Bethlehem

2020年12月31日 (木)

<ジャズ雑感 第42回> ハワードマギーの哀愁

聴きたいレコードが決まらないまま、あれこれとレコード棚を探っていると、さりげなくそこに在って、聴いてみるとこれが実によかったりする・・・そういうレコードがある。
ジャズ聴きも相当に長いが、まだ厭きない(笑)40数年、ブランクなしに聴いてきたので、レコードの枚数もかなりある。
僕の場合、ジャズ聴きの初期の頃から好みがはっきりしていたので、まずは好きになったミュージシャンを何十人か集中的に聴いていた(集めていた)時期があって、その後に興味の輪が広がるにつれ、他のいろんなミュージシャンのレコードも増えてきて・・・知らぬ間に数千枚ほどになってしまった。ほとんどが1950年~1960年代録音のハードバップ系ではあるが(笑)
こういう状態になると、あまり聴いてないレコードも数多(あまた)出てくる。僕はそれらを入手した折には一度は聴いたはずなのだが、特に好印象を得られずに、その後はあまり聴いてないという状態なわけで・・・これは実に不憫なことである(笑)
どのレコード達も、僕自身がその時点で何らかの理由をもって選んできたわけだから、レコード棚に並んでいるどのレコードとも初対面というわけではない(笑)そして何らかの理由とは・・・もちろんそのリーダー・ミュージシャンへの興味だけでなく、その頃に気になっていたミュージシャンがサイドメンに加わっていたり、またはその頃「いいな」と感じていたスタンダード曲が収録されていたり、あるいは気になるレーベルやエンジニアだったり(録音の音質への期待)・・・まあいろいろな要素が入手の理由になったはずなのだ。
だから、自分が選んできた「モノ」が、一部分とは言え、忘れ去られた状態になっているのは、やはり自分にとっても残念なことじゃないか。

そんなわけで、たまにはこの辺りを・・・と、普段、あまり手を伸ばさないコーナーをパタパタと探っていると、なんとなく手が止まったレコードがある。そこはベツレヘム・レーベルを並べたコーナーで・・・僕の「探り方」は~棚の適当な箇所からザクッと7~8枚を10cmほど左手で引き抜いて、それをジャケット側からパタパタと見ていく~というやり方なのだが、そこで何かが「引っ掛かる」と、手が止まる。なかなかの自動選別システムじゃないか(笑)
その時、引っ掛かったレコードが・・・これである。

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<Howard McGhee / Life is just a bowl of cherries「人生はサクランボの載ったお皿のようなもの」

(このタイトル~邦題では「チェリー味の人生」となっているようだ)
このジャケットは、もちろんバート・ゴールドブラットによるものだが・・・およそ「ジャズ的」とは言えまい(笑)>

このレコードが、僕にとってはまさに「あれ? このレコード・・・こんなによかったのか!」になったのである。
そして、この「あれ?」というのは、つまり・・・そのレコードの中の在ったはずの何らかの美点が(入手した頃には気づかなかった)今になって判った・・・ということだと思う。
そして、僕はそのことがなんというか、とても嬉しいのだ。

この「サクランボ」は・・・何年か前にあるレコードフェアで見つけて入手したのだが、その時はハワード・マギーのリーダーアルバムが欲しい~というよりも、その頃、僕のアタマを占めていた Bethlehem レーベルそのものへの興味から入手したはずだ。それと、Bethlehem のリーフラベルにしては安めの価格だったことも大きな理由ではある(笑)

ハワード・マギーは、トランペットを、強い音で鋭く突き刺さるような吹き方はあまりしない。(そういうのも実に快感なんですが・笑)どちらかというと甘いしっとりした音色で、わりと淡々と吹く・・・そういうスタイルだと思う。

強弱を付けたりデコボコしたフレーズ(それがモダンジャズにおけるトランペットの快感でもあるのだが)で、攻めまくる~という感じではなくて、その曲のメロディをあまり崩さずに丁寧に吹き進める感じだ。だけど・・・その淡泊な吹き方になんとも言えない品格のようなものが感じられて、聴いていて実に気持ちがいいのである。その曲のメロディ自体の美しさを引き立てるタイプと言えそうだ。私見では~いや、まあこの夢レコはすべて私見ではあるが(笑)~そうだな、クラーク・テリーとケニー・ドーハムを足して2で割ったような感じかな?

この作品・・・ベツレヘムの意図としても、リラックスしたムードミュージック的、BGM的な・・・つまりゴリゴリのジャズ好きではない人にも楽しめるような作品にしたかったのだと思う。というのもマギーの伴奏として5人のウッドウインド(管楽器群)を配してあって、この5人が品のいい出しゃばらないハーモニーの生地を造り出して(フランク・ハンターのアレンジ)そこにマギーがゆったり伸ばしたしっとり音色で、美しいメロディを乗せていく・・・という感じ。たまに少々のアドリブソロを差し入れてはいるが、どの曲も3分ほどであっさりと終わってしまう・・・全編がそんな感じなのだ。いわゆるジャズ的、ハードバップ的な音楽ではない。だがしかし・・・そこにはハワード・マギーという人の、品性が溢れている。そしてそこにゆったりした音楽が流れてくると、なんとなく幸せな気分になれるのだ。そういえば僕はマント・ヴァーニー楽団も嫌いじゃない(笑)

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<このレコード、録音が案外にいい。1956年の録音だが、どの楽器もパリッとした乾いた質感のクリアな音で録られている。録音エンジニアには、Johnny Cue と Frank Abbey の二人がクレジットされている>

タイトルにもなっている life is just a bowl of cherries という曲は、古く1931年の楽曲のようだが、ビング・クロスビー、J.Pモーガン、ジュディ・ガーランド、ドリス・デイ、それからキャロル・スローンらに歌われているようだ。ちょっと調べてみたら、a bowl of cherries という言葉は比喩的に<とてもたのしいこと>を意味していて、通常~life is [isn't] just a bowl of cherries の形で使う~ということらしい。歌詞のおよその意味は以下。
"Life is Just a Bowl of Cherries"
Life is just a bowl of cherries / Don't take it serious, it's too mysterious / You work, you save, you worry so / But you can't take it with you when you / go, go, go. / Oh, life is just a bowl of cherries / so live and laugh at it all
<人生はサクランボの乗ったお皿みたいなもの。あまりクヨクヨするなよ。何が起こるか判らないのだし。働いてお金を貯めてあれこれ心配したって、どうせ死んだらお金は持っていけないんだぜ。だから・・・人生、笑い倒して生きていけばいいのさ!> みたいなとっても楽天的な歌詞らしい(笑)
ちょっと興味を持ったので you tube で聴いてみると、まあ歌詞の内容からから言っても当然かもしれないが、どの歌手も、明るく楽しくポジティブな感じで歌っている。幾つかの歌を聴いた中では、ドリス・デイだけがスローテンポので歌っていて、しみじみした味わいがとても素敵だ。
楽曲の解釈というものは(歌詞のあるものは)その歌詞の内容に影響されやすいだろうが、人間の感情表現というのはそう単純ではなく、あれやこれやと混ぜこぜになるものだと思うし、ある事例についての反応が必ずしも10人が10人、同じでなければならない~というものでもないだろう。
楽しい内容だから「速めテンポで明るく楽しそうに」歌うとは限らない・・・逆にそれを「ゆっくりテンポでしみじみ暗く」歌ってもいいじゃないか! ドリス・デイの場合は、たぶんそういう発想だったかと思う。
そうして・・・ハワード・マギーもこの Life is just a bowl of cherries をやはりゆったりしたテンポの情緒感でもって演奏しているのだ。そしてそれがマギーという人の誠実な人間性みたいなものにうまく調和している・・・そんな風に僕は感じる。

さて・・・この「サクランボ」は、片面6曲の全12曲収録なのだが、その内の11曲が、DySylva-Brown-Henderson なる作詞・作曲家チームによるものなのだ。実は僕はこの DySylva-Brown-Henderson なるチームのことをよく知らなかったのだが、どうやら Ray Henderson という作曲と Lew Brownという作詞家のチームらしい。収録11曲のタイトルを見てみると・・・幾つかの曲に「お、あの曲か」という発見があった。
the thrill is gone
the best things in life are free
I'm a dreamer aren't we all?
なるほど・・・地味だけど、なんとなく「いいな」と感じる渋い曲調の作曲家とも言えそうだ。まあ「いい/よくない」はもちろん個人の好みによるものだから・・・あまりピンと来ない場合もあるかもしれないので、これらの曲が割と知られている(と思える)ミュージシャンの名前も挙げておこう。

the thrill is gone は、寂しげなスローな曲調でチェット・ベイカーの素晴らしい演奏(Chet Baker Sings 1953年)が印象に残る。

the best things in life are free は、これはもうハンク・モブレイ(work out 1961年)で決まりだろう。

I'm a dreamer aren't we all?  これは・・・おおっ、コルトレーンの Bahia 1958年 に入っているアレじゃないか!

そしてちょいと面白いな、と思ったのは、この「サクランボ」~同じ作曲家チームで纏(まと)めるという企画作品にも関わらず、実は1曲だけ別作家のものが加えられていることだ。その1曲が・・・あの「ソニー・ボーイ」である。「あの」というのは「ソニー・ボーイ」という曲については、だいぶ以前にレッド・ガーランドの記事で、この曲を取り上げたことがあったからなのだが、その時もガーランドの情緒感溢れる演奏に感動して、夢レコ記事にしたのだった。
そういえばこの「サクランボ」の裏ジャケットを見た時「あっ、ソニー・ボーイ演ってるじゃないか」と嬉しく驚いたものだ。DySylva-Brown-Henderson 作品集とも言うべきアルバムの中に、あえて別の作曲家の「ソニー・ボーイ」を混ぜ入れたこと・・・それもA面1曲目に持ってきたこと・・・そんなマギーの何かしら粋なセンスにも、大いに共感を覚える僕である。
A面1曲目の「ソニー・ボーイ」の曲調と他の11曲の持つ雰囲気とは、何ら違和感もなく繋がっていて、アルバム全体としても実に品のいい哀愁感を醸し出しているのだから。

そうして「サクランボ」はやはり・・・マギーの哀愁トランペットを、しみじみと味わうべきレコードなのだ。
ちなみにこの「チェリー」は1956年録音で、ガーランドの1962年よりもうんと前の演奏なので、あるいはガーランドは、英国歌手のペテュラ・クラークだけでなく、このハワード・マギーのレコードも聴いたのかもしれない。

さてついでに、ハワード・マギーの他のレコードも幾つか紹介しよう。
僕の中でのマギーは、長いことバップ時代のちょいと古いトランぺッターというイメージだった。それは、パーカーのダイヤル・セッション(ラヴァー・マン)やファッツ・ナヴァロとの「ファビュラス」でのバップ期の印象が強かったためだ。
しかしマギーはこの後の幾つかのレコードでは、なんというかもう少しモダンなハードバップ的なペット吹きになっているようだ。
その「バップ」より後の作品で僕の手持ち盤は少ないが以下~残念ながら全て国内盤である。「ダスティ」に至っては痛恨のCDだ!(笑)

「リターン」ベツレヘム1955 サヒブ・シハブ、デューク・ジョーダン
「コネクション」フェルスッテド1960 ティナ・ブルックス、フレディ・レッド
「ダスティ・ブルー」ベツレヘム 1960 3管、トミー・フラナガン
「シャープ・エッジ」1961 ジョージ・コールマン、ジュニア・マンス 
<下写真は The Sharp Edge~トリオ発売のヒストリカル1800というシリーズからの1枚。ベースのジョージ・タッカーの音が凄い。
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マギーは、上記のように自分の作品には必ずテナー吹きを入れて、そこにソウルフルなピアノ弾きを加えている。そういう落ち着いた感じのサウンドが好みなんだろう。どの作品も悪くない。

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<上写真~Connection(felsted/ノーマ・1996年>
この作品は実質、フレディ・レッドのリーダーアルバム。ジャケットのコーティングが嬉しい。音質も悪くない。
「コネクション」は、フレディ・レッド作の各曲のほの暗い感じと、テナーのティナ・ブルックスのくすんだような音色が相俟(あいま)って、とても味わい深い作品となっている。


「リターン」はベツレヘムの第1作で(「サクランボ」が2作目)正統派ハードバップ的の快作。サイドメンが皆、いい演奏していて楽しめる。サヒブ・シハブという人は、バリトンやアルト、なんでも吹くが、どれも「あれ?」と思うほど巧い。僕はこの人・・・モンクの1947年のブルーノート録音で名前を覚えた。
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<上写真~The Return of Haward McGhee(bethlehem/日本コロムビア・1984年)
この「リターン」で、ひとつ、印象に残ることがあった。それはドラムスにフィリー・ジョー・ジョーンズが居ることだ。1955年のフィリー・ジョーというと・・・もちろんマイルスバンドより以前になるし、フィリー・ジョーにとっても、トニー・スコットのDecca録音と並んで相当に初期の録音になるかと思う。そしてそのフィリーのドラム音・・・これがやけにいい感じなのである。演奏そのものも溌剌としててもちろん良いのだが、ドラム全体の録音の音が、これが「あれれ?」とびっくりするくらいいい音なのだ。もう少し後の時代のコンテンポラリーの録音のように、タイトですっきりした響きのいい音に聞こえるのだ。このレコードを久しぶりに聴いた時、僕にはこのドラムがとてもフィリージョーには聞こえなかった(笑)だれか西海岸の巧いドラマーかな?と思ったくらいに、いい感じに端正なドラムの音であり演奏だったのだ。
このフィリーの音を録ったエンジニアは「サクランボ」と同じくFrank Abbey氏。どうやらまた気になるエンジニアを見つけてしまったようだ(笑)

「ダスティ・ブルー」~3管編成でちょっと新しい感じのサウンドになっている。マギー独特の選曲は健在で(笑)sound of music とか新鮮な驚きである。そしてこの「ダスティ・ブルー」で僕が最も印象に残っているのは、たぶんマギーがすごく好きなんだろうな、と思える作曲家~Tom Macintosh の with malice towards none である。暗くてウネウネしたような曲調で、しかしなんとなく心に残るメロディ(とハーモニー)である。マギーという人は、たぶんこういう内省的な雰囲気をその根底に持っている人なんだろうな、と思えてくる。
ちなみにマギーは「シャープ・エッジ」でも Tom Macintosh 作品を1曲(the day after)を録音している。

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2014年2月15日 (土)

<ジャズ雑感 第37回>ベツレヘムの east coast jazz シリーズを巡る謎

つい最近、手に入れたレコードがある。それは・・・the compositions of Bobby Scott というベツレヘムの10インチ盤である。年末の「スタン・リーヴィー」記事から始まった皆さんとのやりとりを通して、このところの僕は軽い『ベツレヘム熱』に浮かされていたようでもあり・・・気が付いたら、これが手元にあったのだ(笑) 
もっとも・・・ベツレヘム10インチ盤の持つ魔力に抗(あらが)える者など、この世にいないだろう。以前から、僕も少しづつではあるが集めてきた。今回はそれらの10インチ盤も参考にしながら、もう少しだけ、ベツレヘム・レーベルのこと・・・特に、east coast jazz series のことを探ってみたい。East_coast_jazz_005
≪BCP 1009 Bobby Scott - East Coast Jazz #1~この10インチ盤が、栄えあるeast coast jazz series の #1 である。ベツレヘム社は、当時、新進気鋭の若手:ボビー・スコット(ピアニスト、作曲家~『蜜の味』1960年で有名)を大々的に売り出そうとしたようだ。この1009番より前に、1004番(ピアノトリオ)を発売していて、さらに1024番(1009番の続編~the compositions of Bobby Scott:2)も発売している。10インチ盤40点の内、3点がボビー・スコット作品だ≫

前回の<ミルト・ヒントン>記事のコメントにて、せんりくんとdenpouさんが、この east coast jazz series なるシリーズ名を提示してくれた。その折には軽いやりとりだけで終わったのだが、僕自身も、1020番という表記でありながら、なぜか12インチ盤の『ミルト・ヒントン』を持っていたことから、やはり east coast jazz series という名前がとても気になっていた。(1000番代は10インチ盤)
この『イースト・コースト・ジャズ・シリーズ』なる名前・・・それほど知られてはいないと思う。というのも・・・これ、「シリーズ」と呼ばれてはいるものの、わずかに9タイトルのみの発売で、しかも発売された時のレコード番号も飛び飛び。さらに、「シリーズ」の1~9が、10インチ時代から12インチ時代に跨(またが)って発売されているのである。そんな事情から、この  east coast jazz series  はシリーズ(連続したひとつの流れ)」としては、なかなか周知されにくかったであろう・・・と考えられる。
その辺の発売事情に絡むベツレヘム社のこのシリーズに対する思い入れと、その変化・・・みたいなものが、今回、手持ちのベツレヘム10インチ盤の「裏ジャケットのレコード宣伝番号」をチェックしている内に、浮かび上がってきたので、その辺りの経緯もまとめてみたい。

まずは、east coast jazz の1~9を、発売(されたとされる)タイトルの番号から括(くく)ってみた。

(10インチ盤)
BCP 1009 Bobby Scott - East Coast Jazz/1
BCP 1010 Vinnie Burke - East Coast Jazz/2
BCP 1012 Joe Puma - East Coast Jazz/3
BCP 1018 Herbie Mann - East Coast Jazz/4
(これ以降は12インチ盤)
BCP 1020 Milt Hinton - East Coast Jazz/5
BCP 10 Milt Hinton - East Coast Jazz/5
BCP 13 K&J- K + J.J. East Coast Jazz/7
BCP 14 Urbie Green - East Coast Jazz/6
BCP 16 Hal McKusick - East Coast Jazz/8
BCP 18 Sam Most - East Coast Jazz/9
BCP 6001 K&J- K + J.J. East Coast Jazz/7
(最初はBCP13番として発売されたが、短期間の内に BCP6001番に移行されたらしい)

これらの east coast jazz series ・・・僕は、12インチ盤の 10番(1020)、14番、18番、6001番(13番)の4枚は持っていたが、10インチ盤で持っているのは、この記事の冒頭に掲げた1009番(Bobby Scott)のみである。
だがしかし・・・そこは持つべきものはお仲間である。前回のコメントやりとりの後、denpouさんがお持ちの east coast jazz series 10インチ盤の写真を送ってくれていたのだ。denpouさんは3枚、お持ちだった。
*以下、写真6点~denpouさん提供。

Bcp1009_2 Bcp1009_3
≪BCP 1009 Bobby Scott - East Coast Jazz/1≫

Bcp1010 Bcp1010_2 
≪BCP 1010 Vinnie Burke - East Coast Jazz/2≫

Bcp1012 Bcp1012_2 
BCP 1012 Joe Puma - East Coast Jazz/3

これらの写真で判るように、この east coast jazz series なるシリーズ・・・表ジャケットには「小文字」で、裏ジャケットには上部に「大文字」で、EAST COAST JAZZ SERIES としっかりと表記されている。まずは、「裏ジャケット下部の宣伝レコード番号」にも注目してみよう。

East_coast_jazz_006_4   
1009番( east coast jazz seriesの#1)には~
1010(#2)、1012(#3)、1015、1016、1017、1018(これが#4なのだが、east coast jazz~#4の表記なし)まで。9番の裏ジャケットにわりと番号の離れた18番まで載せている・・・ということは、1ヶ月に4枚づつ発売したとしても、1~2ヶ月先の発売予定のタイトルまで載せていたのかもしれない。

