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2006年2月16日 (木)

<ジャズ雑感 第14回> トロンボーンのバラード、ちょっといいやつ(A面)

カーティス・フラーとフランク・ロソリーノのことを少々・・・。

トロンボーンの音色には「厳しさ」よりも、どちらかというと「ほのぼの感」というようなものを感じる。僕は、ジャズを聴き始めて長い間、テナーやアルトの咆哮!みたいなジャズの激しい部分に目線を向けていたので、そんな風にのんびり感のあるトロンボーンという楽器を熱心には聴いてこなかった。トロンボーンの音色自体をあまり好きではなかったとも言える。それでもたくさんのジャズを聴き、スタンダード曲をいろいろ覚えていくうちに・・・スロウなテンポで演奏される「バラード」というスタイルを、徐々に好きになってきたようだ。そしてそんな頃、耳にした「トロンボーンのバラード」というものに・・・何かこう特別な「いい雰囲気」を感じるようになったのだ。
そんな「いい雰囲気」を最初に意識したのは・・・あの盤だ。初期のソニー・クラーク聴きたさゆえに入手した Cal Tjader/Tjader Plays Tjazz(fantasy) である。この中のクラーク入りでないカルテットの方に、Bob Collinsというトロンボーン奏者をフューチャーしたバラードが2曲含まれていた。050907_002
I've never been in love before と my one&only love の2曲。これが、なんというか・・・まさにほのぼのしていて聴いてて「いいなあ・・・」と感じたのだ。そうして、ようやく「トロンボーン」という楽器も悪くないぞ、と思い至ったのだ(笑) このチェイダー盤の記事はここ。 http://bassclef.air-nifty.com/monk/2005/09/post_d5c1.html 

それからは、少しづつボントロのLPも集まってきた。そんな中から特に好きなアルバムを何枚か挙げてみよう。

カーティス・フラーの the magnificient trombone of Curtis Fuller (epic) というアルバムが好きだ。_002

dream
two different worldsなど、いい
バラードが詰まっている。
もともと「ぼ~っ」としたトロンボーンの音色だが、フラーの「ぼ~っ」は特に柔らかい肌触りだ。そしてそこに甘さだけでなく、ちょっと「ビターな何か」を感じる。その何かとは・・・侘しさ(わびしさ)みたいな感覚である。

フラーは、スムースなフレイズでアドリヴを切り盛りするというタイプではないと思う。特にバラードでのフラーは、メロディをあまり崩さずに、しかしフレイズのキリを意図的にぶち切ってその音をベンドさせる~クォォオオという風に音を下げて止める感じ~というようなわりとゴツゴツした表現で「ジワジワと」唄い込んでいく・・・。本当に「ジワジワ」効いてきます(笑)
そんな風にフラーという人は、バラードでの「泣き」表現が本当に個性的だと思う。そんなフラーの独特な「唄い回し」については・・・
Mike Berniker という人が裏解説で~dream の1stコーラスでは、フラーはほとんど泣いているかのようにみえる箇所がある(he almost seems to cry)~
実にうまいこと表現している。
それから・・・このレコードでは控えめに入るレス・スパンのギタ-も実にいい。こんな名手がいたのか!と感じ入った。ウエスに似た感じのオクターブ弾きも出てくるが、スパンのギターの音色は、一音一音がとにかく厚い。弦が太いのだろうか・・・厚くて温かい。レス・スパンは、60年前後のクインシー・ジョーンズのビッグバンドでも聴ける。
CBSソニーの1500円盤を何度も聴いているが、いまだに大好きなアルバムである。録音もとてもいい音で入っているように思う。

フランク・ロソリーノ という人もいる。この人は本当に巧い!JJジョンソンも速いパッセイジを軽々と吹くが、音色自体はわりあい軽いように思う。ロソリーノの速いパッセイジの一音一音には、JJよりさらに「キレと重さ」があるように思う。トロンボーンという楽器自体に興味がある方なら、ロソリーノの「巧さ」は凄すぎる世界じゃあないだろうか、と推測する。
ロソリーノ・・・それほど聴き込んだわけじゃあない。チャーリーマリアーノと共演しているベツレヘム盤とキャピトル盤くらいかもしれない。若くて亡くなったとのことなのでレコード自体もそれほど多くないはずだ。そんなフランク・ロソリーノ・・・全く素晴らしいとしか言いようのないアルバムがあるのだ。それがこれだ。

Free For All (specialty)_003

このspecialty というレーベル、西海岸のマイナーレーベルだったとのことだ。よく知られているのは、リー・モーガンの「Dizzy Atmospher」だ。
このレーベルで他に思いだすのは、バディ・コレットの I Love Paris(だったかな?) くらいだ。復刻専門レーベルのVSOPから出てたように思う。

