チャーリー・パーカー

2011年6月 4日 (土)

<ジャズ回想 第24回>また、いいレコードをたくさん聴いた。

久々にYoさん宅・・・あっという間の7時間。

毎年、初夏の頃になるとYoさん宅に集まるのだが、今回はホストのYoさん、PaPaさん、denpouさん、recooyajiさん、konkenさん、bassclefの6人が、青い顔したウーレイ(スピーカー)の前に陣取った。皆、声こそ出さないが「ぐへへへ」という顔をしている(笑) さあ・・・お楽しみの始まりだ。

この日、若干の逡巡(しゅんじゅん)の後、Yoさんが選んだのは、ドルフィーのLive In Europe vol.1だった。ドルフィーから・・・というのはこうした音聴き回ではちょっと異例かもしれない。演奏会でもレコード聴きでも、たいてい最初の曲は、ちょい軽めというかリラックスした感じの曲・演奏から始めることが多いように思う。だから・・・初っ端(しょっぱな)からドルフィというのは、なんというか・・・若干、ハードかもしれない(笑) だけどこれには訳がある。
実は少し前に「この頃はドルフィーを聴いている」というYoさんからのメールがあって、じゃあ次回の音聴きで会は、「ぜひドルフィのバスクラ(バスクラリネット)のソロ~God Bless the Childを」とお願いしていたのだ。Pr7304_j_2
E.Dolphy/Live in Europe vol.1(prestige) 2nd紺ラベル
god bless the child 
この演奏・・・ドルフィのまったくの独り吹きである。このバスクラ独奏でのGod Bless the Child・・・僕は高校の時、FM放送から録音したカセットを聴きまくって、そうして大好きになったのだ。
僕はジャズという音楽を中学3年の頃から好きになり、そのうち聴くだけでは飽き足らなくなり、大学のジャズ研でウッドベースを触るようになった。ベースという楽器を選んだのはたぶん偶然だが、僕は「音」に対する感性の根っこがわりと単純らしく、音楽を聴く際、概(おおむ)ね、高い方の音より低い方の音を好むようだ。そんな単純脳の僕が苦手なのは・・・まず、ハードロックのエレキギターの音。あれがダメである。そしてロックのヴォーカルはたいてい甲高い声で叫ぶわけだから・・・これもけっこう辛(つら)い。
ジャズヴォーカルでも高めの声を張り上げるタイプ(例えば~ジュディガーランド)よりも、低めで落ち着いた声質(例えば~アン・バートン)を好む。
ジャズ聴きにおいての「管楽器の音色」についての好みで言えば・・・まずサックスが好きだ。そしてアルトよりテナーだ。
低い方がいいのなら、バリトンサックスが最も好きなはずなのだが、そうでもない(笑) バリサクの音も嫌いではないが、たまに聴くといいなあというくらいで、ハードでゴリゴリなタイプ(例えばペッパー・アダムス)よりも、ライトな音色タイプ(例えばジェリー・マリガン)の方が好みである。
金管のトランペットも、もちろん嫌いではないが、トランペットにおいても、強いアタックで高音域のフレーズを吹きまくるタイプより、ゆったりした音色で中音域のフレーズを吹く方が好みだ。
そうだ・・・トロンボーンも実にいい音色だ。時にはトランペット的なアタックも効くし、何よりもスタンダード曲をゆったりと歌う感じにはピッタリの音色じゃないか。ジャズ聴きも長いがこの15年ほどか・・・ボントロをますます好きになってきている。
クラリネットも・・・いい。実はクラリネットなんて・・・と長いこと思っていたのだが、アート・ペッパーの「家路」を聴いて、あの独特な表現力を醸し出すこの楽器の魅力に目覚めたのだ。あまり音源がないようだが、レスターヤングのクラリネットにも同じような魅力を覚える。ただクラリネットは、奏者によってかなり音色のクセが違い~これはクラリネットに限らないが~わりと甲高い感じの音でパラパラと吹くベニー・グッドマンはほとんど聴かない。好んで聴くのは、ゆったり音色のバディ・デフランコくらいか。ソニー・クラーク入りのバディ・デフランコの音色は、しっとりと暖かく、実にいい。うん、クラリネットまできたな。
そこで・・・・・バス・クラリネットなのである。
これが・・・いい! バスクラというのは、立ち姿が長くてその形だけでも絵になる楽器なのだが、もちろん「音」の方もチャーミングなのだ。くごもったように暗くて、しかし仄(ほの)かに暖かくもあるような、あの不思議な音色。そしてサックスに負けないくらいの音量と音圧感。実は最近、このバスクラという楽器に触る機会があって、ちょっと吹かせてもらったのだが・・・低い方を鳴らした時、体に伝わってくる楽器の胴鳴り振動に僕は痺れた。
そしてバスクラと言えば・・・これはもう、ドルフィーなのだ!Pr7304_l

ドルフィーは、この曲の原曲メロディを、おそらくは、わざと出してこない。始めのうち・・・ドルフィーは、なにやら音をまさぐるように、バスクラの低音域を使ったアルペジオっぽい音階をしつこく続けてくる。そうしてある時~たぶん曲のサビの部分か・・・ここでいよいよ、高い音を吹く。これが・・・とても印象的で、それまでの低い音域でのファットな音圧感豊かな音色とは違う質感の、ちょっと歪んだような、ノドをキュ~ッと絞ったような、そんな悲痛な音色なのだ。でも・・・それが効く。バスクラ独奏においての静と動。抽象と具象という感じがしないでもない。まあそんな解釈はどうでもいい。とにかく・・・このバスクラ独奏は、純粋に「ドルフィーという人間の音の世界」なのだ。僕らはその「音」に、ただ浸(ひた)ればいい。

Yoさんのシステムはバランスがいい。だから7時間、聴いていても音に疲れはしない。音の説明はまったく難しいことだが、あえてシンプルに言えば~
まず低音のエネルギー感が凄い。そのエネルギー感とは・・・量感だけでなくその演奏においての奏者が意図して発したであろう強弱の表現が~ピアニシモ(弱く)とフォルティシモ(強く)の楽器の鳴り具合。とりわけ「ここぞっ!」と強く吹いた・弾いた時に、ぐぐ~っとそこに現れるエネルギー・音圧感・存在感の体現~凄いのだ。これを「音楽的なリアリティ」と表現してもいいかもしれない。
以前から、このウーレイで聴かせてもらうロックのバスドラの音の強弱のニュアンスとそのリアリティ(存在感)に驚いてはいた。ウッドベースも同様である。そして・・・バスクラのような、なんというか低音域に溜めたような音圧感が発生する楽器にも、このウーレイは素晴らしい鳴り方・・・いや、表現をしてくれた。ドルフィー好きが聴いたら・・・これはもう「う~ん・・・」と唸るしかないだろう(笑)
「低音」の話しになったので、ここで、低音全般に拘るYoさんの低音観みたいなものを紹介してみたい。メールやりとりの中で、オーディオに疎い僕のために、Yoさんが判りやすく説明してくれたものだ。
*Yoさんの了承を得てここに転載します。
≪私は「音楽のファンダメンタルは中音だけど、音のファンダメンタルは低音だ」と考えています。私の言う中音とは音楽帯域の意味で楽譜で表される音の範囲のつもりです。SPのようなレンジの狭い(中音だけの音)でも音楽の感動を味わえますから音楽にとって大事なのは中音だという事は当然です。
しかしオーディオで再生音の音作りをするとき最も大事なのは低音と考えています。特に私のように等身大のエネルギー感を出そうとする場合に低音という音のの土台がしっかりしていないと楽器の実在感や本当の臨場感は得られません。
低音が大事な理由のもう一つは最も調整が難しいのが低音で、それが中音以上に影響する事です。
部屋の影響を最も受けやすいのも低音ですし、低音が原因する共振、共鳴の倍音成分が中音以上にかぶったり音全体に悪影響が出てしまったりもします。中、高音のうるさいところなどが結局低音が原因していたという経験は何度かあります≫

さて・・・会の最初のうちは、皆さん、柄にもなく(笑)けっこう遠慮しているので、手持ちのレコードをなかなか出さない。だから、ホストのYoさんがいくつかレコードを選んでいく。

Zoot Sims/Zoot Sims In Paris(UA サックス吹きラベル)
Uaj_14013_j
UAレーベルへの興味からモノラルとステレオの聴き比べもしてみた~Uajs_15013

