<ジャズ雑感 第39回>Savoy盤センターラベルの変遷
Savoyの12インチ・オリジナル盤~ごく初期の「赤ラベル」には≪NOT LICENSED表記≫が存在した!
前回、Savoy盤の主に「ジャケット裏アドレス表記」の変遷についてまとめてみた。その際、 センターラベルについては、色の表現について少し触れただけだった。その後、コメントやりとりにおいて「センターラベル」についていろいろと情報をいただき、それが大変に興味深いものだったので、ここで「センターラベル変遷」のことも記しておきたい。
(これも「アドレスの変遷」と同様にそれぞれの移行期については、確かな資料もないので、現物やネットで確認できたことからの僕個人の大雑把な認識です)
《上写真~Don Elliot/Verstile(MG9033)》
Savoy10インチ盤の赤ラベルの例として挙げてみた。この写真からお判りいただけると思うが、MG9000番シリーズの10インチ盤には、センターラベルの下部に<NOT LICENSED FOR RADIO BROADCAST - FOR HOME USE ON PHONOGRAGH> なる文言が表記されている。意味合いは・・・<ラジオ放送には使ってはいけません。一般家庭のステレオ装置で聴くためのものです>という感じだろうか。
前回の夢レコ記事に「赤ラベルの原型」という意味合いで、10インチ盤(ボブ・ブルックマイヤー)の写真を掲げておきながら・・・僕はこの文言の存在に気付いていなかった。そのことは、alfa60さんの以下のコメント≪ ≫により判明したのである。
≪bassclefさんの掲載したEddie Bertの12015、画像の1stのレーベルを見てみるとお分かりの通り下部のLONG PLAYING MICROGROOVEのさらに下に"NOT LICENSED FOR RADIO BROADCAST - FOR HOME USE ON PHONOGRAPH" の一文がありますね。これは、SavoyのSPや10inchには記載がありますので、MG12000番シリーズでも、初期のものと考えられます≫
そして alfa-60さんからの続報コメントによると、このNOT LICENSED~表記について≪都内の某店の買取りリストでは、"For Home Use"表示と記載がありましたが~≫とある。なるほど・・・すでに業者の間ではSavoy盤認識の事例として意識されていたのか。やはり多くのサンプルが集まる機会があるといろんなことが判ってくるのだな・・・それについては少々羨ましい(笑) しかしそれを知った上で、僕は、NOT LICENSED~表記のことを、これ以後「NL表記」と呼びたい。NOT LICENSED~と始まる文言を”For Home Use”と表現するよりも、最初の2つの単語を<NL>と表記した方がイメージがしやすいし・・・いや、なにより僕は・・・都内某店と同じ表現を使いたくないのだ(笑)
10インチ盤から12インチ盤に移行していった時期、センターラベルのデザインは、10インチ盤のデザインがそのまま流用された場合も多いかと思う(ベツレヘムレーベルの「リーフ」ラベルなど)
alfa-60さんの推察のとおり、Savoyレーベルの場合も、10インチ(MG9000番シリーズ)から12インチのMG12000番シリーズへ移行した際、センターラベルの仕様は10インチ盤と同じ「赤ラベル」のデザインを踏襲したので、ラベル下部のNOT LICENSED~なる文言もそのまま残ったということで、間違いないかと思う。
この新しい観点を得て、僕はさっそく自分の手持ちの「Savoy盤・赤ラベルDG」(約30枚)をチェックしてみた。しかし・・・このNOT LICENSED表記の個体、これがなかなか見つからないのである。
在ったのは・・・わずかに2枚。
≪ケニー・クラークのMG12006盤≫~このレコード・・・MG12000番のリストでは、タイトルは「テレフンケン・ブルース」となっているが、写真のオリジナル盤には何のタイトルもなく、ただ、Kenny Clarkeとされている。
だいぶ以前に、CBSソニーが復刻した際の「テレフンケンのマイクの上に美女が座っているジャケット」とまったく同内容である。
bassclef の現物確認としては以下の2点だけ。
12006 Kenny Clarke/Telefunken Blues(上の写真)
12015 Eddie Bert/Musician of the Year (下の写真2点)
*上写真~1st の赤DG NOT LICENSEDラベル盤。
下写真~ 比較のために、1st と2nd(上のアズキ色ラベル) を並べてみました。
それから、alfa-60さん所蔵盤確認分として、
≪12017 Kenny Clarke/Bohemia after Dark≫
下の写真~special thanks to Mr. alfa-60さん!
