<ジャズ雑感 第31回> Savoy赤ラベルのスタンパー
Savoyというレーベルにも、なかなか興味深いものがある。僕にとってのSavoyは、やはり・・・ミルト・ジャクソンということになる。ミルト・ジャクソンという人を最初に聴いたのは、1972年頃に、モンク絡みで入手した「クリスマス・セッション」だったはずだ。この人を「好きだな・・・」と自覚したのは、presitgeのMilt Jackson Quartetだった。そうしていろんなジャズを聴いてきた後、たまたまSavoyのOpus De Jazz(キングのCD)を入手したのだが、それまでに耳にしたことのない、リラックスしてブルージーな味わいのある「渋いジャズ」も悪くないなあ・・・と感じた記憶がある。今になって思えば、それこそがSavoyジャズのイメージそのものだったわけなのだが(笑)
僕の好みなのだが、ミルト・ジャクソンについては、「非MJQ」というフォーマットに魅力を感じている。そうして、Savoy盤での彼のヴィブラフォンの音には独特の重み・深みがあるようにも感じられ、Roll Em Bagsなど彼のSavoy作品を聴けば聴くほど・・・Savoyというレーベルのイメージがますますミルト・ジャクソンという人に集約されてくるようなのだ。その辺りのレコードについては、またの機会にまとめるとして、今回は、Savoy盤のちょっと瑣末な点に拘ってみたい。
《写真左~モノクロ・ジャケット。右~カラー・ジャケット》
昨年の10月頃だったか・・・近所のレコード仲間:recooyajiさん宅で音聴き会をやった。この2人集まりは不定期なのだが、たいてい2ヶ月に一遍くらい、そろそろ・・・てな感じで、急遽、催されることが多い(笑)
さて、その音聴き会~ある日曜の午後、僕は「渋いジャズ」開眼盤である、Opus De Jazz(MG12036)を持っていった。だいぶ前にCDで聴いた時に感じていた「サウンドのコク」みたいなもの・・・それをオリジナル盤で味わってみたいという気持ちがあって、ちょっと前に「モノクロ・ジャケット」を入手していたのだ。
さて、僕がこの「モノクロジャケ~Opus De Jazz」を取り出すと・・・recooyajiさん「おっ、モノクロだ!」と反応する。この作品に「モノクロジャケ」と「カラージャケ」があることを知ってはいたが、なんと、recooyajiさん・・・たまたまその「カラージャケ」の方をお持ちだったのだ!
recooyajiさんの手持ち盤は~ジャケはカラーだが、盤(vinyl)は赤のセンターラベルだった。僕の「モノクロジャケ」も、もちろん同じ赤ラベルだ・・・これで「赤ラベル」が2枚揃ったわけだ。それじゃあ、ぜひ比べてみましょう!となるのもムベナルカナでしょう(笑)
さて・・・まず素朴な興味として「ジャケット」に、1st(モノクロ)と2nd(カラー)という違いがあって、それでは「盤」の方はどうなのか?・・・という疑問が湧いてきた。2人はいそいそとそれぞれの盤を取り出して並べてみる・・・さあ、どうだ!どうなのだ?(笑)
やはり・・・スタンパーが違うようなのである。MG~というレコード番号とX20という刻印(*bsさんからのコメントで判明)は全く同じだったのだが、その他に、アルファベットと数字の表記があって、それらが同一ではないのである。
《写真上~モノクロジャケの盤:内周右上に「1」の数字刻印、
写真下~カラージャケの盤:内周右上に「6」の数字刻印がある》
僕はそれまで、Savoyのセンターラベルやスタンパー刻印については、ほとんど無知であった。知っているのはRVG刻印のこと、あとは、大まかのラベル変遷としての《赤:red→エビ茶:maloon》くらいで、だからこの偶然的2枚揃いの場面を迎えるまでは、まったく予備知識もなかったわけなのだ。Savoyのスタンパーについてはおそらくrecooyajiさんも同様だったようだ。2人は、その2枚を食い入るように観察する(笑)
・・・・・ややあって「うう、違いますねえ」とrecooyajiさん。
《写真上~モノクロジャケの盤:「B」の刻印。アルファベット刻印は、数字刻印のほぼ反対側に位置している。
写真下~カラージャケの盤」には「E」の刻印があった。(ジャケットと盤の入れ替えがなかったという前提で)普通に考えれば、モノクロジャケットの中身(盤)の方が早いプレスなので、この「B」と「E」の場合なら・・・「B」の方が、より初期プレスに近いということになるのかな》
《このOpus De Jazzの2種を整理すると~モノクロジャケの盤が「Bの1」で、カラージャケの盤が「Eの6」ということになる。
但し「ジャケと盤の入れ替え」もよくあることだし、BとEなる表記の場合、必ずしもBの方が先とも断定できない・・・全ては推測である。いや、思い込みかな(笑)
さて、音の方はいかに?