1010番(#2)には~
1009(#1)、1012(#3)と、1015~1018(#4表記なし)まで。

12番には~
1009(#1)、1010(#2)、1018(#4)、1016、1017まで。

上記のことから、EAST COAST JAZZ SERIES シリーズ最初の#1(1009番:THE COMPOSITIONS OF BOBBYSCOTT)の発売時から、すでに1012番の#3(JOE PUMA)までをシリーズとして予定(あるいは同時に発売)していたことが判る。
しかしその反面、同シリーズ1009番・1010番の発売時には、1018(HERBIE MANN QUARTET)を、シリーズの#4としては決定していなかった・・・ことも覗える。そうして、1012番(JOE PUMA)を発売した時には、先発売予定の(あるいは同時に発売)1018番を#4として宣伝に載せているではないか。と、なると・・・この場合、せいぜい1~2ヶ月くらい前に「east coast jazzシリーズの次のタイトル」が決まったことになる。
ベツレヘム社は、このeast coast jazz なるシリーズを企画し、その発売を開始してみたものの、実はそれほど綿密な販売プランなどもなく、案外、「思いつき」のシリーズだったのかも?・・・僕はそんな風にも想像してしまう(笑) まあしかし、よく考えてみたら、ベツレヘムのというレーベルのコンセプト自体が(西海岸事務所を設立する前の)元々、「東海岸の白人ジャズ」みたいなイメージのものだったわけで、どの作品が east coast jazz シリーズであっても、そうでなくても、それほど違和感もないような気もする(笑)

さて・・・冒頭に書いたように、僕はベツレヘムというレーベルに興味を持ってから、10インチ盤も幾つか入手してきた。取り出してきてみると、思ったより枚数はあるじゃないか(笑)・・・まずは、並べてみよう。12title_2

上段 左から~1003、1004、1007、1016
中段 左から~1017、1019、1021、1024
下段 左から~1025、1029、1031、1040
≪僕の手元には、これら12枚のベツレヘム10インチ盤が在った。どのジャケットにも、ゴールドブラット表記がある。この頃のゴールドブラットは、「写真もの」だろうと「イラストもの」だろうと、そのどれをも抜群のセンスを持って、素晴らしいジャケットに仕上げている。この中で僕が特に好きなのは「イラストもの」~Charlie Shavers/Horn o'Plenty である。但しその内容は、DJの声が被(かぶ)るもので・・・ジャケットほど好きになれない(笑)≫

「ジャケット裏の宣伝レコードの番号」に、もう少し拘りたいので、僕の手持ちの中から、比較的、番号の近い10インチ盤の裏ジャケットをチェックしてみた。

1016番(sincerely, Conti)の裏ジャケットには~
1001と1002(ともにクリス・コナー)と、#1(1009)と#2(1010)の4タイトルが載っている。なぜか、1012と発売間近のはずの1018(HERBIE MANN QUARTET)が載っていない。
1017_levy_2 1017_2 ところが、次の1017番(Stan Levey plays the compotisions of ~)の裏ジャケットを見ると・・・ここでは、当(まさ)に、EAST COAST JAZZ SERIES #1~#4(1009、1010、1012、1018) と1016の5タイトルが載っているじゃないか。これは明らかにこのEAST COAST JAZZ SERIESに的を絞った宣伝である。

この調子で宣伝していくのか~と思いきや・・・次の1019番(Oscar Pettiford/Basically Duke)では、1001番~1020番まで18タイトルを載せている(1014番と1019番は不掲載) 
1019_baiscally_2 1019  EAST COAST JAZZ SERIESの扱いについては、1009、1010、1012、1018、1020 のそれぞれに EAST COAST JAZZ SERIES #1~#5を付けて、タイトルと参加ミュージシャンを載せている。この時点ではまだ「シリーズ」として売ろうとしている。
そして、(手持ち盤では)1025(Herbie Harper)の裏ジャケット宣伝では、こうなる・・・。
1025_herper1001~1026までのタイトルのみ載せているが、1010番、1012番、1018番、1020番を見ても、EAST COAST JAZZ SERIES #~なる表記はどこにも見当たらない! そしてこの「宣伝パターン」は、1031番でも同一。10インチ盤最後の1040番(Dick Garcia/Wigville)でも、裏ジャケ宣伝は1001~1028番までのタイトルしか載せていないのだ。
これが少しでも多くのタイトルを宣伝に載せようという、単にスペースの問題なのか・・・あるいはこの時点で、EAST COAST JAZZ SERIES #~というシリーズ概念に見切りを付けたのか・・・その辺りは判らないが、いずれにしても、10インチ盤時代のベツレヘム社は、この「シリーズ」をうまくまとめ切れなかったのでは・・・という印象を僕は拭いきれない。
ベツレヘム社は、自信を持って始めた EAST COAST JAZZ SERIES に相当な拘りを持ちながらも・・・しかし実際の売り方には大いに迷いながら(もちろん売れ行きが芳しくなかったからだろう)・・・それでも#1から#4まで製作販売してきた。しかしその頃、時代は10インチから12インチ時代へと移り始めていた。ベツレヘム社も「時代に乗り遅れてはならない」として、12インチ化に踏み切る。
ベツレヘム社は、12インチ盤の発売に当たって、まずDeluxeシリーズを計画した。このDeluxeシリーズ~ご存知のように、基本的には「2枚の10インチ盤のカップリング」企画である(10インチ盤2枚分そのままを1枚には収録できずに1~2曲をカットすることもあったようだが)
そのDeluxeシリーズの発売番号・・・BCPの1番から始めるのが普通のはずだが、ベツレヘムの場合、どうやら・・・BCP1~9番という番号は、12インチ化を始めた頃には使われなかったようだ・・・ということが判ってきた。
なぜか? なぜ普通に1番から発売しなかったのか? ここで・・・『ミルト・ヒントン』である。
その時、east coast jazz seriesの#5として用意してあったのは、10インチの1020番:Milt Hintonである。そしてひょっとしたら、この1020番がベツレヘム社としても最初の12インチ盤で、発売までの準備不足もあり、10インチとして用意した番号(1020番)はもちろん、カバー写真・レイアウトなど全てをそのまま使用して、12インチ化してしまったのかもしれない。これが1020番(その後、BCP10番に修正)のMilt Hinton(east coast jazz series #5)となる。
*(その後の「シール貼り」「マジック消し」の経緯は、夢レコ<ミルト・ヒントンというベース弾き>を参照のこと)

14_urbie 14_urbie_2 さて、12インチに移行した直後の、east coast jazz seriesの#6(Urbie)の裏ジャケットをチェックしたら、面白いことに気が付いた。
はっきりと「12インチ」レコードとして、1020番の「ミルト・ヒントン」と書いてあるじゃないか! そうして、左側の10インチ盤の宣伝には、1020番は載っていない。
つまり・・・ミルト・ヒントンの1020番は、最初から「12インチ盤」として正式に発売されたのだ!(単純なミスではなく意図的に) 
そして・・・ 『ミルト・ヒントン』の10インチ盤(1020)は、ひょっとしたら、発売されなかったのかもしれない。
だとすれば・・・これまで10インチ盤『ミルト・ヒントン』がネット写真でさえも確認できなかったことの説明も付く。Hinton4

その後、まもなく、ベツレヘム社は、その1020番を、BCP10番に修正した~ことは事実なのだが、そのことで、その後の発売番号割り当てプランに混乱が生じてしまったことはあるかと思う。
この辺りのことと、ベツレヘム社が拘りを持ってきたであろう、EAST COAST JAZZというシリーズへの扱い具合を考え合わせてみると・・・僕なりの答えが見えてきた。

前回の記事から幾度か ≪Deluxeシリーズが発売され始めた時、何らかの理由により、BCP 1~9番辺りが「欠番」として使われなかったのでは?≫ と書いてきたが、その「何らかの理由」として・・・以下のようなことを考えてみた・・・ベツレヘムについては、たぶんこれが最後の妄想である(笑)
その時、ぼんやりと僕のアタマに浮かんだのは・・・「BCP 1~9番辺り」という数(かず)と、east coast jazz seriesの #1~#9 という数(かず)のことだ。どちらも9個じゃないか。う~ん・・・これは何かあるぞ・・・と。 
つまり・・・ここには、east coast jazz series が深く関わっているのではないかな?・・・という想いがあったわけである。

≪1020番と印刷された『ミルト・ヒントン』~どうせ修正するのなら、1番に修正することもできたはずなのに、なぜ、そうしなかったのか?≫
~この時点ですでに、10インチ盤音源を使っての12インチ化のプランもあったはずで、そうした時に、すでに発売済みの10インチ盤:EAST COAST JAZZ シリーズ #1~#4 も、どこかで再編したい~とベツレヘム社は考えていた。
そこで12インチ盤の新譜第1弾として用意した『ミルト・ヒントン』は、1020番(EAST COAST JAZZ SERIES #5)という番号が付いてしまっている。さあどうする、ここはシール&マジックで修正するとしても、ここでもし「1番」に修正すると~それもまずいなあ~EAST COAST JAZZ シリーズは、すでに #1~#4まで出ているし~#5が先の番号になってしまうのも按配が悪い~そうだ、#5の『ミルト・ヒントン』を、とりあえず、BCPの10番にしておけば、前に1~9の空き番号が出来る。それを使えば、10インチ発売済みのEAST COAST JAZZ シリーズ #1~#4 も例えばBCPの6番~9番に収められる。本当は『ミルト・ヒントン』1020番を5番に修正するのが一番いいのだけど、5番だとマジック消し作戦が使えないし(笑) まあ、いいや。この先も#6~#9と企画を続ければ、とりあえず、1~9番もうまく収まるだろう・・・というような思惑が在ったのでは・・・と、僕は想像する。
そうして実際、ベツレヘム社は、EAST COAST JAZZ SERIES の続編を #6~#9まで創ったのだが、それらには、せっかく用意したはずの「空き番号 1~9」を使わずに(これまた何らかの事情により:笑) それぞれ、BCPの13番『K+JJ』(すぐ後に6001番に移行)、14番『Urbie Green』、16番『Hal Mckusick』、18番『Sam Most』 として発売されたのである。 18_sam 18_sam_2
結局のところ・・・EAST COAST JAZZ SERIES なるネイミングが、はっきりとジャケットに表記されたのは、10インチ盤・12インチ盤を通して、これら全9タイトルだけだったことになる。
さて、EAST COAST JAZZ SERIES は、12インチに移行してからも、 #5~#9まで発売されたわけだが、それでは、10インチ盤で発売された EAST COAST JAZZ SERIES #1~#4 は、その後、どうなったのか?
先ほど≪Deluxeシリーズは、基本的には「2枚の10インチ盤のカップリング」企画である(10インチ盤2枚分そのままを1枚には収録できずに1~2曲をカットすることもあったようだが≫と書いたのだが・・・実は、EAST COAST JAZZ SERIES #1~#4 (10インチ盤)も、その「中身だけ」は、しっかりと、Deluxeシリーズ:12インチ盤の中に再編されていたのだ。(#3のみ確認できず) 以下、その移行先。

East_coast_jazz_002_2 East_coast_jazz_003_2 East_coast_jazz_004_2 East Coast Jazz #1(1009番 Bobby Scott)~全5曲が、BCP8番(The Compositions Of Bobby Scott)のA面に収録。
East Coast Jazz #2(1010番 Vinny Burk)~全8曲が、BCP6番(Bass By Pettiford/Burke)のB面に収録。
East Coast Jazz #3(1012番 Joe Puma)~12インチ化を確認できず。
East Coast Jazz #4(1018 番 Herbie Mann)~全7曲が、
BCP58番(Herbie Mann Plays)のA面に3曲、B面に4曲、収録。

上記のように、East Coast Jazz シリーズ #1~#4 (10インチ盤)の内、3点(#1と#2と#4)は、12インチ化されていたわけである。残念ながら、East Coast Jazz Series なる表記は、8番、6番、58番のジャケットのどこにも見当たらないが、3点とも「全曲」が再編されている。そして・・・#1と#2には、「空き番号」になっていた、BCP8番と6番が使われているじゃないか! やはり・・・ベツレヘム社は、新たに始めた12インチDeluxeシリーズの初期ナンバー(1~9)を使って、East Coast Jazz シリーズを「再編」しようとしていたのだ。僕はそう思えてならない。

こんな具合に、いろいろと妄想を書き連ねてきたが、もちろん真実は誰にも判らない。60年も前のジャズレコードの話しだ・・・判らなくて当たり前である(笑) それにしても、今回、興味を持った特にベツレヘムに関しては、まとまった「レーベル情報」もほとんど見当たらず、本当に判らないことだらけだった。
この記事の冒頭にも書いたが、僕の最大の疑問は~
≪Deluxeシリーズ1~9は当初は「空き番号」だったのでは? そして、だいぶ後になってから発売されたタイトルに、この1~9番が充てがわれたのでは?≫というものだった。
それについて、少々補足すると~
問題のBCP1~9番の<左NY、右CALIF>ジャケットのタイトルは、以下となる。
BCP 1   Bobby Scott - Terry Pollard
BCP 2   Oscar Pettiford/Red Mitchell - Jazz Mainstream
BCP 3   Eddie Shu/Bob Hardaway - Jazz Practitioners
BCP 4   Pete Brown/Jonah Jones - Jazz Kaleidoscope
BCP 5   A Ruby Braff Omnibus
BCP 6   Oscar Pettiford/Vinnie Burke - Bass By Pettiford/Burke
BCP 7   Hank D'Amico/Aaron Sachs - We Brought Our Axes
BCP 8   The Compositions Of Bobby Scott
BCP 9   Westcoasting With Conte Candoli And Stan Levey

僕が持っているのは 3、6、8、9である。これらの<左NY、右CALIF>ジャケットのものが(それしか存在しないと思われる)、Deluxeシリーズもだいぶ後になってからの発売されたものであることは間違いない。その根拠は、例によって(笑)それぞれのタイトルの裏ジャケットレコード宣伝の番号だ。
BCP3には[40~64まで]
BCP6には[38~64まで]
BCP8には[56~69まで]
BCP9には[40~65まで]
この番号並びを見ると、それぞれの発売時に多少は先の発売予定のタイトルまで載せたとしても、これらの3,6,8,9番がカタログ上ではBCPの若い番号であっても、実際に発売されたのは、BCP60番の前後であったことは明らかである。

さて、今回のベツレヘム・・・本当に判らないことだらけで、だから・・・現物(ジャケット・盤のデータ)のサンプルを集めて、その差異から、あれやこれや類推していったのだが、如何(いかん)せん、サンプルが足りない。ネットからの情報でもそれが信頼に足るものであれば、写真など使用させてもらうことも考えないとダメだな・・・そんなことを思いながら「ベツレヘム迷宮」に苦しんでいた時、ひとつの有力な資料を見つけた。見つけた~と言っても、実は、shaolinさんというレコード愛好家の方のブログ記事に「古い時代のレコードカタログの記事」があったことを思い出しただけなのだが(笑)
それは≪Old Record Catalogues, Pt.1≫という記事で、その中に、果たしてBETHLEHEMのレコードカタログも載っていたのだ!
そして、その1956年頃のBETHLEHEMレコードカタログの写真と共に、以下のようなキャプションが付いていた。
≪12インチLP ($4.95) は BCP-12 (Don Elliott) から BCP-35 (Bobby Troup Vol.II) まで (なぜか BCP-11 およびそれ以前は未掲載)、10インチLP ($3.85) は BCP-1001 (Chris Conner Sings Lullabys Of Birdland) から BCP-1040 (Russ Garcia) まで (BCP-1020 は未掲載)がリストアップされています≫
*bassclef註~1020番は、12インチ盤として、BCP22とBCP23の間に1020の番号のまま掲載されている。おそらく・・・このカタログ発行の後に、この12インチ盤1020(ミルト・ヒントン)を、「空いていた」(あるいは「空けておいた」)BCP10番に移行させたのだろう(「シール貼り&マジック消し」作業により)

~いやあ・・・やっぱりそうだったのか!という気持ちで、僕は嬉しくこの資料を眺めたわけである。
このカタログ資料は、本当に興味深いものですので、オリジナル・レコードに興味ある方・・・ぜひご覧ください。specail thanks to Mr. Shaolinさん!
これがそのshaolinさんのブログ記事のアドレスです~http://microgroove.jp/2007/06/old_record_catalogues_pt1/

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2014年1月26日 (日)

<ジャズ雑感 第36回> クリス・コナーの声

ジャズを長いこと聴いてきたが、実は・・・僕はヴォーカルものをあまり聴いてない。限られた何人かの女性歌手~アン・バートン、キャロル・スローン、アイリーン・クラール、アニタ・オディ、ジューン・クリスティ、それから、クリス・コナー、この辺りをたまに聴く・・・そんなヴォーカル初心者である。もちろん、美人歌手のゴージャスなジャケットを目にすると・・・そのオリジナル盤を欲しくなるが、人気の盤はどうしても「いい値段」になるので、僕の場合はその現実を見ると、すぐに諦める(笑) インストものに対しては、もう少しだけだが粘る(笑) そんな僕が、オリジナル盤に若干の拘りを持って、知らぬ間に初期の何枚かを集めさせられていた(笑)・・・それが、クリス・コナーなのである。

クリス・コナーと言えば・・・誰もが、バート・ゴールドブラットの傑作ジャケット~「うな垂れるコナー」と「マイク挟みコナー」・・・あれを思い出してしまうだろう。コナーのベツレヘム10インチ盤は、内容の良さと共にあのジャケットの素晴らしさもあって、やはり人気が高い。そして値段も高い(笑) ベツレヘムのコナー音源を僕は安物CDで聴いていて、「悪くないなあ・・・」」と感じていた。そしてその頃、あの10インチ盤1001番のジャケットと同じ写真のEP盤(7インチ)を見つけたのだ。

101ab_2 ≪BEP 101Aと101B~10インチ盤1001番と同内容。全8曲どれも素晴らしいが、僕は・・・what is there to say が特に好きだ≫

102ab ≪BEP 102Aと102B~10インチ盤1002番と同内容。cottage for sale がいい。アコーディオンの音色が印象的≫

首尾よく入手した、そのEP盤から流れてきた「クリス・コナーの声」・・・・これが僕には、なんとも凄かったのである。
ハスキーがかった太くて低めの声・・・張り上げている感じではないのに、凄い音圧感があって、とにかくよく「鳴って」いる(笑) 人の声を「鳴っている」というのも変な表現だが、実際、コナーのそれは・・・ググッと聴き手の心に迫ってくる・・・そんな存在感のある「声」だったのだ。

101のジャケット写真~コナーがマイクのスタンドを両手で挟み込むようにしながら、体をグッと後方に反らして(つまり、マイクから離れるようにして)、「大きな声」を出している。そういえば、クラシックの歌い手さんがマイクを使って大きな声で唄い込む時に、意図してマイクから後方に離れるような動作をしているじゃないか。あれは、もちろん「巧く見せるため」などではなく(笑)、やはり、歌い手さんがフォルテで発声した場面で、マイクを入力過多にさせないための(音を歪ませないための) 動作なのだろう。
それにしても、本当に口を大きく縦に開いている。そういえば、クリス・コナーの写真はたいてい「大きく口を開けている」場面が多い。後述する12インチ盤 6004番 の「大口」はもちろん、BCP20 も BCP56 も、かなりの「大口」である。やっぱり、大きな音声を発したい場合には、大きく口を開ける方が、より自然だろう。

1002_2  10インチ盤の2枚・・・1001番(マイク挟み)と1002番(うな垂れ)。僕は先にEP盤4枚を揃えたので、まあ音源(全16曲)は聴ける・・・ということで、10インチ盤は後回しとなっていた。それで今回「写真でも」と思ったのだが、両方持っている、と思い込んでいた10インチ盤は・・・実は、1002番しか持っていなかった(笑)
≪右写真~10インチの1002盤。「うな垂れ」もダークな色調に独特な雰囲気がある≫   

