ウイルバー・ウエアのこと(その2)Wilbur Ware の discography
昨年8月頃~夢見るレコード<やったあレコ 第3回> After Hours Jazz(Epic) ああ、エルヴィン!~の記事中に、エルヴィン・ジョーンズ参加作品のディスコグラフィ(1959年くらいまでの)みたいなものを載せたことがある。あのリストは、主に(コルトレーンとの共演以外の)「ハードバップのエルヴィン」という興味から、1959年くらいまでの参加作品をまとめたものだった。
僕は一人のミュージシャンを好きになると、しばらくの間、そこに集中してしまう(笑)前回の<夢レコ>でフューチャーしたウイルバー・ウエアについても、一時期あれこれと調べてみたことがある。ちょうどその頃、発売され始めたリヴァーサイドのビクター盤裏ジャケットに載っているウエアの参加作品紹介などを参考にして、ウエアのディスコグラフィを作ったりしていた。
しかし、そのビクターの国内盤発売がひと段落してしまうと・・・ウエア参加盤は、なかなか見つからなくなった。もうないのかな・・・と思ってる頃に、米ファンタジー社からOJCシリーズが発売されるようになって、それまで全く知らなかったリヴァーサイド盤やプレスティッジ盤が次々と発売されるようになった。そしてそれらの中に、ウイルバー・ウエアの参加作品がけっこうあったのである。それらも含めて、とりあえず僕が知っているウエアのレコードをまとめてみた。
そんなわけで、今回は、ウイルバー・ウエアのディスコグラフィを載せたい。もちろん未完なのだが、とりあえず録音年と月の順番で並べてみる。
その後で、思いつくままにいくつかの盤について、あれこれと書いてみたいと思う。
*もちろんウイルバー・ウエアの参加作品は、他にもまだあるはずである。ご存知の方は、ぜひコメント欄にてお知らせください。
1. Johnny Griffin/J.G.(cadet) 1956年
2. Art Blakey & Jazz Messengers/The Cool Voice Of Rita Rey
(phillips) 1956年6月(2曲のみ)
3. Art Blakey & Jazz Messengers/Originally(columbia) 1956年
(2曲のみ)
4. Ernie Henry/Presenting(riverside) 1956年 8月
5. Matthew Gee/Jazz By Gee!(riverside) 1956年 8月(A面5曲)
6. J.R.Monterose/~(bluenote) 1956年10月
7. Zoot Sims/Zoot(riverside) 1956年10月
8. Lee Morgan/Indeed(bluenote) 1956年10月
9. Kenny Drew/This Is New(riverside) 1957年 3月
10. Hank Mobley/Hank(bluenote) 1957年 4月
11. Herbie Manne/The Jazz We Heard Last Summer(savoy)
1957年 5月(B面2曲)
12. Thelonious Monk/Monk's Music(riverside) 1957年 6月
13. (various artisits) /Blues For Tommorrow(riverside) 1957年 6月
(1曲のみ)
14. Thelonious Monk/Monk With Coltrane(riverside) 1957年春
(とされているが、どうやら1957年夏の録音のようだ)
15. Sonny Clark/Dial S For Sonny(bluenote) 1957年 7月
16. Jenkins, Jordan & Timmons(new jazz) 1957年7月
17. Thelonious Monk/Monk Meets Mulligan(riverside) 1957年 8月
(オルタネイト・テイク集のLPも出た)
18. Ernie Henry/Seven Standars and Blues(riversied) 1957年 9月
19. Kenny Drew/Pal Joey(riverside) 1957年10月
20. Kenny Drew/I Love Jerome Kern(riverside) 1957年
21. Kenny Drew/Harry Warren Show Case(judson) 1957年
22. Kenny Drew/Harold Aren Show Case(judson) 1957年
