トニー・スコット

2014年1月18日 (土)

<ジャズ雑感 第35回> ミルト・ヒントンというベース弾き

002 ≪写真~Bethlehem bcp 1020≫
ミルト・ヒントン。なんというか・・・真に重厚なベーシストである。そして、ウッドベースにおける伝統的4ビートジャズの体現者である。僕の想う「伝統的」とは・・・まず「ベース音のでかさ」である(笑)。ミルト・ヒントンのベース音は間違いなく「大きい」。それは録音されたベース音であっても、その「鳴り」~弾かれた音がベースの胴から廻りの空間に拡がる感じ・・・辺りの空気が振動する感じ~で判る。アタッチメント(マイク)が普及するよりもうんと前の時代のベース弾きには要求されたであろう「音の大きさ」・・・ヒントンは、その「大きな音」を余裕でクリアしていて、さらにその大きい音を、「太くて、丸い、輪郭の拡がる感じの音」(これがおそらくガット弦の特徴)で鳴らしている。これが・・・ウッドベース好きにとっては、実に魅力的なんです(笑) 
さきほどから「大きい、大きい」と叫んでいるのだが、これは・・・ウッドベースを生音で(マイクを使わずに)弾いた状態でも充分に「大きい」という意味であって、単に出来上がったレコードで聴ける状態で「ベースの音量が大きい」状態とは、ややニュアンスが違う。レコードでは「大きく」聴こえても、それが「生音で大きい音」とは限らない。このことは、ウッドベースという楽器の使われ方(マイク、弦高の高さ加減)にも関係してくるので、以下に少々、ベース談義を(笑)

Hinton_playing_a_contrabass_4 Milthinton2
≪ミルト・ヒントンの写真2点~見よ、この太い弦!(ガット弦)、そして弦高の高さ!右の写真でお判りのように、右手の指の腹を弦に深く当てて、なおかつ、指板の一番下の辺りで弾いている。全てはウッドベースから大きな音を生みだすための作法だ≫

~ちょっと乱暴な言い方だが、70年代以降、ほとんどのベーシストがアタッチメント型マイク(ウッドベースの駒に直接、貼り付けたり、はめ込んだりして音を拾う型のマイク)を使うようになって、その結果、1970年~1985年くらいまでの15年間くらいだったか・・・ほとんどのジャズレコードで聴かれるウッドベースの音が、「フニャフニャ」になってしまった。当時の代表的ベーシスト~エディ・ゴメスもロン・カーターもリチャード・デイビスもペデルセンもジョージ・ムラーツも~誰も彼も、アタッチメントマイクを使うようになって、そうすると、音をよく拾ってくれるので、(その結果)弦高を低くセッティングしたのだろうか・・・その時期のレコードで聴かれるベース音は、音量は大きくて、低い音もよくサスティーンされ(伸び)、音程(の良し悪しも)も聴き取りやすくなったのだが・・・それは空気を振動させた音色ではなくて、限りなくエレベ(電気ベース)に近い、電気的な音色になってしまったわけで・・・それは伝統的なウッドベース好きにとっては・・・致命的に「良くない」ことだったのだ。
ただ、そんな時代でも、例えば、レイ・ブラウンは「大きな生音」を維持していた。エリントンとのデュエット(1972年:パブロ録音)を聴けば、そのベース音の馬力、粘り、ビート感の強靭さに驚かずにはいられない。そうして・・・こういう「グルーヴ感」は、(私見では)ある程度、弦高を高くしてベース本体から発される生音を『空気中に響かせる』状態にしないと、生まれないものだと思う。
・・・このようなことは「ウッドベース好き」にとって、どうにも「気になること」かと思います。ですので、1970年代~80年代中期頃のウッドベースの音質が、それほど気にならない方は無視してください(笑) また前述の『ベース音のフニャフニャ傾向』も、ある時期に目立ったもので、その後は(私見では1990年くらいから)、マイク機器そのものが改良されたこともあって、アタッチメントマイクを使っていても、それほど電気っぽくない自然な聴きやすい音質に改善されてきたように思う。加えて、弦高も高めのセッティングにして、ウッドベース本来の力強い「ベース音」を発しているベーシストも増えてきているようだ。たとえば、クリスチャン・マクブライドのベース音は『ベース本体がよく鳴っている』感じが充分にあって、本当に素晴らしい。
ちなみに「生音が大きな鳴り」のベース弾きはミルト・ヒントンの他にも、もちろんいっぱい居るわけで、私見ですが、例えば~
ジョージ・デュビュビエ
ウイルバー・ウエア
チャールス・ミンガス
ジョージ・タッカー
エディ・ジョーンズ
などをこのタイプとして挙げたい。そして、このタイプのベース弾きは、たぶん、ガット弦(ウッドベースで使う弦の種類)を使っている・・・と、睨(にら)んでます。

