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2008年3月23日 (日)

<ジャズ雑感 第23回>エリック・ドルフィーという人。

僕の好きなドルフィー~

「カッ・カッ・ッカ・ッカ・カッ・カカ・ッカ・ッカ」
いきなりロイ・へインズの甲高いスネアのリム・ショット打音で始まるこの曲。
そう・・・ドルフィーのG.W.である。ドルフィーとハバードのテーマが終わると、すぐにドルフィーのアルトが飛び出してくる。
う~ん・・・気持ちいい!(笑)

いやあ・・・今日は久しぶりにドルフィーをたっぷりと聴いた。そういえば、しばらくドルフィーを聴いてなかったのだ。
ちょっと前に、4438milesさんのブログ「Fのブルース」でオリバー・ネルソンの「ブルースの真実」が記事になり、そこでドルフィーの話題になった。  その記事を読んでいるうちに・・・俄かに、ドルフィーが聴きたくなってきたのだ(笑)
朝からどんなのを聴いたかというと・・・
「惑星」(outward bound)~A面(G.W.,on green dolphin street,les) 
B面(245,glad to be unhappy,miss toni)
「アウト・ゼアー」~B面(eclipse, 17west, sketch of Melba, feathers)
「ファイブ・スポットvol.1」~A面(fire waltz, bee vamp) 
B面(the prophet)
「ヒア&ゼアー」~A面(status seeking, god bless the child)
「メモリアル・アルバム」~A面(number eight)
「ダッシュ・ワン」~A面(G.W., 245) B面(bee vamp, serene)

こんなにもたくさんのドルフィーの音を浴び続けると・・・さすがにちょっと疲れる(笑) でもまあ心地よい疲れというか・・・やっぱりジャズの一番、濃いところを、しっかりと身体に沁み込ませたような気分でもある。

エリック・ドルフィー・・・もちろん、僕もドルフィーが嫌いではない。中3の時からジャズを聴き始め、モンクやミンガスの次に好きになったのが、ドルフィーだったように記憶している。
最初にドルフィーを聴いたのは・・・高1の時に買ったミンガスの「ミンガス・プレゼンツ・ミンガス」だったはずだ。このレコードは素晴らしかった。ミンガス、ドルフィー、テッド・カーソン、ダニー・リッチモンドという4人のバンド全体に凄い気合が入っていて、ミンガスによって自在にコントロールされたバンドのサウンドには、強力でありながら柔軟~というジャズの素晴らしいダイナミズムが溢れていた。このレコードは本当に何度も聴いた。そしてドルフィーという人を好きになった。
《写真は、CBSソニー盤:SOPC-57001》Mingus_presents

この「プレゼンツ」~今、聴くと・・・やはりこの「プレゼンツ」はミンガスのアルバムであり、演出家(兼役者)としてのミンガスが「こんな風に演出したい」という場面に、ドルフィーという巧い役者が「演出家の要求以上に素晴らしい演技をした」~そんな印象も受ける。(このレコードについては、ミンガス絡みでいつかまた記事にしたい)


《写真は「惑星」(outward bound)と「アウト・ゼアー」をカップリングした2LP(PR-24008)milestoneのtwofersシリーズ》
Twofer

記事の冒頭に書いたように、ロイ・へインズの「カッ・カッ・ッカ・ッカ・カッ・カカ・ッカ・ッカ」で始まる、この「惑星」というLP~ドルフィーのプレイはもちろんのこと、他にもいろいろと聴きどころがある。
一つは、フレディ・ハバードである。この頃の迷いのないハバードのフレーズ、そして何よりあの鋭いトーン・・・これを聴くだけで、実に気持ちいい(笑)
思うに・・・ハバードには、こういう曲というかフォーム~適度にモード的とでも言おうか・・・サウンドとしては、ちょっと前衛的で、しかし熱いスピリットも充分にある(出したい)感じ~そんなフォームが、最も似合っているような気がする。
ハバードのフレーズは、古いスタンダードをオーソドクスなコード(和音)で演るハードバップというスタイルでは、ちょっと浮いてしまうかもしれないし、逆に得意のモード手法を洗練しすぎてしまうと、吹き方がパターン化してつまらなくなってしまうような部分があるかと思う。
そしてもう一つ、ジョージ・タッカー・・・このベース弾きがまた尋常ではない。
この強靭な音色! 以前に記事にしたヘンリー・グライムスと似ているタイプだと思うが、とにかく一音一音が凄くアタックの強い音だ。これは・・・指をしっかりと弦に引っ掛けて相当に強い力で引っ張った音色だと思う。
その「ブチッ・バチッ!」という音色が、これまた快感である。但し・・・好みに合う・合わない、ということもあるかと思う。
なにしろ、タッカーのベースときたら、最初から最後まで怒ったような音をしているのだから(笑)