Bethlehem でのクリス・コナー作品~まず2枚の10インチ盤が1954年に発売され、その後、3枚の12インチ盤~BCP20、6004が1955年、BCP56が1957年の発売らしい。(オムニバスの6006番 も加えれば4枚だが、コナーの4曲は既発音源)
10インチ盤の1001番は、伴奏がピアノのエリス・ラーキンスのトリオで8曲、1002番の伴奏は、ヴィニー・バークのクインテットで8曲、この全16曲が、12インチ盤化の際に分散されてしまったので、12インチ盤にアルバムとしての統一感があるとは言い難い。

6004番「lullabys」には~1001番から5曲、1002番から6曲、そして別セッション(サイ・オリヴァー楽団)から3曲の全14曲収録。

ChrisBCP56番「Chris」には~1001番から残りの3曲、1002番から残りの2曲、そしてサイ・オリヴァー楽団から3曲、そして後の4曲がラルフ・シャロンのグループ(K&JJを含む)の全12曲収録。



BCP20番~全てラルフ・シャロンのグループで、全10曲収録。
A面1曲目の blame it on my youth が素晴らしい!This_is_2

さて、クリス・コナーを話題としたからには、ここでもう一度、整理しておきたいことがある。もちろん、6004盤~sings lullabys of birdland のジャケットのこと・・・「大口」と「半口」である(笑)前々回の「スタン・リーヴィー」記事のリストやコメントにおいて、すでに「大口」ジャケットが先の発売で、「半口」が後の発売らしい・・・というところまでは述べた。
その根拠は、「大口」ジャケットと「半口」ジャケットにおける表記の違い方にある。以下~下写真6点はdenpouさん提供。

Bcp6004_4 Bcp6004_5

≪左写真~「大口」の裏、右写真~「半口」の裏≫

1.裏ジャケット「レコード宣伝」番号の表記~
  「大口」では、BCP 6001番~6007番まで
          BCP ~64番まで。
   「半口」では BCP 6001番~6032番まで
          BCP ~79番まで

2.裏ジャケット アドレス表記の違い~
「大口」は*2種存在。
<左NY、右CALIF><左NY、右NY>
「小口」は <左NY、右NY>

上記の状況を常識的に考えれば、あるレコードに宣伝として載せるレコードのタイトルは、すでに発売されているタイトルのはずだから(もちろん、近日中に発売される予定のレコードが載る場合もあるようだが)、裏ジャケットに掲載された宣伝レコードの番号が「若い」方が、やはり発売が「先」と言えるだろう。
この6004番2種の場合は~denpouさんが指摘してくれたように、6032番まで載せている「小口」に対し、6007番までしか載ってない「大口」の方が「先」であることは、まず間違いないであろう。Bcp6004_6 Bcp6004_7
≪「大口」~<左NY、右NY>のジャケットと、「長方形ロゴ」のセンターラベル≫
Bcp6004_8 Bcp6004_9
≪「半口」~<左NY、右NY>のジャケットと、「長方形ロゴ」のセンターラベル。denpouさんが発見した「長方形ロゴ」左端の「十字マーク」。この「十字マーク」が「大口」センターラベルには無い。そして「ロゴ」自体のデザインも両者で微妙に異なる。
「半口」ラベルの方は、BETHLEHEM の下の「HIGH FIDELITY」文字が銀色ラインに囲まれているが、「大口」ラベルの方は「HIGH FIDELITY」の下に銀色ラインがない。
そして、中心穴(チュウシンケツ・・・という呼び名はないかと思うが:笑)の左右の「BCP-6004」と「Side A」文字が、両者で左右逆になっている。

そしてもうひとつ・・・先ほど、*印を付けて「大口」ジャケットにも2種が存在と書いた。実は最近、denpouさんがYoさん宅におじゃました際、Yoさん手持ちの6004番:クリス・コナーが、「大口」であること、そして・・・<左NY、右CALIF><センターラベルがリーフ>であることを「発見」してくれたのだ。それまでは、denpouさん手持ち「大口」「小口」が、ともに<左NY、右NY>だったので、アドレス表記違いによる発売時期の先・後の判断にもうひとつ、疑問が残っていたのである。
P1110448 P1110449 P1110450 Yoさんの「大口」は、アドレス<左NY、右CALIF>に加え、盤のセンターラベルも<リーフ>であった・・・これでもう間違いない!というわけで・・・クリス・コナー『sings lullabys of birdland』には、ジャケットだけでも、「大口」に2種、「小口」に1種~計3種の存在が確認できたわけである。

≪追記≫(2/3) Yoさんコメント(1/27付)で、<左NY、右CALIF>ジャケットで中身の盤が「十字マーク・長方形ロゴ」のものがあったとのこと。denpouさん「大口」のセンターラベル(長方形ロゴ)には無かった「十字マーク」が付いている。チャランさん「大口」の「十字マーク・長方ゴ」とも異なる。

Cad5vqop_2 Caaicfis_2 Cau6rs6g_2

上写真6点はYoさん提供~special thanks to Mr.Yoさん!

≪追記≫(1/27) チャランさんからの情報によると~
チャランさん手持ちの「大口」センターラベル(下写真2点)は、「十字マーク・長方形ロゴ」「フラットかなあ?」とのこと(denpouさんの「大口」は「長方型ロゴ」) チャランさんの仔細なチェックにより、もう1点の差異が見つかった~それはこのLPの目玉曲(lullaby of birdland)の表記下カッコ内の作曲者名クレジットだ。チャランさん手持ちのセンターラベルのものだけ、(Forster - Shearing)となっているのだ。他3点は全て(Shearing)である。これは・・・?

 Img_0852 Cha
ついでに自分の手持ち「半口」を見たら、なんと、僕:bassclefの「半口」センターラベルは十字マークなしの「長方形ロゴ」だったのだ。(denpouさんの「半口」は、「十字マーク・長方形ロゴ」)
う~ん・・・これはどうしたことか?(笑) これでは、ジャケットは、「大口」2種と「半口」1種~の3種。そして「盤」(センターラベルの仕様)は、「大口」2種、「半口」2種の計4種が存在することになる。いや・・・下記のYoさん<センターラベルがリーフ>も入れれば、5種となる。これは・・・まだまだ追跡調査が必要だぞ(笑)

≪追記≫2/2
このクリス・コナーの6004番『sings lullabys of Birdland』~何種類もの版が見つかったのだが、それでは発売された型としては、いったい幾つの種類があるのか? ちょっと整理してみたい。
≪夢レコ≫前々回の「スタン・リーヴィー」からのジャケット裏の≪アドレス表記の違い≫考察により、発売の順番の大筋としては~
<センターNY>⇒<左NY,右CALIF>⇒<左NY、右NY>で間違いないかと思う。
その「ジャケットありき」を基本に考えてみると、発売順は以下のようになる。

1.「大口」<左NY,右CALIF>リーフ
2.「大口」<左NY,右CALIF>長方形ロゴ・十字マーク
3.「大口」<左NY,右NY>長方形ロゴ・十字マーク/Forster表記
4.「大口」<左NY,右NY>長方形ロゴ
5.「半口」<左NY,右NY>長方形ロゴ・十字マーク
6.「半口」<左NY,右NY>長方形ロゴ

*「長方形ロゴ」の十字マーク有りと無し・・・これについての新旧は、判りません。(また「長方形ロゴ」ラベルだけでの「十字マークの有無」の分布状況を調べる必要がある:笑) ただ・・・アドレス<左NY,右CALIF>ジャケットの盤に「十字マーク」が在ったことから見ると・・・「十字マーク有り」が先なのかな?と考えられます。

チャランさんのコメントに≪YoさんのはCALIFで制作、私とdenpouさんのはNYで制作されたのだと思います≫~とありました。
僕も『スタン・リーヴィー(BCP37)の同一タイトル2種発見の時点では、そのように「アドレス表記」と「製作(プレス)」を直結して考えていたのですが、どうやらそう簡単にはいかないのかな・・・と見方が変化してきました。
その「ジャケットのアドレス」と「センターラベル仕様」について、以下・・・僕の妄想です(笑)

まず、<センターNY>アドレスの時代には、まだ西海岸事務所がなかった~ということから、全て東海岸製作(プレス)ということかなと思います。問題は、西海岸事務所設立以降の「ジャケット製作の状況」と「プレス工場の状況」の関連です。つまり・・・ジャケットは、<センターNY>の次に、<左NY,右CALIF>ジャケットを、次に<左NY、右NY>を、それぞれ、1種類だけを製作していった(仮にそのジャケットが東海岸の製作だろうと西海岸製作だろうと、種類は1種類)ではないかなと・・・考えるのが自然かと思います。つまり・・・ジャケット表記とプレスは連動していない場合もある~という考えです。

「スタン・リーヴィー」記事で示したように、BCP37(Stan Levey)という一つのタイトルにおいて、<センターNY>と<左NY、右CALIF>の異なる2種が存在していたことから、それぞれのレコード(ジャケットと盤)が、東海岸と西海岸の2箇所で「製作されたのでは」と推測したわけですが、このBCP37以外には、その種のサンプルがあまり見つからない。そしてここに絶好のサンプルとして、クリス・コナーの6004番(sings lullbys of Birdland)が出現したわけです(笑) それについては上記のように、「発売された型」として、今のところ6種の版があったわけですが、それでは、どうして、あのクリス・コナー6004番は、6種(6回)も発売されたのか?・・・以下、また妄想です(笑)会社の運営という観点からみても、よほど「いっぱい売れた/まだまだ売れそう」というタイトルしか、追加プレス(発売)はされないはずである。あの頃、一般的なジャズのレコードというものが、全米中でどれくらい売れたものなのか・・・・判りませんが、仮に3000枚(初回)プレスとしたら、追加プレスは、せいぜい500~1000枚くらいではないでしょうか?  そうした「追加プレス」を決定した場合でも、市場での販売状況を見ながら、こまめに少しづつ、少しづつ(笑)という感じだったのでは・・・。逆に言えば・・・ほとんどのタイトルは、「初回プレス」だけだと考えられるわけです。
そうして初回プレスだけの場合で、わざわざ「東海岸プレス」と「西海岸プレス」と分けて製作するのかな・・・?(却ってコストが高く付く) というのが僕の疑問点なのです。
だから・・・西海岸事務所設立直後の一時期、BCP37やBCP6004など、一部のタイトルについては、両海岸で製作(プレス)したが、それ以降は、ほとんどのタイトルは「一箇所のプレス」だったのではないか。(それが東か西かは判らない) だから・・・(一箇所で一括製作してきたであろう)ジャケットのアドレスが<左NY、右CALIF>であっても、それはベツレヘム社としての規模をアピールする意味合いとしてのCALIF表記であって、だからそれがそのまま「西海岸製作(プレス)」とは限らない~と思う。
そして、その西海岸事務所を閉鎖した後の時期になると・・・誠実なるベツレヘム社は(笑)、ジャケット裏右下隅の[Hollywood, CALIF]表記を消して、そうすると・・・空いてしまったスペースがデザイン上、かっこ悪いというので(笑)・・・そこに[New York, NY] なる表記を入れた。それが・・・<左NY,右NY>になった・・・というストーリーです


*ベツレヘム・レーベルの変遷を判りにくくしている大きな要素として、2つのシリーズが複合・並行して発売されたことがあるかと思う。 そこで、自分の手持ちリストの番号並びとアドレス表記、に加えて「センターラベルがリーフ」情報も加えてみた。改めて、その番号並びとリーフの分布を俯瞰してみると、改めて確認できたことがある。

10インチ番時代が全て<センターNY>(1650 BROADWAY, NEW YORK 19表記を含む)そして<リーフラベル>だったことから、アドレスの変遷としては~
<センターNY>⇒<左NY、右CALIF>⇒<左NY、右NY>⇒<左NY、右OHIO>⇒<OHIO>の順。
そして盤センターラベルの変遷は~
<リーフ>⇒<長方形ロゴ>(長方形ロゴにも2種類あり~クリス・コナーの「大口」「小口」のラベル写真を参照のこと)の順で、間違いないと思う。
そして大筋として、以下のことが言えるかと思う。

ジャケット<センターNY>のものは、盤も<リーフラベル>である。
そして、BCP26番辺りから、ジャケットは<左NY、右CALIF>も現われるが、センターラベルは<リーフラベル>のものも多い。同様に6000番代の初期:6010番辺りまでのものにも、ジャケ<左NY、右CALIF>の<リーフラベル>が散見される。
おそらく・・・ジャケットは新規に制作された<左NY、右CALIF>を使っていったのだが、センターラベルは<リーフ>デザインの在庫が残っていてしばらくはそれを使っていた~そんな感じではないだろうか。
難しいのは、カタログの番号順と、<アドレス表記>や<センターラベル>の分布状況に「ズレ」があることだ DeluxeシリーズBCP1番~92番代と6000番代が並行して発売されていった状況で、まずは<センターNY>から<左NY、右CALF>へのアドレス表記移行(あるいは2種ジャケットの並行発売)が、いつ頃だったのか?・・・これがポイントだと思う。
以下、私見だが~
10インチ盤に続いて発売されてきた、Deluxeシリーズ:BCP1~92番の初期タイトルが、ほぼ<センターNY>であること。
BCP37番辺りから<左NY、右CALF>が現われていること。
その<左NY、右CALF>が6001番からは連続していること。
以上の点から、移行期は「BCP37番辺り」と推測している。
(実際に・・・BCP37番の『スタン・リーヴィー』には、<センターNY>と<左NY、CALIF>の2種が存在しているわけだから)

<スタン・リーヴィー>にも載せた「ベツレヘム12インチ盤手持ちリスト」をここに再掲するが、サンプル例を追加するとともに、より「版」の新・旧を探るために、<アドレス情報>の他にも以下の情報も追加した。

≪センターラベルについて~「リーフ」である場合は「リーフ」と表記した。この「リーフ」・・・同じ赤色のセンターラベルをlaurel(月桂樹)と呼ぶ場合もある。なお、表記ない場合のセンターラベルは、全て「長方形ロゴ」となる。
(長方形ロゴには「十字マーク」の有り/無しの2種類が存在するが、このリストではその有・無は表記しない)≫

≪盤が「フラット」である場合は、「フラット」と表記した。表記ない場合は、全てGG(グルーヴ・ガード)となる≫

◎印はYoさん、*印はdenpouさん、チャ印はチャランさん、無印がbassclefの手持ちから確認したもの。(このリストは、情報あれば、随時、追加記入していきます)

Bethlehem Deluxe series (12 inch LP)
 3  <左NY、右CALIF>リーフ フラット
 6  <左NY、右CALIF>
*7 <左NY、右NY>
  8  <左NY、右CALIF>
 9  <左NY、右CALIF>
  13 <左NY、右CALIF> (Ralph Sharon)
*13<センターNY>  リーフ フラット(K+JJ)
 14<センターNY 19> リーフ フラット
 15<センターNY 19> リーフ フラット
 17<センターNY>   リーフ フラット
 18<センターNY>   リーフ フラット
*19<センターNY>   リーフ フラット
20<センターNY>     リーフ フラット
*21<センターNY>  リーフ
  22<センターNY>   リーフ フラット
 24<センターNY>   リーフ フラット
◎25<センターNY>     リーフ  フラット 
 26<左NY、右CALIF>リーフ フラット
 27<センターNY>   リーフ フラット
 29<センターNY>   リーフ フラット
 30<センターNY>     リーフ フラット
 31<左NY、右CALIF>リーフ
 33<左NY、右CALIF>リーフ フラット
 34<センターNY>
*35<左NY、右CALIF> フラット
37<センターNY>リーフ フラット と 
   <左NY、右CALIF>リーフ の2種あり(Stan Levey)
  38<左NY、右CALIF>
 39<左NY、右CALIF>
 40<左NY、右CALIF> リーフ
 41<センターNY>   リーフ フラット
*42<左NY、右CALIF>リーフ フラット
*43<左NY、右CALIF>リーフ フラット
44<左NY、右CALIF>  リーフ フラット
 46<左NY、右CALIF>リーフ フラット
*47<左NY、右CALIF>リーフ フラット
  48<左NY、右CALIF>リーフ フラット
 50<左NY、右CALIF>リーフ
*52<左NY、右CALIF>リーフ
*53<左NY、右CALIF>リーフ フラット
*54<左NY、右CALIF>リーフ フラット
  55<左NY、右CALIF>リーフ フラット
 56<左NY、右CALIF>リーフ フラット
 58<左NY、右CALIF>リーフ フラット
*60<左NY、右CALIF>リーフ フラット
 61<左NY、右CALIF>リーフ フラット
*64<左NY、右CALIF>リーフ フラット
66<左NY、右CALIF>
*68<左NY、右CALIF>
◎69<左NY、右CALIF>
 71<左NY、右CALIF>
◎77<左NY、右NY>
 80<左NY、右NY>
*82<左NY、右NY>
*83<左NY、右NY>リーフ
*84<左NY、右NY>リーフ
*85<左NY、右NY>
*87<左NY、右NY>

Bethlehem 5000 series (12 inch LP)
5002 <左NY、右NY>
5006 <左NY、右NY>(Russ Garcia/Sounds in the night)

Bethlehem 6000 series (12 inch LP)
 6001<左NY、右CALIF>
◎6004<左NY、右CALIF> 「大口」リーフ(Yoさん) *写真
◎6004<左NY、右CALIF> 「大口」 十字ロゴ   
チャ6004<左NY、右NY> 「大口」(チャランさん) *写真 十字ロゴ 
[lullaby of birdland]作曲者が[Forster-Shearing]表記
*6004<左NY、右NY> 「大口」(denpouさん) *写真
*6004<左NY、右NY>  「半口」(denpouさん) 十字ロゴ*写真
  6004<左NY、右NY>   「半口」
◎6005<左NY、右CALIF>リーフ
 6006<左NY、右CALIF>
 6007<左NY、右CALIF>リーフ フラット 
 6008<左NY、右CALIF>リーフ
◎6010<左NY 、右CALIF>リーフ 
 6011<左NY、右CALIF>
*6014<左NY、右CALIF>
 6015<左NY、右CALIF>
 6016<左NY、右CALIF>
*6017<左NY、右CALIF>
*6018<左NY、右CALIF>
 6020<左NY、右NY>
◎6021<左NY、右NY>
 6025<左NY、右NY>
 6029<左NY、右NY>
 6030<左NY、右NY>
*6038<左NY、右NY>
◎6045<左NY、右NY>
 6049<左NY、右CALIF>
*6051<左NY、右CALIF>
*6055<左NY、右Ohio>
◎6061<左NY、右Ohio>
◎6064<OHIO>
*6063<OHIO>
 6069<OHIO>

EXLP-1(3LP 箱入り:アドレス表記なし)
EXLP-2<左NY、右CALIF>

そして・・・まだ大きな「謎」が残っている。それは、なぜ6000番代より発売の古いはずの、BCP1~92番Deluxeシリーズの中の若い番号~僕の手持ち盤では、3・6・8・9・13番が、なぜ<左NY、右CALIF>なのか? アドレス表記の変遷は、<センターNY>⇒<左NY、右CALIF>⇒<左NY、右NY>⇒<左NY、右OHIO>⇒<OHIO>のはずである。
ここがよく判らない。いや、もちろんこれらが、再発としての<左NY、右CALIF>であれば問題ない。つまり・・・これらの番号タイトルの<センターNY>1stの存在が確認できれば、<左NY、右CALIF>は後年発売された2ndである~と、誠にすっきりとした説明が付くのだから。
ところが、これが見つからない。ネットでいろいろチェックしてみても、今のところは見つかっていないのだ。どなたかお持ちであれば、ぜひ情報提供を(笑)
この謎については・・・例えば、こういうのはどうだろうか?
Deluxeシリーズが発売され始めた時、何らかの理由で、1~9番辺りが「欠番」として使われなかった。そして、Deluxeシリーズの30番辺りから、6000番代が並行して発売され始めた頃に~つまり<左NY、右CALIF>ジャケットに移行し始めた頃~発売されたいくつかのタイトルが、その「空き番号」であるBCP1~9番に充てがわれていった~というのが、今の僕の妄想なのだが(笑) 

