ハロルド・ランド

2011年12月31日 (土)

<ジャズ回想 第25回>ベン・ウエブスターの絶妙ライブ盤

  ヴィンテージではないけどオリジナル盤とも言えるじゃないか(笑)

この<夢見るレコード>・・・このところちっとも夢を見てない(笑) もちろんジャズへの愛着が薄れたわけでもなく、相も変らずレコードを買い、レコードを聴いている。休みの午前中はそのレコード音楽に浸れる貴重な時間で、たいていは入手仕立てのものから聴き始め、その内容が「ワオ~ッ」だと両面を聴き、また「がっくり」の時は片面だけにして、今度は愛着盤に手を延ばしたり・・・そんな風に次に何を聴こうかと考えたりするのもなかなか楽しい。そうこうしてると・・・もう昼だ。
お昼を食べてからも2~3枚は聴く。だけどお昼過ぎのこの時間は・・・眠くなるのである(笑)これがもう実に眠い。3枚目を聴く辺りになると、もう充分に眠気を意識している。だからこれは寝てしまうな・・・と自覚すると、タイマーを20分後くらいにセットして、例えばジョージ・シアリングを掛ける。そうして、目論見どおりに僕は眠ってしまう(笑)
休みの日に好きなレコードを聴いてのんびりと眠りに落ちる・・・これもなかなか幸せなことじゃないか。そうして目が覚めるともう夕方だ。それでも晩飯までには充分な時間がある。そこで、またレコード聴きである。僕の場合はこの時間帯・・・けっこう乗る。眠気の増したお昼過ぎのあの気だるい感じがさっぱりと抜けて「さあ、また聴くぞ」という気分になるのだ。そこで、大編成のものをわりと大きめな音量で聴いたりする。そうだな・・・マリガンのconcert jazz band(Verve)なんかは実にいい。
そんな具合に、僕はとにかくレコードを聴きたい。だから・・・なかなかブログにまで手が廻らないのだ(笑)
しかしながら、2011年もあっという間に終わろうとしているこの大晦日。毎年、大晦日にはrecooyajiさんとレコード聴きをしてきたのだが、今年は昨日・今日とは朝からレコード棚の再編成をしていてこれは予想どおり難航した(笑)苦闘の末、床置きになっていたレコード達をある程度までは収めるところまではメドがついたので、recooyajiさんとの例会ができなかった代わりに、久々にこの<夢レコ>をアップしようと思い立った。ちゃんとした構想もないので、短めのものになりそうです。

さて・・・僕はもちろん古いオリジナル盤が好きなわけだが、その一方で「オリジナル盤、何するものぞ」という反発気分も無いわけではない(笑) それはつまり・・・録音時にリアルタイムでは発売されなくて、しかし後年に発見・発掘されて発売された音源(別セッション・別テイクなど)というものがあり、それらについては、いわゆる「当時のオリジナル盤」は存在しないわけで、強いて言えば後年になって発売された初出自のものを「新発見オリジナル」とでも呼ぶしかない。そしてそういう「新発見もの」にも、侮れないものがたくさんあるぞ、という気分なのである。

だいぶ前の拙ブログ(ワリー・ハイダー録音)で、ビル・エヴァンスのTime Remembered(milestone)を紹介したことがある。それは、エヴァンスのライブ盤~At Shellyman's の未発表音源の世界初発売というもので、僕としては、要はその「演奏はもちろん、録音の音質が素晴らしい」ということを言いたかったのだ。年季の入ったジャズ好きほど、別テイクや別セッションなど未発表音源というだけで、その価値を認めないという頑固さもあるかと思う。つまり発表しなかったのにはそれなりの理由があるだろうし 実際、同じ曲の別テイクをいくつも並べられても、よほどの興味ミュージシャンのものでない限り、それほど素晴らしいものとは言えないことも多いのだ。でもそんな頑固さのために、後年発売の未発表音源盤を聴き逃すようなことがあるとすれば・・・それは悲しいことだよ、とも思うようになってきたのだ。そうした例外的に素晴らしいと思えるレコードをちょっと紹介したい。

≪写真下~1989年発売のOJC盤:6曲収録)

Dscn2829_2 Ben Webster ~At The Renaissance(contemporary)というものだ。
11月の中旬頃だったか・・・久々に旧友のsige君、yosi君とレコード3人聴きの会をすることになった。
こういう集まりでは、わりと不思議な偶然・・・それも嬉しい偶然が起こったりするのだが、今回はちょいと驚いた。集まりの2~3日前になると、僕は幾つかのレコードを思い描いておくのだが、その中に古い盤ではなく、わりと近年発売(1989年)のベン・ウエブスターのレコードもあった。これは1960年のライブ録音音源だが当時に発売された形跡は無い。だからあまり紹介されたこともないし、いわゆる「定評のある名盤」とは違うまったく地味なレコードである。僕はこのレコードを1年ほど前だったか、うんと安価で入手したのだが、聴いてみてすぐ気に入ってしまったのだ。
さて、朝からの大雨の土曜日、3人が揃って・・・yosi君がバッグから5~6枚のレコードを取り出してみると・・・ちゃんとこのレコード~Ben Webster/At The Renaissance(contemporary) がそこにあるじゃないか!

「あれ、なんで?」とつぶやく僕。そこでこちらが用意していたその同じレコードを見せる・・・「おおっ」とyosi君が応える。
こんな地味盤が2枚、打ち揃って並ぶとは(笑) これは嬉しいじゃないか! yosi君はベースのレッド・ミッチェル目当てにこの盤が目に留まったとのことだが、この安っぽいカバーデザインに負けずに入手したことは素晴らしい選球眼だ。
≪写真下~1989年発売のフランス盤らしい。左下のロゴに注目≫

4benwebsterattherenaissanc404776このレコード・・・ジャケットが冴えない。これではベン・ウエブスターがまるでミイラ男じゃないか(笑)
しかし、演奏は味わいのあるもので、そして録音もいいのである。ライブ録音だが、各楽器の芯のある音色と響き具合が自然で、素晴らしい臨場感を味わえる録音なのである。録音エンジニアは、howard holzerなる人物。
一般的に言って「西海岸の録音はいい音」ということはあるかと思う。まあその「いい音」を言葉で定義はしづらいものだが、この場合の「いい音」は・・・私見では「すっきりした誇張の少ない自然な楽器の音色」という感じだと思っている。それは録音マイクの違いもあるような気がする。雰囲気としては、東海岸のダイナミックマイクと西海岸のコンデンサーマイクという違い方があるような気がする。

そして並んだこの2枚・・・contemporaryレーベルからの近年発売という点ではもちろん同じだったが、僕の手持ちは1989年発売のOJCステレオ盤(phil de lancieのリマスター)
yosi君のは19861985年モノラル盤だったのである(リマスターは別人=Gary Hobishなる人物と判明)
だから、このレコードの初回発売は19861985年モノラル盤ということになるわけだが、19861985年版のステレオ盤も存在するのだろうか?Dscn2832
実は、そんな違いも後から判ったことであって、最初、yosi君手持ちの盤を掛けた時・・・僕は「あれ?レッドミッチェルのベース音がいつもと違うぞ」という感じがして、それは、レッド・ミッチェルのベース音がやけに太く大きく聴こえたからである。「大きく~」というのは、このレコードを何度も聴いて僕が感じていたレッドミッチェルのベース音の鳴り方が他楽器とのバランスにおいて「いつもより大きく聴こえた」という意味である。
もちろんミッチェルはベースの真の名手で常にズズ~ンといい鳴りを出しているはずで、大きく太く鳴ることはいいことなのだが、僕はステレオ盤でのバランスに慣れてしまっていて、そこに若干の違和感を覚えた。ジミー・ロウルズのピアノ音色も、モノラル盤だと明らかに強め・厚めのタッチに聴こえて、それは何となく、僕が感じているジミー・ロウルズとは微妙に違うような感じを受けた。
その辺りで「あれ?これ、ステレオ盤じゃないね。僕のは確かステレオ盤だったと思うけど・・・」ということになり、お互いのジャケット裏を精査したところ、ようやくその違いに気づいた・・・というわけなのである。
まあこの辺のことは、いつも言うように「好みの問題」で、僕の場合、ステレオ録音の軽やかさを嫌いではないので、演奏の場でリアルなステレオ録音をされた音源であれば、なるべくステレオ盤で聴きたいと思うわけである。
そして、ベース音や各楽器の音をとにかく大きく太い音で聴きたいという方は、やはりモノラル盤を好むことになるのであろう。

ウエブスターはスローバラードが好きなようで、スローなテンポでいいメロディを実にゆったりと延ばしながらその音色に濃淡を付けていくような吹き方をする。基本的にはアルトのジョニーホッジスをそのままテナーに移したような感じなのだが、その「ねちっこさ」がこの1960年頃になると以前より薄めになってきたようで、そしてその辺りの「でもねちっこい感じ」が僕にはちょうどいい按配なのだ。
そのバラード~georgia on my mind と stardustが実にいい。ウエブスターの「ゆったり」に、バックの伴奏陣が適度に変化を付けて演奏全体がダレることなく進んでいく。ピアノのジミー・ロウルズ、ギターのジム・ホール、ドラムにフランク・バトラー、そしてベースにレッド・ミッチェル! 灰汁の強い個性派を主役に据え、真の名手たちで脇を固めたという感じで、ベースとドラムが造る流れの中でポツポツと入るロウルズのピアノも実に味わい深い。
そして、stardustでは、レッドミッチェルの「アルコ弾きソロ」をたっぷりと聴ける。ミッチェルはもちろんピチカット(指で弾く)も巧いが、アルコ(弓で弾く)もこんなに巧かったのか! 左手のガシッとした押さえが効いているから音程がぶれない。チェンバースのけっこう乱暴なアルコ奏法とは、だいぶ違うぞ(笑) そんな名手がアルコで弾く、弦と胴鳴りの気持ちいい音が素直な録音で捉えられており、何度聴いても飽きない。このstardustは、実に味わい深い演奏だと思う。

001_2そうだ・・・もうひとつ、印象深い stardust があったぞ。フランク・ロソリーノの Free for All(specialty)だ。 ロソリーノがトロンボーン一丁で小気味よく歌い上げる名演だ。そういえば・・・こちらも未発表音源の後年発売盤である(録音は1958年12月)
米specialtyが1986年に発売したモノラル盤裏解説にこうある(当時のプロデューサー:Dave Axelrod 談として)~
≪フランクと私は何週間も掛けてメンバーや曲目を考えて素晴らしい出来上がりになったのに、どういう訳だか発売されなかったので、2人とも、そりゃがっくりきたよ≫
そのメンバーは ロソリーノ(tb)、ハロルド・ランド(ts)、ヴィクター・フェルドマン(p)、リロイ・ヴィネガー(b)、スタン・レヴィ(ds)・・・これは本当にいい人選じゃないか。002
実はこのレコードは以前の<夢レコ:トロンボーンのいいバラード>で紹介したことがあるが、「後年発売の未発表音源盤」の逸品としても推薦したい。機会あればぜひ聴いてみてください。
ちなみにこのレコード~僕の手持ちでは、米specialtyがモノラル盤、日本センチュリーはなぜかステレオ盤(1991年発売)である。この日本盤は、自然に聴けるのでリアルなステレオ録音だと思う。コーティングされた日本盤ジャケットの出来映えはなかなか素晴らしいものだ。

侮れない内容の未発表盤・・・まだまだ見つかりそうな気配である。
ちなみに、Ben Webster/At The Renaissance(contemporary) のことについては、yosi君がこの3人聴き会の後、すぐにブログ記事にしてくれました。http://blogs.yahoo.co.jp/izumibun/35643651.html
そちらもぜひご覧下さい。

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2010年7月 4日 (日)

<ジャズ回想 第23回>雨降りの1日は、レコード三昧だった。

~United Artistsというレーベルを巡って~

久しぶりに藤井寺のYoさん宅でのレコード聴きをすることになった。今回は4月白馬の集まりに参加できなかったリキさんと僕(bassclef)のために、Yoさんが声を掛けてくれたのだ。集まったのは、愛知からリキさん・konkenさん・僕。関西からdenpouさん、PaPaさん、Bowieさん。Yoさんを入れて7人となった。

午前中から夕方まで約8時間・・・皆であれこれと聴きまくったわけだが、今回はクラッシクから始まった。
Vx25_j_2 まずはYoさんから、シュタルケルのチェロ独奏。コダーイの曲を鋭く弾き込むシュタルケルのチェロ。その中低音が豊かに捉えれた、しかもエッジの効いた好録音。ジャケットを見るとこれがなんと1970年頃の日本でのレコーディング。つまりこの日本ビクター盤がオリジナルなのだ。Vx25_lシュタルケルのチェロをYoさんはディグ(探求)しているようで、そういえば2~3年前の白馬でも、シュタルケルの日本での実況録音盤~バッハだったか?~をセレクトしていた。この人のチェロは、強くて毅然としており、曖昧なところがない・・・そんな感じだ。 《シュタルケルの写真2点~Yoさん提供》
それから、ムターなる女流 ヴァイオリニスト~言わずもがなの「美人」~の2種(共にグラモフォン音源)に話題が。ムターについては、おそらく事前にリキさんとBowieさんが音源セレクトを相談したのかな。
カラヤン指揮(1988年)
~クラシック不慣れな僕らのためにお2人が気をつかってくれたのだろう(笑)・・・曲は「チャイコフスキーのヴィイオリン協奏曲」冒頭から少し経過すると飛び出てくる印象的なメロディ・・・ああ、この曲なら僕でも知っている(笑) 1988年のデジタル録音ということもあってか、ムターのヴァイオリンだけでなくバックのオーケストラまでクリアに聞こえる。
次に同じ曲の70年代もの(グラモフォン音源)Bowieさんのセレクト。こちらはアナログ録音だがバックのオケの音圧感がより豊かで肉厚な感じがする。これも良い録音だ。こちらのヴァイオリンはミルシュタインだったか。指揮はアヴァド。アヴァドという人・・・曲の終盤になると劇的に盛り上げる感じがいつもあって(たぶん)僕はなぜだか嫌いではない。そんなシンプルな躍動感みたいなものがカラヤン盤よりも濃厚に感じられて、この協奏曲は僕にも充分に楽しめました。
ムター繋がりでリキさんからもう1枚~
「これは・・・珍盤の一種かも」というリキさんが取り出したのは、立派の箱入りのLP2枚組。タイトルは「Carmen-Fantasie」(今、調べたら録音は1992年。正規品はもちろんCDであろう)ジャケット写真は・・・ヴィオリンを弾いているムターの立ち姿。正規CDと同じデザインだと思うが・・・このムター、ちょっと色っぽい。
掛けたのは「チゴイネルワイゼン」
曲の出だしからちょっと大げさな感じのするあのメロディ(好きな方、sorryです) これはグラモフォン音源のはずだが、センターラベルは白っぽくてデザインも違う。ラベルには小さい文字でmade in Japanと入ってはいるが、解説書の類(たぐい)は一切ない。聴いてみると・・・音からするとちゃんとした音源のようだとYoさんが言う。臨時に版権をとった記念のLPセットのようなものだろう・・・という意見も出たが、いずれにしても、所有者のリキさんでさえ、その出自を知らない「謎のムターLP2枚組」である。
ムター好きを隠さないYoさんが「欲しい・・・」とつぶやくと、ダジャレ好きなPaPaさんは「そんなごムターな・・・」などと言ってる(笑)

こういう音聴き会では、各人のお勧め盤を順番に聴いていくわけだが~そうすると、当然、各人の趣味嗜好が様々なので、厭きない流れになるというわけだ。実際の順番どおりではないが、ここで皆さんのお勧め盤をいくつか紹介したい。

Yoさん~今回は実は<UAレーベル>というのが隠れ主題になっていて(と勝手に解釈していた僕) それもあってか、そろそろ・・・という感じでYoさんが1枚のUA盤を取り出した。
Uas_5034_j_2 《リトルの写真4点~Yoさん提供》 Booker Little/~+4(united artists)ステレオ盤青ラベル 
この渋いUA盤からYoさんが選んだのは moonlight becomes you。スタンダード曲である。リトルはうんとスローなバラードで吹いている。
ラファロと共演のTime盤にもひとつスローものがあったと思うが、このUA盤(Booker Little +4)にもこんなに素敵なスローバラードmoonlight becomes you が入っていたのか。Uas_5034_lところが・・・僕はこの「ブッカーリトル・プラス4」~国内盤さえ持ってない。リトルがリーダーなのだから、ローチのことは気にせず聴くべきレコードだったのだな・・・などとモゴモゴ弁解する僕(笑)そういえば、Yoさんもマックスローチ苦手絡みということもあり、このUA盤の入手は他のUA盤に比べれば遅かったらしい。リトルという人・・・スパッと抜けのいい音色にも特徴があるが、丁寧にじっくりとメロディを吹くその誠実感・・・みたいなBcp_6061_j 味わいが実にいいのだ。 
Booker Little/~& Friends(bethlehem) if I should loes you
こういう音聴き会ではいつもちょっとした偶然がある。この日、konkenさん・リキさんとクルマで藤井寺へ来たわけだが、車中ではたいていiPODをシャッフルで掛けている。音源は konkenさんCDなのだが、ジャズ、ロック、ヴォーカルがごちゃ混ぜで入っているので、この3~4時間がけっこう厭きない。四日市の辺りで、トランペットが深々と吹く聴いたことのあるメロディが流れてきた。このメロディは・・・知っている。そうだ、if I should lose youだ。BGM的に流してはいても、気になる音(音楽)が掛かるとと、iPODの真ん中辺りを押してデータを表示したくなる。「ああ・・・ブッカーリトルかあ」と納得。
そんな場面があったことをYoさんに告げると、ちょっと嬉しそうなYoさんは続けてリトルのbethlehem盤を取り出して、if I should lose you をセレクトした。うん・・・いい。「やっぱりiPODで聴くよりいいな」と僕が言うとkonkenさん、ひと言「当たり前じゃん」Bcp_6061_l
どちらの演奏も、本当にスローなバラードである。一拍をカウントしてみると明らかに1秒より遅い。♪=60以下の超スローなテンポだ。
リトルはバック陣にきっちり淡々と伴奏させながら、悠々とじっくりとメロディを吹く。ほとんど崩さない。しかし不思議に味がある。リトルの音色・・・とても抜けのいい感じで、どちらかというジャズっぽくない音色とも言えそうだが・・・どこかしら、わずかな翳りがある・・・ようにも感じる。それは説明しづらい何かであって・・・妙な言い方になるが、黒人全般に一般的には似合うはずのブルース感覚とはちょっと違う感性のトランペッターであるような気がする。そしてその「翳り」とバラードはよく似合う。ブッカー・リトルという人、どうにもバラードがいいじゃないか。

Dscn2490bassclef~
Jimmy Woods/Conflict(contemporary)ステレオ盤。 conflict
右側からタッカーのザックリした切れ込み鋭い戦闘ベースが、たっぷりと鳴る。いつになくハードボイルドな感じの増したハロルド・ランドもいい。やや左側から鳴るカーメル・ジョーンズも覇気のある音色だ。そしてピアノは ・・・なんとアンドリュー・ヒル。ヒルが弾くストレーと なブルースも面白い。Dscn2492リーダーのウッズのアルトは、ちょっとクセのある粗野な感じだが、もちろん嫌いではない。ウネりながら巻き込むような吹き方は・・・ちょっとドルフィ的でもある。そしてもちろんエルヴィンもいい(笑)ドッカ~ンと響くドラムサウンドがこのレーベルの端正な感じの音で鳴るのも実に悪くない。

Miles Davis/Round Midnight(columbia CLモノラル6つ目) round midnight 
ここでいつもの聴き比べ病が出る(笑)Columbiaはスタンパー違いで音が違いが大きいと言われているが、そういえば実際に試したことはない。このRound Midnight・・・同じモノラル6つ目をYoさんもお持ちで、じゃあマトリクスを見てみよう・・・僕のはジャケはぼろぼろだが(笑)盤は1C。Yoさんのは1J。CとJなら違うと思うよ・・・と、Yoさん。
Dscn2493聴き比べの時は、僕はウッドベースの音(聞こえ方、バランス、音圧感)やシンバルの打音に注目するのだが、columbia録音のシンバルはいつもうんと控えめバランスなのでこの場合、フィリー・ジョーのシンバルであってもあまり参考にならない。そこでウッドベースだ。同じ音を出しているはずのチェンバースのベースでも、Columbia録音の場合、presitigeに比べると低音を厚めしたような感じがあり、僕の場合は、ややギスギスした感じのprestigeでのベース音よりも、ややソフトな感じのcolumbiaの方が好みではある。Dscn2489
さて、この2枚を続けて掛けてみると・・・・・・その雄大に鳴るチェンバースのベース音・・・その輪郭においてやはり1Cの方がよりくっきりした音圧感で鳴ったようだ。ベース以外には特に大きな違いは感じなかったが、全体をパッと聴いた印象として、1Cスタンパーの方が色艶が濃いというか鮮度感が高いように聞こえた。やはり・・・Columbiaレーベルではスタンパー違いによる音質の違い(鮮度感)というものがあるのかもしれない。むろんタイトルによってその差異は様々だろう。

Kenny Clarke/(Telefunken Bluesと同内容の12inch盤)から solor
アルトがFrank Morgan・・・ここでPaPaさんが鋭く反応。
PaPaさん~
僕がモーガンの名を出すと、PaPaさん、すかさず1枚のレコードを取り出す。おおっ、GNPのフランク・モーガンだ!盤を出すと鮮やかな赤。
Cimg5658_2Frank Morgan(GNP)赤盤 the nearness of you

