クリス・コナー

2021年12月31日 (金)

<ジャケレコ  第5回>7インチEP盤には逆らえない

バート・ゴールドブラット装丁のEP盤たち

なんだか知らぬ内に日々が過ぎて、この1年も早くも終わろうとしている。本当に早い。毎年、年末になるとこのような感慨に耽るわけだが、この「夢見るレコード」・・・年に1回だけでも更新せねば、というわりと律儀な気持ちもあり(笑)しかしなかなかいい題材も見つからず、あれこれレコード棚をパラパラと見ながら、埃(ほこり)を払ったりしていたら、棚の前に飾ってあるEP盤がぱたりと落ちてきた。あ、そうだ、これでいこう!・・・という訳で、今回はEP盤である(笑)

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この何年かの内にジャケットを気に入ったものを少しづつ入手してきて、EP盤もけっこう集まってきている。
‌EP盤の魅力はやはり、まずはジャケットにある。そのジャケットから醸し出される雰囲気の魅力である。
さて、EP盤を入手するキッカケにはたぶん誰もがこんな具合かな、と思えるパターンがあって、それはつまり、12インチ盤、10インチ盤でとても好きなレコードがあって(それを持っていても、あるいは持っていなくても)そのレコードと同じデザインのジャケットのEP盤というものが数多く存在している・・・そしてひとたびその姿を目にしてしまうと、その7インチという小振りな姿、形がなんとも「チャーミング」なモノに見えてきて・・・いいなあ、これ!という気分になってしまう(笑)~そんなパターンかと思う。
またデザインは同じで色合いだけ違う場合もあるが(*写真上の方に映っている bethlehem のクリス・コナーなど)それはそれでチャーミングである。このクリス・コナーのEP盤については「夢レコ」過去記事「クリス・コナーの声」で取り上げている)
それから10インチのジャケット写真の、それを撮った時の別カット写真をEP盤の方に使う~というパターンもあるようだ(emarcyのヘレン・メリルなど)それも悪くない。それから、10インチの元盤と関係なくても、そのEP盤のオリジナルなデザインが実に魅力的なものも、当然のことながら、数(あまた)存在する。なんだ・・・これではEP盤というものを好きになってしまうのも無理のないことじゃないか!(笑)

図柄的魅力とは別な話しとして、じゃあ7インチEP盤の音ってのはどうなんだ?という興味もある。
僕の場合、EP盤は45回転だから音もいいはずだ~という素朴的期待感もあり、いろいろ入手してきたわけだが、初期の頃には Clef のゲッツやフリップ・フィリップスの幾つかのタイトルに「かなりいい」と思えるものを見つけたが、それらは例外的なもので、その後は「まあ・・・普通の音だな」と感じる場合がほとんどだった。特定のレーベルなら全て音がいい~なんてことはまったくない。こういうのはやはりタイトルごとの問題だろう。そして「いい場合」の確率はそれほど高くない・・・そんなことから(僕の場合)ある時期からEP盤というものは、あくまでジャケットの魅力に拘るべきだ、と考えるようになった。

さて、さきほどEP盤の棚を少し整理してみたら、なにかしらジャケットが同じ雰囲気のものがけっこう見つかった。それらは主役であるミュージシャンを個性的なイラストで描いているジャケットのもので、たまたまかもしれないが Savoyレーベルのものが多かった・・・そう、バート・ゴールドブラットである。ゴールドブラットはベツレヘムの格調高い写真ジャケットで有名だが、イラストものも凄く個性的で素晴らしいのだ。それらを並べてみたら・・・う~ん、実にいいなあ・・・好きだなあ・・・というわけで(笑)
まずは、バート・ゴールドブラット装丁ジャケットのEP盤をあれこれと紹介してみたい。

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《上写真~黄色と赤色の2枚~Stan Getz/Swedish All Stars(roost) 》赤い方が EP 302(vol.2と右下に表記)と 黄色いのが EP 304(vol.3と表記)である。これこそ同じデザインの色違いパターン。この写真だとジャケットの表面の紙が剥がれているように見えるかもしれないが、これはサックスの部分だけ「白い色」にしてある・・・そういうデザインなのだ(笑)

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《マリアン・マクパートランドの savoy のEP盤~vol.1(xp 8032) と vol.2(xp 8033) と vol.4(xp 8106) 》
これら3枚を集めたが、vol.3 は残念ながら未入手である。そしてこの3枚~表ジャケットは素晴らしいイラストだが、vol.1 と vol.2 の裏ジャケットはまっ白・・・何の表記もない。但し、vol.4 には裏ジャケットに解説と自社レコード広告が載っていたが、エロール・ガーナー、ジョージ・シアリングなどのEP盤紹介のみで、マクパートランドのEP盤 vol.3 情報は得られなかった。
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このイラスト・・・女性がけっこう太めの右腕をアタマの上の方からぐぐ~っと曲げ込んで鍵盤をタッチしている・・・そういう図なのだが、こんな風に肘を90度にしたらピアノなんか弾けないぞ(笑)でもいいのだ・・・写実ではなくイメージ表現なのだから。ゴールドブラットは・・・「線」がいいと思う。線のタッチにすごく強弱感(太い、細い)があって、スピードを感じる。僕はこのイラストレーションをとても好きなので、同じ図柄(色違い)の Marian McPartland MOODS(MG 15022)という10インチ盤~上写真~も手元にある(笑)
  
ゲッツ~他のルーストEP盤にもゴールドブラット装丁のものが在ったので掲げておきたい。ゴールドブラットの描く、どことなくヘナヘナッとしたゲッツの姿が悪くない。しかしながら・・・Roost レーベルの音質はどう弁護的に言っても良いとは言えない。録音の段階から(おそらく)なんというか音が遠いというか、こもったような鮮度感のない音である。これはオリジナルの10インチ盤、12インチ盤でも同じ傾向。残念ではある。

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上写真~Stan Getz/Stan Getz Plays の vol.1(roost EP 301) と vol.4 (roost EP 306)
さて、この2枚・・・同じ図柄で vol.1とvol.4となっているので、当然これらの「色違い」vol.2 と vol.3 が存在しているはず~と考えて、未入手なのを残念に思ったわけだが、その vol.2とvol.3・・・なんとしたことか、先ほど紹介した3つ上の写真~Stan Getz/Swedish All Stars の2枚そのものだったのである! なぜそれが判ったのか? EP 306 の裏ジャケット~そこに答えがあったのである。つまり・・・裏ジャケット右下に EP 301から EP 307までのタイトルがしっかりと表記されていたのだ(笑)こうある。
EP 301 Stan Getz Plays ーvol.1
EP 302 Stan Getz and His Swedish All Stars ーvol.2
EP 304 Stan Getz and His Swedish All Stars ーvol.3
EP 306 Stan Getz Plays ーvol.4
う~ん・・・Plays の方は 1 と 4、Swedish の方は 2 と 3 が手持ちで、なかなか巻(vol.)が揃わないなあ~と少しガッカリ気分もあったのだが、なんのことはない。たまたま持っていたゲッツの roost  EP盤4枚が、ちゃんと vol.1~vol.4 までの揃いになってるじゃないか!これは・・・ちょいと嬉しい(笑)

まあこんな風にバート・ゴールドブラットのカバーアートが大いに魅力的なEP盤ではあるが、たまには音源的な(音質ではない)興味から大いに惹かれてしまう・・・そういうEP盤もある。例えばこいつ。

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ゲッツだけ紹介して他のテナー奏者も出さないのも面白くない(笑)上の2枚のEP盤は、モーリス・レーン(xp 8089) と テッド・ナッシュ(xp 8090) TENOR SAX なるシリーズで文字通りテナー奏者を紹介するための企画のようだ。同じデザインの色違い・・・僕はこういうのにけっこう弱い。おそらくゴールドブラットは2枚を並べた時の効果を考えて、その色彩を決めている。だから・・・こちらも2枚、並べたくなる(笑)
この2枚~例によってジャケット裏に何の印刷も無いので(データが無いので)テッド・ナッシュについては調べた自分のメモが付けてあったことを失念していた(笑)そのメモによると、over the rainbow を含むこの4曲は1946年のSP音源のようだ。dsにマックスローチの名前がある。

