ハル・マクージック

2018年1月 1日 (月)

<ジャケレコ 第3回>エリオット・ローレンスのFantasy盤

≪グレイト・ビッグバンド~エリオット・ローレンス楽団のことを少し≫
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ずいぶん前の日本盤に<Study in Great Big band 20>(東芝)というシリーズがあった。ピンク色のオビが印象的で、そのオビ下の方にはJazz Right Nowという文言が表記されている。東芝はひと頃、ジャズレコードの宣伝にこのJazz Right Nowなる標語を謳(うた)っていて、それは1975~1978年頃だったように思う。Right Now! とは・・・何やらちょっとロックっぽい感じもするが、まあ「今こそジャズを!」みたいな意味合いだろう。
その頃、僕はすでにジャズのレコードを買い始めていたが、当時はモダンジャズの本線・・・マイルス、コルトレーン、ロリンズ、モンク、エヴァンス~彼らの諸作を集めるのに夢中だったので、「ビッグバンドもの」には興味もなく、そしてもちろん資金的余裕もなかったので、リアルタイムではこのシリーズのものを1枚も入手していない。
このピンク色のオビが付いた<Study in Great Big band 20>シリーズで初めて入手したタイトルは、あれは1990年頃だったか・・・中古レコード店で見つけた「フォンテーヌブロー(タッド・ダメロン)LPJ-40007」である。この作品・・・タッド・ダメロンの佳曲をジョニー・グリフィン ケニー・ドーハム、サヒブ・シハブ、ジョー・アレクサンダーらのソロイストを巧く使ってモダンに纏(まと)め上げた感じで、とてもいい内容だと思う。そうして僕はこのレコードをとても気に入った。
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最初に買った『ピンクのオビのグレイト・ビッグバンドのシリーズ』が好印象だったので、その後、中古レコード店でこのシリーズ~スタン・ケントン<contemporary concepts>やビル・ホルマン、レス・ブラウンなどを見つけると、たいていは価格も安かったので、嬉しく入手してきた。どのレコードもいくつかの曲には、いいサックス吹き(例えばチャーリー・マリアーノ)の、いいソロが聴けたので(そうでない退屈なトラックもあったが)僕はだんだんと、この手のビッグバンドものを好きになっていったわけである。

≪追記≫2018年1月8日
このシリーズが気になってきた僕は、この20タイトルとはどんなものだろうか? と思い、ある時期(もちろんリアルタイムではない)発売タイトルを調べてみました。ところがこれが・・・なかなか判らない・・・情報がないのです。通常、この手のシリーズものだと、オビの裏とか中解説書に全シリーズのタイトルが載っていたりするのですが、このシリーズ・・・他タイトルの情報がまったく何も載ってないのです(笑) まあそれでも、中古店の在庫検索やネット検索で、だいたいのところが判ってきましたので、そのリストを以下に。

モダン・ベニー(ベニー・グッドマン)ECJ-40001                                 
ワイルド・アバウト(ハリー・ジェイムス)ECJ-40002
コンテンポラリー・コンセプト(スタン・ケントン)ECJ-40003
クラシック・イン・ジャズ(チャーリー・バーネット)ECJ-40004
グレン・グレイ / ビッグ・バンド・テーマ傑作集 ECJ-40005
アンド・テン(ギル・エヴァンス)LPJ-40006
フォンテーヌブロー(タッド・ダメロン)LPJ-40007
プレイズ・ジェリー・マリガン・アレンジメント(エリオット・ローレンス)LFJ-40008
ライヴ・アット・モンタレー(ドン・エリス)LLJ-40009
トゥゲザービリー・エクスタイン)ISJ-40010≫*dukeさん情報により追記 
スタンダード(デューク・エリントン)ECJ-40011
セカンド・ハード(ウディ・ハーマン)ECJ-40012
グレイト・ビッグ・バンド(ビル・ホールマン)ECJ-40013
ワイド・レンジ(ジョニー・リチャーズ)ECJ-40014
コンポーザーズ・ホリデイ (レス・ブラウン)ECJ-40015
ジャム・セッション・アット・ザ・タワー (レイ・アンソニー)ECJ-40016
アフロ・アメリカン・スケッチ (オリヴァー・ネルソン) LPJ-40017
スウィンギング・アット・ザ・スティール・ピア(エリオット・ローレンス)LFJ-40018
ポートレイト(ジェラルド・ウイルソン)LLJ-40019
ニュー・ボトル・オールド・ワイン(ギル・エヴァンス) LLJ-40020
ポートレイト・オン・スタンダーズ(スタン・ケントン) ECJ-40031

