<ジャズ雑感>

2011年1月 2日 (日)

<ジャズ雑感 第32回>ミルト・ジャクソンのUA盤:Bags' Opus

  UAレーベルのモノラル盤/ステレオ盤のこと、もう少し。

すっかり毎年の恒例になってしまった12月31日のレコード聴き・・・今年もrecooyajiさんと僕:bassclefで敢行しました。recooyajiさんとはもう4年の付き合いになるが、古いジャズをアナログで楽しむ同好の志が近くに居るということは実に重宝なもので、なにしろちょいと集まろうか・・・となれば10分で行き来ができるのである(笑)
さて、今年の「暮れ2人会」~特にテーマというほどのこともなかったのだが、昨年夏にこのブログ<夢レコ>で話題にした、ビル・エヴァンス/ジム・ホールの『アンダーカレント』を、もう一度、聴き比べてみましょう・・・ということだけは決めておいた。というのも・・・この『アンダーカレント』~どういう訳だか、ステレオ盤を好む僕がモノラル盤を、そしてモノラル盤を好むrecoさんがステレオ盤を入手していて・・・だから場合によってはトレードということも互いに考えてのことだったのだ(笑)
ステレオ盤とモノラル盤の音の質感の違いは・・・前回~
《UAモノの方は「優雅で繊細」とだけ思っていた二人のデュオに、相当な力強さを感じました。エヴァンスのピアノがかなり近い音で入っていて(音量レベルそのものも大きいような感じ)かなり強いタッチに聞こえます。ガッツあるデュオ・・・という感じにも聴けました。
(ステレオ盤を聴いてみての印象)
やっぱり、青のステレオ盤、ある種、柔らかさが気持ちよく、そしてギター、ピアノのタッチの強弱感もよく出ていて》
~と表わしたとおりで、しかしステレオの方も決して「線が細い」わけではなく、タッチの繊細さを表出しながらも適度な量感も出ていて・・・この2人のデュオとしては、やっぱりステレオ盤の方が(僕には)好ましい質感だった。
多少なりとも「交換」を考えていたであろうrecooyajiさんも、自分の装置での聴き比べの結果、《ステレオ盤もいいなあ》と感じたようである。チラッと《僕の方はいつでも交換しますよ》と言ってみたら・・・recoさん「いやあ・・・えっへっへッ」とだけ返してきた(笑)というわけで、僕はまたUAJSの方を探さねばなるまい(笑)
さて・・・この2枚の Under Current~「音」の方が済んだので、2人の興味は「モノ(物)」に移った(笑) この2枚を並べて・・・表ジャケ、見開きの両面、裏ジャケ・・・とあれやこれやチェックすると・・・見開きジャケのデザインに若干の違いがあった。
Dscn2810_3 
上写真~モノラル盤 UAJ  14003  見開き左側の下に表記
右側のエヴァンスとホールの写真の位置~上より(下に余白)Dscn2822
上写真~ステレオ盤 UAJS 15003 見開き左側の上に表記
右側のエヴァンスとホールの写真の位置も下よりになる。

もうひとつ、ちょっとした発見もあった。2枚を横に重ねて背表紙を見比べていたrecooyajiさんが「あれ?これは・・・面白いな」とつぶやく。
モノラル盤、ステレオ盤ともに、背表紙には同じように「両方」の番号が表記されているのだ!
《下写真は~モノラル盤。BILL EVANS  JIM HALL・UNDERCURRENT・UNITED ARTISTS JAZZ・UAJ 14003  STEREO UAJS 15003と表記》 
Dscn2811
《う~ん・・・モノラル番号とステレオ盤号が並んで書いてあるじゃないか(笑)さらに番号だけならまだしも、UAJS(ステレオ盤の番号)の方にはSTEREOという文字も入っている(僕の手持ちはモノラル盤なのに)これならUAJ14003の方にもmonauralと入れるべきじゃないか》Dscn2818_2
内ジャケ、センターラベルはちゃんと、モノラル、ステレオに応じた番号になっているのに。これは・・・「背表紙」だけは同じ版下を使ったということになる。UA社もここだけは手抜きしたか(笑)
しかしこれでは、このUnedrcurrntのように表ジャケにも裏ジャケにも「ひと文字」も入ってないデザインのレコードの場合、外見だけでは、モノラルかステレオか判別できないわけだ(笑)Dscn2819_2
そういえば・・・僕がこのUndercurrent(モノラル盤)をネットで入手した際、説明では「ステレオ盤」となっていたのに到着したら実際は「モノラル盤」だったということもあったのだが・・・ひょっとしたらその売り手は、このレコードの背表紙だけ見て、ステレオ盤だと思ったのかもしれない。
まあ・・・どうでもいいような話しではある(笑)
Dscn2823_2 
<サックス吹きラベル>は同じデザインだった。但し、このステレオ盤は溝ありで、モノラル盤に溝はなし。それから僕の手持ちモノラル盤のラベルは・・・なぜかややクリーム色がかった灰色で、この「クリーム色」については・・・まだ未解決である。面白いのは写真でお判りのように背表紙の番号表記は全く同じだが、その印字の色がセンターラベルと同じく、僕のモノラル盤はクリーム色となっていることだ。(モノラル盤をお持ちの方~そのセンターラベル情報などお願いします) *拙ブログ7月4日記事も参照

追記 1.~UAの「サックス吹きラベル」は、UAJ 14000番台(ステレオ盤はUAJS 15000番台)で、普通のUA盤とは別シリーズとなっているのだが、その「サックス吹きのセンターラベル」・・・これがどうにも謎である。上記の「クリーム色」も謎ではあるが、また新たな「謎」が浮上してきた。それは・・・
Uajs_15003_lステレオ盤のラベルに「溝なし」と「溝あり」の2種類が存在する・・・ということである。前回、7月の記事に載せた、Yoさん所蔵のUndercurrent(ステレオ盤)のセンターラベル(左の写真)を見ると・・・これが通常の「溝なしサックス吹き」だと思うのですが、上の写真(モノラル盤とステレオ盤を並べたもの)の右側のrecooyajiさん所蔵のステレオ盤ラベルは、ハッキリと「溝あり」でした。加えて3時方向にSTEREOという文字が表記されています。『「サックス吹きラベル」には溝はない』というのが、一般的な認識だったと思います。う~ん・・・ますます判らなくなりました(笑)
(2011年1月15日(土)追記)

追記 2.~「サックス吹きラベル 14000番シリーズ」のまとまった情報が案外なかったと思います。いつもコメントをくれる三式さんがリストにしてくれましたので、ここに掲載させていただきます。「**穴埋め」の箇所も判ったものは追加していきます。ミュージシャン名/タイトル名という型にしました。special thanks to Mr.三式さん!

《サックス吹きラベル~UAJ 14000シリーズ》のリスト

14001: john coltrane/coltrane time
14002: art blakey/three blind mice
14003: bill evans, jim hall/undercurrent
14004: ** danny small/woman, she was born for sorrow
14005: **charles mingus/wonderland
14006: gerome richardson/going to the movies
14007: kenny dorham/matador
14008: **
14009: **herbie mann/brazil,bossa nova & blues
14010: b
illy strayhorn/the peaceful side of billy
14011: **
14012: **king pleasure/mr.jazz

14013: zoot sims/zoot sims in paris
14014: **billie holiday/lady love
14015: ken mcintyre/year of the iron sheep
14016: vi redd/bird call
14017: duke ellington/money jungle
14018: ** llod mayers with oliver nelson/a taste of honey
14019: ** oliver nelson/impressions of phaedra
14020: **
14021: **
14022: ** herbie
mann/st.thomas
14023: ** alice maccarity & the faith temple choir/our most beloved    spirituals
14024: charles mingus/mingus townhall
14025: ** rose murphy featuring slam stewart/jazz, joy and happiness
14026: **
14027: **
14028: howard mcghee/nobody knows you when you're down and out
14029: moe koffman/tales of koffman
14030: **
14031: king pleasure/mr.jazz
14032: **
14033: bud freeman/something tender


注1~king pleasure(男性ヴォーカル)のMr.Jazzが、12と31とダブっているが、14012は間違いなくキングプレジャーのMr.Jazzだ。私の手持ち盤 14012は2ndラベル(マルチカラー~ラベル上部に赤・黄・青の水玉)でした。NOTさんのブログhttp://blogs.yahoo.co.jp/not254/archive/2007/06/10にも、同じMr.Jazz(2nd)が載っています。なお、14012の1stがサックス吹きラベルであることは写真で確認していますが、14031のMr.Jazzについては未確認。ゴールドマイン本には14031Mr.Jazzと記されており、たぶん同タイトルの再発だろう。
注2~新たに判明した14018と14019は、どうやらオリバー・ネルソン絡みらしい。14023はゴスペルのようだ。
注3~ちょっと注目すべきは・・・14004のDanny Smallの作品。Danny_smallD_small_centerほとんど情報もないのだが、"a great unknown vocalist. reeds by Zane Paul"なる説明からヴォーカルものだと判った。  この管楽器奏者の名前も聞いたことがない。ジャケットは「目から涙」のイラストもので印象に残る。  写真はネットから拝借~

追記3.~「サックス吹き」だけでなく、UAレーベルのUAL4000番台/UALS5000番台についても、なかなかまとまった情報がなかったようです。今回、たまたま検索中に発見した<UAレーベルのタイトル番号順リスト>のHPのアドレスを付けておきます。Yoさんとのコメントやりとりでも細かい再発まで判る・・・ということで一見の価値ありかと思います。興味ある方はぜひ見てみてください。そのHPは、rateyourmusic.comという名前のようで、とにかく膨大なレーベル情報で一杯です。アドレスは以下~http://rym.fm/list/lochness/united_artists_lps__usa__f1

さて・・・United Artists(UA)というレーベルについては、夢レコ7月の記事で、「アンダーカレント」だけでなく、
Booker Little +4(ステレオ盤)
Motor City Scene(ステレオ盤)
にも触れたのだが、いかんせんまだまだサンプルが少ない。

そこでもうひつと・・・UAレーベルのステレオ/モノラルということで、たまたま揃ったのがミルト・ジャクソンだ。
Milt Jackson/Bags' Opus(UAL 4022) モノラル赤ラベル
Milt Jackson/Bags' Opus (UAS 5022) ステレオ青ラベル
Dscn2812_2
モノラルがUALの4000番代、ステレオがUASの5000番代という例のパターンだ。こちらはセンターラベル以外は表ジャケ右上のレコード番号だけだ。
こちらはモノラル盤を先に入手した。そのUAレーベルはステレオ盤がいいよ、と言ってたわりに、このモノラル盤・・・これが実に良かったのだ(笑)あまり芳しくない方の例に挙げたMotor City Sceneやthe Band & I、それからModern Art で、僕が感じた「(ステレオ盤と比べて)楽器の音がちょっと引っ込んで詰まったような感じもまったくなく、テナーやトランペットの抜けもよく各楽器の音圧感も充分、主役のミルト・ジャクソンのヴィブラフォンも厚めに鳴って音色に艶もある。これを聴いた僕はまたスケベ心を出した。モノラル盤でこんなに良いのならステレオ盤ならもっといいんだろうな・・・(笑)そうしてわりと最近、首尾よくもう1枚のBags' Opusを入手できたのだ。待望のその青ラベルを、さっそく聴いたみた。Dscn2813_2
A面1曲目~ill wind
このトラックは管なしのピアノ入りカルテット。ミルトのヴィブラフォンがちょい左によって、そしてモノラル盤での鳴りに比べれば太さが減りちょっとスマートな感じになった。その分、バックで鳴るフラナガンのピアノはモノラル盤よりクリアに聞こえる。ドラムスのブラッシュの「ザワザワ音」・・・これが音量的にはモノラル盤でも大きく強く聞こえるのだが、僕にはそれがちょっと暑苦しい。ステレオ盤だと、その「ザワザワ」が被(かぶ)らずに聞こえて、さらにちょいと左側にいるドラムのその全体の鳴りとしての気配がよく判るような気がする(ごく一般論で言っても、同じ録音音源なら、ドラムのシンバルとその鳴りの余韻とかはステレオ盤の方がよりクリアに聞こえる・・・と認識している) チェンバースのベースはどちらの盤でも同じようによく聞こえる。

A面2曲目(blues for Diahann)~管入りだとどうなるのか?
こちらは判りやすい。モノラルではわりと締まって聞こえたベニー・ゴルソンのテナーが、やや右によって、いや、そんな位置のことよりも・・・テナーの音色が、音色の輪郭が拡がって柔らかくなった。テナーの音量も若干、大きくなったように聞こえる。具体的には・・・たぶんゴルソンの特徴であるサブトーン(少し息の抜ける音がススゥ~(ズズゥ~)と聞こえるような音)の感じが、より強調して聞こえるのと、スタジオの空間に響いた自然なエコーの(残響音)感じを、ステレオの方がたくさん拾っているという感じで、僕としてはこちらの方が(ステレオ盤)実際の聞こえ方としては、ベニー・ゴルソンのテナーの音色に、より近いのじゃないかな・・・とも思うわけである。アート・ファーマーのトランペットについても、ほぼ同様な感想で、ファーマーの出した後の音をフワ~ッと余韻を残すような鳴らし方・・・あの音色表現には、ステレオ盤の方がより似合っている・・・と感じている。
但し、モノラル盤の方が、定位も真ん中だし、テナー、トランペットの音も「より締まって(ステレオ盤に比べて)」聞こえるので、やはりその方が好みだという方も多いだろうと思う。
トータルとして、スタジオでの演奏のリアリティというか楽器としての自然な鳴りを欲する方はソフトな感じのステレオ盤。
とにかく主役のミルトを大きな音・音圧感で聴きたい方、管楽器の締まり感を重んじる方は・・・やはりちょいとビターなモノラル盤の方が好みに合うように思う。Dscn2807_5
というわけで、このBags' Opus(UA)については、どちらの盤でも優秀な音が聴けるというのが僕の感じ方です。
いずれにしても、元が良い録音であって、いいミキシング(特にステレオ録音で撮ってモノラルミックスにした場合)であれば、ステレオ盤でもモノラル盤でもどちらでもいい・・・ということですね(笑)

こんなわけで、僕のUAレーベルへの興味はまだ続いている(笑)

| | コメント (43)

<ジャズ雑感 第32回>ミルト・ジャクソンのUA盤:Bags' Opus

  UAレーベルのモノラル盤/ステレオ盤のこと、もう少し。

すっかり毎年の恒例になってしまった12月31日のレコード聴き・・・今年もrecooyajiさんと僕:bassclefで敢行しました。recooyajiさんとはもう4年の付き合いになるが、古いジャズをアナログで楽しむ同好の志が近くに居るということは実に重宝なもので、なにしろちょいと集まろうか・・・となれば10分で行き来ができるのである(笑)
さて、今年の「暮れ2人会」~特にテーマというほどのこともなかったのだが、昨年夏にこのブログ<夢レコ>で話題にした、ビル・エヴァンス/ジム・ホールの『アンダーカレント』を、もう一度、聴き比べてみましょう・・・ということだけは決めておいた。というのも・・・この『アンダーカレント』~どういう訳だか、ステレオ盤を好む僕がモノラル盤を、そしてモノラル盤を好むrecoさんがステレオ盤を入手していて・・・だから場合によってはトレードということも互いに考えてのことだったのだ(笑)
ステレオ盤とモノラル盤の音の質感の違いは・・・前回~
《UAモノの方は「優雅で繊細」とだけ思っていた二人のデュオに、相当な力強さを感じました。エヴァンスのピアノがかなり近い音で入っていて(音量レベルそのものも大きいような感じ)かなり強いタッチに聞こえます。ガッツあるデュオ・・・という感じにも聴けました。
(ステレオ盤を聴いてみての印象)
やっぱり、青のステレオ盤、ある種、柔らかさが気持ちよく、そしてギター、ピアノのタッチの強弱感もよく出ていて》
~と表わしたとおりで、しかしステレオの方も決して「線が細い」わけではなく、タッチの繊細さを表出しながらも適度な量感も出ていて・・・この2人のデュオとしては、やっぱりステレオ盤の方が(僕には)好ましい質感だった。
多少なりとも「交換」を考えていたであろうrecooyajiさんも、自分の装置での聴き比べの結果、《ステレオ盤もいいなあ》と感じたようである。チラッと《僕の方はいつでも交換しますよ》と言ってみたら・・・recoさん「いやあ・・・えっへっへッ」とだけ返してきた(笑)というわけで、僕はまたUAJSの方を探さねばなるまい(笑)
さて・・・この2枚の Under Current~「音」の方が済んだので、2人の興味は「モノ(物)」に移った(笑) この2枚を並べて・・・表ジャケ、見開きの両面、裏ジャケ・・・とあれやこれやチェックすると・・・見開きジャケのデザインに若干の違いがあった。
Dscn2810_3 
上写真~モノラル盤 UAJ  14003  見開き左側の下に表記
右側のエヴァンスとホールの写真の位置~上より(下に余白)Dscn2822
上写真~ステレオ盤 UAJS 15003 見開き左側の上に表記
右側のエヴァンスとホールの写真の位置も下よりになる。

もうひとつ、ちょっとした発見もあった。2枚を横に重ねて背表紙を見比べていたrecooyajiさんが「あれ?これは・・・面白いな」とつぶやく。
モノラル盤、ステレオ盤ともに、背表紙には同じように「両方」の番号が表記されているのだ!
《下写真は~モノラル盤。BILL EVANS  JIM HALL・UNDERCURRENT・UNITED ARTISTS JAZZ・UAJ 14003  STEREO UAJS 15003と表記》 
Dscn2811
《う~ん・・・モノラル番号とステレオ盤号が並んで書いてあるじゃないか(笑)さらに番号だけならまだしも、UAJS(ステレオ盤の番号)の方にはSTEREOという文字も入っている(僕の手持ちはモノラル盤なのに)これならUAJ14003の方にもmonauralと入れるべきじゃないか》Dscn2818_2
内ジャケ、センターラベルはちゃんと、モノラル、ステレオに応じた番号になっているのに。これは・・・「背表紙」だけは同じ版下を使ったということになる。UA社もここだけは手抜きしたか(笑)
しかしこれでは、このUnedrcurrntのように表ジャケにも裏ジャケにも「ひと文字」も入ってないデザインのレコードの場合、外見だけでは、モノラルかステレオか判別できないわけだ(笑)Dscn2819_2
そういえば・・・僕がこのUndercurrent(モノラル盤)をネットで入手した際、説明では「ステレオ盤」となっていたのに到着したら実際は「モノラル盤」だったということもあったのだが・・・ひょっとしたらその売り手は、このレコードの背表紙だけ見て、ステレオ盤だと思ったのかもしれない。
まあ・・・どうでもいいような話しではある(笑)
Dscn2823_2 
<サックス吹きラベル>は同じデザインだった。但し、このステレオ盤は溝ありで、モノラル盤に溝はなし。それから僕の手持ちモノラル盤のラベルは・・・なぜかややクリーム色がかった灰色で、この「クリーム色」については・・・まだ未解決である。面白いのは写真でお判りのように背表紙の番号表記は全く同じだが、その印字の色がセンターラベルと同じく、僕のモノラル盤はクリーム色となっていることだ。(モノラル盤をお持ちの方~そのセンターラベル情報などお願いします) *拙ブログ7月4日記事も参照

追記 1.~UAの「サックス吹きラベル」は、UAJ 14000番台(ステレオ盤はUAJS 15000番台)で、普通のUA盤とは別シリーズとなっているのだが、その「サックス吹きのセンターラベル」・・・これがどうにも謎である。上記の「クリーム色」も謎ではあるが、また新たな「謎」が浮上してきた。それは・・・
Uajs_15003_lステレオ盤のラベルに「溝なし」と「溝あり」の2種類が存在する・・・ということである。前回、7月の記事に載せた、Yoさん所蔵のUndercurrent(ステレオ盤)のセンターラベル(左の写真)を見ると・・・これが通常の「溝なしサックス吹き」だと思うのですが、上の写真(モノラル盤とステレオ盤を並べたもの)の右側のrecooyajiさん所蔵のステレオ盤ラベルは、ハッキリと「溝あり」でした。加えて3時方向にSTEREOという文字が表記されています。『「サックス吹きラベル」には溝はない』というのが、一般的な認識だったと思います。う~ん・・・ますます判らなくなりました(笑)
(2011年1月15日(土)追記)

追記 2.~「サックス吹きラベル 14000番シリーズ」のまとまった情報が案外なかったと思います。いつもコメントをくれる三式さんがリストにしてくれましたので、ここに掲載させていただきます。「**穴埋め」の箇所も判ったものは追加していきます。ミュージシャン名/タイトル名という型にしました。special thanks to Mr.三式さん!

