<ジャズ雑感 第32回>UA盤:ビル・エヴァンスとジム・ホールの「アンダーカレント」
UAレーベルのモノラル盤/ステレオ盤のこと、もう少し。
すっかり毎年の恒例になってしまった12月31日のレコード聴き・・・今年もrecooyajiさんと僕:bassclefで敢行しました。recooyajiさんとはもう4年の付き合いになるが、古いジャズをアナログで楽しむ同好の志が近くに居るということは実に重宝なもので、なにしろちょいと集まろうか・・・となれば10分で行き来ができるのである(笑)
さて、今年の「暮れ2人会」~特にテーマというほどのこともなかったのだが、昨年夏にこのブログ<夢レコ>で話題にした、ビル・エヴァンス/ジム・ホールの『アンダーカレント』を、もう一度、聴き比べてみましょう・・・ということだけは決めておいた。というのも・・・この『アンダーカレント』~どういう訳だか、ステレオ盤を好む僕がモノラル盤を、そしてモノラル盤を好むrecoさんがステレオ盤を入手していて・・・だから場合によってはトレードということも互いに考えてのことだったのだ(笑)
ステレオ盤とモノラル盤の音の質感の違いは・・・前回~
《UAモノの方は「優雅で繊細」とだけ思っていた二人のデュオに、相当な力強さを感じました。エヴァンスのピアノがかなり近い音で入っていて(音量レベルそのものも大きいような感じ)かなり強いタッチに聞こえます。ガッツあるデュオ・・・という感じにも聴けました。
(ステレオ盤を聴いてみての印象)
やっぱり、青のステレオ盤、ある種、柔らかさが気持ちよく、そしてギター、ピアノのタッチの強弱感もよく出ていて》
~と表わしたとおりで、しかしステレオの方も決して「線が細い」わけではなく、タッチの繊細さを表出しながらも適度な量感も出ていて・・・この2人のデュオとしては、やっぱりステレオ盤の方が(僕には)好ましい質感だった。
多少なりとも「交換」を考えていたであろうrecooyajiさんも、自分の装置での聴き比べの結果、《ステレオ盤もいいなあ》と感じたようである。チラッと《僕の方はいつでも交換しますよ》と言ってみたら・・・recoさん「いやあ・・・えっへっへッ」とだけ返してきた(笑)というわけで、僕はまたUAJSの方を探さねばなるまい(笑)
さて・・・この2枚の Under Current~「音」の方が済んだので、2人の興味は「モノ(物)」に移った(笑) この2枚を並べて・・・表ジャケ、見開きの両面、裏ジャケ・・・とあれやこれやチェックすると・・・見開きジャケのデザインに若干の違いがあった。
上写真~モノラル盤 UAJ 14003 見開き左側の下に表記
右側のエヴァンスとホールの写真の位置~上より(下に余白)
上写真~ステレオ盤 UAJS 15003 見開き左側の上に表記
右側のエヴァンスとホールの写真の位置も下よりになる。
もうひとつ、ちょっとした発見もあった。2枚を横に重ねて背表紙を見比べていたrecooyajiさんが「あれ?これは・・・面白いな」とつぶやく。
モノラル盤、ステレオ盤ともに、背表紙には同じように「両方」の番号が表記されているのだ!
《下写真は~モノラル盤。BILL EVANS JIM HALL・UNDERCURRENT・UNITED ARTISTS JAZZ・UAJ 14003 STEREO UAJS 15003と表記》
《う~ん・・・モノラル番号とステレオ盤号が並んで書いてあるじゃないか(笑)さらに番号だけならまだしも、UAJS(ステレオ盤の番号)の方にはSTEREOという文字も入っている(僕の手持ちはモノラル盤なのに)これならUAJ14003の方にもmonauralと入れるべきじゃないか》
内ジャケ、センターラベルはちゃんと、モノラル、ステレオに応じた番号になっているのに。これは・・・「背表紙」だけは同じ版下を使ったということになる。UA社もここだけは手抜きしたか(笑)
しかしこれでは、このUnedrcurrntのように表ジャケにも裏ジャケにも「ひと文字」も入ってないデザインのレコードの場合、外見だけでは、モノラルかステレオか判別できないわけだ(笑)
そういえば・・・僕がこのUndercurrent(モノラル盤)をネットで入手した際、説明では「ステレオ盤」となっていたのに到着したら実際は「モノラル盤」だったということもあったのだが・・・ひょっとしたらその売り手は、このレコードの背表紙だけ見て、ステレオ盤だと思ったのかもしれない。
まあ・・・どうでもいいような話しではある(笑)
<サックス吹きラベル>は同じデザインだった。但し、このステレオ盤は溝ありで、モノラル盤に溝はなし。それから僕の手持ちモノラル盤のラベルは・・・なぜかややクリーム色がかった灰色で、この「クリーム色」については・・・まだ未解決である。面白いのは写真でお判りのように背表紙の番号表記は全く同じだが、その印字の色がセンターラベルと同じく、僕のモノラル盤はクリーム色となっていることだ。(モノラル盤をお持ちの方~そのセンターラベル情報などお願いします) *拙ブログ7月4日記事も参照
追記 1.~UAの「サックス吹きラベル」は、UAJ 14000番台(ステレオ盤はUAJS 15000番台)で、普通のUA盤とは別シリーズとなっているのだが、その「サックス吹きのセンターラベル」・・・これがどうにも謎である。上記の「クリーム色」も謎ではあるが、また新たな「謎」が浮上してきた。それは・・・
