ジャズ

2024年12月31日 (火)

〈思いレコ 第20回〉 モンク ランズ ディープ

retrospective 回想する/懐古的な~という言葉がある。毎年、年末になると僕はまさにこの言葉通りの気分になってしまう。そうして必ずモンクのあのピアノの音を想起する。1971年、中3の時からジャズを聴き出してもう50年以上経ったが、やっぱり僕の〈ジャズマインド〉の原点は…モンクなのである。

モンクのレコードで最初に(1972年7月) 入手したレコードは「モンクスミュージック」で、コルトレーンやホウキンス、ベースのウイルバーウェアらがモンク音楽と有機的に絡むエネルギーある音楽に痺れまくったわけだが、その少し前にFMラジオから録音したカセットで、モンクのソロピアノ《ラウンドアバウトミッドナイト》を本当に何度も何度も聴いて、もう心底、感動してセロニアスモンクという人を好きになっていた。その事について書いた過去記事があるので横着して抜粋します。

以下《 太字 》

《その少し後・・・今度は「あの曲」の作曲者、セロニアス・モンク自身のソロピアノでの「ラウンド・アバウト・ミッドナイト」(vogue/1954年)を再びFMから録音した。マイルスのミュートが演出したあの曲の持つ「独特なムード」に慣れていたせいか、このモンクのソロピアノにも違和感など全く感じることもなく、いやそれどころか・・・モンクのピアノは、不思議なくらいに、本当に真っ直ぐに僕の心に入り込んできてしまったのだ。マイルスのラウンドミッドナイトは、もちろん素晴らしい。でもモンクのこの演奏には・・・もうムードなんてものを通り越して、モンクという一人の人間が、自分のあらゆる感情を吐露しているような厳しさがあった。モンクの、いや、あらゆる人が、人生を生きていく上で味わう感情・・・<挫折><孤独><哀愁>そして<優しさ><希望>・・・みたいなものが、この演奏の中に封じこめられているかのようだった。(そういう風に聴こえた)このモンクのソロピアノのレコードは、なかなか見つからなかった。高1の夏に、東芝ブルーノートの国内プレス(ジニアス・モンク vol.1)を間違えて、買ったりしました。「ラウンド・アバウト・ミッドナイト」という曲が入っている、という理由だけで買ったのだが、このLPに入っているバージョンは、モンクによる初演(1947年の3管入りのもの)だった。「なんか違うなあ・・・」とがっかりしたのだ。(笑)その年の秋だったか・・・ようやく vogue録音のソロピアノのLPが東宝から発売されたのだ。タイトルは・・・セロニアス・モンク/モンク・ランズ・ディープ(東宝) ようやく、あの「ラウンドアバウトミッドナイト」に出会えたのだ。すぐに手に入れて・・・・・このレコードは、本当に何度も何度も聴きました・・・・。          このLPには、ラウンド・アバウト・ミッドナイト以外にも、リフレクションズ(ポートレイト・オブ・アーマイト)、オフマイナー、ウエル・ユー・ニードントなどモンクの傑作曲が入っており、全てが気迫のこもった素晴らしい演奏ばかりです。。その中で、唯一のスタンダードの「煙が目にしみる」・・・これがまた素晴らしい!よく「モンクは変。判りにくい」とか言われるが・・・この「煙が目にしみる」みたいなスタンダードを弾くときのモンクは、一味違います。誰もがよく知っているあのメロディ、あの魅力的なメロディーをそれほど大きく崩したりはせず、謳い上げています。強いタッチなので、演奏全体にゴツゴツした「堅い岩」みたいな雰囲気を感じるかもしれませんが、それがモンクの「唄い口」です。そうしてこのモンク独特の無骨な唄い口が、却ってこの曲の持つ<哀感>みたいなものを、よく表わしているように思います。ちょっと気持ちが弱った時なんかに聴くと・・・「おい君・・・人生ってそんなに悪いもんじゃないよ」とモンクに優しく諭されているような気分になります》

う~ん…まあ、モンクのことをどうにも好きになって、そんな僕の非常に個人的な気持ちを少しでも判ってほしいな…という、暑苦しい文章でしたね(笑)   そんなわけで僕の生涯の愛聴盤になった〈モンク ランズ ディープ〉~不思議なタイトルだが〈モンクは自己の内面に深く潜航する〉という感じかな、と僕は理解している。

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上写真~1972年秋に発売された東宝盤。

下写真~ジャケット裏面、全8曲収録の記載。このフランス1954年録音の盤だけ、なぜか曲名クレジットがいろいろ混乱していて大変判りにくい。例えばB-1に〈ポートレイト オブ アーマナイト〉とタイトルされテイクがあるのだが~このバラードには独特な哀愁みたいな感じが漂っていて大好きなのだが~この曲、一般的には〈リフレクションズ〉と認識されている曲である。

下の写真…左側にあるモンクのピンアップは、豊橋のジャズ喫茶「グロッタ」に長年、貼ってあったものだ。経年劣化で真っ黒に煤(スス)けている(笑) 実は、そのグロッタが1980年頃だったか…閉店する際、ジャズ研仲間と片付け手伝いに行って、テーブルやらソファを搬出したり、あれこれ廃棄したりした時に、僕はこのモンク写真をそのまま剥がし捨ててしまうのが何やら忍びなくて、丁寧に剥がして頂いてきた…というわけである。高校~大学時代に通いつめたジャズ喫茶「グロッタ」と、同じ時期に聴きまくったモンクへの想いがリンクした…僕の retrospective である。

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上写真2点~1984年キング発売の〈ソロ オン ヴォーグ〉全9曲収録。

このレコード、もちろん〈モンク ランズ ディープ〉と同じ1954年音源なのだが、1曲だけ未発表テイクが入っている。それは〈ハッケンサック〉で、フランス録音時にはどうやら〈ウエルユーニードントtake2〉という理解で未発表とされていたようだ。その辺り、曲名クレジットの混乱のことが、このキング盤の、油井正一氏の解説で知ることができた。

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上写真3点~《フランスVogue盤~12インチ盤と7インチ盤。The Prophet なるサブタイトルが付けられている。Discogs によると1961年発売》~これ、ピアノの音に鮮烈感があって素晴らしいのです!

だいぶ後年になって、僕はようやく、フランスVOGUE盤を入手しました。但しこれらは…いわゆるオリジナル盤でなく、12インチ盤と7インチ盤です。オリジナルはもちろん、フランスVOGUE10インチ盤のはずです。そしてそのフランス盤を受けて、日本盤(25㎝/12インチ)も発売されていたようです。たしか1972年東宝盤と似たようなジャケットだったように、思います。日本のレコード会社もなかなか素晴らしい選球眼を持っていたのですね。

《追記~下写真2点(Discogs から転用)~日本グラモフォン(ポリドール)の25cm(10インチ)盤。解説は油井正一氏。Discogs によれば、1960年発売》

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2021年12月31日 (金)

<ジャケレコ  第5回>7インチEP盤には逆らえない

バート・ゴールドブラット装丁のEP盤たち

なんだか知らぬ内に日々が過ぎて、この1年も早くも終わろうとしている。本当に早い。毎年、年末になるとこのような感慨に耽るわけだが、この「夢見るレコード」・・・年に1回だけでも更新せねば、というわりと律儀な気持ちもあり(笑)しかしなかなかいい題材も見つからず、あれこれレコード棚をパラパラと見ながら、埃(ほこり)を払ったりしていたら、棚の前に飾ってあるEP盤がぱたりと落ちてきた。あ、そうだ、これでいこう!・・・という訳で、今回はEP盤である(笑)

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この何年かの内にジャケットを気に入ったものを少しづつ入手してきて、EP盤もけっこう集まってきている。
‌EP盤の魅力はやはり、まずはジャケットにある。そのジャケットから醸し出される雰囲気の魅力である。
さて、EP盤を入手するキッカケにはたぶん誰もがこんな具合かな、と思えるパターンがあって、それはつまり、12インチ盤、10インチ盤でとても好きなレコードがあって(それを持っていても、あるいは持っていなくても)そのレコードと同じデザインのジャケットのEP盤というものが数多く存在している・・・そしてひとたびその姿を目にしてしまうと、その7インチという小振りな姿、形がなんとも「チャーミング」なモノに見えてきて・・・いいなあ、これ!という気分になってしまう(笑)~そんなパターンかと思う。
またデザインは同じで色合いだけ違う場合もあるが(*写真上の方に映っている bethlehem のクリス・コナーなど)それはそれでチャーミングである。このクリス・コナーのEP盤については「夢レコ」過去記事「クリス・コナーの声」で取り上げている)
それから10インチのジャケット写真の、それを撮った時の別カット写真をEP盤の方に使う~というパターンもあるようだ(emarcyのヘレン・メリルなど)それも悪くない。それから、10インチの元盤と関係なくても、そのEP盤のオリジナルなデザインが実に魅力的なものも、当然のことながら、数(あまた)存在する。なんだ・・・これではEP盤というものを好きになってしまうのも無理のないことじゃないか!(笑)

図柄的魅力とは別な話しとして、じゃあ7インチEP盤の音ってのはどうなんだ?という興味もある。
僕の場合、EP盤は45回転だから音もいいはずだ~という素朴的期待感もあり、いろいろ入手してきたわけだが、初期の頃には Clef のゲッツやフリップ・フィリップスの幾つかのタイトルに「かなりいい」と思えるものを見つけたが、それらは例外的なもので、その後は「まあ・・・普通の音だな」と感じる場合がほとんどだった。特定のレーベルなら全て音がいい~なんてことはまったくない。こういうのはやはりタイトルごとの問題だろう。そして「いい場合」の確率はそれほど高くない・・・そんなことから(僕の場合)ある時期からEP盤というものは、あくまでジャケットの魅力に拘るべきだ、と考えるようになった。

さて、さきほどEP盤の棚を少し整理してみたら、なにかしらジャケットが同じ雰囲気のものがけっこう見つかった。それらは主役であるミュージシャンを個性的なイラストで描いているジャケットのもので、たまたまかもしれないが Savoyレーベルのものが多かった・・・そう、バート・ゴールドブラットである。ゴールドブラットはベツレヘムの格調高い写真ジャケットで有名だが、イラストものも凄く個性的で素晴らしいのだ。それらを並べてみたら・・・う~ん、実にいいなあ・・・好きだなあ・・・というわけで(笑)
まずは、バート・ゴールドブラット装丁ジャケットのEP盤をあれこれと紹介してみたい。

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《上写真~黄色と赤色の2枚~Stan Getz/Swedish All Stars(roost) 》赤い方が EP 302(vol.2と右下に表記)と 黄色いのが EP 304(vol.3と表記)である。これこそ同じデザインの色違いパターン。この写真だとジャケットの表面の紙が剥がれているように見えるかもしれないが、これはサックスの部分だけ「白い色」にしてある・・・そういうデザインなのだ(笑)

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《マリアン・マクパートランドの savoy のEP盤~vol.1(xp 8032) と vol.2(xp 8033) と vol.4(xp 8106) 》
これら3枚を集めたが、vol.3 は残念ながら未入手である。そしてこの3枚~表ジャケットは素晴らしいイラストだが、vol.1 と vol.2 の裏ジャケットはまっ白・・・何の表記もない。但し、vol.4 には裏ジャケットに解説と自社レコード広告が載っていたが、エロール・ガーナー、ジョージ・シアリングなどのEP盤紹介のみで、マクパートランドのEP盤 vol.3 情報は得られなかった。
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このイラスト・・・女性がけっこう太めの右腕をアタマの上の方からぐぐ~っと曲げ込んで鍵盤をタッチしている・・・そういう図なのだが、こんな風に肘を90度にしたらピアノなんか弾けないぞ(笑)でもいいのだ・・・写実ではなくイメージ表現なのだから。ゴールドブラットは・・・「線」がいいと思う。線のタッチにすごく強弱感(太い、細い)があって、スピードを感じる。僕はこのイラストレーションをとても好きなので、同じ図柄(色違い)の Marian McPartland MOODS(MG 15022)という10インチ盤~上写真~も手元にある(笑)
  
ゲッツ~他のルーストEP盤にもゴールドブラット装丁のものが在ったので掲げておきたい。ゴールドブラットの描く、どことなくヘナヘナッとしたゲッツの姿が悪くない。しかしながら・・・Roost レーベルの音質はどう弁護的に言っても良いとは言えない。録音の段階から(おそらく)なんというか音が遠いというか、こもったような鮮度感のない音である。これはオリジナルの10インチ盤、12インチ盤でも同じ傾向。残念ではある。

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上写真~Stan Getz/Stan Getz Plays の vol.1(roost EP 301) と vol.4 (roost EP 306)
さて、この2枚・・・同じ図柄で vol.1とvol.4となっているので、当然これらの「色違い」vol.2 と vol.3 が存在しているはず~と考えて、未入手なのを残念に思ったわけだが、その vol.2とvol.3・・・なんとしたことか、先ほど紹介した3つ上の写真~Stan Getz/Swedish All Stars の2枚そのものだったのである! なぜそれが判ったのか? EP 306 の裏ジャケット~そこに答えがあったのである。つまり・・・裏ジャケット右下に EP 301から EP 307までのタイトルがしっかりと表記されていたのだ(笑)こうある。
EP 301 Stan Getz Plays ーvol.1
EP 302 Stan Getz and His Swedish All Stars ーvol.2
EP 304 Stan Getz and His Swedish All Stars ーvol.3
EP 306 Stan Getz Plays ーvol.4
う~ん・・・Plays の方は 1 と 4、Swedish の方は 2 と 3 が手持ちで、なかなか巻(vol.)が揃わないなあ~と少しガッカリ気分もあったのだが、なんのことはない。たまたま持っていたゲッツの roost  EP盤4枚が、ちゃんと vol.1~vol.4 までの揃いになってるじゃないか!これは・・・ちょいと嬉しい(笑)

まあこんな風にバート・ゴールドブラットのカバーアートが大いに魅力的なEP盤ではあるが、たまには音源的な(音質ではない)興味から大いに惹かれてしまう・・・そういうEP盤もある。例えばこいつ。

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ゲッツだけ紹介して他のテナー奏者も出さないのも面白くない(笑)上の2枚のEP盤は、モーリス・レーン(xp 8089) と テッド・ナッシュ(xp 8090) TENOR SAX なるシリーズで文字通りテナー奏者を紹介するための企画のようだ。同じデザインの色違い・・・僕はこういうのにけっこう弱い。おそらくゴールドブラットは2枚を並べた時の効果を考えて、その色彩を決めている。だから・・・こちらも2枚、並べたくなる(笑)
この2枚~例によってジャケット裏に何の印刷も無いので(データが無いので)テッド・ナッシュについては調べた自分のメモが付けてあったことを失念していた(笑)そのメモによると、over the rainbow を含むこの4曲は1946年のSP音源のようだ。dsにマックスローチの名前がある。

さて、この時期のテナーと言えば・・・ブリュー・ムーアを忘れてはいけない~下写真の2枚。

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Brew Moore vol.1 (savoy xp 8066) と vol.2 (xp 8067)  である。これは、vol.1とvol.2の連続番号なので、savoyレーベルには売り出したかった意図があったはずだ。実際、この時代ではすごくモダンなフレージングが素晴らしい。なぜ人気が出なかったのか・・・判らない。
このEP盤2枚~各4曲づつ(計8曲)収録されているのだが、前述のマリアン・マクパートランドEP盤と同様に、裏ジャケットに何も印刷されてない。だからどこにもパーソネルも記されてないわけで・・・同時期(1953年と思しき)の10インチ盤~Brew Moore/Modern Tenor Sax(MG 9028) にはおそらく裏ジャケット情報は載っているだろう。だが僕はその10インチ盤は未入手なので、discogsで savoyレーベルを調べてみると、その10インチ盤には6曲しか収録されていないことが判った。その6曲とは~
EP8066の4曲と8067からの2曲(lestorian mode と mud bug) である。
つまりこの段階で8067から残りの2曲が抜け落ちてしまっているのである。後述するチャック・ウエイン/ブリュー・ムーア音源との関連もあり、なんとなく知ってるつもりだったブリュー・ムーアの savoy音源のことが、ほとんど判ってないことが判った(笑)う~ん・・・なんだかとても気になってきた(笑)そうなると厳しいことに、savoyというレーベルは、コンピレイションものが雑なのである(笑)データ表記もアバウト過ぎて・・・とにかく判りにくい。
だがしかし天は我を見放さなかった(笑)EP 8067に収録されている「レストリアン・モード lestorian mode」という特徴ある曲名が大きなヒントになって、いろいろ判ってきたのだ。

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上写真のEP盤8067に収録の lestorian modeという曲名にははっきりと覚えがあって、それはスタン・ゲッツ絡みで、savoyレーベルにこの名前の12インチLPが在ることを知っていたからだ。そこでゲッツの棚をチェックしたら・・・在った在った。
Lestorian Mode(MG 12105)だ。

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この Lestorian Mode には~ゲッツ、サージ・チャロフ、そしてムーアの3種のセッションから4曲づつが収録されていた。そして、件(くだん)のムーアの8曲の内、8067の4曲がB面3~6曲目に収録されており、そのパーソネルもきちんと表記されていた。よかった(笑)

Brew Moore(ts)
Gerry Mulligan(bs)
Kai Winding(tb)
George Wallington(p)
Jerry Floyd(tp)
Curley Russell(b)
Roy Haines(ds)

lestorian mode
gold rush
kai's kid
mud bug 
録音年は12インチ盤 Lestorian Mode にも表記されていないので、不明です。
*1/4追記~上記4曲の録音年月日が 1949年5月20日と判明しました。Arista/Savoy時代のボブ・ポーター監修の再発盤~
Brothers and Other Mosthers vol.2(SJL 2236)の詳細なデータによって判りました。ちなみにこの2枚組(1979年)には上記4曲が各2テイクづづ収録されています。

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 さて、もうひとつのムーアのEP盤(8066)4曲はどこに行ってるのか? 
こちらも案外すんなり見つかった。
In the Beginning BeBop!(savoy MG 12119) という12インチLPに4曲とも収まっていた。こちらも前述の「レストリアン~」と同じように3種のセッションから4曲づつ(全12曲)収録で、ムーア4曲はA面5,6,B面1,2に配置されている。このセッションはカルテット(4人編成)でパーソネルは以下。
録音年月は12インチ盤にも表記されておらず不明。

Brew Moore(ts)
Gene Dinovi(p)
Jimmy Johnson(b)
Stan Levey(ds)

blue brew
more brew
brew blew
no more brew

*1/4追記~録音年月日が 1948年10月22日 と判明しました。こちらも Arista/Savoy時代のボブ・ポーターによる再発盤~
Brothers and Mothers vol.1(sjl 2210)という2枚組(1976年)のデータに明記されていました。

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さて、ブリュー・ムーアのリーダー作品はと言うと・・・あまり思い当たらない。この savoyEP盤の他にはたしか fantasyに在ったかな?
というくらいだ。調べてみたら(discogs)やはり fantasy に以下の2作品を残していた。
Brew Moore Quintet(1956年)紫色の風神様みたいなジャケットのもの。
Brew Moore(1957年)ムーアがテナー持って笑ってるジャケットのもの。
あとは Brew Moore in Europe(1962年)~ラース・ガリンやサヒブ・シハブとの共演盤~という作品があるくらいで、これでムーアのリーダー作はうんと少ないことがはっきりした。だから、ブリュー・ムーアを聴くためには、他のミュージシャン作品への参加作~後述するチャック・ウエインを含めて~をチェックするしかないのだ。

このように貴重な音源をセッション単位で聴きたい時に、あるセッションがそのまま1枚のEP盤にまとめられているとありがたい。SP音源はA面・B面で2曲単位だから、SP2枚分4曲をEP1枚に収めるケースも多いようだ。それから10インチ盤の時代には、ひとつのセッションを3~4曲でまとめる場合が多いようで、つまりセッション2回で6~8曲分を仕上げて、それらで10インチ盤両面を構成しているケースが多いように思う。また12インチ盤に再収録する場合、先ほどの savoy のコンピレイションLPのように、3つのセッションから4曲づつで、1枚の12インチ盤を構成する場合もある。その際、元セッションの3~4曲が、A面・B面にバラバラにされたり、あるいは別のLPに振り分けられたりするケースも多いようなので、特に興味深いセッションの場合には、その3~4曲が1枚のEP盤にまとめられていると、それだけで嬉しいものなのだ。

次にこのEP盤。

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Here's that Mann vol.2 (dee gee EP 4013)

pooch mc gooch
all of me
back in your own backyard
it don't mean a thing

シェリー・マン名義のEP盤である。セプテット(6人)編成だが、なんと言っても魅力なのが、アート・ペッパーが入っていることだ
(it don't~以外の3曲)  
*写真右スミのEP赤盤は~ミルト・ジャクソンのカルテット(dee gee)これ、round midnight の演奏も音質もいい。

pooch~では「おおっ!」と叫びたくなるような切れ味鋭いソロを聴かせてくれる。all~とback~は歌入りではあるが、間奏やオブリガート(歌の合間に入れる短い合いの手)で見事なソロが聴かれる。歌伴・・・という感覚からはすっ飛んでる!(笑)
これら3曲は1951年11月のペッパー入りセッション4曲からの3曲。そうして嬉しいことに、このDee GeeのEP盤4013~1951年シカゴ録音とのことだが、音質もなかなかに良いようだ。
ペッパー入りのもう1曲は、the count on rush street という曲で、その count~は Dee Gee EP4006なるEP盤に収録。4013がvol.2と表記されているから、4006 はたぶん Here's that Mann vol.1 なるタイトルだろう。
count on rush street は急速調のインスト曲で、この曲でのペッパーのソロも他メンバーのソロも、皆ハリのある素晴らしい演奏だ。
ちなみにこれらの音源はSavoyの12インチ盤 Deep People に収録されている。
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Deep People (savoy MG 12405)のA面4,5,6,7に back~以外の3曲とcount~の4曲収録されている。
*back~は女性歌手 shelby Davisの歌伴曲なので、Singin' and Swingin'(savoy MG 12060)という女性歌手を集めたオムニバスLPに収録されている。