《GNP盤写真2点~PaPaさん提供》
モーガンのアルトは・・・う~ん、これは好みが分かれるだろうな・・・ちょっと軽い音色でフレーズの語尾をミョ~!ミォ~!としゃくるような感じ。どこかの解説で「名古屋弁のアルト吹き」という表現があった。素晴らしい!(笑) ちょっと、ソニー・クリスにも似ているな・・・と思ったら、PaPaさん、次にソニー・クリスを出してきた(笑) Cimg5663さすが・・・パーカー以後のアルト吹き全般に精通しているPaPaさんだ。セレクトにテーマがある。
Sonny Criss/Up Up and Away(prestige) 紺イカリラベル から sunny

この「サニー」はもちろんあの有名ポピュラー曲。録音が1967年なので、当時のジャズロック調まっしぐら。何の衒(てら)いもなく、当時のヒット曲を料理しているようで、それは案外、クリスの持ち味であるちょっと軽いポップな感じと合っているのかもしれない。
そういえば、PaPaさんと僕が思わず微笑んでしまった場面もあった。フランク・モーガンだけでなく、もう一人、ディック・ジョンソンというアルト吹きをセレクトしてきたのだが、2人ともemarcyではなく、riversideのMost Likelyを持ってきたのだ(笑) この時、音はかけなかったが、なにか1曲となったら・・・たぶんPaPaさんも 静かにバラードで吹かれる the end of a love affair を選んだであろう。

denpouさん~
ちょっとマイナーなピアノトリオを本線とするdenpouさんではあるが、この日はピアノ主役ではない10インチ盤をいくつか持ってこられた。

Dscn0301 《写真~denpouさん提供》
Georgie Auld / (discovery:10inch) here's that rainy day
darn that dream
ジョージ・オールド・・・いや、古い日本盤ではこの人の名をりをちゃんと「ジョージイ・オウルド」と表記してあったぞ。GeorgeではなくGeorgieという綴(つづ)りに注目したのだろう。
スイング時代のビッグバンドっぽいサウンドをバックにゆったりと吹くこのテナー吹き。コーニイ(古くさい)な感じがまったく・・・悪くない(笑)
古いテナー吹きをけっこう好きな僕も、もちろんジョージイ・オールドを嫌いではない。Cimg5664_2そういえば何か10インチ盤を持ってたけど・・・などと言っていると、PaPaさんが自分のレコードバッグからすうっ~と見せてくれたのは・・・roostの10インチ盤。「おおっ、これだ!」
それにしても・・・PaPaさん、なんでも持っている(笑) Cimg5665_3 このroyal roost盤・・・面白いのは、裏ジャケットが無地・・・一文字も入ってない、無地の青一色であることだ。 さっぱりしていいじゃないか。そういえば、スタン・ゲッツの10インチも同じように裏ジャケットは無地だったかな。 当時のroyal roostさん・・・デザインとしての無地だったのか、単なる手抜きなのか(笑)
《royal roostのオウルド写真2点~PaPaさん提供》

さて・・・オウルドの10インチ盤から、here's that rainy dayという好きな曲がかかったので、僕はあのレコードを想い出した。あれ・・・エルヴィンとリチャード・デイヴィスのimpulse盤 Heavy Soundsだ。 As9160_jあれは・・・フランク・フォスターの堂々としたバラード吹奏がたまらなく魅力的なのだ。このレコード・・・拙ブログ夢レコでも小話題になったことがある。それは・・・録音のバランスとしてのリズムセクションの捉えられ方についてのコメントで、そのバランスがこのHeavy Soundsでは明らかにベース、ドラムスが大きすぎるというのがYoさん意見だった。今回、here's that rainy dayつながりだったが、Yoさんお持ちのそのimpulse盤(これは赤黒ラベルが初版)を聴いてみた。As9160_l右チャンネルからリチャード・デイヴィスの芯のある強いピチカット音が・・・かなり大きな音で鳴りまくる。 う~ん・・・これは・・・確かに大きい。フランク・フォスターのテナーが主役なのだが、音量バランス、それに弾き方そのものが管に負けないくらい「主張する音」となっている。僕はデイヴィスの音は強くて大きい~と認識しているので、僕としては「大きくても」問題ない(笑)ただ・・・一般的にみて、ジャズ録音における管とリズムセクションのバランスにおいては・・・少々、出すぎかな(笑)まあでもこのレコードはエルヴィンとリチャード・デイヴィスのリーダー作ということでもあるのだから・・・ヴァン・ゲルダーがあえてそういうバランスにしたとも考えられる。《Heavy Sounds写真2点~Yoさん提供》

Dscn0243_2《写真~ denpouさん提供》
Max Bennett~おおっ!あのシマウマだ!この10インチ盤・・・ただ、シマウマが2匹いるだけなのに、どうにもいいジャケットだ。denpouさんのこの手持ち盤はコンディションもいい。ジャケット表のコーティングもキレイでシマウマのオシリも艶々している(笑)
ベツレヘムというと名前が浮かんでくる女性ヴォーカルに、ヘレン・カーという人がいる。ヘレン・カーのリーダーアルバムとしては、10インチでは<ビルの一部屋に明かり>、12インチでは<浜辺に寝そべる2人>がよく知られているが、この「シマウマ」にも2曲だけヘレンの唄が入っている。konkenさんのリクエストもあり、この10インチ盤から ヘレンカーの歌入り(they say )を聴く。カーさん・・・声質にはやや低めで落ち着いた感じで、ビリーホリデイみたいに、しゃくったような歌い方もするが、わりと甘えたような唄う口でもある。そのカーの歌も悪くないのだが、ここはやはり間奏に出てくる、「おお、このアルトは?」くらいにハッとする鮮烈なアルトの音色に痺れる。そう、チャーリー・マリアーノである。マリアーノは唄伴でも遠慮しない。ここぞ・・・という感じで自分の唄を出しまくる。特に50年代の彼は激情マリアーノだ(笑)Dscn2504
ちなみにこの「シマウマ」(Max Bennett)は、それはそれは高価なのである(笑)でも同じ音源(8曲)をどうしても・・・という場合は、12インチではMax Bennett Plays(BCP-50)でも聴かれます。この辺りのbethlehem盤はどれもいいです。僕はマリアーノ目当てで集めました。

konkenさん~
Peggie Lee/Black Coffee(UK brunswick:10inch)
何年か前に杜のお仲間でも小話題になり何度か登場した10インチ盤。今回、ジャケット・盤ともコンディションのいいものをkonkenさんが入手。う~ん、やっぱりいい音だ。米Decca10インチと続けて聴いてみると・・・ペギーの声の鮮烈さ、バック伴奏陣のクリアさなど・・・やはりUK10インチに軍配が上がるようだ。ついでに米Deccaの12インチ盤も聴くとこちらの方がすっきりとしたいい感じなので、どうやら米Decca10インチ盤にはカッティングレベル(低い)も含めてプレス品質の問題があるかもしれない。

リキさん~
ロスアンゼルス交響楽団/Candide(Decca) バーンステインOverture ミュージカル音楽を豪快に爽快に楽しく聴かせてくれる。それにしてもこういう壮大になるオーケストラはYoさん宅の大きなスピーカーで聴くと理屈ぬきに楽しめる。

こんな具合にあれこれと連想ゲームのように飛び出てくる皆さんのお勧め盤を楽しんでいると、いくら時間があっても足らないなあ・・・という気分になるわけである。そんな中、でもやはり「レーベル興味」の音比べも楽しみたい・・・というのが、Yoさんと僕の病気である(笑)
こういう音聴き会の前にYoさんとメールやりとりしていると、そんな「レーベル話題」に関して何かしらテーマらしきものが浮かび上がってくる。
今回は・・・United Artistsである。以前から僕らの集まりで「UAのステレオ盤とモノラル盤」の話題になることがけっこうあった。具体的には・・・UAのいくつかのタイトルにおいては~<どうやらステレオ盤の方がモノラル盤より音がいい>ということで、まあもっともそれは、Yoさんと僕がチラチラと主張していただけで(笑)検証タイトルがなかなか揃わないこともあって、実際の聴き比べまでは話しが進まなかった。(Yoさんはだいぶ前から同タイトルで両種揃えていたようだ:笑)
僕が最初に、そのUAのステレオ/モノラルの音質違いに気づいたのは、アイリーン・クラールのBand & Iの2種を聴き比べた時だ。アイリーン・クラールは僕にとっては数少ないヴォーカルもの集めたい人で、このUA盤は5年ほど前だったか、先にモノラル(赤ラベル)その半年ほど後にステレオ盤(青ラベル)と入手した。そうして後から手に入れたステレオ盤を聴いて・・・僕は驚いた。「音の抜けが全然違う!」
このBand & I はバックがビッグバンド風なので、まあ簡単に言うとたくさんの音がバックで鳴っている。その大きな響きの様が、赤ラベル(モノラル)では、詰まったような感じで、なにやら暑苦しい感じが濃厚だったのである。アイリーン・クラールの声そのものにそれほど差はないようだったが、パッと聴いた時に、クラール独特のあの爽やかさ、軽やかさみたいな感じがモノラル盤では味わえなかったとも言える。
ステレオ盤では、バックのバンドの音群がそれはもうパア~ッと抜けて・・・「抜け」というのは、僕の中ではけっこうキーワードなのだが・・・説明しづらいのだが、周波数的に高音が出ているとかいう意味合いだけでなく、その鳴り方の「空気間」というか、その場で(録音現場)鳴り響いた音響の「感じ」が、よりリアルに捉えられている・・・というような意味合いで「抜けがいい」と表わしているつもりではある。
Dscn2494 Yoさんは、3年ほど前だったか・・・konkenさんお勧めのMotor City Sceneのキング国内盤ステレオを聴いて、その演奏を気に入り即座にそのオリジナル盤(モノラル)を入手した。ところが・・・どうも「違うなあ」ということで、国内盤であってもあのステレオ盤の方が遥かにいい音だった・・・という冷静な判断を下したらしい。そうしていつの間にか・・・Motor City SceneのUAステレオ盤(青ラベル)を入手していたのである(笑)
僕もクラール盤で感じていたことなので、UAの赤/青についてはまったく同感だった。そんな経緯もあって、Yoさんとは何度か「UA~United Aritistsは青ラベルだよね」みたいな会話をしていたわけである。Dscn2495
僕もまたkonkenさんのキング盤「モーター・シティ・シーン」を何度か聴いて、実に欲しい1枚だったのだが、わりと最近、ステレオ盤を入手して、その良さに満足しているところだ。4曲どれも良いのだが、特にA面2曲目 minor on top で出てくるぶっとい音のベースソロが気に入っている。ベースはポール・チェンバース。彼のいかにも大きそうな音が・・・そうだな、プレスティッジほど硬くなく、コロムビアほど柔らかくなく、適度な芯と適度に豊かな拡がりを保ちながらしっかりと芯のある素晴らしい音色で捉えられている。UAの録音エンジニアはあまり話題にならないが、なかなか素晴らしい録音だと思う。そのA面2曲目~ minor on topを掛けてもらった。
う~ん・・・素晴らしい!艶のある音色で細かいことをやらずに余裕たっぷりに吹くサド・ジョーンズ、それからいつものことながら、小気味いいシングルートーンを適度なアクセントを付けながらサラッと弾くトミー・フラナガン、そしていつもよりちょっと抑えた感じの、つまり・・・全編ブラッシュでリズムを刻むエルヴィン・ジョーンズ、そしてさきほど言ったポール・チェンバースのでかい音像のベースがやや左チャンネル辺りから響き渡る。いやあ・・・素晴らしい!Yoさんのウーレイから鳴る「抜けのいいベース音」も快感である。
この1曲があまりに素晴らしくて・・・赤ラベル(モノラル盤)と聴き比べることなど忘れてしまった(笑)
Uajs_15003_j_2《UJASステレオ盤の写真2点~Yoさん提供》
その替わりにというわけでもないのだが、今回、意図して持ってきたレコードが、Undercurrent(UA)である。同じUAでも・・・この作品は「サックス吹きラベル」である。Uajs_15003_l
   これについては・・・Yoさんがステレオ盤(UJAS~、僕がモノラル盤(UJA~)を持っており、僕はわりと最近、このモノラル盤を聴いて・・・その音の感じにやや違和感を覚えていた。ひと言で言うと「強すぎる」という感じがあったのだ。Yoさんとはメールではある程度、音の様相までのやりとりをしたが、やはり・・・音は聴かねばダメだ(笑)
7人が集まった会ではあるが、同音源の聴き比べにはあまり興味のない方も多いと思われるので、僕はちょっと遠慮気味にではあるが「ちょっとこれを・・・」と言って、灰色一色の暗いジャケット~モノラル盤:Undercurrentを取り出した。「ああ、それ、やりまひょか:笑」微妙に関西弁のYoさんが応えた。このUndercurrent・・・1978年だったか国内盤を入手した以来、僕はもう大好きでそのキング盤(ステレオ)を聴きまくってきた。あまり良好とは思えない録音(ちょっと弱い感じ)の音ではあったが、しかし、それは繊細に絡み合う2人の音世界に合っている・・・とも思えた。

<UnderCurrent モノラル盤/ステレオ盤から my funny valentine を聴き比べした後、Yoさんとのメールやりとり>Dscn2497
basslcef~
UAモノの方は「優雅で繊細」とだけ思っていた二人のデュオに、相当な力強さを感じました。エヴァンスのピアノがかなり近い音で入っていて(音量レベルそのものも大きいような感じ)かなり強いタッチに聞こえます。ガッツあるデュオ・・・という感じにも聴けました。
(ステレオ盤を聴いてみての印象)
やっぱり、青のステレオ盤、ある種、柔らかさが気持ちよく、そしてギター、ピアノのタッチの強弱感もよく出ていてよかったですね。エヴァンス、ホールのデュオ音楽としては、モノ盤のピアノは強すぎで繊細さに欠けた感じがありますね。楽器が二つだけのためか、他のUA作品でのステレオ、モノラルほどの音の落差はなかったようですが。同じサックス吹きセンターラベルでも、違い(ステレオはグレイ、モノラルはやや黄色がかった感じ)があることが判りました

Yoさん~
エバンス&ホールの件、UA盤はステレオとUK盤のモノがあります。UKモノはbassclefさんのモノオリジと同じようにカッティングレベルも高く、力感がありますが、ちょっと厚ぼったい感じがします。ステレオはちょっとレベル低めですが、透明感と力感が上手くバランスして好きです。
(USモノ盤を聴いてみての印象)
Undercurrentモノ盤は音自体は悪く無いのですが、仰るとおり「強い」という感じがあのDuoには似合わないように感じました。私は元々「DuoなんだからStereoが良いに決まっている:笑」と言う事で買ったのです。同じところから2人出てくるのは嫌いなので・・・(笑)

《この「黄色がかったモノラルラベル」については・・・Yoさんからも「モノラルでも普通はステレオと同じグレイ(灰色)だと思います」との情報をいただいた。僕の手持ちモノラル盤のラベルは・・・どう見ても黄色っぽい。これはいったい・・・? ひょっとしたら非US盤かも?と心配になった僕は、ジャケット、ラベルを仔細にチェックしてみたが・・・カナダ盤、オーストラリア盤、アルゼンチン盤などという表記はどこにもなかった。よかった(笑)》

Dscn2499《追記》
「アンダーカレント」という作品~
ステレオとモノラルの音の質感のことばかり書いてしまったので、その音楽の中身についても少し触れたい。デュオという形態は・・・難しい。その2人の個性を好きなら、ある意味、その人の手癖・足癖までたっぷりと見られるわけで面白いとも言えるが、ジャズはやはりリズム(ビート感)だ!という気持ちで聴くと・・・確かにデュオというのはあまり面白くない場合もけっこうありそうだ。
さて、エヴァンスとホールのデュオ・・・これは・・・僕は本当に凄いと思う。もちろんその前に、本当に好きだ(笑) その「凄い」は突き詰めていくと・・・やはりこのレコードのA面1曲目~my funny valentine の凄さなのだ。ごく一般的に言うと・・・ピアノとギターというのは、本来(器楽的な面として)ジャズでは相性が悪い。ハーモニーを出し、メロディも出し・・・という機能面で似ているので、出した時のサウンドとして「カブル」(被る~音が重なってしまってハーモニーが引き立たないというか・・・そいういうニュアンスで相性が悪いと・・・いう面は確かにあると思う。
この「アンダーカレント」は、ある意味・・・そうした器楽上の困難さに、ビル・エヴァンスとジム・ホールという2人の名人(白人技巧派として)が挑戦した・・・そんなレコードだと僕は思う。そうしてそんな2人の何が凄いのか・・・というと、それは「鋭すぎるリズム感の交歓、いや、せめぎ合い」ということになるかと思う。 my funny valentineは、普通の場合・・・スローバラードで演奏される。しかし、このテイクは違う。1分=180~200ほどと思われる急速調である。いきなりエヴァンスの引くメロディからスタカートをバリバリと掛けてキビキビしたテキパキした硬質my funny valentineなのである。ドラムスとベースがいないので、たしかに・・・なにやら疲れる。というより、普通のジャズだったら、あるはずの「聞こえるビート」「聞こえるタイム」がないのだ!これは・・・困る(笑) 落ち着かない(笑)フワフワしちゃう(笑)
しかし・・・これは2人の音楽的チャレンジでもあるのだ。ビートとタイムは今、聴いている自分が発現すればいいのである。アタマの中でも、あるいは手を膝に叩いたスラッピングでも何でもいいので、カウントを取って聞こえてくるビートに合わせてみる・・・そうすると2人の演っている「音」というのが、いかに凄いか・・・判ってくる。
このmy funny valentine・・・聴いていてグッ、グッと突んのめっていくような感じを受けないだろうか。この音楽が好みでない方にしてみれば、セカセカした感じと言ってもいいかもしれない。それはおそらく・・・テンポが速いからだけでなく、2人のノリ方が当たり前に「乗る」4ビートではないからのだ。小節のアタマ(4拍の1拍目)を、あえて外したようなフレージング。2拍・4拍のノリをあえて外したようなリズムのコンピング(相手がソロを弾いている時にバックに差し入れる和音) 2人はそのコンピングをどうやら1拍半(1.5拍)
のタイミングで入れているようだが、それを意地になって連続してくる。そしてその「1.5拍」は強烈なシンコペーションにもなってくるのだ。
<2小節8拍を~2・2・2・2(2x4=8)と2拍づつ刻むのではなく、例えば、1.5・1.5・1.5・1.5+2(この最後の2拍を1.5+0.5の場合もある)と
刻む。いや・・・この考えを倍の4小節(16拍)まで引き伸ばして、その間、延々と1.5拍攻撃を続けている場面さえあるようだ>
う~ん・・・こりゃ、聴いててもホント、どこがどこやら判らなくなる(笑) しかし・・・この2人はこの曲のどこで何をどうやっても、コーラスの進行を寸分違(たが)えずに音楽を進めていく。確固たる信念を持って先鋭的なリズムのやりとりを進めていく2人の厳しい佇まいに、僕は思わず身を硬くしてしまう・・・それくらいこの my funny valentineは凄い・・・と思う。そんな2人の緊迫したやりとりが、ひと山越えると、今度は、ジム・ホールがその真骨頂を見せる。エヴァンスのピアノのソロの途中、ホールはギターで4ビートを演ってしまうのだ。いや、ジャズを4ビートで演るのは当たり前だが、そうじゃない。よくあるようにベースの替わりをギターの低音部シングルトーンで弾くのでもない。ギターのコード(和音)を弾きながらそのまま4ビートを表出してしまうのだ!「なんだ、これは!」最初にこのレコードを聴いた時、その「和音の4ビートカッティング」に僕はブッとンだ。これは・・・ちょっとギターを弾いたことのある人ならば・・・同様に感じるであろう、ある意味「ショッキングなサウンド」なのである。そしてもっと凄いと思うのは・・・ジム・ホールという人がその「和音の4ビートカッティング」の音量を、微妙に抑え加減にして、なんというか技巧的に凄いというだけでなく、その技術をちゃんと音楽的なものにしてしまっていることなのだ。このジム・ホールは・・・本当に凄い、いや、素晴らしい。なお、いつもの僕の妄想では(笑)この「4ビートカッティング」が鳴り始めた瞬間、ピアノのビル・エヴァンスは、グッと目を見開いた。そうしてほんの一瞬、間を取ったが、その素晴らしいアイディアとサウンドに嬉しくなり、「よしっ!それならばオレもグイグイいくぜ」と鋭いフレージングに切り込んでいったのだ・・・。
*この「アンダーカレント」については、コメントも頂いたyositakaさんがご自身のブログでも触れてくれた。「2人のデュオ」という観点で素晴らしい表現をされている。
http://blogs.yahoo.co.jp/izumibun/32543379.html
このアドレスでご覧ください。bassclefもコメントをしました。その補足として、この追記を載せました。

UA盤話題で何度となく言葉になった、その「抜けの良さ」は、アイリーン・クラール、Motor City Scean、Undercurrent以外のタイトルでも実感していた。それは、有名なアート・ファーマーのModern Art。2ヶ月ほど前だったか、いつも2人でレコード聴きをするrecooayajiさんのモノラル盤と僕のステレオ盤で聴き比べた際、モノラル盤では引っ込み気味だったベースとドラムスが、ステレオ盤では、スパ~ッと抜けたように、大きな響きになり、しかもそれはふやけた感じではなく、しっかりした音圧感を伴った鳴りに聞こえたのである。
通常の場合、モノラル盤志向のrecooyajiさんであっても、レーベルによってはステレオ盤の方がいいのかな?・・・という見識もお持ちだ。つまり・・・いい録音のステレオ盤には偏見はない(笑) 実際、同タイトル2種(Art)を聴き比べてみて、これだけ「ベースの出方、ドラムの鳴り方が違ってくると・・・これはやっぱりステレオ盤の方がいいね」という場面もあったりで近頃は、僕らの仲間でも「UAはステレオ」がちょっとしたキーワードともなっている(笑)