ステレオ盤のラベルに「溝なし」と「溝あり」の2種類が存在する・・・ということである。前回、7月の記事に載せた、Yoさん所蔵のUndercurrent(ステレオ盤)のセンターラベル(左の写真)を見ると・・・これが通常の「溝なしサックス吹き」だと思うのですが、上の写真(モノラル盤とステレオ盤を並べたもの)の右側のrecooyajiさん所蔵のステレオ盤ラベルは、ハッキリと「溝あり」でした。加えて3時方向にSTEREOという文字が表記されています。『「サックス吹きラベル」には溝はない』というのが、一般的な認識だったと思います。う~ん・・・ますます判らなくなりました(笑)
(2011年1月15日(土)追記)
追記 2.~「サックス吹きラベル 14000番シリーズ」のまとまった情報が案外なかったと思います。いつもコメントをくれる三式さんがリストにしてくれましたので、ここに掲載させていただきます。「**穴埋め」の箇所も判ったものは追加していきます。ミュージシャン名/タイトル名という型にしました。special thanks to Mr.三式さん!
《サックス吹きラベル~UAJ 14000シリーズ》のリスト
14001: john coltrane/coltrane time
14002: art blakey/three blind mice
14003: bill evans, jim hall/undercurrent
14004: ** danny small/woman, she was born for sorrow
14005: **charles mingus/wonderland
14006: gerome richardson/going to the movies
14007: kenny dorham/matador
14008: **
14009: **herbie mann/brazil,bossa nova & blues
14010: billy strayhorn/the peaceful side of billy
14011: **
14012: **king pleasure/mr.jazz
14013: zoot sims/zoot sims in paris
14014: **billie holiday/lady love
14015: ken mcintyre/year of the iron sheep
14016: vi redd/bird call
14017: duke ellington/money jungle
14018: ** llod mayers with oliver nelson/a taste of honey
14019: ** oliver nelson/impressions of phaedra
14020: **
14021: **
14022: ** herbie mann/st.thomas
14023: ** alice maccarity & the faith temple choir/our most beloved spirituals
14024: charles mingus/mingus townhall
14025: ** rose murphy featuring slam stewart/jazz, joy and happiness
14026: **
14027: **
14028: howard mcghee/nobody knows you when you're down and out
14029: moe koffman/tales of koffman
14030: **
14031: king pleasure/mr.jazz
14032: **
14033: bud freeman/something tender
注1~king pleasure(男性ヴォーカル)のMr.Jazzが、12と31とダブっているが、14012は間違いなくキングプレジャーのMr.Jazzだ。私の手持ち盤 14012は2ndラベル(マルチカラー~ラベル上部に赤・黄・青の水玉)でした。NOTさんのブログhttp://blogs.yahoo.co.jp/not254/archive/2007/06/10にも、同じMr.Jazz(2nd)が載っています。なお、14012の1stがサックス吹きラベルであることは写真で確認していますが、14031のMr.Jazzについては未確認。ゴールドマイン本には14031Mr.Jazzと記されており、たぶん同タイトルの再発だろう。
注2~新たに判明した14018と14019は、どうやらオリバー・ネルソン絡みらしい。14023はゴスペルのようだ。
注3~ちょっと注目すべきは・・・14004のDanny Smallの作品。ほとんど情報もないのだが、"a great unknown vocalist. reeds by Zane Paul"なる説明からヴォーカルものだと判った。 この管楽器奏者の名前も聞いたことがない。ジャケットは「目から涙」のイラストもので印象に残る。 写真はネットから拝借~