《サックス吹きラベル~UAJ 14000シリーズ》のリスト

14001: john coltrane/coltrane time
14002: art blakey/three blind mice
14003: bill evans, jim hall/undercurrent
14004: ** danny small/woman, she was born for sorrow
14005: **charles mingus/wonderland
14006: gerome richardson/going to the movies
14007: kenny dorham/matador
14008: **
14009: **herbie mann/brazil,bossa nova & blues
14010: b
illy strayhorn/the peaceful side of billy
14011: **
14012: **king pleasure/mr.jazz

14013: zoot sims/zoot sims in paris
14014: **billie holiday/lady love
14015: ken mcintyre/year of the iron sheep
14016: vi redd/bird call
14017: duke ellington/money jungle
14018: ** llod mayers with oliver nelson/a taste of honey
14019: ** oliver nelson/impressions of phaedra
14020: **
14021: **
14022: ** herbie
mann/st.thomas
14023: ** alice maccarity & the faith temple choir/our most beloved    spirituals
14024: charles mingus/mingus townhall
14025: ** rose murphy featuring slam stewart/jazz, joy and happiness
14026: **
14027: **
14028: howard mcghee/nobody knows you when you're down and out
14029: moe koffman/tales of koffman
14030: **
14031: king pleasure/mr.jazz
14032: **
14033: bud freeman/something tender


注1~king pleasure(男性ヴォーカル)のMr.Jazzが、12と31とダブっているが、14012は間違いなくキングプレジャーのMr.Jazzだ。私の手持ち盤 14012は2ndラベル(マルチカラー~ラベル上部に赤・黄・青の水玉)でした。NOTさんのブログhttp://blogs.yahoo.co.jp/not254/archive/2007/06/10にも、同じMr.Jazz(2nd)が載っています。なお、14012の1stがサックス吹きラベルであることは写真で確認していますが、14031のMr.Jazzについては未確認。ゴールドマイン本には14031Mr.Jazzと記されており、たぶん同タイトルの再発だろう。
注2~新たに判明した14018と14019は、どうやらオリバー・ネルソン絡みらしい。14023はゴスペルのようだ。
注3~ちょっと注目すべきは・・・14004のDanny Smallの作品。Danny_smallD_small_centerほとんど情報もないのだが、"a great unknown vocalist. reeds by Zane Paul"なる説明からヴォーカルものだと判った。  この管楽器奏者の名前も聞いたことがない。ジャケットは「目から涙」のイラストもので印象に残る。  写真はネットから拝借~

追記3.~「サックス吹き」だけでなく、UAレーベルのUAL4000番台/UALS5000番台についても、なかなかまとまった情報がなかったようです。今回、たまたま検索中に発見した<UAレーベルのタイトル番号順リスト>のHPのアドレスを付けておきます。Yoさんとのコメントやりとりでも細かい再発まで判る・・・ということで一見の価値ありかと思います。興味ある方はぜひ見てみてください。そのHPは、rateyourmusic.comという名前のようで、とにかく膨大なレーベル情報で一杯です。アドレスは以下~http://rym.fm/list/lochness/united_artists_lps__usa__f1

さて・・・United Artists(UA)というレーベルについては、夢レコ7月の記事で、「アンダーカレント」だけでなく、
Booker Little +4(ステレオ盤)
Motor City Scene(ステレオ盤)
にも触れたのだが、いかんせんまだまだサンプルが少ない。

そこでもうひつと・・・UAレーベルのステレオ/モノラルということで、たまたま揃ったのがミルト・ジャクソンだ。
Milt Jackson/Bags' Opus(UAL 4022) モノラル赤ラベル
Milt Jackson/Bags' Opus (UAS 5022) ステレオ青ラベル
Dscn2812_2
モノラルがUALの4000番代、ステレオがUASの5000番代という例のパターンだ。こちらはセンターラベル以外は表ジャケ右上のレコード番号だけだ。
こちらはモノラル盤を先に入手した。そのUAレーベルはステレオ盤がいいよ、と言ってたわりに、このモノラル盤・・・これが実に良かったのだ(笑)あまり芳しくない方の例に挙げたMotor City Sceneやthe Band & I、それからModern Art で、僕が感じた「(ステレオ盤と比べて)楽器の音がちょっと引っ込んで詰まったような感じもまったくなく、テナーやトランペットの抜けもよく各楽器の音圧感も充分、主役のミルト・ジャクソンのヴィブラフォンも厚めに鳴って音色に艶もある。これを聴いた僕はまたスケベ心を出した。モノラル盤でこんなに良いのならステレオ盤ならもっといいんだろうな・・・(笑)そうしてわりと最近、首尾よくもう1枚のBags' Opusを入手できたのだ。待望のその青ラベルを、さっそく聴いたみた。Dscn2813_2
A面1曲目~ill wind
このトラックは管なしのピアノ入りカルテット。ミルトのヴィブラフォンがちょい左によって、そしてモノラル盤での鳴りに比べれば太さが減りちょっとスマートな感じになった。その分、バックで鳴るフラナガンのピアノはモノラル盤よりクリアに聞こえる。ドラムスのブラッシュの「ザワザワ音」・・・これが音量的にはモノラル盤でも大きく強く聞こえるのだが、僕にはそれがちょっと暑苦しい。ステレオ盤だと、その「ザワザワ」が被(かぶ)らずに聞こえて、さらにちょいと左側にいるドラムのその全体の鳴りとしての気配がよく判るような気がする(ごく一般論で言っても、同じ録音音源なら、ドラムのシンバルとその鳴りの余韻とかはステレオ盤の方がよりクリアに聞こえる・・・と認識している) チェンバースのベースはどちらの盤でも同じようによく聞こえる。

A面2曲目(blues for Diahann)~管入りだとどうなるのか?
こちらは判りやすい。モノラルではわりと締まって聞こえたベニー・ゴルソンのテナーが、やや右によって、いや、そんな位置のことよりも・・・テナーの音色が、音色の輪郭が拡がって柔らかくなった。テナーの音量も若干、大きくなったように聞こえる。具体的には・・・たぶんゴルソンの特徴であるサブトーン(少し息の抜ける音がススゥ~(ズズゥ~)と聞こえるような音)の感じが、より強調して聞こえるのと、スタジオの空間に響いた自然なエコーの(残響音)感じを、ステレオの方がたくさん拾っているという感じで、僕としてはこちらの方が(ステレオ盤)実際の聞こえ方としては、ベニー・ゴルソンのテナーの音色に、より近いのじゃないかな・・・とも思うわけである。アート・ファーマーのトランペットについても、ほぼ同様な感想で、ファーマーの出した後の音をフワ~ッと余韻を残すような鳴らし方・・・あの音色表現には、ステレオ盤の方がより似合っている・・・と感じている。
但し、モノラル盤の方が、定位も真ん中だし、テナー、トランペットの音も「より締まって(ステレオ盤に比べて)」聞こえるので、やはりその方が好みだという方も多いだろうと思う。
トータルとして、スタジオでの演奏のリアリティというか楽器としての自然な鳴りを欲する方はソフトな感じのステレオ盤。
とにかく主役のミルトを大きな音・音圧感で聴きたい方、管楽器の締まり感を重んじる方は・・・やはりちょいとビターなモノラル盤の方が好みに合うように思う。Dscn2807_5
というわけで、このBags' Opus(UA)については、どちらの盤でも優秀な音が聴けるというのが僕の感じ方です。
いずれにしても、元が良い録音であって、いいミキシング(特にステレオ録音で撮ってモノラルミックスにした場合)であれば、ステレオ盤でもモノラル盤でもどちらでもいい・・・ということですね(笑)

こんなわけで、僕のUAレーベルへの興味はまだ続いている(笑)

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2010年2月28日 (日)

<ジャズ雑感 第31回> Savoy赤ラベルのスタンパー

Savoyというレーベルにも、なかなか興味深いものがある。僕にとってのSavoyは、やはり・・・ミルト・ジャクソンということになる。ミルト・ジャクソンという人を最初に聴いたのは、1972年頃に、モンク絡みで入手した「クリスマス・セッション」だったはずだ。この人を「好きだな・・・」と自覚したのは、presitgeのMilt Jackson Quartetだった。そうしていろんなジャズを聴いてきた後、たまたまSavoyのOpus De Jazz(キングのCD)を入手したのだが、それまでに耳にしたことのない、リラックスしてブルージーな味わいのある「渋いジャズ」も悪くないなあ・・・と感じた記憶がある。今になって思えば、それこそがSavoyジャズのイメージそのものだったわけなのだが(笑)
僕の好みなのだが、ミルト・ジャクソンについては、「非MJQ」というフォーマットに魅力を感じている。そうして、Savoy盤での彼のヴィブラフォンの音には独特の重み・深みがあるようにも感じられ、Roll Em Bagsなど彼のSavoy作品を聴けば聴くほど・・・Savoyというレーベルのイメージがますますミルト・ジャクソンという人に集約されてくるようなのだ。その辺りのレコードについては、またの機会にまとめるとして、今回は、Savoy盤のちょっと瑣末な点に拘ってみたい。

Savoy_003
《写真左~モノクロ・ジャケット。右~カラー・ジャケット》
昨年の10月頃だったか・・・近所のレコード仲間:recooyajiさん宅で音聴き会をやった。この2人集まりは不定期なのだが、たいてい2ヶ月に一遍くらい、そろそろ・・・てな感じで、急遽、催されることが多い(笑)
さて、その音聴き会~ある日曜の午後、僕は「渋いジャズ」開眼盤である、Opus De Jazz(MG12036)を持っていった。だいぶ前にCDで聴いた時に感じていた「サウンドのコク」みたいなもの・・・それをオリジナル盤で味わってみたいという気持ちがあって、ちょっと前に「モノクロ・ジャケット」を入手していたのだ。
さて、僕がこの「モノクロジャケ~Opus De Jazz」を取り出すと・・・recooyajiさん「おっ、モノクロだ!」と反応する。この作品に「モノクロジャケ」と「カラージャケ」があることを知ってはいたが、なんと、recooyajiさん・・・たまたまその「カラージャケ」の方をお持ちだったのだ!
recooyajiさんの手持ち盤は~ジャケはカラーだが、盤(vinyl)は赤のセンターラベルだった。僕の「モノクロジャケ」も、もちろん同じ赤ラベルだ・・・これで「赤ラベル」が2枚揃ったわけだ。それじゃあ、ぜひ比べてみましょう!となるのもムベナルカナでしょう(笑)

さて・・・まず素朴な興味として「ジャケット」に、1st(モノクロ)と2nd(カラー)という違いがあって、それでは「盤」の方はどうなのか?・・・という疑問が湧いてきた。2人はいそいそとそれぞれの盤を取り出して並べてみる・・・さあ、どうだ!どうなのだ?(笑)
やはり・・・スタンパーが違うようなのである。MG~というレコード番号とX20という刻印(*bsさんからのコメントで判明)は全く同じだったのだが、その他に、アルファベットと数字の表記があって、それらが同一ではないのである。
Savoy

《写真上~モノクロジャケの盤:内周右上に「1」の数字刻印、
写真下~カラージャケの盤:内周右上に「6」の数字刻印がある》
Savoy_6_3

僕はそれまで、Savoyのセンターラベルやスタンパー刻印については、ほとんど無知であった。知っているのはRVG刻印のこと、あとは、大まかのラベル変遷としての《赤:red→エビ茶:maloon》くらいで、だからこの偶然的2枚揃いの場面を迎えるまでは、まったく予備知識もなかったわけなのだ。Savoyのスタンパーについてはおそらくrecooyajiさんも同様だったようだ。2人は、その2枚を食い入るように観察する(笑)
・・・・・ややあって「うう、違いますねえ」とrecooyajiさん。

                                                      Savoy_b《写真上~モノクロジャケの盤:「B」の刻印。アルファベット刻印は、数字刻印のほぼ反対側に位置している。
写真下~カラージャケの盤」には「E」の刻印があった。(ジャケットと盤の入れ替えがなかったという前提で)普通に考えれば、モノクロジャケットの中身(盤)の方が早いプレスなので、この「B」と「E」の場合なら・・・「B」の方が、より初期プレスに近いということになるのかな》Savoye_3 

《このOpus De Jazzの2種を整理すると~モノクロジャケの盤が「Bの1」で、カラージャケの盤が「Eの6」ということになる。
但し「ジャケと盤の入れ替え」もよくあることだし、BとEなる表記の場合、必ずしもBの方が先とも断定できない・・・全ては推測である。いや、思い込みかな(笑)

さて、音の方はいかに?
これがなかなか微妙ではあったが・・・やはり「モノクロ」(Bの1スタンパー)の方に、若干ではあるが、鮮度感の高さが感じ取れたようだ。うまく説明しづらいのだが、ベース音の膨らみ具合に若干の違いがあったような・・・このOpus De Jazzのべーシストは、エディ・ジョーンズ。もともとベース音自体が太くてでかそうなベース弾きである。だから・・・その音の大きさ(感)自体を「膨らんでいる」と捉えているのではなくて、その「大きさの輪郭/音色の芯」の感じに、ほんの少しの違いがあったようだ。つまり「ベース音の切れ」において、モノクロ・ジャケの方に、より圧縮感があり芯が締まった感じがあったように聞こえた。
推測レベルになるが、この同タイトルの「エビ茶」ラベル盤があれば、それぞれのプレス時期から考えれば、もう少し明らかな鮮度落ち感が認められるかもしれない。
今回は、このタイトルだけの聴き比べなので、「Bの1」や「Eの6」の比較に普遍性はない・・・と思う。同じ「赤ラベル」での同タイトル~もう少しサンプルがあれば、ぜひ聴き比べてみたいものだ。
(*ぜひ情報をお寄せください)

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2009年7月26日 (日)

<ジャズ雑感 第30回> リヴァーサイドの不思議

2人のエンジニア~Jack HigginsとRay Fowler

 《Tadd Dameron/The Magic Touch(1962年) 青モノラル》015

リヴーサイドが好きである。ジャズ聴きの初期からモンクやエヴァンスを聴いてきて、だから彼らの一番いい時代の演奏が残されているリヴァーサイドというレーベルを嫌いになるはずがない。このレーベルには、もちろんモンクやエヴァンス以外にも好きなレコードはたくさんあるが、今回はジャズの中身(演奏)についてではなく、「リヴァーサイド録音の質感」について書いてみたい。    

また音の話しか・・・と思われてしまいそうだが、今回は、僕自身が「いい録音」「あまりよくない録音」と思える盤のタイトルを挙げながら、いつものように自分の思い込みを展開したい(笑)
要は・・・まず僕自身の「好き・嫌い」を明らかにすることで、それに対し「いや、それは違う!オレはあっちの方が好きだ」とかの意見も当然あるわけで・・・つまり「音の好みというのは本当に人それぞれなのだ」ということを、充分に認識することで、そうした方が・・・たぶん音の話しの「いい・悪い」も伝わりやすくなると思うのだ。そうしてこれらは録音についての僕の好みの話しなので、「音の良くない」方で挙げた盤があったとしても、それは・・・決してその盤の中身が悪いというわけではありません(笑)

以前からリヴァーサイドには、録音がとてもいいと思えるタイトルと、そうでないものがあって、だから、bluenoteやprestigeのようには「リヴァーサイドは、これこれこういう音だ」と簡単に表現できないもどかしさを覚えていた。僕のリバーサイド認識は・・・基本的には「自然な感じのしっとり感のある音質」だ。そうして、そのソフトな質感をもちろん嫌いではない。しかしそうとは感じない音の盤もけっこうあって・・・どうもリヴァーサイドの音はよく判らない・・・そんな感じもあるのだ。
今回は、その辺のことをできるだけ具体例を挙げながら書いてみたい。

さて、いろんなリヴァーサイド盤を聴いてきたが、この頃になってようやく、同じリヴァーサイドであっても2人のエンジニア~Jack HigginsとRay Fowler~によって、だいぶ音造りが違うようだぞ・・・ということに気づいた。
だいたいの掴(つか)みとして~
Jack Higgins(Reeves Sound Studios) 1956年くらいからのモノラル録音が主。[参考~モンクのBrilliant Corners、ビル・エヴァンスのEverybody Digs~やPortrait In JazzはHiggins録音]
*追記~Portrait In Jazzついて~モノラル録音はHigginsだが、ステレオ録音はひょっとしたらRay Fowlerかも?という話しが、bsさんのHP(BLUE SPRITS 8/20付)にてアップされました。そのCDのデータを巡る興味深い記事です。必見です!
Ray Fowler(Plaza Sound Studio) 1960年くらいからのステレオ録音が主。
[参考~但し、モンクのMonk's Music(1957年),ファイブスポットのライブ(1958年),Monk Orchestra at Town Hall(1959年)などはFowler録音]

Monk_town_hall_blue_21960年代に入ると、ほとんどの作品がRay Fowlerになっているようで、その音の違いは・・・スタジオ自体の響きや年代による録音機器の違いによるものも大きいはずだが、やはり2人の音造り(ミキシング、マスタリングのバランスなど)の違いというものもはっきりとあるように思える。 僕の場合、一聴して「おっ、いい音だな」と感じると・・・Ray Fowler録音の場合が多かった。
まず、Fowlerの方からいこう。006_2
ひと頃、リヴァーサイドの中編成ものが好みになっていくつか入手した。
Thelonious Monk/~Orchestra at Town Hall(1959年) 青モノラル
Jonny Griffin/Big Soul Band(1960年) 青モノラル 014
                     

                     Blue Mitchell/Smooth as the Wind(1960年)黒ステレオ(写真上)
Blue Mitchel l/A Jazz Version of Kean(1961年) 黒ステレオ
Tad Dameron/The Magic Touch(1962年) 青モノラル

Mark Murphy/Rah (1961年) 青モノラル/黒ステレオ(写真下)016_4   017

《特にマーク・マーフィーのファンではないのだが、このRahは、ビル・エヴァンスも何曲かに参加しているという情報もあり入手した。しかし・・・何度聴いてもどのトラックがエヴァンスなのかはっきりとは判らない》

上記6点のFowler録音盤は、モノラル盤、ステレオ盤どちらであ っても、多くの管楽器のエネルギー感もたっぷりで、スポットが当たるソロ場面での音色には鮮度感がある。しかもドラムスやベースのリズム陣の音圧感も充分にあり、さらにそれら全体のエネルギーバランスが強すぎず弱すぎず・・・のいい具合だったのである。
どれも好きな音だが、特にTad Dameron盤でのジョニー・グリフィンのテナー、Mitchell盤でのブルー・ミッチェルの艶やかなトランペットは、素晴らしい音だと思う。これら6タイトルは全てRay Fowler録音である。
こんな確認をしていると・・・まあ要は僕がFowlerの録音を(ミキシング、マスタリング含めて)好きというだけのことかもしれないが、いずれにしても、僕は今やはっきりとそういう認識を持ってしまったわけである(笑)
Photo *モンクの未発表LP~Evidence(milestone 1983年)A面には、At Town Hallからの別テイク~ラウズとのカルテットが3曲、オーケストラの1曲(thelonious)が収録されている。モノラル盤を聴いていて感じた、ブラス陣やベースの厚みある音そのままに、ナチュラルなステレオ音場になっており、なかなか素晴らしい音質だと思う。Ray Fowlerはやっぱりステレオ録音が得意なのだ。たぶんそのステレオ音源を元として、モノラルにミックスしているのだろう。Monks_music_rs
そのRay Fowlerの初期のステレオ録音とされているMonk's Musicは、3rd(黒ステレオ)と4th(茶色abc:モノラル)しか持ってないが、その演奏を僕はとてつもなく好きなので、Monk's Musicについてはまた別の機会に(笑)
*追記~皆さんがコメントで異口同音に触れてくれた、Riversideにおける[同じ作品でのステレオ盤とモノラル盤での音質違い]~これは・・・確かにある(笑) それは、Monkの「ミステリオーソ」です。2年ほど前に、Yoさんとのやりとりの中でも浮上したこの話題。その過去記事がこれです。

さて、好きなリヴァーサイドであっても、何もかもオリジナル盤というわけにもいかないので、当然、OJC盤やビクター国内盤でもいろいろと聴いている。OJC盤は、それまで国内盤で聴けなかった(入手できなかった)タイトルをいくつか聴いたのだが、「いい音」が印象に残っているものをいくつか紹介したい。オリジナル盤で検証しなくては無意味だ~というご意見もあるかと思うが、僕自身の感じとしては・・・国内盤、あるいはOJCであっても、もともとの録音の素性(質感、楽器のバランス)みたいなものは、ちゃんと表われるもので、つまり・・・「良い録音」か「あまり良くない録音」くらいは(何が良いか悪いかは、人それぞれであっても)どんな版でも判るものだと思う。