ステレオではやや左からズート。わずかにエコーがかかったようなふっくらしたテナーの音色か。でもこのエコーは、明らかにこのライブ会場のの自然な響きエコーだから気にならない。 むしろ、いかにも「ライブ」という感じがよく出ていて、そんな音色がリラックスしたズートの芸風ともピタリと合致して、これはもう実にいい雰囲気なのだ。Yoさんも「ズートで一番好きかもしれない」とのこと。Uaj_14013_l_2この「サックス吹きラベル」は、ステレオとモノラルで質感に大きな違いがなく、どちらもいい音だった。「UAはステレオがいい」と思ってはいるがもちろん全てのタイトルにそれが当てはまるわけではないようだ。

Frank Strozier, B.Little, Geroge Coleman~/Down Home Reuion(UA)
Uas_5029_j ステレオ盤(青ラベル)
Uas_5029_l_4   うん、これはいいっ!最初の音が出た瞬間に僕はうれしくなってしまう。ソロの先陣を切るのはストロジャーのアルト。これが実に太っい音色なのだ。ストロジャーというと、vee jayレーベルのfantasticでよく知られているアルト吹きだと思う。
僕はこの人を、ジャズ聴きの初期からマッコイ・タイナーのtoday & tommorrow(impulse というレコードで耳にしていて、その後は、MJT+3というグループや jazzlandの作品を聴いてきたが・・・このUA盤を耳にすると・・・ストロジャーのアルトって、こんなに艶やかでしかも逞(たくま)しい音色だったのか!と驚くほど太い音色と、そしてもちろん気合の入ったいいソロじゃないか。素晴らしい!
それにしても、中央からアルトが押し出してくる、このリアルな音圧感はどうだ。こういう、いい録音の、もちろんいい演奏のレコードを掛けると・・・Yoさんのウーレイ(スピーカー)も、実に気持ちよさそうに鳴っている。
続くソロは、ブッカー・リトル。中央からやや左から鳴る。独特なちょっとクールな響きで、しかし、これも独特な内に秘めたような情熱・情感を感じさせるトランペットだ。リトルはさっきもドルフィのFive Spot vol.2で聴いたが、私見では、フレーズがどうのこうの言う前にあの「深く鳴る音色」を味わうべきタイプのペット吹きだと思う。音色そのものに説得力があるという感じだ。
  Dscn2827_2そして、ベースがジョージ・ジョイナー・・・これもミンガス張りの強いアタックで弦を引っ張り倒したような、ザクザクしたようなベースの音色が魅力的だ。やっぱり・・・United Artistsの青ラベル(ステレオ盤)はいいのだ(笑)
ちなみに僕の手持ち盤は、日本キングから発売された1500円盤(ステレオ盤)だけど、各楽器の音圧感・鮮度感も案外、悪くないので・・・この日本盤でガマンしようではないか(笑)

Prlp_7116_j_2 Four Altos(prestige) NYCラベル
Prjp_7116_l_2 「盤質は悪けど・・・」と前置きして、Yoさんが、PrestigeのNYCラベル盤を出してきた。音はさすがの鮮度感だが、それよりも、Yoさん、こんな風にみんなで聴くときに「楽しめる」レコードも好きなのだ。
このアルト4人・・・誰か、判る?ということで、さあ、皆、聴き始める(笑)
「これ、誰?」「う~ん・・・判らん」「聴いたことないアルトだね」
誰も~だと断言できない(笑) 誰もが、フィル・ウッズだけは判るが、残りの3人がなあ・・・だから・・・ソロが2人目、3人目と進むと、「あっ、これは、フィル・ウッズ?ウッズだね」という具合なのだ。だけどウッズとクイルもよく似ているぞ(笑)
僕の認識では・・・ウッズと似ているけど、もうちょっとだけ荒っぽいかな・・?というのが、たぶんジーン・クイルなのだ。
となると・・・残りの2人が、サヒブ・シハブとハル・スタインということになる。サヒブ・シハブというと、たいていはバリトンサックス吹きとしての認識だろうか。そのシハブのアルト? それにほとんど録音のないハル・スタインのアルトを「おっ、ハルだ!」とすぐに判るようなジャズ好きなんているのだろうか・・・いや、日本に5人くらいは居るんだろうな。スタインに興味ある方は、はとりあえず、あのprogressive盤(もちろん日本盤でも)を聴くしかないだろう。それにしても、この「4アルト」・・・ソロの繋ぎ部分で4人が間髪を入れずに次ぎの奏者が吹き始めるので、うっかりすると「あれ?今、替わった?いや、まだか?」てな具合で、下手したら、ソロ奏者が替わっても気が付かないこともあるかもしれない。こういう時、モノラル録音はちょっと辛い(笑) 
てなわけで・・・アイラ・ギトラー氏の裏解説に頼りましょう!というのが皆の結論だった(笑) ボブ・ワインストック氏も・・・まったく罪作りなレコードをこさえてくれたものだ。

さて、ここで、denpouさんが取り出してきたのは・・・
Original_lp3_002 Rita Rice/Cool Voice of ~ vol.1(オランダphillips) 

Original_lp3_001このレコード・・・CDを持ってはいたが、やはりLPが欲しくなったその頃、ヴォーカル好きのkonkenさんが同じタイトルの米columbia盤を2枚持っていたので、その内の1枚を交換してもらったのである。
そのジャケ違いの米columbia盤もなかなか人気があったようだが、リタ・ライスがオランダ出身でA面6曲がオランダ録音だから、やはりこの蘭Phillipsがオリジナルだろう。
konkenさんからのリクエストで、 I cried for you を聴く。このオランダ盤・・・音が良かった。
欧州盤独特のちょっとツンと澄ましたような感じの音質で、アメリカの黒人ハードバップのバンドがもう少し洗練された巧い白人バンドのようにも聞こえてくる。もちろん歌伴(ヴォーカルの伴奏)だから・・・ブレイキーもいつもより静かめに叩いたんだろうが、ブレイキーのシンバルがいつもより抑え目に聞こえる(笑) 
Dscn2826 同じシステムで聴き比べたわけではないので、あまり意味はないかもしれないが、米columbia盤(僕の手持ちは白プロモラベル)とはだいぶ音の質感が違うようでもある。このレコードA面6曲はブレイキーのジャズ・メッセンジャーズのB面6曲については、Recorded in the Unitied Statesと表記されているので、B面については、米Columbia盤もオリジナル・・・と言えなくもない。この米Columbia盤のThe Cool Voice を聴いてみると・・・Phillips盤に比べ、ベースの音が太めに大きく、そしてドラムスの音がザラついたような感じに聞こえて・・・やっぱりアメリカの黒人ジャズの音がするのである。いや、そういう気がする(笑)
その辺りの音の印象のことをヴォーカル好きのkonkenさんに尋ねてみると、彼はこんなコメントをくれた。
≪先入観があるのかもしれませんが、基本的にはアメリカ人は米盤、ヨーロッパ人は本国盤がいいと思います。リタ・ライスも全部聴いていませんが、バックがメッセンジャーズなんで米盤の方が好みかな?というカンジですが、歌はオランダ盤の方がいいかな? だから反対の地元バックのA面はオランダ盤の方がいいかもしれません。
聴き慣れてるせいかもしれませんがジャズには米盤の方が親近感があります。1980年代前後にECMが一時ブームになったことありましたが、ちょっと醒めたような質感はジャズ自体が醒めたような感じがして自分のジャズを聴こうという気持ちまで醒めさせたような印象をいまだにに引きずってるようです。ジャズは音程がズレていようと録音にクセがあろうと熱いモノが伝わった方に軍配を挙げたいです≫
もともとこのレコードのプロデュース意図は・・・たぶん、ヨーロッパの女性歌手がバリバリのハードバップバンドに挑戦する~みたいなことだったようにも推測できる。そういう気持ちもあって聴くと、ライスは意図的にねっとりとした歌いまわしをしているような感じもする。これまであまり意識して聴いたことのないリタ・ライスが、やはりとても巧い歌い手だということがよく判る1枚であった。もう1曲・・・と聴いたバラードの my one & only love は、ホレス・シルヴァー名義のstyling of Silver収録のmy one & only loveと同じアレンジだった。

denpouさんはEP盤もお好きなようだ。
Dscn0204Dscn0202metronomeのEP盤~S.Getzのストックホルム録音の内、4曲入り(school boy 、I have only eyes for youなど)録音自体がかなり古いけど、さすがに録音したその国のEP盤・・・独特の生々しさのある音だが、素晴らしい録音とは言えない。これらゲッツの音源はroostの10インチ盤、12インチ盤も聴いたが、どれも音質はイマイチなようだ。