タイトル右側の企画番号は ECJ が基本のはずだが、一部のものが JPJ、LLJ LFJだったりしていますが・・・これはあえて検索で拾った情報のまま載せたものです。よって完全に正しい情報とは言えませんので、その辺り、ご容赦ください。
40010タイトルが見つかっていません。ご存知の方、コメントにてお知らせください。
*追記の追加 .~この
40010・・・さっそく duke さんが ≪「ISJ-40010」は、ビリー・エクスタインの「トゥゲザー」です≫との情報を寄せてくれました。さらに企画番号の謎についても以下~
ECJ、JPJ、LLJ、LFJ、ISJ は真ん中の記号が原盤です。CはCapitol、PはPacific、LはLiberty、FはFantasy、SはSpotliteです≫ なるほど!納得です!
special thanks to Mr.dukeさん!
duke さんのジャズブログ~デューク・アドリブ帖 のアドレスはこれです。http://blog.goo.ne.jp/duke-adlib-note/ 


そんな頃、たまたま見つけたソウルの中古レコード店で(true records)、エリオット・ローレンスのfantasyオリジナル盤を入手したのだ。これはもうとにかく、オリジナル盤のコーティングジャケットの・・・その何とも抗し難い魅力にしっかりと参ってしまったわけで、ついでにジャケット内に入っていた、fantasyのレコードカタログも素敵なオマケになって・・・このエリオット・ローレンスの Big Band Sound はあのむちゃくちゃに暑かったソウルでの、素晴らしく好ましい思い出のレコードとなったのである。
http://bassclef.air-nifty.com/monk/cat3840160/index.html
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その後、徐々にオリジナル盤というものを入手するようになり、自(おの)ずとエリオット・ローレンスのfantasy盤も集まってきた。
さて「エリオット・ローレンス楽団」というのは、いわゆるダンスバンド的な白人ビッグバンドで、エリントンやベイシーのようにその楽団自体に強烈な個性が有る・・・という感じではない。おそらくは、普段はボールルームなどでダンス伴奏の仕事を主にやっていて、時にFantasy緒作のようなレコード作品を録音する際には、腕利きソロイストのためにソロ場面を組み込んで作品を仕上げる・・・という風なやり方だったと思われる。どんなミュージシャンが参加しているかというと、ズート・シムズ、アル・コーン、ハル・マクージック、ニック・トラヴィス、バーニー・グロウ、アービー・グリーン、エディー・バート・・・作品に拠って多少の違いはあるが、概ねこういったメンバーである。
ローレンス本人はピアノ弾きで、時々、ギル・エヴァンス風にポロロ~ンとピアノを鳴らすくらいでどうということも無いので(笑)、だから、エリオット・ローレンス楽団を聴くということは、ほとんど彼らの優秀なソロを聴く~ということになる。
スタンダード曲を捻り過ぎない素直なアレンジの合間に、アル・コーン(テナー)、ハル・マクージック(アルト)や、エディー・バート(トロンボーン)、アービー・グリーン(トロンボーン)らが、キラリと光るソロを取る・・・どのレコードもそんな具合でけっこう楽しめる内容だと思う。
そんなエリオット・ローレンス楽団のfantasy盤には、名手のアドリブソロがたっぷり楽しめるジャズ度の高い作品がいくつかある。
まずはこれ。エリオット・ローレンス楽団と言えば、おそらく最も知られているであろう、fantasy第1作目である。
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≪Elliot Lawrence plays Gerry Mulligan Arrangements≫(fantasy 3206)
これ、タイトルだけ見ると、ジェリー・マリガンが参加していると思ってしまうが、マリガンはまったく入っていない(笑) マリガンがアレンジした曲を、エリオット・ローレンス楽団が録音した・・・ということで、plays Mulligan Arrangements というタイトルなのである。
この頃の白人ビッグバンドのレコードって、基本的にはリラックスした聴きやすい路線なので、うっかりすると片面15分くらいを、す~っと聴き流してしまうこともあるのだが、エリオット・ローレンス楽団はさすがに一味違う。聴いてると・・・テーマの後に「おっ、このアルト(テナー、ボントロ)のソロ、いいな!」と思える場面が必ず出てくる・・・そうしてクレジットを見ると・・・うん、ハル・マクージックかあ・・・やっぱりなあ・・・みたいなことを何度も味わえるのだ。これがなかなか楽しい(笑)
この plays Mulligan Arrangements でのソロイストは、アル・コーン、エディー・バート、ハル・マクージック、ニック・トラヴィス、ディック・シャーマン とクレジットされている。僕の好きなハル・マクージックは bye bye blackbird,  but not for me, my silent love などでフューチャーされている。マクージックのアルトの音色は、なんというか・・・丸みのある温かい音色で、まったく気負わずにさらりといいフレーズを吹く。随所にソロ場面のある、テナーのアル・コーンも、実にいいテナーだ。ゆったりと膨らむ、わずかに擦(かす)れたような温かみのある音色がとても魅力的なのだ。ちなみにアル・コーンはどうやら実質的にはどうやらこのエリオット・ローレンス楽団の音楽監督のようで、どのfantasy作品にも参加しており、アレンジ・ソロに大活躍している。