Victor Feldman/Merry Olde Soul(1960年 Ray Fowler) OJC盤007 
~このレコード・・・やけに音がいい。フェルドマンのヴィブラフォン、ピアノが適度にしっとり感のある音で捉えられており、ベースやドラムのバランスもちょうどいい。それから「サム・ジョーンズのベース」という観点で後述の2枚に比べてみると、低音の響きが豊かに捉えられていて、実にいい具合なのだ。
Milt Jackson/Bags Meets Wes(1961年 Ray Fowler ) OJC盤008
~これもとてもいい録音だ。ウエスのギターの艶々した質感が素晴らしい。サム・ジョーンズのベース音に限って言えば、先の2枚に比べると、ほんのちょっとだけベースの低い方が薄い感じがある。しかし充分に芯のあるいいベース音だと思う。
Blue Mitchell/Blue's Moods(1960年)もいい。これはビクターの紙ジャケCDを聴いただけだが、そのしっとりしたペットの質感と、サム・ジョーンズのベースの豊かな鳴り具合には、間違いなく元録音の良さを感じた。未入手・未確認だがエンジニアはRay Fowlerだと思う。

サム・ジョーンズは・・・おそらく右手のピチカットの時、その引張り力が強すぎて(アタックを掛けすぎて)「グシャッ」という感じに潰(つぶ)れたような音色になることもあるようだ。そしてその強烈さのためか・・・実際、その「引っ張り力の強さ」だけが強調された録音が多くて、ベースの録音としては、ややペンペンしたような音に聞こえてしまう録音のものも少なくないようにも思う。そんなサム・ジョーンズのベース音が良くないと思える録音盤を2枚だけ挙げよう。
*訂正~Things Are Getting Betterのベース奏者はパーシー・ヒースでした。Solarの方はサム・ジョーンズです。

Cannonball Adderley/Things Are Getting Better(RLP 12-286) *モノラル・青・大ラベル 1958年 Jack Higgins
013 ~このモノラル盤・・・一聴、ベース音が遠く霞(かす)んだ感じで音圧感に乏しく、ドラムの音は大きく入ってはいるがシンバルなどが歪っぽく、音そのものに鮮度感がない。サックスやヴィブラフォンも大きめに鳴ってはいるのだが、なにかにガチャガチャと暑苦しくこもったような感じに聞こえる。僕にはとても疲れる音だ。

《追記1~Yoさんからは、Things Are Gettingのステレオ盤(黒・小)の音は素晴らしい~とコメントもあり謎は深まる(笑) だとすると・・・どうやら、Jack Higginsの録音自体が悪いわけではない・・・ということかも》

*《特別追記!》~ついにこの「ステレオ盤Things Are Getting Better」を聴くことができた。昨日(10月10日)ニーノニーノさんの集まりにてYoさん宅で、まず僕のモノラル盤、それからYoさんのステレオ盤(黒・小ラベル)を聴いたその印象を以下。一聴して・・・「これは良い!」でした。Yoさん、NOTさんが仰るとおり、ジャクソンのヴィブラフォン、キャノンボールのアルトには芯に充分なエネルギー感があり、(ジャクソンは左側からキャノンボールは右側から)たっぷりの音量バランスで鳴る。そして僕がモノラル盤で感じた最も「苦手」な部分は・・・ドラムのシンバルや打音の「ガシャガシャ感」(歪む一歩手前くらいか?)であるが、ステレオ盤ではドラムスは全くでしゃばることなく、ちょうどいい按配の音量だ(僕にはそう聞こえた。この辺は、ぜひNOTさんブログでのレポートもご覧ください。ドラムが暴れ気味の方を好むであろうNOTさんの正直な感想にも納得。同じドラムの音量の聞こえ方に対しても、個人の好みでその印象はだいぶん違ってくる・・・という好例だと思う(決して良い悪いの話しではありません、くれぐれも:笑)それからもうひとつ~パーシー・ヒースのベース音にも大きな違いが!直前に同じ装置で聴いたモノラル盤よりも、ステレオ盤では明らかに、ヒースの音が太めに大き目に聞こえました。この点でも、特にベース音バランスが気になる僕にとっては「ステレオ盤」の方がベストなバランスだと感じました。


《追記2~上のモノラル盤とは違うジャケットのモノラル盤(*青・小ラベル)が存在しました。というより、僕の手持ち盤の方がモノラルの2ndジャケだろう。そして「音が悪い」のも、ひょっとしたらこの2ndジャケ盤だけの症状かもしれない(笑) その1stジャケットの写真は右下(ネットからお借りしました)
図柄は同じですが別ジャケットには、左下に[○囲みのSPECTROSONICロゴ]と右上のRIVERSIDE文字のすぐ下に[CONTEMPORARY SERIESと12-286]表記が入ってます》

Things_getting_2001_3







《追記3~そして今になって気づいたのだが(笑)・・・ジャケットだけでなく、センターラベルにも違いがあったのだ!Riversideに詳しい方ならすでにお判りだと思うが、センターラベルにも「小ラベル」と「大ラベル」があったのだ。普通の場合、「小ラベル」の方が先らしい(一部に例外あり) そして今回のケースでは~僕の手持ち盤(2ndジャケ:写真左上)の方が「大ラベル」で、1stジャケ(写真右上)が「小ラベル」のようだ。
大と小の簡単な見分け方のポイントは~ラベル左側のタテ書き[LONG PLAYING]文字と溝が交わらずに溝の外側にあるのが「大ラベル」、そして[LONG PLAYING]文字の上を溝が縦断しているのが「小ラベル」だと思う。
ラベル中央上部の「カセットテープみたいな図柄」でも同様に「溝が通る位置」の違いが明らかだ》

《追記4~bsさんコメント(2009年8月 2日 (日) 20:48)により、このThings Are Getting Betterのセンターラベルにもう一種あることが判明。それは[青・大・溝なし]で、bsさんによれば[僕の耳には、この盤の「音」は〇、それも◎に近い]とのこと。この[青・大・溝なし]と僕の手持ち[青・大・溝あり]とが同一の音質とは断定できないが、bsさんコメント内での音質感の描写は、僕の耳に聞こえた質感と近く、おそらく「同じ音」を耳にしているものと思われる。興味深いのはその「同じ音」に対しても受ける印象が異なってくる場合も充分にあり得る・・・ということです。
この辺りのことについて、bsさんがご自身のHP(8/12付け)で取り上げてくれました。コメントと併せてぜひご覧ください。


Red Garland/Solar(jazzland:JLP73)モノラル・オレンジラベル 1961年 Ray Fowler 001_2
~どのトラックでもサム・ジョーンズのベース音色がはっきりと薄い。もう少しは出ているはずのウッドベースの低い方の音がざっくりと抜け落ちてしまって、乾いてペンペンしたような音色になってしまっている。いい方の録音のサム・ジョーンズとはだいぶ肌合いが違う。サム・ジョーンズは、こんなに軽い感じのべーシストではないはずだ。002
ついでに「ベース音が遠い、薄い」録音として、Sonny Rollins/The Sound of Sonny(1957年 Jack Higgins)のことも。
ロリンズのレコードの中では・・・なぜか今ひとつの感がある。僕の好きなソニー・クラークも入っているのに、なぜだか演奏に生気が感じられないのである。ああ・・・今回は「演奏」については触れないでおこう。あくまで「録音」に拘りたいところなのだが、ちょっとだけ思うに、この「サウンド・オブ・ソニー」~ベースはポール・チェンバースなのに、(*訂正~チェンバースのテイクは3曲、パーシー・ヒースが6曲でした)かなり小さめでしか聞こえず(しかも遠めに)ロリンズのテナーも何となくエネルギー感に乏しいように聞こえてしまう。その要因に一部は・・・こうした「録音の拙(まず)さ」にもあるように思えてならない。なお、このSound of Sonnyは、米milestoneの2枚組で聴いてきたが、recooyajiさんが「モノラル白ラベル」をお持ちで、その真性オリジナル盤を何度か聴かせてもらった時の印象もまったく同じである。

*アダレイやサム・ジョーンズ好きな方が以下の3枚~
Cannonball Adderley/~ at the Lighthouse(riverside)
Cannonball Adderley/Poll Winners(riverside)
Cannonball Adderley/JAZZ Workshop Revisited(riverside)
をお持ちなら、ぜひ聴き比べてみてください。たぶん・・・ベース音には相当な違いがあるかと思います。情けないことに、僕は3枚とも未入手です(笑)なお、以上の3枚の録音はWally Heiderとのことです(厚みのあるベース録音に特徴)
*そのWally Heider録音によるjazzland盤を見つけたので紹介したい。
Harold Land/West Coast Blues(1960年)小豆色ラベル:モノラル
011 ~いい具合にベースはサム・ジョーンズだ。低い方まで太めに響くベース音が聞かれる。オン・マイクで録った音だとは思うが、適度な自然響きもあって、僕には好ましいベースの音だ。ただ・・・前回の記事で書いたように<そのミュージシャンの本当の音>という観点から言うと、サム・ジョーンズとしては、ややマイルドすぎる音色になっているかもしれない。しかし・・・さすがにWally Heiderさん、いい録音だ(笑)

さて・・・どうやら僕はRay Fowlerの音が好きなようである。もちろんこの辺のことは好みの問題だがそれだけではなくて、2人の録音盤を見ると判る録音年月の違い(スタジオや録音機器の違い)という要素もあるはずだ。だから機器の性能レベルでは、より有利なはずのFowler録音の方を「良い」と感じるのは、実はごく当たり前のことかもしれない(笑)
今回は僕自身の音の好みとして「Fowlerの音を好きで、Higginsの音が苦手」という流れで話しを進めてきた。そしてそのサンプルを見ると好きなFowler録音にはステレオ盤が多く、苦手なHiggins録音にはモノラル盤が多い・・・ということも事実のようである。
ちょっと白状すると、僕の好みが「ステレオ」なので「モノラル」の方ばかりを「良くない音」に感じてしまうのではないか・・・という怖れが自分自身にもあったので、手持ちでは数少ないJack Higginsのステレオ盤も聴いてみた。

003 Philly Joe Jones/Showcase(RLP1159)黒ラベル:ステレオ 1959年 Jack Higgins
~それほど悪いという訳ではないのだが、3人の管楽器にもうひとつ鮮度感が乏しい。ドラムもシンバルが大きめに鳴ってはいるが・・・004なんだか緞帳(どんちょう)の向こうで叩いているような感じだ。
Johhny Griffin/The Little Giant(ビクター盤:ステレオ)1959年 Jack Higgins
~アダレイのGettin' よりは若干すっきり目にはなったが、やはり暑苦しい感じが聴きづらい。全体に音量はあっても、どの楽器にも自然な音圧感・実在感がいまひとつ感じられないのだ。鳴ってはいるが・・・直(じか)に伝わるエネルギー感に乏しい・・・と言ったらいいのか。推測だが・・・Jack Higginsは、どの楽器もオンマイク気味で録った後、抑える方向でミキシングし直して全体のバランスを取ろうとしているのではないだろうか? それがために自然なエネルギー感が損なわれてしまう・・・ということがあるのかもしれない。

それから、Ray Fowlerのモノラル盤もひとつ~
Harold Land/In New York(jazzland:1960)モノラル・小豆色ラベル010
このレコード、ベースはサム・ジョーンズではないが、太めに入ったベース音と小気味のいいシンバル音も気持ちのいい、そしてランドのテナーも自然な感じで、なかなかいい録音だと思う。ただ、このベース奏者(Clarence Jones)、太い音色は魅力的なのだが、4ビートでのビート感がドタバタした感じになってしまうのがちょっと残念だ。

2人のエンジニアの音盤のことを書いてきて、その音の特質みたいなものを自分の中では整理できたのだが、 ここで僕は正直に言わねばならない。
お気づきかもしれないが、レッド・ガーランドのSolarのエンジニアがJack Higginsではなく、Ray Fowlerとクレジットされているのだ。
Solarは、「良くない録音」の2番手に挙げた盤だ。 そういえば同じガーランドのNearness of You(1960年:Ray Fowler)の音も全体に生気感に乏しくて、拙(まず)い録音だとの思いもある。こうなると・・・判らなくなってくる(笑) Ray Fowler氏はピアノ・トリオの録音が苦手だったのかもしれない。

さらに言えば、Higgins録音でも初期の1956年~Presenting Ernie Henry(12-222 モノラル・青ラベル)には、さっき書いたような違和感(ドラムスやベース音が遠い感じで音圧感に乏しくこもったような)は、ほとんど感じなかった。僕が一番耳にしてきたであろう、モンク作品もチェックしてみると・・・Higgins録音は以下の3タイトルのみ~*4タイトルに訂正~Five By Monk By FiveもHiggins録音でした(Yoさんからご指摘~thanks!)
<Thelonious Himself, with John Coltrane, Mulligan meets Monk, Five By Monk By Five>で、それらについてもCannonball Adderley/Things~に感じたような「録音の違和感」も特にないので、となると・・・Jack Higgins録音がどれも良くないのでは?・・・という僕の推測も頼りなくなってくる(笑)
どんなミュージシャンにもその演奏に好不調があるように、録音エンジニアであるHigginsにもFowlerにも、その音録りに当たり外れがある・・・というのが実際のところかもしれない。
ただリヴァーサイドでは、その当たり外れが録音だけでなく演奏の中身も含めて大きく現れてしまう・・・そんな印象が強い。そんなちょっとばかり毅然(きぜん)としない感じが個性的とも言える。まったく不思議なレーベルである。だから・・・リヴァーサイドは面白い(笑)

*僕の好みでは特に「良くない録音」と感じる2枚を明記しておきます。
Cannonball Adderley/Things Are Getting Better(RLP 12-286)モノラル・青ラベル
Red Garland/Solar(jazzland:JLP73)モノラル・オレンジラベル
言うまでもなくこれは「録音」についての印象で、中身(演奏)についての良い・悪いではありません(笑)
このレコードをお持ちの方の印象・感想もぜひ聞いてみたいと思います。皆さんが思う「良い録音」「良くない録音」レコードもお知らせ頂ければありがたいです。音の好みというのも、まったく不思議なものですね(笑)

《*10月4日(日)追記》~
いつも更新が遅いこの「夢レコ」だが、今回は2ヶ月も空いてしまった。更新しなかったのは、もちろん次の記事が書けなかったからなのだが、苦しい言い訳をするならば・・・実は、心理的に次に進めないような感じもあったのだ。それはもちろん・・・夢レコ:7月28日<Riversideの不思議>関わりである。この記事で僕は「音の好みは人それぞれ」ということについて少々突っ込んで書きたくて、それにはまず自分の好みを明らかにした方が話しが判りやすいと思い、自分が「あまりよくない録音」と思う2~3の具体的なタイトルを挙げたわけだ。それに対して、各氏から濃厚なコメントを頂き、それについての検証や報告(手持ち材料の中での)などのやりとりが、じわじわと続き、またその間に、NOTさん、bsさんのブログ、HPにおいても関連話題の記事も登場してきて・・・どうやら僕はそんなRiverside渦に充分に巻き込まれてしまったようなのだ。「渦」と言っても、これは楽しい渦ですが(笑)
あるレコードについての新しい検証コメントが出てくると、そんな聴いてみたい音盤たちのまだ見ぬイメージに苛(さいな)まれ、いろんなレコード雑学的なことも気になったりで、もう精一杯になってしまい(笑)・・・まあそんなこともあって、なかなか更新できなかったというわけです。

さて、約2ヶ月に渡るRiverside音盤についてのやりとりの中から、このレーベルに関わるいろんな側面が浮き彫りにされてきたようだ。自分のアタマを整理するためにも、ポイントだけ整理してみたい。

《Riversideの初期ステレオ盤(1100番台シリーズ)への再認識》
僕自身、実は「1100番台」という呼び名にほとんど認識がなかった(笑)「リヴァーサイド・ブック」(ジャズ批評社)でも、普通にRLPの201~499番と並べられていて、例えば、モンクのBrilliant Cornersの226番の所にカッコで(1174)番と表記されている状態で、だから・・・「1100番台」を連続したひとつのシリーズとして認識し辛い状況だったのだ。推測だが、よほどのマニアの方でなければ、リヴァーサイドのステレオ盤としての「1100番台」を認識されている方は少ないだろう・・・と思う。しかし今回は、その「マニア」の方が、2人も揃ってしまったようだ(笑)

まずYoさんからその1100番台について詳細なレポートが続き、Yoさんがこのレーベルを如何に愛しているのか・・・が判明しました(笑)
そのYoさんのレポートにNOTさんが鋭く反応。NOTさん手持ちの1100番タイトルを再検証・・・、お2人の手持ち盤を併せると30タイトルほどとなり、それぞれの盤に対する熱の入った報告から、モノラル盤とはまた違った「ステレオ盤の良さ」~定位的なことだけでなく、各楽器の音圧感や存在感など~を伺い知ることができた。特に音が良いと報告されたものをいくつか挙げておこう。(全容については、ぜひ各コメントをお読み下さい)

~Cannonball Aderley/Things Are Getting Better(1128番:
黒小DGあり(モノラルは286番) 録音:Jack Higgins
◎~各楽器がとても自然で音圧感も申し分ない。RiversideのCannonballのアルトの最も良い録音!!(Yoさんコメント)

Blue Mitchell/Blue Soul(1155番:黒小DGあり)(モノラルは309番)録音:Jack Higgins
音圧が凄く高く迫力満点です。MITCHELLは全ての曲で常に中央に位置し音のクリアさを含め録音の良さでは所有する1100番台中随一(NOTさんブログ~
http://blogs.yahoo.co.jp/not254/50839518.htmlより)

Wynton Kelly/Kelly Blue(1142番:黒小DGあり)(モノラルは298番)
録音:Jack Higgins
◎~どの楽器も自然でエネルギー感十分、バランスも良い
(Yoさん)
音が中央に集中していないため中抜け?と思えるような部分もありますが、KELLYのピアノ、NATのコルネットの生々しさはMONOを上回ります(NOTさんブログ~
http://blogs.yahoo.co.jp/not254/50839518.htmlより)

Jimmy Heath/Really Big!(1188番:黒小DGあり)(モノラルは333番)
録音:Ray Fowler
◎(-)~ビッグバンドの録音として素晴らしい。しいて言うと音全体が若干硬質(Yoさん)

ちなみに、NOTさんは以前からに並々ならぬ興味をお持ちで、ご自身のブログにおいても「モノラル盤VSステレオ盤」なるコーナーで、多くのサンプルを検証されている。その最近記事~http://blogs.yahoo.co.jp/not254/50980289.html
http://blogs.yahoo.co.jp/not254/50922757.html
も必見です。

こうしてみると、今回の拙ブログのコメントやりとりは・・・モノラル録音が専門だと思われている「Jack Higginsの初期ステレオ録音」についての、YoさんとNOTさんによる再検証の記録とも言えそうだ。
音質の評価については、僕も何度も言い訳しているように(笑)「個人の好み」で変わるものかもしれないが、NOTさんもたびたび仰るように「定説に振り回される」ことなく、可能な限り自分の耳で判断することが必要だと思う。
モノラル盤とステレオ盤の好みが分かれることについては・・・どちらが良いとか悪いとか一元的に決められるものでないことはもちろんだが、「良い/悪い」の状況は、あくまで個々のタイトルごとで変わってくるものだと思う。そんな「モノラル/ステレオ」については、次のコメントを紹介しておきたい。
《楽器の音に厚みや力感を求める方であれば(定位的に中央でないとダメというポリシーの方でなければ)ぜひ「良い録音のステレオ盤」を耳にしてみてほしい》(by Yoさん)

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2009年6月19日 (金)

