ランディ・ウエストン

2007年4月 1日 (日)

<ジャズ雑感 第18回>ランディ・ウエストン。

心情派ピアニストの真骨頂。

前回の<夢レコ>では、ランディ・ウエストンの「独特な何か」についてを書くべく、pretty strangeなる曲を聴いているうちに・・・いつのまにかラウズ話しになってしまった。ああいうタイプの曲が僕の好みだったこともあるだろうが、何よりもあの曲でのラウズの深い音色が、ググッと僕の心に沁みこんできたのだ。そのことに敬意を表しての「ラウズ特集」なのだから、あれも悪くなかったかもしれない。
さて前回、記事中で「ランディ・ウエストンを」と書いてしまったのだが、あんな風に予告してしまうと、却って、聴くレコードを意識してしまったりして・・・精神衛生上、あまりいい具合ではないので、これからは「予告」は止めた方がよさそうだ(笑)

ランディ・ウエストン。だいぶ前から気になるミュージシャンであった。特に彼のレコードを全部集めようというほどではなかったのだが、それでも目についたものを入手していると、いくつか集まってきた。僕としては珍しくも新しい録音のCDも含めて、いろいろ聴いてみると、どのレコードにも一つ二つは、味わい深い曲が入っており、それが何となく心に残ってしまう。僕にとって、ランディ・ウエストンは、そういうタイプのミュージシャンである。そして、ウエストンという人は、やはりとてつもなく個性的なピアニストなんだなあ・・・という想いが強くなっている。

セロニアス・モンク~ランディ・ウエストン~ダラー・ブランド・・・僕の中にはこういうピアニストの系譜みたいなのがあって、なんというかそれは・・・「垂直打ち込み的強打派」とでも言うべきタイプなのである。具体的に言うと・・・このタイプのピアニストは、どちらかというとピアノのキーを左右フルに使ってフレーズを華麗に展開しよう(水平的)というのではなく、全体にタッチの強弱を意識しながら時にはシングルトーンをうんと強く弾き込んだり、また時には和音をうんと重く押し込んだり、またその時のハーモニー(響き)の余韻を聴かせよう(垂直的)というタイプだと、僕は勝手に解釈している。一聴、不器用そうで武骨な感じを受けるピアノだ。黒っぽい心情が色濃く表われるタイプだと言ってもいいかもしれない。
そうして、僕はもう理屈ぬきで、このタイプが嫌いではないのである(笑)

この「黒い心情派」の系譜は、モンクからの流れであり、もちろんその前のエリントンにまで遡(さかのぼ)る。しかしながら、僕はそのエリントンのビッグバンドものを実はあまり聴き込んでない。べーシストのジミー・ブラントンへの興味もあり、1941年録音のAt Fargo などいくつかのレコードを聴いたことはあるが、それ以前のRCAは未聴だし、それ以降のCBSでのエリントン楽団のレコードは mood indigoなどほんの数えるほどしか持ってない。まだまだベン・ウエブスターなりホッジスの名人芸をふむふむと楽しむ~という大人の境地には達していないようだ(笑)

Elligton それでも・・・エリントンのピアノ自体には、やはり感じるものがある。
僕が最初に「エリントンのピアノ」を意識したのは、capitolのDuke Plays Ellington(capitol)である。このレコードは、だいぶ前の<夢レコ>杜の会in白馬~でちらっと紹介したが、再度登場してもらう。緑っぽい色(turquoise:ターコイズと呼んだ方が感じが出る:笑)が、実に品のいいキャピトル盤である。この中にreflection in D なるエリントン曲がある。エリントンというといわゆるジャングルもの?みたいな「濃い」感じのイメージがあるが、このreflection in D という曲など、もう実にモダンなハーモニーと曲調で、内省的・耽美的で深い味わいがあるのだ。

さて、ウエストンのレコード。僕はジャズ聴きの初期にモンクやエヴァンスを好きになったので、ビクターがriversideレーベルの復刻発売を始めた時は、とてもうれしかった。最初の1~2年は、センターラベルが緑色のM字(マイルストーンと同じ)だったが、途中からオリジナルデザインの黒ラベルや白ラベルになっていったように記憶している。同じ頃、米ファンタジー社が発売したriverside や presitge 音源の復刻もの[twofar]と呼ばれるmilestone2枚組シリーズが出回り始めた。そして当時、新録でも再発でも「新譜の輸入盤」の方が国内盤より2~3割は価格が安かったのだ。だから、同じ音源を聴けるのなら・・・安い[milestone2枚組シリーズ]を入手することも多かった。2枚組で2400~2500円ほどだったか。オリジナルの内容そのままの2枚をカップリングしたものが主だったが、一部のものには未発表音源が入っていたりもした。とにかく国内盤1枚分にちょっと足すくらいで、LPが2枚分聴けるので、何かと重宝したのだ。