さて・・・ここらで、話しをレコードに戻しましょう(笑)
ミルト・ヒントンのベツレヘム盤『Milt Hinton』1955年1月録音。
005_3 このベツレヘム盤・・・僕の手持ちは bcp1020なる番号表記である。(左の写真とこの記事の一番上) いろんな資料で調べてみると、この『ミルト・ヒントン』~(ディスコグラフィでは)まずは10インチ盤 BCP-1020番として発売された後、12インチ盤 DeluxシリーズのBCP-10番として発売されたことになっている。しかるに・・・今、僕の目の前にある12インチ盤『ミルト・ヒントン』は、bcp1020番なのだ。
「さあ、これ、いかに?」というわけで・・・ちょうど前回の<夢レコ>(スタン・リーヴィー記事)の追記としてこの話題にも触れたところ・・・M54さんから決定的なコメント情報が寄せられた。その情報から、僕はいろんなことを妄想した(笑) 
以下、M54さんとのコメントやりとりの一部を再掲しながら、氏が提供してくれた写真も載せて、ベツレヘム盤『ミルト・ヒントン』の12インチ盤2種存在の謎に迫ってみたいと思う。

M54さん~
≪ミルト・ヒントンは持ってますので確認」してみました。ふ~む、面白いですね。 僕のはbcp10 ですが、表の右上の表示はシルバーのシール貼りです。 bassさんの記事から想像するにこの下にはbcp1020が隠れているのではないかと! 裏面ですが、これも左右の上部角のレコードnoはBCP-10ですがこの10の後に黒く塗りつぶしてあるのです。 この塗りつぶしの下は20が隠れていると思います≫
Dscn0848 Dscn0846

≪上記写真2点はM54さん提供。まさに「シール貼り」と「マジック消し」だ。ジャケット裏のミュージシャンのパーソネルの箇所:clarinetのA.J. SCIACCA なる人物にTONY SCOTTとメモ書きしてある。相当なジャズマニアの所有レコードだったのだろう(笑)≫

bassclef~
≪う~ん・・・そうですよ、M54さん、その推測で、まず間違いない、と思いますよ。つまり・・・ベツレヘム社は、10インチ盤1020番と(たぶん)同じジャケットをそのまま使って、まずは、12インチ盤を造った。当然「そのまま」だから、この12インチ盤は表ジャケ・裏ジャケ ~とも1020番が表記されていた~(これが単純ミスなのか、確信犯なのかは判らないけど:笑)後からシールでも貼っておけばいいだろう~てなことで「BCP 10」のシールを表ジャケ右上のbcp1020の上に貼った! そして、裏ジャケットはシール代が嵩(かさ)むので(笑)黒マジックで、「BCP-1020」の1020という数字4ケタの下2ケタの20を消した! 54さん・・・そういうことでしょうね。シールの下には間違いなく「bcp1020」という番号が表記されていることでしょう。そのシールを剥がしてみて~とは言いませんから(笑)
12インチ盤が出来上がってから・・・「あ、10インチ番(1020)と同じ番号じゃ、まずいね」ってことで修正を図ったんでしょうね。それにしても「シール貼り」はともかく、黒マジックで消す~というのはなかなか大胆な作戦ですね(笑)

M54さん~
≪ジャケ裏の住所表示ですが、センターのみで Bethlehem Records,1650 Broadway, New York 19, N. Y. です。盤はフラットです。bassさんのもフラットではないですか?≫

bassclef~
≪はい、住所表記もまったく同じです。盤もフラットです。ということは・・・(便宜上、こう呼ぶが)僕のbcp1020番も、M54さんのBCP-10番も、おそらく、全く同一の(製作段階でも)ものでしょうね。ジャケットも中身の盤もまったく同じ12インチ盤~ミルトヒントン」ということになります。僕の手持ちは「シールなし」「マジック消してない」状態ですが、シールは剥がれ落ちたものかもしれません(笑) まあごく常識的に考えれば、ベツレヘムさん~1020番が10インチと12インチと同じだあ!というミスに気付くまで・・・ある程度、出荷してしまって、その後、「シール&マジック」で修正したものを出荷した~ということになるのかな≫
004

