音楽

2006年10月28日 (土)

<ジャズ回想 第8回>ニーノニーノさんのオフ会 大阪・神戸秋の陣。

10月7日、西から東から14人が藤井寺Yoさん宅に集まった。

<当日かけたレコードのジャケット写真を、Yoさんが送ってくれましたので、BOSEさん提供分も含めて、いくつか追加しました。ジャケットのみの写真がYoさん提供分です。マクレエのこと、少し追加しました。10/31>

福岡のオリジナル盤通販専門店ニーノニーノの新納さん主催の「杜の会」~会とは言っても特に主義主張があるわけでもなく、もちろん何かの誓約書を書かされるわけでもない(笑) ただ単に「音楽を好きな人間が集まっていい音楽をいい音で聴こうではないか」という集いなのだが~2006年の信州:白馬で、新納さんがこう言った。「次は・・・ぜひ九州と本州の方が一緒に集まりたい。そうとなれば・・・集結の地は大阪しかない。Yoさん、ぜひお願いします!」・・・一同、どよめく「おおっ・・・」
春から夏へ・・・その間、大阪(藤井寺)の会場となるYoさんがいろいろと考えを巡らせ、初日にYoさん宅、翌日はメリケンさん宅、その後、神戸のジャズ喫茶Just In Timeさん~という段取りである。お盆の頃には、日程が10月7日(土)・8日(日)と決まった。その頃の「杜」の書き込みから、この「杜の会」が自然と「大阪・神戸:秋の陣」と呼ばれるようになっていった。秋の陣~西から東から大阪に集結する落ち武者たち・・・いや、諸国の武将たち、といった趣ではないか(笑)

そうして先日、ついに「杜の会」が催された。九州からは、DUKEさん(新納さん)、音の匠さん、CROWさんご夫妻、BOSEさん、PSYさん、M54さんと7人。(PSYさんとM54さんは、7日の夜(宴会)からの根性の参加!)
本州からは、群馬のRoxanさん、静岡のパラゴンさん、マントケヌーマーさんと彼女。愛知からのD35さん、konkenさん、それにbassclefの計7人。
皆さん、それぞれに苦心惨憺のスケジュール調整をされての決死的参加なのである(笑)

愛知組の3人は、私:bassclefが朝6時に豊橋を出発。岡崎(konkenさん)~東海市(D35さん)と合流。よしっ、3人で一路、藤井寺へ!と
気合こめて出発。運転はkonkenさん。亀山辺りまで少し混んだが、その後は快調。走るクルマなので飛ばす、飛ばす。10:30頃にYoさん宅に到着した。
笑顔で迎えてくれた奥様に「また来てしまいましたあ(笑)」などと訳の判らん挨拶しながら、2Fへ上がっていくと・・・なにやら聴いたことのある歌声が・・・おっ、これは? 部屋に入ると、Yoさんとパラゴンさんが嬉しそうな笑顔で迎えてくれる。
「やあやあ」・・・と6月以来の再会だ。パラゴンさんは、根性の夜行バスで早朝の大阪入り。8時前には着いていたそうで、もうすっかりこの部屋に馴染んでいる(笑)
パラゴンさんといえば・・・ヴォーカルだ。テーブルの上にはヴォーカル盤ばかり並んでおり、すでにいろいろと聴いてきたようだ。Out_of_the_blue
そうして一番上にあったのが、キャロル・スローンのOut Of The Blue(columbia:ステレオ盤。これはYoさんの手持ち盤) だ。 そうかっ!このレコードだったのか、と嬉しくなる。このレコード、僕の手持ちはモノラル盤(カナダ盤)だったので、ステレオ盤を一度、聴いてみたかったのだ。カナダ盤でもけっこういい音だと思っていたが・・・やっぱりこのレコードは録音も相当にいいようで、ステレオ盤もふくゆかないい音で鳴っていた。どうにもステレオ盤も欲しくなってしまうなあ(笑)
<右上の写真が、Yoさん提供のステレオ盤。下の写真は、僕のカナダ盤。maroon/siliverラベルの「6つ目」も悪くない:笑>_006_2

Spring Is Here(ロブスター) they can't take that love away from me
偶然にもキャロル・スローンの現代盤~78年録音のspring is here(ロブスター)を持ってきていたので、1曲(they can't take that away from me)かけてもらう。
ムラーツのベースが絶妙な巧さを見せる1曲だ。録音はやはりいい。しかし・・・ヴォーカルにはうるさい御仁が揃っている。「やっぱりスローンも年をとってるねえ」とkonkenさん。皆、うんうんと同意。唄はもちろん抜群に巧いのだが先ほどの1961年ころのスローンには、なんとも言いがたい「可愛い色気」があった。あの魅力には抗しがたい(笑)

パラゴンさんが「ペギー・リーはブラック・コーヒーだけじゃないよ~」と言いつつ取り出した10インチ盤。
Peggy Lee/Songs from Walt Disney's Lady and the Tramp(decca)から la la ru 
~ペギーリーがかわいらしい感じで唄っている。パラゴンさん、「こういうペギー・リーもいいんだよな~」と目を細める(笑)

After_glow_2  さて、何曲か聴きながらテーブルの上のお宝盤を見ると・・・エラのmellow mood(decca)の2種~[黒ラベル]と[文字が金色の黒ラベル]~の横に気になる盤が・・・。マクレエのafter glow(decca)だ。<写真:Yoさん提供>   ピアノのレイ・ブライアントが入っているので有名だ。オリジナルは、ジャケットがエンボス(ザラザラになっているやつ)だったとは知らなかった。エンボスだとテカテカしなくて、なぜか品良く感じる(笑)僕はマクレエはそれほど愛聴しているわけではないが、このレコードにはちょっと思い出があり、内容も好きなのだ。all my lifeを リクエストして聴かせてもらう。乾いたマクレエの声が気持ちいい。ブライアントのピアノも輝くようなタッチだ。こりゃあ録音も相当にいいぞ・・・。

ここらで男性ヴォーカルも、ということで・・・僕はメル・トーメを1枚持ってきたので、it's a blue world(bethlehem)から isn't it romantic?を。
ストリングス入りがややコーニーではあるが、やはりトーメは巧い。ベツレヘムの沈んだような音も、実にいい感じでしっとりと鳴る。
このごろ僕は、こういう沈み込んだような音も好きになってきたようだ。

次に、D35さんがヘンリー・マンシーニのpink panther(RCA Victor:dynagroove)を取り出した。
すると隣に座っているkonkenさんも自分のバッグから「同じレコード」を見せてニンマリ(笑)7_001_2   
D35さんは、いつもこのレコードを音を聴く時の軸にしているようだ。
それにしても、このdynagroove盤・・・いい録音なのは判っているつもりだったが・・・出だしから本当に凄い音だ!
冒頭、左の方からピアノのかなり高い方の音「コーン」という乾いた音に続いて、あの「泥棒が抜き足、差し足」みたいなチャーミングなテーマが始まる。
徐々にブラス群が押し出してくる~マンシーニの工夫を凝らしたサウンド群~それら全てが左右にいい具合に拡がった音場に満ちている。
フォルテの場面では、実に気持ちのいい音圧感が味わえる。7_002
それから、もちろんテナーのプラスジョンソン。間に入るこのテナーソロが抜群にいいのだ。あのユーモラスなテーマを充分に生かした、いやらしいような表現力!(笑) だけど実にコクのある色気のある味わい深いソロ・・・だということがよく判る、いや判ってしまう・・・そういう深みのあるテナーの音だった。こりゃあテナー好きの人にはたまらんだろうなあ。(そりゃ、オレか:笑) だから・・・実はこのピンク・パンサー、僕も持っているのです(笑)
<写真~Victor盤は、やはりステレオ盤が素晴らしい。だから、LPM~ではなく、LSP~が欲しい>

お昼の後に、いよいよ秋の杜:本編が始まった。
まず、Dukeさんの「レーベル別でのVan Gelder録音もの」から。
ヴァンゲルダーの録音というと、まずbluenote、prestigeをイメージしてしまうのだが、savoy、verveにもたくさんあるし、ちょっと意外だったのは、riversideやatlanticでの仕事もあったことだ。
各レーベルからいろいろな盤がかかったが、その違いっぷりには、実に興味深いものがあった。
ここでは・・・録音うんぬんというより、そのジャズの中身に参ってしまったTony Willimas/Spring のことを少し。
~トニーのブラシが凄い!とてつもなく速いテンポをブラシで紡ぎだしている。その快速ビートにピーコックが鋭いピチカットで絡んでくる。
この2人だけでも充分にスリリングなジャズになっているのだが、そこへ第1のテナーが右チャンネルから現れるフレーズを細かく刻み、それを少しづつ変化させていく。素晴らしく切味鋭いテナーのソロだ。ショーターのようでもあり・・・いや、ショーターにしてはトーンのエッジが鋭すぎる・・・こちらがサム・リヴァースか?とも思う。ベースソロの後、左寄りから第2のテナーが現れる。今度は、先ほどと対象的に「ロングトーン」を多用して、その音色を変化させつつ、徐々に徐々にフリーキーな音色で鋭いソロになっていく。この第2のテナー奏者~出だしのロングトーンで、「あ・・・やっぱりこっちがショーターか?」とも思うのだが・・・僕が思っているショーターの音色よりも、もうちょっと荒々しくて堅い音色のように聞こえる。そんな具合に、このレコードの2人のテナーには、どちらがどちらか?と迷うことしきりなのだが・・・音色自体の「端正さ」(リヴァースの方が、堅くて荒いトーン」という認識をしているので)と、それから、フレーズの展開の仕方、そのアイディアのおもしろさ・・・そんなことから「いつになく本気を出して鋭いプレイをしたショーター」のように思えくるのだが・・・サム・リヴァースという人自体をほとんど聴いていないこともあり・・・あまり自信がない(笑) 
いずれにしても・・・このextras の演奏の凝縮度は怖ろしく高い。トニーのブラシだけ聴いてみてもいい。ピーコックの切味鋭い高速4ビートだけ聴いてみても凄い。しかしその2人に絡むテナー奏者のソロとそのテナーに触発されて変化していくリズム隊2人の応用力というか、その変幻自在な流れに「素晴らしい音楽の一瞬」みたいなものを感じた。エンディングもしゃれている。最後、独りになったトニーがブラシとハイハットだけでしばしの間、リズムを刻む・・・そしてその急速テンポを半分に減速するような素振りを見せつつ・・・いきなり「ッポン!」というショットで終わるのだ。ブラシに始まりブラシに終わる・・・実に潔い(笑)これまでちゃんと聴いたことのないレコードだったが、この1曲は凄い!とようやく判ったようである。
_005_9  <写真の盤は、manhattan capitol ~通称DMM bluenoteだ。ちょっと哀しい(笑)>

この後は、皆さんの持ち寄り盤から1曲づつアトランダムにいこう、ということになった。
それぞれの方のかけたレコードの紹介と、その時の印象を思いつくままにに書こうと思う。

Yoさん~(以下、コーンからホウズまでの5点の写真はYoさん提供)

Cohn_on_the_saxophoneAl Cohn/渦巻きのコーン・・・Cohn On The Saxphone(dawn)~地味だけど実にいいレコードだ。いつもは柔らかい音色のアル・コーンだが、アドリブの中で、高音の方にいくと、時に鋭い音を発する。その時の音のかすれ方が・・・ちょっとレスターヤングに似ているのかもしれない。最後にかかったレスターを聴いた時、そんなことを感じた。

Birth_of_a_band_2Quincy Jones/A Birth Of thd Band(mercury) gypsy~このレコードは、Yoさんの愛聴盤である。

Al & Zoot/You an' Me (mercury)  you 'n me
~このレコード、録音はたしかに素晴らしい。ベースの音も輪郭鮮やかで音像も太い。Youn_meドラムのシンバルなど、最近の高品質録音のような雰囲気だ。隣にいたBOSEさんとそんな感想を言い合う。僕は、しかし・・・このズートやコーンが気持ちよくスイングする60年ころのジャズの「感じ」に、この「近代録音」の音質は、イマイチそぐわない・・・そんな印象を受ける。ドラムやベースがあまりに軽くスムースに流れるようなところもあって、ちょっとレコード全体に「渋み」が欠けているような感じがするのだ。だから、音のよさが却ってこのジャズを「軽く」している・・・そんなようなあまり根拠のないことを思ってしまう僕であった。

Jazz_sahib_1Sahib Shihab/Jazz Sahib(savoy) blu-a-round(写真:左)
~このレコードもそういえばヴァン・ゲルダー録音であった。僕はこのレコードは・・・ピアノがビル・エヴァンス(B面のみ)ということもあり
CBSソニー盤を入手してよく聴いたものだ。久しぶりに聴く初期エヴァンスのピアノは実にクールな装いで、やはりいいのである。
フィル・ウッズはこの盤でも大活躍だ。先ほどのクインシー・ジョーンズでのgypsyもそうだったが、ウッズという人は、与えられたスポットでいつも覇気のあるソロを取り、きちんとまとめてくる。本当に巧いアルトである。いい音で聴くいいアルトは快感でもある。それにしても後でよく考えてみると、宴会の後のアフターアワーズでもかかったWarm Woodsも含めて・・・この日は「フィル・ウッズ特集」でもあったようだ(笑)For_real

Hampton Hawes/For Real(contemporary) hip ~このコンテンポラリー盤は、何度聴いても本当に最高だ。ラファロのぐッと引き締まったベースが右チャンネルから「ビートの権化」となって押し寄せてくる。バトラーのドラムの乾いたスネア音やらホウズのピアノの、あの全く粘らない跳ねるように小気味のいい独特なタッチ。それからもちろんハロルド・ランドのテナー。この人のテナー・・・テーマの合わせとかが抜群に巧いので、その演奏自体もソフトだと思われているかもしれないが・・・意外に硬質な鋭い音色である。そんな具合に、全ての楽器の音が~ミュージシャンが気迫を持って発したであろう楽器の音が~等身大の実在感を持って押し出してくる。そんな感じだ。もちろんYoさん自身が意識的に調整してきたのであろうが・・・「コンテンポラリー」というレーベルについては、全く見事に(いい・悪い/好き・嫌いのレベルではなく)「あるべき音・出してほしい音~そういうバランス」で、鳴らしきっているのだ。そう思えてくる。素晴らしい!

Sonny Rollins/Sound of Sonny(riverside)     ~the last time I saw Paris もかかったな。これはピアノがソニー・クラークだ。

Zoot Sims/Tonit's Music Today(storyville)   ~I hear a rhapsody Tonite_music_today_1

この1曲だけは、シムズのワンホーンだ。バラードをじっくりと吹き進むシムズの唄心には参ってしまう。I hear a rhapsody・・・好きな曲だ。BOSEさんご自身も「よくできたCDだと思っていた」という徳間CDとの聴き比べでは・・・CDでは全体的にドラムスやベースが強調されていたような感じを受けた。そして、オリジナル盤で聴いたシムズのテナーは、やはり・・・響きが自然で、より陰影に富んでいたように思う。                    <上の写真:tonite's~はYoさんの手持ち盤。BOSEさん宅でこのレコードを聴いて気に入ったYoさんが、その後に入手されたとのこと>      

BOSEさん~
Go_manSonny Criss/Go Man!(imperial)blue prerlude ~ジャケットを見て「おおっ」と軽いどよめき。ソニー・クリスもいいのだが、このレコード、ピアノがソニー・クラークなのだ。このジャケットを見て、僕は、スクーターのスタンドが立っている絵とスタンドがない絵と2種類のジャケットが存在する、という何かで知った情報を話した。この盤は「スタンド付き」だ。レコードをかけ終えると、BOSEさんが一言。「このレコードのタイトルが、なぜ「ゴーマン」かというと・・・ジャケットを見れば判ります。スクーターの後ろに乗った女が「ほら、次はあっち」と指示を出しているので、男が嫌そうな顔をしてるでしょう」と真顔で言うのだった(笑) <Go Manの写真は、BOSEさん提供です。やっぱりスタンドが立ってる>

Good_gravyTeddy Edwards/Good Gravy(contemporary) から1曲。このレコード・・・contemporaryの中では案外に見かけない盤で、BOSEさんによれば「多分・・・OJCでもWAVEでも出てない」とのこと。Yoさんはこのエドワーズ、すぐに気に入ってしまったようで「これ、欲しい・・・」と一言。

<左の写真は、この会の後、Yoさんが速攻で入手した盤だ。やることが速い(笑)>

そして・・・Serge Charoff/Blue Serge(capitol) Blue_serge  

ジャケットの「サージ服」の青色が品のあるいい色合いだ。センターラベルは、capitolを象徴するあのターコイズ。この盤はベースのルロイ・ヴィネガーのはずむような音が大きく入っている。そしてピアノは・・・こちらもソニー・クラークだ。

<写真:Blue Sergeは、BOSEさん提供。こうして見ると実にいいジャケットですね>

それにしても、BOSEさんの持ち込んだ盤は、どれもこれも・・・(笑) ジャズの本当に渋くていいところの盤ばかりじゃないか・・・参りました(笑)  

パラゴンさん~
Sylvia Syms/Songs By Sylvia Syms から imagination(atlantic)
~ジャケットのイラスト~笑っているようなシムズのイラスト~がいいなあ・・・と思っていたら、すかさず、BOSEさんが「これはバート・ゴールドブラットだ」
すぐジャケットのイラストをよく見ると、やはりBurt Goldblatt とクレジットされていた。BOSEさん、よく知ってるなあ・・・(笑)

D35さん~
金子由香里(ビクター盤) 1970年代の日本盤だが、録音はキレイだった。
シャンソンは・・・わからない(笑) 曲は「詩人の魂」だったか。
エミルー・      Angel Band~カントリーっぽいノリの歌い手だ。
Ann Richards/Many Moods of Ann Richards ?

