« 2006年3月 5日 (日) | トップページ | 2006年4月 6日 (木) »

2006年3月26日 (日)

<思いレコ 第9回> マッコイ・タイナー/today & tomorrow(impulse)

初めてのオリジナル盤はインパルスだった。

分厚いコーティングのジャケット。それから、なんだか変な匂い。これが「輸入盤」というものに対する、僕の最初の印象だ。当時はあくまで「輸入盤」と呼んでおり、「オリジナル盤」というような認識は全くなかった。
いずれにしても、このやけに重いインパルス盤が、僕にとっての最初の「オリジナル盤」だったわけだ。だいぶ後から判ってきたことだが、当時(1972年頃までか?) は、日本のレコード会社が代理店となっていくつかの海外レーベルを「直輸入盤」として販売していたようだ。guramophone
riverside(時期的にABC Riverside)~日本グラモフォン(ところで、日本グラモフォン=日本ポリドールなんでしょうか?ご存知の方、ご教示を。)
atlantic~日本グラモフォン?(アトランティックのオリジナル盤を入手したところ、裏ジャケに「逆文字の刻印スタンプ」~imported by Nippon Gramophone と読める~のある盤を持っている。右の写真がそのスタンプだ。)
それに、bluenote~東芝。あとは impulse~キング くらいだろうか。King_impulse

このキング扱いのimpulse盤は、扱いタイトルの小冊子を持っている。輸入盤なのに、全て「カタカナ」で表記してあるところがおもしろい。
AS1番(great Kai&JJ)からAS100番までとAS 9101番からAS9213番までの200以上のタイトルが載っている。その内、いくつかのものは SR~という型番で日本盤が出ていたようだ。  _002

AS-63番のマッコイ・タイナーのToday & Tomorrow はそんな「直輸入盤」の1枚だった。4つ上の兄貴が大学の生協のレコード売り場で買ってきたものだ。兄貴が言うには・・・その時、有名なコルトレーンの「至上の愛」を買おうとしたら、ジャズ好きの友人が「まだおまえにはコルトレーンは早い。この辺にしておけ」とマッコイを勧めてくれたそうだ。兄貴はちょっと「ジャズ」に興味を覚えた程度だったので、素直に友人の助言に従って、それで今、このマッコイ・タイナーの盤が、僕の手元にあるわけです(笑) それにしても、当時は大学の生協にこんな渋いジャズのレコードまで品揃えしてあったということにも驚かされる。時代的に、大学生が盛んにジャズを聴いていたのだろうか? 
《写真下~1972年に手にしたToday&Tomorrow (impulse AS-63) ステレオ盤 オレンジ黒~盤が異様に厚い》

 

Mccoy_tyner_today

 

   最初、このToday & Tomorrow を触った時・・・とにかく変なニオイがした。ジャケットはインパルス特有のゲイトフォールド、そして分厚いコーティング。ジャケットに使うダンボール自体も厚めなんだろう・・・ジャケットだけでも相当に重い。そして・・・vinyl(盤)がこれまた重い!特に、センターラベルが「オレンジ・黒」の比較的初期の盤は、vinyl 自体もこれまた厚いようで、横から見ても2mmくらいはありそうだ。そうしてその厚さが、けっこう不均等なのである(笑)

「変なニオイ」を嗅ぎながら、それでも何度もこのレコードを聴きました。
A面1曲目は・・・contemporary focus というモードの曲だ。たぶん1963年頃は、なんでもかんでもモードという時代だったのだろう。
モードというと・・・僕がちょっと苦手ないわゆる「新主流派」(bluenoteのハンコックやショーターの流れからのモード手法)のサウンドを想起する方が多いと思う。しかし・・・このマッコイのモードは、新主流派のサウンドとは、なんとなく肌合いが違うのだ。やっぱりエルヴィン、マッコイ、という「コルトレーン的熱いソウル一派」のモード曲は・・・まず「熱い!」それに「くどい!」(笑) 曲のテーマの展開もなんとなく強引というか混沌というか・・・あまりスマートではないのだが、そこら辺りが僕には心地よいのだ(笑)

この曲は、ジョン・ギルモア(ts)~そういえば、ジョン・ギルモアというテナー吹きの「ギザギザしたような・・・乾いた風が吹き始めたかのような」独特のサウンドにも魅かれるものがあった~やフランク・ストロジャー(as)、それにサド・ジョーンズ(tp)が加わった6人編成のセッションの中の1曲だ。そしてその6人セッションのドラムスがエルヴィン・ジョーンズなのだ!

