ミルト・ジャクソン

2021年12月31日 (金)

<ジャケレコ  第5回>7インチEP盤には逆らえない

バート・ゴールドブラット装丁のEP盤たち

なんだか知らぬ内に日々が過ぎて、この1年も早くも終わろうとしている。本当に早い。毎年、年末になるとこのような感慨に耽るわけだが、この「夢見るレコード」・・・年に1回だけでも更新せねば、というわりと律儀な気持ちもあり(笑)しかしなかなかいい題材も見つからず、あれこれレコード棚をパラパラと見ながら、埃(ほこり)を払ったりしていたら、棚の前に飾ってあるEP盤がぱたりと落ちてきた。あ、そうだ、これでいこう!・・・という訳で、今回はEP盤である(笑)

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この何年かの内にジャケットを気に入ったものを少しづつ入手してきて、EP盤もけっこう集まってきている。
‌EP盤の魅力はやはり、まずはジャケットにある。そのジャケットから醸し出される雰囲気の魅力である。
さて、EP盤を入手するキッカケにはたぶん誰もがこんな具合かな、と思えるパターンがあって、それはつまり、12インチ盤、10インチ盤でとても好きなレコードがあって(それを持っていても、あるいは持っていなくても)そのレコードと同じデザインのジャケットのEP盤というものが数多く存在している・・・そしてひとたびその姿を目にしてしまうと、その7インチという小振りな姿、形がなんとも「チャーミング」なモノに見えてきて・・・いいなあ、これ!という気分になってしまう(笑)~そんなパターンかと思う。
またデザインは同じで色合いだけ違う場合もあるが(*写真上の方に映っている bethlehem のクリス・コナーなど)それはそれでチャーミングである。このクリス・コナーのEP盤については「夢レコ」過去記事「クリス・コナーの声」で取り上げている)
それから10インチのジャケット写真の、それを撮った時の別カット写真をEP盤の方に使う~というパターンもあるようだ(emarcyのヘレン・メリルなど)それも悪くない。それから、10インチの元盤と関係なくても、そのEP盤のオリジナルなデザインが実に魅力的なものも、当然のことながら、数(あまた)存在する。なんだ・・・これではEP盤というものを好きになってしまうのも無理のないことじゃないか!(笑)

図柄的魅力とは別な話しとして、じゃあ7インチEP盤の音ってのはどうなんだ?という興味もある。
僕の場合、EP盤は45回転だから音もいいはずだ~という素朴的期待感もあり、いろいろ入手してきたわけだが、初期の頃には Clef のゲッツやフリップ・フィリップスの幾つかのタイトルに「かなりいい」と思えるものを見つけたが、それらは例外的なもので、その後は「まあ・・・普通の音だな」と感じる場合がほとんどだった。特定のレーベルなら全て音がいい~なんてことはまったくない。こういうのはやはりタイトルごとの問題だろう。そして「いい場合」の確率はそれほど高くない・・・そんなことから(僕の場合)ある時期からEP盤というものは、あくまでジャケットの魅力に拘るべきだ、と考えるようになった。

さて、さきほどEP盤の棚を少し整理してみたら、なにかしらジャケットが同じ雰囲気のものがけっこう見つかった。それらは主役であるミュージシャンを個性的なイラストで描いているジャケットのもので、たまたまかもしれないが Savoyレーベルのものが多かった・・・そう、バート・ゴールドブラットである。ゴールドブラットはベツレヘムの格調高い写真ジャケットで有名だが、イラストものも凄く個性的で素晴らしいのだ。それらを並べてみたら・・・う~ん、実にいいなあ・・・好きだなあ・・・というわけで(笑)
まずは、バート・ゴールドブラット装丁ジャケットのEP盤をあれこれと紹介してみたい。

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《上写真~黄色と赤色の2枚~Stan Getz/Swedish All Stars(roost) 》赤い方が EP 302(vol.2と右下に表記)と 黄色いのが EP 304(vol.3と表記)である。これこそ同じデザインの色違いパターン。この写真だとジャケットの表面の紙が剥がれているように見えるかもしれないが、これはサックスの部分だけ「白い色」にしてある・・・そういうデザインなのだ(笑)

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《マリアン・マクパートランドの savoy のEP盤~vol.1(xp 8032) と vol.2(xp 8033) と vol.4(xp 8106) 》
これら3枚を集めたが、vol.3 は残念ながら未入手である。そしてこの3枚~表ジャケットは素晴らしいイラストだが、vol.1 と vol.2 の裏ジャケットはまっ白・・・何の表記もない。但し、vol.4 には裏ジャケットに解説と自社レコード広告が載っていたが、エロール・ガーナー、ジョージ・シアリングなどのEP盤紹介のみで、マクパートランドのEP盤 vol.3 情報は得られなかった。
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このイラスト・・・女性がけっこう太めの右腕をアタマの上の方からぐぐ~っと曲げ込んで鍵盤をタッチしている・・・そういう図なのだが、こんな風に肘を90度にしたらピアノなんか弾けないぞ(笑)でもいいのだ・・・写実ではなくイメージ表現なのだから。ゴールドブラットは・・・「線」がいいと思う。線のタッチにすごく強弱感(太い、細い)があって、スピードを感じる。僕はこのイラストレーションをとても好きなので、同じ図柄(色違い)の Marian McPartland MOODS(MG 15022)という10インチ盤~上写真~も手元にある(笑)
  
ゲッツ~他のルーストEP盤にもゴールドブラット装丁のものが在ったので掲げておきたい。ゴールドブラットの描く、どことなくヘナヘナッとしたゲッツの姿が悪くない。しかしながら・・・Roost レーベルの音質はどう弁護的に言っても良いとは言えない。録音の段階から(おそらく)なんというか音が遠いというか、こもったような鮮度感のない音である。これはオリジナルの10インチ盤、12インチ盤でも同じ傾向。残念ではある。

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上写真~Stan Getz/Stan Getz Plays の vol.1(roost EP 301) と vol.4 (roost EP 306)
さて、この2枚・・・同じ図柄で vol.1とvol.4となっているので、当然これらの「色違い」vol.2 と vol.3 が存在しているはず~と考えて、未入手なのを残念に思ったわけだが、その vol.2とvol.3・・・なんとしたことか、先ほど紹介した3つ上の写真~Stan Getz/Swedish All Stars の2枚そのものだったのである! なぜそれが判ったのか? EP 306 の裏ジャケット~そこに答えがあったのである。つまり・・・裏ジャケット右下に EP 301から EP 307までのタイトルがしっかりと表記されていたのだ(笑)こうある。
EP 301 Stan Getz Plays ーvol.1
EP 302 Stan Getz and His Swedish All Stars ーvol.2
EP 304 Stan Getz and His Swedish All Stars ーvol.3
EP 306 Stan Getz Plays ーvol.4
う~ん・・・Plays の方は 1 と 4、Swedish の方は 2 と 3 が手持ちで、なかなか巻(vol.)が揃わないなあ~と少しガッカリ気分もあったのだが、なんのことはない。たまたま持っていたゲッツの roost  EP盤4枚が、ちゃんと vol.1~vol.4 までの揃いになってるじゃないか!これは・・・ちょいと嬉しい(笑)

まあこんな風にバート・ゴールドブラットのカバーアートが大いに魅力的なEP盤ではあるが、たまには音源的な(音質ではない)興味から大いに惹かれてしまう・・・そういうEP盤もある。例えばこいつ。

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ゲッツだけ紹介して他のテナー奏者も出さないのも面白くない(笑)上の2枚のEP盤は、モーリス・レーン(xp 8089) と テッド・ナッシュ(xp 8090) TENOR SAX なるシリーズで文字通りテナー奏者を紹介するための企画のようだ。同じデザインの色違い・・・僕はこういうのにけっこう弱い。おそらくゴールドブラットは2枚を並べた時の効果を考えて、その色彩を決めている。だから・・・こちらも2枚、並べたくなる(笑)
この2枚~例によってジャケット裏に何の印刷も無いので(データが無いので)テッド・ナッシュについては調べた自分のメモが付けてあったことを失念していた(笑)そのメモによると、over the rainbow を含むこの4曲は1946年のSP音源のようだ。dsにマックスローチの名前がある。

さて、この時期のテナーと言えば・・・ブリュー・ムーアを忘れてはいけない~下写真の2枚。

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Brew Moore vol.1 (savoy xp 8066) と vol.2 (xp 8067)  である。これは、vol.1とvol.2の連続番号なので、savoyレーベルには売り出したかった意図があったはずだ。実際、この時代ではすごくモダンなフレージングが素晴らしい。なぜ人気が出なかったのか・・・判らない。
このEP盤2枚~各4曲づつ(計8曲)収録されているのだが、前述のマリアン・マクパートランドEP盤と同様に、裏ジャケットに何も印刷されてない。だからどこにもパーソネルも記されてないわけで・・・同時期(1953年と思しき)の10インチ盤~Brew Moore/Modern Tenor Sax(MG 9028) にはおそらく裏ジャケット情報は載っているだろう。だが僕はその10インチ盤は未入手なので、discogsで savoyレーベルを調べてみると、その10インチ盤には6曲しか収録されていないことが判った。その6曲とは~
EP8066の4曲と8067からの2曲(lestorian mode と mud bug) である。
つまりこの段階で8067から残りの2曲が抜け落ちてしまっているのである。後述するチャック・ウエイン/ブリュー・ムーア音源との関連もあり、なんとなく知ってるつもりだったブリュー・ムーアの savoy音源のことが、ほとんど判ってないことが判った(笑)う~ん・・・なんだかとても気になってきた(笑)そうなると厳しいことに、savoyというレーベルは、コンピレイションものが雑なのである(笑)データ表記もアバウト過ぎて・・・とにかく判りにくい。
だがしかし天は我を見放さなかった(笑)EP 8067に収録されている「レストリアン・モード lestorian mode」という特徴ある曲名が大きなヒントになって、いろいろ判ってきたのだ。

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上写真のEP盤8067に収録の lestorian modeという曲名にははっきりと覚えがあって、それはスタン・ゲッツ絡みで、savoyレーベルにこの名前の12インチLPが在ることを知っていたからだ。そこでゲッツの棚をチェックしたら・・・在った在った。
Lestorian Mode(MG 12105)だ。

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この Lestorian Mode には~ゲッツ、サージ・チャロフ、そしてムーアの3種のセッションから4曲づつが収録されていた。そして、件(くだん)のムーアの8曲の内、8067の4曲がB面3~6曲目に収録されており、そのパーソネルもきちんと表記されていた。よかった(笑)