もうひとつ、音源・・・いや、演奏が素晴らしいEP盤を。
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Chuck Wayne Quintet(savoy xp 8119)1954年6月録音

while my lady sleeps
tasty pudding
prospecting
sidewalks of Cuba

このEP盤・・・ジャケットの淡いブルーな色合い、構図、イラストの全てが素晴らしい!好きなジャケットだ。オマケにこのEP盤・・・音源的にもとても魅力的でそれは、やはりズート・シムズのテナーが素晴らしいからである。
《このEP盤の裏解説(オジー・カデナ)によると4曲中3曲が Zoot Sims、1曲(sidewalks~)のみ Brew Moore、とされている。カデナは~"sidewalks of Cuba" which were recorded a week after the sides with BREW MOORE~とハッキリ書いている》
*1/2夜・訂正1~上記のオジー・カデナ解説部分~恥ずかしながら意味を完全に取り違えていました。 最初に、この "sidewalks of Cuba"という曲名が目に入って、次に recorded を見て、それを with Brew Moore につなげて意味を解釈してしまって「そうか、この1曲だけはブリュー・ムーアと録音されたのか」と思い込んでしまいました。しかし改めて裏解説をよく見たら・・・この "sidewalks of Cuba" の前に大事な文章が在ったのです。それをつなげると、以下のようになります。
ZOOT SIMS blows with CHUCK on "Butter Fingers", "While My Lady Sleeps", "Tasty Pudding", "Prospecting" and "Sidewalks of Cuba" which were recorded a week after the sides with BREW MOORE   
そうなんです。ズート・シムズは、これらの5曲を("Sidewalks~" を含む)チャック(ウエイン)と演奏(blows)して、それらが録音されたのはブリュー・ムーアとのセッションの1週間後だった~というのが正しい意味かと思います。
早とちりしての先入観を持ったまま、ズート・シムズとブリュー・ムーアの音色のことなど書いてしまい(後述部分)恥ずかしい限りです。
ここに謹んで訂正させていただきます。

これらの音源4曲は、12インチ盤 the Jazz Guitarist(savoy MG 12077)に4曲とも収録されている。そしてここからが問題なのだが、このLP裏解説では上記の sidewalks~はズート・シムズとされているのだ。つまりズート入り5曲(上記4曲+butter fingers)、ムーア入り3曲、あと4曲(ウエイン、ジョン・ミーガン(p)のカルテット)加えての全12曲とされているのだ。う~ん・・・。Dscn3146

さあ困った(笑)・・・どちらが正しいのだろうか? 
さっそくその sidewalks~を何度も聴いてみた。う~ん、判らない。ズート・シムズのようでもあり、ブリュー・ムーアのようでもある(笑)元々、この2人はまずソフトな音色がよく似ているし、ビートに軽やかに乗るスタイルとフレーズ展開も似ていると思う。しかし・・・気になる(笑)それで、ムーアのリーダーセッション(前述の1953年(推定)8曲)など、ムーア絡みをあれこれ聴いてみた。その上での自分なりの認識はこんな風だ。
<高音域フレーズの時~アルトっぽい艶々した音色になるのがズート・シムズ。やや掠(かす)れたような乾いた音色になるのがブリュー・ムーア>
<音色の全般として~ヴェールが掛かったようなソフトなマイルドな感じがズート・シムズ。
全体にサブトーンの度合いが強めで(シムズよりは)時に乾いた硬い感じ(シムズよりは)になるのがブリュー・ムーア>
そんな印象を持ちながら、改めてこの sidewalks~を聴いてみると・・・やっぱり判りません(笑)それでもちょいと無理やりに理屈を付けてみると・・・テナーのソロの時に高音域の繰り返しフレーズで僅かに引っ掛かるような場面があって・・・ズートはほとんどのフレーズに迷いが無いから・・・そうするとこの sidewalks~のテナーは、ブリュー・ムーアであるように僕は判断している。
*1/2夜・訂正2~すみません、完全に間違えました。sidewalks of Cuba のテナーは、12インチ盤解説の通り、ズート・シムズです(パーソネル表記の詳細については写真の上の青字「訂正1」をご覧ください)

いずれにしても、この2人がそれぞれの曲でチャック・ウエインのギターに絡んでテーマをユニゾンで吹く場面が多いのだが、ウエインのギターにフィットしたソフトなテナー音色が素晴らしい。どのトラックも味わい深いが、僕が特に好きなのが while my lady sleeps だ。この曲、なんとも慎み深いような雰囲気のあるメロディの曲で、僕が最初にこの曲を知ったのは、プレスティッジの「コルトレーン」というLPからである。1972年秋にビクターが、prestigeゴールデン50なるシリーズで1100円(当時、LP盤は大体1800円~2100円だったのこの1100円という価格は画期的に安価で、しかし良質なジャズLPだった)で発売した時の目玉がこの「コルトレーン」だった。このレコードは、だいぶ後になって、傑作バラード~<コートにすみれを>収録LPということで有名になったように記憶しているが、もうひとつのバラード曲がこの<while my lady sleeps>だったのである。コルトレーンはスローバラードで仕上げているが、こちらのウエイン/シムズは意外にも速めスイングだ。しかしそれも素晴らしい。

さて、このEP盤(XP 8119)にも vol.1という表記があり、裏解説をよく見ると続き番号の XP 8120 がvol.2 のようで、これは前述のシェリー・マン(dee gee EP 4013)と同じケースである。これは単にsavoy レーベルのやり方というだけかもしれないが、つまりこういうことではないだろうか・・・要はあるセッションが完了して、その音源がまず10インチ盤で発売されて、そのすぐ後に(あるいは同時に)2枚のEP盤に分けて発売された~というパターンだと考えられる。価格面でも10インチ、12インチよりは7インチEPの方が安かったので、好みの曲を収録している方のEP盤だけ購入する~という需要があったから、同じ音源でもいろんなフォーマットを用意したのだろう。
そうだ、考えてみれば日本でも、33回転コンパクト盤なるフォーマットがあったじゃないか。たいてい4曲入りで、要はアルバム(LP)を買うまではいかないけど、ヒットした曲を聴きたいな、という場合に、このコンパクト盤が重宝したのだ。そういえば・・・僕もサイモン&ガーファンクルの<明日に架ける橋>はコンパクト盤で我慢していたな(笑)
アメリカでEP盤というフォーマット(45回転)が盛んに発売された頃は、大体のところ、10インチ盤の同内容がEP盤2枚、12インチ盤同内容がEP盤3枚になるパターンが多いようだ。Clef や Victorレーベルの場合だと10インチ盤や12インチ1枚分をEP2枚組み、3枚組みとしたタイトルがけっこうある。あの「見開き組みセット」にしたEP盤もこれまたチャーミングではある。それらについてはまたの機会に。
う~ん、それにしても・・・レコードというものは、どうしたって楽しいものですね(笑)

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2020年12月31日 (木)

<ジャズ雑感 第42回> ハワードマギーの哀愁

聴きたいレコードが決まらないまま、あれこれとレコード棚を探っていると、さりげなくそこに在って、聴いてみるとこれが実によかったりする・・・そういうレコードがある。
ジャズ聴きも相当に長いが、まだ厭きない(笑)40数年、ブランクなしに聴いてきたので、レコードの枚数もかなりある。
僕の場合、ジャズ聴きの初期の頃から好みがはっきりしていたので、まずは好きになったミュージシャンを何十人か集中的に聴いていた(集めていた)時期があって、その後に興味の輪が広がるにつれ、他のいろんなミュージシャンのレコードも増えてきて・・・知らぬ間に数千枚ほどになってしまった。ほとんどが1950年~1960年代録音のハードバップ系ではあるが(笑)
こういう状態になると、あまり聴いてないレコードも数多(あまた)出てくる。僕はそれらを入手した折には一度は聴いたはずなのだが、特に好印象を得られずに、その後はあまり聴いてないという状態なわけで・・・これは実に不憫なことである(笑)
どのレコード達も、僕自身がその時点で何らかの理由をもって選んできたわけだから、レコード棚に並んでいるどのレコードとも初対面というわけではない(笑)そして何らかの理由とは・・・もちろんそのリーダー・ミュージシャンへの興味だけでなく、その頃に気になっていたミュージシャンがサイドメンに加わっていたり、またはその頃「いいな」と感じていたスタンダード曲が収録されていたり、あるいは気になるレーベルやエンジニアだったり(録音の音質への期待)・・・まあいろいろな要素が入手の理由になったはずなのだ。
だから、自分が選んできた「モノ」が、一部分とは言え、忘れ去られた状態になっているのは、やはり自分にとっても残念なことじゃないか。

そんなわけで、たまにはこの辺りを・・・と、普段、あまり手を伸ばさないコーナーをパタパタと探っていると、なんとなく手が止まったレコードがある。そこはベツレヘム・レーベルを並べたコーナーで・・・僕の「探り方」は~棚の適当な箇所からザクッと7~8枚を10cmほど左手で引き抜いて、それをジャケット側からパタパタと見ていく~というやり方なのだが、そこで何かが「引っ掛かる」と、手が止まる。なかなかの自動選別システムじゃないか(笑)
その時、引っ掛かったレコードが・・・これである。

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<Howard McGhee / Life is just a bowl of cherries「人生はサクランボの載ったお皿のようなもの」

(このタイトル~邦題では「チェリー味の人生」となっているようだ)
このジャケットは、もちろんバート・ゴールドブラットによるものだが・・・およそ「ジャズ的」とは言えまい(笑)>

このレコードが、僕にとってはまさに「あれ? このレコード・・・こんなによかったのか!」になったのである。
そして、この「あれ?」というのは、つまり・・・そのレコードの中の在ったはずの何らかの美点が(入手した頃には気づかなかった)今になって判った・・・ということだと思う。
そして、僕はそのことがなんというか、とても嬉しいのだ。

この「サクランボ」は・・・何年か前にあるレコードフェアで見つけて入手したのだが、その時はハワード・マギーのリーダーアルバムが欲しい~というよりも、その頃、僕のアタマを占めていた Bethlehem レーベルそのものへの興味から入手したはずだ。それと、Bethlehem のリーフラベルにしては安めの価格だったことも大きな理由ではある(笑)

ハワード・マギーは、トランペットを、強い音で鋭く突き刺さるような吹き方はあまりしない。(そういうのも実に快感なんですが・笑)どちらかというと甘いしっとりした音色で、わりと淡々と吹く・・・そういうスタイルだと思う。

強弱を付けたりデコボコしたフレーズ(それがモダンジャズにおけるトランペットの快感でもあるのだが)で、攻めまくる~という感じではなくて、その曲のメロディをあまり崩さずに丁寧に吹き進める感じだ。だけど・・・その淡泊な吹き方になんとも言えない品格のようなものが感じられて、聴いていて実に気持ちがいいのである。その曲のメロディ自体の美しさを引き立てるタイプと言えそうだ。私見では~いや、まあこの夢レコはすべて私見ではあるが(笑)~そうだな、クラーク・テリーとケニー・ドーハムを足して2で割ったような感じかな?

この作品・・・ベツレヘムの意図としても、リラックスしたムードミュージック的、BGM的な・・・つまりゴリゴリのジャズ好きではない人にも楽しめるような作品にしたかったのだと思う。というのもマギーの伴奏として5人のウッドウインド(管楽器群)を配してあって、この5人が品のいい出しゃばらないハーモニーの生地を造り出して(フランク・ハンターのアレンジ)そこにマギーがゆったり伸ばしたしっとり音色で、美しいメロディを乗せていく・・・という感じ。たまに少々のアドリブソロを差し入れてはいるが、どの曲も3分ほどであっさりと終わってしまう・・・全編がそんな感じなのだ。いわゆるジャズ的、ハードバップ的な音楽ではない。だがしかし・・・そこにはハワード・マギーという人の、品性が溢れている。そしてそこにゆったりした音楽が流れてくると、なんとなく幸せな気分になれるのだ。そういえば僕はマント・ヴァーニー楽団も嫌いじゃない(笑)

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<このレコード、録音が案外にいい。1956年の録音だが、どの楽器もパリッとした乾いた質感のクリアな音で録られている。録音エンジニアには、Johnny Cue と Frank Abbey の二人がクレジットされている>

タイトルにもなっている life is just a bowl of cherries という曲は、古く1931年の楽曲のようだが、ビング・クロスビー、J.Pモーガン、ジュディ・ガーランド、ドリス・デイ、それからキャロル・スローンらに歌われているようだ。ちょっと調べてみたら、a bowl of cherries という言葉は比喩的に<とてもたのしいこと>を意味していて、通常~life is [isn't] just a bowl of cherries の形で使う~ということらしい。歌詞のおよその意味は以下。
"Life is Just a Bowl of Cherries"
Life is just a bowl of cherries / Don't take it serious, it's too mysterious / You work, you save, you worry so / But you can't take it with you when you / go, go, go. / Oh, life is just a bowl of cherries / so live and laugh at it all
<人生はサクランボの乗ったお皿みたいなもの。あまりクヨクヨするなよ。何が起こるか判らないのだし。働いてお金を貯めてあれこれ心配したって、どうせ死んだらお金は持っていけないんだぜ。だから・・・人生、笑い倒して生きていけばいいのさ!> みたいなとっても楽天的な歌詞らしい(笑)
ちょっと興味を持ったので you tube で聴いてみると、まあ歌詞の内容からから言っても当然かもしれないが、どの歌手も、明るく楽しくポジティブな感じで歌っている。幾つかの歌を聴いた中では、ドリス・デイだけがスローテンポので歌っていて、しみじみした味わいがとても素敵だ。
楽曲の解釈というものは(歌詞のあるものは)その歌詞の内容に影響されやすいだろうが、人間の感情表現というのはそう単純ではなく、あれやこれやと混ぜこぜになるものだと思うし、ある事例についての反応が必ずしも10人が10人、同じでなければならない~というものでもないだろう。
楽しい内容だから「速めテンポで明るく楽しそうに」歌うとは限らない・・・逆にそれを「ゆっくりテンポでしみじみ暗く」歌ってもいいじゃないか! ドリス・デイの場合は、たぶんそういう発想だったかと思う。
そうして・・・ハワード・マギーもこの Life is just a bowl of cherries をやはりゆったりしたテンポの情緒感でもって演奏しているのだ。そしてそれがマギーという人の誠実な人間性みたいなものにうまく調和している・・・そんな風に僕は感じる。

さて・・・この「サクランボ」は、片面6曲の全12曲収録なのだが、その内の11曲が、DySylva-Brown-Henderson なる作詞・作曲家チームによるものなのだ。実は僕はこの DySylva-Brown-Henderson なるチームのことをよく知らなかったのだが、どうやら Ray Henderson という作曲と Lew Brownという作詞家のチームらしい。収録11曲のタイトルを見てみると・・・幾つかの曲に「お、あの曲か」という発見があった。
the thrill is gone
the best things in life are free
I'm a dreamer aren't we all?
なるほど・・・地味だけど、なんとなく「いいな」と感じる渋い曲調の作曲家とも言えそうだ。まあ「いい/よくない」はもちろん個人の好みによるものだから・・・あまりピンと来ない場合もあるかもしれないので、これらの曲が割と知られている(と思える)ミュージシャンの名前も挙げておこう。

the thrill is gone は、寂しげなスローな曲調でチェット・ベイカーの素晴らしい演奏(Chet Baker Sings 1953年)が印象に残る。

the best things in life are free は、これはもうハンク・モブレイ(work out 1961年)で決まりだろう。

I'm a dreamer aren't we all?  これは・・・おおっ、コルトレーンの Bahia 1958年 に入っているアレじゃないか!

そしてちょいと面白いな、と思ったのは、この「サクランボ」~同じ作曲家チームで纏(まと)めるという企画作品にも関わらず、実は1曲だけ別作家のものが加えられていることだ。その1曲が・・・あの「ソニー・ボーイ」である。「あの」というのは「ソニー・ボーイ」という曲については、だいぶ以前にレッド・ガーランドの記事で、この曲を取り上げたことがあったからなのだが、その時もガーランドの情緒感溢れる演奏に感動して、夢レコ記事にしたのだった。
そういえばこの「サクランボ」の裏ジャケットを見た時「あっ、ソニー・ボーイ演ってるじゃないか」と嬉しく驚いたものだ。DySylva-Brown-Henderson 作品集とも言うべきアルバムの中に、あえて別の作曲家の「ソニー・ボーイ」を混ぜ入れたこと・・・それもA面1曲目に持ってきたこと・・・そんなマギーの何かしら粋なセンスにも、大いに共感を覚える僕である。
A面1曲目の「ソニー・ボーイ」の曲調と他の11曲の持つ雰囲気とは、何ら違和感もなく繋がっていて、アルバム全体としても実に品のいい哀愁感を醸し出しているのだから。

そうして「サクランボ」はやはり・・・マギーの哀愁トランペットを、しみじみと味わうべきレコードなのだ。
ちなみにこの「チェリー」は1956年録音で、ガーランドの1962年よりもうんと前の演奏なので、あるいはガーランドは、英国歌手のペテュラ・クラークだけでなく、このハワード・マギーのレコードも聴いたのかもしれない。

さてついでに、ハワード・マギーの他のレコードも幾つか紹介しよう。
僕の中でのマギーは、長いことバップ時代のちょいと古いトランぺッターというイメージだった。それは、パーカーのダイヤル・セッション(ラヴァー・マン)やファッツ・ナヴァロとの「ファビュラス」でのバップ期の印象が強かったためだ。
しかしマギーはこの後の幾つかのレコードでは、なんというかもう少しモダンなハードバップ的なペット吹きになっているようだ。
その「バップ」より後の作品で僕の手持ち盤は少ないが以下~残念ながら全て国内盤である。「ダスティ」に至っては痛恨のCDだ!(笑)

「リターン」ベツレヘム1955 サヒブ・シハブ、デューク・ジョーダン
「コネクション」フェルスッテド1960 ティナ・ブルックス、フレディ・レッド
「ダスティ・ブルー」ベツレヘム 1960 3管、トミー・フラナガン
「シャープ・エッジ」1961 ジョージ・コールマン、ジュニア・マンス 
<下写真は The Sharp Edge~トリオ発売のヒストリカル1800というシリーズからの1枚。ベースのジョージ・タッカーの音が凄い。
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マギーは、上記のように自分の作品には必ずテナー吹きを入れて、そこにソウルフルなピアノ弾きを加えている。そういう落ち着いた感じのサウンドが好みなんだろう。どの作品も悪くない。

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<上写真~Connection(felsted/ノーマ・1996年>
この作品は実質、フレディ・レッドのリーダーアルバム。ジャケットのコーティングが嬉しい。音質も悪くない。
「コネクション」は、フレディ・レッド作の各曲のほの暗い感じと、テナーのティナ・ブルックスのくすんだような音色が相俟(あいま)って、とても味わい深い作品となっている。


「リターン」はベツレヘムの第1作で(「サクランボ」が2作目)正統派ハードバップ的の快作。サイドメンが皆、いい演奏していて楽しめる。サヒブ・シハブという人は、バリトンやアルト、なんでも吹くが、どれも「あれ?」と思うほど巧い。僕はこの人・・・モンクの1947年のブルーノート録音で名前を覚えた。
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<上写真~The Return of Haward McGhee(bethlehem/日本コロムビア・1984年)
この「リターン」で、ひとつ、印象に残ることがあった。それはドラムスにフィリー・ジョー・ジョーンズが居ることだ。1955年のフィリー・ジョーというと・・・もちろんマイルスバンドより以前になるし、フィリー・ジョーにとっても、トニー・スコットのDecca録音と並んで相当に初期の録音になるかと思う。そしてそのフィリーのドラム音・・・これがやけにいい感じなのである。演奏そのものも溌剌としててもちろん良いのだが、ドラム全体の録音の音が、これが「あれれ?」とびっくりするくらいいい音なのだ。もう少し後の時代のコンテンポラリーの録音のように、タイトですっきりした響きのいい音に聞こえるのだ。このレコードを久しぶりに聴いた時、僕にはこのドラムがとてもフィリージョーには聞こえなかった(笑)だれか西海岸の巧いドラマーかな?と思ったくらいに、いい感じに端正なドラムの音であり演奏だったのだ。
このフィリーの音を録ったエンジニアは「サクランボ」と同じくFrank Abbey氏。どうやらまた気になるエンジニアを見つけてしまったようだ(笑)

「ダスティ・ブルー」~3管編成でちょっと新しい感じのサウンドになっている。マギー独特の選曲は健在で(笑)sound of music とか新鮮な驚きである。そしてこの「ダスティ・ブルー」で僕が最も印象に残っているのは、たぶんマギーがすごく好きなんだろうな、と思える作曲家~Tom Macintosh の with malice towards none である。暗くてウネウネしたような曲調で、しかしなんとなく心に残るメロディ(とハーモニー)である。マギーという人は、たぶんこういう内省的な雰囲気をその根底に持っている人なんだろうな、と思えてくる。
ちなみにマギーは「シャープ・エッジ」でも Tom Macintosh 作品を1曲(the day after)を録音している。

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2015年1月 3日 (土)

<ジャズ雑感 第38回> サヴォイ盤(Savoy)は謎だらけ。

Savoy盤~MG12000番シリーズを巡ってあれやこれや・・・。

また1年が過ぎてしまった・・・もう2015年である。この<夢見るレコード>にすっかり横着になってしまった僕ではあるが、さすがにこの正月休みには何らかのジャズ話題を書いて、途切れ途切れであっても、このブログに夢を見続けてもらわないと・・・などと思ったわけである(笑)

昨年~2014年は1月と2月に、bethlehemレーベルについて記した。クリス・コナーの「大口」「小口」のジャケット違いが存在することと、それぞれのジャケット裏の会社アドレスの違い方の関連に注目しながら、「リーフラベル」と「長方形ロゴラベル」の切り替わり時期などを類推した内容だった。
その際、手持ちのbethlehem盤を引っ張り出してきて、盤のセンターラベルやジャケット裏を、かなりの時間を掛けてあれやこれやとチェックなどした。
レコード(オリジナル盤)のジャケットをひっくり返して、その会社のアドレス(住所)などをチェックして、いったい何が面白いのか・・・と自分でも思わないわけでもない(笑) 
Dscn2984_2 ≪上の写真~ミルト・ジャクソン/Meet Milt Jackson(MG12061)≫
2枚とも、番号・ジャケット図柄・センターラベル様式・ジャケット裏表記まで、まったく同じものである。だがしかし・・・写真では微妙な差だが、両方を見比べると、ともにコーティングされたジャケットではあるが、写真の質感がかなり違うのだ。左側の方がモノクロの濃淡が濃い。濃くてよりくっきりしている。そうして両方の盤を手に取ってみると・・・微妙に左側の方が微妙に重く感じる。いや、これは・・・ジャケットの重厚さからくる先入観から、そういう風に感じてしまうだけかもしれない。ジャケット写真の色合いの違いの他に、もうひとつ、ハッキリした差異は・・・うん、「濃い」方がプロモ盤だったことだ。裏ジャケットの写真の左側の方~シールが痛々しいが(笑)そのシール貼りの箇所に、よく見ると・・・SAMPLE COPY NOT FOR SALE とスタンプが押されている。そして、センターラベルにも同じ文言のスタンプが押されていたのだ。(このセンターラベルの写真でもよく見ると・・・判るかもしれない。Dscn2986_2

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≪上の2枚の写真~2枚の[Meet Milt~]のセンターラベルと裏ジャケットを並べてみた。センターラベルの色合い・溝ありは同一。裏ジャケットも同一・・・と思ったが一箇所だけ違いがあった~右側のジャケット一番下には「SAVOY RECORD CO INC 58Market~」の上に、3行ほど小さめの字で <このレコードは .001針と33.3回転で再生しないと、音溝が傷みます>みたいな注意書きが入っている。(左側プロモには、その3行は無し)≫

