ベン・ウエブスター

2011年12月31日 (土)

<ジャズ回想 第25回>ベン・ウエブスターの絶妙ライブ盤

  ヴィンテージではないけどオリジナル盤とも言えるじゃないか(笑)

この<夢見るレコード>・・・このところちっとも夢を見てない(笑) もちろんジャズへの愛着が薄れたわけでもなく、相も変らずレコードを買い、レコードを聴いている。休みの午前中はそのレコード音楽に浸れる貴重な時間で、たいていは入手仕立てのものから聴き始め、その内容が「ワオ~ッ」だと両面を聴き、また「がっくり」の時は片面だけにして、今度は愛着盤に手を延ばしたり・・・そんな風に次に何を聴こうかと考えたりするのもなかなか楽しい。そうこうしてると・・・もう昼だ。
お昼を食べてからも2~3枚は聴く。だけどお昼過ぎのこの時間は・・・眠くなるのである(笑)これがもう実に眠い。3枚目を聴く辺りになると、もう充分に眠気を意識している。だからこれは寝てしまうな・・・と自覚すると、タイマーを20分後くらいにセットして、例えばジョージ・シアリングを掛ける。そうして、目論見どおりに僕は眠ってしまう(笑)
休みの日に好きなレコードを聴いてのんびりと眠りに落ちる・・・これもなかなか幸せなことじゃないか。そうして目が覚めるともう夕方だ。それでも晩飯までには充分な時間がある。そこで、またレコード聴きである。僕の場合はこの時間帯・・・けっこう乗る。眠気の増したお昼過ぎのあの気だるい感じがさっぱりと抜けて「さあ、また聴くぞ」という気分になるのだ。そこで、大編成のものをわりと大きめな音量で聴いたりする。そうだな・・・マリガンのconcert jazz band(Verve)なんかは実にいい。
そんな具合に、僕はとにかくレコードを聴きたい。だから・・・なかなかブログにまで手が廻らないのだ(笑)
しかしながら、2011年もあっという間に終わろうとしているこの大晦日。毎年、大晦日にはrecooyajiさんとレコード聴きをしてきたのだが、今年は昨日・今日とは朝からレコード棚の再編成をしていてこれは予想どおり難航した(笑)苦闘の末、床置きになっていたレコード達をある程度までは収めるところまではメドがついたので、recooyajiさんとの例会ができなかった代わりに、久々にこの<夢レコ>をアップしようと思い立った。ちゃんとした構想もないので、短めのものになりそうです。

さて・・・僕はもちろん古いオリジナル盤が好きなわけだが、その一方で「オリジナル盤、何するものぞ」という反発気分も無いわけではない(笑) それはつまり・・・録音時にリアルタイムでは発売されなくて、しかし後年に発見・発掘されて発売された音源(別セッション・別テイクなど)というものがあり、それらについては、いわゆる「当時のオリジナル盤」は存在しないわけで、強いて言えば後年になって発売された初出自のものを「新発見オリジナル」とでも呼ぶしかない。そしてそういう「新発見もの」にも、侮れないものがたくさんあるぞ、という気分なのである。

だいぶ前の拙ブログ(ワリー・ハイダー録音)で、ビル・エヴァンスのTime Remembered(milestone)を紹介したことがある。それは、エヴァンスのライブ盤~At Shellyman's の未発表音源の世界初発売というもので、僕としては、要はその「演奏はもちろん、録音の音質が素晴らしい」ということを言いたかったのだ。年季の入ったジャズ好きほど、別テイクや別セッションなど未発表音源というだけで、その価値を認めないという頑固さもあるかと思う。つまり発表しなかったのにはそれなりの理由があるだろうし 実際、同じ曲の別テイクをいくつも並べられても、よほどの興味ミュージシャンのものでない限り、それほど素晴らしいものとは言えないことも多いのだ。でもそんな頑固さのために、後年発売の未発表音源盤を聴き逃すようなことがあるとすれば・・・それは悲しいことだよ、とも思うようになってきたのだ。そうした例外的に素晴らしいと思えるレコードをちょっと紹介したい。

≪写真下~1989年発売のOJC盤:6曲収録)

Dscn2829_2 Ben Webster ~At The Renaissance(contemporary)というものだ。
11月の中旬頃だったか・・・久々に旧友のsige君、yosi君とレコード3人聴きの会をすることになった。
こういう集まりでは、わりと不思議な偶然・・・それも嬉しい偶然が起こったりするのだが、今回はちょいと驚いた。集まりの2~3日前になると、僕は幾つかのレコードを思い描いておくのだが、その中に古い盤ではなく、わりと近年発売(1989年)のベン・ウエブスターのレコードもあった。これは1960年のライブ録音音源だが当時に発売された形跡は無い。だからあまり紹介されたこともないし、いわゆる「定評のある名盤」とは違うまったく地味なレコードである。僕はこのレコードを1年ほど前だったか、うんと安価で入手したのだが、聴いてみてすぐ気に入ってしまったのだ。
さて、朝からの大雨の土曜日、3人が揃って・・・yosi君がバッグから5~6枚のレコードを取り出してみると・・・ちゃんとこのレコード~Ben Webster/At The Renaissance(contemporary) がそこにあるじゃないか!

「あれ、なんで?」とつぶやく僕。そこでこちらが用意していたその同じレコードを見せる・・・「おおっ」とyosi君が応える。
こんな地味盤が2枚、打ち揃って並ぶとは(笑) これは嬉しいじゃないか! yosi君はベースのレッド・ミッチェル目当てにこの盤が目に留まったとのことだが、この安っぽいカバーデザインに負けずに入手したことは素晴らしい選球眼だ。
≪写真下~1989年発売のフランス盤らしい。左下のロゴに注目≫

4benwebsterattherenaissanc404776このレコード・・・ジャケットが冴えない。これではベン・ウエブスターがまるでミイラ男じゃないか(笑)
しかし、演奏は味わいのあるもので、そして録音もいいのである。ライブ録音だが、各楽器の芯のある音色と響き具合が自然で、素晴らしい臨場感を味わえる録音なのである。録音エンジニアは、howard holzerなる人物。
一般的に言って「西海岸の録音はいい音」ということはあるかと思う。まあその「いい音」を言葉で定義はしづらいものだが、この場合の「いい音」は・・・私見では「すっきりした誇張の少ない自然な楽器の音色」という感じだと思っている。それは録音マイクの違いもあるような気がする。雰囲気としては、東海岸のダイナミックマイクと西海岸のコンデンサーマイクという違い方があるような気がする。

そして並んだこの2枚・・・contemporaryレーベルからの近年発売という点ではもちろん同じだったが、僕の手持ちは1989年発売のOJCステレオ盤(phil de lancieのリマスター)
yosi君のは19861985年モノラル盤だったのである(リマスターは別人=Gary Hobishなる人物と判明)
だから、このレコードの初回発売は19861985年モノラル盤ということになるわけだが、19861985年版のステレオ盤も存在するのだろうか?Dscn2832
実は、そんな違いも後から判ったことであって、最初、yosi君手持ちの盤を掛けた時・・・僕は「あれ?レッドミッチェルのベース音がいつもと違うぞ」という感じがして、それは、レッド・ミッチェルのベース音がやけに太く大きく聴こえたからである。「大きく~」というのは、このレコードを何度も聴いて僕が感じていたレッドミッチェルのベース音の鳴り方が他楽器とのバランスにおいて「いつもより大きく聴こえた」という意味である。
もちろんミッチェルはベースの真の名手で常にズズ~ンといい鳴りを出しているはずで、大きく太く鳴ることはいいことなのだが、僕はステレオ盤でのバランスに慣れてしまっていて、そこに若干の違和感を覚えた。ジミー・ロウルズのピアノ音色も、モノラル盤だと明らかに強め・厚めのタッチに聴こえて、それは何となく、僕が感じているジミー・ロウルズとは微妙に違うような感じを受けた。
その辺りで「あれ?これ、ステレオ盤じゃないね。僕のは確かステレオ盤だったと思うけど・・・」ということになり、お互いのジャケット裏を精査したところ、ようやくその違いに気づいた・・・というわけなのである。
まあこの辺のことは、いつも言うように「好みの問題」で、僕の場合、ステレオ録音の軽やかさを嫌いではないので、演奏の場でリアルなステレオ録音をされた音源であれば、なるべくステレオ盤で聴きたいと思うわけである。
そして、ベース音や各楽器の音をとにかく大きく太い音で聴きたいという方は、やはりモノラル盤を好むことになるのであろう。

ウエブスターはスローバラードが好きなようで、スローなテンポでいいメロディを実にゆったりと延ばしながらその音色に濃淡を付けていくような吹き方をする。基本的にはアルトのジョニーホッジスをそのままテナーに移したような感じなのだが、その「ねちっこさ」がこの1960年頃になると以前より薄めになってきたようで、そしてその辺りの「でもねちっこい感じ」が僕にはちょうどいい按配なのだ。
そのバラード~georgia on my mind と stardustが実にいい。ウエブスターの「ゆったり」に、バックの伴奏陣が適度に変化を付けて演奏全体がダレることなく進んでいく。ピアノのジミー・ロウルズ、ギターのジム・ホール、ドラムにフランク・バトラー、そしてベースにレッド・ミッチェル! 灰汁の強い個性派を主役に据え、真の名手たちで脇を固めたという感じで、ベースとドラムが造る流れの中でポツポツと入るロウルズのピアノも実に味わい深い。
そして、stardustでは、レッドミッチェルの「アルコ弾きソロ」をたっぷりと聴ける。ミッチェルはもちろんピチカット(指で弾く)も巧いが、アルコ(弓で弾く)もこんなに巧かったのか! 左手のガシッとした押さえが効いているから音程がぶれない。チェンバースのけっこう乱暴なアルコ奏法とは、だいぶ違うぞ(笑) そんな名手がアルコで弾く、弦と胴鳴りの気持ちいい音が素直な録音で捉えられており、何度聴いても飽きない。このstardustは、実に味わい深い演奏だと思う。

001_2そうだ・・・もうひとつ、印象深い stardust があったぞ。フランク・ロソリーノの Free for All(specialty)だ。 ロソリーノがトロンボーン一丁で小気味よく歌い上げる名演だ。そういえば・・・こちらも未発表音源の後年発売盤である(録音は1958年12月)
米specialtyが1986年に発売したモノラル盤裏解説にこうある(当時のプロデューサー:Dave Axelrod 談として)~
≪フランクと私は何週間も掛けてメンバーや曲目を考えて素晴らしい出来上がりになったのに、どういう訳だか発売されなかったので、2人とも、そりゃがっくりきたよ≫
そのメンバーは ロソリーノ(tb)、ハロルド・ランド(ts)、ヴィクター・フェルドマン(p)、リロイ・ヴィネガー(b)、スタン・レヴィ(ds)・・・これは本当にいい人選じゃないか。002
実はこのレコードは以前の<夢レコ:トロンボーンのいいバラード>で紹介したことがあるが、「後年発売の未発表音源盤」の逸品としても推薦したい。機会あればぜひ聴いてみてください。
ちなみにこのレコード~僕の手持ちでは、米specialtyがモノラル盤、日本センチュリーはなぜかステレオ盤(1991年発売)である。この日本盤は、自然に聴けるのでリアルなステレオ録音だと思う。コーティングされた日本盤ジャケットの出来映えはなかなか素晴らしいものだ。

侮れない内容の未発表盤・・・まだまだ見つかりそうな気配である。
ちなみに、Ben Webster/At The Renaissance(contemporary) のことについては、yosi君がこの3人聴き会の後、すぐにブログ記事にしてくれました。http://blogs.yahoo.co.jp/izumibun/35643651.html
そちらもぜひご覧下さい。

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2009年6月19日 (金)