Brew Moore(ts)
Gerry Mulligan(bs)
Kai Winding(tb)
George Wallington(p)
Jerry Floyd(tp)
Curley Russell(b)
Roy Haines(ds)

lestorian mode
gold rush
kai's kid
mud bug 
録音年は12インチ盤 Lestorian Mode にも表記されていないので、不明です。
*1/4追記~上記4曲の録音年月日が 1949年5月20日と判明しました。Arista/Savoy時代のボブ・ポーター監修の再発盤~
Brothers and Other Mosthers vol.2(SJL 2236)の詳細なデータによって判りました。ちなみにこの2枚組(1979年)には上記4曲が各2テイクづづ収録されています。

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 さて、もうひとつのムーアのEP盤(8066)4曲はどこに行ってるのか? 
こちらも案外すんなり見つかった。
In the Beginning BeBop!(savoy MG 12119) という12インチLPに4曲とも収まっていた。こちらも前述の「レストリアン~」と同じように3種のセッションから4曲づつ(全12曲)収録で、ムーア4曲はA面5,6,B面1,2に配置されている。このセッションはカルテット(4人編成)でパーソネルは以下。
録音年月は12インチ盤にも表記されておらず不明。

Brew Moore(ts)
Gene Dinovi(p)
Jimmy Johnson(b)
Stan Levey(ds)

blue brew
more brew
brew blew
no more brew

*1/4追記~録音年月日が 1948年10月22日 と判明しました。こちらも Arista/Savoy時代のボブ・ポーターによる再発盤~
Brothers and Mothers vol.1(sjl 2210)という2枚組(1976年)のデータに明記されていました。

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さて、ブリュー・ムーアのリーダー作品はと言うと・・・あまり思い当たらない。この savoyEP盤の他にはたしか fantasyに在ったかな?
というくらいだ。調べてみたら(discogs)やはり fantasy に以下の2作品を残していた。
Brew Moore Quintet(1956年)紫色の風神様みたいなジャケットのもの。
Brew Moore(1957年)ムーアがテナー持って笑ってるジャケットのもの。
あとは Brew Moore in Europe(1962年)~ラース・ガリンやサヒブ・シハブとの共演盤~という作品があるくらいで、これでムーアのリーダー作はうんと少ないことがはっきりした。だから、ブリュー・ムーアを聴くためには、他のミュージシャン作品への参加作~後述するチャック・ウエインを含めて~をチェックするしかないのだ。

このように貴重な音源をセッション単位で聴きたい時に、あるセッションがそのまま1枚のEP盤にまとめられているとありがたい。SP音源はA面・B面で2曲単位だから、SP2枚分4曲をEP1枚に収めるケースも多いようだ。それから10インチ盤の時代には、ひとつのセッションを3~4曲でまとめる場合が多いようで、つまりセッション2回で6~8曲分を仕上げて、それらで10インチ盤両面を構成しているケースが多いように思う。また12インチ盤に再収録する場合、先ほどの savoy のコンピレイションLPのように、3つのセッションから4曲づつで、1枚の12インチ盤を構成する場合もある。その際、元セッションの3~4曲が、A面・B面にバラバラにされたり、あるいは別のLPに振り分けられたりするケースも多いようなので、特に興味深いセッションの場合には、その3~4曲が1枚のEP盤にまとめられていると、それだけで嬉しいものなのだ。

次にこのEP盤。

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Here's that Mann vol.2 (dee gee EP 4013)

pooch mc gooch
all of me
back in your own backyard
it don't mean a thing

シェリー・マン名義のEP盤である。セプテット(6人)編成だが、なんと言っても魅力なのが、アート・ペッパーが入っていることだ
(it don't~以外の3曲)  
*写真右スミのEP赤盤は~ミルト・ジャクソンのカルテット(dee gee)これ、round midnight の演奏も音質もいい。

pooch~では「おおっ!」と叫びたくなるような切れ味鋭いソロを聴かせてくれる。all~とback~は歌入りではあるが、間奏やオブリガート(歌の合間に入れる短い合いの手)で見事なソロが聴かれる。歌伴・・・という感覚からはすっ飛んでる!(笑)
これら3曲は1951年11月のペッパー入りセッション4曲からの3曲。そうして嬉しいことに、このDee GeeのEP盤4013~1951年シカゴ録音とのことだが、音質もなかなかに良いようだ。
ペッパー入りのもう1曲は、the count on rush street という曲で、その count~は Dee Gee EP4006なるEP盤に収録。4013がvol.2と表記されているから、4006 はたぶん Here's that Mann vol.1 なるタイトルだろう。
count on rush street は急速調のインスト曲で、この曲でのペッパーのソロも他メンバーのソロも、皆ハリのある素晴らしい演奏だ。
ちなみにこれらの音源はSavoyの12インチ盤 Deep People に収録されている。
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Deep People (savoy MG 12405)のA面4,5,6,7に back~以外の3曲とcount~の4曲収録されている。
*back~は女性歌手 shelby Davisの歌伴曲なので、Singin' and Swingin'(savoy MG 12060)という女性歌手を集めたオムニバスLPに収録されている。

もうひとつ、音源・・・いや、演奏が素晴らしいEP盤を。
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Chuck Wayne Quintet(savoy xp 8119)1954年6月録音

while my lady sleeps
tasty pudding
prospecting
sidewalks of Cuba

このEP盤・・・ジャケットの淡いブルーな色合い、構図、イラストの全てが素晴らしい!好きなジャケットだ。オマケにこのEP盤・・・音源的にもとても魅力的でそれは、やはりズート・シムズのテナーが素晴らしいからである。
《このEP盤の裏解説(オジー・カデナ)によると4曲中3曲が Zoot Sims、1曲(sidewalks~)のみ Brew Moore、とされている。カデナは~"sidewalks of Cuba" which were recorded a week after the sides with BREW MOORE~とハッキリ書いている》
*1/2夜・訂正1~上記のオジー・カデナ解説部分~恥ずかしながら意味を完全に取り違えていました。 最初に、この "sidewalks of Cuba"という曲名が目に入って、次に recorded を見て、それを with Brew Moore につなげて意味を解釈してしまって「そうか、この1曲だけはブリュー・ムーアと録音されたのか」と思い込んでしまいました。しかし改めて裏解説をよく見たら・・・この "sidewalks of Cuba" の前に大事な文章が在ったのです。それをつなげると、以下のようになります。
ZOOT SIMS blows with CHUCK on "Butter Fingers", "While My Lady Sleeps", "Tasty Pudding", "Prospecting" and "Sidewalks of Cuba" which were recorded a week after the sides with BREW MOORE   
そうなんです。ズート・シムズは、これらの5曲を("Sidewalks~" を含む)チャック(ウエイン)と演奏(blows)して、それらが録音されたのはブリュー・ムーアとのセッションの1週間後だった~というのが正しい意味かと思います。
早とちりしての先入観を持ったまま、ズート・シムズとブリュー・ムーアの音色のことなど書いてしまい(後述部分)恥ずかしい限りです。
ここに謹んで訂正させていただきます。

これらの音源4曲は、12インチ盤 the Jazz Guitarist(savoy MG 12077)に4曲とも収録されている。そしてここからが問題なのだが、このLP裏解説では上記の sidewalks~はズート・シムズとされているのだ。つまりズート入り5曲(上記4曲+butter fingers)、ムーア入り3曲、あと4曲(ウエイン、ジョン・ミーガン(p)のカルテット)加えての全12曲とされているのだ。う~ん・・・。Dscn3146

さあ困った(笑)・・・どちらが正しいのだろうか? 
さっそくその sidewalks~を何度も聴いてみた。う~ん、判らない。ズート・シムズのようでもあり、ブリュー・ムーアのようでもある(笑)元々、この2人はまずソフトな音色がよく似ているし、ビートに軽やかに乗るスタイルとフレーズ展開も似ていると思う。しかし・・・気になる(笑)それで、ムーアのリーダーセッション(前述の1953年(推定)8曲)など、ムーア絡みをあれこれ聴いてみた。その上での自分なりの認識はこんな風だ。
<高音域フレーズの時~アルトっぽい艶々した音色になるのがズート・シムズ。やや掠(かす)れたような乾いた音色になるのがブリュー・ムーア>
<音色の全般として~ヴェールが掛かったようなソフトなマイルドな感じがズート・シムズ。
全体にサブトーンの度合いが強めで(シムズよりは)時に乾いた硬い感じ(シムズよりは)になるのがブリュー・ムーア>
そんな印象を持ちながら、改めてこの sidewalks~を聴いてみると・・・やっぱり判りません(笑)それでもちょいと無理やりに理屈を付けてみると・・・テナーのソロの時に高音域の繰り返しフレーズで僅かに引っ掛かるような場面があって・・・ズートはほとんどのフレーズに迷いが無いから・・・そうするとこの sidewalks~のテナーは、ブリュー・ムーアであるように僕は判断している。
*1/2夜・訂正2~すみません、完全に間違えました。sidewalks of Cuba のテナーは、12インチ盤解説の通り、ズート・シムズです(パーソネル表記の詳細については写真の上の青字「訂正1」をご覧ください)

いずれにしても、この2人がそれぞれの曲でチャック・ウエインのギターに絡んでテーマをユニゾンで吹く場面が多いのだが、ウエインのギターにフィットしたソフトなテナー音色が素晴らしい。どのトラックも味わい深いが、僕が特に好きなのが while my lady sleeps だ。この曲、なんとも慎み深いような雰囲気のあるメロディの曲で、僕が最初にこの曲を知ったのは、プレスティッジの「コルトレーン」というLPからである。1972年秋にビクターが、prestigeゴールデン50なるシリーズで1100円(当時、LP盤は大体1800円~2100円だったのこの1100円という価格は画期的に安価で、しかし良質なジャズLPだった)で発売した時の目玉がこの「コルトレーン」だった。このレコードは、だいぶ後になって、傑作バラード~<コートにすみれを>収録LPということで有名になったように記憶しているが、もうひとつのバラード曲がこの<while my lady sleeps>だったのである。コルトレーンはスローバラードで仕上げているが、こちらのウエイン/シムズは意外にも速めスイングだ。しかしそれも素晴らしい。

