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2006年5月 4日 (木)

<思いレコ 第10回> ビル・エヴァンス/ポートレイト・イン・ジャズ

when I fall in love ~エヴァンスのあの水晶のようなA♭・・・。

このレコードをとても好きだ。ビル・エヴァンスという人がスコット・ラファロというベーシストと出合って、その喜びの中で両者が生き生きと飛び跳ねている・・・そしてお互いがお互いのサウンドを聴きながら、嬉々として音楽を創っている・・・そんなジャズの理想郷のようなレコードだと思う。そしてよく言われる「インタープレイ」などという言葉に囚われなくても、ピアニストとしてのエヴァンスの本領~「尖がったピアノ表現」とでも言うべきか~が最もよく出ているレコードだと思う。だから内容には・・・全く文句ない。
そんな文句ない名演であるがゆえに・・・わずかなキズに気付いてしまうのかもしれない(笑)

ビクター国内盤(SMJ-6144:1976年)を何度も聴いてきたのだが、以前から「気になるポイント」が何箇所かあった。

1.ベースやピアノの音が急に揺れるようにクリップする(音揺れ箇所)
  A面1曲目:come rain or come shine:
  最初のテーマの途中~この曲のメロディは前半と後半が同じパターンなのだが、後半のテーマに入って5~6小節目のところで、一瞬だが、ピアノ・ベース共にはっきりと揺れる。
  B面1曲目:what is this things called love:
  エヴァンスのソロが終わり、ベースがソロをとっているバックでピアノが「合わせ」を入れてくる辺り~ここでは明らかにベースの音が「揺れて音圧も減衰」してしまう箇所が何度もある。ピアノよりも特にベース音が揺れているようだ。
  B面2曲目:spring is here:テーマの終わりに近い部分~上昇するメロディにピアノとベースが4分音符で合わせる箇所~ここで、ラファロのベースの音がかなり「揺らぐ」。この「合わせる箇所」は、この曲の最もいいところなので、聴くたびに、この「揺れ」にはがっくりしていたのだ。
  
2.バラードの静かな場面で、わずかだが「キ~ン」というような高周波っぽい音が、継続的に聞こえる。
  B面2曲目 spring is here:この曲にも気になるポイントがあった。まず全体にわずかにだが聞こえる「キ~ン(あるいはシ~ン)」というようなノイズ。バラード(一般的に静かにスロウに演奏される)なので余計に目立つのかもしれないが、このノイズは、最初に日本盤を聴いた時から感じていた。同じバラードのA面 when I fall in love でもわずかに同様の「キ~ン」があるようだ。
*他のレコードでも、例えば静かなバラードの時、プチ・パチというノイズは聞こえたとしても・・・この類のノイズはあまり記憶にない。
  
3.この when I fall in love~僕はこの曲を大好きなのだ。エヴァンスはこの曲で素晴らしいインスピレイションを見せてくれる。(後述)
  しかし・・・以前から「気になる箇所」がある。レコードを聴いてると、わりとよくある現象~演奏中のフレーズが、実際に弾かれたタイミングよりちょっと先に、小さな音でエコーのように聞こえてくる現象~「前ゴースト」(テレビの電波が2重になって映ることをゴーストというらしいので、その呼び名をマネしてみた)が目立つのだ。この曲もテーマが前半・後半と同パターンなのだが、後半テーマに入って3~4小節目の辺りで、エヴァンスが「今、弾いてるタイミング」とは関係なく、高音のトリル風フレーズが「エコー」のように聞こえるのだ。そお後半テーマの最後の辺り(13~14小節)でも同じような「エコー」が聞こえる。高い方の音域で細く小さく、しかしはっきりと聞こえるのだが、それが「どの箇所」で弾いたフレーズなのかはよく判らない。

僕は、1.の「ベース音が揺れる感じ」は、もうすでに「録音された段階」での不具合だと思っている。多分・・・リヴァサイドのスタジオのテープレコーダーの調子が悪かったのか・・・あるいは録音スタジオの電源供給が不安定だったりしたんじゃないか? それくらい何か根本的な要因があったのでは・・・と思えるほど、いくつもの箇所で「クリップ」する。例えば、キャピトルやマーキュリーでこんな場面は耳にした記憶がない。もちろん「録音段階での不具合」などではなく、保存したマスターテープの管理が悪かったために、「クリップ」したのかもしれない。だとしたら・・・早い段階でのマスターテープを使った初期プレス盤なら、あるいは「揺れない」かもしれないぞ・・・というのが僕の希望的観測だった(笑)