Dscn167915年ほど前だったか・・・ランディ・ウエストンというピアノ弾きに興味が湧いてきて、まずそのmilestone2LPシリーズのRandy Weston/ZULU というのを入手した。
この2枚組は、riverside音源のTrio & SoloとWith These Hands の2枚の12インチ盤をまとめてあるのだが、オマケの2曲が付いていた。
10インチ盤[Cole Porter in a Modern Mood](全編、Sam Gillなるべーシストとのデュオ)からで、この2曲(1954年4月録音)が長いこと貴重だった。というのは、この10インチ盤は、どういうわけかビクターからも復刻されぬままだったので(1990年にWAVEから復刻された)Dscn1672

この2曲と同じべーシストのサム・ギルとアート・ブレイキーとのトリオセッション~(1955年1月録音)つまり「Trio & Solo」の方に、ウエストン自作のチャーミングな曲が収録されている。
Pam's waltz という3拍子の曲である。
3拍子を「倍」で捉えたようなリズムを、ブレイキーは実に繊細なブラシのタッチでもって、巧く表現している。全編ブラシだけ・・・トップシンバルの音は一度として聞こえない。曲の最後に微かに鳴らしたかな?というくらいなのだ。実は、僕はこのPam's Waltzを聴いた時「ブレイキーってこんなに繊細にも叩けるのか!」と驚いてしまったのである。ブレイキーというのは、いつでもガンガンとシンバルを鳴らしまくる人だと思い込んでいたのだ(笑)とんでもない間違いだった。
このブレイキーの「繊細なバッキング」を聴くと、いつも連想してしまうのが先ほど挙げたDuke Plays Ellington(1953年録音)なのだ。そういえばあれもピアノトリオなのだが、あの中の1曲~passion flowerだったか・・・シンとした静けさを感じさせる趣のある1曲だが、そのピアノトリオでのドラム奏者のバッキングが実に印象的であった。スネアを、おそらく素手だけで軽く叩いている。やはりシンバルは全く使わないバッキングだった。そのドラマーはブッチ・バラードという人である。

Trio & Solo にはトリオ、ソロが5曲づつ入っており、その「ソロ」の方では、意外にもウエストンのオリジナルは1曲だけで、あとは little girl blue、we'll be together again、loverなどスタンダード曲ばかりなのである。自作曲が少なかったためか、あるいはまだモンクほど実績がなかったためかもしれない。ソロピアノでのウエストンは、ちょっと聴くとモンクのスタイルにかなり似てはいるが、スタンダードを武骨に弾くウエストンは、やはり悪くない。「ソロ」の方は1956年の録音なので、録音の感じもだいぶんいい音になっており、ウエストンの「強くて重いタッチ」がよく判る。softnessという曲だけが、ウエストンの自作で情緒的な味わいの悪くない曲だが、まだ「圧倒的な個性」までは感じとれない。
それよりも「トリオ」の方でのスタンダード曲~again。これが実にいい味わいなのだ。うんとスロウなテンポで、この有名なスタンダードをゴツゴツと弾き進んでいく。朴訥な言い回し・・・とでも言おうか。
このagain・・・僕はもう大好きなメロディである。そういえば・・・カーティス・フラーの演奏にも、いい感じの again があったな。
*補筆~このフラーのagain・・・全くの僕の勘違いだったことが判明!フラー名義のBone & Bari(bluenote)なるレコードがあり、その中にagainは入ってはいる。ところが・・・その1曲は、Tate Houston(バリトン・サックス)をフューチャーしたもので、フラーは全く登場しないのである。フラー=バラードの名手という思い込みの強い僕は、あのagainを、フラーの吹くサウンドで幻聴していたようだ(笑)こんな地味な話題に鋭く反応し、またご指摘いただいたブログ仲間のnotさんのジャズ好き度にも驚嘆する僕であった・・・。この件については、このコメント欄でのやりとりもぜひご覧ください。special thanks to Mr.notさん!