さて、このEP盤(XP 8119)にも vol.1という表記があり、裏解説をよく見ると続き番号の XP 8120 がvol.2 のようで、これは前述のシェリー・マン(dee gee EP 4013)と同じケースである。これは単にsavoy レーベルのやり方というだけかもしれないが、つまりこういうことではないだろうか・・・要はあるセッションが完了して、その音源がまず10インチ盤で発売されて、そのすぐ後に(あるいは同時に)2枚のEP盤に分けて発売された~というパターンだと考えられる。価格面でも10インチ、12インチよりは7インチEPの方が安かったので、好みの曲を収録している方のEP盤だけ購入する~という需要があったから、同じ音源でもいろんなフォーマットを用意したのだろう。
そうだ、考えてみれば日本でも、33回転コンパクト盤なるフォーマットがあったじゃないか。たいてい4曲入りで、要はアルバム(LP)を買うまではいかないけど、ヒットした曲を聴きたいな、という場合に、このコンパクト盤が重宝したのだ。そういえば・・・僕もサイモン&ガーファンクルの<明日に架ける橋>はコンパクト盤で我慢していたな(笑)
アメリカでEP盤というフォーマット(45回転)が盛んに発売された頃は、大体のところ、10インチ盤の同内容がEP盤2枚、12インチ盤同内容がEP盤3枚になるパターンが多いようだ。Clef や Victorレーベルの場合だと10インチ盤や12インチ1枚分をEP2枚組み、3枚組みとしたタイトルがけっこうある。あの「見開き組みセット」にしたEP盤もこれまたチャーミングではある。それらについてはまたの機会に。
う~ん、それにしても・・・レコードというものは、どうしたって楽しいものですね(笑)

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2015年1月 3日 (土)

<ジャズ雑感 第38回> サヴォイ盤(Savoy)は謎だらけ。

Savoy盤~MG12000番シリーズを巡ってあれやこれや・・・。

また1年が過ぎてしまった・・・もう2015年である。この<夢見るレコード>にすっかり横着になってしまった僕ではあるが、さすがにこの正月休みには何らかのジャズ話題を書いて、途切れ途切れであっても、このブログに夢を見続けてもらわないと・・・などと思ったわけである(笑)

昨年~2014年は1月と2月に、bethlehemレーベルについて記した。クリス・コナーの「大口」「小口」のジャケット違いが存在することと、それぞれのジャケット裏の会社アドレスの違い方の関連に注目しながら、「リーフラベル」と「長方形ロゴラベル」の切り替わり時期などを類推した内容だった。
その際、手持ちのbethlehem盤を引っ張り出してきて、盤のセンターラベルやジャケット裏を、かなりの時間を掛けてあれやこれやとチェックなどした。
レコード(オリジナル盤)のジャケットをひっくり返して、その会社のアドレス(住所)などをチェックして、いったい何が面白いのか・・・と自分でも思わないわけでもない(笑) 
Dscn2984_2 ≪上の写真~ミルト・ジャクソン/Meet Milt Jackson(MG12061)≫
2枚とも、番号・ジャケット図柄・センターラベル様式・ジャケット裏表記まで、まったく同じものである。だがしかし・・・写真では微妙な差だが、両方を見比べると、ともにコーティングされたジャケットではあるが、写真の質感がかなり違うのだ。左側の方がモノクロの濃淡が濃い。濃くてよりくっきりしている。そうして両方の盤を手に取ってみると・・・微妙に左側の方が微妙に重く感じる。いや、これは・・・ジャケットの重厚さからくる先入観から、そういう風に感じてしまうだけかもしれない。ジャケット写真の色合いの違いの他に、もうひとつ、ハッキリした差異は・・・うん、「濃い」方がプロモ盤だったことだ。裏ジャケットの写真の左側の方~シールが痛々しいが(笑)そのシール貼りの箇所に、よく見ると・・・SAMPLE COPY NOT FOR SALE とスタンプが押されている。そして、センターラベルにも同じ文言のスタンプが押されていたのだ。(このセンターラベルの写真でもよく見ると・・・判るかもしれない。Dscn2986_2

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≪上の2枚の写真~2枚の[Meet Milt~]のセンターラベルと裏ジャケットを並べてみた。センターラベルの色合い・溝ありは同一。裏ジャケットも同一・・・と思ったが一箇所だけ違いがあった~右側のジャケット一番下には「SAVOY RECORD CO INC 58Market~」の上に、3行ほど小さめの字で <このレコードは .001針と33.3回転で再生しないと、音溝が傷みます>みたいな注意書きが入っている。(左側プロモには、その3行は無し)≫

このミルト・ジャクソン事例のように、古いレコードを集めていると、そこに様々な事象が湧き上がってくる。同じタイトル・同じ番号のレコードなのに、ジャケットの一部が違っていたり、センターラベルの様式が違っていたり、ジャケット裏の住所やらが違っている。そうなると、それらがどのような事情から発生したのだろうか?・・・どうにも気になってくるのである。

Savoyというレーベルにもなかなか興味深いものがある。5~6年くらい前だったか、初期のミルト・ジャクソンをディグしていた時期がある。その頃、自然に集まったきたミルトのSavoy盤を並べて、ジャケットを撫でたりしながらそれらのレコードを聴いているうちに、Savoy盤全般への興味・・・というか疑問が沸々(ふつふつ)と湧いてきたのである。
(追記~自分でも忘れかけていたのだが(笑)、この<夢レコ>に、2010年2月≪Savoy赤ラベルのスタンパー≫という記事があった。ミルト・ジャクソンの参加作品 Opus De Jazz(MG12036)のモノクロジャケットとカラージャケットを揃えて、両方のセンターラベルのスタンパーの数字やX20記号のことを見比べた内容である。ぜひ、ご覧ください。
http://bassclef.air-nifty.com/monk/2010/02/31savoy-6a10.html

ごく大雑把に言うと、疑問は以下の2つ。

1.『センターラベルの色が何種類もあってよく判らない。「赤」「エビ茶」「アズキ色」などと表記されているようだが、その変遷もよく判らない』
2.『ジャケット裏(下部)の住所表記も何種類かあって、デザイン等も微妙に違い、こちらもその変遷がよく判らない』

そこで、これら疑問に立ち向かうべく、まずはSavoy MG12000番シリーズでの「赤ラベル・溝あり」を1stの型と規定して(~後述)、そこからいろいろと類推してみることにする。
さあ・・・手持ちSavoy盤の総動員だあ!(笑) 

「センターラベル」については、やはりなかなか判りにくい。一口に「赤」と言っても番号の進みに伴って、その色合いに微妙な違いが出てくるようで、ラベルをパッと見て、はっきりと認識できる違いは~「赤」「アズキ色」「茶」の3種くらいか。
これらに「溝の有無」を組み合わせて考察していきたい。Dscn2965_2
≪ちなみに、栄えあるシリーズ第1作~MG12000番は・・・ charlie parker memorial vol.1である(元音源は10インチ盤)
もちろん・・・10インチ盤も欲しいですなあ(笑)≫
*1/17≪追記≫~上の写真のこの盤・・・「センターラベルは赤・DG、住所も58Market」の、いわゆるオリジナル(12インチ盤としての)だと思っていたのだが、どうも手に持った時にずしりとこない感じとか、ジャケットの表・裏がやけにキレイで古みに欠ける感じとかに、実は・・・若干の違和感を覚えていた(笑) そんな折、どうやらこの疑惑を解消してくれる情報を得たようだ。
それは、今回の夢レコ記事にコメントを入れてくれた alfa-60さんからの情報~[”NOT LICENSED FOR RADIO BROADCAST - FOR HOME USE ON PHONOGRAPH”(10インチ盤のラベルには必ず載っている)なる文言が、初期プレスのラベル(LONG PLAYINGの下)には有るようだ]である。これは・・・気がつかなかった!ということは・・・「赤ラベル・溝有り」であっても、それが真性1st(NOT LICENSED FOR~有りを仮にこう呼ぶ) ものであるかどうかの判別には、その文言の有無が重要なポイントとなる・・・ということだ。そうして・・・自分で載せた12015(Eddie BertのMusician of the Year)の赤ラベルには、その”NOT LICENSED FOR RADIO BROADCAST - FOR HOME USE ON PHONOGRAPH”なる文言がはっきりと写っているじゃないか!
但し、この[NOT LICENSED FOR ~]・・・なかなか見つからない。僕自身のSavoy赤ラベル・DG(溝あり)30数枚の手持ちの中では・・・12006(Kenny Clarke)と 12015(Eddie Bert)の2点だけ。ちなみに、ネットに載ったSavoy赤ラベル・DG40~50点を調べたが [NOT LICENSED FOR~有り] を確認できたのは・・・たったの2点である。それが、12010(Jay & Kai)と・・・こうして追記するに至った「疑惑」の12000番~パーカーの Charlie Parker Memorial vol.1 だったのである。
この [NOT LICENSED FOR~の有無]については、今後も調査していきたい。果たしてMG12000番の何番くらいまで存在するのか?・・・興味は尽きない。


さて・・・Savoyの12インチ盤~MG 12000番シリーズは、12000~12220 まで、200以上のタイトルが連番で並んでいる(但し(後述の)リストによると、欠落しているナンバーが以下12件あり~12060, 12098, 12129, 12135, 12142, 12159, 12162, 12165~12168, 12176)
ついでに言うと、このシリーズ・・・一般には、12000~12305 となっているが、実は、12220の後、数字が一気に飛んで、12300番から 12300~12305 の6タイトルだけが加えられているのだ。
さらに言うと・・・12196~12220までは、どうやら Regentレーベル原盤の再発のようである。人気の高い jonn jenkins/Jazz Eyes(12201)、 curtis fuller/It's Magic(12209)、sonny redd と art pepper/2altos(12215)など、どれも Regent 原盤である。

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≪この写真は~日本フォノグラム発売のサヴォイ盤 「シグナルⅡ」のライナーノート裏のMG12000番シリーズのリスト。今回、手持ちのオリジナル盤(30枚強)やキング国内盤との照合にとても役立った。この写真の後、書き込みだらけのメモ用紙になってしまった:笑≫

Savoy というレーベルについては、実は、ゴールドマイン本にもあまり詳しくは記されていない。センターラベルについては、≪1950年~1960年代のオリジナル発売のものは、maroon(ジニアス英和~くり色・エビ茶)ラベルで、1970年代に再発された頃には red(赤) or brown(茶) のセンターラベル≫ と書かれているだけである。。この表記が実にどうも判りにくい。というのは、1950年辺りから考えるならば・・・当然、10インチ盤のセンターラベルを視野に入れなければならず、そしてその10インチ盤のセンターラベルは・・・「真っ赤な赤」である。「赤」の字が重なるけど、ここは鮮烈な赤色というニュアンスを表したいがためです。お許しください(笑)
(手持ちのSavoy10インチ盤は数枚だけだが、ネットも含めて他の色のセンターラベルは見たことがなく、少なくとも「ジャズ」の10インチ盤(MG9000番シリーズ)のセンターラベルは「真っ赤な赤」だと考えられる)
1954年~1955年頃を境目に、10インチ盤から12インチ盤へと移行していったと思うが、その際、ほとんどの場合、どのレーベル会社も、まずは、10インチ盤のセンターラベルのデザイン・色をそのまま12インチ盤にも使っている場合が多いと考えるのが自然だと思う。(bethlehemレーベルの「リーフラベル」のように)
とすれば・・・Savoyの場合、やはり12インチの初めのセンターラベルは、やはり、10インチと同じ「真っ赤な赤」ということになる。