Roxanさん~
Pink Floyd(英EMI) の初期盤から1曲。
Mary Hopkin/water,paper and clay (EP盤)
~はじめは静かに始まるホプキンスの唄だったが、途中から壮大なオーケストレーションが現れ・・・
とにかくいろんな楽器群が次々に、充分な音圧を持って飛び出てくる・・・そういうダイナミック・レンジが驚異のUK・EP盤だった。

konkenさん~
Chicago(CBSソニー) introduction ~Yoさんのシステムはどのジャンルもいい具合に鳴る。ロックのレコード特有の「厚めの低音(エレクトリックベース)と
巨大音像のバスドラ」しかしこれらが、大きくても柔らかめな肌触りのいい音なのだ。ロックならこれくらい音圧が出た方が気持ちいい~という感じで鳴っていた。
konkenさんは「シカゴが、あのソニー盤であれだけ鳴るとは・・・」と帰りのクルマで何度も繰り返すのでした(笑)

マントさん~
ギターとパーカッションによる現代曲(ジーグフリード・フィンクと読めたかな(by CROWさん)
バリトン歌手によるフォーレの歌曲~この男性歌手・・・このレコードの録音当時、結婚したばかりということで、マントさんいわく・・・「唄に喜びが溢れ出ている」

bassclef~
Swingin' Like Sixty(world pacific)からJohnny Mandel(pacific) georgia on my mind_001_9
~このレコードは、world pacificのオムニバス盤で、A面1曲目に、アート・ペッパー入りの「ジョージア~」が入っているのだ。
ホーギー・カーマイケルのhoagy sings carmichael(pacific) のリハーサルテイクのようだ。おそらく曲の進行を確認するためのバンドだけのリハーサルだから唄はなし。イントロ~間奏~エンディングだけの短いテイクなのだが、この「ステレオ録音」が、なかなかに素晴らしいのだ。
録音直前の様子~「hi,everybody!」「take~!」「OK!」とかの、やりとりからして生々しい。左の方では、ペッパーが軽くアルトを鳴らしたりしている。中編成の管楽器がジョージアのイントロを始めると・・・そこに「すうっ」とペッパーが入り込んでくる。管楽器群がテーマを流しているバックで、オブリガート風にソロを入れているのだ。そのままバックなしの短いアルトソロになり、サビからいきなり倍テンだ。トランペットがソロを吹くのだが、マイクがかなりオフ気味だが、どうやらハリー・エディソンのようだ。
そしてサビ後の部分をエンディングテーマとし、あっさりとこの演奏は終わってしまう。ちなみにこのリハーサルテイクの本番~つまりホーギー・カーマイケルが唄う~レコード、僕の手持ちは、1982年頃の米Pausaの再発でモノラルなのだが、裏解説によると、[this is a Monaural Recording recording] とあり[engineering:Richard Bock and Philip Turetsky] と明記してある。だからhoagy sings carmichael(pacific) のオリジナル発売時は、
モノラル盤だったのかもしれない。カーマイケルの脱力した唄い方も悪くない(笑) そんな唄の合間合間ににチラと入るペッパーがまた味わい深い。

Soul Trane(prestige) NJ bergenfield ラベル~このソウル・トレーンあたりの番号からNJラベルらしい。だから(たぶん)オリジナルなのでちょっとうれしい。このNJラベルも、少し前にrecooyajiさん宅(地元:豊橋のジャズ好きのお仲間)で、ビクター盤と聴き比べたが、やはり、ドラムの鮮度・キレ、ベースの鮮明さ、などに明らかな違いがあった。プレスティッジというレーベルは、おそらくマスターテープの管理があまりよくなかったのだろう。だから・・・67~68年以降くらいからの、fantasyの再発盤(黄緑ラベル)から、極端に音質が落ちているようだ。そうして、その頃のマスターを使った日本盤の音質も・・・良くなるはずもない、ということかもしれない。(私見では、「紺」「黒」のイカリ・ラベルのRVGまでは、かなりいいように思う)

Stan Getz/4曲入りのEP盤(clef)から time on my handsDscn0720_1

この1952年のゲッツが、すごく好きなのだ。45回転で聴くゲッツのテナーは・・・どうにも素晴らしい。「ふわ~あっ」と漂うような軽み」が快感である。このEP-155は、ゲッツの他のEP盤に比べても、音がいいようである。

                                                                                          

Norman Grantz #4(clef) EP3枚組_002_5

このEP盤と、Yoさん手持ちの12インチClef(水色ラベル)の聴き比べをしてみた。EP盤の音は総じてカッティングレベルが低い。低いのだが・・・テナーの音色が、「すうっ」と浮き出てくるようなニュアンスがある。そういうある種の「軽み」に・・・却って、ゲッツの良さを感じる。
続けてかけたclef 12インチは、カッティングレベルも高くて、ピアノ、ドラムも骨太なClefサウンドで、やはり魅力のある音だ。僕はClefの音なら、どれもこれも嫌いではないようだ(笑)_003_8

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宴会の後・・・まだYoさん宅の音を聴いていないM54さんとPSYさんは、とにもかくにもYoさんの音を聴かねば!という決意がみなぎる。そうして、その流れに便乗する者が続出。まっさきに便乗したのは・・・このbassclefだったが(笑)
そんなわけでまたまた全員で、再度Yoさん宅へ。

アフターアワーズとして・・・pm8:45~pm10:15
PSYさん~
Bill Evans/Exprolationsから israel~このレコード・・・ラファロのベース音が他のリヴァーサイド盤とちょっと違う感じの音で、グウ~ッと沈み込んだ低いべース音なので、僕の機械ではなかなかその沈んだ低音がうまく抜けない。PSYさんも同じようなことを言っておられた。そしてその「沈み込むベース音」が、このYoさんのウーレイでは余裕で鳴っているではないか!

M54さん~
Grant Green /Idle Moments(bluenote) これはちょっと歌謡曲っぽい曲調のあれだ(笑) それを熟知しているPSYさんが演歌曲の紹介MCみたいなセリフを軽くはさむので、皆さん少し笑う。後半に出てくるジョー・ヘンダーソンのテナーがやはりいい。ジョーへンにしては、やけにサブ・トーンを多用して、ちょっとベン・ウエブスター風なものを意識したのかもしれない。

Yoさん~Phil Woods/Warm Woods(epic) からeasy living

ここでYoさんが、「ああっ、そうだ・・・「あれ」をみなさんにお聴かせしないと!」と言いつつ、Lou Donaldson/Blues Walk(bluenote;lexington) Blues_walk 《訂正》~このドナルドソン:1593番にLexingtonはあり得ない、とのコメントをrecooyajiさんより頂きました。さっそく、Yoさんに確認していただいたところ・・・この1593番は<47West 63rd NYCで、溝あり、Rマークなし>とのことでした。貴重なブルーノート盤というイメージでLexingtonと思い込んでしまいました。実は・・・僕は、オリジナル盤のラベル変遷にはあまり詳しくないのです(笑)
を取り出す。みなさんから軽いどよめき・・・(笑) これは、メリケンさんからのYoさんへのプレゼント盤だ。ちょっと前に「杜」にメリケンさんが「ジャズレコード下取り価格ピッタリ賞」のプレゼント盤として提供したのだが、これはYoさんが見事な読みで勝ち取ったのだった。盤質も演奏も素晴らしい。甘くて太いドナルドソンのアルトが鳴れば・・・「チャカポコ」のコンガも思いのほか気にならない(笑)

Yoさん・・・ではもう1曲あのマーキュリー盤からということで、
Al & Zoot/You an' Me (mercury)  you'd be so nice to come home to

パラゴンさんから渋いヴォーカル盤が、またひとつ。
ミリー・ヴァーノン/Introducing Milli Vernon (storyville) ジャケットの1箇所だけ色が付いている。とてもしゃれたジャケットである。

もうあまり時間がない。午後に聴いたハロルド・ランドの話しが出たので・・・僕はcontemporary盤から1曲、Yoさんにリクエストをした。Curtis_vol1_mono_1
Curtis Counce/Land Slide(contemporay) time after time ランドのバラードは実にいい。Curtis_vol1_stereo_1

                                                            

<あれれ?見慣れたはずのこの盤・・・何か変だぞ?右側のモノラル盤は左右が逆になっているのだ。2点ともYoさん手持ち盤>

コンテンポラリー盤がしなやかに鳴る。この場で鳴るこのレコードは幸せであろう(笑) そしてそのサウンドを聴く僕らも、また幸せなのだ

もう夜も遅い。まだ明日の神戸があるのだ。そこで、前夜に大阪入りしていたRoxanさんが、この日、仕入れてきたというレスターヤングを聴かせてもらうことにな った。Verve-Clefシリーズ(黒トランペット)の Lester Young/Lester Swings Again(verve) だ。曲は・・・stardust。
これが実によかった・・・。レスターとしては晩年の、何かこう全てを悟ったような・・・というかガツガツしない諦観の漂う、気品のあるスターダストであった。この盤を見て、Yoさんが取り出してきたのは、同じレスターのNorgran盤。ジャケットは違うが・・・曲名を見ると同じ内容の盤である。
こちらもかけてみる。レスターのサックスを少し聴くやいなや「う~ん」・・・と唸るRoxanさん。「黒トランペット」は、盤質も良く充分に生き生きとしたいいテナーの音だった。一方、Norgran盤は、ややカッティングレベルが低く、盤質も「黒トランペット」に比べれば良くはない。
しかしながら・・・このNorgran盤では・・・レスターテナーの音によりいっそうの生々しさ、レスターの気配がより濃厚に漂っているように聞こえた。
いずれにしても・・・本当にいい「スター・ダスト」でした。
僕は、この1952年のレスターヤングを全くの初めて耳にしたのだが、レスターヤングの淡々としながらも、時に「はっ!」とするような鋭いトーンに、
新鮮な驚きを覚えた。レスター・ヤングも、これから聴きたいテナーだな・・・と思うのであった。The_president_1

この「しみじみ盤」を聴いて・・・いよいよこの会を終わろう、そんな雰囲気が漂い・・・午前中から始まったYoさん宅での「ジャズ聴き会」は、こうして、ついに終わったのだった。
それにしても・・・ジャズは厭きない。

<左:レスターの垂涎的norgran盤。う~ん・・(笑)>

special thanks to Yoさん&BOSEさん!

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2006年9月10日 (日)

<思いレコ 第11回> ソニーロリンズ/ヴィレッジヴァンガードの夜

ウイルバー・ウエアのこと(その1)

_004_9だいぶ前の<夢見るレコード>(ヘンリー・グライムス編)で、「こだわりのベーシスト」という内容でシリーズにしていくつもりだ・・・と書いた。<夢見るレコード>は、ジャズそのものの内容についてはもちろんだが、やはりそのミュージシャンなり曲に関わるようなオリジナル盤も交えながら、いろんなジャズ話しをしたい~そんな造りでやってきた。好きなミュージシャンや好きな曲は、それこそいっぱいあるのだが、いつも都合よく関わりのオリジナル盤が手元にあるわけではない(笑) 想うばかりでなかなか記事にできなかったりもする(笑) だから・・・これからは「オリジナル盤」に拘りすぎるのは、やめようと思う。拘りすぎはしないが、記事の内容につながりがあって、ちょっと思いついた盤があれば気楽にとりあげたいし、そしてそれがオリジナル盤であれば、なお都合がいいと思う(笑)
そんな訳で・・・いろいろとこだわりの多い僕としては、このベーシストについて、そろそろ書かねばなるまい。
ウイルバー・ウエアである。

僕が最初にウイルバー・ウエアを聴いたのは「モンクス・ミュージック」だ。1972年の「ネムジャズイン」の帰り名古屋で買ったABC riversideの茶色ラベルの盤だ。すぐに好きになった。思わず「ニヤッ」としてしまうようなユーモラスなソロ。普通でないバッキングでのランニング(4ビートの時の音選び)。そして、その太っい鳴りのサウンドにも痺れた。聴いていて・・・とにかくおもしろかったのである。

ウエアはリヴァーサイドの専属みたいだったらしく、ケニー・ドリュー、アーニーヘンリーらと相当な枚数を録音している。そしてそのほとんどは、OJCのLPでも発売されたと思う。僕もウエアのリヴァーサイドのものは、ほとんどはOJCで聴くことができた。OJC以前では、1972年にビクターがriversideの復刻シリーズが重宝した。第1回発売の何枚かにアーニー・ヘンリーのPresenting が含まれていたし、ウエアのリーダーアルバムの「シカゴ・サウンド」が発売された時は、嬉しくてすぐに入手した。

_005_4《写真の盤は、ビクター盤。緑色のマイルストーンレーベルが哀しい:笑》

リヴァーサイドでのウエア参加作はかなり多いので、次回に「リヴァーサイド編」としてまとめたい。
今回「その1」では、他レーベルでのウエア参加作からとりあげてみたい。

ウイルバー・ウエア。まず連想するのは、やはりあの盤だろう。ソニーロリンズがサングラスをしているジャケットのA Night At The Village Vanguard だ。僕はこの有名な盤をジャズ喫茶で何度も聴いてはいたが、買ったのはかなり遅く、1980年くらいだった。うんと安いオール青の音符ラベルだ。その前にマイケル・カスクーナ監修の未発表2枚組は入手して聴いていたが、この2枚組には、ジャズ喫茶で何度も聴いて気に入っていた sonny moon for two や I can’t get started が入ってなかったのだ。_003_3

前回の<夢レコ>  (1975年の日比谷屋音)では、渋谷のヤマハ楽器でパーカーの The Happy Bird を買ったことも書いたが、あの時・・・迷ったのが、このロリンズのVillage Vanguard である。紫色のジャケットがカッコよかった。時期的におそらくブルーノートの「直輸入盤」だったはずで、たしか2200円もした。あの頃、普通の輸入盤なら1500円前後で買えたので、ブルーノートはかなり高かった。だから渋谷ヤマハではパーカーのライブ盤にしたのだろう。

そのVillage Vanguard でのウエア。これはもう全くユニイクなプレイで、誰が聴いても「おもしろいベースだなあ」と思うだろう。その「おもしろい」を好意的に捉えるかそうでないかが、分かれ目である(笑)

softly as in a morning sunrise という曲がある。この曲・・・最初に聴いたのは、多分、コルトレーンのLive At The Village Vanguard だった。コルトレーンヴァージョンでは、マッコイの正統派モード風の長いソロが印象的なsoftlyであったが、このロリンズヴァージョンでは、ユーモラスでたくましい感じのSoftlyに仕上がっている。

Wilbur Ware on bass, we'd like to feature Wilbur, right now というロリンズの紹介の後、ウエアが短いイントロを弾き始める。このイントロ~ベースでイントロというと、4ビート(1小節に4分音符4回)でランニングするか、あるいは2ビート(1小節に2分音符2回)でテンポをキープすることが多いのだが~ウエアは、いきなり8分音符多用してのベースソロみたいな感じで始め、ビートの裏を強調した「ッタ・ッタ・ッタ・ッタ」というフレーズを交えながら、強力なリズム感でテンポはがっちりキープしてくる。ビート感も最高だ。おもしろい!もうここからウエア節炸裂である(笑)
そのイントロの後、テーマをロリンズが吹き始めるのだが、その吹き方もおもしろい。この曲のアタマのメロディは「ドー・ソー」(キーがCmの場合)で、普通は最初のドの音を2分音符で伸ばすのだが、ロリンズは、4分音符(8分音符+8分休符)を2回吹くのだ。「ドッ・ドッ・ソー」・・・これで、このSoftlyの運命は決まったのだ。ユーモラスでたくましいsoftlyになるように。
思うにロリンズも・・・イントロでこんなにもユニイクな個性のベースを聴いて、ジャズ魂が湧き上がってしまったのかもしれない。ロリンズのテーマの吹き方にも、何かワクワクするようなうれしそうな気配を感じる(笑) そのうれしそうなロリンズのソロが終わり・・・ウエアのベースソロが始まる。ウエアも、ロリンズのアイディアを弾き継ぎ、やはり最初のメロディを「ドッ・ドッ・ソー」と弾く。それもやたらブッチギリのアクセントをつけて(笑)普通は(コルトレーンヴァージョンも)ドの前に休符を入れたり、あるいは次のソをシンコペにしたりするのだが、この曲でのこの部分のウエアの弾き方は・・・もう思い切りのオンビートなのだ。すごく泥臭いのである(笑) 
しかしそれは、「あえて演出した泥臭さ」でもある。ベースがメロディを弾く・・・その特殊な状態を逆手にとって自分の個性を生かすための「オン・ビート」なのだ。ウエアの場合は、もちろんただ「オン・ビート」な訳ではない。ウイルバー・ウエアという人は、弦を引っ張る右手の「引っ張り力」が
相当に強いような感じがする。ウエアはその強い「引っ張り力」で、一音一音を圧倒的に「太っい鳴り」で強烈に弾き込んでおり、そしてあの弦の独特な響き方~輪郭の丸い大きな響きたぶんガット弦を使っている~そんなものが一体となったユニイクな個性があるからこそ・・・この曲でのウエアの「ドッ・ドッ・ソ~」は、説得力があるのだ。ウエアという人の「唄い」がもう直接に「ブウ~ン・ブウ~ン」と響いてくるのだ。こんなにたくましい個性のベーシストはめったにいないぞ。
ちなみにウエアのソロ、エルヴィンのソロが終わった後、最後のテーマをロリンズが吹くのだが、ここではロリンズは「ドッ・ドッ・ソ~」と吹かない(笑)
たぶん・・・あえて同じようには吹かなかったのだ。ロリンズらしい「捻り」じゃないですか(笑)
になみに「未発表2枚組」にもsoftly が入っている。こちらのテイクでもロリンズは「ドッ・ドッ・ソ~」と吹いてない。裏解説に during the evening performance on Sunday,November 3, 1957 と明記してあるので、つまり「未発表」のsoftly の方が先(夕方)で、「サングラス」の方が後(夜)の演奏ということになる。そうして夕方の softly は、もちろん悪くはないが、あの夜の出足から気合の入りまくった演奏に比べると、かなり生気に乏しい。推測するに・・・昼間の演奏の時にはまだ湧いてなかったインスピレイションが、夜のセットで3人がノッてきて、ロリンズならではの「ひらめき」が一気に湧いてきたのではないだろうか。あるいはあの曲でのウエアの跳ねるような感じのベースソロに、ロリンズがヒントを得ていたのかもしれない。

《写真は、キングの特別復刻盤。音は、案外にいい》

_002_2ちなみに、このレコードには、もうひとつ凄い演奏がある。B面1曲目の sonny moon for tow である。
このブルースは12小節で、アタマ(4小節)・オナカ(4小節)・オシリ(4小節)でできているのだが、それぞれの4小節に、全く同じメロディを3回繰り返すブルースだ。超シンプルだが、ロリンズらしさが横溢したこのブルースを、僕は昔から大好きだった。そういえば、ジャズ研(学生時代のバンド)では、何かというとすぐこの曲をやり、一度始めるとなかなか止まらない・・・それでも「気分」だけはいつもノッていた(笑)

このロリンズ/ウエア/エルヴィンのsonny moon for two 全編素晴らしいのはもちろんだが、僕が特に印象に残っている場面がある。
ロリンズ、ウエアとソロが終わると、エルヴィンとロリンズとで、4bars change(4小節交換)というのをやる。

ブルース(1コーラス=12小節)での4bars change は、アタマ(4小節)、オナカ(4小節)、オシリ(4小節)という感じで
順番にソロを回していく。このsonny moon は1コーラスが12小節なので~まずロリンズ・エルヴィン・ロリンズで1コーラス、次のコーラスは、
エルヴィン・ロリンズ・エルヴィンという順番になるわけだ。
だから2コーラス単位でいかないと、ロリンズがアタマ(最後のテーマを吹くときの)に戻らない。

僕が聴くたびに唸ってしまう場面は・・・最後の2コーラスでの4bars changeの所で飛び出てくる。
前のコーラスのオシリをエルヴィンが長いロールで締めくくった後~普通ならここでテーマに戻りそうな感じだが、ロリンズはあえて(たぶん:笑)戻らない。そのアタマの4小節のロリンズが凄い!
3連の連続から崩していくような「雪崩れフレーズ」を吹き始めると、その自分のアイディアに乗ってきたロリンズが(たぶん:笑)・・・
次の4小節(エルヴィンの番)に入っても・・・止まらないのだ(笑) エルヴィンも自分の順番なのでソロを取り始めようと思ったら・・・
ロリンズがまだ吹いている。そこでエルヴィンは、あまりオカズを入れずにバスドラを4拍アタマで踏み続ける。しかしまだロリンズは止まらない(笑)オナカの部分をすでに2小節くらい割り込んでいる(笑) エルヴィンのバスドラが「ドン・ドン・ドン・ドン」・・・するとロリンズは、そのエルヴィンの4拍アタマ打ちに合わせるかのように、「フゥ~・フゥ~・フゥ・フッ」とサックスを鳴らすのだ。いや、最後の方は息が切れて「鳴ってない」かもしれない。だがしかし・・・そのサックスの「圧力」を、確かにその場から感じるのだ!エルヴィンは「ここぞっ!」とばかりに、バスドラをクレシェンドで強く踏み始める。ウエアもすかさずクレシェンドに合わせて弦を弾く!(はじく) 音楽の圧力が一気に高まる!もうたまら~ん!これがジャズだあ!・・・このsonny moon for two も本当に素晴らしい・・・。

ロリンズ、ウエア、そしてエルヴィン・・・この3人の個性がぶつかりあい、絡み合い、そして溶け合い・・・これこそがジャズだあ!と叫びたくなる(笑)
すごくおおらかでジャズの図太さが溢れる、真の意味での「ジャズっぽい」演奏だと僕は思う。・・・どうやら僕は、このロリンズの A Night At The Village Vanguard をムチャクチャに好きなようだ(笑) そうして、こんな素晴らしい瞬間を生み出したジャズという音楽に・・・僕は感謝したい。