さて、この時期のテナーと言えば・・・ブリュー・ムーアを忘れてはいけない~下写真の2枚。

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Brew Moore vol.1 (savoy xp 8066) と vol.2 (xp 8067)  である。これは、vol.1とvol.2の連続番号なので、savoyレーベルには売り出したかった意図があったはずだ。実際、この時代ではすごくモダンなフレージングが素晴らしい。なぜ人気が出なかったのか・・・判らない。
このEP盤2枚~各4曲づつ(計8曲)収録されているのだが、前述のマリアン・マクパートランドEP盤と同様に、裏ジャケットに何も印刷されてない。だからどこにもパーソネルも記されてないわけで・・・同時期(1953年と思しき)の10インチ盤~Brew Moore/Modern Tenor Sax(MG 9028) にはおそらく裏ジャケット情報は載っているだろう。だが僕はその10インチ盤は未入手なので、discogsで savoyレーベルを調べてみると、その10インチ盤には6曲しか収録されていないことが判った。その6曲とは~
EP8066の4曲と8067からの2曲(lestorian mode と mud bug) である。
つまりこの段階で8067から残りの2曲が抜け落ちてしまっているのである。後述するチャック・ウエイン/ブリュー・ムーア音源との関連もあり、なんとなく知ってるつもりだったブリュー・ムーアの savoy音源のことが、ほとんど判ってないことが判った(笑)う~ん・・・なんだかとても気になってきた(笑)そうなると厳しいことに、savoyというレーベルは、コンピレイションものが雑なのである(笑)データ表記もアバウト過ぎて・・・とにかく判りにくい。
だがしかし天は我を見放さなかった(笑)EP 8067に収録されている「レストリアン・モード lestorian mode」という特徴ある曲名が大きなヒントになって、いろいろ判ってきたのだ。

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上写真のEP盤8067に収録の lestorian modeという曲名にははっきりと覚えがあって、それはスタン・ゲッツ絡みで、savoyレーベルにこの名前の12インチLPが在ることを知っていたからだ。そこでゲッツの棚をチェックしたら・・・在った在った。
Lestorian Mode(MG 12105)だ。

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この Lestorian Mode には~ゲッツ、サージ・チャロフ、そしてムーアの3種のセッションから4曲づつが収録されていた。そして、件(くだん)のムーアの8曲の内、8067の4曲がB面3~6曲目に収録されており、そのパーソネルもきちんと表記されていた。よかった(笑)

Brew Moore(ts)
Gerry Mulligan(bs)
Kai Winding(tb)
George Wallington(p)
Jerry Floyd(tp)
Curley Russell(b)
Roy Haines(ds)

lestorian mode
gold rush
kai's kid
mud bug 
録音年は12インチ盤 Lestorian Mode にも表記されていないので、不明です。
*1/4追記~上記4曲の録音年月日が 1949年5月20日と判明しました。Arista/Savoy時代のボブ・ポーター監修の再発盤~
Brothers and Other Mosthers vol.2(SJL 2236)の詳細なデータによって判りました。ちなみにこの2枚組(1979年)には上記4曲が各2テイクづづ収録されています。

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 さて、もうひとつのムーアのEP盤(8066)4曲はどこに行ってるのか? 
こちらも案外すんなり見つかった。
In the Beginning BeBop!(savoy MG 12119) という12インチLPに4曲とも収まっていた。こちらも前述の「レストリアン~」と同じように3種のセッションから4曲づつ(全12曲)収録で、ムーア4曲はA面5,6,B面1,2に配置されている。このセッションはカルテット(4人編成)でパーソネルは以下。
録音年月は12インチ盤にも表記されておらず不明。

Brew Moore(ts)
Gene Dinovi(p)
Jimmy Johnson(b)
Stan Levey(ds)

blue brew
more brew
brew blew
no more brew

*1/4追記~録音年月日が 1948年10月22日 と判明しました。こちらも Arista/Savoy時代のボブ・ポーターによる再発盤~
Brothers and Mothers vol.1(sjl 2210)という2枚組(1976年)のデータに明記されていました。

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さて、ブリュー・ムーアのリーダー作品はと言うと・・・あまり思い当たらない。この savoyEP盤の他にはたしか fantasyに在ったかな?
というくらいだ。調べてみたら(discogs)やはり fantasy に以下の2作品を残していた。
Brew Moore Quintet(1956年)紫色の風神様みたいなジャケットのもの。
Brew Moore(1957年)ムーアがテナー持って笑ってるジャケットのもの。
あとは Brew Moore in Europe(1962年)~ラース・ガリンやサヒブ・シハブとの共演盤~という作品があるくらいで、これでムーアのリーダー作はうんと少ないことがはっきりした。だから、ブリュー・ムーアを聴くためには、他のミュージシャン作品への参加作~後述するチャック・ウエインを含めて~をチェックするしかないのだ。

このように貴重な音源をセッション単位で聴きたい時に、あるセッションがそのまま1枚のEP盤にまとめられているとありがたい。SP音源はA面・B面で2曲単位だから、SP2枚分4曲をEP1枚に収めるケースも多いようだ。それから10インチ盤の時代には、ひとつのセッションを3~4曲でまとめる場合が多いようで、つまりセッション2回で6~8曲分を仕上げて、それらで10インチ盤両面を構成しているケースが多いように思う。また12インチ盤に再収録する場合、先ほどの savoy のコンピレイションLPのように、3つのセッションから4曲づつで、1枚の12インチ盤を構成する場合もある。その際、元セッションの3~4曲が、A面・B面にバラバラにされたり、あるいは別のLPに振り分けられたりするケースも多いようなので、特に興味深いセッションの場合には、その3~4曲が1枚のEP盤にまとめられていると、それだけで嬉しいものなのだ。

次にこのEP盤。

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Here's that Mann vol.2 (dee gee EP 4013)

pooch mc gooch
all of me
back in your own backyard
it don't mean a thing

シェリー・マン名義のEP盤である。セプテット(6人)編成だが、なんと言っても魅力なのが、アート・ペッパーが入っていることだ
(it don't~以外の3曲)  
*写真右スミのEP赤盤は~ミルト・ジャクソンのカルテット(dee gee)これ、round midnight の演奏も音質もいい。

pooch~では「おおっ!」と叫びたくなるような切れ味鋭いソロを聴かせてくれる。all~とback~は歌入りではあるが、間奏やオブリガート(歌の合間に入れる短い合いの手)で見事なソロが聴かれる。歌伴・・・という感覚からはすっ飛んでる!(笑)
これら3曲は1951年11月のペッパー入りセッション4曲からの3曲。そうして嬉しいことに、このDee GeeのEP盤4013~1951年シカゴ録音とのことだが、音質もなかなかに良いようだ。
ペッパー入りのもう1曲は、the count on rush street という曲で、その count~は Dee Gee EP4006なるEP盤に収録。4013がvol.2と表記されているから、4006 はたぶん Here's that Mann vol.1 なるタイトルだろう。
count on rush street は急速調のインスト曲で、この曲でのペッパーのソロも他メンバーのソロも、皆ハリのある素晴らしい演奏だ。
ちなみにこれらの音源はSavoyの12インチ盤 Deep People に収録されている。
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Deep People (savoy MG 12405)のA面4,5,6,7に back~以外の3曲とcount~の4曲収録されている。
*back~は女性歌手 shelby Davisの歌伴曲なので、Singin' and Swingin'(savoy MG 12060)という女性歌手を集めたオムニバスLPに収録されている。

もうひとつ、音源・・・いや、演奏が素晴らしいEP盤を。
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Chuck Wayne Quintet(savoy xp 8119)1954年6月録音

while my lady sleeps
tasty pudding
prospecting
sidewalks of Cuba

このEP盤・・・ジャケットの淡いブルーな色合い、構図、イラストの全てが素晴らしい!好きなジャケットだ。オマケにこのEP盤・・・音源的にもとても魅力的でそれは、やはりズート・シムズのテナーが素晴らしいからである。
《このEP盤の裏解説(オジー・カデナ)によると4曲中3曲が Zoot Sims、1曲(sidewalks~)のみ Brew Moore、とされている。カデナは~"sidewalks of Cuba" which were recorded a week after the sides with BREW MOORE~とハッキリ書いている》
*1/2夜・訂正1~上記のオジー・カデナ解説部分~恥ずかしながら意味を完全に取り違えていました。 最初に、この "sidewalks of Cuba"という曲名が目に入って、次に recorded を見て、それを with Brew Moore につなげて意味を解釈してしまって「そうか、この1曲だけはブリュー・ムーアと録音されたのか」と思い込んでしまいました。しかし改めて裏解説をよく見たら・・・この "sidewalks of Cuba" の前に大事な文章が在ったのです。それをつなげると、以下のようになります。
ZOOT SIMS blows with CHUCK on "Butter Fingers", "While My Lady Sleeps", "Tasty Pudding", "Prospecting" and "Sidewalks of Cuba" which were recorded a week after the sides with BREW MOORE   
そうなんです。ズート・シムズは、これらの5曲を("Sidewalks~" を含む)チャック(ウエイン)と演奏(blows)して、それらが録音されたのはブリュー・ムーアとのセッションの1週間後だった~というのが正しい意味かと思います。
早とちりしての先入観を持ったまま、ズート・シムズとブリュー・ムーアの音色のことなど書いてしまい(後述部分)恥ずかしい限りです。
ここに謹んで訂正させていただきます。