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2014年1月18日 (土)

<ジャズ雑感 第35回>ミルト・ヒントンというベース弾き

002 ≪写真~Bethlehem bcp 1020≫
ミルト・ヒントン。なんというか・・・真に重厚なベーシストである。そして、ウッドベースにおける伝統的4ビートジャズの体現者である。僕の想う「伝統的」とは・・・まず「ベース音のでかさ」である(笑)。ミルト・ヒントンのベース音は間違いなく「大きい」。それは録音されたベース音であっても、その「鳴り」~弾かれた音がベースの胴から廻りの空間に拡がる感じ・・・辺りの空気が振動する感じ~で判る。アタッチメント(マイク)が普及するよりもうんと前の時代のベース弾きには要求されたであろう「音の大きさ」・・・ヒントンは、その「大きな音」を余裕でクリアしていて、さらにその大きい音を、「太くて、丸い、輪郭の拡がる感じの音」(これがおそらくガット弦の特徴)で鳴らしている。これが・・・ウッドベース好きにとっては、実に魅力的なんです(笑) 
さきほどから「大きい、大きい」と叫んでいるのだが、これは・・・ウッドベースを生音で(マイクを使わずに)弾いた状態でも充分に「大きい」という意味であって、単に出来上がったレコードで聴ける状態で「ベースの音量が大きい」状態とは、ややニュアンスが違う。レコードでは「大きく」聴こえても、それが「生音で大きい音」とは限らない。このことは、ウッドベースという楽器の使われ方(マイク、弦高の高さ加減)にも関係してくるので、以下に少々、ベース談義を(笑)

Hinton_playing_a_contrabass_4 Milthinton2
≪ミルト・ヒントンの写真2点~見よ、この太い弦!(ガット弦)、そして弦高の高さ!右の写真でお判りのように、右手の指の腹を弦に深く当てて、なおかつ、指板の一番下の辺りで弾いている。全てはウッドベースから大きな音を生みだすための作法だ≫

~ちょっと乱暴な言い方だが、70年代以降、ほとんどのベーシストがアタッチメント型マイク(ウッドベースの駒に直接、貼り付けたり、はめ込んだりして音を拾う型のマイク)を使うようになって、その結果、1970年~1985年くらいまでの15年間くらいだったか・・・ほとんどのジャズレコードで聴かれるウッドベースの音が、「フニャフニャ」になってしまった。当時の代表的ベーシスト~エディ・ゴメスもロン・カーターもリチャード・デイビスもペデルセンもジョージ・ムラーツも~誰も彼も、アタッチメントマイクを使うようになって、そうすると、音をよく拾ってくれるので、(その結果)弦高を低くセッティングしたのだろうか・・・その時期のレコードで聴かれるベース音は、音量は大きくて、低い音もよくサスティーンされ(伸び)、音程(の良し悪しも)も聴き取りやすくなったのだが・・・それは空気を振動させた音色ではなくて、限りなくエレベ(電気ベース)に近い、電気的な音色になってしまったわけで・・・それは伝統的なウッドベース好きにとっては・・・致命的に「良くない」ことだったのだ。
ただ、そんな時代でも、例えば、レイ・ブラウンは「大きな生音」を維持していた。エリントンとのデュエット(1972年:パブロ録音)を聴けば、そのベース音の馬力、粘り、ビート感の強靭さに驚かずにはいられない。そうして・・・こういう「グルーヴ感」は、(私見では)ある程度、弦高を高くしてベース本体から発される生音を『空気中に響かせる』状態にしないと、生まれないものだと思う。
・・・このようなことは「ウッドベース好き」にとって、どうにも「気になること」かと思います。ですので、1970年代~80年代中期頃のウッドベースの音質が、それほど気にならない方は無視してください(笑) また前述の『ベース音のフニャフニャ傾向』も、ある時期に目立ったもので、その後は(私見では1990年くらいから)、マイク機器そのものが改良されたこともあって、アタッチメントマイクを使っていても、それほど電気っぽくない自然な聴きやすい音質に改善されてきたように思う。加えて、弦高も高めのセッティングにして、ウッドベース本来の力強い「ベース音」を発しているベーシストも増えてきているようだ。たとえば、クリスチャン・マクブライドのベース音は『ベース本体がよく鳴っている』感じが充分にあって、本当に素晴らしい。
ちなみに「生音が大きな鳴り」のベース弾きはミルト・ヒントンの他にも、もちろんいっぱい居るわけで、私見ですが、例えば~
ジョージ・デュビュビエ
ウイルバー・ウエア
チャールス・ミンガス
ジョージ・タッカー
エディ・ジョーンズ
などをこのタイプとして挙げたい。そして、このタイプのベース弾きは、たぶん、ガット弦(ウッドベースで使う弦の種類)を使っている・・・と、睨(にら)んでます。

さて・・・ここらで、話しをレコードに戻しましょう(笑)
ミルト・ヒントンのベツレヘム盤『Milt Hinton』1955年1月録音。
005_3 このベツレヘム盤・・・僕の手持ちは bcp1020なる番号表記である。(左の写真とこの記事の一番上) いろんな資料で調べてみると、この『ミルト・ヒントン』~(ディスコグラフィでは)まずは10インチ盤 BCP-1020番として発売された後、12インチ盤 DeluxシリーズのBCP-10番として発売されたことになっている。しかるに・・・今、僕の目の前にある12インチ盤『ミルト・ヒントン』は、bcp1020番なのだ。
「さあ、これ、いかに?」というわけで・・・ちょうど前回の<夢レコ>(スタン・リーヴィー記事)の追記としてこの話題にも触れたところ・・・M54さんから決定的なコメント情報が寄せられた。その情報から、僕はいろんなことを妄想した(笑) 
以下、M54さんとのコメントやりとりの一部を再掲しながら、氏が提供してくれた写真も載せて、ベツレヘム盤『ミルト・ヒントン』の12インチ盤2種存在の謎に迫ってみたいと思う。

M54さん~
≪ミルト・ヒントンは持ってますので確認」してみました。ふ~む、面白いですね。 僕のはbcp10 ですが、表の右上の表示はシルバーのシール貼りです。 bassさんの記事から想像するにこの下にはbcp1020が隠れているのではないかと! 裏面ですが、これも左右の上部角のレコードnoはBCP-10ですがこの10の後に黒く塗りつぶしてあるのです。 この塗りつぶしの下は20が隠れていると思います≫
Dscn0848 Dscn0846

≪上記写真2点はM54さん提供。まさに「シール貼り」と「マジック消し」だ。ジャケット裏のミュージシャンのパーソネルの箇所:clarinetのA.J. SCIACCA なる人物にTONY SCOTTとメモ書きしてある。相当なジャズマニアの所有レコードだったのだろう(笑)≫

bassclef~
≪う~ん・・・そうですよ、M54さん、その推測で、まず間違いない、と思いますよ。つまり・・・ベツレヘム社は、10インチ盤1020番と(たぶん)同じジャケットをそのまま使って、まずは、12インチ盤を造った。当然「そのまま」だから、この12インチ盤は表ジャケ・裏ジャケ ~とも1020番が表記されていた~(これが単純ミスなのか、確信犯なのかは判らないけど:笑)後からシールでも貼っておけばいいだろう~てなことで「BCP 10」のシールを表ジャケ右上のbcp1020の上に貼った! そして、裏ジャケットはシール代が嵩(かさ)むので(笑)黒マジックで、「BCP-1020」の1020という数字4ケタの下2ケタの20を消した! 54さん・・・そういうことでしょうね。シールの下には間違いなく「bcp1020」という番号が表記されていることでしょう。そのシールを剥がしてみて~とは言いませんから(笑)
12インチ盤が出来上がってから・・・「あ、10インチ番(1020)と同じ番号じゃ、まずいね」ってことで修正を図ったんでしょうね。それにしても「シール貼り」はともかく、黒マジックで消す~というのはなかなか大胆な作戦ですね(笑)

M54さん~
≪ジャケ裏の住所表示ですが、センターのみで Bethlehem Records,1650 Broadway, New York 19, N. Y. です。盤はフラットです。bassさんのもフラットではないですか?≫

bassclef~
≪はい、住所表記もまったく同じです。盤もフラットです。ということは・・・(便宜上、こう呼ぶが)僕のbcp1020番も、M54さんのBCP-10番も、おそらく、全く同一の(製作段階でも)ものでしょうね。ジャケットも中身の盤もまったく同じ12インチ盤~ミルトヒントン」ということになります。僕の手持ちは「シールなし」「マジック消してない」状態ですが、シールは剥がれ落ちたものかもしれません(笑) まあごく常識的に考えれば、ベツレヘムさん~1020番が10インチと12インチと同じだあ!というミスに気付くまで・・・ある程度、出荷してしまって、その後、「シール&マジック」で修正したものを出荷した~ということになるのかな≫
004

~というような事情です。
つまり・・・ここに実例として挙げた12インチ盤『Milt Hinton』は、異なる2種ではなく、製作段階では「まったく同じもの」だったと考えて間違いないと思います。その同じものを、比較的短い期間の内に、「シール貼り・黒マジック消し」で、「違う番号のもの」に見せかけただけであって、「もの」としてはまったく同一な商品であろうかというのが僕の結論です。
そして、この12インチ盤・・・実はもう1種、別のエディション(版)が存在しているかもしれません。これは以前にネットで見かけた記憶の話しなので確証はありません。それは・・・表ジャケットの色合いもセピア調とは違う感じだし(モノクロのように見えた)、何よりも表ジャケットの右上に「長方形ロゴ」が見えたのだ(そう記憶している) そしてその「長方形ロゴ」にはBCP-10と印刷されているように見えた。現物で確認できてないので、断定はできませんが、おそらく・・・「シール貼り」処理したbcp 1020ジャケットの在庫がなくなったので、新しく「長方形ロゴ&BCP-10」ジャケットを製作したのではないかなと推測できます。
*『ミルト・ヒントン』の「長方形ロゴ・BCP 10」をお持ちの方、ぜひコメント情報をお寄せください。

Bethlehem盤 『Milt Hinton』なるレコードの内容についても、少々、触れておきたい。
この初リーダー作はカルテット~ピアノにディック・カッツ、ドラムにオシー・ジョンソン、そしてクラリネットには、A.J.Sciacca なる聞き慣れない名前だが、このSciacca(ショッカと読むらしい)なる人・・・どうやらトニー・スコットの本名らしい。
ベース弾きのリーダー作ということで、ミルト・ヒントンは over the rainbow と these foolish things で、お得意の「ヒントン節」を披露しながら、全編、ベースでメロディを弾いている。トニー・スコットが抑えた感じでヒントンのベースに絡む these foolish things はなかなか聴き応えがある。

Photo_2 ああ・・・そういえば僕がミルト・ヒントンという人をいいなあ・・・と最初に感じたのは、あれは、ハル・マクージックのcoral盤『Jazz at the Academy』というレコードからであった。そのレコードでも、やはり over the rainbow を、ヒントンがベースでメロディを弾いているのだ。ギターのバリー・ガルブレイスとドラムのオシー・ジョンソンがごく控えめに伴奏している。これがとってもいいのだ! ヒントンという人が自分の好きな曲を、そのメロディを奏でるのが嬉しくて仕方ない・・・という感じがあって、サビ辺りからテンポがどんどん速くなったりする(笑) それでもその生き生きしたヒントンの「唄い」が本当に素晴らしい! 聴衆も固唾(かたず)を飲んで、このベース弾きの唄を聴き入っている様子なのだ。サビで盛り上がってきた辺りで誰かが「ぅおお~」と短い歓声を上げる・・・おおっ、この演奏、ライブ録音だったのか!そうしてメロディを唄い終えると・・・聴衆は一気に拍手・・・という over the rainbow なのである。
ちなみに、このcoral盤は、アルトのハル・マクージックの音色も素晴らしくて、もちろん、僕のマクージック愛聴盤である。ちなみに、at the Academy というタイトルではあるが、どうも拍手や歓声の入り方がワザとらしいトラックが多くて、どうやら全編がリアルなライブ録音ではないようだ。しかし・・・ヒントンが弾くover the rainbow だけは、何度聴いても、そこにリアルなライブ空気感が感じられるので、僕としては、これこそ、「ミルト・ヒントンの畢生(ひっせい)の傑作ライブ演奏」として記憶していたい(笑)

ミルト・ヒントンは2000年に亡くなっているが、1989年(ブランフォード・マルサリスのTrio Jeepy(2枚組)でも、生き生きしたビート感で、まったく衰えていないベース音を聴かせてくれる。この時、ミルト・ヒントンは79歳のはずで ある・・・まったく凄いベーシストがいたものだ。
ジャズは・・・ますます止められない(笑)

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2013年12月31日 (火)

<ジャズ雑感 第34回> あるベツレヘム盤の謎

Bethlehem_nychollywood_002まったく・・・時の流れというものは速いもので、このブログ<夢見るレコード>も手付かずのまま、こうして1年が経ってしまったわけだが、毎年、暮れか明けの正月にはなんとか更新してきたので、ここはたとえ、年に1回であっても、何らかのレコード話題を残しておきたい気持ちは充分にある(笑)
少し前にちょっと面白いものが手に入ったので、そのレコー ドのことについて記してみたくなった。
ベツレヘム(bethlehem)というレーベルにも、もちろん継続的に興味を持っているのだが、なにせあまりモノが入らない。入らない~というのは、もちろん「わりといいものがうまいこと安価で」という意味だが(笑) たまたま Stan Levey/This Time the Drum's on Me(BCP-37)には縁があるようで、3年ほど前に1枚、そしてつい最近、もう1枚、入手できた。
≪このレコードのタイトル~よく見ないと、スタンダード曲の this time the dreams on me と間違える。アメリカ人の好きな単なる駄洒落(だじゃれ)のタイトル付けです(笑) ハロルド・アレン作の有名曲 this time the dreams on me は、このLPのどこにも入ってないので、スタンダード好きの方は要注意(笑)≫
このレコード・・・リーダーはドラムのスタン・リーヴィーだが、管楽器奏者が入っていて、それが、デクスター・ゴードン(ts)、フランク・ロソリーノ(tb)、コンテ・カンドリ(tp)の3人。リーヴィーとベースのルロイ・ヴィネガー、ピアノのルー・レヴィが造り出す快適な4ビートに乗って、この3人が吹きまくる。特にフランク・ロソリーノのソロ場面が多くて、ボントロ好きには楽しめるレコードだと思う。
そうして・・・好きなレコードは2枚あってもいい(笑) 僕はさっそくその2枚を並べてみた・・・どちらもまったく同じ~ドラムのケースが積み上げられた図柄(バート・ゴールドブラットのデザイン)である。やっぱり同じだなあ・・・と思ったけど、よく見ると・・・あれ? 何か違うぞ? そう・・・そのドラムケースのイラストの「背景の白地の色合い」が違うのだ。片方は・・・「はっきりとした白」、そしてもう片方は・・・「わずかにベージュがかった白」なのだ。その「背景白地の色合い」の他は、まったく違いはなかった・・・表ジャケットについては。
Bethlehem_nychollywood_005≪この写真だと判りにくいが、左側~「わずかにベージュがかった白」、右側~「はっきりとした白」という違いがある≫

僕はさっそく、ジャケットをひっくり返してみる・・・と、あっ、やっぱり違うじゃないか! 僕はこの小発見に心ときめいた(笑)
両者の違いは裏ジャケットの下5分の1辺りにあった。ベツレヘムというレーベルに詳しい方なら、もうお判りだと思うが、一番下の「アドレス(住所)」が違ったのだ。
まずは写真をご覧いただきたい。
Bethlehem_nychollywood_006 ≪左側~「表ジャケットがベージュ」、 右側~「表ジャケットが白」≫

「背景ベージュ」の方は~最下段の中央に<BETHLEHEM RECORDS, NEW YORK, N.Y.>だけで左右には何もなし。
⇒後述の≪追記≫では、便宜上、これを<センターNY>と呼びます。

「背景白」の方は~まず、最下段中央に太字ゴシックで
<BETHLEHEM RECORDS>とあり、加えてその左右の端(はし)に、
左端<NEW YORK, N.Y.>、そして右端が<HOLLYWOOD, CALIF.>となっている。⇒後述の≪追記≫では、便宜上、これを<左NY、右CALIF>と呼びます。

さらに・・・「自社レコード宣伝のタイトルとその番号」~これが大きく異なっていた。この違いは、他レーベルの場合でも、その版の新旧を判断する材料として有力なものだ。要は、新しい版の方が、宣伝に載せるタイトル番号も、宣伝であるが故に、より新しいものを載せる場合が多いのだから。
このStan Leveyの場合は以下。
「背景ベージュ」の方には~<OTHER GREAT JAZZ ARTISTS>として、BCP 1020(ミルト・ヒントン)と、BCP12 から BCP35までのタイトル(作品)が載っている。
「背景白地」の方には~<OTHER GREAT JAZZ ARTISTS ON BETHLEHEM>として、BCP 52 から BCP 64まで。そして BCP6001~6007 も併記してある。
これは・・・やはり明らかに「ベージュ」の方が、古いedition(版)のようだ。そして、この宣伝タイトルからだけでなく、会社としてのアドレス表記からも、「NEW YORK」だけのもの(ベージュ)が先で、HOLLYWOOD表記もあるもの(白地)が後・・・とみて間違いないかと思う。

≪追記 2014年1月5日≫~皆さんのコメントから類推すると~裏ジャケット下部の住所表記:2種類存在の意味するところは、
<センターNYのみ>=東海岸プレス と 
<左NY, (センターBETHLEHEM)、右CALIF>=西海岸プレス
であろうことが判ってきました。
ここまできたら調べてみるか・・・ということで、僕の手持ちのbethlehem盤、約50枚
(ちょっとだけ持っている10インチは除いて)をパタパタと捲(めく)ってみました(笑) 僕のレコード並べ順は基本的にミュージシャン別・楽器別なのだが、BETHLEHEMだけはわりと最近の興味対象ということもあり、ほとんどのものを並べてまとめてあったので、すぐに「パタパタ」ができたわけです。
思ったよりも枚数は集まってましたが、人気の高い大物タイトルはありません。ハービーマン、サム・モストやオーストラリアン・ジャズ・カルテットなど不人気タイトルばかりです(笑) それでも、番号順(=ほぼ発売順)に並べながら、ジャケットのアドレス表記違いなど見てみると・・・新たに判ってきたこと、さらに判らなくなってきたこと・・・いろいろ出てきました。
ひとつだけ先に結論めいたことを書くと~僕の手持ちにおいては<センターNY>盤が、少なかったということです。
手持ちの約50枚中、<センターNY>は14枚のみ。残り
はほとんどが<左NY、(センターBETHLEHEM)、右CALIF>盤でした。

以下、番号だけシリーズ別に並べてみます。

最も多い<左NY、(センターBETHLEHEM)、右CALIF>は、BETHLEHEMを省略して<左NY、右CALIF>と記入としました。
そして<センターNY>は、<センターNY>、あるいは<センターNY 19>(*後述)と記入しました。
そして8枚だけ<左NY、右NY>となっているものもありますが、それは僕のミスではありません(笑) この8枚は、いずれも各シリーズの後期番号に集中しているので・・・素朴に考えて、BCP 80番、BCP 6029番の少し前のタイトルの発売時期の辺りに『ハリウッドの西海岸事務所が閉鎖された』ということだと思う。ハリウッド事務所が存在しなくなったのに、HOLLYWOODと表記するわけにはいかないだろうから。
2点だけ<OHIO>記入ありますが、これはおそらくBETHLEHEM最後期時代の kingレーベル配給時期のものだと思われます。
(*番号の前は全て BCP~です)