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2009年7月26日 (日)

<ジャズ雑感 第30回> リヴァーサイドの不思議

2人のエンジニア~Jack HigginsとRay Fowler

 《Tadd Dameron/The Magic Touch(1962年) 青モノラル》015

 

リヴーサイドが好きである。ジャズ聴きの初期からモンクやエヴァンスを聴いてきて、だから彼らの一番いい時代の演奏が残されているリヴァーサイドというレーベルを嫌いになるはずがない。このレーベルには、もちろんモンクやエヴァンス以外にも好きなレコードはたくさんあるが、今回はジャズの中身(演奏)についてではなく、「リヴァーサイド録音の質感」について書いてみたい。    

また音の話しか・・・と思われてしまいそうだが、今回は、僕自身が「いい録音」「あまりよくない録音」と思える盤のタイトルを挙げながら、いつものように自分の思い込みを展開したい(笑)
要は・・・まず僕自身の「好き・嫌い」を明らかにすることで、それに対し「いや、それは違う!オレはあっちの方が好きだ」とかの意見も当然あるわけで・・・つまり「音の好みというのは本当に人それぞれなのだ」ということを、充分に認識することで、そうした方が・・・たぶん音の話しの「いい・悪い」も伝わりやすくなると思うのだ。そうしてこれらは録音についての僕の好みの話しなので、「音の良くない」方で挙げた盤があったとしても、それは・・・決してその盤の中身が悪いというわけではありません(笑)

 

以前からリヴァーサイドには、録音がとてもいいと思えるタイトルと、そうでないものがあって、だから、bluenoteやprestigeのようには「リヴァーサイドは、これこれこういう音だ」と簡単に表現できないもどかしさを覚えていた。僕のリバーサイド認識は・・・基本的には「自然な感じのしっとり感のある音質」だ。そうして、そのソフトな質感をもちろん嫌いではない。しかしそうとは感じない音の盤もけっこうあって・・・どうもリヴァーサイドの音はよく判らない・・・そんな感じもあるのだ。
今回は、その辺のことをできるだけ具体例を挙げながら書いてみたい。

 

さて、いろんなリヴァーサイド盤を聴いてきたが、この頃になってようやく、同じリヴァーサイドであっても2人のエンジニア~Jack HigginsとRay Fowler~によって、だいぶ音造りが違うようだぞ・・・ということに気づいた。
だいたいの掴(つか)みとして~
Jack Higgins(Reeves Sound Studios) 1956年くらいからのモノラル録音が主。[参考~モンクのBrilliant Corners、ビル・エヴァンスのEverybody Digs~やPortrait In JazzはHiggins録音]
*追記~Portrait In Jazzついて~モノラル録音はHigginsだが、ステレオ録音はひょっとしたらRay Fowlerかも?という話しが、bsさんのHP(BLUE SPRITS 8/20付)にてアップされました。そのCDのデータを巡る興味深い記事です。必見です!

*追記2~bsさんのブログ Blue Spirits は移転したので、そちらのアドレスを以下に。http://bluespirits.g2.xrea.com/hitoiki18portraitinjazz.html

Ray Fowler(Plaza Sound Studio) 1960年くらいからのステレオ録音が主。
[参考~但し、モンクのMonk's Music(1957年),ファイブスポットのライブ(1958年),Monk Orchestra at Town Hall(1959年)などはFowler録音]

 

Monk_town_hall_blue_21960年代に入ると、ほとんどの作品がRay Fowlerになっているようで、その音の違いは・・・スタジオ自体の響きや年代による録音機器の違いによるものも大きいはずだが、やはり2人の音造り(ミキシング、マスタリングのバランスなど)の違いというものもはっきりとあるように思える。 僕の場合、一聴して「おっ、いい音だな」と感じると・・・Ray Fowler録音の場合が多かった。
まず、Fowlerの方からいこう。006_2
ひと頃、リヴァーサイドの中編成ものが好みになっていくつか入手した。
Thelonious Monk/~Orchestra at Town Hall(1959年) 青モノラル
Jonny Griffin/Big Soul Band(1960年) 青モノラル 014
                     

 

 

 

                     Blue Mitchell/Smooth as the Wind(1960年)黒ステレオ(写真上)
Blue Mitchel l/A Jazz Version of Kean(1961年) 黒ステレオ
Tad Dameron/The Magic Touch(1962年) 青モノラル

Mark Murphy/Rah (1961年) 青モノラル/黒ステレオ(写真下)016_4   017

 

《特にマーク・マーフィーのファンではないのだが、このRahは、ビル・エヴァンスも何曲かに参加しているという情報もあり入手した。しかし・・・何度聴いてもどのトラックがエヴァンスなのかはっきりとは判らない》

 

上記6点のFowler録音盤は、モノラル盤、ステレオ盤どちらであ っても、多くの管楽器のエネルギー感もたっぷりで、スポットが当たるソロ場面での音色には鮮度感がある。しかもドラムスやベースのリズム陣の音圧感も充分にあり、さらにそれら全体のエネルギーバランスが強すぎず弱すぎず・・・のいい具合だったのである。
どれも好きな音だが、特にTad Dameron盤でのジョニー・グリフィンのテナー、Mitchell盤でのブルー・ミッチェルの艶やかなトランペットは、素晴らしい音だと思う。これら6タイトルは全てRay Fowler録音である。
こんな確認をしていると・・・まあ要は僕がFowlerの録音を(ミキシング、マスタリング含めて)好きというだけのことかもしれないが、いずれにしても、僕は今やはっきりとそういう認識を持ってしまったわけである(笑)
Photo *モンクの未発表LP~Evidence(milestone 1983年)A面には、At Town Hallからの別テイク~ラウズとのカルテットが3曲、オーケストラの1曲(thelonious)が収録されている。モノラル盤を聴いていて感じた、ブラス陣やベースの厚みある音そのままに、ナチュラルなステレオ音場になっており、なかなか素晴らしい音質だと思う。Ray Fowlerはやっぱりステレオ録音が得意なのだ。たぶんそのステレオ音源を元として、モノラルにミックスしているのだろう。Monks_music_rs
そのRay Fowlerの初期のステレオ録音とされているMonk's Musicは、3rd(黒ステレオ)と4th(茶色abc:モノラル)しか持ってないが、その演奏を僕はとてつもなく好きなので、Monk's Musicについてはまた別の機会に(笑)
*追記~皆さんがコメントで異口同音に触れてくれた、Riversideにおける[同じ作品でのステレオ盤とモノラル盤での音質違い]~これは・・・確かにある(笑) それは、Monkの「ミステリオーソ」です。2年ほど前に、Yoさんとのやりとりの中でも浮上したこの話題。その過去記事がこれです。

 

さて、好きなリヴァーサイドであっても、何もかもオリジナル盤というわけにもいかないので、当然、OJC盤やビクター国内盤でもいろいろと聴いている。OJC盤は、それまで国内盤で聴けなかった(入手できなかった)タイトルをいくつか聴いたのだが、「いい音」が印象に残っているものをいくつか紹介したい。オリジナル盤で検証しなくては無意味だ~というご意見もあるかと思うが、僕自身の感じとしては・・・国内盤、あるいはOJCであっても、もともとの録音の素性(質感、楽器のバランス)みたいなものは、ちゃんと表われるもので、つまり・・・「良い録音」か「あまり良くない録音」くらいは(何が良いか悪いかは、人それぞれであっても)どんな版でも判るものだと思う。

Victor Feldman/Merry Olde Soul(1960年 Ray Fowler) OJC盤007 
~このレコード・・・やけに音がいい。フェルドマンのヴィブラフォン、ピアノが適度にしっとり感のある音で捉えられており、ベースやドラムのバランスもちょうどいい。それから「サム・ジョーンズのベース」という観点で後述の2枚に比べてみると、低音の響きが豊かに捉えられていて、実にいい具合なのだ。
Milt Jackson/Bags Meets Wes(1961年 Ray Fowler ) OJC盤008
~これもとてもいい録音だ。ウエスのギターの艶々した質感が素晴らしい。サム・ジョーンズのベース音に限って言えば、先の2枚に比べると、ほんのちょっとだけベースの低い方が薄い感じがある。しかし充分に芯のあるいいベース音だと思う。
Blue Mitchell/Blue's Moods(1960年)もいい。これはビクターの紙ジャケCDを聴いただけだが、そのしっとりしたペットの質感と、サム・ジョーンズのベースの豊かな鳴り具合には、間違いなく元録音の良さを感じた。未入手・未確認だがエンジニアはRay Fowlerだと思う。

 

サム・ジョーンズは・・・おそらく右手のピチカットの時、その引張り力が強すぎて(アタックを掛けすぎて)「グシャッ」という感じに潰(つぶ)れたような音色になることもあるようだ。そしてその強烈さのためか・・・実際、その「引っ張り力の強さ」だけが強調された録音が多くて、ベースの録音としては、ややペンペンしたような音に聞こえてしまう録音のものも少なくないようにも思う。そんなサム・ジョーンズのベース音が良くないと思える録音盤を2枚だけ挙げよう。
*訂正~Things Are Getting Betterのベース奏者はパーシー・ヒースでした。Solarの方はサム・ジョーンズです。

 

Cannonball Adderley/Things Are Getting Better(RLP 12-286) *モノラル・青・大ラベル 1958年 Jack Higgins
013 ~このモノラル盤・・・一聴、ベース音が遠く霞(かす)んだ感じで音圧感に乏しく、ドラムの音は大きく入ってはいるがシンバルなどが歪っぽく、音そのものに鮮度感がない。サックスやヴィブラフォンも大きめに鳴ってはいるのだが、なにかにガチャガチャと暑苦しくこもったような感じに聞こえる。僕にはとても疲れる音だ。

《追記1~Yoさんからは、Things Are Gettingのステレオ盤(黒・小)の音は素晴らしい~とコメントもあり謎は深まる(笑) だとすると・・・どうやら、Jack Higginsの録音自体が悪いわけではない・・・ということかも》

*《特別追記!》~ついにこの「ステレオ盤Things Are Getting Better」を聴くことができた。昨日(10月10日)ニーノニーノさんの集まりにてYoさん宅で、まず僕のモノラル盤、それからYoさんのステレオ盤(黒・小ラベル)を聴いたその印象を以下。一聴して・・・「これは良い!」でした。Yoさん、NOTさんが仰るとおり、ジャクソンのヴィブラフォン、キャノンボールのアルトには芯に充分なエネルギー感があり、(ジャクソンは左側からキャノンボールは右側から)たっぷりの音量バランスで鳴る。そして僕がモノラル盤で感じた最も「苦手」な部分は・・・ドラムのシンバルや打音の「ガシャガシャ感」(歪む一歩手前くらいか?)であるが、ステレオ盤ではドラムスは全くでしゃばることなく、ちょうどいい按配の音量だ(僕にはそう聞こえた。この辺は、ぜひNOTさんブログでのレポートもご覧ください。ドラムが暴れ気味の方を好むであろうNOTさんの正直な感想にも納得。同じドラムの音量の聞こえ方に対しても、個人の好みでその印象はだいぶん違ってくる・・・という好例だと思う(決して良い悪いの話しではありません、くれぐれも:笑)それからもうひとつ~パーシー・ヒースのベース音にも大きな違いが!直前に同じ装置で聴いたモノラル盤よりも、ステレオ盤では明らかに、ヒースの音が太めに大き目に聞こえました。この点でも、特にベース音バランスが気になる僕にとっては「ステレオ盤」の方がベストなバランスだと感じました。

*追記~上記のリンク~NOTさんブログThese music suite me well は移転したので、ここに移転先アドレスを付けておきます。<
MONO VS STERET>なるカテゴリーに興味記事満載です。ぜひどうぞ! 

《追記2~上のモノラル盤とは違うジャケットのモノラル盤(*青・小ラベル)が存在しました。というより、僕の手持ち盤の方がモノラルの2ndジャケだろう。そして「音が悪い」のも、ひょっとしたらこの2ndジャケ盤だけの症状かもしれない(笑) その1stジャケットの写真は右下(ネットからお借りしました)
図柄は同じですが別ジャケットには、左下に[○囲みのSPECTROSONICロゴ]と右上のRIVERSIDE文字のすぐ下に[CONTEMPORARY SERIESと12-286]表記が入ってます》

Things_getting_2001_3







《追記3~そして今になって気づいたのだが(笑)・・・ジャケットだけでなく、センターラベルにも違いがあったのだ!Riversideに詳しい方ならすでにお判りだと思うが、センターラベルにも「小ラベル」と「大ラベル」があったのだ。普通の場合、「小ラベル」の方が先らしい(一部に例外あり) そして今回のケースでは~僕の手持ち盤(2ndジャケ:写真左上)の方が「大ラベル」で、1stジャケ(写真右上)が「小ラベル」のようだ。
大と小の簡単な見分け方のポイントは~ラベル左側のタテ書き[LONG PLAYING]文字と溝が交わらずに溝の外側にあるのが「大ラベル」、そして[LONG PLAYING]文字の上を溝が縦断しているのが「小ラベル」だと思う。
ラベル中央上部の「カセットテープみたいな図柄」でも同様に「溝が通る位置」の違いが明らかだ》

《追記4~bsさんコメント(2009年8月 2日 (日) 20:48)により、このThings Are Getting Betterのセンターラベルにもう一種あることが判明。それは[青・大・溝なし]で、bsさんによれば[僕の耳には、この盤の「音」は〇、それも◎に近い]とのこと。この[青・大・溝なし]と僕の手持ち[青・大・溝あり]とが同一の音質とは断定できないが、bsさんコメント内での音質感の描写は、僕の耳に聞こえた質感と近く、おそらく「同じ音」を耳にしているものと思われる。興味深いのはその「同じ音」に対しても受ける印象が異なってくる場合も充分にあり得る・・・ということです。
この辺りのことについて、bsさんがご自身のHP(8/12付け)で取り上げてくれました。コメントと併せてぜひご覧ください。


Red Garland/Solar(jazzland:JLP73)モノラル・オレンジラベル 1961年 Ray Fowler 001_2
~どのトラックでもサム・ジョーンズのベース音色がはっきりと薄い。もう少しは出ているはずのウッドベースの低い方の音がざっくりと抜け落ちてしまって、乾いてペンペンしたような音色になってしまっている。いい方の録音のサム・ジョーンズとはだいぶ肌合いが違う。サム・ジョーンズは、こんなに軽い感じのべーシストではないはずだ。002
ついでに「ベース音が遠い、薄い」録音として、Sonny Rollins/The Sound of Sonny(1957年 Jack Higgins)のことも。
ロリンズのレコードの中では・・・なぜか今ひとつの感がある。僕の好きなソニー・クラークも入っているのに、なぜだか演奏に生気が感じられないのである。ああ・・・今回は「演奏」については触れないでおこう。あくまで「録音」に拘りたいところなのだが、ちょっとだけ思うに、この「サウンド・オブ・ソニー」~ベースはポール・チェンバースなのに、(*訂正~チェンバースのテイクは3曲、パーシー・ヒースが6曲でした)かなり小さめでしか聞こえず(しかも遠めに)ロリンズのテナーも何となくエネルギー感に乏しいように聞こえてしまう。その要因に一部は・・・こうした「録音の拙(まず)さ」にもあるように思えてならない。なお、このSound of Sonnyは、米milestoneの2枚組で聴いてきたが、recooyajiさんが「モノラル白ラベル」をお持ちで、その真性オリジナル盤を何度か聴かせてもらった時の印象もまったく同じである。

 

*アダレイやサム・ジョーンズ好きな方が以下の3枚~
Cannonball Adderley/~ at the Lighthouse(riverside)
Cannonball Adderley/Poll Winners(riverside)
Cannonball Adderley/JAZZ Workshop Revisited(riverside)
をお持ちなら、ぜひ聴き比べてみてください。たぶん・・・ベース音には相当な違いがあるかと思います。情けないことに、僕は3枚とも未入手です(笑)なお、以上の3枚の録音はWally Heiderとのことです(厚みのあるベース録音に特徴)
*そのWally Heider録音によるjazzland盤を見つけたので紹介したい。
Harold Land/West Coast Blues(1960年)小豆色ラベル:モノラル
011 ~いい具合にベースはサム・ジョーンズだ。低い方まで太めに響くベース音が聞かれる。オン・マイクで録った音だとは思うが、適度な自然響きもあって、僕には好ましいベースの音だ。ただ・・・前回の記事で書いたように<そのミュージシャンの本当の音>という観点から言うと、サム・ジョーンズとしては、ややマイルドすぎる音色になっているかもしれない。しかし・・・さすがにWally Heiderさん、いい録音だ(笑)

さて・・・どうやら僕はRay Fowlerの音が好きなようである。もちろんこの辺のことは好みの問題だがそれだけではなくて、2人の録音盤を見ると判る録音年月の違い(スタジオや録音機器の違い)という要素もあるはずだ。だから機器の性能レベルでは、より有利なはずのFowler録音の方を「良い」と感じるのは、実はごく当たり前のことかもしれない(笑)
今回は僕自身の音の好みとして「Fowlerの音を好きで、Higginsの音が苦手」という流れで話しを進めてきた。そしてそのサンプルを見ると好きなFowler録音にはステレオ盤が多く、苦手なHiggins録音にはモノラル盤が多い・・・ということも事実のようである。
ちょっと白状すると、僕の好みが「ステレオ」なので「モノラル」の方ばかりを「良くない音」に感じてしまうのではないか・・・という怖れが自分自身にもあったので、手持ちでは数少ないJack Higginsのステレオ盤も聴いてみた。

 

003 Philly Joe Jones/Showcase(RLP1159)黒ラベル:ステレオ 1959年 Jack Higgins
~それほど悪いという訳ではないのだが、3人の管楽器にもうひとつ鮮度感が乏しい。ドラムもシンバルが大きめに鳴ってはいるが・・・004なんだか緞帳(どんちょう)の向こうで叩いているような感じだ。
Johhny Griffin/The Little Giant(ビクター盤:ステレオ)1959年 Jack Higgins
~アダレイのGettin' よりは若干すっきり目にはなったが、やはり暑苦しい感じが聴きづらい。全体に音量はあっても、どの楽器にも自然な音圧感・実在感がいまひとつ感じられないのだ。鳴ってはいるが・・・直(じか)に伝わるエネルギー感に乏しい・・・と言ったらいいのか。推測だが・・・Jack Higginsは、どの楽器もオンマイク気味で録った後、抑える方向でミキシングし直して全体のバランスを取ろうとしているのではないだろうか? それがために自然なエネルギー感が損なわれてしまう・・・ということがあるのかもしれない。

それから、Ray Fowlerのモノラル盤もひとつ~
Harold Land/In New York(jazzland:1960)モノラル・小豆色ラベル010
このレコード、ベースはサム・ジョーンズではないが、太めに入ったベース音と小気味のいいシンバル音も気持ちのいい、そしてランドのテナーも自然な感じで、なかなかいい録音だと思う。ただ、このベース奏者(Clarence Jones)、太い音色は魅力的なのだが、4ビートでのビート感がドタバタした感じになってしまうのがちょっと残念だ。

 

2人のエンジニアの音盤のことを書いてきて、その音の特質みたいなものを自分の中では整理できたのだが、 ここで僕は正直に言わねばならない。
お気づきかもしれないが、レッド・ガーランドのSolarのエンジニアがJack Higginsではなく、Ray Fowlerとクレジットされているのだ。
Solarは、「良くない録音」の2番手に挙げた盤だ。 そういえば同じガーランドのNearness of You(1960年:Ray Fowler)の音も全体に生気感に乏しくて、拙(まず)い録音だとの思いもある。こうなると・・・判らなくなってくる(笑) Ray Fowler氏はピアノ・トリオの録音が苦手だったのかもしれない。

さらに言えば、Higgins録音でも初期の1956年~Presenting Ernie Henry(12-222 モノラル・青ラベル)には、さっき書いたような違和感(ドラムスやベース音が遠い感じで音圧感に乏しくこもったような)は、ほとんど感じなかった。僕が一番耳にしてきたであろう、モンク作品もチェックしてみると・・・Higgins録音は以下の3タイトルのみ~*4タイトルに訂正~Five By Monk By FiveもHiggins録音でした(Yoさんからご指摘~thanks!)
<Thelonious Himself, with John Coltrane, Mulligan meets Monk, Five By Monk By Five>で、それらについてもCannonball Adderley/Things~に感じたような「録音の違和感」も特にないので、となると・・・Jack Higgins録音がどれも良くないのでは?・・・という僕の推測も頼りなくなってくる(笑)
どんなミュージシャンにもその演奏に好不調があるように、録音エンジニアであるHigginsにもFowlerにも、その音録りに当たり外れがある・・・というのが実際のところかもしれない。
ただリヴァーサイドでは、その当たり外れが録音だけでなく演奏の中身も含めて大きく現れてしまう・・・そんな印象が強い。そんなちょっとばかり毅然(きぜん)としない感じが個性的とも言える。まったく不思議なレーベルである。だから・・・リヴァーサイドは面白い(笑)

 