<ジャズ雑感 第29回>同じレコードをとことん楽しむ。

いいミュージシャンたちの素晴らしい音楽が詰まっているレコードというものは、本当にありがたいものだが、レコードに入っている音がそのまま「真実」とは限らない。
あたり前のことだが「レコード」より前に、まず楽器を吹く(奏する)生身の人間がそこに存在しているわけで、いかにいい録音であろうと、レコードから出てくる音が、生身の人間がその場で吹いた生の音に敵(かな)う訳がない。だが、時として、そのペラペラのヴィニール板からは「本当らしさ」が聞こえてくることがある。そのミュージシャンが楽器を通して表現したかった何らかのatmosphere(雰囲気)が、そこいら中に満ち満ちてきて、そのミュージシャンが「生きていた時間」をくっきりと感じ取ることができたりするのだ。そんな素晴らしいレコード~その演奏が素晴らしいことはもちろんである~が確かにある。
だから、僕は控えめにこう言いたい。「レコードには・・・時々、真実が在る」と。だから、僕らはそんな素晴らしいレコード達を聴かないわけにはいかない(笑)
実際、聴いてみたいレコードは無限にあるのだ。
そうして好きなレコードが増えてくると・・・できればそれらを少しでも音のいい版(レコード)で聴きたくなるのも、ごく自然なことではないか~いや・・・これは、このところダブリのレコードが増えてきたことへの強引な言い訳なのだが(笑)
僕はいつもジャズを「人聴き」している。何十年もジャズを聴いてきてちっとも飽きないのは「おっ、このテナー、ちょっといいな」てな具合に、その人の演奏をもっと聴いてみたい・・・思わせてくれるミュージシャンが次々と表れてくるからだ。ただ、僕の場合はそうした興味が古い時代の方へ向かうことが多いようだ(笑)
本当にいろんなミュージシャンがいる。いろんな個性がある。
そうして僕にとって「そのミュージシャンの個性」というのは・・・やっぱり「音色」だ。特に管楽器の場合は「音色」がそのミュージシャンの個性を造る決定的要素だと思う。もちろん、フレーズ(のクセ)もその人の個性には違いないのだが、音色の方がもっと本能的というか、理屈ぬきにその人の身体から滲み出てきてしまった何か・・・僕は「音色」というものを、そんな感じに捉えている。
ジャズを好きになってある程度ジャズを聴いてきた方なら、たぶん「音色」というのを理屈でなく肌合いとして感じ取っているものだと思う。
例えば・・・ロリンズとコルトレーンは同じテナーという楽器を使うが、2人の音色は・・・どんなレコードで聴いても相当に違うので、間違えることはあまりないだろう。コルトレーンには「ああ、コルトレーンだ」と判る「あの独特の音色」が絶対にあって、彼の音色の質感は、レーベルが変わっても案外変わらないように思う。では、ソニー・ロリンズのテナーの音色の場合、どうだろうか? 僕としては、けっこう違いがあるように思う。
例えばロリンズの2~3m前で(ノーマイクで)実際に耳に聞こえるテナーの音色としては・・・僕は contemporaryでの音色の方が本当のロリンズのテナーの音に近いと思う。bluenoteでのロリンズはやけに音像が大きくてエコーも強すぎと感じるのだ。だがしかし、僕らが一般的にイメージしている「ロリンズのテナーの音」は、bluenoteのサウンドの方だろうなとも思う。
そんな風にレーベルやタイトルが違うと、ミュージシャンの音がその質感のとこで変わってしまうこともけっこうあるわけで、さらに言えば、そんなレコード製作上での違いだけではなくて、年代を経てミュージシャン自身が生み出す音色自体も微妙に変わっていくこともあるわけで・・・この辺まで話しを踏み込んでくると、ミュージシャンの「本当の音・音色」とは、一体どこに在るのだろう・・・と、悩んでしまう(笑) こんな具合に戸惑うこともあるのだが・・・要は自分が好きな(興味を持った)ミュージシャンについては、聴き手がそれぞれに自分の思っている「その人の音色のイメージ」を確立していくことが大事だと思うのだ。
例えば・・・ジョニー・グリフィンのテナーを<唾液がドロドロしているような粘る音>だと表現したとする。それは音を言葉に置き換えようということではなく、あくまで脳内で< ~ >と認識したそのサウンドのイメージを便宜上何らかのコトバにしただけのことで、たとえそのコトバが他の人にとっては的外れなものであってもいいのだし、要は本人が「それ」と判ればいいのだと思う。
ジャズが好きで、いろいろなレコードを聴いてくれば、自ずとそんな認識を無数に持っているわけで・・・そうしたイメージ認識があるからこそ、例えば知らないタイトルのレコードを聴いても「ああ・・・このテナー、グリフィンだ」てな具合に判るはずなのだ。そうした認識や自分の好みの傾向をしっかりと自覚した上で、好きなミュージシャンや好きなレコードの音がレーベルによっても微妙に変わる様を楽しむのも、なかなか悪くない。
さて、タイトルやレーベルでミュージシャンの音」が微妙に違うケースはしょっちゅうあるが、同じミュージシャンの同じ演奏であっても、レコードの版(ステレオ/モノラル、1st/2ndなど)によって、音の質感が違うこともあるのだ。もちろんテナーの音がアルトに聞こえる~なんてとこまで異なることはないと思うが、例えばテナーの場合だと、落ち着いた感じの音色がパリッと明るい感じになったり、ヴォーカルの場合では、声が太くなったり細くなったりと・・・けっこう違って聞こえるものなのだ。
もちろん、版によって音が違うからって、それが何なんだ? それよりいろんなタイトルを1枚でも多く聴こうよ~という考え方も充分に正論だとは思う。僕もそう思う(笑) そりゃそうだ・・・同じタイトルのレコードを2枚~3枚と持たなければいいのだから(笑) でもちょっとだけ、僕も含めて「同じレコードを2~3枚持っている」という人の弁護をするのならば、それは決して最初から聴き比べをしようと意図していたわけではなくて、そのレコード(演奏)を好きだから、なんとはなしに2~3種集まってしまった~ということだと思う。そうして聴いてみると「あれ、何か違うぞ?」と気づいてしまう・・・それが不幸の始まりだ(笑)そんな不幸を充分に自覚しながらも、今度は意図して(笑)いろいろ好きなレコードの聴き比べをしたくなってしまうのだ。
実際・・・好きなミュージシャンのこととなるとそんな微妙な違いがけっこう気になる。なぜなら・・・なによりもパッと聴いた時の雰囲気が変わってくるからなのだ。雰囲気が変わるのは、その音色や声の質感が微妙に違うからだと思うわけだが、特にヴォーカルにおいてはこの「雰囲気」は大きな要素だと思う。声の質感が違うと・・・その歌い手の年齢が平気で10歳くらい違ってしまうのだ(笑)

2009年5月30日~ Yoさん宅に、denpouさん、recooyajiさん、konkenさん、bassclef の5人が集まった。いやあ・・・聴いた、聴いた(笑)10:15から20:15までたっぷりの10時間。音から離れたのは晩飯休憩の時間だけ。いろいろ聴いたのだが、今回は「聴き比べ」の場面に絞って書いてみたい。[写真~全てYoさん提供。ハワード・マギー3点は、denpouさん提供]

<エセル・エニス/Lullabys For Losers>jubilee盤

Lp1021_jLp1021_l これ、2008年の白馬でパラゴンさんがかけた1枚。しっとりした唄い口が実にいい感じの女性ヴォーカルだ。Yoさん、この魅惑盤の1st、3rdをさっそく入手しており、この2種を掛けてみる。

1st盤~
エセルは黒人歌手としては「あっさり系」だと思うが、白人歌手に比べれば粘る感じももちろんあると思うし、この1stでは、肉厚な声に適度なねっとり感がとてもいい。jubileeレーベルってこんなにいい音だったのか(笑)
Jgm5024_j
Jgm5024_l_2そうして、3rd盤~
あれ?声がだいぶさっぱりしたぞ・・・肉厚というより爽やかな感じになり、なんだかエセルさんが10才くらい若くなったように聞こえる。こちらの方がもう少し美人になったような気もしないではない(笑)Yoさん、これも悪くないよ~と嬉しそう。
僕の好みは、厚めの1st盤だったが、2nd盤を聴いた後だと、そういえば、1stの方は、声がちょっと「厚め」になりすぎているかもしれない・・・爽やかな感じの方がエセルの本当の声質に近いかもしれない~とも思えてくる。「唄」の好きな方には、声の感じのちょっとした違い~というのは大事なことだろう。

Howard_mcghee_stereo_001_2 <ハワード・マギー/Dusty Blue>bethlehem盤

この渋いレコードをなぜか、recooyajiさんとdenpouさんが、揃って持ってきていた。そしてうまい具合に、reocoyjさんはモノラル盤、denpouさんは・・・ステレオ盤青ラベル。
こりゃちょうどいい。さっそく聴き比べだ(笑)

Howard_mcghee_stereo_003ステレオ盤~うん、いい!パリッと輝く感じがあってメリハリの効いた音だ。ステレオになっていてもどの楽器にも音圧感・・・というか実在感があり、薄い感じはしない、とてもいいステレオ録音だと思う。ピアノのタッチの強弱感もいい。ピアノはトミー・フラナガンだ。
モノラル盤~こちらもいい。ベースの音がぐんと厚くなって、管部隊全体の重心が下がってくる。分厚い感じは・・・やはりモノラルの方がよく出ている。

Howard_mcghee_stereo_002_2  両方ともとてもいいことは間違いないのだが、僕の好みでは、やはり「ステレオ」の方が聴いていて楽しかった。マギーのトランペットに加えて管が2人(テナー~ローランド・アレキサンダー、バリトン~ペッパー・アダムス)入っているので、テーマの合わせ部分で皆がパア~ッと吹く時の音圧感と拡がり・・・これが気持ちいい(笑)そんな場面では、やはりステレオ盤の方に軍配が上がるようだ。

ところで、ベツレヘムのステレオ録音というと・・・ちょっと意外な感じがする。ちょっと遅めにステレオ録音を開始したのかもしれない。そういえば僕もあの有名な「レフト・アローン」を聴いた時に、それが「ステレオ録音」だったことに驚いたことがある。
僕の聴いた「レフト・アローン」は日本コロムビアのベツレヘム・アンソロジーものだったが、それでも元録音の素性の良さを充分に窺える音の良さだった。「ベツレヘムのステレオ録音」~これは侮れないね・・・と皆の意見が一致した。これからは「青ラベルのベツレヘム」にも要注意だ(笑)
それにしてもこんないいレコードを僕はまだ未入手だったとは・・・。
このレコードの音がいい~と感じたのは、以前にrecooyajiさん宅でモノラル盤を聴かせてもらった時だ。特に感じたのはベースの音がいいことだ。そのベース弾きは・・・Ronald Carterと表記されていた。ロナルドで・・・カーター? うん、ロン・カーターのことじゃないか!そういえば、時々、ロン・カーターっぽいフレーズが出てくる。しかし・・・そのベース音の重さ・強さは、僕らが知っているロン・カーターとはだいぶ違う。録音年は1961年6月。ロン・カーターの録音としてはかなりの初期だと思う。
この「ロン・カーター談義」絡みで、僕の感覚で言うと・・・というのは・・・「ロン・カーターの太い音」と言っても、やはりそれはミルト・ヒントンやジョージ・デュビュビエ、それからウイルバー・ウエアというタイプとは違うはずだ(そう捉えている)そんな「僕のロン・カーター観」でこのベツレヘム盤両者を比べると・・・ステレオ盤で聴かれるベース音がちょうどいい重さなのだ。

Rlp420_j そしてこのことは、このちょっと後に聴いたジョニー・グリフィンの「ケリー・ダンサーズ」ステレオ盤/モノラル盤~ベース奏者はもちろんロン・カーター~の聴き比べでも同じことが言えるのだ。
このグリフィン盤(録音は1962年1月)でのロン・カーターもとてもいい。ベースをピチカットする際の強さ・速さがあるようで、一音一音に「切れ」がある(というのは、後年のロン・カーターは、そのピチカットに切れがないというか、ちょっともったりした感じがあり、Rlp9420_lその結果、ビート感も緩い感じになっているように思うので)
そしてKelly Dancersのステレオ盤/モノラル盤~この比較でもやはり一般に音が太くなるモノラル盤では、カーターのベース音がたくましくなりすぎて、僕の思うロン・カーターのベース音というのは・・・すっきりしたそれでも充分に重くビートの効いたステレオ盤の方になるのだ。
もっともそれは、僕の思う「カーターのベース音イメージ」Rlp420_l_2であって・・・出てくるサウンドだけに興味を移すのなら、あくまで「強く重く」出てくるモノラル盤でのロン・カーターを楽しむ・・・というのも全く可能なわけで(笑)その辺のことを判った上で・・・recooyajiさんがズバリこう言った。
「(ロン・カーターの本来の音がどうであれ)そんなの僕には関係ない(笑)」
うん、そういう聴き方もありだったか(笑) でも・・・それが「レコード」なんだ。レコードの楽しみ方はまったく各人の自由なのだ。

ついでにもう1枚~初期ロン・カーターもので、いい感じのベース音が聴かれるレコードがある。
ベニー・ゴルソンのFree(cadet)である。ビクター国内盤(ステレオ)で聴いているが、これも元録音の素性の良さを感じる。そしたらこのCadet盤~録音はVan Gelderであった(笑)Freeの方は1962年12月とだいぶ進んではいる。ロン・カーターがマイルスのバンドに入ったのは1963年3月(seven steps to heaven)頃かな。ちなみに、この「Freeのピアノもトミー・フラナガン。まったく・・・ちょっといいな・・・と思うとたいていピアノはトミフラなのである。凄いピアニストだな。
私見では、ロン・カーターが一番いいのはマイルスバンドの初期くらいまでだと思う。レコードに残ったマイルスのcolumbia音源はどれもベース音が小さめで、多少は録音の関係もあるかと思うが、やはりカーター自身が弦を弾き込む時の一音一音そのものが(初期に比べれば)やや弱めになっているかと思う。だからこそ・・・僕はマイルス以前の初期ロン・カーターを好むのかもしれない。