Savoy_jazz_001_2 

Savoy_jazz_002_4≪10インチ盤~フィル・アーソとボブ・ブルックマイヤー(MG15041)
~このセンターラベルこそが「赤ラベル・溝あり」の基本形だ≫

Savoyのオリジナル盤(モノラル)と言えば、やはり、red・・・つまり、あの「真っ赤な赤色」red を想起するのが普通のはずで、そしてその 『赤のセンターラベルの外周から1cmほど内側に、銀色の丸囲みラインがあり、その丸ラインに沿ってDG(溝)がある』 というのが、SavoyレーベルMG12000番シリーズのオリジナルモノラル盤に対する基本的な認識だからである。

これは僕の推測だが、そもそも、ゴールドマイン本に使われた maroon という言葉が、その後の混乱を招いているように思う。実際、ネットなどでSavoyオリジナル盤(1st)のセンターラベルへの説明表記でも~つまり、写真でははっきりした「赤ラベル・DGあり」であっても、maroon をという言葉が使われているケースも見られるのだ。普通の感覚として、maroon というより、red と呼んだ方が、やはりあの「赤」をイメージできるような気がするのだが・・・。
そして、もちろん red と表現される場合も多い。最近、見つけたケースでは、bloody red(鮮烈な血のような赤色) という言葉もあった。bloodyとは凄い表現だが、たぶん実際のセンターラベルの色合いを見て考えたのだろう。個人的にはオリジナル盤(モノラル)のセンターラベルには、この「bloody red」が的確だと思う。
というのは、再発ものにも「赤ラベル」があって、それがオリジナルモノラル盤の「赤」とは微妙に色合いの違う「赤」のようにも見えるからで、例えば、オリジナル1stを bloody red (DGあり)、2ndを red (DGなし)というように分けて使えば判りやすいのになあ・・・と思うわけである。なお、再発もの brown(茶色) は、赤とは完全に別の色であるから、混同することはないと思う。
もう1種類のセンターラベルがある。「赤」といえば赤なんだが、もう少し暗めのやや茶色がかった・・・つまり「アズキ色」みたいなセンターラベルも存在しているのだ。このやや暗めの「アズキ色」(blackish red あるいは dark red) は、どうやら、比較的初期の再発ものに使われたようで、もう少し後期の再発ものの「茶色」と、しっかり分けて認識する必要があるかと思う。
センターレーベルについては~今回は、手持ち盤の実物を見ながら、写真を撮って、いわゆる「赤ラベル」であっても、それらに色合いのニュアンス違いを発見した場合は、できるだけコメントを残しておきたい。
こうなりゃ、1タイトルごとの現物主義でいくしかない(笑)

このブログでは~MG12000番代のオリジナル盤のセンターラベルを
≪赤・溝あり≫と呼ぶことにする。Dscn2974_2
≪写真~*同一タイトルでの 1stと 2nd の例~エディ・バートの[Musician of the Year] 
下が 1st~「赤・溝あり」「B面に手書きRVG」「58Market」アドレス。コーティングあり。
上が 2nd~「アズキ色・溝なし」「56Ferry」アドレス。コーティングなし≫

Dscn2975の写真では、上・下とも同じような「赤色」に見えるが、現物を見比べれば明らかに違う色だ。上のセンターラベルは、かなり暗い赤・・・やはり「アズキ色」と呼びたい(blackish red あるいは dark red) 
そしてこの「アズキ色」は、いわゆる 「茶色」(brown)ともだいぶ違う。
「茶色」はもっと暗くて赤みの薄い「こげ茶色」に近い。
「原色大辞典」というホームページ(HTMLカラーコード)のアドレスを付けておきます。ご覧ください。
http://www.colordic.org/
*(追記)<アズキ色~blakish red あるいは dark red>と僕がちょいと拘って書いてきたが ・・・どうやら一般的にはこのラベルの色のことを maroon と呼んでいるらしい。僕が「アズキ色」と呼んでいる色合いは、添付した「原色大辞典」で見ると、正に maroon(かdark red)に近いので、今後は、maroonを使うこととしよう。ラベルの色の表現としては、「赤」→「maroon」→「こげ茶」と表現する。


Savoy_jazz_001_3≪茶色ラベル・溝なし≫の例~ソニー・レッド、サヒブ・シハブらのオムニバス[Jazz is Busting All Over] MG12123~この番号ならやはり「赤・溝あり」が在るはずで、この写真の盤は、2nd だろう。

住所の変遷についても、ゴールドマイン本ではまったく触れていない。それでこちらも手持ちオリジナル盤の裏ジャケットのアドレスをチェックしてみた。
手持ちのオリジナル盤だけだとサンプル数が少ないので、キング国内盤(最後の名盤シリーズ~裏ジャケットまで忠実に再現されていると思われる)も参考にしたが、50タイトルほどを比較することで、『住所の変遷』の大体の流れが把握できてきた。

1.SAVOY RECORD CO, INC, 58 Market St, Newark, N.J.
というのが基本形である。(以後~「58Market」と呼ぶことにする)
この「58Market」は、おそらく12070番辺り(あくまで推測です。例外もあり(後述)みなさんの手持ちでの実例をぜひお知らせください。
Savoy_jazz_006_2

(この後(12070番辺り)から「58 Market St」表記が無くなってくる)

2.SAVOY RECORD CO, INC Newark, N.J.   あるいは
  SAVOY RECORD Co.Inc. Newark, New Jersy  となる。
  (以後~「番地なしNewark」と呼ぶことにする)
 *1/12~呼び名を「CO INC」から「番地なしNewark」に変更しました。

*N.J. と New Jersy の違い~まだサンプル数が少ないが、シリーズ番号の早い方に N.J.表記が多く、番号後期の方にNew Jersy表記が多いようだが、特に法則もないようだ。サヴォイの場合、アドレス表記のコラム(囲み)などもレイアウトが一定しておらず、単にデザイン的な理由から様々な表記が変化しているだけかもしれない。この辺りもサヴォイというレーベルのアバウトな(いい意味!笑)ところかもしれない。
≪下の写真~Frank Wess/North, South, East...Wess(MG12072)。
アドレスの「CO INC」部分~厳密には、Co.Inc.と大文字・小文字になっての、N.J.表記である≫
Dscn2995

Dscn2989
≪上の写真2点~ミルト・ジャクソン~Jazz Skyline(12070) と Jackson's Ville(12080)の2枚。近い番号のタイトルが共に「番地なしNewark.」のNew Jersy表記≫

*手持ち盤の中では、「58Market」アドレスで最も大きい番号のタイトルは、12061番Meet Milt Jackson(このブログの一番上の写真)と認識していたのだが、ひとつ例外的なものが見つかった。それは・・・12074番~Vido Musso/Loaded である。これが、上記写真のJazz Skyline(12070)~(アドレスに「58」無し)よりも後の番号であるにも関わらず、「58Market」アドレスだったのである。

Dscn2993 Dscn2992
・・・これでよく判らなくなった(笑) まあ「変遷」というものは、それほど鋭角的に変るものではなく「徐々に」移り変わっていくものなので、こういうケースも特に「サヴォイ」というレーベルでは、別にどうってこともないだろう(笑)

3.SAVOY RECORD CO.,INC.,56 Ferry Street, Newark, N.J. 07105
(以後~「56Ferry」と呼ぶことにする)
Savoy_jazz_010
Savoy_jazz_011
≪マリアン・マクパートランド/at Storyville(MG 12004) この2枚は同じタイトルの 1stと 2nd (3rdかもしれない)の例。
下が1st~ジャケットはカラー&コーティングで重厚。この緑色は良い色合いだ。盤も分厚くてセンターラベルは「赤・溝」。
上が 2nd~ジャケットがモノクロに変って、盤はペラペラと薄く、センターラベルは「茶色ラベル」。そしてジャケット裏のアドレスは 56Ferry。
この「56Ferry」盤の発売時期は1964年~1965年頃か?≫
1st と 2nd でジャケットが変るパターンについて付け加えると・・・有名な Opus De Jazz(12036) やModern Jazz Quartet(12046)の場合は、1stがモノクロ、2ndがカラーである。なのに・・・このマクパートランド盤では逆パターンになっている。この辺も、実に Savoy らしいじゃないか(笑)

さて・・・上記のように、MG12000番シリーズでは、「住所」の表記は、おおよそ、1・2・3の順に変遷している。
1の「58Market」は初期のもので期間はわりと短い。
  ≪MG12000~MG12074前後≫

2の「番地なしNewark」の期間は、1と3の間と思われる。
  ≪MG12705前後~MG12163前後≫
  *「58Market」と「56Ferry」に対し、この2だけは「番地がない」ので、これを「番地なしNewark」と呼び、区別することとした。

3の「56Ferry」は、番号のかなり後期に現われる。
  ≪MG12164番前後~MG12200≫

≪移り変わりの番号≫は・・・あくまでも大雑把な推定です。この番号前後の実例がっほしいところです。

1/18≪追記≫~レコード仲間~チャランさんから以下のようなメールをいただきました。
≪ミルト・ジャクソン/OPUS DE JAZZ(MG12036)2ND(ラベルはこげ茶色)
「あれ? 」裏ジャケットの会社の住所が、P.O.Box 1000,Newark,N.J.07101 になっている・・・・?≫
P1010239

~special thanks to Mr.チャランさん!
この情報を元に自分の手持ち盤をチェックしてみたら、やはりP.O.BOX表記がいくつか見つかったので、アドレス表記の類型として、以下の2種を追加しておきます。


SAVOY RECORDS CO.,Inc., Newark,N.J.  P.O.BOX 1000 (僕の手持ちでは~12088(Red Norvo/Move)ラベルはアズキ色・筋(ほぼ銀円上に沿っているが、DG(溝)ではない)
12088という番号から当然「赤ラベル・DG」が1stなので、この僕の手持ち盤は再発。それから後述の「PO BOX1000」からも再発であることが判る。 
もうひとつ~