これらの音源4曲は、12インチ盤 the Jazz Guitarist(savoy MG 12077)に4曲とも収録されている。そしてここからが問題なのだが、このLP裏解説では上記の sidewalks~はズート・シムズとされているのだ。つまりズート入り5曲(上記4曲+butter fingers)、ムーア入り3曲、あと4曲(ウエイン、ジョン・ミーガン(p)のカルテット)加えての全12曲とされているのだ。う~ん・・・。Dscn3146

さあ困った(笑)・・・どちらが正しいのだろうか? 
さっそくその sidewalks~を何度も聴いてみた。う~ん、判らない。ズート・シムズのようでもあり、ブリュー・ムーアのようでもある(笑)元々、この2人はまずソフトな音色がよく似ているし、ビートに軽やかに乗るスタイルとフレーズ展開も似ていると思う。しかし・・・気になる(笑)それで、ムーアのリーダーセッション(前述の1953年(推定)8曲)など、ムーア絡みをあれこれ聴いてみた。その上での自分なりの認識はこんな風だ。
<高音域フレーズの時~アルトっぽい艶々した音色になるのがズート・シムズ。やや掠(かす)れたような乾いた音色になるのがブリュー・ムーア>
<音色の全般として~ヴェールが掛かったようなソフトなマイルドな感じがズート・シムズ。
全体にサブトーンの度合いが強めで(シムズよりは)時に乾いた硬い感じ(シムズよりは)になるのがブリュー・ムーア>
そんな印象を持ちながら、改めてこの sidewalks~を聴いてみると・・・やっぱり判りません(笑)それでもちょいと無理やりに理屈を付けてみると・・・テナーのソロの時に高音域の繰り返しフレーズで僅かに引っ掛かるような場面があって・・・ズートはほとんどのフレーズに迷いが無いから・・・そうするとこの sidewalks~のテナーは、ブリュー・ムーアであるように僕は判断している。
*1/2夜・訂正2~すみません、完全に間違えました。sidewalks of Cuba のテナーは、12インチ盤解説の通り、ズート・シムズです(パーソネル表記の詳細については写真の上の青字「訂正1」をご覧ください)

いずれにしても、この2人がそれぞれの曲でチャック・ウエインのギターに絡んでテーマをユニゾンで吹く場面が多いのだが、ウエインのギターにフィットしたソフトなテナー音色が素晴らしい。どのトラックも味わい深いが、僕が特に好きなのが while my lady sleeps だ。この曲、なんとも慎み深いような雰囲気のあるメロディの曲で、僕が最初にこの曲を知ったのは、プレスティッジの「コルトレーン」というLPからである。1972年秋にビクターが、prestigeゴールデン50なるシリーズで1100円(当時、LP盤は大体1800円~2100円だったのこの1100円という価格は画期的に安価で、しかし良質なジャズLPだった)で発売した時の目玉がこの「コルトレーン」だった。このレコードは、だいぶ後になって、傑作バラード~<コートにすみれを>収録LPということで有名になったように記憶しているが、もうひとつのバラード曲がこの<while my lady sleeps>だったのである。コルトレーンはスローバラードで仕上げているが、こちらのウエイン/シムズは意外にも速めスイングだ。しかしそれも素晴らしい。

さて、このEP盤(XP 8119)にも vol.1という表記があり、裏解説をよく見ると続き番号の XP 8120 がvol.2 のようで、これは前述のシェリー・マン(dee gee EP 4013)と同じケースである。これは単にsavoy レーベルのやり方というだけかもしれないが、つまりこういうことではないだろうか・・・要はあるセッションが完了して、その音源がまず10インチ盤で発売されて、そのすぐ後に(あるいは同時に)2枚のEP盤に分けて発売された~というパターンだと考えられる。価格面でも10インチ、12インチよりは7インチEPの方が安かったので、好みの曲を収録している方のEP盤だけ購入する~という需要があったから、同じ音源でもいろんなフォーマットを用意したのだろう。
そうだ、考えてみれば日本でも、33回転コンパクト盤なるフォーマットがあったじゃないか。たいてい4曲入りで、要はアルバム(LP)を買うまではいかないけど、ヒットした曲を聴きたいな、という場合に、このコンパクト盤が重宝したのだ。そういえば・・・僕もサイモン&ガーファンクルの<明日に架ける橋>はコンパクト盤で我慢していたな(笑)
アメリカでEP盤というフォーマット(45回転)が盛んに発売された頃は、大体のところ、10インチ盤の同内容がEP盤2枚、12インチ盤同内容がEP盤3枚になるパターンが多いようだ。Clef や Victorレーベルの場合だと10インチ盤や12インチ1枚分をEP2枚組み、3枚組みとしたタイトルがけっこうある。あの「見開き組みセット」にしたEP盤もこれまたチャーミングではある。それらについてはまたの機会に。
う~ん、それにしても・・・レコードというものは、どうしたって楽しいものですね(笑)

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2014年2月15日 (土)

<ジャズ雑感 第37回>ベツレヘムの east coast jazz シリーズを巡る謎

つい最近、手に入れたレコードがある。それは・・・the compositions of Bobby Scott というベツレヘムの10インチ盤である。年末の「スタン・リーヴィー」記事から始まった皆さんとのやりとりを通して、このところの僕は軽い『ベツレヘム熱』に浮かされていたようでもあり・・・気が付いたら、これが手元にあったのだ(笑) 
もっとも・・・ベツレヘム10インチ盤の持つ魔力に抗(あらが)える者など、この世にいないだろう。以前から、僕も少しづつではあるが集めてきた。今回はそれらの10インチ盤も参考にしながら、もう少しだけ、ベツレヘム・レーベルのこと・・・特に、east coast jazz series のことを探ってみたい。East_coast_jazz_005
≪BCP 1009 Bobby Scott - East Coast Jazz #1~この10インチ盤が、栄えあるeast coast jazz series の #1 である。ベツレヘム社は、当時、新進気鋭の若手:ボビー・スコット(ピアニスト、作曲家~『蜜の味』1960年で有名)を大々的に売り出そうとしたようだ。この1009番より前に、1004番(ピアノトリオ)を発売していて、さらに1024番(1009番の続編~the compositions of Bobby Scott:2)も発売している。10インチ盤40点の内、3点がボビー・スコット作品だ≫

前回の<ミルト・ヒントン>記事のコメントにて、せんりくんとdenpouさんが、この east coast jazz series なるシリーズ名を提示してくれた。その折には軽いやりとりだけで終わったのだが、僕自身も、1020番という表記でありながら、なぜか12インチ盤の『ミルト・ヒントン』を持っていたことから、やはり east coast jazz series という名前がとても気になっていた。(1000番代は10インチ盤)
この『イースト・コースト・ジャズ・シリーズ』なる名前・・・それほど知られてはいないと思う。というのも・・・これ、「シリーズ」と呼ばれてはいるものの、わずかに9タイトルのみの発売で、しかも発売された時のレコード番号も飛び飛び。さらに、「シリーズ」の1~9が、10インチ時代から12インチ時代に跨(またが)って発売されているのである。そんな事情から、この  east coast jazz series  はシリーズ(連続したひとつの流れ)」としては、なかなか周知されにくかったであろう・・・と考えられる。
その辺の発売事情に絡むベツレヘム社のこのシリーズに対する思い入れと、その変化・・・みたいなものが、今回、手持ちのベツレヘム10インチ盤の「裏ジャケットのレコード宣伝番号」をチェックしている内に、浮かび上がってきたので、その辺りの経緯もまとめてみたい。

まずは、east coast jazz の1~9を、発売(されたとされる)タイトルの番号から括(くく)ってみた。

(10インチ盤)
BCP 1009 Bobby Scott - East Coast Jazz/1
BCP 1010 Vinnie Burke - East Coast Jazz/2
BCP 1012 Joe Puma - East Coast Jazz/3
BCP 1018 Herbie Mann - East Coast Jazz/4
(これ以降は12インチ盤)
BCP 1020 Milt Hinton - East Coast Jazz/5
BCP 10 Milt Hinton - East Coast Jazz/5
BCP 13 K&J- K + J.J. East Coast Jazz/7
BCP 14 Urbie Green - East Coast Jazz/6
BCP 16 Hal McKusick - East Coast Jazz/8
BCP 18 Sam Most - East Coast Jazz/9
BCP 6001 K&J- K + J.J. East Coast Jazz/7
(最初はBCP13番として発売されたが、短期間の内に BCP6001番に移行されたらしい)