Mgn1001_flat_j <ベン・ウエブスターのtenderly4種>
(Cunsummate~1stと2nd、Tenor Saxes、Our Best)
これはある意味、驚愕の聴き比べだった!
tenderlyを収録してあるのは、まずオリジナルのConsummate。Mgn1001_flat_lそれからオムニバスであるTenor Saxes~この2種については2年ほど前だったか、この夢レコでも記事にしたことがある。
今回、Yoさんが再びこの題材を持ち出したのには、もちろん正当な理由(笑)がある。Yoさんはこのレコード・・・1st、2nd、Tenor Saxesの3種に加えて、もうひとつのオムニバス・・・とも言うべき、Norgranレーベルのアンソロジー的な Our Best というLPを入手していて、そこにも入っていたtenderlyを聴いたら、それも相当にいい音で・・・というわけで、じゃあそのOur Bestバージョンも含めて、ついでにConsummateの1stと2ndもあるので、こりゃあ、ウエブスターの快演 tenderlyの4種の聴き比べだあ!と相成りました(笑)
Mgn1001_flat_2 
Mgn1001_grooveguard《1st盤と2nd盤~これは微妙な違い。表ジャケも裏ジャケも全く同じ。黄色・大トランペットのセンターラベルも同じ。しかし・・・盤の重さが違った。やはり1stの方がいくらか重かった。 そして1stはフラットディスク盤(写真上)、2ndはグルーヴガード盤(写真下)ということらしい。これはYoさんの素晴らしい発見だ。

Yoさん・・・ジャケットから出した4枚の盤をなにやら弄(まさぐ)っている。そして「ウエブスターのtenderly・・・ちょっとこの4枚で聴いてみて」というわけで、そうか・・・4種のどの盤のバージョンは事前に知らせずに、聴いた音の感じで順序(あくまで、個人の好みの幅の中での順序ですが)をつけてもらおう~という魂胆だな(笑)
僕はTenor Saxesだけ持っていて、その「音の感じ」を好きだったので、この2番目はすぐに「良い!」と感じた。 Mgn1034_j_2
こうした「聴き比べ」では1曲全部を聴くと長いので、まあ「音の質感」だけを聞き比べたい場合は、たいていは曲の途中で針を上げる。せっかちな僕はその方がいい(笑)同じ曲の同じ部分を(例えばサックスが高い方のフレーズで「プア~ッ」と音を伸ばした場面とか、ドラム奏者がシンバルを「シャア~ン」と入れた場面とか・・・そんな特徴的な一場面を覚えておいて・・・そこを比較するのが、僕の「聴き比べ」のやり方だ。konkenさんとはいろんな話しをするのだが、彼などは「聴き比べ」であっても、その1曲を通して聴いてみて全体からの印象~ということで比較してみたいようだ。そういう「全体」からの印象比較も、その作品(1曲)をちゃんと味わいたい・・・という意味では、正しいかもしれない。

そんな具合に4つのtenderlyを聴いてみて・・・この時点では、どれがどの盤のものかは明かされてない。Yoさんはこういう仕掛けが好きなのだ(笑)(3の盤質がやや悪かったことは判断材料には入れずに聴いても)1と3が同質、2と4が同質と聴いた。大雑把に言うと、1と3は「丸みを帯びたマイルドな味わいのベン・ウエブスター」であり、2と4は、「もう少しキリッとした、(1と3に比べれば)やや硬質のウエブスター」になっていたように思う。
Mgn1021_j実際、こうして続けて比べて聴いてみると・・・その質感というものは、かなり違うのだ。そうして、僕の好みは(このウエブスターのtenderlyについての)全体に抜けのいい、2と4のバージョンだった。Mgn1021_l
驚いたのは・・・4番目に流れたその音の鮮度感の高さである。ピアノのイントロからして、はっきりと「クリアー」な気配が漂う。大げさでなく「はっ!」とした。2番を「良い」と感じたその質感が増して、サックスの音色 にもう少し、深みと輝かしさが加わってきたようなのだ。

《かけた順番は・・・Consummate2nd~Tenor Saxes~Consummate1st~Our Bestであった》
「どれが好きですか?」というYoさんの問いに、僕は「ダントツに4番目」と答えるしかない。後は・・・各々の好みである。そうしてレコードの番号順から判断すると、発売順は、Consummate~Our Best~Tenor Saxesなので、やはり後者2つは、何らかのマスタリングが施されているはずだが、そのマスタリングが、絶妙な具合に出来上がっている~というようなことを仰る。ただそれは「良い・悪い」レベルの話しではなく・・・単に「違いがある」ということであって、Yoさんもその辺りは熟知しており、どちらが良いというような決め付けはもちろんしない。
denpouさんは「僕の(にとっての)ウエブスターは・・・マイルドな方かな・・・」とつぶやく。それも充分に判る・・・最後は好みなのだ。

こうした「聴き比べ」自体・・・あまり興味がない方も多いかと思う。冒頭に言い訳めいたことも書きましたが、まあこの辺は、bassclefとYoさんの病気ということでお許しください(笑)

この日の集まり・・・もちろん聴き比べばかりで10時間過ごしたわけじゃない(笑) いろいろ聴いたレコードのことはまた別の機会にお知らせしたい。
帰り際・・・マリガンmeetsモンクのジャケットが目に入った。3種(モノラル青(2人の写真:有り/無し、ステレオ黒)が並んでいる。
「なんでこんなに?」konkenさんが尋ねると・・・Yoさん、ひと言「このレコード、好きだから」(笑)

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2009年5月 5日 (火)

<ジャズ雑感 第28回> ジェリー・マリガンという人 

相手の個性を際立たせ、自らも生かすカウンターの名手。

007その人のレコードを集めよう!と強く意識したわけでもないのに、知らぬ間にレコードが増えてしまう・・・そんなタイプのミュージシャンがいるかと思う。僕の場合だと、バド・シャンクやポール・デスモンド、それから、ジェリー・マリガン・・・マリガンこそ正にそういうタイプのミュージシャンだった。マリガンは、バリトンサックス奏者としては(例えば、ハリー・カーネイやペッパー・アダムスに比べれば)さらっとしたライトな味わいの音色で、さらっとしたフレーズを淡々と吹く。どちらかというと強い個性のジャズメンを好んで聴いてきた僕は、だから、マリガンのそういう淡白な持ち味に対し、なかなか自覚的に「惹かれる」というところまでは至らなかったようだ。しかし・・・集まるレコードの数というのは正直なものだ(笑)pacific,verve,emarcy,limelight もちろん全部ではないが、たいていのタイトルが集まっていたのだ。ある時、それを自覚した・・・オレはマリガンが好きなのかな?
僕のマリガン聴き込み(というほどのことはないのだが)は、もちろんチェット・ベイカーとの初期カルテットから始まり、次にマリガンのビッグバンド~コンサート・ジャズ・バンドが好きになった。そのConcert Jazz BandのVerveの諸作をひと通り聴いてしまい、次にlimelight盤もいくつかを聴いてみると、そこにはそれほどいいと感じるものがなく、その辺りまでくると・・・マリガン本人の個性というもの自体には、実はそれほど惹かれてないことに気が付いた。初期カルテットもよく聴いたが、ほとんどチェットの方を聴いていたのだ。そこで再び自問自答・・・オレはマリガンという人をホントに好きなのかな?(笑)
そう考えてみると・・・これこそがマリガンだあ!てな具合にバリサク奏者としてマリガンの持ち味を感じさせてくれるようなレコードが・・・作品数が多い割には案外に少ない。006
マリガンのバリサク・・・ああ、ひとつ、いいのがあったぞ。それは、強烈さとは無縁の、しかし不思議と何度でも聴きたくなる、穏やかな味わいのレコード・・・Jeru(columbia)だ。
このレコードは、一発で気に入った。一発というのは、本当にA面の最初の出だしから・・・という意味である。
A面1曲目は capriciousというボサノヴァ風の曲なのだが、これがもう・・・気持ちいいのである(笑)何がいいって・・・そのバリトンのライトな音色、ドラムスのデイブ・ベイリーの抑えた叩き方、トミー・フラナガンのピアノもジェントルでありながらピシッとリズムの効いたコンピング(和音の押え方)だ・・・そうしたもの全てが一体となって誠に「趣味のいい」サウンドを造り上げているのだ。考えてみれば、もともと「音」に理屈はないわけで、音楽というのは「音」そのものに快感がある・・・とも言えるわけで・・・だから「いいサウンド」を生み出すミュージシャン、あるいはバンドというものは、それだけでもう素晴らしいわけである。
それにしても、マリガンさん、なんでこういう作品~ワンホーンでじわじわ吹き込むような持ち味~をもう少し造らなかったのかな?
てなこと考えながら、ジャケット裏を見て驚いたのだが・・・produced by Jazztime Productionとなっており、Executive ProducerがなんとDave Baileyとなっているではないか!う~ん・・・ドラマーがプロデュースする~というのも珍しいだろうし、でもやっぱりミュージシャンでもあり、そうして趣味のいい人がプロデュースすると、こういう趣味のいいレコードができるのだろうなあ。008
もう1枚は・・・Gerry Mulligan Quartet(columbia)
このレコード、僕はCBSソニーから出た1300円盤で聴いていたのだが、オリジナル盤というものに惹かれるようになってから、米columbiaの<6ツ目CSステレオ盤>が好きになったので手に入れた。こちらも理屈ぬき・・・バンドのサウンドが心地よいのだ。columbiaレーベルのマリガン作品は少ないが、その数少ない2枚ともに僕が惹かれたのは・・・おそらく偶然ではない。
この2枚とも・・・相方がアート・ファーマーなのである。私見では、マリガンとファーマーの「音色のブレンド具合」がとてもいいのである(というか、それが僕の好みということなのだろう) マリガンのいい意味での軽さとファーマーの潤いのある音色が混じると、バンド全体のサウンドがしっとりした感じになるというか・・・いい感じの温かみが生まれるのだ。ついでに言うと、そのしっとり感と米columbiaレーベルの温かみのある音質~こちらの相性がとてもいいように思う。
この2枚に、もう1枚~night lights(philips)だ。これも素晴らしい。こちらには名手~ジム・ホールが入った分、またちょっと違う味わいがあるが、マリガンが「バンド全体でひとつのムードを造り出している」という点では似た質感の作品だと思う。これらの嬉しい例外の他には・・・僕にとって「マリガンの愛聴盤」と言えるものが、長いこと、なかったように思う。

余談だが、僕が好みでないブレンドがある。マリガンとはうんと古くから共演しているボブ・ブルックマイヤー・・・僕は彼が苦手なのである。それはたぶん・・・ブルックマイヤーが悪いわけではない(笑)あの楽器~ヴァルブ・トロンボーンが悪いのである。あのモゴモゴとした音色が・・・本能的にダメなのである。器楽の味わいとしての話しになるが、トロンボーンの「抜けの良さ」というのは本当に気持ちいい!それに比べ、あのヴァルブ・トロンボーン(トランペットと同じように3本のピストンで音程を造る型のトロンボーン)の音色というのは、宿命的に「抜け」が悪いように感じる。

しかし、このところ・・・マリガンのいくつかのレコード~
Gerry Mulligan Meets Johnny Hodges(Verve MGV-8367)
Gerry Mulligan Meets Ben Webster(Verve MGV-8343)
Getz Meets Mulligan in HI-FI(Verve MGV-8249)
を聴くに及んで、マリガンという人に対する僕の感じ方が、ちょっとづつ変わってきた。
ちょっと前の<夢レコ~クリフォード・ブラウン>で「音色そのものを味わいたい」というフレーズを記したが、マリガンの場合も、少ない編成でじっくりとバリトンサックスを吹くマリガンの音色・・・(僕にとっては)やはりこれが気持ちいいのである。
この3枚・・・言わばVerveのGerry Mulligan Meetsシリーズである。この1~2年で、これら3作を入手して聴いてみると・・・どれもが「愛聴盤」になってしまったのだ(笑)
ホッジス、ウエブスター、ゲッツ・・・それぞれに強烈な個性を持ったサックス奏者とマリガンがmeetsする~邂逅というのも大げさだし、シンプルに共演するという感じだろう~というノーマン・グランツの企画ものである。実は、僕はこの「meetsもの」を案外、低く見ていた。JATPでも後期にはマンネリ傾向があったと思うが、要するに大物同士を対決させてそのブロウ合戦を楽しむ・・・といういかにもお手軽な思いつきという感じで、まあだからこの手のレコードまで手が伸びる順番がこんなに遅くなったのだが(笑)

0022~3年前だったか、ホッジス盤を入手して聴いてみた。これが・・・対決とは程遠い実に和(なご)やかなムード溢れるいいセッションだったのだ。僕はこのレコードで、改めてジョニー・ホッジスという人の「芸」の細やかさを感じ取ることができた。そうしてその芸を引き出したのは・・・間違いなくジェリー・マリガンの絶妙な合わせなのである。さきほど「音色のブレンド」ということを書いたが、そのブレンドの具合の良さといったら・・・これはもう絶品なのである。
マリガンという人はアレンジャー出身ということもあるだろうが、いつも「サウンド全体」を意識しているように見える。というのは・・・例えば、このレコードA面1曲目(bunny)のテーマの部分~マリガンの鳴らすバリサク(バリトン・サックス)の音には、無自覚に思うがまま吹くというような気配はなく、その時の相手のフレーズ、その音量、その盛り上げ具合・・・そんな相手が造ろうとしている「流れ」に応じて、自分が吹くバリサクの「鳴り具合」をコントロールしているような感じを受ける。マリガンという人・・・だいたいがおそらく3~4割ほどの抑え目の音量で吹いているように聞こえる。それは淡々として迫力不足とも取れるのだが、こういうホッジスのような「強烈個性」の持ち主と相対する場合には、それが逆に効果的に映るのだ。それは相手を生かしつつ、自らも生かす~という、不思議だがそういう感じなのだ。
Meets Hodgesには、いいバラードが入っている。what the rushという曲なのだが、これはもちろんホッジスの見せ場として選んだようで、だから、この曲では、マリガンはただの一音も吹かない。そういうセンスも素晴らしいじゃないか。
僕が思うホッジスの名人芸というのは、メロディの音程のごく微妙なピッチを(音程~この場合、半音のまた半分くらいの量)ベンドさせるような技~たぶん絶妙なリップコントロール(唇の締め具合)のことなのだが、全体には静謐(せいひつ)で淡々としたこのバラードの中で、その決め技が見事な隠し味になっているように思う。
この地味なバラードの作者が、なんとジェリー・マリガン、その人なのである!
(クレジットによると、Mulligan-Holidayとなっているので、ひょっとしたら、ビリー・ホリデーも唄っているのかもしれない)*追記~この「ホリデー」については、NOTさんから正確な情報を頂きました。NOTさんの5/6付コメントをご覧ください)