Van_gelderこのtwofersなるシリーズ・・・初期のものには、センターラベルに<van gelder>刻印があるようだ。
これもちょっと意外だったのだが、ジャケットのクレジットを見ると・・・ちゃんとremastering:Rudy Van Gelderと書いてあるじゃないか。そんな事情を知ってから聴くと・・・音質の方も案外にしっかりとしているように聞こえてくる(笑)
このtwofersシリーズの2枚組みは当時から安い価格で出回っていたし、たぶん今でも人気薄だろうと思う。見かけたら、センター・ラベルのvan gelder刻印の有無をチェックするのも楽しいかもしれない。音質は、twofers以前の「黄緑ラベル盤」よりは、いいだろう。

「ダッシュ・ワン」A面(G.W., 245)とB面(bee vamp, serene)~
「ダッシュ・ワン」は、1982年に発売された未発表テイク集だ。これ以上できない、と思えるほど最悪なジャケットだが(笑)《一番下の写真:右側》
内容は悪くない。なんと言っても、1961年7月「ファイブ・スポット」での別テイク(bee vamp)が素晴らしい。
そして「惑星」(ourward bound)からの別テイク(G.W.と245)もうれしい。マスターテープの管理状態がよかったのか、音質もかなりいいように思う。
G.W.でのロイ・へインズのドラムのイントロ~このパターンが、本テイクとは微妙に違うところがおもしろい。やはり、別テイクの方が、やや切れが悪く、ちょっと判りにくいリズムパターンになっているような気がする。

「アウト・ゼアー」~B面(eclipse, 17west, sketch of Melba, feathers)
この「アウト・ゼアー」・・・昔から、僕にはあまりおもしろくない。というのも、ジョージ・デュブビエのベースにロン・カーターのチェロが加わっており、端(はな)からクラシックの現代音楽風なサウンドを意図したようで、バンド全体のサウンドがこじんまりとしてしまっているからだ。「惑星」に溢れているようなジャズ的なビート感の盛り上がり・・・そんなものが僕にはあまり感じられない。そして、意図したであろう、この現代音楽風なサウンドとしては・・・チェロの音程があまりよくないのも、ちょっと白ける。
B面3曲目のsketch of Melba~このsketch of Melbaは、ランディ・ウエストン絡みで好きな曲だったので、このメロディが流れてきた時に「あれっ?この曲・・・」てな驚きもあり、ドルフィーがこの曲を演っていたということがちょっとうれしかった。5spot_3

さて、ミンガスの「プレゼンツ」の圧倒的な影響もあり、しばらくの間、僕はミンガス絡みでのドルフィーだけ聴いていたのだが、高2の時だったか、FMのジャズ番組「アスペクト・イン・ジャズ」のドルフィ特集で聴いたfire waltz~これには、本当にぶっ飛んでしまった。
ドルフィー、ブッカー・リトル、マル・ウオルドロン、リチャード・デイビス、エド・ブラックエル。この5人が生み出す全ての音に気迫が満ち満ちている。
fire waltzとはよく名付けたもので・・・この5人、本当に燃えているのだ!
5spotしばらくは、テープに録ったその演奏を聴くたびに「これこそがジャズだあ!」と興奮していた。調べてみると、そのfire waltzは「ファイブ・スポット第1集」に収録されており、この日の演奏は、どうやらいろんなLPに分かれて収録されていることも判ってきた。そんな訳で、その後「第2集」「メモリアル・アルバム」「here & there」と、順番に集めたりもした。