これらの east coast jazz series ・・・僕は、12インチ盤の 10番(1020)、14番、18番、6001番(13番)の4枚は持っていたが、10インチ盤で持っているのは、この記事の冒頭に掲げた1009番(Bobby Scott)のみである。
だがしかし・・・そこは持つべきものはお仲間である。前回のコメントやりとりの後、denpouさんがお持ちの east coast jazz series 10インチ盤の写真を送ってくれていたのだ。denpouさんは3枚、お持ちだった。
*以下、写真6点~denpouさん提供。

Bcp1009_2 Bcp1009_3
≪BCP 1009 Bobby Scott - East Coast Jazz/1≫

Bcp1010 Bcp1010_2 
≪BCP 1010 Vinnie Burke - East Coast Jazz/2≫

Bcp1012 Bcp1012_2 
BCP 1012 Joe Puma - East Coast Jazz/3

これらの写真で判るように、この east coast jazz series なるシリーズ・・・表ジャケットには「小文字」で、裏ジャケットには上部に「大文字」で、EAST COAST JAZZ SERIES としっかりと表記されている。まずは、「裏ジャケット下部の宣伝レコード番号」にも注目してみよう。

East_coast_jazz_006_4   
1009番( east coast jazz seriesの#1)には~
1010(#2)、1012(#3)、1015、1016、1017、1018(これが#4なのだが、east coast jazz~#4の表記なし)まで。9番の裏ジャケットにわりと番号の離れた18番まで載せている・・・ということは、1ヶ月に4枚づつ発売したとしても、1~2ヶ月先の発売予定のタイトルまで載せていたのかもしれない。

1010番(#2)には~
1009(#1)、1012(#3)と、1015~1018(#4表記なし)まで。

12番には~
1009(#1)、1010(#2)、1018(#4)、1016、1017まで。

上記のことから、EAST COAST JAZZ SERIES シリーズ最初の#1(1009番:THE COMPOSITIONS OF BOBBYSCOTT)の発売時から、すでに1012番の#3(JOE PUMA)までをシリーズとして予定(あるいは同時に発売)していたことが判る。
しかしその反面、同シリーズ1009番・1010番の発売時には、1018(HERBIE MANN QUARTET)を、シリーズの#4としては決定していなかった・・・ことも覗える。そうして、1012番(JOE PUMA)を発売した時には、先発売予定の(あるいは同時に発売)1018番を#4として宣伝に載せているではないか。と、なると・・・この場合、せいぜい1~2ヶ月くらい前に「east coast jazzシリーズの次のタイトル」が決まったことになる。
ベツレヘム社は、このeast coast jazz なるシリーズを企画し、その発売を開始してみたものの、実はそれほど綿密な販売プランなどもなく、案外、「思いつき」のシリーズだったのかも?・・・僕はそんな風にも想像してしまう(笑) まあしかし、よく考えてみたら、ベツレヘムのというレーベルのコンセプト自体が(西海岸事務所を設立する前の)元々、「東海岸の白人ジャズ」みたいなイメージのものだったわけで、どの作品が east coast jazz シリーズであっても、そうでなくても、それほど違和感もないような気もする(笑)

さて・・・冒頭に書いたように、僕はベツレヘムというレーベルに興味を持ってから、10インチ盤も幾つか入手してきた。取り出してきてみると、思ったより枚数はあるじゃないか(笑)・・・まずは、並べてみよう。12title_2

上段 左から~1003、1004、1007、1016
中段 左から~1017、1019、1021、1024
下段 左から~1025、1029、1031、1040
≪僕の手元には、これら12枚のベツレヘム10インチ盤が在った。どのジャケットにも、ゴールドブラット表記がある。この頃のゴールドブラットは、「写真もの」だろうと「イラストもの」だろうと、そのどれをも抜群のセンスを持って、素晴らしいジャケットに仕上げている。この中で僕が特に好きなのは「イラストもの」~Charlie Shavers/Horn o'Plenty である。但しその内容は、DJの声が被(かぶ)るもので・・・ジャケットほど好きになれない(笑)≫

「ジャケット裏の宣伝レコードの番号」に、もう少し拘りたいので、僕の手持ちの中から、比較的、番号の近い10インチ盤の裏ジャケットをチェックしてみた。

1016番(sincerely, Conti)の裏ジャケットには~
1001と1002(ともにクリス・コナー)と、#1(1009)と#2(1010)の4タイトルが載っている。なぜか、1012と発売間近のはずの1018(HERBIE MANN QUARTET)が載っていない。
1017_levy_2 1017_2 ところが、次の1017番(Stan Levey plays the compotisions of ~)の裏ジャケットを見ると・・・ここでは、当(まさ)に、EAST COAST JAZZ SERIES #1~#4(1009、1010、1012、1018) と1016の5タイトルが載っているじゃないか。これは明らかにこのEAST COAST JAZZ SERIESに的を絞った宣伝である。

この調子で宣伝していくのか~と思いきや・・・次の1019番(Oscar Pettiford/Basically Duke)では、1001番~1020番まで18タイトルを載せている(1014番と1019番は不掲載) 
1019_baiscally_2 1019  EAST COAST JAZZ SERIESの扱いについては、1009、1010、1012、1018、1020 のそれぞれに EAST COAST JAZZ SERIES #1~#5を付けて、タイトルと参加ミュージシャンを載せている。この時点ではまだ「シリーズ」として売ろうとしている。
そして、(手持ち盤では)1025(Herbie Harper)の裏ジャケット宣伝では、こうなる・・・。
1025_herper1001~1026までのタイトルのみ載せているが、1010番、1012番、1018番、1020番を見ても、EAST COAST JAZZ SERIES #~なる表記はどこにも見当たらない! そしてこの「宣伝パターン」は、1031番でも同一。10インチ盤最後の1040番(Dick Garcia/Wigville)でも、裏ジャケ宣伝は1001~1028番までのタイトルしか載せていないのだ。
これが少しでも多くのタイトルを宣伝に載せようという、単にスペースの問題なのか・・・あるいはこの時点で、EAST COAST JAZZ SERIES #~というシリーズ概念に見切りを付けたのか・・・その辺りは判らないが、いずれにしても、10インチ盤時代のベツレヘム社は、この「シリーズ」をうまくまとめ切れなかったのでは・・・という印象を僕は拭いきれない。
ベツレヘム社は、自信を持って始めた EAST COAST JAZZ SERIES に相当な拘りを持ちながらも・・・しかし実際の売り方には大いに迷いながら(もちろん売れ行きが芳しくなかったからだろう)・・・それでも#1から#4まで製作販売してきた。しかしその頃、時代は10インチから12インチ時代へと移り始めていた。ベツレヘム社も「時代に乗り遅れてはならない」として、12インチ化に踏み切る。
ベツレヘム社は、12インチ盤の発売に当たって、まずDeluxeシリーズを計画した。このDeluxeシリーズ~ご存知のように、基本的には「2枚の10インチ盤のカップリング」企画である(10インチ盤2枚分そのままを1枚には収録できずに1~2曲をカットすることもあったようだが)
そのDeluxeシリーズの発売番号・・・BCPの1番から始めるのが普通のはずだが、ベツレヘムの場合、どうやら・・・BCP1~9番という番号は、12インチ化を始めた頃には使われなかったようだ・・・ということが判ってきた。
なぜか? なぜ普通に1番から発売しなかったのか? ここで・・・『ミルト・ヒントン』である。
その時、east coast jazz seriesの#5として用意してあったのは、10インチの1020番:Milt Hintonである。そしてひょっとしたら、この1020番がベツレヘム社としても最初の12インチ盤で、発売までの準備不足もあり、10インチとして用意した番号(1020番)はもちろん、カバー写真・レイアウトなど全てをそのまま使用して、12インチ化してしまったのかもしれない。これが1020番(その後、BCP10番に修正)のMilt Hinton(east coast jazz series #5)となる。
*(その後の「シール貼り」「マジック消し」の経緯は、夢レコ<ミルト・ヒントンというベース弾き>を参照のこと)