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2006年8月 6日 (日)

<ジャズ回想 第7回>  1975年7月の日比谷野音。

ついに見た動くモンク~「真夏の夜のジャズ」と「ナベサダ」のこと。

大学1年の時、東京へ遊びに行った。7月7日だったかの月曜日、フランス語の講義の後、僕は新幹線に乗った。中学の同級生であるS君と東京駅で、夕方4時頃に(この時代1975年なので、ハガキで~時~分着の新幹線と連絡しておいて:笑)待ち合わせをしているのだ。S君は4月から東京で学生生活を始めていたので、この4~5日は彼のアパートに泊めてもらうことになっていた。
東京へ遊びに行くメインの目的は・・・<真夏の夜のジャズ>である。スイング・ジャーナルの広告か何かで知った<日比谷野外音楽堂で「真夏の夜のジャズ」を見よう>というイヴェントを見るために・・・わざわざ東京まで行くのだ。このイヴェントがその週の木曜日なので、そのイヴェントの前後に2人で東京のジャズ喫茶を回ろうぜ、という大体の計画だった。 いろんなジャズの本や記事で「真夏の夜のジャズ」という映画があるんだそうな・・・ということを知っていた。そしてその映画では・・・
あのセロニアス・モンクが「本当に動いてピアノを弾く」ということも。「動くモンクを見てみたい」(笑)・・・いや、当時は「笑い事」じゃなかったのだ。1975年・・・もちろんまだヴィデオなんて普及してない。高校の授業で使ったオープンリールのヴィデオ・デッキが、かなり珍しいくらいの時代である。
もちろんTVでもそんなジャズ映画を放映するわけがない。だから・・・昔のジャズマンの演奏する姿なんて、普通ではほとんど見られない時代だった。
~モンクは一体、どんな風に「動く」のか? どんな具合にピアノを弾くのか? 本当に「踊る」のだろうか?~
ジャズファンなら誰でも、そんな素朴的な興味が相当に湧いてしまうのだった。実際・・・そういうニーズがあったから、「1本のジャズ映画を日比谷野音で上映する」なんていうイヴェントも成り立ったのだろう。(観客は満員だった!)とにもかくにも僕の「東京巡り」は・・・だから「モンクを見る!」ということが最大の目的だったのだ。だから、事前にS君と何度かハガキのやりとりをして、このイヴェントのチケットを確保してもらうよう頼んでおいた。そうして「確保できた」の知らせを受けてからの、ようやくの「東京行き決行!」だったのだ。僕はもう本当にワクワクしていた。

このイヴェントのチラシを保存してあるはずだ。さっきから探しているが、どうも見つからない(笑)
僕はレコードのチラシ関係は一緒にファイルしてあるのだが・・コンサートのチラシやらチケットは、なぜかバラバラなのだ。
例えば文庫本の間とかそのころ買った雑誌にはさんであったりして・・・それでも案外、どこかにとってあるのだ。それで前に見た記憶をたどると・・・たしかあのチラシは、思わぬ時に発見したのだ。そうだっ!ジャンゴのあのレコードだ!そんな訳で・・・タナの下の方でちょっと苦労したが、ジャンゴのレコードを見つけ出した。75_004_3

そのチラシがこれだ。だいぶ汚れているが(笑)・・・この時、東京で買ったジャンゴの日本コロムビア1100円盤がシュリンク付きだったので、
そのままそのジャケットにはさんでおいたのだろう。

<真夏の夜のジャズ>1975年7月10日(木)午後6時30分開演となっている。入場料は2000円だ。
星降る夜の映像と即興の衝突」という大げさなサブタイトルが付いているのは・・・この映画は第2部、つまりメインの扱いで、第1部は、なぜか「渡辺貞夫カルテット」のコンサートだったのだ。そのコンサートのコピーもすごい(笑)~即興に命をかける男達のライブ・コンサート~
ナベサダは72年夏にネムジャズインで見た。秋にもミニ・コンサート(名古屋のデパートでのオープンイヴェント)で見た。スタンダードを吹いてもモードっぽい曲を演っても、わりとわかりやすいジャズで、僕は好きなミュージシャンだった。このカルテット~ピアノが本田タケヒロだった~まだ組んでから間もないはずだ。当時、FM放送で毎週土曜の夜にナベサダの番組があり、そのFM放送でこのバンドの音は聴いていたように思う。
僕はこの1975年、地元の大学で「ジャズ研」に入り、ウッドベースを始めていたので、それまでレコードで聴いてきたジャズの「感じ」に加えて「演奏の実際」みたいなこと、そんな気配を少しは肌で判りはじめていた。そんな僕が聴いていても、この時のドラム奏者には何か余裕が感じられずあまり巧いとは思えなかった。実際、ナベサダは、何度もドラムの方を向いたり、そばに寄ったりして何やら指示をしているのだった。ある場面では・・・ボサ調の曲が途中から4ビートに変化していった。あれは・・・ボサ風の曲なのに、アドリブの途中で、ナベサダが急に4ビートノリで吹き始めたように思う。すぐさまピアノがそれに気がつき、4ビートのバッキングに変えたのだが、何か変だぞ? どうにもノリが気持ち悪い・・・ああ、ドラム奏者が全くその変化に気付かないようだ。ピアノのソロになっても、ガンコにボサのリズムを死守している。おそらくは特に打ち合わせなどなく、この時の演奏で自然発生的に生まれたアイディアだったのだろう。それにしても・・・である。それで・・・とうとうナベサダがドラムのすぐ右側に行き、右手を上下に振りながら何か叫んでいる。右手のアクションは、間違いなく「4ビート」(シンバルをレガートする右手の仕草だ)を示している。それでようやく・・・ドラマーのリズムが4ビートに変わった。ピアノの本田が嬉しそうにまた長いソロを弾き出した。・・・そんな様を僕はワクワクしながら見ていた。バンドが演奏しながら、あんな風に「リズム」を変えていくことがあるんだ、そしてそれがうまく合わないこともあるんだなあ・・・というジャズの難しさ・おもしろさも実感できた。そんなリズムの「やりとり」~このことをS君にも話したのだが~が自分にも判るようになってきたことが、ちょっとうれしかった。

さて、この「真夏の夜のジャズ」~モンクの出番はわりと最初の方だ。モンクが画面に現れると・・・「ウおおっ!」と静かに観客がどよめいて、拍手もあちらこちらで起きた。(モンク好きとしてはちょっと残念だが・・・後にドルフィが登場した時の方が、明らかに大きなドヨメキと拍手が巻き起こったのだった)モンクはトリオで「ブルー・モンク」を演奏するのだが、ベースがヘンリー・グライムス(だったか?)というのがちょっと珍しい。映画そのものの僕にとってのハイライトは・・・しかし、ちょっと残念なものだった。せっかくのモンクの演奏中(演奏の音は流れている)なのに・・・カメラがヨットやら観客ばかり映しているのだ。半分くらいは「風景」だったように思う。
モンク目当ての僕としては、これはもう・・・相当にがっかりしたものだ(笑)75_006_2

ドルフィ登場の場面では・・・モンクの時よりも大きな拍手が沸き起こった。チコ・ハミルトンのマレットの長いソロと、チコが顔中がもう汗ダラダラになって、しかし目を見開いてドラムを叩き続ける姿も印象に残っている。《今回、この記事を書くきっかけになったparlophoneさんのブログに、この「真夏の夜のジャズ」が、詳細に紹介されている。アニタやダイナの一番いい場面の写真が楽しい》

出口のところでジャズ評論家の野口久光さんを見かけた。たぶん氏は、このイヴェントの監修か何かで関わっておられたはずだ。近くのジャズ関係者の方に「雨が降らなくてよろしかったですねえ・・・」とか話していた。野口久光さんはすごく小柄で、真夏なのにピシッとスーツを着ていた。

この日比谷野音のイヴェントが木曜だった。ということは・・・月曜の夕方から火曜・水曜・金曜と、毎日、どこかに出歩いていたわけだ。S君がその頃発売された「東京ジャズ喫茶~」なる雑誌を持っていたので、あれこれ見ながら~新宿、渋谷、それから吉祥寺にも行ってみたい~行く街と回るコースを考えたりして・・・そんなことがやけに楽しかった。そうしてホントにいろんなジャズ喫茶にも行ったなあ・・・。S君のアパートは井の頭線の東松原だったので渋谷へ出るのが便利だ。だから・・・まず渋谷だった。この頃の渋谷にはジャズ喫茶がいっぱいあった。
道玄坂の小路に入るとまず「ジニアス」、その斜め向かいに「デュエット」があった。少し離れたところに「音楽館」もあったはずだ。道玄坂をの反対側には「メリー・ジェーン」という店もあったかな。それに中古レコード店の「JARO」、輸入のレコードがたくさんあったヤマハ楽器渋谷店もあった。そんな具合だったので、ジャズ好きには全く最高の街だったように思う。
渋谷では、道玄坂の「ジニアス」に何度か寄った。階段を下りると右にドア。入ると・・・奥行きは狭いが左右に細長く拡がった店だった。僕らは一番、左側のスピーカーのまん前へ座った。この店のスピーカーは・・・壁に埋め込まれていて、かなりの大音量でかけていた。僕はジョニー・グリフィンのWay Outをリクエストした。72年にはビクターがriversideを国内発売始めていたので、75年には国内盤が出ていたかもしれない。かけてくれた盤が国内盤だったかオリジナル盤だったかは判らないが、ベースの音が強力に鳴っていたことはよく覚えている。いい音だったように思う。
なぜこんな盤をリクエストしたのかというと・・・モンクにはまっていた僕は、その絡みで、ベースのウイルバー・ウエアにも凝っていたのだ。入部したジャズ研の先輩に「ウイルバー・ウエアが好き」と言った時の、先輩の困ったような顔を今でもよく覚えている(笑)
この「ジニアス」で一番印象に残っているのは・・・ラシッド・アリのドラムだ。スピーカーのまん前に座ったその時、コルトレーンの「ライブ・イン・ジャパン」(東芝)がかかった。どの曲だったかは忘れたが・・・とにかくそのラシッドアリのシンバルの凄いこと!というかやかましいのだが(笑) とにかく絶え間なく叩き続ける・・・「間」とか「強弱」とかあまり考えてないドラムだ(笑) 当時、こういう叩き方を「パルス奏法」とか呼んでいて、要は安定したビートを叩かないやり方で、だから巧いとは思わなかったが、実際のコルトレーンのコンサートで表したであろうこのドラム奏者の「激しさ」だけは、理解できたように感じた。とにもかくにも・・・フリー的な演奏はほとんど聞いたこともなかったし興味がないはずの僕が、約20分くらいは、あのドラム音を至近距離で聞けたのである。(笑)
ジャズ喫茶の「いいオーディオ装置」(たぶん)で聴く「大音量の再生音」というものに、多少の興味を覚えたのはこの時だったかもしれない。

ヤマハ楽器では、1枚だけ輸入レコードを買った。チャーリー・パーカーのライブ盤<Happy Bird> 真っ赤なジャケットでscrapple from the appleが入っているやつである。この盤には・・・18才のジャズマニアとしては痛恨の思い出がある(笑) 僕はパーカーのレコードはそれまで1枚も持ってなかった。ジャズも聴くだけでなく演奏もやろうとしているんだから、パーカーだって聴いておかなくちゃなあ・・・というくらいの気持ちもあったので、何か1枚、と思ったのだろう。75_001_1
このcharlie parker というレーベルは(再発だけかもしれないが)ジャケット裏の表記が実にいいかげんで、表ジャケは「Happy Bird」なのに、裏ジャケには、Charlie Parker/Bird Is Freeなる文字も見えるし、これらLPに入ってなかった収録曲は、ダイアルの音源が混じって表記されているようでもある。版権とかはどうなっていたのだろうか?

この盤は、charlie parkerレーベルの再発(ペラペラジャケットで黄色のラベル)なのだが、A面に~happy bird blues, scrapple from the apple, ornithology, a night in tunigia, bird's nest, cool blues
B面に~I remember april, I may be wrong, my old flame, scrapple from the apple, out of nowhere, don't blame me
と各6曲表記されており、表記の収録時間を足すとA面が26分ほど、B面は36分ほどになるのだ。価格は1400円ほどだったか。これはお徳だなあ・・・と僕は考えたはずだ。 75
当時は・・・レコードを1枚買うのにもいろんな決断要素があった。それこそミュージシャンを決めてどのレコードにするか決めて・・・そしてそういう風に決まってくるまでには・・・まず「価格」(これは今でも同じかあ:笑)、それから「収録時間」も重要だった。特に「パーカーという人」を初めてレコードで聴くので、やはり1曲でもたくさんの曲を聴きたい!と思ったのもムリはない。この盤はビニールシュリンクしてあったので、その場ではラベルまで見られなかった。しかし・・・家に帰ってシュリンクを破り、その黄色のラベルを見ると・・・それぞれ2曲づつしか入っていなかった。もちろん実際の音も2曲づつであった。これにはがっかりした(笑) しかしまあ・・・単純に考えれば、いくらなんでも片面に36分も入るわけがない。
音もムチャクチャ悪いし、もうパーカーなんて・・・という感じだった。
この「Happy Bird」のせいで、僕がパーカーに開眼するまでに、確実に3年は遅くなったはずだ(笑)

渋谷の「ジャロ」にも寄ってみた。むちゃくちゃ狭い階段を下りて左に入り口・・・店内も相当に狭い。その狭い店内にぎっしりとLPが詰まっていた。
壁のかざってあるモンクの「モンクス・ミュージック」が目を引いた。というよりその値段にびっくりした・・・たしか7800円とか8000円だったか。
その当時、「オリジナル盤」の価値など全く知らなかった。ただ国内盤と輸入盤という認識しかなくて、そして輸入盤のメリットは「安い」ことだったのだ。だから・・・こんなモンクス・ミュージックや他の似たような値段の盤を見ても「やけに高い輸入盤だなあ・・・とても買えないや」と思っただけだった(笑)

そういえば、10日の日比谷野音での<真夏の夜のジャズ>の前に、銀座にも寄ったのだった。数寄屋橋辺りを歩いていると
「イエナ書店」が見つかった。ははあ・・・これがよく植草甚一の本に出てくる「イエナ」かあ・・・とか思ってるうちに今度はソニービルが見つかった。地下ににハンターという中古レコード店があるのだ。調べはついている(笑)
ここはけっこう中古レコードが安いので有名だった。スイングジャーナルのハンターの「レコード下取り広告」には・・・オノ・ヨーコのレコードがゴミ箱に入っている写真が載っていた(笑) 当時、要らない!と思うレコードのイメージの代表がオノ・ヨーコだったのだ(笑)
ここでも1枚だけ買う。
ダラー・ブランド/Sangoma(sackville)75_002

ダラー・ブランドは高校の時、もう大好きになってしまい、高2の時、73年2月には、名古屋までコンサートを見に行った。
ピアノソロのコンサートだったが、僕はもうすっかり感動してしまい・・・終演後も楽屋の入り口で30分も待っていたりした。しかし・・・ダラーは裏口から帰ってしまったようで、とうとう楽屋からは現れなかった。この sackville盤は、当時、わりあい新譜に近いソロピアノ集だったはずで、すぐ購入決定したように記憶している。この前に買った独ECM盤のancient africaというレコードが・・・全くよくなかった。ピアノの音がペンペン・キンキンで全くひどい音だったのだ。それに比べれば、このsackville盤はナチュラルなピアノ音で聴きやすい。特にB面は、エリントンに捧ぐ~みたいなメドレーだが悪くない。今でも時々聴く。

この後、S君が(たぶんビートルズへの熱狂から)どうしても帝国ホテルを見ていくぞ、と言い張った。
ついでに中に入りたい、というので、ロビーを横切ったりした。
「ああ、これが帝国ホテルかあ」と感動するS君を、僕は醒めた気持ちで(笑)眺めながら、日比谷公園へ向かうのだった。

《補筆》 このブログ記事をアップした2~3日後、S谷君に出会った。ブログに登場させてもらったことを彼に伝えると・・・本日(8/11)、彼が僕の職場に顔を出し「読んだぞ」と一言。ついでに「おい。ビートルズ(の泊まったの)はヒルトンホテルだぞ」と、こちらの勘違いを訂正してくれた(笑)そうか・・・ビートルズはヒルトンホテルだったのか。それにしても、S谷君。あの夏は、1週間近くも泊めて頂き、しかもこちらのジャズ熱に付き合って、嫌がりもせず、あちこち一緒に歩き回ってくれたなあ・・・。S谷君、改めて・・・ありがとう!

東京にいる間に、S君とは他にもいろいろとジャズスポットを回った。
新宿の「ディスク・ユニオン」~ここでまたまた1枚だけ。それも輸入盤ではなく国内盤だ。3年ほど前に発売されていたが買いそびれていた
ジャンゴ・ラインハルトの1100円盤を買った。この時、同じ曲を収録の外盤があったのだが、迷ったあげく「国内盤」を選んだ。75_003
あれは今思うと・・・everest レーベルのjazz archive というシリーズだったかもしれない。すごく安っぽいジャケットだったことだけを覚えている。                            《この盤に「真夏の夜のジャズ」のチラシを、はさんでおいたのだった。31年間も:笑》

それからピットインの辺りを抜けながら、今度は「ディグ」へ。
ディグでは、少しだけレコードの話しをしていたら・・・すぐさま「おしゃべり禁止です」と注意された。あのときの周りのお客の冷たい視線・・・(笑) ディグは、イスが狭くて硬くて・・・それに肝心の音も、ジニアスと比べるとそれほどいいとは思わなかった。

吉祥寺の「メグ」にも行ったな。駅からウロウロと歩いてなんとかたどりついた。階段を上がって右側にドアがある雑居ビルの2Fだった。
メグでは何をリクエストしたのか・・・覚えてない。音の印象もない。

そして・・・明大前のジャズ喫茶「マイルス」だ。
駅を出て陸橋を渡ってすぐのT字路を左へ曲がってちょいと登ると「マイルス」というジャズ喫茶があった。狭い階段を上がって2Fにあるとても狭い店だった。マイルスのWalkin' がかかっていた。このレコードはそれまで聴いたことがなかった。だから・・・聴いたことのないテナーが聞こえてきて・・・そうするとこのテナーがラッキー・トンプソンという人なんだろうね・・・なんてことをS君と話した。
この「マイルス」には、なぜか居心地のよさを感じて、東松原に近いこともあって、その後、2~3回は寄った。東京2日目の火曜日だったか・・・同じく中学の同級であったI君が、わざわざ甲府から出てきた。この3人でS君のアパートで話し込んだ後、なぜか夜遅くの明大前まで出てきてしまった。マイルスへ寄った後、なぜか深夜喫茶みたいなところで時間をつぶしてるうちに当然、終電はなくなり・・・3人で明大前から東松原まで歩いて戻ったのだ。ひと駅なのでそんなに遠くはなかったが、それでも30分以上はかかっただろう(笑)
この時、I君はなぜか・・・ちょっといいトランジスタラジオを持っていた。何か聴きながら行こうよ、というわけで、そうしたら・・・ちょうどあのジャズ番組
「アスペクト・イン・ジャズ」が流れてきたのだ。そのジャズを聴きながら3人でトボトボと歩いた。多分、深夜の1時からの放送だったと思う。
こんな深夜に東京の住宅街を歩きながら、油井正一の声を聴き、そしてジャズを聴いている~というそのことが強く印象に残っている。

あの7月の夜は・・・もう31年も前のことなのか・・・。それにしても・・・ジャズは、やっぱり素晴らしい。どこで聴いても素晴らしい・・・。

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2006年6月29日 (木)