Bethlehem Deluxe series (12 inch LP)
3  <左NY、右CALIF>
6  <左NY、右CALIF>
8  <左NY、右CALIF> 
9  <左NY、右CALIF>
13<左NY、右CALIF>
14<センターNY 19>
15<センターNY 19>
17<センターNY>
18<センターNY>
20<センターNY>
22<センターNY>
24<センターNY>
26<左NY、右CALIF>
27<センターNY>
29<センターNY>
30<センターNY>

31<左NY、右CALIF>
33<左NY、右CALIF>
34<センターNY>
37<センターNY> と <左NY、右CALIF>2種あり(Stan Levey)
38<左NY、右CALIF>
39<左NY、右CALIF>
40<左NY、右CALIF>
41<センターNY>
44<左NY、右CALIF>
46<左NY、右CALIF>
48<左NY、右CALIF>
50<左NY、右CALIF>
55<左NY、右CALIF>
56<左NY、右CALIF>
58<左NY、右CALIF>
61<左NY、右CALIF>
66<左NY、右CALIF>
71<左NY、右CALIF>
80<左NY、右NY>

Bethlehem 5000 series (12 inch LP)
5002 <左NY、右NY>
5006 <左NY、右NY>(Russ Garcia/Sounds in the night)

Bethlehem 6000 series (12 inch LP)
6001<左NY、右CALIF>
6004<左NY、右NY>Chris Connor/Sings Lullabys~)「半口」
6006<左NY、右CALIF>
6007<左NY、右CALIF>
6008<左NY、右CALIF>
6011<左NY、右CALIF>
6015<左NY、右CALIF>
6016<左NY、右CALIF>
6020<左NY、右NY>
6025<左NY、右NY>
6029<左NY、右NY>
6030<左NY、右NY>
6049<OHIO>

6069<OHIO>
bcp 1020<センターNY 19>(Milt Hinton) 
*このミルト・ヒントンは、片面5曲づつ収録の12インチ盤である。おそらく、10インチ盤 Milt Hinton(BCP1020)の再発かと思う。 10インチ盤の発売が先なのは間違いないと思いますが、その10インチ盤のジャケットがどんなデザインなのかは現物がないのでよく判りません。 僕の手持ちの12インチ盤(Milt Hinton)はジャケット右上の「長方形ロゴなし」で、その場所辺りに小文字で 「bethlehem bcp 1020」 と表記されている。そして、この12インチ盤(bcp1020)はセピア単色ジャケットですが、実は、12インチ盤がもう1種あって、それがBCP10のようです。同じ内容の12インチ盤がなぜ2種(bcp1020番とBCP10番)存在するのか・・・それも謎です。

僕の手持ちベツレヘム盤(12インチ)においては、こういう具合でした。この番号の並びとアドレス表記違いの状況・・・これらを見て、うんと素朴に考えればこうなる。
BCP 1~81のDeluxシリーズの初めの頃は、東海岸(NY)事務所だけなので<センターNY>表記ジャケのみ。そして・・・37番(スタン・リーヴィーthis time~)の辺り(時期)から、西海岸に事務所を設立~併せて西海岸プレス=<左NY、右CALIF>を始めた。だからその辺りのタイトルからは、従来からの<センターNY>と新規の<左NY、右CALIF>と2種類のジャケットが存在する・・・ということではないだろうか?
だがそこで・・・(少なくとも僕の手持ち盤において)少々、ややこしい問題がある。どのレーベルにおいても同様だが、『2ndプレス・再発もの』なのである。
この僕の手持ちの中であっても、もし、37番より以前のタイトルが全て<センターNY>であれば、ほぼ、『BCP1~(仮に)37番までは<センターNY>しか存在しない~と言えるのだが、現実にここに BCP の3、6、8、9、13 などの<左NY、右CALIF>があるじゃないか。ということは・・・これはやはり『2ndプレス・再発』と考えるしかない。仮にだが、「西海岸プレス」が37番(スタン・リーヴィー)頃からスタートしたとして、その後に、やはり、いくつかのタイトルについては(在庫が切れたもの~つまりよく売れたタイトル)「再発された」と考えていいだろう。
僕のリストの中で言えば、その「再発盤」が、3、6、8、9、13、26、31、33番などになるのかな・・・と考えられる。 その「再発」絡みの観点から、ちょっと面白いことに気付いた・・・それは表ジャケット「BETHLEHEM 長方形ロゴ」のことである。この長方形のBETHLEHEM ロゴは(ほとんどの場合、表ジャケットの右上に位置する)~僕の手持ちリストでは、BCP 50番から現われている。これまでの推察から、
≪より初期と考えられる<センターNY>盤には「BETHLEHEM長方形ロゴ」が無い≫ことから、やはり、初期の番号タイトルの初版には「長方形ロゴはなかった」と考えていいかと思う。

≪追記 1/6≫~今、メル・トーメの6016番、6020番などを追加記入した時に気付いたことがある。右上「BETHLEHEM 長方形ロゴ」は、(僕の手持ちの6000番台(現状14枚)には全て有ったのだ!  つまり・・・「長方形ロゴ」は、6000番台を開始した時に、外見上に変化を付けるために、新たにデザインされたのだろう・・・こんなことはベツレヘム好きには周知のことなんだろうな(笑) 
さてここで・・・6000番台には「長方形ロゴ」有り~としても、こうして並べてみると・・・
僕の手持ち盤<左NY、右CALIF>の内、BCPの 3、6、8、9、13、31、33番にはその「BETHLEHEM長方形ロゴ」が有るのだ。これは上述の見解とは矛盾するじゃないか・・・ただ、これも『再発』という観点から言えば・・・BCP 1~81番台のもので<左NY、右CALIF>表記で「長方形ロゴ」有りのものは・・・『西海岸事務所設立以降の再発プレス』と考えることはできそうだ。
もちろん、これだけのサンプル数では、どのタイトルが「再発」なのかは判らないし・・・もっと同一タイトルの表記違い・右上ロゴの有無などの実例が必要だと思う。 BETHLEHEM盤(レーベル)に興味ある方~ぜひお手持ちの盤のジャケットのウラ・オモテを凝視してみてください(笑) よろしければコメントにてお知らせを!
*<センターNY 19>~番号の若い方 14、15 と 別シリーズ番号の1020(ミルト・ヒントン) の3枚だけ・・・番地入りのアドレス表記だった。正確に記すと裏ジャケット下部に、こうある。
<BETHLEHEM RECORDS,1650 BROADWAY,NEW YORK 19,N.Y.> となっている。発売が古そうなこの3枚だけ、この<センターNY 19>ということは・・・これも素朴に考えて、初期の番号のものはこの表記だったということだろう。この<センターNY 19>がどの番号タイトルから、番地なしの<センターNY>に変ったのか・・・これも興味あるところである。
言い訳めいたことになるが、僕は「ベツレヘム・ブック」を持ってない。プレスティッジ・ブックとリヴァーサイド・ブックは、発売後、すぐに入手したが、ベツレヘム・ブックは・・・当時、東芝がCD復刻していて、その宣伝を兼ねて「ベツレヘムのホームページ」があったので、それを見たり保存したりしてれば間に合っていたので、買い渋っていたのだ(笑) それで、BCPの各シリーズの基本的な点数もうろ覚えのまま、この『ジャケットのアドレス表記違い』という難問に乗り出してしまって・・・これは厳しい状況だと認識はしている(笑) それで自分自身のためにも、ベツレヘムBCP各シリーズの点数をここに示しておきたい。
special thanks to Jazz Discography Projectさん!

Bethlehem Deluxe series (12 inch LP) BCP 1~92
Bethlehem 6000 series (12 inch LP)  BCP 6001~6073 
Bethlehem 5000 series (12 inch LP)  BCP 5001~5006
Bethlehem 1000 series (10 inch LP)  BCP 1001~1040
Bethlehem Extra series (12 inch LP)  EXLP 1~3

* 5000番台については、どのディスコグラフィも BCP 5001~5005と
なっているが、5006番として Russ Garcia/Sounds in the night が
手元にあるので、5006番として載せました。

≪追記 1/11≫
この記事の発端となった『スタン・リーヴィー』(BCP37)~これは『同一タイトルのジャケット・アドレス表記違い』というものだった。そのアドレス表記2種の内情を探るべく、皆さんから情報をいただいているのだが、denpouさんからのコメントやりとりの中から、またひとつ、興味深い「謎」が現われた。それは~『K+JJ』というベツレヘムレーベルを代表する有名盤についての「謎」であった。なんと・・・『K+JJ』 は
2種類~番号違い(BCP13とBCP6001)~が存在したのだ。
*そしてもうひとつ、このBCP13番について大きな謎がある(笑) この「BCP13番」という同じ番号に、もうひとつ、別のタイトルが存在しているのだ。それが・・・『Sue & Ralph Sharon/Mr.& Mrs.Jazz』である。こちらは僕の手持ちもdenpouさんの手持ちも<左NY、右CALIF>である。
*ちなみに、1/5追記で触れた『ミルト・ヒントン(12インチ盤の方)』の2種存在(bcp 1020 と BCP10。そして源(みなもと)であるはずの10インチ盤(BCP1020)も、同じような状況と言えそうだ。


まずは、『K+JJ』から~
(以下の写真~クリス・コナーまでの12点は、denpouさん提供)
special thanks to Mr.denpouさん!
Dsc_8032_5 Dsc_8033_6 Dsc_8034_3 
BCP13番~
<センターNY>
<長方形ロゴ・無し>
<リーフ・ラベル>
以上の点から、このBCP 13番の方が発売が先(1st)と思われる。

Dsc_8035_3 Dsc_8036_4 Dsc_8037_2   

そしてBCP 6001番~
<左NY、右CALIF>
<長方形ロゴ・有り>
<長方形ロゴ・ラベル>
後述の理由で、6001番の方が発売が後(2nd)と思われる。1st、2nd と言っても発売時期(1955年)にそれほどの差はないようだ。この6001番を発売したことで、「空き」が生じたBCP13番に『Mr.&Mrs.Jazz』を充てがった・・・というのが僕の妄想である(笑)
Bcp13_sue_ralph_sharon_3 Bcp13_sue_ralph_sharon_4  

ともあれ『K+JJ』については、実際に2種類が存在したのだ。録音は1955年1月。その発売もおそらく1955年だったはずだが、僕の手持ちリストでの<左NY、右CALIF>ジャケット存在の状況から類推すると・・・DeluxシリーズBCP1番~91番が先に発売されて、しばらくは<センターNY>のみ。そして30番辺りの時期に西海岸事務所が設立されて、それに合わせて<左NY、右CALIF>ジャケットに移行していった・・・その間、番号順とは多少、前後して、2種のジャケットが混在しているのではないか・・・と推測している。
「長方形ロゴ」の無し・有りについては~前提として、10インチ盤のセンターラベルが「リーフ」(木の葉の図案)であることから、リーフが先、長方形ロゴが後~で間違いないと思う。ただ、ジャケット右上の「長方形ロゴ」と、中身の盤のセンターラベル「長方形ロゴ」が完全に連動しているかどうか・・・はっきりしない。

≪追記 1/12≫~ここでもうひとつの2種ジャケット・・・クリス・コナーにも触れておこう。BCP6004番のクリス・コナー「Sings Lullabys~」には「大口開け」と「半口」という2種の異なるジャケットが存在していることは、わりと知られていて、僕も自分の手持ちが「半口」だったので、できれば「大口」も欲しいなあ・・・と思っていた。そうしたところへ、今回の記事のコメントやりとりにおいて、denpouさんが2種ともお持ちでその2種とも<左NY、右NY>であることが判った。さっそくその写真もここに載せておきたい。ジャケットの歌い手さんの口の開け方を見比べること(笑)以外の注目点は、裏ジャケットのレコード宣伝の番号分布である。denpouさんのメールから抜粋~≪「大口」ではBCP-64 BCP-6006までですが、「半口」ではBCP-79 BCP-6032の記載になっていますので、多分「大口」が先の発売で、後に「半口」に変更され様に思います≫とある。うん、なるほど!僕もまったく同感である。但し、なぜそのジャケット変更が断行されたか・・・それもまた謎である。
Bcp6004_6 Bcp6004_7 Bcp6004_8 Bcp6004_9   


(ここで話しは「スタン・リーヴィーに戻る:笑) そんな風なことを思って、改めて両者のジャケットカバーを見てみると・・・う~ん・・・やっぱり「ベージュ」の方が、より、しっくりくる、というか・・・美しさ・品格みたいなものが、より、滲み出ているように思えてくる。もっとも・・・後から入手した「ベージュ」の方が、ジャケットのコンディション自体もうんと良好なのだけど(笑)
いずれにしても、このジャケットの僅かな違いについては・・・両者を並べてみなければ、まったく気が付かなかったことだろう。
先に入手していたStan Leveyのジャケットのコンディションが良くなかった~という局面で、次に、盤はVG-だがジャケはVG+という Stan Levey を入手した~つまりジャケと盤の入れ替えを考えた・・・というせこい作戦だったわけだが(笑) ベツレヘムのジャケットに違いがある~なんてことは予期していなかったことだけに、今回のこの発見は自分でもちょっとした幸運のように思えるのだ(笑) 
ちなみに中身はどうなのか?というと・・・まず、センターラベル、及びディープグルーヴについての差異はまったくなかった。じゃあ「盤」も同じなのか?というと・・・これが違うようなのだ。
Bethlehem_nychollywood_008 この写真では判りにくいが~
「ベージュNew  York」の方が「フラットディスク」(外周のところが盛り上がっていない) のようで、
「白地Hollywood」の方は、これが微妙なのだがほんのわずかな「グルーヴガード」に見えるのだ。少なくともまったくのフラットではない・・・ように見える。
そしてもうひとつ・・・肝心の音質の違い~いや、別段このことを「肝心」と言わなくてもいいのだが(笑)~についてはどうなのか?
僕は何度も聴き比べてはみたのだが・・・ほとんど同じ音質のようで、両者の間に決定的な違いは僕には聴き取れなかった。でもしかし・・・まず「ベージュNew  York」のB面2曲目(stanley steamer)を聴いた後に、「白地Hollywood」で同じ曲を聴くと~全体の音量がわずかに上がり(たぶん、カッティングレベルの違い) そして・・・ベースの音量が若干だが大きくなっているように聴こえた。だから、一聴(イッチョウ)、「白地Hollywood」の方が迫力があっていい音質に聴こえるのだが、もう一度、「ベージュNew  York」を聴いてみると・・・同じ場面のテナーのバックに鳴るドラマー:スタン・リーヴィのシンバル音の鳴り方が、よりクリアに切れのあるようにも聴こえるのだ。もちろん決定的な差ではない・・・だがしかし、テナー・ベース・ドラムなどの鳴り方の切れ・鮮度感において、「ベージュNew  York」の方がやや優勢かな・・・そんな風に僕には聴こえた。
もっともこの辺についてはあまり信憑性はない。というのは、つまり・・・1st(初版)である~と推測した「ベージュNew  York」の方が、音質面でもより鮮度が高いはずだ、そうであってほしい・・・という僕の無意識的な、いや、充分に意識的な想いが僕の脳内に渦巻いており、冷静な判断などできなくなっているはずだから(笑) 
この分では、僕は<夢見るレコード>を<妄想するレコード>とでも改題せねばなるまい(笑)

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2010年7月 4日 (日)

<ジャズ回想 第23回>雨降りの1日は、レコード三昧だった。

~United Artistsというレーベルを巡って~

久しぶりに藤井寺のYoさん宅でのレコード聴きをすることになった。今回は4月白馬の集まりに参加できなかったリキさんと僕(bassclef)のために、Yoさんが声を掛けてくれたのだ。集まったのは、愛知からリキさん・konkenさん・僕。関西からdenpouさん、PaPaさん、Bowieさん。Yoさんを入れて7人となった。

午前中から夕方まで約8時間・・・皆であれこれと聴きまくったわけだが、今回はクラッシクから始まった。
Vx25_j_2 まずはYoさんから、シュタルケルのチェロ独奏。コダーイの曲を鋭く弾き込むシュタルケルのチェロ。その中低音が豊かに捉えれた、しかもエッジの効いた好録音。ジャケットを見るとこれがなんと1970年頃の日本でのレコーディング。つまりこの日本ビクター盤がオリジナルなのだ。Vx25_lシュタルケルのチェロをYoさんはディグ(探求)しているようで、そういえば2~3年前の白馬でも、シュタルケルの日本での実況録音盤~バッハだったか?~をセレクトしていた。この人のチェロは、強くて毅然としており、曖昧なところがない・・・そんな感じだ。 《シュタルケルの写真2点~Yoさん提供》
それから、ムターなる女流 ヴァイオリニスト~言わずもがなの「美人」~の2種(共にグラモフォン音源)に話題が。ムターについては、おそらく事前にリキさんとBowieさんが音源セレクトを相談したのかな。
カラヤン指揮(1988年)
~クラシック不慣れな僕らのためにお2人が気をつかってくれたのだろう(笑)・・・曲は「チャイコフスキーのヴィイオリン協奏曲」冒頭から少し経過すると飛び出てくる印象的なメロディ・・・ああ、この曲なら僕でも知っている(笑) 1988年のデジタル録音ということもあってか、ムターのヴァイオリンだけでなくバックのオーケストラまでクリアに聞こえる。
次に同じ曲の70年代もの(グラモフォン音源)Bowieさんのセレクト。こちらはアナログ録音だがバックのオケの音圧感がより豊かで肉厚な感じがする。これも良い録音だ。こちらのヴァイオリンはミルシュタインだったか。指揮はアヴァド。アヴァドという人・・・曲の終盤になると劇的に盛り上げる感じがいつもあって(たぶん)僕はなぜだか嫌いではない。そんなシンプルな躍動感みたいなものがカラヤン盤よりも濃厚に感じられて、この協奏曲は僕にも充分に楽しめました。
ムター繋がりでリキさんからもう1枚~
「これは・・・珍盤の一種かも」というリキさんが取り出したのは、立派の箱入りのLP2枚組。タイトルは「Carmen-Fantasie」(今、調べたら録音は1992年。正規品はもちろんCDであろう)ジャケット写真は・・・ヴィオリンを弾いているムターの立ち姿。正規CDと同じデザインだと思うが・・・このムター、ちょっと色っぽい。
掛けたのは「チゴイネルワイゼン」
曲の出だしからちょっと大げさな感じのするあのメロディ(好きな方、sorryです) これはグラモフォン音源のはずだが、センターラベルは白っぽくてデザインも違う。ラベルには小さい文字でmade in Japanと入ってはいるが、解説書の類(たぐい)は一切ない。聴いてみると・・・音からするとちゃんとした音源のようだとYoさんが言う。臨時に版権をとった記念のLPセットのようなものだろう・・・という意見も出たが、いずれにしても、所有者のリキさんでさえ、その出自を知らない「謎のムターLP2枚組」である。
ムター好きを隠さないYoさんが「欲しい・・・」とつぶやくと、ダジャレ好きなPaPaさんは「そんなごムターな・・・」などと言ってる(笑)

こういう音聴き会では、各人のお勧め盤を順番に聴いていくわけだが~そうすると、当然、各人の趣味嗜好が様々なので、厭きない流れになるというわけだ。実際の順番どおりではないが、ここで皆さんのお勧め盤をいくつか紹介したい。