14_urbie 14_urbie_2 さて、12インチに移行した直後の、east coast jazz seriesの#6(Urbie)の裏ジャケットをチェックしたら、面白いことに気が付いた。
はっきりと「12インチ」レコードとして、1020番の「ミルト・ヒントン」と書いてあるじゃないか! そうして、左側の10インチ盤の宣伝には、1020番は載っていない。
つまり・・・ミルト・ヒントンの1020番は、最初から「12インチ盤」として正式に発売されたのだ!(単純なミスではなく意図的に) 
そして・・・ 『ミルト・ヒントン』の10インチ盤(1020)は、ひょっとしたら、発売されなかったのかもしれない。
だとすれば・・・これまで10インチ盤『ミルト・ヒントン』がネット写真でさえも確認できなかったことの説明も付く。Hinton4

その後、まもなく、ベツレヘム社は、その1020番を、BCP10番に修正した~ことは事実なのだが、そのことで、その後の発売番号割り当てプランに混乱が生じてしまったことはあるかと思う。
この辺りのことと、ベツレヘム社が拘りを持ってきたであろう、EAST COAST JAZZというシリーズへの扱い具合を考え合わせてみると・・・僕なりの答えが見えてきた。

前回の記事から幾度か ≪Deluxeシリーズが発売され始めた時、何らかの理由により、BCP 1~9番辺りが「欠番」として使われなかったのでは?≫ と書いてきたが、その「何らかの理由」として・・・以下のようなことを考えてみた・・・ベツレヘムについては、たぶんこれが最後の妄想である(笑)
その時、ぼんやりと僕のアタマに浮かんだのは・・・「BCP 1~9番辺り」という数(かず)と、east coast jazz seriesの #1~#9 という数(かず)のことだ。どちらも9個じゃないか。う~ん・・・これは何かあるぞ・・・と。 
つまり・・・ここには、east coast jazz series が深く関わっているのではないかな?・・・という想いがあったわけである。

≪1020番と印刷された『ミルト・ヒントン』~どうせ修正するのなら、1番に修正することもできたはずなのに、なぜ、そうしなかったのか?≫
~この時点ですでに、10インチ盤音源を使っての12インチ化のプランもあったはずで、そうした時に、すでに発売済みの10インチ盤:EAST COAST JAZZ シリーズ #1~#4 も、どこかで再編したい~とベツレヘム社は考えていた。
そこで12インチ盤の新譜第1弾として用意した『ミルト・ヒントン』は、1020番(EAST COAST JAZZ SERIES #5)という番号が付いてしまっている。さあどうする、ここはシール&マジックで修正するとしても、ここでもし「1番」に修正すると~それもまずいなあ~EAST COAST JAZZ シリーズは、すでに #1~#4まで出ているし~#5が先の番号になってしまうのも按配が悪い~そうだ、#5の『ミルト・ヒントン』を、とりあえず、BCPの10番にしておけば、前に1~9の空き番号が出来る。それを使えば、10インチ発売済みのEAST COAST JAZZ シリーズ #1~#4 も例えばBCPの6番~9番に収められる。本当は『ミルト・ヒントン』1020番を5番に修正するのが一番いいのだけど、5番だとマジック消し作戦が使えないし(笑) まあ、いいや。この先も#6~#9と企画を続ければ、とりあえず、1~9番もうまく収まるだろう・・・というような思惑が在ったのでは・・・と、僕は想像する。
そうして実際、ベツレヘム社は、EAST COAST JAZZ SERIES の続編を #6~#9まで創ったのだが、それらには、せっかく用意したはずの「空き番号 1~9」を使わずに(これまた何らかの事情により:笑) それぞれ、BCPの13番『K+JJ』(すぐ後に6001番に移行)、14番『Urbie Green』、16番『Hal Mckusick』、18番『Sam Most』 として発売されたのである。 18_sam 18_sam_2
結局のところ・・・EAST COAST JAZZ SERIES なるネイミングが、はっきりとジャケットに表記されたのは、10インチ盤・12インチ盤を通して、これら全9タイトルだけだったことになる。
さて、EAST COAST JAZZ SERIES は、12インチに移行してからも、 #5~#9まで発売されたわけだが、それでは、10インチ盤で発売された EAST COAST JAZZ SERIES #1~#4 は、その後、どうなったのか?
先ほど≪Deluxeシリーズは、基本的には「2枚の10インチ盤のカップリング」企画である(10インチ盤2枚分そのままを1枚には収録できずに1~2曲をカットすることもあったようだが≫と書いたのだが・・・実は、EAST COAST JAZZ SERIES #1~#4 (10インチ盤)も、その「中身だけ」は、しっかりと、Deluxeシリーズ:12インチ盤の中に再編されていたのだ。(#3のみ確認できず) 以下、その移行先。

East_coast_jazz_002_2 East_coast_jazz_003_2 East_coast_jazz_004_2 East Coast Jazz #1(1009番 Bobby Scott)~全5曲が、BCP8番(The Compositions Of Bobby Scott)のA面に収録。
East Coast Jazz #2(1010番 Vinny Burk)~全8曲が、BCP6番(Bass By Pettiford/Burke)のB面に収録。
East Coast Jazz #3(1012番 Joe Puma)~12インチ化を確認できず。
East Coast Jazz #4(1018 番 Herbie Mann)~全7曲が、
BCP58番(Herbie Mann Plays)のA面に3曲、B面に4曲、収録。

上記のように、East Coast Jazz シリーズ #1~#4 (10インチ盤)の内、3点(#1と#2と#4)は、12インチ化されていたわけである。残念ながら、East Coast Jazz Series なる表記は、8番、6番、58番のジャケットのどこにも見当たらないが、3点とも「全曲」が再編されている。そして・・・#1と#2には、「空き番号」になっていた、BCP8番と6番が使われているじゃないか! やはり・・・ベツレヘム社は、新たに始めた12インチDeluxeシリーズの初期ナンバー(1~9)を使って、East Coast Jazz シリーズを「再編」しようとしていたのだ。僕はそう思えてならない。

こんな具合に、いろいろと妄想を書き連ねてきたが、もちろん真実は誰にも判らない。60年も前のジャズレコードの話しだ・・・判らなくて当たり前である(笑) それにしても、今回、興味を持った特にベツレヘムに関しては、まとまった「レーベル情報」もほとんど見当たらず、本当に判らないことだらけだった。
この記事の冒頭にも書いたが、僕の最大の疑問は~
≪Deluxeシリーズ1~9は当初は「空き番号」だったのでは? そして、だいぶ後になってから発売されたタイトルに、この1~9番が充てがわれたのでは?≫というものだった。
それについて、少々補足すると~
問題のBCP1~9番の<左NY、右CALIF>ジャケットのタイトルは、以下となる。
BCP 1   Bobby Scott - Terry Pollard
BCP 2   Oscar Pettiford/Red Mitchell - Jazz Mainstream
BCP 3   Eddie Shu/Bob Hardaway - Jazz Practitioners
BCP 4   Pete Brown/Jonah Jones - Jazz Kaleidoscope
BCP 5   A Ruby Braff Omnibus
BCP 6   Oscar Pettiford/Vinnie Burke - Bass By Pettiford/Burke
BCP 7   Hank D'Amico/Aaron Sachs - We Brought Our Axes
BCP 8   The Compositions Of Bobby Scott
BCP 9   Westcoasting With Conte Candoli And Stan Levey

僕が持っているのは 3、6、8、9である。これらの<左NY、右CALIF>ジャケットのものが(それしか存在しないと思われる)、Deluxeシリーズもだいぶ後になってからの発売されたものであることは間違いない。その根拠は、例によって(笑)それぞれのタイトルの裏ジャケットレコード宣伝の番号だ。
BCP3には[40~64まで]
BCP6には[38~64まで]
BCP8には[56~69まで]
BCP9には[40~65まで]
この番号並びを見ると、それぞれの発売時に多少は先の発売予定のタイトルまで載せたとしても、これらの3,6,8,9番がカタログ上ではBCPの若い番号であっても、実際に発売されたのは、BCP60番の前後であったことは明らかである。