これがなかなか微妙ではあったが・・・やはり「モノクロ」(Bの1スタンパー)の方に、若干ではあるが、鮮度感の高さが感じ取れたようだ。うまく説明しづらいのだが、ベース音の膨らみ具合に若干の違いがあったような・・・このOpus De Jazzのべーシストは、エディ・ジョーンズ。もともとベース音自体が太くてでかそうなベース弾きである。だから・・・その音の大きさ(感)自体を「膨らんでいる」と捉えているのではなくて、その「大きさの輪郭/音色の芯」の感じに、ほんの少しの違いがあったようだ。つまり「ベース音の切れ」において、モノクロ・ジャケの方に、より圧縮感があり芯が締まった感じがあったように聞こえた。
推測レベルになるが、この同タイトルの「エビ茶」ラベル盤があれば、それぞれのプレス時期から考えれば、もう少し明らかな鮮度落ち感が認められるかもしれない。
今回は、このタイトルだけの聴き比べなので、「Bの1」や「Eの6」の比較に普遍性はない・・・と思う。同じ「赤ラベル」での同タイトル~もう少しサンプルがあれば、ぜひ聴き比べてみたいものだ。
(*ぜひ情報をお寄せください)
| 固定リンク | 0
コメント
CLASHさん、コメント、ありがとうございます。CLASHさんのお名前は、たしか・・・モアさんのHP(レコードとオーディオの部屋)コメント欄にてお見かけしたように記憶してます。
渋いSavoyレーベルの渋い作品~Opus De Jazzをお好きなようで嬉しいです(笑)
Savoy・・・よく判らないのですが「エビ茶」ラベルにも、より赤っぽい茶色と、より茶色っぽい茶色のものがあるようで、しかも60年代初期・中期からの再発と、70年代前後の再発もあるようで・・・ジャケ裏の住所など2種類あるところまでは確認しているのですが・・・やはりよく判りません。
「エビ茶」の音が案外、悪くない・・・僕もいくつかの再発「エビ茶」で同様の感覚、持ってます。
CLASHさん、仰るように、鮮度の問題と、でもある時代以降の方がプレス技術(材質向上)は向上している・・・ということも確かにあると思います。
その辺のジレンマ・・・端的な例で言うと、10インチ盤の「鮮度感」は認めるが、その一方、10インチの時代だと(主に1950~1954年くらいまでか)ほとんどの場合、プレス全般が荒いというか・・・わりとプチパチノイズ出るようにも思います。それぞれの愛好家が、(自分の価値観として)どの辺に線を引くか・・・ですね。
ここまでも含めて・・・レコードというのは素晴らしい!(笑)
CLASHさん、またよろしく。
投稿: bassclef | 2011年1月27日 (木) 23:31
はじめまして(?)いつも楽しく拝見しております。
今日は何を聴こうか迷っている時jazz関連のHP、ブログから此れだ的に決めターンテーブルに乗せています。
今回はOpus De Jazz盤を聴きながら記事を読みました、 因みに所有盤はbassclefさん所有1stの
黄文字ジャケ盤(2nd)です
私の知る限りカラーは3rdのはずです、スタンパーを見たところD5ですので昇順ですね。
>「エビ茶」ラベル盤があれば...もう少し明らかな鮮度落ち感が認められるかもしれない。
そうかも知れませんね、ただ他タイトルですがモーガン盤とペッパー&レッド盤(リージェント)を
マルーンで所有していますがかなり良い音です
プレステ再発紺もそうですがスタンパーのくたびれは有るのでしょうが時代的に
ヴィニールの質が良くなりくたびれをフォローしている物もいくつか有ります。
でもやはり1stは良いですよねジャケ等含め憧れです。
PS
UA盛り上がってますね!01はコルトレーンだったんですねダグラス氏は立上げ時
コルトレーンの力を借りるかブレーキーか悩んだでしょうね
結果セシルのハードドライブ再発コルトレーン名義、因みに私のはステレオドライブです。(笑)
投稿: CLASH | 2011年1月24日 (月) 00:17
瀬谷さん、2ndコメントをありがとうございます。
>RVGは10-inch LPのリマスターあたりから係わったのかもしれません~