このミルト・ジャクソン事例のように、古いレコードを集めていると、そこに様々な事象が湧き上がってくる。同じタイトル・同じ番号のレコードなのに、ジャケットの一部が違っていたり、センターラベルの様式が違っていたり、ジャケット裏の住所やらが違っている。そうなると、それらがどのような事情から発生したのだろうか?・・・どうにも気になってくるのである。

Savoyというレーベルにもなかなか興味深いものがある。5~6年くらい前だったか、初期のミルト・ジャクソンをディグしていた時期がある。その頃、自然に集まったきたミルトのSavoy盤を並べて、ジャケットを撫でたりしながらそれらのレコードを聴いているうちに、Savoy盤全般への興味・・・というか疑問が沸々(ふつふつ)と湧いてきたのである。
(追記~自分でも忘れかけていたのだが(笑)、この<夢レコ>に、2010年2月≪Savoy赤ラベルのスタンパー≫という記事があった。ミルト・ジャクソンの参加作品 Opus De Jazz(MG12036)のモノクロジャケットとカラージャケットを揃えて、両方のセンターラベルのスタンパーの数字やX20記号のことを見比べた内容である。ぜひ、ご覧ください。
http://bassclef.air-nifty.com/monk/2010/02/31savoy-6a10.html

ごく大雑把に言うと、疑問は以下の2つ。

1.『センターラベルの色が何種類もあってよく判らない。「赤」「エビ茶」「アズキ色」などと表記されているようだが、その変遷もよく判らない』
2.『ジャケット裏(下部)の住所表記も何種類かあって、デザイン等も微妙に違い、こちらもその変遷がよく判らない』

そこで、これら疑問に立ち向かうべく、まずはSavoy MG12000番シリーズでの「赤ラベル・溝あり」を1stの型と規定して(~後述)、そこからいろいろと類推してみることにする。
さあ・・・手持ちSavoy盤の総動員だあ!(笑) 

「センターラベル」については、やはりなかなか判りにくい。一口に「赤」と言っても番号の進みに伴って、その色合いに微妙な違いが出てくるようで、ラベルをパッと見て、はっきりと認識できる違いは~「赤」「アズキ色」「茶」の3種くらいか。
これらに「溝の有無」を組み合わせて考察していきたい。Dscn2965_2
≪ちなみに、栄えあるシリーズ第1作~MG12000番は・・・ charlie parker memorial vol.1である(元音源は10インチ盤)
もちろん・・・10インチ盤も欲しいですなあ(笑)≫
*1/17≪追記≫~上の写真のこの盤・・・「センターラベルは赤・DG、住所も58Market」の、いわゆるオリジナル(12インチ盤としての)だと思っていたのだが、どうも手に持った時にずしりとこない感じとか、ジャケットの表・裏がやけにキレイで古みに欠ける感じとかに、実は・・・若干の違和感を覚えていた(笑) そんな折、どうやらこの疑惑を解消してくれる情報を得たようだ。
それは、今回の夢レコ記事にコメントを入れてくれた alfa-60さんからの情報~[”NOT LICENSED FOR RADIO BROADCAST - FOR HOME USE ON PHONOGRAPH”(10インチ盤のラベルには必ず載っている)なる文言が、初期プレスのラベル(LONG PLAYINGの下)には有るようだ]である。これは・・・気がつかなかった!ということは・・・「赤ラベル・溝有り」であっても、それが真性1st(NOT LICENSED FOR~有りを仮にこう呼ぶ) ものであるかどうかの判別には、その文言の有無が重要なポイントとなる・・・ということだ。そうして・・・自分で載せた12015(Eddie BertのMusician of the Year)の赤ラベルには、その”NOT LICENSED FOR RADIO BROADCAST - FOR HOME USE ON PHONOGRAPH”なる文言がはっきりと写っているじゃないか!
但し、この[NOT LICENSED FOR ~]・・・なかなか見つからない。僕自身のSavoy赤ラベル・DG(溝あり)30数枚の手持ちの中では・・・12006(Kenny Clarke)と 12015(Eddie Bert)の2点だけ。ちなみに、ネットに載ったSavoy赤ラベル・DG40~50点を調べたが [NOT LICENSED FOR~有り] を確認できたのは・・・たったの2点である。それが、12010(Jay & Kai)と・・・こうして追記するに至った「疑惑」の12000番~パーカーの Charlie Parker Memorial vol.1 だったのである。
この [NOT LICENSED FOR~の有無]については、今後も調査していきたい。果たしてMG12000番の何番くらいまで存在するのか?・・・興味は尽きない。


さて・・・Savoyの12インチ盤~MG 12000番シリーズは、12000~12220 まで、200以上のタイトルが連番で並んでいる(但し(後述の)リストによると、欠落しているナンバーが以下12件あり~12060, 12098, 12129, 12135, 12142, 12159, 12162, 12165~12168, 12176)
ついでに言うと、このシリーズ・・・一般には、12000~12305 となっているが、実は、12220の後、数字が一気に飛んで、12300番から 12300~12305 の6タイトルだけが加えられているのだ。
さらに言うと・・・12196~12220までは、どうやら Regentレーベル原盤の再発のようである。人気の高い jonn jenkins/Jazz Eyes(12201)、 curtis fuller/It's Magic(12209)、sonny redd と art pepper/2altos(12215)など、どれも Regent 原盤である。

Dscn2961_2 
≪この写真は~日本フォノグラム発売のサヴォイ盤 「シグナルⅡ」のライナーノート裏のMG12000番シリーズのリスト。今回、手持ちのオリジナル盤(30枚強)やキング国内盤との照合にとても役立った。この写真の後、書き込みだらけのメモ用紙になってしまった:笑≫

Savoy というレーベルについては、実は、ゴールドマイン本にもあまり詳しくは記されていない。センターラベルについては、≪1950年~1960年代のオリジナル発売のものは、maroon(ジニアス英和~くり色・エビ茶)ラベルで、1970年代に再発された頃には red(赤) or brown(茶) のセンターラベル≫ と書かれているだけである。。この表記が実にどうも判りにくい。というのは、1950年辺りから考えるならば・・・当然、10インチ盤のセンターラベルを視野に入れなければならず、そしてその10インチ盤のセンターラベルは・・・「真っ赤な赤」である。「赤」の字が重なるけど、ここは鮮烈な赤色というニュアンスを表したいがためです。お許しください(笑)
(手持ちのSavoy10インチ盤は数枚だけだが、ネットも含めて他の色のセンターラベルは見たことがなく、少なくとも「ジャズ」の10インチ盤(MG9000番シリーズ)のセンターラベルは「真っ赤な赤」だと考えられる)
1954年~1955年頃を境目に、10インチ盤から12インチ盤へと移行していったと思うが、その際、ほとんどの場合、どのレーベル会社も、まずは、10インチ盤のセンターラベルのデザイン・色をそのまま12インチ盤にも使っている場合が多いと考えるのが自然だと思う。(bethlehemレーベルの「リーフラベル」のように)
とすれば・・・Savoyの場合、やはり12インチの初めのセンターラベルは、やはり、10インチと同じ「真っ赤な赤」ということになる。

Savoy_jazz_001_2 

Savoy_jazz_002_4≪10インチ盤~フィル・アーソとボブ・ブルックマイヤー(MG15041)
~このセンターラベルこそが「赤ラベル・溝あり」の基本形だ≫

Savoyのオリジナル盤(モノラル)と言えば、やはり、red・・・つまり、あの「真っ赤な赤色」red を想起するのが普通のはずで、そしてその 『赤のセンターラベルの外周から1cmほど内側に、銀色の丸囲みラインがあり、その丸ラインに沿ってDG(溝)がある』 というのが、SavoyレーベルMG12000番シリーズのオリジナルモノラル盤に対する基本的な認識だからである。

これは僕の推測だが、そもそも、ゴールドマイン本に使われた maroon という言葉が、その後の混乱を招いているように思う。実際、ネットなどでSavoyオリジナル盤(1st)のセンターラベルへの説明表記でも~つまり、写真でははっきりした「赤ラベル・DGあり」であっても、maroon をという言葉が使われているケースも見られるのだ。普通の感覚として、maroon というより、red と呼んだ方が、やはりあの「赤」をイメージできるような気がするのだが・・・。
そして、もちろん red と表現される場合も多い。最近、見つけたケースでは、bloody red(鮮烈な血のような赤色) という言葉もあった。bloodyとは凄い表現だが、たぶん実際のセンターラベルの色合いを見て考えたのだろう。個人的にはオリジナル盤(モノラル)のセンターラベルには、この「bloody red」が的確だと思う。
というのは、再発ものにも「赤ラベル」があって、それがオリジナルモノラル盤の「赤」とは微妙に色合いの違う「赤」のようにも見えるからで、例えば、オリジナル1stを bloody red (DGあり)、2ndを red (DGなし)というように分けて使えば判りやすいのになあ・・・と思うわけである。なお、再発もの brown(茶色) は、赤とは完全に別の色であるから、混同することはないと思う。
もう1種類のセンターラベルがある。「赤」といえば赤なんだが、もう少し暗めのやや茶色がかった・・・つまり「アズキ色」みたいなセンターラベルも存在しているのだ。このやや暗めの「アズキ色」(blackish red あるいは dark red) は、どうやら、比較的初期の再発ものに使われたようで、もう少し後期の再発ものの「茶色」と、しっかり分けて認識する必要があるかと思う。
センターレーベルについては~今回は、手持ち盤の実物を見ながら、写真を撮って、いわゆる「赤ラベル」であっても、それらに色合いのニュアンス違いを発見した場合は、できるだけコメントを残しておきたい。
こうなりゃ、1タイトルごとの現物主義でいくしかない(笑)

このブログでは~MG12000番代のオリジナル盤のセンターラベルを
≪赤・溝あり≫と呼ぶことにする。Dscn2974_2
≪写真~*同一タイトルでの 1stと 2nd の例~エディ・バートの[Musician of the Year] 
下が 1st~「赤・溝あり」「B面に手書きRVG」「58Market」アドレス。コーティングあり。
上が 2nd~「アズキ色・溝なし」「56Ferry」アドレス。コーティングなし≫

Dscn2975の写真では、上・下とも同じような「赤色」に見えるが、現物を見比べれば明らかに違う色だ。上のセンターラベルは、かなり暗い赤・・・やはり「アズキ色」と呼びたい(blackish red あるいは dark red) 
そしてこの「アズキ色」は、いわゆる 「茶色」(brown)ともだいぶ違う。
「茶色」はもっと暗くて赤みの薄い「こげ茶色」に近い。
「原色大辞典」というホームページ(HTMLカラーコード)のアドレスを付けておきます。ご覧ください。
http://www.colordic.org/
*(追記)<アズキ色~blakish red あるいは dark red>と僕がちょいと拘って書いてきたが ・・・どうやら一般的にはこのラベルの色のことを maroon と呼んでいるらしい。僕が「アズキ色」と呼んでいる色合いは、添付した「原色大辞典」で見ると、正に maroon(かdark red)に近いので、今後は、maroonを使うこととしよう。ラベルの色の表現としては、「赤」→「maroon」→「こげ茶」と表現する。


Savoy_jazz_001_3≪茶色ラベル・溝なし≫の例~ソニー・レッド、サヒブ・シハブらのオムニバス[Jazz is Busting All Over] MG12123~この番号ならやはり「赤・溝あり」が在るはずで、この写真の盤は、2nd だろう。

住所の変遷についても、ゴールドマイン本ではまったく触れていない。それでこちらも手持ちオリジナル盤の裏ジャケットのアドレスをチェックしてみた。
手持ちのオリジナル盤だけだとサンプル数が少ないので、キング国内盤(最後の名盤シリーズ~裏ジャケットまで忠実に再現されていると思われる)も参考にしたが、50タイトルほどを比較することで、『住所の変遷』の大体の流れが把握できてきた。

1.SAVOY RECORD CO, INC, 58 Market St, Newark, N.J.
というのが基本形である。(以後~「58Market」と呼ぶことにする)
この「58Market」は、おそらく12070番辺り(あくまで推測です。例外もあり(後述)みなさんの手持ちでの実例をぜひお知らせください。
Savoy_jazz_006_2

(この後(12070番辺り)から「58 Market St」表記が無くなってくる)

2.SAVOY RECORD CO, INC Newark, N.J.   あるいは
  SAVOY RECORD Co.Inc. Newark, New Jersy  となる。
  (以後~「番地なしNewark」と呼ぶことにする)
 *1/12~呼び名を「CO INC」から「番地なしNewark」に変更しました。

*N.J. と New Jersy の違い~まだサンプル数が少ないが、シリーズ番号の早い方に N.J.表記が多く、番号後期の方にNew Jersy表記が多いようだが、特に法則もないようだ。サヴォイの場合、アドレス表記のコラム(囲み)などもレイアウトが一定しておらず、単にデザイン的な理由から様々な表記が変化しているだけかもしれない。この辺りもサヴォイというレーベルのアバウトな(いい意味!笑)ところかもしれない。
≪下の写真~Frank Wess/North, South, East...Wess(MG12072)。
アドレスの「CO INC」部分~厳密には、Co.Inc.と大文字・小文字になっての、N.J.表記である≫
Dscn2995

Dscn2989
≪上の写真2点~ミルト・ジャクソン~Jazz Skyline(12070) と Jackson's Ville(12080)の2枚。近い番号のタイトルが共に「番地なしNewark.」のNew Jersy表記≫

*手持ち盤の中では、「58Market」アドレスで最も大きい番号のタイトルは、12061番Meet Milt Jackson(このブログの一番上の写真)と認識していたのだが、ひとつ例外的なものが見つかった。それは・・・12074番~Vido Musso/Loaded である。これが、上記写真のJazz Skyline(12070)~(アドレスに「58」無し)よりも後の番号であるにも関わらず、「58Market」アドレスだったのである。

Dscn2993 Dscn2992
・・・これでよく判らなくなった(笑) まあ「変遷」というものは、それほど鋭角的に変るものではなく「徐々に」移り変わっていくものなので、こういうケースも特に「サヴォイ」というレーベルでは、別にどうってこともないだろう(笑)

3.SAVOY RECORD CO.,INC.,56 Ferry Street, Newark, N.J. 07105
(以後~「56Ferry」と呼ぶことにする)
Savoy_jazz_010
Savoy_jazz_011
≪マリアン・マクパートランド/at Storyville(MG 12004) この2枚は同じタイトルの 1stと 2nd (3rdかもしれない)の例。
下が1st~ジャケットはカラー&コーティングで重厚。この緑色は良い色合いだ。盤も分厚くてセンターラベルは「赤・溝」。
上が 2nd~ジャケットがモノクロに変って、盤はペラペラと薄く、センターラベルは「茶色ラベル」。そしてジャケット裏のアドレスは 56Ferry。
この「56Ferry」盤の発売時期は1964年~1965年頃か?≫
1st と 2nd でジャケットが変るパターンについて付け加えると・・・有名な Opus De Jazz(12036) やModern Jazz Quartet(12046)の場合は、1stがモノクロ、2ndがカラーである。なのに・・・このマクパートランド盤では逆パターンになっている。この辺も、実に Savoy らしいじゃないか(笑)

さて・・・上記のように、MG12000番シリーズでは、「住所」の表記は、おおよそ、1・2・3の順に変遷している。
1の「58Market」は初期のもので期間はわりと短い。
  ≪MG12000~MG12074前後≫

2の「番地なしNewark」の期間は、1と3の間と思われる。
  ≪MG12705前後~MG12163前後≫
  *「58Market」と「56Ferry」に対し、この2だけは「番地がない」ので、これを「番地なしNewark」と呼び、区別することとした。

3の「56Ferry」は、番号のかなり後期に現われる。
  ≪MG12164番前後~MG12200≫

≪移り変わりの番号≫は・・・あくまでも大雑把な推定です。この番号前後の実例がっほしいところです。

1/18≪追記≫~レコード仲間~チャランさんから以下のようなメールをいただきました。
≪ミルト・ジャクソン/OPUS DE JAZZ(MG12036)2ND(ラベルはこげ茶色)
「あれ? 」裏ジャケットの会社の住所が、P.O.Box 1000,Newark,N.J.07101 になっている・・・・?≫
P1010239

~special thanks to Mr.チャランさん!
この情報を元に自分の手持ち盤をチェックしてみたら、やはりP.O.BOX表記がいくつか見つかったので、アドレス表記の類型として、以下の2種を追加しておきます。


SAVOY RECORDS CO.,Inc., Newark,N.J.  P.O.BOX 1000 (僕の手持ちでは~12088(Red Norvo/Move)ラベルはアズキ色・筋(ほぼ銀円上に沿っているが、DG(溝)ではない)
12088という番号から当然「赤ラベル・DG」が1stなので、この僕の手持ち盤は再発。それから後述の「PO BOX1000」からも再発であることが判る。 
もうひとつ~

SAVOY RECORDS CO.,Inc.,56Ferry St.,Newark, N.J.07101 P.O.BOX 1000
(このすぐ下に写真あり)
12194(チャールス・モフェット/ギフト)キング国内盤~これは、Savoy最後期の発売:1969年だが、私書箱のPOBOX1000の前に NJ 07101という表記も見られる。おそらくは・・・New Jersey州での何らかの管理番号だと思われるがよく判らない。いずれにしても1969年辺りまでくると、いろいろと「管理」が細かくなってくるのだろう(笑)

上記2種、共に・・・P.O.BOX 1000「私書箱」を意味する「P.O.BOX 1000」という文言が追加されている。そもそも、ジャケット裏にその会社のアドレスを記してあるのは、そのレコード購入者がレコード会社に「カタログ請求」する際の便宜のためであろう。だから、たいていは58Marketアドレスと並んで「 Send Stamp for LP & EP Discography」(12015(Eddie Bert)などと書かれている。「番地なしNewark」の場合でも「Write for Complete Discography today」となっているケースが多いようだ
私書箱「PO BOX 1000」のサンプルとしてここに挙げた Moveでは、その「カタログ請求の文言が~「FOR COMPLETE FREE DISCOGRAPHY, WRITE(この後、アドレス)」という文言になっている。カタログ請求を勧める文言の種類は発売時期によって実に様々であり・・・こういう「定型なし」ということ自体が、実に・・・Savoyらしい(笑) 
「私書箱」アドレスの時期は、おそらくは、56Ferryより少し後だろう。
というのは~58から56と住所が変った時期に、市場の在庫としてのレコードには「58」「番地なし」「56」が混在していたはずで、そのことが郵便配達上、多少の混乱を招いた・・・だから今後は「私書箱」で統一しようじゃないか、ということでの「私書箱」アドレス導入だった~と考えられるからである。
*大雑把な掴みとしては~ジャケット裏のアドレスに「P.B.BOX 1000」表記があった場合、たとえそのレコードがMG12000番の若い番号のタイトルの58Marketであっても、それはだいぶ後の時期に再発された際のジャケットである可能性が高い~ということになる。そして、その中身の盤のラベルが「赤・DG」ではなくて、「アズキ色」や「茶色」だったら・・・まず再発ものであろう。
*もちろん、後述の56Ferryへの切り替え時期(12164番あたりか?)と「アズキ色ラベル」「茶色ラベル」への切り替え時期(これがよく判らない)
より以後の番号タイトルの場合は、そのラベルは「アズキ色」「茶色」がオリジナルなのだから、当然ではあるが、再発ものではない。

問題は・・・これら住所表記の変遷が、MG12000番シリーズのどの番号あたりで切り替わっていったのかである・・・それを僕は知りたい(笑) 
特に「56Ferry」~ここが重要だ。「56Ferry」については、12000番シリーズのかなり後期~12164番(カーティス・フラー/Images)辺りからではないか、と推測はしている。(日本コロムビアのCDで「56Ferryを確認)
この移行の時期(シリーズでのおよその番号)が確定できると、言うまでもないが、例えば、12050番くらいの若い番号のタイトルで「56Ferry」アドレスのレコードを見つけた場合 それは・・・2ndか3rd(再発)である可能性が高い~(その番号だと、1の「58Market」時期であるはずだから)~ ということが判るわけである。
そしてもうひとつ・・・これは僕の勝手な推理だが、この「56Ferry」への移行期と、もうひとつの謎~センターラベル変遷の「茶ラベル・溝なし」への移行期・・・この2つの流れがほぼリンクしているのではないか・・・ということだ。
しかしながら、決定的に拙(まず)いことに・・・僕はこのシリーズ最後期のSavoy作品をほとんど持ってないのだ。およそ1963~1968年くらいの新録音ものと思われる~例えば、ユゼフ・ラティーフ、ビル・ディクソン、ビル・バロンらの諸作品を所有していないのだ。これは・・・現物確認主義者としてはたいへんに拙い(笑) 
およそであっても「新録音もの」の発売時期が例えば1965年と判った場合、その作品のセンターラベルやジャケット裏アドレスがどういう様式か・・・ということがポイントになるのである。「現物」を持っていなくても、発売年については、ゴールドマイン本などからも、ある程度は把握できる。 
例えば、Savoyに相当数のタイトルを持っているユゼフ・ラティーフの「The Dreamer」(MG12139)~今、これをゴールドマインで見てみると・・・1958年となっている。ちなみにステレオ盤のSR13007は1959年となっている。
こんな具合に「たぶん、そうだろう」的に把握できないことはないが・・・じゃあ中身の盤の重さ・厚さは? センターラベルの色合い・溝は? ジャケット裏のアドレスは? ・・・となると、これはもうお手上げである(笑) BLUENOTEくらいの人気レーベルになると、各エディション違いでのアドレス、センターラベル写真まで網羅した研究本もあるようだが、Savoyでは・・・まず無理だろう(笑) となると・・・やはり一番いいのは、そこに「現物」が在ることだ(笑)
Savoy_jazz_001_4 Savoy_jazz_002_3
≪上写真2点~チャールス・モフェット/ギフト(キング国内盤)≫ 
解説書によれば、録音は1969年となっている。1969年録音のこの作品が、MG12194というシリーズの最後期の番号。Savoyのオリジナル録音としても、最後期のものだろう。
MG12195のDoug Carn Trio(1969年)がSavoyオリジナル録音の最後の作品のようだ。*(MG12196~12220はRegent原盤の再発なので)

「アドレス~住所表記」についてのみ、僕自身が参考にした国内盤は~
1.キングレコードの「最後のジャズLP」(赤い帯のやつ)
2.日本コロムビアの「THE SUPREME COLLECTION OF SAVOY」(紫の帯のやつ)です。
これらの国内盤は、表・裏ジャケットまで忠実に再現していたと思われるので、ジャケット裏下部の「アドレス」については資料として役立つ。
但し、復刻の際に「写真写し」に使った元盤が 2nd というケースもありうるので、あくまで「参考」です。ちなみに、国内盤のセンターラベルについては、原盤の発売時期に伴う変遷を反映せずに、そのレーベル(シリーズ)の初期オリジナル様式に準じることも多いので、発売時期の推測にはあまり参考にはならない場合が多いかと思う。