「モンクに似ている」とよく言われていると思う。正直なところ僕自身も、ウエストンのサウンドがあまりにモンクっぽいので、「なんだ、モンクの真似じゃないか」ということで、ウエストンのことを「よくない」と考えていた時期もあった。しかし、こうして、1955年1月時点でのこの1曲~againでのウエストンの「自然な唄い方」をじっくりと聴いてみると・・・とても誰かの真似をしてのスタイルだけの演奏には聞こえない。
Peter Keppnews氏の解説によれば「モンクを聴く前から、かなりの部分、モンクと同じような弾きかたをしていた」~Randy Says that he was playing in a style similar in many ways to Monk's even before he had heard Monk~という本人の述懐もある。多分・・・本人がそう言ったとおりだったんだろうと思う。要は、そんな誰それからの影響とかに囚(とら)われずに・・・つまり・・・ウエストンの個性を好きになったのであれば・・・あとはその個性を味わうだけのことだ。僕の場合は こんな具合にウエストンを聴けるように(楽しめるように)なってきた。
もっとも、この「モンクに似ている」というのも、1955~1956年くらいのウエストンのレコード初期においてのみのことなのである。もう少し後の時代になると、個性的な管楽器奏者を起用して独特なメロディを吹かせたり、編成の多い管部隊をアレンジでもって雄大に音楽を鳴らすようなやり方が増えてきて・・・そんな中からウエストン独自の個性みたいなもの~前回のラウズ主役のpretty strantgeみたいな感じの~そんな感じが、どんどん湧き出てくるのだ。実は、前回のラウズの時も、そんな「個性的な味わいのランディ・ウエストンの曲」を軸に、いろんなホーン奏者のことを書いての「ランディ・ウエストン」にしようと思っていたのだが、うまくいかなかった(笑)

ウエストンのレコードは、決して多くない。しかもその多くない作品が、UAやjubileeなど地味なレーベルだったりするので、ほとんどいつも廃盤なのである。どうみても、モンクやエヴァンス、あるいはガーランドやトミー・フラナガンほど親しまれた存在とも言えないように思う。
やっぱり、あの「武骨サウンド」は・・・本国アメリカでも日本と同じように、あまり売れなかったんだろうなあ(笑)・・・というのは、ウエストンには「廃盤」だけでなく「未発表もの」がけっこう多いのだ(笑)録音はしてみたものの、諸般の事情により発売されなかったんだろう。そんな「未発表もの」にも捨てがたいものがあるので、それらも紹介してみたい。

ランディ・ウエストン自身の個性が充分に発揮され始めた(と僕は思う)1959年のUnited Artistsの作品がこのLPだ。
Dscn1654 Little Niles(united artists:UAS-5011)
このレコードは、国内盤を買い逃したまま、長い間、聴くことができなかった。だから、2~3年前にうまいこと、ステレオ盤(青ラベル)を入手した時はうれしかった。この作品は、変則4管編成である。
ジョニー・グリフィンのテナー、レイ・コープランドとアイドリース・シュリーマンがトランペット、それからメリバ・リストンのトロンボーンだ。
グリフィン入りなので、テナー好きの僕としては、テナーをフューチャーしてのバラードものを期待したのだが、残念ながらこの作品にバラードものは入ってなかった。管奏者が4人もいるってんで、アレンジのメルバ・リストンが、律儀に全員に吹かせようとしたのかもしれない(笑)曲によっては一人だけをフューチャーして他の奏者を休ませる~というのもアレンジのうちなのになあ・・・(笑)そういえば、クインシー・ジョーンズは、そういうアレンジが実に巧かった。Dscn1655

little Niles という3拍子の曲がいい。僕がこの曲を最初に聴いたのは、ダラー・ブランドのソロピアノ集(freedom)からだ。いい曲だと思った。ふとした時に、よくこの曲のメロディが浮かんできたりして、だから、その頃からランディ・ウエストンの名前だけは意識していたわけだ。このlittle Nilesという曲は、たぶん、ウエストンの曲の中では最も有名だと思う。このライブヴァージョンでは、わりあい速いテンポの3拍子で演奏されており、途中、テナーとトランペットの掛け合いのような場面もあり楽しめる。
それから前述のPam's Waltz をこのLPでもにも再演している。出足で、管部隊が[ゥパッパパッ/ゥパッパパッ]てな感じで吹く。これをだんだんと弱くしていく・・・なかなか洒落たイントロだ。テーマを弾くピアノの感じは1956年ヴァージョンと同じだが、ドラムのリズムが違う。
この時の演奏では、ドラムが普通の3拍子のノリだ(ドラマーはレニー・マクブラウン) やはり・・・あの「トリオ&ソロ」のPam's Waltz の<ドラムスだけ倍ノリ3拍子>は、ブレイキー独自の工夫だったのだろう。