こういうのもある。
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≪Elliot Lawrence plays Tiny Kahn & Johnny Mandel≫(fantasy 3219)
このレコード・・・タイトルにTiny Kahn、Johnny Mandel とものすごく地味な人の名前を謳っているためか、あまり知られてないようだ。ちなみに タイニー・カーンはドラマーで、スタン・ゲッツのストーリーヴィルのライブ盤で素晴しいドラムを叩いていた人だ。ジョニー・マンデルは「いそしぎ」や「マッシュ」の作曲家。
この作品、全体に地味めではあるが、アップテンポのスインギーな曲が多く、ジャズ度はなかなか高い。なんと言ってもテナーのズート・シムズが参加しており、ズートのソロ場面もけっこうあるので、モダンジャズ好きも充分に楽しめるはずだ。ただ・・・ジャケットが例外的にあまりよろしくない(笑)

次に紹介するのは、ジャケットが印象的なこれ。

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≪Swinging at the Steel Pier≫(fanatsy 3236)
この作品~<東芝のグレイト・ビッグバンド20>として発売されたわけだが、どうやら、エリオット・ローレンス楽団の国内発売盤としては、この<スティール・ピアー>が初めてだったようだ。この作品・・・スティール・ピアー内に在る Marine Ballroomでのライブ録音のようだが、案外、音質も悪くない(国内盤解説によると、1956年6月録音)
スタンダード曲としては~tenderly, alone together, between the devil and the deep blue sea など。トランペットのニック・トラヴィスをフューチャーしたtenderly と alone together でのアル・コーンのソロがなかなか素晴しい。

さて・・・Fantasy盤には中身のジャズ的なサウンド以外にも大事なことがある。それは・・・ジャケットがとても魅力的なことだ。写真が良いのはもちろんだが、艶のあるコーティング仕様も実に効いているかと思う。
Big Band Soul は、<海辺に立った笑顔のエリオット・ローレンス氏が指揮をしているポーズを取っている>だけの写真なのだが、これが実に悪くない(笑)
The Steel Pier(すぐ上の写真) ・・・これもいい。海辺に突き出たスティール・ピアー(ダンスホール、レストランやゲームセンターなどが合体した巨大な娯楽施設のようだ)の単なる風景写真なのだが、微妙に赤っぽいソフトな色調と相俟(あいま)って、なにやら豊かなアメリカの50年代・・・という感じが漂ってきて、とてもいい感じのジャケットになっている。

そして、Fantasy緒作の中でも、ひときわ素晴らしいジャケットだと思えるのが、記事の冒頭にも写真を載せたこのレコードだ。
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≪Dream with Elliot Lawrence orchestra≫(fantasy 3226)
心地よい暖かさを感じさせるベージュの色合い、床に置かれた観葉植物の緑色、ソファいっぱいに横たわる女性のポーズ、そしてその女性の知的な佇(たたず)まい・・・うん、これは実に素晴らしい!
このレコード・・・ジャケットだけでなく、中身の音も僕としてはとても気に入っている。全編、スローテンポな曲で統一されており、音楽はあくまでも、ゆったりと、ふんわりと、そしてなんというか・・・密(ひそ)やかに流れていく。僕などは、例えば more than you know のテーマメロディを聴くと、トロンボーンの蕩(とろ)けるような甘い音色にうっとりしてしまう。ジャケット裏のクレジットを見れば、うん、アービー・グリーンか・・・と判るが、そんなことはどうでもいいのかもしれない。
このレコードのタイトルはDream・・・甘美でソフトな質感の心地よい音楽が部屋中にすうっ~と流れてくる・・・どうにも眠くなってくる・・・そうしてあなたは、すうっ~と眠りに落ちてしまう。
何かとセチガライこの世の中・・・こんなレコードが在ってもいいじゃないか(笑)

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