みなさんのお手持ちのSavoy盤(特にMG12000番シリーズ)の情報を、コメントにてぜひお知らせください。

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2014年2月15日 (土)

<ジャズ雑感 第37回>ベツレヘムの east coast jazz シリーズを巡る謎

つい最近、手に入れたレコードがある。それは・・・the compositions of Bobby Scott というベツレヘムの10インチ盤である。年末の「スタン・リーヴィー」記事から始まった皆さんとのやりとりを通して、このところの僕は軽い『ベツレヘム熱』に浮かされていたようでもあり・・・気が付いたら、これが手元にあったのだ(笑) 
もっとも・・・ベツレヘム10インチ盤の持つ魔力に抗(あらが)える者など、この世にいないだろう。以前から、僕も少しづつではあるが集めてきた。今回はそれらの10インチ盤も参考にしながら、もう少しだけ、ベツレヘム・レーベルのこと・・・特に、east coast jazz series のことを探ってみたい。East_coast_jazz_005
≪BCP 1009 Bobby Scott - East Coast Jazz #1~この10インチ盤が、栄えあるeast coast jazz series の #1 である。ベツレヘム社は、当時、新進気鋭の若手:ボビー・スコット(ピアニスト、作曲家~『蜜の味』1960年で有名)を大々的に売り出そうとしたようだ。この1009番より前に、1004番(ピアノトリオ)を発売していて、さらに1024番(1009番の続編~the compositions of Bobby Scott:2)も発売している。10インチ盤40点の内、3点がボビー・スコット作品だ≫

前回の<ミルト・ヒントン>記事のコメントにて、せんりくんとdenpouさんが、この east coast jazz series なるシリーズ名を提示してくれた。その折には軽いやりとりだけで終わったのだが、僕自身も、1020番という表記でありながら、なぜか12インチ盤の『ミルト・ヒントン』を持っていたことから、やはり east coast jazz series という名前がとても気になっていた。(1000番代は10インチ盤)
この『イースト・コースト・ジャズ・シリーズ』なる名前・・・それほど知られてはいないと思う。というのも・・・これ、「シリーズ」と呼ばれてはいるものの、わずかに9タイトルのみの発売で、しかも発売された時のレコード番号も飛び飛び。さらに、「シリーズ」の1~9が、10インチ時代から12インチ時代に跨(またが)って発売されているのである。そんな事情から、この  east coast jazz series  はシリーズ(連続したひとつの流れ)」としては、なかなか周知されにくかったであろう・・・と考えられる。
その辺の発売事情に絡むベツレヘム社のこのシリーズに対する思い入れと、その変化・・・みたいなものが、今回、手持ちのベツレヘム10インチ盤の「裏ジャケットのレコード宣伝番号」をチェックしている内に、浮かび上がってきたので、その辺りの経緯もまとめてみたい。

まずは、east coast jazz の1~9を、発売(されたとされる)タイトルの番号から括(くく)ってみた。

(10インチ盤)
BCP 1009 Bobby Scott - East Coast Jazz/1
BCP 1010 Vinnie Burke - East Coast Jazz/2
BCP 1012 Joe Puma - East Coast Jazz/3
BCP 1018 Herbie Mann - East Coast Jazz/4
(これ以降は12インチ盤)
BCP 1020 Milt Hinton - East Coast Jazz/5
BCP 10 Milt Hinton - East Coast Jazz/5
BCP 13 K&J- K + J.J. East Coast Jazz/7
BCP 14 Urbie Green - East Coast Jazz/6
BCP 16 Hal McKusick - East Coast Jazz/8
BCP 18 Sam Most - East Coast Jazz/9
BCP 6001 K&J- K + J.J. East Coast Jazz/7
(最初はBCP13番として発売されたが、短期間の内に BCP6001番に移行されたらしい)

これらの east coast jazz series ・・・僕は、12インチ盤の 10番(1020)、14番、18番、6001番(13番)の4枚は持っていたが、10インチ盤で持っているのは、この記事の冒頭に掲げた1009番(Bobby Scott)のみである。
だがしかし・・・そこは持つべきものはお仲間である。前回のコメントやりとりの後、denpouさんがお持ちの east coast jazz series 10インチ盤の写真を送ってくれていたのだ。denpouさんは3枚、お持ちだった。
*以下、写真6点~denpouさん提供。

Bcp1009_2 Bcp1009_3
≪BCP 1009 Bobby Scott - East Coast Jazz/1≫

Bcp1010 Bcp1010_2 
≪BCP 1010 Vinnie Burke - East Coast Jazz/2≫

Bcp1012 Bcp1012_2 
BCP 1012 Joe Puma - East Coast Jazz/3

これらの写真で判るように、この east coast jazz series なるシリーズ・・・表ジャケットには「小文字」で、裏ジャケットには上部に「大文字」で、EAST COAST JAZZ SERIES としっかりと表記されている。まずは、「裏ジャケット下部の宣伝レコード番号」にも注目してみよう。

East_coast_jazz_006_4   
1009番( east coast jazz seriesの#1)には~
1010(#2)、1012(#3)、1015、1016、1017、1018(これが#4なのだが、east coast jazz~#4の表記なし)まで。9番の裏ジャケットにわりと番号の離れた18番まで載せている・・・ということは、1ヶ月に4枚づつ発売したとしても、1~2ヶ月先の発売予定のタイトルまで載せていたのかもしれない。

1010番(#2)には~
1009(#1)、1012(#3)と、1015~1018(#4表記なし)まで。

12番には~
1009(#1)、1010(#2)、1018(#4)、1016、1017まで。

上記のことから、EAST COAST JAZZ SERIES シリーズ最初の#1(1009番:THE COMPOSITIONS OF BOBBYSCOTT)の発売時から、すでに1012番の#3(JOE PUMA)までをシリーズとして予定(あるいは同時に発売)していたことが判る。
しかしその反面、同シリーズ1009番・1010番の発売時には、1018(HERBIE MANN QUARTET)を、シリーズの#4としては決定していなかった・・・ことも覗える。そうして、1012番(JOE PUMA)を発売した時には、先発売予定の(あるいは同時に発売)1018番を#4として宣伝に載せているではないか。と、なると・・・この場合、せいぜい1~2ヶ月くらい前に「east coast jazzシリーズの次のタイトル」が決まったことになる。
ベツレヘム社は、このeast coast jazz なるシリーズを企画し、その発売を開始してみたものの、実はそれほど綿密な販売プランなどもなく、案外、「思いつき」のシリーズだったのかも?・・・僕はそんな風にも想像してしまう(笑) まあしかし、よく考えてみたら、ベツレヘムのというレーベルのコンセプト自体が(西海岸事務所を設立する前の)元々、「東海岸の白人ジャズ」みたいなイメージのものだったわけで、どの作品が east coast jazz シリーズであっても、そうでなくても、それほど違和感もないような気もする(笑)

さて・・・冒頭に書いたように、僕はベツレヘムというレーベルに興味を持ってから、10インチ盤も幾つか入手してきた。取り出してきてみると、思ったより枚数はあるじゃないか(笑)・・・まずは、並べてみよう。12title_2

上段 左から~1003、1004、1007、1016
中段 左から~1017、1019、1021、1024
下段 左から~1025、1029、1031、1040
≪僕の手元には、これら12枚のベツレヘム10インチ盤が在った。どのジャケットにも、ゴールドブラット表記がある。この頃のゴールドブラットは、「写真もの」だろうと「イラストもの」だろうと、そのどれをも抜群のセンスを持って、素晴らしいジャケットに仕上げている。この中で僕が特に好きなのは「イラストもの」~Charlie Shavers/Horn o'Plenty である。但しその内容は、DJの声が被(かぶ)るもので・・・ジャケットほど好きになれない(笑)≫

「ジャケット裏の宣伝レコードの番号」に、もう少し拘りたいので、僕の手持ちの中から、比較的、番号の近い10インチ盤の裏ジャケットをチェックしてみた。

1016番(sincerely, Conti)の裏ジャケットには~
1001と1002(ともにクリス・コナー)と、#1(1009)と#2(1010)の4タイトルが載っている。なぜか、1012と発売間近のはずの1018(HERBIE MANN QUARTET)が載っていない。
1017_levy_2 1017_2 ところが、次の1017番(Stan Levey plays the compotisions of ~)の裏ジャケットを見ると・・・ここでは、当(まさ)に、EAST COAST JAZZ SERIES #1~#4(1009、1010、1012、1018) と1016の5タイトルが載っているじゃないか。これは明らかにこのEAST COAST JAZZ SERIESに的を絞った宣伝である。

この調子で宣伝していくのか~と思いきや・・・次の1019番(Oscar Pettiford/Basically Duke)では、1001番~1020番まで18タイトルを載せている(1014番と1019番は不掲載) 
1019_baiscally_2 1019  EAST COAST JAZZ SERIESの扱いについては、1009、1010、1012、1018、1020 のそれぞれに EAST COAST JAZZ SERIES #1~#5を付けて、タイトルと参加ミュージシャンを載せている。この時点ではまだ「シリーズ」として売ろうとしている。
そして、(手持ち盤では)1025(Herbie Harper)の裏ジャケット宣伝では、こうなる・・・。
1025_herper1001~1026までのタイトルのみ載せているが、1010番、1012番、1018番、1020番を見ても、EAST COAST JAZZ SERIES #~なる表記はどこにも見当たらない! そしてこの「宣伝パターン」は、1031番でも同一。10インチ盤最後の1040番(Dick Garcia/Wigville)でも、裏ジャケ宣伝は1001~1028番までのタイトルしか載せていないのだ。
これが少しでも多くのタイトルを宣伝に載せようという、単にスペースの問題なのか・・・あるいはこの時点で、EAST COAST JAZZ SERIES #~というシリーズ概念に見切りを付けたのか・・・その辺りは判らないが、いずれにしても、10インチ盤時代のベツレヘム社は、この「シリーズ」をうまくまとめ切れなかったのでは・・・という印象を僕は拭いきれない。
ベツレヘム社は、自信を持って始めた EAST COAST JAZZ SERIES に相当な拘りを持ちながらも・・・しかし実際の売り方には大いに迷いながら(もちろん売れ行きが芳しくなかったからだろう)・・・それでも#1から#4まで製作販売してきた。しかしその頃、時代は10インチから12インチ時代へと移り始めていた。ベツレヘム社も「時代に乗り遅れてはならない」として、12インチ化に踏み切る。
ベツレヘム社は、12インチ盤の発売に当たって、まずDeluxeシリーズを計画した。このDeluxeシリーズ~ご存知のように、基本的には「2枚の10インチ盤のカップリング」企画である(10インチ盤2枚分そのままを1枚には収録できずに1~2曲をカットすることもあったようだが)
そのDeluxeシリーズの発売番号・・・BCPの1番から始めるのが普通のはずだが、ベツレヘムの場合、どうやら・・・BCP1~9番という番号は、12インチ化を始めた頃には使われなかったようだ・・・ということが判ってきた。
なぜか? なぜ普通に1番から発売しなかったのか? ここで・・・『ミルト・ヒントン』である。
その時、east coast jazz seriesの#5として用意してあったのは、10インチの1020番:Milt Hintonである。そしてひょっとしたら、この1020番がベツレヘム社としても最初の12インチ盤で、発売までの準備不足もあり、10インチとして用意した番号(1020番)はもちろん、カバー写真・レイアウトなど全てをそのまま使用して、12インチ化してしまったのかもしれない。これが1020番(その後、BCP10番に修正)のMilt Hinton(east coast jazz series #5)となる。
*(その後の「シール貼り」「マジック消し」の経緯は、夢レコ<ミルト・ヒントンというベース弾き>を参照のこと)

14_urbie 14_urbie_2 さて、12インチに移行した直後の、east coast jazz seriesの#6(Urbie)の裏ジャケットをチェックしたら、面白いことに気が付いた。
はっきりと「12インチ」レコードとして、1020番の「ミルト・ヒントン」と書いてあるじゃないか! そうして、左側の10インチ盤の宣伝には、1020番は載っていない。
つまり・・・ミルト・ヒントンの1020番は、最初から「12インチ盤」として正式に発売されたのだ!(単純なミスではなく意図的に) 
そして・・・ 『ミルト・ヒントン』の10インチ盤(1020)は、ひょっとしたら、発売されなかったのかもしれない。
だとすれば・・・これまで10インチ盤『ミルト・ヒントン』がネット写真でさえも確認できなかったことの説明も付く。Hinton4

その後、まもなく、ベツレヘム社は、その1020番を、BCP10番に修正した~ことは事実なのだが、そのことで、その後の発売番号割り当てプランに混乱が生じてしまったことはあるかと思う。
この辺りのことと、ベツレヘム社が拘りを持ってきたであろう、EAST COAST JAZZというシリーズへの扱い具合を考え合わせてみると・・・僕なりの答えが見えてきた。

前回の記事から幾度か ≪Deluxeシリーズが発売され始めた時、何らかの理由により、BCP 1~9番辺りが「欠番」として使われなかったのでは?≫ と書いてきたが、その「何らかの理由」として・・・以下のようなことを考えてみた・・・ベツレヘムについては、たぶんこれが最後の妄想である(笑)
その時、ぼんやりと僕のアタマに浮かんだのは・・・「BCP 1~9番辺り」という数(かず)と、east coast jazz seriesの #1~#9 という数(かず)のことだ。どちらも9個じゃないか。う~ん・・・これは何かあるぞ・・・と。 
つまり・・・ここには、east coast jazz series が深く関わっているのではないかな?・・・という想いがあったわけである。

≪1020番と印刷された『ミルト・ヒントン』~どうせ修正するのなら、1番に修正することもできたはずなのに、なぜ、そうしなかったのか?≫
~この時点ですでに、10インチ盤音源を使っての12インチ化のプランもあったはずで、そうした時に、すでに発売済みの10インチ盤:EAST COAST JAZZ シリーズ #1~#4 も、どこかで再編したい~とベツレヘム社は考えていた。
そこで12インチ盤の新譜第1弾として用意した『ミルト・ヒントン』は、1020番(EAST COAST JAZZ SERIES #5)という番号が付いてしまっている。さあどうする、ここはシール&マジックで修正するとしても、ここでもし「1番」に修正すると~それもまずいなあ~EAST COAST JAZZ シリーズは、すでに #1~#4まで出ているし~#5が先の番号になってしまうのも按配が悪い~そうだ、#5の『ミルト・ヒントン』を、とりあえず、BCPの10番にしておけば、前に1~9の空き番号が出来る。それを使えば、10インチ発売済みのEAST COAST JAZZ シリーズ #1~#4 も例えばBCPの6番~9番に収められる。本当は『ミルト・ヒントン』1020番を5番に修正するのが一番いいのだけど、5番だとマジック消し作戦が使えないし(笑) まあ、いいや。この先も#6~#9と企画を続ければ、とりあえず、1~9番もうまく収まるだろう・・・というような思惑が在ったのでは・・・と、僕は想像する。
そうして実際、ベツレヘム社は、EAST COAST JAZZ SERIES の続編を #6~#9まで創ったのだが、それらには、せっかく用意したはずの「空き番号 1~9」を使わずに(これまた何らかの事情により:笑) それぞれ、BCPの13番『K+JJ』(すぐ後に6001番に移行)、14番『Urbie Green』、16番『Hal Mckusick』、18番『Sam Most』 として発売されたのである。 18_sam 18_sam_2
結局のところ・・・EAST COAST JAZZ SERIES なるネイミングが、はっきりとジャケットに表記されたのは、10インチ盤・12インチ盤を通して、これら全9タイトルだけだったことになる。
さて、EAST COAST JAZZ SERIES は、12インチに移行してからも、 #5~#9まで発売されたわけだが、それでは、10インチ盤で発売された EAST COAST JAZZ SERIES #1~#4 は、その後、どうなったのか?
先ほど≪Deluxeシリーズは、基本的には「2枚の10インチ盤のカップリング」企画である(10インチ盤2枚分そのままを1枚には収録できずに1~2曲をカットすることもあったようだが≫と書いたのだが・・・実は、EAST COAST JAZZ SERIES #1~#4 (10インチ盤)も、その「中身だけ」は、しっかりと、Deluxeシリーズ:12インチ盤の中に再編されていたのだ。(#3のみ確認できず) 以下、その移行先。

East_coast_jazz_002_2 East_coast_jazz_003_2 East_coast_jazz_004_2 East Coast Jazz #1(1009番 Bobby Scott)~全5曲が、BCP8番(The Compositions Of Bobby Scott)のA面に収録。
East Coast Jazz #2(1010番 Vinny Burk)~全8曲が、BCP6番(Bass By Pettiford/Burke)のB面に収録。
East Coast Jazz #3(1012番 Joe Puma)~12インチ化を確認できず。
East Coast Jazz #4(1018 番 Herbie Mann)~全7曲が、
BCP58番(Herbie Mann Plays)のA面に3曲、B面に4曲、収録。

上記のように、East Coast Jazz シリーズ #1~#4 (10インチ盤)の内、3点(#1と#2と#4)は、12インチ化されていたわけである。残念ながら、East Coast Jazz Series なる表記は、8番、6番、58番のジャケットのどこにも見当たらないが、3点とも「全曲」が再編されている。そして・・・#1と#2には、「空き番号」になっていた、BCP8番と6番が使われているじゃないか! やはり・・・ベツレヘム社は、新たに始めた12インチDeluxeシリーズの初期ナンバー(1~9)を使って、East Coast Jazz シリーズを「再編」しようとしていたのだ。僕はそう思えてならない。

こんな具合に、いろいろと妄想を書き連ねてきたが、もちろん真実は誰にも判らない。60年も前のジャズレコードの話しだ・・・判らなくて当たり前である(笑) それにしても、今回、興味を持った特にベツレヘムに関しては、まとまった「レーベル情報」もほとんど見当たらず、本当に判らないことだらけだった。
この記事の冒頭にも書いたが、僕の最大の疑問は~
≪Deluxeシリーズ1~9は当初は「空き番号」だったのでは? そして、だいぶ後になってから発売されたタイトルに、この1~9番が充てがわれたのでは?≫というものだった。
それについて、少々補足すると~
問題のBCP1~9番の<左NY、右CALIF>ジャケットのタイトルは、以下となる。
BCP 1   Bobby Scott - Terry Pollard
BCP 2   Oscar Pettiford/Red Mitchell - Jazz Mainstream
BCP 3   Eddie Shu/Bob Hardaway - Jazz Practitioners
BCP 4   Pete Brown/Jonah Jones - Jazz Kaleidoscope
BCP 5   A Ruby Braff Omnibus
BCP 6   Oscar Pettiford/Vinnie Burke - Bass By Pettiford/Burke
BCP 7   Hank D'Amico/Aaron Sachs - We Brought Our Axes
BCP 8   The Compositions Of Bobby Scott
BCP 9   Westcoasting With Conte Candoli And Stan Levey

僕が持っているのは 3、6、8、9である。これらの<左NY、右CALIF>ジャケットのものが(それしか存在しないと思われる)、Deluxeシリーズもだいぶ後になってからの発売されたものであることは間違いない。その根拠は、例によって(笑)それぞれのタイトルの裏ジャケットレコード宣伝の番号だ。
BCP3には[40~64まで]
BCP6には[38~64まで]
BCP8には[56~69まで]
BCP9には[40~65まで]
この番号並びを見ると、それぞれの発売時に多少は先の発売予定のタイトルまで載せたとしても、これらの3,6,8,9番がカタログ上ではBCPの若い番号であっても、実際に発売されたのは、BCP60番の前後であったことは明らかである。

さて、今回のベツレヘム・・・本当に判らないことだらけで、だから・・・現物(ジャケット・盤のデータ)のサンプルを集めて、その差異から、あれやこれや類推していったのだが、如何(いかん)せん、サンプルが足りない。ネットからの情報でもそれが信頼に足るものであれば、写真など使用させてもらうことも考えないとダメだな・・・そんなことを思いながら「ベツレヘム迷宮」に苦しんでいた時、ひとつの有力な資料を見つけた。見つけた~と言っても、実は、shaolinさんというレコード愛好家の方のブログ記事に「古い時代のレコードカタログの記事」があったことを思い出しただけなのだが(笑)
それは≪Old Record Catalogues, Pt.1≫という記事で、その中に、果たしてBETHLEHEMのレコードカタログも載っていたのだ!
そして、その1956年頃のBETHLEHEMレコードカタログの写真と共に、以下のようなキャプションが付いていた。
≪12インチLP ($4.95) は BCP-12 (Don Elliott) から BCP-35 (Bobby Troup Vol.II) まで (なぜか BCP-11 およびそれ以前は未掲載)、10インチLP ($3.85) は BCP-1001 (Chris Conner Sings Lullabys Of Birdland) から BCP-1040 (Russ Garcia) まで (BCP-1020 は未掲載)がリストアップされています≫
*bassclef註~1020番は、12インチ盤として、BCP22とBCP23の間に1020の番号のまま掲載されている。おそらく・・・このカタログ発行の後に、この12インチ盤1020(ミルト・ヒントン)を、「空いていた」(あるいは「空けておいた」)BCP10番に移行させたのだろう(「シール貼り&マジック消し」作業により)

~いやあ・・・やっぱりそうだったのか!という気持ちで、僕は嬉しくこの資料を眺めたわけである。
このカタログ資料は、本当に興味深いものですので、オリジナル・レコードに興味ある方・・・ぜひご覧ください。specail thanks to Mr. Shaolinさん!
これがそのshaolinさんのブログ記事のアドレスです~http://microgroove.jp/2007/06/old_record_catalogues_pt1/

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2014年1月26日 (日)

<ジャズ雑感 第36回> クリス・コナーの声

ジャズを長いこと聴いてきたが、実は・・・僕はヴォーカルものをあまり聴いてない。限られた何人かの女性歌手~アン・バートン、キャロル・スローン、アイリーン・クラール、アニタ・オディ、ジューン・クリスティ、それから、クリス・コナー、この辺りをたまに聴く・・・そんなヴォーカル初心者である。もちろん、美人歌手のゴージャスなジャケットを目にすると・・・そのオリジナル盤を欲しくなるが、人気の盤はどうしても「いい値段」になるので、僕の場合はその現実を見ると、すぐに諦める(笑) インストものに対しては、もう少しだけだが粘る(笑) そんな僕が、オリジナル盤に若干の拘りを持って、知らぬ間に初期の何枚かを集めさせられていた(笑)・・・それが、クリス・コナーなのである。

クリス・コナーと言えば・・・誰もが、バート・ゴールドブラットの傑作ジャケット~「うな垂れるコナー」と「マイク挟みコナー」・・・あれを思い出してしまうだろう。コナーのベツレヘム10インチ盤は、内容の良さと共にあのジャケットの素晴らしさもあって、やはり人気が高い。そして値段も高い(笑) ベツレヘムのコナー音源を僕は安物CDで聴いていて、「悪くないなあ・・・」」と感じていた。そしてその頃、あの10インチ盤1001番のジャケットと同じ写真のEP盤(7インチ)を見つけたのだ。