それとあまり話題になったことはないようだが、united artistsのステレオ録音はすごくいい(と僕は睨んでいる) この作品の録音技師はRay Hallとクレジットされているが、実に気持ちのいい音なのだ。管の音に温かみがあって、なおかつ瑞々しい。ドラムのスネアやシンバルなんかもナチュラルでいい感じだ。ピアノも、きつすぎず甘すぎず、ちょうどいい具合に聞こえる。そしてベースがよく鳴る!特にこの作品では、ベース奏者がジョージ・ジョイナーなので、なんというか・・・凄みのある轟音(ごうおん)が響き渡っている。その迫力あるベース音でもって、ジョイナーが大活躍するのが、B面2曲目の babe's bluesだ(これも3拍子だ) クセのあるベースソロも飛び出てくる。ジョイナー好きの方は、必聴です(笑)

ウエストンは、初期にバリトンのセシル・ペインと共演していたが、その後は、どうやらテナーを好んだらしく、ジョニー・グリフィン、コールマン・ホウキンス、チャーリー・ラウズ、フランク・へインズ、それからブッカー・アーヴィンらを起用している。たぶんウエストンは、どちらかというと「濃い目」のテナー吹きが好みだったのだろう(笑)
というわけで・・・ようやくブッカー・アーヴィンの登場である。
ブッカー・アーヴィンと聞いて「にやっ」とした方は、相当なジャズ好きだろうなあ。あの「ワイルドさ」、あの「濃さ」、そしてあの「くどさ」(笑)一癖も二癖もある役者という感じだ。アーヴィンの吹き方は、ひたすら押しまくってくる暑苦しいものだ。粗野な感じさえする。しかしながら僕は、アーヴィンのテナーの音色自体には、意外にも「知的な新しさ」みたいなものを感じている。彼のテナーの音色はどちらかというと、伝統的なホウキンス~ロリンズ系よりも、もう少し新しめのコルトレーン系に近い、わりとメカニカルな音色だと思う。そのちょっと新しいクールな音色で、長いフレーズをうねるように、粗野に吹き倒す。
そんなブッカー・アーヴィンの個性が、ランディウエストンの世界に見事に「はまった!」と思わせてくれる曲があるのだ。
Portrait Of Vivian(weston作)というのがその曲である。
この1曲は、Rnady Weston/Live At Monterey'66(polygram)というCDに収録されている。1966年のモンタレー・ジャズ祭での未発表ライブ音源で、1993年発売されたものだ。
このライブでは、Ray Copeland(tp),Cecil Payne(bs),Booker Ervin(Ts)という3管編成の分厚いサウンドを聴かせてくれる。約70分の長いライブだったようだが、little niles や african cookbook(組曲風で25分)も演奏されており、1曲ごとにフューチャーされるミュージシャンが変わるので厭きずに楽しめる。録音も、とてもいいように思う。