PaPaさん、満を持してこの1枚を~
Charlie Parker/~(clef)MGC-157 10inch盤 「鍵穴のパーカー」だ!Cimg7398
垂涎(すいえん)盤が出た。クレフの10インチ盤・・・このcover artはもちろんストーン・マーチンだ。マーチンのイラストは・・・細部を見ても面白いがそれよりパッと見た全体の構図・色合い~その印象度が圧倒的に凄い。ビビッとくる。わりと多めに赤色系を使うマーチンだが、この10インチ盤のcoverは、全体に黒っぽい色合いの中に、くくっと効く明るい色を持ってくる・・・そんな色使いが絶妙だ。、それにしても、なぜ主役のアルト吹きを狭い鍵穴から覗かなくてはならないのか(笑)Cimg7400_2
comfirmation~1953年録音だから、パーカーとしては後期の録音ではあるが、ドラムにマックス・ローチ、ピアノにアル・ヘイグという当時の新鋭をバックにしたワンホーンで、I remeber you、now's the time など、どの曲も、ぐぐっ と気合の入ったセッションだ。
この10インチ盤・・・アルトの音色がものすごく艶やかで、生々しい音圧感もあり、そしてやっぱり・・・パーカーのアルトは「重さ」を感じられる素晴らしい音質だった。録音そのものがしっかりしているようで、古い録音を聴き込んで出来上がってしまっているかもしれない「パーカーの音」のイメージが覆されるような、パーカーの音だった。これが50年も前のレコード盤の音とは・・・まったくレコードというものは凄いものである(笑)
そういえばいつものPaPaさんは、ちょいマイナーなサックス吹きやヨーロッパの管奏者をセレクトしてくるのだが、今回はあえて「ジャズ大物盤」を選んできてくれたようだ。パーカーの後は~
Cimg7404_2 A.Pepper/Meets the Rhythm Section(contemporary)モノ
M.Davis/kind Of Blue モノラル と Yoさん~Kind Of Blue ステレオ(プロモ白ラベル)
という流れになった。
どれも真に名盤で、音も演奏も素晴らしくて、「いやあ・・・やっぱりジャズはいいなあ」という幸せな気持ちになってしまった(笑)

Cimg7402 kind Of Blueは、同じCS六つ目ラベルでもステレオ盤の人気が異常に高いようだが、このモノラル盤も相当によかった。CBSレーベルは品質が安定していて、モノラルでもステレオでも音の質感がそれほど大きく変ってしまう・・・というようなことも案外少ないと思う。
そしてこのKind Of Blueのモノラル盤は~
Cimg7414 特に3人の管楽器の音量・音圧感が大きく聞こえて迫力がある。だからコルトレーン、キャノンボール、マイルスを強烈にたっぷり味わいたい方はモノラル盤の方が好みになるのかな、という気がする。この後、Yoさん手持ちのステレオ盤(プロモ:白ラベル)も掛けてみると・・・定位としては、コルトレーンとエヴァンスが左側に、キャノンボールがちょ右に、と変ったり、全体的に管楽器がちょっとおとなし目に聞こえたり、ベースが少し薄みになったりもしたが・・・僕はやはり(笑)Kind Of Blue については、ステレオ盤のややライトな(軽い)感じのサウンドの方が好みのようだ。

konkenさんは渋い1枚を出してきた~
Al Grey/The Last Of The Big Plungers(argo) ステレオ盤
Grey_1特にargoレーベルの音がいい、という認識はなかったのだが、このステレオ盤、 やけに音がいい。録音エンジニアはMalcolm Chisholmと記されている。 konkenさんはだいぶ前からトロンボーン好きのようで、こういうボントロの渋い盤までディグしているのだ。Argo_gold_4アル・グレイはベイシー楽団のボントロ吹きで「プランジャー」というのは、ゴムでできたお椀みたいなもので(ちょうどトイレが詰まった時の掃除道具みたいな)それをトロンボーンの音の出る開口部に当てたり外したりして、ボントロの音色を「ぅわわわ~・ムワワワ~」と変化させるのである。1920年代~1940年代のビッグバンド時代には、この「プランジャー奏法」がはやったらしく、だからこのLPのタイトルは、そういうプランジャー使いの最後の名手・・・というような意味合いだと思う。  
bluish greyという曲・・・出だしからCherles Fowlkesのバリサクが効いている。そして太っいベース音の主はエディ・ジョーンズだ。このベース弾きはとにかく音がでかそう。Grey_2ビッグバンドのスイング感を下からどっしりと支える感じのベース弾きだ。こういう地味だが太い音色と大音量でバンド全体を支えるタイプのベース弾きもやっぱりいいもんだなあ・・・という気持ちになる。というのも、Yoさんのシステムでこういう録音のいいレコードを聴くと、ウッドベースの存在感が本当に凄いので、いろんなベース弾きのベースラインはもちろん、音量・音圧感、そして音色の微妙な違い様までしっかりと感じられるので、そういうジャズにおける「低音サウンド」を浴びることは、ベース好きとしては、これはもう極楽なのである。

それにしても・・・いい演奏の詰まったいい録音のレコードをいい音で聴く・・・というのは、なんと気持ちのいいことだろうか。
ジャズはいよいよ・・・止められない(笑)

*ジャケット写真提供~
E.Dolphy/Live in Europe vol.1(prestige) 紺ラベル
Zoot Sims/Zoot Sims In Paris(UA) サックス吹きラベル
Frank Strozier, B.Little, G.Coleman~/Down Home Reuion(UA)青ラベル
P.Woods、G.Quil、S.Shihab~/Foru Altos(prestige)NYCラベル
はYoさん提供。

Rita Rice/Cool Voice of ~ vol.1(オランダphillips)
Stan Getz/metronomeのEP盤
はdenpouさん提供。

Charlie Parker/~(clef)MGC-157 10inch盤
A.Pepper/Meets the Rhythm Section(contemporary)
M.Davis/kind Of Blue モノラル盤
はPaPaさん提供。

Al Grey/The Last Of The Big Plungers(argo) ステレオ盤
はkonkenさん提供。

皆さん、ありがとうございました。bassclef


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2008年10月10日 (金)

<ジャズ雑感 第26回>パーカー再び!

音色・・・その音圧感、存在感からくる説得力みたいなもの。

ジャズ聴きも長くなると、こんなことを言ったりする・・・「この人のサックスは重いね」 「う~ん・・・なんか軽いなあ」
楽器から発された音を聴いた時、聴き手はなぜ「重い」あるいは「軽い」と感じるのか? いや、感じられるのか? 
それはおそらく・・・そのミュージシャンの「音色」からだけでなく、その「ビート感」から生じてくるのでは・・・と考えている。ここでいう「ビート感」とは・・・(僕の解釈では)「リズムに対してのノリ方」という意味合いである。

004April In Paris(Verve)MGV-8004 ~I'll Remember Aprilが好きだ。パーカーのなにやら白痴美的な音色に、しみじみした情感を感じる》

話しを判りやすくしよう。同じ楽器~例えば、アルトサックス・・・チャーリー・パーカーとリッチー・コールを比べてみると、どうだろうか?
どう考えても(聴いても)・・・やはり、パーカーの方が「重い」だろう。もちろんそれは純粋に感覚的なものである。だがしかし、そういう感じ方~「パーカーは重くて、コールは軽い」~は、ある程度ジャズを聴き込んだ人には、無理なく共通した感覚だとも思う。
ひょっとしたら、リッチー・コールという人のイメージ(ちょっとしたお笑い的なノリを見せるタイプ)が、「音も軽い」と感じさせてしまう部分も多少はあるかもしれないが、2人の「音」には、やはり相当な違いがあることは確かだろう。コールがパーカーと同じようなフレーズを楽々と吹いたとしても、当たり前の話しだが、受ける肌合い・質感・・・それはだいぶ違う。では、いったい何が違うのだろうか?
どうやら・・・この辺りの話しを突き詰めていけば・・・今回、僕が言わんとする「音色とビート感~それら全体から醸し出されるグルーヴ感」みたいなことの核心に、少しでも近づけるかもしれない。
この辺の話は、もちろん「好み」とは別である。だから「オレは重々しいパーカーより、軽やかなコールの方が好きだ」という方が存在していても何の不思議もない。ただ、ジャズを好きになって、そしてアルトやテナー~いろいろなサックス吹きのレコードを聴いてくると・・・どうしても、チャーリー・パーカーという人の凄さ~そうして、そういうミュージシャンがあの時代に存在していたということの凄さ~みたいなものを感じずにはいられない。ジャズ好きなら、たぶん・・・そうなるしかないのだ(笑)