*僕の好みでは特に「良くない録音」と感じる2枚を明記しておきます。
Cannonball Adderley/Things Are Getting Better(RLP 12-286)モノラル・青ラベル
Red Garland/Solar(jazzland:JLP73)モノラル・オレンジラベル
言うまでもなくこれは「録音」についての印象で、中身(演奏)についての良い・悪いではありません(笑)
このレコードをお持ちの方の印象・感想もぜひ聞いてみたいと思います。皆さんが思う「良い録音」「良くない録音」レコードもお知らせ頂ければありがたいです。音の好みというのも、まったく不思議なものですね(笑)

 

《*10月4日(日)追記》~
いつも更新が遅いこの「夢レコ」だが、今回は2ヶ月も空いてしまった。更新しなかったのは、もちろん次の記事が書けなかったからなのだが、苦しい言い訳をするならば・・・実は、心理的に次に進めないような感じもあったのだ。それはもちろん・・・夢レコ:7月28日<Riversideの不思議>関わりである。この記事で僕は「音の好みは人それぞれ」ということについて少々突っ込んで書きたくて、それにはまず自分の好みを明らかにした方が話しが判りやすいと思い、自分が「あまりよくない録音」と思う2~3の具体的なタイトルを挙げたわけだ。それに対して、各氏から濃厚なコメントを頂き、それについての検証や報告(手持ち材料の中での)などのやりとりが、じわじわと続き、またその間に、NOTさん、bsさんのブログ、HPにおいても関連話題の記事も登場してきて・・・どうやら僕はそんなRiverside渦に充分に巻き込まれてしまったようなのだ。「渦」と言っても、これは楽しい渦ですが(笑)
あるレコードについての新しい検証コメントが出てくると、そんな聴いてみたい音盤たちのまだ見ぬイメージに苛(さいな)まれ、いろんなレコード雑学的なことも気になったりで、もう精一杯になってしまい(笑)・・・まあそんなこともあって、なかなか更新できなかったというわけです。

 

さて、約2ヶ月に渡るRiverside音盤についてのやりとりの中から、このレーベルに関わるいろんな側面が浮き彫りにされてきたようだ。自分のアタマを整理するためにも、ポイントだけ整理してみたい。

 

《Riversideの初期ステレオ盤(1100番台シリーズ)への再認識》
僕自身、実は「1100番台」という呼び名にほとんど認識がなかった(笑)「リヴァーサイド・ブック」(ジャズ批評社)でも、普通にRLPの201~499番と並べられていて、例えば、モンクのBrilliant Cornersの226番の所にカッコで(1174)番と表記されている状態で、だから・・・「1100番台」を連続したひとつのシリーズとして認識し辛い状況だったのだ。推測だが、よほどのマニアの方でなければ、リヴァーサイドのステレオ盤としての「1100番台」を認識されている方は少ないだろう・・・と思う。しかし今回は、その「マニア」の方が、2人も揃ってしまったようだ(笑)

 

まずYoさんからその1100番台について詳細なレポートが続き、Yoさんがこのレーベルを如何に愛しているのか・・・が判明しました(笑)
そのYoさんのレポートにNOTさんが鋭く反応。NOTさん手持ちの1100番タイトルを再検証・・・、お2人の手持ち盤を併せると30タイトルほどとなり、それぞれの盤に対する熱の入った報告から、モノラル盤とはまた違った「ステレオ盤の良さ」~定位的なことだけでなく、各楽器の音圧感や存在感など~を伺い知ることができた。特に音が良いと報告されたものをいくつか挙げておこう。(全容については、ぜひ各コメントをお読み下さい)

 

~Cannonball Aderley/Things Are Getting Better(1128番:
黒小DGあり(モノラルは286番) 録音:Jack Higgins
◎~各楽器がとても自然で音圧感も申し分ない。RiversideのCannonballのアルトの最も良い録音!!(Yoさんコメント)

 

Blue Mitchell/Blue Soul(1155番:黒小DGあり)(モノラルは309番)録音:Jack Higgins
音圧が凄く高く迫力満点です。MITCHELLは全ての曲で常に中央に位置し音のクリアさを含め録音の良さでは所有する1100番台中随一(NOTさんブログ~
http://blogs.yahoo.co.jp/not254/50839518.htmlより)

 

Wynton Kelly/Kelly Blue(1142番:黒小DGあり)(モノラルは298番)
録音:Jack Higgins
◎~どの楽器も自然でエネルギー感十分、バランスも良い
(Yoさん)
音が中央に集中していないため中抜け?と思えるような部分もありますが、KELLYのピアノ、NATのコルネットの生々しさはMONOを上回ります(NOTさんブログ~
http://blogs.yahoo.co.jp/not254/50839518.htmlより)

 

Jimmy Heath/Really Big!(1188番:黒小DGあり)(モノラルは333番)
録音:Ray Fowler
◎(-)~ビッグバンドの録音として素晴らしい。しいて言うと音全体が若干硬質(Yoさん)

 

ちなみに、NOTさんは以前からに並々ならぬ興味をお持ちで、ご自身のブログにおいても「モノラル盤VSステレオ盤」なるコーナーで、多くのサンプルを検証されている。その最近記事~http://blogs.yahoo.co.jp/not254/50980289.html
http://blogs.yahoo.co.jp/not254/50922757.html
も必見です。
*追記~このNOTさんのブログ~These music suite me well は移転してリンクが効かないので、ここに新しいアドレスをリンクしておきます。<MONO VS STEREO>というカテゴリーで40件もの記事があります。労作です。ぜひどうぞ。
https://ameblo.jp/noriten226/theme-10109479643.html

 

こうしてみると、今回の拙ブログのコメントやりとりは・・・モノラル録音が専門だと思われている「Jack Higginsの初期ステレオ録音」についての、YoさんとNOTさんによる再検証の記録とも言えそうだ。
音質の評価については、僕も何度も言い訳しているように(笑)「個人の好み」で変わるものかもしれないが、NOTさんもたびたび仰るように「定説に振り回される」ことなく、可能な限り自分の耳で判断することが必要だと思う。
モノラル盤とステレオ盤の好みが分かれることについては・・・どちらが良いとか悪いとか一元的に決められるものでないことはもちろんだが、「良い/悪い」の状況は、あくまで個々のタイトルごとで変わってくるものだと思う。そんな「モノラル/ステレオ」については、次のコメントを紹介しておきたい。
《楽器の音に厚みや力感を求める方であれば(定位的に中央でないとダメというポリシーの方でなければ)ぜひ「良い録音のステレオ盤」を耳にしてみてほしい》(by Yoさん)

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2008年6月 4日 (水)

<ジャズ回想 第14回>4回目の白馬は雨降りだった。

2008年5月~杜の会in白馬

毎年、この時期になると、ひとつ楽しみなことがある。長野県白馬で行われるニーノニーノさん主催の「杜の会in白馬」である。2005年の第1回から数えてもう4回目だ。今年は、関西からのYoさん、Musashi no papaさんに、愛知・静岡組の~recooyajiさん、konkenさん、マント・ケヌーマーさん、そして僕:bassclef~6人が合流してのクルマ旅となった。1369astaire
5月24日(土)集合場所の伊勢湾自動車道「刈谷ハイウエー・オアシス」にて、うまく合流できた我々6名は「やあやあ」と挨拶を交わす。papaさんとは3月の藤井寺以来だが、recooyajiさんとマントさんは、papaさんと初対面となる。「杜」で知り合ったお仲間が初対面する時・・・ちょっとおもしろい現象が起きる。「~です」と事前に聞いていたはずの名字を言いあっても、なかなかピンとこないのだ。それで「recooyajiです」と「杜」でのハンドルネイムを発声すると・・・「ああっ、recooyajiさんですかあ!」と、描いていたその人のイメージが、今、目の前にいる生身の人間と劇的にマッチする~という仕組みなのだ(笑) そういえば、2005年に初めて「洗濯船」1Fのあの食堂に入って行った時~すでにほとんどのメンバーが集合しており談笑していた~僕が「bassclefです」と言うなり、皆さん「ああ~っ」と反応してくれたなあ。そして全員(ほとんどの方が初対面)が名字+ハンドルネイムで自己紹介をすると、不思議なほどに打ち解けてしまうのだった。

さて、なごやかになった6名に気合が入る。「いざ、白馬へ!」
最初の運転はpapaさんだ。昨年、僕が失敗した土岐ジャンクションでの<伊勢湾自動車道~中央自動車道>も巧く乗り継ぎ(あたりまえか:笑)中津川の長いトンネルも抜けていく。こういう長いトンネルは6人でワイワイやってると早いけど、1人だと本当に長く感じる。しかもあの「微妙に暗めのオレンジ色」あれがいけない。あんな風にトロ~ンとした色合いでは・・・どうしたって眠くなるじゃないか(笑) Yoさんのワゴン車も3500ccでパワーに余裕があるのだが、papaさんは運転も相当に巧いようで、緩やかに続く登りカーブでもスムースな走りだ。そういえば、さっきYoさんが「papaさんはA級ライセンスを~」と言ってたな。僕は最後列でkonkenさんと隣合わせだ。ちょっと新しめのテナーの音が流れている。「これ、誰だろう?」「判らん」「わりと最近の録音だろうね」てなジャズ雑談。なにしろ、2人とも新しい録音のジャズをほとんど聴いてないのでよく判らないのだ(笑) スピーカーが後列にもあり、けっこう大きめな音量だったので、ちょっとだけヴォリュームを下げてもらった。その時のpapaさんとYoさんの反応で~音を下げろということは、あいつら、マレイを気に入ってないな・・・というような会話に違いない(笑)~このテナーが「デビッド・マレイ」だと判った(笑)そういえば、マレイについては・・・3月のYoさん宅でも、papaさんお勧めの2~3タイトルを聴いたばかりだ(笑)
お昼前までになるべく行けるところまで行っておきましょう~という作戦にしたので、ほとんど休憩を取らない。その内、マレイのCDが一巡したらしく同じ曲が流れるので「そろそろ替えましょう」などと最前列助手席のYoさんにお願いする。後はバルネなど聴きながら・・・あれ、もう松本近くまで来ているじゃないか。朝の集合が早かったこともあるので、梓川SAでちょっと早めのお昼休憩。
次の運転はマントさん。マントさん、仁科三湖辺りのクネクネ道でもけっこう飛ばす。クルマがよく走るので嬉しいのだろう。 マントさんに後から聞くと、あれでも抑え目に走ったと言うところが、ちょっと怖い(笑) だんだんと曇ってきているようで、なんとかガマンしていたような雨が、ついにパラパラと降り始めた。この辺りまで来ると、左側には槍ヶ岳とかの景色が素晴らしく広がるはずなのだが、そんな山々の姿もほとんど見えなくなってしまう。まあいいか・・・どうせ我々は山歩きをしにきたわけではない。
そんなこんなで、2時過ぎには「洗濯船」に到着。幹事役のSPUさんとパラゴンさんが笑顔で出迎えてくれた。会が始まる前に、皆さんのレコードを見せてもらうのも楽しみのひとつだ。僕はpapaさんに声をかけて、papaさんコレクションから見せていただくことにした。papaさん、今回はパーカー10インチを遠慮して(笑)他の貴重盤をたくさん持ってきてくれた。食堂のテーブルにずら~っと並べる。パラゴンさんがヴォーカル好きということで、ヴォーカルの珍しい盤をいくつか~キティ・ホワイトの見たことのない盤(emarcy盤ではない) ピンキーのvantage盤など・・・挙げていけばキリがない。あの辺りだと・・・ヴォーカル好きが見たらマイってしまうだろうな。僕はやはりインスト中心なので、ペッパーのdiscovery 10インチ盤2点にどうしても目がいってしまう(笑) これは・・・聴いてみたい! 食事の後の地下JBLルームでの第3部の時「ぜひ」とお願いした。
そうこうしてると、ワガママおやじさん、Dukeさん、千葉xyzさんも到着した。千葉xyzさんとpapaさんは今回の白馬が初参加だ。「洗濯船」オーナーのMさんも加えて、さあ・・・これで、今回の参加者12名が揃ったじゃないか。御大Dukeさんが一言~「ちょっと早いですが揃ったので始めましょうか」外の雨もだいぶ強くなってきたようだが・・・今から、ひたすらレコード音楽に耳を傾ける我々には関係ないか(笑)

第1部「トーク・タイム」(14:45~17:15)地下JBLルーム
ワガママおやじさんと不肖bassclefのトーク~各1時間づつたっぷりと語らせていただきました(笑) 昨年の「白馬:杜の会」からこの新企画が始まった。事前に指名された方が、60分ほど時間を頂いて、自分の選曲とコメントを皆さんに聴いていただくのである。テーマは全くの自由。昨年の白馬では、洗濯船MさんとYoさん。秋の杜では、パラゴンさん、recooyajiさん、Gamaさんが、この「トークタイム」を通して、自己の音楽原点的心情を吐露したのだった。その秋の杜の宴会の時、パラゴンさんから「2008年白馬トークタイム」のご指名を受けてしまったのだ。
好きなレコード(演奏)を掛ければいいのだよ~と思ってはみても、いざ「お前が好きなようにやれ」と言われると・・・案外、迷うものなのである。それに、あまりマニアックに過ぎるのもなあ・・・などとあれこれ悩んだのだが、結局はジャズジャイアントの隠れた名演~みたいな線でいこうと決めた。白馬直前のワガママおやじさんの「杜」への書き込みでも、同じような迷いがあるらしいことが判った。自分の好みで選曲できる「トーク」は楽しいけど、けっこう大変なのである(笑)

2008_0116s90000013_3 <ワガママおやじさんのトーク>
S&Gの「サウンド・オブ・サイレンス」を巡っての話し~
ポールサイモンが独りで吹き込んだSimon Before Garfunkelというアルバム。確かアメリカでは発売されずに、日本だけで発売許可されたというレコードである。このSimon Before Garfunkelは、僕にとっても思い出の1枚だ。中3の時だったか・・・このCBSソニーのLPを入手して、それはもう聴きまくったものだ。この「サウンド~」ギターのアルペジオで始まるイントロこそ、おなじみのパターンなのだが、唄の出足~hello darkness, my old friend~ポールは、怒ったようなぶっきらぼうな調子で唄い始める。ちょっとボブ・ディラン的というか・・・感情を抑えたようなポールの静かな気迫を感じる唄い出しだ。このレコードでは全曲、伴奏は自分の弾くギターだけ。しかし、そのシンプルさが、かえってポールの音楽(S&Gではなく)の骨格を見事に浮き彫りにしたのかもしれない。唄いながら、ギターを叩き、足を踏んでリズムを取るポール。この「サウンド・オブ・サイレンス」・・・抑えていた彼の内に秘められたいろんな感情がモロに溢れ出てしまったような、素晴らしい唄とギターであった。この「独りS&G」を初めて聴いた方も多いようだったが、誰もが感銘を受けたようだった。このPaul Simon Song Bookについての、ワガママおやじさんの記事はこちら、http://ameblo.jp/d58es/day-20080116.html それと、mono-monoさんの記事http://mono-mono.jugem.jp/?eid=195
67camperさんの記事http://blog.goo.ne.jp/67camper/e/0dfa2c93fde73f44354648646df7d583もおもしろいです。

おやじさんのトーク後半は「後期の2008_0524s90000013_2リー・モーガン」特集だ。1965年のCornbreadから、1968年のCaramba、1971年のBobby Humphrey(女性フルート奏者)への客演、それから映画「真夜中のカウボーイ」のサントラEPなどをかけてくれた。「真夜中~」これ、ハーモニカのトゥーツ・シールマンがメロディを吹いていて、ちょっとムード歌謡っぽいモーガンのトランペットが軽くアドリブする~という珍品。僕はもちろん初めて耳にした。他の4000番台のLPも正直なところ、全て初めて聴いたものばかりだ。僕はどうしても「ハードバップ」的なサウンドが好きなので、1965年の「コーン・ブレッド」での、ちょっと大人しい・・・というより弱々しい、しかし妙に存在感のあるテナーの音色が気に入った。そのテナー奏者は・・・ハンク・モブレイなのであった!
*このワガママおやじさんのトーク内容については、「こだわりの杜」へのご自身の書き込みがありましたので、ここに再掲させていただきます。
(以下斜体字部分)2008_0606s90000004_2
《トーク自体は再現出来ませんが、お聞き頂いた曲を羅列しますね。実はトーク、下原稿ではS&G中心で考えてました。サウンドオブサイレンスの3パターン、ブックエンドから一曲を挟んで明日に架ける橋で、S&Gバージョンとアレサ・フランクリンバージョンを掛けて、JAZZを一曲二曲で組み立てていたのですが、2008_0606s90000005_4 それでは余りにマズかろう云うことで、当日はアンディーウィリアムス一曲とポールサイモン/ソングブックからサウンドオブサイレンスを!
JAZZからは「コーンブレッドとそれ以降のリーモーガン」に焦点を当ててみました。コーンブレットB面。どん底の時期のリーモーガンの演奏からEPミッドナイトカーボーイ。2008_0606s90000002_2キャランバからヘレンズ・リチュア、 そうあのヘレンへ捧げた曲。ボビィーハンフリーのフルートインからサイドワインダーをお聞きいただいて、締めは恩人でもあろうベニーゴルソン・アンド・フィラデラルフィアンズからカルガリー。 この時点で時間オーバーだったので演奏時間の短いカルガリー選んだけど、アフタヌーンインパリの演奏がお勧めです》
《以上5点の写真・盤~ワガママおやじさん提供》

さて、僕:bassclefの方は「ジャズジャイアントの隠れた名演」みたいな流れに決めたのだが、セレクトにあたっては、ちょっとだけ捻って<中編成・ビッグバンドをバックに気持ちよく吹くサックス奏者たち>というのを、一応のテーマとした。トークは1時間という枠があるので、曲順くらいは決めておかないと・・・ということで、ズボラな僕としては珍しく原稿らしきものを用意した。原稿と言っても・・・曲名、時間、ステレオ/モノラルの区別。録音年、録音エンジニアのデータ・・・あとは一言コメントくらいのものなのだが。
まあ・・・実際に話しを始めたら、やはり原稿を棒読みするというのも、とても不自然なものなので(笑)結局はいつものように、思いついたことを話しているうちに、つい長くなってしまったようだ。だから何曲かはカットせざるを得ませんでした(笑)
それでは以下~僕の悪戦苦闘の記録として(笑)ちょっとDJ風にアレンジした<白馬でのbassclefのトーク>を載せておきます。
もちろんこの通りに話したわけではありませんが、話しのニュアンスは、だいたいこんな感じだったはずです。なお時間が不足したので、8番のグリフィンと9番のゲッツは、かけられませんでした。

<bassclefのトーク>
今日は、まあ・・・テナー&アルトの特集です。サックス奏者の名演はあまたあるんですが、今回はちょっと捻りました(笑)
というのは、コンボではなく「ビッグバンドや中編成コンボをバックに気持ちよく吹く名プレーヤーたち」というのを一応のテーマとして、その辺りでまず好きなもの・・・そして、できるだけ録音が優秀かな・・・と感じているレコードからセレクトしてみました。あまりにもマイナーなミュージシャンは避けて、有名どころのちょっと渋いレコード・・・という趣ですかね。サックスばっかりではおもしろくないので、一部、トランペット奏者のフューチャリング曲も混ぜました。それから、ステレオ盤・モノラル盤・レーベルなども、できるだけ混ぜ混ぜにしてみました。Fox

1. I wished on the moon 1961年ステレオ
    エディ・ロック・ジョー・デイヴィス/The Fox & The Hounds(RCA victor)バックのリズム陣までくっきりと録られた録音もなかなかいいです。 (engineerは、mickey croffordという人) 曲は・・・思わずワクワクするようなアレンジにのって、ロック・ジョーが楽しそうに吹く I wished on the moonにしましょう。ロックジョーというテナー吹きは、飄々とした感じが堪りませんね。なお、アレンジャーはBobby Platerという人です(ライオネル・ハンプトン楽団~ベイシー楽団でロックジョーと仲間) ビッグバンドはNYのトップジャズメン17人としかクレジットされてませんが、多分、ベイシー楽団でしょう。だとすれば、ベースはエディ・ジョーンズだと思います。

Les_brown_jazz_song_book 2. let's get away from it all 1959年 ステレオ
     レス・ブラウン楽団/Jazz Song Book(coral)
次は、ズートといきましょう! レス・ブラウンというのは、わりとポピュラーっぽい楽団だと思いますが、このアルバムでは、巧いソロイスト(フランク・ロソリーノ、ドン・ファーガキストら)を、Song_bookうまい具合に配分していて(各3曲づつくらい)、充分にジャズっぽいアルバムだと思います。ズートの誠にスムースなフレージングと、あっさりと乗る軽い感じが気持ちいいですね。
《ここでPapaさんから、「このアルバムはいいですよ」とうれしい一言。Papaさんはモノラル盤をお持ちとのこと。僕の手持ちはピンクラベルのプロモだ》

3.   round about midnight 1959年 モノラル
     アート・ペッパー/プラス・イレブン(contemporary)
このレコード、オリジナルを持ってないので、今回はYoさんに借りました(笑)このレコードは最高! まず演奏がいい。アレンジもいい。そして・・・録音もいい!(roy dunan) ジョー・モンドラゴンのベースも重い音で録られています。僕はキングの国内盤ステレオで聴いているのですが、それを聴いていても「ステレオ盤オリジナル」も相当にいい音だろうな~と推測できます。ステレオ盤だと・・・ペッパーのアルトが中央に定位したまま(その音圧感が全く落ちずに) ベースとドラムスが左右に分かれてオーケストラは後ろから・・・というような定位になると思います。このレコードでは、ペッパーのテナーが3~4曲聴けるのですが、ここはやっぱりアルトということで(笑)
bernie's tune のペッパーのソロも素晴らしいのですが、同じようなテンポの曲が続いてしまうので、ここはスロウもの~ A面4曲めのround about midnightにしました。アレンジャーは、マーティ・ペイチです。