Yoさん~今回は実は<UAレーベル>というのが隠れ主題になっていて(と勝手に解釈していた僕) それもあってか、そろそろ・・・という感じでYoさんが1枚のUA盤を取り出した。
Uas_5034_j_2 《リトルの写真4点~Yoさん提供》 Booker Little/~+4(united artists)ステレオ盤青ラベル 
この渋いUA盤からYoさんが選んだのは moonlight becomes you。スタンダード曲である。リトルはうんとスローなバラードで吹いている。
ラファロと共演のTime盤にもひとつスローものがあったと思うが、このUA盤(Booker Little +4)にもこんなに素敵なスローバラードmoonlight becomes you が入っていたのか。Uas_5034_lところが・・・僕はこの「ブッカーリトル・プラス4」~国内盤さえ持ってない。リトルがリーダーなのだから、ローチのことは気にせず聴くべきレコードだったのだな・・・などとモゴモゴ弁解する僕(笑)そういえば、Yoさんもマックスローチ苦手絡みということもあり、このUA盤の入手は他のUA盤に比べれば遅かったらしい。リトルという人・・・スパッと抜けのいい音色にも特徴があるが、丁寧にじっくりとメロディを吹くその誠実感・・・みたいなBcp_6061_j 味わいが実にいいのだ。 
Booker Little/~& Friends(bethlehem) if I should loes you
こういう音聴き会ではいつもちょっとした偶然がある。この日、konkenさん・リキさんとクルマで藤井寺へ来たわけだが、車中ではたいていiPODをシャッフルで掛けている。音源は konkenさんCDなのだが、ジャズ、ロック、ヴォーカルがごちゃ混ぜで入っているので、この3~4時間がけっこう厭きない。四日市の辺りで、トランペットが深々と吹く聴いたことのあるメロディが流れてきた。このメロディは・・・知っている。そうだ、if I should lose youだ。BGM的に流してはいても、気になる音(音楽)が掛かるとと、iPODの真ん中辺りを押してデータを表示したくなる。「ああ・・・ブッカーリトルかあ」と納得。
そんな場面があったことをYoさんに告げると、ちょっと嬉しそうなYoさんは続けてリトルのbethlehem盤を取り出して、if I should lose you をセレクトした。うん・・・いい。「やっぱりiPODで聴くよりいいな」と僕が言うとkonkenさん、ひと言「当たり前じゃん」Bcp_6061_l
どちらの演奏も、本当にスローなバラードである。一拍をカウントしてみると明らかに1秒より遅い。♪=60以下の超スローなテンポだ。
リトルはバック陣にきっちり淡々と伴奏させながら、悠々とじっくりとメロディを吹く。ほとんど崩さない。しかし不思議に味がある。リトルの音色・・・とても抜けのいい感じで、どちらかというジャズっぽくない音色とも言えそうだが・・・どこかしら、わずかな翳りがある・・・ようにも感じる。それは説明しづらい何かであって・・・妙な言い方になるが、黒人全般に一般的には似合うはずのブルース感覚とはちょっと違う感性のトランペッターであるような気がする。そしてその「翳り」とバラードはよく似合う。ブッカー・リトルという人、どうにもバラードがいいじゃないか。

Dscn2490bassclef~
Jimmy Woods/Conflict(contemporary)ステレオ盤。 conflict
右側からタッカーのザックリした切れ込み鋭い戦闘ベースが、たっぷりと鳴る。いつになくハードボイルドな感じの増したハロルド・ランドもいい。やや左側から鳴るカーメル・ジョーンズも覇気のある音色だ。そしてピアノは ・・・なんとアンドリュー・ヒル。ヒルが弾くストレーと なブルースも面白い。Dscn2492リーダーのウッズのアルトは、ちょっとクセのある粗野な感じだが、もちろん嫌いではない。ウネりながら巻き込むような吹き方は・・・ちょっとドルフィ的でもある。そしてもちろんエルヴィンもいい(笑)ドッカ~ンと響くドラムサウンドがこのレーベルの端正な感じの音で鳴るのも実に悪くない。

Miles Davis/Round Midnight(columbia CLモノラル6つ目) round midnight 
ここでいつもの聴き比べ病が出る(笑)Columbiaはスタンパー違いで音が違いが大きいと言われているが、そういえば実際に試したことはない。このRound Midnight・・・同じモノラル6つ目をYoさんもお持ちで、じゃあマトリクスを見てみよう・・・僕のはジャケはぼろぼろだが(笑)盤は1C。Yoさんのは1J。CとJなら違うと思うよ・・・と、Yoさん。
Dscn2493聴き比べの時は、僕はウッドベースの音(聞こえ方、バランス、音圧感)やシンバルの打音に注目するのだが、columbia録音のシンバルはいつもうんと控えめバランスなのでこの場合、フィリー・ジョーのシンバルであってもあまり参考にならない。そこでウッドベースだ。同じ音を出しているはずのチェンバースのベースでも、Columbia録音の場合、presitigeに比べると低音を厚めしたような感じがあり、僕の場合は、ややギスギスした感じのprestigeでのベース音よりも、ややソフトな感じのcolumbiaの方が好みではある。Dscn2489
さて、この2枚を続けて掛けてみると・・・・・・その雄大に鳴るチェンバースのベース音・・・その輪郭においてやはり1Cの方がよりくっきりした音圧感で鳴ったようだ。ベース以外には特に大きな違いは感じなかったが、全体をパッと聴いた印象として、1Cスタンパーの方が色艶が濃いというか鮮度感が高いように聞こえた。やはり・・・Columbiaレーベルではスタンパー違いによる音質の違い(鮮度感)というものがあるのかもしれない。むろんタイトルによってその差異は様々だろう。

Kenny Clarke/(Telefunken Bluesと同内容の12inch盤)から solor
アルトがFrank Morgan・・・ここでPaPaさんが鋭く反応。
PaPaさん~
僕がモーガンの名を出すと、PaPaさん、すかさず1枚のレコードを取り出す。おおっ、GNPのフランク・モーガンだ!盤を出すと鮮やかな赤。
Cimg5658_2Frank Morgan(GNP)赤盤 the nearness of you

《GNP盤写真2点~PaPaさん提供》
モーガンのアルトは・・・う~ん、これは好みが分かれるだろうな・・・ちょっと軽い音色でフレーズの語尾をミョ~!ミォ~!としゃくるような感じ。どこかの解説で「名古屋弁のアルト吹き」という表現があった。素晴らしい!(笑) ちょっと、ソニー・クリスにも似ているな・・・と思ったら、PaPaさん、次にソニー・クリスを出してきた(笑) Cimg5663さすが・・・パーカー以後のアルト吹き全般に精通しているPaPaさんだ。セレクトにテーマがある。
Sonny Criss/Up Up and Away(prestige) 紺イカリラベル から sunny

この「サニー」はもちろんあの有名ポピュラー曲。録音が1967年なので、当時のジャズロック調まっしぐら。何の衒(てら)いもなく、当時のヒット曲を料理しているようで、それは案外、クリスの持ち味であるちょっと軽いポップな感じと合っているのかもしれない。
そういえば、PaPaさんと僕が思わず微笑んでしまった場面もあった。フランク・モーガンだけでなく、もう一人、ディック・ジョンソンというアルト吹きをセレクトしてきたのだが、2人ともemarcyではなく、riversideのMost Likelyを持ってきたのだ(笑) この時、音はかけなかったが、なにか1曲となったら・・・たぶんPaPaさんも 静かにバラードで吹かれる the end of a love affair を選んだであろう。

denpouさん~
ちょっとマイナーなピアノトリオを本線とするdenpouさんではあるが、この日はピアノ主役ではない10インチ盤をいくつか持ってこられた。

Dscn0301 《写真~denpouさん提供》
Georgie Auld / (discovery:10inch) here's that rainy day
darn that dream
ジョージ・オールド・・・いや、古い日本盤ではこの人の名をりをちゃんと「ジョージイ・オウルド」と表記してあったぞ。GeorgeではなくGeorgieという綴(つづ)りに注目したのだろう。
スイング時代のビッグバンドっぽいサウンドをバックにゆったりと吹くこのテナー吹き。コーニイ(古くさい)な感じがまったく・・・悪くない(笑)
古いテナー吹きをけっこう好きな僕も、もちろんジョージイ・オールドを嫌いではない。Cimg5664_2そういえば何か10インチ盤を持ってたけど・・・などと言っていると、PaPaさんが自分のレコードバッグからすうっ~と見せてくれたのは・・・roostの10インチ盤。「おおっ、これだ!」
それにしても・・・PaPaさん、なんでも持っている(笑) Cimg5665_3 このroyal roost盤・・・面白いのは、裏ジャケットが無地・・・一文字も入ってない、無地の青一色であることだ。 さっぱりしていいじゃないか。そういえば、スタン・ゲッツの10インチも同じように裏ジャケットは無地だったかな。 当時のroyal roostさん・・・デザインとしての無地だったのか、単なる手抜きなのか(笑)
《royal roostのオウルド写真2点~PaPaさん提供》

さて・・・オウルドの10インチ盤から、here's that rainy dayという好きな曲がかかったので、僕はあのレコードを想い出した。あれ・・・エルヴィンとリチャード・デイヴィスのimpulse盤 Heavy Soundsだ。 As9160_jあれは・・・フランク・フォスターの堂々としたバラード吹奏がたまらなく魅力的なのだ。このレコード・・・拙ブログ夢レコでも小話題になったことがある。それは・・・録音のバランスとしてのリズムセクションの捉えられ方についてのコメントで、そのバランスがこのHeavy Soundsでは明らかにベース、ドラムスが大きすぎるというのがYoさん意見だった。今回、here's that rainy dayつながりだったが、Yoさんお持ちのそのimpulse盤(これは赤黒ラベルが初版)を聴いてみた。As9160_l右チャンネルからリチャード・デイヴィスの芯のある強いピチカット音が・・・かなり大きな音で鳴りまくる。 う~ん・・・これは・・・確かに大きい。フランク・フォスターのテナーが主役なのだが、音量バランス、それに弾き方そのものが管に負けないくらい「主張する音」となっている。僕はデイヴィスの音は強くて大きい~と認識しているので、僕としては「大きくても」問題ない(笑)ただ・・・一般的にみて、ジャズ録音における管とリズムセクションのバランスにおいては・・・少々、出すぎかな(笑)まあでもこのレコードはエルヴィンとリチャード・デイヴィスのリーダー作ということでもあるのだから・・・ヴァン・ゲルダーがあえてそういうバランスにしたとも考えられる。《Heavy Sounds写真2点~Yoさん提供》

Dscn0243_2《写真~ denpouさん提供》
Max Bennett~おおっ!あのシマウマだ!この10インチ盤・・・ただ、シマウマが2匹いるだけなのに、どうにもいいジャケットだ。denpouさんのこの手持ち盤はコンディションもいい。ジャケット表のコーティングもキレイでシマウマのオシリも艶々している(笑)
ベツレヘムというと名前が浮かんでくる女性ヴォーカルに、ヘレン・カーという人がいる。ヘレン・カーのリーダーアルバムとしては、10インチでは<ビルの一部屋に明かり>、12インチでは<浜辺に寝そべる2人>がよく知られているが、この「シマウマ」にも2曲だけヘレンの唄が入っている。konkenさんのリクエストもあり、この10インチ盤から ヘレンカーの歌入り(they say )を聴く。カーさん・・・声質にはやや低めで落ち着いた感じで、ビリーホリデイみたいに、しゃくったような歌い方もするが、わりと甘えたような唄う口でもある。そのカーの歌も悪くないのだが、ここはやはり間奏に出てくる、「おお、このアルトは?」くらいにハッとする鮮烈なアルトの音色に痺れる。そう、チャーリー・マリアーノである。マリアーノは唄伴でも遠慮しない。ここぞ・・・という感じで自分の唄を出しまくる。特に50年代の彼は激情マリアーノだ(笑)Dscn2504
ちなみにこの「シマウマ」(Max Bennett)は、それはそれは高価なのである(笑)でも同じ音源(8曲)をどうしても・・・という場合は、12インチではMax Bennett Plays(BCP-50)でも聴かれます。この辺りのbethlehem盤はどれもいいです。僕はマリアーノ目当てで集めました。

konkenさん~
Peggie Lee/Black Coffee(UK brunswick:10inch)
何年か前に杜のお仲間でも小話題になり何度か登場した10インチ盤。今回、ジャケット・盤ともコンディションのいいものをkonkenさんが入手。う~ん、やっぱりいい音だ。米Decca10インチと続けて聴いてみると・・・ペギーの声の鮮烈さ、バック伴奏陣のクリアさなど・・・やはりUK10インチに軍配が上がるようだ。ついでに米Deccaの12インチ盤も聴くとこちらの方がすっきりとしたいい感じなので、どうやら米Decca10インチ盤にはカッティングレベル(低い)も含めてプレス品質の問題があるかもしれない。

リキさん~
ロスアンゼルス交響楽団/Candide(Decca) バーンステインOverture ミュージカル音楽を豪快に爽快に楽しく聴かせてくれる。それにしてもこういう壮大になるオーケストラはYoさん宅の大きなスピーカーで聴くと理屈ぬきに楽しめる。

こんな具合にあれこれと連想ゲームのように飛び出てくる皆さんのお勧め盤を楽しんでいると、いくら時間があっても足らないなあ・・・という気分になるわけである。そんな中、でもやはり「レーベル興味」の音比べも楽しみたい・・・というのが、Yoさんと僕の病気である(笑)
こういう音聴き会の前にYoさんとメールやりとりしていると、そんな「レーベル話題」に関して何かしらテーマらしきものが浮かび上がってくる。
今回は・・・United Artistsである。以前から僕らの集まりで「UAのステレオ盤とモノラル盤」の話題になることがけっこうあった。具体的には・・・UAのいくつかのタイトルにおいては~<どうやらステレオ盤の方がモノラル盤より音がいい>ということで、まあもっともそれは、Yoさんと僕がチラチラと主張していただけで(笑)検証タイトルがなかなか揃わないこともあって、実際の聴き比べまでは話しが進まなかった。(Yoさんはだいぶ前から同タイトルで両種揃えていたようだ:笑)
僕が最初に、そのUAのステレオ/モノラルの音質違いに気づいたのは、アイリーン・クラールのBand & Iの2種を聴き比べた時だ。アイリーン・クラールは僕にとっては数少ないヴォーカルもの集めたい人で、このUA盤は5年ほど前だったか、先にモノラル(赤ラベル)その半年ほど後にステレオ盤(青ラベル)と入手した。そうして後から手に入れたステレオ盤を聴いて・・・僕は驚いた。「音の抜けが全然違う!」
このBand & I はバックがビッグバンド風なので、まあ簡単に言うとたくさんの音がバックで鳴っている。その大きな響きの様が、赤ラベル(モノラル)では、詰まったような感じで、なにやら暑苦しい感じが濃厚だったのである。アイリーン・クラールの声そのものにそれほど差はないようだったが、パッと聴いた時に、クラール独特のあの爽やかさ、軽やかさみたいな感じがモノラル盤では味わえなかったとも言える。
ステレオ盤では、バックのバンドの音群がそれはもうパア~ッと抜けて・・・「抜け」というのは、僕の中ではけっこうキーワードなのだが・・・説明しづらいのだが、周波数的に高音が出ているとかいう意味合いだけでなく、その鳴り方の「空気間」というか、その場で(録音現場)鳴り響いた音響の「感じ」が、よりリアルに捉えられている・・・というような意味合いで「抜けがいい」と表わしているつもりではある。
Dscn2494 Yoさんは、3年ほど前だったか・・・konkenさんお勧めのMotor City Sceneのキング国内盤ステレオを聴いて、その演奏を気に入り即座にそのオリジナル盤(モノラル)を入手した。ところが・・・どうも「違うなあ」ということで、国内盤であってもあのステレオ盤の方が遥かにいい音だった・・・という冷静な判断を下したらしい。そうしていつの間にか・・・Motor City SceneのUAステレオ盤(青ラベル)を入手していたのである(笑)
僕もクラール盤で感じていたことなので、UAの赤/青についてはまったく同感だった。そんな経緯もあって、Yoさんとは何度か「UA~United Aritistsは青ラベルだよね」みたいな会話をしていたわけである。Dscn2495
僕もまたkonkenさんのキング盤「モーター・シティ・シーン」を何度か聴いて、実に欲しい1枚だったのだが、わりと最近、ステレオ盤を入手して、その良さに満足しているところだ。4曲どれも良いのだが、特にA面2曲目 minor on top で出てくるぶっとい音のベースソロが気に入っている。ベースはポール・チェンバース。彼のいかにも大きそうな音が・・・そうだな、プレスティッジほど硬くなく、コロムビアほど柔らかくなく、適度な芯と適度に豊かな拡がりを保ちながらしっかりと芯のある素晴らしい音色で捉えられている。UAの録音エンジニアはあまり話題にならないが、なかなか素晴らしい録音だと思う。そのA面2曲目~ minor on topを掛けてもらった。
う~ん・・・素晴らしい!艶のある音色で細かいことをやらずに余裕たっぷりに吹くサド・ジョーンズ、それからいつものことながら、小気味いいシングルートーンを適度なアクセントを付けながらサラッと弾くトミー・フラナガン、そしていつもよりちょっと抑えた感じの、つまり・・・全編ブラッシュでリズムを刻むエルヴィン・ジョーンズ、そしてさきほど言ったポール・チェンバースのでかい音像のベースがやや左チャンネル辺りから響き渡る。いやあ・・・素晴らしい!Yoさんのウーレイから鳴る「抜けのいいベース音」も快感である。
この1曲があまりに素晴らしくて・・・赤ラベル(モノラル盤)と聴き比べることなど忘れてしまった(笑)
Uajs_15003_j_2《UJASステレオ盤の写真2点~Yoさん提供》
その替わりにというわけでもないのだが、今回、意図して持ってきたレコードが、Undercurrent(UA)である。同じUAでも・・・この作品は「サックス吹きラベル」である。Uajs_15003_l
   これについては・・・Yoさんがステレオ盤(UJAS~、僕がモノラル盤(UJA~)を持っており、僕はわりと最近、このモノラル盤を聴いて・・・その音の感じにやや違和感を覚えていた。ひと言で言うと「強すぎる」という感じがあったのだ。Yoさんとはメールではある程度、音の様相までのやりとりをしたが、やはり・・・音は聴かねばダメだ(笑)
7人が集まった会ではあるが、同音源の聴き比べにはあまり興味のない方も多いと思われるので、僕はちょっと遠慮気味にではあるが「ちょっとこれを・・・」と言って、灰色一色の暗いジャケット~モノラル盤:Undercurrentを取り出した。「ああ、それ、やりまひょか:笑」微妙に関西弁のYoさんが応えた。このUndercurrent・・・1978年だったか国内盤を入手した以来、僕はもう大好きでそのキング盤(ステレオ)を聴きまくってきた。あまり良好とは思えない録音(ちょっと弱い感じ)の音ではあったが、しかし、それは繊細に絡み合う2人の音世界に合っている・・・とも思えた。

<UnderCurrent モノラル盤/ステレオ盤から my funny valentine を聴き比べした後、Yoさんとのメールやりとり>Dscn2497
basslcef~
UAモノの方は「優雅で繊細」とだけ思っていた二人のデュオに、相当な力強さを感じました。エヴァンスのピアノがかなり近い音で入っていて(音量レベルそのものも大きいような感じ)かなり強いタッチに聞こえます。ガッツあるデュオ・・・という感じにも聴けました。
(ステレオ盤を聴いてみての印象)
やっぱり、青のステレオ盤、ある種、柔らかさが気持ちよく、そしてギター、ピアノのタッチの強弱感もよく出ていてよかったですね。エヴァンス、ホールのデュオ音楽としては、モノ盤のピアノは強すぎで繊細さに欠けた感じがありますね。楽器が二つだけのためか、他のUA作品でのステレオ、モノラルほどの音の落差はなかったようですが。同じサックス吹きセンターラベルでも、違い(ステレオはグレイ、モノラルはやや黄色がかった感じ)があることが判りました