皆がパーカーは凄い、凄いというが、いったい何が凄いのか? と、そう思ってる方も、案外に多いのでは・・・と推測している。おそらく・・・パーカーって、何やらパラパラ吹いているだけでよう判らん・・・音も悪いし(笑)という感じだと思う(笑) 好きで聴いているジャズ(音楽)なのだから、自分の感性にズバッと入り込んで来ないタイプのジャズを無理して聴くことはない・・・とも思う。しかし、パーカーだけはある意味、理屈抜きで「感じとって」ほしいという、少々、啓蒙的な気持ちもないわけではないので・・・僕は今こうして、とても難しいことにチャレンジしようとしているのである(笑)
「パーカーの凄さ」をヒトコトで言うと・・・「音色の凄さ」なのである!あの「太くて重い音色」。そして~なにやら白日夢を見ているかのような呆(ほう)けたような(これは僕の思い込みでしょう:笑)しかし~「力感のある音色」・・・この辺のことは、<夢レコ>の前の記事「エリック・ドルフィという人」にも少し記したかもしれないが、重ねて言えば・・・ジャズという世界では、こうしたある種の濃厚さは絶対的な勲章なのだ。

当たり前の話しだが、楽器を始めて最初の内は、たぶん音はヘロヘロである(笑)(管楽器の場合)ブレスや唇のコントロールができないから、安定した音量が出ないし、音程も定まらない。つまり楽器の初心者の音は、誰が聴いても「ヘタ」なのである(笑)しかしその初心者も、徐々に「巧く」なってくる。ある程度の音量も出てくるようになって、ピッチ(音程)もそこそこ安定してくる。
そして何よりも運指がスムースになり、ちょっと難しいフレーズもこなせるようになる。こうなると、嬉しい(笑) 管楽器というのは・・・(たぶん)曲のテーマを吹くこと自体が楽しい楽器なのである(もちろんアドリブも含めてだが)だから、どんどんと曲をこなしていく。速いテンポも軽々とこなせるようになる。とても巧い。そしてそういう「巧さ」にまで達したミュージシャンは、器楽の高みを目指す者として素晴らしいと思う。
しかし、そうしたタイプにわりとあるのだが、~テーマやアドリブをいくら「巧く」吹きこなしても、なぜだかこちらの心に訴えるものが薄い。そうして全体から受ける印象が、妙に「軽い」のである。
あえて分析的に言えば・・・おそらく「音色に(自覚的な)個性がない」「フレーズが方法論的」そして「ビートにタメがない」~そんなタイプが多くなっているように思う。50年代のジャズマンのそれぞれに個性のある吹きっぷりを知ってしまった身としては・・・そんなタイプのジャズ(ミュージシャン)には、どうしてもある種の「物足りなさ」を感じてしまうようだ。
そうしてそんなある時、パーカーを聴くと・・・これはもうぶっ飛ぶのである(笑)
パーカーは・・・まず音が大きい。バリバリと大きく響く。ひょっとしたらアルトのあの拡がったホーン全体がビリビリと歪んでいるのでは・・・と思うほど鳴っている・・・ように聞こえる。それから「ノリ」がまた凄い。判りやすく言えば「タメ」がある・・・ということだと思うのだが、その「タメ」とは具体的にはどういうことなのだろうか。それを僕なりに解釈すれば・・・例えば8分音符で長いフレーズを吹く時なども、たっぷりとテヌートの効かせて(一音一音を粘るように伸ばす感じのこと)うねるようにその長いフレーズを吹き倒す。だから「タメ」があり、どんなフレーズにも粘りながらキレがある・・・そんな感じなのだ。そうしてこれこそが・・・「ジャズ(っぽさ)の秘密」なのだと、僕は信じている。そんな吹き方をする(しようとしている)パーカーと、巧いだけのアルト(速いテンポも軽々とこなせる~テーマやアドリブをいくら「巧く」吹きこなしても~全体から受ける印象が、妙に「軽い」)とでは、その根底のところで大きな違いがあるのだ。
パーカーの凄さは「粘る8分音符」だけではない。アドリブが乗ってくると、時にパーカーが見せるあの16分音符! あの「倍テン」こそ、それまではおそらく誰もやらなかった・・・いや、やろうとしなかったパーカー独特のアドリブだと思う。そしてその「閃き」に満ちた16分音符でさえ・・・充分に重い(笑)
ハード・バップ調4ビートにおけるジャズのアドリブは、普通の場合、8分音符中心になるので、16分音符でのアドリブ展開になると、それを「倍テン」と呼んだりする。1小節4拍に乗っかって「パッパ・パッパ・パーラ・パーラ」と吹くのが普通の8分音符フレーズだとすると、パーカーは時にこう吹く~「パラパラ・パラパラ・パラパラ・パララ~」と。しかもそのフレーズの「閃き」ときたら・・・いったいパーカーという人のアタマの中はどうなってるんだ~!(笑)果たしてどんな具合で、彼のアタマにあんな宇宙的とも言えるフレーズが(それまでのジャズ言語には存在しなかった)浮かんできたのか? やはり・・・パーカーは凄いのだ。

そういえば、今回の記事~冒頭に僕はこんなことを書いた。
(音色が重いか軽いか・・・それは)《そのミュージシャンの「音色」からだけでなく、その「ビート感」から生じてくるのでは・・・と考えている。ここでいう「ビート感」とは・・・(僕の解釈では)「リズムに対してのノリ方」という意味合いである》
パーカーを聴いて感じる、その「重さ」の秘密。僕なりの答えは・・・こうだ。
《パーカーはその音色も重いが、それ以上に、「タメ」(テヌート)を効かした粘りのあるフレーズと、それら全体から表出されるビート感そのものが重い》 
ごくごく単純に考えれば~パーカーはおそらく・・・たくさん息を吸い込み、それを強く長く吹き込みつつ・・・鋭いタンギングと柔軟なフィンガリングも交えつつ・・・閃(ひらめ)いたフレーズを自由自在に表出している~そんな風に言えるのかもしれないが・・・それがいかに大変なことか(笑)
パーカーが死んでから50年以上も経っているわけだが、パーカーのあの「太くて重くて速くて、しかもキレがある」感じに、最も迫ったのは・・・僕は、ドルフィだけだったと思う。

そんな風に、太くて重い音色で吹きまくるパーカー・・・それは聴く側にとっても、ある種の快感なのである。一番上の写真~April In Parisの紹介で「白痴美的」という表現をしたが、パーカーのちょっと切羽詰ったような濃厚なアルト音を聴くと、何やらこちらの脳髄が麻痺してくるような・・・そんな種類の快感であるような気もする。そんなことを含めて・・・パーカーの凄さは「器楽的な快感」をも含んだ凄さであり、だから・・・ひょっとしたら、楽器(器楽)そのものに興味を持っている方の方が、なんというか・・・直感的に、いや、肉体的にその凄さを感じ取りやすいかもしれない。
そうしてそんなパーカーの「純・器楽的」とも言える特質のことも考え合わせれば、あなたの「好み」のアンテナに、チャーリー・パーカーという人が引っかかるかとは限らないことも、充分に理解はできる。
でもしかし・・・敢えて啓蒙的に言わせてもらえば、パーカーだけはちょっとガマンしても聴いてほしい(笑)
LPでもCDでもなんでもいいので、ちょっとでも「いいな」と感じたテーマの曲を~それは「スクラップル・フロム・ジ・アップル」や「コンファメイション」、あるいはスタンダードソングの「アイ・リメンバー・エイプリル」や「ゼアリズ・ア・スモールホテル」かもしれない~何回か聴いてほしい。
それからその同じ曲の入った別の音源があれば、それらもぜひ聴いてみてほしいと思うのだ。003
いくつかのパーカーのレコードを紹介しよう。
Night and Day(Verve)MGV-8003~写真左。この黒trumpeterラベルは2ndで、12インチのオリジナルはClef 5003。残念である(笑)