23. Dick Johnson/Most Likely(riverside) 1957年10月
24. Wilbur Ware/Chicago Sound(riverside) 1957年10月・11月
25. Sonny Rollins/A Night At The Village Vanguard(bluenote)
1957年11月
26. Sonny Rollins/More From The Village Vanguard(bluenote)
1957年11月
27. Kenny Dorham/2 Horns, 2 Rhythm(riverside) 1957年12月
28. Toots Thielmans/Man Bites Harmonica(riverside) 1957年12月
29. Toots Thielmans/Time Out For Toots(decca) 1958年 1月
*上記のデッカ盤~ベースはダグ・ワトキンスでした。
30. Johnny Griffin/Way Out(riverside) 1958年 2月
31. Johnny Griffin/~ Sextet(riverside) 1958年2月
32. Blue Mitchell/Big Six (riverside) 1958年7月
33. Tina Brooks/The Waiting Game(bluenote) 1961年 3月
(モザイクのティナ・ブルックスboxセットが初出自。その後CDで発売)
34. Clifford Jordan/Starting Time(jazzland) 1961年 6月
35. Grant Green/Remembering(bluenote) 1961年 8月
36. Charles Moffett/The Gift (savoy) 1969年
37. Paul Jeffrey/Family (mainstream) 1969年
38. Clifford Jordan/In The World (strata east) 1969年
39. Cecil Payne/Zodiac (strata east) 1969年・1970年
40. Walt Dickerson/Tell Us Only Beatiful Things(whynot) 1975年
《以下、追加》
41. Music Minus One:Alto Sax,Jazz Rhythm Records(MMO)
42. RAVE/LPS 502/SAVINA/SAVINA AND ALL THAT GENTLE JAZZ
(未確認)
このリストの中で持ってないのは、34.36.38.である。
34のRememberingは、1980年頃にキングの世界初登場シリーズだったかで出たことがあるのだが、つい買いそびれた。
たぶん・・・グラント・グリーンの米capitolのCD(タイトル不明)この音源が入っているかと思う。
・・・さて、ウイルバー・ウエア。
1956年のargoのジョニー・グリフィン。このJ.G.のオリジナル盤は・・・ジャケットが「カンガルー・スピリット方式」で有名なのである。
~このJ.G.については、リンクしてある NOTさんのブログ these music suit me well に詳しい。
僕の手持ちは、1975年のビクター盤で、もちろん、ジャケットは左右に分かれない(笑) ウエアの(僕が知っている限り)初録音らしいが、リーダーがジョニー・グリフィンなので、さすがのウエアもちょっと遠慮しているのか・・・1年後のもう本当に自由自在に飛び跳ねているかのような感じに比べると、案外におとなしく弾いているように聞こえる。ソロ場面もほとんどない。
それと、どの曲も3分程度と短く、あっさりと1曲が終わってしまうので、「ゴリゴリのハードバップ」を期待すると、ちょっと違うようだ。いつもはもっと豪快に演っているシカゴ一派が、今日はちょっとヨソイキの演奏をしました・・・という感じだったのかもしれない。しかしながら、A面4曲目に riff-raff というウエアのオリジナル曲が1曲だけ配置されており、この曲ではウエアの「ウエア節」がたっぷりと聴ける。グリフィンのテナーは、どの曲においても、もうすでに・・・「グリフィン」である(笑)
それにしても、こうやって並べてみると・・・ウイルバー・ウエアの参加レコードは、やはりリバーサイドに圧倒的に多いようだ。
ケニー・ドリューとのjudson2枚も含めると、20枚もある。そのriverside音源のほとんどはOJC盤で入手したが、なぜだかOJCでは発売されなかったタイトルもいくつかあった。ケニー・ドリューとの諸作(19~22番)である。