Yoさん~
エバンス&ホールの件、UA盤はステレオとUK盤のモノがあります。UKモノはbassclefさんのモノオリジと同じようにカッティングレベルも高く、力感がありますが、ちょっと厚ぼったい感じがします。ステレオはちょっとレベル低めですが、透明感と力感が上手くバランスして好きです。
(USモノ盤を聴いてみての印象)
Undercurrentモノ盤は音自体は悪く無いのですが、仰るとおり「強い」という感じがあのDuoには似合わないように感じました。私は元々「DuoなんだからStereoが良いに決まっている:笑」と言う事で買ったのです。同じところから2人出てくるのは嫌いなので・・・(笑)

《この「黄色がかったモノラルラベル」については・・・Yoさんからも「モノラルでも普通はステレオと同じグレイ(灰色)だと思います」との情報をいただいた。僕の手持ちモノラル盤のラベルは・・・どう見ても黄色っぽい。これはいったい・・・? ひょっとしたら非US盤かも?と心配になった僕は、ジャケット、ラベルを仔細にチェックしてみたが・・・カナダ盤、オーストラリア盤、アルゼンチン盤などという表記はどこにもなかった。よかった(笑)》

Dscn2499《追記》
「アンダーカレント」という作品~
ステレオとモノラルの音の質感のことばかり書いてしまったので、その音楽の中身についても少し触れたい。デュオという形態は・・・難しい。その2人の個性を好きなら、ある意味、その人の手癖・足癖までたっぷりと見られるわけで面白いとも言えるが、ジャズはやはりリズム(ビート感)だ!という気持ちで聴くと・・・確かにデュオというのはあまり面白くない場合もけっこうありそうだ。
さて、エヴァンスとホールのデュオ・・・これは・・・僕は本当に凄いと思う。もちろんその前に、本当に好きだ(笑) その「凄い」は突き詰めていくと・・・やはりこのレコードのA面1曲目~my funny valentine の凄さなのだ。ごく一般的に言うと・・・ピアノとギターというのは、本来(器楽的な面として)ジャズでは相性が悪い。ハーモニーを出し、メロディも出し・・・という機能面で似ているので、出した時のサウンドとして「カブル」(被る~音が重なってしまってハーモニーが引き立たないというか・・・そいういうニュアンスで相性が悪いと・・・いう面は確かにあると思う。
この「アンダーカレント」は、ある意味・・・そうした器楽上の困難さに、ビル・エヴァンスとジム・ホールという2人の名人(白人技巧派として)が挑戦した・・・そんなレコードだと僕は思う。そうしてそんな2人の何が凄いのか・・・というと、それは「鋭すぎるリズム感の交歓、いや、せめぎ合い」ということになるかと思う。 my funny valentineは、普通の場合・・・スローバラードで演奏される。しかし、このテイクは違う。1分=180~200ほどと思われる急速調である。いきなりエヴァンスの引くメロディからスタカートをバリバリと掛けてキビキビしたテキパキした硬質my funny valentineなのである。ドラムスとベースがいないので、たしかに・・・なにやら疲れる。というより、普通のジャズだったら、あるはずの「聞こえるビート」「聞こえるタイム」がないのだ!これは・・・困る(笑) 落ち着かない(笑)フワフワしちゃう(笑)
しかし・・・これは2人の音楽的チャレンジでもあるのだ。ビートとタイムは今、聴いている自分が発現すればいいのである。アタマの中でも、あるいは手を膝に叩いたスラッピングでも何でもいいので、カウントを取って聞こえてくるビートに合わせてみる・・・そうすると2人の演っている「音」というのが、いかに凄いか・・・判ってくる。
このmy funny valentine・・・聴いていてグッ、グッと突んのめっていくような感じを受けないだろうか。この音楽が好みでない方にしてみれば、セカセカした感じと言ってもいいかもしれない。それはおそらく・・・テンポが速いからだけでなく、2人のノリ方が当たり前に「乗る」4ビートではないからのだ。小節のアタマ(4拍の1拍目)を、あえて外したようなフレージング。2拍・4拍のノリをあえて外したようなリズムのコンピング(相手がソロを弾いている時にバックに差し入れる和音) 2人はそのコンピングをどうやら1拍半(1.5拍)
のタイミングで入れているようだが、それを意地になって連続してくる。そしてその「1.5拍」は強烈なシンコペーションにもなってくるのだ。
<2小節8拍を~2・2・2・2(2x4=8)と2拍づつ刻むのではなく、例えば、1.5・1.5・1.5・1.5+2(この最後の2拍を1.5+0.5の場合もある)と
刻む。いや・・・この考えを倍の4小節(16拍)まで引き伸ばして、その間、延々と1.5拍攻撃を続けている場面さえあるようだ>
う~ん・・・こりゃ、聴いててもホント、どこがどこやら判らなくなる(笑) しかし・・・この2人はこの曲のどこで何をどうやっても、コーラスの進行を寸分違(たが)えずに音楽を進めていく。確固たる信念を持って先鋭的なリズムのやりとりを進めていく2人の厳しい佇まいに、僕は思わず身を硬くしてしまう・・・それくらいこの my funny valentineは凄い・・・と思う。そんな2人の緊迫したやりとりが、ひと山越えると、今度は、ジム・ホールがその真骨頂を見せる。エヴァンスのピアノのソロの途中、ホールはギターで4ビートを演ってしまうのだ。いや、ジャズを4ビートで演るのは当たり前だが、そうじゃない。よくあるようにベースの替わりをギターの低音部シングルトーンで弾くのでもない。ギターのコード(和音)を弾きながらそのまま4ビートを表出してしまうのだ!「なんだ、これは!」最初にこのレコードを聴いた時、その「和音の4ビートカッティング」に僕はブッとンだ。これは・・・ちょっとギターを弾いたことのある人ならば・・・同様に感じるであろう、ある意味「ショッキングなサウンド」なのである。そしてもっと凄いと思うのは・・・ジム・ホールという人がその「和音の4ビートカッティング」の音量を、微妙に抑え加減にして、なんというか技巧的に凄いというだけでなく、その技術をちゃんと音楽的なものにしてしまっていることなのだ。このジム・ホールは・・・本当に凄い、いや、素晴らしい。なお、いつもの僕の妄想では(笑)この「4ビートカッティング」が鳴り始めた瞬間、ピアノのビル・エヴァンスは、グッと目を見開いた。そうしてほんの一瞬、間を取ったが、その素晴らしいアイディアとサウンドに嬉しくなり、「よしっ!それならばオレもグイグイいくぜ」と鋭いフレージングに切り込んでいったのだ・・・。
*この「アンダーカレント」については、コメントも頂いたyositakaさんがご自身のブログでも触れてくれた。「2人のデュオ」という観点で素晴らしい表現をされている。
http://blogs.yahoo.co.jp/izumibun/32543379.html
このアドレスでご覧ください。bassclefもコメントをしました。その補足として、この追記を載せました。

UA盤話題で何度となく言葉になった、その「抜けの良さ」は、アイリーン・クラール、Motor City Scean、Undercurrent以外のタイトルでも実感していた。それは、有名なアート・ファーマーのModern Art。2ヶ月ほど前だったか、いつも2人でレコード聴きをするrecooayajiさんのモノラル盤と僕のステレオ盤で聴き比べた際、モノラル盤では引っ込み気味だったベースとドラムスが、ステレオ盤では、スパ~ッと抜けたように、大きな響きになり、しかもそれはふやけた感じではなく、しっかりした音圧感を伴った鳴りに聞こえたのである。
通常の場合、モノラル盤志向のrecooyajiさんであっても、レーベルによってはステレオ盤の方がいいのかな?・・・という見識もお持ちだ。つまり・・・いい録音のステレオ盤には偏見はない(笑) 実際、同タイトル2種(Art)を聴き比べてみて、これだけ「ベースの出方、ドラムの鳴り方が違ってくると・・・これはやっぱりステレオ盤の方がいいね」という場面もあったりで近頃は、僕らの仲間でも「UAはステレオ」がちょっとしたキーワードともなっている(笑)

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2009年6月19日 (金)

<ジャズ雑感 第29回>同じレコードをとことん楽しむ。

いいミュージシャンたちの素晴らしい音楽が詰まっているレコードというものは、本当にありがたいものだが、レコードに入っている音がそのまま「真実」とは限らない。
あたり前のことだが「レコード」より前に、まず楽器を吹く(奏する)生身の人間がそこに存在しているわけで、いかにいい録音であろうと、レコードから出てくる音が、生身の人間がその場で吹いた生の音に敵(かな)う訳がない。だが、時として、そのペラペラのヴィニール板からは「本当らしさ」が聞こえてくることがある。そのミュージシャンが楽器を通して表現したかった何らかのatmosphere(雰囲気)が、そこいら中に満ち満ちてきて、そのミュージシャンが「生きていた時間」をくっきりと感じ取ることができたりするのだ。そんな素晴らしいレコード~その演奏が素晴らしいことはもちろんである~が確かにある。
だから、僕は控えめにこう言いたい。「レコードには・・・時々、真実が在る」と。だから、僕らはそんな素晴らしいレコード達を聴かないわけにはいかない(笑)
実際、聴いてみたいレコードは無限にあるのだ。
そうして好きなレコードが増えてくると・・・できればそれらを少しでも音のいい版(レコード)で聴きたくなるのも、ごく自然なことではないか~いや・・・これは、このところダブリのレコードが増えてきたことへの強引な言い訳なのだが(笑)
僕はいつもジャズを「人聴き」している。何十年もジャズを聴いてきてちっとも飽きないのは「おっ、このテナー、ちょっといいな」てな具合に、その人の演奏をもっと聴いてみたい・・・思わせてくれるミュージシャンが次々と表れてくるからだ。ただ、僕の場合はそうした興味が古い時代の方へ向かうことが多いようだ(笑)
本当にいろんなミュージシャンがいる。いろんな個性がある。
そうして僕にとって「そのミュージシャンの個性」というのは・・・やっぱり「音色」だ。特に管楽器の場合は「音色」がそのミュージシャンの個性を造る決定的要素だと思う。もちろん、フレーズ(のクセ)もその人の個性には違いないのだが、音色の方がもっと本能的というか、理屈ぬきにその人の身体から滲み出てきてしまった何か・・・僕は「音色」というものを、そんな感じに捉えている。
ジャズを好きになってある程度ジャズを聴いてきた方なら、たぶん「音色」というのを理屈でなく肌合いとして感じ取っているものだと思う。
例えば・・・ロリンズとコルトレーンは同じテナーという楽器を使うが、2人の音色は・・・どんなレコードで聴いても相当に違うので、間違えることはあまりないだろう。コルトレーンには「ああ、コルトレーンだ」と判る「あの独特の音色」が絶対にあって、彼の音色の質感は、レーベルが変わっても案外変わらないように思う。では、ソニー・ロリンズのテナーの音色の場合、どうだろうか? 僕としては、けっこう違いがあるように思う。
例えばロリンズの2~3m前で(ノーマイクで)実際に耳に聞こえるテナーの音色としては・・・僕は contemporaryでの音色の方が本当のロリンズのテナーの音に近いと思う。bluenoteでのロリンズはやけに音像が大きくてエコーも強すぎと感じるのだ。だがしかし、僕らが一般的にイメージしている「ロリンズのテナーの音」は、bluenoteのサウンドの方だろうなとも思う。
そんな風にレーベルやタイトルが違うと、ミュージシャンの音がその質感のとこで変わってしまうこともけっこうあるわけで、さらに言えば、そんなレコード製作上での違いだけではなくて、年代を経てミュージシャン自身が生み出す音色自体も微妙に変わっていくこともあるわけで・・・この辺まで話しを踏み込んでくると、ミュージシャンの「本当の音・音色」とは、一体どこに在るのだろう・・・と、悩んでしまう(笑) こんな具合に戸惑うこともあるのだが・・・要は自分が好きな(興味を持った)ミュージシャンについては、聴き手がそれぞれに自分の思っている「その人の音色のイメージ」を確立していくことが大事だと思うのだ。
例えば・・・ジョニー・グリフィンのテナーを<唾液がドロドロしているような粘る音>だと表現したとする。それは音を言葉に置き換えようということではなく、あくまで脳内で< ~ >と認識したそのサウンドのイメージを便宜上何らかのコトバにしただけのことで、たとえそのコトバが他の人にとっては的外れなものであってもいいのだし、要は本人が「それ」と判ればいいのだと思う。
ジャズが好きで、いろいろなレコードを聴いてくれば、自ずとそんな認識を無数に持っているわけで・・・そうしたイメージ認識があるからこそ、例えば知らないタイトルのレコードを聴いても「ああ・・・このテナー、グリフィンだ」てな具合に判るはずなのだ。そうした認識や自分の好みの傾向をしっかりと自覚した上で、好きなミュージシャンや好きなレコードの音がレーベルによっても微妙に変わる様を楽しむのも、なかなか悪くない。
さて、タイトルやレーベルでミュージシャンの音」が微妙に違うケースはしょっちゅうあるが、同じミュージシャンの同じ演奏であっても、レコードの版(ステレオ/モノラル、1st/2ndなど)によって、音の質感が違うこともあるのだ。もちろんテナーの音がアルトに聞こえる~なんてとこまで異なることはないと思うが、例えばテナーの場合だと、落ち着いた感じの音色がパリッと明るい感じになったり、ヴォーカルの場合では、声が太くなったり細くなったりと・・・けっこう違って聞こえるものなのだ。
もちろん、版によって音が違うからって、それが何なんだ? それよりいろんなタイトルを1枚でも多く聴こうよ~という考え方も充分に正論だとは思う。僕もそう思う(笑) そりゃそうだ・・・同じタイトルのレコードを2枚~3枚と持たなければいいのだから(笑) でもちょっとだけ、僕も含めて「同じレコードを2~3枚持っている」という人の弁護をするのならば、それは決して最初から聴き比べをしようと意図していたわけではなくて、そのレコード(演奏)を好きだから、なんとはなしに2~3種集まってしまった~ということだと思う。そうして聴いてみると「あれ、何か違うぞ?」と気づいてしまう・・・それが不幸の始まりだ(笑)そんな不幸を充分に自覚しながらも、今度は意図して(笑)いろいろ好きなレコードの聴き比べをしたくなってしまうのだ。
実際・・・好きなミュージシャンのこととなるとそんな微妙な違いがけっこう気になる。なぜなら・・・なによりもパッと聴いた時の雰囲気が変わってくるからなのだ。雰囲気が変わるのは、その音色や声の質感が微妙に違うからだと思うわけだが、特にヴォーカルにおいてはこの「雰囲気」は大きな要素だと思う。声の質感が違うと・・・その歌い手の年齢が平気で10歳くらい違ってしまうのだ(笑)

2009年5月30日~ Yoさん宅に、denpouさん、recooyajiさん、konkenさん、bassclef の5人が集まった。いやあ・・・聴いた、聴いた(笑)10:15から20:15までたっぷりの10時間。音から離れたのは晩飯休憩の時間だけ。いろいろ聴いたのだが、今回は「聴き比べ」の場面に絞って書いてみたい。[写真~全てYoさん提供。ハワード・マギー3点は、denpouさん提供]

<エセル・エニス/Lullabys For Losers>jubilee盤

Lp1021_jLp1021_l これ、2008年の白馬でパラゴンさんがかけた1枚。しっとりした唄い口が実にいい感じの女性ヴォーカルだ。Yoさん、この魅惑盤の1st、3rdをさっそく入手しており、この2種を掛けてみる。

1st盤~
エセルは黒人歌手としては「あっさり系」だと思うが、白人歌手に比べれば粘る感じももちろんあると思うし、この1stでは、肉厚な声に適度なねっとり感がとてもいい。jubileeレーベルってこんなにいい音だったのか(笑)
Jgm5024_j
Jgm5024_l_2そうして、3rd盤~
あれ?声がだいぶさっぱりしたぞ・・・肉厚というより爽やかな感じになり、なんだかエセルさんが10才くらい若くなったように聞こえる。こちらの方がもう少し美人になったような気もしないではない(笑)Yoさん、これも悪くないよ~と嬉しそう。
僕の好みは、厚めの1st盤だったが、2nd盤を聴いた後だと、そういえば、1stの方は、声がちょっと「厚め」になりすぎているかもしれない・・・爽やかな感じの方がエセルの本当の声質に近いかもしれない~とも思えてくる。「唄」の好きな方には、声の感じのちょっとした違い~というのは大事なことだろう。

Howard_mcghee_stereo_001_2 <ハワード・マギー/Dusty Blue>bethlehem盤

この渋いレコードをなぜか、recooyajiさんとdenpouさんが、揃って持ってきていた。そしてうまい具合に、reocoyjさんはモノラル盤、denpouさんは・・・ステレオ盤青ラベル。
こりゃちょうどいい。さっそく聴き比べだ(笑)

Howard_mcghee_stereo_003ステレオ盤~うん、いい!パリッと輝く感じがあってメリハリの効いた音だ。ステレオになっていてもどの楽器にも音圧感・・・というか実在感があり、薄い感じはしない、とてもいいステレオ録音だと思う。ピアノのタッチの強弱感もいい。ピアノはトミー・フラナガンだ。
モノラル盤~こちらもいい。ベースの音がぐんと厚くなって、管部隊全体の重心が下がってくる。分厚い感じは・・・やはりモノラルの方がよく出ている。

Howard_mcghee_stereo_002_2  両方ともとてもいいことは間違いないのだが、僕の好みでは、やはり「ステレオ」の方が聴いていて楽しかった。マギーのトランペットに加えて管が2人(テナー~ローランド・アレキサンダー、バリトン~ペッパー・アダムス)入っているので、テーマの合わせ部分で皆がパア~ッと吹く時の音圧感と拡がり・・・これが気持ちいい(笑)そんな場面では、やはりステレオ盤の方に軍配が上がるようだ。

ところで、ベツレヘムのステレオ録音というと・・・ちょっと意外な感じがする。ちょっと遅めにステレオ録音を開始したのかもしれない。そういえば僕もあの有名な「レフト・アローン」を聴いた時に、それが「ステレオ録音」だったことに驚いたことがある。
僕の聴いた「レフト・アローン」は日本コロムビアのベツレヘム・アンソロジーものだったが、それでも元録音の素性の良さを充分に窺える音の良さだった。「ベツレヘムのステレオ録音」~これは侮れないね・・・と皆の意見が一致した。これからは「青ラベルのベツレヘム」にも要注意だ(笑)
それにしてもこんないいレコードを僕はまだ未入手だったとは・・・。
このレコードの音がいい~と感じたのは、以前にrecooyajiさん宅でモノラル盤を聴かせてもらった時だ。特に感じたのはベースの音がいいことだ。そのベース弾きは・・・Ronald Carterと表記されていた。ロナルドで・・・カーター? うん、ロン・カーターのことじゃないか!そういえば、時々、ロン・カーターっぽいフレーズが出てくる。しかし・・・そのベース音の重さ・強さは、僕らが知っているロン・カーターとはだいぶ違う。録音年は1961年6月。ロン・カーターの録音としてはかなりの初期だと思う。
この「ロン・カーター談義」絡みで、僕の感覚で言うと・・・というのは・・・「ロン・カーターの太い音」と言っても、やはりそれはミルト・ヒントンやジョージ・デュビュビエ、それからウイルバー・ウエアというタイプとは違うはずだ(そう捉えている)そんな「僕のロン・カーター観」でこのベツレヘム盤両者を比べると・・・ステレオ盤で聴かれるベース音がちょうどいい重さなのだ。