004 そして、ベン・ウエブスター盤~ウエブスターの力感溢れる濃厚なテナーの音色。これは・・・濃い!(笑)
それはまるで太いチューブから練り出されてくる濃厚な色の絵の具のようでもあり、それは正しく「強烈な個性」と言っていいかと思う。そのウエブスターとマリガンの対比が、これまた実にいい按配なのだ!
スタンダード曲ではchelsea bridgeとsunday。マリガンという人は、バラードを大好きなようで、ホッジス盤と同じように、こちらのウエブスター盤にも自作バラードを忍び込ませている。tell me whenという曲だ。これがまたなかなかいいメロディで、ウエブスターがそれを味わい深く吹いている。
マリガンはウエブスターの吹くメロディに、時々、優しく寄り添うように合わせフレーズを入れてくる。それは伴奏としてのフレーズであり、決して自らを主張してくるような感じではない。この1曲全体を仕上げたい・・・というマリガンの気持ちのこもった「合わせ」のように思えるのだ。
chelsea bridgeでは、ウエブスターの吹くテーマのバックで、はっきりと「バリトンサックスで伴奏」している(笑)その伴奏のやり方がとてもユニークな吹き方で~ピアノでいうトリルのように高い音と低い音を素早く交互に繰り返す技~それはユニークなだけでなく、見事に効果的なのだ。こんな技を静かなバラードのバックにさりげなく差し込んでくるマリガンという人も、そうとうな曲者なんだろうな(笑)

003 それからゲッツ盤~実はこの3枚の中では最も面白くない・・・と思っている。ゲッツのテナーとマリガンのバリサク・・・一見、最も相性が良さそうじゃないか。でも・・・「音色のブレンド」(もちろん僕の好みの)という観点から見ると・・・案外に面白くないのだ。私見だが、ゲッツとマリガンは~楽器は違うしフレーズも違うのだが~音色の質感が・・・よく似ているのだ。
一度、口の中に溜めておいた息を小出しにするような吹き方(と推測している)で、音色がちょっとくぐもった感じや、サブトーンの割合・かすれ具合などの質感が近いように思う。2人の質感が似ているためか・・・ホッジス、ウエブスターとの共演盤のような「コントラストの妙」が、やや弱いように思える。

Mg_v8348_j_2《追記1~みなさんもコメントで触れてましたが、この「ゲッツとマリガン」A面の3曲~
let's fall in love
anything goes
too close to comfort

は「ゲッツ=バリトン、マリガン=テナー」と、お互いの本職の楽器を入れ替えて吹いてます。そうしてYoさんがコメントで紹介してくれた Stan Getz And Gerry Mulligan, Stan Getz And The Oscar Peterson TrioGetz_mulligan_2tunes_2(MGV8348) というレコード・・・そちらには本職楽器での2曲~
Scrapple From The Apple
I Didn't Know What Time It Was
が収録されているのに、ジャケット写真は「楽器入れ替え」とのこと。ゲッツの表情も面白いので、ご覧ください。 そして、この8348番に収録の2曲、やはり本職だけあって出来がいい。(この2枚の写真提供~Yoさん)》

《追記2~この8249番:Getz Meets Mulligan~すでにNOTさんがコメント(5/7付け)してくれたように、2種のジャケットがあります。Mulligan_meets_getz_2nd
写真自体は同じですが、「1色」と「2色」の2種です。参考に「2色刷りのジャケット」写真も載せておきます。(以下は「2色ジャケ」の方が再発としての話し)
なぜタイトルを「マリガン主役」のMulligan Meets Getzに変えたのか? 
なぜジャケットのデザインを変えたのか?
この辺りのことについては、マリガン好きであるYoさんも大いに興味を持ったようだ。楽器入れ替えの出来映えへの評価とか、また入れ替えテイクがA面3曲全部ではなく、too close to comfortだけかも?という説もあるらしく・・・この「ゲッツmeetsマリガン」にはなかなか謎が多い(笑)楽器入れ替えの真実については~それぞれがA面を聴き込んでみての連日(笑)のメールやりとりの結果・・・2人とも「やっぱりA面の3曲とも入れ替えてるね」それから、その出来映えについても「やっぱり本職でないとアカンね(笑)」という至極当たり前の結論に落ち着きました。楽器入れ替え~その聴き分けのポイントとして・・・Yoさんはまず「バリトン」に注目したようだ。Yoさんは、おそらくマリガンを聴き込んでいるので、マリガン独特のあの「柔らかさ」とは違う何かを鋭く感じ取ったのだろう。
《バリトンでマリガンならバフッと柔らかく出るところがブッと強めに出たりするのでゲッツかな》
僕の場合は、マリガンをそれほど聴き込んでいないのと、バリトンという楽器の特徴ある音色そのものがどうやら脳髄に強く印象付けられてしまっているようなので、「バリトン」という楽器での音色の違いにはなかなか注目が行かなかった。それでもマリガンの「バフッと柔らかく」という感じはよく判るので、この場合、Yoさんが言うところの「ブッと強め」というのは、たぶんマイナス要素だろう。
その辺りを意識してバリトンのソロを聴いてみると・・・なるほど、Yoさんが言うのはこういうことかな・・・と思える場面がいくつかあった。《Yoさん仰るように「バリトンの一番低い方の音~これが・・・さすがにゲッツでも鳴ってない(笑) ブワッ!と吹く時、ちょっと割れたような、まあどちらかというとガサツな汚い音になってるみたいですね。要は「鳴ってない」のかな》
そんなわけで、僕の方は「テナー」に注目した方が判りやすい。A面3曲のテナーソロを聴くと・・・音色自体もちょっと堅めで詰まったような感じだし、高音域のフレーズではピッチ(音程)がけっこう悪いように聞こえる。そして決定的なのは・・・テナーのソロにイマひとつ冴えがないことだ。こんなフレーズに閃きのないテナーが・・・ゲッツのわけがない(笑)
そんなわけで、ここしばらく、Yoさんはマリガンをいろいろ聴いたようだ。そうしてそれは、僕の方も同様である(笑)
ジャケットのデザイン・タイトル変更については・・・以下、もちろん推測です。この3枚の番号はこうなっている。
Gerry Mulligan Meets Johnny Hodges(Verve MGV-8367)
Gerry Mulligan Meets Ben Webster(Verve MGV-8343)
Getz Meets Mulligan in HI-FI(Verve MGV-8249)
つまり発売は・・・ゲッツ~ウエブスター~ホッジスの順なので・・・そこから考えると、最初のゲッツ盤の時点では、まだ「マリガン主役のmeetsシリーズ」という概念はなくて、その後の2枚がYoさんも仰るように出来もよかったので、(ホッジス盤の後)、ゲッツ盤を再発する折に・・・グランツが「マリガンmeets シリーズ」として考えて、ジャケ・タイトルを変更した~という流れかな、と思います。
グランツがそう考え直したのは・・・・NOTさんも?付きでコメントされたように、マリガンお得意のクレームがあったのかもしれません(笑) いや、それよりもグランツがマリガンに気を使いつつ、「Mulligan meets シリーズ」にした方が、より売れる・・・と判断したのかな》


コントラスト・・・という観点で実はもう1枚、興味深いレコードがある。ご存知・・・Mulligan Meets Monk(riverside)である。モンクのこととなると・・黙っちゃおれない僕だけど、今回は「バリトンと他のサックス奏者との音色」がテーマでもあるので・・・そのモンク盤のことはまたいずれ取り上げたいと思います(笑)
ウエブスター盤の場面で「合わせフレーズ」という言葉を使ったわけだが、この3枚のMeetsシリーズを聴いてからは、マリガンというと・・・反射的に「カウンター」という言葉が浮かんでくるようになってしまった。この言葉はボクシングのカウンターと同じ語源のはずだが、ジャズの世界では、他の誰かが吹く主メロディに絡むように別のメロディ(というかフレーズ)を吹く場面のことを「カウンター的に」とか「対位法的に」という意味で使っていると思う。
そうして、「カウンター」といえば「あしたのジョー」だ(笑) 相手がパンチ(例えば左ストレート)を繰り出してきたその瞬間、こちらは右ストレートを相手の左ストレートにかぶせるように打ち込む必殺のパンチである。
ただし・・・マリガンの「カウンター」は、ボクシングのカウンターとは意味(効果)が決定的に違う。ボクシングの「カウンター」は相手を倒すためのものだが、マリガンの繰り出すカウンター(的メロディ)は、相手を生かすためのものなのである!
それは相手を生かしつつ、自らも生かす~という「優しいカウンター」・・・なにかしら東洋の哲学のような雰囲気さえ漂ってくるではないか(笑)
マリガンという人の味わい・・・それは、和紙に沁み込んだ濃い絵の具が、自然にじわ~っと拡がってくるような、そんな優しい表れ方のようでもあり・・・そうしてそれこそが、マリガンという人の真の個性なのかもしれない。

ジャズはまだまだ面白い。

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2008年6月 4日 (水)

<ジャズ回想 第14回>4回目の白馬は雨降りだった。

2008年5月~杜の会in白馬

毎年、この時期になると、ひとつ楽しみなことがある。長野県白馬で行われるニーノニーノさん主催の「杜の会in白馬」である。2005年の第1回から数えてもう4回目だ。今年は、関西からのYoさん、Musashi no papaさんに、愛知・静岡組の~recooyajiさん、konkenさん、マント・ケヌーマーさん、そして僕:bassclef~6人が合流してのクルマ旅となった。1369astaire
5月24日(土)集合場所の伊勢湾自動車道「刈谷ハイウエー・オアシス」にて、うまく合流できた我々6名は「やあやあ」と挨拶を交わす。papaさんとは3月の藤井寺以来だが、recooyajiさんとマントさんは、papaさんと初対面となる。「杜」で知り合ったお仲間が初対面する時・・・ちょっとおもしろい現象が起きる。「~です」と事前に聞いていたはずの名字を言いあっても、なかなかピンとこないのだ。それで「recooyajiです」と「杜」でのハンドルネイムを発声すると・・・「ああっ、recooyajiさんですかあ!」と、描いていたその人のイメージが、今、目の前にいる生身の人間と劇的にマッチする~という仕組みなのだ(笑) そういえば、2005年に初めて「洗濯船」1Fのあの食堂に入って行った時~すでにほとんどのメンバーが集合しており談笑していた~僕が「bassclefです」と言うなり、皆さん「ああ~っ」と反応してくれたなあ。そして全員(ほとんどの方が初対面)が名字+ハンドルネイムで自己紹介をすると、不思議なほどに打ち解けてしまうのだった。