ただ、僕の「ドルフィー好き」は、ちょっとばかり片寄っていて、僕はもうひたすら彼のアルトサックスが好きなのである。とにもかくにも、ドルフィーがアルトを吹く時の圧倒的な音圧感やドライブ感に惹かれるのだ。
吹いている楽器がぶっ壊れてしまうんじゃないかと思わせるほどにビリビリと鳴りまくる、あのアルトサックスの音色。そのいかにも大きな音でもって、うねるように、巻き込むように繰り出してくるドライブ感に溢れるフレーズ。

そういえば、ドルフィーがノッてくると、必ず繰り出してくるパターンがある。それは・・・「パッ・パラ・パーラ・パーラ」というデコボコした起伏を持つフレーズで、ドルフィーは、この1小節4拍のフレーズを、それはもう重い音色でもって、何かが弾け飛ぶような感じで、吹き倒すのである(笑)
そしてこのフレーズが出ると・・・その瞬間、ビートが一気に「解き放たれる」ような感じがするのだ。バンド全体の感じているビート感も一気に爆発するとでも言うのか。そうだ・・・まるで、砲丸投げのあの重い鉄球をブンブン振り回しているみたいじゃないか。それも、砲丸の軌道や速度を自在に変化させながら。そうしてそれが、ムチャクチャ気持ちいいのである(笑)

だから、ファイブ・スポットのライブでは、fire waltz, the prophet, number eight, status seeking をよく聴く。同じファイブ・スポットでの演奏であっても、like someone in love, booker's waltzなどのフルートにはそれほど惹かれなかった。Heartheredash_one
もうひとつのドルフィーの楽器~彼の吹くバス・クラは、アルトほど好きではないが、あのバスクラの音色には独特の暗さがあって、もちろん悪くない。
here & there に収録されているgod bless the child は、ドルフィー独りだけのバス・クラによるソロ演奏だが、なんというか・・・地底の底から緩い地熱がじわじわと伝わってくるような・・・そんな独特の気配を感じさせてくれる。5分ほどの小品(他のライブがほとんど10分以上なので:笑)だが、なんとも愛着の湧く1曲である。

それにしても、ドルフィーという人。聴けば聴くほど、ただ一言・・・「凄い」
まったく・・・とんでもないアルト吹きがいるものだ。

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コメント

三式さん、コメントをありがとうございます!初めまして・・・bassclefと申します。

いやあ・・・そうでしたね。ドルフィーとドン・チェリーの競演~ありましたね!昨夜は遅くて聴けませんでしたが、今、大きめな音で、オーネット・コールマンのFree Jazz(atlantic)をA面・B面、聴いてみました。いやあ・・・充分、楽な気持ちで聴けましたね(笑)

注目の「ドルフィ~チェリー」については、三式さんがおっしゃるように、「競演」のレベル~その場には一緒に存在していた~でしょうね。というのも、別グループ(チェリー、オーネット、ラファロ、ヒギンズが左側。ハバード、ドルフィ、ヘイデン、ブラックエルが右側)で、ハッキリと左右のチャンネルに分かれてしまってますから。
むしろ、チェリー~ハバードのソロ応酬の方がおもしろかったです。こういうセッションだと、ちょっとトーンがおとなしめのチェリーよりも、攻撃的なハバードの方が、やはり目立ちますね。チェリーのソロ(左側)より、それにアタックしてくるハバードの音(右側)の方に気を取られる僕でした(笑)
それと、ラファロ~ヘイデンのベースソロの応酬・・・久々に聴きました。それにしても、左側から始終、倍のテンポで(ヘイデンがリズム的には普通の4ビートだが、ラファロは8分音符でその倍)リズムを刻むラファロ・・・これは、聴き方によっては、全てがベースのソロじゃないか(笑)やっぱりラファロは凄い!