4.   day in day out 1961年 モノラル/ステレオVerve_2
Terry Gibbs Dreamband (contemporary)
モノラルのオリジナル盤はこちら~verve V-2151:The Exciting~ですが・・・このcontemporary盤は、1990年発売の新発見ステレオ・マスターなので、少々こじつければMain_stem、このLPを「ステレオ盤オリジナル」と呼ぶこともできます。このレコード・・・とにかく録音が抜群! エンジニアは、あのwally heiderです!ではA面1曲目の day in day outを。
短いソロは・・・コンテ・カンドリ(tp)とビル・パーキンス(ts)です。ベースはバディ・クラークという人。音がでかそうですね(笑) ぺッパーの・・・いや、マーティー・ペイチのtampa盤に入ってた人です。

  Photo_45.  quintessence(4'14") 1961年 ステレオ

クインシーPhoto_6・ジョーンズ/クイセッテンス(impulse)
フィル・ウッズの輝くようなアルトの鳴りを。(van geldr) 曲の終わりの短いカデンツァも、ウッズの 巧さ爆発です。文句なし! 何度聴いても、このimpulse盤は気持ちがいい。

6.   isn't this a lovely day?(4'14") 1953年 モノラル 《写真・盤~konkenさん提供。この盤、実は両面ともB面のラベルが貼られていた。これが、この個体だけのミスなのか、あるいは・・・》
    
フレッド・アステア/~ストーリー(clef) 1369astaire_2
大編成ばっかりではちょっと疲れますので、ここで中休みとして・・・テーマから離れて「唄」をひとつ。フレッド・アステアのIsn't this a lovely day? を。実は・・・このレコードもkonkenさんからの借り物です(笑)
ほのぼのしたような、しみじみしたような情感が漂う名唱・名演だと思います。 優しげなテナーソロは・・・フリップ・フィリップスです。

7.  from now on 1957年 モノラル
   マーティー・ペイチ/Picasso of jazz(cadence)
もうひとつ、モノラル録音のいいやつを。cadenceというレーベルは、たぶんcolumbiaの子会社です。その cadenceの子会社があのcandidです。だからこの「Picasso」は、candidからも出たこともあると思います。渋いトランペットは、ジャック・シェルダンです。独特の沈んだような音色・・・いいソロですね。実は、アルトのクレジットがないのです。この辺りの白人系のアルトをいろいろ聴いてみました。でも・・・判りませんでした。ジーン・クイルかジョー・メイニか、あるいはチャーリー・マリアーノかな?と推理してます。ペッパーやバド・シャンクではないですね。ハーブ・ゲラー、ロニー・ラングではないような感じがします。Photo
《そういえば、cadenceレーベルの小話題として~このcadence~Dukeさんの好きなピアニスト:ドン・シャーリーの初期の作品がたくさんあるレーベルで、実はこれ、ある有名なシンガーがオーナーなんですよ・・・などと話そうかなと思っていたら、cadenceと言った瞬間に、すぐ「アンディ・ウイリアムスの・・・」と声がかかりました(笑)さすがに皆さん、よくご存知です(笑)
アルト奏者のクレジットがない話しも、それを切り出す前に、recooyajiさんから「アルトは誰ですか?」との声。やっぱりちょっと気になる、いいソロだったようだ(笑) 
《その後、PapaさんがこのレコードPicasso of jazzのパーソネルを調べてくれたようで、「こだわりの杜」へ書き込みにて知らせてくれた。
録音年月日 1957 June 7&8   Los Angels
”The Picasso of Big Band "
Pete Candoli, Buddy Childer, Jack Sheldon (tp) Herbie Haper (tb) Bob Envoldsen (vt-b, cl) Vince Derosa (fhr)
Herb Geller ( as ) Bob Cooper, Billy Perkins (ts) Marty Berman (bar) Marty Paichi (p) Joe Mondragon (b) Mel Lewis (d)
う~ん・・・あのアルト奏者は、ハーブ・ゲラーだったのか! まずいなあ、「違う」候補の3番手にゲラーを挙げていたなあ(笑)》Big_soul_band

8.  jubilation(3'53") 1960年 モノラル
  グリフィン~The Big Soul-Band(riverside) 
ちょっと「くどい」音色のグリフィンです。ベースのヴィクター・スプロウルズの音がでかそうなこと! 録音はレイ・フォウラー。

9.   bim bom(4'32") 1961年  ステレオGetz_bigband_bossa_2
     スタン・ゲッツ/Big Band Bossa Nova(verve)
これ、ジョアン・ジルベルトの曲。ゲッツのテナーもマイルドでいい。スネアのリム・ショットとかシンバルのドラムスの音とブラスのバランスが絶妙。 けっこう好きな録音です。verveですがval valentineではなくて、george kneurr&frank laicoという人です。ガットギター・ソロは・・・ジム・ホール!

10.far out east(4'30") 1958年  モノラル/ステレオ
      ロリンズ/ブラス&トリオ(metro) Photo_2
このメトロ盤がオリジナルです。これ、ようやく入手しました(笑) 長いこと、こちらのverve盤(緑色のやつ)で聴いてました。一応、VerveとしてはオリジナルのはずのT字のVerve Inc.(long playing 溝あり)盤なんですが、このverve盤は・・・音があまりよろしくない(笑) モノラルだステレオだという前に、ロリンズのテナーの音に厚みがない。鮮度感に乏しい。それに全体にやけにエコーが強いし、ドラムスやベースの音が遠い感じです。
一方、Metroのステレオ盤では~ロリンズだけが左側で、ビッグバンドとリズムセクションは右側~という、ちょっとおかしなステレオの定位ですが、何よりもテナーの音の鮮度が段違いです。生き生きしたロリンズの音が気持ちいい!1958年の好調なロリンズ! ベースのヘンリー・グライムズも重い音で録られてると思います。B面のコンボの方で比べると、ドラムスやベースの鮮度感の差がよく判ります。では・・・オリジナルのMGM盤(ステレオ盤)ではどうなのか・・・続けて聴いてみましょう。もっともロリンズらしい~と思える1曲を。Brasstrioverve
      verve盤~A面4曲目のfar out east~30"ほど
   metro盤~A面2曲目 far out east
え~と、このタイトル・・・有名なway out westのもじりだそうです(笑)
実は、このロリンズのメトロ盤・・・テナー1本のソロが入ってるんです。body & soulなんですが、1958年でのテナーソロというのも珍しいでしょう。ところが・・・すでに1948年にテナー1本のソロが存在しております。ロリンズの方(body & soul) も掛けたいところなんですが・・・最後に、この「史上初のテナーサックス1本のソロ演奏」と言われているやつを聴いていただきたいと思います。

11.  piccaso モノラル 1948年
コールマン・ホウキンスの「ピカソ」です!Photo_7
これ~THE JAZZ SCENE~mercuryからSP6枚組がオリジナル~10インチ2枚組~EP5枚組~12インチLP~という順で発売されたのだと思います。音は12インチよりEPの方が圧倒的にいいようです。このEP盤5枚セット・・・盤質も最高だし、私的にはけっこうお宝盤です(笑)
なお、ジャケットの図柄はゲッツの「plays Bacharach」に使われてましたね。では・・・1948年の「ピカソ」を。
《あらゆる希少盤をお持ちだとも思えるPapaさんが、珍しくも「う~ん・・・このEP Boxは・・・欲しい」と言ってくれたので、僕はちょっと嬉しかった(笑)まあ半分は、compliment(お世辞)だろうけど(笑)》

第2部(19:15~22:00)
毎年、食事の後に「この1曲」をやるのですが、今年は皆さんの「燃える自己紹介」の後、おいしい泡盛もだいぶん入りながらの「この1曲」で、その後、オークションへ突入。1F食堂タイムが終了したのは例年より1時間ほど遅めの時刻だった。以下、皆さんの「この1曲」をリストしておきます。

Ethel_ennis パラゴンさん~エセル・エニス(jubilee盤:Lullbies For Losers紫ラベル)金色ラベル から
You'd Better Go Now~この名曲を、エセルは、あっさり加減の唄い口で、しかし、しっとりと唄う。それとこのjubilee盤・・・普通、モノラル盤は青か黒だと思うのだが、なぜか・・・パープル!これは・・・珍しい。さっそくpapaさんの熱い視線が(笑)
《上の写真・盤はパラゴンさん提供》
2008_0606s90000003

ワガママおやじさん~Eddie Lockjaw Davis with Shirley Scottから serenade in blue
《右の写真・盤はワガママおやじさん提供》

マントさん~E・パイネマン女史(V)のドボルジャークバイオリン協奏曲

《下の写真・盤はkonkenさん提供》
1186marlenekonkenさん~Marlene De Plankの唄~Fools Lushi In
マーレーンの唄い口は・・・いつも優しい。聴いていて、理屈抜きに安らぐのだ(笑)konkenさんは、あのsavoy盤:Marleneも持っており、この歌い手のレコードをほとんど揃えているようだ。

Yoさん~Jazzville'56(dawn)からlover man(ジーン・クイル)Jazzville56
《右と下の写真・盤~Yoさん提供》
クイルもまたアルトの名手だ。パーカー、マクリーンも演奏したこのバラードを、クイルは、凄く情熱的に吹いている。フレーズ展開に破綻(はたん)をきたしそうな場面もあるのだが、その危うさがスリリングでもある。Jazzvilleこのドーン盤・・・たしかトランペットのディック・シャーマンのいいバラードも入っていて、いいオムニバス盤だと思う。


洗濯Mさん~高木麻早「ひとりぼっちの部屋」~「い~まあ~ッア」と声を思い切り伸ばした後に、短く「アッ」と声を切るところが素晴らしい(笑) 

Dukeさん~ダイナ・ワシントンの初期の10インチ盤からI want to cry 
~生々しい声が印象的。この10インチ盤は30分後にオークションにて、Musashi no papaさんがゲットした。そのpapaさんのコメントを以下。
《白馬の杜でDUKEさんからオークションで譲って戴いたダイナ ワシントンは素晴らしいレコードでした。8曲のうち特に気に入ったのが杜で流された I want to cry でした。チェックしたみると1948年10月16日ロイヤルルーストNYでの録音でバックのペットはガレスピーのようです。この1曲は素晴らしい。私のお気に入りになりました》

PaPaさん~ドイツのアルト奏者~ミハエル・ナウラ
(フィル・ウッズにも似た感じの名手だった。vibraphoneはWolfgangという名だけ覚えてますが、あれは・・・チェット・ベイカーともsandra盤で共演しているWolfgang Lackerschmidなのかな?)
《以下、訂正》
Papaさんからのデータを以下。リーダーのミハエル氏をアルトだと勘違いしてました。ミハエル氏はピアノ、アルトはペーター・レインケという人でした。
ヴィブラフォン奏者も、ウオルフガング違いでした(笑)
Michael Naura Quintet(German Brunswick 87912)
Michael Naura(p)      
Peter Reinke(as)      
Wolfgang Schluter(vib)   
Wolfgang  Luschert(b)   
Joe Nay(ds) 

千葉ZYXさん~テクノっぽいやつ(曲名失念。ごめん!)

SPUさん~Clifford Brown&Max Roach (emarcy) Img_0011_5
10inch盤から delilah。Img_0016_4






ローチ/ブラウンのemarcy盤では、たしか・・・これだけが10インチ盤とのことだ。《写真・盤~SPUさん提供》

recooyajiさん~スリーキャッツ「黄色いさくらんぼ」(日本コロンビア)25cm盤

bassclef~クリフォード・ブラウン「ブルー・ムーン」(emarcy EP盤)

<第3部~地下JBLルーム 夜10時30分~1時30分頃まで>白馬第3部
ある意味、この第3部が最も楽しい時間である。というのも、ここでは皆さんが、いわば「本音盤」を掛けるので、毎年、印象に残るレコードが飛び出るのだ。今回は・・・タイトル・順番など、どうにも記憶があやふやである。皆さんの飲まれたアルコールがJBLルームに気化して、それと音の洪水で・・・僕の脳髄も麻痺してしまったのかもしれない(笑)それでも印象に残っているレコード達をいくつか。

Yoさん~「聴き比べ2題」
<ハロルド・ランド~The Fox>(contemporary盤とHi-Fi盤)からthe fox one down
<アート・ペッパー~Surf Ride>(savoy12インチ盤とdiscovery10インチ盤)からsurf ride

ワガママおやじさん~「ソニー・クラーク~Leapin' & Lopin'からケベック入りのdeep in a dream

SPUさん~「ウディ・ハーマン」Woodchoppers(dial)10インチ盤からit's the talk of town(ラベルにはon the townと表記)

konkenさん~アーサー・ブライスIn The Traditionからin a sentimental mood

洗濯船Mさん~サラ・ヴォーンのlullby of Birdland(emarcy)

Okpapaさん~ペップ・ボネPep Bonet(スペインのサックス奏者)この人、ちょっとロリンズ風。そんなバリバリと吹くテナーに、ちょっとヘタウマ風なピアノとベースが絡む。Papaさん、こういうヨーロッパ系の「武骨ジャズ」も好みらしい。そういえば、イギリスのディック・モリシー(ts)にも、同じような雰囲気を感じた。《写真・盤はPapaさん提供》

Jazz_vane_2bassclef~ジミー・ロウルズweather in jazz vane(andex)からsome other spring。このレコード・・・CDで愛聴してきたのだが、ちょっと前にようやくオリジナル盤を入手できた。ロウルズという人のしみじみとした持ち味がよく出ていて、好きなレコードだ。それに、Andexというレーベル・・・なかなか音がいい(笑) この頃は、こういう、日向ぼっこをしながら居眠りしているような・・・そんなまったりした感じが好きになってきた。《このandex盤はプロモ盤なのでラベルが白だ》

マントさん~DECCAでホルストの惑星(カラヤン・VPO)からジュピター。何度聴いても・・・やっぱりいい曲だ(笑)
チャイコフスキーのロミオとジュリエット(同)からロミオとジュリエット(2000番台)。DUKAS:LA PERI poeme dance'(ラージラベル)~このデュカスの曲・・・最初の金管楽器が一斉に鳴り響くあたりは、サウンドとして気持ちがよかった(笑)

千葉ZYXさん~「ToTo」のLPから(タイトル失念・・・ごめん!)
この1曲は・・・ZYXさんが茶目っ気を出して「ある大物ジャズメンが参加している」とのクイズ曲となった。昔、ローリング・ストーンズにロリンズが参加したLPのことは知っている。誰かが「楽器は?」と尋ねると・・・「いや、まあ・・・聴いてみましょう」と口ごもりながらも、小さい声で「トランペットです」とヒントをくれる優しいZYXさんだった(笑) ToToという名前は知っているが、ちゃんと聴いたことがない(笑)冒頭からギターがしばらく続いた後・・・なにやら聴いたことのあるぞ~と思える音色のトランペットが鳴りはじめる。この、ちょっとくぐもったような音色と、ためらいがちなフレージングは・・・おおっ、あれだ。「わかったあ! マイルス!」と僕は言う。「当たりです!」とZYXさん。「さすがですね」などと誉めてくれるZYXさん。でもね、ZYXさん・・・マイルスのトランペットなら、ジャズ好きなら誰でもすぐに判っちゃうんですよ(笑) それにしてもこのToToへのマイルスの客演~おそらくオーヴァーダビングなのだろうが、ソフトなロック調にかぶして吹くマイルスのフレーズには、全く違和感がない。それになんと言っても、一人の人間がそこでしゃべっているような・・・そんな説得力があるじゃないか。Img_0006_4

SPUさん~Woody Herman/Woodchoppers(dial:10inch)
毎年、夜が更けてくると異常に元気になってくるSPUさんである(笑)
SPUさん、いつもいいところを入手しているようで、いろいろと見せてくれる。ソニー・クラーク・トリオ(bluenote)にも惹かれたが、ここはやはり昼間にチラと見せていただいたダイアルの10インチ盤である。  Img_0018_3 《写真・盤~SPUさん提供》
それはWoody Hermanの10インチ盤。聞かせてくれたのが、バラードの it's the talk of town(ラベルのクレジットでは"on the town"と表記されている) これ、ウッディ・ハーマンと言っても、フリップ・フィリップスのフューチャー曲で、彼の見事なソロがたっぷりと入っている・・・これはいいっ! 
まったくフィリップスという人は、こういうゆったりしたバラードを吹かせると、もう独壇場である。僕の好きな「フィリップ風」がゆったりと謳いあげる。ううう・・・これは、垂涎盤だあ!(笑) フィリップス好きの僕にとっては、この夜のMIV盤(most impressive vinylという勝手な造語です)は、このダイアル10インチ盤である。

《下の写真・盤~ワガママおやじさん提供》
2008_0323s90000014_5ワガママおやじさん~Sonny Clark/Leapin' & Roapin'(bluenote)NYラベル
お勧めはやはり・・・deep in a dream。さすがワガママおやじさん、ジャズのコアなところをご存知だ。この「リーピング~」チャーリー・ラウズとトミー・タレンティンの2管入りセッションが主なのだが、この1曲:deep in a dreamだけは、アイク・ケベックのテナー1本。そしてこれが実にいい。ソニー・クラークのバラードを弾くときの独特なロマンティックな感じ・・・そのイントロからしばらくはピアノのソロが続く。「あれ、これ、テナーは?」と皆が思ったころ・・・ケベックが「ずず~っ」と忍び込むような気配で吹き始める(笑)、ソニー・クラーク/アイク・ケベック~2人の音が醸し出す雰囲気と、この曲の、ちょっとセンチメンタルな雰囲気が見事にマッチしている。このバラードは、やはり絶品と言わねばなるまい。

Yoさん~<ハロルド・ランド:Foxの聴き比べ>
《以下6点、ランドとペッパーの写真・盤~Yoさん提供》The_foxhifi_6

ランドのThe Foxは、もともとHi-Fiレーベルへの吹き込み(1960年)だが、一般的に知られているのは、contemporaryの緑ラベル(1968~1970頃)として再発されたものだと思う。僕もその緑ラベルを愛聴していた。そういえば・・・第1回白馬の時に、Yoさんとランド話題になり「Foxはいいよね」みたいな話しになったな。そのYoさん、最近、FoxのHi-Fi盤を入手されたとのことで、じゃあ、あのcontemporary盤とどんな具合に違うのか・・・
という流れになっていた。Yoさんによると、contemporary盤は「いつものcontemporaryらしい、自然な質感のいい音」なのだが、Hi-Fi盤(モノラル)は、全く音造りが違うとのこと。簡単に言えば、あまり西海岸っぽくないそうである。Fox_hifi
最初にHi-Fi盤から~まずジャケットがいい。暗めの赤色、灰色、黒色などが太い筆でググッと塗りたくってあるだけの抽象絵画っぽいジャケットなのだが、中身の音の力感みたいなものが感じられるのだ。A面1曲目のThe Fox B面のOne Down を聴く。各楽器の音がメリハリのハッキリした太い輪郭で、全体的に音が強い感じだ。パーソネルを知らずにパッと聴いたら・・・イーストの黒人ハードバップだと思ってしまうだろう。もっとも・・・このThe Fox~ランドもエルモ・ホープもリズムセクションもみんな黒人だし、実際、こういうハードバップ的な4ビートジャズをやっているバンドのサウンドに、東海岸と西海岸で、それほどの違うがあるはずもないのだが。ただ「録音の感じ」の違いは・・・明らかにあると思う。その「音の感じ」で言うと・・・Hi-Fi盤では「ジャズが強く聴こえる」ように感じたのだ。ピアノのエルモ・ホープの叩きつけるようなタッチも、相当に迫力あるガッツあるタッチとして鳴った。いずれにしても、Hi-Fi盤の音は、モノラル盤と言うことも含めて・・・魅力的なジャズのサウンドではあった。なおHi-Fi盤の録音は1959年。録音エンジニアは・・・Art Becker & David Wiechmanとなっている(contemporary盤の裏ジャケに表記あり)

Foxcontemporay 次にcontemporary盤~この緑ラベル・・・何度も聴いているので僕には親しみがある。裏ジャケの解説はLeonard Featherで、1969年10月としてあるので、発売は1969年か1970年だろう。
さて「緑ラベルのステレオ盤」だ。一聴・・・ランドのテナーが少し細くなり(と言ってもそれは悪い意味ではない)音色もややソフトな感じになった。ドラムスの「鳴り」が全体的に「すっきり」してきた。音楽全体の鳴り」として・・・たしかにやや軽くなったような感じはする。しかし・・・本来、ランドやフランク・バトラーが楽器から出している「サウンド」としては・・・僕はこのcontemporary盤の方が「自然」だと思う。いい意味での「軽やかさ」~僕はこの感じを「軽み」(かろみ)という言葉で表したい(笑)~が感じられるサウンドだと思うのだ。Foxcontemporay_2 う~ん・・・Hi-Fi盤もいいが、やはりこちらのcontemporary盤もいい・・・聴いている方々もそれぞれの音にに感じるところがあったようで、判断に迷っているような気配ではある。これは、Hi-Fi盤とcontemporary盤との「音造り」の違いでもあり、また「モノラル盤」と「ステレオ盤」のそれぞれの特徴(良さ)が現れた好サンプルかもしれない。ジャズ好きの「音」や「音楽スタイル」に対する好みの傾向は様々だし、そういう好みの違い方というようなことへの興味を、Yoさんも僕も持っている。そんなこともあって、どちらの音が好みか・・・というアンケートをすることになった。この場にはちょうど9名いた。僕の予想は「半々」だった。
まず「Hi-Fi盤」~4名が手を上げる。そして「contemporary盤」~これも4名。1名が手を上げてない(笑) Yoさんは決着を付けたいようだ(笑)「konkenさんは?どっちが好き?」と追求する。konkenさん「うう・・・」唸りながら「やっぱり・・・contemporaryかな・・・」 これで5対4だ。やはりほぼ半々か・・・。まあいずれにしても、実に興味深い「音の好み」の違いじゃないか(笑)

