ・・・。値段をどうするか協議しているようだ。オバちゃんの方が「パル・マン!」とぶっきらぼうに答える。ウー・ユク・チル・パルが5、6、7、8だ・・・80000ウォンか。8万というとビックリしてしまうが、1万ウォンが約1000円だから、8000円ほどだ。ジャケ・盤質の程度(VG-からせいぜいVG)を差し引いても、充分に安いだろう。

さあ、これにて探索終了! この洞窟から抜け出そう(笑) 屈めた姿勢でマヒしたようになった腰を伸ばしつつ、店を出る。路地を曲がる時、もう一度、店の姿を見る。こんなに遠くの見知らぬ市場までやってきて、よく、こんな中古レコードの店を見つけたなあ・・・と大げさに感慨にふける僕・・・。 遠くっていったって、東大門駅から15分くらいなんだが、あちこち歩き回った果てにたどり着いたものだから、ものすごい辺境にいるような気分になっていたのだ(笑) あっ、もう3時過ぎだ。考えてみたら、昼めしもまだだった。もう他を見て回る時間も気力もない。とにかく何か食わねば・・・。
近くの屋台でお好み焼きみたいなのを食べて、水もたくさん飲んで、そうしてようやく一息つく。それから、東大門駅の方に、とぼとぼと歩き始める。体は疲れていたが、心地よい気分で。・・・また来るぞ、ここに・・・。
僕のソウル/レコード探索は、こんな具合に終了していくのだった。

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