April In Paris(Verve)MGV-8004~写真、一番上の右。

Midnight Jazz at Carnegie Hall(Verve)MGV-8189-2(2LP)~写真左下。この2枚組の音は凄い。

僕はパーカーのストリングスもの・ビッグバンドものを嫌いではないので、自然にこの辺が集まった(笑)どれも12インチ盤のトランペッターのセンターラベルである。日本盤「ウイズ・ストリングス」は、おそらくこの3枚からの編集ものなので、同じ「ストリングスもの」でも、いろんなセッションが混じっているようだ。そんなことよりも僕が驚いたのは、音の違いである。「音の鮮度感」が、国内盤やCDとはだいぶ違ったのである。005
パッと聴いて・・・黒トランペット盤には、パーカーの音色に「輝き」があるのだ。アルトの音色~その張り具合、ギュッと締まった響き具合。ストリングスの音の間を縫うように、倍テンで吹き抜けるパーカー・・・その音色が圧倒的に「重い」のである。
「重い」というのは・・・凡百のアルト奏者に比べて相対的に「重い」のはもちろんなのだが・・・僕が思うに、パーカーの「重さ」というのは、ある種の「絶対」かもしれない。006
これらのレコードの音を聴いて体感できるサックスの音色についての違い・・・それは国内盤とは確かに違うと思う。
ただ、僕は「国内盤ではパーカーは判らない」などとは言いたくはない。実際、僕は国内盤やCDでパーカーを聴いてきて、理解して(そのつもりだが:笑)そうして、もちろんパーカーを好きになってきたのだから。008
ただ僕自身のそうした経験の後でも(いや、後だからこそ・・・かも)これらのVerve12インチ盤を聴いて「改めてパーカーの音色の凄さに驚いた」ということも確かにあるのだ。
ジャズを聴き込んだ方で、パーカーは今ひとつ判らない・・・と感じている方が、これらの音盤を聴いて、そうした「音色の凄さ」を体感することになれば・・・あるいは一気に「パーカー開眼」となるかもしれない。
ただ、何をどう言っても・・・最後には「パーカーはパーカーだ」としか言いようがない・・・そんな感じの「絶対パーカー論」になってしまいそうだ(笑)
こういう話しになると・・・言葉は本当に無力だ(笑)ええい!もうめんどくさい!とにもかくにも、パーカーのあの音を聴いておくれ!パーカーという人については・・・それが僕の本音なのかもしれない(笑)
しかし、ここは《夢見るレコード》である。その無力な言葉であっても、そこにも拘りたい(笑)だから・・・実際に僕がパーカーのどういう部分に惹かれているのか~を少し話したい。
さきほど挙げた3枚のVerve盤は12インチとしてはオリジナルだが、その前に、本当のオリジナル音源として、10インチ盤があり、そしてSP盤があったわけで、パーカーの音そのものの鮮度感の違いを想うと・・・それらに拘りたい気持ちもあるのだが、誰もが10インチ盤(ダイアル10インチ盤については、以前にPapaさんの手持ちを聴かせていただいた。やはりひと味違うアルトの音色、その存在感だった)やSP盤まで入手できるわけではない。
だが、そのSP盤の良さ~音色の太さ・力強さみたいな感じ~を味わえる(想像し得る)国内盤レコードが実はあったのだ。

前回の「レッド・ミッチェル」でも触れたが、8月の終わりに3人会をやった。yositakaさんとsigeさんとは1975年からの付き合いだ。sigeさんとはジャズ研仲間で、彼はアルト、僕はベースで・・・2人とも我の強さでは良い勝負だったが、ここに2年先輩のドラム~yutaka氏が加わって、そうなるとなかなか面白いサックストリオになり・・・あの頃、僕らはジャズ研で本当に燃えていた(笑)
そうして、sigeさんは、高校でのブラスバンドの指導やエモリ氏らとのバンド活動も含めて、今でも管楽器を吹いている。
ここにsigeさんからの手紙がある。彼は何かの折には、メールではなく、筆書きの封書を送ってくるのだ。3人会の時、僕の古い機械で掛けたいくつかの古いレコード、それから自分が持ってきたパーカーの「ダイレクト・フロム・SP」の2枚(savoy編vol.1&2)などを、食い入るように聴いていた・・・それらの印象を書いてきてくれた手紙である。何事に付け思い込みの深いsigeさんならではの「熱さ」もあったりしますが~その点、僕も似たようなところはある(笑)~同時にまた、管楽器全般に造詣の深い、そして今でも楽器に触っているsigeさんならではの、唸ってしまうような表現もあったので・・・その一節をここで紹介したい。
《レコードによっては、奏者の管の鳴り具合、弦と胴の鳴り具合、場合によっては、吐く息、継ぐ息のリアリティさも体感できました。レコード総体に込められたジャズの空気と、大げさな言い方ですが、ジャズマンの体の中の瞬間的な構造や思惑さえ体感できたような思いになりました》

この「SP起こし盤」~パーカーの「ダイレクト・フロム・SP」の2枚(savoy編vol.1&2)・・・確かにひと味違う。011まず、パーカーのアルトの音色が太い!音色そのものが分厚い感じか。だから・・・パーカーという人が元々「大きな音」で吹いていた、その音圧感がリアルに飛び出してくる。この「大きい音」という感じられる~ということは、再生音楽を聴く場合、ある意味、なかなか重要な要素だと僕は思う。録音バランスで調整した「大きい・小さい」ではなく、生の人間が吹いたその時、その空気中に拡がった音・・・そこにはその「ミュージシャンの真実」が響いているわけで、その「大きさ感覚」は・・・やはり、その真実の大事な一端だと思う。この「SP盤起こし」盤・・・アルトだけでなく他の楽器も、なにかこう「音が近い」感じで、強いて言えば、ブルーノートのヴァン・ゲルダー録音のような味わいかな。全体として、とにかく「強烈」・・・そのひと言である。
(この「厚い」「太い」という感覚は、savoy編~「サヴォイ・レコーディングス/マスターテイクス」(Arista/フォノグラム2LP)と、同じテイクを聴き比べした際の、僕の個人的印象です。

ダイアル音源については、以前の夢レコでも少し触れたが、パーカーのダイアル音源を耳にすることができる唯一のレコードが「バード・シンボルズ」だった時代が長かったと認識している。そしてその「バード・シンボルズ」の音ときたら・・・(笑)
「最悪」とはあの音のことかもしれない(笑) 僕は「パーカーは判らない」という方のほとんどは、あの「シンボルズ」の最悪音にやられたのでは・・・と邪推している。あれは、それくらいショボイ音だった。だから・・・英spotlightの「オン・ダイアル」と、その後に出た国内盤でも充分に「いい音」だったのです(笑)
この「ダイアル音源」関わりで、ひとつ面白い日本盤を紹介しよう。2008年3月にパーカーのオリジナル盤(Dialの10インチ盤)を聴く機会があった。その独特の鮮度感・生々しさに圧倒された僕は、そうした音色からパーカーの本当の凄さをより感じ取れたような気がした。アタマの中がしばらく「パーカー」で一杯になっていたその頃、たまたま地元の中古レコード店で「おや?」と思うレコードを発見した。それが「チャーリー・パーカー・オールスター・セクステット(ビクターRET-5021)である。 010
これ、ペラジャケの具合からみて、たぶん1964~1965年頃の日本盤だと思うのだが、マイルス、JJ.ジョンソンを含む6重奏団と収録曲目から「ダイアル音源」であることはすぐに判ったのだが、ジャケット右上のROOST SERIESが腑に落ちない。ROOST(ROULETTE)から、パーカーのダイアル音源のLPが出ていたのだろうか? どうも記憶にない。しかしこの日本ビクター盤のラベルは、ちゃんとした米Roost仕様じゃないか。そんな興味から、また日本盤ペラジャケにも惹かれるものがあり、とりあえず購入したのだが・・・いやあ、音を聴いて驚いた!パーカーの音が太いのである。鮮度感も「バードシンボルズ」とは比べ物にならない。spotlight盤よりも明らかにいい。日本盤でも時代が若い分だけ、鮮度の高いマスターやスタンパーに当たっていたのかもしれない。もう一度、じっくりとセンターラベル廻りを見てみると・・・ランオフ部分の刻印が目に飛び込んできた。
《Roost 2210A,2210B》となっているじゃないか!これは、Roostのスタンパーを使っていたことになる。いろいろ調べてみると・・・ありました!Roostのチャーリー・パーカー盤が。それはCharlie Parker/All Star Sextet(roost 2210)というやつで、そういえば・・・ガハッと笑っているパーカーのジャケット写真に見覚えがあった。あれが・・・ダイアル音源集だったのか。そしてその米Roost盤を受けての日本盤が、このビクター盤だったのだ。おそらく「ダイアル音源」が英spotlightから復刻されるまでは、「バード・シンボルズ」と、この「オールスター・セクステット」だけが市販されていたパーカーのダイアル音源だったのだろう。僕はこの日本盤の「パーカーの太い音圧感を感じる音色」で聴いた、パーカーのバラードの良さを改めて見直したのだ。特にDon't Blame Me、それからOut Of Nowhereである。(もちろんEmbraceable Youもいいのですが)特にOut Of Nowhereは素晴らしい!この曲がスロー(バラード)で演奏されるのは、ちょっとばかり意外な感もあり、しかしその意外性だけではなく、この曲の全体に流れるなんとも言えないような「寂しさ感」そんなものに僕は感動してしまった。正直に言えば、それまで聴いていたダイアル音源では、スピード感溢れるパーカーのスリルは感じ取っていたものの、スローものではそこまでのパーカーの「唄い」は感じることができなかった。パーカーの音色も含めて全体のショボイ音質に「負けて」いたのかもしれない(笑)
この日本ビクター盤の鮮度の良さに驚いた僕は、米Roost盤も入手することになった。日本盤でこれなら、米盤なら・・・というスケベ根性である(笑)009スタンパーが同じなら、音も同じだろうって? それがですね・・・やっぱり(この12インチ盤としては)オリジナルの米Roost盤の方が、そうだなあ・・・もう少し、もう1枚、ヴェールを剥(はが)したようなヌケの良さがある・・・ように聴きました。この辺りはチャンスがあれば、またちゃんとした機器で聴き比べをしてみたいものです。
ただRoost盤というのは、(たぶん)もともとがそれほどいわゆる音のいいレーベルではないだろうし、この「鮮度感の高さ」は、あくまで、パーカーの他のダイアル音源LPよりも・・・という意味合いです。