三式さん、またいつでもコメントどうぞ~。

投稿: bassclef | 2008年4月 3日 (木) 11:41

4438milesさん、またまたコメントとThanksです!
ドン・チェリー・・・オーネット・コールマン絡みでしか聴いてません。そういえば、僕がジャズ聴き始めの頃~まだフリージャズっぽいものに人気があった~フランスのBYGというレーベルが日本の東宝から再発されて、ドン・チェリーの「ミューpart 1」「~part 2」というLPも出てました。あれ・・・いろんな記事で誉めてあったので、すごく欲しかったんですが、結局、その2枚組シリーズからは、アーチー・シェップの「ブラーゼ」というのを買いました。フリーっぽい展開の中に、急に「いそしぎ」を吹いたりするのですよ(笑)一頃、シェップという人にも凝りましたが、何かしらああしたテナーの演奏が、あまりにも演劇的(というか演出的というか)な感じがして・・・今ではシェップには全く興味ないです。
ドン・チェリーについては、まだ未踏峰ですが、シェップとは対照的に自然な個性を感じます。
ああいう時代から30年以上も経ってしまいましたが、今、BYGレーベルの音を聴くと・・・どんな風に感じるのか?
また試してみます(笑)

投稿: bassclef | 2008年4月 2日 (水) 19:07

こんばんは、三式と申します。

このページは1年ほど前から時々立ち読み(笑)させて
もらってました。
今回ドルフィー絡みということで初めてコメントさせていただきます。

皆さんとても面白い見解をお持ちですね!

特に「ドルフィーとD.チェリーの共演はどうか?」なんて
いいですね!

実際、アトランティックの「フリー・ジャズ」O.コールマン・ダブルカルテットで二人は共演してるんですがステレオ盤で聴く限りでは左チャンネルからチェリー、右チャンネルからドルフィーを聴くことができます。

ただし、タイトルでも分かるように左にチェリー、コールマン、S.ラファロ、B.ヒギンズ、そして右にドルフィー、
F.ハバード、C.ヘイドン、E.ブラックウェル、

こんな凄まじい面子が同時進行で即興演奏を繰り広げます。
混沌とした中から聴き取れる二人の演奏はとても面白いものです。共演と言うより競演と言ったほうが当たってるような気がします。

やっぱり本当の意味での共演を実現してほしかったです。

それからもうひとつ「チェリーとモンク」ですが、ニュージャズ盤「エヴィデンス/D.チェリーとS.レイシー」において4タイトル、モンクの楽曲を取り上げてます。

すべてピアノレスでの演奏なんですがここにモンクのピアノをはめ込んでも何の違和感も無く聴けるように思います。


投稿: | 2008年4月 1日 (火) 22:07

ドン・チェリーも登場ですね。

ドンって不思議な人、不思議な魅力をもっていますね。

ドロフィーとはまた一味違うような気がします。

やはり、ロリンズとやった「Our Man in Jazz」は出色だと思います。

そしてあのような前衛的表現ができるかと思えば、ニューオリンズのストリービルでサラ・ボーンの誕生日ライブに来て、メイナード・ファーガソンやチャック・マンジョーネと共演し、トラディショナルな音を聴かせるという渋いことをやらかすのです。

あのポケット・トランペットは正に不思議なポケットです。

ブルースを基点としたイカシタ奴ですね。

投稿: 4438miles(SHIN) | 2008年4月 1日 (火) 13:30

シュミットさん、コメントをありがとうございます。
ドルフィーとドン・チェリー・・・これはおもしろいかもしれませんね。チェリーは、オーネット・コールマンとは息もピッタリの名コンビだったわけですが、もし、仮に、万一、ドルフィのアルトと組んでいたら・・・どんなサウンドだっただろうか?これは・・・むずかしい(笑)
コールマンの抽象性とドルフィの抽象性では、なにかしら質感が違うような気もします。ある意味、コールマンは、何をどう吹いていても、根底に「突き抜けた明るさ」みたいなものがあるような・・・。ドルフィにはもう少し、暗い、重い何かがあるような・・・。いや、これはよく判らないです。
仮に(もともとが無い話しですから:笑)チェリーが同じような飄々(ひょうひょう)としたトランペットを吹いたとしても・・・そのアルト奏者の質感の違いで、チェリーのペットの映え方も、違って見えてくるかもしれませんね。