さて、今回のベツレヘム・・・本当に判らないことだらけで、だから・・・現物(ジャケット・盤のデータ)のサンプルを集めて、その差異から、あれやこれや類推していったのだが、如何(いかん)せん、サンプルが足りない。ネットからの情報でもそれが信頼に足るものであれば、写真など使用させてもらうことも考えないとダメだな・・・そんなことを思いながら「ベツレヘム迷宮」に苦しんでいた時、ひとつの有力な資料を見つけた。見つけた~と言っても、実は、shaolinさんというレコード愛好家の方のブログ記事に「古い時代のレコードカタログの記事」があったことを思い出しただけなのだが(笑)
それは≪Old Record Catalogues, Pt.1≫という記事で、その中に、果たしてBETHLEHEMのレコードカタログも載っていたのだ!
そして、その1956年頃のBETHLEHEMレコードカタログの写真と共に、以下のようなキャプションが付いていた。
≪12インチLP ($4.95) は BCP-12 (Don Elliott) から BCP-35 (Bobby Troup Vol.II) まで (なぜか BCP-11 およびそれ以前は未掲載)、10インチLP ($3.85) は BCP-1001 (Chris Conner Sings Lullabys Of Birdland) から BCP-1040 (Russ Garcia) まで (BCP-1020 は未掲載)がリストアップされています≫
*bassclef註~1020番は、12インチ盤として、BCP22とBCP23の間に1020の番号のまま掲載されている。おそらく・・・このカタログ発行の後に、この12インチ盤1020(ミルト・ヒントン)を、「空いていた」(あるいは「空けておいた」)BCP10番に移行させたのだろう(「シール貼り&マジック消し」作業により)

~いやあ・・・やっぱりそうだったのか!という気持ちで、僕は嬉しくこの資料を眺めたわけである。
このカタログ資料は、本当に興味深いものですので、オリジナル・レコードに興味ある方・・・ぜひご覧ください。specail thanks to Mr. Shaolinさん!
これがそのshaolinさんのブログ記事のアドレスです~http://microgroove.jp/2007/06/old_record_catalogues_pt1/

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2014年1月26日 (日)

<ジャズ雑感 第36回> クリス・コナーの声

ジャズを長いこと聴いてきたが、実は・・・僕はヴォーカルものをあまり聴いてない。限られた何人かの女性歌手~アン・バートン、キャロル・スローン、アイリーン・クラール、アニタ・オディ、ジューン・クリスティ、それから、クリス・コナー、この辺りをたまに聴く・・・そんなヴォーカル初心者である。もちろん、美人歌手のゴージャスなジャケットを目にすると・・・そのオリジナル盤を欲しくなるが、人気の盤はどうしても「いい値段」になるので、僕の場合はその現実を見ると、すぐに諦める(笑) インストものに対しては、もう少しだけだが粘る(笑) そんな僕が、オリジナル盤に若干の拘りを持って、知らぬ間に初期の何枚かを集めさせられていた(笑)・・・それが、クリス・コナーなのである。

クリス・コナーと言えば・・・誰もが、バート・ゴールドブラットの傑作ジャケット~「うな垂れるコナー」と「マイク挟みコナー」・・・あれを思い出してしまうだろう。コナーのベツレヘム10インチ盤は、内容の良さと共にあのジャケットの素晴らしさもあって、やはり人気が高い。そして値段も高い(笑) ベツレヘムのコナー音源を僕は安物CDで聴いていて、「悪くないなあ・・・」」と感じていた。そしてその頃、あの10インチ盤1001番のジャケットと同じ写真のEP盤(7インチ)を見つけたのだ。

101ab_2 ≪BEP 101Aと101B~10インチ盤1001番と同内容。全8曲どれも素晴らしいが、僕は・・・what is there to say が特に好きだ≫

102ab ≪BEP 102Aと102B~10インチ盤1002番と同内容。cottage for sale がいい。アコーディオンの音色が印象的≫

首尾よく入手した、そのEP盤から流れてきた「クリス・コナーの声」・・・・これが僕には、なんとも凄かったのである。
ハスキーがかった太くて低めの声・・・張り上げている感じではないのに、凄い音圧感があって、とにかくよく「鳴って」いる(笑) 人の声を「鳴っている」というのも変な表現だが、実際、コナーのそれは・・・ググッと聴き手の心に迫ってくる・・・そんな存在感のある「声」だったのだ。

101のジャケット写真~コナーがマイクのスタンドを両手で挟み込むようにしながら、体をグッと後方に反らして(つまり、マイクから離れるようにして)、「大きな声」を出している。そういえば、クラシックの歌い手さんがマイクを使って大きな声で唄い込む時に、意図してマイクから後方に離れるような動作をしているじゃないか。あれは、もちろん「巧く見せるため」などではなく(笑)、やはり、歌い手さんがフォルテで発声した場面で、マイクを入力過多にさせないための(音を歪ませないための) 動作なのだろう。
それにしても、本当に口を大きく縦に開いている。そういえば、クリス・コナーの写真はたいてい「大きく口を開けている」場面が多い。後述する12インチ盤 6004番 の「大口」はもちろん、BCP20 も BCP56 も、かなりの「大口」である。やっぱり、大きな音声を発したい場合には、大きく口を開ける方が、より自然だろう。

1002_2  10インチ盤の2枚・・・1001番(マイク挟み)と1002番(うな垂れ)。僕は先にEP盤4枚を揃えたので、まあ音源(全16曲)は聴ける・・・ということで、10インチ盤は後回しとなっていた。それで今回「写真でも」と思ったのだが、両方持っている、と思い込んでいた10インチ盤は・・・実は、1002番しか持っていなかった(笑)
≪右写真~10インチの1002盤。「うな垂れ」もダークな色調に独特な雰囲気がある≫   

Bethlehem でのクリス・コナー作品~まず2枚の10インチ盤が1954年に発売され、その後、3枚の12インチ盤~BCP20、6004が1955年、BCP56が1957年の発売らしい。(オムニバスの6006番 も加えれば4枚だが、コナーの4曲は既発音源)
10インチ盤の1001番は、伴奏がピアノのエリス・ラーキンスのトリオで8曲、1002番の伴奏は、ヴィニー・バークのクインテットで8曲、この全16曲が、12インチ盤化の際に分散されてしまったので、12インチ盤にアルバムとしての統一感があるとは言い難い。

6004番「lullabys」には~1001番から5曲、1002番から6曲、そして別セッション(サイ・オリヴァー楽団)から3曲の全14曲収録。

ChrisBCP56番「Chris」には~1001番から残りの3曲、1002番から残りの2曲、そしてサイ・オリヴァー楽団から3曲、そして後の4曲がラルフ・シャロンのグループ(K&JJを含む)の全12曲収録。



BCP20番~全てラルフ・シャロンのグループで、全10曲収録。
A面1曲目の blame it on my youth が素晴らしい!This_is_2

さて、クリス・コナーを話題としたからには、ここでもう一度、整理しておきたいことがある。もちろん、6004盤~sings lullabys of birdland のジャケットのこと・・・「大口」と「半口」である(笑)前々回の「スタン・リーヴィー」記事のリストやコメントにおいて、すでに「大口」ジャケットが先の発売で、「半口」が後の発売らしい・・・というところまでは述べた。
その根拠は、「大口」ジャケットと「半口」ジャケットにおける表記の違い方にある。以下~下写真6点はdenpouさん提供。

Bcp6004_4 Bcp6004_5

≪左写真~「大口」の裏、右写真~「半口」の裏≫

1.裏ジャケット「レコード宣伝」番号の表記~
  「大口」では、BCP 6001番~6007番まで
          BCP ~64番まで。
   「半口」では BCP 6001番~6032番まで
          BCP ~79番まで

2.裏ジャケット アドレス表記の違い~
「大口」は*2種存在。
<左NY、右CALIF><左NY、右NY>
「小口」は <左NY、右NY>

上記の状況を常識的に考えれば、あるレコードに宣伝として載せるレコードのタイトルは、すでに発売されているタイトルのはずだから(もちろん、近日中に発売される予定のレコードが載る場合もあるようだが)、裏ジャケットに掲載された宣伝レコードの番号が「若い」方が、やはり発売が「先」と言えるだろう。
この6004番2種の場合は~denpouさんが指摘してくれたように、6032番まで載せている「小口」に対し、6007番までしか載ってない「大口」の方が「先」であることは、まず間違いないであろう。Bcp6004_6 Bcp6004_7
≪「大口」~<左NY、右NY>のジャケットと、「長方形ロゴ」のセンターラベル≫
Bcp6004_8 Bcp6004_9
≪「半口」~<左NY、右NY>のジャケットと、「長方形ロゴ」のセンターラベル。denpouさんが発見した「長方形ロゴ」左端の「十字マーク」。この「十字マーク」が「大口」センターラベルには無い。そして「ロゴ」自体のデザインも両者で微妙に異なる。
「半口」ラベルの方は、BETHLEHEM の下の「HIGH FIDELITY」文字が銀色ラインに囲まれているが、「大口」ラベルの方は「HIGH FIDELITY」の下に銀色ラインがない。
そして、中心穴(チュウシンケツ・・・という呼び名はないかと思うが:笑)の左右の「BCP-6004」と「Side A」文字が、両者で左右逆になっている。