さて、なごやかになった6名に気合が入る。「いざ、白馬へ!」
最初の運転はpapaさんだ。昨年、僕が失敗した土岐ジャンクションでの<伊勢湾自動車道~中央自動車道>も巧く乗り継ぎ(あたりまえか:笑)中津川の長いトンネルも抜けていく。こういう長いトンネルは6人でワイワイやってると早いけど、1人だと本当に長く感じる。しかもあの「微妙に暗めのオレンジ色」あれがいけない。あんな風にトロ~ンとした色合いでは・・・どうしたって眠くなるじゃないか(笑) Yoさんのワゴン車も3500ccでパワーに余裕があるのだが、papaさんは運転も相当に巧いようで、緩やかに続く登りカーブでもスムースな走りだ。そういえば、さっきYoさんが「papaさんはA級ライセンスを~」と言ってたな。僕は最後列でkonkenさんと隣合わせだ。ちょっと新しめのテナーの音が流れている。「これ、誰だろう?」「判らん」「わりと最近の録音だろうね」てなジャズ雑談。なにしろ、2人とも新しい録音のジャズをほとんど聴いてないのでよく判らないのだ(笑) スピーカーが後列にもあり、けっこう大きめな音量だったので、ちょっとだけヴォリュームを下げてもらった。その時のpapaさんとYoさんの反応で~音を下げろということは、あいつら、マレイを気に入ってないな・・・というような会話に違いない(笑)~このテナーが「デビッド・マレイ」だと判った(笑)そういえば、マレイについては・・・3月のYoさん宅でも、papaさんお勧めの2~3タイトルを聴いたばかりだ(笑)
お昼前までになるべく行けるところまで行っておきましょう~という作戦にしたので、ほとんど休憩を取らない。その内、マレイのCDが一巡したらしく同じ曲が流れるので「そろそろ替えましょう」などと最前列助手席のYoさんにお願いする。後はバルネなど聴きながら・・・あれ、もう松本近くまで来ているじゃないか。朝の集合が早かったこともあるので、梓川SAでちょっと早めのお昼休憩。
次の運転はマントさん。マントさん、仁科三湖辺りのクネクネ道でもけっこう飛ばす。クルマがよく走るので嬉しいのだろう。 マントさんに後から聞くと、あれでも抑え目に走ったと言うところが、ちょっと怖い(笑) だんだんと曇ってきているようで、なんとかガマンしていたような雨が、ついにパラパラと降り始めた。この辺りまで来ると、左側には槍ヶ岳とかの景色が素晴らしく広がるはずなのだが、そんな山々の姿もほとんど見えなくなってしまう。まあいいか・・・どうせ我々は山歩きをしにきたわけではない。
そんなこんなで、2時過ぎには「洗濯船」に到着。幹事役のSPUさんとパラゴンさんが笑顔で出迎えてくれた。会が始まる前に、皆さんのレコードを見せてもらうのも楽しみのひとつだ。僕はpapaさんに声をかけて、papaさんコレクションから見せていただくことにした。papaさん、今回はパーカー10インチを遠慮して(笑)他の貴重盤をたくさん持ってきてくれた。食堂のテーブルにずら~っと並べる。パラゴンさんがヴォーカル好きということで、ヴォーカルの珍しい盤をいくつか~キティ・ホワイトの見たことのない盤(emarcy盤ではない) ピンキーのvantage盤など・・・挙げていけばキリがない。あの辺りだと・・・ヴォーカル好きが見たらマイってしまうだろうな。僕はやはりインスト中心なので、ペッパーのdiscovery 10インチ盤2点にどうしても目がいってしまう(笑) これは・・・聴いてみたい! 食事の後の地下JBLルームでの第3部の時「ぜひ」とお願いした。
そうこうしてると、ワガママおやじさん、Dukeさん、千葉xyzさんも到着した。千葉xyzさんとpapaさんは今回の白馬が初参加だ。「洗濯船」オーナーのMさんも加えて、さあ・・・これで、今回の参加者12名が揃ったじゃないか。御大Dukeさんが一言~「ちょっと早いですが揃ったので始めましょうか」外の雨もだいぶ強くなってきたようだが・・・今から、ひたすらレコード音楽に耳を傾ける我々には関係ないか(笑)

第1部「トーク・タイム」(14:45~17:15)地下JBLルーム
ワガママおやじさんと不肖bassclefのトーク~各1時間づつたっぷりと語らせていただきました(笑) 昨年の「白馬:杜の会」からこの新企画が始まった。事前に指名された方が、60分ほど時間を頂いて、自分の選曲とコメントを皆さんに聴いていただくのである。テーマは全くの自由。昨年の白馬では、洗濯船MさんとYoさん。秋の杜では、パラゴンさん、recooyajiさん、Gamaさんが、この「トークタイム」を通して、自己の音楽原点的心情を吐露したのだった。その秋の杜の宴会の時、パラゴンさんから「2008年白馬トークタイム」のご指名を受けてしまったのだ。
好きなレコード(演奏)を掛ければいいのだよ~と思ってはみても、いざ「お前が好きなようにやれ」と言われると・・・案外、迷うものなのである。それに、あまりマニアックに過ぎるのもなあ・・・などとあれこれ悩んだのだが、結局はジャズジャイアントの隠れた名演~みたいな線でいこうと決めた。白馬直前のワガママおやじさんの「杜」への書き込みでも、同じような迷いがあるらしいことが判った。自分の好みで選曲できる「トーク」は楽しいけど、けっこう大変なのである(笑)

2008_0116s90000013_3 <ワガママおやじさんのトーク>
S&Gの「サウンド・オブ・サイレンス」を巡っての話し~
ポールサイモンが独りで吹き込んだSimon Before Garfunkelというアルバム。確かアメリカでは発売されずに、日本だけで発売許可されたというレコードである。このSimon Before Garfunkelは、僕にとっても思い出の1枚だ。中3の時だったか・・・このCBSソニーのLPを入手して、それはもう聴きまくったものだ。この「サウンド~」ギターのアルペジオで始まるイントロこそ、おなじみのパターンなのだが、唄の出足~hello darkness, my old friend~ポールは、怒ったようなぶっきらぼうな調子で唄い始める。ちょっとボブ・ディラン的というか・・・感情を抑えたようなポールの静かな気迫を感じる唄い出しだ。このレコードでは全曲、伴奏は自分の弾くギターだけ。しかし、そのシンプルさが、かえってポールの音楽(S&Gではなく)の骨格を見事に浮き彫りにしたのかもしれない。唄いながら、ギターを叩き、足を踏んでリズムを取るポール。この「サウンド・オブ・サイレンス」・・・抑えていた彼の内に秘められたいろんな感情がモロに溢れ出てしまったような、素晴らしい唄とギターであった。この「独りS&G」を初めて聴いた方も多いようだったが、誰もが感銘を受けたようだった。このPaul Simon Song Bookについての、ワガママおやじさんの記事はこちら、http://ameblo.jp/d58es/day-20080116.html それと、mono-monoさんの記事http://mono-mono.jugem.jp/?eid=195
67camperさんの記事http://blog.goo.ne.jp/67camper/e/0dfa2c93fde73f44354648646df7d583もおもしろいです。

おやじさんのトーク後半は「後期の2008_0524s90000013_2リー・モーガン」特集だ。1965年のCornbreadから、1968年のCaramba、1971年のBobby Humphrey(女性フルート奏者)への客演、それから映画「真夜中のカウボーイ」のサントラEPなどをかけてくれた。「真夜中~」これ、ハーモニカのトゥーツ・シールマンがメロディを吹いていて、ちょっとムード歌謡っぽいモーガンのトランペットが軽くアドリブする~という珍品。僕はもちろん初めて耳にした。他の4000番台のLPも正直なところ、全て初めて聴いたものばかりだ。僕はどうしても「ハードバップ」的なサウンドが好きなので、1965年の「コーン・ブレッド」での、ちょっと大人しい・・・というより弱々しい、しかし妙に存在感のあるテナーの音色が気に入った。そのテナー奏者は・・・ハンク・モブレイなのであった!
*このワガママおやじさんのトーク内容については、「こだわりの杜」へのご自身の書き込みがありましたので、ここに再掲させていただきます。
(以下斜体字部分)2008_0606s90000004_2
《トーク自体は再現出来ませんが、お聞き頂いた曲を羅列しますね。実はトーク、下原稿ではS&G中心で考えてました。サウンドオブサイレンスの3パターン、ブックエンドから一曲を挟んで明日に架ける橋で、S&Gバージョンとアレサ・フランクリンバージョンを掛けて、JAZZを一曲二曲で組み立てていたのですが、2008_0606s90000005_4 それでは余りにマズかろう云うことで、当日はアンディーウィリアムス一曲とポールサイモン/ソングブックからサウンドオブサイレンスを!
JAZZからは「コーンブレッドとそれ以降のリーモーガン」に焦点を当ててみました。コーンブレットB面。どん底の時期のリーモーガンの演奏からEPミッドナイトカーボーイ。2008_0606s90000002_2キャランバからヘレンズ・リチュア、 そうあのヘレンへ捧げた曲。ボビィーハンフリーのフルートインからサイドワインダーをお聞きいただいて、締めは恩人でもあろうベニーゴルソン・アンド・フィラデラルフィアンズからカルガリー。 この時点で時間オーバーだったので演奏時間の短いカルガリー選んだけど、アフタヌーンインパリの演奏がお勧めです》
《以上5点の写真・盤~ワガママおやじさん提供》

さて、僕:bassclefの方は「ジャズジャイアントの隠れた名演」みたいな流れに決めたのだが、セレクトにあたっては、ちょっとだけ捻って<中編成・ビッグバンドをバックに気持ちよく吹くサックス奏者たち>というのを、一応のテーマとした。トークは1時間という枠があるので、曲順くらいは決めておかないと・・・ということで、ズボラな僕としては珍しく原稿らしきものを用意した。原稿と言っても・・・曲名、時間、ステレオ/モノラルの区別。録音年、録音エンジニアのデータ・・・あとは一言コメントくらいのものなのだが。
まあ・・・実際に話しを始めたら、やはり原稿を棒読みするというのも、とても不自然なものなので(笑)結局はいつものように、思いついたことを話しているうちに、つい長くなってしまったようだ。だから何曲かはカットせざるを得ませんでした(笑)
それでは以下~僕の悪戦苦闘の記録として(笑)ちょっとDJ風にアレンジした<白馬でのbassclefのトーク>を載せておきます。
もちろんこの通りに話したわけではありませんが、話しのニュアンスは、だいたいこんな感じだったはずです。なお時間が不足したので、8番のグリフィンと9番のゲッツは、かけられませんでした。

<bassclefのトーク>
今日は、まあ・・・テナー&アルトの特集です。サックス奏者の名演はあまたあるんですが、今回はちょっと捻りました(笑)
というのは、コンボではなく「ビッグバンドや中編成コンボをバックに気持ちよく吹く名プレーヤーたち」というのを一応のテーマとして、その辺りでまず好きなもの・・・そして、できるだけ録音が優秀かな・・・と感じているレコードからセレクトしてみました。あまりにもマイナーなミュージシャンは避けて、有名どころのちょっと渋いレコード・・・という趣ですかね。サックスばっかりではおもしろくないので、一部、トランペット奏者のフューチャリング曲も混ぜました。それから、ステレオ盤・モノラル盤・レーベルなども、できるだけ混ぜ混ぜにしてみました。Fox

1. I wished on the moon 1961年ステレオ
    エディ・ロック・ジョー・デイヴィス/The Fox & The Hounds(RCA victor)バックのリズム陣までくっきりと録られた録音もなかなかいいです。 (engineerは、mickey croffordという人) 曲は・・・思わずワクワクするようなアレンジにのって、ロック・ジョーが楽しそうに吹く I wished on the moonにしましょう。ロックジョーというテナー吹きは、飄々とした感じが堪りませんね。なお、アレンジャーはBobby Platerという人です(ライオネル・ハンプトン楽団~ベイシー楽団でロックジョーと仲間) ビッグバンドはNYのトップジャズメン17人としかクレジットされてませんが、多分、ベイシー楽団でしょう。だとすれば、ベースはエディ・ジョーンズだと思います。

Les_brown_jazz_song_book 2. let's get away from it all 1959年 ステレオ
     レス・ブラウン楽団/Jazz Song Book(coral)
次は、ズートといきましょう! レス・ブラウンというのは、わりとポピュラーっぽい楽団だと思いますが、このアルバムでは、巧いソロイスト(フランク・ロソリーノ、ドン・ファーガキストら)を、Song_bookうまい具合に配分していて(各3曲づつくらい)、充分にジャズっぽいアルバムだと思います。ズートの誠にスムースなフレージングと、あっさりと乗る軽い感じが気持ちいいですね。
《ここでPapaさんから、「このアルバムはいいですよ」とうれしい一言。Papaさんはモノラル盤をお持ちとのこと。僕の手持ちはピンクラベルのプロモだ》

3.   round about midnight 1959年 モノラル
     アート・ペッパー/プラス・イレブン(contemporary)
このレコード、オリジナルを持ってないので、今回はYoさんに借りました(笑)このレコードは最高! まず演奏がいい。アレンジもいい。そして・・・録音もいい!(roy dunan) ジョー・モンドラゴンのベースも重い音で録られています。僕はキングの国内盤ステレオで聴いているのですが、それを聴いていても「ステレオ盤オリジナル」も相当にいい音だろうな~と推測できます。ステレオ盤だと・・・ペッパーのアルトが中央に定位したまま(その音圧感が全く落ちずに) ベースとドラムスが左右に分かれてオーケストラは後ろから・・・というような定位になると思います。このレコードでは、ペッパーのテナーが3~4曲聴けるのですが、ここはやっぱりアルトということで(笑)
bernie's tune のペッパーのソロも素晴らしいのですが、同じようなテンポの曲が続いてしまうので、ここはスロウもの~ A面4曲めのround about midnightにしました。アレンジャーは、マーティ・ペイチです。

4.   day in day out 1961年 モノラル/ステレオVerve_2
Terry Gibbs Dreamband (contemporary)
モノラルのオリジナル盤はこちら~verve V-2151:The Exciting~ですが・・・このcontemporary盤は、1990年発売の新発見ステレオ・マスターなので、少々こじつければMain_stem、このLPを「ステレオ盤オリジナル」と呼ぶこともできます。このレコード・・・とにかく録音が抜群! エンジニアは、あのwally heiderです!ではA面1曲目の day in day outを。
短いソロは・・・コンテ・カンドリ(tp)とビル・パーキンス(ts)です。ベースはバディ・クラークという人。音がでかそうですね(笑) ぺッパーの・・・いや、マーティー・ペイチのtampa盤に入ってた人です。