<ジャズ雑感 第29回>同じレコードをとことん楽しむ。

いいミュージシャンたちの素晴らしい音楽が詰まっているレコードというものは、本当にありがたいものだが、レコードに入っている音がそのまま「真実」とは限らない。
あたり前のことだが「レコード」より前に、まず楽器を吹く(奏する)生身の人間がそこに存在しているわけで、いかにいい録音であろうと、レコードから出てくる音が、生身の人間がその場で吹いた生の音に敵(かな)う訳がない。だが、時として、そのペラペラのヴィニール板からは「本当らしさ」が聞こえてくることがある。そのミュージシャンが楽器を通して表現したかった何らかのatmosphere(雰囲気)が、そこいら中に満ち満ちてきて、そのミュージシャンが「生きていた時間」をくっきりと感じ取ることができたりするのだ。そんな素晴らしいレコード~その演奏が素晴らしいことはもちろんである~が確かにある。
だから、僕は控えめにこう言いたい。「レコードには・・・時々、真実が在る」と。だから、僕らはそんな素晴らしいレコード達を聴かないわけにはいかない(笑)
実際、聴いてみたいレコードは無限にあるのだ。
そうして好きなレコードが増えてくると・・・できればそれらを少しでも音のいい版(レコード)で聴きたくなるのも、ごく自然なことではないか~いや・・・これは、このところダブリのレコードが増えてきたことへの強引な言い訳なのだが(笑)
僕はいつもジャズを「人聴き」している。何十年もジャズを聴いてきてちっとも飽きないのは「おっ、このテナー、ちょっといいな」てな具合に、その人の演奏をもっと聴いてみたい・・・思わせてくれるミュージシャンが次々と表れてくるからだ。ただ、僕の場合はそうした興味が古い時代の方へ向かうことが多いようだ(笑)
本当にいろんなミュージシャンがいる。いろんな個性がある。
そうして僕にとって「そのミュージシャンの個性」というのは・・・やっぱり「音色」だ。特に管楽器の場合は「音色」がそのミュージシャンの個性を造る決定的要素だと思う。もちろん、フレーズ(のクセ)もその人の個性には違いないのだが、音色の方がもっと本能的というか、理屈ぬきにその人の身体から滲み出てきてしまった何か・・・僕は「音色」というものを、そんな感じに捉えている。
ジャズを好きになってある程度ジャズを聴いてきた方なら、たぶん「音色」というのを理屈でなく肌合いとして感じ取っているものだと思う。
例えば・・・ロリンズとコルトレーンは同じテナーという楽器を使うが、2人の音色は・・・どんなレコードで聴いても相当に違うので、間違えることはあまりないだろう。コルトレーンには「ああ、コルトレーンだ」と判る「あの独特の音色」が絶対にあって、彼の音色の質感は、レーベルが変わっても案外変わらないように思う。では、ソニー・ロリンズのテナーの音色の場合、どうだろうか? 僕としては、けっこう違いがあるように思う。
例えばロリンズの2~3m前で(ノーマイクで)実際に耳に聞こえるテナーの音色としては・・・僕は contemporaryでの音色の方が本当のロリンズのテナーの音に近いと思う。bluenoteでのロリンズはやけに音像が大きくてエコーも強すぎと感じるのだ。だがしかし、僕らが一般的にイメージしている「ロリンズのテナーの音」は、bluenoteのサウンドの方だろうなとも思う。
そんな風にレーベルやタイトルが違うと、ミュージシャンの音がその質感のとこで変わってしまうこともけっこうあるわけで、さらに言えば、そんなレコード製作上での違いだけではなくて、年代を経てミュージシャン自身が生み出す音色自体も微妙に変わっていくこともあるわけで・・・この辺まで話しを踏み込んでくると、ミュージシャンの「本当の音・音色」とは、一体どこに在るのだろう・・・と、悩んでしまう(笑) こんな具合に戸惑うこともあるのだが・・・要は自分が好きな(興味を持った)ミュージシャンについては、聴き手がそれぞれに自分の思っている「その人の音色のイメージ」を確立していくことが大事だと思うのだ。
例えば・・・ジョニー・グリフィンのテナーを<唾液がドロドロしているような粘る音>だと表現したとする。それは音を言葉に置き換えようということではなく、あくまで脳内で< ~ >と認識したそのサウンドのイメージを便宜上何らかのコトバにしただけのことで、たとえそのコトバが他の人にとっては的外れなものであってもいいのだし、要は本人が「それ」と判ればいいのだと思う。
ジャズが好きで、いろいろなレコードを聴いてくれば、自ずとそんな認識を無数に持っているわけで・・・そうしたイメージ認識があるからこそ、例えば知らないタイトルのレコードを聴いても「ああ・・・このテナー、グリフィンだ」てな具合に判るはずなのだ。そうした認識や自分の好みの傾向をしっかりと自覚した上で、好きなミュージシャンや好きなレコードの音がレーベルによっても微妙に変わる様を楽しむのも、なかなか悪くない。
さて、タイトルやレーベルでミュージシャンの音」が微妙に違うケースはしょっちゅうあるが、同じミュージシャンの同じ演奏であっても、レコードの版(ステレオ/モノラル、1st/2ndなど)によって、音の質感が違うこともあるのだ。もちろんテナーの音がアルトに聞こえる~なんてとこまで異なることはないと思うが、例えばテナーの場合だと、落ち着いた感じの音色がパリッと明るい感じになったり、ヴォーカルの場合では、声が太くなったり細くなったりと・・・けっこう違って聞こえるものなのだ。
もちろん、版によって音が違うからって、それが何なんだ? それよりいろんなタイトルを1枚でも多く聴こうよ~という考え方も充分に正論だとは思う。僕もそう思う(笑) そりゃそうだ・・・同じタイトルのレコードを2枚~3枚と持たなければいいのだから(笑) でもちょっとだけ、僕も含めて「同じレコードを2~3枚持っている」という人の弁護をするのならば、それは決して最初から聴き比べをしようと意図していたわけではなくて、そのレコード(演奏)を好きだから、なんとはなしに2~3種集まってしまった~ということだと思う。そうして聴いてみると「あれ、何か違うぞ?」と気づいてしまう・・・それが不幸の始まりだ(笑)そんな不幸を充分に自覚しながらも、今度は意図して(笑)いろいろ好きなレコードの聴き比べをしたくなってしまうのだ。
実際・・・好きなミュージシャンのこととなるとそんな微妙な違いがけっこう気になる。なぜなら・・・なによりもパッと聴いた時の雰囲気が変わってくるからなのだ。雰囲気が変わるのは、その音色や声の質感が微妙に違うからだと思うわけだが、特にヴォーカルにおいてはこの「雰囲気」は大きな要素だと思う。声の質感が違うと・・・その歌い手の年齢が平気で10歳くらい違ってしまうのだ(笑)

2009年5月30日~ Yoさん宅に、denpouさん、recooyajiさん、konkenさん、bassclef の5人が集まった。いやあ・・・聴いた、聴いた(笑)10:15から20:15までたっぷりの10時間。音から離れたのは晩飯休憩の時間だけ。いろいろ聴いたのだが、今回は「聴き比べ」の場面に絞って書いてみたい。[写真~全てYoさん提供。ハワード・マギー3点は、denpouさん提供]

<エセル・エニス/Lullabys For Losers>jubilee盤

Lp1021_jLp1021_l これ、2008年の白馬でパラゴンさんがかけた1枚。しっとりした唄い口が実にいい感じの女性ヴォーカルだ。Yoさん、この魅惑盤の1st、3rdをさっそく入手しており、この2種を掛けてみる。

1st盤~
エセルは黒人歌手としては「あっさり系」だと思うが、白人歌手に比べれば粘る感じももちろんあると思うし、この1stでは、肉厚な声に適度なねっとり感がとてもいい。jubileeレーベルってこんなにいい音だったのか(笑)
Jgm5024_j
Jgm5024_l_2そうして、3rd盤~
あれ?声がだいぶさっぱりしたぞ・・・肉厚というより爽やかな感じになり、なんだかエセルさんが10才くらい若くなったように聞こえる。こちらの方がもう少し美人になったような気もしないではない(笑)Yoさん、これも悪くないよ~と嬉しそう。
僕の好みは、厚めの1st盤だったが、2nd盤を聴いた後だと、そういえば、1stの方は、声がちょっと「厚め」になりすぎているかもしれない・・・爽やかな感じの方がエセルの本当の声質に近いかもしれない~とも思えてくる。「唄」の好きな方には、声の感じのちょっとした違い~というのは大事なことだろう。

Howard_mcghee_stereo_001_2 <ハワード・マギー/Dusty Blue>bethlehem盤

この渋いレコードをなぜか、recooyajiさんとdenpouさんが、揃って持ってきていた。そしてうまい具合に、reocoyjさんはモノラル盤、denpouさんは・・・ステレオ盤青ラベル。
こりゃちょうどいい。さっそく聴き比べだ(笑)

Howard_mcghee_stereo_003ステレオ盤~うん、いい!パリッと輝く感じがあってメリハリの効いた音だ。ステレオになっていてもどの楽器にも音圧感・・・というか実在感があり、薄い感じはしない、とてもいいステレオ録音だと思う。ピアノのタッチの強弱感もいい。ピアノはトミー・フラナガンだ。
モノラル盤~こちらもいい。ベースの音がぐんと厚くなって、管部隊全体の重心が下がってくる。分厚い感じは・・・やはりモノラルの方がよく出ている。

Howard_mcghee_stereo_002_2  両方ともとてもいいことは間違いないのだが、僕の好みでは、やはり「ステレオ」の方が聴いていて楽しかった。マギーのトランペットに加えて管が2人(テナー~ローランド・アレキサンダー、バリトン~ペッパー・アダムス)入っているので、テーマの合わせ部分で皆がパア~ッと吹く時の音圧感と拡がり・・・これが気持ちいい(笑)そんな場面では、やはりステレオ盤の方に軍配が上がるようだ。

ところで、ベツレヘムのステレオ録音というと・・・ちょっと意外な感じがする。ちょっと遅めにステレオ録音を開始したのかもしれない。そういえば僕もあの有名な「レフト・アローン」を聴いた時に、それが「ステレオ録音」だったことに驚いたことがある。
僕の聴いた「レフト・アローン」は日本コロムビアのベツレヘム・アンソロジーものだったが、それでも元録音の素性の良さを充分に窺える音の良さだった。「ベツレヘムのステレオ録音」~これは侮れないね・・・と皆の意見が一致した。これからは「青ラベルのベツレヘム」にも要注意だ(笑)
それにしてもこんないいレコードを僕はまだ未入手だったとは・・・。
このレコードの音がいい~と感じたのは、以前にrecooyajiさん宅でモノラル盤を聴かせてもらった時だ。特に感じたのはベースの音がいいことだ。そのベース弾きは・・・Ronald Carterと表記されていた。ロナルドで・・・カーター? うん、ロン・カーターのことじゃないか!そういえば、時々、ロン・カーターっぽいフレーズが出てくる。しかし・・・そのベース音の重さ・強さは、僕らが知っているロン・カーターとはだいぶ違う。録音年は1961年6月。ロン・カーターの録音としてはかなりの初期だと思う。
この「ロン・カーター談義」絡みで、僕の感覚で言うと・・・というのは・・・「ロン・カーターの太い音」と言っても、やはりそれはミルト・ヒントンやジョージ・デュビュビエ、それからウイルバー・ウエアというタイプとは違うはずだ(そう捉えている)そんな「僕のロン・カーター観」でこのベツレヘム盤両者を比べると・・・ステレオ盤で聴かれるベース音がちょうどいい重さなのだ。

Rlp420_j そしてこのことは、このちょっと後に聴いたジョニー・グリフィンの「ケリー・ダンサーズ」ステレオ盤/モノラル盤~ベース奏者はもちろんロン・カーター~の聴き比べでも同じことが言えるのだ。
このグリフィン盤(録音は1962年1月)でのロン・カーターもとてもいい。ベースをピチカットする際の強さ・速さがあるようで、一音一音に「切れ」がある(というのは、後年のロン・カーターは、そのピチカットに切れがないというか、ちょっともったりした感じがあり、Rlp9420_lその結果、ビート感も緩い感じになっているように思うので)
そしてKelly Dancersのステレオ盤/モノラル盤~この比較でもやはり一般に音が太くなるモノラル盤では、カーターのベース音がたくましくなりすぎて、僕の思うロン・カーターのベース音というのは・・・すっきりしたそれでも充分に重くビートの効いたステレオ盤の方になるのだ。
もっともそれは、僕の思う「カーターのベース音イメージ」Rlp420_l_2であって・・・出てくるサウンドだけに興味を移すのなら、あくまで「強く重く」出てくるモノラル盤でのロン・カーターを楽しむ・・・というのも全く可能なわけで(笑)その辺のことを判った上で・・・recooyajiさんがズバリこう言った。
「(ロン・カーターの本来の音がどうであれ)そんなの僕には関係ない(笑)」
うん、そういう聴き方もありだったか(笑) でも・・・それが「レコード」なんだ。レコードの楽しみ方はまったく各人の自由なのだ。

ついでにもう1枚~初期ロン・カーターもので、いい感じのベース音が聴かれるレコードがある。
ベニー・ゴルソンのFree(cadet)である。ビクター国内盤(ステレオ)で聴いているが、これも元録音の素性の良さを感じる。そしたらこのCadet盤~録音はVan Gelderであった(笑)Freeの方は1962年12月とだいぶ進んではいる。ロン・カーターがマイルスのバンドに入ったのは1963年3月(seven steps to heaven)頃かな。ちなみに、この「Freeのピアノもトミー・フラナガン。まったく・・・ちょっといいな・・・と思うとたいていピアノはトミフラなのである。凄いピアニストだな。
私見では、ロン・カーターが一番いいのはマイルスバンドの初期くらいまでだと思う。レコードに残ったマイルスのcolumbia音源はどれもベース音が小さめで、多少は録音の関係もあるかと思うが、やはりカーター自身が弦を弾き込む時の一音一音そのものが(初期に比べれば)やや弱めになっているかと思う。だからこそ・・・僕はマイルス以前の初期ロン・カーターを好むのかもしれない。

Mgn1001_flat_j <ベン・ウエブスターのtenderly4種>
(Cunsummate~1stと2nd、Tenor Saxes、Our Best)
これはある意味、驚愕の聴き比べだった!
tenderlyを収録してあるのは、まずオリジナルのConsummate。Mgn1001_flat_lそれからオムニバスであるTenor Saxes~この2種については2年ほど前だったか、この夢レコでも記事にしたことがある。
今回、Yoさんが再びこの題材を持ち出したのには、もちろん正当な理由(笑)がある。もうひとつオムニバス・・・というかベツレヘムレーベルのアンソロジー的なOur BestというLPを入手して、そこにも入っていたtenderlyを聴いたら、それも相当にいい音で・・・というわけで、じゃあそのOur Betsバージョンも含めて、ついでにConsummateの1stと2ndもあるので、こりゃあ、ウエブスターの快演 tenderlyの4種聴き比べだあ!と相成りました(笑)
Mgn1001_flat_2 
Mgn1001_grooveguard《1st盤と2nd盤~これは微妙な違い。表ジャケも裏ジャケも全く同じ。黄色・大トランペットのセンターラベルも同じ。しかし・・・盤の重さが違った。やはり1stの方がいくらか重かった。 そして1stはフラットディスク盤(写真上)、2ndはグルーヴガード盤(写真下)ということらしい。これはYoさんの素晴らしい発見だ。

Yoさん・・・ジャケットから出した4枚の盤をなにやら弄(まさぐ)っている。そして「ウエブスターのtenderly・・・ちょっとこの4枚で聴いてみて」というわけで、そうか・・・4種のどの盤のバージョンは事前に知らせずに、聴いた音の感じで順序(あくまで、個人の好みの幅の中での順序ですが)をつけてもらおう~という魂胆だな(笑)
僕はTenor Saxesだけ持っていて、その「音の感じ」を好きだったので、この2番目はすぐに「良い!」と感じた。 Mgn1034_j_2
こうした「聴き比べ」では1曲全部を聴くと長いので、まあ「音の質感」だけを聞き比べたい場合は、たいていは曲の途中で針を上げる。せっかちな僕はその方がいい(笑)同じ曲の同じ部分を(例えばサックスが高い方のフレーズで「プア~ッ」と音を伸ばした場面とか、ドラム奏者がシンバルを「シャア~ン」と入れた場面とか・・・そんな特徴的な一場面を覚えておいて・・・そこを比較するのが、僕の「聴き比べ」のやり方だ。konkenさんとはいろんな話しをするのだが、彼などは「聴き比べ」であっても、その1曲を通して聴いてみて全体からの印象~ということで比較してみたいようだ。そういう「全体」からの印象比較も、その作品(1曲)をちゃんと味わいたい・・・という意味では、正しいかもしれない。

そんな具合に4つのtenderlyを聴いてみて・・・この時点では、どれがどの盤のものかは明かされてない。Yoさんはこういう仕掛けが好きなのだ(笑)(3の盤質がやや悪かったことは判断材料には入れずに聴いても)1と3が同質、2と4が同質と聴いた。大雑把に言うと、1と3は「丸みを帯びたマイルドな味わいのベン・ウエブスター」であり、2と4は、「もう少しキリッとした、(1と3に比べれば)やや硬質のウエブスター」になっていたように思う。
Mgn1021_j実際、こうして続けて比べて聴いてみると・・・その質感というものは、かなり違うのだ。そうして、僕の好みは(このウエブスターのtenderlyについての)全体に抜けのいい、2と4のバージョンだった。Mgn1021_l
驚いたのは・・・4番目に流れたその音の鮮度感の高さである。ピアノのイントロからして、はっきりと「クリアー」な気配が漂う。大げさでなく「はっ!」とした。2番を「良い」と感じたその質感が増して、サックスの音色 にもう少し、深みと輝かしさが加わってきたようなのだ。

《かけた順番は・・・Consummate2nd~Tenor Saxes~Consummate1st~Our Bestであった》
「どれが好きですか?」というYoさんの問いに、僕は「ダントツに4番目」と答えるしかない。後は・・・各々の好みである。そうしてレコードの番号順から判断すると、発売順は、Consummate~Our Best~Tenor Saxesなので、やはり後者2つは、何らかのマスタリングが施されているはずだが、そのマスタリングが、絶妙な具合に出来上がっている~というようなことを仰る。ただそれは「良い・悪い」レベルの話しではなく・・・単に「違いがある」ということであって、Yoさんもその辺りは熟知しており、どちらが良いというような決め付けはもちろんしない。
denpouさんは「僕の(にとっての)ウエブスターは・・・マイルドな方かな・・・」とつぶやく。それも充分に判る・・・最後は好みなのだ。

こうした「聴き比べ」自体・・・あまり興味がない方も多いかと思う。冒頭に言い訳めいたことも書きましたが、まあこの辺は、bassclefとYoさんの病気ということでお許しください(笑)

この日の集まり・・・もちろん聴き比べばかりで10時間過ごしたわけじゃない(笑) いろいろ聴いたレコードのことはまた別の機会にお知らせしたい。
帰り際・・・マリガンmeetsモンクのジャケットが目に入った。3種(モノラル青(2人の写真:有り/無し、ステレオ黒)が並んでいる。
「なんでこんなに?」konkenさんが尋ねると・・・Yoさん、ひと言「このレコード、好きだから」(笑)

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2009年5月 5日 (火)

<ジャズ雑感 第28回> ジェリー・マリガンという人 

相手の個性を際立たせ、自らも生かすカウンターの名手。

007その人のレコードを集めよう!と強く意識したわけでもないのに、知らぬ間にレコードが増えてしまう・・・そんなタイプのミュージシャンがいるかと思う。僕の場合だと、バド・シャンクやポール・デスモンド、それから、ジェリー・マリガン・・・マリガンこそ正にそういうタイプのミュージシャンだった。マリガンは、バリトンサックス奏者としては(例えば、ハリー・カーネイやペッパー・アダムスに比べれば)さらっとしたライトな味わいの音色で、さらっとしたフレーズを淡々と吹く。どちらかというと強い個性のジャズメンを好んで聴いてきた僕は、だから、マリガンのそういう淡白な持ち味に対し、なかなか自覚的に「惹かれる」というところまでは至らなかったようだ。しかし・・・集まるレコードの数というのは正直なものだ(笑)pacific,verve,emarcy,limelight もちろん全部ではないが、たいていのタイトルが集まっていたのだ。ある時、それを自覚した・・・オレはマリガンが好きなのかな?
僕のマリガン聴き込み(というほどのことはないのだが)は、もちろんチェット・ベイカーとの初期カルテットから始まり、次にマリガンのビッグバンド~コンサート・ジャズ・バンドが好きになった。そのConcert Jazz BandのVerveの諸作をひと通り聴いてしまい、次にlimelight盤もいくつかを聴いてみると、そこにはそれほどいいと感じるものがなく、その辺りまでくると・・・マリガン本人の個性というもの自体には、実はそれほど惹かれてないことに気が付いた。初期カルテットもよく聴いたが、ほとんどチェットの方を聴いていたのだ。そこで再び自問自答・・・オレはマリガンという人をホントに好きなのかな?(笑)
そう考えてみると・・・これこそがマリガンだあ!てな具合にバリサク奏者としてマリガンの持ち味を感じさせてくれるようなレコードが・・・作品数が多い割には案外に少ない。006
マリガンのバリサク・・・ああ、ひとつ、いいのがあったぞ。それは、強烈さとは無縁の、しかし不思議と何度でも聴きたくなる、穏やかな味わいのレコード・・・Jeru(columbia)だ。
このレコードは、一発で気に入った。一発というのは、本当にA面の最初の出だしから・・・という意味である。
A面1曲目は capriciousというボサノヴァ風の曲なのだが、これがもう・・・気持ちいいのである(笑)何がいいって・・・そのバリトンのライトな音色、ドラムスのデイブ・ベイリーの抑えた叩き方、トミー・フラナガンのピアノもジェントルでありながらピシッとリズムの効いたコンピング(和音の押え方)だ・・・そうしたもの全てが一体となって誠に「趣味のいい」サウンドを造り上げているのだ。考えてみれば、もともと「音」に理屈はないわけで、音楽というのは「音」そのものに快感がある・・・とも言えるわけで・・・だから「いいサウンド」を生み出すミュージシャン、あるいはバンドというものは、それだけでもう素晴らしいわけである。
それにしても、マリガンさん、なんでこういう作品~ワンホーンでじわじわ吹き込むような持ち味~をもう少し造らなかったのかな?
てなこと考えながら、ジャケット裏を見て驚いたのだが・・・produced by Jazztime Productionとなっており、Executive ProducerがなんとDave Baileyとなっているではないか!う~ん・・・ドラマーがプロデュースする~というのも珍しいだろうし、でもやっぱりミュージシャンでもあり、そうして趣味のいい人がプロデュースすると、こういう趣味のいいレコードができるのだろうなあ。008
もう1枚は・・・Gerry Mulligan Quartet(columbia)
このレコード、僕はCBSソニーから出た1300円盤で聴いていたのだが、オリジナル盤というものに惹かれるようになってから、米columbiaの<6ツ目CSステレオ盤>が好きになったので手に入れた。こちらも理屈ぬき・・・バンドのサウンドが心地よいのだ。columbiaレーベルのマリガン作品は少ないが、その数少ない2枚ともに僕が惹かれたのは・・・おそらく偶然ではない。
この2枚とも・・・相方がアート・ファーマーなのである。私見では、マリガンとファーマーの「音色のブレンド具合」がとてもいいのである(というか、それが僕の好みということなのだろう) マリガンのいい意味での軽さとファーマーの潤いのある音色が混じると、バンド全体のサウンドがしっとりした感じになるというか・・・いい感じの温かみが生まれるのだ。ついでに言うと、そのしっとり感と米columbiaレーベルの温かみのある音質~こちらの相性がとてもいいように思う。
この2枚に、もう1枚~night lights(philips)だ。これも素晴らしい。こちらには名手~ジム・ホールが入った分、またちょっと違う味わいがあるが、マリガンが「バンド全体でひとつのムードを造り出している」という点では似た質感の作品だと思う。これらの嬉しい例外の他には・・・僕にとって「マリガンの愛聴盤」と言えるものが、長いこと、なかったように思う。