~というような事情です。
つまり・・・ここに実例として挙げた12インチ盤『Milt Hinton』は、異なる2種ではなく、製作段階では「まったく同じもの」だったと考えて間違いないと思います。その同じものを、比較的短い期間の内に、「シール貼り・黒マジック消し」で、「違う番号のもの」に見せかけただけであって、「もの」としてはまったく同一な商品であろうかというのが僕の結論です。
そして、この12インチ盤・・・実はもう1種、別のエディション(版)が存在しているかもしれません。これは以前にネットで見かけた記憶の話しなので確証はありません。それは・・・表ジャケットの色合いもセピア調とは違う感じだし(モノクロのように見えた)、何よりも表ジャケットの右上に「長方形ロゴ」が見えたのだ(そう記憶している) そしてその「長方形ロゴ」にはBCP-10と印刷されているように見えた。現物で確認できてないので、断定はできませんが、おそらく・・・「シール貼り」処理したbcp 1020ジャケットの在庫がなくなったので、新しく「長方形ロゴ&BCP-10」ジャケットを製作したのではないかなと推測できます。
*『ミルト・ヒントン』の「長方形ロゴ・BCP 10」をお持ちの方、ぜひコメント情報をお寄せください。

Bethlehem盤 『Milt Hinton』なるレコードの内容についても、少々、触れておきたい。
この初リーダー作はカルテット~ピアノにディック・カッツ、ドラムにオシー・ジョンソン、そしてクラリネットには、A.J.Sciacca なる聞き慣れない名前だが、このSciacca(ショッカと読むらしい)なる人・・・どうやらトニー・スコットの本名らしい。
ベース弾きのリーダー作ということで、ミルト・ヒントンは over the rainbow と these foolish things で、お得意の「ヒントン節」を披露しながら、全編、ベースでメロディを弾いている。トニー・スコットが抑えた感じでヒントンのベースに絡む these foolish things はなかなか聴き応えがある。

Photo_2 ああ・・・そういえば僕がミルト・ヒントンという人をいいなあ・・・と最初に感じたのは、あれは、ハル・マクージックのcoral盤『Jazz at the Academy』というレコードからであった。そのレコードでも、やはり over the rainbow を、ヒントンがベースでメロディを弾いているのだ。ギターのバリー・ガルブレイスとドラムのオシー・ジョンソンがごく控えめに伴奏している。これがとってもいいのだ! ヒントンという人が自分の好きな曲を、そのメロディを奏でるのが嬉しくて仕方ない・・・という感じがあって、サビ辺りからテンポがどんどん速くなったりする(笑) それでもその生き生きしたヒントンの「唄い」が本当に素晴らしい! 聴衆も固唾(かたず)を飲んで、このベース弾きの唄を聴き入っている様子なのだ。サビで盛り上がってきた辺りで誰かが「ぅおお~」と短い歓声を上げる・・・おおっ、この演奏、ライブ録音だったのか!そうしてメロディを唄い終えると・・・聴衆は一気に拍手・・・という over the rainbow なのである。
ちなみに、このcoral盤は、アルトのハル・マクージックの音色も素晴らしくて、もちろん、僕のマクージック愛聴盤である。ちなみに、at the Academy というタイトルではあるが、どうも拍手や歓声の入り方がワザとらしいトラックが多くて、どうやら全編がリアルなライブ録音ではないようだ。しかし・・・ヒントンが弾くover the rainbow だけは、何度聴いても、そこにリアルなライブ空気感が感じられるので、僕としては、これこそ、「ミルト・ヒントンの畢生(ひっせい)の傑作ライブ演奏」として記憶していたい(笑)

ミルト・ヒントンは2000年に亡くなっているが、1989年(ブランフォード・マルサリスのTrio Jeepy(2枚組)でも、生き生きしたビート感で、まったく衰えていないベース音を聴かせてくれる。この時、ミルト・ヒントンは79歳のはずで ある・・・まったく凄いベーシストがいたものだ。
ジャズは・・・ますます止められない(笑)

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2005年12月11日 (日)