Pepper_surfride_savoy_2  Yoさん~<ペッパーのサーフライド>
さて、savoy12インチ盤(MG-12089)とdiscovery10インチ盤2点(Art Pepper Quartet 3019)と(Art Pepper Quintet 3023)
発売は、10インチ盤の3019が1952年、3023が1954年。12インチ盤が1956年と、当然のことだが、10インチ盤の方が早い発売である。Surfride
最初に掛けたのは、savoy盤12インチ~曲は急速調のsurf ride。
サックスの音にメリハリがあり、全体的に明るい感じ。とても1952年の録音とは思えないほどパリッとしたジャズの音だ。さすがにVan Gelderのマスタリングした12インチ盤だ。張りのあるジャズっぽさも充分に感じられる。
Yoさんは「うん、このsavoy盤も悪くないなあ」とちょっと嬉しそう(笑)

次に、discovery10インチ盤~これは僕の私見だが、10インチ盤というのは、時代も古い分だけ(たぶん)12インチ盤に比べると、盤質の材料やカッティングの精度において、若干のデメリットがあると思う。ただし「モノ」としての魅力~あの10インチという大きさからくる圧倒的な存在感、古み感など・・・それがそこにあるだけで、素晴らしい(笑)そう思わせてくれるほど、ある種の10インチ盤には、エモイワレヌ魅力を感じる。ペッパーのこの2枚のdiscovery盤もそんなレコードである。
《下の10インチ盤2枚~写真・盤はPapaさん提供》Discovery10inch_2_2

さて、その音は・・・? Mさんが慎重に針を下ろす。
材質・盤質からくるノイズはほとんどない。いいコンディションのようだ。
一聴・・・全体の音がおとなしい感じか。ちょっと楽器全般がくすんだような色合いになったかもしれない。ぱっと聴いて受ける印象は・・・古い写真がセピア色に染まりつつあるような・・・そんな感じに近いかもしれない。そして僕には、その「セピア色」が心地よい。ちょっと高音の方が詰まったような音なのだが、こうして2枚続けて聴いてみると、この「ちょっとおとなしい鳴り方」の方が、より自然なものに聞こえないこともない。
ドラムスのシンバルのクリアさや、それからペッパーのアルトの輝き具合においては、確かに12インチ盤の方に分があった。それでも10インチ盤の「自然な鳴り」に僕は惹かれるものを感じた。
目をつぶって「音」だけを聴けば、12インチ盤の方を選ぶ方が多いかもしれない。しかし~パーカーのダイアル盤の時にもちらっと書いたのだけど~こちらのアタマに「貴重な10インチ盤。時代的にはオリジナルの10インチ盤」という思いも入り込んでの聴き比べなので(そうならざるを得ない)そういう意味で「10インチ盤有利」になってしまうことがないとは言えない(笑)
いずれにしても、こういうのは「好み」の問題だと思う。例えば、僕自身は・・・一般的には強い音が好きなのだが、Van Gelder特有のかけるエコーが(強すぎる場合)あまり好きではない。Cimg0268
ひとつだけ確かなのは「ペッパーは凄い」ということだ(笑) レコード化の段階で、後から何をどういじったとしても、1952年にペッパー達が演奏した素晴らしい演奏(音楽)は・・・・厳然として、そこにあったわけなのだから。
《上の写真~savoy12インチ盤には収録されなかった4曲(These Foolish Things, Everything Happens to Me, Deep Purple, What's new)と、レッドの2曲を収めたArt Pepper/Sonny Redd~通称Two Altos(regent)。なるほど・・・ラベルは緑でしたか!写真・盤~Musashi no papaさん提供》

好きになったミュージシャンの音を集中して聴くのならば・・・どんな版のレコードを聴いたとしても、感じるところは絶対にあるはずだ・・・と思いたい。まあもちろん、音がいいレコードで聴くに越したことはないのだが(笑)

《写真・盤はkonkenさん提供》Photo
最後の方に聴いたのは、konkenさんの「アーサー・ブライス」in the traditionからJitterbug Waltz と in a sentimental mood。
どちらかというと古い年代のジャズが中心の会なので、こういう1970年代後半の、ガッツあるハードっぽいジャズがかかると、新鮮な感じもあり、楽しく聴けた。斜め前に座って、なにやらブライスのアルトに集中している様子のPapaさんに「こういうの好きでしょう・・・」と言うと「これは気に入りました!」と一言。Papaさんは、もちろんパーカー命のような方だが、デビッド・マレイなどちょっと新しい世代のサックス奏者も愛聴しているようだ。

そして大ラス~洗濯船Mさんが「では最後に1曲」と静かに言う。
「バ~バ・バ~ラ・バッバッ・バッバ・パ~」ああ・・・これは皆がよく知っているレコード・・・サラ・ヴォーンのemarcy盤だ!Mさんが、bluebackのジャケットがイーゼルに掲げられる。ねっとりした唄い回しのサラの声が、力感豊かに流れてくる。あのサラのアドリブ・フレーズを諳(そら)んじているらしいkonkenさんが、サラと一緒にスキャットしている(笑)酔っているので音程は覚束(おぼつか)ないが、気持ちは充分に判る(笑)
見事なまでにコントロールされたサラの声が厳(おごそ)かに流れつつ・・・2008年の白馬:杜の会は、ようやく終わろうとしているのだった。

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2008年4月10日 (木)

<ジャズ回想 第12回>半年ぶりにYoさん宅に集まった。その1

いいレコードを聴くと幸せな気分になる~

(*Musashi no Papaさんが、あの日のレコード写真を送ってくださったので、いくつかの写真を追加しました。lora albright, anita o'day, pinky winters, zoot sims(煙草), charlie mariano(imperialの2枚)がPapaさん提供分です。4/13)

寒い冬が終わる頃になると、たいてい「そろそろ集まりましょうよ」というやりとりがあって、「じゃあ」ということになる(笑) そんなわけで、久しぶりにYoさん宅での音聴き会である。昨年9月の「秋の杜」以来か・・・今回は、愛知から、リキさん、D35さん、konkenさん、スノッブSさん、僕:bassclef。それから神戸からMusashi No PaPaさんの6人が集まった。
PaPaさんは昨秋から「杜」(ニーノニーノさんのBBS)に書き込みを始めた方で、ちらっと書かれるレコードのタイトルから、相当なコレクター氏であることが充分に窺(うかが)われた。だから・・・Yoさんを通して、PaPaさん所有の10インチ盤もいくつか見せていただくようお願いしてある(笑)

ちょっと急なあの階段を上がり音聴き部屋に入ると、すでにリキさんがソファの後ろの席で落ち着いていた。「何からいきます?」とYoさん。そうは言っても、最初の内は皆さん遠慮気味だったりして、もじもじしているので(笑)Yoさんが自分の選んだレコードをいくつか掛けていくことになった。
こんな時は、軽くヴォーカルからがいい。
Yoさんが手に取ったジャケットは・・・フランス国旗みたいな青・白・赤3色のあれ~モリスがくっと開いた目が印象的なXレーベルの有名な盤だ。Audrey_morris_bistro

《写真Yoさん提供:Audrey Morris(オードリー・モリス)のBistro ballads》 Bistro_2

Yoさんはレコードの音質~録音の具合による各楽器の音圧感やらバランス~によって、使うカートリッジをセレクトする。セレクトといっても、2つともステレオカートリッジ(オルトフォン・ジュビリーとSPUシナジー)なのである。Yoさんはかねてから、「モノラル盤だから必ずしもモノラル・カートリッジにする必要はない」という考えをお持ちで、それは、モノラルレコード溝の深さと針の径に関する理論的な裏づけからなのだが、そのYoさんも、昨夏に若干の変化を見せた。新たに導入した2台目のプレーヤーにも2本のアームを付けたのだが、その際、カートリッジの1つをモノラルとしたのだ。もう1つはステレオで、共にエミネントというメーカーとのこと。エミネント・ソロ(モノラル)というのは・・・ごく単純に言えば、従来のものより、(モノラルカートリッジとしては)高域まで伸びるということらしい。そんなわけで、4本アームのステレオカートリッジが3個、モノラルカートリッジが1個という選択肢になる。僕など、これらのカートリッジ個々の性格まではよく判らないので、何やら混乱してしまいそうだが、これまでも巧いこと2個の使い分けをしてきたYoさんだから、新規導入の2種のエミネントの個性と使い勝手もほぼ把握できてきたのだろう。

最初に左側のプレーヤーで掛けた。選んだカートリッジは、ハイパー・エミネント(ステレオ)だ。ピアノのイントロから始まる曲~nobody's heart belongs to me だ。「ピアノ、誰?」の問いに「弾き語りだよ・・・たぶん」とYoさん。ピアノも声もちょっとおとなしい感じだ。ドラムスもベースもいないので、余計にそう感じるのかもしれない。しかし、それがモリスの落ち着いた優しい声質には合っているかもしれない。「ちょっと換えてみようか」と、Yoさんが(SPUシナジー)の方でかけてみる・・・「おお!」という皆の反応。一聴・・・音全体がスカッと抜けた感じだ。こちらの方がうんとピアノの音が太くて、しっかりと聞こえるのだ。モリスの声もやや大きくなり、ふくゆかさが増したようだ。カートリッジの出力の違いもあるかもしれないが、全体的に音がしっかりしてきたように僕は感じた。ただ、女性の声に対する微妙な味わい・・・そんなところに敏感なリキさんは「僕は・・・さっきの方がいいな」とつぶやく。
確かに、後者のカートリッジだと、モリスの声がちょっとだけ年を取ったようにも聞こえる。逆に言えば、前者の方が「より若い声のモリス」なのだ(笑)ヴォーカルが好きなリキさんの美学としては、その辺りに拘りがあるのだろう。僕など「声」も、器楽的に聞いているので、単に「大きくハッキリ」聞こえる方が、いい音だろうと思ってしまうようだ。Img_1600_2
実は、ちょっと後にも同じようなことがあって、それは、ローラ・オルブライトのあの素敵なジャケット~Lola Wants You(KEM)のEP盤(PaPaさん手持ち)を聴いた時である。そのメリハリある音に驚いた僕が「ううっ、これはいい音ですねえ」と言うと、「いや・・・ローラはもうちょっと柔らかいですよ」というリキさんとYoさん。そうか・・・日ごろからあのオリジナルを聴いている耳には、45回転のローラは、ちょっと張り切りすぎだったのかもしれない。
そういえば、僕などは、どんなヴォーカルが出てきても、ある意味、それをホーン楽器(テーマを吹く)の一種として聴いているようなところがあって、テーマをどのように吹くか(唄うか)、どんな風にメロディを崩すのか、あるいは崩さないのか・・・そんなことには興味が向かうが、その歌い手が醸し出す情緒・・・みたいな部分には、案外、無頓着なのかもしれない。いずれにしても、僕は、まだまだヴォーカルを味わう(その声の質感を味わう)・・・という境地には至ってないようだ。う~ん、ヴォーカルも奥が深いなあ(笑)
それにしても・・・みなさん、あの12インチ盤を持ってるのだな。たしか、パラゴンさんもrecooyajiさんも持っていたはずだ。PaPaさんが見せてくれた「青のローラ」を見ながら、ううむ・・・と悔しがるkonkenさんと僕であった(笑)

そうこうしている内に、神戸からにPaPaさんも到着。愛知の5人はPaPaさんとは初対面だったので、やあやあという挨拶。PaPaさんは、白い大きめのレコードバッグにぎっしりと詰め込んできた。「ダイアルのパーカーはいくつか持ってきました」というPaPaさん。チラッと見える10インチ盤たちが気になる僕だが「10インチの方は、また午後にでもたっぷりと」と、やせ我慢をする(笑)
《センターラベルは黄色も鮮やかなN.Y.だ。録音はもちろんvan gelderである。写真はYoさん提供》Photo_2Photo_10
Yoさんがフィル・ ウッズの「Woodlore」を、すうっと取り出した。バラードが流れてくる。知らない曲だが、実にいいメロディだ。いや・・・これはbe my loveか? それをうんとスロウにして崩しているのかもしれない・・・などと思って、ジャケ裏を見たら、falling in love all over again というニール・へフティのオリジナル曲だった。 この「ウッドロア」~僕はCDを持ってたのだが、こんなに素敵なバラード演奏があったとは・・・恥ずかしながら気が付いていなかった。be my loveは、この絶品バラードの次に入っていた。be my loveも溌剌(はつらつ)としたウッズがとてもよかった。バラードでもそうだったが、ごく初期のウッズの音には、なんというか「気合」が入っている。そして気合だけでなく、その音色になんとも言えないような甘い色気みたいなものがある。う~ん・・・ウッズのこのレコード、 こんなによかったのかあ・・・と、改めてジャケットを見せてもらう。 右上のprestige横のLP7478の丸い囲みが一瞬、シールに見えたのでちょっと指でさすってみたりしたが、もちろん印刷だった(笑)
それにしても・・・僕は「いい演奏」なら音源は何であっても「いい」と判るはず~と思っていたのだが、この「ウッドロア」に対しては、全くの不覚を取ったようだ。僕の場合、CDで持っていてもあまり愛着が湧かないので、それが故に「音楽」をしっかり聴いてないのかもしれない。これはまずいな・・・と反省する気持ちになってしまった。そうだ、元の演奏には何の罪もないのだ(笑) どんな音質であっても、中身をしっかり聴いてあげなければ。
そういう反省をする一方、言い訳ではないが、「オリジナル盤」と「いいオーディオ」が合わさった時に発揮されるなんというか「出てくる音が持つ理屈ぬきの威力」~そういったものも確実にあるのだな・・・ということも実感させられた。そんな「いい音」で聴くと・・・驚くほどに「その演奏」が判ってしまう~そんな感じだ。そういえば、Yoさんはフィル・ウッズを凄くお好きなようで、epicのWarm Woodsも、それからちょっと後のヨーロッパ録音のものも、ほとんどをオリジナル盤で持っていたはずだ。やっぱりレコード好きという人種は、好きなミュージシャンの本当にいいレコードをよく知っているということなのだろう。

次はテナーだ。てなわけでPaPaさんもお勧めのバルネ・ヴィランがかかった。劇画風のイラストのジャケットのやつ~IDAのLa Note Bleueだ。バラードのgood bye これは好きな曲だ。次にベサメ・ムーチョ。なぜかベサメを2テイクやっている。録音がうんと新しい時代なのでもちろんいい音だ。しかし、今ひとつ、軽い感じだ。音が軽いのか演奏が軽いのか・・・それは微妙だが。同じバルネでも昔のを聴こう~ということになり、仏RCAの有名なレコード「Barney」~バルネが脱いだ背広を肩にかけてるやつ~から、またまたベサメ・ムーチョを。バルネ氏、ベサメ・ムーチョが大好きなんだろう。 この1959年の演奏・・・ケニー・ドーハムの吹くテーマもいいし、もちろんバルネのテナーもいいソロを吹く。そしてデューク・ジョダンのピアノも、ちょっと不思議な音色のしかしいい味わいだ。僕は・・・どうしても50年代の演奏と音が好きなようだ(笑)Cd_2
《聴いたのは、たしか仏RCAオリジナル盤だったが、左の写真は僕の日本盤CD。近年、発掘された長尺未発表曲4曲が付いているので、「バルネ」の内容が大好きな方には気になるCDかもしれない》

テナー特集に移ってわりとすぐだったか、茶目っ気を起こしたYoさんが、ジャケットを見せずに何かをかけた。しっとりしたバラード。テナーである。わりあい中高音を中心に吹く感じの吹き方だ。あまり聞いたことのないメロディを抑え気味に吹いている・・・「誰か判る?」とYoさん。たしかに聞いたことのあるはずのテナーの音色だが・・・よく判らない。konkenさんが「ジョニー・グリフィンかな?」とつぶやく。そういえば・・・この高音域の音色が、グリフィンがうんと抑えて吹いた時の音色にも似ているような気もする・・・違うかなあ。ややあって、このテナーから軽くコブシを廻すようなフレーズが出た時「う~ん・・・グリフィンかな?」と僕も言う。Yoさん、黙っている・・・どうやら違うらしい(笑) もうしばらく聴き進めると、これはどうにもよく知ってるテナー吹きだぞ・・・と思う。ああっ!あれだっ。「ハロルド・ランド!」 「当たり!」というわけで、ジャケットを見せてもらうと・・・Carl's Blues(contemporary)だった。

001_2《聴いたのはもちろんオリジナル盤だったが、左写真は僕の手持ち~1970年頃の米再発盤です。そういえば・・・ニーノニーノさんのBBS「こだわりの杜」での、Yoさんとのやりとりのキッカケになったのが、このCarl's Bluesだった。A面のバラード~「言い出しかねて」も絶品だ》
曲はB面2曲目のLarue。う~ん・・・再発盤だけど持っているレコードだったのに。そういえば、僕はいつもA面ばかり聴いていたのだ。Larueというのは、たしかクリフォード・ブラウンの曲で、ラルーという奥さんの名前にちなんだ曲だったはずだ。しかし、僕はこの曲自体をよく覚えていなかった。だから・・・なかなかハロルド・ランドだとは判らなかったのだ。ということは・・・僕はブラインドがわりと得意な方だと思っていたが・・・その人の音だけで判断しているわけではなく、半分は(いや、それ以上か)演奏している曲名~特にスタンダード曲~と結びつけて、そういうディスコグラフィー的な知識を交えて、そのレコードなりミュージシャンを「覚えて」いるようだ。そういえば「音」の感じもブラインドの大きなヒントになる。ドラムやベースの音(録音の感じ)で50年代、60年代、70年代以降~と大まかな録音年代は判るのだ。もっとも(僕の場合は)例えばその音源が70年代以降の音だと判っても、その辺りのレコードをあまり聴いてないので、それが誰なのかほとんど判らない(笑)
Carl's Bluesといえば、このLPの録音の良さについて書かれた記事があるのだ。それは「ジャズ批評別冊~ジャズ喫茶80年代」というやつで、だいぶ前にワガママおやじさんのブログでも取り上げられたことがある。
http://ameblo.jp/d58es/entry-10035477644.html#cbox
たしか・・・嶋 護という録音技師が、prestigeやcontemporaryなど、ジャズレーベルの録音の質感の違いみたいなことを判りやすく記事にしている。読んでいて、うんうんと頷(うなづ)ける内容で、嶋 護氏は最終的にはcontemporaryの録音を好きなようで、特にフランク・バトラーのドラムソロの録音をそれはもう褒め上げていたのものだ。そのワガママおやじさんのブログ記事のコメント欄で、Yoさんがこの本(の内容)に興味を持ったことが判った。たまたま僕もこの本を持っていたので、この日、ぜひYoさんに読んでもらおうということで持ってきていたのだ。もちろんそんなことは知らないYoさんが、ハロルド・ランド絡みとはいえ、ちょうどこのレコード(B面のlalue)を掛けてくれるとは・・・ちょっと素敵な偶然じゃないか(笑)

《以下のランド、ズート、エドワーズの写真5点はYoさん提供》

Land_grooveyard同じくランドのcontemporary盤~Grooveyardからeverything happens to me。You Don't Know What Love Is。このレコード、なぜだかあまり見かけないぞ。しかし・・・欲しい(笑)Zoot_riverside 

ちなみにこのGrooveyard~モノラル盤の方は、ジャケットは同じなのに、なぜだかHarold In The Land of Jazzというタイトルになっている。

ズート・シムス   Zoot(riverside) 
fools rush in
同じ曲の聴き比べということで
テディ・エドワーズ It's about time(pacific)
から fools rush in Photo_3
このエドワーズのテイクを聴き終わると、PaPaさんが「・・・やっぱりズートには敵わないね」と、静かにではあるが言い切る。
「いや・・・」と、Yoさんも一言。エドワーズやランドなど、 曲のテーマをじっくりと吹き進めるタイプの、強いて言えば「訥弁(とつべん)型」のミュージシャンも好きなYoさんとしては、ズートだけが凄いのではないよ、と言いたいのだろう。しばしの間、静かなる論戦を繰り広げる。若干の緊張感がお2人の間に漂う(笑)Teddy
おせっかいの僕は「まあ、タイプも違うしね」と、割りこんだ(笑) 確かにノッてきた時のズートの鮮やかな語り口~テーマを見事に崩していくあの絶妙なバランス感~には、どんなテナーの名手も敵わないだろう。僕もあのfools rush inには、充分に参ってます(笑) 
Teddy_edwardspacific_2一方・・・エドワーズの方は、もうちょっと不器用だ。テーマをあまり崩さずに、丁寧に吹いていく。そうしてその端正なテナーの音色でもって、じっくりとこの曲のメロディを唄い上げる。後からじわじわと効いてくるような感じだ。
この曲の味わいとしては・・・僕もやはりズートの方が好みかもしれない。テナーの違いだけではなく、バックのミュージシャンの違いも大きいようだ。ズート側には、ベースのwilbur wareが入っている~僕など、それだけでriverside盤に軍杯を上げたい (笑) もちろんそんなことも、全ては「好み」によるものであることは言うまでもない。それぞれの音楽好きが、それぞれの感性で、フェイヴァリット~ミュージシャン、曲、レーベル、エンジニア~を持つ・・・そんなことが一番、楽しいことなんだろう。