中央やや右の方からエルヴィンの「でっかい鳴り」が響き渡る。シンコペを効かせた4音のイントロ~「ダッ・ダッ・ダッ・ダア~ン」という合わせのところなんかもう・・・エルヴィンの強烈なこと!シンバルの中央付近を叩く「カコ~ン」というような音も混ぜて、そして「グワ~ン」とシンバルを押し(文字通り、押しているのではないだろうか)バンド全体を煽るようにドラムセット全部を鳴らしてくる。この辺りの「合わせ」・・・エルヴィンはたぶん、譜面なんか見てない。出来あがった曲をマッコイがピアノで弾いて、それを即座に身体で吸収してしまったのだと思う。そうして理屈でなく野生の勘で、合間にロールを入れながら、その合わせるポイントよりもほんのわずかに遅らしたような感じで「ドッカ~ン」とくる。これが気持ちいいのだ(笑) きれいにピタっと合わせるだけの後年のフュージョンの「合わせ」なんかとは、もう全く次元が違う。重みが違う。キレが違う。そうしてライド感が違う。エルヴィンが叩けば、そこには必ず・・・ジャズ魂が炸裂しているのだ。_002
ちなみにラストのテーマに戻る前に、短いベース・ソロがある。ブッチー・ウオーレンだ。この人もいい。ベースの音が本当に重いのだ。ハードボイルドな感じで凄みのあるソロをとる。そしてそのウオーレンがダブルストップ(左手を2箇所押さえて、ベースでも和音を出すこと)でもって「ダッ・ダッ・ダッ・ダア~ン」のフレーズを出してくる。すると・・・即座にエルヴィンが応えるのだ。パッと手が動いてしまったかのような、短いロールから「ドッカ~ン」とシンバルを鳴らし・・・爆発するようなこれも短いソロをとる。そうしてイントロと同じあのリズムパターンを繰り返すと・・・もう管奏者たちはテーマに入るしかない(笑)

高1の時に聴いた時は「ああ・・・これがジャズかあ」という感じに、この曲~contemporary focusからは、それこそ現代的(comtemporary)な感触を得ただけだった。しかし今聴けば・・・エルヴィンの凄さを味わうと共に、いいテーマを持つそしてしっかりと構成されたマッコイの傑作オリジナル曲だと思う。

Today & Tomorrow~A面~B面何度か聴きなおしてみたが~3管6人編成での他の曲もどれもよかった。それにトリオセッションでは、ベースがジミー・ギャリスンなので、「チュニジアの夜」「枯葉」もハードボイルドで悪くない。それとバラードでは「when sunny gets blue」というチャーミングな曲も演っており、一気に聴き通してしまった。マッコイのピアノのプレイだけをとっても、僕はこの頃のマッコイが一番好きだ。マッコイのピアノは、特に高音部でのフレーズに独自の輝きがある。右手のタッチが小気味よいほど鮮やかで、しかも一音一音をしっかりと弾き込んでいるようだ。だから・・・高音での「鳴り」が鐘のように響く。インパルスの録音もそれをよく捉えているように思う。マッコイには同時期に、ピアノトリオ(inception、ballads & blues、 plays Elligton、reaching fourth など)も何枚かあるが、やはり管も入ったこの盤がトリオものとのバランスもよく、一番聴き応えがあるようだ。
ジャズ聴きの最初期に何度も何度も聴いたこの盤なので、思い入れがあるのかもしれないが、その分を差し引いても~マッコイの大傑作だと思う。
ちなみに、このオリジナル盤・・・ジャケットのコーティングは隅の方から剥れ始めているが・・・あの「変な二オイ」はまだ微かにジャケットに残っている。

| | | コメント (24) | トラックバック (0)

« 2006年3月 5日 (日) | トップページ | 2006年4月 6日 (木) »