余談だが、僕が好みでないブレンドがある。マリガンとはうんと古くから共演しているボブ・ブルックマイヤー・・・僕は彼が苦手なのである。それはたぶん・・・ブルックマイヤーが悪いわけではない(笑)あの楽器~ヴァルブ・トロンボーンが悪いのである。あのモゴモゴとした音色が・・・本能的にダメなのである。器楽の味わいとしての話しになるが、トロンボーンの「抜けの良さ」というのは本当に気持ちいい!それに比べ、あのヴァルブ・トロンボーン(トランペットと同じように3本のピストンで音程を造る型のトロンボーン)の音色というのは、宿命的に「抜け」が悪いように感じる。

しかし、このところ・・・マリガンのいくつかのレコード~
Gerry Mulligan Meets Johnny Hodges(Verve MGV-8367)
Gerry Mulligan Meets Ben Webster(Verve MGV-8343)
Getz Meets Mulligan in HI-FI(Verve MGV-8249)
を聴くに及んで、マリガンという人に対する僕の感じ方が、ちょっとづつ変わってきた。
ちょっと前の<夢レコ~クリフォード・ブラウン>で「音色そのものを味わいたい」というフレーズを記したが、マリガンの場合も、少ない編成でじっくりとバリトンサックスを吹くマリガンの音色・・・(僕にとっては)やはりこれが気持ちいいのである。
この3枚・・・言わばVerveのGerry Mulligan Meetsシリーズである。この1~2年で、これら3作を入手して聴いてみると・・・どれもが「愛聴盤」になってしまったのだ(笑)
ホッジス、ウエブスター、ゲッツ・・・それぞれに強烈な個性を持ったサックス奏者とマリガンがmeetsする~邂逅というのも大げさだし、シンプルに共演するという感じだろう~というノーマン・グランツの企画ものである。実は、僕はこの「meetsもの」を案外、低く見ていた。JATPでも後期にはマンネリ傾向があったと思うが、要するに大物同士を対決させてそのブロウ合戦を楽しむ・・・といういかにもお手軽な思いつきという感じで、まあだからこの手のレコードまで手が伸びる順番がこんなに遅くなったのだが(笑)

0022~3年前だったか、ホッジス盤を入手して聴いてみた。これが・・・対決とは程遠い実に和(なご)やかなムード溢れるいいセッションだったのだ。僕はこのレコードで、改めてジョニー・ホッジスという人の「芸」の細やかさを感じ取ることができた。そうしてその芸を引き出したのは・・・間違いなくジェリー・マリガンの絶妙な合わせなのである。さきほど「音色のブレンド」ということを書いたが、そのブレンドの具合の良さといったら・・・これはもう絶品なのである。
マリガンという人はアレンジャー出身ということもあるだろうが、いつも「サウンド全体」を意識しているように見える。というのは・・・例えば、このレコードA面1曲目(bunny)のテーマの部分~マリガンの鳴らすバリサク(バリトン・サックス)の音には、無自覚に思うがまま吹くというような気配はなく、その時の相手のフレーズ、その音量、その盛り上げ具合・・・そんな相手が造ろうとしている「流れ」に応じて、自分が吹くバリサクの「鳴り具合」をコントロールしているような感じを受ける。マリガンという人・・・だいたいがおそらく3~4割ほどの抑え目の音量で吹いているように聞こえる。それは淡々として迫力不足とも取れるのだが、こういうホッジスのような「強烈個性」の持ち主と相対する場合には、それが逆に効果的に映るのだ。それは相手を生かしつつ、自らも生かす~という、不思議だがそういう感じなのだ。
Meets Hodgesには、いいバラードが入っている。what the rushという曲なのだが、これはもちろんホッジスの見せ場として選んだようで、だから、この曲では、マリガンはただの一音も吹かない。そういうセンスも素晴らしいじゃないか。
僕が思うホッジスの名人芸というのは、メロディの音程のごく微妙なピッチを(音程~この場合、半音のまた半分くらいの量)ベンドさせるような技~たぶん絶妙なリップコントロール(唇の締め具合)のことなのだが、全体には静謐(せいひつ)で淡々としたこのバラードの中で、その決め技が見事な隠し味になっているように思う。
この地味なバラードの作者が、なんとジェリー・マリガン、その人なのである!
(クレジットによると、Mulligan-Holidayとなっているので、ひょっとしたら、ビリー・ホリデーも唄っているのかもしれない)*追記~この「ホリデー」については、NOTさんから正確な情報を頂きました。NOTさんの5/6付コメントをご覧ください)

004 そして、ベン・ウエブスター盤~ウエブスターの力感溢れる濃厚なテナーの音色。これは・・・濃い!(笑)
それはまるで太いチューブから練り出されてくる濃厚な色の絵の具のようでもあり、それは正しく「強烈な個性」と言っていいかと思う。そのウエブスターとマリガンの対比が、これまた実にいい按配なのだ!
スタンダード曲ではchelsea bridgeとsunday。マリガンという人は、バラードを大好きなようで、ホッジス盤と同じように、こちらのウエブスター盤にも自作バラードを忍び込ませている。tell me whenという曲だ。これがまたなかなかいいメロディで、ウエブスターがそれを味わい深く吹いている。
マリガンはウエブスターの吹くメロディに、時々、優しく寄り添うように合わせフレーズを入れてくる。それは伴奏としてのフレーズであり、決して自らを主張してくるような感じではない。この1曲全体を仕上げたい・・・というマリガンの気持ちのこもった「合わせ」のように思えるのだ。
chelsea bridgeでは、ウエブスターの吹くテーマのバックで、はっきりと「バリトンサックスで伴奏」している(笑)その伴奏のやり方がとてもユニークな吹き方で~ピアノでいうトリルのように高い音と低い音を素早く交互に繰り返す技~それはユニークなだけでなく、見事に効果的なのだ。こんな技を静かなバラードのバックにさりげなく差し込んでくるマリガンという人も、そうとうな曲者なんだろうな(笑)

003 それからゲッツ盤~実はこの3枚の中では最も面白くない・・・と思っている。ゲッツのテナーとマリガンのバリサク・・・一見、最も相性が良さそうじゃないか。でも・・・「音色のブレンド」(もちろん僕の好みの)という観点から見ると・・・案外に面白くないのだ。私見だが、ゲッツとマリガンは~楽器は違うしフレーズも違うのだが~音色の質感が・・・よく似ているのだ。
一度、口の中に溜めておいた息を小出しにするような吹き方(と推測している)で、音色がちょっとくぐもった感じや、サブトーンの割合・かすれ具合などの質感が近いように思う。2人の質感が似ているためか・・・ホッジス、ウエブスターとの共演盤のような「コントラストの妙」が、やや弱いように思える。

Mg_v8348_j_2《追記1~みなさんもコメントで触れてましたが、この「ゲッツとマリガン」A面の3曲~
let's fall in love
anything goes
too close to comfort

は「ゲッツ=バリトン、マリガン=テナー」と、お互いの本職の楽器を入れ替えて吹いてます。そうしてYoさんがコメントで紹介してくれた Stan Getz And Gerry Mulligan, Stan Getz And The Oscar Peterson TrioGetz_mulligan_2tunes_2(MGV8348) というレコード・・・そちらには本職楽器での2曲~
Scrapple From The Apple
I Didn't Know What Time It Was
が収録されているのに、ジャケット写真は「楽器入れ替え」とのこと。ゲッツの表情も面白いので、ご覧ください。 そして、この8348番に収録の2曲、やはり本職だけあって出来がいい。(この2枚の写真提供~Yoさん)》

《追記2~この8249番:Getz Meets Mulligan~すでにNOTさんがコメント(5/7付け)してくれたように、2種のジャケットがあります。Mulligan_meets_getz_2nd
写真自体は同じですが、「1色」と「2色」の2種です。参考に「2色刷りのジャケット」写真も載せておきます。(以下は「2色ジャケ」の方が再発としての話し)
なぜタイトルを「マリガン主役」のMulligan Meets Getzに変えたのか? 
なぜジャケットのデザインを変えたのか?
この辺りのことについては、マリガン好きであるYoさんも大いに興味を持ったようだ。楽器入れ替えの出来映えへの評価とか、また入れ替えテイクがA面3曲全部ではなく、too close to comfortだけかも?という説もあるらしく・・・この「ゲッツmeetsマリガン」にはなかなか謎が多い(笑)楽器入れ替えの真実については~それぞれがA面を聴き込んでみての連日(笑)のメールやりとりの結果・・・2人とも「やっぱりA面の3曲とも入れ替えてるね」それから、その出来映えについても「やっぱり本職でないとアカンね(笑)」という至極当たり前の結論に落ち着きました。楽器入れ替え~その聴き分けのポイントとして・・・Yoさんはまず「バリトン」に注目したようだ。Yoさんは、おそらくマリガンを聴き込んでいるので、マリガン独特のあの「柔らかさ」とは違う何かを鋭く感じ取ったのだろう。
《バリトンでマリガンならバフッと柔らかく出るところがブッと強めに出たりするのでゲッツかな》
僕の場合は、マリガンをそれほど聴き込んでいないのと、バリトンという楽器の特徴ある音色そのものがどうやら脳髄に強く印象付けられてしまっているようなので、「バリトン」という楽器での音色の違いにはなかなか注目が行かなかった。それでもマリガンの「バフッと柔らかく」という感じはよく判るので、この場合、Yoさんが言うところの「ブッと強め」というのは、たぶんマイナス要素だろう。
その辺りを意識してバリトンのソロを聴いてみると・・・なるほど、Yoさんが言うのはこういうことかな・・・と思える場面がいくつかあった。《Yoさん仰るように「バリトンの一番低い方の音~これが・・・さすがにゲッツでも鳴ってない(笑) ブワッ!と吹く時、ちょっと割れたような、まあどちらかというとガサツな汚い音になってるみたいですね。要は「鳴ってない」のかな》
そんなわけで、僕の方は「テナー」に注目した方が判りやすい。A面3曲のテナーソロを聴くと・・・音色自体もちょっと堅めで詰まったような感じだし、高音域のフレーズではピッチ(音程)がけっこう悪いように聞こえる。そして決定的なのは・・・テナーのソロにイマひとつ冴えがないことだ。こんなフレーズに閃きのないテナーが・・・ゲッツのわけがない(笑)
そんなわけで、ここしばらく、Yoさんはマリガンをいろいろ聴いたようだ。そうしてそれは、僕の方も同様である(笑)
ジャケットのデザイン・タイトル変更については・・・以下、もちろん推測です。この3枚の番号はこうなっている。
Gerry Mulligan Meets Johnny Hodges(Verve MGV-8367)
Gerry Mulligan Meets Ben Webster(Verve MGV-8343)
Getz Meets Mulligan in HI-FI(Verve MGV-8249)
つまり発売は・・・ゲッツ~ウエブスター~ホッジスの順なので・・・そこから考えると、最初のゲッツ盤の時点では、まだ「マリガン主役のmeetsシリーズ」という概念はなくて、その後の2枚がYoさんも仰るように出来もよかったので、(ホッジス盤の後)、ゲッツ盤を再発する折に・・・グランツが「マリガンmeets シリーズ」として考えて、ジャケ・タイトルを変更した~という流れかな、と思います。
グランツがそう考え直したのは・・・・NOTさんも?付きでコメントされたように、マリガンお得意のクレームがあったのかもしれません(笑) いや、それよりもグランツがマリガンに気を使いつつ、「Mulligan meets シリーズ」にした方が、より売れる・・・と判断したのかな》


コントラスト・・・という観点で実はもう1枚、興味深いレコードがある。ご存知・・・Mulligan Meets Monk(riverside)である。モンクのこととなると・・黙っちゃおれない僕だけど、今回は「バリトンと他のサックス奏者との音色」がテーマでもあるので・・・そのモンク盤のことはまたいずれ取り上げたいと思います(笑)
ウエブスター盤の場面で「合わせフレーズ」という言葉を使ったわけだが、この3枚のMeetsシリーズを聴いてからは、マリガンというと・・・反射的に「カウンター」という言葉が浮かんでくるようになってしまった。この言葉はボクシングのカウンターと同じ語源のはずだが、ジャズの世界では、他の誰かが吹く主メロディに絡むように別のメロディ(というかフレーズ)を吹く場面のことを「カウンター的に」とか「対位法的に」という意味で使っていると思う。
そうして、「カウンター」といえば「あしたのジョー」だ(笑) 相手がパンチ(例えば左ストレート)を繰り出してきたその瞬間、こちらは右ストレートを相手の左ストレートにかぶせるように打ち込む必殺のパンチである。
ただし・・・マリガンの「カウンター」は、ボクシングのカウンターとは意味(効果)が決定的に違う。ボクシングの「カウンター」は相手を倒すためのものだが、マリガンの繰り出すカウンター(的メロディ)は、相手を生かすためのものなのである!
それは相手を生かしつつ、自らも生かす~という「優しいカウンター」・・・なにかしら東洋の哲学のような雰囲気さえ漂ってくるではないか(笑)
マリガンという人の味わい・・・それは、和紙に沁み込んだ濃い絵の具が、自然にじわ~っと拡がってくるような、そんな優しい表れ方のようでもあり・・・そうしてそれこそが、マリガンという人の真の個性なのかもしれない。

ジャズはまだまだ面白い。

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2008年11月18日 (火)

<ジャズ雑感 第27回>バド・シャンクのpacific盤

好きなバラード:アルト編(その2)

前回、パーカーのことを書いてみた。音楽から受ける印象というのは、もちろん人それぞれだと思うが、僕が感じているところのパーカーのアルトの質感・・・それは圧倒的な密度を感じさせるあの重い音色であり、そうしてその音色は微妙にピッチ(音程)がズレたようでもあり、しかしパーカーがその個性的な音色でもって迷いのないフレーズ吹くと・・・その「パーカーの音」は不思議に僕の心に食い込んでくるようでもある。そんな脳髄が麻痺するような感じを「白痴美」という言葉で表そうともした(笑)
そんな風に、僕にとってのパーカーをなんとか表現しようとしたつもりではあるが・・・やはり音の表現というのはなかなか難しい。
そりゃそうだ・・・音楽なのだから最後はその「音」を聴くしかないし、聴くことにこそ価値があるわけで、ただの言葉からその「音」の真実~その聴き手にどう感じられたかという真実~が判るはずもない。音楽は聴くものだ!聴いて何かを感じることだ!それでいいのだ!
・・・そんな「言葉は無力」的な気持ちにもなったこともあり・・・しばらくブログを更新できなくなってしまった(笑)

いずれにしても、この一時期にパーカーを色々と聴いてみて・・・パーカーの強烈な音を浴びてみて・・・僕は「パーカーという人の個性」を改めて感じずにはいられなかった。パーカーは、何をどう聴いてもパーカーなのだ。
「パーカーの音」を僕なりに整理すれば、あの「太い音色と微妙なピッチのずれ感」こそがパーカーの個性と言えるのかもしれない。そうして・・・ジャズはやはり個性の音楽なのだ!
そんな「パーカー毒」のせいで、いや、おかげで(笑)僕のアタマもいくらか麻痺してしまったようだが・・・この間もレコードだけはいろいろ聴いていて、そうして「ジャズの個性はひとつだけではない」という当たり前のことを思い出したりもした。アルト吹きは、もちろんパーカーとドルフィだけではない。ジャズ好きはそれぞれに自分の好きな個性を見つければいいのだ!

そういえば、だいぶ前に「好きなバラード~アルト編」(タイトルは「ペッパーのモダン・アート」)というのを書いた。
僕はジャズのスタンダードソングを好んで聴いているが、どうしてもいいバラード(スローなテンポで演奏されるスタンダードとでも言おうか)も聴きたい。だから、1枚のLPの中に1曲でも素敵なバラードが入っていると・・・そのレコードを好きになったりする。
そんな訳で、今回は「アルト編2」ということで、僕の心に留まったバラード演奏をいくつか紹介してみたい。とは言うものの、実は・・・僕はアルトにはそれほど詳しくはない。僕のジャズ聴き遍歴を大雑把に分けると、最初の15年が黒人ハードバップ系~次の15年で白人ウエストコースト系~ここ5年はバップ、スイング系~という具合にジャズ聴きの興味が拡がってきた。その間、楽器への好みとしては「アルトよりテナー」という感じでジャズ聴きをしてきたので、アルトという切り口ではそれほど深く入り込んでいないのだ。最初に好きになったハードバップは、もちろん今でも本線として聴いているが、ことアルトに関しては、ジャズ聴きの早い時期に好きになった、アーニー・ヘンリーとドルフィー、そしてパーカーの3人以外はそれほど深くはディグしていない。マクリーンもアダレイも、もちろん嫌いではないのだが・・・深く入れ込んだことはない。なぜだかあの3人から先に進まないのだ。そうして西海岸ものを聴くようになってから、特に「バラード」という観点からいくと、ペッパーを初めとして、チャーリー・マリアーノ、バド・シャンクといった白人系のアルト吹きに興味が湧いていったようだ。だから、今回「好きなバラード~アルト編」という括りになると・・・そんな白人アルト吹きの名前ばかりがアタマに浮かんできてしまうのだ。
バド・シャンク、ハーブ・ゲラー、チャーリー・マリアーノ、ハル・マクージック、ディック・ジョンソン、ロニー・ラング、ジーン・クイル、ジョン・ラポータ、ジョー・メイニ、そしてフィル・ウッズ・・・そんな感じか。ああ、それからもちろん、リー・コニッツやポール・デスモンド、それからペッパーにも登場してもらわねば(笑) 

まずは、バド・シャンクからいこう。僕にとってバド・シャンクという人はちょっとばかり不思議な存在で・・・というのは、僕はアクの強い(個性の強い)タイプに惹かれることが多いのだが、シャンクはどちらかというと、そういった「アク」が一切ないとも言えそうなタイプだし、それまでの自分の好みから言っても、特に「シャンクのレコードを集めよう」とも思ってはいなかったのだが、知らぬ間にレコードが集まってきてしまった・・・というアルト吹きなのである。だから、もちろんシャンクを嫌いなはずはないのだが、彼のアルトを「~ だ」と表現するような巧い言葉が、僕には見つからない。とにかくもう・・・アルトの音色が美しいのである。あのアルトの音色には・・・例えば彫金の名工が造り上げたような、渋い輝きと品格を感じる。
そんなシャンクの60年代のレコードを以前の<夢レコ>で取り上げたことがある(plays ルグラン)が、今回はうんと初期のものからいくつか挙げてみたい。Dscn2207
Laurindo Almeida Quartet(pacific PJLP-7)10インチ~艶ラベル
B面2曲目の noctambulism というバラード曲に参ったのである。アルメイダはブラジル出身ののガットギターの名手なので、このレコードはブラジルの伝統的なリズムを生かしたギターミュージックという色彩が濃いのだが、このnoctambulismだけはひと味違う。
ゆったりとしたテンポで、クラシック風のメロディが密やかに奏でられる淡々とした演奏なのだが・・・これがどうにも素晴らしい!とにかくもう、このアルトの音色が絶品なのである。艶やかで馥郁(ふくいく)とした、そして品のいい色気のあるアルトの音色なのだ。このアルトの音色・・・こういうのを聴くと、もう理屈ぬきである。たぶんそれは・・・(音色の質感は違っても)パーカーの場合と同じように、器楽的な快感を味わっている部分があるのかもしれないが、そうであっても僕としては一向に構わない。音楽なのだから、鳴った響きをそのまま感じて味わえたのなら、それは悪いことではないだろう・・・たとえそれが錯覚だとしても(笑)Dscn2208
アルトのテーマが終わった後、アルメイダのギター独りだけになるのだが、このギターの音色がこれまた素晴らしい。
ガットギター本来の弦が鳴り、胴が響く、そんな美しさを感じさせてくれるギターの音だ。録音engineerは、Phil Turetskyという人らしい。その裏ジャケットに録音風景の写真が載っているのだが、そうすると後方でヘッドフォンをしている人物が、エンジニアのPhilさんであろう。僕はいくつかのPacific盤の音の素晴らしさから、このPhilさんというエンジニアに密かに注目している。
この10インチ盤がとても気に入ったので、そのvol.2も手に入れた。