インストが続いたところで、またヴォーカルでもいこうよ~ということになり、D35さんが何やら取り出している。Felicia
・・・いきなり、落ち着いてはいるが、説得力ある歌声が流れてきた。ちょっと「語り」のようなドラマティックな唄い方だが、あまり声を張り上げないところに、逆に凄みを感じる・・・そんな個性のある歌い手だと思う。デッカ盤のジャケットの方が有名かもしれない。
フェリシア・サンダースのTime盤/Felicia Sanders(time)だ。I wish you loveを掛ける。この曲・・・僕はシナトラ とベイシーのreprise盤で聴いているが、なかなかいい曲である。僕も同じレコードを持っていたのでちょっとうれしい。ちなみにこのtime盤~おそらく、2ndジャケットだろう。サンダースのアップ写真のジャケットの方が1stだと思う。1stの方が2曲余分に入っている。
《マクレエのbethlehem盤。写真Yoさん提供》

Photo_4次に、カーメン・マクレエ(sugar hill)~マクレエ・・・むちゃくちゃ巧い歌い手なのだが、そういえば「マクレエ命」みたいな人は、あまりいないよね・・・なんて話しをしながら、まずYoさんが「唇のマクレエ」(bethlehem 10inch)を取り出す。聴いた曲・・・失念(笑)
独特の乾いた感じの声は、やはり「マクレエ」だが、意外にも曲のメロディはほとんど崩さない。こういう端正なマクレエは悪くない。
もうひとつマクレエを・・・と、D35さんの手持ち盤から「シュガーヒルのライブ盤」を出した。A面1曲目sunday(だったかな?)を聴く。このライブ盤でのマクレエは、もうメロディをストレートに唄わない「マクレエ節」になっている(笑)
そしてこのレコード・・・ライブ録音なのだが、ベースの音が凄い!と思ったら、隣に座ったD35さんが、にやっと笑ってクレジットのエンジニア~の所を示してくれた。Wally Heider!そういえば、このシュガーヒルも西海岸でのライブ録音だったのだ! このブログの<Wally Heiderというエンジニア>のワイダー・リストにもさっそく追加させてもらいました(笑)Img_1598

PaPaさんは、ヴォーカル盤にも造詣が深い。
anita oday(advanceというレーベルの10インチ盤)~これは初めて見たレコードだった。ace in the hall という曲名に聞き覚えがある。たぶん・・・ボブ・シールのflying duthmanというレーベルから「若き日のアニタ」というようなタイトルで復刻されたLPのオリジナルだろう。
what is this things called loveを聴いてみる。アニタのことだから、この曲・・・多分、急速調だよ・・・と予想した通りの速いテンポになったが、途中からラテン風アレンジになったのにはちょっ驚いた。
そしてPaPaさんのバッグから出てきたのは・・・「沼地のピンキー」である。
マニアには有名なPinky Wintersのargo盤だ。この盤の登場に、喜んだのが、今回、初参加したスノッブS田さん。そうなのだ。S田さんも相当なヴォーカル好きなのである。このargo盤・・・相当に希少らしい。実際、ネットでさえほとんど見かけない。Img_1591
ピンキーの唄は、あまり聴いてない僕だが・・・案外にクセのない声質で、とても聴きやすい唄い方だった。実に巧い歌い手である。
それにしても、このargo盤のジャケット・・・どうにも独特な雰囲気だ。なぜ沼地なのか? なぜトレンチコートを着ているのか? S田さんによると、なんでも「コート3部作」というのがあるそうな(笑) アン・フィリップス・・・ジェリー・サザン・・・あと誰かな? どれも、なにかしら寂しげな感じがするね。ひょっとしたら、「女性が着るトレンチコート」には何か特別な意味があるのかもしれないね・・・などと訳の判らん話しをする僕らであった(笑)

次に聴いたのは、カーティス・フラーのThe Magnificent。これは、個人的に「かなりいい音」だと思っているCBSソニー盤の実力はどんなもんかな? という気持ちが以前からあり、今回、Yoさんお持ちのEPICのオリジナル・ステレオ盤と聴き比べてみることにしたのだ。たまたまkonkenさんもそのCDも持ってきていたので、それも併せて、CD、Epicステレオ・オリジナル、CBSソニー盤という3種の two different worlds を比べてみることになった。  
           
Dream《Magnificentの2点~Yoさん提供》
<CBSソニー盤>~全体にしっとりした感じがあり、ベースの音圧感もしっかりとある。Dream_3
<CD>~CBSソニーのLPと比べると・・・ちょっとこもった感じがあり、トロンボーンだけでなく、各楽器の鮮度感が足りない。マスターテープ鮮度という点では、1973年くらいに復刻したソニー盤の方が、だいぶ有利であっても不思議ではない。
<Epicオリジナル盤>~ラウズのYeah!で、Epic盤の音の良さというものは充分に判っていたが、「EPICのステレオ盤」の音にも実は相当な興味があった。united artisitsのレコードによくあるように、モノラル盤よりステレオ盤の方がさらにいいのではないだろうか・・・という期待もある。
さて、そのEpicステレオ盤~各楽器の定位感はソニー盤とほぼ同じ。一聴してソニー盤とあまり変わらないようにも聞こえたが・・・いや、やはり違うぞ。ソニー盤の持つ「甘さ」が、もう少しキリリッと締まり、各楽器の音にオリジナル盤ならではの鮮度感がある。特にトロンボーンの音に、より厚み・輝き・深みがあるようだ。
そんなオリジナル盤を聴いた後でのソニー盤の印象としては~「悪くない」の一言。ちょっとだけ低音を強調気味かもしれないが、各楽器を聴きやすいバランスで巧くまとめてある・・・そんな感じか。まあ僕は、これで我慢しよう(笑)

さて、PaPaさんは相当なコレクター氏で、事前にリクエストした10インチ盤~ダイヤルのパーカー、prestigeのマイルス、ロリンズ、モンク、roostのゲッツなどを含めて30枚ほどを持ってきてくださった。
この日、10インチ盤で聴かせてもらったのは、以下。

ゲッツ(roost 407) Jazz At Storyville から parker51
パーカー(dial 201)Charlie Parker Quintet から
lover manとgypsy 
マイルス(prestige 124) Miles davis The New Sounds から
my old flame 
ズート・シムス(prestige new jazz 1102)Zoot Sims In Hollywood  から what's new
チャーリー・マリアーノ(imperial 3006と3007) から
sweet & lovely
これら10インチ盤については、ゲッツのroostの10インチ盤と12インチ盤の音質の具合とか、パーカーのダイアル10インチ盤の音はどんな感じなのか・・・というような観点から、またの機会にまとめてみたいと思う。
ここでは、ズート・シムスとチャーリー・マリアーノについて、僕の手持ち再発盤との絡みを少しだけ書いておきたい。

10インチ盤のマイルスを聴いた後、ちょっとトランペット談義になり、なんとPaPaさんは、マイルスのペット自体はあまり好みではないとのこと。
トランペットは、リー・モーガンやハバードのようにバリバリと鳴ってほしい・・・というPaPaさん。僕はどちらかというと、トランペットは、マイルス、ベーカー、ファーマーといった中音派が好みかもしれない。しかしトランペット特有のあの「ッパ~パ~ッ!」という突進力も、もちろん嫌いではない(笑)僕は後期のハバードは、あまり好まないが、初期のハバードは、どんなフレーズを吹いても、凄い切れがあって、やっぱり気持ちがいい。
そんなやりとりを聴いていたYoさんが、しっとり派のアート・ファーマーをセレクトした。Early_art 《アートの写真2点~Yoさん提供》

Art Farmer/Early Art(new jazz)
B面から I've never been in love before だ。Early_art_3飛び跳ねるように小気味のいいピアノソロ・・・これを聴いてすぐにkonkenさんが「ケリーだね」と言う。konkenさん、たしかこのレコードは持ってないだろうに・・・さすがはケリー好きだ。その通り、ピアノはウイントン・ケリーだ。
そしてベースが・・・アディソン・ファーマーだ。アディソンは「ボン・ボン・ボン・ボン」と4分音符をわりと伸ばさない弾き方をする。安定はしているが、ビートが突き進んでこない。そんな特徴のアディソンファーマーを、僕があまり好んでないことを知っているkonkenさんは、こちらを向いて「アディソン・ファーマーだよ」とも言うのだった(笑)僕は思わず苦笑いをした。ところが・・・今、聴いているベース音がそれほど嫌ではないのだ。これまで、アディソン・ファーマーを「いい」と思ったことはなかったはずだった・・・しかし、このYoさんの装置で聴くウッドベースの一音一音には・・・有無を言わさない説得力があったようだ。ビートは確かに進んでこない。しかし、この人の「ボン・ボン」という一音一音に、これまで感じたことのなかった、柔らかな膨らみ具合を感じたのだ。もうちょっと硬直した感じの音だと思っていたその「ボン・ボン」には思ったよりも豊かな音圧があり、それらがソフトなクッションのように弾(はじ)けるような様を感じ取れたのだ。それはそれで気持ちがよく「ああ、こういう良さのあるべーシストだったのか・・・」と、納得がいってしまう僕だった。 これも「いい音」の威力なんだろうな・・・(笑)
そして、I'll walk alone。やはりファーマーは・・・バラードが巧い。しっとりした音色でじっくりといいメロディを吹き込む。このEarly Artは(A面だけだが)ロリンズも参加しているので、僕も黄緑ラベルを持っているが、とても好きなレコードだ。

In_hollywood_10 さて、ズートも聴かねばなるまい。 ZOOT SIMS In Hollywood (prestige new jazz 1102)から what's new
《写真~PaPaさん提供》
ズートの10インチ盤~これなどもうジャケットを見ているだけで、幸せになる。モノクロでTシャツを着た若いズートが煙草に火を点けているやつである。掛けたのは、たしかwhat's new。このトランペットは誰?という話しになったが、その時は、これもジョン・オードレイかな?と言ったような気もするが、正直、判らなかった。というのも・・・この10インチ盤の裏側は、何にも書いてない真っ白だったのだ(笑)  Zoot_3
さっき調べてみたら、この10インチ盤4曲は、1954年のセッションで~p:ドリュー、b:ラルフ・ぺナ、そして、トランペットはstu williamsonであった。なるほど・・・納得のチェット・ベイカー、ジョン・オードレイ路線の音色だったな。そして、その10インチ盤は、 意外なほど新しい感じのいい音だった。Good_old_zootすっきりさっぱりしており、シンバルもクリアなのだ。みんなも「いい音だねえ」という反応だったのだが、実際、録音も1954年と10インチ盤としては、比較的、新しいほうで、そしてなんと言っても、西海岸での録音というのが「音がいい!」と感じた理由だろう。
《10インチ盤:In Hollywood の4曲は、12インチ盤~good old Zootに収録されている。上の写真2点は、米fantasy再発です》

さて・・・チャーリー・マリアーノ(imperial 3006と3007) だ。
マリアーノのあのimperialの10インチが2枚ともが、今、僕の目の前にある!う~ん・・・と唸るのみだ(笑)
「マリアーノはやっぱりバラードを聴きたいな」という僕のリクエストで、vol.2の方から when your lover has gone をかけてもらう・・・すると意外なことに、このwhen your lover has gone は普通のスインガー(4ビート)で演奏されていた。「あれれ?」という僕の反応を見て、PaPaさんが気をきかせてくれる。「じゃあ他の曲にしましょうか」そこでvol.1の方の裏ジャケを見ると、sweet & lovelyというタイトルが目に入る。Pomeroyroostよし、これにしよう、ということで掛けてもらう・・・うん、今度こそバラードだ。しかしテーマを吹くのはトランペットだった。これは誰だろう? ちょっとチェット・ベイカーに似ている。裏ジャケ解説をしっかり見てみると・・・Herb Pomeroyだった。                                 《上の写真~ポメロイのroulette盤》
ポメロイは、当時のボストンで音楽の先生的な存在だったミュージシャンだったと思う。あまりレコードが出てない人だと思うが、PaPaさんと「そういえば何かリーダーアルバムがあったね」・・・などとPaPaさんと話す。僕もあの「緑っぽい色のジャケット」の様子を思い出すが、さすがにタイトルまでは出てこない(笑) 今、調べてみたらThe Herb Pomeroy Orchestra(roulette)というレコードだった。このレコードは持っているのだが、あまり印象に残っていない(笑) 10_5

  バラードでのマリアーノはやっぱりいい。このsweet & lovely~主旋律を吹くポメロイに、マリアーノは、抑えたような音で、すす~っと忍び寄るようなオブリガートを入れてくる。サビの部分はマリアーノだ。2コーラス目はマリアーノがソロ。そして今度はサビ部分をポメロイ。スロウのテンポに倍で乗るようなマリアーノ。長いフレーズでも息を切らさずに粘りながら吹き込んでくる。マリアーノのアルトの音色の底には・・・強靭な何かがある。バラードに拘る僕としては、vol.2収録のit's magicにも注目したい。これも素晴らしい!

10_2_3 それにしても、この2枚の10インチ盤・・・見れば見るほど素晴らしい。imperialからのジャズレコードということで、余計に希少に見えてくるかもしれないが、実際、この2枚の持つ佇(たたず)まいはどうだ。アルトを吹くマリアーノの精悍な横顔(vol.1)からは、若い頃のマリアーノの血気が感じられるし、ちょっとヘタウマ風のイラストのvol.2も悪くない。ジャケットから醸し出されるその素晴らしい雰囲気(atmosphere)を、なんとか心に留めておきたくて・・・僕は、しばらくの間、ジャケットをさすったり、裏返してみたり・・・センターラベルの青色を眺めたりしていた。

Photo《右の写真は1997年に東芝が発売した2枚。大きさは12インチなのだが「コレクターズLPシリーズ from オリジナル10インチALBUMS」という涙ぐましいタイトルのシリーズである。このシリーズでは、roost、pacific、nocturnからの復刻タイトルもあったので、たくさん入手した。だから、オビに付いていた特典応募券を切り取って、僕はドロシー・ドネガンの非売品LPも入手した(笑)》

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2007年6月10日 (日)

<やったあレコ 第9回> Virgil Gonsalves(nocturne) と Jazz On The Bounce(bel canto)

カラー盤の磁力には、どうにも逆らえない。

ここに1枚のレコードがある。Dscn1701

Nocturne盤:Virgil Gonsalves Sextet・・・10インチ盤である。
この25cm四方のジャケット。
爽やかな青色のヴィニール。
銀色のセンターラベル。
このレコードを見て「いいなあ・・・」と思わない方がこの世に存在するとは思えない(笑)
もちろんこれは単に僕の思い込みからくる妄想なのだが、まあ「1枚のレコード」が手元に置いてあるだけで、
これくらいうれしくなってしまう人間もいる、ということを言いたいのだ。

レコードは・・・もちろん「音楽」を楽しむためのツールだ。だからそこから音さえ出るのであれば、それがCDだろうとカセットテープだろうと、それからFM放送であっても構わないはずだ・・・とアタマでは思う。「音楽を楽しむ」という観点だけに立てば、その方が正論だろうと思う。だがしかし・・・趣味の世界では、事が正論どおりに動くわけではない(笑)
「レコード好き」にとっては、音源だけが重要なのではなく・・・その盤がそこにあり、それを眺めたり触ったりできることも、これまた重要なのである。
ここで、大きく頷(うなず)くような方にとっては、やはり・・・「レコードは単なるツールではない」ということなのだ。「レコード盤」というものは、ヴィニール~その厚さや重さの按配、センターラベルやジャケット~その図柄や紙の質感、そして二オイ・・・そんなもの全てが合わさって完成するひとつのプロダクツなのである。どちらが欠けてもダメなのだ。レコード好きは、絵(ジャケット)も音(盤)も欲しいのだ。
「レコード好き」は、間違いなくあの「モノの感じ」そのものが好きなのである。そうして、そのモノからは「音も出る!」・・・凄いじゃないですか(笑)

もちろん、レコードにはcopyという表現も使われるくらいで、たくさんの同じものが世に出回るわけで、オリジナルが1枚だけの絵画や彫刻とは、とても比べられない。しかし、そんな数あるcopyであっても・・・年月が経てば、やはり痛んだり壊れたりして・・・その数が減っていく。だから・・・ある種のレコードというものは、大げさでなく文化遺産と呼べるのかもしれない。

この10インチ盤の裏ジャケットを見ると・・・左上の余白に”May 1st,1954”と書き込みがある。たぶん、このレコードを買った人が残した購入日のメモだろう。 Dscn1700_1
1954年の5月1日。
1954年かあ・・・と思うと、いろんな想像が湧いてくる。50年以上も前に・・・ジャズ好き青年が・・・たぶん土曜の午後あたりに・・・西海岸のレコード店で・・・このレコード「ヴァージル・ゴンザルヴェス」を手にとり・・・この青いヴィニール盤にココロ奪われて・・・衝動的に買ってしまった・・・そうしてこのレコードを仲間達と聴きまくったのだろう・・・。
僕は、つい、そんなことを考えてしまう(笑) そうして・・・「その時のレコード盤」が、今、ここに・・・僕の手元にあるということが、うれしいというよりもなにかしら不思議な感じがする。
どうやら僕は、他の10インチ盤には感じない「何か」をこの盤には感じているようだ。それが・・・この青色ヴィニールと銀色ラベルとの絶妙なマッチングからなのか・・・あるいは、ノクターン(Nocturne:夜想曲)という名前から湧き出る魔力のせいなのか・・・よく判らない。

Dscn1702_2 さて、演奏の方はというと・・・このヴァージル・ゴンザルヴェスという人、わりと淡々と吹き進むバリトン奏者のようで、だから・・・片面3曲、全6曲聴いても、「う~む・・・」と強く印象に残るということもなく、淡々と片面が終わってしまう・・・そんなレコードである。名前から想像するに、なにやらサージ・チャロフのような激情的なもの~急に大きな音で吹いたり高音をきしませたり・・・嫌いではないのです(笑)~を期待していたので、意外な淡白さにちょっと肩透かしを食ったような感じもある。そしてこのレコードでは、どの曲もわりと軽快なミディアムファースト(ちょっと速めのテンポ)なので、ちょっと単調な感じも受けるのだが・・・yesterdaysだけは、ややテンポ遅めのバラード調で演奏されているので、ゴンザルヴェスの「唄い」がじっくりと味わえる。
テナーのバディ・ワイズは、どの曲でも悪くない。タイプとしては、ソフトな音色で、無理なくスムースに吹く感じで、そうだな・・・ズート・シムズのようなタイプだと思う。bounce,too marvelous for wordsでのソロはとてもいい。
<このnocturneの10インチ盤~ブログ仲間のNOTさんも紹介している。NOTさん手持ち盤も「青盤」とのこと。そうは出てこないノクターンの10インチ盤、その2枚の個体が共に「青盤」となると・・・ひょっとして、このNLP-8番~Virgil Gonsalvezには青盤しか存在しないのでは?という乱暴な推測も成り立つ。どなたか「黒盤(あるいは他の色の盤)をお持ちの方・・・ぜひコメントにて情報をお寄せください>

10インチの次は7インチでいこうか。
Barney Kessel/Barney Kessel(contemporaryの7inch2枚組)である。
Dscn1708_3 カラー盤というのは、もちろんfantasyには一番多いはずで、contemporaryにはそれほどカラー盤はない、と思っていたので、この7inch赤盤を見つけた時は、ちょっと新鮮だった。
バド・シャンクがフルートやアルトで参加している1953年(11月と12月に4曲づつ録音:全8曲~tenderly,just squeeze me,lullaby of birdland,what is there to say などを演っている)の作品である。
以前からこのブログ<夢見るレコード>では、いくつかの7インチ盤を取り上げてきたが、もちろん全ての7インチ盤の音がいいというわけもなく、たいていはカッティングレベルが低かったり、それよりもまず盤質自体が良くないことが多いのである。だから・・・7インチ収集にも辛いものがあるのだ(笑)
Dscn1710_1  幸いにして、このcontemporaryの赤盤2枚組は、盤質もまずまずで、そして音の方も(もちろん演奏の方も)よかったのだ。ケッセルのいかにも張りのあるやや堅めの強い音がクリアに響く。ベース音やシンバルの鮮度感も充分だ。ギターが主役のセッションなので、ピアノ(アーノルド・ロス)はやや引っ込み気味に録られているようだが、音色もタッチ感も悪くない。そして、シャンクのアルトも骨太に鳴る(I let a song go out of my heart) Dscn1709
・・・と、まあいろいろと言ってますが・・・7インチのカラー盤というのは、パッと見た瞬間に、なにかしらキュートな感じがして・・・要するに・・・それが悪くないわけでして(笑)

追記~この記事をアップ後、下記コメント内のやりとりの中で、SP-EP-10inch-12inchという規格の話しに及んだ。それらがどんな変遷をしたのか、またその価格はどんな具合だったのか・・・早速、この疑問にお答えいただいたshaolinさんが、お持ちの貴重な資料を氏のブログにて公開してくれました。ぜひご覧ください。実に興味深い!