そんなわけで~つまりそんないろんな「疑問点」が日本盤だけの不具合なのかどうかを確かめたくて~<欧州リヴァーサイド盤>(モノラル・青ラベル) を入手したのだ。もちろん米オリジナルの「ステレオ」や「モノラル」が欲しいのだが、それらは・・・とても高い(笑) だからちょっと、いや・・・かなりの妥協をしてのプレス時期が古そうな<欧州リヴァーサイド盤>なのだ。 

 

_005_3                       

《上の写真:左側が<米オリジナル・モノ盤> 右側が<欧州リヴァーサイド盤>~表ジャケットの写真・デザインは全く同じだが、このINTERDISC盤は、米オリジナルモノラル盤(左側)よりもコントラストをやや弱めにしたようで、全体の色合いが、明るくてやや薄めになっている。だからエヴァンスのメガネの奥の右目が、米オリジナル盤よりよく見えるようだ》

 

3_001《裏ジャケも米オリジナルとほとんど同じだが、左下に秘密があった(笑) distributed in Europe by INTERDISCと表記してある。もしセンターラベルを見られない場合は、この裏ジャケットの左下に注目すればいいかもしれない(笑)》 (写真左)

3_003_1写真右:《欧州盤のセンターラベル。外周に文字が入ったり、タテ字のMICROGROOVEやLONG PLAYINGの文字がない。ラベル下部にあるはずのBILL GRAUER PRODUCTIONS NEW YORK CITYという表記もない》 

 

 

 

この「欧州リヴァーサイド盤」~期待を込めて聴いたのだが・・・上記の「気になるポイント」の1・2・3、そのいずれもが「同じ箇所」で「同じようなレベル」で聞えてきたのだ。特に1.の「ベース音の揺れ」は、全体のベース音が迫力あるだけに、その「揺れ」は却ってひどく聞えるようでもあった。「古そうなプレスの盤」だったので、あるいは・・・と期待したのだが・・・非常に残念だ(笑)

さて・・・「欧州リヴァーサイド」のラベルのことで「こだわりの杜」(ニーノニーノさんHPのBBS)のお仲間:Yoさんとメールやりとりした際(さきほどの「前ゴースト」という言葉は、Yo氏のネイミング)、そんな僕の「個人的興味」を知ったYoさんが、お手持ちの2枚の「ポートレイト・イン・ジャズ」を、「それじゃあ、いろいろと聞き比べてみてよ」と電光石火の早業で(笑)送ってくださったのだ。
  その2枚とは・・・
  <米オリジナル・モノラル盤(青・小ラベル)> と
  <オルフェイム・ステレオ盤(緑ラベル)>だ。
  この2種と、僕の手持ち・・・
  <欧州リヴァーサイド・モノラル盤(INTERDISC・青ラベル)> と
  <ビクター国内盤(SMJ-6144)1976年>の2種を加えて、
  計4種の「ポートレイト・イン・ジャズ」の「音質」と・・・それから問題の「クリップ箇所」の有無などを聴き比べてみた。

それでは「音質」の印象を少し。
<ビクター国内盤(SMJ-6144)1976年>~
一聴して全体の歪み感が少なく・・・スッキリしている。案外に悪くない。
ピアノの音自体にも安定感があるので、とても聴きやすいように思う。ラファロのベースは、この「ポートレイト」では「右側」から聞こえる。ヴァンガードのライブでは「左側」だったはずだ。ベースの音は・・・ややレベルが低めで、音自体もやや薄いようだ。僕はもう少し強めにベースを聞きたい。「鳴り」「音圧」「気高さ」「艶」など、ヴァンガードでのラファロの音と比べると、少しづつだが劣っているように感じる。ちなみに「音圧」については、この日本盤には絶好の「比べポイント」がある。「枯葉」の「ステレオテイク」と「モノラルテイク」が、A面2曲目と3曲目に続けて入っているのだ。3曲目になると・・・右側から聞こえていたラファロのベースが中央に寄ってくる。そして「分厚いベース音」に豹変するのだ。モノラルに圧縮された分、全ての楽器の密度が濃くなったようだ。ベースの「音圧」に限れば、この「モノラルテイク」の方がはるかにいい。これくらいの音圧で、ベースが全体を押し出していく感じが、本来のラファロの持ち味だと思う。但し・・・今度は「艶」が薄くなった。「艶」というより「響きの具合」という感じのことだが、ラファロのあの「後鳴りするような響き」が、うまく録られていないのだ。僕はステレオ録音が嫌いではない。ギュッとしまったモノラルもいいが、ベースの響きの余韻をうまく取り込んだ「ステレオ録音」には「鳴りかた」に「色気」があるように思う。
その好例が あの Waltz For Debby と Sunday At The Village Vanguard の2枚なのだ。(このライブ盤については・・・いずれまた)