<2023年1月12日追記>
申し訳ありません。alfa-60さん提供の写真~年末の編集作業の折、誤って消失してしまいましたので、写真はありません。
*2月15日・追記~これは、alfa-60さんが送ってくれたセンターラベル写真です。この写真ではDG溝がやや見えにくいですが、それはDG溝の円と銀色ラインの円が、ピタリと一致しているためです。これだけキレイに両者の円周が一致しているラベルも珍しいかもしれません。たいていは、ラベルの貼り方に中心からのズレがあったりするので、そうすると、DGと銀円の円周がズレるので、却ってDG溝が確認しやすいわけです(笑) New Jazzレーベル(紫ラベルに銀色ラインの円)でも同じような現象があります。
ラベルの右側に縦に[SAMPLE COPY NOT FOR SALE] というスタンプが押されている。 このスタンプ・・・そういえば、僕の手持ちの「NL表記」盤の12015 Eddie Bert/Musician of the Year のセンターラベルにも、同じ文言のものが押してあったぞ(写真~左) たぶん・・・Savoyという会社は、いわゆるプロモ盤(プロモ盤の専用ラベル)を造らずに、販売用の初回プレスの内の何十枚かに [SAMPLRE COPY NOT FOR SALEスタンプ] を押したのだろう。
僕自身もネットでいろいろ探してみましたが見つかったのは・・・わずかに、1点だけ(12010のJay & Kai) この<赤ラベル・NL表記>・・・オークションの掲載写真の「赤ラベル」を50~60点はチェックしたはずだが・・・「赤ラベル・NL表記」はなかなか少ないようです。
しかし僕には「夢レコ読者の方」という頼もしいお仲間がいます(笑)
~denpouさんや、alfa-60さんがいろいろと調べてくれたようです。
以下、皆さんの情報も併せて、『(所蔵盤)・ネット写真からNOT LICENSED表記を確認できた番号タイトル』を並べてみます。
12000 Charlie Parker Memorial vol.1
12001 The immortal Charlie Parker
12003 Garner Erroll "Serenade To "Laura"
12005 Marian McPartland “Lullaby of Birdland”(denpouさん)
12006 Kenny Clarke “Telefunken Blues”(bassclef)
12007 Ernie Wilkins - Kenny Clarke
12008 Billy Taylor – Erroll Garner “Back To Back”
12009 Charlie Parker Memorial vol.2
12010 Jay and Kai
12015 Eddie Bert “Musician of the Year”(bassclef)
12017 Bohemia after Dark (alfa-60さん)
そんなわけで、Savoyの12インチ盤「赤ラベル・DG」の中にも真性1stとも呼ぶべき「赤ラベル・DG・NL表記」ラベルというものが存在しており、それはどうやらMG 12017番辺りまでの番号の、それぞれのタイトルの初回プレス分だけに、この<NL表記>(NOT LICENSED FOR RADIO BROACAST- FOR HOME USE ON PHONOGRAPH)ラベルがが在るらしい・・・というところまで判ってきた。
僕の妄想だが、その「初回プレス分」とは放送局へのプロモ用だったのかも・・・まあそうなると、その「プロモ用」に NOT LICENSED FOR RADIO BROADCAST~と表記してあるのも・・・これまた大いに矛盾ではあります(笑) いや、それも、Savoyというレーベルならそれほどおかしくはないかもしれないぞ(笑)
今後も「赤ラベル・NL表記」については意識してチェックしていく所存だが、しかしだからと言って・・・僕個人のSavoy盤認識としては、その「真性1st」に拘りすぎるつもりはありません。だってそう考えないと・・・これまで「1st」と思っていたSavoyの「赤ラベル・DG」の有り難味(ありがたみ)が減っちゃいそうじゃないか(笑)
さて、MG12000番シリーズにおける、「赤ラベル」の後のセンターラベル変遷についても少しだけ触れておく。こちらも判らないことだらけである(笑)
根本的な疑問点は以下~
1.「赤ラベル・DG」はMGの何番まで在るのか?何番から「アズキ色」に変ったのか?