  Photo_45.  quintessence(4'14") 1961年 ステレオ

クインシーPhoto_6・ジョーンズ/クイセッテンス(impulse)
フィル・ウッズの輝くようなアルトの鳴りを。(van geldr) 曲の終わりの短いカデンツァも、ウッズの 巧さ爆発です。文句なし! 何度聴いても、このimpulse盤は気持ちがいい。

6.   isn't this a lovely day?(4'14") 1953年 モノラル 《写真・盤~konkenさん提供。この盤、実は両面ともB面のラベルが貼られていた。これが、この個体だけのミスなのか、あるいは・・・》
    
フレッド・アステア/~ストーリー(clef) 1369astaire_2
大編成ばっかりではちょっと疲れますので、ここで中休みとして・・・テーマから離れて「唄」をひとつ。フレッド・アステアのIsn't this a lovely day? を。実は・・・このレコードもkonkenさんからの借り物です(笑)
ほのぼのしたような、しみじみしたような情感が漂う名唱・名演だと思います。 優しげなテナーソロは・・・フリップ・フィリップスです。

7.  from now on 1957年 モノラル
   マーティー・ペイチ/Picasso of jazz(cadence)
もうひとつ、モノラル録音のいいやつを。cadenceというレーベルは、たぶんcolumbiaの子会社です。その cadenceの子会社があのcandidです。だからこの「Picasso」は、candidからも出たこともあると思います。渋いトランペットは、ジャック・シェルダンです。独特の沈んだような音色・・・いいソロですね。実は、アルトのクレジットがないのです。この辺りの白人系のアルトをいろいろ聴いてみました。でも・・・判りませんでした。ジーン・クイルかジョー・メイニか、あるいはチャーリー・マリアーノかな?と推理してます。ペッパーやバド・シャンクではないですね。ハーブ・ゲラー、ロニー・ラングではないような感じがします。Photo
《そういえば、cadenceレーベルの小話題として~このcadence~Dukeさんの好きなピアニスト:ドン・シャーリーの初期の作品がたくさんあるレーベルで、実はこれ、ある有名なシンガーがオーナーなんですよ・・・などと話そうかなと思っていたら、cadenceと言った瞬間に、すぐ「アンディ・ウイリアムスの・・・」と声がかかりました(笑)さすがに皆さん、よくご存知です(笑)
アルト奏者のクレジットがない話しも、それを切り出す前に、recooyajiさんから「アルトは誰ですか?」との声。やっぱりちょっと気になる、いいソロだったようだ(笑) 
《その後、PapaさんがこのレコードPicasso of jazzのパーソネルを調べてくれたようで、「こだわりの杜」へ書き込みにて知らせてくれた。
録音年月日 1957 June 7&8   Los Angels
”The Picasso of Big Band "
Pete Candoli, Buddy Childer, Jack Sheldon (tp) Herbie Haper (tb) Bob Envoldsen (vt-b, cl) Vince Derosa (fhr)
Herb Geller ( as ) Bob Cooper, Billy Perkins (ts) Marty Berman (bar) Marty Paichi (p) Joe Mondragon (b) Mel Lewis (d)
う~ん・・・あのアルト奏者は、ハーブ・ゲラーだったのか! まずいなあ、「違う」候補の3番手にゲラーを挙げていたなあ(笑)》Big_soul_band

8.  jubilation(3'53") 1960年 モノラル
  グリフィン~The Big Soul-Band(riverside) 
ちょっと「くどい」音色のグリフィンです。ベースのヴィクター・スプロウルズの音がでかそうなこと! 録音はレイ・フォウラー。

9.   bim bom(4'32") 1961年  ステレオGetz_bigband_bossa_2
     スタン・ゲッツ/Big Band Bossa Nova(verve)
これ、ジョアン・ジルベルトの曲。ゲッツのテナーもマイルドでいい。スネアのリム・ショットとかシンバルのドラムスの音とブラスのバランスが絶妙。 けっこう好きな録音です。verveですがval valentineではなくて、george kneurr&frank laicoという人です。ガットギター・ソロは・・・ジム・ホール!

10.far out east(4'30") 1958年  モノラル/ステレオ
      ロリンズ/ブラス&トリオ(metro) Photo_2
このメトロ盤がオリジナルです。これ、ようやく入手しました(笑) 長いこと、こちらのverve盤(緑色のやつ)で聴いてました。一応、VerveとしてはオリジナルのはずのT字のVerve Inc.(long playing 溝あり)盤なんですが、このverve盤は・・・音があまりよろしくない(笑) モノラルだステレオだという前に、ロリンズのテナーの音に厚みがない。鮮度感に乏しい。それに全体にやけにエコーが強いし、ドラムスやベースの音が遠い感じです。
一方、Metroのステレオ盤では~ロリンズだけが左側で、ビッグバンドとリズムセクションは右側~という、ちょっとおかしなステレオの定位ですが、何よりもテナーの音の鮮度が段違いです。生き生きしたロリンズの音が気持ちいい!1958年の好調なロリンズ! ベースのヘンリー・グライムズも重い音で録られてると思います。B面のコンボの方で比べると、ドラムスやベースの鮮度感の差がよく判ります。では・・・オリジナルのMGM盤(ステレオ盤)ではどうなのか・・・続けて聴いてみましょう。もっともロリンズらしい~と思える1曲を。Brasstrioverve
      verve盤~A面4曲目のfar out east~30"ほど
   metro盤~A面2曲目 far out east
え~と、このタイトル・・・有名なway out westのもじりだそうです(笑)
実は、このロリンズのメトロ盤・・・テナー1本のソロが入ってるんです。body & soulなんですが、1958年でのテナーソロというのも珍しいでしょう。ところが・・・すでに1948年にテナー1本のソロが存在しております。ロリンズの方(body & soul) も掛けたいところなんですが・・・最後に、この「史上初のテナーサックス1本のソロ演奏」と言われているやつを聴いていただきたいと思います。

11.  piccaso モノラル 1948年
コールマン・ホウキンスの「ピカソ」です!Photo_7
これ~THE JAZZ SCENE~mercuryからSP6枚組がオリジナル~10インチ2枚組~EP5枚組~12インチLP~という順で発売されたのだと思います。音は12インチよりEPの方が圧倒的にいいようです。このEP盤5枚セット・・・盤質も最高だし、私的にはけっこうお宝盤です(笑)
なお、ジャケットの図柄はゲッツの「plays Bacharach」に使われてましたね。では・・・1948年の「ピカソ」を。
《あらゆる希少盤をお持ちだとも思えるPapaさんが、珍しくも「う~ん・・・このEP Boxは・・・欲しい」と言ってくれたので、僕はちょっと嬉しかった(笑)まあ半分は、compliment(お世辞)だろうけど(笑)》

第2部(19:15~22:00)
毎年、食事の後に「この1曲」をやるのですが、今年は皆さんの「燃える自己紹介」の後、おいしい泡盛もだいぶん入りながらの「この1曲」で、その後、オークションへ突入。1F食堂タイムが終了したのは例年より1時間ほど遅めの時刻だった。以下、皆さんの「この1曲」をリストしておきます。

Ethel_ennis パラゴンさん~エセル・エニス(jubilee盤:Lullbies For Losers紫ラベル)金色ラベル から
You'd Better Go Now~この名曲を、エセルは、あっさり加減の唄い口で、しかし、しっとりと唄う。それとこのjubilee盤・・・普通、モノラル盤は青か黒だと思うのだが、なぜか・・・パープル!これは・・・珍しい。さっそくpapaさんの熱い視線が(笑)
《上の写真・盤はパラゴンさん提供》
2008_0606s90000003

ワガママおやじさん~Eddie Lockjaw Davis with Shirley Scottから serenade in blue
《右の写真・盤はワガママおやじさん提供》

マントさん~E・パイネマン女史(V)のドボルジャークバイオリン協奏曲

《下の写真・盤はkonkenさん提供》
1186marlenekonkenさん~Marlene De Plankの唄~Fools Lushi In
マーレーンの唄い口は・・・いつも優しい。聴いていて、理屈抜きに安らぐのだ(笑)konkenさんは、あのsavoy盤:Marleneも持っており、この歌い手のレコードをほとんど揃えているようだ。

Yoさん~Jazzville'56(dawn)からlover man(ジーン・クイル)Jazzville56
《右と下の写真・盤~Yoさん提供》
クイルもまたアルトの名手だ。パーカー、マクリーンも演奏したこのバラードを、クイルは、凄く情熱的に吹いている。フレーズ展開に破綻(はたん)をきたしそうな場面もあるのだが、その危うさがスリリングでもある。Jazzvilleこのドーン盤・・・たしかトランペットのディック・シャーマンのいいバラードも入っていて、いいオムニバス盤だと思う。


洗濯Mさん~高木麻早「ひとりぼっちの部屋」~「い~まあ~ッア」と声を思い切り伸ばした後に、短く「アッ」と声を切るところが素晴らしい(笑) 

Dukeさん~ダイナ・ワシントンの初期の10インチ盤からI want to cry 
~生々しい声が印象的。この10インチ盤は30分後にオークションにて、Musashi no papaさんがゲットした。そのpapaさんのコメントを以下。
《白馬の杜でDUKEさんからオークションで譲って戴いたダイナ ワシントンは素晴らしいレコードでした。8曲のうち特に気に入ったのが杜で流された I want to cry でした。チェックしたみると1948年10月16日ロイヤルルーストNYでの録音でバックのペットはガレスピーのようです。この1曲は素晴らしい。私のお気に入りになりました》

PaPaさん~ドイツのアルト奏者~ミハエル・ナウラ
(フィル・ウッズにも似た感じの名手だった。vibraphoneはWolfgangという名だけ覚えてますが、あれは・・・チェット・ベイカーともsandra盤で共演しているWolfgang Lackerschmidなのかな?)
《以下、訂正》
Papaさんからのデータを以下。リーダーのミハエル氏をアルトだと勘違いしてました。ミハエル氏はピアノ、アルトはペーター・レインケという人でした。
ヴィブラフォン奏者も、ウオルフガング違いでした(笑)
Michael Naura Quintet(German Brunswick 87912)
Michael Naura(p)      
Peter Reinke(as)      
Wolfgang Schluter(vib)   
Wolfgang  Luschert(b)   
Joe Nay(ds) 

千葉ZYXさん~テクノっぽいやつ(曲名失念。ごめん!)

SPUさん~Clifford Brown&Max Roach (emarcy) Img_0011_5
10inch盤から delilah。Img_0016_4






ローチ/ブラウンのemarcy盤では、たしか・・・これだけが10インチ盤とのことだ。《写真・盤~SPUさん提供》

recooyajiさん~スリーキャッツ「黄色いさくらんぼ」(日本コロンビア)25cm盤

bassclef~クリフォード・ブラウン「ブルー・ムーン」(emarcy EP盤)

<第3部~地下JBLルーム 夜10時30分~1時30分頃まで>白馬第3部
ある意味、この第3部が最も楽しい時間である。というのも、ここでは皆さんが、いわば「本音盤」を掛けるので、毎年、印象に残るレコードが飛び出るのだ。今回は・・・タイトル・順番など、どうにも記憶があやふやである。皆さんの飲まれたアルコールがJBLルームに気化して、それと音の洪水で・・・僕の脳髄も麻痺してしまったのかもしれない(笑)それでも印象に残っているレコード達をいくつか。

Yoさん~「聴き比べ2題」
<ハロルド・ランド~The Fox>(contemporary盤とHi-Fi盤)からthe fox one down
<アート・ペッパー~Surf Ride>(savoy12インチ盤とdiscovery10インチ盤)からsurf ride

ワガママおやじさん~「ソニー・クラーク~Leapin' & Lopin'からケベック入りのdeep in a dream

SPUさん~「ウディ・ハーマン」Woodchoppers(dial)10インチ盤からit's the talk of town(ラベルにはon the townと表記)

konkenさん~アーサー・ブライスIn The Traditionからin a sentimental mood

洗濯船Mさん~サラ・ヴォーンのlullby of Birdland(emarcy)

Okpapaさん~ペップ・ボネPep Bonet(スペインのサックス奏者)この人、ちょっとロリンズ風。そんなバリバリと吹くテナーに、ちょっとヘタウマ風なピアノとベースが絡む。Papaさん、こういうヨーロッパ系の「武骨ジャズ」も好みらしい。そういえば、イギリスのディック・モリシー(ts)にも、同じような雰囲気を感じた。《写真・盤はPapaさん提供》

Jazz_vane_2bassclef~ジミー・ロウルズweather in jazz vane(andex)からsome other spring。このレコード・・・CDで愛聴してきたのだが、ちょっと前にようやくオリジナル盤を入手できた。ロウルズという人のしみじみとした持ち味がよく出ていて、好きなレコードだ。それに、Andexというレーベル・・・なかなか音がいい(笑) この頃は、こういう、日向ぼっこをしながら居眠りしているような・・・そんなまったりした感じが好きになってきた。《このandex盤はプロモ盤なのでラベルが白だ》

マントさん~DECCAでホルストの惑星(カラヤン・VPO)からジュピター。何度聴いても・・・やっぱりいい曲だ(笑)
チャイコフスキーのロミオとジュリエット(同)からロミオとジュリエット(2000番台)。DUKAS:LA PERI poeme dance'(ラージラベル)~このデュカスの曲・・・最初の金管楽器が一斉に鳴り響くあたりは、サウンドとして気持ちがよかった(笑)