そしてもうひとつ・・・先ほど、*印を付けて「大口」ジャケットにも2種が存在と書いた。実は最近、denpouさんがYoさん宅におじゃました際、Yoさん手持ちの6004番:クリス・コナーが、「大口」であること、そして・・・<左NY、右CALIF><センターラベルがリーフ>であることを「発見」してくれたのだ。それまでは、denpouさん手持ち「大口」「小口」が、ともに<左NY、右NY>だったので、アドレス表記違いによる発売時期の先・後の判断にもうひとつ、疑問が残っていたのである。
P1110448 P1110449 P1110450 Yoさんの「大口」は、アドレス<左NY、右CALIF>に加え、盤のセンターラベルも<リーフ>であった・・・これでもう間違いない!というわけで・・・クリス・コナー『sings lullabys of birdland』には、ジャケットだけでも、「大口」に2種、「小口」に1種~計3種の存在が確認できたわけである。

≪追記≫(2/3) Yoさんコメント(1/27付)で、<左NY、右CALIF>ジャケットで中身の盤が「十字マーク・長方形ロゴ」のものがあったとのこと。denpouさん「大口」のセンターラベル(長方形ロゴ)には無かった「十字マーク」が付いている。チャランさん「大口」の「十字マーク・長方ゴ」とも異なる。

Cad5vqop_2 Caaicfis_2 Cau6rs6g_2

上写真6点はYoさん提供~special thanks to Mr.Yoさん!

≪追記≫(1/27) チャランさんからの情報によると~
チャランさん手持ちの「大口」センターラベル(下写真2点)は、「十字マーク・長方形ロゴ」「フラットかなあ?」とのこと(denpouさんの「大口」は「長方型ロゴ」) チャランさんの仔細なチェックにより、もう1点の差異が見つかった~それはこのLPの目玉曲(lullaby of birdland)の表記下カッコ内の作曲者名クレジットだ。チャランさん手持ちのセンターラベルのものだけ、(Forster - Shearing)となっているのだ。他3点は全て(Shearing)である。これは・・・?

 Img_0852 Cha
ついでに自分の手持ち「半口」を見たら、なんと、僕:bassclefの「半口」センターラベルは十字マークなしの「長方形ロゴ」だったのだ。(denpouさんの「半口」は、「十字マーク・長方形ロゴ」)
う~ん・・・これはどうしたことか?(笑) これでは、ジャケットは、「大口」2種と「半口」1種~の3種。そして「盤」(センターラベルの仕様)は、「大口」2種、「半口」2種の計4種が存在することになる。いや・・・下記のYoさん<センターラベルがリーフ>も入れれば、5種となる。これは・・・まだまだ追跡調査が必要だぞ(笑)

≪追記≫2/2
このクリス・コナーの6004番『sings lullabys of Birdland』~何種類もの版が見つかったのだが、それでは発売された型としては、いったい幾つの種類があるのか? ちょっと整理してみたい。
≪夢レコ≫前々回の「スタン・リーヴィー」からのジャケット裏の≪アドレス表記の違い≫考察により、発売の順番の大筋としては~
<センターNY>⇒<左NY,右CALIF>⇒<左NY、右NY>で間違いないかと思う。
その「ジャケットありき」を基本に考えてみると、発売順は以下のようになる。

1.「大口」<左NY,右CALIF>リーフ
2.「大口」<左NY,右CALIF>長方形ロゴ・十字マーク
3.「大口」<左NY,右NY>長方形ロゴ・十字マーク/Forster表記
4.「大口」<左NY,右NY>長方形ロゴ
5.「半口」<左NY,右NY>長方形ロゴ・十字マーク
6.「半口」<左NY,右NY>長方形ロゴ

*「長方形ロゴ」の十字マーク有りと無し・・・これについての新旧は、判りません。(また「長方形ロゴ」ラベルだけでの「十字マークの有無」の分布状況を調べる必要がある:笑) ただ・・・アドレス<左NY,右CALIF>ジャケットの盤に「十字マーク」が在ったことから見ると・・・「十字マーク有り」が先なのかな?と考えられます。

チャランさんのコメントに≪YoさんのはCALIFで制作、私とdenpouさんのはNYで制作されたのだと思います≫~とありました。
僕も『スタン・リーヴィー(BCP37)の同一タイトル2種発見の時点では、そのように「アドレス表記」と「製作(プレス)」を直結して考えていたのですが、どうやらそう簡単にはいかないのかな・・・と見方が変化してきました。
その「ジャケットのアドレス」と「センターラベル仕様」について、以下・・・僕の妄想です(笑)

まず、<センターNY>アドレスの時代には、まだ西海岸事務所がなかった~ということから、全て東海岸製作(プレス)ということかなと思います。問題は、西海岸事務所設立以降の「ジャケット製作の状況」と「プレス工場の状況」の関連です。つまり・・・ジャケットは、<センターNY>の次に、<左NY,右CALIF>ジャケットを、次に<左NY、右NY>を、それぞれ、1種類だけを製作していった(仮にそのジャケットが東海岸の製作だろうと西海岸製作だろうと、種類は1種類)ではないかなと・・・考えるのが自然かと思います。つまり・・・ジャケット表記とプレスは連動していない場合もある~という考えです。

「スタン・リーヴィー」記事で示したように、BCP37(Stan Levey)という一つのタイトルにおいて、<センターNY>と<左NY、右CALIF>の異なる2種が存在していたことから、それぞれのレコード(ジャケットと盤)が、東海岸と西海岸の2箇所で「製作されたのでは」と推測したわけですが、このBCP37以外には、その種のサンプルがあまり見つからない。そしてここに絶好のサンプルとして、クリス・コナーの6004番(sings lullbys of Birdland)が出現したわけです(笑) それについては上記のように、「発売された型」として、今のところ6種の版があったわけですが、それでは、どうして、あのクリス・コナー6004番は、6種(6回)も発売されたのか?・・・以下、また妄想です(笑)会社の運営という観点からみても、よほど「いっぱい売れた/まだまだ売れそう」というタイトルしか、追加プレス(発売)はされないはずである。あの頃、一般的なジャズのレコードというものが、全米中でどれくらい売れたものなのか・・・・判りませんが、仮に3000枚(初回)プレスとしたら、追加プレスは、せいぜい500~1000枚くらいではないでしょうか?  そうした「追加プレス」を決定した場合でも、市場での販売状況を見ながら、こまめに少しづつ、少しづつ(笑)という感じだったのでは・・・。逆に言えば・・・ほとんどのタイトルは、「初回プレス」だけだと考えられるわけです。
そうして初回プレスだけの場合で、わざわざ「東海岸プレス」と「西海岸プレス」と分けて製作するのかな・・・?(却ってコストが高く付く) というのが僕の疑問点なのです。
だから・・・西海岸事務所設立直後の一時期、BCP37やBCP6004など、一部のタイトルについては、両海岸で製作(プレス)したが、それ以降は、ほとんどのタイトルは「一箇所のプレス」だったのではないか。(それが東か西かは判らない) だから・・・(一箇所で一括製作してきたであろう)ジャケットのアドレスが<左NY、右CALIF>であっても、それはベツレヘム社としての規模をアピールする意味合いとしてのCALIF表記であって、だからそれがそのまま「西海岸製作(プレス)」とは限らない~と思う。
そして、その西海岸事務所を閉鎖した後の時期になると・・・誠実なるベツレヘム社は(笑)、ジャケット裏右下隅の[Hollywood, CALIF]表記を消して、そうすると・・・空いてしまったスペースがデザイン上、かっこ悪いというので(笑)・・・そこに[New York, NY] なる表記を入れた。それが・・・<左NY,右NY>になった・・・というストーリーです


*ベツレヘム・レーベルの変遷を判りにくくしている大きな要素として、2つのシリーズが複合・並行して発売されたことがあるかと思う。 そこで、自分の手持ちリストの番号並びとアドレス表記、に加えて「センターラベルがリーフ」情報も加えてみた。改めて、その番号並びとリーフの分布を俯瞰してみると、改めて確認できたことがある。