「もしも・・・」シリーズ~ついでに、そのチェリーとモンク、これも面白そうな組み合わせじゃありませんか(笑)

投稿: bassclef | 2008年3月31日 (月) 20:39

今晩は、シュミットです。

私はドルフィ・フリークってわけではないのですが、「ブルースの真実」なんかを聴いてると、やはりドルフィの存在を強く意識します。名手ぞろいのメンツのなかにあって異彩を放ってますよね。で次にドルフィのリーダーものを何か聴いてみようかな、っていうパターンがけっこうあります。

それと、彼がモンクと共演してたらというご意見がありましたが、私はドン・チェリーともやってほしかったと思ってます。ハバードやブッカー・リトルもいいですが、ドルフィ~チェリーのライヴなんて聴いてみたかったですね。

投稿: シュミット | 2008年3月30日 (日) 21:14

4438milesさん、コメントありがとうございます!
いやあ・・・今回の「ドルフィ」は、もう明らかにmilesさんが火付け役です(笑)
>ドロフィー中毒で時々禁断症状~
わっはっは!この表現は・・・ドルフィという人が生み出すあの音色・サウンドにはピタリときますね。実際・・・僕などもmilesさんほどではないしょうが、この前の日曜の朝からドルフィを聴きだしたら・・・思いの他、気持ちがよくて(笑)
>アルト、バスクラ、フルート、どれをとっても良い音色~
それはありますね。ドルフィはどのノートも自信を持って、太い音で鳴らしきってますよね。迷いがない。良い音色・・・言い換えれば「自分の音」だと思います。

>リーダーとしての録音の最高峰はやはり「Out To Lunch」では・・・~
そうですね・・・「リーダーとして」なら、やはりそうなるのかな。
NOTさんへのコメントにも書きましたが、僕はまだ本当のドルフィ信者ではないようで、バンドのサウンド全体が、より抽象的(無調的というか・・・非スタンダード的というか)になってしまった後期ドルフィの代表作(なんだかフルートの出番が多いような気がする)に、今ひとつ馴染めないのです。また明日にでも大音量で聴いてみますね。

投稿: bassclef | 2008年3月26日 (水) 23:35

M54さん、ドルフィ大好きコメント、どうもです!

>ファイヤーワルツのダララ・ラララー・パッパラー
~いやあ・・・あのメロディが聞こえてきますね(笑)あの、なにやら暗い情念がメラメラと立ち上るような・・・「火のワルツ」とはピタリのタイトルですよね。マル・ウオルドロンという人は、いわゆる巧いピアニストではないかもしれませんが、驚くほどいい曲を書いてます。このfire waltzもそうだし、バラードのsoul eyes(コルトレーンも2回、吹き込んでいる)
その他「おっ、いい曲だ」と思うとマルのだった・・・ということが何回もあります。prestigeの無数のセッションで無数のテーマを捻り出していたようです。それも凄いですね。
>Questの方のfire waltz~渋いですね。ディスコ的に見ると「クエスト」が1961年6月吹き込みで「ファイブ・スポット」が1961年7月吹き込みです。おそらくこのマルの新曲
が「クエスト」の時、バンドにピタ~ッときたんでしょうね。だから「ファイブ・スポット」でのライブで、皆が乗りに乗った。そしてあのシリーズのトップ(第1集のA面1曲目)にもってきた・・・と(笑)
「Far Cry」は僕も好きです。camperさんが挙げられたmiss Annもいいし、バスクラで演るスタンダードのit's magicもちょっとクラアタタカイ(暗くて温かいという意味です:笑)味があっていいです。それとアルトだけのソロ演奏のtenderly・・・やっぱり凄い!ドルフィって、ほっとけば、4時間でも5時間でも楽器を吹きまくってしまうのでは・・・と思わせるほど、見事に自然な流れの(あらかじめ構成を考えてきただろう、とは思えない)サックス吹奏です。・・・凄い。
こりゃあ Far Cry もまた取り上げねば(笑)