<ジャズ回想 第3回>ああ、中古レコード店:   ラビットフットレコードと初期のビル・エヴァンス。

1980年春~ジャズ喫茶/グロッタとラビットフットレコードのこと。

地元のジャズ喫茶「グロッタ」には、学生時代の75年から78年頃、本当によく通った。重い防音ドアがひとつあるきりで、あとは一面コンクリートカベの店だった。店内も灯りが極端に暗めで・・・ソファにたどりつくまでに、つまづきそうなほどで、正に「洞穴」(グロッタというのは、どこかの言葉で「洞穴」というらしい)のような店だったのだ。だんだんと目が慣れてくると、この「暗さ」が心地よくなってくる。よくあんな暗がりの中で、みんなマンガや雑誌を読んでいたなあ。このグロッタは・・・とにかく大きな音でジャズを聴かせてくれたし、何よりいいレコードがいっぱいあった。ラファロが聴きたくて、ビル・エヴァンスのSunday At The Village Vanguard をいつもリクエストしてかけてもらった。JRモントローズやアンドリューヒルも何度もかかった。そのグロッタが改装のため、一時的に閉店していた80年の春・・・グロッタのすぐ斜め向かいに「ラビットフットレコード」がオープンした。これはうれしかった。それまでは、名古屋か浜松に行かなければ手に入らない「輸入盤」が、地元の街で手に入るようになったのだ。ラビットは、やはりロック系・トラッド系が中心ではあったが、うれしいことにジャズの輸入盤・中古盤もけっこうあった。ジャズが少ないのは・・・これはもうジャズファンなら馴れっこの仕方ないことだ。とにかくジャズのコーナーがあれば、それで充分だった。このラビット・・・開店直後には、liberty音符ラベルのブルーノート盤がたくさん出ていたので、それまでほとんど持っていなかったブルーノートの有名盤を、けっこう入手した。ロリンズの「A Night At The Village Vanguard」やら、ブレイキー&クリフォードブラウンの「A Night At The Birdland vol.1&vol.2」も、カットアウト盤だったが、格安(1400円前後だったか)で入手できたのだ。この頃は・・・リバティ音符ラベルがオリジナル盤と比べてどうか?なんてことは全く関係なかった。とにかくキングや東芝(80年だとまだキングの最終の頃か?)の国内盤定価より「安い」ところに価値があったのだ(笑)「ブルーノート」というレーベルは・・・東芝が「直輸入盤」として発売していた頃から「高い」イメージが強く、キング盤になってからも、どうも手が出しにくい感じだった。とにかく、ブルーノート盤には持ってない/聴いたことない、というタイトルが多かったのだ。
しばらくはラビットに通いつめた。そんなある晩・・・ラビットの斜め向かいの辺りが明るいし、何やらざわざわしているような感じだ。おおっ!改装なったグロッタがオープンしたのだ!ずず~っと近寄ると、とにかく「明るい」。あの洞穴のような暗いグロッタが・・・木のドアの両側の天井までの窓からは、店内からの灯りがもれて歩道までピッカピカじゃないか!中も丸見えだ。再オープンの夜ということで、店内はもうお客で一杯になっている。さっそく、木のドアを開けて入っていく。久しぶりに見る顔なじみばかりだ。なにやら照れくさいような感じだ。とにかく明るい。ガラス窓なので外からもスースーに見えちゃうし、座っていてもどうにも落ち着かないのだ(笑) この明るくなって一見、普通の喫茶店に変わったグロッタではあるが、「ジャズ喫茶」を感じさせるものがあった。大量のLPレコードたちだ。やはり彼らがお店の主役なのだ。下の床から天井まで5段はある造り付けの収納タナにぎっしりと収まっている。この風景は全く壮観だ!軽く5000枚はあっただろうか。レコード好きなら、このタナの前で紅茶など飲んでるだけで幸せだろう。僕はずうずうしく時々、気になるレコードを取り出して見せてもらったりしていた。改装オープンしばらくは、もちろんこのレコードをかけていたが・・・新しいグロッタは、「ジャズ喫茶」を前面に打ち出してはいなかったので、残念ながらこれらのレコードを大音量でドンドン聞かせる、というスタイルではなくなったようだ。カセットでかけるジャズのヴォリュームが少し下がった分、常連のお仲間が集まり、気楽にしゃべれる店になったのだ。そんなグロッタにもすぐに慣れてきた。それからしばらくは、ラビットを覗いたあとグロッタに寄る、というパターンが続いた。そうして、この頃からレコードを買うペースが急激に上がっていった。ラビットでいいレコードも見つかったし、社会人になっていたので「聴きたいレコードは自分で買う」というスタイルになっていったようだ。

evans_victor_001さて、この<ラビット>で入手したもので印象深いものを~中古盤がメインのお店なので、やはり国内盤が主になるが~何枚か、関連する盤も併せて紹介したい。