SAVOY RECORDS CO.,Inc.,56Ferry St.,Newark, N.J.07101 P.O.BOX 1000
(このすぐ下に写真あり)
12194(チャールス・モフェット/ギフト)キング国内盤~これは、Savoy最後期の発売:1969年だが、私書箱のPOBOX1000の前に NJ 07101という表記も見られる。おそらくは・・・New Jersey州での何らかの管理番号だと思われるがよく判らない。いずれにしても1969年辺りまでくると、いろいろと「管理」が細かくなってくるのだろう(笑)

上記2種、共に・・・P.O.BOX 1000「私書箱」を意味する「P.O.BOX 1000」という文言が追加されている。そもそも、ジャケット裏にその会社のアドレスを記してあるのは、そのレコード購入者がレコード会社に「カタログ請求」する際の便宜のためであろう。だから、たいていは58Marketアドレスと並んで「 Send Stamp for LP & EP Discography」(12015(Eddie Bert)などと書かれている。「番地なしNewark」の場合でも「Write for Complete Discography today」となっているケースが多いようだ
私書箱「PO BOX 1000」のサンプルとしてここに挙げた Moveでは、その「カタログ請求の文言が~「FOR COMPLETE FREE DISCOGRAPHY, WRITE(この後、アドレス)」という文言になっている。カタログ請求を勧める文言の種類は発売時期によって実に様々であり・・・こういう「定型なし」ということ自体が、実に・・・Savoyらしい(笑) 
「私書箱」アドレスの時期は、おそらくは、56Ferryより少し後だろう。
というのは~58から56と住所が変った時期に、市場の在庫としてのレコードには「58」「番地なし」「56」が混在していたはずで、そのことが郵便配達上、多少の混乱を招いた・・・だから今後は「私書箱」で統一しようじゃないか、ということでの「私書箱」アドレス導入だった~と考えられるからである。
*大雑把な掴みとしては~ジャケット裏のアドレスに「P.B.BOX 1000」表記があった場合、たとえそのレコードがMG12000番の若い番号のタイトルの58Marketであっても、それはだいぶ後の時期に再発された際のジャケットである可能性が高い~ということになる。そして、その中身の盤のラベルが「赤・DG」ではなくて、「アズキ色」や「茶色」だったら・・・まず再発ものであろう。
*もちろん、後述の56Ferryへの切り替え時期(12164番あたりか?)と「アズキ色ラベル」「茶色ラベル」への切り替え時期(これがよく判らない)
より以後の番号タイトルの場合は、そのラベルは「アズキ色」「茶色」がオリジナルなのだから、当然ではあるが、再発ものではない。

問題は・・・これら住所表記の変遷が、MG12000番シリーズのどの番号あたりで切り替わっていったのかである・・・それを僕は知りたい(笑) 
特に「56Ferry」~ここが重要だ。「56Ferry」については、12000番シリーズのかなり後期~12164番(カーティス・フラー/Images)辺りからではないか、と推測はしている。(日本コロムビアのCDで「56Ferryを確認)
この移行の時期(シリーズでのおよその番号)が確定できると、言うまでもないが、例えば、12050番くらいの若い番号のタイトルで「56Ferry」アドレスのレコードを見つけた場合 それは・・・2ndか3rd(再発)である可能性が高い~(その番号だと、1の「58Market」時期であるはずだから)~ ということが判るわけである。
そしてもうひとつ・・・これは僕の勝手な推理だが、この「56Ferry」への移行期と、もうひとつの謎~センターラベル変遷の「茶ラベル・溝なし」への移行期・・・この2つの流れがほぼリンクしているのではないか・・・ということだ。
しかしながら、決定的に拙(まず)いことに・・・僕はこのシリーズ最後期のSavoy作品をほとんど持ってないのだ。およそ1963~1968年くらいの新録音ものと思われる~例えば、ユゼフ・ラティーフ、ビル・ディクソン、ビル・バロンらの諸作品を所有していないのだ。これは・・・現物確認主義者としてはたいへんに拙い(笑) 
およそであっても「新録音もの」の発売時期が例えば1965年と判った場合、その作品のセンターラベルやジャケット裏アドレスがどういう様式か・・・ということがポイントになるのである。「現物」を持っていなくても、発売年については、ゴールドマイン本などからも、ある程度は把握できる。 
例えば、Savoyに相当数のタイトルを持っているユゼフ・ラティーフの「The Dreamer」(MG12139)~今、これをゴールドマインで見てみると・・・1958年となっている。ちなみにステレオ盤のSR13007は1959年となっている。
こんな具合に「たぶん、そうだろう」的に把握できないことはないが・・・じゃあ中身の盤の重さ・厚さは? センターラベルの色合い・溝は? ジャケット裏のアドレスは? ・・・となると、これはもうお手上げである(笑) BLUENOTEくらいの人気レーベルになると、各エディション違いでのアドレス、センターラベル写真まで網羅した研究本もあるようだが、Savoyでは・・・まず無理だろう(笑) となると・・・やはり一番いいのは、そこに「現物」が在ることだ(笑)
Savoy_jazz_001_4 Savoy_jazz_002_3
≪上写真2点~チャールス・モフェット/ギフト(キング国内盤)≫ 
解説書によれば、録音は1969年となっている。1969年録音のこの作品が、MG12194というシリーズの最後期の番号。Savoyのオリジナル録音としても、最後期のものだろう。
MG12195のDoug Carn Trio(1969年)がSavoyオリジナル録音の最後の作品のようだ。*(MG12196~12220はRegent原盤の再発なので)

「アドレス~住所表記」についてのみ、僕自身が参考にした国内盤は~
1.キングレコードの「最後のジャズLP」(赤い帯のやつ)
2.日本コロムビアの「THE SUPREME COLLECTION OF SAVOY」(紫の帯のやつ)です。
これらの国内盤は、表・裏ジャケットまで忠実に再現していたと思われるので、ジャケット裏下部の「アドレス」については資料として役立つ。
但し、復刻の際に「写真写し」に使った元盤が 2nd というケースもありうるので、あくまで「参考」です。ちなみに、国内盤のセンターラベルについては、原盤の発売時期に伴う変遷を反映せずに、そのレーベル(シリーズ)の初期オリジナル様式に準じることも多いので、発売時期の推測にはあまり参考にはならない場合が多いかと思う。

みなさんのお手持ちのSavoy盤(特にMG12000番シリーズ)の情報を、コメントにてぜひお知らせください。

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2011年1月 2日 (日)

<ジャズ雑感 第32回>UA盤:ビル・エヴァンスとジム・ホールの「アンダーカレント」

  UAレーベルのモノラル盤/ステレオ盤のこと、もう少し。

 

すっかり毎年の恒例になってしまった12月31日のレコード聴き・・・今年もrecooyajiさんと僕:bassclefで敢行しました。recooyajiさんとはもう4年の付き合いになるが、古いジャズをアナログで楽しむ同好の志が近くに居るということは実に重宝なもので、なにしろちょいと集まろうか・・・となれば10分で行き来ができるのである(笑)
さて、今年の「暮れ2人会」~特にテーマというほどのこともなかったのだが、昨年夏にこのブログ<夢レコ>で話題にした、ビル・エヴァンス/ジム・ホールの『アンダーカレント』を、もう一度、聴き比べてみましょう・・・ということだけは決めておいた。というのも・・・この『アンダーカレント』~どういう訳だか、ステレオ盤を好む僕がモノラル盤を、そしてモノラル盤を好むrecoさんがステレオ盤を入手していて・・・だから場合によってはトレードということも互いに考えてのことだったのだ(笑)
ステレオ盤とモノラル盤の音の質感の違いは・・・前回~
《UAモノの方は「優雅で繊細」とだけ思っていた二人のデュオに、相当な力強さを感じました。エヴァンスのピアノがかなり近い音で入っていて(音量レベルそのものも大きいような感じ)かなり強いタッチに聞こえます。ガッツあるデュオ・・・という感じにも聴けました。
(ステレオ盤を聴いてみての印象)
やっぱり、青のステレオ盤、ある種、柔らかさが気持ちよく、そしてギター、ピアノのタッチの強弱感もよく出ていて》
~と表わしたとおりで、しかしステレオの方も決して「線が細い」わけではなく、タッチの繊細さを表出しながらも適度な量感も出ていて・・・この2人のデュオとしては、やっぱりステレオ盤の方が(僕には)好ましい質感だった。
多少なりとも「交換」を考えていたであろうrecooyajiさんも、自分の装置での聴き比べの結果、《ステレオ盤もいいなあ》と感じたようである。チラッと《僕の方はいつでも交換しますよ》と言ってみたら・・・recoさん「いやあ・・・えっへっへッ」とだけ返してきた(笑)というわけで、僕はまたUAJSの方を探さねばなるまい(笑)
さて・・・この2枚の Under Current~「音」の方が済んだので、2人の興味は「モノ(物)」に移った(笑) この2枚を並べて・・・表ジャケ、見開きの両面、裏ジャケ・・・とあれやこれやチェックすると・・・見開きジャケのデザインに若干の違いがあった。
Dscn2810_3 
上写真~モノラル盤 UAJ  14003  見開き左側の下に表記
右側のエヴァンスとホールの写真の位置~上より(下に余白)Dscn2822
上写真~ステレオ盤 UAJS 15003 見開き左側の上に表記
右側のエヴァンスとホールの写真の位置も下よりになる。

 

もうひとつ、ちょっとした発見もあった。2枚を横に重ねて背表紙を見比べていたrecooyajiさんが「あれ?これは・・・面白いな」とつぶやく。
モノラル盤、ステレオ盤ともに、背表紙には同じように「両方」の番号が表記されているのだ!
《下写真は~モノラル盤。BILL EVANS  JIM HALL・UNDERCURRENT・UNITED ARTISTS JAZZ・UAJ 14003  STEREO UAJS 15003と表記》 
Dscn2811
《う~ん・・・モノラル番号とステレオ盤号が並んで書いてあるじゃないか(笑)さらに番号だけならまだしも、UAJS(ステレオ盤の番号)の方にはSTEREOという文字も入っている(僕の手持ちはモノラル盤なのに)これならUAJ14003の方にもmonauralと入れるべきじゃないか》Dscn2818_2
内ジャケ、センターラベルはちゃんと、モノラル、ステレオに応じた番号になっているのに。これは・・・「背表紙」だけは同じ版下を使ったということになる。UA社もここだけは手抜きしたか(笑)
しかしこれでは、このUnedrcurrntのように表ジャケにも裏ジャケにも「ひと文字」も入ってないデザインのレコードの場合、外見だけでは、モノラルかステレオか判別できないわけだ(笑)Dscn2819_2
そういえば・・・僕がこのUndercurrent(モノラル盤)をネットで入手した際、説明では「ステレオ盤」となっていたのに到着したら実際は「モノラル盤」だったということもあったのだが・・・ひょっとしたらその売り手は、このレコードの背表紙だけ見て、ステレオ盤だと思ったのかもしれない。
まあ・・・どうでもいいような話しではある(笑)
Dscn2823_2 
<サックス吹きラベル>は同じデザインだった。但し、このステレオ盤は溝ありで、モノラル盤に溝はなし。それから僕の手持ちモノラル盤のラベルは・・・なぜかややクリーム色がかった灰色で、この「クリーム色」については・・・まだ未解決である。面白いのは写真でお判りのように背表紙の番号表記は全く同じだが、その印字の色がセンターラベルと同じく、僕のモノラル盤はクリーム色となっていることだ。(モノラル盤をお持ちの方~そのセンターラベル情報などお願いします) *拙ブログ7月4日記事も参照