投稿: bassclef | 2008年3月26日 (水) 23:13

dukeさん、ドルフィへのコメントどうもです。返事コメントが遅れましてすみません。

>ドルフィーは美しいか醜いか、明るいか暗いか、サドかマゾかという二分法では収まらない不思議な魅力を持っております~
う~ん・・・うまいこと言うなあ(笑)そうですね・・・僕も実は今回の記事を書きながら、「ドルフィの2面性」みたいなことが、始終、アタマの中を巡ってました。dukeさんの言に習えば・・・
「ドルフィは、知性か本能か」という感じでしょうか(笑)

ドルフィという人・・・実はものすごく器用な部分もあって、あのアヴァンギャルド性は、実は単純に個性というよりも、もっと演技的・演劇的なもの~もちろん演奏というのはある意味、全てが意識的なものではあるが~だったのでは?
演出家の要求に合わせる部分もかなりあったのでは・・・と感じている部分もありました。
まあ「音」というのは、全てをひっくるめて、「出てくる音」が全てなわけで、それが本能的であろうと意識的であろうと、その音にどれだけの(その人にとって)realityがあるのか・・・というところが勝負でしょう。
そういう意味では・・・ドルフィの音は、素晴らしく血肉化されてると感じます。
やはり「ドルフィはやはりドルフィであった!」というしかありません・・・ドルフィは凄い!

投稿: bassclef | 2008年3月26日 (水) 21:27

67camperさん、コメントをthanksです!ニフティの方がメンテナンス中で返事が遅れてすみません。
ドルフィのアルトの音色がキャノンボールに似ている・・・言われてみると・・・ちょっと似ている部分もあるかな。
両者ともアルトが艶々(つやつやと)よく鳴っている(というより馬鹿でかい音かな)感じが近いかもしれませんね。しかし・・・その艶やかさの中にある「毒」というか「アク」というかドロドロした感じは、やはりドルフィならでは・
・・でしょうね。キャノンボールの音には、良くも悪くも、「翳(かげ)り」がないですよね(笑)それがキャノンボールの良さかもしれませんが。

>いずれの楽器でも強烈な個性を発揮するところがドルフィの素晴らしさと思います~
いやあ・・・まったくその通りですね。バスクラもホント、凄いです!bee vamp,agressionも、バスクラでしたかね。
ドルフィのフルート・・・僕ももう一度、聴いてみます。フルートという楽器がどうしてもジャズには向いてないような気がして、そんな思い込みが強いので、ここらで、もう一度、先入観なくドルフィのフルートも聴いてみますね。

投稿: bassclef | 2008年3月26日 (水) 21:16

bassclefさん

私が火付け役と・・・私は放火魔ではありませんので・・・念のため!(笑)

ドロフィーの存在感・・・これは語り継ぐべきキーワードですね。
そして、リーダーとしての録音の最高峰はやはり「Out To Lunch」では・・・。

そして、やはり晩年の「Last date」に続く欧州での記録は際立っていますね。

私はドロフィー中毒で時々禁断症状がでますが、60年代の元気で真っ向勝負を挑んでいた頃のドロフィー、例えば「ファイヤー・ワルツ」と「Out To Lunch」を併せて聴きます。

因みに、私の事務所の机の上には、昼食に出ているサインとして「Out To Lunch」のジャケ写真の縮小版を置いています。(笑)

アルト、バスクラ、フルート、どれをとっても良い音色をしてますね。

そして、根底に流れるブルージーな表現・・・だからどんなアバギャンに参加しても、崩れず、溺れずに、自己を確立し、究極の存在美を、或るときは、アンチテーゼとして、またアンビバレンツな存在として、そして或るときは妖艶に・・・舞う・・・・のではと・・。