トニー・スコット/ザ・タッチ・オブ・トニー・スコット(ビクターRGP-1056)~ビル・エヴァンス目当てでマークしていた盤なので、これを発見した時は、とてもうれしかった。1972年にビクターがプレスティッジ1100円盤を発売した後の1973年のRCA系1100円盤の中の1枚らしい。ペラペラの折り返しジャケットが、当時はとても安っぽく感じたが・・・今では何故か魅力的である。「Aeolian Drinking Song」では、初期のエヴァンスの硬質なソロがふんだんに聴かれる。何かのTVジャズ番組でほんのちらっとだが、この頃かと思われるエヴァンスの映像を見た記憶がある。なんの曲だったかなあ・・・。この頃のエヴァンスのピアノは・・・わざと表情を隠したような冷徹なタッチと長いフレージングで・・・硬質というより・・・非情な感じさえ受けるハードボイルドなエヴァンスである。「オレは普通のピアノは弾かんぞ」と主張しているかのようなとても尖がった個性的なピアノだ。人によっては、この「冷徹な感じ」をレニー・トリスターノの影響が・・・と思われるかもしれない。僕はこの初期のエヴァンス、大好きである。58年のリヴァーサイド「Everybody Digs~」まではこの路線だったように思う。
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同じくトニー・スコットとの共演盤~「Tony Scott/The  Complete Tony Scott(LPM-1452)を、米ビクターのオリジナル盤を、ちょっと前にネットで入手した。フレッシュサウンドのLPやCDで聴いていたが、イマイチ音質が悪くて、この「犬ラベル」に期待したが~56年か57年のモノラル録音~ビッグバンドのサウンドがやかましくてこもったような音で・・・期待したほどではなかった。米ビクターのLPS(ステレオ)には、音のいいものが多いのだが。エヴァンスのソロは・・・「I Surrender Dear」や「Just One Of Those Things」でほんの少しと、B面最後の「Time To Go」で、ようやくエヴァンスのタッチの強弱を生かした、とてもいいソロが聴かれる。

ついでにジョージ・ラッセル絡みでのエヴァンス参加盤をひとつ。これもラビットで入手した。
ジョージ・ラッセル/ジャズ・ワークショップ(ビクター:RGP-1167)だ。ウラジャケ隅の表記によると1976年の発売らしく、同じビクターのRCAシリーズだが、価格も1300円盤になっており、もうペラペラ・ジャケではなくなっている。「コンチェルト・フォー・ビリー・ザ・キッド」という曲では、エヴァンスが大活躍だ。ちょっとラテンっぽいリズムでのテーマの後、4ビートになり、そこで・・・さきほど書いたような「ハードボイルド」なエヴァンスのソロがたっぷり聴かれる。今、久々に聴いていると・・・すごくいいソロです。それからちょっと新発見だ。エヴァンスのソロの始めころに「む~・・・・う~・・・」と、かすかな「唸り声」が聞こえるのだ。意外な感じだ。エヴァンスも唸るんだろうか・・・?

evans_victor_003 [右側がRGP-1167、左側がSHP]

左側のジャケ違い盤は・・・だいぶ後になって入手したのだが、これも日本ビクター盤が、ちょっと古い時代のSHP-5071(¥1800)だ。ジャケの色あいやトリミングの具合など、このSHP盤にも捨てがたい味がある。この盤は、テスト盤なのかセンターラベルは一切の文字なしであった。

さて・・・音の方は?  古い時代の盤の方がマスターテープの鮮度などの理由で音がいいのでは、と期待して聞いてみたのだが・・・この同一タイトルの日本ビクター盤を聞き比べた限りでは、残念ながら「古いSHP盤」の方が明らかに音質が悪かったのである。先ほどの「コンチェルト~」でのエヴァンスのハッとするような鋭いタッチが、1976年のRGP盤に比べると「こもったような感じでメリハリのない」感じに聞こえる。マスターテープの具合が悪かったのか、プレス具合が悪かったのか・・・。同じタイトルの時代(製作時期)よる音質の優劣・・・これは、オリジナル盤の1st、2ndの場合と同じく、そう単純には決められないようである。