<やったあレコ 第6回> Urbie Green /All About Urbie Green and his big band(ABC-137)

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ABC Paramount 盤が好きだ~

みなさんは、30cmLPというものを、どんな風に手に持つだろうか?たぶん・・・レコードの外周の部分を両の掌(てのひら)で軽く圧迫して、
あのけっこうな大きさの円盤を支えているのだと思う。あまり一般的とは言えないかもしれないが、その30cm円盤の外周の部分が細かい
ギザギザ仕様になっている盤がある。こういう盤を持つと・・・そのギザギザが両の掌に小気味よくグリップして、なかなかいい感じなのだ。Bc12
ビリーテイラーを集めていた時に、いくつかのABC Paramount 盤を入手した。そしてその内の何枚かが「ギザギザ」していたのだ。
2年ほど前だったか、モアさんの掲示板にてABC盤が話題になった時、「ABC盤のギザギザの外周部分が好きだ」~その時は、notched edge という名前を勝手につけたのだが~
というようなことを書いたら、何人かの方が反応してくれて・・・あの「ギザギザ」がどんな工程で造られたのか? なぜもっと一般化しなかったのか?
というようなおもしろいやりとりになった。その時、当時の常連だったSKさんが(だったか?)あのギザギザ仕様のことを「ギザ・エッジ」と呼んだのだった。
それ以来、僕もあの「外周ギザギザ盤」のことを「ギザ・エッジ」と呼ぶことにしている。もっとも・・・自分がたまにコメントなどで使う以外には、
なかなか目にすることもないのだが(笑)

Bc_007 ABC盤の内袋~運がいいと、たまにはオリジナルのinner sleeve に盤が収まっていることがある。僕などは大体にして、古い盤のジャケットデザインやら
センターラベルそのものが嫌いではないので、「オリジナル内袋」がついてくると・・・すごく嬉しいのだ。そしてその内袋がカラーだったりすると・・・かなり喜ぶ(笑)
なにしろ当時のカラー内袋はキレイなのだ。Fantasy, Capitol, そして・・・ABC Paramount などでに「カラー内袋」が多いようだ。
こういうのを見てると、どの盤も欲しくなってしまう。そんな具合に内袋のジャケットに惹かれて入手した盤がいくつかある。Bc_003
Creed Taylor の Lonely Town は、そのタイトルとおりにいかにも寂しそうな雰囲気のジャケットがなかなかいい味わいである。
クリード・テイラーの演奏は・・・あまり印象に残ってない(笑)

コンガのキャンディードの盤もいくつか出ているようだ。僕は2枚入手した。キャンディドのファンというわけではないのだが・・・どちらの盤にも、アル・コーンがフューチャーされているのでけっこう気に入っている。ただし、ジャケットデザインはABCにしては・・・あまり品のいい感じとは言えないかもしれない(笑) <写真は一番下です>

ちょっと話しが脱線したが・・・本来は、ABC盤には~かなり地味ではあるけれど聴くほどに味わいが出てくる・・・そんな感じの、内容のいい盤が多い。
モノラルのちょっとこもったような感じだが落ち着いた感じの乾いた音質・・・それでいて仄かに温かみを感じられるような音質も悪くない。
アート・ファーマーやアービー・グリーンなどいいのがいっぱいあるが・・・とりあえずこの1枚を選 。

Urbie Green /All About Urbie Green(ABC 137)だ。
この人のボントロの音色の・・・柔らかさ・木目細やかさには・・・まったく独特な味わいがある。その音色に浸るだけで、それは快感でもある。
マイルスのMiles Ahead でも演奏されていた Springsville がすごく好きだ。作曲者は、John Carisi という人だ。マイルスのトラックでもそうだったが、
このCarisiという人の曲には、なんとも言えない「寂しさ」のような感覚がある。ちょっとメランコリックな雰囲気でもあり・・・何度か聴いていると・・・ますますあのメロディが心に残ってくるようなのだ。
グリーンの録音は1956年の8月23日となっている。マイルスのMilese Ahead 収録の Springsville は、1957年の5月である。
ひょっとしたら・・・マイルスは(おそらく発売されたばかりの)この Urbie GreenのABC盤を聴いたのではないだろうか?そうして・・・この曲を気に入り、ギル・エヴァンスに相談して、じっくりと・・・練りに練って・・・あの 素晴らしい Springsville を創り上げたのではないのだろうか? そんな風な
推測もしてしまうほど・・・このUrbie Green の Springsville も素晴らしい。Bc_002
なおJohn Carisi は、このLPのチーフ・アレンジャーとしてクレジットされていて、あと2曲、Carisiの自作曲も入っている。裏ジャケには
Carisiの写真も載っているくらいだから・・・この当時、注目されていた作曲家には違いないだろう。
このレコード、モノラルだが、トロンボーンが太めの大きな音量で~それでいてソフトな味わい~入っていてすごくいい録音だと思う。
演奏曲も、stella by starlight, cherokee, round midnight などいいスタンダードも演っている。曲によって、「はっ!とするような」見事なアルトが聞こえてくると・・・それは、ハル・マクージックなのである。演奏もいい、録音もいい、そしてこの「緑のグリーン!」もいいジャケットに見えてくる・・・全く素晴らしいレコードなのだ。

もう少し、ABC Paramount 盤についてのおもしろ話しを・・・。
ABC盤のABCSナンバー(ステレオ盤)の一部のタイトルに 「test tone入り」という盤があることが判ってきた。
67camperさんのブログに、ビリー・テイラーのABC盤が載った時に、
この「ピ~ッ音」のことがコメントされた。その同じ「ピ~ッ音」を僕は聞いたことがあった。ああ・・・あの盤だ!
この test toneとは一体何?・・・と思った方は、それを聞いたことがないことを・・・「ささやかな幸運」と知るべきである。
それほどに・・・酷いのだ(笑)
B面最後の曲が終わると・・・突如「ピ~~~~ッ!」という甲高い音が、かなりの音量で鳴る。
それまで「いいジャズ」を聴いてきていい気分になってるところに・・・この「ピ~ッ!」なのだ。
しかもこれがけっこう長く5秒くらいは鳴っているのだ。もう・・・シラけることおびただしい(笑)
その「音」が入っている僕の手持ち盤は・・・
Bc_006  Scott ”South Pacific Jazz"(ABCS-235) である。
このステレオ盤のジャケット裏の曲名表記すぐ下に、こんな解説があった。
<The final band on side two of this recording contains a test tone.This has been included as a convenience
for balancing your speakers. When the tone appears to be comeing from the center area,
rather than from either speaker, then your set is in proper balance.>
わざわざ「スピーカーのバランスを取るのに便利なように、(これまでも)付けてきた」とある。
has been・・・ということは、過去、何枚かに渡って続けてきた・・・というニュアンスだろう。
余計なお世話というかなんというか・・・。ステレオ盤初期の時代、ということなんだろう。

こんな「test tone」が、どの番号まで付いたのか?本当にステレオ盤のみに付いたのか?などの疑問が、当然のことながら湧いてくる。
67camperさんと僕は、それぞれの手持ちのABC盤をチェックにかかった(笑)

僕の方~ビリー・テイラー、オスカー・ペティフォード、クインシー・ジョーンズ、アービー・グリーン、ジョー・プーマ、ズート・シムスなど手持ちのABC盤は、
ほとんどがモノラルばかりなのだった。録音の古いものをメインに聴いているので、自ずとモノラル盤が増えてくるようだが・・・それにしても、
ABC盤にはステレオ・プレスが少ないのかもしれない。
67camperさんの手持ちの方も、やはり前期の番号のものにはステレオ盤はあまりないようだった。
そして、後期番号(イーディー・ゴーメなど)ならステレオ盤はけっこうあるが、それら後期の盤にはどれも「ピ~音はなし」
とのことであった。

ABCの場合、ステレオ盤のプレス枚数が極端に少ない、とかの事情で、共通ジャケットに「ステレオ・シール」だけ貼っていたのかもしれない。
そういえば、67camperさんのステレオ盤(ビリー・テイラー)も僕のステレオ盤(トニー・スコット)も共に「ジャケにステレオシール仕様」だ。
Tony Scott の方は・・・ジャケット右上の辺りに「ステレオ盤のシール」が貼ってある(写真参照)
この扇のような半円型というシールの形状も、67camperさんのステレオ盤のもの(楕円型)とは違うデザインだった。

そんな風なコメントをやりとりするうちに・・・
やはり<ステレオ盤の、ある番号までは「ピ~音付き」、ある番号からは「ピ~音なし」>というごく常識的な結論に至った・・・はずであったが、
 camperさんの New Billy Taylor Trio 226番と、僕のTony Scott 235番の 間の番号のステレオ盤:Don Elliot(ABCS228)
「ピ~音なし」という症例も見つかってしまったのだ。仮説が正しければ「ぴ~音付き」のはずだ・・・。こうなると・・・もう判らない。
意気込んで始めたtest tone...その後も続かなかったところを考えると・・・やはり相当に評判が悪かったのだろう。
そんなだから、途中の段階で、付けたり付けなかったり・・・と迷走していたのかもしれない(笑)
(詳しくは・・・67camperさんのブログとそのコメントをぜひお読み下さい)

「ピ~音」のことも「ステレオ・シール形状」のことも・・・いろんなサンプルを探っていけば・・・「~番あたりから「ピ~音あり/なし」、~番あたりからは「半円形型・ステレオシール」など、やはり、「レコード番号順」での
ある種の整合性みたいな事実が浮き上がってくることだろう。

ABC Paramount 盤の情報を~どんなものでもanything OKですよ(笑)~ぜひ「コメント欄」にてお寄せ下さい。
もっともこんな瑣末なことに興味を持つ人間がどれくらいいるのか?・・・はなはだ疑問ではある(笑)

Bc_004Bc_005

《このcandido、ABCにはもう1枚あるようだ。volcanoというタイトルで、そのジャケットは・・・見ない方がいいかもしれない。溶岩が流れ出るおどろおどろしい光景を背景にして、やはりコンガを叩いている~というジャケットだったはずだ。まるで火山噴火アクション映画の宣伝写真のようなノリなのだ。でも・・・もし入手できたら、またお見せします(笑)》

それにしても・・・ジャズレコードの世界は・・・まったく・・・底なしだあ!

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2006年5月24日 (水)

<やったあレコ 第5回> オスカー・ピータースンのClef盤『背中』

オスカー・ピータースンの<軽やか8ビート感覚>

Norman Grantz の得意技に、一人の作曲家の曲ばかりで1枚のアルバムを創る Plays ~というシリーズがある。エラには直線が個性的なビュッフェの絵画をジャケットにしたシリーズ、ピータースンにも「印象派風絵画」ジャケの9枚の作曲家シリーズがあった。

リンクしてある67camperさんという方のブログで、この9枚が紹介されている。どのジャケットもキレイなので全部が欲しくなる:笑) この9枚は大体1957年頃の録音で、Verve2000番台シリーズなのだが、9枚とも6000番台のステレオ盤でも出ているらしい。
そして、この「印象派風絵画」シリーズの「元ネタ」みたいなピータースンのレコードがあったのだ。こちらの録音はだいぶ古くて、1951~1952年らしい。ピータースンとレイ・ブラウン、そしてバーニー・ケッセル(あるいはハーブ・エリス)というドラムなしのトリオ編成のようだ。(1957年録音の方は、ドラム入りのピアノトリオ) Clef の600番台がオリジナルだ。それが・・・あのデヴィッド・ストーン・マーチンの「背中シリーズ」だ。どれも同じデザインなのだが「色合い」を変えている。Peterson_on_clef_etc_002_1

この「色合いの違い」がなかなか曲者のようで、どれでもいいのだが1枚入手すると・・・どうしても他のも欲しくなる(笑) それがNorman Grantz の作戦に違いないと判っていても・・・抗(アラガ)えない(笑)
僕は、この「背中」をEP盤で何枚か集めてきた。EP盤は”extended play” の略で、アメリカのEP盤というのは片面6~7分くらいで、たいていは4曲入っている。だから日本でいう「コンパクト盤」的なのだが、アメリカのEP盤は、基本的に45回転なのである。
このピータースンのEP盤「背中」・・・何人かは揃ったのだが、そうこうしているうちにEP盤(7インチ)と同じ図柄でLP盤(12インチ)も出ていたらしい、ということが判ってきた。当然、12インチがオリジナルだろう。それに・・・好きな作曲家の分は、やはり4曲だけでは物足りない。他の曲も聴いてみたい。12インチも欲しいよなあ・・・と、ごくごく自然な流れで12インチも少しづつだが入手した。それがこの3枚だ。 

Peterson_on_clef_etc_001_2    

《 plays Cole Porter/MGC-603(左)~ジャケ左上には”CLEF RECORDS”のシール。これをはがせば・・・たぶんmercuryという文字が現れるだろう(笑)
plays Irving Berlin/MGC-604(右)
plays Harold Arlen/MGC-649(真ん中)~この649番には”Hi-Fi”のロゴがジャケ左上にある。そしてジャケ裏には、"Oscar Peterson plays composers"なるシリーズ9タイトルが曲名入りで載っている。あと6枚もあるのかあ・・・(笑)》 

《追補》この後、refugeeさん、NOTさんのご指摘(コメント欄参照)により、このPeterson plays composersシリーズは、全10タイトルであることが判った。参考までに以下にリストアップしておく。

MGC-603 Oscar Peterson Plays Cole Porter
MGC-604 Oscar Peterson Plays Irving Berlin
MGC-605 Oscar Peterson Plays George Gershwin
MGC-606 Oscar Peterson Plays Duke Ellington
MGC-623 Oscar Peterson Plays Jerome Kern
MGC-624 Oscar Peterson Plays Richard Rodgers
MGC-625 Oscar Peterson Plays Vincent Youmans
MGC-648 Oscar Peterson Plays Harry Warren
MGC-649 Oscar Peterson Plays Harold Arlen
MGC-650 Oscar Peterson Plays Jimmy McHugh


ピータースンの4ビートの「ノリ」は・・・確かに凄い。あれよあれよ、とアイデアに満ちたフレーズが飛び出し、しかもそれが尽きない。そしてたいていは高音部で3連やら16分音符を軽く交えながら、華麗にアドリブを繰り広げていく。こうなれば、もうエンジン全開である。そうして、ピアノという楽器が参ってしまうのではないか、と思うほどそれはもう・・・果てしなくノリ続ける(笑) ただ・・・「ノリ」の質は、やはり・・・やや単調である。
いくら速いフレーズを弾いても、「ノリ方」がややスイング的なのだ。説明しづらいのだが~4ビートは1小節に4つの4分音符で進行していくのだが~その4つの4分音符、全てに「ノってしまう」というか・・・雰囲気で説明すると・・・「ウン・ウン・ウン・ウン」と、4つ全てに均等に体重がかかっている」という感じなのだ。
「ノリ」の話しは・・・難しい。「ノリ」の質というものは・・・もちろんミュージシャンの個性により違ってくるが、やはり演奏スタイル(結果としての)~例えば1930年代と1950年代では、明らかに違うと思う。
「スイング」と「ハードバップ」の違い~楽器編成や取り上げる曲の感じも違うが・・・一番の違いは、実は「ノリの質」かもしれない。
バップやハードバップ(と呼ばれるスタイル)になりつつある頃には、この「ノリ」が「ウー・ウン・ウー・ウン」という風に、1拍目と3拍目を意図的に弱くして、2拍目と4拍目を強調させたのだ。つまりアクセントに「でこぼこ」を付けたのだ。スイングというスタイルにおいては、そういう明確な意識はなかったと思う。
判りやすい例で言うと・・・ドラムスの「バスドラ」、あれを聴けばよく判る。スイング時代までは、1小節を、正に4分音符4回「ドン・ドン・ドン・ドン」とバスドラを鳴らしているのだ。もちろん「ドン」の「ン」を休符にして「ドッ・ドッ・ドッ・ドッ」と鳴らしたり、あるいは「ドッ・(休み)ドっ・(休み)」と1小節に2回鳴らす場合もある。ただしこの2回の場合も・・・やはり、1拍目と3拍目にアクセントを置く場合が多かったはずだ。いずれにしても、スイング時代の「ノリの質」というのは・・・1小節の4分音符4回を「均等に」ノッている、そんな意識だったと思う。
ピータースンの「ノリ」には・・・そんな「ウンウンの感じ」が残っているように思える。もちろん・・・それが悪いというわけじゃあない。スイングのノリは気持ちいいのである。
1947年のライオネル・ハンプトンの「スター・ダスト」~あれだってやはりノリで言えばスイングだろう。だけどとにかくあのアドリブとあのノリは、実際・・・気持ちいいのである。
しかし・・・ピータースンの、そのノリまくる「ノリ」をあまり聴くと・・・やや疲れてくる。ステーキの後は野菜を食べた方が健康にもいい(笑) 

そこで・・・ピータースンの「バラード」なのである。象徴的な意味で「バラード」と書いたが、「ボッサ」あるいは「ラテン」でも一向に構わない。
Clefの古い音源からMPSやパブロなどの新しい録音まで、どのレコードを取っても、たいてい「バラード」や8ビート系「ボッサ風」、あるいは16ビート系(サンバ風)の曲が何曲か入っている。ピータースンはやはり判っているのだ~4ビートばかりでは、聴き手が飽きてしまうということを。

前回の<夢レコ ピータースンとVerveレーベルのこと>で取り上げた「The Trio:Live From Chicago」でも2曲のバラードを演奏している。 
the night we call it a day (マット・デニス作曲です)と 
in the wee small hours of the morning である。
ただでさえ「ノリノリ」になっていたライブでの演奏・・・そんな曲にはさまれて、この2曲が実にいい味わいなのだ。「あれっ?ピータースンってこんな静かにも弾くのか」と。少々驚いたほどだ(僕はピータースン初心者なので、あまり多くのアルバムを聴いてなかった) 
そして、ライブの場でこういうチャーミングなメロディのバラードをあえて演った・・・そのことにピータースンのセンスの良さも見直した。

そういえば・・・wheat land というピータースンの自作曲もあった。この曲、「カナダ組曲」(limelight)が初出自だと思うが、ちょっと後のMPS盤「グレイト・コネクション」でも再演していた。「グレイト・コネクション」は、あまり話題にはならないが、たしかベースのペデルセンが最初に共演した盤だったと思う。こちらの盤に入っている wheat land がなかなかいい。軽いボッサ風の曲だ。ペデルセンが弾くウッドベースのそのたっぷりとした音量に支えられて、ピータースンがソフトなタッチで気持ち良さそうに、シンプルで気持ちのいいメロディを弾く。ラストのテーマで徐々にゆっくりになる辺りもチャーミングだ。

ピータースンは「ラテン風」も嫌いではなかったようだ。さきほど挙げた「背中シリーズ」の Plays Cole Porter ~この3枚の中ではこれが一番好きだ~のような古い録音の盤では、ラテンっぽいノリで何曲か演奏している。以下の曲がそれだ。Peterson_on_clef_etc_003
I've got you under my skin

I love you

so near and yet so far

in the still of the night

night and day

この辺の曲はギターのイントロところから~「ウチャーチャッ・ウチャッ・ウチャッ」という具合に聞こえる~やけに軽やかなのである。
ギターが生み出す「ラテンのノリ」というものには一種独特な「軽やかさ」があって、僕はそれを嫌いではない。このギターはバーニー・ケッセルなのだが、やはり名人芸である。そのスムースな気持ちのいいラテン風のリズムに乗って、ピータースンが、これまた全く力まない軽やかなタッチで、メロディを弾きだす・・・う~ん、気持ちいいっ!