千葉ZYXさん~「ToTo」のLPから(タイトル失念・・・ごめん!)
この1曲は・・・ZYXさんが茶目っ気を出して「ある大物ジャズメンが参加している」とのクイズ曲となった。昔、ローリング・ストーンズにロリンズが参加したLPのことは知っている。誰かが「楽器は?」と尋ねると・・・「いや、まあ・・・聴いてみましょう」と口ごもりながらも、小さい声で「トランペットです」とヒントをくれる優しいZYXさんだった(笑) ToToという名前は知っているが、ちゃんと聴いたことがない(笑)冒頭からギターがしばらく続いた後・・・なにやら聴いたことのあるぞ~と思える音色のトランペットが鳴りはじめる。この、ちょっとくぐもったような音色と、ためらいがちなフレージングは・・・おおっ、あれだ。「わかったあ! マイルス!」と僕は言う。「当たりです!」とZYXさん。「さすがですね」などと誉めてくれるZYXさん。でもね、ZYXさん・・・マイルスのトランペットなら、ジャズ好きなら誰でもすぐに判っちゃうんですよ(笑) それにしてもこのToToへのマイルスの客演~おそらくオーヴァーダビングなのだろうが、ソフトなロック調にかぶして吹くマイルスのフレーズには、全く違和感がない。それになんと言っても、一人の人間がそこでしゃべっているような・・・そんな説得力があるじゃないか。Img_0006_4

SPUさん~Woody Herman/Woodchoppers(dial:10inch)
毎年、夜が更けてくると異常に元気になってくるSPUさんである(笑)
SPUさん、いつもいいところを入手しているようで、いろいろと見せてくれる。ソニー・クラーク・トリオ(bluenote)にも惹かれたが、ここはやはり昼間にチラと見せていただいたダイアルの10インチ盤である。  Img_0018_3 《写真・盤~SPUさん提供》
それはWoody Hermanの10インチ盤。聞かせてくれたのが、バラードの it's the talk of town(ラベルのクレジットでは"on the town"と表記されている) これ、ウッディ・ハーマンと言っても、フリップ・フィリップスのフューチャー曲で、彼の見事なソロがたっぷりと入っている・・・これはいいっ! 
まったくフィリップスという人は、こういうゆったりしたバラードを吹かせると、もう独壇場である。僕の好きな「フィリップ風」がゆったりと謳いあげる。ううう・・・これは、垂涎盤だあ!(笑) フィリップス好きの僕にとっては、この夜のMIV盤(most impressive vinylという勝手な造語です)は、このダイアル10インチ盤である。

《下の写真・盤~ワガママおやじさん提供》
2008_0323s90000014_5ワガママおやじさん~Sonny Clark/Leapin' & Roapin'(bluenote)NYラベル
お勧めはやはり・・・deep in a dream。さすがワガママおやじさん、ジャズのコアなところをご存知だ。この「リーピング~」チャーリー・ラウズとトミー・タレンティンの2管入りセッションが主なのだが、この1曲:deep in a dreamだけは、アイク・ケベックのテナー1本。そしてこれが実にいい。ソニー・クラークのバラードを弾くときの独特なロマンティックな感じ・・・そのイントロからしばらくはピアノのソロが続く。「あれ、これ、テナーは?」と皆が思ったころ・・・ケベックが「ずず~っ」と忍び込むような気配で吹き始める(笑)、ソニー・クラーク/アイク・ケベック~2人の音が醸し出す雰囲気と、この曲の、ちょっとセンチメンタルな雰囲気が見事にマッチしている。このバラードは、やはり絶品と言わねばなるまい。

Yoさん~<ハロルド・ランド:Foxの聴き比べ>
《以下6点、ランドとペッパーの写真・盤~Yoさん提供》The_foxhifi_6

ランドのThe Foxは、もともとHi-Fiレーベルへの吹き込み(1960年)だが、一般的に知られているのは、contemporaryの緑ラベル(1968~1970頃)として再発されたものだと思う。僕もその緑ラベルを愛聴していた。そういえば・・・第1回白馬の時に、Yoさんとランド話題になり「Foxはいいよね」みたいな話しになったな。そのYoさん、最近、FoxのHi-Fi盤を入手されたとのことで、じゃあ、あのcontemporary盤とどんな具合に違うのか・・・
という流れになっていた。Yoさんによると、contemporary盤は「いつものcontemporaryらしい、自然な質感のいい音」なのだが、Hi-Fi盤(モノラル)は、全く音造りが違うとのこと。簡単に言えば、あまり西海岸っぽくないそうである。Fox_hifi
最初にHi-Fi盤から~まずジャケットがいい。暗めの赤色、灰色、黒色などが太い筆でググッと塗りたくってあるだけの抽象絵画っぽいジャケットなのだが、中身の音の力感みたいなものが感じられるのだ。A面1曲目のThe Fox B面のOne Down を聴く。各楽器の音がメリハリのハッキリした太い輪郭で、全体的に音が強い感じだ。パーソネルを知らずにパッと聴いたら・・・イーストの黒人ハードバップだと思ってしまうだろう。もっとも・・・このThe Fox~ランドもエルモ・ホープもリズムセクションもみんな黒人だし、実際、こういうハードバップ的な4ビートジャズをやっているバンドのサウンドに、東海岸と西海岸で、それほどの違うがあるはずもないのだが。ただ「録音の感じ」の違いは・・・明らかにあると思う。その「音の感じ」で言うと・・・Hi-Fi盤では「ジャズが強く聴こえる」ように感じたのだ。ピアノのエルモ・ホープの叩きつけるようなタッチも、相当に迫力あるガッツあるタッチとして鳴った。いずれにしても、Hi-Fi盤の音は、モノラル盤と言うことも含めて・・・魅力的なジャズのサウンドではあった。なおHi-Fi盤の録音は1959年。録音エンジニアは・・・Art Becker & David Wiechmanとなっている(contemporary盤の裏ジャケに表記あり)

Foxcontemporay 次にcontemporary盤~この緑ラベル・・・何度も聴いているので僕には親しみがある。裏ジャケの解説はLeonard Featherで、1969年10月としてあるので、発売は1969年か1970年だろう。
さて「緑ラベルのステレオ盤」だ。一聴・・・ランドのテナーが少し細くなり(と言ってもそれは悪い意味ではない)音色もややソフトな感じになった。ドラムスの「鳴り」が全体的に「すっきり」してきた。音楽全体の鳴り」として・・・たしかにやや軽くなったような感じはする。しかし・・・本来、ランドやフランク・バトラーが楽器から出している「サウンド」としては・・・僕はこのcontemporary盤の方が「自然」だと思う。いい意味での「軽やかさ」~僕はこの感じを「軽み」(かろみ)という言葉で表したい(笑)~が感じられるサウンドだと思うのだ。Foxcontemporay_2 う~ん・・・Hi-Fi盤もいいが、やはりこちらのcontemporary盤もいい・・・聴いている方々もそれぞれの音にに感じるところがあったようで、判断に迷っているような気配ではある。これは、Hi-Fi盤とcontemporary盤との「音造り」の違いでもあり、また「モノラル盤」と「ステレオ盤」のそれぞれの特徴(良さ)が現れた好サンプルかもしれない。ジャズ好きの「音」や「音楽スタイル」に対する好みの傾向は様々だし、そういう好みの違い方というようなことへの興味を、Yoさんも僕も持っている。そんなこともあって、どちらの音が好みか・・・というアンケートをすることになった。この場にはちょうど9名いた。僕の予想は「半々」だった。
まず「Hi-Fi盤」~4名が手を上げる。そして「contemporary盤」~これも4名。1名が手を上げてない(笑) Yoさんは決着を付けたいようだ(笑)「konkenさんは?どっちが好き?」と追求する。konkenさん「うう・・・」唸りながら「やっぱり・・・contemporaryかな・・・」 これで5対4だ。やはりほぼ半々か・・・。まあいずれにしても、実に興味深い「音の好み」の違いじゃないか(笑)

Pepper_surfride_savoy_2  Yoさん~<ペッパーのサーフライド>
さて、savoy12インチ盤(MG-12089)とdiscovery10インチ盤2点(Art Pepper Quartet 3019)と(Art Pepper Quintet 3023)
発売は、10インチ盤の3019が1952年、3023が1954年。12インチ盤が1956年と、当然のことだが、10インチ盤の方が早い発売である。Surfride
最初に掛けたのは、savoy盤12インチ~曲は急速調のsurf ride。
サックスの音にメリハリがあり、全体的に明るい感じ。とても1952年の録音とは思えないほどパリッとしたジャズの音だ。さすがにVan Gelderのマスタリングした12インチ盤だ。張りのあるジャズっぽさも充分に感じられる。
Yoさんは「うん、このsavoy盤も悪くないなあ」とちょっと嬉しそう(笑)

次に、discovery10インチ盤~これは僕の私見だが、10インチ盤というのは、時代も古い分だけ(たぶん)12インチ盤に比べると、盤質の材料やカッティングの精度において、若干のデメリットがあると思う。ただし「モノ」としての魅力~あの10インチという大きさからくる圧倒的な存在感、古み感など・・・それがそこにあるだけで、素晴らしい(笑)そう思わせてくれるほど、ある種の10インチ盤には、エモイワレヌ魅力を感じる。ペッパーのこの2枚のdiscovery盤もそんなレコードである。
《下の10インチ盤2枚~写真・盤はPapaさん提供》Discovery10inch_2_2

さて、その音は・・・? Mさんが慎重に針を下ろす。
材質・盤質からくるノイズはほとんどない。いいコンディションのようだ。
一聴・・・全体の音がおとなしい感じか。ちょっと楽器全般がくすんだような色合いになったかもしれない。ぱっと聴いて受ける印象は・・・古い写真がセピア色に染まりつつあるような・・・そんな感じに近いかもしれない。そして僕には、その「セピア色」が心地よい。ちょっと高音の方が詰まったような音なのだが、こうして2枚続けて聴いてみると、この「ちょっとおとなしい鳴り方」の方が、より自然なものに聞こえないこともない。
ドラムスのシンバルのクリアさや、それからペッパーのアルトの輝き具合においては、確かに12インチ盤の方に分があった。それでも10インチ盤の「自然な鳴り」に僕は惹かれるものを感じた。
目をつぶって「音」だけを聴けば、12インチ盤の方を選ぶ方が多いかもしれない。しかし~パーカーのダイアル盤の時にもちらっと書いたのだけど~こちらのアタマに「貴重な10インチ盤。時代的にはオリジナルの10インチ盤」という思いも入り込んでの聴き比べなので(そうならざるを得ない)そういう意味で「10インチ盤有利」になってしまうことがないとは言えない(笑)
いずれにしても、こういうのは「好み」の問題だと思う。例えば、僕自身は・・・一般的には強い音が好きなのだが、Van Gelder特有のかけるエコーが(強すぎる場合)あまり好きではない。Cimg0268
ひとつだけ確かなのは「ペッパーは凄い」ということだ(笑) レコード化の段階で、後から何をどういじったとしても、1952年にペッパー達が演奏した素晴らしい演奏(音楽)は・・・・厳然として、そこにあったわけなのだから。
《上の写真~savoy12インチ盤には収録されなかった4曲(These Foolish Things, Everything Happens to Me, Deep Purple, What's new)と、レッドの2曲を収めたArt Pepper/Sonny Redd~通称Two Altos(regent)。なるほど・・・ラベルは緑でしたか!写真・盤~Musashi no papaさん提供》

好きになったミュージシャンの音を集中して聴くのならば・・・どんな版のレコードを聴いたとしても、感じるところは絶対にあるはずだ・・・と思いたい。まあもちろん、音がいいレコードで聴くに越したことはないのだが(笑)

《写真・盤はkonkenさん提供》Photo
最後の方に聴いたのは、konkenさんの「アーサー・ブライス」in the traditionからJitterbug Waltz と in a sentimental mood。
どちらかというと古い年代のジャズが中心の会なので、こういう1970年代後半の、ガッツあるハードっぽいジャズがかかると、新鮮な感じもあり、楽しく聴けた。斜め前に座って、なにやらブライスのアルトに集中している様子のPapaさんに「こういうの好きでしょう・・・」と言うと「これは気に入りました!」と一言。Papaさんは、もちろんパーカー命のような方だが、デビッド・マレイなどちょっと新しい世代のサックス奏者も愛聴しているようだ。

そして大ラス~洗濯船Mさんが「では最後に1曲」と静かに言う。
「バ~バ・バ~ラ・バッバッ・バッバ・パ~」ああ・・・これは皆がよく知っているレコード・・・サラ・ヴォーンのemarcy盤だ!Mさんが、bluebackのジャケットがイーゼルに掲げられる。ねっとりした唄い回しのサラの声が、力感豊かに流れてくる。あのサラのアドリブ・フレーズを諳(そら)んじているらしいkonkenさんが、サラと一緒にスキャットしている(笑)酔っているので音程は覚束(おぼつか)ないが、気持ちは充分に判る(笑)
見事なまでにコントロールされたサラの声が厳(おごそ)かに流れつつ・・・2008年の白馬:杜の会は、ようやく終わろうとしているのだった。

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2007年8月23日 (木)