Dscn1652 このPortrait Of Vivian。ブッカー・アーヴィンがフューチャーされるのだが、この曲、出足はピアノからだ。ウエストンがちょっと変わった弾きかたで~同じ音程を、ちょっとぶち切るように、しかし、鐘のように鳴らすような感じ~スロウなテンポを設定する。トランペットのコープランドが、そのピアノに応えるような吹き方でムードを造ると・・・いよいよアーヴィンが、テナーのうんと高い方の音から吹き始める。
この場面・・・僕はいつもコルトレーンの「ネイマ」を想いだしてしまう。荘厳な雰囲気が似ているともいえる。そういえば、ランディ・ウエストンの創るバラードは、メロディーを伸ばしたままハーモニーを変化させていくような手法が多い。そのゆったりしたメロディを管楽器のロングトーンでもって唄い込ませる~そんな感じだ。そして、ウエストンのバラードには、いつも何というか・・・瞑想しているかのような、荘厳な、そしてメランコリックな感じがする独特の雰囲気が漂っているのだ。
ラウズに吹かせたpretty strangeも、正にそういう雰囲気の曲だった。
ウエストンのバラード曲では、ロングトーンが多い~メロディに長く伸ばすようなノート(音)が多い~と書いたが、アーヴィンはその伸ばした音を、微妙にベンド~ある音程を吹きながら、唇の締め具合で(キーを使わずに)その音程を低く(高く)したりすること~させながら、意図的にその音程を不安定な感じにしているように聞こえる。そしてそれは・・・何かを堪(た)えている人が、咽(むせ)び、叫んでいるかのようだ。アーヴィンはそんな具合にロング・トーンを自在に操りながら、うんとスロウなテンポのまま、このテーマを吹き進む。それから倍のテンポにしてのアーヴィンのソロ。ここでアーヴィンは、独特の「うねりサウンド」を繰り出してくるが、バラードなので、そうムチャクチャにブロウするわけではなく、伸ばす音をうまく使いながら大きな流れにゆったりとノルようないいソロを取る。そして再び、あの荘厳なテーマに戻る。
解説によると・・・この曲を吹いている時、アーヴィンは感極まって涙を流しながら吹いたそうだ。実際、この曲を聴いていると・・・たぶん音をベンドさせている場面が、その「涙」の場面なんだろうなあ・・・と思えてくる。もちろん、こんな解説を読まなかったとしても、このPortrait of Vivian がランディ・ウエストンらしい重みと深さを感じさせてくれる、素晴らしい曲であることに変わりはない。
余談ではあるが、あるミュージシャンの「音色」が好き、あるいは嫌いというのは・・・全く理屈ではなく、やはり「肌合い」が合うとか合わないか、そういう純粋に感覚的なものだと思う。
例えば、ヴォーカルの場合でいえばよく判ると思うのだが、高めの声/低めの声、歌い上げるタイプ/語るように唄うタイプ、皆さんそれぞれに、好みがあるはずだ。「好きな声、嫌いな声」に理屈は要らないだろう。
誰にも、どうにも苦手なミュージシャンがいるだろうし、いろいろ聴いてみて、それでも自分の感性と「合わない」ということなら、無理して聴くこともないだろう。
いや・・・もちろん、ランディ・ウエストンやブッカー・アーヴィンが、そういうミュージシャンだと言うわけではないのですが(笑)

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2007年3月 1日 (木)

<ジャズ雑感 第17回>チャーリー・ラウズのこと。

心に染み込む深い音色・・・それがラウズの唄だ。

妙に好きなレコードというものがある。「妙に」というのは・・・特にそのアルバムなりミュージシャンを大好きだと自覚しているわけではないのだけれども、なぜかレコード棚から取り出すことが多くて何度も聴いているうちに「好きなレコード」になってしまった・・・そんな意味あいである。

ジャズ聴きの初期の頃からモンクをいろいろと聴いてきた。そうしてモンク好きによくあるように、僕もチャーリー・ラウズというテナー吹きをあまりいいとは思わなかった。モンクとそしてモンクの曲と正に対決するように吹いたコルトレーンや、あるいは圧倒的に自分の個性を発揮しながらモンクと対峙したロリンズと比べると・・・モンクとただ共演しているラウズは平坦に感じた。ちょっと「のんびりしたような音色」で、同じようなフレーズを繰り返すものだから、凡庸なテナー吹きという印象を持ってしまったのだ。
<補足>このことについては、みなさんから多くのラウズ擁護コメントをいただき、僕:bassclef もタジタジです(笑) 「CBS時代のモンク」に興味のある方(肯定・否定どちらでも)ぜひ、コメント欄もお読み下さい。長いです(笑)

そういう風に聴こえたのには理由がある。
モンク好きとしては、モンク曲の演奏には、なにかしらスリル感みたいなものがほしいのである。
よくジャズはアドリブだ!と言われている。しかし・・・どの曲でも同じだとは思うのだが、あるテーマが終わって「はい、ここからアドリブだよ」というように、アドリブ部分を普通のバップ感覚でコード通りにスムースに吹き進めていっても、あまりおもしろくないことも多い。 特にモンクの曲においては、テーマとアドリブを切り分けてしまっては、あのユニークなモンクのテーマが生きてこないように思う。
モンク好きとしては・・・テーマ部分でのあのモンク独自のメロディや、あの不思議なタイミング(そのアイディア)のエッセンスみたいなものを、巧くアドリブの中に生かしてほしいのである。
もっともこれは、僕が勝手に思う理想郷(モンク曲解釈としての)であって、それは相当に難しいことなんだろう。
実際、モンクの曲をそんな風に吹いたのは・・・ロリンズとスティーブ・レイシーくらいかもしれない。Dscn1669_1