 

追記 1.~UAの「サックス吹きラベル」は、UAJ 14000番台(ステレオ盤はUAJS 15000番台)で、普通のUA盤とは別シリーズとなっているのだが、その「サックス吹きのセンターラベル」・・・これがどうにも謎である。上記の「クリーム色」も謎ではあるが、また新たな「謎」が浮上してきた。それは・・・
Uajs_15003_lステレオ盤のラベルに「溝なし」と「溝あり」の2種類が存在する・・・ということである。前回、7月の記事に載せた、Yoさん所蔵のUndercurrent(ステレオ盤)のセンターラベル(左の写真)を見ると・・・これが通常の「溝なしサックス吹き」だと思うのですが、上の写真(モノラル盤とステレオ盤を並べたもの)の右側のrecooyajiさん所蔵のステレオ盤ラベルは、ハッキリと「溝あり」でした。加えて3時方向にSTEREOという文字が表記されています。『「サックス吹きラベル」には溝はない』というのが、一般的な認識だったと思います。う~ん・・・ますます判らなくなりました(笑)
(2011年1月15日(土)追記)

 

追記 2.~「サックス吹きラベル 14000番シリーズ」のまとまった情報が案外なかったと思います。いつもコメントをくれる三式さんがリストにしてくれましたので、ここに掲載させていただきます。「**穴埋め」の箇所も判ったものは追加していきます。ミュージシャン名/タイトル名という型にしました。special thanks to Mr.三式さん!

《サックス吹きラベル~UAJ 14000シリーズ》のリスト

14001: john coltrane/coltrane time
14002: art blakey/three blind mice
14003: bill evans, jim hall/undercurrent
14004: ** danny small/woman, she was born for sorrow
14005: **charles mingus/wonderland
14006: gerome richardson/going to the movies
14007: kenny dorham/matador
14008: **
14009: **herbie mann/brazil,bossa nova & blues
14010: b
illy strayhorn/the peaceful side of billy
14011: **
14012: **king pleasure/mr.jazz

14013: zoot sims/zoot sims in paris
14014: **billie holiday/lady love
14015: ken mcintyre/year of the iron sheep
14016: vi redd/bird call
14017: duke ellington/money jungle
14018: ** llod mayers with oliver nelson/a taste of honey
14019: ** oliver nelson/impressions of phaedra
14020: **
14021: **
14022: ** herbie
mann/st.thomas
14023: ** alice maccarity & the faith temple choir/our most beloved    spirituals
14024: charles mingus/mingus townhall
14025: ** rose murphy featuring slam stewart/jazz, joy and happiness
14026: **
14027: **
14028: howard mcghee/nobody knows you when you're down and out
14029: moe koffman/tales of koffman
14030: **
14031: king pleasure/mr.jazz
14032: **
14033: bud freeman/something tender


注1~king pleasure(男性ヴォーカル)のMr.Jazzが、12と31とダブっているが、14012は間違いなくキングプレジャーのMr.Jazzだ。私の手持ち盤 14012は2ndラベル(マルチカラー~ラベル上部に赤・黄・青の水玉)でした。NOTさんのブログhttp://blogs.yahoo.co.jp/not254/archive/2007/06/10にも、同じMr.Jazz(2nd)が載っています。なお、14012の1stがサックス吹きラベルであることは写真で確認していますが、14031のMr.Jazzについては未確認。ゴールドマイン本には14031Mr.Jazzと記されており、たぶん同タイトルの再発だろう。
注2~新たに判明した14018と14019は、どうやらオリバー・ネルソン絡みらしい。14023はゴスペルのようだ。
注3~ちょっと注目すべきは・・・14004のDanny Smallの作品。Danny_smallD_small_centerほとんど情報もないのだが、"a great unknown vocalist. reeds by Zane Paul"なる説明からヴォーカルものだと判った。  この管楽器奏者の名前も聞いたことがない。ジャケットは「目から涙」のイラストもので印象に残る。  写真はネットから拝借~

 

追記3.~「サックス吹き」だけでなく、UAレーベルのUAL4000番台/UALS5000番台についても、なかなかまとまった情報がなかったようです。今回、たまたま検索中に発見した<UAレーベルのタイトル番号順リスト>のHPのアドレスを付けておきます。Yoさんとのコメントやりとりでも細かい再発まで判る・・・ということで一見の価値ありかと思います。興味ある方はぜひ見てみてください。そのHPは、rateyourmusic.comという名前のようで、とにかく膨大なレーベル情報で一杯です。アドレスは以下~http://rym.fm/list/lochness/united_artists_lps__usa__f1

さて・・・United Artists(UA)というレーベルについては、夢レコ7月の記事で、「アンダーカレント」だけでなく、
Booker Little +4(ステレオ盤)
Motor City Scene(ステレオ盤)
にも触れたのだが、いかんせんまだまだサンプルが少ない。

そこでもうひつと・・・UAレーベルのステレオ/モノラルということで、たまたま揃ったのがミルト・ジャクソンだ。
Milt Jackson/Bags' Opus(UAL 4022) モノラル赤ラベル
Milt Jackson/Bags' Opus (UAS 5022) ステレオ青ラベル
Dscn2812_2
モノラルがUALの4000番代、ステレオがUASの5000番代という例のパターンだ。こちらはセンターラベル以外は表ジャケ右上のレコード番号だけだ。
こちらはモノラル盤を先に入手した。そのUAレーベルはステレオ盤がいいよ、と言ってたわりに、このモノラル盤・・・これが実に良かったのだ(笑)あまり芳しくない方の例に挙げたMotor City Sceneやthe Band & I、それからModern Art で、僕が感じた「(ステレオ盤と比べて)楽器の音がちょっと引っ込んで詰まったような感じもまったくなく、テナーやトランペットの抜けもよく各楽器の音圧感も充分、主役のミルト・ジャクソンのヴィブラフォンも厚めに鳴って音色に艶もある。これを聴いた僕はまたスケベ心を出した。モノラル盤でこんなに良いのならステレオ盤ならもっといいんだろうな・・・(笑)そうしてわりと最近、首尾よくもう1枚のBags' Opusを入手できたのだ。待望のその青ラベルを、さっそく聴いたみた。Dscn2813_2
A面1曲目~ill wind
このトラックは管なしのピアノ入りカルテット。ミルトのヴィブラフォンがちょい左によって、そしてモノラル盤での鳴りに比べれば太さが減りちょっとスマートな感じになった。その分、バックで鳴るフラナガンのピアノはモノラル盤よりクリアに聞こえる。ドラムスのブラッシュの「ザワザワ音」・・・これが音量的にはモノラル盤でも大きく強く聞こえるのだが、僕にはそれがちょっと暑苦しい。ステレオ盤だと、その「ザワザワ」が被(かぶ)らずに聞こえて、さらにちょいと左側にいるドラムのその全体の鳴りとしての気配がよく判るような気がする(ごく一般論で言っても、同じ録音音源なら、ドラムのシンバルとその鳴りの余韻とかはステレオ盤の方がよりクリアに聞こえる・・・と認識している) チェンバースのベースはどちらの盤でも同じようによく聞こえる。

A面2曲目(blues for Diahann)~管入りだとどうなるのか?
こちらは判りやすい。モノラルではわりと締まって聞こえたベニー・ゴルソンのテナーが、やや右によって、いや、そんな位置のことよりも・・・テナーの音色が、音色の輪郭が拡がって柔らかくなった。テナーの音量も若干、大きくなったように聞こえる。具体的には・・・たぶんゴルソンの特徴であるサブトーン(少し息の抜ける音がススゥ~(ズズゥ~)と聞こえるような音)の感じが、より強調して聞こえるのと、スタジオの空間に響いた自然なエコーの(残響音)感じを、ステレオの方がたくさん拾っているという感じで、僕としてはこちらの方が(ステレオ盤)実際の聞こえ方としては、ベニー・ゴルソンのテナーの音色に、より近いのじゃないかな・・・とも思うわけである。アート・ファーマーのトランペットについても、ほぼ同様な感想で、ファーマーの出した後の音をフワ~ッと余韻を残すような鳴らし方・・・あの音色表現には、ステレオ盤の方がより似合っている・・・と感じている。
但し、モノラル盤の方が、定位も真ん中だし、テナー、トランペットの音も「より締まって(ステレオ盤に比べて)」聞こえるので、やはりその方が好みだという方も多いだろうと思う。
トータルとして、スタジオでの演奏のリアリティというか楽器としての自然な鳴りを欲する方はソフトな感じのステレオ盤。
とにかく主役のミルトを大きな音・音圧感で聴きたい方、管楽器の締まり感を重んじる方は・・・やはりちょいとビターなモノラル盤の方が好みに合うように思う。Dscn2807_5
というわけで、このBags' Opus(UA)については、どちらの盤でも優秀な音が聴けるというのが僕の感じ方です。
いずれにしても、元が良い録音であって、いいミキシング(特にステレオ録音で撮ってモノラルミックスにした場合)であれば、ステレオ盤でもモノラル盤でもどちらでもいい・・・ということですね(笑)

 

こんなわけで、僕のUAレーベルへの興味はまだ続いている(笑)

 

 

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2010年3月15日 (月)

<思いレコ 第17回>ミルト・ジャクソンのあの音色

ヴィブラフォンという楽器のこと。

僕がミルト・ジャクソンの魅力に目覚めたのは・・・「Milt Jackson」(prestige)というレコードからである。それまでにモンク絡みでも聴いてはいたが、ミルト・ジャクソンという人を決定的に好きになったのはこのOJC盤を聴いてからだ。
もともと、ヴィブラフォンの音~それ自体には、惹かれるものがあった。ジャズを聴き始めてすぐの高1の頃だったか、当時買ったばかりのFMラジオ(1972年頃~なぜか簡易トランシーバ付き。同じラジオが2台あれば離れていても会話ができる、というやつ:笑)から流れてきたヴィブラフォンの音に僕は反応した(笑)あれはたぶんMJQだったと思うが、その時、兄貴に『この「ヴィブラフォンの音」っていうのは・・・いいね』と言うと、フォーク好きの兄貴は「ふう~ん」とまったく興味なさそうだった(笑)そんな記憶がある。