<やったあレコ 第10回>Tenor Saxes(Norgran:MGN-1034)

<1955年に発売されたちょっといいオムニバス盤>

Dscn1733ノーグランというレーベルに、Tenor Saxesというオムニバス盤がある。いろんなミュージシャンの演奏を集めたオムニバス盤というものは、一般的には、個々のミュージシャンのオリジナルアルバムより人気がないのかもしれない。しかし・・・このTenor Saxesは例外らしく、けっこうな人気があるのだ。ジャケットがストーン・マーチンであることは、もちろん大きな魅力なのだが、僕の知る限り、このレコードの音源的な価値は、まずは、スタン・ゲッツの2曲(後述)それから・・・ベン・ウエブスターのtenderly にあるように思う。
ウエブスターの「テンダリー」・・・その演奏と音の凄さに魅了された方は数知れずか(笑)
実際、僕自身も、Yoさん手持ちのこのTenor Saxesを何度か聴かせてもらって・・・tenderlyに心惹かれた一人である(笑)

そのtenderly が入ったオリジナルLP~The Consummate Artistry(norgran)・・・この貴重な盤を初めて目にしたのは、2年ほど前、2005年の春「第1回白馬 杜の会」の時だった。夜も更けてきた地下のJBLルーム・・・スピーカー間に置かれたイーゼルに、あるノーグラン盤が掲げられた。明かりを落とし気味にした部屋に、この渋い色調の~くすんだ感じのセピア・イエローとでもいうのか~ベン・ウエブスターの姿が、ぼお~っと浮かび上がった。
「おお・・・」静かなどよめき。音が出る前から・・・もの凄い存在感だ。
そして・・・思い入れたっぷりのtenderlyが流れ始めた。ジャケットも凄いが演奏も凄い。
僕はそれまであまりウエブスターを聴き込んではいなかったので、ウエブスターの強烈なヴィブラートとサブトーンのリアリティに驚いてしまった。「う~ん・・・」と唸った拍子にふと振り向くと、すぐ後ろの席にリキさんがいた。「こだわりの杜」(ニーノニーノさんのBBS)での書き込みから「クラシック好きのリキさん」・・・というイメージが強かったこともあり、僕はリキさんになんとはなしにこう言った。
「こういうの・・・苦手でしょう」
するとリキさん「いえ、好きですよ。このウエブスター・・・僕のですから(笑)」

Dscn1742 僕はそのレコードの神秘的な佇まいが忘れられなくなり・・・しばらくしてから、ウエブスターのEP(tenderlyを含む4曲入り)を入手した。もちろん・・・ジャケットはThe Consummate Artistryと同じである(笑)
さて・・・「絵」の方はEP盤を眺めてガマンするとしても(笑)音の方は、やはりあの鮮烈なtenderlyを聴きたい・・・という想いもあり、僕は少し前に、前述のオムニバス盤~Tenor Saxesも入手してしまった。
「う~ん、やっぱりいい音だぞ・・・」などとうれしく聴きこんでいたその頃に、ちょうどYoさん宅に集まる機会ができた。Yoさんがkonkenさんに依頼したラックの増設台の取り付けの後に、どうせならレコード三昧をしようよ~という計画で、今回は、リキさん、konkenさん、recooyajiさん、bassclefの4人で、早朝からおじゃますることになったのだ。

こんな風に皆で集まる時は、いつも「何を持っていこうかな・・・」と楽しく悩むのだが、今回は、僕の方は大体の線は決まっていた。
ClefやNorgranの米オリジナル盤とUK Columbia盤(スタンパーはClef、Norgranと同じ)の聴きくらべである。ネタは、Flip Phillips のClef盤とUK盤と(こちらについてはまたの機会に!) Alto Saxes のNorgran盤とUK盤を用意した。
それからもちろん・・・ウエブスターの「テンダリー」である。
この集まりの少し前から僕が聴いていたTenor Saxes・・・どのトラックもよかったが、やはり・・・ウエブスターのtenderlyが、演奏はもちろんその音の良さで、ひときわ光っていた。自分の機械でEP盤のtenderlyと比べてみたりもしたが、やはりここは、盤による微妙な違いまでしっかりと出してくれるYoさんの装置で、そのオムニバス盤とEP盤・・・そしてできれば、Consummate Artistryも交えて聴いてみたいものだと考えていた。
だから事前にリキさんに「ウエブスターのあれ、持ってきて」とお願いしようとも思ったのだが、つい忘れてしまっていたのだ。

さて・・・Yoさん宅でいろんなレコードを聴いたあと、ウエブスターを聴いてみることになった。僕はEP盤、YoさんはTenor Saxes を出した。「Consummate があるといいんだけど・・・」と何気なく僕が言うと・・・Yoさん「あるよ」と一言。奥の部屋からすす~っと、あのセピア・イエローの盤を取り出してきた。ああ、なんとしたことか・・・Yoさんもいつのまにか、この貴重なノーグラン盤を入手していたのだ。いつものことだが・・・Yoさんは、いいレコードには本当に素早い(笑) 

そんなわけで・・・tenderlyの3つの音源を、Yoさんの装置で聴き比べできることになった。オリジナルLPとオムニバスLPとEP盤というわけだ。

EP盤から聴いてみることにした。
Consummate~(norgran)EP4曲入り~EPN-16
一聴して、音にあまり元気がない。どうやら・・・カッティングレベルもだいぶ低いようだ。そのためかどうか・・・テナーの音も力感に乏しくて、12インチには感じられた「瑞々しさ」も、抜け落ちてしまったようだ。リキさんが一言「あまり魅力のない音ですね」  実は僕も自宅で聴いていてそれほどいいとは思ってなかったのだが、ちょっとは45回転の威力に期待していただけに、少々残念であった。 まあいいか・・・EP盤はジャケットさえあれば(笑)

Ben Webster/The Consummate Artistry(norgran)~
スロウなテンポで、しっとりとしたピアノのイントロが流れてくる。このピアノ、意外にもオスカー・ピーターソンである。「意外にも」と感じたのは・・・ピーターソンにはあまり「しっとり感」ないのかな、と思っていたからだ(笑) その安定したスロウなテンポに乗って、ウエブスターが最初の4音を吹くと・・・もうそこはウエブスターの世界である(笑)
程よい粘り具合で(ウエブスターとしてはややあっさり加減の)この曲の優雅な、そしてちょっと澄ましたような感じを、うまく描き出しているのだ。テーマを2回繰り返すだけの短い演奏だが、このtenderlyは傑作だと思う。
ウエブスターのテナーがくっきりした感じでいい音だ。さて、このtenderly収録のオリジナルLPは、おそらくこのCunsummate~のはずで、だから、最も鮮度感があるのが、このLPと考えるのが自然だと思う。しかし・・・そうでもないようなのだ(笑)

Tenor Saxes(norgran)~出足のピアノからして違う!ピアノの音自体がさらに瑞々しいのだ。指を残したようなタッチ感もよく出ている。そして、ウエブスターのテナーも、輪郭のよりはっきりしたキリッとした音色だ。
サブトーンの響きが広がりすぎてないのも、僕には好ましい音色に聞こえる。本当にこの音は素晴らしい! 
「切れのよさ」という点で、オリジナルLP(Consummate)より勝っているように思う。ひょっとして・・・このオムニバス盤の方が発売が早かったのだろうか?

さて、今回はThe Consummate Artistryからもう1曲聴かせていただくことにした。
recooyajiさんと僕がリクエストした1曲~Danny Boyだ。僕はこの演奏、まだ聴いたことがない。さっそくかけてもらう・・・「あれ?」・・・テナーの音色がtenderlyとはちょっと違うぞ。
tenderlyのよりテナーの音の輪郭が拡がった感じがあり、その分、だいぶソフトな音色になっているようだ。この「ゆるさ感」の方に、よりベン・ウエブスターらしさを感じる方もいるかもしれない。
しかし、僕にはやはりさきほどのtederlyのテナー音色の方がうんと魅力的だ。このソフトな感じは・・・どうやらテナーにエコーをかけてあるような感じだ。あるいは録音時のセッティング~例えばテナーのベルとマイクの距離、角度などが違うためか・・・とにかく同じLPの収録曲なのに、なぜこんなに違うのか?
そんな疑問から裏ジャケットを仔細に見てみると、やはりtenderly は、1953年12月のセッション、danny boyは1953年4月のセッションだったのだ。ひょっとしたら、録音技師が変わったためかもしれないが、同じLPを創るための吹き込みなのに、曲によってこれだけ音色の様相が違ってしまうとは・・・。
tenderlyセッションの音が素晴らしいだけに、ちょっと残念ではある。
それにしても、こうしたマイクのセッティングやらミキシングの具合によって変わってくるであろう微妙な音色の違い・・・そんなものをより鮮明に浮き彫りにしてしまうYoさんの装置もとことん怖ろしい(笑)Dscn1734_2

さて、このTenor Saxes(norgran)には、7人のテナー吹きから一人2曲づつセレクトした全14曲が収録されている。
僕が気に入っているのは、これらのセレクト曲が全てスタンダードソングということだ。もちろんベン・ウエブスターだけが目玉ではない。
フリップ・フィリップスの2曲~
I didn't know what time it was,  
take the A train 
スタン・ゲッツの2曲~1954年1月録音。
I hadn't anyone 'till you(A面1曲目),
with the wind and the rain in you hair(B面7曲目)もなかなか素晴らしい。
フィリップスについては、そのうちに他の盤も併せて書いてみたいので、ここではゲッツの2曲について少し。

この2曲は、録音当時はゲッツのオリジナルアルバムには収録されなかったので、長いこと、Tenor Saxesでしか聴けなかったようだ。僕の知る限り、The VERVE COLLECTOR'S ITEM(日本ポリドール)という4枚組BOXで、ようやく陽の目を見たと思う。このThe VERVE COLLECTOR'S ITEMに米の元ネタがあったのか・・・それとも日本オリジナルかどうかは判らない。ちなみに、この2曲と同じセッション(1954年1月)でもう2曲 (nobody but else but me とdown by the sycamore tree) が録音されているのだが、こちらはCool Sounds(MGV-8200) というアルバムに収録されている。美女が鉢植えから溢れ出た水を浴びているcoolなジャケットのやつである。(写真は残念ながら、紙ジャケのCDです)

Dscn1752 このセッションの4曲を、僕はたまたまCDで聴いていた。だいぶ前に入手したStan Getz PlaysのCD(独polygram)に、これら4曲がボーナス・トラックとして付いていたのだ。ピアノがジミー・ロウルズ、ドラムがマックス・ローチ、ベースがボブ・ウイットロックとなっているので、たぶんゲッツが西海岸に来た時に録音したのだろう。
この4曲はどれもいい。この頃のゲッツのテナーは・・・肌触りのいいシルクのような音色をしていて、僕にはすごく魅力的だ。それから、短いピアノソロを取るロウルズのピアノもいい。僕はなぜだかロウルズのピアノが好きなのだ。彼のピアノに絶妙なしなやかさを感じるからかもしれない。そしてその「しなやかさ」は、ゲッツのシルキーな音色にすごく合っているように思う。ドラムスの録音はややオフ気味だが、ローチはピシッと背筋が伸びたような、クリアなシンバル・レガートを叩いている。この時代としては、かなり新しい感じのビート感だろう。そういえば、1954~1955年くらいの前ハードバップ時代のレコードを聴いて「あれっ? シンバルだけ、やけにモダンだな?」と思ってクレジットをみると・・・ローチだった!ということが何度かある。あのシンバルの切れのよさはさすがだ。ただ、ローチのきっちりとしたシンバル・レガートは、ゲッツのバップ的ではない(細かく分解したようなフレーズではない)唄うようなフレージングには、あまり合わないような気もする。そういえば、スタン・ゲッツとマックス・ローチの組み合わせというのは・・・案外、少ないように思う。

さて・・・Tenor Saxesに収録の2曲・・・これもなかなかいい音だと僕は思う。さきほど「肌触りのいい」と書いたが、ゲッツ好きには堪らないあの音色・・・冷たいようでほんのり温かい~ソフトでありながら芯のしっかりした~か細いようで実は太い鳴り・・・そんな不思議なゲッツの音色がきっちりと大きめに中央から飛び出てくる。CD収録の2曲もそれほど悪くなかったが、やはりゲッツのテナーの音色の生々しさ、それからローチのシンバルの鮮度感など、ノーグラン盤の方が素晴らしいようだ。考えてみれば、1954年録音のネタを1955年に封じ込めたヴィニールの方に、より鮮度感があるのは当たり前の話しかもしれない(笑)
こうなってくると・・・僕などこの4曲の残り2曲~ゲッツの Cool Sounds(MGV-8200)のオリジナル盤も聴きたくなってきてしまう(笑)こちらの1957年発売となっている。こちらの2曲は、ノーグラン盤の2曲と比べてどうなのか・・全く同質のものなのか・・・音源は同じであっても、2年の発売年の差が多少なりとも音質に影響しているかもしれない? そんなことをつらつらと考えてしまう僕である。Dscn1735_2
ああ・・・ジャズには全く・・・興味が尽きない(笑)

《写真はAlto Saxes。ちょっとゲッツの10インチ盤 Stan Getz Playsに似ているかな》

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