2.「アズキ色」はMGの何番まで在るのか?何番から「こげ茶」に変ったのか?
3.「アズキ色」にも「こげ茶」にも、それぞれ微妙な色合いの違い、さらに盤の厚さにも違いがあるようだが、その在り様が判らない。
4.「アズキ色」と「こげ茶」のラベルには、どうやらDG(通常、1mm~1.5mmほどの幅がある)は無いようである。しかしDGと同じ銀色の円周上に「筋」(まったく幅がない)は有るようだ。「筋」にはDGと同じくらいの直径のもの(「 大スジ」と呼びたい)と、センタースピンドルから3cmほどの直径のもの(「小スジ」と呼びたい)がある。
例によって、現物で確認できたこと・ネット写真から(ほぼ)確認できたことを基に、ごく大雑把な推測をしてみる。
僕の手持ちSavoy盤~MG12000番「赤ラベル・DG」の中で、最も番号の後のものは、MG12119(In The Beginning Bebop)であった。
そして、alfa-60さんの所蔵盤からの確認では、どうやら、
≪12143(Curtis Fuller/Jazztet)Red,RVGs,DG,X20e,GG/NJ,non-lam,paste≫が最も後の番号らしい。
そしてそのalfaさん情報には続けて、
≪12170(Bill Hardman) Maroon,PCe,non-DG,X20e,GG/NewJer,non-lam,paste≫とある。
つまり・・・12143番は「赤ラベル・DG」で、12170番では「maroon~アズキ色」で[non-DG~DG無し」ということのようだ。
alfaさんのこの12170番が初回発売ものだとすれば(おそらくそうであろう)・・・この辺りの番号がポイントになりそうである。
2/28追記
≪上写真2点~recooyajiさん所蔵のMG12141Crtis Fuller/ Blues -Ette。2月21日(土)に、レコード仲間 recooyaji さん宅におじゃまして、氏所蔵のいくつかのSavoy盤の写真を撮ってきました。まずは、「赤・DB」ラベルの最後の辺りと推測される 12141番~人気盤 『Blues-Ette』 である。この12141番・・・センターラベルは間違いなく「赤・DG」であった。色合いも、いわゆるbloody red(血のような赤)で、それまでの「赤」とまったく違いはなかった。DG~溝もしっかりと確認できた≫
<2023年1月12日追記> 申し訳ありません。年末の編集作業の折、誤って写真を消失しましたので、上下2点の写真はありません。
そして、もう1点~下に写真を載せたのが、Booker Ervin/Cookin'(MG12154)である。アーヴィン流の灰汁(あく)の強い「枯葉」で有名なレコードである。 そしてどうやら、『この12154番が「赤ラベル・DG有り」の最後のタイトルである』~という説があるらしい。しかしながら・・・僕はネットも含めて、その「赤・DG」ラベルを見たことがない。そこで、わりと最近、この12154番『Cookin'』~いわゆるオリジナル盤を入手したrecooyaji さんの現物を見せてもらったのだ。
≪センターラベルの色合いは・・・いわゆるbloody redの「赤」であった。ただ、12141番(Blues-Ette)と並べて見比べてみると・・・12154番の「赤」の方がほんの微(かす)かにだが、暗い赤に見えないこともなかった。いや、ほとんど違わないのだが。
そして、重要な点は・・・「溝ではなく筋」であることだ。上の写真からもお判りいただけると思うが、これこそ上記の「小スジ」である。
番号の近い『12156番 John Rae/Opus De Jazz』も、やはり「小スジ」であることからみても、Savoy盤ラベルの変遷として、「溝」→「小スジ」→「大スジ」という流れだと認識しているので、この12154番辺りから、「DGなしの小スジ」に替わっていった・・・と言えると思う。
この記事の「三式さんコメント」からも判ったことは、「ラベルのデザインの変遷」というものは、どのレーベルであっても、ある番号からある番号で、キリッと切り替わるものでもなく、切り替え時期の番号の前後で混在しているもの~ということで、なるほど・・・録音されたレコードが企画された番号順の通りに発売されたとも限らないのだから、2種(3種)のラベルがある時期の番号前後にまだらに混在するのは当然のことかもしれない。