ヴィブラフォン(vibraphone)というのは、実に独特な楽器である。おそらく誰もが小学校の頃に触れた「木琴」~あの鍵盤部分が金属製なので「鉄琴」と呼ばれるのだろう。そのヴィブラフォン・・・ピアノと同じ音列の鍵盤楽器であることは間違いないのだが、ピアノと違って、ヴィブラートを掛けられるのである。ヴィブラートというのは、簡単に言えば「音が揺れる」という意味合いだと思うが、ピアノ(もちろんアコースティックの)だと、どの鍵盤をどう押えても・・・もちろん音は揺れない。ヴァイオリンやチェロなどの弦楽器なら、左手である音程を押えたままその左手を揺らすことで・・・唄の場合ならノドの独特な使い方により、どの音程でも任意に「ヴィブラート」を掛けられる。
ヴィブラフォンというのは、そのヴィブラートを掛けられるように「細工」した楽器なのである。まあ、だからこそ・・・ヴィブラフォンという名前なんだろうけど(笑)
*注~vibraphone《ビブラートをかける装置つきの鉄琴。(略式)vibes》とある(ジーニアス英和辞典より)

ヴィブラフォン奏者で、僕がわりとよく聴く(聴いた)のは、ジョージ・シアリング、(シアリングはピアニストです。このとんでもない勘違いを、上不さんがコメントにて指摘してくれました) テリー・ギブス、ライオネル・ハンプトン、それからたまに聴くのがゲイリー・バートンくらいなのだが、ミルト・ジャクソンのヴィブラフォンは他のヴィブラフォン奏者とだいぶ違うようなのだ。もちろんどの楽器でも奏者によって音色は違う。特に管楽器ではその違いは判りやすいかと思う。鍵盤楽器の場合、音を直接に鳴らす部分がハンマーなので、音色自体の違いというのは他の楽器よりは出にくいかとも思う。もちろん、鍵盤を押す時のタッチの強弱やフレーズのくせ(アドリブのメロディやアクセントの位置の違い)で、演奏全体には大きな違いが出てくるわけだが。
そんなわけで、ある程度、ジャズを聴き込んだジャズ好きが、パッと流れたヴィブラフォンの音を聴いて、その演奏がすぐに「ミルト・ジャクソン」と判る・・・ということもそれほど珍しいことではないと思う。それはもちろん、ジャケット裏のクレジットを「見ると」判る・・・ということではなく(笑)その演奏のテーマの唄い口、アドリブのフレーズがどうにも独特なので「ミルト・ジャクソン」だと判るはずなのだ。そしてさらに言えば・・・そういう演奏上のクセだけでなく、ミルトの「音色そのもの」が、これまた実に独特だから「判る」こともあるように思う。
あれ・・・たった今、僕は『鍵盤楽器では音色自体の違いは出にくい』と言ったばかりなのに(笑)
それでは・・・その「独特な音色」は、どうやってできあがったのだろうか? 

ミルト・ジャクソンを好きになって、彼のレコードやCDを集めていた頃、あるジャズ記事を読んだ。(スイング・ジャーナルか何かの雑誌だったような記憶があるのだがはっきりしない)それは、ヴィブラフォンという楽器の「モーター」について触れた記事だった。
「モーター?」 当時は、ヴィブラフォンをなんとなく「生楽器」のように認識していたのだが、よく考えたら、エレキ・ギターと同じく「電気楽器」だったわけだ。
鍵盤楽器の運命として、ひと度(たび)、鍵盤を叩いて発生させてしまった「音」は、もう変えることはできないわけで・・・つまり、その音が発せられた後には、左手もノドもその音の発生源に触れてない状態なのだから、どうやったって、ヴィブラートを掛けられる道理はない。当たり前である(笑)
そこで「モーター」なのである。ヴィブラフォンの鍵盤の下には小さい扇風機が付いていて、「モーター」はその小さな扇風機を回して「風」を起こすために付けられている。マレットで鍵盤を叩いた後に鳴っている音に、その「風」を当てると・・・「音が揺れる」仕組みなのだ。つまり・・・ヴィブラフォンのヴィブラートとは、マレットで鍵盤を叩いた後の「人工的効果」だったのだ!
《*注~すみません。この楽器のメカニズムのこと、よく知らないまま書いてしまいました(笑)今、ちょっと気になって、ウィキペディアで調べたら・・・「ヴィブラートが人工的」に間違いはなかったのですが、モーターが回すのは、扇風機というより「小さな羽根」で、それは「音に風を当てる」ためではなく、その羽根を回転させることで鍵盤下の共鳴筒を開けたり閉めたりする~その動きによって、「音が揺れる」ようです》

しかし、好きになって聴いてきたミルト・ジャクソンの「音」(音色自体+演奏技法も含めたサウンド全体)に充分に馴染んでいたはずの僕は・・・一瞬、その「人工的」が信じられなかったのだ(笑)
つまり、それくらい・・・ミルトのプレイは、自然な唄い口だったのだ。歌い手さんがすう~っと軽くヴィブラートを掛けるように、チェロ奏者が思い入れたっぷりに左手を震わすように・・・ミルトの演奏には、充分すぎるほどの「自然なヴィブラート感」があったのだ。
これは実は凄いことで、つまり・・・ミルト・ジャクソンという人は「自分の唄い」を充分に表現するために・・・おそらくそれまでにその楽器にはなかった「音色」を創り上げてしまったのだ!

その「ヴィブラフォンのモーター」記事の詳細までは記憶にないのだが、ポイントは・・・ミルト・ジャクソンの場合、そのモーターの回転数が他の奏者とは違う~というようなことだったと思う。
「回転数」という言葉にちょっと説明が要るかと思うが、つまり・・・弦楽器でいうところの「左手の揺らし方の速さ・遅さ」に当たる。「揺らし」の波形の上下(山と谷)の間隔を短め(速め)にするか長め(遅め)にするか~という意味合いになるかと思う。
ミルトよりちょっと古い世代のヴィブラフォン奏者~例えばライオネル・ハンプトンの音は、もう少し細かく速く揺れてるように聞こえるので、比べた場合、ミルトのヴィブラートは、だいぶ「遅め」に聞こえる。
音を言葉に置き換えることなどできないが、その感じを強いて表わそうとすれば・・・速い揺らしを《ゥワン・ゥワン・ゥワン・ゥワン」とすれば、遅い揺らしだと「ゥワァァワァ~ン・ゥワァァワ~ン」という風に聞こえる。
そうして、ミルトという人は、その「揺れ方」まで自在にコントロールしているようなのだ。彼のスローバラード(例えばthe nearness of you)を聴くと・・・テーマのメロディの語尾の所を「ゥワァァワァ~ン・ゥワァァワ~ン」と遅くたっぷりと揺らす場合と、あまり揺らさない(ヴィブラートが速め・軽め)場合もあるのだ。たぶん、モーターのスピードを小まめに調整しているのだろう。
人工的な機能を人間的な表現力にまで高めてしまう・・・これこそ、僕がミルトに感じた「自然な唄い口」「自然なヴィブラート感」の秘密なのかもしれない。
そして、ミルト・ジャクソンの秘密は・・・たぶん「モーター」だけではない。
ミルトのあの独特の深い音色・・・僕は、鉄琴を叩く、あの2本の鉢(ばち)~マレットにも秘密がある・・・と推測している。
ハンプトンやテリー・ギブスの音は、もう少し堅くて打鍵がキツイいと言うか、ちょっと「キンキン」した音に聞こえる。ミルトの打鍵ももちろん強いのだけど・・・(私見では)たぶんマレットの布が分厚いので、だから強く叩いたそのタッチに若干のクッションが入って、ソフトに聞こえるのではないだろうか。ソフトと言っても打ち付けられた瞬間の音の感触として、ヒステリックな感じがしない・・・ということで、もちろん「やわ」という意味ではない。ミルトの打鍵にはしっかり「芯」があり、あの粘りながら脈々と続く長いフレーズの打鍵音ひとつひとつに充分な音圧感もある。しっかりとテヌートが掛かっているというか・・・前に叩いた音が残っている内に次の音が被(かぶ)さってくる・・・というか。ずっしりとした音圧感が、どうにも凄いのである。
つまり・・・ミルトは、重いマレット(布が分厚いので)でもって、適度に強く、適度に弱く、叩きつける時の「返し」を微妙に調整しながら、しかしもちろんマレットから鍵盤に充分な打鍵力を与えている・・・という感じかな。その絶妙な「タッチ感」に、さきほどの「遅めのモーター回転」を、巧いこと組み合わせて、そうして出来上がったのが、あの「ミルト・ジャクソンの音色」ということかもしれない。
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《4~5年前に入手したprestige のN.Y.C.ラベル~僕の数少ないNYCの一枚だ(笑)》

そんな「ミルト・ジャクソンの音」を、分厚く・太く・温かみのあるサウンドで録ったのが・・・ヴァン・ゲルダーなのだ。このレコードを聴いていると・・・ミルト・ジャクソンが自分の楽器から出したであろうその音・その鳴り・その音圧感を、ヴァン・ゲルダーがそのままレコード盤に閉じ込めたな・・・という気がしてくる。

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《裏ジャケ写真~OJC盤では黒色が潰れていたが、オリジナル盤ではさすがに鮮明である。当たり前か(笑)》

さて、Milt Jackson(prestige)である。
ある時、僕はこの「Milt Jackson」・・・うんと安いOJC盤で買って、それほど期待せずに聴いてみた。当時、ミルト・ジャクソンといえばMJQのことばかりで、この地味な盤が紹介されることはあまり多くはなかったように思う。だからこの作品が「バラード集」なんてことは全く知らなかったのだが、スローバラードでのじっくりとじわじわと唄い込むミルト・ジャクソンのヴィブラフォンは、本当に素晴らしいものだったのだ。
収録曲も、the nearness of you, I should care,my funny valentine など、いい曲ばかり。片面が10分ほどと短くてすぐ終ってしまうので、僕はその度にレコードをひっくり返し・・・だから、どちらの面も本当によく聴いた。そうして、このレコードを心底、好きになってしまったのだ。
Photo
《このOJC盤を買ったのはいつ頃だったのか・・・今、僕のレコードリストで調べてみたら・・・1991年8月だった。それより以前に meets Wes や前回記事のOpus De Jazzなども入手していたから、この真の名盤に出会うのは、けっこう遅かったようだ》