さて、キングの意欲盤「ダイレクト・フロム・SP」そのsavoy編vol.1~なんと言ってもKokoが凄い!この曲のコード進行は「チェロキー」と同じで「チェロキー」がそうであるように、やはり急速調で演奏されているのだが、聴くたびに僕が「むむむ~っ」と思う場面がある。それはパーカーのソロの終盤に現れるのだが、そこでパーカーは実に不思議なフレーズを吹く。フレーズというより不思議なリズム(ノリ)なのだ。それは・・・チェロキーで言うと「サビ」に当たる曲調がちょっと変わる場面の最初の4小節の箇所だ。
(補記~このKokoは、サヴォイに残した1945年11月の最初のテイクです。CD(コンプリート8枚組)で聴くと2分20秒辺りからの4秒ほどの場面。ただし、この2分20秒は、冒頭約40秒の失敗テイクも含む)
この箇所を聴くたびに僕のアタマはクラクラしてしまう。
そのフレーズをなんとか音で表すと・・・「(ウン)・パラ・パラ・パラ/パラ・パラ・パラ・パラ/パラ・パラ・パラ・パラ/パラ・ラ~~~」という感じの8分音符の連続フレーズなのだが、なにせかなりの急速調での8分音符だ。そして、その連続する8分音符が、どうにも普通の「ノリ」には聞こえないのだ。普通に2拍・4拍の切れ目ではなくて、どうやら3拍のフィーリングで刻みながら吹いているように聞こえるのだ。しかしそれは単に変則ノリということではなく、そのノリが見事にコントロールされているので、パーカーのこのフレーズは・・・まるで川の急流を浮いたり跳ねたりしながらも乗り切っていくラダーボートのようじゃないか!
これは・・・凄い! これこそパーカーだっ!と僕は叫びたくなる(笑) 
僕はほとんどの場合、音楽を分析的に聞こうとは思ってないが、パーカーのこの一節には猛烈に興味が湧いてしまった。その「3拍フィーリング」の正体を暴いてみたくもなった。だから何度もレコードのその場面に針を落とした。20回以上は聴いてみた・・・どうしてもうまく聴き取れない(笑)それでも僕なりの解釈を書いてみよう。
パーカーはどうやら、この時、4小節の16拍を<(1拍休符)+3拍/3拍+1拍/3拍+1拍/1拍+3拍>という具合に分割して捉えたのではないだろうか。少々、強引だが、計算はこれで合う(笑)そういうリズム譜を図に書いてから聴くと、こんな風に聞こえないこともない。《(ウン)パラ・パラ・パラ/パラ・パラ・パラ+パラ/パラ・パラ・パラ+パラ/パラ+ラ~・~~・~~》という感じかと思う。
他の刻み方パターンも考えていろいろと試し聞きしてみたのだが、タイムをこんな風に刻んでみた時が(自分としては)最もパーカーのフレーズのノレたのだ。思うに、パーカーという人は、普通に8分音符中心に2拍・4拍で割ってリズムだけには飽き足らず、こういうちょっと変則な拍数の分割を、いつも考えていたのだと思う。例えば2小節8拍を「3・3・2」で乗る、わりとよくあるパターンだけでなく、もう少し長い単位での変則パターンを。そうしてそんな意識があった、そこへいつものパーカーの閃(ひらめ)きが加わり・・・アッと驚くこの「連続8分音符による3拍フレーズ乱れ打ち」が生まれたのだ・・・というような妄想を僕は描いてしまうのだ(笑)
(ちゃんとした「パーカーのアドリブ採譜」をお持ちの方は、ぜひチェックしてみてくださいね)

ただ・・・実はそんな後付の分析など、本当はどうでもいいことで・・・僕らはパーカーのその時のフレーズ~それを吹いている時のパーカーの意識みたいなもの~を、ただ聴けば(味わえば)いいのだ!その音色の全てを浴びればいいのだ!その圧倒的なうねり具合こそが「パーカーの快感」であると思う。
いろいろ理屈をこねてしまったが・・・つまるところ、パーカーはアルトのサウンドそのものに快楽がある!と言ってしまってもいいだろう。だからこそ・・・パーカーはパーカーなのだ! ううう・・・ジャズっ!(笑)

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2008年4月17日 (木)

<ジャズ回想 第13回>半年ぶりにYoさん宅に集まった。その2

う~ん・・・と唸ってしまったパーカーの10インチ盤~

さて「Yoさん宅に集まった」の続きである。まず、前回に書けなかった2つの「聴き比べ」を簡単に紹介したい。その後にパーカーの10インチ盤(Dial)のことを少し書いてみる。

クリフォード・ブラウンのエマーシー盤はどれも人気が高い。その中では、With Stringsは人気が低い~などと僕は勘違いしていた。
というのは、30年ほど前のジャズ好きの間では、strings作品は「ヒモ付き」などと呼ばれて「ジャズっぽくない」軟派な作品という理由で、人気がなかったからだ。でもそれはあくまで1枚のLPとしての人気についてのことであり、オリジナル盤の世界での人気とは関係がなかったらしい。あるいは、日本のジャズ好きも、stringsものを充分に楽しめるようになって、その結果、人気が上がったということかもしれない。いずれにしても、僕もこのクリフォード・ブラウンの「ストリングス」・・・ある時期から大好きになった。もう長い間、安い国内盤で我慢しているのだが、ちょっと前に、このWith StringsのEP盤を2枚入手した。 Ep2_3
このところ、僕はEP盤というフォーム自体にも充分に魅力を感じているのだが、同じタイトルでもEP盤の方が音がいい場合もある~ということを過大に期待している部分もあったりする(笑)それから一 般的には、EP(7インチ)の方が、LP(12インチ)より価格が低いことも、うれしい。もちろんEP盤の方が収録曲数が少ないわけだが、このWith Stringsの場合、2枚のEP盤にそれぞれ4曲収録だから、2枚で8曲は聴けるわけだ。12インチ盤には12曲収録だから、EP盤がもう1枚は出ているはずなのだが、それがなかなか見つからない。  Ep_2
オリジナル12インチ盤を持っていない僕は、このEP盤を聴いてなかなかいい音だと感じていた(そう思いたかっただけかもしれない:笑)
ある時、Yoさんが12インチ盤をお持ちなのを知って、今回の集まりで、聴き比べをさせてもらうことにしていたのだ。