101ab_2 ≪BEP 101Aと101B~10インチ盤1001番と同内容。全8曲どれも素晴らしいが、僕は・・・what is there to say が特に好きだ≫

102ab ≪BEP 102Aと102B~10インチ盤1002番と同内容。cottage for sale がいい。アコーディオンの音色が印象的≫

首尾よく入手した、そのEP盤から流れてきた「クリス・コナーの声」・・・・これが僕には、なんとも凄かったのである。
ハスキーがかった太くて低めの声・・・張り上げている感じではないのに、凄い音圧感があって、とにかくよく「鳴って」いる(笑) 人の声を「鳴っている」というのも変な表現だが、実際、コナーのそれは・・・ググッと聴き手の心に迫ってくる・・・そんな存在感のある「声」だったのだ。

101のジャケット写真~コナーがマイクのスタンドを両手で挟み込むようにしながら、体をグッと後方に反らして(つまり、マイクから離れるようにして)、「大きな声」を出している。そういえば、クラシックの歌い手さんがマイクを使って大きな声で唄い込む時に、意図してマイクから後方に離れるような動作をしているじゃないか。あれは、もちろん「巧く見せるため」などではなく(笑)、やはり、歌い手さんがフォルテで発声した場面で、マイクを入力過多にさせないための(音を歪ませないための) 動作なのだろう。
それにしても、本当に口を大きく縦に開いている。そういえば、クリス・コナーの写真はたいてい「大きく口を開けている」場面が多い。後述する12インチ盤 6004番 の「大口」はもちろん、BCP20 も BCP56 も、かなりの「大口」である。やっぱり、大きな音声を発したい場合には、大きく口を開ける方が、より自然だろう。

1002_2  10インチ盤の2枚・・・1001番(マイク挟み)と1002番(うな垂れ)。僕は先にEP盤4枚を揃えたので、まあ音源(全16曲)は聴ける・・・ということで、10インチ盤は後回しとなっていた。それで今回「写真でも」と思ったのだが、両方持っている、と思い込んでいた10インチ盤は・・・実は、1002番しか持っていなかった(笑)
≪右写真~10インチの1002盤。「うな垂れ」もダークな色調に独特な雰囲気がある≫   

Bethlehem でのクリス・コナー作品~まず2枚の10インチ盤が1954年に発売され、その後、3枚の12インチ盤~BCP20、6004が1955年、BCP56が1957年の発売らしい。(オムニバスの6006番 も加えれば4枚だが、コナーの4曲は既発音源)
10インチ盤の1001番は、伴奏がピアノのエリス・ラーキンスのトリオで8曲、1002番の伴奏は、ヴィニー・バークのクインテットで8曲、この全16曲が、12インチ盤化の際に分散されてしまったので、12インチ盤にアルバムとしての統一感があるとは言い難い。

6004番「lullabys」には~1001番から5曲、1002番から6曲、そして別セッション(サイ・オリヴァー楽団)から3曲の全14曲収録。

ChrisBCP56番「Chris」には~1001番から残りの3曲、1002番から残りの2曲、そしてサイ・オリヴァー楽団から3曲、そして後の4曲がラルフ・シャロンのグループ(K&JJを含む)の全12曲収録。



BCP20番~全てラルフ・シャロンのグループで、全10曲収録。
A面1曲目の blame it on my youth が素晴らしい!This_is_2

さて、クリス・コナーを話題としたからには、ここでもう一度、整理しておきたいことがある。もちろん、6004盤~sings lullabys of birdland のジャケットのこと・・・「大口」と「半口」である(笑)前々回の「スタン・リーヴィー」記事のリストやコメントにおいて、すでに「大口」ジャケットが先の発売で、「半口」が後の発売らしい・・・というところまでは述べた。
その根拠は、「大口」ジャケットと「半口」ジャケットにおける表記の違い方にある。以下~下写真6点はdenpouさん提供。

Bcp6004_4 Bcp6004_5

≪左写真~「大口」の裏、右写真~「半口」の裏≫

1.裏ジャケット「レコード宣伝」番号の表記~
  「大口」では、BCP 6001番~6007番まで
          BCP ~64番まで。
   「半口」では BCP 6001番~6032番まで
          BCP ~79番まで

2.裏ジャケット アドレス表記の違い~
「大口」は*2種存在。
<左NY、右CALIF><左NY、右NY>
「小口」は <左NY、右NY>

上記の状況を常識的に考えれば、あるレコードに宣伝として載せるレコードのタイトルは、すでに発売されているタイトルのはずだから(もちろん、近日中に発売される予定のレコードが載る場合もあるようだが)、裏ジャケットに掲載された宣伝レコードの番号が「若い」方が、やはり発売が「先」と言えるだろう。
この6004番2種の場合は~denpouさんが指摘してくれたように、6032番まで載せている「小口」に対し、6007番までしか載ってない「大口」の方が「先」であることは、まず間違いないであろう。Bcp6004_6 Bcp6004_7
≪「大口」~<左NY、右NY>のジャケットと、「長方形ロゴ」のセンターラベル≫
Bcp6004_8 Bcp6004_9
≪「半口」~<左NY、右NY>のジャケットと、「長方形ロゴ」のセンターラベル。denpouさんが発見した「長方形ロゴ」左端の「十字マーク」。この「十字マーク」が「大口」センターラベルには無い。そして「ロゴ」自体のデザインも両者で微妙に異なる。
「半口」ラベルの方は、BETHLEHEM の下の「HIGH FIDELITY」文字が銀色ラインに囲まれているが、「大口」ラベルの方は「HIGH FIDELITY」の下に銀色ラインがない。
そして、中心穴(チュウシンケツ・・・という呼び名はないかと思うが:笑)の左右の「BCP-6004」と「Side A」文字が、両者で左右逆になっている。

そしてもうひとつ・・・先ほど、*印を付けて「大口」ジャケットにも2種が存在と書いた。実は最近、denpouさんがYoさん宅におじゃました際、Yoさん手持ちの6004番:クリス・コナーが、「大口」であること、そして・・・<左NY、右CALIF><センターラベルがリーフ>であることを「発見」してくれたのだ。それまでは、denpouさん手持ち「大口」「小口」が、ともに<左NY、右NY>だったので、アドレス表記違いによる発売時期の先・後の判断にもうひとつ、疑問が残っていたのである。
P1110448 P1110449 P1110450 Yoさんの「大口」は、アドレス<左NY、右CALIF>に加え、盤のセンターラベルも<リーフ>であった・・・これでもう間違いない!というわけで・・・クリス・コナー『sings lullabys of birdland』には、ジャケットだけでも、「大口」に2種、「小口」に1種~計3種の存在が確認できたわけである。

≪追記≫(2/3) Yoさんコメント(1/27付)で、<左NY、右CALIF>ジャケットで中身の盤が「十字マーク・長方形ロゴ」のものがあったとのこと。denpouさん「大口」のセンターラベル(長方形ロゴ)には無かった「十字マーク」が付いている。チャランさん「大口」の「十字マーク・長方ゴ」とも異なる。

Cad5vqop_2 Caaicfis_2 Cau6rs6g_2

上写真6点はYoさん提供~special thanks to Mr.Yoさん!

≪追記≫(1/27) チャランさんからの情報によると~
チャランさん手持ちの「大口」センターラベル(下写真2点)は、「十字マーク・長方形ロゴ」「フラットかなあ?」とのこと(denpouさんの「大口」は「長方型ロゴ」) チャランさんの仔細なチェックにより、もう1点の差異が見つかった~それはこのLPの目玉曲(lullaby of birdland)の表記下カッコ内の作曲者名クレジットだ。チャランさん手持ちのセンターラベルのものだけ、(Forster - Shearing)となっているのだ。他3点は全て(Shearing)である。これは・・・?

 Img_0852 Cha
ついでに自分の手持ち「半口」を見たら、なんと、僕:bassclefの「半口」センターラベルは十字マークなしの「長方形ロゴ」だったのだ。(denpouさんの「半口」は、「十字マーク・長方形ロゴ」)
う~ん・・・これはどうしたことか?(笑) これでは、ジャケットは、「大口」2種と「半口」1種~の3種。そして「盤」(センターラベルの仕様)は、「大口」2種、「半口」2種の計4種が存在することになる。いや・・・下記のYoさん<センターラベルがリーフ>も入れれば、5種となる。これは・・・まだまだ追跡調査が必要だぞ(笑)

≪追記≫2/2
このクリス・コナーの6004番『sings lullabys of Birdland』~何種類もの版が見つかったのだが、それでは発売された型としては、いったい幾つの種類があるのか? ちょっと整理してみたい。
≪夢レコ≫前々回の「スタン・リーヴィー」からのジャケット裏の≪アドレス表記の違い≫考察により、発売の順番の大筋としては~
<センターNY>⇒<左NY,右CALIF>⇒<左NY、右NY>で間違いないかと思う。
その「ジャケットありき」を基本に考えてみると、発売順は以下のようになる。

1.「大口」<左NY,右CALIF>リーフ
2.「大口」<左NY,右CALIF>長方形ロゴ・十字マーク
3.「大口」<左NY,右NY>長方形ロゴ・十字マーク/Forster表記
4.「大口」<左NY,右NY>長方形ロゴ
5.「半口」<左NY,右NY>長方形ロゴ・十字マーク
6.「半口」<左NY,右NY>長方形ロゴ

*「長方形ロゴ」の十字マーク有りと無し・・・これについての新旧は、判りません。(また「長方形ロゴ」ラベルだけでの「十字マークの有無」の分布状況を調べる必要がある:笑) ただ・・・アドレス<左NY,右CALIF>ジャケットの盤に「十字マーク」が在ったことから見ると・・・「十字マーク有り」が先なのかな?と考えられます。

チャランさんのコメントに≪YoさんのはCALIFで制作、私とdenpouさんのはNYで制作されたのだと思います≫~とありました。
僕も『スタン・リーヴィー(BCP37)の同一タイトル2種発見の時点では、そのように「アドレス表記」と「製作(プレス)」を直結して考えていたのですが、どうやらそう簡単にはいかないのかな・・・と見方が変化してきました。
その「ジャケットのアドレス」と「センターラベル仕様」について、以下・・・僕の妄想です(笑)

まず、<センターNY>アドレスの時代には、まだ西海岸事務所がなかった~ということから、全て東海岸製作(プレス)ということかなと思います。問題は、西海岸事務所設立以降の「ジャケット製作の状況」と「プレス工場の状況」の関連です。つまり・・・ジャケットは、<センターNY>の次に、<左NY,右CALIF>ジャケットを、次に<左NY、右NY>を、それぞれ、1種類だけを製作していった(仮にそのジャケットが東海岸の製作だろうと西海岸製作だろうと、種類は1種類)ではないかなと・・・考えるのが自然かと思います。つまり・・・ジャケット表記とプレスは連動していない場合もある~という考えです。

「スタン・リーヴィー」記事で示したように、BCP37(Stan Levey)という一つのタイトルにおいて、<センターNY>と<左NY、右CALIF>の異なる2種が存在していたことから、それぞれのレコード(ジャケットと盤)が、東海岸と西海岸の2箇所で「製作されたのでは」と推測したわけですが、このBCP37以外には、その種のサンプルがあまり見つからない。そしてここに絶好のサンプルとして、クリス・コナーの6004番(sings lullbys of Birdland)が出現したわけです(笑) それについては上記のように、「発売された型」として、今のところ6種の版があったわけですが、それでは、どうして、あのクリス・コナー6004番は、6種(6回)も発売されたのか?・・・以下、また妄想です(笑)会社の運営という観点からみても、よほど「いっぱい売れた/まだまだ売れそう」というタイトルしか、追加プレス(発売)はされないはずである。あの頃、一般的なジャズのレコードというものが、全米中でどれくらい売れたものなのか・・・・判りませんが、仮に3000枚(初回)プレスとしたら、追加プレスは、せいぜい500~1000枚くらいではないでしょうか?  そうした「追加プレス」を決定した場合でも、市場での販売状況を見ながら、こまめに少しづつ、少しづつ(笑)という感じだったのでは・・・。逆に言えば・・・ほとんどのタイトルは、「初回プレス」だけだと考えられるわけです。
そうして初回プレスだけの場合で、わざわざ「東海岸プレス」と「西海岸プレス」と分けて製作するのかな・・・?(却ってコストが高く付く) というのが僕の疑問点なのです。
だから・・・西海岸事務所設立直後の一時期、BCP37やBCP6004など、一部のタイトルについては、両海岸で製作(プレス)したが、それ以降は、ほとんどのタイトルは「一箇所のプレス」だったのではないか。(それが東か西かは判らない) だから・・・(一箇所で一括製作してきたであろう)ジャケットのアドレスが<左NY、右CALIF>であっても、それはベツレヘム社としての規模をアピールする意味合いとしてのCALIF表記であって、だからそれがそのまま「西海岸製作(プレス)」とは限らない~と思う。
そして、その西海岸事務所を閉鎖した後の時期になると・・・誠実なるベツレヘム社は(笑)、ジャケット裏右下隅の[Hollywood, CALIF]表記を消して、そうすると・・・空いてしまったスペースがデザイン上、かっこ悪いというので(笑)・・・そこに[New York, NY] なる表記を入れた。それが・・・<左NY,右NY>になった・・・というストーリーです


*ベツレヘム・レーベルの変遷を判りにくくしている大きな要素として、2つのシリーズが複合・並行して発売されたことがあるかと思う。 そこで、自分の手持ちリストの番号並びとアドレス表記、に加えて「センターラベルがリーフ」情報も加えてみた。改めて、その番号並びとリーフの分布を俯瞰してみると、改めて確認できたことがある。

10インチ番時代が全て<センターNY>(1650 BROADWAY, NEW YORK 19表記を含む)そして<リーフラベル>だったことから、アドレスの変遷としては~
<センターNY>⇒<左NY、右CALIF>⇒<左NY、右NY>⇒<左NY、右OHIO>⇒<OHIO>の順。
そして盤センターラベルの変遷は~
<リーフ>⇒<長方形ロゴ>(長方形ロゴにも2種類あり~クリス・コナーの「大口」「小口」のラベル写真を参照のこと)の順で、間違いないと思う。
そして大筋として、以下のことが言えるかと思う。

ジャケット<センターNY>のものは、盤も<リーフラベル>である。
そして、BCP26番辺りから、ジャケットは<左NY、右CALIF>も現われるが、センターラベルは<リーフラベル>のものも多い。同様に6000番代の初期:6010番辺りまでのものにも、ジャケ<左NY、右CALIF>の<リーフラベル>が散見される。
おそらく・・・ジャケットは新規に制作された<左NY、右CALIF>を使っていったのだが、センターラベルは<リーフ>デザインの在庫が残っていてしばらくはそれを使っていた~そんな感じではないだろうか。
難しいのは、カタログの番号順と、<アドレス表記>や<センターラベル>の分布状況に「ズレ」があることだ DeluxeシリーズBCP1番~92番代と6000番代が並行して発売されていった状況で、まずは<センターNY>から<左NY、右CALF>へのアドレス表記移行(あるいは2種ジャケットの並行発売)が、いつ頃だったのか?・・・これがポイントだと思う。
以下、私見だが~
10インチ盤に続いて発売されてきた、Deluxeシリーズ:BCP1~92番の初期タイトルが、ほぼ<センターNY>であること。
BCP37番辺りから<左NY、右CALF>が現われていること。
その<左NY、右CALF>が6001番からは連続していること。
以上の点から、移行期は「BCP37番辺り」と推測している。
(実際に・・・BCP37番の『スタン・リーヴィー』には、<センターNY>と<左NY、CALIF>の2種が存在しているわけだから)

<スタン・リーヴィー>にも載せた「ベツレヘム12インチ盤手持ちリスト」をここに再掲するが、サンプル例を追加するとともに、より「版」の新・旧を探るために、<アドレス情報>の他にも以下の情報も追加した。

≪センターラベルについて~「リーフ」である場合は「リーフ」と表記した。この「リーフ」・・・同じ赤色のセンターラベルをlaurel(月桂樹)と呼ぶ場合もある。なお、表記ない場合のセンターラベルは、全て「長方形ロゴ」となる。
(長方形ロゴには「十字マーク」の有り/無しの2種類が存在するが、このリストではその有・無は表記しない)≫

≪盤が「フラット」である場合は、「フラット」と表記した。表記ない場合は、全てGG(グルーヴ・ガード)となる≫

◎印はYoさん、*印はdenpouさん、チャ印はチャランさん、無印がbassclefの手持ちから確認したもの。(このリストは、情報あれば、随時、追加記入していきます)

Bethlehem Deluxe series (12 inch LP)
 3  <左NY、右CALIF>リーフ フラット
 6  <左NY、右CALIF>
*7 <左NY、右NY>
  8  <左NY、右CALIF>
 9  <左NY、右CALIF>
  13 <左NY、右CALIF> (Ralph Sharon)
*13<センターNY>  リーフ フラット(K+JJ)
 14<センターNY 19> リーフ フラット
 15<センターNY 19> リーフ フラット
 17<センターNY>   リーフ フラット
 18<センターNY>   リーフ フラット
*19<センターNY>   リーフ フラット
20<センターNY>     リーフ フラット
*21<センターNY>  リーフ
  22<センターNY>   リーフ フラット
 24<センターNY>   リーフ フラット
◎25<センターNY>     リーフ  フラット 
 26<左NY、右CALIF>リーフ フラット
 27<センターNY>   リーフ フラット
 29<センターNY>   リーフ フラット
 30<センターNY>     リーフ フラット
 31<左NY、右CALIF>リーフ
 33<左NY、右CALIF>リーフ フラット
 34<センターNY>
*35<左NY、右CALIF> フラット
37<センターNY>リーフ フラット と 
   <左NY、右CALIF>リーフ の2種あり(Stan Levey)
  38<左NY、右CALIF>
 39<左NY、右CALIF>
 40<左NY、右CALIF> リーフ
 41<センターNY>   リーフ フラット
*42<左NY、右CALIF>リーフ フラット
*43<左NY、右CALIF>リーフ フラット
44<左NY、右CALIF>  リーフ フラット
 46<左NY、右CALIF>リーフ フラット
*47<左NY、右CALIF>リーフ フラット
  48<左NY、右CALIF>リーフ フラット
 50<左NY、右CALIF>リーフ
*52<左NY、右CALIF>リーフ
*53<左NY、右CALIF>リーフ フラット
*54<左NY、右CALIF>リーフ フラット
  55<左NY、右CALIF>リーフ フラット
 56<左NY、右CALIF>リーフ フラット
 58<左NY、右CALIF>リーフ フラット
*60<左NY、右CALIF>リーフ フラット
 61<左NY、右CALIF>リーフ フラット
*64<左NY、右CALIF>リーフ フラット
66<左NY、右CALIF>
*68<左NY、右CALIF>
◎69<左NY、右CALIF>
 71<左NY、右CALIF>
◎77<左NY、右NY>
 80<左NY、右NY>
*82<左NY、右NY>
*83<左NY、右NY>リーフ
*84<左NY、右NY>リーフ
*85<左NY、右NY>
*87<左NY、右NY>

Bethlehem 5000 series (12 inch LP)
5002 <左NY、右NY>
5006 <左NY、右NY>(Russ Garcia/Sounds in the night)

Bethlehem 6000 series (12 inch LP)
 6001<左NY、右CALIF>
◎6004<左NY、右CALIF> 「大口」リーフ(Yoさん) *写真
◎6004<左NY、右CALIF> 「大口」 十字ロゴ   
チャ6004<左NY、右NY> 「大口」(チャランさん) *写真 十字ロゴ 
[lullaby of birdland]作曲者が[Forster-Shearing]表記
*6004<左NY、右NY> 「大口」(denpouさん) *写真
*6004<左NY、右NY>  「半口」(denpouさん) 十字ロゴ*写真
  6004<左NY、右NY>   「半口」
◎6005<左NY、右CALIF>リーフ
 6006<左NY、右CALIF>
 6007<左NY、右CALIF>リーフ フラット 
 6008<左NY、右CALIF>リーフ
◎6010<左NY 、右CALIF>リーフ 
 6011<左NY、右CALIF>
*6014<左NY、右CALIF>
 6015<左NY、右CALIF>
 6016<左NY、右CALIF>
*6017<左NY、右CALIF>
*6018<左NY、右CALIF>
 6020<左NY、右NY>
◎6021<左NY、右NY>
 6025<左NY、右NY>
 6029<左NY、右NY>
 6030<左NY、右NY>
*6038<左NY、右NY>
◎6045<左NY、右NY>
 6049<左NY、右CALIF>
*6051<左NY、右CALIF>
*6055<左NY、右Ohio>
◎6061<左NY、右Ohio>
◎6064<OHIO>
*6063<OHIO>
 6069<OHIO>

EXLP-1(3LP 箱入り:アドレス表記なし)
EXLP-2<左NY、右CALIF>

そして・・・まだ大きな「謎」が残っている。それは、なぜ6000番代より発売の古いはずの、BCP1~92番Deluxeシリーズの中の若い番号~僕の手持ち盤では、3・6・8・9・13番が、なぜ<左NY、右CALIF>なのか? アドレス表記の変遷は、<センターNY>⇒<左NY、右CALIF>⇒<左NY、右NY>⇒<左NY、右OHIO>⇒<OHIO>のはずである。
ここがよく判らない。いや、もちろんこれらが、再発としての<左NY、右CALIF>であれば問題ない。つまり・・・これらの番号タイトルの<センターNY>1stの存在が確認できれば、<左NY、右CALIF>は後年発売された2ndである~と、誠にすっきりとした説明が付くのだから。
ところが、これが見つからない。ネットでいろいろチェックしてみても、今のところは見つかっていないのだ。どなたかお持ちであれば、ぜひ情報提供を(笑)
この謎については・・・例えば、こういうのはどうだろうか?
Deluxeシリーズが発売され始めた時、何らかの理由で、1~9番辺りが「欠番」として使われなかった。そして、Deluxeシリーズの30番辺りから、6000番代が並行して発売され始めた頃に~つまり<左NY、右CALIF>ジャケットに移行し始めた頃~発売されたいくつかのタイトルが、その「空き番号」であるBCP1~9番に充てがわれていった~というのが、今の僕の妄想なのだが(笑) 

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2013年12月31日 (火)