たまたま買った「安いOJC盤」~僕には大当たりだった(笑)
余談だが、このMilt JacksonのOJC盤・・・ナンバーが001番で、どうやらあの膨大なOJCシリーズの第1号だったようだ。やっぱりオリン・キープニューズ氏にも「内容が良い」という自信があったのだろう。
バラード集だけど、ほんのりとブルースもあり、全6曲・・・まったく厭きない。どの曲でも脈々と湧き出るミルトのフレーズに、それはもう、deepなソウル感が全編に溢れ出ており(ソウルと言ってもR&Bのソウルではなく、深い情感・・・というような意味合い)本当に素晴らしい。特に the nearness of you は絶品!
これこそが、バラード好きでもあるミルト・ジャクソンの本領発揮・・・そして本音でやりたいジャズだったと思えてならない。
主役がミルトなので、おそらくいつもよりうんと抑えた感じのホレス・シルヴァーのピアノにも適度にブルースぽい感じがあって、ミルトの叙情といいブレンドを醸(かも)し出しているように思う。この作品・・・ピアノがホレス・シルヴァーで本当によかった・・・(笑)

そして、この「Milt Jackson」には、もうひとつ・・・素敵な偶然があった!
1980年頃だったか・・・ワイダやポランスキー、ベルイマンの映画を見るために、毎週、名古屋まで通ったことがある。「灰とダイヤモンド」「地下水道」や「水の中のナイフ」それから「ペルソナ:仮面」などを、実に面白く・・・というより、映画マニアを気取って、しかめっ面をしながら観ていたわけである(笑)そして、内容とは別のところで妙に印象に残った映画がひとつあった。
「夜行列車」である。この映画・・・列車の同部屋に乗り合わせた人々の物語で、「灰とダイヤモンド」や「地下水道」に比べれば、僕にはたいして面白くなかった。しかし印象に残っている・・・そのテーマ音楽がとてもいい曲だったのだ。
寂しい映画にピタリと合う、寂しいメロディ・・・独特に上下するような独特なメロディが、映画の間、何遍も流れてくる。映画が終わり・・・僕はその独特なメロディを忘れたくないがために、地下鉄までの帰り道でもハミングしたり口笛を吹いたりしていた(笑) その効果もあってか・・・何年か経っても、時にそのメロディが、アタマにちらついたりするのだった。
ただ、僕はその曲は映画のオリジナルだろうと思ったので、その曲の正体など知るべくもなく、そのメロディの記憶も徐々に薄れていった。
そうして・・・前述の「ミルト・ジャクソン」なのである。このレコード・・・A面最後の曲が流れてきた時、僕は思わず「おおっ!」と声を出した(笑)
これは・・・あの曲だ!あのメロディじゃないか!
クレジットを見ると・・・《moonray》とある。11年ぶりの再会である。こういう時・・・音(音楽)の持つ力ってなかなか凄いものがあって、いろんな感情・感覚がぐわ~っと甦ったりする。ジャケット裏の解説には~MOONRAY:an old Artie Shaw opus(アーティーショウの古い作品)との記述があった。ようやく僕は、あの「夜行列車」のテーマ曲が、moonrayという古いスタンダード曲であることを知ったのである。
その後、もう一枚、ジャズのレコードに入っている moonray を知った。それは、ローランド・カークの、いや、ロイ・へインズの「Out Of The Afternoon」(impulse)である。
お持ちの方、ぜひ聴いてみてください。うねるようなメロディが不思議な寂しさを湧き起こすような(僕には:笑)名曲だと思う。
このmoonray事件には後日談があって~2年ほど前だったか・・・ニーノニーノさんBBSのお仲間:M54さんが、やはり映画「夜行列車」を見て、何やら印象に残った曲がある。気になって仕方ない・・・というような書き込みをされたことがあるのだ。その書き込みを見た僕は、その気分が全く100%まで実感できたので・・・もったいぶりながら(笑)そのテーマ曲の正体をお教えしたわけである。
当時のヨーロッパ映画では、盛んにジャズの曲(演奏)を映画に使ったそうで、ということは・・・1960年頃のヨーロッパの映画人もジャズに何かを感じとって映画にジャズ音楽を使い、何十年も後にその映画を観た人間もその音楽から何かを感じ取って、ある感興(かんきょう)を抱く・・・まったくジャズというのは素晴らしい何かですね(笑)

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2010年2月28日 (日)

<ジャズ雑感 第31回> Savoy赤ラベルのスタンパー

Savoyというレーベルにも、なかなか興味深いものがある。僕にとってのSavoyは、やはり・・・ミルト・ジャクソンということになる。ミルト・ジャクソンという人を最初に聴いたのは、1972年頃に、モンク絡みで入手した「クリスマス・セッション」だったはずだ。この人を「好きだな・・・」と自覚したのは、presitgeのMilt Jackson Quartetだった。そうしていろんなジャズを聴いてきた後、たまたまSavoyのOpus De Jazz(キングのCD)を入手したのだが、それまでに耳にしたことのない、リラックスしてブルージーな味わいのある「渋いジャズ」も悪くないなあ・・・と感じた記憶がある。今になって思えば、それこそがSavoyジャズのイメージそのものだったわけなのだが(笑)
僕の好みなのだが、ミルト・ジャクソンについては、「非MJQ」というフォーマットに魅力を感じている。そうして、Savoy盤での彼のヴィブラフォンの音には独特の重み・深みがあるようにも感じられ、Roll Em Bagsなど彼のSavoy作品を聴けば聴くほど・・・Savoyというレーベルのイメージがますますミルト・ジャクソンという人に集約されてくるようなのだ。その辺りのレコードについては、またの機会にまとめるとして、今回は、Savoy盤のちょっと瑣末な点に拘ってみたい。

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《写真左~モノクロ・ジャケット。右~カラー・ジャケット》
昨年の10月頃だったか・・・近所のレコード仲間:recooyajiさん宅で音聴き会をやった。この2人集まりは不定期なのだが、たいてい2ヶ月に一遍くらい、そろそろ・・・てな感じで、急遽、催されることが多い(笑)
さて、その音聴き会~ある日曜の午後、僕は「渋いジャズ」開眼盤である、Opus De Jazz(MG12036)を持っていった。だいぶ前にCDで聴いた時に感じていた「サウンドのコク」みたいなもの・・・それをオリジナル盤で味わってみたいという気持ちがあって、ちょっと前に「モノクロ・ジャケット」を入手していたのだ。
さて、僕がこの「モノクロジャケ~Opus De Jazz」を取り出すと・・・recooyajiさん「おっ、モノクロだ!」と反応する。この作品に「モノクロジャケ」と「カラージャケ」があることを知ってはいたが、なんと、recooyajiさん・・・たまたまその「カラージャケ」の方をお持ちだったのだ!
recooyajiさんの手持ち盤は~ジャケはカラーだが、盤(vinyl)は赤のセンターラベルだった。僕の「モノクロジャケ」も、もちろん同じ赤ラベルだ・・・これで「赤ラベル」が2枚揃ったわけだ。それじゃあ、ぜひ比べてみましょう!となるのもムベナルカナでしょう(笑)

さて・・・まず素朴な興味として「ジャケット」に、1st(モノクロ)と2nd(カラー)という違いがあって、それでは「盤」の方はどうなのか?・・・という疑問が湧いてきた。2人はいそいそとそれぞれの盤を取り出して並べてみる・・・さあ、どうだ!どうなのだ?(笑)
やはり・・・スタンパーが違うようなのである。MG~というレコード番号とX20という刻印(*bsさんからのコメントで判明)は全く同じだったのだが、その他に、アルファベットと数字の表記があって、それらが同一ではないのである。
Savoy

《写真上~モノクロジャケの盤:内周右上に「1」の数字刻印、
写真下~カラージャケの盤:内周右上に「6」の数字刻印がある》
Savoy_6_3

僕はそれまで、Savoyのセンターラベルやスタンパー刻印については、ほとんど無知であった。知っているのはRVG刻印のこと、あとは、大まかのラベル変遷としての《赤:red→エビ茶:maloon》くらいで、だからこの偶然的2枚揃いの場面を迎えるまでは、まったく予備知識もなかったわけなのだ。Savoyのスタンパーについてはおそらくrecooyajiさんも同様だったようだ。2人は、その2枚を食い入るように観察する(笑)
・・・・・ややあって「うう、違いますねえ」とrecooyajiさん。

                                                      Savoy_b《写真上~モノクロジャケの盤:「B」の刻印。アルファベット刻印は、数字刻印のほぼ反対側に位置している。
写真下~カラージャケの盤」には「E」の刻印があった。(ジャケットと盤の入れ替えがなかったという前提で)普通に考えれば、モノクロジャケットの中身(盤)の方が早いプレスなので、この「B」と「E」の場合なら・・・「B」の方が、より初期プレスに近いということになるのかな》Savoye_3 

《このOpus De Jazzの2種を整理すると~モノクロジャケの盤が「Bの1」で、カラージャケの盤が「Eの6」ということになる。
但し「ジャケと盤の入れ替え」もよくあることだし、BとEなる表記の場合、必ずしもBの方が先とも断定できない・・・全ては推測である。いや、思い込みかな(笑)

さて、音の方はいかに?
これがなかなか微妙ではあったが・・・やはり「モノクロ」(Bの1スタンパー)の方に、若干ではあるが、鮮度感の高さが感じ取れたようだ。うまく説明しづらいのだが、ベース音の膨らみ具合に若干の違いがあったような・・・このOpus De Jazzのべーシストは、エディ・ジョーンズ。もともとベース音自体が太くてでかそうなベース弾きである。だから・・・その音の大きさ(感)自体を「膨らんでいる」と捉えているのではなくて、その「大きさの輪郭/音色の芯」の感じに、ほんの少しの違いがあったようだ。つまり「ベース音の切れ」において、モノクロ・ジャケの方に、より圧縮感があり芯が締まった感じがあったように聞こえた。
推測レベルになるが、この同タイトルの「エビ茶」ラベル盤があれば、それぞれのプレス時期から考えれば、もう少し明らかな鮮度落ち感が認められるかもしれない。
今回は、このタイトルだけの聴き比べなので、「Bの1」や「Eの6」の比較に普遍性はない・・・と思う。同じ「赤ラベル」での同タイトル~もう少しサンプルがあれば、ぜひ聴き比べてみたいものだ。
(*ぜひ情報をお寄せください)

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