10インチ番時代が全て<センターNY>(1650 BROADWAY, NEW YORK 19表記を含む)そして<リーフラベル>だったことから、アドレスの変遷としては~
<センターNY>⇒<左NY、右CALIF>⇒<左NY、右NY>⇒<左NY、右OHIO>⇒<OHIO>の順。
そして盤センターラベルの変遷は~
<リーフ>⇒<長方形ロゴ>(長方形ロゴにも2種類あり~クリス・コナーの「大口」「小口」のラベル写真を参照のこと)の順で、間違いないと思う。
そして大筋として、以下のことが言えるかと思う。

ジャケット<センターNY>のものは、盤も<リーフラベル>である。
そして、BCP26番辺りから、ジャケットは<左NY、右CALIF>も現われるが、センターラベルは<リーフラベル>のものも多い。同様に6000番代の初期:6010番辺りまでのものにも、ジャケ<左NY、右CALIF>の<リーフラベル>が散見される。
おそらく・・・ジャケットは新規に制作された<左NY、右CALIF>を使っていったのだが、センターラベルは<リーフ>デザインの在庫が残っていてしばらくはそれを使っていた~そんな感じではないだろうか。
難しいのは、カタログの番号順と、<アドレス表記>や<センターラベル>の分布状況に「ズレ」があることだ DeluxeシリーズBCP1番~92番代と6000番代が並行して発売されていった状況で、まずは<センターNY>から<左NY、右CALF>へのアドレス表記移行(あるいは2種ジャケットの並行発売)が、いつ頃だったのか?・・・これがポイントだと思う。
以下、私見だが~
10インチ盤に続いて発売されてきた、Deluxeシリーズ:BCP1~92番の初期タイトルが、ほぼ<センターNY>であること。
BCP37番辺りから<左NY、右CALF>が現われていること。
その<左NY、右CALF>が6001番からは連続していること。
以上の点から、移行期は「BCP37番辺り」と推測している。
(実際に・・・BCP37番の『スタン・リーヴィー』には、<センターNY>と<左NY、CALIF>の2種が存在しているわけだから)

<スタン・リーヴィー>にも載せた「ベツレヘム12インチ盤手持ちリスト」をここに再掲するが、サンプル例を追加するとともに、より「版」の新・旧を探るために、<アドレス情報>の他にも以下の情報も追加した。

≪センターラベルについて~「リーフ」である場合は「リーフ」と表記した。この「リーフ」・・・同じ赤色のセンターラベルをlaurel(月桂樹)と呼ぶ場合もある。なお、表記ない場合のセンターラベルは、全て「長方形ロゴ」となる。
(長方形ロゴには「十字マーク」の有り/無しの2種類が存在するが、このリストではその有・無は表記しない)≫

≪盤が「フラット」である場合は、「フラット」と表記した。表記ない場合は、全てGG(グルーヴ・ガード)となる≫

◎印はYoさん、*印はdenpouさん、チャ印はチャランさん、無印がbassclefの手持ちから確認したもの。(このリストは、情報あれば、随時、追加記入していきます)

Bethlehem Deluxe series (12 inch LP)
 3  <左NY、右CALIF>リーフ フラット
 6  <左NY、右CALIF>
*7 <左NY、右NY>
  8  <左NY、右CALIF>
 9  <左NY、右CALIF>
  13 <左NY、右CALIF> (Ralph Sharon)
*13<センターNY>  リーフ フラット(K+JJ)
 14<センターNY 19> リーフ フラット
 15<センターNY 19> リーフ フラット
 17<センターNY>   リーフ フラット
 18<センターNY>   リーフ フラット
*19<センターNY>   リーフ フラット
20<センターNY>     リーフ フラット
*21<センターNY>  リーフ
  22<センターNY>   リーフ フラット
 24<センターNY>   リーフ フラット
◎25<センターNY>     リーフ  フラット 
 26<左NY、右CALIF>リーフ フラット
 27<センターNY>   リーフ フラット
 29<センターNY>   リーフ フラット
 30<センターNY>     リーフ フラット
 31<左NY、右CALIF>リーフ
 33<左NY、右CALIF>リーフ フラット
 34<センターNY>
*35<左NY、右CALIF> フラット
37<センターNY>リーフ フラット と 
   <左NY、右CALIF>リーフ の2種あり(Stan Levey)
  38<左NY、右CALIF>
 39<左NY、右CALIF>
 40<左NY、右CALIF> リーフ
 41<センターNY>   リーフ フラット
*42<左NY、右CALIF>リーフ フラット
*43<左NY、右CALIF>リーフ フラット
44<左NY、右CALIF>  リーフ フラット
 46<左NY、右CALIF>リーフ フラット
*47<左NY、右CALIF>リーフ フラット
  48<左NY、右CALIF>リーフ フラット
 50<左NY、右CALIF>リーフ
*52<左NY、右CALIF>リーフ
*53<左NY、右CALIF>リーフ フラット
*54<左NY、右CALIF>リーフ フラット
  55<左NY、右CALIF>リーフ フラット
 56<左NY、右CALIF>リーフ フラット
 58<左NY、右CALIF>リーフ フラット
*60<左NY、右CALIF>リーフ フラット
 61<左NY、右CALIF>リーフ フラット
*64<左NY、右CALIF>リーフ フラット
66<左NY、右CALIF>
*68<左NY、右CALIF>
◎69<左NY、右CALIF>
 71<左NY、右CALIF>
◎77<左NY、右NY>
 80<左NY、右NY>
*82<左NY、右NY>
*83<左NY、右NY>リーフ
*84<左NY、右NY>リーフ
*85<左NY、右NY>
*87<左NY、右NY>

Bethlehem 5000 series (12 inch LP)
5002 <左NY、右NY>
5006 <左NY、右NY>(Russ Garcia/Sounds in the night)

Bethlehem 6000 series (12 inch LP)
 6001<左NY、右CALIF>
◎6004<左NY、右CALIF> 「大口」リーフ(Yoさん) *写真
◎6004<左NY、右CALIF> 「大口」 十字ロゴ   
チャ6004<左NY、右NY> 「大口」(チャランさん) *写真 十字ロゴ 
[lullaby of birdland]作曲者が[Forster-Shearing]表記
*6004<左NY、右NY> 「大口」(denpouさん) *写真
*6004<左NY、右NY>  「半口」(denpouさん) 十字ロゴ*写真
  6004<左NY、右NY>   「半口」
◎6005<左NY、右CALIF>リーフ
 6006<左NY、右CALIF>
 6007<左NY、右CALIF>リーフ フラット 
 6008<左NY、右CALIF>リーフ
◎6010<左NY 、右CALIF>リーフ 
 6011<左NY、右CALIF>
*6014<左NY、右CALIF>
 6015<左NY、右CALIF>
 6016<左NY、右CALIF>
*6017<左NY、右CALIF>
*6018<左NY、右CALIF>
 6020<左NY、右NY>
◎6021<左NY、右NY>
 6025<左NY、右NY>
 6029<左NY、右NY>
 6030<左NY、右NY>
*6038<左NY、右NY>
◎6045<左NY、右NY>
 6049<左NY、右CALIF>
*6051<左NY、右CALIF>
*6055<左NY、右Ohio>
◎6061<左NY、右Ohio>
◎6064<OHIO>
*6063<OHIO>
 6069<OHIO>

EXLP-1(3LP 箱入り:アドレス表記なし)
EXLP-2<左NY、右CALIF>

そして・・・まだ大きな「謎」が残っている。それは、なぜ6000番代より発売の古いはずの、BCP1~92番Deluxeシリーズの中の若い番号~僕の手持ち盤では、3・6・8・9・13番が、なぜ<左NY、右CALIF>なのか? アドレス表記の変遷は、<センターNY>⇒<左NY、右CALIF>⇒<左NY、右NY>⇒<左NY、右OHIO>⇒<OHIO>のはずである。
ここがよく判らない。いや、もちろんこれらが、再発としての<左NY、右CALIF>であれば問題ない。つまり・・・これらの番号タイトルの<センターNY>1stの存在が確認できれば、<左NY、右CALIF>は後年発売された2ndである~と、誠にすっきりとした説明が付くのだから。
ところが、これが見つからない。ネットでいろいろチェックしてみても、今のところは見つかっていないのだ。どなたかお持ちであれば、ぜひ情報提供を(笑)
この謎については・・・例えば、こういうのはどうだろうか?
Deluxeシリーズが発売され始めた時、何らかの理由で、1~9番辺りが「欠番」として使われなかった。そして、Deluxeシリーズの30番辺りから、6000番代が並行して発売され始めた頃に~つまり<左NY、右CALIF>ジャケットに移行し始めた頃~発売されたいくつかのタイトルが、その「空き番号」であるBCP1~9番に充てがわれていった~というのが、今の僕の妄想なのだが(笑) 

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