Rlp420_j そしてこのことは、このちょっと後に聴いたジョニー・グリフィンの「ケリー・ダンサーズ」ステレオ盤/モノラル盤~ベース奏者はもちろんロン・カーター~の聴き比べでも同じことが言えるのだ。
このグリフィン盤(録音は1962年1月)でのロン・カーターもとてもいい。ベースをピチカットする際の強さ・速さがあるようで、一音一音に「切れ」がある(というのは、後年のロン・カーターは、そのピチカットに切れがないというか、ちょっともったりした感じがあり、Rlp9420_lその結果、ビート感も緩い感じになっているように思うので)
そしてKelly Dancersのステレオ盤/モノラル盤~この比較でもやはり一般に音が太くなるモノラル盤では、カーターのベース音がたくましくなりすぎて、僕の思うロン・カーターのベース音というのは・・・すっきりしたそれでも充分に重くビートの効いたステレオ盤の方になるのだ。
もっともそれは、僕の思う「カーターのベース音イメージ」Rlp420_l_2であって・・・出てくるサウンドだけに興味を移すのなら、あくまで「強く重く」出てくるモノラル盤でのロン・カーターを楽しむ・・・というのも全く可能なわけで(笑)その辺のことを判った上で・・・recooyajiさんがズバリこう言った。
「(ロン・カーターの本来の音がどうであれ)そんなの僕には関係ない(笑)」
うん、そういう聴き方もありだったか(笑) でも・・・それが「レコード」なんだ。レコードの楽しみ方はまったく各人の自由なのだ。

ついでにもう1枚~初期ロン・カーターもので、いい感じのベース音が聴かれるレコードがある。
ベニー・ゴルソンのFree(cadet)である。ビクター国内盤(ステレオ)で聴いているが、これも元録音の素性の良さを感じる。そしたらこのCadet盤~録音はVan Gelderであった(笑)Freeの方は1962年12月とだいぶ進んではいる。ロン・カーターがマイルスのバンドに入ったのは1963年3月(seven steps to heaven)頃かな。ちなみに、この「Freeのピアノもトミー・フラナガン。まったく・・・ちょっといいな・・・と思うとたいていピアノはトミフラなのである。凄いピアニストだな。
私見では、ロン・カーターが一番いいのはマイルスバンドの初期くらいまでだと思う。レコードに残ったマイルスのcolumbia音源はどれもベース音が小さめで、多少は録音の関係もあるかと思うが、やはりカーター自身が弦を弾き込む時の一音一音そのものが(初期に比べれば)やや弱めになっているかと思う。だからこそ・・・僕はマイルス以前の初期ロン・カーターを好むのかもしれない。

Mgn1001_flat_j <ベン・ウエブスターのtenderly4種>
(Cunsummate~1stと2nd、Tenor Saxes、Our Best)
これはある意味、驚愕の聴き比べだった!
tenderlyを収録してあるのは、まずオリジナルのConsummate。Mgn1001_flat_lそれからオムニバスであるTenor Saxes~この2種については2年ほど前だったか、この夢レコでも記事にしたことがある。
今回、Yoさんが再びこの題材を持ち出したのには、もちろん正当な理由(笑)がある。Yoさんはこのレコード・・・1st、2nd、Tenor Saxesの3種に加えて、もうひとつのオムニバス・・・とも言うべき、Norgranレーベルのアンソロジー的な Our Best というLPを入手していて、そこにも入っていたtenderlyを聴いたら、それも相当にいい音で・・・というわけで、じゃあそのOur Bestバージョンも含めて、ついでにConsummateの1stと2ndもあるので、こりゃあ、ウエブスターの快演 tenderlyの4種の聴き比べだあ!と相成りました(笑)
Mgn1001_flat_2 
Mgn1001_grooveguard《1st盤と2nd盤~これは微妙な違い。表ジャケも裏ジャケも全く同じ。黄色・大トランペットのセンターラベルも同じ。しかし・・・盤の重さが違った。やはり1stの方がいくらか重かった。 そして1stはフラットディスク盤(写真上)、2ndはグルーヴガード盤(写真下)ということらしい。これはYoさんの素晴らしい発見だ。

Yoさん・・・ジャケットから出した4枚の盤をなにやら弄(まさぐ)っている。そして「ウエブスターのtenderly・・・ちょっとこの4枚で聴いてみて」というわけで、そうか・・・4種のどの盤のバージョンは事前に知らせずに、聴いた音の感じで順序(あくまで、個人の好みの幅の中での順序ですが)をつけてもらおう~という魂胆だな(笑)
僕はTenor Saxesだけ持っていて、その「音の感じ」を好きだったので、この2番目はすぐに「良い!」と感じた。 Mgn1034_j_2
こうした「聴き比べ」では1曲全部を聴くと長いので、まあ「音の質感」だけを聞き比べたい場合は、たいていは曲の途中で針を上げる。せっかちな僕はその方がいい(笑)同じ曲の同じ部分を(例えばサックスが高い方のフレーズで「プア~ッ」と音を伸ばした場面とか、ドラム奏者がシンバルを「シャア~ン」と入れた場面とか・・・そんな特徴的な一場面を覚えておいて・・・そこを比較するのが、僕の「聴き比べ」のやり方だ。konkenさんとはいろんな話しをするのだが、彼などは「聴き比べ」であっても、その1曲を通して聴いてみて全体からの印象~ということで比較してみたいようだ。そういう「全体」からの印象比較も、その作品(1曲)をちゃんと味わいたい・・・という意味では、正しいかもしれない。

そんな具合に4つのtenderlyを聴いてみて・・・この時点では、どれがどの盤のものかは明かされてない。Yoさんはこういう仕掛けが好きなのだ(笑)(3の盤質がやや悪かったことは判断材料には入れずに聴いても)1と3が同質、2と4が同質と聴いた。大雑把に言うと、1と3は「丸みを帯びたマイルドな味わいのベン・ウエブスター」であり、2と4は、「もう少しキリッとした、(1と3に比べれば)やや硬質のウエブスター」になっていたように思う。
Mgn1021_j実際、こうして続けて比べて聴いてみると・・・その質感というものは、かなり違うのだ。そうして、僕の好みは(このウエブスターのtenderlyについての)全体に抜けのいい、2と4のバージョンだった。Mgn1021_l
驚いたのは・・・4番目に流れたその音の鮮度感の高さである。ピアノのイントロからして、はっきりと「クリアー」な気配が漂う。大げさでなく「はっ!」とした。2番を「良い」と感じたその質感が増して、サックスの音色 にもう少し、深みと輝かしさが加わってきたようなのだ。

《かけた順番は・・・Consummate2nd~Tenor Saxes~Consummate1st~Our Bestであった》
「どれが好きですか?」というYoさんの問いに、僕は「ダントツに4番目」と答えるしかない。後は・・・各々の好みである。そうしてレコードの番号順から判断すると、発売順は、Consummate~Our Best~Tenor Saxesなので、やはり後者2つは、何らかのマスタリングが施されているはずだが、そのマスタリングが、絶妙な具合に出来上がっている~というようなことを仰る。ただそれは「良い・悪い」レベルの話しではなく・・・単に「違いがある」ということであって、Yoさんもその辺りは熟知しており、どちらが良いというような決め付けはもちろんしない。
denpouさんは「僕の(にとっての)ウエブスターは・・・マイルドな方かな・・・」とつぶやく。それも充分に判る・・・最後は好みなのだ。

こうした「聴き比べ」自体・・・あまり興味がない方も多いかと思う。冒頭に言い訳めいたことも書きましたが、まあこの辺は、bassclefとYoさんの病気ということでお許しください(笑)

この日の集まり・・・もちろん聴き比べばかりで10時間過ごしたわけじゃない(笑) いろいろ聴いたレコードのことはまた別の機会にお知らせしたい。
帰り際・・・マリガンmeetsモンクのジャケットが目に入った。3種(モノラル青(2人の写真:有り/無し、ステレオ黒)が並んでいる。
「なんでこんなに?」konkenさんが尋ねると・・・Yoさん、ひと言「このレコード、好きだから」(笑)

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2008年7月31日 (木)

<ジャズ回想 第15回>暑い日にYoさん宅に集まった(その1)

リュウゼツランを観る会という名の音聴き会~

A702 今回のYoさん宅集まりは、なんと言っても50年に一度の開花と言われる「リュウゼツラン」を観る会~といういこともあり、到着後、まず皆がその面妖なる植物の下に集まる。根っこの部分には、長くて先の尖った「葉っぱ」~サボテンのように肉厚でしかもその葉っぱの両側には棘(とげ)がある~が何本も放射状に拡がっている。Yoさんによると、どうやら、この尖った凶暴な感じを指して「龍舌蘭」と呼んでいるとのことだ。その根っこ部分のの中央から直径10cmほどの太い茎が天に向かって伸びている。高さは4mほどか。その茎の一番高いほうに、クルクルと蔓(つる)状の小さい茎がが7~8本くらい飛び出している。
その先端がどうやら「花」(小さい円筒系の感じ)の部分らしい。なんとも不思議な姿のリュウゼツランである。
午前中から軽く30度はあるかという熱さでもあり、戸外にそう長くは居られない。記念写真も撮ったので、「じゃあ・・・そろそろ」ということで、いつもの「音聴き会」に突入する我々である。
《上写真はYoさん提供~7月上旬のリュウゼツラン。訪問時にはもう少し高くなっていたかもしれない。どことなく中国大陸を感じさせる植物だ》

Yoさん、リキさん、recooyajiさん、konkenさん、それに僕:bassclefの5人がソファに落ち着く。Musashi no Papaさんはやや遅れるが、絶対に参加したいとのこと。みんな気合充分なのだ(笑)
Bcp6010_j_2  まず、Yoさんがお気に入りの歌い手~オードリー・モリスのbethlehem盤を選ぶ。僕は、モノラル・カートリッジを含む4種のカートリッジで、出てくる音にどんな具合 に違いがあるかな?・・・という興味があったので、ちょっとお願いして、同じ曲を4種で聴き比べさせててもらうことにした。
モリスは落ち着いた声質(こえしつ)で、決して声を張り上げない唄い方の、とても品のある歌い手である。いつも思うのだが、ヴォーカリストへの好みというのは・・・本当に人それぞれだが、その理由は、最後は「声質」しかないと思う。その人の声が、好きなのか嫌いなのか?それは・・・純粋に感覚的、生理的なものだろう。「声」に対する(それぞれの方の)許容範囲があって、次に「巧さ」に対する評価~評価と言ってもこれも「好みの唄い方」かどうか・・・という類(たぐい)のものだと思う~そんなものから、さまざまな歌手への好みが決まってくるように思う。
当たり前のことだが、カートリッジを変えると・・・その声質(こえしつ)が微妙に違って聞こえてくる。Bcp6010_2
どう違ってくるのか・・・表現するのが難しいが、大雑把に言えば~
「声質~声が細めなのか、あるいはやや太めか」や「声の大きさ~声の出方とバックの楽器の出方のバランス」という辺りにおいて、わずかな違いが現れる・・・という感じかな。
《モリスの写真2点はYoさん提供》

Yoさんが昨夏に導入したエミネントの2種は(モノラル、ステレオ)同じ肌触りの音質だったが、ソロ(モノラル)の方が、やや声が大きく聞こえて、少しだけ声が丸くて太いかな・・・という気がした。ジュビリーとSPUでも同様にSPUの方が、声が若干太くなったように聞こえたように思う。僕の場合は、どうやら人間の声の変化に対しては、大雑把にしか感じ取れないようだ。楽器の音だともう少し判りやすい。ジュビリー、SPUの次に、エミネントのモノラルで掛けた時・・・(僕の耳には)バックの楽器がすっきりして、明らかにいい音になったように聞こえた。こざっぱりした・・・というか。それがベツレヘムの品格みたいなものに合うようにも聞こえて、僕には新鮮だった。
カートリッジ別での聴き比べをする際・・・こんな風に変わってしまうこと自体を楽しむ~ということもできるが、それはたぶん、僕のようなヴォーカル初心者のノリだろう。ヴォーカルの「聴き比べ」としては・・・もっとモリスの声の質感の方に拘った聴き方もできるはずだ。その「拘り」とは・・・おそらくその歌い手への愛情が強い人ほど「微妙な質感の違い」が気になってしまう・・・という類(たぐい)のものだと思う。要は(この場合)オードリー・モリスという人をどういう声質の歌い手だと捉えているか・・・どんな声質で聴きたいのか・・・どの声が好きなのか」という(感じ方の)基準みたいなものをしっかり持つことだと思う。そうであれば「この歌手にはこのカートリッジが合う」という判断もできるだろう。
正直に言うと、僕はヴォーカルの声質(への感性)については・・・今ひとつ定見がない(笑)だから今回の4種カートリッジ聴き比べで、その声質が微妙に変わると・・・オロオロと迷うばかりだった(笑)やはりどこまでいっても僕は「ヴォーカル初心者」のようだ(笑)

Cimg3803_2そうこうしている内にPapaさんが到着した。事情で早く帰らねばならない Papaさんの手持ち盤から聴くことになった。
まず、デクスタ ー・ゴードンの「煙草の煙ジャケ」が出てきた。Dootone盤~ Hot&Cool だ。Cimg3804その黒い盤面を見て、recooyajiさんが
「red vinylが・・・」とつぶやく。「えっ?」とPapaさん。Yoさんも、そのデクスターには、たしか「赤盤」が出ていたはずだ~と付け加える。それを聞いて・・・Papaさんの顔がどんよりと曇った(笑)
「黒盤でも充分にオリジナルですよ」という僕の言葉にも「いや、もし黒と赤が同時だとしても、赤が限定で出ている以上は、それがオリジナルです!」と、早くも新たなファイトを燃やすPapaさんである(笑)Cimg3805
cry me a river を聴く。堅めの音色で吹き倒すデクスター。時々、与太ったようにもたれたノリになる辺りが、妙にかっこいい(笑)
1955年のデクスターは、このDootone盤とベツレヘム盤くらいしかないはずで、この後、しばらく(レコード上は)ブランクがある。


Cimg3816_2 《上写真~papaさん所蔵のModern Art(intro)》 
続いて、出ました! intro盤のペッパーが!見ると、ジャケットも盤もピカピカだ。う~ん・・・こりゃ凄い。茶色のセンターラベルに格調高いロゴのINTRO文字が誇らしげだ(笑)

この「モダン・アート」を僕はもう好きで好きで、東芝盤で聴き倒してきたが、オリジナルのintro盤・・・果たして音の方は・・・?
ペッパーの絶品バラード~ bewitchedを聴く・・・う~ん、参りました!Cimg3814_2
なんだ、このアルトの音色はっ! 一聴、大人しめのアルトなのだが・・・これは凄い。なんというか・・・ピシッとした「芯」を感じさせるアルトの音色なのだ! そしてそれは・・・ペッパーの心の奥底に秘めていた情熱が、抑えても抑えても、沸々(ふつふつ)と湧き出てくるようなあの吹き方・・・そして、そういう吹き方であることが伝わってくるような音であった。なんなんだ・・・この存在感は! いやあ・・・やっぱり「イントロのペッパー」は素晴らしいレコードだ。世のコレクター諸氏があれだけ「ペッパーのintro盤」に情熱を賭けるのも、これは無理からぬことだと実感させられた。

Cimg3806 もうひとつ、ペッパーで行こう! Marty Paich Quartet(Tampa)だ。こちらは当然のごとく「赤盤」が出てくる。
黒盤(ジャケットが黄色でラベルがピンク色)の方はリキさん宅で聴かせてもらったことがあるが、あの黒盤も実にいい音だった。
たまたまYoさんがこの「マーティー・ペイチ・カルテット」の日本バップ復刻盤を持っていたので、並べてみる。バップ盤も見事な出来映えである。盤の重さもあるし、センターラベルの赤色も、ほとんどオリジナルの色具合に近い。そのセンターラベルに1箇所だけ違いを発見した。下のラベルの写真2点を見比べてみてください。「溝」の有無だけでなく、オリジナル盤にはある「ハシゴ柵」の模様が復刻バップ盤にはないのである。この違いは・・・僕は製作者の良心からだと推測している。Cimg3811_3Vap_tp28_3   


《左側~Papaさん提供、右側~Yoさん提供》
over the rainbowを掛ける。この赤盤オリジナルも、品格のある素晴らしい音で鳴った。Papaさんも嬉しそうだ。
このover the rainbow・・・もちろんペッパーの名演なのだが、実はちょっと面白い場面があるのだ。
このover the rainbowには、ちょっと変わったアレンジが施されており、ペイチのピアノがイントロとして先導フレーズ~なにやらバロック風の下降するフレーズ~を1小節だけ弾く。すると、ペッパーがあの有名なテーマを吹き始めるのだ。しかし、このバロック風フレーズがちょっとクセモノで、イントロとして1小節だけで終わらずに、アルトが主メロディに入ってもまだ1小節ほどそのバロック風のバッキングを続けるアレンジなのだ。それが・・・「判りにくい」(もう1小節そのパターンが続いていくかのように思える)
そしてたぶんそのためだろう・・・主メロディの2回目の出だし・・・ここでもイントロと同じ「バロック」をピアノが弾くのだが、そのピアノのフレーズが1小節を終えても、ペッパーが入ってこないのだ。ピアノはそのバロック風フレーズを続けているので、パッと聴いても「間違い」には聞こえない。聞こえないが・・・僕はこれはペッパーの勘違いだと思う。その証拠に「アタマの位置」からは、ちゃんとベースも入ってくるのだ。そのベースを聴いて「アッ、まずい!」とペッパーは思ったはずだ。しかし・・・出遅れたからには今さらメロディなんか吹いてたまるか・・・てなもんで、なにやらフワフワとしたフレーズ~まるで木の葉が風に舞っているような~を吹きはじめると・・・さすがはペッパー! それがちゃんとしたアドリブになってしまうのだ(笑) そのままサビ(ピアノのメロディの間にオブリガートを入れるペッパー)そしてエンド・テーマに入り短いコーダが付いて・・・その1コーラスだけで、実にあっさりと終わってしまう。このover the rainbowは・・・短いがしかし気の利いたエッセイのような、そんな逸品(いっぴん)だと思う。 そういえば、ペッパーには「もうひとつのover the rainbow」がある。ショーティー・ロジャーズとのcapitolCimg3812盤なのだが、それについてはまた別の機会に(笑)

余談だが・・・このMarty Paich Quartet の裏ジャケットを眺めていたら、「おっ!」という小発見があった。engineerに、Val Valentineと表記してあるではないか! このValentineという人~僕などは60年代に入ってからのVerveの中心的エンジニア氏という認識しかなかった。そのValentine氏が、まさかこんな早い時期(1956年)の西海岸のレコードを録音していたとは・・・そして、このTampa盤のMarty Paich Quartet~僕は(1956年としては)なかなかの音だと感じたのだ。
Cimg3810_2  Valentineという人は、Verveであれだけ多くの作品を録音しているのだから、もちろん名エンジニアのはずだが、これまで僕は、Verveでの彼の録音を特に素晴らしいとは感じていなかった。だからこのtampa盤のペッパーの音を聴いて「意外」な感じを受けたのだ。う~ん・・・これは、若かった感性の鋭いValentineだからいい音なのか、あるいは西海岸だからいい音なのか・・・加えて、Valentine氏にも西海岸時代があったということと、そしてValentineとWally Heider(西海岸の名エンジニア)の関係は? この辺り・・・まったく興味は尽きない。
《デクスター・ゴードン(dootone)とペッパー(intro, tampa)の写真~すべてPapaさん提供》

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