ハンク・モブレイ/マイ・コンセプション(キング)~キングがブルーノートの版権期限切れの直前に「世界初登場シリーズ」として発売した頃は、まだ「未・ソニー・クラーク」だった(笑) だから・・・とっくに廃盤になった頃にこの盤の存在を知り、どうしても聴きたくて聴きたくて・・・そんなある日、この盤がラビットにあったのだ。この盤は・・・内容が本当にいい。ソニー・クラーク作のバラード「マイ・コンセプション」がモブレイのしっとりとした音色と相性が最高みたいで、入手以来、ず~っと愛聴盤となっている。
余談ではあるが・・・レコードの中古盤屋さんには、なんというか・・・「ある盤が出回る時期の法則」があるように思う。豊橋は地方都市なので東京のように、発売直後の新譜が(気にいらなくてなのか?)すぐに中古屋さんに出回る、というようなことはあまりなかったと思う。新譜で売れる量が少ないからだ。そういう地方都市ならではの「法則」とは・・・まあ法則なんて大げさなものではないが・・・例えば、あるタイトルの<CDが発売されて1~2ヶ月後>だ。中古盤の世界では、80年台後半に明らかに「レコードからCDへの移行」時期があり、この頃、たくさんの音楽ファンが、LPからCDにのりかえたようだった。だから・・・CDで発売されたタイトルのアナログ盤が、よく出回ったりしたのだ。だから僕は、狙っていたアナログものがCD化されると、それまでより短いスパンでラビットを覗くようにしていた。それから・・・CD化でなくても、例えば東芝がブルーノートのあるシリーズを出すと~新しいものに買い替えた人が手放すのだろうか~同じタイトルのキング盤が出てくる、というようなこともあったようだ。そんな具合だったから、僕は、「どうしても聴きたい復刻盤(あるいは完全未発表の盤~その旧譜はありえないわけだから)」は、新譜レコード店で買っていたが、それほどマークしてない盤の場合は・・・中古で出たら買おう、と待っていたりしたものだ。これはっ、と思うものは入手してきたが・・・今思えば・・・キングの初登場盤は、けっこう多くのタイトルが中古で出ていた。まだそんなに人気が上がる前で割安だったのに・・・

これは、どちらかというと珍盤の部類に入ると思うが・・・ evans_victor_004
ジュリアス・ワトキンス楽団/French Horns For MY Lady(フィリップスSFL-7048:日本ビクター発売)~サム・テイラーなどに代表してイメージされる60年代後半のムードミュージックの一種として発売されたようだ。「夜の誘惑ムード」というサブタイトルが可笑しくも哀しい。
ジュリアス・ワトキンスという人は・・・一聴、ヘタなトロンボーンに聞こえるあの楽器~
レンチ・ホルン~を吹くジャズメンだ。モンクのプレevans_victor_005スティッジ盤(ロリンズ入りの「13日の金曜日」セッション)でこの人の名前を覚えていた。この盤はたしか・・・3枚1000円のコーナーに混じっていた。確かに、ただの「古いムードミュージックのLP」なんで(笑) 僕はうれしく確保したのだった。内容はクインシー・ジョーンズのアレンジに、エディ・コスタのピアノやらジョージ・デュヴィヴィエのベースも入り、悪くないアレンジジャズだ。

ラビットフットレコードは、2003年8月31日に閉店した。ラビットのオーナーだった小川真一氏は、現在、レコードコレクターズなどに評論を書かれている。ラビットの閉店セールの模様はこのアドレスでどうぞ。

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2005年6月26日 (日)

<ジャズ雑感 第2回>JAZZ HERO'S DATA BANK~僕の強い味方

ジャズ・ヒーローズ・データ・バンク(JICC出版局) 使えるデータがいっぱいだ!

DSCN0741 この本は・・・すごい。ハードバップ期の主要なミュージシャンの参加したレコードが可能な限り集められて、年代順にリストされている。あとがきによれば、40名/5000タイトルとのことだ。これらの録音年月日はもちろん、演奏曲目、パーソネルまでもが、しっかりと表記されている。それから、白黒だが、とにかく全点にジャケット写真が付いているのだ。(ほんの一部タイトルだけ写真なし) マイルスやコルトレーン、ロリンズやモンクなどのディスコグラフィーなら、わりと見かける。しかし、ケニー・ドーハムやドナルド・バード、ハンク・モブレイやジョニー・グリフィン、またトミーフラナガン、ケニー・ドリュー、ホレス・シルヴァー、レイ・ブライアントなど、ちょっと渋めのミュージシャンに、これだけのページを割いた(さいた) ディスコグラフィーなんて、これまでにあっただろうか。さらに、この1991年の時点で、チェット・ベイカーやアート・ペッパーまでも載っている、というような本は、日本では間違いなくそれまで存在しなかった。                                   この頃、もう本格的にジャズの、特にハードバップ時代のLP盤を集め始めていた僕には、彼らの~あの時代の本当に、それぞれの個性が溢れる魅力的なミュージシャン達~のリーダーアルバムだけでなく、全ての参加レコード(判っている限りの))が、年代順に並べられ、しかも写真付きで見られるのは、とてもうれしかった。「これはすごい!」は大げさな感想ではないのだ。 1991年7月の発売、定価は3200円。当時としては、3200円というのは、けっこう高かった。(いや、今でもか)しかし、ジャズが好きで特にハードバップ大好きで、レコードを集めている人間にとっては、この本の価値は絶大であった・・・3200円はむしろ、安かったはずだ。僕も、即、購入した。DSCN0739