そこで、僕の手持ちでこの辺りの番号タイトルを探したら・・・在った。MG12156番(John Rae)である。
≪John Rae/Opus De Jazz vol.2≫ (maroon(アズキ色)・DG無し)
上の写真のセンターラベルは「赤」にも見えるが(クドクド書いてきたが写真では色合いが実際とは違って見えることも多い) このレコード(MG12156)のラベルは「アズキ色(maroon)」である。そして、「非DG」のいわば、前述4.の「筋」(小スジ)である。
この12156番・・・盤はわりと厚めで、少なくとも、もっと後年の再発と思われる「こげ茶」の盤よりは厚い。そんなことから、この「アズキ色」ラベル盤がこの番号タイトルとしては初回発売だと考えたい。(alfaさんの12170番についても同じ) そうだとすれば・・・少し話しが見えてくるのだ(笑)
つまり・・・12143(Curtis Fuller)では「赤ラベル・DG」。 そして
12156(Johnny Rae)が「アズキ色・DGなし」。12170(Bill Hardman)も「アズキ色・DGなし」
12143 から 12156・・・この辺りの番号タイトルが「赤ラベル・DG」から「アズキ色」への変換期だろうか?
ちなみにネットからもいろいろチェックしてみると(色合い確認に不安はあるが)・・・ほぼ「赤ラベル・DG」と認識できたものは、今のところ、MG12144(Curtis Fuller/Imagination)が最後期番号である。
*この辺りのこと~みなさんの情報をぜひお寄せください。
最後に~「こげ茶・大スジ」ラベルの写真もひとつ付けておきます。
≪「こげ茶・大スジ」ラベルの盤は、かなり後期の再発と思われる。盤は薄くてペラペラ、ジャケットの紙質も薄くて安っぽい。ジャケット裏のアドレスは56Ferry、PB BOX表記のある場合も多いようだ≫
前回の夢レコ記事に載せた、マリアン・マクパートランド2点の写真~これをもう一度、こちらの載せておきます。オリジナルの「赤ラベル」と「こげ茶ラベル」の見え方のサンプルになるかと思います。
さらに混乱を招くようなことを追記すると・・・この「アズキ色」にも「こげ茶色」にも、タイトルによってそのラべルの色合いが微妙に違ったりしているようなのだ。かなり「赤」に近い感じのアズキ色、アズキ色に近いこげ茶・・・挙げればキリがない(笑)
そんな混沌としたSavoyレーベル・・・だからこそ、純度の高い「赤」だけで統一されてきた「赤ラベル・DG」に、僕は魅力を感じるのだ(笑)
さて、この夢レコ記事内では、ラベルの色を「赤」「アズキ色」「こげ茶」と表記するが・・・とにかく「色」のことは難しい。自分の手持ち盤のラベルをカメラで撮っても、撮られた写真のラベルの色合いが実際に見えたままの色合いになるとは限らないし、ネットで見ている各人がそれぞれのモニターによっても、その色合いは微妙に変ってくるものだろう。
そこで、とりあえず・・・「原色大辞典」というホームページ(HTMLカラーコード)のアドレスを付けておきます。ご覧ください。
http://www.colordic.org/
僕が記事内で使っている色の表記「 」は、このHPでは『 』の色のイメージです。
「赤」 →『red』
「アズキ色」→『maroon』あるいは『dark red』
「こげ茶」 →『brown』
2020年1月24日追記~
さきほど、Savoyレーベルについてあれこれ検索していたら、Savoy / London Jazz Collector なる英国のブログを見つけた。これが素晴らしい内容だったので、そのブログのアドレスのリンクを貼っておきます。
ラベル色の具合とかアドレス表記の変遷について明確な写真を載せてあって、もちろん Not Licsensed Home Use Only にも触れております。なお各国でのSavoy再発についても触れていて、日本ではCBSソニーやキングから出ているようだが、細かいことは判らない、今後の調査待ち・・・なっております(笑)
https://londonjazzcollector.wordpress.com/record-labels-guide/savoy/
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