そんな感じですね。実際、Savoyのミルト・ジャクソンの4枚(Opus~も入れれば5枚)の12インチ盤には全て"Recording Engenieer:Rudy Van Gelder"と表記されてますが・・・実際のところ、Roll'em Bags(12042)とMeet Milt Jackson(12061)に1949年の音源も含まれているようで(たぶんDee Gee原盤)
Van Gelderが1949年に録音しているはずもないので、古い音源については、瀬谷さんが仰るように《10-inch LPのリマスターあたりから》ということだと思います。だから、prestigeレーベルのように、ちゃんとRemastered by RVGと表記しないとまずいでしょうね。Savoy・・・けっこういい加減そうだから(笑)
そしてジャクソンの後の2枚(SkylineとJackson's Ville)については・・・こちらにはラッキー・トンプソン(ts)が加わったセッションが中心なんですが、これはもうしっかりと「Van Gelderの音」になってると思います。実は僕はその辺りがとても気に入ってるのですが。
投稿: bassclef | 2010年3月 4日 (木) 21:27
bsさん、Savoyのセンターラベル~コメントをどうもです!
X20刻印~そういえばこの「X20」ありますね。ちなみに手元に置いてあった(と言ってもほとんど全てですが:笑)Savoyの赤ラベルの10タイトルほどをチェックしてみましたら、全ての両面に「X20刻印」がありました。そして、そのどれもにRVG刻印もありました。
エビ茶(マルーン)ラベルには時代によって何種類もあるようで・・・ちなみに僕の手持ち3種類を見てみたら・・・。
ハービー・マンのManne Alone(MG12107)~これには「X20
」有りで、RVGとMG12107が活字刻印でした。色も茶色と赤が混じったような色で(アズキ色というべきか)たぶんこれがbsさんの仰る「赤みが残って」かと思います。
そしてDG(溝)はないけど、スピンドル穴から半径1cmくらいに「幅広溝?のような円形筋があります。
あとだいぶ後期の再発と思われる2種(Jazz is Busting All OverとMusicians Of The Year)のマルーンラベルは~こちらは、はっきりと「茶色」でして(それもちょっと色がくすんだような茶色)X20」は無し、MGナンバーが手書きです。共に盤はペラペラですが、これが2枚ともなかなかの音なんですよ(笑)いや、単に僕がSavoyの音を好きなだけかもしれません。
投稿: bassclef | 2010年3月 4日 (木) 21:09
X20という刻印はSPのバップ期に多くあります。C7も少ないですがあったように思います。
なお、RVGの刻印ですが、同じ時期のPrestigeのSPには手彫りのRVGを見ることが出来るのですが、Savoyにはありません。手彫りのGは数枚あるのですが何ともいえないですね。
SPは別のエンジニアでRVGは10-inch LPのリマスターあたりから係わったのかもしれません。
投稿: 瀬谷 | 2010年3月 4日 (木) 06:17
こんばんは。
手持ちの本盤は70年台?に入手した通称、マルーンと呼ばれるものですが、茶ではなく結構、赤みが残っております。ただ、カヴァは貼りでかなりチープな仕上げですね。それに、盤もペラペラです。
bassclefさんに肩を押され(笑)、何十年?振りに、針を降ろしてみました。アンプに火入れして直ぐなのであまり参考になりませんが、ジャクソンの華やかな(過ぎる?)音色にプチ・サプライズ(ポジティブの意味で)です。また、カッティング・レベルが高く、マルーン盤でも好録音を充分に窺わせます。
なお、RVGはプレス刻印、スタンパーはX20?それとも解り辛いですがC7?と刻まれています。そんなの有り?ですかね。
投稿: bs | 2010年3月 4日 (木) 00:13
67camperさん、いつもコメントをありがとうです!