<ジャズ雑感 第34回> あるベツレヘム盤の謎

Bethlehem_nychollywood_002まったく・・・時の流れというものは速いもので、このブログ<夢見るレコード>も手付かずのまま、こうして1年が経ってしまったわけだが、毎年、暮れか明けの正月にはなんとか更新してきたので、ここはたとえ、年に1回であっても、何らかのレコード話題を残しておきたい気持ちは充分にある(笑)
少し前にちょっと面白いものが手に入ったので、そのレコー ドのことについて記してみたくなった。
ベツレヘム(bethlehem)というレーベルにも、もちろん継続的に興味を持っているのだが、なにせあまりモノが入らない。入らない~というのは、もちろん「わりといいものがうまいこと安価で」という意味だが(笑) たまたま Stan Levey/This Time the Drum's on Me(BCP-37)には縁があるようで、3年ほど前に1枚、そしてつい最近、もう1枚、入手できた。
≪このレコードのタイトル~よく見ないと、スタンダード曲の this time the dreams on me と間違える。アメリカ人の好きな単なる駄洒落(だじゃれ)のタイトル付けです(笑) ハロルド・アレン作の有名曲 this time the dreams on me は、このLPのどこにも入ってないので、スタンダード好きの方は要注意(笑)≫
このレコード・・・リーダーはドラムのスタン・リーヴィーだが、管楽器奏者が入っていて、それが、デクスター・ゴードン(ts)、フランク・ロソリーノ(tb)、コンテ・カンドリ(tp)の3人。リーヴィーとベースのルロイ・ヴィネガー、ピアノのルー・レヴィが造り出す快適な4ビートに乗って、この3人が吹きまくる。特にフランク・ロソリーノのソロ場面が多くて、ボントロ好きには楽しめるレコードだと思う。
そうして・・・好きなレコードは2枚あってもいい(笑) 僕はさっそくその2枚を並べてみた・・・どちらもまったく同じ~ドラムのケースが積み上げられた図柄(バート・ゴールドブラットのデザイン)である。やっぱり同じだなあ・・・と思ったけど、よく見ると・・・あれ? 何か違うぞ? そう・・・そのドラムケースのイラストの「背景の白地の色合い」が違うのだ。片方は・・・「はっきりとした白」、そしてもう片方は・・・「わずかにベージュがかった白」なのだ。その「背景白地の色合い」の他は、まったく違いはなかった・・・表ジャケットについては。
Bethlehem_nychollywood_005≪この写真だと判りにくいが、左側~「わずかにベージュがかった白」、右側~「はっきりとした白」という違いがある≫

僕はさっそく、ジャケットをひっくり返してみる・・・と、あっ、やっぱり違うじゃないか! 僕はこの小発見に心ときめいた(笑)
両者の違いは裏ジャケットの下5分の1辺りにあった。ベツレヘムというレーベルに詳しい方なら、もうお判りだと思うが、一番下の「アドレス(住所)」が違ったのだ。
まずは写真をご覧いただきたい。
Bethlehem_nychollywood_006 ≪左側~「表ジャケットがベージュ」、 右側~「表ジャケットが白」≫

「背景ベージュ」の方は~最下段の中央に<BETHLEHEM RECORDS, NEW YORK, N.Y.>だけで左右には何もなし。
⇒後述の≪追記≫では、便宜上、これを<センターNY>と呼びます。

「背景白」の方は~まず、最下段中央に太字ゴシックで
<BETHLEHEM RECORDS>とあり、加えてその左右の端(はし)に、
左端<NEW YORK, N.Y.>、そして右端が<HOLLYWOOD, CALIF.>となっている。⇒後述の≪追記≫では、便宜上、これを<左NY、右CALIF>と呼びます。

さらに・・・「自社レコード宣伝のタイトルとその番号」~これが大きく異なっていた。この違いは、他レーベルの場合でも、その版の新旧を判断する材料として有力なものだ。要は、新しい版の方が、宣伝に載せるタイトル番号も、宣伝であるが故に、より新しいものを載せる場合が多いのだから。
このStan Leveyの場合は以下。
「背景ベージュ」の方には~<OTHER GREAT JAZZ ARTISTS>として、BCP 1020(ミルト・ヒントン)と、BCP12 から BCP35までのタイトル(作品)が載っている。
「背景白地」の方には~<OTHER GREAT JAZZ ARTISTS ON BETHLEHEM>として、BCP 52 から BCP 64まで。そして BCP6001~6007 も併記してある。
これは・・・やはり明らかに「ベージュ」の方が、古いedition(版)のようだ。そして、この宣伝タイトルからだけでなく、会社としてのアドレス表記からも、「NEW YORK」だけのもの(ベージュ)が先で、HOLLYWOOD表記もあるもの(白地)が後・・・とみて間違いないかと思う。

≪追記 2014年1月5日≫~皆さんのコメントから類推すると~裏ジャケット下部の住所表記:2種類存在の意味するところは、
<センターNYのみ>=東海岸プレス と 
<左NY, (センターBETHLEHEM)、右CALIF>=西海岸プレス
であろうことが判ってきました。
ここまできたら調べてみるか・・・ということで、僕の手持ちのbethlehem盤、約50枚
(ちょっとだけ持っている10インチは除いて)をパタパタと捲(めく)ってみました(笑) 僕のレコード並べ順は基本的にミュージシャン別・楽器別なのだが、BETHLEHEMだけはわりと最近の興味対象ということもあり、ほとんどのものを並べてまとめてあったので、すぐに「パタパタ」ができたわけです。
思ったよりも枚数は集まってましたが、人気の高い大物タイトルはありません。ハービーマン、サム・モストやオーストラリアン・ジャズ・カルテットなど不人気タイトルばかりです(笑) それでも、番号順(=ほぼ発売順)に並べながら、ジャケットのアドレス表記違いなど見てみると・・・新たに判ってきたこと、さらに判らなくなってきたこと・・・いろいろ出てきました。
ひとつだけ先に結論めいたことを書くと~僕の手持ちにおいては<センターNY>盤が、少なかったということです。
手持ちの約50枚中、<センターNY>は14枚のみ。残り
はほとんどが<左NY、(センターBETHLEHEM)、右CALIF>盤でした。

以下、番号だけシリーズ別に並べてみます。

最も多い<左NY、(センターBETHLEHEM)、右CALIF>は、BETHLEHEMを省略して<左NY、右CALIF>と記入としました。
そして<センターNY>は、<センターNY>、あるいは<センターNY 19>(*後述)と記入しました。
そして8枚だけ<左NY、右NY>となっているものもありますが、それは僕のミスではありません(笑) この8枚は、いずれも各シリーズの後期番号に集中しているので・・・素朴に考えて、BCP 80番、BCP 6029番の少し前のタイトルの発売時期の辺りに『ハリウッドの西海岸事務所が閉鎖された』ということだと思う。ハリウッド事務所が存在しなくなったのに、HOLLYWOODと表記するわけにはいかないだろうから。
2点だけ<OHIO>記入ありますが、これはおそらくBETHLEHEM最後期時代の kingレーベル配給時期のものだと思われます。
(*番号の前は全て BCP~です)

Bethlehem Deluxe series (12 inch LP)
3  <左NY、右CALIF>
6  <左NY、右CALIF>
8  <左NY、右CALIF> 
9  <左NY、右CALIF>
13<左NY、右CALIF>
14<センターNY 19>
15<センターNY 19>
17<センターNY>
18<センターNY>
20<センターNY>
22<センターNY>
24<センターNY>
26<左NY、右CALIF>
27<センターNY>
29<センターNY>
30<センターNY>

31<左NY、右CALIF>
33<左NY、右CALIF>
34<センターNY>
37<センターNY> と <左NY、右CALIF>2種あり(Stan Levey)
38<左NY、右CALIF>
39<左NY、右CALIF>
40<左NY、右CALIF>
41<センターNY>
44<左NY、右CALIF>
46<左NY、右CALIF>
48<左NY、右CALIF>
50<左NY、右CALIF>
55<左NY、右CALIF>
56<左NY、右CALIF>
58<左NY、右CALIF>
61<左NY、右CALIF>
66<左NY、右CALIF>
71<左NY、右CALIF>
80<左NY、右NY>

Bethlehem 5000 series (12 inch LP)
5002 <左NY、右NY>
5006 <左NY、右NY>(Russ Garcia/Sounds in the night)

Bethlehem 6000 series (12 inch LP)
6001<左NY、右CALIF>
6004<左NY、右NY>Chris Connor/Sings Lullabys~)「半口」
6006<左NY、右CALIF>
6007<左NY、右CALIF>
6008<左NY、右CALIF>
6011<左NY、右CALIF>
6015<左NY、右CALIF>
6016<左NY、右CALIF>
6020<左NY、右NY>
6025<左NY、右NY>
6029<左NY、右NY>
6030<左NY、右NY>
6049<OHIO>

6069<OHIO>
bcp 1020<センターNY 19>(Milt Hinton) 
*このミルト・ヒントンは、片面5曲づつ収録の12インチ盤である。おそらく、10インチ盤 Milt Hinton(BCP1020)の再発かと思う。 10インチ盤の発売が先なのは間違いないと思いますが、その10インチ盤のジャケットがどんなデザインなのかは現物がないのでよく判りません。 僕の手持ちの12インチ盤(Milt Hinton)はジャケット右上の「長方形ロゴなし」で、その場所辺りに小文字で 「bethlehem bcp 1020」 と表記されている。そして、この12インチ盤(bcp1020)はセピア単色ジャケットですが、実は、12インチ盤がもう1種あって、それがBCP10のようです。同じ内容の12インチ盤がなぜ2種(bcp1020番とBCP10番)存在するのか・・・それも謎です。

僕の手持ちベツレヘム盤(12インチ)においては、こういう具合でした。この番号の並びとアドレス表記違いの状況・・・これらを見て、うんと素朴に考えればこうなる。
BCP 1~81のDeluxシリーズの初めの頃は、東海岸(NY)事務所だけなので<センターNY>表記ジャケのみ。そして・・・37番(スタン・リーヴィーthis time~)の辺り(時期)から、西海岸に事務所を設立~併せて西海岸プレス=<左NY、右CALIF>を始めた。だからその辺りのタイトルからは、従来からの<センターNY>と新規の<左NY、右CALIF>と2種類のジャケットが存在する・・・ということではないだろうか?
だがそこで・・・(少なくとも僕の手持ち盤において)少々、ややこしい問題がある。どのレーベルにおいても同様だが、『2ndプレス・再発もの』なのである。
この僕の手持ちの中であっても、もし、37番より以前のタイトルが全て<センターNY>であれば、ほぼ、『BCP1~(仮に)37番までは<センターNY>しか存在しない~と言えるのだが、現実にここに BCP の3、6、8、9、13 などの<左NY、右CALIF>があるじゃないか。ということは・・・これはやはり『2ndプレス・再発』と考えるしかない。仮にだが、「西海岸プレス」が37番(スタン・リーヴィー)頃からスタートしたとして、その後に、やはり、いくつかのタイトルについては(在庫が切れたもの~つまりよく売れたタイトル)「再発された」と考えていいだろう。
僕のリストの中で言えば、その「再発盤」が、3、6、8、9、13、26、31、33番などになるのかな・・・と考えられる。 その「再発」絡みの観点から、ちょっと面白いことに気付いた・・・それは表ジャケット「BETHLEHEM 長方形ロゴ」のことである。この長方形のBETHLEHEM ロゴは(ほとんどの場合、表ジャケットの右上に位置する)~僕の手持ちリストでは、BCP 50番から現われている。これまでの推察から、
≪より初期と考えられる<センターNY>盤には「BETHLEHEM長方形ロゴ」が無い≫ことから、やはり、初期の番号タイトルの初版には「長方形ロゴはなかった」と考えていいかと思う。

≪追記 1/6≫~今、メル・トーメの6016番、6020番などを追加記入した時に気付いたことがある。右上「BETHLEHEM 長方形ロゴ」は、(僕の手持ちの6000番台(現状14枚)には全て有ったのだ!  つまり・・・「長方形ロゴ」は、6000番台を開始した時に、外見上に変化を付けるために、新たにデザインされたのだろう・・・こんなことはベツレヘム好きには周知のことなんだろうな(笑) 
さてここで・・・6000番台には「長方形ロゴ」有り~としても、こうして並べてみると・・・
僕の手持ち盤<左NY、右CALIF>の内、BCPの 3、6、8、9、13、31、33番にはその「BETHLEHEM長方形ロゴ」が有るのだ。これは上述の見解とは矛盾するじゃないか・・・ただ、これも『再発』という観点から言えば・・・BCP 1~81番台のもので<左NY、右CALIF>表記で「長方形ロゴ」有りのものは・・・『西海岸事務所設立以降の再発プレス』と考えることはできそうだ。
もちろん、これだけのサンプル数では、どのタイトルが「再発」なのかは判らないし・・・もっと同一タイトルの表記違い・右上ロゴの有無などの実例が必要だと思う。 BETHLEHEM盤(レーベル)に興味ある方~ぜひお手持ちの盤のジャケットのウラ・オモテを凝視してみてください(笑) よろしければコメントにてお知らせを!
*<センターNY 19>~番号の若い方 14、15 と 別シリーズ番号の1020(ミルト・ヒントン) の3枚だけ・・・番地入りのアドレス表記だった。正確に記すと裏ジャケット下部に、こうある。
<BETHLEHEM RECORDS,1650 BROADWAY,NEW YORK 19,N.Y.> となっている。発売が古そうなこの3枚だけ、この<センターNY 19>ということは・・・これも素朴に考えて、初期の番号のものはこの表記だったということだろう。この<センターNY 19>がどの番号タイトルから、番地なしの<センターNY>に変ったのか・・・これも興味あるところである。
言い訳めいたことになるが、僕は「ベツレヘム・ブック」を持ってない。プレスティッジ・ブックとリヴァーサイド・ブックは、発売後、すぐに入手したが、ベツレヘム・ブックは・・・当時、東芝がCD復刻していて、その宣伝を兼ねて「ベツレヘムのホームページ」があったので、それを見たり保存したりしてれば間に合っていたので、買い渋っていたのだ(笑) それで、BCPの各シリーズの基本的な点数もうろ覚えのまま、この『ジャケットのアドレス表記違い』という難問に乗り出してしまって・・・これは厳しい状況だと認識はしている(笑) それで自分自身のためにも、ベツレヘムBCP各シリーズの点数をここに示しておきたい。
special thanks to Jazz Discography Projectさん!

Bethlehem Deluxe series (12 inch LP) BCP 1~92
Bethlehem 6000 series (12 inch LP)  BCP 6001~6073 
Bethlehem 5000 series (12 inch LP)  BCP 5001~5006
Bethlehem 1000 series (10 inch LP)  BCP 1001~1040
Bethlehem Extra series (12 inch LP)  EXLP 1~3

* 5000番台については、どのディスコグラフィも BCP 5001~5005と
なっているが、5006番として Russ Garcia/Sounds in the night が
手元にあるので、5006番として載せました。

≪追記 1/11≫
この記事の発端となった『スタン・リーヴィー』(BCP37)~これは『同一タイトルのジャケット・アドレス表記違い』というものだった。そのアドレス表記2種の内情を探るべく、皆さんから情報をいただいているのだが、denpouさんからのコメントやりとりの中から、またひとつ、興味深い「謎」が現われた。それは~『K+JJ』というベツレヘムレーベルを代表する有名盤についての「謎」であった。なんと・・・『K+JJ』 は
2種類~番号違い(BCP13とBCP6001)~が存在したのだ。
*そしてもうひとつ、このBCP13番について大きな謎がある(笑) この「BCP13番」という同じ番号に、もうひとつ、別のタイトルが存在しているのだ。それが・・・『Sue & Ralph Sharon/Mr.& Mrs.Jazz』である。こちらは僕の手持ちもdenpouさんの手持ちも<左NY、右CALIF>である。
*ちなみに、1/5追記で触れた『ミルト・ヒントン(12インチ盤の方)』の2種存在(bcp 1020 と BCP10。そして源(みなもと)であるはずの10インチ盤(BCP1020)も、同じような状況と言えそうだ。


まずは、『K+JJ』から~
(以下の写真~クリス・コナーまでの12点は、denpouさん提供)
special thanks to Mr.denpouさん!
Dsc_8032_5 Dsc_8033_6 Dsc_8034_3 
BCP13番~
<センターNY>
<長方形ロゴ・無し>
<リーフ・ラベル>
以上の点から、このBCP 13番の方が発売が先(1st)と思われる。

Dsc_8035_3 Dsc_8036_4 Dsc_8037_2   

そしてBCP 6001番~
<左NY、右CALIF>
<長方形ロゴ・有り>
<長方形ロゴ・ラベル>
後述の理由で、6001番の方が発売が後(2nd)と思われる。1st、2nd と言っても発売時期(1955年)にそれほどの差はないようだ。この6001番を発売したことで、「空き」が生じたBCP13番に『Mr.&Mrs.Jazz』を充てがった・・・というのが僕の妄想である(笑)
Bcp13_sue_ralph_sharon_3 Bcp13_sue_ralph_sharon_4  

ともあれ『K+JJ』については、実際に2種類が存在したのだ。録音は1955年1月。その発売もおそらく1955年だったはずだが、僕の手持ちリストでの<左NY、右CALIF>ジャケット存在の状況から類推すると・・・DeluxシリーズBCP1番~91番が先に発売されて、しばらくは<センターNY>のみ。そして30番辺りの時期に西海岸事務所が設立されて、それに合わせて<左NY、右CALIF>ジャケットに移行していった・・・その間、番号順とは多少、前後して、2種のジャケットが混在しているのではないか・・・と推測している。
「長方形ロゴ」の無し・有りについては~前提として、10インチ盤のセンターラベルが「リーフ」(木の葉の図案)であることから、リーフが先、長方形ロゴが後~で間違いないと思う。ただ、ジャケット右上の「長方形ロゴ」と、中身の盤のセンターラベル「長方形ロゴ」が完全に連動しているかどうか・・・はっきりしない。

≪追記 1/12≫~ここでもうひとつの2種ジャケット・・・クリス・コナーにも触れておこう。BCP6004番のクリス・コナー「Sings Lullabys~」には「大口開け」と「半口」という2種の異なるジャケットが存在していることは、わりと知られていて、僕も自分の手持ちが「半口」だったので、できれば「大口」も欲しいなあ・・・と思っていた。そうしたところへ、今回の記事のコメントやりとりにおいて、denpouさんが2種ともお持ちでその2種とも<左NY、右NY>であることが判った。さっそくその写真もここに載せておきたい。ジャケットの歌い手さんの口の開け方を見比べること(笑)以外の注目点は、裏ジャケットのレコード宣伝の番号分布である。denpouさんのメールから抜粋~≪「大口」ではBCP-64 BCP-6006までですが、「半口」ではBCP-79 BCP-6032の記載になっていますので、多分「大口」が先の発売で、後に「半口」に変更され様に思います≫とある。うん、なるほど!僕もまったく同感である。但し、なぜそのジャケット変更が断行されたか・・・それもまた謎である。
Bcp6004_6 Bcp6004_7 Bcp6004_8 Bcp6004_9   


(ここで話しは「スタン・リーヴィーに戻る:笑) そんな風なことを思って、改めて両者のジャケットカバーを見てみると・・・う~ん・・・やっぱり「ベージュ」の方が、より、しっくりくる、というか・・・美しさ・品格みたいなものが、より、滲み出ているように思えてくる。もっとも・・・後から入手した「ベージュ」の方が、ジャケットのコンディション自体もうんと良好なのだけど(笑)
いずれにしても、このジャケットの僅かな違いについては・・・両者を並べてみなければ、まったく気が付かなかったことだろう。
先に入手していたStan Leveyのジャケットのコンディションが良くなかった~という局面で、次に、盤はVG-だがジャケはVG+という Stan Levey を入手した~つまりジャケと盤の入れ替えを考えた・・・というせこい作戦だったわけだが(笑) ベツレヘムのジャケットに違いがある~なんてことは予期していなかったことだけに、今回のこの発見は自分でもちょっとした幸運のように思えるのだ(笑) 
ちなみに中身はどうなのか?というと・・・まず、センターラベル、及びディープグルーヴについての差異はまったくなかった。じゃあ「盤」も同じなのか?というと・・・これが違うようなのだ。
Bethlehem_nychollywood_008 この写真では判りにくいが~
「ベージュNew  York」の方が「フラットディスク」(外周のところが盛り上がっていない) のようで、
「白地Hollywood」の方は、これが微妙なのだがほんのわずかな「グルーヴガード」に見えるのだ。少なくともまったくのフラットではない・・・ように見える。
そしてもうひとつ・・・肝心の音質の違い~いや、別段このことを「肝心」と言わなくてもいいのだが(笑)~についてはどうなのか?
僕は何度も聴き比べてはみたのだが・・・ほとんど同じ音質のようで、両者の間に決定的な違いは僕には聴き取れなかった。でもしかし・・・まず「ベージュNew  York」のB面2曲目(stanley steamer)を聴いた後に、「白地Hollywood」で同じ曲を聴くと~全体の音量がわずかに上がり(たぶん、カッティングレベルの違い) そして・・・ベースの音量が若干だが大きくなっているように聴こえた。だから、一聴(イッチョウ)、「白地Hollywood」の方が迫力があっていい音質に聴こえるのだが、もう一度、「ベージュNew  York」を聴いてみると・・・同じ場面のテナーのバックに鳴るドラマー:スタン・リーヴィのシンバル音の鳴り方が、よりクリアに切れのあるようにも聴こえるのだ。もちろん決定的な差ではない・・・だがしかし、テナー・ベース・ドラムなどの鳴り方の切れ・鮮度感において、「ベージュNew  York」の方がやや優勢かな・・・そんな風に僕には聴こえた。
もっともこの辺についてはあまり信憑性はない。というのは、つまり・・・1st(初版)である~と推測した「ベージュNew  York」の方が、音質面でもより鮮度が高いはずだ、そうであってほしい・・・という僕の無意識的な、いや、充分に意識的な想いが僕の脳内に渦巻いており、冷静な判断などできなくなっているはずだから(笑) 
この分では、僕は<夢見るレコード>を<妄想するレコード>とでも改題せねばなるまい(笑)

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2012年9月17日 (月)

<ジャズ雑感 第33回> 初期チェットベイカーの未発表音源のこと

たまにはCDのことも(笑)~見逃せない未発表音源もあるじゃないか。


相変わらずLPレコードばっかり聴いているのだが、久しぶりにCDを入手した。
Chet_1955_1954_012
Chet Baker/The Complete 1955 Holland Concerts(lonehill)

この数年、僕はCDをほとんど買ってない。試みに購入記録リストをチェックしてみると・・・
2012年は2枚(今回分)、2011年に1枚、2010年に3枚、2009年は2枚、2008年に2枚、2007年は4枚、2006年3枚、2005年12枚、2004年13枚、2003年28枚、2002年24枚・・・とこんな感じになる。これより以前の2000年前後くらいまではCDも年に30~40点は入手していたと思うが、月に10~15枚くらいは入手しているLPレコードに対して、CDは「ほんのたまに」状態である。
それでは僕はどんな場合にCDを買っているのか・・・自分の購入リストをチェックしていて、ほぼ以下のパターンしかないことが判った。

1.新発見の未発表音源もので興味ミュージシャンのもの (どうしても聴いてみたい!)
2.持ってないもので、うんと安いもの (もちろんLPレコードで欲しいけどオリジナル盤はどうせバカ高い。日本盤も案外、見つからない。そんな時、たまたま入ったお店で他に買うものがなかったりすると、この安いCDでガマンしておこうかな・・・となる。僕の場合、圧倒的に bluenoteレーベルものに多い(笑) bluenoteは一頃、日本盤LPでさえうんと高価だったので)
この理由だけが引っ掛かるわけで、1のような音源がそうそう見つかるものでもないし、2のように持ってないものでうんと安いものがそうそうあるわけでもない。だから・・・僕の場合、CDを入手する機会はうんと少ないのだ(笑)

さて・・・チェット・ベイカー。僕はチェットをかなり好きなのだが、どうやら彼の真のマニアというわけではないようだ。というのは・・・僕は彼の後期の作品をほとんど持っていないし、聴いてないからだ。僕がレコードを集め、そして聴いているのは、やはり彼の初期ものである。
チェットについては、この<夢レコ>で触れたこともあるが、僕はとにかく彼の「音色」に惹かれている。その音色から放たれる・・・妖気、香気みたいな感じにどうしようもなく惹かれるのだ。
思うに・・・音や音色のことというのは理屈じゃないのだ。音や音色というものは、何らかの理屈を持って分析した後に「判った」とか「凄い」と判断するようなものではなく、それがスピーカーから流れてきてそれを聴いた瞬間に、肌で「感じる」ものだと思う。
そう、正に「肌合い」の問題なのだ。それが自分の感性にピタッとくるのかこないのか・・・そういう種類のものだと思う。
そして僕の場合は、初期チェットの音色・フレーズに「肌が合う」・・・ということなのかと認識している。
そんな初期チェットのPacificの10インチ盤には、これはもうどうしようもなく魅力を感じている。それはもう変わらない。(笑)
ああ、またチェットの話しになってしまった。チェットの「音」については≪夢レコ~≪チェット・ベイカーのPacific盤≫をご覧ください。

7インチでも10インチでも12インチでも何でもいい(笑) とにかくレコード盤というものを大好きな僕だが、それだから「CDは聴かない」とまでは偏屈ではない(笑) そう・・・今回はCDの話しなのだ(笑) 
ちょっと前に、チェット絡みの検索で、たまたまこれを見つけた。この「たまたま」というところがちょいと哀しい(笑) つまり・・・僕は普段から「未発表音源のCD」をくまなくチェックしているわけでもなく、興味の中心は常に過去の遺産(オリジナル盤)に向かっているわけで・・・でもそれも過ぎると「いい音源」を知らないまま」になってしまう。たまには「未発表音源の新発売CD」の情報もチェックしないとダメだぞ・・・という自戒を込めて、今回はこのCDを紹介してみたい。

Chet Baker with Dick Twardzik/The Complete 1955 Holland Concerts(lonehill) 2008年発売らしい?