<オルフェイム・ステレオ盤(緑ラベル)>写真右側~_001_7
                 

プレスや盤質自体の問題だと思うが、ちょっとヴォリュームを大きめにした時の「シュ~」というノイズが、やや大きいようだ。
一聴して、ピアノの音の芯が弱く、ドラムシンバルなど全体的に、(ビクター国内盤と比べても)やや鮮度感がやや薄いように感じた。
但し、右チャンネルから聞こえるラファロのベースに関しては・・・ビクター盤よりも入力レベルが高く、より前に出てくるような感じ。
ラファロのベース音のあの生気ある感じは、オルフェイム盤の方がよく出ている。

<欧州リヴァーサイド・モノラル盤(INTERDISC・青ラベル)>~
モノラルの「詰まった」感じの音に一瞬たじろぐが・・・ちょっと聴き進めばすぐに慣れる。モノラルになった分、ベースやピアノは明らかに厚い音になった。ラファロのベース音も「厚くなって大きめな音」に聞えるので、より迫力が出てきた。荒々しくなったとも言えそうだ。

<米オリジナル・モノラル盤(青・小ラベル)>上写真の左側~
B面からかけてみる。1曲目 what is this things called love の出だしの「ダッダ~ン・ダ~アダッ!」から力強さが段違いだった。
ピアノの音に強さと粘りがあるし、ベースの音色にも1本芯が通ったような力強さがある。それにベースの音像の輪郭が、欧州リヴァーサイド盤よりもぐっとクッキリしてきたようだ。全ての楽器に音圧がしっかり感じられるのだ。強く弾いたピアノの音が、よく伸びその力感が落ちない。音に「馬力」があると言ってもいい。この米オリジナル盤をこうして聴くまでは、実は、欧州盤もなかなかのものかもなあ・・・と密かに期待していたのだが、やはり米オリジナル盤はモノが違うようだ。