>Roll Em Bags、Jackson's ville、Meet Milt Jacksonの3枚は赤ラベルで所有~
camperさん、ミルト・ジャクソンを相当にお好きのようですね。この辺りのSavoy盤を赤ラベルで揃えている・・・というのは、何やら当方の趣味と似通ってるみたいでこちらも嬉しくなります。僕も同じでこの3枚にJazz Skylineも集めました(笑)最初、この辺りのミルト・ジャクソンをCD(日本コロムビアの紙ジャケ)で揃えて、どうも「音」が深い感じがして~日本コロムビアがSavoyの音源を買い取ったとかの話だった~愛聴してまして、その内にどうにもオリジナル盤が欲しくなってきた・・・という流れだったんです。
その「音」の話し・・・また次回チャンスにでも(笑)
エビ茶ラベル(maloon?)~こちについても、1970年頃のエビ茶と、もう少し前の1964年前後?のエビ茶があるようで、先日、recooyajiさん宅で2~3のタイトルで比べてみました。センターラベルの方に大きな違いは発見できませんでしたが、ジャケット裏下の住所に違いがありました。
ところで、ひょっとしたら、camperさんのマルーンエビ茶も、赤ラベルより少々落ちる~という感じがあるかもしれません(なかったらすみませんです)
実は、僕の手持ちのOpus De Jazz(赤ラベル)も、ヴィブラフォンの音については、僕の耳には、なぜか他のミルトの赤レベル盤よりはちょっとだけ劣る・・・ように聴いています。録音エンジニアのクレジットはどれもVan Gelderなんですが。
投稿: bassclef | 2010年3月 3日 (水) 20:45
bassclefさん、こんばんわ。自分はこのアルバムはログ中にも出てきたマルーンラベルで持っています。家が近くならオリジナルと聞き比べてみたいものですね。Roll Em Bags、Jackson's ville、Meet Milt Jacksonの3枚は赤ラベルで所有しています。一番人気のあるオパスデジャズだけがマルーンでさびしいですね。というか何でも2流ん自分らしいコレクションだと改めて思います。MJQからはなれたミルトはブルージーでグループサウンズにとらわれない奔放さがいいですね。
自分もスタンバー刻印はほとんど気にしたことがないのです。レーベルさえあってりゃ〜よしよしって感じですね。
投稿: 67camper | 2010年3月 3日 (水) 18:18
瀬谷さん、コメントありがとうございます。
え~、当方、<Savoyの赤ラベル>と判ったようなタイトルにしてますが・・・実はあまり情報がなくほとんど何も知らない状態です(笑)
瀬谷さんのホームページhttp://www.sakura.cc.tsukuba.ac.jp/~jazzsp/index.html
のCollections<SavoyのSP盤ラベル>のページhttp://www.sakura.cc.tsukuba.ac.jp/~jazzsp/frame.htm
拝見しました。
《サヴォイの初期、1942年~1947年までは、楽団デザインがオリジナルで、黒、赤、紫、青とジャンルごとに色分けされていました。そして、1947年~1955年までは赤、紫、青、オレンジの音符デザインが使われました》
もうこの時点で<赤ラベル>の原デザインが出来てたんですね。
12インチLP盤のセンターラベルもほぼ同じデザインかと思いますが、瀬谷さんの「音符ラベル」という表現を読むまで、あれが「音符」だとは気が付いていませんでした(笑)
そのオタマジャクシのようなデブ音符の中にBe Bopと入れてあるところに、ポリシー(Be Bopという新しいスタイルのジャズを売り出そうという)を感じますね。
<楽団ラベル>の方は、デザインとしては、ちょっとゴチャゴチャしてますが、音楽が回りに溢れている!という感じを出してまして、これまた熱気を感じます。
いやあ・・・大変に参考になりました。Thanks!Mr.Seyaさん!
投稿: bassclef | 2010年3月 2日 (火) 21:54
ご無沙汰しておりました。
SPに関してですが、以前に少し調べたことがあります。
http://www.sakura.cc.tsukuba.ac.jp/~jazzsp/topic/Savoy.htm
http://www.sakura.cc.tsukuba.ac.jp/~jazzsp/Collection/Collection23.htm
http://www.sakura.cc.tsukuba.ac.jp/~jazzsp/Collection/Collection24.htm
http://www.sakura.cc.tsukuba.ac.jp/~jazzsp/Collection/Collection25.htm
あまり参考にならない情報で失礼しました。
投稿: 瀬谷 | 2010年3月 2日 (火) 08:30