僕の手持ち盤は、センチュリーのGコレクションというシリーズで発売された国内盤である。91年頃出ていたセンチュリーのLPには、なかなか貴重な
ものが多い。たしかラファロ入りのパット・モランやべヴ・ケリーのAudio Fidelity盤もあったはずだ。他にも、むちゃくちゃ地味なピアノトリオものなども、カタログに載っていた。それとセンチュリーの場合、同じタイトルをCD/LPで出していたのだが・・・なぜかLPの方がCDより安い、というタイトルもけっこうあったように記憶している。あれって・・・LP盤を買ったほうがすごくお得感があったのになあ(笑)
それなのに~ベニー・グリーンとソニー・クラークの共演盤(エンリカ原盤)だけは買ったのだが~リアルタイムでは、ほとんど入手してないのだ。今になってみれば・・・全く残念なことだと思う。が・・・これはレコード好きの毎度毎度の出来事である。仕方ない(笑)

さて、フランク・ロソリーノの Free For All (specialty) 
レナードフェザーの裏解説裏解説によると・・・この Free For All というアルバムは、1958年に録音されてはいたが、長い間未発表だったとのことで、ロソリーノはこの盤の発掘前の78年に亡くなったらしい。
フェザーの記事の最後に1986年と表記されているので、86年頃に始めて復刻されたのだろうか。

当時のプロデューサーだったDavid Axelrod の回想がおもしろい。裏解説には~
「ロソリーノも僕もこのアルバムの出来には大喜びだったよ。だって西海岸からの[ハードバップ]アルバムになるはずだったのだから。よくある[西海岸」というイメージからは抜け出したかったんだよ。何週間もかけてパーソネルと曲目を選んだんだ。結果は凄いものだったよ。だから・・・どうしてか判らないが、あれがリリースされなかったことには、もうすごくがっかりしたものだよ」
~みたいなことが書いてある。じっくりと人選したというだけあって、確かにメンツはいい。ロソリーノを支えたのはこの4人だ。
ハロルド・ランド(ts)
ルロイ・ヴィネガー(b)
ヴィクター・フェルドマン(p)
スタン・レヴィ(ds)
なんというか・・・ミュージシャンの相性みたいなものまで、しっかりと考え抜かれているようで、出てくるサウンドが実に「こなれて」いる。
ただ巧い、というだけでなく、品のあるまとまりの良さが感じられる。David Axelrod という名前は全く知らないが、この1958年当時に、
本当にいいアルバムを創ったものよ、と感心してしまう。

まず・・・B面1曲目の stardust これがもう実に素晴らしいのだ!
ピアノがきっかけの和音だけ出すと・・・いきなりヴァース(前奏)のメロディから吹き始める。ヴァースはピアノとのデュエットでルバート風。僕はもうこのヴァースからぶっ飛んだ。端正な輪郭のはっきりしたトロンボーンの音色で
名曲「スターダスト」のあのメロディを~「こうしかない!」」という風に吹き進む。ちょっとしたフェイク(メロディを軽く崩すこと)も抜群のセンスで、あくまでもこの曲の「格調高さ」を守りきっている。そして・・・ロソリーノのトロンボーンは「ぼお~っ」とは聞こえない。スピードの速いクルマのデザインが、箱型から流線型になって(結果として)きたような音色だ。丸みを保ちながら「キレ」がある。メカニックな美しさ、と言ってもいいかもしれない。僕は元来、どちらかというと・・・フラーやベニー・グリーンなど音の「太っい」(ぶっとい)朴訥型のボントロの方が好みだったはずなんだが、このstardust でのロソリーノには・・・何というか・・・彼の「ダンディさ」にすっかり参ってしまったのだ。

ヴァースが終わると・・・案外速いテンポできっちりとベース(ヴィネガー)がキッチリと2分音符をキープし始める。
1コーラス目はベースとドラムだけのバッキング。2コーラス目に入ると、ようやくピアノがバッキングに入ってくる。すると・・・ベースが2分音符を維持しながらも、ピアノのコンピング(和音をいろんなタイミングで弾きこむこと、というような意味合い)の具合からか、すぐにロソリーノが倍テンのノリに持ち込んでいく。ここからのロソリーノのフレイズの見事なこと。よく倍テンになると、勢い余ってフレイズやノリなんかもけっこういい加減になったりするのだが、ロソリーノは崩れない。全く崩れない!これこそ名手だ。本当に巧い。僕の好みでは・・・JJの巧さより、さらに温かみのある巧さ、と感じる。

58年録音だが、音質は相当いい(と思う) specialty は、たしかOJCレーベルの中にも含まれていたはずだ。 OJCはriverside,prestige,contemporary 以外にもこのspecialty や nocturn というマイナーなレーベルの音源も復刻しており、まだまだ他にも聴いてみたい音源がいっぱいあります。OJCを侮るべからず(笑)

このロソリーノの1枚~「トロンボーンのいいバラード」というテーマは、実はこのロソリーノ盤から思い立ったのです。それくらい好きなアルバムである。トロンボーンにはまだまだ名手、個性派がいっぱいだ。とても1回では終われないようだ(笑)
ジミー・クリーブランド、ベニー・グリーン、マシュー・ジー、
それからもちろん JJジョンソンも(笑)
大好きなのです。いずれまた何枚かを取り上げてみたい。

それにしても・・・ジャズには名演がいっぱいだあ!

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