Dscn2209Laurindo Almeida Quartet vol.2(pacific PJLP-13)10インチ~艶ラベル 録音~1954年4月
ところが・・・7番から13番の間に何があったのか? このvol.2・・・こちらも悪い音質ではないのだが、微妙に違うのである。残念ながら良くない方に違うのだ(笑)多少、盤質が悪いこともあってか・・・シャンクの音色の輝きの輪郭がほんの少し鈍ってしまったようDscn2210な・・・そんな感じを受ける。これは、もちろんレコードの音質の微妙な味わいのことであって、バラードで演奏されるスタンダードのstairway to the stars はやはり素晴らしい。この10インチ盤2枚が、僕のお気に入りであることに変わりはない(笑)
なお、この2枚の10インチ盤の全14曲は、12インチ盤(pacifc1204)のA面・B面に全曲とも収録されているようだ。その12インチ盤は、フラメンコダンサーが踊っているジャケット(オレンジ色/白色の2種あるようだ)のやつである。

さて、リー・コニッツ・・・この人もちょっと難しい(笑)なんというか・・・あえて情緒を排したような音色に変化をつけないような吹き方で、宙に浮いたようなフレーズを延々と吹く。ある意味・・・パーカー以上に純粋的音響主義みたいな気配がある。うんと初期の頃から「クール」と言われたようだが、実際、いくつか聴いてみても、やはり「冷やかな」肌合いのアルト吹きであることには間違いない。その辺が好みの分かれるところだと思う。僕も熱心なコニッツマニアではないが、たまにあの透徹したような音色を浴びると、けっこう気持ちがいい(笑)
今回、気づいたのだが、初期のコニッツには意外と「バラード」が少ない。意外に急速調で(あるいはミディアムであっても)テーマの最初からベースに4つ打ちさせている演奏がほとんどなのだ。それでも初期のprestigeにスローなバラードと言えそうな演奏があった。
you go to my head(1950年4月)~「サブコンシャス・リー」収録
indian summer(1951年3月)~「エズ・ゼティック」収録 
どうやら・・・初期のコニッツは、殊更(ことさら)に原曲のメロディをそのまま吹かないようにしているようで、単純にスタンダード好きの僕など「なぜだあ?」と思わないでもないが、まあそれがコニッツ流の美学だったのだろう。
001この2曲・・・悪くないが、同じ曲で、もっと素晴らしいコニッツがいるのだ!それは、スエーデンでのライブ音源を集めた「サックス・オブ・ア・カインド」に入っている you go to my head(1951年11月)だ。ライブということもあって、いい感じにリラックスしたコニッツの音色はスタジオ録音の時よりも温かみがあり、同じように抽象的な(スタンダード曲の元メロディを具象とすれば)フレーズを吹いてはいても、あまり分解的な印象がなくて、リズム的にリラックスした感じでおおらかに吹いているようで・・・だから演奏に自然なグルーヴ感がある。この「サックス・オブ・ア・カインド」はなかなかの好盤だと思う。
エルヴィンとのmotion(verve)も快作だったが、どうやらコニッツは・・・「ライブ」の方がいい(笑)
002さきほどシャンクの音色を激賞したついでに、もう1枚コニッツ絡みのpacific盤を挙げたい。僕が愛聴しているのは、Lee Konitz and the Gerry Mulligan  Quartet(pacific PJLP-10)という10インチ盤~1953年にコニッツがマリガン/ベイカーのバンドに客演した時の録音だ。A面1曲目のthese foolish things がゆったりテンポのバラード風だ。ゆらゆらとたなびくような独特なフレーズで原曲のメロディを崩しにかかるコニッツ・・・相変わらずである(笑)でもこのバラードはなかなかいい。
もう1曲だけ同じpacific盤から紹介しよう。これはバラードというよりミディアムくらいのテンポかもしれないが、too marvelous for words である。
これは・・・どうにも素晴らしい! 自分のリーダー作でないのでリラックスしていたのかもしれない。これ、先ほどのバド・シャンクと同じように、やけに生々しい録音も素晴らしいのだが、なによりコニッツの閃きフレーズが、本当に素晴らしいのだ。ひょっとしたら、いつも気難しそうなコニッツが、ベイカーとマリガンをバックに従えて、いいところ見せてやろう~てな感じで気分が乗っていたのかもしれない(笑)残念ながらコニッツのワンホーンではないが、マリガンとベイカーはバックで静かにハーモニーを付けているだけなので、実質、コニッツのアルトをフューチャーしたスタンダード曲と言える。
それにつけても、こういうコニッツのアルトのサウンドをもっと聴きたい!と僕は思ってしまう。さきほど「その透徹したような音色を浴びると気持ちがいい」と書いたが、それは・・・「肌理(きめ)の細かい大理石に触れた時の冷やかさ」・・・そんな感触かもしれない。 003
この1曲~too marvelous for wordsを聴いて、やっぱりコニッツは凄い!と実感した僕である。
このコニッツ+マリガン/ベイカーのセッションは、12インチ盤だと「リー・コニッツ・ミーツ・ジェリー・マリガン」(東芝EMI)になるはずだ。

《追記》コニッツについては、<Storyvilleの10インチ盤:Live At Storyvilleではピッチ(音程)が半音ほど高め>話題がコメント欄にて大いに盛り上がりました。ぜひお読み下さい。その後、NOTさんが実際にそれらの音源を聴き比べた印象などをご自身のブログでまとめてくれました。そちらもぜひお読み下さい。

チャーリー・マリアーノも本当にいいアルト吹きだ。僕はジャズ聴きの初め頃に秋吉敏子の「黄色い長い道」(candid)収録のdeep riverを聴いて、ごく素直にマリアーノを好きになった。そこから遡(さかのぼ)って初期のマリアーノを好んで聴くようになった。
彼の初期の音源はprestige、fantasy、imperial、それからbethlehemなどにあるのだが、この辺りのオリジナル盤はどれも高価でとても手が届かないので、再発もので我慢している(笑) 002_3
マリアーノという人・・・どうやらバラードが好きなようで、初期のレコードにおいても必ずいつくかのバラードを取り上げている。
prestigeには「ニューヨークの秋」、imperialには「it's magic」そしてbethlehemには「darn that dream」などがあり、どれもテーマを吹くだけで短めに終わるのだが、独特の情感が漂うバラードの名演だと思う。
001_3 fantasy音源のCharilie Mariano Sextet(8曲)は、OJC盤[Nat Pierce-Dick Collins Nonet]のB面に8曲とも収録されている。
タイトルのクレジットがNat Pierceになるので、マリアーノ参加ということが、案外、知られてないかもしれない。
このfantasy音源では、come rain or come shine、それからthe thrill is gone が素晴らしい。マリアーノのアルト・・・これはもう判りやすい。どちらかというと淡々としていない(笑)そうして自分の好きなスタンダードソングのメロディをストレートに唄い上げる・・・というより唄い上げようとする。そのアタックの強い音色は気迫に満ちているが、ピッチも良いし、なによりも濡れたようなしっとり感がある。ゆったりメロディを吹いたかと思うと、その合間にも激情的なフレーズを差し込んでくる。Dscn2222この辺の気迫・・・好きだなあ(笑)
マリアーノについても、もう1曲紹介したい。マリアーノは(たぶん)譜面にも強いので、いろんなオーケストラ企画ものに参加していたようで、スタン・ケントン楽団の[Contemporary Concepts](1955年7月)というレコードがある。
A面2曲目~stella by starlightでは、マリアーノがフューチャーソロイストだ。控えめなバックに乗ってマリアーノが「星影のステラ」のメロディをじっくりと吹く。ちょっといつもの激情を抑えたような感じもあり、それがまたいい(笑)

《だいぶ以前に東芝から国内盤を聴いて気に入ったので、capitolのターコイズ・ラベル(青緑)を入手した。音もいいです》

ああ、まだ3人挙げただけなのに・・・このままでは長くなりすぎる。残りのアルト吹きについては、いずれまた。
それにしても、ジャズの世界にはいろんなアルト吹きがいるものだ・・・ジャズはまだまだ面白い(笑)

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2008年10月10日 (金)

<ジャズ雑感 第26回>パーカー再び!

音色・・・その音圧感、存在感からくる説得力みたいなもの。

ジャズ聴きも長くなると、こんなことを言ったりする・・・「この人のサックスは重いね」 「う~ん・・・なんか軽いなあ」
楽器から発された音を聴いた時、聴き手はなぜ「重い」あるいは「軽い」と感じるのか? いや、感じられるのか? 
それはおそらく・・・そのミュージシャンの「音色」からだけでなく、その「ビート感」から生じてくるのでは・・・と考えている。ここでいう「ビート感」とは・・・(僕の解釈では)「リズムに対してのノリ方」という意味合いである。

004April In Paris(Verve)MGV-8004 ~I'll Remember Aprilが好きだ。パーカーのなにやら白痴美的な音色に、しみじみした情感を感じる》

話しを判りやすくしよう。同じ楽器~例えば、アルトサックス・・・チャーリー・パーカーとリッチー・コールを比べてみると、どうだろうか?
どう考えても(聴いても)・・・やはり、パーカーの方が「重い」だろう。もちろんそれは純粋に感覚的なものである。だがしかし、そういう感じ方~「パーカーは重くて、コールは軽い」~は、ある程度ジャズを聴き込んだ人には、無理なく共通した感覚だとも思う。
ひょっとしたら、リッチー・コールという人のイメージ(ちょっとしたお笑い的なノリを見せるタイプ)が、「音も軽い」と感じさせてしまう部分も多少はあるかもしれないが、2人の「音」には、やはり相当な違いがあることは確かだろう。コールがパーカーと同じようなフレーズを楽々と吹いたとしても、当たり前の話しだが、受ける肌合い・質感・・・それはだいぶ違う。では、いったい何が違うのだろうか?
どうやら・・・この辺りの話しを突き詰めていけば・・・今回、僕が言わんとする「音色とビート感~それら全体から醸し出されるグルーヴ感」みたいなことの核心に、少しでも近づけるかもしれない。
この辺の話は、もちろん「好み」とは別である。だから「オレは重々しいパーカーより、軽やかなコールの方が好きだ」という方が存在していても何の不思議もない。ただ、ジャズを好きになって、そしてアルトやテナー~いろいろなサックス吹きのレコードを聴いてくると・・・どうしても、チャーリー・パーカーという人の凄さ~そうして、そういうミュージシャンがあの時代に存在していたということの凄さ~みたいなものを感じずにはいられない。ジャズ好きなら、たぶん・・・そうなるしかないのだ(笑)

皆がパーカーは凄い、凄いというが、いったい何が凄いのか? と、そう思ってる方も、案外に多いのでは・・・と推測している。おそらく・・・パーカーって、何やらパラパラ吹いているだけでよう判らん・・・音も悪いし(笑)という感じだと思う(笑) 好きで聴いているジャズ(音楽)なのだから、自分の感性にズバッと入り込んで来ないタイプのジャズを無理して聴くことはない・・・とも思う。しかし、パーカーだけはある意味、理屈抜きで「感じとって」ほしいという、少々、啓蒙的な気持ちもないわけではないので・・・僕は今こうして、とても難しいことにチャレンジしようとしているのである(笑)
「パーカーの凄さ」をヒトコトで言うと・・・「音色の凄さ」なのである!あの「太くて重い音色」。そして~なにやら白日夢を見ているかのような呆(ほう)けたような(これは僕の思い込みでしょう:笑)しかし~「力感のある音色」・・・この辺のことは、<夢レコ>の前の記事「エリック・ドルフィという人」にも少し記したかもしれないが、重ねて言えば・・・ジャズという世界では、こうしたある種の濃厚さは絶対的な勲章なのだ。

当たり前の話しだが、楽器を始めて最初の内は、たぶん音はヘロヘロである(笑)(管楽器の場合)ブレスや唇のコントロールができないから、安定した音量が出ないし、音程も定まらない。つまり楽器の初心者の音は、誰が聴いても「ヘタ」なのである(笑)しかしその初心者も、徐々に「巧く」なってくる。ある程度の音量も出てくるようになって、ピッチ(音程)もそこそこ安定してくる。
そして何よりも運指がスムースになり、ちょっと難しいフレーズもこなせるようになる。こうなると、嬉しい(笑) 管楽器というのは・・・(たぶん)曲のテーマを吹くこと自体が楽しい楽器なのである(もちろんアドリブも含めてだが)だから、どんどんと曲をこなしていく。速いテンポも軽々とこなせるようになる。とても巧い。そしてそういう「巧さ」にまで達したミュージシャンは、器楽の高みを目指す者として素晴らしいと思う。
しかし、そうしたタイプにわりとあるのだが、~テーマやアドリブをいくら「巧く」吹きこなしても、なぜだかこちらの心に訴えるものが薄い。そうして全体から受ける印象が、妙に「軽い」のである。
あえて分析的に言えば・・・おそらく「音色に(自覚的な)個性がない」「フレーズが方法論的」そして「ビートにタメがない」~そんなタイプが多くなっているように思う。50年代のジャズマンのそれぞれに個性のある吹きっぷりを知ってしまった身としては・・・そんなタイプのジャズ(ミュージシャン)には、どうしてもある種の「物足りなさ」を感じてしまうようだ。
そうしてそんなある時、パーカーを聴くと・・・これはもうぶっ飛ぶのである(笑)
パーカーは・・・まず音が大きい。バリバリと大きく響く。ひょっとしたらアルトのあの拡がったホーン全体がビリビリと歪んでいるのでは・・・と思うほど鳴っている・・・ように聞こえる。それから「ノリ」がまた凄い。判りやすく言えば「タメ」がある・・・ということだと思うのだが、その「タメ」とは具体的にはどういうことなのだろうか。それを僕なりに解釈すれば・・・例えば8分音符で長いフレーズを吹く時なども、たっぷりとテヌートの効かせて(一音一音を粘るように伸ばす感じのこと)うねるようにその長いフレーズを吹き倒す。だから「タメ」があり、どんなフレーズにも粘りながらキレがある・・・そんな感じなのだ。そうしてこれこそが・・・「ジャズ(っぽさ)の秘密」なのだと、僕は信じている。そんな吹き方をする(しようとしている)パーカーと、巧いだけのアルト(速いテンポも軽々とこなせる~テーマやアドリブをいくら「巧く」吹きこなしても~全体から受ける印象が、妙に「軽い」)とでは、その根底のところで大きな違いがあるのだ。
パーカーの凄さは「粘る8分音符」だけではない。アドリブが乗ってくると、時にパーカーが見せるあの16分音符! あの「倍テン」こそ、それまではおそらく誰もやらなかった・・・いや、やろうとしなかったパーカー独特のアドリブだと思う。そしてその「閃き」に満ちた16分音符でさえ・・・充分に重い(笑)
ハード・バップ調4ビートにおけるジャズのアドリブは、普通の場合、8分音符中心になるので、16分音符でのアドリブ展開になると、それを「倍テン」と呼んだりする。1小節4拍に乗っかって「パッパ・パッパ・パーラ・パーラ」と吹くのが普通の8分音符フレーズだとすると、パーカーは時にこう吹く~「パラパラ・パラパラ・パラパラ・パララ~」と。しかもそのフレーズの「閃き」ときたら・・・いったいパーカーという人のアタマの中はどうなってるんだ~!(笑)果たしてどんな具合で、彼のアタマにあんな宇宙的とも言えるフレーズが(それまでのジャズ言語には存在しなかった)浮かんできたのか? やはり・・・パーカーは凄いのだ。

そういえば、今回の記事~冒頭に僕はこんなことを書いた。
(音色が重いか軽いか・・・それは)《そのミュージシャンの「音色」からだけでなく、その「ビート感」から生じてくるのでは・・・と考えている。ここでいう「ビート感」とは・・・(僕の解釈では)「リズムに対してのノリ方」という意味合いである》
パーカーを聴いて感じる、その「重さ」の秘密。僕なりの答えは・・・こうだ。
《パーカーはその音色も重いが、それ以上に、「タメ」(テヌート)を効かした粘りのあるフレーズと、それら全体から表出されるビート感そのものが重い》 
ごくごく単純に考えれば~パーカーはおそらく・・・たくさん息を吸い込み、それを強く長く吹き込みつつ・・・鋭いタンギングと柔軟なフィンガリングも交えつつ・・・閃(ひらめ)いたフレーズを自由自在に表出している~そんな風に言えるのかもしれないが・・・それがいかに大変なことか(笑)
パーカーが死んでから50年以上も経っているわけだが、パーカーのあの「太くて重くて速くて、しかもキレがある」感じに、最も迫ったのは・・・僕は、ドルフィだけだったと思う。

そんな風に、太くて重い音色で吹きまくるパーカー・・・それは聴く側にとっても、ある種の快感なのである。一番上の写真~April In Parisの紹介で「白痴美的」という表現をしたが、パーカーのちょっと切羽詰ったような濃厚なアルト音を聴くと、何やらこちらの脳髄が麻痺してくるような・・・そんな種類の快感であるような気もする。そんなことを含めて・・・パーカーの凄さは「器楽的な快感」をも含んだ凄さであり、だから・・・ひょっとしたら、楽器(器楽)そのものに興味を持っている方の方が、なんというか・・・直感的に、いや、肉体的にその凄さを感じ取りやすいかもしれない。
そうしてそんなパーカーの「純・器楽的」とも言える特質のことも考え合わせれば、あなたの「好み」のアンテナに、チャーリー・パーカーという人が引っかかるかとは限らないことも、充分に理解はできる。
でもしかし・・・敢えて啓蒙的に言わせてもらえば、パーカーだけはちょっとガマンしても聴いてほしい(笑)
LPでもCDでもなんでもいいので、ちょっとでも「いいな」と感じたテーマの曲を~それは「スクラップル・フロム・ジ・アップル」や「コンファメイション」、あるいはスタンダードソングの「アイ・リメンバー・エイプリル」や「ゼアリズ・ア・スモールホテル」かもしれない~何回か聴いてほしい。
それからその同じ曲の入った別の音源があれば、それらもぜひ聴いてみてほしいと思うのだ。003
いくつかのパーカーのレコードを紹介しよう。
Night and Day(Verve)MGV-8003~写真左。この黒trumpeterラベルは2ndで、12インチのオリジナルはClef 5003。残念である(笑)