A面:when I fall in love~音圧、ピアノのタッチの力感が充分に感じられる。エヴァンスのタッチは弱い、と思われているようだがそんなことはない。エヴァンスは、このバラード曲の出だしのメロディ3音目(A♭の音)を、ぐっとためて「ッポ~ン」と投げ出すようなタッチで、このA♭のシングルトーンをたっぷりと伸ばすように弾いている。この辺りに、エヴァンスの「美学」がよく表れているように感じる。そしてこのA♭は・・・相当に強いタッチだと思う。和音でゴンゴン押してくるようなタイプの強さではないが、パッと見では線は細いが実は「鋼のような硬質さ」という質のタッチの強さを、ビル・エヴァンスは持っているのだ。
米オリジナルモノラル盤をこうして聴いていると・・・そのピアノの音が生き生きしているので、エヴァンスのピアノ表現に~特徴的な長いフレーズ、その中のタッチの強弱、張り詰めた感じ~とても素直に入りこめる。トータルとしての「鮮度感」が一番高いことは間違いないようだ。
どう聴いても・・・やはり4種の中ではダントツに素晴らしい!さすがは米オリジナルモノラル盤だ。今、再び「米・オリジナル・モノラル盤」を聴いている。そして・・・この「A♭音」だ・・・。「ッポ~ン」と思い切り伸ばしたそのピアノの音が・・・水晶のような音に感じられる。「タッチの芯」がしっかりと感じられる。素晴らしい!
それからさきほど「エヴァンスはこの曲で素晴らしいインスピレイションを見せてくれる」と書いたが、その素晴らしい「インスピレイション」(と僕が感じる箇所)は・・・2コーラス目の前半(いわゆるアドリブでのソロはこの16小節のみ。この曲は2コーラスのみで終わるのだ))前半・後半のテーマが終わって、次の前半部分の8小節目辺りから突如、現れる。長いフレーズを~そのフレーズは細かい「譜割り」のもので、どう考えても、この場でいきなり浮かんできたようにしか思えない~実に不思議なタイミングで弾くエヴァンスなのだ。あるフレーズを弾き始めたかと思うと「グッと」停めてしまう。そうしてすぐ後には、長いフレーズを「溢れる」ように弾き込んだかと思うと、また停め。そしてまた次のフレーズへ・・・という感じなのだ。この辺りの展開はまるで・・・通常の1・2・3・4という「タイム感」を超越してしまったかのようだ。エヴァンスが「ぐぐ~うっ」と堪えてフレーズを停めている2~3秒の凄まじい緊張感。このわずかな「間(ま)」が永遠にも感じられる。そうしてその「スピード感」は凄まじい。スロウなテンポで展開しているだけに、「間」と「流れ」での落差を、よけいに感じるのだ。そんなようなことを、エヴァンスは、この4小節の中で展開してしまったのだ!「エヴァンスの音楽」が、文字通り、溢れ出てきたようなすさまじい展開に・・・おそらくラファロとモチアンも目を見張ったはずだ。そうして・・・あの「間」を、2人もまた強靭な集中力で「耐えた」のだろう。この when I fall in love・・・ビル・エヴァンス・トリオのこのバラードを、僕は本当に素晴らしいと思う。

さて、こんな風に素晴らしい音質の<米オリジナル・モノラル盤(青・小ラベル)>なのだが、このオリジナル盤での「気になるポイント」1.については・・・
A面1曲目~come rain or come shine ~
日本盤ではあれほどハッキリと揺れた、あの5~6小節目での「音揺れ」が、この米・オリジナルモノ盤ではほとんどないようだ。よく聴いてみても・・・ほんのわずかにピアノが揺れるようにも聞えるかな?という程度だった。日本盤でも同様だったが、ベースに関してはA面はだいたい安定していい音のように思う。
ところが残念ながら、前述したB面1曲目の what is this things called love でのベースの「揺れ感」は・・・やはり感じられたのだ。
特に後半のテーマに入る前あたり、ラファロがビートをぐいぐいと押し出してくるのだが、その「音圧」のもの凄さに、ひょっとしてマイク入力段階で「歪んだ」のだろうか?
A面では、どの曲でもあれほど安定して力強いベースサウンドだったのだが・・・。B面の他の曲では、これほどベースの音色に「揺れ」はないようだ。
この曲に限り・・・なぜかピアノよりもベースに集中してクリップするようだ。
それから、B面2曲目の spring is here の「上昇メロディ」の箇所での「音揺れ」も、やはり全く同じ箇所で、同じぐらいのレベルで「揺れて」聞えた。

「気になるポイント」の2.~あの「キ~ン」についてはどうだったのか?
こちらも残念ながら・・・日本盤、オルフェイム盤、欧州盤、米オリジナル・モノラル盤・・・どの盤でも聞こえるように思う。そのレベルもほとんど同じだった。ただ、この「キ~ン」はごくごく小レベルで鳴っているだけなので、演奏がピアニシモになった場面以外では、それほど気にならない。

「気になるポイント」3.のA面のwhen I fall in loveでの「前ゴースト現象」についてはどうだったのか・・・?
結論から言うと・・・この米オリジナル盤にもゴースト音は認められた。4種ともに多少のレベル差はあるのだが、全ての盤の同じ箇所に「ゴースト音」はあったのだ。ただ、この4種の中では、「米オリジナルモノ盤」と意外にも「日本ビクター盤」が、このエコーのレベルは、わずかに低いように聞こえた。