4ビートにおいても、あまり粘らないピータースンの8分音符のノリは、ボサやラテンの8ビート系の曲には、自然と「合う」のかもしれない。
たいていは、「テーマだけラテン風」あるいは「ラテン風と4ビートが交互に出てくる」というパターンなのだが、全体に流れる「軽やかさ」が~ドラムレスというのも、その「軽やかさ」の秘密かもしれない~どうにも気持ちがいいのだ(笑) ピータースンの味わいどころは、「グイグイのノリ」だけではなかったのだ!

作曲家別ということで言えば、このコール・ポーターの曲想にはラテン風味が合う、ということかもしれない。
(2つ上の写真右側の)レモンイエローのジャケットの Irving Berlin 集では・・・あれっ、ラテン風がひとつもないぞ。ほとんどが4ビート、あとはバラードなのだ。その少しのバラード・・・これもなかなかいい味わいだ。

isn't this a lovely day~シンプルに繰り返すだけのようなメロディだけど・・・捨てがたい味がある。終始ソフトなサウンドで4拍づつ刻むケッセルのギターの伴奏が効いている。レイ・ブラウンが時々、得意なカウンター的フレーズを繰り出したりする。
say it isn't so ~これなどは相当に地味な曲だが・・・瑞々しいタッチと芯のある音色で端正にメロディを弾くピータースンは、(僕には)すごく新鮮だ。
how deep is the ocean~こういうマイナーな曲調は・・・ピータースンにはあまり似合わないようだ(笑)「暗いパッション」という雰囲気にはならないのだ。しかし、その「サラッ」とした感じもまたピータースンなのだろう。

Peterson_on_clef_etc_004_1 《plays Cole Porterの裏ジャケット。 アロハシャツを着た若々しいケッセルが写っている。嬉しそうにベースを弾くレイ・ブラウンも若い。ピータースンのネクタイもオシャレだ》

ところで、このclef盤の音質なのだが・・・残念ながら素晴らしいとは言えないのだ。ピアノの音が、高音がややキツメで線が細い(ように聞こえる)
その分、ピータースンのタッチの小気味よさはよく出ているのだが。それより残念なのは、レイ・ブラウンのベースの音である。たぶん、録音のマイクの性能のためだろうと推測するのだが、1952年くらいの録音だと、どうしても「ウッドベースの音」が弱い。弱いというか、遠いというか、はっきりしないというか・・・ウッドべースの「鳴り」や「音圧」が、あまりうまく録られていないことが多いように思う。同じレイ・ブラウンの演奏であっても、後の「ロンドン・ハウス」でのライブ録音のベース音の質感とはだいぶ違うので、せっかくのレイ・ブラウンの「音圧ベース」が、いまひとつ力強く聞こえてこない。まあ・・・こういう古い録音盤を聴くときには・・・そのミュージシャンの「録音のいい盤での音」をイメージしながら、「あんな感じ、あんな音圧でに弾いているんだろうなあ・・・」と想像しながら聴くしかない。
そういう聴き方~「イマジネイション補正聴き」~僕は案外・・・得意なのだ(笑)

それから古い時代のミュージシャンで「録音のいいレコード」がない場合でも、「補正聴き」は必要だと思う。イマジネイションでもって「実際に出ていたであろう楽器の音~鳴り方・響きの具合」を、想像しながら聴くのも楽しいものである。
たとえば、パーカーのライブ音源などの場合~たいてい(マイクの入力レベルの関係で)ドラムはバシャバシャと歪み気味でやかましいし、ベースは逆に遠くのほうで微かにボンボンと鳴ってるだけ~そんな音質もザラである。でも勘違いしてはいけない。その場の演奏においては、ドラマーが叩くドラムのサウンドが「歪んでいた」わけではないのだ!ベーシストも、いい加減な音を出してただ突っ立っていたわけではないのだ!ついでに言えば・・・「シュ~」というレコード盤のノイズも、ライブの場では絶対に存在していなかったのだ!そして、そんな「よくない音」が録音の状態によるものであることを考えに入れてから、じっくりとパーカーのアルトの「響き」を聴けば・・・それが相当に大きな音で鳴っており、豊かにそしてシャープに響いていたであろうことは充分に想像できる。聞こえにくいベースも丹念にそのベースラインを聴いていけば・・・(ボム・ボムという鳴りを感じていけば)カーリー・ラッセルやトミー・ポッターが、きっちりとひとつづつの音を進めているのが判るはずだ。

そういえば・・・むかしジャズ喫茶に通っていた頃~僕はモンクやエヴァンス、ロリンズなど強い個性・自我を主張するタイプに没頭していたので~「ピータースンなんか・・・」という僕に、そのジャズ喫茶のマスターは「ピータースン・・・バラードなんかは案外いいんだよなあ・・・」と独り言のようにつぶやいたものだ・・・。だけどあの頃の僕には、そんなことは全く判らなかった。あれから30年も経って・・・ようやくオスカー・ピータースンを聴き始めている(笑)

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2006年5月 4日 (木)

<思いレコ 第10回> ビル・エヴァンス/ポートレイト・イン・ジャズ

when I fall in love ~エヴァンスのあの水晶のようなA♭・・・。

このレコードをとても好きだ。ビル・エヴァンスという人がスコット・ラファロというベーシストと出合って、その喜びの中で両者が生き生きと飛び跳ねている・・・そしてお互いがお互いのサウンドを聴きながら、嬉々として音楽を創っている・・・そんなジャズの理想郷のようなレコードだと思う。そしてよく言われる「インタープレイ」などという言葉に囚われなくても、ピアニストとしてのエヴァンスの本領~「尖がったピアノ表現」とでも言うべきか~が最もよく出ているレコードだと思う。だから内容には・・・全く文句ない。
そんな文句ない名演であるがゆえに・・・わずかなキズに気付いてしまうのかもしれない(笑)

ビクター国内盤(SMJ-6144:1976年)を何度も聴いてきたのだが、以前から「気になるポイント」が何箇所かあった。

1.ベースやピアノの音が急に揺れるようにクリップする(音揺れ箇所)
  A面1曲目:come rain or come shine:
  最初のテーマの途中~この曲のメロディは前半と後半が同じパターンなのだが、後半のテーマに入って5~6小節目のところで、一瞬だが、ピアノ・ベース共にはっきりと揺れる。
  B面1曲目:what is this things called love:
  エヴァンスのソロが終わり、ベースがソロをとっているバックでピアノが「合わせ」を入れてくる辺り~ここでは明らかにベースの音が「揺れて音圧も減衰」してしまう箇所が何度もある。ピアノよりも特にベース音が揺れているようだ。
  B面2曲目:spring is here:テーマの終わりに近い部分~上昇するメロディにピアノとベースが4分音符で合わせる箇所~ここで、ラファロのベースの音がかなり「揺らぐ」。この「合わせる箇所」は、この曲の最もいいところなので、聴くたびに、この「揺れ」にはがっくりしていたのだ。
  
2.バラードの静かな場面で、わずかだが「キ~ン」というような高周波っぽい音が、継続的に聞こえる。
  B面2曲目 spring is here:この曲にも気になるポイントがあった。まず全体にわずかにだが聞こえる「キ~ン(あるいはシ~ン)」というようなノイズ。バラード(一般的に静かにスロウに演奏される)なので余計に目立つのかもしれないが、このノイズは、最初に日本盤を聴いた時から感じていた。同じバラードのA面 when I fall in love でもわずかに同様の「キ~ン」があるようだ。
*他のレコードでも、例えば静かなバラードの時、プチ・パチというノイズは聞こえたとしても・・・この類のノイズはあまり記憶にない。
  
3.この when I fall in love~僕はこの曲を大好きなのだ。エヴァンスはこの曲で素晴らしいインスピレイションを見せてくれる。(後述)
  しかし・・・以前から「気になる箇所」がある。レコードを聴いてると、わりとよくある現象~演奏中のフレーズが、実際に弾かれたタイミングよりちょっと先に、小さな音でエコーのように聞こえてくる現象~「前ゴースト」(テレビの電波が2重になって映ることをゴーストというらしいので、その呼び名をマネしてみた)が目立つのだ。この曲もテーマが前半・後半と同パターンなのだが、後半テーマに入って3~4小節目の辺りで、エヴァンスが「今、弾いてるタイミング」とは関係なく、高音のトリル風フレーズが「エコー」のように聞こえるのだ。そお後半テーマの最後の辺り(13~14小節)でも同じような「エコー」が聞こえる。高い方の音域で細く小さく、しかしはっきりと聞こえるのだが、それが「どの箇所」で弾いたフレーズなのかはよく判らない。

  僕は、1.の「ベース音が揺れる感じ」は、もうすでに「録音された段階」での不具合だと思っている。多分・・・リヴァサイドのスタジオのテープレコーダーの調子が悪かったのか・・・あるいは録音スタジオの電源供給が不安定だったりしたんじゃないか? それくらい何か根本的な要因があったのでは・・・と思えるほど、いくつもの箇所で「クリップ」する。例えば、キャピトルやマーキュリーでこんな場面は耳にした記憶がない。もちろん「録音段階での不具合」などではなく、保存したマスターテープの管理が悪かったために、「クリップ」したのかもしれない。だとしたら・・・早い段階でのマスターテープを使った初期プレス盤なら、あるいは「揺れない」かもしれないぞ・・・というのが僕の希望的観測だった(笑)

そんなわけで~つまりそんないろんな「疑問点」が日本盤だけの不具合なのかどうかを確かめたくて~<欧州リヴァーサイド盤>(モノラル・青ラベル) を入手したのだ。もちろん米オリジナルの「ステレオ」や「モノラル」が欲しいのだが、それらは・・・とても高い(笑) だからちょっと、いや・・・かなりの妥協をしてのプレス時期が古そうな<欧州リヴァーサイド盤>なのだ。 

_005_3                       

                 

             

               

《上の写真:左側が<米オリジナル・モノ盤> 右側が<欧州リヴァーサイド盤>~表ジャケットの写真・デザインは全く同じだが、このINTERDISC盤は、米オリジナルモノラル盤(左側)よりもコントラストをやや弱めにしたようで、全体の色合いが、明るくてやや薄めになっている。だからエヴァンスのメガネの奥の右目が、米オリジナル盤よりよく見えるようだ》

3_001《裏ジャケも米オリジナルとほとんど同じだが、左下に秘密があった(笑) distributed in Europe by INTERDISCと表記してある。もしセンターラベルを見られない場合は、この裏ジャケットの左下に注目すればいいかもしれない(笑)》 (写真左)

3_003_1写真右:《欧州盤のセンターラベル。外周に文字が入ったり、タテ字のMICROGROOVEやLONG PLAYINGの文字がない。ラベル下部にあるはずのBILL GRAUER PRODUCTIONS NEW YORK CITYという表記もない》 

この「欧州リヴァーサイド盤」~期待を込めて聴いたのだが・・・上記の「気になるポイント」の1・2・3、そのいずれもが「同じ箇所」で「同じようなレベル」で聞えてきたのだ。特に1.の「ベース音の揺れ」は、全体のベース音が迫力あるだけに、その「揺れ」は却ってひどく聞えるようでもあった。「古そうなプレスの盤」だったので、あるいは・・・と期待したのだが・・・非常に残念だ(笑)

さて・・・「欧州リヴァーサイド」のラベルのことで「こだわりの杜」(ニーノニーノさんHPのBBS)のお仲間:Yoさんとメールやりとりした際(さきほどの「前ゴースト」という言葉は、Yo氏のネイミング)、そんな僕の「個人的興味」を知ったYoさんが、お手持ちの2枚の「ポートレイト・イン・ジャズ」を、「それじゃあ、いろいろと聞き比べてみてよ」と電光石火の早業で(笑)送ってくださったのだ。
  その2枚とは・・・
  <米オリジナル・モノラル盤(青・小ラベル)> と
  <オルフェイム・ステレオ盤(緑ラベル)>だ。
  この2種と、僕の手持ち・・・
  <欧州リヴァーサイド・モノラル盤(INTERDISC・青ラベル)> と
  <ビクター国内盤(SMJ-6144)1976年>の2種を加えて、
  計4種の「ポートレイト・イン・ジャズ」の「音質」と・・・それから問題の「クリップ箇所」の有無などを聴き比べてみた。

それでは「音質」の印象を少し。
<ビクター国内盤(SMJ-6144)1976年>~
一聴して全体の歪み感が少なく・・・スッキリしている。案外に悪くない。
ピアノの音自体にも安定感があるので、とても聴きやすいように思う。ラファロのベースは、この「ポートレイト」では「右側」から聞こえる。ヴァンガードのライブでは「左側」だったはずだ。ベースの音は・・・ややレベルが低めで、音自体もやや薄いようだ。僕はもう少し強めにベースを聞きたい。「鳴り」「音圧」「気高さ」「艶」など、ヴァンガードでのラファロの音と比べると、少しづつだが劣っているように感じる。ちなみに「音圧」については、この日本盤には絶好の「比べポイント」がある。「枯葉」の「ステレオテイク」と「モノラルテイク」が、A面2曲目と3曲目に続けて入っているのだ。3曲目になると・・・右側から聞こえていたラファロのベースが中央に寄ってくる。そして「分厚いベース音」に豹変するのだ。モノラルに圧縮された分、全ての楽器の密度が濃くなったようだ。ベースの「音圧」に限れば、この「モノラルテイク」の方がはるかにいい。これくらいの音圧で、ベースが全体を押し出していく感じが、本来のラファロの持ち味だと思う。但し・・・今度は「艶」が薄くなった。「艶」というより「響きの具合」という感じのことだが、ラファロのあの「後鳴りするような響き」が、うまく録られていないのだ。僕はステレオ録音が嫌いではない。ギュッとしまったモノラルもいいが、ベースの響きの余韻をうまく取り込んだ「ステレオ録音」には「鳴りかた」に「色気」があるように思う。
その好例が あの Waltz For Debby と Sunday At The Village Vanguard の2枚なのだ。(このライブ盤については・・・いずれまた)

<オルフェイム・ステレオ盤(緑ラベル)>写真右側~_001_7
                 

             

               

プレスや盤質自体の問題だと思うが、ちょっとヴォリュームを大きめにした時の「シュ~」というノイズが、やや大きいようだ。
一聴して、ピアノの音の芯が弱く、ドラムシンバルなど全体的に、(ビクター国内盤と比べても)やや鮮度感がやや薄いように感じた。
但し、右チャンネルから聞こえるラファロのベースに関しては・・・ビクター盤よりも入力レベルが高く、より前に出てくるような感じ。
ラファロのベース音のあの生気ある感じは、オルフェイム盤の方がよく出ている。

  <欧州リヴァーサイド・モノラル盤(INTERDISC・青ラベル)>~
モノラルの「詰まった」感じの音に一瞬たじろぐが・・・ちょっと聴き進めばすぐに慣れる。モノラルになった分、ベースやピアノは明らかに厚い音になった。ラファロのベース音も「厚くなって大きめな音」に聞えるので、より迫力が出てきた。荒々しくなったとも言えそうだ。

<米オリジナル・モノラル盤(青・小ラベル)>上写真の左側~
B面からかけてみる。1曲目 what is this things called love の出だしの「ダッダ~ン・ダ~アダッ!」から力強さが段違いだった。
ピアノの音に強さと粘りがあるし、ベースの音色にも1本芯が通ったような力強さがある。それにベースの音像の輪郭が、欧州リヴァーサイド盤よりもぐっとクッキリしてきたようだ。全ての楽器に音圧がしっかり感じられるのだ。強く弾いたピアノの音が、よく伸びその力感が落ちない。音に「馬力」があると言ってもいい。この米オリジナル盤をこうして聴くまでは、実は、欧州盤もなかなかのものかもなあ・・・と密かに期待していたのだが、やはり米オリジナル盤はモノが違うようだ。

A面:when I fall in love~音圧、ピアノのタッチの力感が充分に感じられる。エヴァンスのタッチは弱い、と思われているようだがそんなことはない。エヴァンスは、このバラード曲の出だしのメロディ3音目(A♭の音)を、ぐっとためて「ッポ~ン」と投げ出すようなタッチで、このA♭のシングルトーンをたっぷりと伸ばすように弾いている。この辺りに、エヴァンスの「美学」がよく表れているように感じる。そしてこのA♭は・・・相当に強いタッチだと思う。和音でゴンゴン押してくるようなタイプの強さではないが、パッと見では線は細いが実は「鋼のような硬質さ」という質のタッチの強さを、ビル・エヴァンスは持っているのだ。
米オリジナルモノラル盤をこうして聴いていると・・・そのピアノの音が生き生きしているので、エヴァンスのピアノ表現に~特徴的な長いフレーズ、その中のタッチの強弱、張り詰めた感じ~とても素直に入りこめる。トータルとしての「鮮度感」が一番高いことは間違いないようだ。
どう聴いても・・・やはり4種の中ではダントツに素晴らしい!さすがは米オリジナルモノラル盤だ。今、再び「米・オリジナル・モノラル盤」を聴いている。そして・・・この「A♭音」だ・・・。「ッポ~ン」と思い切り伸ばしたそのピアノの音が・・・水晶のような音に感じられる。「タッチの芯」がしっかりと感じられる。素晴らしい!
それからさきほど「エヴァンスはこの曲で素晴らしいインスピレイションを見せてくれる」と書いたが、その素晴らしい「インスピレイション」(と僕が感じる箇所)は・・・2コーラス目の前半(いわゆるアドリブでのソロはこの16小節のみ。この曲は2コーラスのみで終わるのだ))前半・後半のテーマが終わって、次の前半部分の8小節目辺りから突如、現れる。長いフレーズを~そのフレーズは細かい「譜割り」のもので、どう考えても、この場でいきなり浮かんできたようにしか思えない~実に不思議なタイミングで弾くエヴァンスなのだ。あるフレーズを弾き始めたかと思うと「グッと」停めてしまう。そうしてすぐ後には、長いフレーズを「溢れる」ように弾き込んだかと思うと、また停め。そしてまた次のフレーズへ・・・という感じなのだ。この辺りの展開はまるで・・・通常の1・2・3・4という「タイム感」を超越してしまったかのようだ。エヴァンスが「ぐぐ~うっ」と堪えてフレーズを停めている2~3秒の凄まじい緊張感。このわずかな「間(ま)」が永遠にも感じられる。そうしてその「スピード感」は凄まじい。スロウなテンポで展開しているだけに、「間」と「流れ」での落差を、よけいに感じるのだ。そんなようなことを、エヴァンスは、この4小節の中で展開してしまったのだ!「エヴァンスの音楽」が、文字通り、溢れ出てきたようなすさまじい展開に・・・おそらくラファロとモチアンも目を見張ったはずだ。そうして・・・あの「間」を、2人もまた強靭な集中力で「耐えた」のだろう。この when I fall in love・・・ビル・エヴァンス・トリオのこのバラードを、僕は本当に素晴らしいと思う。

さて、こんな風に素晴らしい音質の<米オリジナル・モノラル盤(青・小ラベル)>なのだが、このオリジナル盤での「気になるポイント」1.については・・・
A面1曲目~come rain or come shine ~
日本盤ではあれほどハッキリと揺れた、あの5~6小節目での「音揺れ」が、この米・オリジナルモノ盤ではほとんどないようだ。よく聴いてみても・・・ほんのわずかにピアノが揺れるようにも聞えるかな?という程度だった。日本盤でも同様だったが、ベースに関してはA面はだいたい安定していい音のように思う。
ところが残念ながら、前述したB面1曲目の what is this things called love でのベースの「揺れ感」は・・・やはり感じられたのだ。
特に後半のテーマに入る前あたり、ラファロがビートをぐいぐいと押し出してくるのだが、その「音圧」のもの凄さに、ひょっとしてマイク入力段階で「歪んだ」のだろうか?
A面では、どの曲でもあれほど安定して力強いベースサウンドだったのだが・・・。B面の他の曲では、これほどベースの音色に「揺れ」はないようだ。
この曲に限り・・・なぜかピアノよりもベースに集中してクリップするようだ。
それから、B面2曲目の spring is here の「上昇メロディ」の箇所での「音揺れ」も、やはり全く同じ箇所で、同じぐらいのレベルで「揺れて」聞えた。