April In Paris(Verve)MGV-8004~写真、一番上の右。

Midnight Jazz at Carnegie Hall(Verve)MGV-8189-2(2LP)~写真左下。この2枚組の音は凄い。

僕はパーカーのストリングスもの・ビッグバンドものを嫌いではないので、自然にこの辺が集まった(笑)どれも12インチ盤のトランペッターのセンターラベルである。日本盤「ウイズ・ストリングス」は、おそらくこの3枚からの編集ものなので、同じ「ストリングスもの」でも、いろんなセッションが混じっているようだ。そんなことよりも僕が驚いたのは、音の違いである。「音の鮮度感」が、国内盤やCDとはだいぶ違ったのである。005
パッと聴いて・・・黒トランペット盤には、パーカーの音色に「輝き」があるのだ。アルトの音色~その張り具合、ギュッと締まった響き具合。ストリングスの音の間を縫うように、倍テンで吹き抜けるパーカー・・・その音色が圧倒的に「重い」のである。
「重い」というのは・・・凡百のアルト奏者に比べて相対的に「重い」のはもちろんなのだが・・・僕が思うに、パーカーの「重さ」というのは、ある種の「絶対」かもしれない。006
これらのレコードの音を聴いて体感できるサックスの音色についての違い・・・それは国内盤とは確かに違うと思う。
ただ、僕は「国内盤ではパーカーは判らない」などとは言いたくはない。実際、僕は国内盤やCDでパーカーを聴いてきて、理解して(そのつもりだが:笑)そうして、もちろんパーカーを好きになってきたのだから。008
ただ僕自身のそうした経験の後でも(いや、後だからこそ・・・かも)これらのVerve12インチ盤を聴いて「改めてパーカーの音色の凄さに驚いた」ということも確かにあるのだ。
ジャズを聴き込んだ方で、パーカーは今ひとつ判らない・・・と感じている方が、これらの音盤を聴いて、そうした「音色の凄さ」を体感することになれば・・・あるいは一気に「パーカー開眼」となるかもしれない。
ただ、何をどう言っても・・・最後には「パーカーはパーカーだ」としか言いようがない・・・そんな感じの「絶対パーカー論」になってしまいそうだ(笑)
こういう話しになると・・・言葉は本当に無力だ(笑)ええい!もうめんどくさい!とにもかくにも、パーカーのあの音を聴いておくれ!パーカーという人については・・・それが僕の本音なのかもしれない(笑)
しかし、ここは《夢見るレコード》である。その無力な言葉であっても、そこにも拘りたい(笑)だから・・・実際に僕がパーカーのどういう部分に惹かれているのか~を少し話したい。
さきほど挙げた3枚のVerve盤は12インチとしてはオリジナルだが、その前に、本当のオリジナル音源として、10インチ盤があり、そしてSP盤があったわけで、パーカーの音そのものの鮮度感の違いを想うと・・・それらに拘りたい気持ちもあるのだが、誰もが10インチ盤(ダイアル10インチ盤については、以前にPapaさんの手持ちを聴かせていただいた。やはりひと味違うアルトの音色、その存在感だった)やSP盤まで入手できるわけではない。
だが、そのSP盤の良さ~音色の太さ・力強さみたいな感じ~を味わえる(想像し得る)国内盤レコードが実はあったのだ。

前回の「レッド・ミッチェル」でも触れたが、8月の終わりに3人会をやった。yositakaさんとsigeさんとは1975年からの付き合いだ。sigeさんとはジャズ研仲間で、彼はアルト、僕はベースで・・・2人とも我の強さでは良い勝負だったが、ここに2年先輩のドラム~yutaka氏が加わって、そうなるとなかなか面白いサックストリオになり・・・あの頃、僕らはジャズ研で本当に燃えていた(笑)
そうして、sigeさんは、高校でのブラスバンドの指導やエモリ氏らとのバンド活動も含めて、今でも管楽器を吹いている。
ここにsigeさんからの手紙がある。彼は何かの折には、メールではなく、筆書きの封書を送ってくるのだ。3人会の時、僕の古い機械で掛けたいくつかの古いレコード、それから自分が持ってきたパーカーの「ダイレクト・フロム・SP」の2枚(savoy編vol.1&2)などを、食い入るように聴いていた・・・それらの印象を書いてきてくれた手紙である。何事に付け思い込みの深いsigeさんならではの「熱さ」もあったりしますが~その点、僕も似たようなところはある(笑)~同時にまた、管楽器全般に造詣の深い、そして今でも楽器に触っているsigeさんならではの、唸ってしまうような表現もあったので・・・その一節をここで紹介したい。
《レコードによっては、奏者の管の鳴り具合、弦と胴の鳴り具合、場合によっては、吐く息、継ぐ息のリアリティさも体感できました。レコード総体に込められたジャズの空気と、大げさな言い方ですが、ジャズマンの体の中の瞬間的な構造や思惑さえ体感できたような思いになりました》

この「SP起こし盤」~パーカーの「ダイレクト・フロム・SP」の2枚(savoy編vol.1&2)・・・確かにひと味違う。011まず、パーカーのアルトの音色が太い!音色そのものが分厚い感じか。だから・・・パーカーという人が元々「大きな音」で吹いていた、その音圧感がリアルに飛び出してくる。この「大きい音」という感じられる~ということは、再生音楽を聴く場合、ある意味、なかなか重要な要素だと僕は思う。録音バランスで調整した「大きい・小さい」ではなく、生の人間が吹いたその時、その空気中に拡がった音・・・そこにはその「ミュージシャンの真実」が響いているわけで、その「大きさ感覚」は・・・やはり、その真実の大事な一端だと思う。この「SP盤起こし」盤・・・アルトだけでなく他の楽器も、なにかこう「音が近い」感じで、強いて言えば、ブルーノートのヴァン・ゲルダー録音のような味わいかな。全体として、とにかく「強烈」・・・そのひと言である。
(この「厚い」「太い」という感覚は、savoy編~「サヴォイ・レコーディングス/マスターテイクス」(Arista/フォノグラム2LP)と、同じテイクを聴き比べした際の、僕の個人的印象です。

ダイアル音源については、以前の夢レコでも少し触れたが、パーカーのダイアル音源を耳にすることができる唯一のレコードが「バード・シンボルズ」だった時代が長かったと認識している。そしてその「バード・シンボルズ」の音ときたら・・・(笑)
「最悪」とはあの音のことかもしれない(笑) 僕は「パーカーは判らない」という方のほとんどは、あの「シンボルズ」の最悪音にやられたのでは・・・と邪推している。あれは、それくらいショボイ音だった。だから・・・英spotlightの「オン・ダイアル」と、その後に出た国内盤でも充分に「いい音」だったのです(笑)
この「ダイアル音源」関わりで、ひとつ面白い日本盤を紹介しよう。2008年3月にパーカーのオリジナル盤(Dialの10インチ盤)を聴く機会があった。その独特の鮮度感・生々しさに圧倒された僕は、そうした音色からパーカーの本当の凄さをより感じ取れたような気がした。アタマの中がしばらく「パーカー」で一杯になっていたその頃、たまたま地元の中古レコード店で「おや?」と思うレコードを発見した。それが「チャーリー・パーカー・オールスター・セクステット(ビクターRET-5021)である。 010
これ、ペラジャケの具合からみて、たぶん1964~1965年頃の日本盤だと思うのだが、マイルス、JJ.ジョンソンを含む6重奏団と収録曲目から「ダイアル音源」であることはすぐに判ったのだが、ジャケット右上のROOST SERIESが腑に落ちない。ROOST(ROULETTE)から、パーカーのダイアル音源のLPが出ていたのだろうか? どうも記憶にない。しかしこの日本ビクター盤のラベルは、ちゃんとした米Roost仕様じゃないか。そんな興味から、また日本盤ペラジャケにも惹かれるものがあり、とりあえず購入したのだが・・・いやあ、音を聴いて驚いた!パーカーの音が太いのである。鮮度感も「バードシンボルズ」とは比べ物にならない。spotlight盤よりも明らかにいい。日本盤でも時代が若い分だけ、鮮度の高いマスターやスタンパーに当たっていたのかもしれない。もう一度、じっくりとセンターラベル廻りを見てみると・・・ランオフ部分の刻印が目に飛び込んできた。
《Roost 2210A,2210B》となっているじゃないか!これは、Roostのスタンパーを使っていたことになる。いろいろ調べてみると・・・ありました!Roostのチャーリー・パーカー盤が。それはCharlie Parker/All Star Sextet(roost 2210)というやつで、そういえば・・・ガハッと笑っているパーカーのジャケット写真に見覚えがあった。あれが・・・ダイアル音源集だったのか。そしてその米Roost盤を受けての日本盤が、このビクター盤だったのだ。おそらく「ダイアル音源」が英spotlightから復刻されるまでは、「バード・シンボルズ」と、この「オールスター・セクステット」だけが市販されていたパーカーのダイアル音源だったのだろう。僕はこの日本盤の「パーカーの太い音圧感を感じる音色」で聴いた、パーカーのバラードの良さを改めて見直したのだ。特にDon't Blame Me、それからOut Of Nowhereである。(もちろんEmbraceable Youもいいのですが)特にOut Of Nowhereは素晴らしい!この曲がスロー(バラード)で演奏されるのは、ちょっとばかり意外な感もあり、しかしその意外性だけではなく、この曲の全体に流れるなんとも言えないような「寂しさ感」そんなものに僕は感動してしまった。正直に言えば、それまで聴いていたダイアル音源では、スピード感溢れるパーカーのスリルは感じ取っていたものの、スローものではそこまでのパーカーの「唄い」は感じることができなかった。パーカーの音色も含めて全体のショボイ音質に「負けて」いたのかもしれない(笑)
この日本ビクター盤の鮮度の良さに驚いた僕は、米Roost盤も入手することになった。日本盤でこれなら、米盤なら・・・というスケベ根性である(笑)009スタンパーが同じなら、音も同じだろうって? それがですね・・・やっぱり(この12インチ盤としては)オリジナルの米Roost盤の方が、そうだなあ・・・もう少し、もう1枚、ヴェールを剥(はが)したようなヌケの良さがある・・・ように聴きました。この辺りはチャンスがあれば、またちゃんとした機器で聴き比べをしてみたいものです。
ただRoost盤というのは、(たぶん)もともとがそれほどいわゆる音のいいレーベルではないだろうし、この「鮮度感の高さ」は、あくまで、パーカーの他のダイアル音源LPよりも・・・という意味合いです。

さて、キングの意欲盤「ダイレクト・フロム・SP」そのsavoy編vol.1~なんと言ってもKokoが凄い!この曲のコード進行は「チェロキー」と同じで「チェロキー」がそうであるように、やはり急速調で演奏されているのだが、聴くたびに僕が「むむむ~っ」と思う場面がある。それはパーカーのソロの終盤に現れるのだが、そこでパーカーは実に不思議なフレーズを吹く。フレーズというより不思議なリズム(ノリ)なのだ。それは・・・チェロキーで言うと「サビ」に当たる曲調がちょっと変わる場面の最初の4小節の箇所だ。
(補記~このKokoは、サヴォイに残した1945年11月の最初のテイクです。CD(コンプリート8枚組)で聴くと2分20秒辺りからの4秒ほどの場面。ただし、この2分20秒は、冒頭約40秒の失敗テイクも含む)
この箇所を聴くたびに僕のアタマはクラクラしてしまう。
そのフレーズをなんとか音で表すと・・・「(ウン)・パラ・パラ・パラ/パラ・パラ・パラ・パラ/パラ・パラ・パラ・パラ/パラ・ラ~~~」という感じの8分音符の連続フレーズなのだが、なにせかなりの急速調での8分音符だ。そして、その連続する8分音符が、どうにも普通の「ノリ」には聞こえないのだ。普通に2拍・4拍の切れ目ではなくて、どうやら3拍のフィーリングで刻みながら吹いているように聞こえるのだ。しかしそれは単に変則ノリということではなく、そのノリが見事にコントロールされているので、パーカーのこのフレーズは・・・まるで川の急流を浮いたり跳ねたりしながらも乗り切っていくラダーボートのようじゃないか!
これは・・・凄い! これこそパーカーだっ!と僕は叫びたくなる(笑) 
僕はほとんどの場合、音楽を分析的に聞こうとは思ってないが、パーカーのこの一節には猛烈に興味が湧いてしまった。その「3拍フィーリング」の正体を暴いてみたくもなった。だから何度もレコードのその場面に針を落とした。20回以上は聴いてみた・・・どうしてもうまく聴き取れない(笑)それでも僕なりの解釈を書いてみよう。
パーカーはどうやら、この時、4小節の16拍を<(1拍休符)+3拍/3拍+1拍/3拍+1拍/1拍+3拍>という具合に分割して捉えたのではないだろうか。少々、強引だが、計算はこれで合う(笑)そういうリズム譜を図に書いてから聴くと、こんな風に聞こえないこともない。《(ウン)パラ・パラ・パラ/パラ・パラ・パラ+パラ/パラ・パラ・パラ+パラ/パラ+ラ~・~~・~~》という感じかと思う。
他の刻み方パターンも考えていろいろと試し聞きしてみたのだが、タイムをこんな風に刻んでみた時が(自分としては)最もパーカーのフレーズのノレたのだ。思うに、パーカーという人は、普通に8分音符中心に2拍・4拍で割ってリズムだけには飽き足らず、こういうちょっと変則な拍数の分割を、いつも考えていたのだと思う。例えば2小節8拍を「3・3・2」で乗る、わりとよくあるパターンだけでなく、もう少し長い単位での変則パターンを。そうしてそんな意識があった、そこへいつものパーカーの閃(ひらめ)きが加わり・・・アッと驚くこの「連続8分音符による3拍フレーズ乱れ打ち」が生まれたのだ・・・というような妄想を僕は描いてしまうのだ(笑)
(ちゃんとした「パーカーのアドリブ採譜」をお持ちの方は、ぜひチェックしてみてくださいね)

ただ・・・実はそんな後付の分析など、本当はどうでもいいことで・・・僕らはパーカーのその時のフレーズ~それを吹いている時のパーカーの意識みたいなもの~を、ただ聴けば(味わえば)いいのだ!その音色の全てを浴びればいいのだ!その圧倒的なうねり具合こそが「パーカーの快感」であると思う。
いろいろ理屈をこねてしまったが・・・つまるところ、パーカーはアルトのサウンドそのものに快楽がある!と言ってしまってもいいだろう。だからこそ・・・パーカーはパーカーなのだ! ううう・・・ジャズっ!(笑)

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2008年9月15日 (月)

<ジャズ雑感 第25回>熱いべース奏者たち(C面)レッド・ミッチェル

レッド・ミッチェル~しなやかなビート感。

Presenting_4 先日、sigeさんとyositakaさんという音楽好きの友人と音聴き会(この3人では30年振り)をやったのだが、その折、yositakaさんが、再三「レッド・ミッチェル」という名を口にするのである。そういえば、10年ほど前だったか・・・彼からの年賀状に「~最近はレッド・ミッチェルを~」という一節があったことを僕は思い出した。ジャズ好きが集まっても、なかなかレッド・ミッチェルというベース弾きの話しにはならない。彼はハンプトン・ホーズとのレコードでミッチェルを好きになったというのである
そのことからも、yositakaさんが(クラシック中心かと思っていた)僕の想像以上にジャズに深く入り込んでいることが判った。そんなyosiさんからも大いに刺激を受け、またちょうど前回の《夢レコ》で、Mode盤~Warne Marsh Quartetで、少々、レッド・ミッチェルに触れたこともあり・・・そんな流れから、今回は、レッド・ミッチェルを<夢レコ>~熱いべース奏者たち(C面)として取り上げてみたい。

僕は、レッド・ミッチェルこそ本当の意味でベースの名手であると思う。1950年代後半からのアンドレ・プレヴィンやハンプトン・ホーズとの諸作に始まり、その後の50年以上も現役で活躍したので、彼の参加したレコードの数はとても多いはずだ。つまり彼には常に仕事のオファーがあったわけで、それはなぜかといえば・・・やはり「巧い」からだろう。そしてそれは単に「巧い」のではなく、その「巧さ」にイヤミがないというか・・・どんなタイプのジャズにも巧くフィットできるベースを弾くことができたからだと思う。
そういえば、レッド・ミッチェルを「嫌い」だという人に出会ったことがない。
ミッチェルという人は、ミンガスやラファロのように強く自分を主張するタイプではなく、しかし与えられた持ち場では、きっちりといい仕事をする・・・そんな名脇役的なタイプとも言えそうだ。そうだな・・・映画「7人の侍」での宮口 精二というか(笑)
僕がレッド・ミッチェルというベース弾きを意識するようになったのは、ジャズ聴きのだいぶ後になってからである。ジャズのベースでは、最初にミンガス、次にラファロ、そしてウイルバー・ウエア・・・そんな突出した、ある意味「判りやすい」個性にまず惹かれた。そしてその頃は、まだプレヴィンやホーズのピアノトリオものまでは手を拡げていなかったので、ミッチェルのベースを耳にするチャンスも少なかったはずだ。だから僕の場合は、レッド・ミッチェルというベース弾きの凄さにいきなり開眼したわけではなく、いくつかのレコードを聴いていると「あれ・・・このベース、ちょっといいな」と思う場面があって、クレジットを見ると、それがレッド・ミッチェルで、そんな繰り返しの内に知らぬ間に彼を好きになっていた・・・そんな風に自覚している。そんな「我、レッド・ミッチェルに開眼せり」レコードをいくつか紹介しようと思う。

Buddy Collette/Jazz Loves Paris(specialty) 

001_3 《「僕のレコードリスト」によると、豊橋の隣の街~豊川市のプリオというビルでのレコードフェアで、1993年9月に入手している。この1987年の再発盤、音はかなりいい。もともとミッチェルのベース音は大きいとは認識しているが、それにしてもベース音がだいぶ大きめになっているように聞こえる。そういうマスタリングだったのかもしれない》

ジャズ聴きもある程度長くなると・・・ちょっと渋いレコードにも興味が湧いてくる。このレコードフェアへは、たしか歯医者で親知らずを治療した後に直行したものだから、その麻酔が切れ始めて痛くてしょうがない(笑) フェアにはいくつかの業者が出品していたが、ジャズのコーナーはわずかで、僕は根性でエサ箱を探ったが、ハードバップものに目ぼしいものが見つからなかった。それでも、ひどい歯痛をガマンして来たのだから、という気持ちもあり、ちょっと気になった2枚を買ったのだった。当時、まだ西海岸ものはあまり聴いていなかったので、こんな地味なものを買うということに、自分でも意外な感じもあった。それが、Jazz Roles Royce(fresh sound盤)と、もう1枚がこのJazz Love Parisだ。もちろんオリジナル盤ではなくて、復刻ものである。このレコードを聴いた時・・・僕はレッド・ミッチェルという人の巧さを、初めて意識したような・・・そんな記憶がある。クレジットを見ると、おおっ、その後に好きになったフランク・ロソリーノの名前もあるじゃないか。久しぶりにこのJazz Loves Parisを聴いてみた。

「バラ色の人生」la vie en rose~有名なシャンソンの名曲である。シャンソンというと・・・全くの余談だが、実は僕は「シャンソン」という音楽がちょっと苦手である。シャンソン曲のメロディは好きなのだ。「枯葉」「セシボン」「パリの空の下」・・・どれも素晴らしいメロディで、もちろん嫌いではない。僕が苦手なのは・・・いわゆるシャンソンでのあの唄い口~メロディをそのまま唄うのではなく、途中から「語り」のようになっていく~あの感じが苦手なのである。もちろん全てのシャンソン歌手が決まったように「語り」的な唄い口で唄うわけではないとも思うのだが、シャンソンというと・・・どうにも「ドラマティックに語る」あの演劇的なイメージが振りかぶってきてしまい・・・素直に音楽として楽しめなくなってしまうのだ。
それはそうと、このJazz Loves Parisなるレコード・・・シャンソンの名曲をジャズ風に演奏しているのだが、どうやらこの1曲「バラ色の人生」が、ミッチェルのフューチャー曲らしく、誰もが知っているあのメロディをベースが弾く仕掛けなのだ。ミッチェルは、ゆったりとした間合いであのメロディを、ゆったりと弾く。そして、この「ゆったりさ加減」が・・・実にいい(笑)
なぜ僕がこういう「ゆったりさ加減」に拘るのか・・・ちょっとした説明が必要かもしれない。
ベースという楽器では(弓弾きではなく、指で弾(はじ)くピチカットの場合)同じ音を、管楽器のようには長くは伸ばせない。
いや、正確に言うと・・・その音が伸びていたとしても、弾かれた直後から徐々に減衰していく運命にあるわけだ(笑)
声や管楽器の場合なら、その音を(その音の音圧を)ひと息で(もちろん、息の続く間は)維持しながら、しかもその音量を強くしたり、弱くしたりできる。しかし、ピアノ(打楽器)やベース、ギター(弦楽器のピチカットやピック弾き)では、これができないのである。自転車に乗っていて、ある時点からペダルを漕がなければ、徐々にスピードが落ち最後には止まってしまう。ペダルを漕ぐことなく自転車を少しでも先に進めようとした場合、自転車が止まりそうになったその時、身体を前の方に乗り出して、その勢いで少しでも進もうとするだろう。ジャズのウッドベースでも「伸ばすべき音」が必要な場合、その最後の方では、少しでもそのノート(音程)の音量・音圧を維持しようとして、その音程を押えている左手で、懸命にヴィブラートを掛けたりする。(ジャズの世界では、ヴィブラートの掛け具合、あるいは、掛ける・掛けないは、個々の奏者の好みで、特に法則性はないとは思う。
*以下追補~その観点でミッチェルのベースをよく聴いてみると、ミッチェルは音を伸ばした際に、ヴィブラートはほとんど掛けてないように聞こえた)
そんな事情もあり、ある曲のメロディをベースで弾く場合、なかなか「間」が持てないこともある(特にスローテンポの場合)ある音(音程)を充分に伸ばしてクレシェンド(だんだん強く)したいような気持ちでいたとしても、ひとたび、ベースから出たその音(音程)は、どんどん減衰していくのだ。それは、まるで意図しないデ・クレシェンドじゃないか(笑)
そんな時・・・たいていのベース奏者は気持ちが焦る(笑)だからそこで「倍テン」(テンポを倍にとって)にして、アドリブ風のフレーズを入れてしまうことも多い。それがセカセカしたように聴こえてしまうこともあるかと思う。
ミッチェルというベース弾きの良いところは、まず「音が大きそう」なことだ。強いピチカットから生まれるその豊かなベースの鳴り具合と、しっかりした左手の押さえにより充分に伸びるそのベース音。それでもやはり上記のように、スローテンポのバラードにおいては、メロディのある箇所では、音が消えていく場面もある。しかしミッチェルはその伸ばしたいはずの音が消えかかっても・・・全く焦らないのである。見事に堂々としているのである。 
僕がレッド・ミッチェルを凄い・・・と思うのは、実はここなのである。音が消えかかっても、そんなことは全く気にしてない・・・ように聴こえる。それよりも、その時の「メロディの唄い」だけを意識して「唄の自然な流れ」を持続させようとしている・・・そんな風に聴こえるのだ。だから「間」が充分に感じられるし、時には、倍テン風なフレーズも入れるが、それはごく自然にその前後のフレーズと繋がり、なんというか・・・「唄の呼吸みたいなもの」が乱れない。そういう「唄い口」こそが素晴らしいのだ。これって・・・「楽器で唄う」ということにおいて、簡単そうで実は一番難しいことかもしれない。
ミッチェルのベースがテーマのメロディを弾く場面は、このla vie en rose「バラ色の人生」だけでなく、もうちょっと古い録音~Hampton Hawew vol.1(contemporary)でB面4曲目~these foolish thingsにも出てくる。こちらでも、先ほどの「唄の自然な流れ」というツボを押えたミッチェルの見事なテーマ弾きが聴かれる。
このようにベースがメロディを弾く場合だけでなく、ミッチェルは、もちろん他のスロー・バラードやスタンダードでのベース・ソロも巧い。彼はどんなテンポの曲でも、たっぷりと鳴る音量を生かして強く弾いてゆったりと伸ばすフレーズと、倍テンにして細かく軽やかに唄うフレーズとを、いい具合に織り交ぜてくる。そのバランス感覚が見事なのだ。だからよくあるように「ベースソロだけ別の世界」という感じにはならずに、それまでの演奏のビート感を保ったまま、ソロ場面ではベースもグルーヴする・・・という感じで・・・とにかくその演奏が自然に流れていく。この辺りの「しなやかさ」が、実に独特な味わいで、技巧的な意味でなく「ベースが唄っている」・・・そんな感じがするべーシストだと思う。
そしてyositakaさんがご自身のブログでも強調しているように、バッキングでのミッチェルも、これまた素晴らしい! 要はレッド・ミッチェルという人は、全て素晴らしいということだ(笑) そんな演奏も少しだけ紹介しよう。