使い始めてすぐに、ある欠点に気づいた。僕の場合、アルファベットのG(stan getz)やらC(sonny clark)やらを頻繁に見る。それ以外にも、あるミュージシャンが気になったりすると、すぐにそのミュージシャンのレコードを確認するわけだ。そんな場合に、うまく目的のアルファベットの開始ページを探り当てられないのだ!人名というのは面白いもので、BとかGとかMなどは、
数が多いのだが、AとかHの人名は、うんと少ないのだ。だから、「H(hampton hawes)は大体、この辺りだろう・・・」と探っても、なかなかそのページを開けなかったりする。(笑) これにはイライラさせられました。そうして「これはイカン!」とも思いました。普段はずぼらな僕ですが、好きなジャズ研究(笑)のことで、たびたび発生する不便は我慢できません。僕は、すぐに手製インデックスを作り始めました。タテ1.5cmくらい、ヨコ4cmほどの紙片を切り抜いて、ヨコ長の紙片を二つに折り、ページをまたぐようにして、 A~F、G~Yまでの紙片を、それぞれの該当ページに貼り付けました。この貼り付け方にもひと工夫。まず「A」を一番上の方から貼り始め、1.5cmづつずらしていくと 「K」で、本の下4分の3あたりまできてしまう。あまり下の方だと、ページが括りにくい。そこで次の「M」からは、また本の上から始めることにした。さっき貼った「A」と、高さは同じ位置なのだが、本の厚さが6cm以上はあるので、全く重ならないのだ。これなら見やすい!折り返しの「M」から「Y」まで、また順番に貼り付けて、ようやく完了だ。不器用な僕は、この作業に苦労したが、その甲斐あって、ものすごく使いやすくなった!しばらくの間は、用もないのに、M!(mobleyやらmcleanなど)とかD!(donaldson、drewなど)とか、指定のページに素早く到達できる状態を、楽しんだりしてました(笑) そんな風だから・・・この本、もうボロボロである(笑)
DSCN0740本の中央辺りが、Gなんだが、Stan Getz、を頻繁にチェックしたせいか、p241からp272の部分が、背のボンド着けから脱落して外れてしまっている。これだけ使い込まれれば、こやつも本望だろう(笑)
  
僕の場合は・・・あるミュージシャンを気に入ると、しばらくは、そのミュージシャンのレコードを集めていくことになる。(もちろん、ほとんどは国内盤での話しです)そうすると、prestige とか riverside、bluenote など有名レーベル原盤のものなら、年月をかければ、ある程度はなんとかなる。その時、廃盤でも、過去20年くらいまでには、たいてい一度は、国内盤として発売されていることが多いのだ。(もちろん、その国内盤中古でも、一時はどれもこれもがレア扱いで、平気で4000円とかにもなったタイトルもあったようだが今は、それなりに落ち着いてきたようだ。)また、復刻で再発されることもあるからだ。 しかし、それはジャズの専門レーベルについてである。   例えば、Decca,Coral,ABC,Warner などのレーベルだと、契約の関係からか、過去にも数点しか発売されず、これからもなかなか国内発売されないようなタイトルが多い。もっとマイナーレーベルだと、さらに入手困難だ。例えば、Bill Evansの場合~Secco [The Modern Art of Jazz] や Carlton 「Free Blown Jazz] などだ。これらは、59年頃とされるトニー・スコット(cl)とのセッションで、なぜか他にも Perfect 「My Kind of Jazz] などに分散されて発売されたらしい。この辺りのレーベルになると、日本復刻はまず望めない。
この<トニー・スコットもの>については、何枚かフレッシュサウンドでLP復刻されていたが、完全ではなかった。そうこうしている内に、そのフレッシュサウンドから、決定的なCDが出たのだ。前述の3枚分の音源に加えて、これら3枚以外にも分散していた残り3~4曲も網羅した Tony Scott & Bill Evans~A Day In New York(freshsound)2CDだ。DSCN0746