こうやって、4種の「ポートレイト・イン・ジャズ」を聞き比べてみた。その結果、僕の気になる「ベース音の揺れ」や「ゴースト現象」は~「米オリジナル・モノ」「米オルフェイム・ステレオ」「欧州・モノ」「日本ビクター・ステレオ」~全ての盤で、聞えたのである。ということは・・・「ラファロの音圧で歪んだ」は冗談にしても・・・やはり「録音段階」での何らかの歪みなのだろうか? それとも最初期の「マスター・テープ自体の不良」あるいは「ラッカー盤」製作段階での何らかの不具合があったのかもしれない。判らない・・・とにかく演奏が本当に素晴らしいだけに、やや残念なことではある。先に書いたように、これらの「音揺れ」が録音段階、「ゴースト」が最初のマスター段階からあったとすれば、全てのプレス盤でも同じ結果になるはずだ。
だが・・・ひょっとしてこれらの盤へのマスターテープの保存状態が悪かったために~テープ転写や劣化で、「音揺れ」「クリップ」「ゴースト」が発生した可能性もなくはない。だから残るは・・・まだ見ぬ「米オリジナル・ステレオ盤」だ。ひょっとして「黒・ステレオ」のみは、ごくごく初期のマスターを使っていて~つまりベース音の揺れやゴースト音の一切ない状態~というようなことはないだろうか。そうしてその盤から飛び出てくるのが・・・まったくベース音の揺れない spring is here だったら・・・そんなことを無想する僕である。

 

<補足 1>~先日、たまたま昔の音楽仲間4人<konken氏(b)emori氏(b)Yシゲ氏(as)Sマサ氏(ds)>と僕:bassclefが、konken氏宅へ集まる機会があった。その場で、この「ポートレイト・イン・ジャズ」の「音揺れ」についてチラッと話したところ・・・即座にemori氏が「ああ、あれねっ!そうそう、揺れる揺れる」と反応してきた。他の3氏は特に思い当たるフシはないようだったので、(できるだけ先入観を与えないように)「ラファロのベースの音でまずいところがある」とだけ伝えてから、上記3曲を、まずCD-R(konken氏が spring leaves(milestone:1976年くらいの米・2枚組)から焼いたもの)で聴いてみた。
やはりA面1曲目~come rain or come shine ~日本ビクター盤と同じ箇所で「ピアノとベースの音の揺れ」~オープンリールのテープがほんの一瞬だが、回転ムラを起こしたような感じの揺れ~を5人が確認した。下記の「気になるポイント2の「キ~ン音」も、emori氏は「気になる」とのコメント。
次に「ポートレイトインジャズ欧州盤」のA面1曲目、B面1、2曲目をかけたところ・・・特に[B面2曲目の spring is here の「上昇メロディ」の箇所]では・・・4人が揃って「ああ、揺れてる」という声を上げた。
そんなわけで・・・「ポートレイト・イン・ジャズ」には、やはり「ある種の歪み音」があることを確認した。もっとも、emori氏も相当なラファロ愛好家で、僕と同じようにラファロのベースラインを集中して聴き込んだ経験があるわけで、そんな風に「ベースの音色」に注目して、それを連続して聴いていくと・・・こういうちょっとした「音の揺れ・音像の乱れ」は、いやでも目(いや、耳に:笑)につくだけのことかもしれない。

<補足 2>上記集まりの10日後、emori氏から「ポートレイト~」再検証の情報(ビクターのCD3種)をいただいた。使用したマスターの情報もあり、なによりも僕が比較したのはLPのみだったので、以下にemori氏のメール(部分)を転載したい。

[以下、青い文字の部分]

~私も注意深く聴いてみました。そしたら、なんと、まだあるんですねぇ~。まぁ、(bassclef) さんも確認している部分かもしれませんが。私は、CDからですが…。書いておきます。音はヘッドフォンで聴いています。
■検証に使った音源
1:1985年に発売された(と思われる)ビクター音楽産業(株)発売元の「Portrait In Jazz」のCD。“VGJ-1506”

※このCDに使用した音源:
下記の事がCDに記されています。
『本CDマスターには、ファンタジー本社(米、バークレー)の保有するオリジナル・アナログ・マスター・テープをロスアンジェルスにある、JVCカッティング・センターに空輸し、ジョー・ガストワートによりJVC/DAS-900デジタル・オーディオ・マスタリング・システムでデジタル・トランスファーされたものを使用しております。』と。

2:2005年に発売された(と思われる)ビクター(日本)発売元の「The Complete Riverside Recordings」のCD。“VICJ-61292”と“VICJ-61292”の二枚。このCDは、「20bit K2/Super Coding」だそうです。