「気になるポイント」の2.~あの「キ~ン」についてはどうだったのか?
こちらも残念ながら・・・日本盤、オルフェイム盤、欧州盤、米オリジナル・モノラル盤・・・どの盤でも聞こえるように思う。そのレベルもほとんど同じだった。ただ、この「キ~ン」はごくごく小レベルで鳴っているだけなので、演奏がピアニシモになった場面以外では、それほど気にならない。

「気になるポイント」3.のA面のwhen I fall in loveでの「前ゴースト現象」についてはどうだったのか・・・?
結論から言うと・・・この米オリジナル盤にもゴースト音は認められた。4種ともに多少のレベル差はあるのだが、全ての盤の同じ箇所に「ゴースト音」はあったのだ。ただ、この4種の中では、「米オリジナルモノ盤」と意外にも「日本ビクター盤」が、このエコーのレベルは、わずかに低いように聞こえた。

こうやって、4種の「ポートレイト・イン・ジャズ」を聞き比べてみた。その結果、僕の気になる「ベース音の揺れ」や「ゴースト現象」は~「米オリジナル・モノ」「米オルフェイム・ステレオ」「欧州・モノ」「日本ビクター・ステレオ」~全ての盤で、聞えたのである。ということは・・・「ラファロの音圧で歪んだ」は冗談にしても・・・やはり「録音段階」での何らかの歪みなのだろうか? それとも最初期の「マスター・テープ自体の不良」あるいは「ラッカー盤」製作段階での何らかの不具合があったのかもしれない。判らない・・・とにかく演奏が本当に素晴らしいだけに、やや残念なことではある。先に書いたように、これらの「音揺れ」が録音段階、「ゴースト」が最初のマスター段階からあったとすれば、全てのプレス盤でも同じ結果になるはずだ。
だが・・・ひょっとしてこれらの盤へのマスターテープの保存状態が悪かったために~テープ転写や劣化で、「音揺れ」「クリップ」「ゴースト」が発生した可能性もなくはない。だから残るは・・・まだ見ぬ「米オリジナル・ステレオ盤」だ。ひょっとして「黒・ステレオ」のみは、ごくごく初期のマスターを使っていて~つまりベース音の揺れやゴースト音の一切ない状態~というようなことはないだろうか。そうしてその盤から飛び出てくるのが・・・まったくベース音の揺れない spring is here だったら・・・そんなことを無想する僕である。

<補足 1>~先日、たまたま昔の音楽仲間4人<konken氏(b)emori氏(b)Yシゲ氏(as)Sマサ氏(ds)>と僕:bassclefが、konken氏宅へ集まる機会があった。その場で、この「ポートレイト・イン・ジャズ」の「音揺れ」についてチラッと話したところ・・・即座にemori氏が「ああ、あれねっ!そうそう、揺れる揺れる」と反応してきた。他の3氏は特に思い当たるフシはないようだったので、(できるだけ先入観を与えないように)「ラファロのベースの音でまずいところがある」とだけ伝えてから、上記3曲を、まずCD-R(konken氏が spring leaves(milestone:1976年くらいの米・2枚組)から焼いたもの)で聴いてみた。
やはりA面1曲目~come rain or come shine ~日本ビクター盤と同じ箇所で「ピアノとベースの音の揺れ」~オープンリールのテープがほんの一瞬だが、回転ムラを起こしたような感じの揺れ~を5人が確認した。下記の「気になるポイント2の「キ~ン音」も、emori氏は「気になる」とのコメント。
次に「ポートレイトインジャズ欧州盤」のA面1曲目、B面1、2曲目をかけたところ・・・特に[B面2曲目の spring is here の「上昇メロディ」の箇所]では・・・4人が揃って「ああ、揺れてる」という声を上げた。
そんなわけで・・・「ポートレイト・イン・ジャズ」には、やはり「ある種の歪み音」があることを確認した。もっとも、emori氏も相当なラファロ愛好家で、僕と同じようにラファロのベースラインを集中して聴き込んだ経験があるわけで、そんな風に「ベースの音色」に注目して、それを連続して聴いていくと・・・こういうちょっとした「音の揺れ・音像の乱れ」は、いやでも目(いや、耳に:笑)につくだけのことかもしれない。

<補足 2>上記集まりの10日後、emori氏から「ポートレイト~」再検証の情報(ビクターのCD3種)をいただいた。使用したマスターの情報もあり、なによりも僕が比較したのはLPのみだったので、以下にemori氏のメール(部分)を転載したい。[以下、斜め文字の部分]

~私も注意深く聴いてみました。そしたら、なんと、まだあるんですねぇ~。まぁ、(bassclef) さんも確認している部分かもしれませんが。私は、CDからですが…。書いておきます。音はヘッドフォンで聴いています。
■検証に使った音源
1:1985年に発売された(と思われる)ビクター音楽産業(株)発売元の「Portrait In Jazz」のCD。“VGJ-1506”

※このCDに使用した音源:
下記の事がCDに記されています。
『本CDマスターには、ファンタジー本社(米、バークレー)の保有するオリジナル・アナログ・マスター・テープをロスアンジェルスにある、JVCカッティング・センターに空輸し、ジョー・ガストワートによりJVC/DAS-900デジタル・オーディオ・マスタリング・システムでデジタル・トランスファーされたものを使用しております。』と。

2:2005年に発売された(と思われる)ビクター(日本)発売元の「The Complete Riverside Recordings」のCD。“VICJ-61292”と“VICJ-61292”の二枚。このCDは、「20bit K2/Super Coding」だそうです。

※このCDに使用した音源:
下記の事がCDに記されています。
From A Master Recordings owned by Fantasy INC. USA

=== 私が見つけた“あら”===

A : 「When I Fall In Love」
この曲の出だしのテーマ(サビ部)にノイズが入ります。左チャンネルに。
で、何気なく、1)のCDのライナーノーツをめくったら、下記の事が書いてありました。
『●お断り
本CDは、1950年代のオリジナル・アナログ音源からタイレクトにデジタル・トランスファーされたマスターを使用しております。その為、テープ・ヒス・ノイズ、歪み、アナログ・ドロップアウト(音の欠落)といったオリジナル・アナログ・マスター・テープの瑕を含んでおります。これらは、録音レベルの低い部分、及び音が消えかかる部分に顕著ですが、本シリーズは現在入手しうる最も質の高いオリジナル・マスター・テープからのCD化であり、又その歴史的音楽性の高さを鑑みてリリースされたものであることを御了承下さい。尚、本CD「When I Fall In Love」の左チャンネル(ヒス音とさわめき)中にガサ・ノイズがあります。』
と日本語で書いてあり、英文もありましたので書いておきます。

NOISE INFORMATION
This recording is taken from the original analog 1950"s source material, and therefore contains inherent tape flaws, such as hiss, distortion, and analog dropouts.  These tape flaws become more evident on low level passages and on most fades.  There are clicks in left channel (hiss and buzz) on 「When I Fall In Love」

B : 「What Is This Thing Called Love?」
1 : この曲の出だし:音が詰まっての出だし。特に、左チャンネル。
2 : 2分35秒から36秒の間の一瞬、ベース音が揺れる。(これは、私にはそう聴こえます)
この曲のベース音は、最初から最後まで、微妙に揺れているように聴こえます。特に後半部分。

C : 「Come Rain Or Come Shine」
出だしのテーマ後、ピアノソロに突入時に、ノイズ。これも左チャンネルのはず。

D : 「Peri's Scope」
1分37秒から38秒の間の一瞬、ベース音が揺れる。

E : 「ピー」という継続ノイズ音
これは、いろいろな曲の至る所で聴こえます。特に静かな曲「Spring Is Here」そして、静かになる部分。とくにベースソロ部、例えば「Witchcraft」

特に、2)のコンプリ盤は、「20bit K2/Super Coding」仕様のせいか、1)のCDより、上記の“あら”は一層はっきりと聴く事ができます。「Spring Is Here」のピー音は、でかいこと!そして、合わせの揺れも、1)が小波なら、2)は大波って感じです。~
[以上、斜め文字の部分がemori氏の情報]

・・・最後に強調しておきたいことがひとつ。
「いい演奏ならば、どんな盤(モノラル、ステレオ、オリジナル、日本盤・・・)で聴いても~演奏された音楽に集中さえすれば~絶対に楽しめる」ということだ。この盤が大好きだったので、だからその中のいくつかの気になる点について、こんな「比較検証」みたいな話しになりはした。だけど・・・もちろんのことだが、あるレコードを聴くのに「~盤でなくてはダメだ」とは思わない。今回は、この「ポートレイト」の同一曲を、いろんな盤で何度も聞き比べてみた。その際、どの盤で聞いていても(冷静に検証的に)・・・知らず知らずの内に、 その「演奏」に聴き入ってしまい、例えば2曲目だけを検証しようと聞いていたつもりでも・・・つい最後まで聴いてしまうのだった(笑)
そんなだから、「盤」による違いを検証しつつも・・・その一方では「演奏」を聴いていけば(その音楽の中に入り込んでしまえば)どんな盤でも構わないじゃないか!
・・・そんな気持ちにもなった。そのことを再確認できたことも、だから・・・うれしかったのだ。
その音楽を好きで、聴いていれば、その音楽からは絶対に「何か」は伝わってくるはずなのだ。
ただし、もっと突っ込んだ拘りを持ってその音楽に接したい時に、その拘りの強さに応じた「いい音の盤」というものは・・・やはりあると思う。
例えばあなたが・・・エヴァンスの「水晶のタッチ」をどうしても味わいたい・・・というような場合には(笑)

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2006年4月27日 (木)

<ジャズ回想 第4回> ニーノニーノさんのオフ会のこと。

こんな具合に・・・白馬の夜は更けていった~

第2回 白馬/杜の会が、今年もつい先日、行われた。場所は昨年と同じ、信州・白馬のオーディオ・ペンション「洗濯船」である。
「杜の会」とは・・・オリジナル盤通販専門店ニーノニーノさんのBBS「こだわりの杜」のオフ会のことだ。
詳しくは・・・そのHPのBBSとコラムをお読み下さい。こだわりのオヤジたちがいつも集っております(笑)http://www.ninonyno.ne.jp/ninonyno/topmenu.htm

今年の「杜の会」は、だいたい以下のような流れで行われた。
第1部~「Duke氏のレコード語り」(地下JBLルーム)
第2部~「みなさんの一押しレコードpart1 」(1Fマッキンルーム)
第3部~「家庭的かつ良心的なオークション」 そして・・・
第4部~「みなさんの一押しレコードpart2 」(地下JBLルーム) だ。

食堂(1Fマッキン)での第2部「みなさんの一押しレコードpart1 」は、ちょっとお酒の入った夕食の後、誰かれとなく「じゃあそろそろ・・・」「そうですねえ・・・ゲヘヘヘッ(笑い声)」てな感じで・・・もちろん和気アイアイと、しかし若干の緊張を伴って始まる。みなさんが持ち寄った「一押し盤」の中から1枚を選び、簡単なコメントをつけて1曲づつ披露するわけだ。みなさん、もちろん「自分が好きな盤」をかけることとは思うが、そこはやはり相当な音楽好き達を前にしてのお披露目である。若干のミエもないわけではない(笑) 
「あんまり音が良くないレコードだなあ」とか「これのどこがいいんだ?」「よく見る盤だな」などと思われないだろうか?・・・などと余分なことも考えてしまう。(いや、そんなのは僕だけか?)
だから・・・ちょっと「かっこつけた盤」になってしまうこともあるかもしれない。「絶対に大丈夫な盤」。つまり・・・明らかに演奏のいい名盤、明らかに音のいい盤、明らかに希少盤・・・そんな感じか。

とにもかくにも、今年が初参加のお2人から、1Fマッキンルームでの音だし(第2部)は始まった。僕は JATP new volume 5 (clef)12インチ(古い録音だけどサックスの音色などが素晴らしい)と Lee Morgan/Here's Lee Morgan (vee jay) (僕の中ではちょっと新らしめの「いい録音」1960年のステレオ録音。)Duke Plays Ellington (capitol)(12インチ:ターコイズ)などを用意していた。
_003_1僕の順番は3人目。1人目が女性ヴォーカル(ポリー・バーゲン)、2人目がオペラ(マリア・カラス)ときたので・・・「ここはカラッとしたハードバップだな」というわけで・・・Here's Lee Morgan (veejay) を選んだのだ。VeeJayのステレオ盤は、音もまあまあだと思ったので選んだのだが・・・ちょっと中途半端ではあったようだ(笑) それほどの希少盤ではないし、リー・モーガンには他にも名盤があまたある。選んだ曲も、地味なジャズメン・オリジナルだ(milt jackson作のoff spring という曲) 昨年もそうだったが、クレフやノーグランのゲッツやらホッジスの超希少盤が次々に登場してくるので、普通のハードバップ盤じゃあ、とても対抗できないようだ(笑) しかし・・・食堂のマッキンルームの「壮大な鳴り」で聴く「ハードバップ」も悪くはなかった。ブレイキーの、かなりでかそうなライドシンバルのグワ~ングワ~ンという鳴り具合や、ベースのチェンバースの大きな音(ちょっと出すぎくらいにベースが大きな音像で鳴っていた) ケリーの転がるピアノタッチなど、どれもマイルドないい音で鳴っていた。まあでも・・・ノッて聴いたのは、僕だけかもしれない(笑)

第1部でかかった曲を列挙しておこう。(だいぶ記憶が飛んでますので・・・不完全です:笑)

D35さん~ポリー・バーゲンTHE PARTY'S OVER(columbia) から smoke gets in your eyes
マントさん~MARIA CALLAS sings ROSSINI and DONZETTI・arias(UKコロンビア) から LA CENERENTOLA(F・Rossini) Nacqui all'affanno(Act2)
bassclef~リー・モーガン here's Lee Morgan(vee jay:stereo) から off spring *前述
ワガママおやじさん~ドロシー・ドネガン(レーベル名を失念。珍しいレーベルの盤)から on green dolphin street 
*<補足>~下記コメントにあるようにワガママおやじさんからデータを頂ました。この珍しい盤は・・・Dorthy Donegan/Swingin Jazz In Hi-Fi (Regina 285) なる盤でした。
パラゴンさん~Eve Boswell(女性シンガー)の 「you go to my head」
SPUさん~ジーン・アモンズ、the Boss Tenor(presige:銀・黒ラベル) から my romance
YOさん~リッチー・カミューカ~ Richie Kamuca Quartet (mode) から what's new? ともう1曲、ペッパー・アダムス(mode)から my one & only love
リキさん~プレヴィンの指揮したアルビノーニのアダージョとモーツァルトの宗教曲
Dukeさん~ジュリーロンドン the end of the world
       カーペンターズ   the end of the world

さて・・・そんな第2部「みなさんの一押しレコードpart1 」が終わって、オークションで盛り上がった後・・・いよいよ第4部~「みなさんの一押しレコードpart2 」(地下JBLルーム)が始まった。ここでは、もうちょっと個人的好みの強いマニアックな盤が登場することが多い。いわばみなさんの「本音盤」である。そんなみなさんの「本音盤」と、かかった曲を以下に記しておこう。

YOさん(YoさんとBoseさんのネタ)~ジョニー・グリフィン2題!
     Johnny Griffin /Way Out [riversideオリジナル・ステレオ盤/日本ビクター盤/WAVE盤]と the Kelly Dancers  [オリジナル・モノラル盤/WAVE盤/fantasy custom盤] での聞き比べ。

ワガママおやじさん~Modern Music From SanFrancisco(fantasy) なる3つのセッションを集めた盤:Jerry Dodgion のセッションからmiss jackie's delight ピアノがソニー・クラークです。*後述_001_2

bassclef~フリップ・フィリプス/EP盤(Clef)から I'll never be the same

・・・このEP盤には愛着がある。とにかくジャケットが好きなのである。EP盤の左側~Flip Phillips Quintet というタイトル。ワンホーンでしみじみとしたフィリプスのテナーが味わえる。10インチオリジナルが欲しい・・・(笑)

パラゴンさん~ヘレン・メリル/mercuryのオリジナル盤(大ドラム)から you'd be so nice to come home to

SPUさん~ルイ・アームストロング/Satchmo At Symphony Hall/Decca より (What Did I Do to Be So)Black And Blue・・・哀感が漂う名曲でした。(トランペットつながりで~題して「魂の叫び」by オーナーMさんとSPUさん)
マイルス・デイヴィス/Live Around The World (ライブ盤)より
Time After Time・・・つぶやくような、しかし時に押し殺した声で泣いているような、そんなマイルスの表現力には圧倒された。後半、マイルスとギターやベースとの絡みは、ギター奏者が必死に音量を抑えたような弾き方で、マイルスと対峙し、とてもスリリングな一瞬だった。そしてぐぐ~っと音量を上げるシンセ・・・「ドラマティックな演出」というのはすごく判るのだが・・・シンセの音自体に・・・どうしても馴染めない自分でした。

マントさん~マリア・カラス/L'ELISIR D'AMORE(R・Donizetti) Prendi;per me sei libero(Act2) 

YOさん~Ben Webster /meets Oscar Peterson (Verve)
     [Verve Inc.(Celf sereis)]モノラルと [Stereophonic]~同タイトルの2種。曲は「bye bye blackbird」での聴き比べ。*後述

_002_1bassclef~パーカーのEP盤(clef:写真左)から just friend 
   ・・・最初33回転でかかり「あれ?このテナー誰?」という感じ(笑)、すぐさま45回転でかけ直すと・・・めでたくパーカーが出現しました(笑)

このパーカーのEP盤もわりあいと音がいい(ように思う) 状態のいい10インチ盤もぜひ聴いてみたいものだ・・・。
(パーカーつながりで)
SPUさん~ Bird And Diz/clef 10inch より Bloomdido(clef:10インチ)・・・オリジナル10インチはやはり凄い。モンクのピアノがタッチが強力だということが、改めてよく判った。

リキさん~ (?)演奏者失念/モーツアルトの最晩年の「?」・・・静かに淡々と流れる曲でした。これもそこはことなく哀しみが滲むような・・・。

巨匠Y氏~beatles (UKだったかのシングル盤から come together と something リンゴのドラムがよかった! *後述

YOさん~ギターもの2題~マイケル・ヘッジス/「?」(ミュージシャン名、違ったかも?)(曲名 失念)
・・・開放弦がキラキラと鳴り、弦の響きがキレイに録音されているレコードだった。個人的には「ソロ・ギター」があまりに大きい音像だと、ちょっと違和感を覚える。
カルロス・モンターヤ/「?」 ・・・フラメンコの名手とのこと。右手のアポヤンドが、凄い強いタッチだ。フラメンコは濃くて凄すぎる。

Dukeさん~Miles Davis:Cookin' から「my funny valentine 」~純正オリジナル 446W盤は・・・やはり凄かった。*後述

オーナーM氏~ジョニー・ホッジス MGN 1059 Johnny Hodges - In a Tender Mood (norgran)から tenderly
・・・ホッジスにしてはあっさり風味に聞えた。やはりエリントン絡みの曲では、特別に濃厚になるのだろうか。

D35さん~ダイナ・ショア: Somebody Loves Me(capitol) IT'S EASY TO REMEMBER
・・・しっとりとしていい唄い手だと思う。ダイナ・ショア、好きな声です。

マントさん~コルトレーン:Live At The Village Vanguardから spiritual (第1部Dukeさん「レコード語り」の時、時間の都合で10分ほどでカットしたので全曲通して)

bassclef~デューク・エリントン Duke Plays Elligton (capitol) (12インチ:ターコイズ)から (この時、Dukeさんが再登場! 「ちょっといいですか?」と言いつつ・・・2人の女性にまつわる話しから、エリントンとこの曲へのオマージュを語る(笑) _004_8