このクリフォード・ブラウン・・・どの曲もとてもいいのだが、特に好きな曲~portrait of Jennieを聴くことにした。使ったカートリッジまでは覚えていないのだが、最初に僕のEP盤。次にスノッブS田さんの紙ジャケCD。最後に12インチ盤と聴いてみた。
結果は・・・EP盤の惨敗であった(笑)
《12インチ盤の写真~Yoさん提供》
With_strings
EP盤で聴いたクリフォードのトランペットには、それなりの鮮度感があって悪くないと思ったのだが、他の楽器、ストリングスなど全体に中低音が薄い。要はスカスカした感じなのだ。
2番目にかけた紙ジャケCD~一聴して先ほどよりストリングス全体の音が柔らかめだ。そこへ適度にマイルドなクリフォードのトランペットが入ってくる。とても聴きやすい見事なバランスであった。こりゃあ(EPより)CDの方がいいね、という声。このCDと比べると、先ほどのEP盤のトランペットは、だいぶ痩せた感じの音だったことが判った。鮮度はいいのだが、バランスが・・・と悔しがる僕(笑)
そして12インチ盤~う~ん・・・やっぱりいいな。全体的に楽器の音に厚みがあって、トランペットの音にもっとも鮮度感があるようだ。そして、柔らかな鳴り具合。う~ん・・・やっぱり違うなあ。いいものはいいのだ! そして・・・ちと高い(笑)


次にゲッツである。ある時期、「ゲッツのat storyville」をCD(東芝:1990年)で聴いて、ゲッツのシルクの手触りのようなあの音色と、それからどんなに急速調の曲でも全く淀みなく溢れ出てくる「本当のアドリブ」に、僕はもうすっかり参ってしまった。
Gets_roost_12inchこの4~5年、少しづつオリジナル盤に興味が湧いてきて、ようやくのこと、ゲッツのroost盤、12インチ2枚~The Sound(LP-2207) と、At Storyville vol.1(LP-2209) を手に入れた。しかし、このroost盤・・・あまり音がよくなかったのである。オリジナル盤というものを入手する場合、多少の盤質の悪さは我慢して、音の(楽器の)鮮度感を期待するわけだが、これらroostのオリジナル12インチ盤は・・・何か楽器の音が遠いような感じで、The Soundの方など、ヘタしたら日本コロムビア盤の方がいいくらいだったのだ(笑)
The Soundを先に聴いてダメ、ならばライブのStoryvilleならどうだ?・・・で、またダメ。さらにいくつかのroost:EP盤でも同じような音だった。共通して感じたのは「カッティングレベルの低さ」全体的にノイズっぽい。これはもう・・・roostというレーベルの性根(しょうね)だろうと推測する僕である(笑)

《下の10インチ盤写真:At StoryvilleはPaPaさん提供》
そこで・・・10インチ盤なのである。10_3 予想どおり、PaPaさんはこの辺りもしっかりと押えてあった(笑)
ゲッツのroost10インチ盤~2枚揃えて持ってきてくださった。同じタイトルの場合、普通、10インチの方が12インチより発売時期が早いと思う。ゲッツStan Getz Plays の場合~clef10インチが1953年、norgran12インチが1955年で、2年ほどの差があった。
今回のroost盤・・・12インチのAt Storyvilleは1956年、10インチのAt Storyville vol.1は、1952年のようである。この3年の差が、ひょっとして大きいのではないだろうか?
どのテイクも傑作なのだが、僕が選んだのはスピード感溢れるバップ曲~parker51である。
12インチからいってみる・・・さすがに「古い音」である。全体に楽器が遠いような感じで、シンバルも古い録音に特有なうんと篭 (こも)った音だ(笑) でもそれは仕方ない。なんと言っても1951年のライブ録音なのだから。

さあ・・・この「遠いような感じ」が、果たして10インチオリジナル盤ではどうだろうか? 同じ曲、parker51をかけてもらう・・・どうだろう?・・・「う~ん・・・同じかな」という皆さんの声。僕も同様の印象だった。ライブ録音ということで元々の録音が、やや荒っぽい感じでもあり、そのためにあまり差が出なかったのかもしれない。だから、あくまでこのAt Storyvilleというタイトルに限っては、1952年の10インチ盤と1956年の12インチ盤にそれほどの差はないと言えるかもしれない。
ゲッツの「ストーリヴィル」~音はあまりよくないが、演奏はもう最上級である。ゲッツが嫌いな方でも、好きになるかもしれない(笑) それくらい気持ちのいいアドリブである。バンド全体も乗りに乗っている。本当に素晴らしいライブ演奏である。まだ聴いたことがない方は、ぜひ!


チャーリー・パーカー・・・パーカーのことをどんな風に書こうか。いや、パーカーについて書きたい何か・・・それが僕の中に本当にあるのだろうか? パーカーというと・・・いつもそんな「迷い」が僕にはある。その「迷い」を、もうちょっと突き詰めると・・・パーカーは「語れない」、パーカーは「聴くしかない」という乱暴な気持ちもあるようだ(笑)
パーカーのことを、もちろん嫌いではない。1980年頃だったか・・・ある時期、パーカーの演奏に嵌(はま)り、その頃、入手できるレコードはほとんど買って聴きまくった。パーカーの演奏は凄い。どの曲でも聴いてみれば、たちまちパーカーのアルトの突き抜けた凄さに気づくだろう。パーカーの「凄さ」とは何か・・・僕にとってはそれは、あのフレーズのスピード感であり、あの音色の重さである。強引に倍テン~普通のアドリブは8分音符中心だが、パーカーは16分音符の割りでノッてしまった~にしたりする時のあのスリル。それもただ「速く」吹くだけではない。それをうんとタメの効いたリズム感と大きくて重い音色で吹き込んでいくのだ。そんなパーカーが捻(ひね)り出すサウンドそのものが・・・僕には快感でもある。だから、強いて言えば・・・情緒の人ではなく、メカニズムの人と言えるかもしれない(笑) しかし、ジャズ聴きには、ある意味、器楽的な快感という要素もあるはずだし、「パーカーの音」をそういう聴き方で捉えれば、これはもう・・・堪らないのだ(笑)

<夢レコ>前々回の「ドルフィ」の時に、僕はドルフィのアルトをこんな風に表現した。
《まるで、砲丸投げのあの重い鉄球をブンブン振り回しているようじゃないか》

実は、僕の中では、パーカーのサウンド(音色・リズム感など全て)に、質的に一番近いのが・・・ドルフィなのである。
だから今、僕がパーカーのあの吹き方を表現しようとすると・・・やはりこの「砲丸投げ」になってしまう。強いて言えば・・・パーカーの砲丸の方が、もう少しだけ重いかもしれない(笑)その「重さ」はこれはもう理屈ではないのだ。聴いて「それ」を感じてもらうしかない。
そんな風に、ある意味「器楽的鳴りの再現」が重要になってくるパーカーのはずなのに、残念ながらどのレコードもあまりいい音ではなかった。実際、「パーカーが判らない」という声をよく聞くが、その理由の90%は「レコードの音が悪かった」ことにあると、僕は思う。
やはり「レコードの音」というものも重要なのだ。

僕はいつも「レコード」を軸に話しを進めたい。好きなミュージシャンがたくさんいて、好きなレコードがたくさんある~これが僕の基本図式なのだ。例えば、モンクなら「ソロ・オン・ヴォーグ」、コルトレーンなら「ソウル・トレーン」、ロリンズなら「ニュークス・タイム」というように、それぞれに必ず大好きな作品(レコード)がある。
そこで、よくよく考えてみると・・・(僕の場合)パーカーには、特に「好きなレコード」(12インチ盤)というものがないのだ。もちろん、パーカーの時代のレコードが、SP盤,10インチ盤主流だったことで、日本で発売されたパーカー音源が、それらの古い音源をレーベルごとにまとめたBoxもの中心だったためかもしれない。パーカー音源で、12インチ盤がオリジナルだったのは、どうだろう・・・now's the time とかswedish schunapps など、ようやくVERVEの後期辺りからになるだろう。 
Parker_004_2 そんなわけで、1972年頃までは、パーカーの国内盤LP1枚ものは、VERVE音源以外は、ほとんど出ていなかったように思う。だから・・・その頃からジャズを聴き始めた身にとっては、まず「パーカーの音」に触れるチャンス自体があまりなかった。
特にダイアル音源は、権利関係があいまいだったのか・・・よく判らないようなレーベルから、いろんな音源がバラバラに復刻されていたようだ。だから、主にスイング・ジャーナルの輸入盤の広告ページなどから情報を得ていた僕達には、「パーカー=海賊盤=音がムチャクチャ悪い」というイメージが、徹底的に焼き付いてしまったのだ(笑)そして、値段が高いのに音が悪い海賊盤なんか、とても買えやしない(笑)
ちなみに、当時、ダイアル音源が聴けるという唯一の国内盤が、Charlie Parkerレーベルからの「バード・シンボルズ」(邦題/チャーリー・パーカーの真髄)だったように記憶している。「~の真髄」は、ダイアル音源からセレクションで、確かにいい曲が集められていたが、これも充分に音が悪かった(笑) charlie parkerというレーベルは、おそらくオリジナルの音源や盤質の拙(まず)さのせいもあってか、どれも怖ろしく音が悪かった。
そして、僕が最初に買ったパーカーが、長尺のライブ録音~scrapple from the appleが入ったThe Happy Bird(charlie parker)の輸入盤だったのだ(笑)それでも、あのレコード・・・ライブでのパーカーのソロが凄いので、酷い音質を我慢して、何度も聴いたものだ(笑)Parker_003