そんなラウズのことを見直したのは、Takin' Care of Business(jazzland)を聴いた時からである。僕はこのレコードをうんと安いOJC盤で買ったのでそれほど期待もせずに聴いたのだが・・・まずB面1曲目の wierdo という曲がよかった! このKenny Drew作の曲は魅力的なテーマの曲で、かなりの急速調で演奏されるのだが、この曲でのラウズはやけに気合が入っているのだ。ノリのいいテーマの後も、アイディアに溢れるアドリブ展開を見せるラウズは凄い! たいていゆったりとしたテンポで、もっさりとしか吹けないようなイメージをラウズに対して持っていたのだが、この曲でのラウズは違った。それはもう覇気のある見事なテナー吹きだったのである。
そんなラウズに驚いた後・・・思い切りスロウなテンポでやけにメランコリックな曲が流れてくる。それがランディ・ウエストン作のPretty Strange という曲だった。
ランディ・ウエストンが生み出した、正にちょっとstrangeなメロディを、独りラウズが吹いていくと・・・ずし~んと重く沈鬱な感じが漂ってくるのだ。うんとスロウなテンポなので、普通なら、間が持てなくなってパラパラと流すようなフレーズを出してしまいそうなものなのに・・・ラウズは全く動じない。ベースとドラムが淡々とリズムをキープしつつピアノが合間に時々バックをつける中、ラウズは岩のような重さを保ったまま、「メロディを唄う」ことのみに集中しているようだ。ここまで音楽に没入してくると・・・もはやフレーズがどうとかリズム感どうとかいうようなことは問題ではない。
「音色」こそが全てなのだ。
さきほど「のんびりしたような」と書いたラウズの音色が、このウエストンの曲では、これほど深々とした落ち着きのあるどうしようもなく魅力的な音色に聴こえてくる。これはもう・・・全くラウズの世界、そしてランディ・ウエストンの世界だ。それにしても、こんな深い味わいのバラードというのはめったにないぞ・・・。
ラウズがウエストンの曲を好きだったのだろうか・・・このレコードでは、もう1曲、ウエストンの曲を演っている。「204」という曲だ。この曲は、ウエストンのhi fly にちょっと似ている曲調だが、こちらもやはり素晴らしい。チャーリー・ラウズとランディ・ウエストンの相性は、最高にマッチしているように思う。
ちなみにランディ・ウエストンについては・・・次回にでも何か書こうと考えている。

そんな具合に、チャーリー・ラウズという名前が気になってきた頃に、ラウズの「ワン・ホーン」のレコードを手に入れた。
Yeah!(Epic/CBSソニー)である。Dscn1668
このレコードは1973年頃にCBSソニーから1100円の廉価盤として発売されたはずだが、ラウズ=凡庸と思い込んでいた僕が、この盤をその頃に買うはずもなかった。後年、この「Yeah!」にはけっこうな人気が集まったらしく、CBSソニー盤にさえけっこういい値が付いたりしていた。そんな日本盤高騰ブームが去ったある時、このCBSソニー盤を、普通の値段で見つけたのでうれしく入手した。
このレコードではラウズのワン・ホーンで、you don't know what love is や stella by starlightなどのスタンダードを、じっくりと自分のペースで吹いている。モンク曲とは全く別の地平でじっくりとスタンダードをゆったりと吹き進めるチャーリー・ラウズ・・・これも実にいいのである。
この人には本当は「ワン・ホーン」が合っているのかもしれない。
想うに・・・ラウズのテナーには、なんというか実にソウルフルな感じを受ける。ソウルと言っても、いわゆるテキサステナー的な意味合いのソウルではなくて、なんというか・・・深い情感を伴ったある種の敬虔さみたいなものさえ感じ取れる「ソウル」なのだ。
今回、レコードを何度も聴き直しているうちに・・・ますますラウズの音色の深さに引き込まれてしまった。ラウズという人の音色は・・・聴き終わった後にでもじわじわと効いてくるような、そんな地熱のような温かさを持った音色なのかもしれない。
まったく・・・ジャズの世界にはいろんなテナー吹きがいるものだ。まだまだジャズはやめられない。

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