   

                                             

in a sentimental mood と passion flower~しんとした響き。ラテン風エキゾチックな曲調だが、バックでほんの小さく鳴るドラムスの「手叩き」(だと思う)が絶妙だった。
オーナーM氏~アート・ブレイキー:バードランドの夜 vol.3(bluenote)~10インチオリジナルから confirmation *後述

こんな流れだったのだが・・・盤の音質も含めて、特に印象に残った場面をもう少し紹介しようと思う。

Modern Music From SanFrancisco(fantasy)
ピカピカの赤盤だった。こういうcoloured vinyl はよく見ると・・・半透明なので向こう側がうっすらと向こう側が見えたりする。それはもう・・・唸るほどの垂涎盤だった(ちなみにヨダレは出てません:笑)
この盤には3つのセッションが入っている。ワガママおやじさんがセレクトした1曲は・・・アルトのJerry Dodgionのリーダーセッションから miss jackie's delight なぜこの曲か?もちろん・・・ピアノのソニー・クラークが入っているからなのだ。
1955年の録音なので、ソニー・クラークとしては、バディ・デフランコとのVerve録音と同時期ということになる。
miss jackie's delight は速めのテンポのブルースで、ドジオンのやや軽めの音色のアルトが快調なロングソロを取った後に、いよいよクラークのピアノソロが始まった。初期のクラークらしいやや「軽め」(後期に比べれば)だが、キレのいいタッチがたっぷりと聴けた。デフランコとのVerver諸作では、クラークのロングソロというのはほとんどなかったので、この1曲での16コーラス(とベースソロの前の+4小節。長いので数え違えたかも:笑)にも及ぶロングソロだが、アイデアのあるフレーズが次々に飛び出してきて、まだまだいくらでも弾き続けられそうだ(笑)初期のクラーク好きは、これはもう必聴だと思う。
ちなみに・・・この盤、僕の手持ちは・・・トホホのOJC盤(笑)それでも「赤盤仕様」になっているところが意地らしい(笑)

Ben Webster /meets Oscar Peterson (Verve)
[Verve Inc.(Celf sereis)]モノラルと [Stereophonic]~同タイトルの2種。曲は「bye bye blackbird」での聴き比べ。
これがおもしろかった。
モノラルカートリッジで聴いた「モノラル盤]~テナー、ピアノ、ドラム、ベースなど個々の楽器は、大きな音で、はっきりくっきり出てくるので、大迫力だ。
ただ逆に(好みによっては)ベースの音像が大きすぎだったり、ドラムのシンバルやピアノの音がちょっときつすぎたかもしれない。
ステレオカートリッジで聴いた[stereophonic盤]~テナーとベースがやや左側、ピアノが中央、ドラムがやや右側へと音場が拡がった。しかしそんなことよりベースの音像も締まり、ピアノの高音もさきほどのモノラルの「全てがフォルティシモ」的なサウンドから比べてうんと、聞きやすくなった。タッチの質感が出てきた。そしてテナーも適度なフクラミ具合の優しい音色になった。もちろんこれも好みによっては、モノラルの力強さがなくなって「ヤワ」になったと感じるかもしれないが、僕はやはりこの[stereophonic盤]はいい録音で、聞きやすい音質だと思う。
そして・・・(このBen Webster盤の場合)さきほどの[モノラル盤]があまりにも「強い」音だったので「このモノラルカートリッジの性質が音成分を拾いすぎ(強調しすぎる)かも?」という仮説の下に「ステレオカートリッジでモノラル盤をかけてみて」というリクエストが巨匠Y氏から飛び出した。
もともと「厚く」楽器の音が入っているであろうモノラル盤にモノラルカートリッジでは「強くなりすぎ」であれば・・・(モノカートに比べれば)「薄めの」ステレオカートリッジで「厚い音のモノラル盤」をかければ、あるいは・・・?という期待が、皆に広がる。オーナーのM氏が針を落とす。しばしの沈黙・・・微かなチリチリ音・・・。そして出てきた音は・・・・・。
「おおっ!」予想した通り、いやそれ以上の「効果」だった。まさに「ちょうどいいバランス」でテナー、ピアノ、ベース、ドラムスの音色が、「うれしそうに」スピーカーから飛び出てきたのだ!本当に「ちょうど!」のバランスになってしまったのだ。モノラルの厚みある楽器の音色、ステレオの場合の各楽器の分離のよさ・スッキリ感、その両方が「気持ちのいいモノラル」として目の前で鳴っていた。「してやったり」と納得のうなずきを見せる巨匠Y氏。
そして・・・この時のDukeさん、そしてYOさんのうれしそうな顔(笑) というのは・・・両氏は「モノラル盤を聴くからといって、必ずしもモノラルカートリッジに拘る必要はない」という主義であるからして。
カートリッジの「音の拾い方」というのは、こんな風に、その特性をうまく生かしてやれば、アンプやスピーカーを換える以上に、入り口のところで基本的な「バランス」を決定してしまうのだなあ・・・という実感を持った。もちろん、「盤」によって元々バランスのクセに差があるわけだから。だから・・・今回のこのケースは、あくまでこの Ben Webster meets Oscar Peterson というレコード<もともと各楽器の音をぎゅっと詰め込んであった音造りをしてあった「モノラル盤」>だったから、ステレオカートリッジによる中和がうまい具合に作用した、ということかもしれない。

the beatles /come together  と something (多分、UKのシングル盤)
全くの私見では(この<夢レコは全てが私見ですが:笑)・・・地下JBLの音は・・・ド単純に言って「ロック」に最も合うように思う。特にベースとドラムがテーマを演じるこの come together で、そう感じたのだ。
エレベ(電気ベース)の音が強力だったのだが、ロックの場合だと、かなり大きめの音量・音像でも違和感がない(ように思う)
それから、come together のテーマの部分をベースが弾いた後の部分・・・リンゴがちょっと「緩めのチューニング」(だと思う)で、スネアやらタムタムを3連で叩く場面の見事な「音圧感」・・・これは凄かった。その「音圧」が「ン・ド・ド/ド・ド・ド/ド・ド・ド/ド・ド・ド」てな感じで、右チャンネルから何度も飛び出てくる。この「音圧感」は、ロック苦手な僕にも、ある種の快感ではあった。(自宅に帰って聴いたベストCDでの come together のショボイこと(笑))

Miles Davis/Cookin'  から「my  funny valentine 」
prestige, NY.W.446のオリジナル盤だ。ジャケットのコーティングもぐう~んと分厚い。これは凄かった。チェンバースのベースの音がやけにリアルなのだ。もともと prestige のベースの録音は、columbiaと比べると、ベースの音が「ペンペン」なのだ。低音の響きの部分がprestigeでは極端に薄い。しかしその分、左手が弦をこする音とか右手で強く弦を引っ張ったような、そんな気配をよりリアルに感じ取れる録音なのだ(と思う) だから、ベースの音程を聴き取るのには、prestigeが最適なのだ。そうして、チェンバースのあまりよくないピッチ(音程)も、やけにリアルに聴き取れてしまうのである(笑)
この446Wアドレスの純正オリジナル盤においては・・・その「リアルなベース音」が、より一層、鮮明に聴かれたのである。もちろんcontemporaryやcolumbiaのベースの音が好きな方(一般的にはこの方が多いかな?)には、このベース音は「硬すぎる」かもしれない。でも・・・これがprestigeの録るウッドベースの音なのだから、仕方がないだろう(笑) 

最後に「1枚、お聴かせします」とオーナーM氏。残っていたのは・・・D35さん、マントさんと私、bassclefの3人だけ。そして・・・あの盤が登場したのだ! 
オーナーM氏~アート・ブレイキー:バードランドの夜 vol.3(bluenote)~10インチオリジナルから「Confirmation」
青い色調がやけにキレイな10インチ盤(vol.3)だ。このクリフォード・ブラウンが凄かった。夕方のM氏の挨拶代わりの「モーニン」(bluenote)でのリー・モーガンも「いい響き」をしていたが、この10インチ盤のクリフォードブラウンは・・・これはもう・・・とにかく素晴らしかった。余分なエコーなど全くない「素」の録音という感じで、ブラウンの「乾いたような、しかし音色のエッジを若干ふわッとさせたような」独特な響きが、むちゃくちゃに生々しく感じられたのだ。続くルー・ドナルドソンもアルトも、より分厚い音色で図太い感じだ。もう少し後期のドナルドソンには、ある種の軽さ・甘さが出てくるように思うが、この1954年のドナルドソンのアルトの音色にはもう少し「重さ」があった・・・ということを実感できた。そしてブレイキーの右手のライドシンル・・・このシンバルの高音は、モノラルの古い録音でさすがにちょっと「詰まった」ような音ではあったが、その臨場感から、ブレイキーが終始かなりのヴォルームで叩いていたのであろう・・・ことがよく判った。実際、ライブハウスでのドラムスのシンバル音というのは、相当にでかい(笑)ハウスの形状(そしてもちろん奏者の叩き方具合)によっては、響きすぎてやかましいこともよくあるのだ。この10インチオリジナル盤においても、ブレイキーのシンバルが相当に大きく響いてはいたが・・・それはその場の「音楽を必死に生かそうとしている響き」に聞えたので、僕には全く気にならなかった。
このライブ盤は、本当に凄いと思う。クリフォード・ブラウンの漲る(ミナぎる)ような生気感が、バンド全てを「ノセて」しまったのだろう。「1954年2月のバードランドの夜」は、大げさではなく奇跡の夜だったのだ。
そして「その夜の空気感」を再現した「2006年4月の白馬の夜」も・・・これまた素晴らしかった・・・。

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2006年4月 6日 (木)

<ジャズ雑感 第16回> オスカー・ピータースンとVerveレーベルのこと。

僕にとっての少々の不幸、あるいは幸福。

ジャズが好きだ。ジャズのいい演奏が好きだ。だからレコードを聴く。そうして好きな演奏の入ったレコードは何回でも聴くことになる。しかし、そんな風に好きであるがゆえに「気になること」もある。レコードの音質である。好きなレコードはいい音質で(もちろん盤質も含めて)聴きたい。これは・・・特にアナログ盤に踏み込んでジャズを聴いている方には全く共通な気持ちだと思う。_003
                     《オスカー・ピータースンのclef盤。Nostalgic Memories(1951年)         
     とても好きなジャケットだ。見ているだけでちょっと幸せな気分になってくる》

ちょっと前まで・・・・ 「同じレコードを何種類も持つ」なんてことは全くばかげてる・・・と考えていた。~日本盤でも外盤でもいいじゃないか、とにかくその盤の中身を(その演奏)聴こうよ。その方が大事だよ~という気持ちだった。今も根本的には考えは変わってないのであるが・・・このところ、そんな信条とは大いに自己矛盾した行動をとっているようだ(笑)
内容が気に入ったタイトルについては、日本盤だけではあきたらず、そのオリジナル盤(2nd,3rdも含めて)を、隙さえあれば集めようとしているのだ。
「隙」というのは、つまり・・・「お買い得であれば」という意味である(笑) そうして、本当に「オリジナル盤」は、国内盤より「いい音」なのか・・・あるいはそれほどでもないのか・・・そんなことを意識し始めたのである。だから・・・このところ急激にオリジナル盤の数が増えつつある。「いい音質で聴きたい」という気持ちにウソはないのだが、一方では「比較検証自体」に楽しみも覚えている。国内盤とオリジナル盤の音質の違いは、どうやらレーベルによっても相当に違うようなのだ。全てのケースにはもちろんあてはまらないが・・・1965年くらいまでの録音音源の場合は、やはり、その時代のオリジナル盤の方が日本盤より「いい音」の場合が多いようである。
ここでいう「いい音」というのは、楽器の音色や鮮度や空気感みたいな部分に絞っての「いい音」ということだ。古い盤はどうしても盤質が悪いことも多い。(高いものだけ入手していればそうではないだろうけど) サーファスノイズに神経質な方だと、盤質がよくない段階~シャー、チリパチなど~でもうオリジナル盤にはそれほど魅力を感じないだろうとは思う。僕も、もちろんノイズを好きなわけではない。特にダメなのは「連続パチパチ」である(笑) これはscuff あるいはhair lineという表現されていることが多いのだが、要は「スリキズ」のことだろう。そのキズが短くてlight(浅い)なものなら大きなノイズにはならないが、deep(深い)な long scuffだと、もう致命的だ。一定のリズムで連続的に「パチッ!パチッ!」とくる。これはもう・・・拷問に等しい。僕がわりあい許容できるのは「単発のチリパチ」である。これならその一瞬さえガマンすれば、あとは大丈夫だ(笑) ネットのオークションなどでdescription(説明)を読むと、マメな業者だと~盤質VG+(但し B-2に3回ノイズが入る)~などと書いてくれている。その曲が大好きな曲でさえなければ、こういうごく部分的なノイズを、僕はわりとガマンできる(もちろん価格との折り合いをつけて、という意味だが) だからちょっと強がり的に言えば・・・「盤質は悪いが、音自体はいい」という表現も、充分にありうるのだ(笑) なぜガマンできるのか・・・楽器の音色が生々しいからである。管楽器やヴォーカルの音色が(元々の録音のいい悪いが一番重要だが)うんと良く感じられることが多いように思う。それにベースやドラムの鳴りが、よりクリアに聞こえることもあるかもしれない。まあそんな各論より~パッと聞いたときの「全体の鮮度・雰囲気」がより生々しくなったような印象を受ける~ということだと思う。そういう盤に当たった時はやはりうれしい。僕の場合は、かなり適当だが、日本盤の音質~ドラムやベースの具合、全体の楽器のバランスなど~から、元々の録音の良し悪しまで推測する。素性の良さそうな録音だと感じれば、そのオリジナル盤を狙うのだ。

_001さて僕が経験した中で、国内盤とオリジナル盤の音質の違いを最も大きく感じたレーベルは・・・Verveである。
Verveの国内盤は、ここ何十年ほとんど「日本ポリドール」だったはずだ。Verveというと・・・僕はオスカー・ピータースンという人を、ほとんで聴いてこなかった。いや、どちらかというと・・・無視していた(笑) 何枚かの有名盤は聴くには聴いたが、それほど愛着が湧いてこなかった。彼のピアノ・スタイル自体があまり好みでなかったとも言えるが、加えて・・・日本ポリドール盤のピーターソンやエヴァンス・・・何を聴いてもあまりいい音に感じなかった。ピータースンはともかく、大好きなビル・エヴァンスの場合でも、Verveのピアノ音には魅力を感じなかった。音圧が低いというか、線が細いというか、vividでないというか・・・もちろん僕の使っているステレオ装置も悪かったのだろうが、他レーベルで聞かれるピアノ音よりも「良くないなあ・・・」と感じることが、特にポリドールのVerve盤に多かったように思う。
ところが・・・たまたま入手した THE TRIO:Live From Chicago(Verve Stereophonic)を聴いた時、どうにも日本盤と比べると 「鮮度」「その場の生気感」みたいなものの違いに驚いてしまったのだ。さて Live From Chicago を一聴して一番に驚いたのは・・・ピアノよりもベースのレイ・ブラウンの音が、それまで耳にしていた音とは、もう全然違ったことである。ベースの音色が一枚ヴェールを脱いだように生々しく響いたのだ。そしてレイ・ブラウンが意識して弾いていたであろう、一音一音の「音圧」が、よりvividに伝わってきたのだ。同じ日のロンドンハウスでのライブ録音「サムシング・ウオーム」の日本ポリドール盤と比べても明らかに、音場全体の「鮮度」「音圧感」が違う。そんなわけで、このLive From Chicago はすぐに僕の愛聴盤になった。オレがあのピータースンを聴いている!不思議だが本当にしょっちゅう聴くようになったのだ。これには~オリジナル盤自体の凄さを発見したことだけでなく~もうひとつの理由があったのかもしれない。ちょうどその頃、アンプを真空管のものに、そしてスピーカーをちょっといいやつ(共にアメリカの60年代のもの)に換えたのだ。そしたら・・・楽器の音色に、より厚み・深みが出てきたようだし、特にベースの音圧感がよく出るようになったのだ。そのこともあって、だから余計に、レコードに入っている(録音された)楽器の音色の鮮度や厚み、音圧みたいな部分にに拘るようになったのかもしれない。いずれにしても・・・その頃からピータースンをかけることが多くなってきてしまったのだ。ピアノ弾きとしてのスタイル(「精神性の部分」といってもいいかもしれない)が好みでない、という理由で聴くことを拒否していたはずのピータースン。しかしこのLive From Chicagoから飛び出てくる、なんというか・・・ピアノのダイナミズム(すごく小さな音で弾いている部分とグワ~ンと弾きこんでくる部分の落差!それから、レイ・ブラウンのベースの音圧・・・要は「出てくるサウンド自体の快感」みたいなものに、初めて気が付いたのかもしれない。オーディオ好きの方ならそんなことはあたりまえの感覚なのだろう、と推測する僕である。
ただ、正直に言うと・・・このことは僕にはちょっとした不幸の始まりかもしれない。そんないわゆるオーディオ的な部分とは関係なく、ひたすらにジャズを聴いてきたはずの僕が、「サウンドの快感」を知ってしまったのだ!ちょっと大げさだが、そんな気持ちになった。今でも少しそう思っている。不幸というのは自分への皮肉も込めてそう言うのだが、自分の興味を~いわゆるオーディオへ向かわせたくない~という妙に意固地な部分もあるし、何より限られた時間と可処分所得を、ただひたすら「レコード盤」に使いたいのだ(笑) 今のところ、自分としては・・・この真空管アンプと古い米スピーカーに換えたことで「もう充分」という区切りをつけているので(ちょっと無理やりかも:笑))現実に「不幸」になっているわけではないのですが(笑) _002

他にもピータースンの米Verve盤をいくつか持っている。有名なNight Train(1962年) West Side Story (1962年) ~Trio Plays(1964年)
それから We Get Requests(1964年) (共にT字MGMーVerve)などである。 これらを今、聴いてみると・・・もちろん日本盤よりは相当にいいのだろうが、Live From~に比べると、どうしても「鮮度感」「生気のある感じ」という点でやや落ちるようだ。あれほどの「凄い音」ではないように感じる。
僕は「ライブ録音好き」だ。だから、あるいは・・・これらのスタジオ録音からはライブでの臨場感を得られないために、それほど「いい録音」と感じないだけかもしれない。但し・・・We Get ~と West Side ~の2枚は、レイ・ブラウンのベースに関しては、かなりいいように思う。右チャンネルから、レイ・ブラウン特有のあの重いビートのベース音が聞こえてくる。同じVerveというレーベルの中のピータースンに限っても、こんな具合に違いがあるのだ。そんなわけで・・・ピータースンのVerve盤で、僕が本当に「凄い音」(ピアノだけでなくベースやドラムスも含めた録音として)と感じたオリジナル盤は、まだこの「Live From Chicago」1枚きりなのである(笑)こうなると・・・ピータースンもVerve盤は、全てStereophonic ラベルで揃えたくなってくるのだ(笑) ただどのタイトルにStereophonic ラベルが存在するのかもはっきりとは判らない。Stereophonic ならどれもこれも素晴らしいのか?それもはっきりしない。僕はそう確信しているが・・・いろいろなお仲間からの情報では・・・どうやらことはそう単純ではないらしい(笑) Stereophonicでも、古いモノラル録音を加工したものはダメなんだろうし、また逆にT字Verveでも、エラの「クラップ~」のように凄い録音(という定評あり)の盤もあるのだ。一般的には・・・いわゆるVerveのT字ラベルでも、MGM-Verveと、それ以前のVerve Inc.と比べると、どうやらMGMが付かない方(古い)が、音はいいらしい、ということも判ってきた。それから、録音年代が1963年くらいからのタイトルは、おそらく「MGM-Verveラベルがオリジナル」のはずなのだが、 1962年くらいまでの録音のもののオリジナルプレスがどのラベルなのかも、よく判らない。
いずれにしても・・・タイトルごとでの「音質の出来・不出来」は、レーベルと年代で全て決定されるわけではなく、その時々の「録音のいい悪い」によって・・・全然違うものになってしまう、ということかもしれない。そのタイトル毎での違いと、プレス時期の違いと、さらに個体差(盤質コンディションなど)も大いに出てくるわけで・・・こりゃあ全くキリのない世界ではある。