えっ!1955年のチェット!しかもピアノにディック・ツアージックが入っている。これは聴いてみたいな・・・というわけである。このCDの音源は「1955年のオランダでのコンサート」ということで、クレジットによれば、1955年9月17日(5曲:アムステルダム)、9月18日(5曲:シュヴェニンゲン)、9月21日(2曲:ドイツ)でのライブ音源となっている。「チェット・イン・パリ」という仏Barcley発売のものが1955年10月のパリでの正式録音なので、その前にオランダにツアーしたのだろう。

≪下写真~このパンナム飛行機のタラップ場面・・・あのPacific盤に使われた写真と同じ場面での別ショットのようだ。この後、あの女性モデルが登場したのだろう(笑)≫
Chet_1955_1954_020_2
基本的に「未発表ライブ音源」というものには、音質面での過剰な期待をしてはならない(笑) でもこのオランダ音源は正式コンサートを、ちゃんとマイク立てて録ったようで、、ピアノやベースもしっかり聞えるし、時折、チェットのトランペットが若干オフ気味になるが、全体的にそれほど悪くはない。2曲だけ入っているドイツ音源の方は・・・オマケという感じで明らかに音質が良くない。
Chet_1955_1954_018内容は・・・う~ん、やっぱり・・・最高とは言えないが(笑) ブックレットの写真が素晴らしいし、1955年のチェット・ベイカーのコンサートがどんな様子だったのか・・・それがとても興味深くて、僕はこのCD:73分を一気に聴き通すことができた。コンサートはチェットのMCから始まるのだが、これがちょいと面白い。というのは、チェットが「メンバーの訂正」をアナウンスするからである。
≪演奏を始める前にちょっと訂正したいことがあるのですが・・・プログラムでは、ピアノ~ラス・フリーマンとなってるけど、今日のピアノはディック・ツアージックです。それとベースも、ボブ・カーターではなくて、ジミー・ボンドです≫ みたいなことを言うのである。どちらのコンサートでも、同じように訂正アナウンスしているので、直前にメンバーが変わったことについて、ちょっとした拘りもあったのかもしれない。

演奏の方は~
tommyhawk を元気に始めて 次に indian summer をゆったりと・・・という進行だ。そして「歌入り」も、but not for me、my funny valentine(途中切れ)や someone to watch over meを混ぜており、チェットにも案外にサービス精神があるのだな・・・と但し・・・この日のチェットはどうやら、「歌」にはあまり気乗りしていなかったようだ。というのは、someone~では、メロディを変に崩し過ぎて進行がずれかけたり、また、but not for meでは、ベースソロの後にチェットが歌で入るのだが、それが明らかに遅れたタイミングで入ってしまうので、ベースやピアノが困っている様子が判る(笑) 

Chet_1955_1954_019 それから、チェットは歌以外にもスローバラードとしてindian summer の他にも、I'm glad there is you や imagination を演っていて、チェットはやっぱり自分の「いい部分」を充分に判っていて、こうしたコンサートでも、好きなバラード曲を選んでいたのだ。
このCDには収録されてないが、ブックレット解説には、当時の英メロディーメイカー誌のコンサート評が引用されていて、それによると、my old  flame もバラード曲としてレパートリーになっていたようだ。
しかし、チェットの深く沈みこんでいくようなバラードは・・・あの音色の微妙なニュアンスの味わいに醍醐味があるので、残念ながら広いコンサート会場では、チェット独自のトランペットの音色の存在感がもうひとつ生きてこないように思う。

そんなこんなで通して聴いてみると・・・このCDは、どうやらピアノのディック・ツアージックにも焦点を当てているのだな・・・とも思えてくる。そういえば、CDのタイトルもちゃんと「~with Dick Twardzik」となっているじゃないか。
このツアージックのピアノというのがとても変わっていて、普通にジャズっぽく巧い~といタイプではないのだが、なんとも形容しがたい「寂しさ」がピアノの響きの中から溢れてくる・・・そんな感じの個性のピアノ弾きかと思う。
スローテンポでの someone to watch over me~チェットの歌の後の間奏はツアージックが弾くのだが・・・これが何とも凄い。
いわゆる、ジャズの語法ではなくて・・・スローなテンポを、またあえてそのスローな気だるさを噛み締めていくような・・・しかし、このスタンダードソングのセンチメンタルで儚(はかな)げな感覚を、ツアージック流に表している・・・というそんな感じなのだ。なんだかクラシックのピアノコンチェルトの独奏部分を聴いているようでもあるのだが、そんなことはどうでもいい。音楽家が言葉では表せない「何か」を音で表現しようとする・・・というマインドにおいては、ジャズもクラシックもないはずなのだ。今、この音楽を聴いているその時、ディック・ツアージックというピアノ弾きの得がたい個性を味わえば、それでいいのだと思う。
でも、このピアノ・・・嫌いな人は嫌いだろうなあ(笑)
*ツアージックについては<夢レコ>2005年6月22日記事~<チェット・ベイカー・イン・パリ>でも触れております。ご覧ください。
ちなみに、ディック・ツアージックの唯一のリーダーアルバムとしては、Pacificの12インチ盤~A面:ツアージック、B面:ラス・フリーマン の「Trio」という作品がある。そちらのタイトルでは、Richard Twardzik と表記されている(Richardの愛称がDick)


さて、ここにもう1枚、チェット・ベイカーのライブ音源CDがある。それは~
Chet Baker/Boston 1954(uptown) というもので、ボストンのジャズクラブstoryvilleでの1954年ライブのFMラジオ放送音源である。
Chet_1955_1954_002 1955年オランダでのコンサート録音も貴重だったが、こちらは何と言っても1954年のチェット・ベイカーである。なにしろ1952~1954年くらいのチェットときたら、マリガンとのコンビ・自己のカルテットで、Pacificレーベルに次々と傑作を吹き込んでいた時期で、どの作品でも、この頃のチェットの音色は・・・絶品なのである。
加えてこの音源・・・「ジャズクラブでのライブ」なのだ。ジャズはやっぱり・・・狭いところが絶対にいい(笑) 
そしてstoryvillieというクラブはライブ演奏を定例的にラジオ放送していたとのことで、だから音質も本当に素晴らしい。
言うことなしではないか(笑)

このCDには、1954年3月16日、1954年3月23日、1954年10月19日の3セットで57分収録されている。10月のセットだけは2曲10分しか入っていないが、3月のセットはどちらもも「MC~3曲~(MC)~2曲+closingテーマ1曲」という構成になっていて、どちらも約22~24分に収まっている。どうやらこのクラブでの演奏1セットは、おそらくラジオの放送時間に合わせての20分強だったようだ。
Chet_1955_1954_005 こちらのピアノはラス・フリーマン。チェットはもちろんのこと、この頃のフリーマンも素晴らしい。抑えの効いたタッチで弾き込む中音域中心の明るくなりすぎないフレーズが心地よい。そういえば、フリーマン自作曲で the wind という秀逸なバラード曲があるのだが(columbia盤with stringsに収録) 嬉しいことに、この「Boston 1954」CDでは2曲目にその the wind がされているのだ。
チェットはこの曲の紹介MCで、わざわざ≪この曲は最近、Columbiaレーベルで新作の12インチレコードのために録音したばかりなんだ。そのレコードは来週の発売だよ≫なんて宣伝している(笑) きっとチェットも大好きな曲だったんだろう。

もし初期チェットのライブ音源から何か1枚をお勧めするとしたら・・・僕は迷うことなく、このCD~Boston 1954(uptown)を選ぶ(1992年発売)

ちなみに、1のパターンで僕が入手したCDをいくつか挙げてみると~

モンク&コルトレーン/ファイブスポットのライブ(東芝)
*音質は最悪だが、1957年の燃えるようなコルトレーンを感じられる。

モンク&コルトレーン/カーネギーホールのライブ (mosaic)
*2005年発売。こちらは音質良好。モンクもコルトレーンも凄い。

ソニー・クラーク/Oakland 1955(uptown) 
*音質がチェットのuptownに比べると悪い。初期のS.クラークもいい。

ハロルド・ランド/At The Cellar 1958」(lonehill) 
*スコット・ラファロのベース音が(録音上)小さくて遠いのが残念。

ヴィクター・フェルドマン/ Latinsville(contemporary/fantasy) 
*別テイク多数。S.ラファロのベース、やっぱり最高!

すぐに思いつくのはこんなところだ。これらはもちろん、僕:bassclefの興味・関心に引っ掛かったCDであり、だからもちろん「これを聴け」と言ってるわけではない・・・当たり前か(笑) 
ジャズ好きのみなさんそれぞれ気になるミュージシャンが居るわけで、なんにしても・・・CDにも聴いておきたいものがいくつもある・・・ということだけは間違いない・・・・だからまだまだジャズは止められないぞ(笑)

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2011年12月31日 (土)

<ジャズ回想 第25回>ベン・ウエブスターの絶妙ライブ盤

  ヴィンテージではないけどオリジナル盤とも言えるじゃないか(笑)

この<夢見るレコード>・・・このところちっとも夢を見てない(笑) もちろんジャズへの愛着が薄れたわけでもなく、相も変らずレコードを買い、レコードを聴いている。休みの午前中はそのレコード音楽に浸れる貴重な時間で、たいていは入手仕立てのものから聴き始め、その内容が「ワオ~ッ」だと両面を聴き、また「がっくり」の時は片面だけにして、今度は愛着盤に手を延ばしたり・・・そんな風に次に何を聴こうかと考えたりするのもなかなか楽しい。そうこうしてると・・・もう昼だ。
お昼を食べてからも2~3枚は聴く。だけどお昼過ぎのこの時間は・・・眠くなるのである(笑)これがもう実に眠い。3枚目を聴く辺りになると、もう充分に眠気を意識している。だからこれは寝てしまうな・・・と自覚すると、タイマーを20分後くらいにセットして、例えばジョージ・シアリングを掛ける。そうして、目論見どおりに僕は眠ってしまう(笑)
休みの日に好きなレコードを聴いてのんびりと眠りに落ちる・・・これもなかなか幸せなことじゃないか。そうして目が覚めるともう夕方だ。それでも晩飯までには充分な時間がある。そこで、またレコード聴きである。僕の場合はこの時間帯・・・けっこう乗る。眠気の増したお昼過ぎのあの気だるい感じがさっぱりと抜けて「さあ、また聴くぞ」という気分になるのだ。そこで、大編成のものをわりと大きめな音量で聴いたりする。そうだな・・・マリガンのconcert jazz band(Verve)なんかは実にいい。
そんな具合に、僕はとにかくレコードを聴きたい。だから・・・なかなかブログにまで手が廻らないのだ(笑)
しかしながら、2011年もあっという間に終わろうとしているこの大晦日。毎年、大晦日にはrecooyajiさんとレコード聴きをしてきたのだが、今年は昨日・今日とは朝からレコード棚の再編成をしていてこれは予想どおり難航した(笑)苦闘の末、床置きになっていたレコード達をある程度までは収めるところまではメドがついたので、recooyajiさんとの例会ができなかった代わりに、久々にこの<夢レコ>をアップしようと思い立った。ちゃんとした構想もないので、短めのものになりそうです。

さて・・・僕はもちろん古いオリジナル盤が好きなわけだが、その一方で「オリジナル盤、何するものぞ」という反発気分も無いわけではない(笑) それはつまり・・・録音時にリアルタイムでは発売されなくて、しかし後年に発見・発掘されて発売された音源(別セッション・別テイクなど)というものがあり、それらについては、いわゆる「当時のオリジナル盤」は存在しないわけで、強いて言えば後年になって発売された初出自のものを「新発見オリジナル」とでも呼ぶしかない。そしてそういう「新発見もの」にも、侮れないものがたくさんあるぞ、という気分なのである。

だいぶ前の拙ブログ(ワリー・ハイダー録音)で、ビル・エヴァンスのTime Remembered(milestone)を紹介したことがある。それは、エヴァンスのライブ盤~At Shellyman's の未発表音源の世界初発売というもので、僕としては、要はその「演奏はもちろん、録音の音質が素晴らしい」ということを言いたかったのだ。年季の入ったジャズ好きほど、別テイクや別セッションなど未発表音源というだけで、その価値を認めないという頑固さもあるかと思う。つまり発表しなかったのにはそれなりの理由があるだろうし 実際、同じ曲の別テイクをいくつも並べられても、よほどの興味ミュージシャンのものでない限り、それほど素晴らしいものとは言えないことも多いのだ。でもそんな頑固さのために、後年発売の未発表音源盤を聴き逃すようなことがあるとすれば・・・それは悲しいことだよ、とも思うようになってきたのだ。そうした例外的に素晴らしいと思えるレコードをちょっと紹介したい。

≪写真下~1989年発売のOJC盤:6曲収録)

Dscn2829_2 Ben Webster ~At The Renaissance(contemporary)というものだ。
11月の中旬頃だったか・・・久々に旧友のsige君、yosi君とレコード3人聴きの会をすることになった。
こういう集まりでは、わりと不思議な偶然・・・それも嬉しい偶然が起こったりするのだが、今回はちょいと驚いた。集まりの2~3日前になると、僕は幾つかのレコードを思い描いておくのだが、その中に古い盤ではなく、わりと近年発売(1989年)のベン・ウエブスターのレコードもあった。これは1960年のライブ録音音源だが当時に発売された形跡は無い。だからあまり紹介されたこともないし、いわゆる「定評のある名盤」とは違うまったく地味なレコードである。僕はこのレコードを1年ほど前だったか、うんと安価で入手したのだが、聴いてみてすぐ気に入ってしまったのだ。
さて、朝からの大雨の土曜日、3人が揃って・・・yosi君がバッグから5~6枚のレコードを取り出してみると・・・ちゃんとこのレコード~Ben Webster/At The Renaissance(contemporary) がそこにあるじゃないか!

「あれ、なんで?」とつぶやく僕。そこでこちらが用意していたその同じレコードを見せる・・・「おおっ」とyosi君が応える。
こんな地味盤が2枚、打ち揃って並ぶとは(笑) これは嬉しいじゃないか! yosi君はベースのレッド・ミッチェル目当てにこの盤が目に留まったとのことだが、この安っぽいカバーデザインに負けずに入手したことは素晴らしい選球眼だ。
≪写真下~1989年発売のフランス盤らしい。左下のロゴに注目≫

4benwebsterattherenaissanc404776このレコード・・・ジャケットが冴えない。これではベン・ウエブスターがまるでミイラ男じゃないか(笑)
しかし、演奏は味わいのあるもので、そして録音もいいのである。ライブ録音だが、各楽器の芯のある音色と響き具合が自然で、素晴らしい臨場感を味わえる録音なのである。録音エンジニアは、howard holzerなる人物。
一般的に言って「西海岸の録音はいい音」ということはあるかと思う。まあその「いい音」を言葉で定義はしづらいものだが、この場合の「いい音」は・・・私見では「すっきりした誇張の少ない自然な楽器の音色」という感じだと思っている。それは録音マイクの違いもあるような気がする。雰囲気としては、東海岸のダイナミックマイクと西海岸のコンデンサーマイクという違い方があるような気がする。

そして並んだこの2枚・・・contemporaryレーベルからの近年発売という点ではもちろん同じだったが、僕の手持ちは1989年発売のOJCステレオ盤(phil de lancieのリマスター)
yosi君のは19861985年モノラル盤だったのである(リマスターは別人=Gary Hobishなる人物と判明)
だから、このレコードの初回発売は19861985年モノラル盤ということになるわけだが、19861985年版のステレオ盤も存在するのだろうか?Dscn2832
実は、そんな違いも後から判ったことであって、最初、yosi君手持ちの盤を掛けた時・・・僕は「あれ?レッドミッチェルのベース音がいつもと違うぞ」という感じがして、それは、レッド・ミッチェルのベース音がやけに太く大きく聴こえたからである。「大きく~」というのは、このレコードを何度も聴いて僕が感じていたレッドミッチェルのベース音の鳴り方が他楽器とのバランスにおいて「いつもより大きく聴こえた」という意味である。
もちろんミッチェルはベースの真の名手で常にズズ~ンといい鳴りを出しているはずで、大きく太く鳴ることはいいことなのだが、僕はステレオ盤でのバランスに慣れてしまっていて、そこに若干の違和感を覚えた。ジミー・ロウルズのピアノ音色も、モノラル盤だと明らかに強め・厚めのタッチに聴こえて、それは何となく、僕が感じているジミー・ロウルズとは微妙に違うような感じを受けた。
その辺りで「あれ?これ、ステレオ盤じゃないね。僕のは確かステレオ盤だったと思うけど・・・」ということになり、お互いのジャケット裏を精査したところ、ようやくその違いに気づいた・・・というわけなのである。
まあこの辺のことは、いつも言うように「好みの問題」で、僕の場合、ステレオ録音の軽やかさを嫌いではないので、演奏の場でリアルなステレオ録音をされた音源であれば、なるべくステレオ盤で聴きたいと思うわけである。
そして、ベース音や各楽器の音をとにかく大きく太い音で聴きたいという方は、やはりモノラル盤を好むことになるのであろう。

ウエブスターはスローバラードが好きなようで、スローなテンポでいいメロディを実にゆったりと延ばしながらその音色に濃淡を付けていくような吹き方をする。基本的にはアルトのジョニーホッジスをそのままテナーに移したような感じなのだが、その「ねちっこさ」がこの1960年頃になると以前より薄めになってきたようで、そしてその辺りの「でもねちっこい感じ」が僕にはちょうどいい按配なのだ。
そのバラード~georgia on my mind と stardustが実にいい。ウエブスターの「ゆったり」に、バックの伴奏陣が適度に変化を付けて演奏全体がダレることなく進んでいく。ピアノのジミー・ロウルズ、ギターのジム・ホール、ドラムにフランク・バトラー、そしてベースにレッド・ミッチェル! 灰汁の強い個性派を主役に据え、真の名手たちで脇を固めたという感じで、ベースとドラムが造る流れの中でポツポツと入るロウルズのピアノも実に味わい深い。
そして、stardustでは、レッドミッチェルの「アルコ弾きソロ」をたっぷりと聴ける。ミッチェルはもちろんピチカット(指で弾く)も巧いが、アルコ(弓で弾く)もこんなに巧かったのか! 左手のガシッとした押さえが効いているから音程がぶれない。チェンバースのけっこう乱暴なアルコ奏法とは、だいぶ違うぞ(笑) そんな名手がアルコで弾く、弦と胴鳴りの気持ちいい音が素直な録音で捉えられており、何度聴いても飽きない。このstardustは、実に味わい深い演奏だと思う。

001_2そうだ・・・もうひとつ、印象深い stardust があったぞ。フランク・ロソリーノの Free for All(specialty)だ。 ロソリーノがトロンボーン一丁で小気味よく歌い上げる名演だ。そういえば・・・こちらも未発表音源の後年発売盤である(録音は1958年12月)
米specialtyが1986年に発売したモノラル盤裏解説にこうある(当時のプロデューサー:Dave Axelrod 談として)~
≪フランクと私は何週間も掛けてメンバーや曲目を考えて素晴らしい出来上がりになったのに、どういう訳だか発売されなかったので、2人とも、そりゃがっくりきたよ≫
そのメンバーは ロソリーノ(tb)、ハロルド・ランド(ts)、ヴィクター・フェルドマン(p)、リロイ・ヴィネガー(b)、スタン・レヴィ(ds)・・・これは本当にいい人選じゃないか。002
実はこのレコードは以前の<夢レコ:トロンボーンのいいバラード>で紹介したことがあるが、「後年発売の未発表音源盤」の逸品としても推薦したい。機会あればぜひ聴いてみてください。
ちなみにこのレコード~僕の手持ちでは、米specialtyがモノラル盤、日本センチュリーはなぜかステレオ盤(1991年発売)である。この日本盤は、自然に聴けるのでリアルなステレオ録音だと思う。コーティングされた日本盤ジャケットの出来映えはなかなか素晴らしいものだ。

侮れない内容の未発表盤・・・まだまだ見つかりそうな気配である。
ちなみに、Ben Webster/At The Renaissance(contemporary) のことについては、yosi君がこの3人聴き会の後、すぐにブログ記事にしてくれました。http://blogs.yahoo.co.jp/izumibun/35643651.html
そちらもぜひご覧下さい。