※このCDに使用した音源:
下記の事がCDに記されています。
From A Master Recordings owned by Fantasy INC. USA

=== 私が見つけた“あら”===

A : 「When I Fall In Love」
この曲の出だしのテーマ(サビ部)にノイズが入ります。左チャンネルに。
で、何気なく、1)のCDのライナーノーツをめくったら、下記の事が書いてありました。
『●お断り
本CDは、1950年代のオリジナル・アナログ音源からタイレクトにデジタル・トランスファーされたマスターを使用しております。その為、テープ・ヒス・ノイズ、歪み、アナログ・ドロップアウト(音の欠落)といったオリジナル・アナログ・マスター・テープの瑕を含んでおります。これらは、録音レベルの低い部分、及び音が消えかかる部分に顕著ですが、本シリーズは現在入手しうる最も質の高いオリジナル・マスター・テープからのCD化であり、又その歴史的音楽性の高さを鑑みてリリースされたものであることを御了承下さい。尚、本CD「When I Fall In Love」の左チャンネル(ヒス音とさわめき)中にガサ・ノイズがあります。』
と日本語で書いてあり、英文もありましたので書いておきます。

NOISE INFORMATION
This recording is taken from the original analog 1950"s source material, and therefore contains inherent tape flaws, such as hiss, distortion, and analog dropouts.  These tape flaws become more evident on low level passages and on most fades.  There are clicks in left channel (hiss and buzz) on 「When I Fall In Love」

B : 「What Is This Thing Called Love?」
1 : この曲の出だし:音が詰まっての出だし。特に、左チャンネル。
2 : 2分35秒から36秒の間の一瞬、ベース音が揺れる。(これは、私にはそう聴こえます)
この曲のベース音は、最初から最後まで、微妙に揺れているように聴こえます。特に後半部分。

C : 「Come Rain Or Come Shine」
出だしのテーマ後、ピアノソロに突入時に、ノイズ。これも左チャンネルのはず。

D : 「Peri's Scope」
1分37秒から38秒の間の一瞬、ベース音が揺れる。

E : 「ピー」という継続ノイズ音
これは、いろいろな曲の至る所で聴こえます。特に静かな曲「Spring Is Here」そして、静かになる部分。とくにベースソロ部、例えば「Witchcraft」

特に、2)のコンプリ盤は、「20bit K2/Super Coding」仕様のせいか、1)のCDより、上記の“あら”は一層はっきりと聴く事ができます。「Spring Is Here」のピー音は、でかいこと!そして、合わせの揺れも、1)が小波なら、2)は大波って感じです

[以上、青字の部分がemori氏の情報]

・・・最後に強調しておきたいことがひとつ。
「いい演奏ならば、どんな盤(モノラル、ステレオ、オリジナル、日本盤・・・)で聴いても~演奏された音楽に集中さえすれば~絶対に楽しめる」ということだ。この盤が大好きだったので、だからその中のいくつかの気になる点について、こんな「比較検証」みたいな話しになりはした。だけど・・・もちろんのことだが、あるレコードを聴くのに「~盤でなくてはダメだ」とは思わない。今回は、この「ポートレイト」の同一曲を、いろんな盤で何度も聞き比べてみた。その際、どの盤で聞いていても(冷静に検証的に)・・・知らず知らずの内に、 その「演奏」に聴き入ってしまい、例えば2曲目だけを検証しようと聞いていたつもりでも・・・つい最後まで聴いてしまうのだった(笑)
そんなだから、「盤」による違いを検証しつつも・・・その一方では「演奏」を聴いていけば(その音楽の中に入り込んでしまえば)どんな盤でも構わないじゃないか!
・・・そんな気持ちにもなった。そのことを再確認できたことも、だから・・・うれしかったのだ。
その音楽を好きで、聴いていれば、その音楽からは絶対に「何か」は伝わってくるはずなのだ。
ただし、もっと突っ込んだ拘りを持ってその音楽に接したい時に、その拘りの強さに応じた「いい音の盤」というものは・・・やはりあると思う。
例えばあなたが・・・エヴァンスの「水晶のタッチ」をどうしても味わいたい・・・というような場合には(笑)

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