今は、少なくともピータースンのVerve盤に関しては・・・間違いなく国内盤より米盤の古いプレスの方がいい、と確信している。そしてVerve以前のClef,Norgranは、録音年代が古いものでも、アート・テイタムやピータースンのピアノの音色も~独特の鋭さ・温かさのあるいい音なのだ~それから特に、サックスなどの管楽器の音色が別格の音~これはもう音色の鮮やかさ、音圧、厚みなど素晴らしいのだ・・・管楽器から出てきた空気の塊りが、実体の「気配」を持ってそこに飛び出てきたかのような音~であることも~数少ない手持ち盤を聴きながら~だんだんと判ってきた。音だけでなくジャケットも含めての「時代の雰囲気」・・・これには抗しがたい魅力を感じる。

 《ピータースンのclef盤3タイトル~「背中シリーズ」1枚だけ、[Harold Arlen]を入手。左の盤は[Plays Count Basie]、下にちょっと見えるのは[Recital by Oscar Peterson]  盤はどれも重く、それがうれしい》
_004

この辺りの「気配」や「雰囲気」にマイッた方は皆、数少ないオリジナル盤を狙う。だから・・・Clef,Norgranは、世界中、どこでも値段も別格のようだ(笑) 仕方ない。それだけの魅力があるのだから・・・。
いずれにしても・・・僕はこれからも大いなる自己矛盾を抱えながら、それでもレコードを集めていくのだろうなあ・・・(笑)

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2006年3月26日 (日)

<思いレコ 第9回> マッコイ・タイナー/today & tomorrow(impulse)

初めてのオリジナル盤はインパルスだった。

分厚いコーティングのジャケット。それから、なんだか変な匂い。これが「輸入盤」というものに対する、僕の最初の印象だ。当時はあくまで「輸入盤」と呼んでおり、「オリジナル盤」というような認識は全くなかった。
いずれにしても、このやけに重いインパルス盤が、僕にとっての最初の「オリジナル盤」だったわけだ。だいぶ後から判ってきたことだが、当時(1972年頃までか?) は、日本のレコード会社が代理店となっていくつかの海外レーベルを「直輸入盤」として販売していたようだ。guramophone
riverside(時期的にABC Riverside)~日本グラモフォン(ところで、日本グラモフォン=日本ポリドールなんでしょうか?ご存知の方、ご教示を。)
atlantic~日本グラモフォン?(アトランティックのオリジナル盤を入手したところ、裏ジャケに「逆文字の刻印スタンプ」~imported by Nippon Gramophone と読める~のある盤を持っている。右の写真がそのスタンプだ。)
それに、bluenote~東芝。あとは impulse~キング くらいだろうか。King_impulse

このキング扱いのimpulse盤は、扱いタイトルの小冊子を持っている。輸入盤なのに、全て「カタカナ」で表記してあるところがおもしろい。
AS1番(great Kai&JJ)からAS100番までとAS 9101番からAS9213番までの200以上のタイトルが載っている。その内、いくつかのものは SR~という型番で日本盤が出ていたようだ。  _002

AS-63番のマッコイ・タイナーのToday & Tomorrow はそんな「直輸入盤」の1枚だった。4つ上の兄貴が大学の生協のレコード売り場で買ってきたものだ。兄貴が言うには・・・その時、有名なコルトレーンの「至上の愛」を買おうとしたら、ジャズ好きの友人が「まだおまえにはコルトレーンは早い。この辺にしておけ」とマッコイを勧めてくれたそうだ。兄貴はちょっと「ジャズ」に興味を覚えた程度だったので、素直に友人の助言に従って、それで今、このマッコイ・タイナーの盤が、僕の手元にあるわけです(笑) それにしても、当時は大学の生協にこんな渋いジャズのレコードまで品揃えしてあったということにも驚かされる。時代的に、大学生が盛んにジャズを聴いていたのだろうか? 
《写真下~1972年に手にしたToday&Tomorrow (impulse AS-63) ステレオ盤 オレンジ黒~盤が異様に厚い》

 

Mccoy_tyner_today

 

   最初、このToday & Tomorrow を触った時・・・とにかく変なニオイがした。ジャケットはインパルス特有のゲイトフォールド、そして分厚いコーティング。ジャケットに使うダンボール自体も厚めなんだろう・・・ジャケットだけでも相当に重い。そして・・・vinyl(盤)がこれまた重い!特に、センターラベルが「オレンジ・黒」の比較的初期の盤は、vinyl 自体もこれまた厚いようで、横から見ても2mmくらいはありそうだ。そうしてその厚さが、けっこう不均等なのである(笑)

「変なニオイ」を嗅ぎながら、それでも何度もこのレコードを聴きました。
A面1曲目は・・・contemporary focus というモードの曲だ。たぶん1963年頃は、なんでもかんでもモードという時代だったのだろう。
モードというと・・・僕がちょっと苦手ないわゆる「新主流派」(bluenoteのハンコックやショーターの流れからのモード手法)のサウンドを想起する方が多いと思う。しかし・・・このマッコイのモードは、新主流派のサウンドとは、なんとなく肌合いが違うのだ。やっぱりエルヴィン、マッコイ、という「コルトレーン的熱いソウル一派」のモード曲は・・・まず「熱い!」それに「くどい!」(笑) 曲のテーマの展開もなんとなく強引というか混沌というか・・・あまりスマートではないのだが、そこら辺りが僕には心地よいのだ(笑)

この曲は、ジョン・ギルモア(ts)~そういえば、ジョン・ギルモアというテナー吹きの「ギザギザしたような・・・乾いた風が吹き始めたかのような」独特のサウンドにも魅かれるものがあった~やフランク・ストロジャー(as)、それにサド・ジョーンズ(tp)が加わった6人編成のセッションの中の1曲だ。そしてその6人セッションのドラムスがエルヴィン・ジョーンズなのだ!

中央やや右の方からエルヴィンの「でっかい鳴り」が響き渡る。シンコペを効かせた4音のイントロ~「ダッ・ダッ・ダッ・ダア~ン」という合わせのところなんかもう・・・エルヴィンの強烈なこと!シンバルの中央付近を叩く「カコ~ン」というような音も混ぜて、そして「グワ~ン」とシンバルを押し(文字通り、押しているのではないだろうか)バンド全体を煽るようにドラムセット全部を鳴らしてくる。この辺りの「合わせ」・・・エルヴィンはたぶん、譜面なんか見てない。出来あがった曲をマッコイがピアノで弾いて、それを即座に身体で吸収してしまったのだと思う。そうして理屈でなく野生の勘で、合間にロールを入れながら、その合わせるポイントよりもほんのわずかに遅らしたような感じで「ドッカ~ン」とくる。これが気持ちいいのだ(笑) きれいにピタっと合わせるだけの後年のフュージョンの「合わせ」なんかとは、もう全く次元が違う。重みが違う。キレが違う。そうしてライド感が違う。エルヴィンが叩けば、そこには必ず・・・ジャズ魂が炸裂しているのだ。_002
ちなみにラストのテーマに戻る前に、短いベース・ソロがある。ブッチー・ウオーレンだ。この人もいい。ベースの音が本当に重いのだ。ハードボイルドな感じで凄みのあるソロをとる。そしてそのウオーレンがダブルストップ(左手を2箇所押さえて、ベースでも和音を出すこと)でもって「ダッ・ダッ・ダッ・ダア~ン」のフレーズを出してくる。すると・・・即座にエルヴィンが応えるのだ。パッと手が動いてしまったかのような、短いロールから「ドッカ~ン」とシンバルを鳴らし・・・爆発するようなこれも短いソロをとる。そうしてイントロと同じあのリズムパターンを繰り返すと・・・もう管奏者たちはテーマに入るしかない(笑)

高1の時に聴いた時は「ああ・・・これがジャズかあ」という感じに、この曲~contemporary focusからは、それこそ現代的(comtemporary)な感触を得ただけだった。しかし今聴けば・・・エルヴィンの凄さを味わうと共に、いいテーマを持つそしてしっかりと構成されたマッコイの傑作オリジナル曲だと思う。

Today & Tomorrow~A面~B面何度か聴きなおしてみたが~3管6人編成での他の曲もどれもよかった。それにトリオセッションでは、ベースがジミー・ギャリスンなので、「チュニジアの夜」「枯葉」もハードボイルドで悪くない。それとバラードでは「when sunny gets blue」というチャーミングな曲も演っており、一気に聴き通してしまった。マッコイのピアノのプレイだけをとっても、僕はこの頃のマッコイが一番好きだ。マッコイのピアノは、特に高音部でのフレーズに独自の輝きがある。右手のタッチが小気味よいほど鮮やかで、しかも一音一音をしっかりと弾き込んでいるようだ。だから・・・高音での「鳴り」が鐘のように響く。インパルスの録音もそれをよく捉えているように思う。マッコイには同時期に、ピアノトリオ(inception、ballads & blues、 plays Elligton、reaching fourth など)も何枚かあるが、やはり管も入ったこの盤がトリオものとのバランスもよく、一番聴き応えがあるようだ。
ジャズ聴きの最初期に何度も何度も聴いたこの盤なので、思い入れがあるのかもしれないが、その分を差し引いても~マッコイの大傑作だと思う。
ちなみに、このオリジナル盤・・・ジャケットのコーティングは隅の方から剥れ始めているが・・・あの「変な二オイ」はまだ微かにジャケットに残っている。

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2006年3月 5日 (日)

<思いレコ 第8回> Bill Perkins/Quietly There

気になる作曲家、その名は・・・ジョニー・マンデル!

「いそしぎ」という曲がある。この曲の原タイトルは もちろん the shadow of your smile という。映画に使われた曲なので、その映画のタイトルthe sand piper を邦訳してこのタイトルになったのだろう。海にいるシギという鳥のことを意味してると思うが、僕らは単に「イソシギ」というサウンドで・・・ああ、あのいい曲ね、と理解している(笑) 僕はとにかく、この「イソシギ」が好きだった。自然に展開していくメロディ。淡々としながらも品よく盛り上げる後半のメロディ。あまりに有名なので、ちょっとポピュラー的なイメージで捉えられているかもしれないが、文句のない名曲だと思う。

ハンプトン・ホウズの I’m Old Fashioned(contemporary) _004

B面1曲目が、その<the shadow of your smile>だ。1966年4月のライブ録音なので、この曲の録音としてはわりと初期のものだろう。ベースはレッド・ミッチェル。なかなかいいピアノトリオ盤だと思う。

A Time For Love という曲も実にいい。この曲を・・・僕はアイリーン・クラールの唄で何度も聴いた。この曲の入ったクラールのLPを 寝る前に、ポータブルのプレーヤーで聴いた時期がある。LPの途中で眠ってしまうこともあり、だから正確には「眠りにつきながら聴いていた」というわけだ。そんな風に繰り返し聴いているうちに・・・この曲のメロディが、体の中に染みわたってしまったようだ。A Time For Love は、しみじみとした感情で人生を振り返りながら・・・しかしこれからも生きていくのだ・・・みたいな厳しさをも感じさせるような素晴らしいメロディをもつ曲だ。ちなみにこのクラールのピアノとデュオのアルバムは、本当に素晴らしい。いつかまたアイリーン・クラールのことも書いてみたい。そういえば僕の好きなトニー・ベネットも、この曲をいい感じで唄っているはずだ。

_005

Emily~これもいい!3拍子の曲なんだが、もう一言・・・チャーミングなメロディなのだ! 好きだなあ・・・この曲。最初にこの曲を聴いたのは・・・ビル・エヴァンスのソロピアノのアルバムだ。左の写真がそれ。

further conversation with myself(verve)

レコードを集めるようになってわりと初期の頃だったので、VerveにMGM-があるとかも何も知らなかった(笑) ちょっとこもったような音質のMGM-Verve盤ではあったが、エヴァンスは、この曲、Emilyを一人で多重録音して・・・夢見るようなスイートさを生み出していた。それでこの曲を好きになった。チェット・ベイカーも、よくマンデルの曲を取り上げた。初期のパシフィック盤にはたしか何曲か~Keester Parade やTommy Hawk~入っていたと思う。

これらのどれもが、ちょっとしゃれたメロディの曲であり、いつも「はっ」としてクレジットを見ると・・・ジョニー・マンデル・・・ということが何度かあった。
そんな風に気になる作曲家であるジョニー・マンデルだった。
そうしてそんなジョニー・マンデルの曲を集めた素晴らしいレコードがあったのだ。先日、そのレコードを入手した。

Bill Perkins/Quietly There(riverside)である。録音が1966年なので、この写真の盤、「abc Riverside茶色の環ラベル」がオリジナルなのかもしれない。_002





         






ジャケットがまた地味というか・・・小さめな写真に  Bill Perkins Quintet featuring Victor Feldman と Quietly There というタイトルが載ってるだけだ。表ジャケのどこにも Johnny Mandel の名前などない。 裏ジャケの曲名を見て・・・初めて全9曲ともに 作曲が Johnny Mandel だと判るのである。せめてジャケ表に一言、 Mandelの名前を謳ってくれれば、もう少し早くにこのレコードを買っていたかもしれないのに(笑) もっとも・・・Jhonny Mandel という作曲者だけでなく、ミュージシャンからジャケットまで、このレコードは・・・もう徹底的に地味なのである(笑)

このレコードに前述の Emily と A Time For Love が入っている。そうして、これらが・・・絶品なのである。

Emily~パーキンスが、バス・クラリネットで静かに吹き始める。かなり遅めの3拍子に乗って、ゆったりとあの素晴らしいメロディを吹き進めていく・・・パーキンスの音色を聴いているうちに・・・一枚の風景画を眺めているような気分になってしまう。そして・・・気がつくと音楽が終わっている・・・そんな感じなのだ。たとえようもなく「優しい」世界だと思う。

最初に左チャンネルから、この Emily のメロディが流れてきた時、「えっ、この音色は何なんだ?」と思った。低くて軽くこもったような・・・でもバリトンのように大きく鳴った感じではない。なんだろう? とクレジットを見ると・・・bass  clarinet と書いてある。ああ、あのバスクラかあ・・・と、すぐにエリック・ドルフィの バスクラのソロ God Bless The Child を想い出した。ドルフィのバスクラ、あれは・・・自己というものを、もう徹底的に表出したような凄い世界だった・・・。このパーキンス盤でのバスクラは、全くそういう自己表現の世界ではない。しかしこの楽器をセレクトし、アドリブパートでも、フレーズがどうとかではなく、このバス・クラリネットの「ひっそりしたような音色」のソノリティを楽しむような・・・そんな唄わせ方をしているようだ。「ひとつの素晴らしい曲がある。その曲のスピリットを自分の感性で描き切りたい」というような切実さというか静かな気迫のようなもの~僕はパーキンスという人にそんな凄みさえ覚える。

そんなパーキンスでも、一人でこんなに緻密な工芸品のような世界を創り上げることは難しかっただろう。そこで、それなりの職人たちが必要だった。その職人たちとは~
まず、ヴィクター・フェルドマンの「しっとりした」ピアノが、優しい雰囲気をかもし出す。このパーキンス盤では、随所で vibraphone も叩いているが、全くやかましくならず、とてもいい感じに響いている。ヴィクター・フェルドマンという人の「しっとり感」は素晴らしい。マイルスの Seven Steps to Heaven のLAセッションの方を聴いて以来、大好きになった人だ。
ガットギターも聞こえてくる。ガットならではの本当に優しい音色。このギター弾きはJohn Pisano という人である。ガットでとるソロもも実にいい。
それから、ベースがレッド・ミッチェル。この人は、ベースの1音1音がしっかりと鳴っている。リズム感、ウオーキングライン、音程、アドリブ。どれをとっても本当に巧いのだ。ドラムはラリー・バンカーだ。
全員が揃いも揃って・・・本当に「趣味のいい」ミュージシャンだと思う。

もうひとつの名曲~A Time For Love。
パーキンスは今度はフルートを用いた。普段、僕はフルートのジャズはほとんど聴かない。savoy盤などを聴いていて、フランク・ウエスが(テナーは嫌いではないが)フルートを吹き出すと・・・どちらかというとノー・サンキューである(笑) しかし、このマンデルの名曲~A Time For Love でのパーキンスのフルートは・・・これも絶品である。録音もいいせいか、フルートの「鳴り」が豊かなので、サブトーンばっかり強調したようなヒュー、ヒューというような(笑)という感じではない。この曲でも「自分の感性で描き切りたい」という意思を強く感じる。外見的なアレンジ、というより、曲を解釈するその気持ちをもアレンジしているかのようだ。そしてその意思が全員に伝わったのだろう。各人が、実にキッチリと丁寧なバッキングをしており、味のあるいいソロをしている。

僕はもともと、一人で多くの楽器を奏するマルチ・ミュージシャン的なタイプはあまり好みではなかった。アレンジもできるスタジオミュージシャン的なタイプだと、仕事柄、仕方ないとはいえ・・・さあアルトだ、さあ今度はテナーだ、いや、バリトンだ、てな感じで、なかなかその人の本当の個性みたいなものが伝わってこないような気がする。いろいろなレコードを聴いてるうちに、それでもアル・コーンにはテナー、バド・シャンクにはアルト、とやはり「本領」を発揮できる楽器があるのだ、という風にわかってきた。その「本領」楽器で何枚かいい盤は必ずあった。ところが、パーキンンスの場合は違った。西海岸ものを聴くようになって、ビル・パーキンスという名も覚え、リーダーアルバムのパシフィックの2~3枚を聴いたのだけど、共演のペッパーの方に耳を奪われるばかりで、このミュージシャン自体には、特別な印象は持っていなかったのだ。だから・・・この盤を何度か見かけたはずだが(ジャケットだけは、だいぶ以前から知っていた)、録音が1966年とわりと新らしめということもあり、入手するには至らなかったのだろう。
そのパーキンスは、このレコード~Quietly There でも、やはりマルチであった(笑)しかし・・・今の僕は、そのマルチぶりが全くイヤではないのだ。逆に、こんな風に曲によって、 使う楽器を替えることで、それぞれの曲の味わいみたいなものを表出させた・・・いや、それ以上に、ジョニー・マンデルの曲だけで一枚のアルバムを創ろう、としたビル・パーキンスに甚く(いたく)感心している。推測だが、スタジオの仕事が多かったパーキンスが、ついに「自分の趣味」でアルバムを創ることになり、だから、選曲をしていくうちにマンデルだけの作品に絞ることにして、それからパーソネルを練り上げて、リハーサルをして、どの曲をどんな具合にクックするか・・・そんなことに相当に時間をかけてきただろうなあ・・・と思わせてくれる、本当に丁寧で質の高い、そして素晴らしいアルバムだと思う。

ビル・パーキンス/Quietly There(riverside)このアルバムは、とても地味だが・・・この先も間違いなく僕の愛聴盤であり続けるだろう。出会えてよかった・・・こんなレコードに。僕はうれしいのだ。
こんな未知の盤にも、まだこんな風に素直に「いいなあ・・・」と感じられるものがあった、ということが。
ジャズにはいいアルバムがいっぱいだあ!・・・ますますやめられない(笑)

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