19番については、ビクター国内盤CDでガマンしたが、他の3タイトルは、長い間どこからも出なかったはずだ。
うれしかったのは・・・20番の I love Jerome Kernである。これはWAVEシリーズの第1回発売タイトルに含まれていて、僕は雑誌の広告で見たような記憶があった。しかし、WAVEの復刻シリーズもこの頃はあまり認知されていなかったようで、地方都市では販売されていなかった(笑)
そうこうしているうちに・・・浜松の中古レコード店で、この I Love Jerome Kern を発見したのだった。
ついでに言うと・・・前述のJudsonの2枚も、OJCではついに出ずじまいで、このWAVEシリーズのだいぶ後の方の回で~しかも一度、発売延期になった後にようやく~復刻されたのだった。この2枚は3000円もしたが、ウエア聴きたさに・・・いや、もちろんジャケットの魅力もあり(笑)すぐに入手した。ドリューとのデュオ演奏ということで、ウエアのベースが張り切ってピアノに絡んでくるような展開を大いに期待したのだが・・・ベースの録音自体も「遠い音」だし、演奏としてもウエアは全くピアノに「絡まない」ことが判り、ちょっとがっかりした(笑) もっともそんなことは、judsonというレーベルがムードミュージック系のコンセプトらしいことを考えれば~それはジャケットのムード路線を見れば判ることだ~大いに想像がつくことだったのかもしれない。それでも・・・裏ジャケには Kenny Drew at the piano の下に小さい字で accompanied by Wilbur Ware とクレジットされている。

《この写真の2枚は、judsonのオリジナル盤。どうしても欲しくて2年ほど前に入手した。ずしりとくる盤の重さが・・・うれしい。
しかしながら、内容に期待してはいけない:笑》
僕にとっては「やったあレコ」と呼べそうな珍盤がある。
それが40番にリストした Jazz Rhythm Records:Music Minus One/Alto Sax である。
特殊なものなのであえて40番目とした。何が特殊かというと・・・このレコードは、通称、MMO(ミュージック・マイナス・ワン)と呼ばれる(たぶん)ジャズ演奏の練習用のレコードなのだ。この盤は「アルト編」で、いくつかのスタンダード曲を、アルトで吹きやすいキーでやっている。
ただ・・・あくまで「練習用」なので、最初のテーマ部分でも~当然ここでメロディが出てくるはずの箇所でも~ピアノ、ベース、ドラムは、バッキングだけやっていて、テーマ部分は誰も吹いていないのである。その空白のメロディを「あなたが吹きなさい」という趣向のレコードなのだ(笑)
だから、もしMMOということを知らずに、このレコードを聴いていると・・・かなりお間抜けな感じを受けるだろう(笑)
ちなみに Don Abney(p)、Mundell Lowe(g)、Bobby Donaldson(ds)、それからWilbur Ware(b)という
カルテットではある。推定だが録音は1961年頃か?
おもしろいのは・・・いくつかの曲ではベースにソロスペースが与えられており、ウエアは、普通にべースソロをとっているのだ。
このレコードは、なかなかの珍盤だろう。裏ジャケットを見ると、他にも「テナー編」や「トロンボーン編」、それに「トランペット」、「ギター」に「ピアノ」、それから「ドラム」や「ヴィブラフォン」の写真まである。僕はアルト編しか持ってないが、おそらく他の盤のいくつかには、共通のリズムセクションが使われていたはずだ。ウエアが参加しているのなら、ぜひ聴いてみたいものだ(笑)
このリストでのriverside盤、僕の手持ち盤はほとんどOJCなのだが、数少ないオリジナル盤が、4番のアーニー・ヘンリー/Presentingである。この盤には、ちょっとした歴史がある(笑)
・・・というのは、この盤は、僕がちょっと、いや・・・かなりの無理を言って、大阪のYoさんから譲っていただいたものなのだ。
2005年9月~最初にYoさん宅におじゃました時、Yoさんとレコード店(冗談伯爵)で待ち合わせた。2人で20分ばかりレコードを探していたのだが、斜め向かいでエサ箱をチェックしていたYoさんがこの盤を取り上げた。それを見た僕は~それまでのYoさんとのメールのやりとりで、ウイルバー・ウエアの話しが出ていたこともあり~「ああ・・・それはいい盤ですよ。アーニー・ヘンリーにちょっとクセがありますけど」などと言ったはずだ。riverside青ラベル:モノラル盤としては、良心的な価格だったように思う。Yoさんは、「よしっ!」と一声。即、購入決定だ。