このような復刻CD、復刻LPが出た時にも、この本は威力を発揮する。復刻の場合、タイトルそのものやジャケ写真が変わったりするケースが多い。そんな時は~収録曲名、録音年月、それからパーソネルなんかを、この本でチェックするのだ。国内復刻の場合なら、たいていジャズ雑誌の広告やら小パンフに載っているあるので、それを本のデータと照合する。最近の復刻は、ほとんど、セッション単位で完璧なので、ほとんど安心だ。(CDなら未発表テイクもつくこと多い)  難しいのは、大手のCDショップや廃盤店で、全く予備知識のない「復刻盤」を見つけた時だ。特定ミュージシャンの場合で、未入手音源の場合なら、(多少のダブリや、セッションでの欠損の曲があったとしても)ほとんど買ってしまえばいいが、好きさ加減が微妙なミュージシャンの場合は、ちと困る。入れ込み度が薄い分だけ、記憶があいまいなので、「持ってるかもしれないなあ・・・いや、やっぱりこのセッションの2曲は持ってないぞ・・・」とか迷うのである。ほんとは、<レコ買い>の時は、常にこの<ジャズ・ヒーロー>を持ち歩いていけばいいのだが。さすがにそこまでの根性は・・・僕には、ない(笑)
ただ、こんな時、最後に、ダブリかどうかを判断するのは、僕の場合は、「曲名」なのだ。最近のCD(特にヨーロッパ復刻もの)だと、単なるベスト選集の場合と、ベストの合間に、貴重なセッションや全くの別テイク、未発表曲が、ひっそりと収録されていたりする。LP単位では、もはや復刻されないであろうセッション~例えば、マイルスみたいなメジャーなミュージシャンでも、僕はなかなか入手できなかった音源がある。
1951年録音の Capitol音源~<Early Spring>と<Local 802 Blues>の2曲だ。この本によれば・・・この2曲を収録のLPは、
≪Enter The Cool~The History Of Jazz vol.4 (CR-8024)≫として日本発売されたことになっている。
capitolだから、やはり東芝発売だったのだろうか? こんな風にvol~というタイトルがつけられたアンソロジーみたいなレコードが、最も再発されにくいのだ。事実、僕は、この「Enter~」を一度も見かけた記憶がない。

つい先日、珍しくもタワーレコードへ寄ってみた。LP盤メインの僕としては、タワーやHMVというのは、年に2~3回寄るかどうかである。バーゲン品とか輸入盤低価格のもので、なおかつ興味ある音源を見つけた時だけ買う。そのタワーで、2CDで1040円というマイルスのコンピレーションを見つけた。 
DSCN0745 ≪Miles Davis/The Formative Years≫(Castle Pulse) というタイトルだ。

もちろんいくら安くても、単なるベストセレクションなら不要だ。こういう「安CD」は、ジャケットも冴えないし、たいていデータが明記されてない。CDの裏面を凝視するが、字が小さくて読みきれない(笑) 2004年製で ”Castle Pulse” というレーベルのようだ。全く初めての名だ。バーコードのところに、小さくMADE IN THE EU と表記してあるので、これも「欧州製」なんだろう。一応、曲名を見ていくと・・・まずは、Birth Of The Cool のスタジオとライブからのセレクトや、 ブルーノートからのセレクトらしい曲名が入っている。これならいらないなあ、と思ったその時、あの曲名~<Early Spring>と<~802~>という文字が、まさにパッと目に入ったのだ。クレジットには、「Metronome All Stars」としか表記されてない。
ううう・・・これは・・・確か・・・あの・・・ほれ、あれだ、あれだよ、と自分のアタマの中で、うっすらとした記憶をたどる・・・。こんな時、僕はよく、独り言を言ってしまうらしい。純正の怪しいオヤジである(笑) ええい!どう思われようと構うものか(笑) 今は・・・アタマの中を整理する方が大事なんだ!
Early とか Local とか 802 とかいう「文字」が、かろうじて、僕の記憶フィルターが引っかかったようだ。これは・・・この2曲は・・・マイルスが何かに客演した、あれだぞ・・・そうだ、あれだ!という感じで、ほぼ、そのアルバムが特定できた。もちろんジャケットまでは浮かんでこないのだが。 そうして・・・どうにもその2曲を聴いた記憶がないのだ。じゃあ・・・持ってないはずだ。~という訳で、久しぶりにCDというものを買ってしまいました(笑)
そんなわけで、この本/Jazz Hero’s Data Bankには、まだまだお世話になりそうです。

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