もう1枚だけ、僕が大事にしている「カラー盤」を紹介しよう。
Jazz On The Bounce(bel canto) というレコードだ。これも「青盤」である。

    <Bel Cantoというレーベルについては・・・少し前にブログ仲間:67camperさんが、ヴォーカルのフラン・ウオーレンを紹介した時、一部でちょっと盛り上がった(笑)
bel cantoというレーベル~ジャズというよりポピュラー寄りのレーベルだったらしいが、どうやらカラー盤を特色としていたようで、青色だけでなく緑色やら黄色など、いろんな色ののカラー盤があったらしい。
このSR1004は、僕の持っている唯一のbel canto盤である>

Dscn1705_4このジャケットは・・・少々、濃いかな(笑)
アクの強い美女がとろ~んとした目をしてこちらを見ている。胸元もセクシーである。アメリカのレコード好きは、こういうセクシーな感じのジャケットのことをcheesecakeと呼んでいるようで、人気もけっこうあるらしい。
ソフトな方では、例えばcapitolのジョージ・シアリング辺りの美女カヴァー辺りでも、cheesecakeと呼ばれたりすることもあるようだ。だとしたら・・・僕も、cheesecakeジャケットは、もちろん嫌いではない(笑)
しかしながら、このbel canto盤、ジャケットだけに見とれていてはいけない。
内容の方も相当にいいのである。
A面~Curtis Counce Quintet 3曲
B面~Buddy Collette Quintet 3曲
という構成なのだが、このbel canto盤には、メンバーのクレジットがない。
A面のカーティス・カウンスの方・・・テナーがハロルド・ランドであることは間違いないと思うのだが、
トランペットがよく判らない。ジャック・シェルダンか、あるいはステュ・ウイリアムソンなのか?
レコード・コレクターズ1985年7月号の「エルモ・ホープ」記事(佐藤秀樹氏)によれば、このA面3曲は、どうやらExploring The Future(doote)の別テイクらしい。だとすれば、これらは、1958年4月録音で、テナーはハロルド・ランド、ドラムスはフランク・バトラー、そしてピアノはもちろんエルモ・ホープ。そしてトランペットは・・・ロルフ・エリクソンなのである。Dscn1706_1

このレコードを聴いてみて、ちょっと驚いたのは・・・録音が1958年ではあるが、ステレオ録音だったことだ。
そして、楽器の定位こそ~ピアノとテナーは左側、ベースとドラムスとペットは右側(テーマの時だけはなぜか左側)で、中央には誰もいない感じ(笑)~という初期ステレオにありがちな、ちょっと片寄ったバランスではあるが、全体の音質や各楽器の音色が実にいいものだったことだ。
ドラムスのシンバルやらスネアもクリアに抜けているし、サックスもソフトで艶やか、そしてピアノのタッチにも充分な力感があるので、エルモ・ホープが気合を込めて強く叩いたような高音のタッチも気持ちがいい。
ベースも、右チャンネルから豊かなサウンドでたっぷりと鳴っている。ただ、このベース音はちょっと低音を強調したような感じもあり、やや膨らみすぎかもしれない。いずれにしても、この頃のカーティス・カウンスは・・・というより、ハロルド・ランドは実にいいのだ(笑)この人、イメージはソフトだが、テナーの音色自体は案外にシャープだと思う。そのシャープな音色でもって、どんな曲においても、決してゴツゴツしないスムースなノリで吹き進めてくる。8分音符のフレーズが滑らかで柔らかというか・・・聴いていてアドリブがとても自然なのだ。
やはり・・・凄く巧いテナー吹きなのだと思う。そうして、この人がじっくりと吹くバラードは、本当に素晴らしいのだ。time after time(Land Slide)や I can't get started(Carl's Blues)は、バラードの好演だと思う。
<このCarl's Blues については、ワガママおやじさんのブログ<ヴィニール・ジャンキー>でも話題になったばかりである。渋いけど本当にいいレコードだと思う>

まったく・・・世の中には、素晴らしいジャズレコードが、まだまだいっぱいだあ!(笑)

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2006年7月22日 (土)

<ジャズ回想 第6回> またまたオフ回~藤井寺Yoさん宅:再訪記。

青い顔したウーレイ~3人で7時間の聴きまくり。

6月24日(土)ニーノニーノさんの「杜」のお仲間~藤井寺市のYoさん宅におじゃました。今回はリキさんと私bassclefが2人で乗り込んだ。2人はそれぞれ~僕は昨年9月、リキさんは今年の1月に~Yoさん宅の音を聴いており、その「音」を知っている。そして多分・・・その「音」を好きになっている。
Yoさんは、その後もいろいろな調整をしたようで、音がさらによくなっているらしい。そうなると・・・こちら2人は「また聴いてみたい」、
Yoさんは「また聴いてもらいたい」てな具合で・・・この3人の思惑が一致したようであった(笑)

11時前くらいに到着し、すぐ2階のあの「音聴き部屋」へ。部屋に入るなり「ここ、ここ・・・。この雰囲気がいいんだよなあ・・・」とリキさん。
白熱灯の温かみのある、ちょっと落とし気味の照明。これが・・・本当に落ち着く。お酒の好きな方が、ちょっと飲んで「いい音楽」を聴いたら・・・すぐに眠ってしまうだろうな(笑)

まずはこれから・・・とYoさんが、「東京銘曲堂ライブCD」を取り出す。
リキさんもこのCDがお気に入りで、自宅のsonusと「鳴り」の具合がどんな風に違うのか興味があるようだ。
my romance
but beatiful
昨年9月にこの同じ場所で同じCDを聴いた時は・・・元々たっぷりと豊かな音量で録音された(ように聞こえる)このCDのウッドベースの音が~このベースの音像というか音量がかなり大きく聞こえて、だから僕のベースの好みのバランスでいうと~ややふくらみすぎかな?という感じだった。
ところが今回は・・・だいぶん違ったのだ。そのベースの音像がグッと締まり、ベースの弦がビシビシと鳴るような感じがよく出るようになっていたのだ。こんなバランスであれば、「CD」全般に対する僕の不信感も~たいていのCDがベース中心に低音を強調しすぎか?~かなり和らいでくる。
端正にきれいに弾くギターの音色も、よりくっきりと聞こえる。テナーの音ももちろん素晴らしい。3人の音楽、その全体がより一層ツヤヤカになったように感じた。
何をどうしたのか・・・僕にはオーディオ的な細かいことはわからないのだが・・・スーパー・ツイーターの(クロスオーバーの)調整やら、スピーカーの角度やらを、いろいろ綿密にジリジリと微調整を繰り返したようだ。リキさんと僕に見せてくれた「調整メモ」(スピーカーを動かした位置を記録したのか、まるで何かの設計図のような・・・)には驚くやらあきれるやら・・・(笑)
いずれにしても、あの青い顔した幽霊・・・いやウーレイから飛び出てきた音は・・・「きめ細やかな上質な低音(ウッドベース、バスドラ)」「ふくゆかにしかもよく前にでてくる中音(テナーやチェロ、ヴォーカルなど)」という感じか。
だから・・・低音・中音・高音のバランスが、誠にいい具合になっている・・・ように感じた。このCDは3人~テナー、ギター、ベースというドラムレスの変則トリオである。ジャズの強烈にプッシュしてくるドラムのシンバル~例えばエルヴィン~がどんな風に鳴るのか・・・?
興味が湧いてきた僕は「あとはエルヴィンのドラムだね」と言ったような気がする。

そんな風にして始まった今回の藤井寺ミニ杜。お昼とかの間も、軽いものでも聴きながら・・・ということで、Yoさんがソニー・クリスの72年頃の盤からちょっとロック調のものなどを流す。僕はロック調がいまいち苦手なのですぐに厭きてしまう(笑)「もうちょっと前のソニー・クリスを」という僕のリクエストで、67年録音のThe Portrait of Sonny Criss(prestige) からsmileをかけてもらう。このバラード、出だしの部分をクリス一人だけで吹く・・・ソニークリスって、こんなによかったかなあ(笑)と思えるくらに、これはよかった。
録音もいい、と思ったらRVGだった。ラベルは黄緑色だったが、67年頃の盤なので、その黄緑ラベルがオリジナルかもしれない。
「いいねえ・・・」とか言ってるうちに、なんのことはない・・・ちっとも「音」が止むことはない(笑) 結局・・・11時から6時までほぼ7時間ぶっとおし、という怖ろしくも楽しい会となったのだ(笑) 

以下、かけたレコード・曲と、僕の勝手な感想を少し。
*デジカメはやはり持っていかなかったので、Yoさん、リキさんのオリジナル垂涎盤の写真はありません。この日、かかったレコードで僕が持っているものは、ジャケット写真を載せました。国内盤がほとんどです(笑)Yo_008_2

《写真は、fantasy custom盤》

Johnny Griffin/Kelly Dancers(riverside)
オリジナル盤(モノラル) と WAVE盤(ステレオ) から black is the color of my true love's hair
オリジナル・モノラル盤~グリフィンのテナーの中・高音域がややきつすぎというか、堅く感じる。リキさんも「ちょっときついかな・・・」と一言。しかし、テナーやベースがぎゅ~っとつまった、そして入力レベルが高そうなモノラルならではの密度感は凄い。                   「迫力ある音」が好きな方なら、やはりモノラルを選ぶだろう。
続けてかけたWAVEステレオ盤~モノラル盤だと、ロン・カーターのベース音が大きすぎて僕には「迫力がありすぎ」て、なにか違うベーシストのように感じたが、このWAVEステレオ盤でのロン・カーターは、右チャンネルからのちょうどいいくらいの音像で、テナーもぐっとまろやかになった。音場全体がすっきりとして、とても聴きやすかった。僕はもともとリヴァーサイドのステレオ録音が好きなので、余計にそう感じたのかもしれない。
WAVE盤は・・・クセのないマスタリング(だと思う)が、ある種、うまく録音されたcontemporaryでの楽器バランスに近い味わいがあるようにも思う。そうしてこの「バランスのいい誇張のない楽器の音色」を、Yoさんのシステムで実際に鳴らされると・・・Yoさんが以前から、「WAVE盤の素晴らしさ」を力説していたことにも、充分に納得がいくのだった。

Heren Merrill/Merill at Midnight(emarcy)から black is the color of my true love's hair(グリフィン盤と同じ曲です)と lazy afternoon
裏ジャケットに、若くてかわいい感じのメリルが写っている。たまに聴くメリルは実にいい。
続けて、ティナ・ルイス(concert hall)から1曲(曲名失念)
あの色っぽいジャケットから想像されるとおりの色っぽい唄い方・・・そして案外、どの唄もしっかりと唄っている。
モンローの唄~あのコケティッシュなキャラクターを演出している唄い方(嫌いじゃないのですが:笑)の色気の部分を半分くらいにして、あとの部分を
しっかりと唄いこんでいる感じ・・・女優さんとのことだが、唄は巧いのである。ちなみに、ティナ・ルイスは、例えば普通のポピュラー風オーケストラLPのジャケットに、モデルとしてその姿が登場しているだけでもかなりの価値があるらしい。ティナ・ルイスかあ・・・。

お昼前くらいに、少し軽いものを・・・ということでベニー・ゴルソンとフレディ・ハバードの「スター・ダスト」(82年だったかの録音)をかけた時、トランペットのピッチやら音程の話しになった。その流れでベーシストとしてはあまりピッチのよくない(であろう)ジミー・ギャリソンのベース音がが大きく捉えられているあのピアノトリオ盤~
Yo_004 ウオルター・ビショップJr/~トリオ(キングが出した時の国内盤)からsometimes I'm happy を聴く。このレコード、録音自体はあまりよくない。
ベースの音も大きいことは大きいが、「響き」の成分が少ない、右手で弦を引っ張った「近くで録られた」感じの音だ。ピアノの音も同様でもあまりいい音とは言えない。Yoさんに指摘されるまでは、この盤・・・それほど ピッチの事を気にしたことがなかった(笑)   《上の写真~左はキング盤。右は西独の1989年の再発盤》

だいたいがギャリソンを好きなので、多少ピッチが悪かろうが、ただ「ギャリソンが弾いている」という認識でしか聴いてこなかったようだ(笑) それからベースの音程もたしかによくないのだが、この盤では、ピアノ自体の調律がだいぶんおかしいようにも聞こえる。高音域の方がちょっとフラットして、なにか全体に「ホンキートンクっぽい」ピアノサウンドではある。
ピッチのズレうんぬんはともかく、人間が何かを聞く時、「あばたもえくぼ」的なことや「意識してない部分は、鳴っていても聞こえない」的なことと、それから、その「気になる部分」はこれまた各人で様々な局面があるのだなあ・・・というようなことを、再確認したことではある。

Tenor Saxes(norgran)
The Consummate  of  Ben Webster(norgran) から同じ曲:Tenderly
これは前回のミニ杜(マントさん)でも味わったが、全く素晴らしい音質の盤。同じNogranの貴重盤なのだが、なぜかオリジナルのはずの
Consummate よりもTenor Saxes の方が、はっきりといい音なのだ。テナーはもちろんピアノやらべースも明らかに鮮度が高い。不思議な盤である。

この後、Yoさんセレクトによる「ロリンズ特集」
Sonny Rollins/Saxophone Collosus(オランダ盤)から you don't know what love is
Way Out West (in stereo 盤)(緑ラベルステレオ盤)からway out west
Contemporary Leaders から how high the moon と the song is you
The Standard(RCA Victor) から my one & only love
Sonny Meets Hawk(RCA Victor)  から summer time
milestone all stars から in a sentimental mood

そして Harold Land/in the land of jazz(contemporary) から you don't know what love is
これはハロルド・ランドというテナー吹きの快演!あまり知られてないレコードだが(僕も未聴だった) このバラードは、品格がある端正ないいバラードだった。Yoさんいわく・・・「ロリンズのyou don't know よりいい」 この意見に僕も異論はなかった。ハロルドランドというテナー吹きも実にいい。Harold_land_fox

<補足>そういえば・・・Yoさんと最初にジャズの話題で盛り上がったのも、このハロルド・ランド話題であった。同じcontemporaryにはランドのいい盤がいくつもある。Carl's Blues~ランドが「言い出しかねて」をじっくりと吹き上げる~というのもいい盤だ。それから The Fox もいい。これは僕が、ランドの良さに開眼したレコードだ。   《写真上がFox。録音もいい》

Yoさんのシステムではもともと「よく鳴る」contemporary盤が続く。Yo_005_1
《右の盤は残念ながら国内盤・・・キングGXC3159。それでも充分に音がいい・・・と強がりを:笑》

Hampton Hawes/For Real から hip
どの楽器も素晴らしい音を発しているのだが・・・それでもやはり・・・ラファロのベース音!音圧・強さ・しなやかさ、そしてテーマ部分で、「ぐう~ん」とベースの音程を高い方にスライドさせる驚異の技!(右手で弾いた直後に左手で2つの弦を押さえている(ダブルストップという)その力を、ある程度残したままスライドさせているのだと思う) それからホウズのピアノタッチの躍動感、さらにハロルド・ランドの端正で案外にハードボイルドなテナーの音色、そうしてフランク・バトラーの切れの良さ・・・全てが素晴らしい。
最高の演奏と最高の録音を、まさに眼前で実感できたような気持ちのいい瞬間だった。
「演奏」の快感と「音」の快感が同時に味わえる~そんな感じだった。
それにしても・・・この盤はcontemporaryの中でも最高峰の録音だと思う。

JR.monterose/The Massage(jaro) ~この希少レーベルの青白のラベル、初めて現物を見ました。
Violets for your Furs~モンテローズは、やはり素晴らしい。好きなテナー奏者だ。なんというか「唄いっぷり」の
スケールがとてつもなく雄大なのだ。
じゃあ同じ曲を別のテナーで聴こうか・・・てな訳で、

Yo_006_1 Jutta Hipp/緑色のジャケのやつ(bluenote:liberty ラベル)から Violets for your Furs 
~liberty ラベルでも充分にいい音だった。このモノラル録音でのベース音(アブダリマリク)も、とても大きく弾むような豊かな音で入っていた。
《写真上は東芝国内盤》   こちらの「音像のでかさ」は、先ほどのロン・カーターの場合とは違って、僕にはそれほど気にならない。なぜかというと・・・
(もちろん推測だが)ウイルバー・ウエアやマリク、それからミルト・ヒントン、トミー・ポッターというタイプの場合は、もともと彼らがウッドベースから引き出す音が、「輪郭の大きな響きの音」のように思うからだ。使っているウッドベース自体が大きめのサイズだったり、弦の種類が羊弦(現在ではスチール弦が多い)だったり、右手の弾き方(はじきかた)などで、たぶん出てくる音像は違ってくるものだと考えられる。
これらのタイプと対照的なのは、もちろんスコット・ラファロ、リチャード・デイヴィス、ゲイリー・ピーコックやペデルセン(初期の)などである。
ウイルバー・ウエアの「音像の拡がった大きく響く音」と、ラファロやピーコックの「シャープにしまった音」とは・・・どうです?あきらかにタイプが違うでしょう。もちろん、どちらがいいとか悪いとかの問題ではないのだが・・・困ったことに僕は、どちらのタイプのベーシストも・・・大好きなんです(笑)

Zoot Sims with Bucky Pizzarelli(classic jazz)1976から what is this things called love
~ピザレリのように、ギター一丁で、バッキングの和音から、しっかりしたしかもノリのいいリズムまで出してくる名手がいたのです!
ギターソロでもコード(和音)中心のソロで、そのコードのパターンを、微妙に変えながら厭きさせない。そして、それまでのビート感を決して崩さない。
インテンポ死守!である。というより、さらにビートをなめらかな流れにしているようでもある。サックスとギターだけのデュオなので・・・ギターソロといってもギター独りだけになるわけで、その「ギター1台キリ」でのこの名人芸・・・ため息が出てしまう。

ここで、僕が持ってきたヴォーカル盤を2枚。Yo_001

Irene kral /better than anything(ava) から it's a blue world と this is always
この盤は大好きなのだ。アイリーン・クラールは、アン・バートンの次に好きになった「声」なのだ。フレイジングがちょっと個性的だがリズム感がすごく伸びやかで何を聴いても心地よい。好きだ。

tony bennette/cloud 7(columbia) からI fall in love too easily Yo_003

この盤には初期のベネットのジャズ魂が溢れている。チャック・ウエインのコージーなアレンジ、小粋なビート感、そしてベネットの若々しいあの「声」~僕がベネットを好きなのは、ベネットがあの「声」だからかもしれない(笑)この「クラウド7」は、ジャケットもなかなかいい雰囲気ではある。リキさんもジャケットは気に入ったようだ。

次に僕のリクエストでモンクのソロピアノを。thelonious monk/Alone in San Francisco から remember と everything happens to me        続けて brilliant corners。ここで・・・リキさんはやや苦しそう(笑)

そこで、次にリキさんセレクトのクラシックをしばらく続けた。
グルダ/バッハ:Goldberg Variations(columbia)
キャサリーン・バトル 歌曲
ミュウシャ・マイスキー(グラモフォン3LP)からバッハ/無伴奏チェロ1番
ベルリオーズ:幻想交響曲
モーツアルト:39番
モーツアルト:ハイドンのために創ったという弦楽四重奏~こういう四重奏は、(僕は)ステレオ録音が楽しい。右からちょっと内よりにチェロが聞こえるなあ・・・と思ってたら、リキさんがジャケットを見せてくれた。
そのジャケットに4人の奏者の演奏風景が写っており、チェロ奏者が右から2番目だ。その立ち位置・・・いや、座って弾いてるから「座り位置」か)とおりの定位で聞こえる。リキさんとしては、左右への広がり具合がありすぎるらsく、「もうちょっと4人が内側に近づいてほしい」とのこと。そういえばジャケットの4人はかなり近づいて、こちらを向いて座っている。その4人の中央辺りに、やけに長い「マイクの塔」みたいなのが鎮座している。
僕はまだクラシック自体にほとんど馴染みがないので、「弦楽四重奏」というものもそれほど聞いた経験はないのだが、「チェロ」が入っているとすごく聞きやすい。自分でも気がつくと「チェロを主体」に聞いているのだ。ジャズでも「ウッドベース」から聞いていく。ベースという楽器に相当に馴染んでしまっているので、どんな音楽を聴いても・・・底辺の組み立て、みたいな部分にどうしても興味がいってしまうのかもしれない。

Marty Paich/The Broadway Bit (warner brothers:ステレオ金色ラベル) から I've grown accustomed to your face と I've never in love before
ラファロのベース音は~このワーナー盤では録音自体がややエコー強めのためか~For Realと比べると、やや輪郭が甘く聞こえるが、
ビート感、音圧、ソロ、全てが素晴らしい。

Al Cohn/Cohn On The Saxphone(dawn)
dawnのオリジナル盤は、乾いた感じのやや固めのテナーの音。 バラード曲が多く、コーンがじわじわと吹きこむ地味だけどこれはいい盤だ。

Bill Evans/you must believe in spring からthe peacocks。続けて同じ曲、
Yo_007

Jimmy Rawles/The Peacocks(columbia) から the peacocks
最後に聴いたこのジミーロウルズの盤は、1971年の録音で僕はCD(ソニーのマスターコレクション)で聴いていて、中でもこのthe peacocksが、凄く好きになってしまった。ロウルズとスタン・ゲッツのデュオ演奏だ。全編にしみじみした情緒が流れているのだが、最高に「詩的」な場面が最後にやってくる。ゲッツが最後のテーマを終えるところで・・・(もう吹く息は、切れているのに)サックスのキーを「パタパタパタ・・・」としばらく鳴らしているのだ。どう聴いても・・・孔雀が飛び立つイメージにつながる。僕は、この粋なアイディアが事前に準備されていたとは思わない、いや思いたくない。ゲッツが息をきらす、まさにその瞬間に、「パッ!」と閃いたのではないだろうか? ジャズは素晴らしい・・・だからまだ止められない。

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