Hampton Hawes/All Night 002Sessions vol.1(contemporary:1956年)
《1956年としては充分にいい録音だと思うが、僕の手持ち盤、僕の機械では、他のcontemporary盤に比べて、ベース音はややブーミーに膨らませた感じもある。録音はロイ・デュナンだと思うが、クレジットには、sound by Roy Duannという微妙な表現なので、ひょっとしたら録音は別のエンジニアかもしれない。この盤は1970年頃の米再発。盤はペラペラだが、A面にはLKS刻印がある。B面はなぜか手書きLKS》

このレコード、ライブ録音だが、右チャンネルから太っいミッチェルのベース音が聴ける。005
vol.1のB面1曲目~broadwayは、かなりの急速調だが、ミッチェルはベースを充分な音量と余裕のノリで鳴らし切っており、素晴らしいビート感を生み出している。それからベース・ソロの場面でも、8分音符のフレーズを繰り出しつつ、バッキングと同じ4ビート的フィーリングを残そうとしているのか~つまり、4分音符4つ弾きも混ぜながら~その急速調でのビート感を維持しながら、見事なべースソロを演じている。素晴らしい!

さて、レッド・ミッチェルということで、僕が印象に残っているレコードをいくつか挙げてきたが、例によって初期の何枚かに集中してしまったようだ(笑)あと少しだけ簡単にコメントすれば・・・50年代のリーダー作~Presenting Red Mitchell(contemporary)とHere Ye(atlantic)の2枚は、ベースの名手というだけでない「ハードバップ的な覇気」を感じさせてくれる好盤だと思う。60年代のI'm All Smiles、The Seanceというライブ録音も好きだし、それから、うんと後期のリーダーアルバム(「ワン・ロング・ストリング」や「ベースクラブ」など)もいい。それからcontemporaryのアンドレ・プレヴィンとの諸作も、もちろん悪くはない。いずれにしても「音楽の自然な流れ」を造り出すミッチェルの持ち味は、どの時期のレコードにあっても、変わりはないと思う。

それにしても・・・僕がレッド・ミッチェルの良さに開眼したあの地味なレコード~Jazz Loves Parisを買うキッカケにもなったあの「歯痛」には、充分に感謝せねばなるまい(笑)

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2008年7月10日 (木)

<ジャズ雑感 第24回>初期のアーマド・ジャマル

<マイルスがジャマルを聴きまくった・・・という話しは本当だった!>

アーマド・ジャマルを猛烈に好きだという人は・・・あまりいないような気がする(笑)そういう僕も彼のピアノを聴き始めたのは・・・せいぜいこの10年くらいのことである。その頃から「ジャズのオリジナル盤」に惹かれ始めたのだが、廃盤店を見回すようになってみると・・・prestigeやbluenoteなどの名盤のオリジナル盤は、どれもこれも「うんと高い」ということも判ってきた。「高い」のには、それなりの理由があるのだろうが、とりあえず国内盤やOJCで聴けるものを、その何十倍も出してまでは買う気持ちにはなれなかった。
Jamallp_0011枚の名盤に2万出すのなら、4000円の地味盤を5枚聴きたいのだ。ただ最近は、本当にいいレコードだけ(もちろん自分が大好きなレコード)を、コンディションのいいオリジナル盤で集めていく~というスタンスもまた魅力的なのでは・・・という気分も現れてきた。あと10年もすれば、そんな集め方になるかもしれないが・・・今はまだ無理なようだ(笑)

そんなわけで、10年ほど前から、ちょっと安めのオリジナル盤で、まだ聴いたことのない(持ってない)ものを中心に狙い始めたのだ。そんな目線で廃盤店のタナを探ってみると・・・自ずとArgoやcadetのこの辺りのレコードが目に付くようになる。ラムゼイ・ルイスやアーマド・ジャマルというピアニストには、当時、相当な人気があったらしく、ArgoやCadetからはかなりの数のタイトルが発売されている。もちろんそれら全部を持っているわけではないが、ひとつ聴いてみると「案外、いいぞ~」と思うので、知らぬ間に、けっこう集まってしまうのである(笑)
今回は、ジャマルに絞って、ちょっと気になる初期のもの中心にをいくつか紹介してみたい。Jamallp_004

ジャマルと言えば、真っ先に思い付くのは、やはり「But Not For Me」ということになるのだろう(笑)僕も含めてジャマルというとこのLPしか聴いてこなかった方も多いと思う。
ジャマルのピアノは、かなり独特なスタイルである。どんな曲でも、たいてい高音域をコロコロと弾く。この「コロコロ」は、軽いタッチだが、スナップを効かせたようなタッチであって、力任せに押し込んだような感じではないので、決してやかましくはない。私見では、この「コロコロ」は、アート・テイタム風、ジョージ・シアリング風でもあり、もう少し言えば・・・後年のガーランドが時に見せる「コロコロ」にも近いものがあるように思う。
そんな「コロコロ・フレーズ」は、アドリブを弾きこむ~というより、その曲の構造上の美点みたいなもの感じを、力まずに軽々と表出している・・・という感じでもある。ベースとドラムス(あるいはギター)に、その曲の「骨格」を造ってもらっておいて、その上に「乗っかる」ように、遊び心溢れる高音域フレーズを繰り出してくる~という感じかな。
そうして流れ出るサウンドは・・・あくまで軽い(笑)しかし、この「軽さ」は・・・クセになる(笑)ジャマルの演奏にはいつも「洒落た工夫」があり、それが音楽の自然な流れにもなっているようで、聴いていてとにかく気持ちがいいのだ。だからジャマルにはライブ盤が多いし、あのリーダー作の多さは、やはりジャマルには相当な人気があったということだと思う。もちろん・・・ジャマル自身が、そういう「音楽の快楽」を表現することに徹していたのだろう。素晴らしい才人だと思う。 

Argoが先でCadetが後のはずだが、Jamallp_003Argoにもいろんなラベルがあるようだ。モノラル~黒・灰色、ステレオ~青というのが基本のようだ。ただ「青」にも、「普通の青」(662:Happy Moods)、「群青色っぽい青」(667:At The Pershing vol.2)、「紫っぽい明るい青」(691:All Of You)という具合に微妙な違いがあるようだ。音質については・・・どうもArgoにはそれほどいい印象がないのだが、同じ場所での1958年の録音音源であるBut Not For Me(黒・モノラル盤)とJamal At The Pershing vol.2(群青・ステレオ盤)を比べてみると、どうも「ステレオ録音」の方がいい音のように感じる(僕には)ピアノの音全体に厚みがあるし、艶がある。Jamallp_002蛇足だが、今回、ジャマルのLPをいろいろ聴いてみて、「音質」が一番よかったのは、1962年のAt The Blackhawk~実は国内盤(テイチク)しか持ってない~だった。やっぱりライブ録音でも、「西海岸もの」は一味違うようだ。ひょっとして、この1962年の西海岸録音Argo盤にも、ワリー・ハイダー氏が関わっていたかもしれないぞ(笑)
Argo時代のジャマルでちょっと珍しい2枚組~Portfolio Of Ahamad Jamal(argo 2638)については、そういえば、この<夢レコ>でも、だいぶ以前に取り上げている。こちらの<珍しレコ:Portfolio Of Ahamad Jamal(argo 2638)>もご覧ください。

ジャマルというと・・・「あのマイルスが、ジャマルに影響された」という話しがよくジャズ本に出てくるし、ジャマルはひょっとしたら「そのこと」だけで有名になっているような気もするが(笑)実際のところ「音楽の具体的な様子」として、マイルスがジャマルのどこにどんな風に影響されたか・・・については、あまり書かれていなかったように思う。それ以前に・・・なによりもジャマルのレコード自体が(日本では)あまり聴かれていなかったのだろう。それはもちろん僕自身も同じ状況で、その辺りのことが、ハッキリとは把握できていなかった。そんな状況だったことを推測しながら、このレコードを聴くと・・・ちょっとした誤解が生じてしまうような気もする。
というのは・・・
このBut Not For Meには、
but not for me
surrey with the fringe on top
no greater love
woody'n you
という「マイルス取り上げ曲」が入ってはいる。しかし・・・このジャマル盤は、1958年録音なのである。つまり・・・この4曲については、どれもマイルスの録音の方が先なのある。(but not for me~1954年、no greater love~1955年、surreyとwoody'n you は1956年)ということは・・・ジャマルという人を初めてこのLPから聴いた場合~
「マイルスが影響された云々(うんぬん)」という観点からは、まるで逆の「音」を耳にしていたことになる。もちろん僕もそうだったし、だから「マイルスにはジャマルからの影響が・・・」と言われても、どうもよく判らないのも無理からぬことだったのかもしれない。

さてそろそろ「マイルスがジャマルに影響された」証拠のLPを出さねばなるまい(笑)ジャマルのLPは、ほとんどがargoに在ると思われがちだが、実はそのちょっと前の時期の音源として、2枚のEpic盤があるのだ。

The Ahamad Jamal Trio(LN3212)~Goldmineによると1956年発売
Jamallp_008_2
The Piano Scene of Ahamad Jamal(LN3631)~Goldmineによると1959年発売

このEpic盤・・・2枚とも、どうやらOkehレーベル音源からの再発らしい。(推定)1951年録音のようだが・・・私見ではそこまでは古くなく、もう少し後の例えば1953年くらいの録音に聞こえる。いずれにしても、録音の音質は・・・よろしくない(笑) Epic盤の高音質というイメージとは程遠い。
このEpic盤2枚に収録してある曲から「後年にマイルスが取り上げた曲」を探ってみると・・・なんと、8曲もあるじゃないか!
love for sale
autumun leaves
squeeze me (以上3曲~The Ahmad Jamal Trio)
ahmad's blues
billy boy
will you still be mine
the surrey with the fringe on top
a gal in Calico(以上5曲~The Piano Scene Of~)

~Trio(3212)の方に「枯葉」が入っている。そのイントロのフレーズが、あのマイルス/キャノンボールの「サムシング・エルス」の枯葉と、ほぼ同じなのだ。ジャマルの方は、マイルス・ヴァージョンよりもやや速いテンポのラテン風で、あのフレーズをギターに弾かせている。「ほぼ」と書いたのは・・ジャマル版ではあのフレーズのアタマを半拍だけ休符にしているからだ。そのためかジャマル版の方が、よりラテン風に聞こえる(裏を返せば、マイルスの方がジャズっぽい・・・とも言える)Jamallp_007
ジャマルという人は・・・ある意味「アレンジャー的ピアニスト」でもあると思う。ほとんどの場合、スタンダード曲を素材にしているのだが、どの曲にも凝った工夫が施してあるのだ。1951年当時では、他のバンドではあまり考えられないような「合わせ」が~ベースやギターにメロディの一部を取らせたりしている~多いのだ。パッと聞いて「洒落た」サウンドをしているのだ。グループとしての「サウンド」を意識している点では、ジョージ・シアリングとも似ているかもしれない。この当時のジャマルのリズムセクションは、べースはイスラエル・クロスビー、ギターはレイ・クロフォードらしい。

Piano Scene(3631)の方には、Ahmad's blues, the surrey with the fringe on top, will you still be mine, a gal in Calicoなど、後にマイルスが吹き込んだ曲が入っている。
そしてこのPiano Sceneからも、ちょっとした驚きの曲がひとつ見つかった。
A面ラストのPavanneという曲~これ途中、ギターソロの部分があるのだが、そこがマイナー調のコードになっていて、途中で4小節だけ「半音、上がるのだ!そしてそのサウンド(の様相)は・・・もう明らかに「モード」なのだ。つまり・・・ドリアンというモードを使った「ソー・ファット」(あるいは「インプレッションズ」)と同じなのである。その時のギターのフレーズも、何やら「インプレッションズ」風なのだ(笑)推定~1951年録音のレコードである。時代性を考えれば・・・驚くほど「モダンなサウンド」だと思う。
そしてこれは僕の妄想だが、マイルスから「ジャマルを聴け!」と言われたコルトレーンは、このPavanneを聴き込んでいたので、あのimpressionsを造ることができた(笑)
*以下参考~「ドリアン」という旋法に興味のある方は、何かのキーボードで試してみてください~(Dドリアンの場合)「D=レ」から始めて「レ」で終わる音階を「白鍵のみ」で弾く~つまり<レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド・レ>という弾くだけです。どうですか?これだけで何となく・・・So What? の感じになるでしょ(笑)
《追記:2010年1月5日》このPiano Scene(3631)収録曲の録音年データを(スコット・ヤーロウ氏による)付けておきます。1951年の2曲はOkay音源のようです。これによれば、僕がドリアンモード的と感じたPavanneは、1951年より4年後の1955年ということになる。
Will You Still Be Mine (Oct. 51)
The Surrey With The Fringe On Top (Oct. 51)
Billy Boy (May 52)
A Gal In Calico (May 52)
Aki And Ukthay (May 52)
Ahmad’s Blues (May 52)
Old Devil Moon (Oct. 55)
Poinciana (Oct. 55)
Pavanne (Oct. 55)
Crazy He Calls Me (Oct. 55)
Slaughter On 10th Avenue (Oct. 55)
It’s Easy To Remember (Oct. 55)

Jamallp マイルスとの繋がりについては・・・2枚のEpic盤の裏解説が興味深い。つまり、発売年度が早かった1956年の3212(Trio)には「マイルス」という言葉は全く登場してこないが、1959年の3631(Scene)のナット・ヘントフ氏による裏解説では、冒頭から「マイルス絡み」の話しばかりなのである。ジャマルのことを「基本的にはカクテル・ピアニスト」と評したことへ、マイルスが憤然と反論してきた~というような件が書いてあるようだ。マイルスが「ジャマルの造り出すスペースの生む効果」についても書いてあるが、どうやら「音楽の具体的な様子」については、ここでも触れられていないようだ。ひょっとしたら、「マイルスがジャマルに影響された云々」は、このヘントフ氏の裏解説から、広まった話しかもしれない。

では、Argo盤からもう1枚。実は「マイルス関わり」の音として僕が最も驚いたのが、これである。Jamallp_006
Ahmad Jamal/Chamber Music Of The New Jazz(argo 602) 1955年
これはargo/cadetに20枚近くもリーダーアルバムのあるジャマルのargo第1作である。このLPを、なぜだかこれまで全く聴いたことがなかった。ジャマルの国内盤発売は、いつもBut Not For MeやPenthouse だけだったし・・・オリジナル盤を探す際にも、この602盤は年代が古い分だけ、他のargo盤に比べるとやや見つかりにくいかもしれない。ちなみに、このレコード・・・creativeというレーベルから出たものが真のオリジナルらしい。
《2009 1/2追記~creativeではないが、このArgo602番のオリジナル1stと思しきジャケットをネットで見かけた。それは・・・石畳の広場を上空から撮ったショット。左下隅に高そうなクルマ(ロールスロイスか?)がちょっとだけ写っている。画面は薄い緑一色。ちょっとベツレヘム・レーベルのバート・ゴールドブラットのデザインとよく似た雰囲気だ》

A面1曲目のnew rumbaのイントロ部分から、いきなり驚いてしまった。なんだ、これはっ!
そう・・・マイルスのLP~Miles Ahead のnew rumba、あれのそのままじゃないか!録音は当然・・・ジャマルの方が先(推定1955年)である。
いろんなジャズ本から「マイルスが、ジャマルからはヒントを得た」という話しは知っていた。知ってはいたが・・・それはあくまで「ヒント」くらいだと思っていた。しかしこのnew rumba・・・これはもう完全に「パクリ」である(笑)
new rumbaイントロでの、あのちょっとモードっぽい、かっこいいフレーズ~あれはギル・エヴァンスのアレンジかなと思っていたのだが・・・あのかっこいいリズムパターンとフレーズが、そっくりそのまま、このジャマルのLPに入ってるじゃないか!
このジャマルのLP収録曲で、マイルス取り上げ曲は~
new rumba
all of you
it ain't neccessarily so
の3曲である。しかし、もうひとつ・・・A面5曲目のMedleyというタイトル。これが曲者で、曲が始まると・・・「ああ・・・これも知ってる」
というメロディが軽やかに流れてくる。これも確かに「マイルス・アヘッド」に入ってる曲だぞ・・・と調べてみると「アヘッド」の
B面ラスト~I don't wanna be kissedじゃあないか(笑)この曲・・・メロディの出だしから3連符のフレーズで始まり、その後も2拍続けて3連符を使ったりするところが、ちょっとユーモラスな感じもして、強く印象に残っている曲だった。その「マイルス・アヘッド」のI don't wanna be kissed のアイディアそのままが、このジャマルの1955年のLPに入ってるじゃないか!ジャマルのピアノが、軽く小粋に弾く3連符は、マイルスが現そうとしたニュアンスそのままなのである。う~ん・・・これは・・・マイルスもギル・エヴァンスも、ジャマルにアレンジ料を払わなくては、まずいだろうな(笑)
蛇足をひとつ~ジャマルは1958年のBut Not For Me(前述)で「マイルス曲」を4つも取り上げた・・・あれは「ジャマルのお返し」だと、僕は踏んでいる(笑)

はうんと前から「マイルス・アヘッド」が大好きだった。あのLP、特にどの曲が・・・という訳ではないのだが、A面1曲目のspringsvilleが流れ始めると、継ぎ目なしに次の曲に移っていき・・・それはまるで川の流れのように全く自然な感じで・・・途中で針を上げることができなくなる。そうしていつも両面を聴き通してしまうのだ。あのLPの「サウンドのイメージ」がいつもアタマの中に渦巻いてしまって困るくらいの時期もあった。だから今回、ジャマルの1955年作品を聴いてみて、マイルスのあのLPの中で印象に残っている「部分」が、そっくりジャマルのアイデアだった・・・と判ってしまったわけで、その事実にちょっと軽いショック(がっかりしたような気持ち)を受けた僕である(笑)
しかし・・・だからと言って、マイルスへの(あのLPへの)見方が変わるわけではない。確かに、細部のアイディアを借用しているが、それらを巧く使い切った上で、あのLP全体を「あるムード」で包み込み、「ひとつの組曲」にまで造り上げてしまったのは・・・やはりギル・エヴァンスであり、何よりも「マイルスのあの音色」なのだから。

ちくしょう・・・オレはやっぱりマイルスが好きらしい。
その証拠に、今また僕は「マイルス・アヘッド」を聴いてみて・・・すっかり感動している(笑)

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