Yoさんは、モンク作品では「ブリリアント・コーナーズ」が好きだとのことだったので、もちろんアーニー・ヘンリーというアルト吹きの「人となり」は知っているはずだ。あのアルトに拒否反応ということはないだろう・・・でも僕も薦めた手前、ちょっと心配ではあった。「あんまりよくなかったら、申し訳ないなあ(笑)」と僕。
2006年6月~Yoさん宅再訪の折、僕は2枚の「日本盤」を持っていった。ビル・エヴァンスの「コンセクレイションズ」(2LP:アルファ)と「コンセクレイションズ2」(1LP:アルファ)である。
やはり、そのちょっと前のメールやりとりで・・・僕の方は晩年のエヴァンスにそれほど強くは惹かれていないのだが、Yoさんは逆にあの「鬼気迫るような」エヴァンスの音楽にすごく魅力を感じている~ということが判っていた。そしてYoさんは、オランダ盤のエヴァンスのライブ盤(日本盤と同じ内容のキーストンコーナーでのライブ)を入手したので、僕の持っている日本盤2LP~発売時点ではこれがオリジナルということにはなる~と聴きくらべてみたい、ということであった。こんなやりとりの間からも、Yoさんがこの2LPにも強い興味を持っていることが伝わってきたのだ。このエヴァンスの日本盤2LPはヤフーなどでも案外に人気がある、とのことだった。
僕も「エヴァンス好き」ということでは相当なものだと思っているが、最晩年のエヴァンスは・・・「息せき切って、ただただ自分の音楽を発露している」という感じがして、聴いていて何かこう・・・辛い(つらい)のだ。ベースのマーク・ジョンソンも好演しているので、何度か聴いたのだが「辛くなるような感覚」をどうしても拭(ぬぐ)えないのだ。そんな僕の事情と、この日本盤に対するYoさんの思い入れが、ちょうどうまい具合に重なって、何かの盤と交換することになったのだ。その時、僕のアタマに浮かんだのが・・・・あのアーニー・ヘンリーだったのである。エヴァンス日本盤に多少の人気があろうとも、この申し出は自分でも、ずうずうしいにも程がある!思ったのだがなんとしたことか・・・Yoさんは即座にOKしてくれたのである!「この盤はbassclefさんが持っていた方が幸せでしょう」と。
《Presenting(RLP 12-222:モノラル青ラベル)~純正オリジナルは「白ラベル」で「青ラベルは2ndで」とのことだが、この「青ラベル」も充分に音はいいのだ》
内容は・・・これはもうアーニー・ヘンリーの、あの「重い音色とためたノリ」での独特のねちっこいフレーズ~そうとうに暑苦しい(笑)~
が満喫できる素晴らしいものだ。ヘンリーの一音一音に「気合」を感じるのだ。その気合に応え、これも怖ろしいほど「重い音」をぶちまけてくるウイルバー・ウエア。それから、キレのいいトランペットも聞こえてくる。「あれ、このトランペット、誰?」と思うと・・・これがなんとケニー・ドーハムなのだ。ドーハムではあるのだが・・・こちらが勝手にイメージしていたような弱々しい音色のドーハムではないのだ。キレがあって味がある・・・そんなトランペットだ。ピアノのケニー・ドリュー、アート・テイラーも、みんなが張り切っていいソロを繰り出してくる。特に、B面3曲目のcleo's chant はマイナー調の曲で、この盤の全体に流れる重々しいムードによく合っており、好きな演奏だ。そしてこの曲でのウエアのベースソロ!音がとにかくでかい。そして重い。それから・・・あの独特なノリ!<4ビート2小節(8拍)に「1、2、3、4、1、2、3、4」と素直に乗らずに・・・「1、2、3、1、2、3、1、2」という感じに乗ってくる> 1956年のこの時点で、もう完全に「ウエア節」である。全く one & only なベース世界だ。僕はウエアのソロが始まると・・・嬉しくてなっていつもゲハゲハと笑ってしまう。
・・・そんなわけで、冗談伯爵でYoさんが見つけたあのriverside盤~コーティングが厚くて、深い緑色の背景にヘンリーの白いシャツがよく映える~Presentig は今、僕の手元にある。
ウイルバー・ウエアの入ったこの盤は・・・Yoさんと僕の、いわば友情の証しのような盤かもしれない。
そういえば・・・「コンセクレイションズ」を購入した折、中のハガキを送ると「もれなく」未発表音源のシングルCDをプレゼント!ということで
そのシングルCDも持っているのだった。この3曲は、どれもフェイドアウトしてしまうし、それに何年か後に「コンセクレイションズ2」で世に出た音源なので、大した価値もないが・・・エヴァンスの「コンセクレイションズ:記念のセット」として、ぜひともYoさんに持っていてもらわなくてはいけない(笑)
最近のコメント