そんな時、ひときわ格調高いパーカーの写真~パーカーがアルトを吹く顔のアップ~がスイング・ジャーナルに載った。イギリスのspotliteというレーベルが発売したCharlie Parker on Dial というシリーズの広告だった。全6巻だったか8巻だったか・・・本格的なダイアル音源の復刻は、このspotliteが最初だった。あの頃のイギリスもの輸入盤は、高かった。国内盤の倍くらいしていたかもしれない。後に東芝が発売したいくつかの「オン・ダイアル」もの(LPでもCDでも)は、このspotlite経由だと思う。
《上の写真は東芝盤。発売後、だいぶ経ってから、vol.1~vol.3だけ入手した》
このspotlite音源のLPが、やはりそれほどいい音質とは言えなかった。録音が同時期のはずのsavoyの方は、割としっかりした音で復刻されていたので、ダイアルものは、録音段階からあまりよくなかったこともあるかもしれない。それにしても「オン・ダイアル」・・・いくつかのLPと東芝のCD4枚組を聴いたが、パーカーのアルトに今ひとつの切れ・太さが出てないようだし、全体的に薄っぺらい音質という感は拭えなかった。
1973年頃だったか~CBSソニーが「Parker on Savoy」(鳥のシルエットを基調にしたジャケット)を発売し始めた。だけど、パーカー音源はどれも「オン・ダイアル」「オン・サヴォイ」などレーベル単位/セッション単位にまとめられたもので、それもシリーズ全5枚~8枚とかになると、なかなか買えやしない(笑)
そんな訳で、パーカーを聴く時に「ひとつの作品としての好きな12インチLP」というものがあまりないことに変わりはなかった。Verve後期のLP作品をもうひとつ好きになれない僕には、今でも同じ状況かもしれない。
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《左の写真~Dial-201。PaPaさん提供》
そこで・・・パーカーの10インチ盤なのである。ダイアルの本当のオリジナルはSP盤ということになるのかもしれないが、普通のレコード好きにとっては、録音直後に発売された(であろう)dial 201,202,203,207などの10インチ盤を「オリジナル」と呼んでも構わないだろう。PaPaさんは相当のパーカーマニアらしく、これらのDial10インチ盤をほとんど持っているとのこと。
僕は写真でしか見たことのない、あの「ベレー帽のパーカー」のジャケットをじっくりと見る。あの「ベレー帽」・・・デザイン的には何だか変な具合である。鳥の頭にもベレー帽が乗っかっており、これら2つのベレー帽と木の葉っぱの色が、同じ色に合わせてある。ちなみに、201がピンク色、202だと緑色である。そんなパーカーのダイアル10インチ盤が、目の前にいくつも並ぶ。どれを聴こうか・・・PaPaさんから「やはり201でしょう」の声。僕は「ピンク色のベレー帽」をYoさんに手渡す。

あのlover man からだ。ゆったりめのテンポでピアノのイントロが始まる。そのイントロの4小節が終わり、「さあ、ここから」と誰もが思うその瞬間・・・パーカーは吹かない・・・伴奏は続く・・・まだ吹かない・・・。「レー・ミレ・ソソー」と吹くはずのアタマの1小節目、パーカーは全くの無音なのだ。2小節目からようやくわざとメロディをはずしたような音を吹き始める~あのlover manだ。
初めて聴いたDialのオリジナル10インチ盤は・・・やはり「いい音」だった。これまで耳にしてきたどのダイアル音源よりも鮮度感があり、パーカーのアルトの音も太くくっきりと聞こえたように思う。10インチであろうと12インチであろうと、録音直後にカッティングされたオリジナル盤の持つ「鮮度感」みたいなものは、絶対にあると思う。ただこの10インチ盤に対する僕の感想は、あまり当てにはならないかもしれない。というのも、今回はこの10インチ盤と他のパーカー音源を聴き比べたわけでもなく、自分の記憶の中にある「ダイアル盤のパーカー」の音との相対的な印象レベルの話しなのだから。
それに・・・あれだけ魅力的な「10インチ盤」のジャケットを手に取って聴く音と、例えばCDのプラスティックケースを手に持って聴く音では、心理的な部分からも、「聞こえ方」に差が出てしまうだろう(笑)
ただ、そんなことも含めての10インチ盤の魔力があったとしても・・・そのことに否定的な気持ちなど全くない(笑)
そんな「相対」としてではなく、あの「10インチ盤というひとつの作品」から受けた印象は・・・やはり「ダイアルのパーカー」は凄い!ということになる。
この時のセッションでのパーカーは、麻薬か何かでフラフラだったとの証言もあり、もちろん好調なパーカーではなかったのだが、lover man で、パーカーのアルトが流れてきた瞬間に感じたのは、やはり「何かを表現しよう」とするパーカーの凄みみたいなものだし、続けて聴いたバラード調の gypsyでも、パーカーは、この哀愁漂うメロディを、ちょっとヨタヨタしたようなフレーズで吹き進める。それは決してスマートなバラードではないのだが・・・パーカーのアルトの音色には、怖ろしいほどの「重さ」と「切れ」がある。
だから・・・このlover man セッションは、パーカーという人の「凄み」を感じさせるような演奏になったのだと思う。
一番好きなパーカーの演奏は?と問われたチャーリー・ミンガスが、たしか、このlover man を挙げていたはずだ。

《これがadlib盤の黒猫マクリーンだ。写真はPaPaさん提供》Photo

PaPaさんのこの日の手持ち盤は、10インチだけではなかった。 「黒猫のマクリーン」Jackie Mclean Quintet(jubileeではなくて、adlibの方)も登場した!このマクリーンのレコード・・・もちろん聴いたことはある。もちろんオリジナルではなく、日本コロムビアから出たラベルがjubilee仕様の盤と、テイチクから出た盤だ。どちらもジャケットは「フクロウ猫」だ(笑)今、ちょっと確かめてみたら、テイチク盤はうんとこもった音で鮮度にも乏しい。それに比べれば、日本コロムビア盤の方はかなりいい感じだが、やはりどちらも詰まったような音だった。
僕は特にマクリーン信者ではないのだが、このadlib盤の持つ佇(たたず)まいには、もちろん圧倒された。そして驚いたのは、このadlib盤の音の良さだ。音がいいとい言っても、西海岸的な切れのいいすっきりした音ではなく、アルトやベースにぐんと力のこもった、いかにも50年代のジャズという感じの音だったのだ。録音engineerは・・・van gelder! 
adlibオリジナル盤の音は・・・日本盤で感じていた「詰まり」が、すこっと抜けて各楽器の鮮度感がうんと増したような感じなのだ。さすがは・・・黒猫のマクリーン! 
こんなレコードには滅多にお目にかかれないだろう・・・ということでもう1曲聴かせていただく。B面ラストのlover manだ。「ああ・・・今日はラバーマン特集だね」とスノッブS田さん。そういえば、lover manは、さっきパーカーのdial201でも聴いたのだった。マクリーンのlover man・・・マル・ウオルドロンのピアノのイントロが流れると、皆さん「あれれ?」という顔。そうなのだ・・・このイントロ、あの有名な「レフト・アローン」とよく似ているのだ。いや、ほとんど同じかもしれない。ベースがボウイング(弓弾き)しているのが違うと言えば違うくらいか。ピアニストって、けっこう同じパターンのイントロを使うんだな(笑)
この曲でのマクリーンは、いつも以上に気合が入っている。力みかえってバランスを崩しそうになっているようなところもあるのだが、ジャズにはこういう「熱さ」も欲しいじゃないか。ラストの短いカデンツァなんか、もう最高である。思うにこの時、マクリーンは・・・パーカーのlover manを相当に意識していたに違いない。彼もやはり、あのパーカーの「凄み」に魅入られた一人なのであろう。

やっぱり・・・ジャズはおもしろい。

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