ドロフィーは皆で語って、皆で聴いて・・飽きませんね。

投稿: 4438miles(SHIN) | 2008年3月26日 (水) 10:31

こんにちは。 
ドルフィーですか!名前を聞いただけでエンドルフィンが大量に分泌されそうです。(笑)
僕のジャズの師匠はジャズ喫茶のマスターでコルトレーン崇拝者でしたが、ドルフィーだけは嫌いといっていました。天の邪鬼な僕はそのお蔭でその頃からドルフィーの虜になってしまうわけです。
最初に購入したレコードが『FAR CRY』だったのも良かったように思います。  B面はかなり聴きました。
ドルフィーはアルトが良い、僕もずっとそう感じていましたし、今でもそう思います。 しかし、バスクラも良い!
ファークライの『イッツ・マジック』なんか、いつ聴いても涙もんです。
リズム隊ですが、タッカーの黒いけど乾いた感じのベースと同じくタイトで乾いた音のロイ・ヘインズの2人は最高にドルフィーに合うと思います。僕の好みで言ってますが、ドルフィーって、冷たい炎というか、一見クールだけど実はとてつもなく熱い情念の音楽にヘインズとタッカーはピッタリだなっと。    『OUTWARD BOUND』 だけですよね、この2人は?
ドルフィーのアルトで、脳裏に浮かぶのはやはりファイヤーワルツのダララ・ラララー・パッパラー かな? 最近、5スポット じゃなくて、マルのクエストのやつをよく聴きます。 アドリブなしだけどたまらんです! あと、ケン・マッキンタイア のルッキング・アヘット ですか。  この頃、61年前後のものを聴くことが多いです。
ドルフィーの存在感は1音でも充分、伝わりますね。 Bassclefさんにはいつも火をつけられます!   

投稿: M54 | 2008年3月25日 (火) 07:48

bassclef さん、こんばんは。

ドルフィーは美しいか醜いか、明るいか暗いか、サドかマゾかという二分法では収まらない不思議な魅力を持っております。聴き込むほどに、ときに美しく、ときに暗い、謎のプレイヤーです。

Out There では4種の楽器を使い分け、クラシック的な繊細さをみせ、ケン・マッキンタイヤーの Looking Ahead ではアルト・バトルをくり広げる大胆さもあります。かつてマイルスが起用する話もありましたが、マイルスが惹かれたのは、おそらくこの両極端の音楽性でしょうね。女性と同じでして、謎があるものは魅力的です。(笑)

投稿: duke | 2008年3月24日 (月) 23:37

まずいなあ、また出遅れてしまいました。こんばんわ。ドルフィはアルト、バスクラ、フルートとやりますが全部いいですね。アルトではご指摘の5スポットの火のでるようなリトルとの共演や"Miss Ann"が最高ですね。ご指摘のような輪廓の太いアルトは、フレーズが全く違いますが音色的にはキャノンボールに近い感じを持っているのは自分だけでしょうか。バスクラもまたいいですね。前に自分のブログにアップしたGreen Dolphin Streetのバスクラはまるで"象のパオーン”に近い印象で捨てがたいです。"Hat And Beard"のバスクラもバイブとボビハチと同じフレーズを吹く対比が面白いですよね。そして問題のフルート。ライクサムワンも好きですがレフトアローンやYou Don't Know What Love Isも好演と思います。いずれの楽器でも強烈な個性を発揮するところがドルフィの素晴らしさと思います。

投稿: 67camper | 2008年3月24日 (月) 22:45

Shuffle Boilさん、ドルフィのアルト好きコメント、ありがとうございます。
もし、ドルフィとモンクが一緒にやっていたら・・・う~ん、どんなサウンドになったんでしょうね。
ひとつ、ヒント(とは言えないかもしれませんが)があります。ジョージ・ラッセルのEzz Thetics(riverside)というLPに、モンク作のround about midnightが入ってまして、この曲でのドルフィのアルトが、これまた素晴らしい!
モンクとの共演~この1曲から勝手に予想すれば・・叙情的なバラードしてのモンク曲なら、文句なしにピタッときたでしょうね。いや、バラードだけでなく、epistrophyというモンク曲もドルフィは何度か演奏しているようだし。
こうして考えてみると・・・個性の強いモンク曲を、アクのあるドルフィ流でこなして「いいジャズ」にしていますね。