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2011年6月 4日 (土)

<ジャズ回想 第24回>また、いいレコードをたくさん聴いた。

久々にYoさん宅・・・あっという間の7時間。

 

毎年、初夏の頃になるとYoさん宅に集まるのだが、今回はホストのYoさん、PaPaさん、denpouさん、recooyajiさん、konkenさん、bassclefの6人が、青い顔したウーレイ(スピーカー)の前に陣取った。皆、声こそ出さないが「ぐへへへ」という顔をしている(笑) さあ・・・お楽しみの始まりだ。

 

この日、若干の逡巡(しゅんじゅん)の後、Yoさんが選んだのは、ドルフィーのLive In Europe vol.1だった。ドルフィーから・・・というのはこうした音聴き回ではちょっと異例かもしれない。演奏会でもレコード聴きでも、たいてい最初の曲は、ちょい軽めというかリラックスした感じの曲・演奏から始めることが多いように思う。だから・・・初っ端(しょっぱな)からドルフィというのは、なんというか・・・若干、ハードかもしれない(笑) だけどこれには訳がある。
実は少し前に「この頃はドルフィーを聴いている」というYoさんからのメールがあって、じゃあ次回の音聴きで会は、「ぜひドルフィのバスクラ(バスクラリネット)のソロ~God Bless the Childを」とお願いしていたのだ。Pr7304_j_2
E.Dolphy/Live in Europe vol.1(prestige) 2nd紺ラベル
god bless the child 
この演奏・・・ドルフィのまったくの独り吹きである。このバスクラ独奏でのGod Bless the Child・・・僕は高校の時、FM放送から録音したカセットを聴きまくって、そうして大好きになったのだ。
僕はジャズという音楽を中学3年の頃から好きになり、そのうち聴くだけでは飽き足らなくなり、大学のジャズ研でウッドベースを触るようになった。ベースという楽器を選んだのはたぶん偶然だが、僕は「音」に対する感性の根っこがわりと単純らしく、音楽を聴く際、概(おおむ)ね、高い方の音より低い方の音を好むようだ。そんな単純脳の僕が苦手なのは・・・まず、ハードロックのエレキギターの音。あれがダメである。そしてロックのヴォーカルはたいてい甲高い声で叫ぶわけだから・・・これもけっこう辛(つら)い。
ジャズヴォーカルでも高めの声を張り上げるタイプ(例えば~ジュディガーランド)よりも、低めで落ち着いた声質(例えば~アン・バートン)を好む。
ジャズ聴きにおいての「管楽器の音色」についての好みで言えば・・・まずサックスが好きだ。そしてアルトよりテナーだ。
低い方がいいのなら、バリトンサックスが最も好きなはずなのだが、そうでもない(笑) バリサクの音も嫌いではないが、たまに聴くといいなあというくらいで、ハードでゴリゴリなタイプ(例えばペッパー・アダムス)よりも、ライトな音色タイプ(例えばジェリー・マリガン)の方が好みである。
金管のトランペットも、もちろん嫌いではないが、トランペットにおいても、強いアタックで高音域のフレーズを吹きまくるタイプより、ゆったりした音色で中音域のフレーズを吹く方が好みだ。
そうだ・・・トロンボーンも実にいい音色だ。時にはトランペット的なアタックも効くし、何よりもスタンダード曲をゆったりと歌う感じにはピッタリの音色じゃないか。ジャズ聴きも長いがこの15年ほどか・・・ボントロをますます好きになってきている。
クラリネットも・・・いい。実はクラリネットなんて・・・と長いこと思っていたのだが、アート・ペッパーの「家路」を聴いて、あの独特な表現力を醸し出すこの楽器の魅力に目覚めたのだ。あまり音源がないようだが、レスターヤングのクラリネットにも同じような魅力を覚える。ただクラリネットは、奏者によってかなり音色のクセが違い~これはクラリネットに限らないが~わりと甲高い感じの音でパラパラと吹くベニー・グッドマンはほとんど聴かない。好んで聴くのは、ゆったり音色のバディ・デフランコくらいか。ソニー・クラーク入りのバディ・デフランコの音色は、しっとりと暖かく、実にいい。うん、クラリネットまできたな。
そこで・・・・・バス・クラリネットなのである。
これが・・・いい! バスクラというのは、立ち姿が長くてその形だけでも絵になる楽器なのだが、もちろん「音」の方もチャーミングなのだ。くごもったように暗くて、しかし仄(ほの)かに暖かくもあるような、あの不思議な音色。そしてサックスに負けないくらいの音量と音圧感。実は最近、このバスクラという楽器に触る機会があって、ちょっと吹かせてもらったのだが・・・低い方を鳴らした時、体に伝わってくる楽器の胴鳴り振動に僕は痺れた。
そしてバスクラと言えば・・・これはもう、ドルフィーなのだ!Pr7304_l

ドルフィーは、この曲の原曲メロディを、おそらくは、わざと出してこない。始めのうち・・・ドルフィーは、なにやら音をまさぐるように、バスクラの低音域を使ったアルペジオっぽい音階をしつこく続けてくる。そうしてある時~たぶん曲のサビの部分か・・・ここでいよいよ、高い音を吹く。これが・・・とても印象的で、それまでの低い音域でのファットな音圧感豊かな音色とは違う質感の、ちょっと歪んだような、ノドをキュ~ッと絞ったような、そんな悲痛な音色なのだ。でも・・・それが効く。バスクラ独奏においての静と動。抽象と具象という感じがしないでもない。まあそんな解釈はどうでもいい。とにかく・・・このバスクラ独奏は、純粋に「ドルフィーという人間の音の世界」なのだ。僕らはその「音」に、ただ浸(ひた)ればいい。

 

Yoさんのシステムはバランスがいい。だから7時間、聴いていても音に疲れはしない。音の説明はまったく難しいことだが、あえてシンプルに言えば~
まず低音のエネルギー感が凄い。そのエネルギー感とは・・・量感だけでなくその演奏においての奏者が意図して発したであろう強弱の表現が~ピアニシモ(弱く)とフォルティシモ(強く)の楽器の鳴り具合。とりわけ「ここぞっ!」と強く吹いた・弾いた時に、ぐぐ~っとそこに現れるエネルギー・音圧感・存在感の体現~凄いのだ。これを「音楽的なリアリティ」と表現してもいいかもしれない。
以前から、このウーレイで聴かせてもらうロックのバスドラの音の強弱のニュアンスとそのリアリティ(存在感)に驚いてはいた。ウッドベースも同様である。そして・・・バスクラのような、なんというか低音域に溜めたような音圧感が発生する楽器にも、このウーレイは素晴らしい鳴り方・・・いや、表現をしてくれた。ドルフィー好きが聴いたら・・・これはもう「う~ん・・・」と唸るしかないだろう(笑)
「低音」の話しになったので、ここで、低音全般に拘るYoさんの低音観みたいなものを紹介してみたい。メールやりとりの中で、オーディオに疎い僕のために、Yoさんが判りやすく説明してくれたものだ。
*Yoさんの了承を得てここに転載します。
≪私は「音楽のファンダメンタルは中音だけど、音のファンダメンタルは低音だ」と考えています。私の言う中音とは音楽帯域の意味で楽譜で表される音の範囲のつもりです。SPのようなレンジの狭い(中音だけの音)でも音楽の感動を味わえますから音楽にとって大事なのは中音だという事は当然です。
しかしオーディオで再生音の音作りをするとき最も大事なのは低音と考えています。特に私のように等身大のエネルギー感を出そうとする場合に低音という音のの土台がしっかりしていないと楽器の実在感や本当の臨場感は得られません。
低音が大事な理由のもう一つは最も調整が難しいのが低音で、それが中音以上に影響する事です。
部屋の影響を最も受けやすいのも低音ですし、低音が原因する共振、共鳴の倍音成分が中音以上にかぶったり音全体に悪影響が出てしまったりもします。中、高音のうるさいところなどが結局低音が原因していたという経験は何度かあります≫

 

さて・・・会の最初のうちは、皆さん、柄にもなく(笑)けっこう遠慮しているので、手持ちのレコードをなかなか出さない。だから、ホストのYoさんがいくつかレコードを選んでいく。

 

Zoot Sims/Zoot Sims In Paris(UA サックス吹きラベル)
Uaj_14013_j
UAレーベルへの興味からモノラルとステレオの聴き比べもしてみた~Uajs_15013

 

ステレオではやや左からズート。わずかにエコーがかかったようなふっくらしたテナーの音色か。でもこのエコーは、明らかにこのライブ会場のの自然な響きエコーだから気にならない。 むしろ、いかにも「ライブ」という感じがよく出ていて、そんな音色がリラックスしたズートの芸風ともピタリと合致して、これはもう実にいい雰囲気なのだ。Yoさんも「ズートで一番好きかもしれない」とのこと。Uaj_14013_l_2この「サックス吹きラベル」は、ステレオとモノラルで質感に大きな違いがなく、どちらもいい音だった。「UAはステレオがいい」と思ってはいるがもちろん全てのタイトルにそれが当てはまるわけではないようだ。

 

 

 

Frank Strozier, B.Little, Geroge Coleman~/Down Home Reuion(UA)
Uas_5029_j ステレオ盤(青ラベル)
Uas_5029_l_4   うん、これはいいっ!最初の音が出た瞬間に僕はうれしくなってしまう。ソロの先陣を切るのはストロジャーのアルト。これが実に太っい音色なのだ。ストロジャーというと、vee jayレーベルのfantasticでよく知られているアルト吹きだと思う。
僕はこの人を、ジャズ聴きの初期からマッコイ・タイナーのtoday & tommorrow(impulse というレコードで耳にしていて、その後は、MJT+3というグループや jazzlandの作品を聴いてきたが・・・このUA盤を耳にすると・・・ストロジャーのアルトって、こんなに艶やかでしかも逞(たくま)しい音色だったのか!と驚くほど太い音色と、そしてもちろん気合の入ったいいソロじゃないか。素晴らしい!
それにしても、中央からアルトが押し出してくる、このリアルな音圧感はどうだ。こういう、いい録音の、もちろんいい演奏のレコードを掛けると・・・Yoさんのウーレイ(スピーカー)も、実に気持ちよさそうに鳴っている。
続くソロは、ブッカー・リトル。中央からやや左から鳴る。独特なちょっとクールな響きで、しかし、これも独特な内に秘めたような情熱・情感を感じさせるトランペットだ。リトルはさっきもドルフィのFive Spot vol.2で聴いたが、私見では、フレーズがどうのこうの言う前にあの「深く鳴る音色」を味わうべきタイプのペット吹きだと思う。音色そのものに説得力があるという感じだ。
  Dscn2827_2そして、ベースがジョージ・ジョイナー・・・これもミンガス張りの強いアタックで弦を引っ張り倒したような、ザクザクしたようなベースの音色が魅力的だ。やっぱり・・・United Artistsの青ラベル(ステレオ盤)はいいのだ(笑)
ちなみに僕の手持ち盤は、日本キングから発売された1500円盤(ステレオ盤)だけど、各楽器の音圧感・鮮度感も案外、悪くないので・・・この日本盤でガマンしようではないか(笑)

 

Prlp_7116_j_2 Four Altos(prestige) NYCラベル
Prjp_7116_l_2 「盤質は悪けど・・・」と前置きして、Yoさんが、PrestigeのNYCラベル盤を出してきた。音はさすがの鮮度感だが、それよりも、Yoさん、こんな風にみんなで聴くときに「楽しめる」レコードも好きなのだ。
このアルト4人・・・誰か、判る?ということで、さあ、皆、聴き始める(笑)
「これ、誰?」「う~ん・・・判らん」「聴いたことないアルトだね」
誰も~だと断言できない(笑) 誰もが、フィル・ウッズだけは判るが、残りの3人がなあ・・・だから・・・ソロが2人目、3人目と進むと、「あっ、これは、フィル・ウッズ?ウッズだね」という具合なのだ。だけどウッズとクイルもよく似ているぞ(笑)
僕の認識では・・・ウッズと似ているけど、もうちょっとだけ荒っぽいかな・・?というのが、たぶんジーン・クイルなのだ。
となると・・・残りの2人が、サヒブ・シハブとハル・スタインということになる。サヒブ・シハブというと、たいていはバリトンサックス吹きとしての認識だろうか。そのシハブのアルト? それにほとんど録音のないハル・スタインのアルトを「おっ、ハルだ!」とすぐに判るようなジャズ好きなんているのだろうか・・・いや、日本に5人くらいは居るんだろうな。スタインに興味ある方は、はとりあえず、あのprogressive盤(もちろん日本盤でも)を聴くしかないだろう。それにしても、この「4アルト」・・・ソロの繋ぎ部分で4人が間髪を入れずに次ぎの奏者が吹き始めるので、うっかりすると「あれ?今、替わった?いや、まだか?」てな具合で、下手したら、ソロ奏者が替わっても気が付かないこともあるかもしれない。こういう時、モノラル録音はちょっと辛い(笑) 
てなわけで・・・アイラ・ギトラー氏の裏解説に頼りましょう!というのが皆の結論だった(笑) ボブ・ワインストック氏も・・・まったく罪作りなレコードをこさえてくれたものだ。

 

さて、ここで、denpouさんが取り出してきたのは・・・
Original_lp3_002 Rita Rice/Cool Voice of ~ vol.1(オランダphillips) 

 

Original_lp3_001このレコード・・・CDを持ってはいたが、やはりLPが欲しくなったその頃、ヴォーカル好きのkonkenさんが同じタイトルの米columbia盤を2枚持っていたので、その内の1枚を交換してもらったのである。
そのジャケ違いの米columbia盤もなかなか人気があったようだが、リタ・ライスがオランダ出身でA面6曲がオランダ録音だから、やはりこの蘭Phillipsがオリジナルだろう。
konkenさんからのリクエストで、 I cried for you を聴く。このオランダ盤・・・音が良かった。
欧州盤独特のちょっとツンと澄ましたような感じの音質で、アメリカの黒人ハードバップのバンドがもう少し洗練された巧い白人バンドのようにも聞こえてくる。もちろん歌伴(ヴォーカルの伴奏)だから・・・ブレイキーもいつもより静かめに叩いたんだろうが、ブレイキーのシンバルがいつもより抑え目に聞こえる(笑) 
Dscn2826 同じシステムで聴き比べたわけではないので、あまり意味はないかもしれないが、米columbia盤(僕の手持ちは白プロモラベル)とはだいぶ音の質感が違うようでもある。このレコードA面6曲はブレイキーのジャズ・メッセンジャーズのB面6曲については、Recorded in the Unitied Statesと表記されているので、B面については、米Columbia盤もオリジナル・・・と言えなくもない。この米Columbia盤のThe Cool Voice を聴いてみると・・・Phillips盤に比べ、ベースの音が太めに大きく、そしてドラムスの音がザラついたような感じに聞こえて・・・やっぱりアメリカの黒人ジャズの音がするのである。いや、そういう気がする(笑)
その辺りの音の印象のことをヴォーカル好きのkonkenさんに尋ねてみると、彼はこんなコメントをくれた。
≪先入観があるのかもしれませんが、基本的にはアメリカ人は米盤、ヨーロッパ人は本国盤がいいと思います。リタ・ライスも全部聴いていませんが、バックがメッセンジャーズなんで米盤の方が好みかな?というカンジですが、歌はオランダ盤の方がいいかな? だから反対の地元バックのA面はオランダ盤の方がいいかもしれません。
聴き慣れてるせいかもしれませんがジャズには米盤の方が親近感があります。1980年代前後にECMが一時ブームになったことありましたが、ちょっと醒めたような質感はジャズ自体が醒めたような感じがして自分のジャズを聴こうという気持ちまで醒めさせたような印象をいまだにに引きずってるようです。ジャズは音程がズレていようと録音にクセがあろうと熱いモノが伝わった方に軍配を挙げたいです≫
もともとこのレコードのプロデュース意図は・・・たぶん、ヨーロッパの女性歌手がバリバリのハードバップバンドに挑戦する~みたいなことだったようにも推測できる。そういう気持ちもあって聴くと、ライスは意図的にねっとりとした歌いまわしをしているような感じもする。これまであまり意識して聴いたことのないリタ・ライスが、やはりとても巧い歌い手だということがよく判る1枚であった。もう1曲・・・と聴いたバラードの my one & only love は、ホレス・シルヴァー名義のstyling of Silver収録のmy one & only loveと同じアレンジだった。

denpouさんはEP盤もお好きなようだ。
Dscn0204Dscn0202metronomeのEP盤~S.Getzのストックホルム録音の内、4曲入り(school boy 、I have only eyes for youなど)録音自体がかなり古いけど、さすがに録音したその国のEP盤・・・独特の生々しさのある音だが、素晴らしい録音とは言えない。これらゲッツの音源はroostの10インチ盤、12インチ盤も聴いたが、どれも音質はイマイチなようだ。


PaPaさん、満を持してこの1枚を~
Charlie Parker/~(clef)MGC-157 10inch盤 「鍵穴のパーカー」だ!Cimg7398
垂涎(すいえん)盤が出た。クレフの10インチ盤・・・このcover artはもちろんストーン・マーチンだ。マーチンのイラストは・・・細部を見ても面白いがそれよりパッと見た全体の構図・色合い~その印象度が圧倒的に凄い。ビビッとくる。わりと多めに赤色系を使うマーチンだが、この10インチ盤のcoverは、全体に黒っぽい色合いの中に、くくっと効く明るい色を持ってくる・・・そんな色使いが絶妙だ。、それにしても、なぜ主役のアルト吹きを狭い鍵穴から覗かなくてはならないのか(笑)Cimg7400_2
confirmation~1953年録音だから、パーカーとしては後期の録音ではあるが、ドラムにマックス・ローチ、ピアノにアル・ヘイグという当時の新鋭をバックにしたワンホーンで、I remeber you、now's the time など、どの曲も、ぐぐっ と気合の入ったセッションだ。
この10インチ盤・・・アルトの音色がものすごく艶やかで、生々しい音圧感もあり、そしてやっぱり・・・パーカーのアルトは「重さ」を感じられる素晴らしい音質だった。録音そのものがしっかりしているようで、古い録音を聴き込んで出来上がってしまっているかもしれない「パーカーの音」のイメージが覆されるような、パーカーの音だった。これが50年も前のレコード盤の音とは・・・まったくレコードというものは凄いものである(笑)
そういえばいつものPaPaさんは、ちょいマイナーなサックス吹きやヨーロッパの管奏者をセレクトしてくるのだが、今回はあえて「ジャズ大物盤」を選んできてくれたようだ。パーカーの後は~
Cimg7404_2 A.Pepper/Meets the Rhythm Section(contemporary)モノ
M.Davis/kind Of Blue モノラル と Yoさん~Kind Of Blue ステレオ(プロモ白ラベル)
という流れになった。
どれも真に名盤で、音も演奏も素晴らしくて、「いやあ・・・やっぱりジャズはいいなあ」という幸せな気持ちになってしまった(笑)

 

Cimg7402 kind Of Blueは、同じCS六つ目ラベルでもステレオ盤の人気が異常に高いようだが、このモノラル盤も相当によかった。CBSレーベルは品質が安定していて、モノラルでもステレオでも音の質感がそれほど大きく変ってしまう・・・というようなことも案外少ないと思う。
そしてこのKind Of Blueのモノラル盤は~
Cimg7414 特に3人の管楽器の音量・音圧感が大きく聞こえて迫力がある。だからコルトレーン、キャノンボール、マイルスを強烈にたっぷり味わいたい方はモノラル盤の方が好みになるのかな、という気がする。この後、Yoさん手持ちのステレオ盤(プロモ:白ラベル)も掛けてみると・・・定位としては、コルトレーンとエヴァンスが左側に、キャノンボールがちょ右に、と変ったり、全体的に管楽器がちょっとおとなし目に聞こえたり、ベースが少し薄みになったりもしたが・・・僕はやはり(笑)Kind Of Blue については、ステレオ盤のややライトな(軽い)感じのサウンドの方が好みのようだ。

konkenさんは渋い1枚を出してきた~
Al Grey/The Last Of The Big Plungers(argo) ステレオ盤
Grey_1特にargoレーベルの音がいい、という認識はなかったのだが、このステレオ盤、 やけに音がいい。録音エンジニアはMalcolm Chisholmと記されている。 konkenさんはだいぶ前からトロンボーン好きのようで、こういうボントロの渋い盤までディグしているのだ。Argo_gold_4アル・グレイはベイシー楽団のボントロ吹きで「プランジャー」というのは、ゴムでできたお椀みたいなもので(ちょうどトイレが詰まった時の掃除道具みたいな)それをトロンボーンの音の出る開口部に当てたり外したりして、ボントロの音色を「ぅわわわ~・ムワワワ~」と変化させるのである。1920年代~1940年代のビッグバンド時代には、この「プランジャー奏法」がはやったらしく、だからこのLPのタイトルは、そういうプランジャー使いの最後の名手・・・というような意味合いだと思う。  
bluish greyという曲・・・出だしからCherles Fowlkesのバリサクが効いている。そして太っいベース音の主はエディ・ジョーンズだ。このベース弾きはとにかく音がでかそう。Grey_2ビッグバンドのスイング感を下からどっしりと支える感じのベース弾きだ。こういう地味だが太い音色と大音量でバンド全体を支えるタイプのベース弾きもやっぱりいいもんだなあ・・・という気持ちになる。というのも、Yoさんのシステムでこういう録音のいいレコードを聴くと、ウッドベースの存在感が本当に凄いので、いろんなベース弾きのベースラインはもちろん、音量・音圧感、そして音色の微妙な違い様までしっかりと感じられるので、そういうジャズにおける「低音サウンド」を浴びることは、ベース好きとしては、これはもう極楽なのである。

それにしても・・・いい演奏の詰まったいい録音のレコードをいい音で聴く・・・というのは、なんと気持ちのいいことだろうか。
ジャズはいよいよ・・・止められない(笑)

 

*ジャケット写真提供~
E.Dolphy/Live in Europe vol.1(prestige) 紺ラベル
Zoot Sims/Zoot Sims In Paris(UA) サックス吹きラベル
Frank Strozier, B.Little, G.Coleman~/Down Home Reuion(UA)青ラベル
P.Woods、G.Quil、S.Shihab~/Foru Altos(prestige)NYCラベル
はYoさん提供。

Rita Rice/Cool Voice of ~ vol.1(オランダphillips)
Stan Getz/metronomeのEP盤
はdenpouさん提供。

Charlie Parker/~(clef)MGC-157 10inch盤
A.Pepper/Meets the Rhythm Section(contemporary)
M.Davis/kind Of Blue モノラル盤
はPaPaさん提供。

Al Grey/The Last Of The Big Plungers(argo) ステレオ盤
はkonkenさん提供。

 

皆さん、ありがとうございました。bassclef


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