追記3.~「サックス吹き」だけでなく、UAレーベルのUAL4000番台/UALS5000番台についても、なかなかまとまった情報がなかったようです。今回、たまたま検索中に発見した<UAレーベルのタイトル番号順リスト>のHPのアドレスを付けておきます。Yoさんとのコメントやりとりでも細かい再発まで判る・・・ということで一見の価値ありかと思います。興味ある方はぜひ見てみてください。そのHPは、rateyourmusic.comという名前のようで、とにかく膨大なレーベル情報で一杯です。アドレスは以下~http://rym.fm/list/lochness/united_artists_lps__usa__f1
さて・・・United Artists(UA)というレーベルについては、夢レコ7月の記事で、「アンダーカレント」だけでなく、
Booker Little +4(ステレオ盤)
Motor City Scene(ステレオ盤)
にも触れたのだが、いかんせんまだまだサンプルが少ない。
そこでもうひつと・・・UAレーベルのステレオ/モノラルということで、たまたま揃ったのがミルト・ジャクソンだ。
Milt Jackson/Bags' Opus(UAL 4022) モノラル赤ラベル
Milt Jackson/Bags' Opus (UAS 5022) ステレオ青ラベル
モノラルがUALの4000番代、ステレオがUASの5000番代という例のパターンだ。こちらはセンターラベル以外は表ジャケ右上のレコード番号だけだ。
こちらはモノラル盤を先に入手した。そのUAレーベルはステレオ盤がいいよ、と言ってたわりに、このモノラル盤・・・これが実に良かったのだ(笑)あまり芳しくない方の例に挙げたMotor City Sceneやthe Band & I、それからModern Art で、僕が感じた「(ステレオ盤と比べて)楽器の音がちょっと引っ込んで詰まったような感じもまったくなく、テナーやトランペットの抜けもよく各楽器の音圧感も充分、主役のミルト・ジャクソンのヴィブラフォンも厚めに鳴って音色に艶もある。これを聴いた僕はまたスケベ心を出した。モノラル盤でこんなに良いのならステレオ盤ならもっといいんだろうな・・・(笑)そうしてわりと最近、首尾よくもう1枚のBags' Opusを入手できたのだ。待望のその青ラベルを、さっそく聴いたみた。
A面1曲目~ill wind
このトラックは管なしのピアノ入りカルテット。ミルトのヴィブラフォンがちょい左によって、そしてモノラル盤での鳴りに比べれば太さが減りちょっとスマートな感じになった。その分、バックで鳴るフラナガンのピアノはモノラル盤よりクリアに聞こえる。ドラムスのブラッシュの「ザワザワ音」・・・これが音量的にはモノラル盤でも大きく強く聞こえるのだが、僕にはそれがちょっと暑苦しい。ステレオ盤だと、その「ザワザワ」が被(かぶ)らずに聞こえて、さらにちょいと左側にいるドラムのその全体の鳴りとしての気配がよく判るような気がする(ごく一般論で言っても、同じ録音音源なら、ドラムのシンバルとその鳴りの余韻とかはステレオ盤の方がよりクリアに聞こえる・・・と認識している) チェンバースのベースはどちらの盤でも同じようによく聞こえる。
A面2曲目(blues for Diahann)~管入りだとどうなるのか?
こちらは判りやすい。モノラルではわりと締まって聞こえたベニー・ゴルソンのテナーが、やや右によって、いや、そんな位置のことよりも・・・テナーの音色が、音色の輪郭が拡がって柔らかくなった。テナーの音量も若干、大きくなったように聞こえる。具体的には・・・たぶんゴルソンの特徴であるサブトーン(少し息の抜ける音がススゥ~(ズズゥ~)と聞こえるような音)の感じが、より強調して聞こえるのと、スタジオの空間に響いた自然なエコーの(残響音)感じを、ステレオの方がたくさん拾っているという感じで、僕としてはこちらの方が(ステレオ盤)実際の聞こえ方としては、ベニー・ゴルソンのテナーの音色に、より近いのじゃないかな・・・とも思うわけである。アート・ファーマーのトランペットについても、ほぼ同様な感想で、ファーマーの出した後の音をフワ~ッと余韻を残すような鳴らし方・・・あの音色表現には、ステレオ盤の方がより似合っている・・・と感じている。
但し、モノラル盤の方が、定位も真ん中だし、テナー、トランペットの音も「より締まって(ステレオ盤に比べて)」聞こえるので、やはりその方が好みだという方も多いだろうと思う。
トータルとして、スタジオでの演奏のリアリティというか楽器としての自然な鳴りを欲する方はソフトな感じのステレオ盤。
とにかく主役のミルトを大きな音・音圧感で聴きたい方、管楽器の締まり感を重んじる方は・・・やはりちょいとビターなモノラル盤の方が好みに合うように思う。
というわけで、このBags' Opus(UA)については、どちらの盤でも優秀な音が聴けるというのが僕の感じ方です。
いずれにしても、元が良い録音であって、いいミキシング(特にステレオ録音で撮ってモノラルミックスにした場合)であれば、ステレオ盤でもモノラル盤でもどちらでもいい・・・ということですね(笑)
こんなわけで、僕のUAレーベルへの興味はまだ続いている(笑)
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