ただ、仮に実際の共演があったとしたなら・・・モンクはおそらくドルフィが吹いている間は、あまりピアノ(コード:和音)を弾かずに、ドルフィの自由に吹かせるでしょうね。コルトレーンにもそうしたように。

ドルフィというと、なんだか抽象的なテーマみたいなものばかりのイメージありますが、実は「普通にいい曲」を吹いても独特のコクがあって、実にいいんですよ。そんな1曲~stormy weatherというスタンダード曲が、ミンガスとの共演盤(candid)にもありましたね。

投稿: bassclef | 2008年3月24日 (月) 00:06

NOTさん、さっそくのドルフィ賛歌コメントをどうもです!
僕も夢中になって聴き込んだのは、もう30年ほど前ですが、ドルフィのあの燃え上がるような炎のような感じ・・・聴いてて「うお~っ!」と叫びたくなるような(笑)あの感じ。
ジャズ好きなら一度は嵌(はま)る、なにかこうジャズの本質~ジャズはこうあってほしい!~みたいな何かがドルフィにはあるみたいですね。
ただ僕は、本物のドルフィ信者ではないようです。というのも「フルートのドルフィ」を好まなかったり、それと本記事には書きませんでしたが、後期のドルフィもちょっと苦手なんです。だから、一般的には世評の高いOut to LunchやLast Dateもあまり聴いてません。
NOTさん推薦のオリバー・ネルソンとの共演盤:Straight Ahead(prestige)は、未入手です。ドルフィのアルトのプレイが存分に聴かれそうですね。

投稿: bassclef | 2008年3月23日 (日) 23:40

おおっ、Refugeeさん!お久しぶりです!Refugeeさんの方も、ドルフィーを聴いていたという・・・これはうれしい偶然ですね。僕も正直なところ、しょっちゅうドルフィを聴いているわけでもなく、でもたまに凄くドルフィの音を聴きたくなるのですよ。
ドルフィだけが出せる美しさ・・・う~ん、そんな感じ、確かにありますね。なんというか・・・純粋な抽象美とでもいうか・・・理屈じゃなくて肌に突き刺ささってくる音の快感というか・・・。
Refugeeさん、たぶん忙しいんでしょうね。でもちゃんとドルフィ(音楽)を聴いている。うれしいですよ。
またブログ、ポチポチやってくださいね(笑)

投稿: bassclef | 2008年3月23日 (日) 23:24

bassclefさん、こんばんわ。
私も「ドルフィーはアルトが最高」説に一票。
これだけ破天荒なアルト奏者というと、他には阿部薫くらいしか思い当たりません。
ところで、モンクはコルトレインじゃなくてドルフィーと共演すればよかったのに、と思っているのは私だけでしょうか?

投稿: Shuffle Boil | 2008年3月23日 (日) 21:39

こんばんわ。

私もbassclefさんと同じでジャズを聴き始めの頃(高校まではROCKだったので大学1年の頃)ドルフィーにハマって、PRESTIGE等の再発輸入盤を沢山購入しました。でもどうしても買えなかったのがCANDIDの「MINGUS PRESENTS MINGUS」でした。ある日ジャズ喫茶でたまたま「フォーバス知事の寓話」を聴いてハードロックよりずっとヘヴィな音にブッ飛んで以来、リクエストするのは、きまって「MINGUS PRESENTS~」で周りのモダンジャズ・ファンからは、いつも白い眼で見られていました(笑)。

bassclefさんが揚げられた以外に個人的に凄いと思うドルフィーが聴けるのはhttp://blogs.yahoo.co.jp/not254/10563970.html
あたりでしょうか。ドルフィー強烈過ぎ!


投稿: NOT | 2008年3月23日 (日) 21:30

bassclefさん、お久しぶりです。
すごい偶然なのですが、私も、昨日今日で、ドルフィーのフFive Spot Vol.1、Outward Bound、オリバー・ネルソンのScreamin' the Bluesを聴いてました。
私も、ドルフィーはアルトが一番好きですねぇ。ドルフィーだけが奏でることのできる美しさをたたえている気がします。

投稿: Refugee | 2008年3月23日 (日) 20:52

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